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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】交流電圧ゼロクロス検出回路構造体
(51)【国際特許分類】
   G01R 19/175 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
G01R19/175
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020165075
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057024
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】520381849
【氏名又は名称】株式会社システム設計
(73)【特許権者】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】荘村 文夫
(72)【発明者】
【氏名】石橋 政三
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-235125(JP,A)
【文献】特開2004-279278(JP,A)
【文献】特開2005-123977(JP,A)
【文献】特開2019-056659(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110346637(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 19/00-19/32、
G05F 1/12-1/44、
1/45-1/56、
1/56-1/613、
1/613-1/618、
1/618-7/00、
H03K 5/00-5/02、
5/08-5/1254、
5/12-5/26、
99/00、
17/00-17/70、
17/74-17/98、
H05B 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源信号を取得する交流電源信号取得部と、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラと、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラと、
「交流電源信号が負正反転する同一のタイミング領域で、第二のフォトカプラの信号がLからHに切り替わる第一タイミングと第一のフォトカプラの信号がHからLに切り替わる第二タイミングと、の時間差」、又は/及び、
「交流電源信号が正負反転する同一のタイミング領域で、第二のフォトカプラの信号がHからLに切り替わる第三タイミングと第一のフォトカプラの信号がLからHに切り替わる第四タイミングと、の時間差」、を取得する時間差取得部と、
取得した前記時間差の二分の一の時間長である補正時間長を用いて交流電源信号の電圧0のタイミングを取得するゼロクロスタイミング取得部と、
からなる交流電圧ゼロクロス検出回路構造体であって、
さらに
取得した時間差の複数を統計処理して補正時間長を取得する補正時間長取得部を有し、
補正時間長取得部において、取得した複数の前記時間差に1/2をかけた時間長を蓄積保持し統計処理して取得した補正時間長から得た補正時間長の所定範囲を、取得した前記時間差に1/2をかけた時間長が外れる場合には、ゼロクロスタイミング取得を行わない交流電圧ゼロクロス検出回路構造体
【請求項2】
第一のフォトカプラと第二のフォトカプラの出力が信号Hから信号Lへ切り替わる遅延時間又は/及び第一のフォトカプラと第二のフォトカプラの出力が信号Lから信号Hに切り替わる前倒時間が略平等である請求項1に記載の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体。
【請求項3】
第一のフォトカプラ及び第二のフォトカプラは、フォトカプラONで出力がLとなる請求項1または請求項2のいずれか一に記載の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体。
【請求項4】
ゼロクロスタイミング取得部は、ゼロクロスタイミングを、交流電源信号が正から負への反転時には、第一のフォトカプラの信号がゼロクロスタイミングの直近でLからHへ立ち上がるタイミングと補正時間長を用いて取得し、交流電源信号が負から正への反転時には、第二のフォトカプラの信号がゼロクロスタイミングの直近でLからHへ立ち上がるタイミングと補正時間長を用いて取得する先取手段を有する請求項1から請求項3のいずれか一に記載の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体。
【請求項5】
交流電源信号を取得する交流電源信号取得ステップと、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラから、交流電源波形が正から負に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングから、前倒時間分前倒しで、信号がLからHに立ち上がるタイミングである第四タイミングを取得する第四タイミング取得ステップと、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラから交流電源信号が正から負に変化する前記したタイミングと同じタイミングから、遅延時間分遅延して、信号がHからLに立ち下がるタイミングである第三タイミングを取得する第三タイミング取得ステップと、
第三タイミングと、第四タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報を取得する時間差情報取得ステップと、
この時間差情報と、第三タイミングと第四タイミングよりも後続する任意の第三タイミング又は任意の第四タイミングと、を用いて前記交流電源信号のゼロクロスタイミングを取得するゼロクロスタイミング取得ステップと、
からなる計算機であるゼロクロス検出回路構造体の動作方法。
【請求項6】
交流電源信号を取得する交流電源信号取得ステップと、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラから、交流電源波形が負から正に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングから、前倒時間分前倒しで、信号がLからHに立ち上がるタイミングである第一タイミングを取得する第一タイミング取得ステップと、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラから交流電源信号が正から負に変化する前記したタイミングと同じタイミングから、遅延時間分遅延して、信号がHからLに立ち下がるタイミングである第二タイミングを取得する第二タイミング取得ステップと、
