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  • 特許-ウイルス不活化用活性炭 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ウイルス不活化用活性炭
(51)【国際特許分類】
   A01N 61/00 20060101AFI20240814BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20240814BHJP
   A01N 59/00 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
A01N61/00 Z
A01N61/00 A
A01P1/00
A01N59/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023545372
(86)(22)【出願日】2023-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2023016174
(87)【国際公開番号】W WO2023204316
(87)【国際公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2022071158
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506060580
【氏名又は名称】満栄工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599035627
【氏名又は名称】学校法人加計学園
(74)【代理人】
【識別番号】110003823
【氏名又は名称】弁理士法人柳野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 雄樹
(72)【発明者】
【氏名】柳川 優
(72)【発明者】
【氏名】森川 茂
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-020297(JP,A)
【文献】特開2010-063952(JP,A)
【文献】白井敦資ほか,ウイルス除去効果を示す天然素材カーボンシルク,日本獣医師会雑誌,2008年,Vol. 61, No. 1,pp. 48-54,ISSN 2186-0211
【文献】DOMAGATA, Kamila et al.,Virus removal from drinking water using modified activated carbon fibers,RSC Advances,2021年,Vol. 11,pp. 31547-31556
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素原子を含む活性炭から構成されるウイルス不活化用活性炭であって、
前記窒素原子が、キチン、キトサン、グルコサミン、メラミン、メラミン樹脂、尿素及び尿素樹脂から選択される少なくとも一種の窒素原子含有化合物に由来するものであり、
前記の窒素原子を含む活性炭が下記A~Dから選択される少なくとも一種であり、
A:フェノール樹脂と前記窒素原子含有化合物とを含むフェノール樹脂組成物を炭素源とするもの、
B:天然原料又は合成樹脂繊維に前記窒素原子含有化合物を担持させたものを炭素源とするもの、
C:天然原料の炭化物に前記窒素原子含有化合物を担持させたものを賦活化したもの、
D:天然原料又は合成樹脂の活性炭に前記窒素原子含有化合物を担持させたものを追賦活化したもの、
DNA吸着能が10μg/g以上である、ウイルス不活化用活性炭。
【請求項2】
BET法により算出される比表面積が500~3000m/gである、請求項1記載のウイルス不活化用活性炭。
【請求項3】
前記の窒素原子を含む活性炭が粒子状であり、平均粒子径が10~2000μmである、請求項1又は2に記載のウイルス不活化用活性炭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス不活化用活性炭に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抗菌性を示す炭化物として、特許文献1には、絹焼成体が記載されている。この絹焼成体は、絹素材を、不活性ガス雰囲気中で、第2次焼成温度よりも低い第1次焼成温度までは、毎時100℃以下の昇温速度で昇温し、この第1次焼成温度で数時間保持して1次焼成し、次いで、1000℃以下の第2次焼成温度まで、毎時100℃以下の昇温速度で昇温し、この第2次焼成温度で数時間保持して2次焼成することで得られるとされている。また、特許文献1には、絹焼成体の賦活化には850℃程度の高温の水蒸気に晒すことにより行われることが記載されている。そして、このような絹焼成体は、1000℃以下の低温で絹素材を焼成することによってアミノ酸由来の窒素成分が多く残留し、窒素元素として18wt%~35wt%含むとされている。
【0003】
また、抗ウイルス性を有する炭化物として、特許文献2には、絹素材、ヤシガラ、綿素材等の天然素材が炭化され、粒状に形成された炭化物が記載されている。特許文献2に記載されているこの炭化物は、特許文献1と同様の温度条件で天然素材を炭化させ、高温の水蒸気に晒すことにより得られるとされている。
【0004】
抗菌性や抗ウイルス性に関するものではないが、特許文献3には、腎疾患又は肝疾患治療剤として、生体内の尿毒性物質であるβ-アミノイソ酪酸に対する吸着能に優れる球状活性炭を含む経口投与用吸着剤が記載されている。この球状活性炭は、窒素原子を含む熱可塑性樹脂又はイオン交換樹脂を炭素源として調製されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2005/7947号
【文献】特開2008-273914号公報
【文献】特許第6431475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、特許文献1、2に記載の炭化物は、天然素材をそのまま利用して炭化したものであり活性が低く、賦活化しても、ウイルス等に対する十分な不活化の効果が得られないことなどが懸念される。特許文献3に記載の発明では、窒素原子を官能基として含む樹脂を炭素源とする活性炭は用いられているが、ウイルスとの関係に関しては全く記載がない。
【0007】
このような従来技術に鑑みて、本発明の目的は、ウイルス不活化能の良好なウイルス不活化用活性炭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前述の課題解決のために鋭意検討を行った。その結果、特定の窒素原子含有化合物に由来する窒素原子を含む特定の活性炭を採用することで、前述の課題が解決可能であることを見出した。すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0009】
(1)窒素原子を含む活性炭から構成されるウイルス不活化用活性炭であって、前記窒素原子が、シルク、リジン、キチン、キトサン、グルコサミン、メラミンに由来する化合物及び尿素に由来する化合物から選択される少なくとも一種の窒素原子含有化合物に由来するものであり、前記の窒素原子を含む活性炭が下記A~Dから選択される少なくとも一種であり、
