(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】亜鉛電極の改良
(51)【国際特許分類】
H01M 4/26 20060101AFI20240814BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20240814BHJP
C01G 9/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01M4/26 H
H01M12/08 K
C01G9/02 A
(21)【出願番号】P 2022500732
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 US2020042767
(87)【国際公開番号】W WO2021016181
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-03
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507005403
【氏名又は名称】ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー オブ ザ ネイビー
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】ホプキンス, ブランドン, ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】パーカー, ジョセフ, エフ
(72)【発明者】
【氏名】ロング, ジェフリー, ダブリュー
(72)【発明者】
【氏名】ロリソン, デブラ, アール
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/089505(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0130998(US,A1)
【文献】特開2002-175815(JP,A)
【文献】特開平10-312802(JP,A)
【文献】特開2005-294225(JP,A)
【文献】特開昭52-106434(JP,A)
【文献】特開平04-272660(JP,A)
【文献】米国特許第08623301(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 12/00-12/08
C01G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、
混合物の粘度を増加させる水溶性化合物、
不水溶性ポロゲンおよび
金属亜鉛粉末
を含む混合物を形成すること、
前記混合物を型内に設置すること、
任意選択で前記混合物を乾燥して
スポンジを形成すること、
前記混合物または前記スポンジを、亜鉛粒子が互いに融着する温度で、不活性雰囲気中で加熱して、焼結スポンジを形成すること、ならびに
前記焼結スポンジを、前記焼結スポンジの表面上にZnOを形成する温度で、酸素含有雰囲気中で加熱することを含み、
上記の不活性雰囲気中で加熱することと、上記の前記焼結スポンジを加熱すること、のうちの1つまたは両方の加熱ステップ
で、ポロゲンを焼き尽くす、
亜鉛電池電極を作製する方法。
【請求項2】
前記混合物はさらに有機液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水溶性化合物は水溶性カルボキシメチルセルロース樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポロゲンは不水溶性カルボキシメチルセルロース樹脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポロゲンはコーンスターチである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱ステップは、金属メッシュ内のすべての開口を空気が流れるように位置する前記金属メッシュ内に前記スポンジを置いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記メッシュは円筒形状であり、
前記メッシュは基板上に水平に設置され、前記基板は、前記メッシュの長さに沿う最大でも2本の線で前記メッシュに接触している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記スポンジを不活性雰囲気中で加熱することが、200~420℃のピーク温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記焼結スポンジを酸素含有雰囲気中で加熱することが、420~700℃のピーク温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年7月19日に出願された米国仮特許出願第62/876,114号の利益を要求する。本非仮出願全体にわたって参照される仮出願ならびに他のすべての刊行物および特許文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に電池用亜鉛電極に関する。
【背景技術】
【0003】
亜鉛(Zn)電池は、リチウムイオン電池の安全で持続可能なエネルギー密度代替品になりつつある。(Parker et al.(2018).Translating materials-level performance into device-relevant metrics for zinc-based batteries. Joule 2,2519-2527;Parker et al.(2017).Rechargeable nickel-3D zinc batteries:an energy-dense,safer alternative to lithium-ion.Science 356,415-418)。Zn電池は、再充電性が劣るという問題が歴史的にあり、Znスポンジ電極は、それらのネットワーク化された非周期的な構成が、高い電流負荷で局所電流密度を減少させ、それによって短絡樹枝状結晶を防ぐので、従来の電極より長い寿命を維持する(Parker(2017);Ko et al.(2018).Robust 3D Zn sponges enable high-power,energy-dense alkaline batteries.ACS Appl.Energy Mater.2,212-216;Parker et al.(2016).Minimizing shape change at Zn sponge anodes in rechargeable Ni-Zn cells:impact of electrolyte formulation.J.Electrochem.Soc.163,A351-A355;Parker et al.(2014).Retaining the 3D framework of zinc sponge anodes upon deep discharge in Zn-air cells.ACS Appl.Mater.Interfaces 6,19471-19476;Parker et al.(2014).Wiring zinc in three dimensions re-writes battery performance-dendrite free cycling.Energy Environ.Sci.7,1117-1124;US Patent No.9,802,254;US Patent No.10,008,711;Stock et al.(2018).Homogeneous coating with an anion-exchange ionomer improves the cycling stability of secondary batteries with zinc anodes.ACS Appl.Mater.Interfaces 10,8640-8648)。
【0004】
しかし、亜鉛スポンジは、それらの寸法およびそれらがどのように取り扱われるかに依存して、それら自身の重量下で破損する可能性がある(Ko(2018);Stock(2018).ACS Appl.Mater.Interfaces)。この脆さは、特に大型用途用の電極が望まれる場合に、それらの実用的な最大サイズを制限する。多孔性三次元(3D)Zn電極を強くする既存の方法は、典型的には支持する不活性材料を添加することを含む。そのような強化技術は、電極表面にイオノマーコーティングを適用することを含む(Stock(2018).ACS Appl.Mater.Interfaces;Stock et al.(2018).Towards zinc-oxygen batteries with enhanced cycling stability:The benefit of anion-exchange ionomer for zinc sponge anodes.J. Power Sources.395,195-204)および/またはdepositing Zn on host structures made of nickel(Chamoun et al.(2015).Hyper-dendritic nanoporous zinc foam anodes.NPG Asia Mater.7,e178),copper(Kang et al.