第一タイミングと、第二タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報をも取得する時間差情報取得ステップと、
この時間差情報と、第一タイミングと第二タイミングよりも後続する任意の第一タイミング又は任意の第二タイミングと、を用いて前記交流電源信号のゼロクロスタイミングを取得するゼロクロスタイミング取得ステップと、
からなる計算機であるゼロクロス検出回路構造体の動作方法。
【請求項7】
時間差情報取得ステップは、第三タイミングと、第四タイミングのペアを複数取得して統計処理することにより得られる統計的な時間差を示す情報である統計時間差情報を取得する統計時間差情報取得サブステップを有し、
前記ゼロクロスタイミング取得ステップは、この統計時間差情報を用いてゼロクロスタイミングを取得する統計ゼロクロスタイミング取得サブステップを有する請求項5に記載の計算機であるゼロクロス検出回路構造体の動作方法。
【請求項8】
時間差情報取得ステップは、第一タイミングと、第二タイミングのペアを複数取得して統計処理することにより得られる統計的な時間差を示す情報である統計時間差情報を取得する統計時間差情報取得サブステップを有し、
前記ゼロクロスタイミング取得ステップは、この統計時間差情報を用いてゼロクロスタイミングを取得する統計ゼロクロスタイミング取得サブステップを有する請求項6に記載の計算機であるゼロクロス検出回路構造体の動作方法。
【請求項9】
交流電源信号を取得する交流電源信号取得ステップと、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラから、交流電源信号が正から負に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングから、前倒時間分前倒しで、信号がLからHに立ち上がるタイミングである第四タイミングを取得する第四タイミング取得ステップと、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラから交流電源波形が正から負に変化する際に信号がHからLに立ち下がるタイミングであって前記したタイミングと同じタイミングから、遅延時間分遅延して、信号がHからLに立ち下がるタイミングである第三タイミングを取得する第三タイミング取得ステップと、
第三タイミングと、第四タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報を取得する時間差情報取得ステップと、
この時間差情報と、第三タイミングと第四タイミングよりも後続する任意の第三タイミング又は任意の第四タイミングと、を用いて前記交流電源信号のゼロクロスタイミングを取得するゼロクロスタイミング取得ステップと、
を、計算機であるゼロクロス検出回路構造体に読み取り実行可能に記述したプログラム。
【請求項10】
交流電源信号を取得する交流電源信号取得ステップと、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラから、交流電源信号が負から正に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングから、前倒時間分前倒しで、信号がLからHに立ち上がるタイミングである第一タイミングを取得する第一タイミング取得ステップと、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラから、交流電源信号が負から正に変化する際に、信号がHからLに立ち下がるタイミングであって前記したタイミングと同じタイミングから、遅延時間分遅延して、信号がHからLに立ち下がるタイミングである第二タイミングを取得する第二タイミング取得ステップと、
第一タイミングと、第二タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報をも取得する時間差情報取得ステップと、
この時間差情報と、第一タイミングと第二タイミングよりも後続する任意の第一タイミング又は任意の第二タイミングと、を用いて前記交流電源信号のゼロクロスタイミングを取得するゼロクロスタイミング取得ステップと、
を、計算機であるゼロクロス検出回路構造体に読み取り実行可能に記述したプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧のゼロクロスポイントを検出する交流電圧ゼロクロス検出回路構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ヒータ制御のためのサイリスタ位相制御方式は、交流電流の周期毎におけるON時間の割合をサイリスタを用い変化させることで出力電圧を0~100%にて制御する方式である。このような制御を行うためには、ゼロクロスポイント(交流電圧が0Vになるタイミング)を検出するゼロクロス検出を正確に行うことが重要である。
【0003】
従来のゼロクロス検出は、交流電圧を全波整流し、全波整流した出力電圧を入力信号とする一のフォトカプラを用い、フォトカプラを構成するフォトトランジスタがオフ(コレクタ-エミッタ間が非導通状態)となる期間を計測し、その期間に基づいてゼロクロスポイントを検出する。
【0004】
先行技術である文献1に係る技術を図14を用いて説明する。文献1の技術は、フリッカ(蛍光灯やブラウン管などのちらつき)の発生を防止するためにゼロクロスポイントでヒータ(1411)をオンする制御を行うヒータ制御装置(1401)であり、ゼロクロスポイントを検出するゼロクロス検出装置(1402)を有するものである。このヒータ制御装置は、図14の(a)に示すような回路構成を有する。ゼロクロス検出装置(1402)は、電源(1403)から供給される交流電圧を全波整流する整流回路(1404)と、整流回路(1404)の出力電圧を入力信号とするフォトカプラ(1405)を備え、フォトカプラ(1405)は、発光ダイオードD1とフォトトランジスタTr1から構成されており、発光ダイオードD1のアノードが抵抗R1を介して整流回路(1404)の出力に接続され、発光ダイオードD1のカソードはグランドに接続されている。
【0005】
また、フォトトランジスタTr1のコレクタは、抵抗R2を介して直流電源VDDに接続されるとともにトランジスタTr2のベースに接続され、フォトトランジスタTr1のエミッタはグランドに接続されている。また、トランジスタTr2のコレクタは抵抗R3を介して直流電源VDDに接続されており、トランジスタTr2のエミッタはグランドに接続されている。また、制御部(1406)は、ゼロクロス時間計測手段(1407)、遅延時間算出手段(1409)、遅延手段(1410)を有しており、トランジスタTr2のコレクタとスイッチ部(1408)に接続されている。
