(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】金属検出機
(51)【国際特許分類】
G01V 3/10 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
G01V3/10 G
(21)【出願番号】P 2020207513
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-11-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・販売日 令和 2年 3月 3日 ・販売した場所 株式会社サンコウ電子研究所 東京都千代田区神田2-6-4柴田ビル2階
(73)【特許権者】
【識別番号】000110952
【氏名又は名称】ニッカ電測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 亨
(72)【発明者】
【氏名】手塚 俊章
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-291420(JP,A)
【文献】特開2019-027985(JP,A)
【文献】特開2018-189533(JP,A)
【文献】特開2007-127600(JP,A)
【文献】特開2012-063259(JP,A)
【文献】特開2011-163886(JP,A)
【文献】特開2012-052927(JP,A)
【文献】特開平05-002082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/10~3/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査物に含まれる金属異物を帯磁させ、又は前記検査物が通過する空間に磁場を生じさせる磁石と、
前記検査物が移動する中空部を挟んで前記磁石と対向し、前記金属異物による磁束密度の変化による誘導起電力を発生するコイルを有する検知部を備えた金属検出機において、
前記検知部は、前記コイルを前記検査物の移動方向と直交する方向に複数
上下に重ねて配置し、
前記コイルにより外乱ノイズを打ち消した検出信号を得ることを特徴とする金属検出機。
【請求項2】
請求項1に記載された金属検出機であって、
前記検知部は、前記コイルを同一軸心状に複数重ねて配置したことを特徴とする金属検出機。
【請求項3】
請求項1に記載された金属検出機であって、
前記検知部は、複数重ねた前記コイルの軸心を偏心させて千鳥配置したことを特徴とする金属検出機。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1に記載された金属検出機であって、
前記検知部は、前記コイル内に鉄心を配置したことを特徴とする金属検出機。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1に記載された金属検出機であって、
前記検知部は、前記コイルをボビンに巻き付けたことを特徴とする金属検出機。
【請求項6】
請求項2ないし請求項2
を引用する場合の請求項4及び5のいずれか1に記載された金属検出機であって、
前記検知部は、同一軸心状に複数重ねた前記コイルを同じボビンに巻き付けたことを特徴とする金属検出機。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1に記載された金属検出機であって、
前記検知部は、前記コイルを同一形状としたことを特徴とする金属検出機。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1に記載された金属検出機であって、
前記検知部は、複数重ねたコイル間で差又は和をとり検出信号を得る、又は前記コイルからの信号を回路上で差又は和をとり検出信号を得る信号検知部に接続したことを特徴とする金属検出機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の検査物に混入した針などの金属異物を検出する金属検出機に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類等の検査物に混入した針などの金属異物を永久磁石などで帯磁させ、または金属異物が永久磁石などで形成される磁場内を通過することによる磁束密度の変化を検出する方法を用いた金属検出機がある。