(2019)).3D porous copper skeleton supported zinc anode toward high capacity and long cycle life zinc ion batteries.ACS Sustainable Chem.Eng.7,3364-3371;Yu et al.(2019).Ag-modified Cu foams as three-dimensional anodes for rechargeable zinc-air batteries.ACS Appl.Nano Mater.2,2679-2688),or carbon fiber(Stumpp et al.(2018).Controlled electrodeposition of zinc oxide on conductive meshes and foams enabling its use as secondary anode.J.Electrochem.Soc.165,D461-D466;Stock et al.(2018).Design strategy for zinc anodes with enhanced utilization and retention:Electrodeposited zinc oxide on carbon mesh protected by ionomeric layers.ACS Appl.Energy Mater.1,5579-5588。これらの回避策は、電極の重量容量を70%も低減することができる;(Stock(2018).ACS Appl.Energy Mater)。さらに、ほとんどは、電極の結果的な機械的強度または体積容量を報告していない。
【0005】
亜鉛電極は、歴史的にセルのセパレータを貫通するように十分に長く成長する樹枝状結晶のオペランド形成によりサイクル寿命が制限されている。この局所的で変則的な樹枝状結晶を形成する問題に対する解決法は、3D相互連結した空隙体積が3D相互連結した固体亜鉛ネットワークと共に連続する非周期的細孔-固体構成、つまり「スポンジ」形状要素としてZn負極を製造することを伴う。3Dにおける金属の導電性通路は、電極構造の全体にわたる電流分布を向上させ、樹枝状結晶の形成が充電放電サイクル中に起こりやすい不均一な反応部位を回避する(Ko(2018);Parker(2017);Parker(2016);Parker(2014).Energy Environ.Sci.)。さらに、3D亜鉛骨格の周りで絡み合った空隙ネットワークは、体積(電解質)に対して高い表面(亜鉛)を伴って閉じ込められた体積要素を可能にし、閉じ込めは、オープンな溶液で起こるより低い濃度で亜鉛酸塩の飽和を引き起こし、したがって、酸化亜鉛(ZnO)への脱水が放電工程で早く起こり、それによって形状変化をさらに最小化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非周期的Znアーキテクチャモノリスの調製は、いまだにいくつかの問題に直面している:1)油水エマルションを作製するための高価で可燃性の成分への依存;2)成形されたエマルションの空気圧密に起因する構造の熱加工の間に不均一な酸化亜鉛シェルを形成する可能性;および3)数平方センチメートルを超える大きさにした場合に、すべて金属であるが機械的に脆いZnスポンジを生じさせる時間のかかる電解還元後熱加工を必要とすること。
【課題を解決するための手段】
【0007】
水、混合物の粘度を増加させる可溶性化合物、不溶性ポロゲンおよび金属亜鉛粉末を含む混合物を形成すること;混合物を型内に設置すること;混合物を乾燥してスポンジを形成すること;スポンジを、亜鉛粒子が互いに融着する温度で、不活性雰囲気中で加熱して、焼結スポンジを形成すること;焼結スポンジを、焼結スポンジの表面上にZnOを形成する温度で、酸素含有雰囲気中で加熱すること、を含む方法を開示する。加熱ステップはポロゲンを焼き尽くす。
【0008】
また、亜鉛粒子およびポロゲンを含むスポンジを準備すること;スポンジを、金属メッシュ内の実質的にすべての開口を空気が流れるように位置する金属メッシュ内に設置すること;スポンジを、亜鉛粒子が互いに融着する温度で、不活性雰囲気中で加熱して、焼結スポンジを形成すること;焼結スポンジを、焼結スポンジの表面上にZnOを形成する温度で、酸素含有雰囲気中で加熱すること、を含む方法を開示する。加熱ステップはポロゲンを焼き尽くす。
【0009】
また、亜鉛粒子およびポロゲンを含むスポンジを準備すること;スポンジを不活性雰囲気中で200~420℃のピーク温度で加熱して亜鉛粒子を互いに融着して焼結スポンジを形成すること;焼結スポンジを酸素含有雰囲気中で420~700℃のピーク温度で加熱して焼結スポンジの表面上にZnOを形成すること、を含む方法を開示する。加熱ステップはポロゲンを焼き尽くす。
【0010】
さらに完全な理解は、以下の実施形態の説明および添付図面を参照して容易に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】エマルション手順を使用せずに製造された2インチの長さの円筒状亜鉛スポンジの写真を示す。
【
図2】アルミナブロックに機械加工された切欠溝の上に浮かされた多孔性金属メッシュケーシングの写真を示す。Znスポンジはメッシュケーシングの内外に示されている。
【
図3】異なる密度を備えたZnスポンジの圧縮強度および引張強度を示す。Zn
2.83スポンジは、Zn
2.11スポンジより高密度であるので、より高い圧縮強度および引張強度の両方を有する。
【
図4】異なる密度を備えたZnスポンジ電極を使用して10mAcm
geo
-2で充電された銀-亜鉛(Ag-Zn)電池でのZn電極の電圧対体積容量を示す。
【
図5】Zn
2.83およびZn
2.11スポンジを使用する正方形の電極の最大実用電極の辺の長さ対電極の厚みを示す。
【
図6】Zn
2.8およびZn
3.3スポンジの材料コスト分布を示す。
【
図7】Znの分布を示す、
図13における同じ位置の元素マッピングを示す。
【
図8】Oの分布を示す、
図13における同じ位置の元素マッピングを示す。
【
図9】Znスポンジプリフォームを焼成するために使用した、温度および雰囲気の焼成プロファイル対時間プロファイルを示す。
【
図10】Ag-ZnセルにおけるZnの体積容量を示す。
【
図11】Ag-ZnセルにおけるZnの重量容量を示す。
【
図12】Zn
2.8(左)およびZn
2.1(右)断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【
図13】電気化学的サイクルの前のZn
2.8断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。
【
図15】Znスポンジについての引張応力対歪を示す。
【
図16】Znスポンジについての圧縮応力対歪を示す。
【
図17】Ni-ZnセルにおけるZn
2.8スポンジの電圧対時間を示す。
【
図18】Zn
2.8およびZn
2.1のX線粉末回折を示す。
【
図19】20mAcm
geo
-2で放電、10mAcm
geo
-2で充電されたZn2.8を使用するニッケル-亜鉛セルからの5回目および148回目の充電および放電サイクルの電圧対重量容量を示す。
【
図20】体積放電容量およびクーロン効率対サイクル数を示す。
【
図21】電気化学的サイクルの前のZn
2.8スポンジ断面の、より高い解像度顕微鏡写真を示す。
【
図22】電気化学的サイクル後のZn
2.8スポンジ断面の、より高い解像度顕微鏡写真を示す。
【
図23】Zn
2.8およびZn
3.3スポンジをそれぞれ作製するために使用されたポロゲン、CMC樹脂およびコーンスターチの熱重量分析によって測定された、質量百分率および温度対時間を示す。熱重量分析は、Znスポンジ焼成手順を模倣し、アルゴン(Ar)下でスタートし、次いでArと酸素(O
2)の混合物に切り替えて空気に類似させる。
【
図24】Zn
2.8スポンジ断面およびCMC高分子樹脂(右上)の走査型電子顕微鏡写真(SEM)を示す。スケールバーはスポンジおよびポロゲン画像の両方を指す。
【
図25】Zn
3.3スポンジ断面およびコーンスターチ(右上)のSEMを示す。スケールバーはスポンジおよびポロゲン画像の両方を指す。
【
図26】代表的なZn
2.8およびZn
3.3スポンジについて水銀圧入によって測定されたインクリメント圧入対細孔サイズ直径を示す。
【
図27】Zn
2.8およびZn
3.3スポンジの引張応力対歪を示す。
【
図28】Zn
2.8およびZn
3.3スポンジの圧縮応力対歪を示す。
【
図29】Zn
2.8およびZn
3.3電極を使用した銀-鉛(Ag-Zn)セルの電力対電流密度を示す。
【
図30】Ag-ZnセルにおけるZn
3.3およびZn
2.8電極の電圧対時間を示す。
【
図31】Zn
2.8およびZn
3.3のX線の粉末回折を示す。
【
図32】Ni-Znセル内で20mAcm
geo
-2で100回サイクルしたZn
3.3電極の電圧対時間を示す。最初の不規則な電圧プロファイルは、ポテンシオスタットプログラミングエラーによるものであり、残りのサイクルの間に修正された。
【
図33】20mAcm
geo
-2で100回サイクルされたNi-Znセルからの、サイクル後のZn
3.3断面の顕微分析を示す。
【
図34】10mAcm
geo
-2でサイクルした、Zn
3.3電極を使用したZn-空気セルの電圧対時間を示す。
【
図35】Zn-空気セルからの、サイクル後のZn