【0006】
また、図14の(b)は交流電源(1403)の電圧波形を示し、図14の(c)はフォトカプラ(1405)の入力信号波形(整流回路(1404)の出力電圧波形)を示している。また、図14の(d)はトランジスタTr2のコレクタ出力の波形を示し、図14の(e)はヒータ制御信号の波形を示している。
【0007】
そして、交流電源(1403)からの交流電圧(図14の(b))は、整流回路(1404)で全波整流され、全波整流された電圧(図14の(c))は抵抗R1を介してフォトカプラ(1405)の発光ダイオードD1に印加される。これにより、発光ダイオードD1には交流電源(1403)の電圧に比例した順方向電流が流れ、この順方向電流により発光ダイオードD1が発光する。
【0008】
また、フォトカプラ(1405)のフォトトランジスタTr1は、この発光ダイオードD1からの発光を受けると、ベース電流が流れ、そのコレクタ-エミッタ間が導通する。従って、フォトトランジスタTr1のコレクタの電圧はグランド電圧となるので、トランジスタTr2のベース電流が流れることはなく、トランジスタTr2はオフになり、トランジスタTr2のコレクタの電圧は「H」(直流電源VDDの電圧)になる。
【0009】
また、交流電源(1403)の電圧の振幅が小さくなると、発光ダイオードD1に流れる順方向電流は小さくなり、発光ダイオードD1の発光量が低下する。そして、発光ダイオードの発光量が低下すると、フォトトランジスタTr1にベース電流が流れなくなり、フォトトランジスタTr1はオフとなる。すると、トランジスタTr2のベースには抵抗R2を介して直流電源VDDからベース電流が流れるので、トランジスタTr2はオンになり、トランジスタTr2のコレクタの電圧は「L」(グランド電圧)になる。
【0010】
換言すれば、トランジスタTr2がオンになるときの交流電源(1403)の電圧をVthとすると、図14の(c)、図14の(d)に示すように、交流電源(1403)の電圧の絶対値がVthより小さいときに、トランジスタTr2がオンになり、トランジスタTr2のコレクタの電圧は「L」(グランド電圧)になる。また、トランジスタTr2がオンになっている期間、即ち、トランジスタTr2のコレクタの電圧が「L」になっている期間は、交流電源(1403)の電圧波形のゼロクロス付近の期間であるので、この期間をゼロクロス期間と呼称し、このゼロクロス期間を示す信号である図14の(d)に示す信号をゼロクロス信号と呼称する。
【0011】
そして、このゼロクロス信号は制御部(1406)に入力され、制御部(1406)は遅延手段(1410)により、このゼロクロス信号の立ち下がり時点から遅延時間算出手段(1409)により算出された遅延時間だけ遅延させたヒータ制御信号(図14の(e))をスイッチ部(1408)に出力する。そして、スイッチ部(1408)は与えられたヒータ制御信号をトリガとしてオン制御され、交流電源(1403)からの交流電力がヒータ(1411)に与えられる。
【0012】
このゼロクロス信号の立ち下がり時点から遅延時間算出手段(1409)により算出された遅延時間だけ遅延させたヒータ制御信号(図14の(e))をスイッチ部(1408)に出力する。そして、スイッチ部(1408)は与えられたヒータ制御信号をトリガとしてオン制御され、交流電源(1403)からの交流電力がヒータ(1411)に与えられる。
【0013】
ここで、制御部(1406)の遅延時間算出動作は、ヒータ制御装置(1401)に電源が投入されると、即ち、制御部(1406)に電源が投入されると、制御部(1406)は遅延時間算出動作を開始する。次に、ゼロクロス信号を検出したかどうかを判断する。これは、トランジスタTr2のコレクタ出力が「L」になったかどうか、即ち、ゼロクロス信号の立ち下がりを検出したかどうかを判断する。そして、ゼロクロス信号の立ち下がりを検出すると、そのゼロクロス信号の幅の計測に入る。即ち、ゼロクロス信号の立ち下がりから立ち上がりまでの時間をゼロクロス時間計測手段(1407)により計測する。このゼロクロス信号の立ち下がりから立ち上がりまでの時間は、ゼロクロス期間の長さであるので、ゼロクロス時間と呼称する。そして、ゼロクロス時間を計測し終わると、次に遅延時間算出手段(1409)により遅延時間を算出する。一方、ゼロクロス時間が計測できなかった場合は、再度、ゼロクロス信号の検出を始める。
【0014】
この遅延時間算出手段(1409)による遅延時間の算出は、計測したゼロクロス時間を1/2倍することにより行われる。例えば、図14の(b)に示す交流電圧波形の場合、ゼロクロス時間計測手段(1407)により計測したゼロクロス時間をtとすると、次に制御部(1406)は、遅延時間算出手段(1409)により、ゼロクロス時間tを1/2倍した時間である遅延時間t/2を算出する。そして、制御部(1406)は、遅延手段(1410)により、ゼロクロス期間の開始時点、即ち、ゼロクロス信号が立ち下がったときから、算出した遅延時間t/2だけ遅延させてヒータ制御信号(図14の(e))をスイッチ部(1408)に出力する。以上のように、ゼロクロスポイントを検出し、それに基づいてヒータ制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2005-123977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1のヒータ制御装置におけるゼロクロス検出装置では、一見すると正確にゼロクロスポイントを検出しているように思える。しかしながら、実際に整流回路を経由した電圧は、整流に用いるダイオードの動作閾値電圧(一般には約0.6V、製品ごとに多少異なる)などにより、図14の(c)に描かれているような理想的な波形で出力されない。ダイオードの動作閾値電圧が0.6Vの場合、入力電圧波形+0.6Vから-0.6Vの範囲は整流用ダイオードはONせず、図14の(c)に示すフォトカプラの入力電圧波形(全波整流で折り返した波形)の山と山の間には0Vの平坦な部分が生じてしまう。そのため図14の(d)に示すtは広がってしまい、フォトカプラの動作閾値電圧に加え整流用ダイオードの閾値電圧の影響を受け、高精度にゼロクロスポイントを検出することは困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで、上記課題を解決するために、第一の発明として、交流電源信号を取得する交流電源信号取得部と、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラと、
取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラと、