A:フェノール樹脂と前記窒素原子含有化合物とを含むフェノール樹脂組成物を炭素源とするもの、
B:天然原料又は合成樹脂繊維に前記窒素原子含有化合物を担持させたものを炭素源とするもの、
C:天然原料の炭化物に前記窒素原子含有化合物を担持させたものを賦活化したもの、
D:天然原料又は合成樹脂の活性炭に前記窒素原子含有化合物を担持させたものを追賦活化したもの、
DNA吸着能が10μg/g以上である、ウイルス不活化用活性炭。
(2)BET法により算出される比表面積が500~3000m/gである、前項(1)記載のウイルス不活化用活性炭。
(3)前記の窒素原子を含む活性炭が粒子状であり、平均粒子径が10~2000μmである、前項(1)又は(2)に記載のウイルス不活化用活性炭。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウイルス不活化能の良好なウイルス不活化用活性炭を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1において得られたフェノール樹脂組成物の微粒子の電子顕微鏡による撮像を示した図である。図中、スケール一目盛が20.0μmである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
本発明の実施形態に係るウイルス不活化用活性炭は、窒素原子を含む活性炭から構成される。この活性炭に含まれる窒素原子は、シルク、リジン、キチン、キトサン、グルコサミン、メラミンに由来する化合物及び尿素に由来する化合物から選択される少なくとも一種の窒素原子含有化合物に由来するものである。また、窒素原子を含む活性炭は、下記A~Dから選択される少なくとも一種である。即ち、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせてもちいてもよい。下記A~Dに対応する窒素原子を含む活性炭を、それぞれ活性炭A~Dと称する。
【0014】
A:フェノール樹脂と前記窒素原子含有化合物とを含むフェノール樹脂組成物を炭素源とするもの、
B:天然原料又は合成樹脂繊維に前記窒素原子含有化合物を混合又は含浸させたものを炭素源とするもの、
C:天然原料の炭化物に前記窒素原子含有化合物を混合又は含浸させたものを賦活化したもの、
D:天然原料又は合成樹脂の活性炭に前記窒素原子含有化合物を含浸させたものを追賦活化したもの。
【0015】
また、活性炭A~Dの少なくとも1種から構成されるウイルス不活化用活性炭のDNA吸着能は10μg/g以上である。
【0016】
このように、得られるウイルス不活化用活性炭のDNA吸着能が所定範囲になるように、特定の窒素原子含有化合物を用いて所定の活性炭を調製することで、ウイルス不活化能が良好になると考えられる。DNA吸着能は、ウイルス不活化用活性炭1g当たりに吸着するDNAの重さで表される値であり、使用する窒素原子含有化合物の種類、配合量等により調整可能である。ここで、DNA吸着能は、以下の方法で測定、算出することができる。
【0017】
(1)指標となるDNAとして、Promega社製、Herring Sperm DNA(ニシン精子のDNA、80%が100~3000bpのフラグメントから構成される。)10mg/mL溶液を用い、これを蒸留水で2mg/mLに希釈する。この5倍希釈液を分注し、さらに蒸留水で希釈し、40μg/mLのDNA溶液を作製する。
(2)ウイルス不活化用活性炭0.1gを1.5mLのエッペンドルフチューブに入れ、そこに(1)で調製したDNA溶液を150μL加え、ボルテックスミキサー(サイエンティフィックインダストリーズ社製、ジェニー2)で10秒間懸濁させる。
(3)卓上遠心機(アズワン社製、mf-12000)を用い1秒間、10000rpmでフラッシングした後、10分間静置する。
(4)その後、卓上高速遠心機(日立工機社製、himacCT15E)にて5分間、12000rpmで遠心分離を行う。
(5)得られた上澄み液を超微量紫外可視分光光度計(サーモフィッシャー社製、NanoDropOne)にて、DNA測定標準設定で波長220nmから350nmまでのOD値を測定する。
(6)得られた波長260nmにおけるOD値の測定結果に基づき、ウイルス不活化用活性炭1g当たりのDNAの吸着量をDNA吸着能として算出する。尚、その際、波長260nmにおいて、DNAの濃度が50μg/mLの水溶液のOD値が1であるとし、上澄み液のOD値から上澄みのDNAの量を算出し、添加したDNA溶液のDNAの量の差が、ウイルス不活化用活性炭に吸着したDNAの量として、ウイルス不活化用活性炭1g当たりに吸着したDNAの吸着量を算出する。
【0018】
不活化対象となるウイルスは、特に限定はない。ウイルスは、タンパク質からなる殻(カプシド)と、その中に存在する核酸とで構成され、エンベロープ(核酸とカプシドを包む外皮)を有するものと有さないものが存在するが、何れも不活化対象となり得る。このようなウイルスとしては、核酸としてRNA又はDNAを有し、エンベロープを有する又は有さないものが挙げられる。核酸としてRNAを有し、エンベロープを有するウイルスとしては、例えば、インフルエンザウイルス、SARSコロナウイルス(例えば、SARS-CoV-2等)、RSウイルス、ムンプスウイルス、ラッサウイルス、デングウイルス、風疹ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス等が挙げられる。核酸としてRNAを有し、エンベロープを有さないウイルスとしては、例えば、ノロウイルス、ポリオウイルス、エコーウイルス、A型肝炎ウイルス、E型肝炎ウイルス、ライノウイルス、アストロウイルス、ロタウイルス、コクサッキーウイルス、エンテロウイルス、サポウイルス、ネコカルシウイルス等が挙げられる。核酸としてDNAを有し、エンベロープを有するウイルスとしては、例えば、ヒトヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、B型肝炎ウイルス等が挙げられる。核酸としてDNAを有し、エンベロープを有さないウイルスとしては、例えば、アデノウイルス、B19ウイルス、パポバウイルス、ヒトパピローマウイルス等が挙げられる。
【0019】
実施形態に係るウイルス不活化用活性炭を構成する各活性炭A~Dに含まれる窒素原子の由来となる窒素原子含有化合物は、シルク、リジン、キチン、キトサン、グルコサミン、メラミンに由来する化合物及び尿素に由来する化合物から選択される少なくとも一種である。即ち、これらは単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
シルクは、一般に、家蚕が産生する繭糸に由来する繊維であるが、クモやハチなどにより産生されたものなども適用可能である。家蚕が産生する繭糸は、フィブロインタンパク質(フィブロイン)とセリシンタンパク質(セリシン)で構成され、絹糸は製糸プロセスでセリシンが不活化されたフィブロインで構成されたものである。繭糸は、水に不溶であるが、高濃度塩水溶液により分子間の水素結合を破壊することで溶解することが可能である。このフィブロインの塩溶液を水に対して透析することで、フィブロイン水溶液が作製でき、この水溶液に攪拌や超音波等により強いずり応力をかけることで、ゲルや凝集体(粒子)を形成させることができる。また、水溶液に水溶性有機溶媒や酸を加えることでも、ゲルや粒子を作製することができる。適用可能なシルクとしては、例えば、フィブロイン水溶液、フィブロインの凝集体(粒子)、絹糸の粉砕物、絹糸の粉体などが挙げられる。シルクは、市販のものを使用することができる。例えば、天然シルクパウダー(フィブロイン100%)として、いずみ染工株式会社から販売されているizumi-Silkなどが挙げられる。