図7は従来の金属検出機の説明
図1である。金属検出機1Aは、永久磁石2と、鉄心3にコイル4を巻き回した検知部材5を検査物の搬送路を間に挟んで対向するように配置している。検知部材5は同一平面上に複数並べて配置している(例えば特許文献1の
図1、特許文献2の
図7、特許文献3の
図13に開示有り)。このような構成の金属検出機1Aは、検知部材5と永久磁石2の間に検査物を移動させる。検査物に金属異物が混入していると、永久磁石2のN極とS極間に発生した磁力線によって形成される磁場内を金属異物が通過することで磁場変動が生じ、検知部材5の鉄心3に入力される磁界に変動が生じ、磁界の変動による誘導起電力がコイル4に発生し、金属異物の検出信号として取り出せる。このときコイル4同士で差分を取ることで外乱によるノイズへの耐性を向上させている。
【0003】
しかしながら、コイル4の検出性能を高めるために単位長さ当たりの巻き数を多くすると、コイル4の厚みよりも外径が大きくなることがある。同一平面上に配置された(性能向上のため巻き数を多くして外径が大きくなった)コイル同士は検出機の設置位置及びノイズ源の位置によって各コイル4からノイズ源までの距離に明確な差が生じてしまう。この場合、ノイズの原因となる磁束密度の変化量は距離によって増減することから、特に同一平面にノイズ源がある場合には各コイル4が受けるノイズに差が生じてしまうため、差分を取った後もノイズが残ってしまいS/N比(信号雑音比)の低下につながっていた。
【0004】
図8は従来の金属検出機の説明
図2である。金属検出機1Bは永久磁石2に突設した鉄心3に一層ずつコイル4を巻き回した検知部6A,6Bを検査物の通路の上下に配置している(例えば特許文献2の
図6、特許文献3の
図2に開示有り)。このような構成の金属検出機1Bは、検査物が移動する通路を挟んで検知部6A,6Bを対向させてそれぞれの鉄心3を同心状に配置して検知部6A,6Bを通る磁束が直線状となるようにしているので、均一の検出能力を有し、検出感度に差異が生じることを防止できる。
【0005】
しかしながら、帯磁部(永久磁石)の磁束の向きなどの影響を受け易く、金属異物の検出時の波形、外乱によって発生したノイズ波形、振動によって発生したノイズ波形の向きの組合せが通路を挟んで上層のコイル(検知部6A)と下層のコイル(検知部6B)で全て同じ向き又は全て逆向きのどちらかにならない。そのため、上層コイルと下層コイル間で差分を取った場合にはいずれかに対して弱くなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-291420号公報
【文献】特開10-121370号公報
【文献】特開2006-113043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、外乱によるノイズに対するS/N比を改善した金属検出機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、検査物に含まれる金属異物を帯磁させ、又は前記検査物が通過する空間に磁場を生じさせる磁石と、
前記検査物が移動する中空部を挟んで前記磁石と対向し、前記金属異物による磁束密度の変化による誘導起電力を発生するコイルを有する検知部を備えた金属検出機において、
前記検知部は、前記コイルを前記検査物の移動方向と直交する方向に複数上下に重ねて配置し、前記コイルにより外乱ノイズを打ち消した検出信号を得ることを特徴とする金属検出機を提供することにある。
上記第1の手段によれば、外乱によるノイズに対するS/N比を改善できる。
また外乱に対して強くなり、従来ノイズの影響を受けるために設置できなかった様々な場所で機械を設置することができる。
さらに外乱によって誤作動が起きる可能性が減ることによって検査精度が上がり効率的な検査ができる。
同一軸心のため位相差がなく、振動などのノイズ信号を効率良く打ち消すことができる。また検出信号、ノイズ信号に時間差などの誤差が発生し難くなる。
コイル近傍を通過する金属異物によって発生する局所磁場による影響は、千鳥配置によるコイルの位相差によって同じタイミングで発生する磁気の変化による信号に大きな差が生じる。このため、検出信号が打ち消されることが低減できる。