「交流電源信号が負正反転する同一のタイミング領域で、第二のフォトカプラの信号がLからHに切り替わる第一タイミングと第一のフォトカプラの信号がHからLに切り替わる第二タイミングと、の時間差」、又は/及び、
「交流電源信号が正負反転する同一のタイミング領域で、第二のフォトカプラの信号がHからLに切り替わる第三タイミングと第一のフォトカプラの信号がLからHに切り替わる第四タイミングと、の時間差」、を取得する時間差取得部と、
取得した時間差の二分の一の時間長である補正時間長を用いて交流電源信号の電圧0のタイミングを取得するゼロクロスタイミング取得部と、
からなる交流電圧ゼロクロス検出回路構造体を提供する。
【0018】
さらに、第二の発明として、第一の発明を基礎として、第一のフォトカプラと第二のフォトカプラの出力が信号Hから信号Lへ切り替わる遅延時間又は/及び第一のフォトカプラと第二のフォトカプラの出力が信号Lから信号Hに切り替わる前倒時間が略平等である交流電圧ゼロクロス検出回路構造体を提供する。
【0019】
さらに、第三の発明として、第一の発明または第二の発明のいずれか一を基礎として、取得した時間差の複数を統計処理して補正時間長を取得する補正時間長取得部をさらに有する交流電圧ゼロクロス検出回路構造体を提供する。
【0020】
さらに、第四の発明として、第一の発明から第三の発明のいずれか一を基礎として、第一のフォトカプラ及び第二のフォトカプラは、フォトカプラONで出力がLとなる交流電圧ゼロクロス検出回路構造体を提供する。
【0021】
さらに、第五の発明として、第一の発明から第四の発明のいずれか一を基礎として、ゼロクロスタイミング取得部は、ゼロクロスタイミングを、交流電源信号が正から負への反転時には、第一のフォトカプラの信号がゼロクロスタイミングの直近でLからHへ立ち上がるタイミングと補正時間長を用いて取得し、交流電源信号が負から正への反転時には、第二のフォトカプラの信号がゼロクロスタイミングの直近でLからHへ立ち上がるタイミングと補正時間長を用いて取得する先取手段を有する交流電圧ゼロクロス検出回路構造体を提供する。
【0022】
さらに、第一から第五の発明の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体に対応したそれぞれの動作方法、同じくそれぞれの動作プログラムも提供する。またそれぞれの動作プログラムは記録媒体に記録されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、より高精度にゼロクロスポイントを検出しうるゼロクロス検出回路構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1にかかわる機能ブロック図。
図2】本発明の実施形態1にかかわるフローチャート。
図3】本発明の実施形態1にかかわるハードウェア構成概略図。
図4】本発明の実施形態1の効果を説明する信号波形模式図。
図5】本発明の実施形態3にかかわる機能ブロック図。
図6】本発明の実施形態3の補正時間長算出を説明する信号波形模式図。
図7a】本発明の実施形態3にかかわるフローチャート。
図7b】本発明の実施形態3にかかわるフローチャート。
図8】本発明の実施形態3にかかわるハードウェア構成概略図。
図9】本発明の実施形態5にかかわる機能ブロック図。
図10】本発明の実施形態5にかかわるフローチャート。
図11】本発明の実施形態1にかかわるマイコンの機能ブロック図。
図12】本発明の実施形態6にかかわるハードウェアの概略図。
図13a】本発明の実施形態6にかかわる3相交流の各波形の図。
図13b】本発明の実施形態6にかかわる3相交流のゼロクロス検出の説明図。
図14】従来技術の回路構成概略図と回路中の波形模式図。
図15a】ゼロクロスポイントを用いた交流のON/OFF制御例の説明図。
図15b】ゼロクロスポイントを用いた交流のON/OFF制御例の説明図。
図15c】ゼロクロスポイントを用いた交流のON/OFF制御例の説明図。
図16】本発明の実施形態6の3相交流用ゼロクロス検出回路構造体を用いたヒータ回路の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0026】
なお、以下に記載する各実施形態の機能的構成は、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして実現することができ、これらについては後述する。また、本明細書に記載の各実施形態は装置として実現できるのみでなく、その一部または全部を動作方法としても実現可能である。また、このような装置の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをIC等のマイコンチップのようなコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、及び同製品を固定した記録媒体(メモリチップ、メモリカード、マイコンチップ付属のEPROMなど、形態によらない)も、当然に本明細書に記載の各実施形態の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0027】
<実施形態1:主に請求項1>
<実施形態1 概要>
実施形態1に関して説明する。交流電圧ゼロクロス検出回路構造体は、第一のフォトカプラと第二のフォトカプラの2つのフォトカプラを用いてゼロクロス検出することを特徴とする。
【0028】
<実施形態1 構成>
以下,本発明の実施形態である交流電圧ゼロクロス検出回路構造体について,機能的構成,処理の流れ及び回路構成の順に説明する。
図1は、本実施形態の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体の実施の形態を示す機能ブロック図である。同図に示すように、交流電圧ゼロクロス検出回路構造体(0100)は、交流電源信号取得部(0101)、第一のフォトカプラ(0102)、第二のフォトカプラ(0103)、時間差取得部(0104)、ゼロクロスタイミング取得部(0105)から構成される。
なお、上記機能ブロックは本発明を実施するための一例であって、本発明が克服すべき課題及びその効果と矛盾しない範囲において適宜その機能を省略したり、新たな機能を付加したりしてよい。
【0029】
<実施形態1 交流電源信号取得部(0101)>
「交流電源信号取得部」(0101)は、交流電源信号を取得するように構成される。