【0021】
キチンは、典型的には、N-アセチル-D-グルコサミン残基が多数β-(1,4)-結合した直鎖状の多糖であるが、部分的にアセチル基を失っているものを含む。キチンは、市販のものを使用することができる。
【0022】
キトサンは、アミノ多糖類の一種であり、キチンの脱アセチル体で、グルコサミンがβ-1,4結合したポリグルコサミンである。キトサンは、一般に、キチンを熱アルカリ中で処理することによって、キチンのアセチル基(アセトアミド基)を加水分解して脱アセチル化することで得られる。キトサンは、このようなキチンの脱アセチル化により得ることができるが、一般に、脱アセチル化は完全には行えず、精製してもキチンが1~3割残存するとされる。したがって、「キトサン」には、キチンが1~3割残存するものも包含するものとする。キチンは、市販のものを使用することができる。
【0023】
グルコサミンは、グルコースの2位の炭素に結合している水酸基がアミノ基に置換されたアミノ糖である。グルコサミンは、一般に、キチンを熱塩酸中で処理することにより、塩酸塩として得られる。グルコサミンとしては、この塩酸塩を使用可能である。遊離のグルコサミンの結晶にはα体とβ体の2型あるが、何れも使用可能である。グルコサミンは、市販のものを使用することができる。
【0024】
リジン(lysine)は、α-アミノ酸の一つで側鎖に4-アミノブチル基を有する。リジンは、市販のものを使用することができる。
【0025】
メラミンに由来する化合物とは、メラミン、及び、メラミンと後述のアルデヒド類との重合物即ちメラミン樹脂から選択される少なくとも一種である。メラミンは、トリアジン環とトリアジン環の3つの炭素原子にそれぞれ結合する3つのアミノ基を有する有機窒素化合物であり、単量体のほか、多量体を用いることができる。メラミンは、一般にアルデヒド類と反応してメラミン樹脂を形成し得る。したがって、例えば後述するように、活性炭Aの調製においてフェノール類とアルデヒド類とを反応させてフェノール樹脂を合成する際に、メラミンを併存させると、条件によっては、メラミン、フェノール類、アルデヒド類が反応して共重合体を形成し得るが、フェノール樹脂組成物の製造条件を調整することで、メラミン及びメラミン樹脂から選択される少なくとも一種を、フェノール樹脂中に分散させることが可能になる。ただし、メラミンの一部が、フェノール類、アルデヒド類と反応する場合があると考えられる。
【0026】
尿素に由来する化合物とは、尿素、及び、尿素と後述のアルデヒド類との重合物即ち尿素樹脂から選択される少なくとも一種である。尿素は、2つのアミノ基を有する有機窒素化合物である。尿素は、一般にアルデヒド類と反応して尿素樹脂を形成し得る。したがって、例えば後述するように、活性炭Aの調製においてフェノール類とアルデヒド類とを反応させてフェノール樹脂を合成する際に、尿素を併存させると、条件によっては、尿素、フェノール類、アルデヒド類が反応して共重合体を形成し得るが、フェノール樹脂組成物の製造条件を調整することで、尿素及び尿素樹脂から選択される少なくとも一種を、フェノール樹脂中に分散させることが可能になる。ただし、尿素の一部が、フェノール類、アルデヒド類と反応する場合があると考えられる。
【0027】
以下では、窒素原子を含む活性炭A~Dの実施形態について説明する。
【0028】
(実施形態1)
実施形態1に係るウイルス不活化用活性炭は、活性炭Aから構成され、当該活性炭Aは、フェノール樹脂と前述の窒素原子含有化合物とを含むフェノール樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称する場合がある。)を炭素源とするものである。
【0029】
実施形態1では、得られるウイルス不活化用活性炭のDNA吸着能が所定範囲になるように、フェノール樹脂と特定の窒素原子含有化合物とを含むフェノール樹脂組成物を調製し、これを用いて活性炭を調製することで、ウイルス不活化能が良好になると考えられる。
【0030】
尚、窒素原子含有化合物は、フェノール樹脂中に分散した状態で存在し、フェノール樹脂と共有結合を介しては結合されていないと考えられる。ただし、メラミンに由来する化合物及び尿素に由来する化合物のうちのメラミン及び尿素は、フェノール樹脂組成物の製造条件によっては、その一部はモノマーとして反応する場合はあると考えられる。
【0031】
樹脂組成物に適用可能なフェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類との反応により得られるものである。フェノール類としては、例えば、フェノール、アルキルフェノール、スチレン化フェノール、ビスフェノール類、クレゾール類、p-フェニルフェノール、カテコール、ピロガロール、キシレノール、レゾルシノール、レゾルシン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、フェノールが特に好ましい。アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、ホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0032】
フェノール類とアルデヒド類と配合比は、特に限定はなく、例えば、フェノール類1モルに対して、アルデヒド類0.3~4.0モルとすることができる。つまり、フェノール樹脂は、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂の何れでもよい。フェノール類1モルに対するアルデヒド類の配合比は、ノボラック型フェノール樹脂の場合は、0.3~0.9モルが好ましく、レゾール型フェノール樹脂の場合は、1.0~4.0モルが好ましく、1.0~3.0モルがより好ましく、1.0~1.4モルがさらに好ましい。
【0033】
フェノール類とアルデヒド類の反応は、ノボラック型とレゾール型とでそれぞれ適した条件で行われれば特に限定はない。ノボラック型の場合は、例えば、前述のフェノール類とアルデヒド類とを酸性硬化剤の存在下で反応させることにより得られる。酸性硬化剤としては、例えば、シュウ酸、パラトルエンスルホン酸、クエン酸、等の有機酸や、塩酸、硫酸等の無機酸が挙げられる。酸性硬化剤の配合比は、フェノール類100重量部に対して0.05~3.0重量部が好ましい。
【0034】
レゾール型の場合は、例えば、前述のフェノール類とアルデヒド類とを硬化剤の存在下で反応させることにより得られる。この際に適用可能な硬化剤としては、特に限定はないが、塩基性硬化剤が好ましい。塩基性硬化剤としては、例えば、アンモニア、アミン系硬化剤、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。これらのうちアミン系硬化剤が好ましい。アミン系硬化剤としては、例えば、N-(2-アミノエチル)プロパノールアミン;N-(2-アミノエチル)エタノールアミン;エチレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン(ヘキサミン)等のポリアルキレンポリアミン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。硬化剤の配合比は、適宜決定することができるが、フェノール類100重量部に対して、0.5~50重量部が好ましく、2~20重量部がより好ましい。硬化剤は、フェノール樹脂或いはフェノール樹脂組成物に残存し得る。