3.3断面の顕微分析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、説明の目的であり限定の目的ではなく、本開示についての完全な理解をもたらすために、具体的な詳細を記載する。しかし、本主題がこれらの具体的な詳細から逸脱する他の実施形態で実践されてよいことは当業者に明らかである。他の例では、周知の方法および装置の詳細な説明は、不必要な詳細で本開示を不明瞭にしないように省略する。
【0013】
本明細書では、多孔性モノリシック亜鉛(Zn)電極を製造する方法を開示するものであり、この電極は、機械的に堅牢で、亜鉛系電池中で高性能を達成し、大型化可能で低コストの製造方法を使用して製造される。亜鉛電極は充電式電池および一次電池において使用することができる。亜鉛電極をスポンジ形状要素に再成形することによって、樹枝状結晶がない充電式亜鉛電池が可能となる。これらの電極の前のバージョンには、数平方センチメートルを超えた大きさにするには不十分な機械的強度の問題がある。亜鉛電極を強化するほとんどのアプローチは、容量を減少させる補助的な不活性材料を添加することを伴う。対照的に、電極強度は、容量を増加させる亜鉛/酸化亜鉛の製造の進歩によって高めることができる。得られる電極は、1MPaの引張強度に達し、それは、今回、亜鉛スポンジの大型化を提供する。調整した構成は、以前に報告された電極に対して再充電可能な体積容量の102%増加を達成し、100%近いクーロン効率で150回サイクルしたニッケル-亜鉛電池において928mAhcmZn
-3を生じる。強度、大型化可能性および再充電可能容量におけるこれらの進歩は、グリッド貯蔵、パーソナルエレクトロニクスおよび電気自動車を含む様々な用途に対するZn-電池性能を拡張する。
【0014】
メタル-発泡体の文献からの大きさの関係(Eq.1)は、スポンジ密度を増加させることによりスポンジ強度を増加するための代替ルートを促す(Ashby et al.(2000).Metal foams:A design guide(Elsevier))。スポンジ引張強度(σT)は、スポンジ密度(ρ)、定数(K)、ならびにスポンジが形成される固体金属の圧縮強度(σS)および密度(ρS)の関数である。
【0015】
【0016】
Eq.1によって導かれて、電極強度と体積および重量容量とのトレードオフは、本明細書に開示した製造工程を使用して、Znおよび酸化亜鉛(ZnO)のみからなるZnスポンジ電極構成を適切に調整することにより回避し得る。Znスポンジ電極が高密度すぎれば、電極は低内部イオン流の問題があるが、高い電子伝導性および機械的強度を有することになる。反対に、電極が多孔性すぎれば、電極は、低電子伝導性および機械的強度の問題があるが、高イオン流から利益を受けることになる。これらの要因のバランスを取って、高放電可能容量およびサイクル寿命を備えた高強度で大型化可能な電極を作製してもよい。
【0017】
以前のZnスポンジ製造手順は、2つの役目を果たす、つまり、ポロゲンとしての機能すること、ならびに、エマルションの粘度を増加させることに役立ち、したがって亜鉛粒子の懸濁を維持することを果たすカルボキシメチルセルロース(CMC)樹脂の使用を必要としたエマルションに依存していたが、この使用は、エマルションに配合し得るZn粉末の量を制限することになる量であった(Ko(2018);Parker(2017);Parker(2016);Parker(2014).Energy Environ.Sci.;Parker et al.(2014)、Retaining the 3D framework of zinc sponge anodes upon deep discharge in Zn-air cells.ACS Appl.Mater.Interfaces 6,19471-19476)。Zn粉末のより高い配合が望まれ、それによって所定のエマルション体積を必要とし、より多くの量のZn粒子を懸濁すると、より多くの二元的役割のCMCを必要とすることになる。しかし、より多くの二元的役割のCMCを添加することは、また、より不要なポロゲンを導入し、成形されたスポンジ形状要素の密度を制限する。ポロゲンの役割/増粘の役割を分離すること、すなわち、ポロゲン性薬剤の使用およびエマルションを増粘する第2の薬剤の使用は、ポロゲン量およびエマルション粘度の個別の制御を可能にし、文献で見られるポロゲン質量に対して配合したZn質量の量を2倍以上とすることができる。改善したエマルション手順は、これらの2つの役割を分離し、それによって、より高い体積分率の亜鉛が最終スポンジに組み入れられることを可能にする。一例として、CMC樹脂などのある種のCMC配合物は主としてポロゲンの機能を果たし、一方、第2の異なるCMC配合物は増粘剤の機能を果たす。分離したCMCの組み合わせは、広範囲のZn粒径についてZnスポンジ密度を制御する際に、より大きな柔軟性を可能にする。スポンジ密度は、また、より長い焼結時間を使用することおよび/または焼成の間に圧力を加える(熱間等静圧圧縮成形)ことにより増加することができるが、両方の選択肢とも製造コストを増加させる。
【0018】
方法は、水、混合物の粘度を増加させる可溶性化合物、不溶性ポロゲンおよび金属亜鉛粉末を含む混合物を形成することによって行われる。任意選択で、混合物はデカンなどの有機液体を含んでいてもよい。可溶性化合物は、例えば、水溶性カルボキシメチルセルロース樹脂であってもよく、ポロゲンは、例えば、不水溶性カルボキシメチルセルロース樹脂であってもよい。他の例としては、増粘剤として硫酸ドデシルナトリウム(SDS)およびポロゲンとして直径が60μm近くの小さいポリプロピレンペレットが挙げられる。これらの材料が溶解可能かどうかは、使用される水または実際の水/有機混合物を参照する。混合物を型内に設置してスポンジを形成し、乾燥する。乾燥は周囲条件で、またはある程度の加温を伴ってもよい。加温はスポンジからの液体を乾燥させること以外の反応を引き起こすほど高くあるべきでない。スポンジが型から移動されるのに十分な物理的完全性を有するならば、乾燥ステップは必要でなくてもよい。これは有機液体が存在しない場合であり得る。
【0019】
以前のZnスポンジ製造手順は、デカンなどの低蒸気圧を備えた有機液体の使用を必要とするエマルションに依存していた。1つの実施形態では、Znスポンジ(
図1)は油-水エマルションに依存しない。合成は、予め膨潤したカルボキシメチルセルロース、すなわちCMC樹脂を水に添加し、中粘度のCMCナトリウム塩などの増粘剤のアリコートをCMC/水溶液に添加することによって行われる。CMCが完全に溶解するまで、典型的には数分間、混合物をスパチュラ撹拌する。その後、亜鉛粉末を添加する。ペーストを乾燥し、焼成し、使える状態になる。
【0020】
1つの典型的な手順では、割合は、中粘度のCMC増粘剤(400-800cP,水中に2重量%,MilliporeSigma,CAS#9004-32-4)0.050±0.001gを添加した18MΩcmの水6mL中に、予め膨潤したCMC(IonSep CMC 52 BIOPHORETICS(商標),CAS#9000-11-7)0.844±0.002gである;一旦均一な混合物が得られれば、Zn粉末50gを添加し、懸濁液を機械的に撹拌する。形成する粘着性ペーストを、最終スポンジの所望の形状要素を形作る型に分配し、次いで風乾する。離型、風乾した亜鉛/CMC複合材を、次いで熱処理してモノリシック多孔性ZnOシェル被覆Znスポンジを形成する。
【0021】
この手順での重要な要素は、中粘度のCMC増粘剤の使用であり、このCMC増粘剤は、予め膨潤したCMCポロゲンの使用と協働して、乾燥および最初の焼成工程中にペーストを全体として保持し、熱処理中に熱分解し、気相生成物として構造を離れ、それによって亜鉛ネットワークと共に連続である空隙ネットワークを「開放」する。この非エマルション手順は、以前の手順によって準備されたエマルションより非常に速く乾燥するペーストを作製し(Ko(2018);Parker(2017);Parker(2016);Parker(2014).Energy Environ.Sci.;Parker(2014).ACS Appl.Mater.Interfaces)、はるかに強い乾燥Znペーストの形態を可能にする。
【0022】
前の風乾したZnエマルションに由来する形態を、炉に載置された蓋のない露出したアルミナルツボ内で焼成した。この配置は、熱伝導性ルツボに近い風乾したスポンジの部分が、断熱空気に面するスポンジのトップ部分について起こるよりも大量のZn(視覚的に濃い灰色ととらえられた)をZnO(視覚的に白ととらえられた)に変換するように、熱勾配を引き起こす。この望まれない明白に認識可能なZnO勾配を回避するために、Znプリフォームを、窒化ホウ素が事前に噴霧された多孔性の黄銅板中に懸濁した。円盤状および円筒状の亜鉛スポンジについては、金属メッシュを曲げて円筒状ケーシングにする(
図2)。多孔性金属円筒状ケーシングは、気体流の向上のために機械加工されたチャネルを備えたアルミナブロックに載っている。この網状の型(これはケーシング内の乾燥プリフォームを浮かせる)および溝を有するアルミナルツボを使用して、炉に送られた空気からの酸素は、Znスポンジを均一に包み浸透することが可能である。
【0023】
この方法では、加熱ステップは、金属メッシュ内の実質的にすべての開口を空気が流れるように位置する金属メッシュ内にスポンジを置いて行われる。開口のいくつかは、メッシュを通った全体の空気流れに実質的に影響しない、または電極中でさらなる不均一性を引き起こさない限り、閉塞され得る。メッシュは、部分的にまたは完全にスポンジを包んでいてもよい。例えば、メッシュは、スポンジを挿入するおよび取り出すための開放端を有する円筒形状であってもよい。他のメッシュ形状は、必要に応じてスポンジの形状と一致するために使用されてもよい。メッシュの位置決めは、支持構造によってメッシュ開口が閉塞されることを最小化する。例えば、円筒状のメッシュは、円筒体(