本発明の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体を用いてゼロクロスを検出し、電源制御しようとする対象の部品又は製品に入力される電源から分岐し、同じ位相の交流電源から信号を得るようにする。交流電圧ゼロクロス検出回路構造体が入力を受ける交流電源信号と、制御対象の交流電源のスイッチ部での交流電源信号との間の電圧位相がずれないように回路を構成することが好ましい。制御するうえでは交流電源信号の半周期又は周期ごとにON/OFFしたり(図15a参照)、数周期ごとにON/OFFしたりする制御方法(図15b参照)と、半周期ごとにON/OFFの割合を変える位相制御方法(図15c参照)などがある。半周期又は周期単位でON/OFFする方法では、制御対象の電源電圧位相とずれが生じていれば、求めたゼロクロスポイントがずれてしまい、電圧がかかった状態でスイッチングすることにより、ノイズの発生や突入電流の原因となって、制御対象装置や同系統の電源につながる他の機器へ悪影響を及ぼす。位相制御方法では、位相0地点を起点に半周期内でON/OFF時間を変えるため、交流電圧ゼロクロス検出回路構造体と、制御対象との間の位相0地点を合致させなければならない。
【0030】
<実施形態1 第一のフォトカプラ(0102)>
「第一のフォトカプラ」(0102)は、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力するように構成される。フォトカプラは一般に、発光素子である発光ダイオードと、発光ダイオードの発光を受けてONされるフォトトランジスタなどを一つのパッケージに一体化した素子である。
フォトカプラを用いることで、電流制限抵抗など交流電圧位相へ影響しない構成で電圧を下げた交流電源信号により動作する発光ダイオード部と、ゼロクロスポイント検知のための受光素子であるフォトトランジスタやマイコンなど直流で動作する回路を、交流電源との位相をずらさないようにしたうえで、絶縁して構成できる。
【0031】
<実施形態1 第二のフォトカプラ(0103)>
「第二のフォトカプラ」(0103)は、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力するように構成される。
本実施例では図1、及び後述する図3において第一のフォトカプラ(0102)と第2のフォトカプラが2回路入りフォトカプラとして一体部品として記載されているが、1個ごとの単体の部品を用いて同様の回路構成としてもよい。
【0032】
<実施形態1 時間差取得部(0104)>
「時間差取得部」(0104)は、「交流電源信号が負正反転する同一のタイミング領域で、第二のフォトカプラの信号がLからHに切り替わる第一タイミングと第一のフォトカプラの信号がHからLに切り替わる第二タイミングと、の時間差」、又は/及び、
「交流電源信号が正負反転する同一のタイミング領域で、第二のフォトカプラの信号がHからLに切り替わる第三タイミングと第一のフォトカプラの信号がLからHに切り替わる第四タイミングと、の時間差」、を取得するように構成される。第一から第四タイミングに関しては、図4参照。後述の図3の回路構成概略図に記載あるように、パルス幅計測用のカウンタ機能を内含した市販マイコンチップを使用すると、簡易に機能を得ることができる。
例えばMicrochip Technology社製マイコンチップPIC16F1シリーズなどである。外部信号を入力信号としてのパルス幅又はHigh-Low1周期分の時間をカウントする機能などを有する。カウントする機能は例えば前記PIC16F1シリーズのある機種では、システム周波数が32MHzの時、1命令の実行に4サイクル必要なためにタイマカウントの周波数は32MHz/4=8MHzとなる。交流電源電圧信号50Hzの1周期時間は20msecであり、前記8MHzで計測すると1周期160000カウントとなり、16ビットメモリ領域を使用するカウンタでは上限65536を超えてしまい測れない。そのためプリスケーラ機能(1,4,8分周から選択)で4分周すると、40000カウントとなり、16ビットカウンタでも計測できるようになる。
また、東日本での一般商用交流単相100V電源(50Hz)において、フォトカプラのON/OFF閾値電圧約0.8Vと0Vの間の時間は、交流電圧波形が理想正弦波とした場合、約25μ秒である。前記8MHzのカウンタで計測すると約200カウント、4分周しても約50カウントとなり十分に計測できる。
交流電源信号が正負反転する際には、第一のフォトカプラの信号がLからHに替わるパルスの立ち上がりである第四タイミングをトリガとしてマイコンのカウンタが検出しカウントを開始する。遅れて第二のフォトカプラがHからLに替わるパルスの立ち下がりである第三タイミングをマイコンのカウンタが検出したところでパルス幅のカウントを停止する。時間差取得部(0104)は、この第三タイミングと第四タイミングの間のカウント数を得る。
逆に交流電源信号が負正反転する場合は、第二のフォトカプラの信号がLからHに替わるパルスの立ち上がりである第一タイミングをトリガとしてマイコンのカウンタが検出しカウントを開始し、第一のフォトカプラの信号がHからLに替わるパルスの立ち下りである第二タイミングをマイコンのカウンタが検出したところでパルス幅のカウントを停止する。時間差取得部(0104)は、この第一タイミングと第二タイミングの間のカウント数を得る。
時間差取得部(0104)は、カウンタがカウントする際のカウンタクロック周波数と分周値と、得たカウント数から時間に直して、ゼロクロスタイミング取得部(0105)へ伝達してもよいし、そのままカウント数として伝達してもよい。カウント数のまま伝達したほうが乗算とメモリ収納の処理時間を省略できる。以下本明細書中で、カウンタで計測した「時間」、「時間差」、「タイミング」、「時間長」などは時間の単位でなくとも、カウンタのカウント数単位又は、カウント数単位から派生した情報(例えばカウント数の整数倍)などであってもよく、読み替えることができる。カウント数単位又はカウント数から派生した情報の場合に1/2倍する等の処理時に割り切れない場合は、端数を切り上げる又は切り捨てるどちらを採用してもよい。割り切れない場合にどう処理するかあらかじめ定めておくのが好ましい。
【0033】
<実施形態1 ゼロクロスタイミング取得部(0105)>
「ゼロクロスタイミング取得部」(0105)は、取得した時間差情報の1/2の時間長である補正時間長を用いて交流電源信号の電圧0のタイミングを取得するように構成される。時間差取得部で得られた第一のフォトカプラと第二のフォトカプラのパルスの立ち上がり立ち下りタイミング差である時間差情報を1/2倍し、次の交流電源信号の半周期のゼロクロスポイントの補正に用いる。後述する実施形態でのように、交流電源信号が正負反転する特は、第一のフォトカプラの信号がLからHに替わる第四タイミングに対して、前記の時間差の1/2を加えて、ゼロクロスパルスを補正し出力する。ゼロクロスポイントが、電力需要変動による電源周波数のばらつき等の原因によりばらついた場合でも、半周期先に補正を反映できる。