【0035】
フェノール樹脂組成物には、前述のフェノール樹脂(硬化剤を含む)と窒素原子含有化合物以外に、添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、アミノシランなどのカップリング剤等が挙げられる。
【0036】
窒素原子含有化合物の配合比は、DNA吸着能、得られるウイルス不活化用活性炭の特性などを考慮して決定することができる。例えば、フェノール樹脂組成物の調製時に、フェノール類100重量部に対して、0.5~10重量部配合することができ、0.8~4重量部が好ましい。
【0037】
フェノール樹脂組成物は、例えば、窒素原子含有化合物(メラミンに由来する化合物及び尿素に由来する化合物については、メラミン及び尿素が好適である。)の存在下に、フェノール類とアルデヒド類とを反応させてフェノール樹脂を合成することで、フェノール樹脂中に窒素原子含有化合物が分散した状態のものを得ることができる。フェノール類とアルデヒド類との反応は、従来公知の方法を採用することで行うことができるが、微粒子状の形状のフェノール樹脂組成物が得られる方法を採用するのが好ましい。このような方法としては、例えば、乳化剤存在下で反応させる(乳化重合)方法などが挙げられる。
【0038】
このような微粒子状のフェノール樹脂組成物は、例えば、特開2019-189865号公報に記載の方法に準拠して得ることができる。当該方法に準拠する方法を簡単に説明すると以下のとおりである。
【0039】
まず、フェノール類、アルデヒド類、窒素原子含有化合物(メラミン及び尿素に由来する化合物については、メラミン及び尿素が好適である。)、硬化剤、乳化剤、必要に応じて添加する添加剤を所定量配合し、フェノール類とアルデヒド類とを反応溶媒中で反応させる。
【0040】
乳化剤は、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースカチオン化物等の水溶性セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、アルギン酸、グアーガム、アラビアガム等が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。乳化剤は、フェノール類100重量部に対して、0.2~10重量部使用することが好ましく、0.3~5重量部を使用することがより好ましい。
【0041】
フェノール樹脂組成物の微粒子は、例えば、常圧下、95℃以上の温度で反応させることにより製造することができる。その他の反応条件は、窒素原子含有化合物の種類などに応じて適宜決定することができるが、反応温度は、段階的に昇温することが好ましい。例えば、反応温度を、35~45℃、55℃~65℃、95℃以上の三段階に昇温し、各段階において一定時間保持することが好ましい。また、反応温度を、40℃、60℃、95℃以上の三段階に昇温し、各段階において一定時間保持することがより好ましい。例えば、窒素原子含有化合物がメラミンかである場合は、35~45℃においてメラミンが固体状態で存在し得るため、フェノール類とアルデヒド類の反応が進行中に固体状態であり、その後、より高温条件で反応させても、生成したフェノール樹脂中にメラミンの状態で存在させ易い傾向にある。また、pH5~6の弱酸性の反応液中では、メラミン、尿素が共重合し得るが、このpHの範囲を超える、例えば、(強)酸又は(強)アルカリ条件の反応液中でフェノール類とアルデヒド類を反応させると、フェノール樹脂の生成が優先され、同時に、条件に応じてメラミン樹脂或いは尿素樹脂が生成し、メラミン、メラミン樹脂、尿素、尿素樹脂をフェノール樹脂中に分散させやすい傾向にある。
【0042】
その後、得られたフェノール樹脂組成物の微粒子を洗浄して、未反応のフェノール類及びアルデヒド類、窒素原子含有化合物、硬化剤、乳化剤等の不純物を除去し、乾燥する。そして、乾燥させたフェノール樹脂組成物の微粒子を硬化させ、フェノール樹脂組成物の微粒子の表面に硬化被膜(シェル)を形成させることができる。硬化の際の温度条件は、硬化被膜を均一かつ最適な厚さとする観点から、例えば、110~200℃とすることができ、120~200℃が好ましく、130~150℃がより好ましく、130~145がさらに好ましく、135~140℃が特に好ましい。硬化被膜を均一かつ最適な厚さとすることで、所望の比表面積のウイルス不活化用活性炭を得やすい傾向にある。硬化は、例えば、水中、大気中又は水以外の溶媒中で行うことができるが、取り扱い性、安全性の観点から水中が好ましい。硬化を水中で行う場合、加圧下で行うことができる。このとき、圧力は、例えば、1.0~1.5kgf/cm(98~147kPa)であり、温度は、例えば、130~140℃、好ましくは、135~140℃である。硬化時間は、フェノール樹脂組成物の微粒子の硬化の度合いを調整するのに適した時間とすればよく、例えば、30分~3時間、好ましくは、1~2時間である。
【0043】
以上のようにして得られたフェノール樹脂組成物の微粒子は、不活性ガス雰囲気中で炭化処理を行った後、賦活化処理を行って、ウイルス不活化用活性炭とすることができる。このようなウイルス不活化用活性炭は、従来公知の方法で得ることができ、例えば、特開2019-189865号公報に記載の方法に準拠して得ることができる。当該方法に準拠する方法を簡単に説明すると以下のとおりである。
【0044】
炭化処理は、硬化させたフェノール樹脂組成物の微粒子を、不活性ガス雰囲気中、400~600℃にて第1炭化処理を行った後、常温に冷却し、次いで、不活性ガス雰囲気中、600~850℃にて第2炭化処理を行った後、常温に冷却することにより行われるのが好ましい。第1炭化処理の加熱時間は特に限定はないが、1~3時間が好ましく、第2炭化処理の加熱時間は特に限定はないが、1~2時間が好ましい。各炭化処理における冷却も不活性ガス雰囲気中で行うのが好ましい。
【0045】
賦活化処理は、例えば、不活性ガス雰囲気中、水蒸気を用いて行うことができる。水蒸気の温度(圧力)、流量は、適宜設定することができる。温度は、例えば、800~1000℃、好ましくは850~950℃、より好ましくは900~950℃、さらに好ましくは、950℃である。賦活化の時間は、例えば5~15時間であり、好ましくは7~10時間であり、より好ましくは6時間である。
【0046】