遠方より入力される外乱の一様磁場では、千鳥配置によるコイルの位相差の影響は小さくなり、良好なノイズの打ち消しが可能であり、その結果、S/N比の向上を見込むことができる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記検知部は、前記コイルを同一軸心状に複数重ねて配置したことを特徴とする金属検出機を提供することにある。
上記第2の手段によれば、同一軸心のため位相差がなく、振動などのノイズ信号を効率良く打ち消すことができる。また検出信号、ノイズ信号に時間差などの誤差が発生し難くなる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1の手段において、前記検知部は、複数重ねた前記コイルの軸心を偏心させて千鳥配置したことを特徴とする金属検出機を提供することにある。
上記第3の手段によれば、コイル近傍を通過する金属異物によって発生する局所磁場による影響は、千鳥配置によるコイルの位相差によって同じタイミングで発生する磁気の変化による信号に大きな差が生じる。このため、検出信号が打ち消されることが低減できる。
遠方より入力される外乱の一様磁場では、千鳥配置によるコイルの位相差の影響は小さくなり、良好なノイズの打ち消しが可能であり、その結果、S/N比の向上を見込むことができる。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第1ないし第3のいずれか1の手段において、前記検知部は、前記コイル内に鉄心を配置したことを特徴とする金属検出機を提供することにある。
上記第4の手段によれば、ボビンの中心が中空のコイルと比べて、コイルを通過する磁束密度が上がるため、より遠方にある又はより微小な金属異物を検出することが可能となる。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、第1ないし第4のいずれか1の手段において、前記検知部は、前記コイルをボビンに巻き付けたことを特徴とする金属検出機を提供することにある。
上記第5の手段によれば、コイルの巻き付けに適した形状のボビンにコイルを巻き付けてボビンの中心に鉄心を配置することにより、鉄心に直にコイルを巻き付ける構成と比べて、コイルの形状及びコイルの特性を揃えることができる。また製造工程の簡略化及び製造コストの低廉化を図ることができる。
【0013】
本発明は、上記課題を解決するための第6の手段として、第2ないし第2を引用する場合の第4及び5のいずれか1に記載された金属検出機であって、前記検知部は、同一軸心状に複数重ねた前記コイルを同じボビンに巻き付けたことを特徴とする金属検出機を提供することにある。
上記第6の手段によれば、振動発生時に複数重ねた(上下の)コイルが同様に振動するようになり、発生する振動ノイズも同様の波形となり打ち消すことが可能となり、S/N比の向上を見込むことができる。
また複数重ねたコイルの構成と比べて、ボビンの数を半減でき製造コストの低廉化を図ることができる。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するための第7の手段として、第1ないし第6のいずれか1の手段において、前記検知部は、前記コイルを同一形状としたことを特徴とする金属検出機を提供することにある。
上記第7の手段によれば、複数のコイル間で性能のムラを小さくできる。このため検出信号のバラつきを小さくできる。またコイル製造の管理コストを下げることができる。
【0015】
本発明は、上記課題を解決するための第8の手段として、第1ないし第7のいずれか1の手段において、前記検知部は、複数重ねたコイル間で差又は和をとり検出信号を得る、又は前記コイルからの信号を回路上で差又は和をとり検出信号を得る信号検知部に接続したことを特徴とする金属検出機を提供することにある。
上記第8の手段によれば、複数重ねた(上下の)コイル間で差又は和をとり検出信号を得る、又は複数重ねた(上下の)コイルからの信号を回路上で差又は和をとり検出信号を得ることによって外乱ノイズを打ち消すことができ、S/N比の向上を見込むことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、外乱によるノイズに対するS/N比を改善できる。
また外乱に対して強くなり、従来ノイズの影響を受けるために設置できなかった様々な場所で機械を設置することできる。
さらに外乱によって誤作動が起きる可能性が減ることによって検査精度が上がり効率的な検査ができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】上下2層のコイルの軸心を偏心させて千鳥配置した金属検出機の説明図である。