なお、フォトカプラには、内蔵する発光ダイオードの動作閾値電圧および受光するフォトトランジスタの動作閾値電圧に起因して、電圧を0Vから印加してもすぐには受光信号出力開始せず、製品に拠るが約0.8Vに達したところで受光信号を出力し始める。そのため第一のフォトカプラと第二のフォトカプラは交流電圧が0Vから増減開始しても受光信号を開始するまでのON遅延時間を有する。第一のフォトカプラと第二のフォトカプラを単体の組合せで構成した場合は特に、両フォトカプラのON遅延時間が異なる場合がある。両フォトカプラのON遅延時間を装置の使用前に測定し、取得した2つのフォトカプラのON遅延時間長の比(例えばm:n又は1:kなどの比)を示す情報であるフォトカプラON遅延時間比情報を保持するフォトカプラON遅延時間比情報保持部を設け、前記取得した時間長を前記フォトカプラON遅延時間比情報に基づいて分配して補正時間長を求めるようにしてもよい。
【0034】
ゼロクロスパルスの出力の仕方は使用するマイコンの仕様にもよるが、例えば上述のように、第三タイミングと第四タイミング間の時間差または第一タイミングと第二タイミングとの時間差のみをカウンタで計測し、カウンタ値を1/2倍した補正時間長を保持する。交流電源電圧信号のおおよそ半波長分先又は半波長分の自然数倍先で第一タイミング又は第四タイミング時のフォトカプラ出力の信号変化をトリガとして、保持した補正時間長相当のカウント値進んだところでゼロクロスパルスの信号電位をH電位とL電位間で変化させる方法がある。わかりやすくするために、交流電源信号が正の期間はゼロクロスパルスの信号電位をH電位とし、負の期間はゼロクロスパルスの信号電位をL電位とするのが好ましい。
また、装置起動後又は装置起動後の適当なタイミングで基準タイマカウント値の監視開始し、フォトカプラ出力の変化点(第一から第四タイミング)のカウント値を記録し、その差分を1/2倍して補正時間長を得る。交流電源電圧信号のおおよそ半波長分先又は半波長分の自然数倍先で第一タイミング又は第四タイミング時のフォトカプラ出力の信号変化をトリガとして、保持した補正時間長相当のカウント値進んだところでゼロクロスパルスの信号電位をH電位とL電位間で変化させる方法などもある。検出開始時に交流電源信号が正であればDC正の所定電圧(例えば+3Vなど)を出力用端子から出力開始し、ゼロクロスタイミング取得部が取得した時間差情報の二分の一の時間長である補正時間長を用いて、半周期後に補正に用いる場合、所定のタイミングで出力中の所定DC電圧を正(H電位)から0V(L電位)にしたりすることで、ゼロクロスクロス検出を出力したりすることができる。また所定のタイミングで短い幅の矩形パルスを、パルスの立ち上がりがゼロクロスポイントになるように出力用端子から出力するなどの方法もあるが、本明細書中では、所定タイミングでゼロクロスパルスの電位を切り替える手法で説明する。
また半波長先に補正長を適用してゼロクロスタイミングを取得しているが、以下の説明中で、半波長分先へ適用している場合、半波長分の自然数倍先へも適用してもよいと読み替えることができる。
【0035】
<実施形態1 処理の流れ>
図2は、実施形態1の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体の動作フローチャート図である。この図で示すように実施形態の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体の動作方法では、交流電源信号取得ステップ(S0201)と、第四タイミング取得ステップ(S0202a)と、第三タイミング取得ステップ(S0202b)と、第一タイミング取得ステップ(S0202c)と、第二タイミング取得ステップ(S0202d)と、時間差取得ステップ(S0203)と、ゼロクロスタイミング取得ステップ(S0204)を有する。以下,各ステップについて説明する。
【0036】
ここで、交流電源波形が正から負に変化するタイミングにおいては、
交流電源信号取得ステップ(S0201)は制御予定の部品へ供給される交流電源から分岐した交流電源信号を取得する処理を行い、
第四タイミング取得ステップ(S0202a)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラから、交流電源波形が正から負に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングであって、信号がLからHに立ち上がるタイミングである第四タイミングを取得する処理を行い、
第三タイミング取得ステップ(S0202b)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラから交流電源波形が正から負に変化する際に信号がHからLに立ち下がるタイミングであって前記したタイミングと同じタイミングである第三タイミングを取得する処理を行い、
時間差取得ステップ(S0203)では、第四タイミングと、第三タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報を取得する処理を行い、
ゼロクロスタイミング取得ステップ(S0204)では、この時間差情報と、第三タイミングと第四タイミングよりも後続する任意の第三タイミング又は任意の第四タイミングと、を用いて前記交流電源のゼロクロスタイミングを取得する処理を行う。
【0037】
ここで、交流電源波形が負から正に変化するタイミングにおいては、
交流電源信号取得ステップ(S0201)は制御予定の部品へ供給される交流電源から分岐した交流電源信号を取得する処理を行い、
第一タイミング取得ステップ(S0202c)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラから、交流電源波形が負から正に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングであって、信号がLからHに立ち上がるタイミングである第一タイミングを取得する処理を行い、
第二タイミング取得ステップ(S0202d)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラから、交流電源波形が負から正に変化する際に、信号がHからLに立ち下がるタイミングであって前記したタイミングと同じタイミングである第二タイミングを取得する処理を行い、
時間差取得ステップ(S0203)では、第一タイミングと、第二タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報をも取得する処理を行い、
ゼロクロスタイミング取得ステップ(S0204)では、この時間差情報と、第一タイミングと第二タイミングよりも後続する任意の第一タイミング又は任意の第二タイミングと、を用いて前記交流電源のゼロクロスタイミングを取得する処理を行う。