以上のようにして得られる実施形態1に係る活性炭Aにより構成されるウイルス不活化用活性炭は、前述する方法で測定されるDNA吸着能が10μg/g以上であり、20μg/g以上が好ましい。窒素原子含有化合物とフェノール樹脂との配合を考慮すると、100μg/g以下とするのが好ましい。また、その形状は球形であるのが好ましい。さらに、BET法により算出される比表面積は、500~3000m/gであるのが好ましく、800~1800m/gがより好ましい。平均粒子径は、10~2000μmであるのが好ましく、20~1500μmmであるのがより好ましく、40~800μmであるのがさらに好ましく、60~100μmが特に好ましい。BET法により算出される比表面積は、例えば、特許文献3に記載のようにしてウイルス不活化用活性炭のガス吸着量を測定し、BETの式により算出することができる。平均粒子径は、JIS K 1474に準拠して測定、算出したもの、或いは、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置により測定、算出することができるメジアン径(D50)を採用することができる。尚、BET法により算出される比表面積及び平均粒子径の測定、算出方法は以下の実施形態2~4の場合も同様である。
【0047】
(実施形態2)
実施形態2に係るウイルス不活化用活性炭は、活性炭Bから構成される。活性炭Bは、天然原料又は合成樹脂繊維に前記窒素原子含有化合物を担持させたものを炭素源とするものである。実施形態2においても、得られるウイルス不活化用活性炭のDNA吸着能が所定範囲になるように、天然原料又は合成樹脂繊維に特定の窒素原子含有化合物を担持させたもの(以下、「窒素含有炭素源」と称する場合がある。)を調製し、これを用いて活性炭を調製することで、ウイルス不活化能が良好になると考えられる。
【0048】
活性炭Bの調製に適用可能な天然原料は、特に限定はなく、一般に活性炭の製造に用いられるものを採用することができる。例えば、動植物系原料、石炭ピッチ、石油ピッチ等が挙げられる。動植物系原料としては、例えば、木材(木質チップ、おが屑などを含む)、竹、ヤシ殻、クルミ殻、もみ殻、絹、綿などの植物系原料、獣骨、血液など動物系原料が挙げられる。天然原料の形態は特に限定はなく、原料の種類や形態、或いは、用途等に応じて適宜決定することができる。例えば、粒子状、チップなどの小片状、繊維状、織物や編物などの布帛状等が挙げられる。天然原料は必要に応じて破砕処理などを行ってもよいし、乾燥処理を行ってもよい。
【0049】
活性炭Bの調製に適用可能な合成樹脂繊維は、特に限定はなく、一般に活性炭の製造に用いられる合成樹脂の繊維を採用することができる。このような合成樹脂繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維、アクリル繊維、フェノール樹脂繊維等が挙げられる。これらのうち、フェノール樹脂繊維が好ましい。合成樹脂繊維は、紡糸した繊維の束でも良いし、繊維を小片に裁断されたものでも良いし、織物、編物、不織布などの布帛状にしたものでもよい。
【0050】
天然原料や合成樹脂繊維に窒素原子含有化合物を担持させる方法は、特に限定はなく、例えば、(i)天然原料や合成樹脂繊維に、窒素原子含有化合物を含む液体を含浸させた後乾燥して、窒素原子含有化合物を天然原料や合成樹脂繊維に担持させる方法、(ii)天然原料や裁断された合成樹脂繊維、窒素原子含有化合物、賦形剤及び水を混合して混練し、得られる混練物を用いて造粒した後乾燥して、窒素原子含有化合物を天然原料や合成樹脂繊維に担持させる方法などが挙げられる。(ii)の方法で用いる賦形剤としては、特に限定はなく、ベントナイト、タルクなどの層状ケイ酸塩鉱物、ピッチ、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)などが挙げられる。賦形剤の配合量は適宜決定が可能であり、例えば、天然原料や合成樹脂繊維に対して5~10重量%とすることができる。水の配合量は混練物の粘度に応じて適宜決定することができる。造粒は、例えば、押出し造粒機等の公知の造粒装置を用いてペレット化することで行うことができる。(ii)の方法では、窒素原子含有化合物は、直接的又は賦形剤を介して間接的に天然原料や合成樹脂繊維に担持される。
【0051】
前述のようにして、天然原料又は合成樹脂繊維に特定の窒素原子含有化合物を担持させた窒素含有炭素源を、例えば、公知の条件で炭化処理及び賦活化処理を行うことで、活性炭Bが得られる。炭化処理及び賦活化処理の方法は、窒素含有炭素源の形態などに応じて選択することができる。窒素含有炭素源の形態が粒子状などの場合は、窒素含有炭素源を撹拌可能なロータリーキルンなどの回転式の窯を有する加熱炉を用い、布帛状の場合は、静置型の加熱炉を用いるのが好ましい。炭化処理の加熱条件は、天然原料及び合成樹脂繊維の種類、形態などに応じて適宜決定することができ、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で、常温から、600~800℃になるまで漸次又は段階的に所定の時間をかけて昇温することで炭化処理を行うことができる。賦活化は、前述の炭化処理後にガス賦活処理を行うことで実施できる。ガス賦活化処理は、例えば、炭化処理時に昇温した最終温度において、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で水蒸気などを所定の時間供給することで行うことができる。炭化処理及び賦活化処理は、薬品賦活化処理により行うこともできる。
【0052】
以上のようにして得られる活性炭Bにより構成される実施形態2に係るウイルス不活化用活性炭は、前述する方法で測定されるDNA吸着能が10μg/g以上であり、20μg/g以上が好ましい。BET法により算出される比表面積は500~3000m/gであるのが好ましい。活性炭Bの形状は、窒素含有炭素源の形状に応じて適宜決定することができる。粒子状の場合は、平均粒子径は、10~2000μmであるのが好ましく、20~1500μmmであるのがより好ましく、40~800μmであるのがさらに好ましく、60~100μmが特に好ましい。
【0053】
(実施形態3)
実施形態3に係るウイルス不活化用活性炭は、活性炭Cから構成される。活性炭Cは、天然原料の炭化物に前記窒素原子含有化合物を担持させたものを賦活化したものである。実施形態3においては、得られるウイルス不活化用活性炭のDNA吸着能が所定範囲になるように、天然原料の炭化物に特定の窒素原子含有化合物を担持させたものを調製し、これを用いて賦活化して活性炭を調製することで、ウイルス不活化能が良好になると考えられる。
【0054】
実施形態3において適用可能な天然原料としては、実施形態2と同様のものを用いることができる。天然原料の炭化物は、天然原料を公知の条件で炭化処理することで得ることができる。炭化処理の条件は、天然原料の種類、形態などに応じて選択することができる。実施形態2で述べたように、天然原料の形態が粒子状などの場合は、撹拌可能な窯を有する加熱炉を用い、布帛状の場合は、静置型の加熱炉を用いるのが好ましい。炭化処理の加熱条件は、天然原料の種類、形態などに応じて適宜決定することができ、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で、300~800℃で、45~150分加熱することで炭化することができる。また、天然原料の炭化物は、市販のものを用いることもできる。市販の炭化物としては、各種木炭、竹炭、ヤシ殻炭等が挙げられる。
【0055】
前述のようにして得られた炭化物に窒素原子含有化合物を担持させる方法は、実施形態2で述べたのと同様に、(i)炭化物に、窒素原子含有化合物を含む液体を含浸させた後乾燥して、窒素原子含有化合物を炭化物に担持させる方法、(ii)炭化物、窒素原子含有化合物、賦形剤及び水を混合して混練し、得られる混練物を用いて造粒した後乾燥して、窒素原子含有化合物を炭化物に担持させる方法などが挙げられる。