【
図4】上下2層コイルとノイズ源の配置説明図である
【
図5】外乱と異物検出時のコイル波形の説明図である。
【
図6】外乱と異物検出時の波形サンプルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の金属検出機の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0019】
[金属検出機10]
図1は、本発明の金属検出機の構成概略図である。なお紙面と直交する方向が検査物の移動方向となり、紙面の上下方向が移動方向と直交する方向となる。図示のように本発明の金属検出機10は、検査物に含まれる金属異物を帯磁させ、又は前記検査物が通過する空間に磁場を生じさせる磁石20と、前記検査物が移動する中空部12を挟んで前記磁石20と対向し、前記金属異物による磁束密度の変化による誘導起電力を発生するコイル32を有する検知部30を備えた金属検出機10において、前記検知部30は、前記コイル32を前記検査物の移動方向と直交する方向に複数重ねて配置した構成としている。より具体的には、検査物をベルトコンベアで移動する中空部12をケーシングの中心に配置し、中空部12の上方の上側ヘッド14に上層及び下層の2層のコイル32と、中空部12の下方の下側ヘッド16に磁石20を配置している。
【0020】
(コイル32)
上側ヘッド14には複数のコイル32を取り付けている。コイル32はボビンに巻き回して筒状に形成されている。
コイル32は単位長さ当たりの巻き数を多くするために厚みよりも外径を大きく(外径>>厚み)形成して上下の差分を取る際に最適な形状にしている。
ボビンの中心には鉄心34を取り付けている。これによりボビンの中心が中空のコイルと比べて、コイル32を通過する磁束密度が上がるため、より遠方にある又はより微小な金属異物を検出することが可能となる。
このようにコイル32の巻き付けに適した形状のボビンにコイル32を巻き付けてボビンの中心に鉄心34を配置することにより、鉄心に直にコイルを巻き付ける構成と比べて、コイル32の形状及びコイル32の特性を揃えることができる。また製造工程の簡略化及び製造コストの低廉化を図ることができる。
【0021】
図1に示すコイル32は、検査物の移動方向と直交する方向(検出機の上下方向)に上層及び下層からなる2層構造とし、検査物の移動面に沿って3個並べて配置し、合計6個取り付けている。また上下2層のコイル32は鉄心34の軸心を同心状、換言するとコイル32を同一軸心状に配置している。このような構成により、コイル32の検出信号又はノイズ信号に時間差などの誤差を発生し難くして低減できる。
この他、上下2層のコイル32の鉄心34の軸心を偏心(ずらして)させて千鳥に配置することもできる。
図2は上下2層のコイルの軸心を偏心させて千鳥配置した金属検出機の説明図である。このような構成により、コイル32近傍を通過する金属異物によって発生する局所磁場による影響は、千鳥配置によるコイル32の位相差によって同じタイミングで発生する磁気の変化による信号に大きな差が生じる。このため、検出信号が打ち消されることが低減できる。
遠方より入力される外乱の一様磁場では、千鳥配置によるコイル32の位相差の影響は小さくなり、良好なノイズの打ち消しが可能であり、その結果、S/N比の向上を見込むことができる。
【0022】
上下2層のコイル32の鉄心34の軸心を同心状(コイル32を同一軸心状)に配置した場合には、同じボビンに巻き付けることも可能である。
これにより振動発生時に複数重ねた(上下の)コイルが同様に振動するようになり、発生する振動ノイズも同様の波形となり打ち消すことが可能となり、S/N比の向上を見込むことができる。また複数重ねたコイルの構成と比べて、ボビンの数を半減でき製造コスト低廉化を図ることができる。
また複数重ねたコイル32の形状は同一形状としてもよい。これにより、複数のコイル間で性能のムラを小さくできる。このため検出信号のバラつきを小さくできる。またコイル製造の管理コストを下げることができる。
【0023】
(磁石20)
下側ヘッド16には磁石20を取り付けている。磁石20は検査物の搬送面の幅方向(検査物の移動方向と直行する方向)に跨るように取り付けた板状の永久磁石である。
本実施形態の磁石20は検査物に含まれる金属異物を帯磁させ、又は前記検査物が通過する空間に磁場を生じさせる構成、検査物に含まれる金属異物を帯磁させ、及び前記検査物が通過する空間に磁場を生じさせる構成のいずれかの形態をとり得る。