時間差取得ステップ(S0203)後に、得られた時間差情報が正常な範囲内の値か、あきらかに異常とみなせるような値、例えば半波長相当分など、の時には、異常と判断し算出した時間差情報を用いないように構成することもできる。その場合は、前回算出し得られた時間差情報を再度使用したり、時間差がなかったとして0として処理したりすることができる。
このような一連の処理を交流電圧ゼロクロス検出回路構造体に実行させる動作方法である。
【0038】
<実施形態1 ハードウェア構成>
本実施形態における構造体のハードウェア構成について,図を用いて説明する。図3は、実施形態1の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体(0300)の回路構成を説明するための概略図である。交流電源(0301)、電流制限抵抗(0302)、2回路入りフォトカプラ(0303)、マイコン(0304)、カウンタ(0305)、ゼロクロスパルス生成(0306)などから構成される。
交流電源(0301)からゼロクロスポイントを検出するために信号を得るが、検出したゼロクロスポイントをもとに交流電源(0301)からの電源をスイッチングする。検出に用いたゼロクロスポイント用交流電源信号と、スイッチング部分の交流電源の位相がずれないようにするのが好ましい。電流制限抵抗は、フォトカプラへの入力用交流の電流と電圧を制限するためのものである。
2回路入りフォトカプラ(0303)については、1回路ごとのフォトカプラを使用して構成してもよい。
【0039】
マイコンは一般市販のものを使用するが、前述のPIC16F1シリーズのようにカウンタを内蔵し、パルス生成機能をもった製品の仕様を想定している。図11を用いて、マイコンの構成を説明する。マイコン(1100)は、制御回路(1101)、演算回路(1102)、一時記憶に用いるRAMからなるレジスタ(1103)、データを記憶するRAMからなるデータメモリ(1104)、マイコンの各種動作実行のためのクロック発信器(1105)、種種のプログラムを格納する不揮発メモリからなるプログラムメモリ(1106)、各種ポートを制御するポート制御(1107)、内蔵クロックや外付け水晶発振器などのパルスを基にするタイマや、外部入力をトリガにカウントを開始するカウンタ機能を有するカウンタ/タイマ(1108)、外部との通信を行うシリアル通信(1109)、A-D/D-Aコンバータ(1110)などから構成される。
別個のPC上のプログラム開発用ソフトウェアで、C言語などの上級言語やアセンブラなどで記述されたプログラムは、専用の治具を用いて、マイコンに書き込みを行う。書き込まれるプログラムはマイコン内のプログラムメモリ(1106)に格納される。プログラムメモリ(1106)はEEPROMやフラッシュメモリなど、電源供給されなくても記録を保持し、書き換え可能な種類のメモリが使われる。プログラムとしては、ゼロクロス検出のための、フォトカプラの出力信号の立ち上がり立ち下りタイミングをトリガとしてカウンタ/タイマ(1108)に取り込みカウンタを動作するプログラム、得られた時間差情報であるカウント数をもとにゼロクロスパルスを生成するプログラムなどが格納される。
フォトカプラの出力信号をカウンタ/タイマ(1108)に入力し、立ち上がり又は立ち下りのタイミングを感知しトリガとして、カウントを開始する。基準クロックのパルス数をカウントし、対応するレジスタをカウントアップしていく。再度立ち上がり又は立ち下がりを検知したら、カウントを中止する。得られたカウント数に対し演算部が1/2をかけ、結果をデータメモリに格納する。生成したゼロクロスパルスを前記結果を用い修正し出力する、といった動作を行う。
カウンタとパルス生成機能などをマイコン外の部品としても本発明の趣旨には反しない。1個のマイコン内に集積されていたほうが、安価に、小型化でき、利便性が増すため好ましい。
【0040】
図4に、図3の構成の回路中のa、b、c、dでの信号波形を示す。横軸は時間を表し、縦軸は電圧を表す。一番上のaは図3のa点すなわち交流電源(0301)での正弦波である電源信号電圧波形を示す。交流電圧ゼロクロス検出回路構造体(0300)が制御しようとする部品へ供給される交流電源と同じ位相を持つように分岐して得た電圧信号を表すa点が正側の時、2回路入りフォトカプラ(0303)内の第一のフォトカプラ(0303a)に電流が流れ発光ダイオードが点灯し始める。図4の一番上の正弦波波形はa点の電圧信号を表し、図中のゼロクロス(電圧0Vと電圧信号の交叉部)を挟むように配した水平の直線は、第一のフォトカプラ及び第二のフォトカプラのON/OFF閾値電圧を表す。電源信号(a点)が正の期間は第一のフォトカプラ(0303a)内の発光ダイオードが点灯しフォトトランジスタが受光してONし、b点がフォトトランジスタを介して回路の0Vとつながるため、L電位となる。逆に電源信号(a点)が負側となると第一のフォトカプラ(0303a)内の発光ダイオードが点灯しなくなり、フォトトランジスタがOFFするため、b点は抵抗Rを介して直流の正電位であるVcc電位(H電位)が供給されH電位となる。電源信号(a点)が負側の場合、第二のフォトカプラ(0303b)の発光ダイオードが点灯し、フォトトランジスタがONするため、今度はc点がH電位からL電位に替わる。なお両フォトカプラがONした際にb点c点の電位がL電位ではなくH電位になるように回路を構成することもできるが、文献1の技術である図14に示すようにトランジスタなどの部品点数が増える。
【0041】
電源の交流波形の正負によって第一のフォトカプラ(0303a)と第二のフォトカプラ(0303b)が交互にONし、b点とc点の電位が矩形波状に変化する。前述した第1のフォトカプラ出力、第二のフォトカプラ出力のH電位とL電位との間の切り替わりタイミングである、第一タイミングから第四タイミングを図4に示す。カウンタ(0305)により、2つの矩形波状のパルスの立ち上がりと立ち下りとの間「第一タイミング-第二タイミング」又は「第三タイミング-第四タイミング」を計測し、タイミング時間差算出を行う。
発光ダイオードがONする閾値電圧、及びフォトトランジスタがONする閾値電圧により、電源信号が負から正、正から負へ切り替わるときに、正しく電圧0VでONOFFしない。そのため、電源電圧が0Vになる点付近のb点とc点でのパルス波形を比べると、立ち上がり立ち下りに時間差情報tが生じる。時間差情報tはカウンタでのカウント値の形式であってもよい。
【0042】
得られた時間差情報tをゼロクロスパルス生成(0306)にて1/2をかけた値を用いて、半波長分先又は半波長分の自然数倍先のゼロクロスパルスの立ち上がり立ち下りタイミングへ補正をかける。
半波長分先又は半波長分の自然数倍先のゼロクロスポイントに補正をかけるとは、例えば電源信号波形が負から正に替わるときに時間差情報tの1/2の値を求め、次に正から負へ替わる半波長分先又は半波長分の自然数倍先のゼロクロスポイントの補正に用いることができる、ということである。