【0056】
前述のようにして、窒素含有化合物を担持させた炭化物を、例えば、公知の条件で賦活化処理を行うことで、活性炭Cが得られる。賦活化処理の方法は、炭化処理の場合と同様に、炭化物の形態などに応じて加熱炉の形式を選択することができる。賦活化は、ガス賦活処理を行うことで実施できる。ガス賦活化処理は、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で、常温から、600~950℃になるまで漸次又は段階的に所定の時間をかけて昇温し、到達温度において、水蒸気を所定の時間供給することで行うことができる。
【0057】
以上のようにして得られる活性炭Cにより構成される実施形態3に係るウイルス不活化用活性炭は、前述する方法で測定されるDNA吸着能が10μg/g以上であり、20μg/g以上が好ましい。BET法により算出される比表面積は500~3000m/gであるのが好ましく、800~1800m/gがより好ましい。活性炭Cの形状は、炭化物の形状に応じて適宜決定することができる。粒子状の場合は、平均粒子径は、10~2000μmであるのが好ましく、20~1500μmmであるのがより好ましく、40~800μmであるのがさらに好ましく、60~100μmが特に好ましい。
【0058】
(実施形態4)
実施形態4に係るウイルス不活化用活性炭は、活性炭Dから構成される。活性炭Dは、天然原料又は合成樹脂の活性炭(以下、「原料活性炭」と称する場合がある。)に前記窒素原子含有化合物を担持させたものを追賦活化したものである。実施形態4においては、得られるウイルス不活化用活性炭のDNA吸着能が所定範囲になるように、所定の原料を炭素源とする原料活性炭に特定の窒素原子含有化合物を担持させたものを調製し、これを追賦活化したものを活性炭とすることで、ウイルス不活化能が良好になると考えられる。
【0059】
実施形態4において適用可能な天然原料としては、実施形態2と同様のものを用いることができる。実施形態4において適用可能な合成樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれもよく、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリイミドなどが挙げられる。原料活性炭は、このような天然原料又は合成樹脂を炭化処理、賦活化処理を行うことで得ることができる。炭化・賦活化処理は、従来の方法により行うことができ、所謂ガス賦活法でも良いし、薬品賦活法でもよい。原料活性炭は、市販のものを用いることもできる。
【0060】
原料活性炭に窒素原子含有化合物を担持させる方法は、特に限定はなく、例えば、原料活性炭に窒素原子含有化合物を含む液体を含浸させた後乾燥して、窒素原子含有化合物を原料活性炭に担持させる方法などが挙げられる。
【0061】
前述のようにして、窒素含有化合物を担持させた原料活性炭を、例えば、公知の条件で賦活化処理を行うことで、活性炭Dが得られる。賦活化処理の方法は、活性炭の形態などに応じて加熱炉の形式を選択することができる。賦活化は、ガス賦活化処理を行うことで実施できる。ガス賦活化処理は、例えば、窒素ガスなどの不活性ガスの存在下で、常温から、600~950℃になるまで漸次又は段階的に所定の時間をかけて昇温し、到達温度において、不活性ガスの存在下で水蒸気を所定の時間供給することで行うことができる。
【0062】
以上のようにして得られる活性炭Dにより構成される実施形態4に係るウイルス不活化用活性炭は、前述する方法で測定されるDNA吸着能が10μg/g以上であり、20μg/g以上が好ましい。BET法により算出される比表面積は500~3000m/gであるのが好ましく、800~1900m/gがより好ましい。活性炭Dの形状は、原料活性炭の形状に応じて適宜決定することができる。粒子状の場合は、平均粒子径は、10~2000μmであるのが好ましく、20~1500μmmであるのがより好ましい。
【0063】
前述の活性炭A~Dで構成されるウイルス不活化用活性炭は、必要に応じて、その作用を阻害しない範囲で他の成分と混合してウイルス不活化剤とすることができる。また、各種の基材の表面に担持させたり、基材中に分散させたりすることにより、ウイルス不活化能を有する各種製品を形成することができる。基材としては、不織布、織物、編物などの繊維製品(例えば、マスクなど)、各種の樹脂製品などが挙げられる。ウイルス不活化用活性炭のウイルスの不活化能は、後述するようにTCID50法によりウイルス感染価を測定することにより評価することができる。
【実施例
【0064】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態に係るウイルス不活化用活性炭を具体的に説明する。
【0065】
(実施例1:活性炭A1の製造)
<フェノール樹脂組成物の微粒子の製造>
フェノール938g、37重量%ホルムアルデヒド水溶液1053g、キトサン(甲陽ケミカル社製、コーヨーキトサンSK-200、脱アセチル化度:75%以上)9.35g(フェノールに対して1重量%)、分散剤(ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、住友精化株式会社製)3.85g、アミノシラン(ダウ・東レ株式会社製、DOWSIL Z-6610 Silane)0.3gを反応容器に入れて撹拌し、40℃に加温した状態で撹拌しながら、硬化剤(トリエチレンテトラミン(TETA)、東ソー株式会社製)85.8gを水172.7gで希釈した液を滴下した後、1時間撹拌し、次いで60℃に昇温して1時間撹拌し、さらに95℃に昇温して6時間撹拌して反応させて、フェノール樹脂組成物の微粒子を生成した。反応液は常時アルカリ条件であった。その後、デカンテーションにより水道水にて数回洗浄した後、吸引濾過装置で脱水し、さらに、熱風乾燥機で115℃、3時間乾燥し、キトサンがフェノール樹脂中に分散したフェノール樹脂組成物の微粒子を得た。得られたフェノール樹脂組成物の微粒子の電子顕微鏡による撮像を図1に示す。図1に示すように、白色のキトサンがフェノール樹脂中に分散した状態で存在していることが分かる。
【0066】
<フェノール樹脂組成物の微粒子の炭化処理>
得られた乾燥させたフェノール樹脂組成物の微粒子300gを予め500℃に設定したロータリーキルンに投入し、窒素ガス気流下で30分間保持して第一炭化処理を行った。続けて窒素パージによって冷却を行った。次に、第一炭化処理後のフェノール樹脂組成物の微粒子を予め800℃に設定したロータリーキルンに投入し、窒素ガス気流下で30分間加熱して第二炭化処理を行った。続けて窒素パージによって冷却を行った。
【0067】
<フェノール樹脂組成物の微粒子の賦活化処理>
得られた炭化処理後のフェノール樹脂組成物の微粒子をロータリーキルンに1068.9g投入し、室温から900℃に昇温し、窒素ガス気流下、水蒸気を5.1g/分の流量で3時間供給して、賦活化処理を行い、球形の活性炭A1により構成されるウイルス不活化用活性炭230.1gを得た。
【0068】
(実施例2:活性炭A2の製造)
<フェノール樹脂組成物の微粒子の製造>