【0024】
(信号検知部40)
検知部30は、複数重ねたコイル間で差又は和をとり検出信号を得る、又は前記コイルからの信号を回路上で差又は和をとり検出信号を得る信号検知部40に接続している。
図3は信号検知部の説明図である。
図3(1)に示す信号検知部40は、コイル結線で複数重ねたコイル間の差又は和をとる構成を示している。
検知部30での上層及び下層コイル32A,32Bが同じコイル同士で逆方向に接続した場合、コイル間で差をとり(打ち消し合い)、信号検知部40によりフィルタなどを介して検出信号を得ている。
また検知部30での上層及び下層コイル32A,32Bが逆巻きコイルで順方向に接続した場合、コイル間で和をとり(打ち消し合い)、信号検知部40によりフィルタなどを介して検出信号を得ている。
図3(2)に示す信号検知部40は、回路上で複数重ねたコイルからの信号の差又は和をとり検出信号を得る構成を示している。
検知部30での上層及び下層コイル32A,32Bが同じコイル同士でそれぞれ信号検知部40に出力し、信号検知部40により回路上で差をとり(打ち消し合い)検出信号を得ている。
また検知部30での上層及び下層コイル32A,32Bが逆巻きコイルでそれぞれ信号検知部40に出力し、信号線検知部40により回路上で和をとり(打ち消し合い)検出信号を得ている。
このような構成により、外乱ノイズを打ち消すことができ、S/N比の向上を見込むことができる。
このような構成の金属検出機10は、中空部12内をベルトコンベアによって検査物11が移動する。検査物に金属異物があると検出信号が発生するように構成している。
【0025】
[作用]
図4は上下2層コイルと外乱の発生源の配置説明図である。図示のように上層コイル32Aと下層コイル32Bの間の距離L3は想定される外乱の発生源からコイルまでの距離L1,L2と比較して十分短く設定している(L1orL2>>L3)。また検査物11とコイル32の間の距離L4はコイル32と外乱の発生源までの距離L1,L2と比較すると十分短く設定し(L1orL2>>L4)、検査物11がコイル32の近くを移動する。
【0026】
図5は外乱と異物検出時のコイル波形の説明図である。
図6は波形サンプルの説明図であり、(1)は金属異物検出時、(2)は外乱ノイズ発生時である。
金属検出機10の中空部12を移動する検査物11に金属異物が含まれる場合、金属異物との距離の近さが大きく影響する。換言すると金属異物に近い下層コイル32Bに発生する誘導起電力が大きく、下層コイル32Bよりも遠い位置の上層コイル32Aに発生する誘導起電力がそれよりも小さくなり差が生じる。このため上下2層コイル32間で差分を取ると大きな検出波形が残り観測することができる(
図5、6(1)参照)。
外乱の発生時は、上下2層コイル32A,B間の距離差L3は、コイル32と外乱の発生源18の間の距離L1,L2と比べて無視できるため、上下2層コイル32A,Bで発生する誘導起電力がほぼ同等となる。このため、上下2層コイル32A,Bからの出力の差分を取ることにより、外乱によるノイズを互いに打ち消し合い、影響を低減できる(
図5、6(2)参照)。なお金属検出機10本体が振動した場合に発生するノイズに関しては、上下2層コイル32A,Bが同じように振動するため、発生するノイズも打ち消し合うことができる。
【0027】
このような本発明の金属検出機によれば、磁石によって形成された磁場内を金属異物が移動したときに、コイルの鉄心内の磁束密度が変化して、それによってコイルに誘導起電力が発生する。これを検出波形として観測することができる。
また外乱となる電磁波が発生したとき、その影響によってコイルに誘導起電力が発生する。これがノイズとなってS/N比の低下につながっていた。この対策として、コイルを検査物の移動方向と直交する方向に複数重ねて配置して上層と下層のコイル間で差分をとることにより、ノイズを打ち消し合わせて低減することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0028】
1A,1B 金属検出機
2 永久磁石
3 鉄心
4 コイル
5 検知部材
6A,6B 検知部
10 金属検出機
11 検査物
12 中空部
14 上側ヘッド
16 下側ヘッド
18 外乱の発生源
20 磁石
30 検知部
32 コイル
32A 上層コイル
32B 下層コイル
34 鉄心
40 信号検知部