図2)の直径より狭い基板のトラフ内に設置し得る。メッシュのみが、円筒体の長さに沿う最大でも2本の線でトラフの上縁に接触するように、トラフは十分に深い。メッシュは円筒状である必要はない。電極形状のニーズに基づいて、平面または三次元バージョンを構築することができた。
【0024】
従来の熱処理手順は、非常に長い電解還元工程を必要とするスポンジの金属Znコア上に厚いZnOシェルを生じて、熱成長したZnOシェルをZn金属に逆変換する。金属への完全還元に際して、Znスポンジは、ZnO被覆Zn金属(ZnO@Zn)スポンジと比較して大きな引張強度を失った。電解還元ステップを取り除くために、高密度Znスポンジ製法、熱加工中の上記に説明したメッシュ形態のフィッティングケース、および適切な熱処理(後記する)を使用して、電池組立に十分な強度をもたらすZnOの薄いシェルを有するZnスポンジ電極を作製するが、これはその後、一旦電池電解質内に設置されると部分的に溶解され、電極は、機械的に強く、炉から出してすぐに部分的充電状態となる。
図3および4は、2種類のZnスポンジの強度およびそれらの放電容量を示す。「Zn
2.11」および「Zn
2.83」スポンジを作製し、記号は、それらのそれぞれの密度を指し、Zn
2.11およびZn
2.83は、2.11±0.06gcm
-3および2.83±0.09gcm
-3の密度をそれぞれ有することを意味する。この強度の増加は、大きな電極が望ましい用途において大型電極を可能にする。電極の厚みと実際の最大長さとの大きさの関係を
図5に示す。
【0025】
不活性雰囲気中の第1の加熱ステップは、200~420℃または350~390℃のピーク温度で行われてもよい。酸素含有雰囲気中の第2の加熱ステップは、420~720℃または560~610℃のピーク温度で行われてもよい。これらの温度は、スポンジの温度とは対照的に、炉のセットポイントまたは内部温度を指す。ZnOシェルおよび骨格は、空気下でのZnスポンジの温度および時間を調整することにより、サイズおよび厚みを増加または減少することができる。ZnOシェル/骨格を増加させると、電極強度が増加するが電極容量が減少し、したがって、用途に応じてバランスを取る必要がある。
【0026】
大型化された実用的な最大電極サイズは、Zn
2.83およびZn
2.21についてそれぞれ10×10×0.2cmおよび4.6×4.6×0.2cmであると算出される(
図5)。より高密度なZn
2.83スポンジは、Zn
2.83スポンジのより大きな引張強度のために、Zn
2.11より大きな電極面積を支持する(
図4)。Zn
2.83によって与えられる大きな電極サイズは、多数のセルまたは電池を直列におよび/または平行に接続する必要がある電池システムについてのパッケージの少ない使用を可能にし、それによってシステムエネルギー密度を増加する。正方形のスポンジ電極についての実用的な最大電極辺長の控え目の推定では、電極が片持ち梁の状態でそのエッジのうちの1つで固定されれば、電極が曲げによって引き起こされる許容引張強度の半分を受けるように、電極の厚みの関数としての電極の辺の長さは算出される。測定された引張強度が測定された圧縮強度未満であり、電極が圧縮より張力下で破損しやすいことを示したので、引張強度を使用する(
図3)。実用的な最大電極辺長(L)は、Eq.2に示されるように、引張強度(σ
t)、電極の厚み(h)、この目的では2に等しい安全率(f)、スポンジ密度(ρ)、および重力の加速度(g)の関数である。
【0027】
【0028】
これらの方法は、一緒にまたは別々に使用される場合、少なくとも1.0gcm-3、1.5gcm-3、2.0gcm-3、2.5gcm-3、2.75gcm-3、3.0gcm-3、または3.25gcm-3の密度を有する亜鉛電極を作製し得る。また、それは、10、50、75または99重量%以下のZnOを含み得る。亜鉛電極は、アノード集電体、アノード集電体と電気的に接触する亜鉛電極、電解質、カソード集電体、アノード集電体と電気的に接触するカソード、および亜鉛電極とカソードとの間のセパレータを備えた電気化学セルに使用され得る。
【0029】
他の実施形態では、より持続可能なバージョンの電池を作製してもよい(Hopkins et al.(2020). “Low-cost green synthesis of zinc sponge for rechargeable, sustainable batteries” Sustainable Energy & Fuels.4,3363-3369)。材料コストを2.5USドル/kgに74%低減するZnスポンジに関するグリーン合成を開示する。以前に報告されたZnスポンジを製造する手順は、9.7USドル/kgの材料コストの少なくとも73%を占める高分子樹脂ポロゲンを必要とする(
図6)。この実施形態では、エマルションは合成に必要ではなく、有害な炭化水素を必要としない。コーンスターチ(0.3USドル/kg)が、高分子樹脂ポロゲン(CMC:420USドル/kg)の代わりに用いられてもよい。
【0030】
Znスポンジの低コストのグリーン合成は、4ステップからなり、それらは、リチウム系化学物質と異なり、製造のための湿度制御を必要としない。第一に、水、コーンスターチ、セルロースガムおよびZn粉末をともに混合する。コーンスターチは、ポロゲン性充填材の機能を果たし、焼成の間に燃え尽き、スポンジの体積の全体にわたって空隙ネットワークを生じる。セルロースガムは、水性混合物中にZn粒子を懸濁する増粘剤の機能を果たす。第二に、混合物をボルテックスし、撹拌する。第三に、得られるZnペーストを、型のキャビティへ押圧する。Znスポンジは、単三型電池に適切な形状要素で作製されてもよい。他のキャビティ形状は、Znスポンジを直接機械加工することによって、または型を改変することによって適応することができる。型を60℃で加熱して、Znペーストを乾燥させ、かつZnペーストプリフォームを取り出すためにキャビティを拡大する。第四に、乾燥したZnプリフォームを、窒素(N
2)および空気下の管状炉における焼成のために、ノッチつきアルミナブロックによって浮かせたメッシュケーシングに移動する(
図2)。浮かせたメッシュケーシングは、スポンジ円筒体の均一焼成を可能にする。
【0031】
本明細書に記載する方法、電極およびセルには、米国特許第9,802,254号明細書、米国特許第10,008,711号明細書、米国特許第10,720,635号明細書、米国特許出願公開第2017/0331104号明細書、米国特許出願公開第2017/0338479号明細書、および米国特許出願公開第2019/0173141号明細書において開示したいかなる特徴をも組み込んでもよい。
【0032】
以下の実施例は、具体的な応用を例証するために提示される。これらの具体例は、本出願での開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0033】
調整可能なZnスポンジ電極の製造
本明細書に示すZnスポンジ製造工程は、エマルション製法、焼成手順および加熱構造の見直しによって、過去の方法とは異なる。背景については、Znスポンジは、次の方法で一般に作製される(Parker(2017);Ko(2018);Parker(2016);Parker(2014).ACS Appl.Mater.Interfaces;Parker(2014).Energy Environ.Sci.;US Patent Nos.9,802,254 and 10,008,711;Stock(2018).ACS Appl.Mater.Interfaces;Drillet et al.(2010).Development of a novel zinc/air fuel cell with a Zn foam anode,a PVA/KOH membrane and a MnO
2/SiOC-based air cathode.ECS Trans.28,13-24)。亜鉛粉末が混合されたポロゲンを含むエマルションを作製する。得られたペーストを、乾燥型に分配し、一晩乾燥した。Znプリフォームをアルミニウムトレイに設置し、焼成用炉に移動する。窒素などの不活性ガス下でZnの融点(419.5℃)以下に加熱する間に、ポロゲンは燃え尽き、Zn粒子間アニーリングが開始する。次いで、温度をZnの融点を超えて上昇させながら空気を炉に送る。このステップは、熱形成された、強い形状抑制ZnO層(
図7および8)を生成し、この層の下で、Zn粒子がともに融着して非周期的なZnスポンジ構成を形成する。
【0034】