フェノール847g、37重量%ホルムアルデヒド水溶液1095g、尿素(日産化学株式会社製、粒状)8.5g(フェノールに対して1重量%)、分散剤(HEC)3.4g、アミノシラン(ダウ・東レ株式会社製、DOWSIL Z-6610 Silane)0.3g、水166.6gを反応容器に入れて撹拌し、40℃に加温した状態で撹拌しながら、硬化剤(TETA)77gを水154gで希釈した液を滴下した後、30分間撹拌し、次いで60℃に昇温して1時間撹拌し、さらに95℃に昇温して6時間撹拌して反応させて、尿素に由来する化合物がフェノール樹脂中に分散したフェノール樹脂組成物の微粒子を生成した。尚、反応液は常時アルカリ条件であった。
【0069】
<フェノール樹脂組成物の微粒子の炭化処理及び賦活化処理>
得られた乾燥させたフェノール樹脂組成物の微粒子1050.2gを用いた以外は実施例1と同様にして炭化処理を行った。また、得られた炭化処理後のフェノール樹脂組成物の微粒子を用い、水蒸気を4時間供給した以外は、実施例1と同様にして賦活化処理を行い、球形の活性炭A2により構成されるウイルス不活化用活性炭245.7gを得た。
【0070】
(実施例3:活性炭A3の製造)
<フェノール樹脂組成物の微粒子の製造>
フェノール847g、37%重量%ホルムアルデヒド水溶液1095g、メラミン(日産化学株式会社製、粉末)29.5g(フェノールに対して3重量%)、分散剤(HEC)3.4g、アミノシラン(ダウ・東レ株式会社製、DOWSIL Z-6610 Silane)0.4g、水166.6gを反応容器に入れて撹拌し、40℃に加温した状態で撹拌しながら、硬化剤(TETA)77gを水154gで希釈した液を滴下した後、30分間撹拌し、次いで60℃に昇温して1時間撹拌し、さらに95℃に昇温して6時間撹拌して反応させて、メラミンに由来する化合物がフェノール樹脂中に分散したフェノール樹脂組成物の微粒子を生成した。尚、反応液は常時アルカリ条件であった。
【0071】
<フェノール樹脂組成物の微粒子の炭化処理及び賦活化処理>
得られた乾燥させたフェノール樹脂組成物の微粒子1074.0gを用いた以外は実施例1と同様にして炭化処理を行った。また、得られた炭化処理後のフェノール樹脂組成物の微粒子を用い、実施例1と同様にして賦活化処理を行い、球形の活性炭A3により構成されるウイルス不活化用活性炭279.1gを得た。
【0072】
(参考例1)
<フェノール樹脂の微粒子の製造>
フェノール800g、37%重量%ホルムアルデヒド水溶液1377g、分散剤(HEC)6.39g、水313.21gを反応容器に入れて撹拌し、40℃に加温した状態で撹拌しながら、硬化剤(TETA)72.3gを水144.5gで希釈した液を滴下した後、1時間撹拌し、次いで60℃に昇温して1時間撹拌し、さらに95℃に昇温して6時間撹拌して反応させて、フェノール樹脂組成物の微粒子を生成した。その後、デカンテーションにより水道水にて数回洗浄した後、吸引濾過装置で脱水し、さらに、熱風乾燥機で115℃、3時間乾燥し、フェノール樹脂の微粒子を得た。尚、反応液は常時アルカリ条件であった。
【0073】
<フェノール樹脂の微粒子の炭化処理及び賦活化処理>
得られた乾燥させたフェノール樹脂の微粒子1000gを用いた以外は実施例1と同様にして炭化処理を行った。また、得られた炭化処理後のフェノール樹脂の微粒子を用い、水蒸気を実施例1と同様にして賦活化処理を行い、球形の活性炭278gを得た。
【0074】
(参考例2)
市販のヤシガラ活性炭(TRABAC JOINT STOCK CORPORATION社製、Activated Carbon TBA)を用いた。
【0075】
(評価)
<DNA吸着能>
前述の方法により測定し、算出した。
【0076】
<活性炭の表面積>
BET法に基づき、実施例1~3のウイルス不活化用活性炭及び参考例1、2の活性炭のガス吸着量を測定し、BETの式により算出した。
【0077】
<活性炭の平均粒子径>
実施例1~3のウイルス不活化用活性炭及び参考例1の活性炭について、株式会社堀場製作所製、レーザ回析/散乱式粒子径分布測定装置 LA-960により測定した。D50(メジアン径)を平均粒子径とした。
参考例2の活性炭については、株式会社飯田製作所製、ロータップ型ふるい振盪機 ES-65を用い、JIS K 1474に準拠して平均粒子径を算出した。
【0078】
<ウイルス不活化>
実施例1~3のウイルス不活化用活性炭及び参考例1、2の活性炭、並びに、対照を用い、これらをSARS-CoV-2及びネコカリシウイルスのウイルス液に添加、混合したもの(試料)を室温で振とう保存して、所定時間後に試料のウイルス感染力価をTCID50法により測定することにより行った。
【0079】
(1)SARS-CoV-2について
<<ウイルス液の調製>>
SARS-CoV-2として、SARS-CoV-2(2019-nCoV/Japan/AI/I-004/2020株)を用い、このウイルスを、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン)を含むDMEM培地中でVeroE6細胞に、M.O.I.(multiplicity of infection)=1.0で感染させて、炭酸ガスインキュベーター(CO濃度:5%、37±1℃)内で24時間培養した。ウイルスに感染させた細胞を含む培養液ごと-80℃に凍結した後、融解して6000rpm、20分間遠心分離処理を行って、上澄みを採取した。この上澄みに含まれる培地をSephadex(登録商標)-G25を担体とするカラム(PD-10)を用いて、リン酸緩衝食塩水(Phosphate buffered saline;PBS)に置換した。これをPBS置換ウイルス(ウイルス液)として試験に供した。
【0080】
<<ウイルス不活化試験>>
実施例1~3のウイルス不活化用活性炭及び参考例1、2の活性炭100mgを1.5mLマイクロチューブに入れ、75℃で90分間加熱して殺菌した。これに前述のウイルス液50μLとPBS450uLを添加した。これを25℃の条件下、10分毎に撹拌する処理を6回行った。その後、遠心分離処理(6000rpm、10秒間)を行って、上澄みを得た。
対照として、1.5mLマイクロチューブにPBS450μLと前述のウイルス液50μLを添加した。これを、前述と同様に撹拌処理及び遠心分離処理を行って、上澄みを得た。
【0081】
<<ウイルス感染力価の測定>>
平底マイクロプレートの各ウェルにおいて、1%ウシ胎児血清(FCS)及び抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン)を含むDMEM培地100μLでVeroE6/TMPRSS2細胞を炭酸ガスインキュベーター(CO濃度:5%、37±1℃)内で培養した。各ウェルに、前述のウイルス不活化試験で得られた各上澄みを10倍段階希釈して、添加した。即ち、各上澄みを10倍、10倍、10倍、10倍、10倍、10倍、10倍、10倍に段階的にPBSで希釈した各液40μLを、6ウェルずつに接種して、炭酸ガスインキュベーター(CO濃度:5%、37±1℃)内で3日間培養した。培養後、倒立位相差顕微鏡を用いて細胞の形態変化(細胞変性効果)を指標にウイルス増殖を判定して、Reed&Muench法によりTCID50を算出して試料1mL当たりのウイルス感染力価(TCID50/mL)に換算した。
【0082】
(2)ネコカリシウイルスについて