以下に使用するエマルション製法は、腐食を促進する可能性がある小さいまたは中空のZn粒子に依存することなく、以前の製法よりスポンジ中のZnのより高い体積分率を許容する(Li et al.(2014).Recent advances in zinc-air batteries.Chem.Soc.Rev.43,5257-5275;Li et al.(2017).Metal-air batteries:Will they be the future electrochemical energy storage device of choice?.ACS Energy Lett.2,1370-1377;Yi et al.(2018).Challenges, mitigation strategies and perspectives in development of zinc-electrode materials and fabrication of rechargeable zinc-air batteries.Energy Environ.Sci.11,3075-3095)。より多くのZnを、2つの種類のカルボキシメチルセルロース(CMC)の使用によって、所定の体積のエマルションに充填する。1つ目は、いくらかの増粘能を備えたポロゲンとして主に機能を果たす不水溶性樹脂である。2つ目は、水溶性であり、主に増粘剤としての機能を果たす。以前に報告された製法は、典型的にはもっぱらCMC樹脂に依存する(Parker(2017);Ko(2018);Parker(2016);Parker(2014).ACS Appl.Mater.Interfaces;Parker(2014).Energy Environ.Sci.)。大きな(50μm)固体Zn粒子は、懸濁するために、より小さいおよび/または多孔性Zn粒子より多くのCMC樹脂を必要とするが、より多くのCMC樹脂を添加すると、ポロゲン画分が増加し、それによってスポンジ密度を制限する。ポロゲン量およびエマルション粘度を分離するCMC混合物の使用によって、配合したZn質量の量は、以前の製造手順で見られるポロゲン質量の2倍以上とすることができ(Ko(2018);Parker(2014).Energy Environ.Sci.)、これまでのエマルション製法を使用して達成可能だったことよりも大きなZnスポンジ構成の制御を引き出す。スポンジ密度も、より長い加熱時間を使用することまたは焼成の間に圧力を加えること(熱間等静圧圧縮成形)によって、十分な気孔率を維持しながら増加することができるが、いずれも製造コストを増加する(Kalpakjian et al.(2014).Manufacturing engineering and technology,7th edition(Pearson))。
【0035】
焼成手順(
図9)を使用して、体積または重量容量(
図4、10、および11)を妥協することなく耐久性を改善(
図3)するための機械的強度をもたらすZnOシェルを成長させながら、Znプリフォームの密度を高める。過去の熱処理は、過剰量のZnをZnOに熱酸化させ、電池組立の前に、エネルギー集約的で時間のかかる「再充電」を必要とする、つまり熱成長ZnOをZnに電解還元する(Parker(2014).Energy Environ.Sci.)。電気化学的再充電は、スポンジの引張強度および圧縮強度を低減し、大きな電極での電池組立を困難にする。電解還元の必要性は、スポンジが機械的に強く(
図3)かつ炉から出してすぐにほとんど充電されたZnリッチな状態(
図4)であるように表面上に適量のZnOを熱形成することによって回避される。
【0036】
加熱構成は、金属メッシュケーシングおよびノッチつきアルミナ保持具を使用して均一なZnO形成を促進する(
図2)。熱伝導性アルミニウムトレイ上にZnスポンジを直接設置することは、スポンジの厚み全体にわたって対応するZnO勾配を生成する温度勾配を引き起こす。そのような熱勾配は、またスポンジ中の高温割れを引き起こす場合がある(Beer et al.(2009).Mechanics of materials, fifth edition(McGraw-Hill))。これらの望まれない結果を回避するために、円筒状Znプリフォームは、ノッチつきアルミナブロック上に載せた円筒状真鍮メッシュ(窒化ホウ素でプレコートされている)に入れられる(
図2)。アルミナブロックのノッチは、Znプリフォームのまわりの気体流を向上させる。
【0037】
代替の製造工程として加熱用ソリッド金型にZn粉末を入れることは、いくつかの問題を引き起こす。例えば、ZnOがZn上で熱成長する場合、スポンジはZnに対するZnOの低密度に起因して膨張する。スポンジは、ソリッド金型において加工された場合、剥離剤の使用および45°の大きな抜き勾配を伴うときでさえ型に付着する可能性がある。ソリッド金型からスポンジを離型することは、典型的にはスポンジを破壊することが可能な力を必要とし、メッシュケーシングへの切り替えを引き起こす。
【0038】
Znスポンジの製造
脱イオン水のアリコート2.054mLを、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)0.100±0.002gを添加したデカン4.565mLに添加した。この混合物に、中粘度の水溶性(400-800cP、25℃で水中に2重量%)カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム塩(MilliporeSigma.CAS#9004-32-4)0.0050±0.0003gを添加し、CMCが溶解するまで手で撹拌したが、それは数分を要する場合がある。この混合物に、不水溶性IonSep CMC52の予め膨潤したカルボキシメチルセルロース樹脂(BIOPHORETICS(商標)、CAS#9000-11-7)0.844±0.002gを添加した。水溶性CMCは増粘剤であり、その一方で不水溶性CMC樹脂は主に、いくらかの増粘能を備えたポロゲンである。懸濁液を、オーバーヘッド撹拌器を使用して1000rpmで5分間撹拌した。高分子のみのまたは高分子によって被覆された撹拌具の使用が強く勧められる。金属撹拌具は、Znスポンジの結果に悪影響を及ぼす可能性があることが観察された。腐食抑制のためのビスマス307ppmおよびインジウム307ppmを含む平均粒度が50μmの亜鉛粉末(<75μmの粒子89.2%および>250μmの粒子0%)をエマルションに添加し、混合物をさらに5分間連続的に撹拌した。ペーストを、混合物を真空下に5分間設置することによってガス抜きした。
【0039】
ガス抜きしたZnペーストを、ポリプロピレン乾燥型に分配し、開放空気中で一晩乾燥させた。翌日、Znプリフォームをメッシュケーシングに設置し(
図2)、次いで管状炉内のノッチつきアルミナ保持具(
図2)上にセットした。窒素(N
2)ガスを200mL/分の速度で30分間管状炉に送って炉から空気を除去した。30分間の除去後、N
2を100mL/分の一定の速度に調節し、温度は、5℃/分の傾斜速度と等しい、68分間の経過で369℃までの上昇とした(
図9)。温度を369℃で5時間保持し、その後、N
2流を停止し、呼吸用空気を100mL/分で直ちに送った。この時、温度は、2℃/分の傾斜速度と等しい、105分間かけて369℃~584℃まで直線的な上昇とした。584℃に達した後、管状炉の電源を切り、積極的な冷却制御なしで4時間室温に冷却した。冷却されたら、Znスポンジをダイヤモンドソーでスライスし、サンドペーパーで磨いて複合電極を作製した(
図2)。
【0040】
密度を変えたZnスポンジの機械的および電気化学的特性を測定するために、「Zn
2.1」および「Zn
2.8」スポンジを、2.11±0.06gcm
-3および2.83±0.09gcm
-3のそれぞれの密度で作製した。スポンジ密度は、円筒状モノリス(
図2)を量り、それらの寸法を測定することによって決定した。標準偏差は、各種類について3つのスポンジ試料の3つの測定に基づく。10mLの体積のエマルションを、直径50μmのZn粉末20または50gと共に使用してZn
2.1またはZn
2.8をそれぞれ作製する。Zn
2.1の密度は、以前に報告された最も高密度のZnスポンジ(2.1gcm
-3)に相当する(Ko(2018))。Zn
2.8スポンジは、この研究のエマルション製法、焼成手順およびZn粒径の実用最大密度に近い。より多く50μmのZn粒子(>55g)をエマルション10mLに添加すると、得られるZnペーストは、乾燥型を不十分に満たし、脱型の間に容易に粉々になり、50μmのZn粉末50gを使用する場合よりも低いスポンジ密度となる。Zn
2.1とZn
2.8との差が、それらの断面の顕微鏡写真(
図12)および34%の密度の差に基づくと微妙に思われる可能性がある一方、これらの構成上の微妙な点は、容量、強度および大型化可能性についての実質的な結果を生じる。
【0041】
Zn
2.8スポンジ断面の顕微鏡分析
Zn
2.8スポンジ断面の走査型電子顕微鏡写真によって、Zn粒子が互いに融着することが定性的に確認され(
図13)、この断面はまた、粗い外部ZnOシェルで終端するZn粒子の平滑な内部を捕らえており、割り当てエネルギー分散型X線分光法(EDS)で検証する。亜鉛(
図7)および酸素(
図8)のEDSマップは、Zn粒子断面がZnで充填され、ZnOからの酸素の0.5μm層でコーティングされていることを示す。Zn粒子の融着特性は、以下に記載する引張強度の測定によってさらに実証される。
【0042】
銀-亜鉛セル
エチレンプロピレンジエン単量体(EPDM)ラバーガスケットを備えたアクリルからなる透明電池ケーシングをレーザー切断によって製造した(
図14)(Hopkins(2013).Mechanical design of flow batteries.Master’s thesis.Massachusetts Institute of Technology;Hopkins(2018).Stopping self-discharge in metal-air batteries.Doctoral dissertation.Massachusetts Institute of Technology).The transparent casing aids in leak detection and other operando observations(Hopkins et al.(2018).Suppressing corrosion in primary aluminum-air batteries via oil displacement.Science.362,658-661;Chen et al.(2016).A low-dissipation,pumpless,gravity-induced flow battery.Energy Environ.Sci.9,1760-1770)。ボルトおよびアセタールダウエルピンは、容易な組み立ておよび分解を可能にする。Ag-Znセルについての「セパレータのアセンブリ」(
図14)は、Znアノード側のCELGARD(登録商標)3501の1つの層、続けてセロハン(Innovia films)の2層、Agカソード側の700/28フロウデンベルグセパレータの1つの層から構成された。Znアノード側の集電体は錫箔であり、一方、Agカソード側の集電体はコイル状の白金線であった。電解質は、9M水酸化カリウム(KOH)であった。Agカソードを、Znの容量を超えるように作製し、主に酸化銀(II)(AgO)である酸化銀粉末(MilliporeSigma CAS#11113-88-5)の間に銀メッシュを挟むことによって準備した。AgO粉末およびAgメッシュを、13.8、27.6、41.4、およびその後48.3MPaの各圧力で1分間押圧した。Znスポンジ、セパレータのアセンブリ、およびAgカソードに、電池組立および試験の直前に、電解質を減圧下で30分間浸透させた。10mAcm
geo
-2でAg-Zn放電試験を、Zn
2.8およびZn
2.1(
図10および11)について少なくとも3回行い、関連する標準偏差をこれらの3回の試験から算出した。Znスポンジ電極は、厚みが1mm、直径が11mmであった。
【0043】
直径および一軸圧縮試験
直径および一軸圧縮試験の両方を、1mm/分の一定の変位を使用して行った。圧搾プレートの表面は滑沢化しなかった。両方の試験において使用される円筒状試料の直径は11mmで、一軸圧縮については厚みが4mmで、直径圧縮については4~6mmであった。直径圧縮の結果を使用して引張応力および歪を算出した(Berenbaum et al.(1959).Measurement of the tensile strength of brittle materials.Br.J.Appl.Phys.10,281;Fahad(1996).Stresses and failure in the diametral compression test.J.Mater.Sci.31,3723-3729)。両方の種類の圧縮試験を、Zn
2.8およびZn
2.1について少なくとも3回行い(
図15および16)、関連する標準偏差をそれらの3つの試験から算出した。
【0044】
ニッケル-亜鉛セル
ニッケル-Znセルを、Ag-Znセルと同じケーシングを使用して作製した(
図14)。「セパレータのアセンブリ」は、Zn電極側のCELGARD(登録商標)3501の1つの層、Ni電極側の700/28のフロウデンベルグセパレータの1つの層から構成された。さらに、700/28フロウデンベルグセパレータをNi電極集電体上に設置して、電解質リザーバの機能を果たすようにした。Zn電極側の集電体は錫箔であり、一方、Ni電極側の集電体は膨張Ni箔(Dexmet)であった。Ni電極を新たに充電したPANASONIC(登録商標)ENELOOP(商標)Ni-MH単三型電池からNi電極を採取して作製した。Ni電極を、携帯型電気回転鋸でENELOOP(登録商標)単三電池から蓋を切り離すことによって採取した。次いで、単三電池を、シリンダケーシングの一方の側を通るそれらの最長の寸法にわたってスライスした。Ni電極を除去した電極組立体を取り出し、分解した。Ni電極を鉛レンガで平らにし、パンチを使用して小円に切断した。この研究については、3つのNi電極板を使用して、直径11mm、厚み1mmのZn電極の容量と一致させた。3つのNi電極板を、膨張Ni箔(Dexmet)で包んだ。Ni電極用の集電体は、同じ膨張Ni箔(Dexmet)であった。セルの組立およびサイクルの前に、11重量%Ca(OH)
2が懸濁した6MのKOH/1MのLiOHの溶液をZnスポンジに真空浸透させたのに対し、6MのKOH/1MのLiOHの溶液をセパレータのアセンブリおよびNi電極に浸透させた。アノードにCa(OH)
2が存在すると、亜鉛酸塩の溶解度が減少し、それによって、形状変化を低減することに役立つ(Parker(2016))。Znスポンジ電極は、長期サイクルの間、厚みが0.5~1mmであった。
【0045】
Ni-Znセルを調製するために、多孔性電極およびセパレータの体積とほぼ等しい体積の電解質を使用し、その体積の電解質はセパレータおよび電極の細孔に留まった。Ni-Znセルを、20mAcm
geo
-2で放電し、1.25~1.94Vで、10mAcm
geo
-2で充電した。連続充電中に、1.94Vに到達したなら、1.94Vの定電圧充電が始まり、一定の充電容量を確保した。定電圧充電が5時間後に所望の容量に達しなかったなら、放電が始まり、容量減衰が後のサイクルに起こった。高レートサイクルを開始する前に、5mAcm
geo
-2での充放電を、個々の新しいNi電極およびセパレータのアセンブリのならし運転手順として使用した(
図17)(Parker(2017))。
【0046】
Znスポンジの電極容量、強度および大型化可能性の増加
銀-亜鉛(Ag-Zn)セル(
図14)におけるZn
2.8の完全な放電は、10mAcm
geo
-2(スポンジの幾何学的面積当たり)で供給される1712±144mAhcm
Zn
-3(スポンジの1立方センチメートル当たり)の体積容量に達する。対照的に、Zn
2.1は、同じ条件下で490±96mAhcm
Zn
-3に達する(
図10)。Zn
2.1からZn
2.8への体積容量の3.5倍の増加は、重量容量およびスポンジ密度の両方における差により発生する。1.2Vまでの放電後、Znスポンジ電極のグラム当たりのZn
2.8およびZn
2.1の重量容量(つまり、浸潤した電解質ではなくZn、ZnOの質量)は、それぞれ605±47mAhg
Zn
-1および232±45mAh
gZn
-1である(
図11)。体積容量を算出するために、重量容量にスポンジ密度を乗じ、それにより、Zn
2.8およびZn
2.1スポンジ間の体積密度性能のギャップをさらに広げる。Zn
2.8スポンジは、Zn
2.8の体積-表面積比がより高いために、同じ焼成手順でZn
2.1より高い重量容量を有し、それは、焼成の間にZnOに転換するZnの量を制限する。この主張はX線粉末回折(XRD)分析で支持され、この分析は、Zn
2.8およびZn
2.1がそれぞれ70および50%のZnから構成され、残部がZnOであることを示す(
図18)。焼成パラメーターを改変することによって、Zn
2.1の重量容量を増加してZn
2.8の重量容量と一致させることができるが、Zn
2.8スポンジは、まだより高い体積容量を有するであろう。
【0047】
薄いシート電極として使用されるZnスポンジの大きさの限界を定量するために、Zn
2.8およびZn
2.1についてそれぞれ1.06±0.24MPaおよび0.27±0.14MPaの引張強度(
図15)、5.86±0.79MPaおよび1.56±1.06MPaの圧縮強度(
図16)を測定した(
図3)。引張強度は直径圧縮試験(Berenbaum(1959);Fahad(1996))を使用して、圧縮強度は一軸圧縮試験を使用して測定した。Zn
2.8はZn
2.1より密度が高いので、Eq.1によって予測されるように、Zn
2.8スポンジはZn
2.1より強い。Zn
2.1からZn
2.8へのスポンジ密度の34%の増加は、引張強度の293%の増加につながる。
【0048】
大型化した実用的な電極サイズは、Zn
2.8およびZn
2.1スポンジについてそれぞれ10×10×0.2cmおよび4.6×4.6×0.2cmと算出される(
図5)。Zn
2.8スポンジは、Zn
2.8のより高い引張強度のために、Zn
2.1より大きな幾何学的面積を支持する(
図4)。大きなZn
2.8電極は、複数の電池セルを直列および/または平行に接続しなければならない電池システムのための、より少ない包装の使用を可能にする。電極が正方形のシートであると仮定して、片持ちスポンジ板がそのエッジの1つに締め止めされ、曲がることによって引き起こされる許容引張強度の半分を受けるように、実用的な電極の辺の長さを、電極の厚みの関数として算出する(Beer(2009))。Znスポンジは、圧縮より引張下で破損しやすいので、圧縮強度ではなく引張強度を制限パラメーターとして使用する(
図3)。実用的な電極の辺の長さ(L)は、Eq.2に示されるように、引張強度(σ
T)、電極の厚み(h)、この目的では2に等しい安全率(f)、スポンジ密度(ρ)、および重力加速度(g)の関数である。
【0049】
Ni-ZnセルにおけるZn
2.8スポンジの再充電可能容量およびサイクル寿命
Zn
2.8スポンジは、ニッケル-亜鉛(Ni-Zn)セルにおいて、文献(Parker(2017))で報告された最も高い換算値よりも102%大きい再充電可能体積容量に達し、150サイクルで100%近いクーロン効率で928mAhcm
Zn
-3であり(
図19および20)、重量容量は328mAhg
Zn
-1であった。セルを20mAcm
geo
-2で放電し、10mAcm
geo
-2で充電した。容量減衰は、採取されたNi電極に主として起因する。51サイクル後、体積放電容量は、サイクル中に急激に低下した(