<<ウイルス液の調製>>
ネコカリシウイルスとして、ネコカリシウイルス(Cha株)を用い、このウイルスを、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン)を含むDMEM培地中でCRFK細胞に、M.O.I.(multiplicity of infection)=1.0で感染させて、炭酸ガスインキュベーター(CO濃度:5%、37±1℃)内で22時間培養した。ウイルスに感染させた細胞を含む培養液ごと-80℃に凍結した後、融解して6000rpm、20分間遠心分離処理を行って、上澄みを採取し、これをウイルス液として試験に供した。
【0083】
<<ウイルス不活化試験>>
実施例1~3のウイルス不活化用活性炭及び参考例1、2の活性炭50mgを1.5mLマイクロチューブに入れ、70℃で60分間加熱して殺菌した。これにPBS225μL、前述のウイルス液25μLを添加し、25℃の条件下、5分毎に撹拌する処理を12回行った。その後、遠心分離処理(6000rpm、10秒間)を行って、上澄みを得た。
対照として、1.5mLマイクロチューブにPBS225μLと前述のウイルス液25μLを添加した。これを、前述と同様に撹拌処理及び遠心分離処理を行って、上澄みを得た。
【0084】
<<ウイルス感染力価の測定>>
平底マイクロプレートの各ウェルにおいて、1%ウシ胎児血清(FCS)及び抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシン)を含むDMEM培地100μLでCRFK細胞を培養した。各ウェルに、前述のウイルス不活化試験で得られた各上澄みを、(1)の場合と同様にして、10倍段階希釈して添加した後2日間培養し、TCID50を算出して試料1mL当たりのウイルス感染力価(TCID50/mL)に換算した。
【0085】
以上の結果を表1に示す。表1中、「感染力価」において、「<2.4×10」は検出限界未満であることを示す。
【0086】
【表1】
【0087】
表1に示すように、実施例のウイルス不活化用活性炭は、SARS-CoV-2及びネコカリシウイルスの感染力価が参考例の活性炭より大幅に小さく、優れたウイルス不活化能を有していることが分かる。
【0088】
(実施例4-1:活性炭B1の製造)
破砕されたヤシ殻(生ヤシ殻)を、85℃で4時間乾燥させた。次いで、振動ミル(中央化工機株式会社製、試験研究用小型振動ミル)にてさらに粉砕し、乾燥ヤシ殻粉末を得た。得られた乾燥ヤシ殻粉末に対して、キトサン(甲陽ケミカル社製、コーヨーキトサンSK-200、脱アセチル化度:75%以上、粉末)を10重量%、ベントナイト(株式会社ホージュン製、スーパークレイ)を5重量%となるように混合し、水を適量添加して混練した。得られた混練物を押出造粒機(不二パウダル株式会社製、ディスクペレッター)により造粒し、直径5mmの円柱形のペレットを得た。ペレットを100℃で2時間乾燥した。
乾燥後のペレット1000gをロータリーキルンに投入し、窒素雰囲気下で室温から900℃に160分間かけて段階的に昇温して炭化処理を行った。次いで、900℃で、窒素ガス気流下、水蒸気を5.1g/分の流量で2.5時間供給して、賦活化処理を行い、キトサンに由来する窒素原子を含む活性炭B1により構成されるウイルス不活化用活性炭203.5gを得た。
【0089】
(実施例4-2:活性炭B2の製造)
フェノール樹脂繊維の不織布(群栄化学工業株式会社製、カイノール不織布)14.6gを2重量%キトサン(甲陽ケミカル社製、コーヨーキトサンSK-200、脱アセチル化度:75%以上)水溶液90gに浸漬し、減圧下で不織布に水溶液を87.5g含浸させた。水溶液を含浸させた不織布を115℃で一昼夜恒温乾燥器内で乾燥させた。乾燥後の不織布の重量は16.4gであったことから、不織布に担持されたキトサンは1.8gであると算出され、繊維1g当たりのキトサン担持量は0.12gと算出される。
乾燥後のキトサン担持不織布を、静置式の外熱炉に入れ、窒素雰囲気下で室温から900℃に4時間かけて段階的に昇温して炭化処理を行った。次いで、900℃で、水蒸気を30分供給し、30分間賦活化処理を行い、キトサンに由来する窒素原子を含む布状の活性炭B3により構成されるウイルス不活化用活性炭4.1gを得た。
【0090】
(実施例5-1:活性炭D1の製造)
フェノール樹脂の球形の活性炭(台湾産協企業有限公司製、PF250)と、2重量%キトサン(甲陽ケミカル社製、コーヨーキトサンSK-200、脱アセチル化度:75%以上)水溶液とを、重量比で1/1となるように混合し、密封容器内で、常温で1時間浸漬し、2重量%キトサン水溶液の全量を活性炭に含浸(吸収)させた。
2重量%キトサン水溶液を含浸させた活性炭(含浸活性炭)を濾別後、115℃で一昼夜恒温乾燥器内で乾燥させた。
乾燥後の含浸活性炭500gをロータリーキルンに投入し、室温から900℃に昇温し、窒素ガス気流下、水蒸気を10g/分の流量で2.5時間供給して、追賦活処理を行い、キトサンに由来する窒素原子を含む球形の活性炭D1により構成されるウイルス不活化用活性炭262.5gを得た。
【0091】
(実施例5-2:活性炭D2の製造)
2重量%キトサン水溶液に替えて、2重量%メラミン(日産化学株式会社製)水溶液を用いた以外は、実施例5-1と同様にして、メラミンに由来する窒素原子を含む活性炭D2により構成されるウイルス不活化用活性炭を得た。
【0092】
(実施例5-3:活性炭D3の製造)
市販のヤシ殻粉砕活性炭(Philips Carbon社製、PC10/20-1000)を115℃で4時間、恒温乾燥器で乾燥させた。次いで、乾燥後のヤシ殻粉砕活性炭と、1重量%キトサン(甲陽ケミカル社製、コーヨーキトサンSK-200、脱アセチル化度:75%以上)水溶液とを、重量比で1/1となるように混合し、密封容器内で、常温で1時間浸漬し、1重量%キトサン水溶液の全量を活性炭に含浸(吸収)させた。
1重量%キトサン水溶液を含浸させた活性炭(含浸活性炭)を濾別後、115℃で一昼夜恒温乾燥器内で乾燥させた。
乾燥後の含浸活性炭4000gをロータリーキルンに投入し、室温から900℃に昇温し、窒素ガス気流下、水蒸気を5.1g/分の流量で1時間供給して、追賦活処理を行い、キトサンに由来する窒素原子を含む活性炭D3により構成されるウイルス不活化用活性炭3749gを得た。
【0093】
(実施例5-4:活性炭D4の製造)
1重量%キトサン水溶液に替えて、1重量%メラミン(日産化学株式会社製)水溶液を用いた以外は、実施例5-3と同様にしてメラミンに由来する窒素原子を含む活性炭D4により構成されるウイルス不活化用活性炭を得た。
【0094】
実施例4-1~実施例5-4の活性炭B1、B2、D1~D4により構成されるウイルス不活化用活性炭を用いて、実施例1と同様にして、「DNA吸着能」、「活性炭の表面積」、「ウイルス不活化」を測定した。また、実施例4-2以外は、ウイルス不活化用活性炭の平均粒子径を測定した。結果を表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
表2に示すように、実施例4-1~実施例5-4の活性炭B1、B2、D1~D4により構成されるウイルス不活化用活性炭は、SARS-CoV-2及び/又はネコカリシウイルスの感染力価が小さく、優れたウイルス不活化能を有していることが分かる。
図1