図20)。このとき、セルを開いたところ、セパレータのアセンブリが黒色になっていたが、Ni電極は、電解質で十分水和されているようであった。Ni電極を、高いサイクル率および放電深度のためにおそらく設計されていない市販(Panasonic)ニッケル水素(Ni-MH)単三型電池から採取し、Znスポンジ電極を試験するために使用した。
【0050】
Ni電極は、サイクル中に材料を剥離し、セル破損につながる可能性がある。この仮説を試験するために、容量減衰が開始したら、Ni電極および汚れたセパレータのアセンブリを新しいバージョンと取り替えた(
図20)。交換ごとに、容量およびクーロン効率は回復し、これは、Zn電極は充分機能しているが、Ni電極および/またはセパレータのアセンブリに不具合があることを示している。充分に充電されないNi電極は、Znスポンジに、その意図された充電状態を越えて放電することを余儀なくさせる。サイクルに利用可能な活物質量のこの増加するミスマッチは、328mAhg
Zn
-1を要求し続けるので、サイクル寿命を最終的に短縮する。この大きくなるアンバランスは、Ni電極およびセパレータの各交替後に観察されるサイクル寿命の回復の減少を説明する。樹枝状結晶は、150サイクル後にZnスポンジ電極上に観察されなかった(
図20および21)。
【0051】
実用的な正方形電極の辺の長さの算出
分布荷重(w)を備えた長さ(L)の片持ち角柱梁によって受けた最大モーメント(Mmax)はwL2/2である(Stock et al.(2019).Benchmarking anode concepts:The future of electrically rechargeable zinc-air batteries.ACS Energy Lett.4,1287-1300)。分布荷重が、幅(b)、厚み(h)、密度(ρ)および重力加速度(g)と梁自体の重量によって引き起こされるならば、最大モーメントはEq.3で表される。
Mmax=(ρghbL2)/2 Eq.3
【0052】
最大モーメント(σmax)を受ける角柱梁の最大応力(Mmax)は、Eq.4で表される。
σmax=6Mmax/bh2 Eq.4
【0053】
Eq.3をEq.4に代入すると、Eq.5となる。
σmax=3ρgL2/h Eq.5
【0054】
この研究について、Znスポンジは、片持負荷状態のための圧縮においてよりも引張において破損しやすく、したがって、引張強度(σT)を、最大応力の代わりに用いることができる。また、長さについて解く場合にEq.5をEq.2に変換する安全率(f)が望まれる。
【0055】
亜鉛3.3-スポンジの合成
グリーン手順を使用して作製されたZnスポンジは、以前に報告された従来のコストが非常に高いCMCを使用して合成されるZn2.8スポンジと同様またはより優れた性能を生じる(Hopkins et al.(2020)Energy Storage Mater.27,370-376)。2.8スポンジは、密度が2.83±0.09gcm-3である。グリーン合成を使用して作製されたZnスポンジは、密度がより高い3.26±0.10gcm-3であり、「Zn3.3」と呼ばれる。Znスポンジの密度、したがって性能は、多かれ少なかれポロゲンをZnペースト混合物に添加することによって調整することができる。
【0056】
カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム塩(MilliporeSigma,CAS#9004-32-4)としても知られている高粘度(1500-3000cP、25℃のH
2O中で1重量%)セルロースガムの質量0.120±0.001gを脱イオン水10.5mLに添加した。この混合物を手で5分間ボルテックスし撹拌した。コーンスターチ(Argo 100%純粋コーンスターチ)の質量2.400±0.001gを混合物に添加し、手で2分間撹拌しながらボルテックスした。Zn粉末(EverZinc)の質量120.00±0.01gを混合物に添加し、2分間撹拌しボルテックスした。50μmの平均直径を備えたほぼ中実の球状粒子から構成された亜鉛粉末(<75μmの粒子89.2%および>250μmの粒子0%、ビスマス307ppmおよびインジウム307ppmを含む)を使用した。この混合物を型キャビティに押圧した。Znペーストをキャビティ内に放置して、60℃で一晩乾燥した。型をDELRIN(登録商標)アセタール(POMとしても知られているポリオキシメチレン)から機械加工した。型が温かい場合、乾燥Znペーストプリフォームを離型するのが最も簡単だった。さらに、無塩バターは、Znペーストを型に押圧する前に適用することができる離型剤の機能を果たすことができる。その後、プリフォームを、
図2に示された焼成メッシュに移動し、以前に報告されたように管状炉において加熱した(Hopkins(2020).Energy Storage Mater.)。焼成の第1部分はN
2下で行った。367分後、温度を上昇させ(
図23)、空気を管状炉に送った。より持続可能なスポンジを作製するために、ビスマスおよびインジウムを除去することができ、またアルカリ性電解質が望まれる場合、ゲルまたは高分子電解質を腐食抑制に役立てることができる。ドープZn粒子を、研究所の便宜上使用した。
【0057】
直径および一軸圧縮試験
直径および一軸圧縮試験を1mm/分の一定の変位を使用して行った。圧搾プレートの表面は滑沢化しなかった。両方の試験において使用される円筒状試料の直径は11.5mmで、一軸圧縮および直径圧縮については厚みが4mmであった。
【0058】
電池セルの製造
以前に報告されたようにして、銀-ZnおよびNi-Znセルを組み立てた(Hopkins(2020))。亜鉛-空気セルには、Zn電極側の錫箔集電体、および空気吸い込み電極側のプラチナまたはニッケル線集電体を使用した。電解質は9MのKOHであった。CELGARD(登録商標)3501の1つの層をZn電極側に、700/28フロウデンベルグセパレータの1つの層を空気吸い込み電極側に設置した。研究所の便宜上、スズおよびプラチナを集電体として使用したが、より持続可能な選択肢が利用可能である。例えば、Znまたはカーボン系集電体をZn電極に使用することができ、Ni集電体を空気吸い込み電極に使用することができる。この作業で報告した電池セルはすべて、電解質0.3~0.4mLを用いた。
【0059】
空気吸い込み電極の製造
空気吸い込み電極を、触媒層、ニッケル発泡体集電体およびガス拡散層(GDL)を備えた層状プレスペレットとして製造した。触媒層は、Ni2FeOxエアロゲルおよびMnOxエアロゲルの50/50重量%触媒混合物、導電性成分としてのアセチレンブラックカーボン(Cabot)、およびPTFEバインダー(水中に60重量%分散)からなり、触媒/導電性カーボン/PTFEを20/65/15重量比で使用した。Ni2FeOxとMnOxのエアロゲルを製造するために使用される方法は、文献(Ko et al.(2017)Langmuir,33,9390-9397;Ko et al.(2018).J.Electrochem.Soc.165,H777-H783)において報告されている。Ni2FeOxエアロゲルを、触媒層中への取り込みの前に、2℃/分の傾斜で、4時間Ar流中で275℃で加熱した。クリプトメラン型MnOxを、2℃/分の傾斜で、4時間空気中で300℃でか焼した(Yang et al.(2016)Sci.Adv.2,e1501122)。
【0060】
空気吸い込み電極触媒層を調製するために、めのうボールミル中で、Ni2FeOx0.05gおよびMnOx0.05gを、めのうミル媒体13.5gと共に、カーボン0.33g、60重量%PTFE水分散液0.127gおよび水5mLと混合した。混合物を、3回の15分間のインターバルで、300rpmでフリッチュ・プルベリゼット7のミルで粉砕し、各インターバルの間に5分間静置した。得られた混合物を、媒体およびミルを洗浄するためにエタノールを使用してビーカーに集め、次いで、静的空気中で70℃で一晩乾燥して複合粉を生成した。GDLを、アセチレンブラックのPTFEに対する重量比を70/30として、同様の方法で調製した。乾燥複合触媒層およびGDLを0.050g部分に秤量し、ニッケルメッシュを1cm2ダイ中で2つの部分の間に挟んだ。複合物を20.7MPaで1分間押圧して、0.8mmの厚みの円形ガス拡散電極を形成した。
【0061】
市販のコーンスターチを、その粒径および燃え尽きのプロファイルの理由により、高分子樹脂のポロゲン代用品として選択した。コーンスターチ粒子は、直径が10μmであり、CMC高分子-分岐樹脂の太さとほぼ同じサイズである(
図24および25)。対照的に、Zn粒子の平均サイズは直径が50μmである。コーンスターチは、熱重量分析によって確認されたように、Znスポンジ合成に使用される焼成手順で燃え尽きる(
図23)。焼成後、CMC残留物は16%残り、一方、コーンスターチ炭化物は4%のみ残っている(
図23)。炭素質残留物がスポンジの細孔を塞ぐ可能性があり、使用可能な容量および電力を低減する可能性があるので、Znスポンジ中のより高い割合のポロゲン炭化物は望ましくない。他の食品系ポロゲンまたは食品廃棄物ポロゲンは適切であり得る。例えば、Zn
3.3スポンジの初期のプロトコルでは、ボールミル粉砕された使用済みコーヒーかすが適切なポロゲン機能を果たすことが分かったが、前処理を避けるために市販のコーンスターチを使用した。
【0062】
コーンスターチが望ましいサイズおよび燃え尽き特性を満足することを確認した後、Zn
2.8およびZn
3.3スポンジが、0.13mLg
-1の同等の全細孔容積、および水銀圧入ポロシメトリを使用して決定して10μmを中心とする細孔径分布(
図26)を有することが分かった。両方の細孔径分布が10μmでピークに達するということは、ポロゲンの特徴的寸法がスポンジ中の細孔径に影響することを示唆する。Zn
2.8およびZn
3.3スポンジはまた、約50%の同等の気孔率を有する。ポロゲンを添加しないならば、Zn粒子は融着して僅かに多孔性のZn円筒体を形成する。
【0063】
Zn
3.3スポンジの機械的および電気化学的性能
Zn
3.3スポンジの性能が以前に試験したZn
2.8スポンジに類似するまたはそれより優れていることを確保するために、機械的特性を測定したところ、Zn
2.8およびZn
3.3スポンジは、1.1±0.2MPaおよび1.2±0.2MPaの同等の引張強度(
図27)、および7.6±0.2MPaおよび7.1±2.0MPaの圧縮強度(
図28)をそれぞれ有することが分かった(Ashby et al.(2000).Metal Foams:A Design Guide,Elsevier)。
【0064】
銀-亜鉛(Ag-Zn)セルにおける電力性能を比較し、1mmの厚みのZn
2.8およびZn
3.3スポンジが、134±8mWcm
geo
-2および199±6mWcm
geo
-2のピーク電力(幾何学的表面積当たり)をそれぞれ達成することが分かった(
図29および30)。銀電極はZnスポンジの高レート性能と調和し得るので、Ag-Znセルを使用した。Zn
3.3のより高い電力は、主として、そのより薄いZnOシェルに起因する。水銀圧入ポロシメトリを使用して、Zn
2.8およびZn
3.3スポンジは、412MPaの絶対圧で3.9および4.0m
2g
-1のそれぞれの比表面積を有していることが分かった。Zn
3.3スポンジは、Zn
2.8よりも、酸化亜鉛に対してZnのより高い比(Zn:ZnO)を有している(X線回折(
図31)を使用して決定される)。Zn含有量は、Zn
2.8およびZn
3.3についてそれぞれ72および78%であり、残りの割合はZnOである。これらのデータは、Zn
3.3が、より薄いZnOシェル、およびスポンジの体積の全体にわたる金属Znのより大きな断面積を有し、それはより高い電子伝導性を可能にすることを示唆する。コーンスターチ由来のZn
3.3スポンジは、また、その表面でより少ない不動態化ポロゲン性残留物を有する(
図23)。4.0m
2g
-1の比表面積は、スポンジでの腐食反応を制限し、1年当たり1%の最小自己放電率を生じる(Hopkins(2020).Energy Storage Mater.)。測定された腐食率は一部分において低く、なぜならば、電解質の大部分がZnスポンジの細孔に貯蔵され、亜鉛酸塩で速く飽和され、このことが腐食を遅くするためである。
【0065】
Zn
3.3スポンジが樹枝状結晶抑制能力を保つことを確認するために、Zn
3.3スポンジを、20mAcm
geo
-2で、セルにおけるZn元素の総量に対して10%の放電深度(DOD
Zn)へ100サイクル、Ni-Znセルにおいてサイクルした(
図32)。樹枝状結晶は、このサイクル手順後にSEMによって観察されなかった(
図33)。樹枝状結晶を生じることが示された電流密度を超える広範囲の電流密度でセルを充電する場合でさえ(Ko(2018))、0.002mAcm
act
-2(スポンジの実際の表面積当たり)の低い局所電流密度は、樹枝状結晶の形成を抑制する。
【0066】
その後、Zn
3.3スポンジを、持続可能な電池のなかでコストが最も低くエネルギー密度が最も高いと予測されるZn-空気セルにおいて試験した。エアロゲル系電極触媒(Ni
2FeO
xおよびMnO
2)を含む二機能空気吸い込みカソードに対し、10mAcm
geo
-2で33.4mAhcm
geo
-2へ16サイクル、スポンジをサイクルすることは、以前に報告された研究の大部分に対して3200%の再充電可能面積容量増加を生じる(
図34および表1)。このサイクル容量は21%のDOD
Znに位置し、このサイクル容量では、セルにおいて0.3~0.4mLの電解質体積を使用して樹枝状結晶は観察されなかった(
図35)。
【0067】
【0068】
少ないハイリスクの元素を含む空気吸い込み電極を使用する報告書に由来するこれらの文献値を、これらのデータから除外する。高いサイクルカウントを示す最も報告されているZn-空気セルは、技術的に関連する値(Parker et al.(2018).Joule.2,2519-2527)11.7mAhcmgeo
-2をはるかに下回る1mAhcmgeo
-2に近い面積容量でそのようにする。これらの低容量は、そのような研究において一般に使用される亜鉛箔または粉末複合電極の劣った再充電可能面積容量に部分的に起因する。面積容量についての技術的関連を達成した2つの報告されたZn-空気電池は、30および90時間作動したが、これらの報告書は触媒設計に注目しているので、DODZnおよび電解質の体積に関連した詳細は含まれていなかった(表1、上の2行)。両方のパラメーターは、Zn-空気セルの実用性を評価するために要求される。対照的に、本明細書で報告するZn-空気セルは、容量損失の前に107時間持続し、実用的な量のZnおよび電解質を使用する。正極の性能が改善するとともに、Zn3.3スポンジ電極は、持続可能で、再充電可能で、エネルギー高密度の電池への道を開く。
【0069】
以上の教示を参照することにより、多くの改変または変形が可能であることが明らかである。したがって、具体的に記載したもの以外に、請求項に記載の主題が実施され得ると理解されるべきである。例えば冠詞「a」、「an」、「the」、または「said」を使用する単数形での請求項構成要素への言及は、構成要素を単数形に限定するものとして解釈されるものではない。
なお、本願出願当初の特許請求の範囲に記載の発明の内容について、以下付記する。
[付記1]
水、
混合物の粘度を増加させる可溶性化合物、
不溶性ポロゲンおよび
金属亜鉛粉末
を含む混合物を形成すること、
前記混合物を型内に設置してスポンジを形成すること、
任意選択で前記スポンジを乾燥すること、
前記スポンジを、亜鉛粒子が互いに融着する温度で、不活性雰囲気中で加熱して、焼結スポンジを形成すること、ならびに
前記焼結スポンジを、前記焼結スポンジの表面上にZnOを形成する温度で、酸素含有雰囲気中で加熱することを含み、
加熱ステップは前記ポロゲンを焼き尽くす、方法。
[付記2]
前記混合物はさらに有機液体を含む、付記1に記載の方法。
[付記3]
前記可溶性化合物は水溶性カルボキシメチルセルロース樹脂である、付記1に記載の方法。
[付記4]
前記ポロゲンは不水溶性カルボキシメチルセルロース樹脂である、付記1に記載の方法。
[付記5]
前記ポロゲンはコーンスターチである、付記1に記載の方法。
[付記6]
前記加熱ステップは、金属メッシュ内の実質的にすべての開口を空気が流れるように位置する前記金属メッシュ内に前記スポンジを置いて行われる、付記1に記載の方法。
[付記7]
前記メッシュは円筒形状であり、
前記メッシュは基板上に水平に設置され、前記基板は、前記メッシュの長さに沿う最大でも2本の線で前記メッシュに接触している、付記6に記載の方法。
[付記8]
前記スポンジを不活性雰囲気中で加熱することが、200~420℃のピーク温度で行われる、付記1に記載の方法。
[付記9]
前記焼結スポンジを酸素含有雰囲気中で加熱することが、420~700℃のピーク温度で行われる、付記1に記載の方法。
[付記10]
付記1に記載の方法によって作製された亜鉛電極。
[付記11]
密度が少なくとも1.0gcm
-3
である、付記10に記載の亜鉛電極。
[付記12]
99重量%以下のZnOを含む、付記10に記載の亜鉛電極。
[付記13]
アノード集電体と、
前記アノード集電体と電気的に接触する付記10に記載の亜鉛電極と、
電解質と、
カソード集電体と、
前記アノード集電体と電気的に接触するカソードと、
前記亜鉛電極と前記カソードとの間のセパレータと
を備える、電気化学セル。
[付記14]
亜鉛粒子およびポロゲンを含むスポンジを準備すること、
前記スポンジを、金属メッシュ内の実質的にすべての開口を空気が流れるように位置する前記金属メッシュ内に設置すること、
前記スポンジを、亜鉛粒子が互いに融着する温度で、不活性雰囲気中で加熱して、焼結スポンジを形成すること、
前記焼結スポンジを、前記焼結スポンジの表面上にZnOを形成する温度で、酸素含有雰囲気中で加熱することを含み、
加熱ステップは前記ポロゲンを焼き尽くす、方法。
[付記15]
前記メッシュは円筒形状であり、
前記メッシュは基板上に水平に設置され、前記基板は、前記メッシュの長さに沿う最大でも2本の線で前記メッシュに接触している、付記14に記載の方法。
[付記16]
前記スポンジを不活性雰囲気中で加熱することが、200~420℃のピーク温度で行われる、付記14に記載の方法。
[付記17]
前記焼結スポンジを酸素含有雰囲気中で加熱することが、420~700℃のピーク温度で行われる、付記14に記載の方法。
[付記18]
前記焼結スポンジを加熱することにより、99重量%以下のZnOを含む亜鉛電極を製造する、付記17に記載の方法。
[付記19]
亜鉛粒子およびポロゲンを含むスポンジを準備すること、
前記スポンジを不活性雰囲気中で200~420℃のピーク温度で加熱して前記亜鉛粒子を互いに融着して焼結スポンジを形成すること、
前記焼結スポンジを酸素含有雰囲気中で420~700℃のピーク温度で加熱して前記焼結スポンジの表面上にZnOを形成すること
を含み、
加熱ステップは前記ポロゲンを焼き尽くす、方法。
[付記20]
前記焼結スポンジを加熱することにより、99重量%以下のZnOを含む亜鉛電極を製造する、付記19に記載の方法。