また、算出した時間差情報の1/2の値を蓄積保持し、算出したばかりの値が明らかに異常な値(例えば、半波長分の時間差情報など)を示す場合には、補正に用いず暫定補正時間長としてあらかじめ設定した値や、前回の値を用いるなど、異常な値を示した時間差情報の1/2の値を用いない処理をするように構成できる。
ゼロクロスパルスを交流電源電圧ゼロクロス検出回路構造体(0300)の外のスイッチ部へ出力する。サイリスタや光MOS-FETリレーなどのスイッチング素子からなるスイッチ部のON/OFFタイミングをゼロクロスパルス信号を用いてコントロールする。ゼロクロスポイント(ゼロクロスパルスの立ち上がり又は立ち下り)でスイッチ部をON/OFF作動させることで、出力に対しノイズ発生や突入電流の発生を抑えることができたり、位相制御による出力調整において制御の起点をより正確にすることができる。
【0043】
全波整流器と1個のフォトカプラを用いたゼロクロスポイント検出方法では、整流後の理想ではない波形によりゼロクロスポイントの検出がずれる懸念があるが、整流しない交流電源電圧波形を基に2個のフォトカプラを用いて各々が正負、負正の変化を検出することにより、高精度にゼロクロスポイントを算出できる。
【0044】
<実施形態2:主に請求項2>2回路入りのフォトカプラの特性が略平等
<実施形態2 概要>
実施形態2に関して説明する。実施形態1を基礎として、第一のフォトカプラと第二のフォトカプラの出力が信号Lから信号Hに切り替わる前倒時間又は/及び信号Hから信号Lへ切り替わる遅延時間が略平等であるように構成されている。
フォトカプラを構成する発光ダイオードの発光までの閾値電圧、受光素子であるフォトダイオードのONするための閾値電圧のために、0Vから動作閾値電圧に達するまでの時間差が生じ、ゼロクロスポイントからフォトカプラがONするまでには遅延時間が生じる。逆に動作閾値を超えた電圧から徐々に0Vに向かって電圧が降下していく際には、0V(ゼロクロスポイント)の手前の閾値電圧に達した時にフォトカプラがオフするため、ゼロクロスポイントより前倒しでONからOFFへ切り替わる。これらの遅延又は前倒時間が略平等であることが実施形態2の特徴である。
なお、上記機能ブロックは本発明を実施するための一例であって、本発明が克服すべき課題及びその効果と矛盾しない範囲において適宜その機能を省略したり、新たな機能を付加したりしてよい。
【0045】
以下、図1を用いて実施形態2の機能的構成を説明する。
< 実施形態2 第一のフォトカプラ(0102)、第二のフォトカプラ(0103)>
「第一のフォトカプラ」(0102)の出力が信号Hから信号Lへ切り替わる際の遅延時間及び「第二のフォトカプラ」(0103)の出力が信号Lから信号Hに切り替わる前倒時間、「第一のフォトカプラ」(0102)の出力が信号から信号へ切り替わる前倒時間及び「第二のフォトカプラ」(0103)の出力が信号から信号に切り替わる遅延時間が略平等であるように構成される。
本実施例では図1に示すように、第一のフォトカプラ(0102)及び第二のフォトカプラ(0103)は、1つのパッケージに封止された部品である。図3においても、第一のフォトカプラ(0303a)と第2のフォトカプラ(0303b)が2 路入りフォトカプラ(0303)として一体部品として記載されている。例えば東芝デバイス&ストレージ株式会社製フォトカプラTLP2105などを用いることができる。1個ごとの単体の部品を用いて同様の回路構成としてもよいが、同じ製造メーカの同じ製造ロットの部品を用いると、経験的に、遅延時間又は/及び前倒時間が略平等であるフォトカプラを得やすい。
第一のフォトカプラ(0102)の信号Hから信号Lへ切り替わる際の遅延時間及び第二のフォトカプラ(0103)の出力が信号Lから信号Hに切り替わる前倒時間、第一のフォトカプラ(0102)の出力が信号から信号へ切り替わる前倒時間及び第二のフォトカプラ(0103)の出力が信号から信号に切り替わる遅延時間が略平等である方が、「第一タイミング-第二タイミングの時間差」、又は「第三タイミング-第四タイミングの時間差」をカウンタで求め、その時間差情報に1/2をかけてゼロクロスポイントを算出する際に、算出した値の精度の向上が期待できる。前記時間差情報は、第一のフォトカプラと第二のフォトカプラの遅延時間又は/及び前倒時間の和であるためである。
そのため1個ごとの個別部品のフォトカプラを用いる場合は、判定基準を設け、前記ON遅延時間又は/及びON前倒時間が略平等なフォトカプラを選別してから使用することが好ましい。
2回路入りフォトカプラの場合、発光ダイオードおよびフォトトランジスタは同一メーカで製造され、2回路のそれぞれは近い特性を持っていることが期待できる。また、1個ごとのフォトカプラを別々に基板上にはんだ付け実装した場合のように、実装時の熱履歴や搭載抵抗や基板上配線負荷などによるフォトカプラ間の特性ばらつきが増加する懸念が少ない。


【0046】
実施形態2の処理の流れと、ハードウェア構成に関しては実施形態1と同様の為、説明を省略する。
【0047】
第一のフォトカプラと、第二のフォトカプラとはON遅延時間又は/及びON前倒時間が略平等であることにより、交流電源電圧の正負切り替わりタイミング付近での、第一のフォトカプラと第二のフォトカプラの信号が、LとH間で切り替わるタイミングの時間差に占める両者の割合を同等にでき、高精度にゼロクロスポイントを算出できる。
【0048】
<実施形態3:主に請求項3>補正時間長取得部
<実施形態3 概要>
実施形態3に関して説明する。実施形態1または2を基礎として、取得した時間差の複数を統計処理して補正時間長を取得するように補正時間長取得部を有するように構成されている。
【0049】
<実施形態3 構成>
以下,本発明の実施形態3の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体について,実施形態1を基礎として、機能的構成,処理の流れ及び回路構成の順に説明する。なお実施形態2を基にしても同様の効果が得られる。
図5は、本実施形態の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体の実施の形態を示す機能ブロック図である。同図に示すように、交流電圧ゼロクロス検出回路構造体(0500)は、交流電源信号取得部(0501)、第一のフォトカプラ(0502)、第二のフォトカプラ(0503)、時間差取得部(0504)、補正時間長取得部(0505)、ゼロクロスタイミング取得部(0506)、から構成される。補正時間長取得部(0505)以外は実施形態1と同様の為、説明を省略する。
なお、上記機能ブロックは本発明を実施するための一例であって、本発明が克服すべき課題及びその効果と矛盾しない範囲において適宜その機能を省略したり、新たな機能を付加したりしてよい。
【0050】
<実施形態3 補正時間長取得部(0505)>
「補正時間長取得部」(0505)は取得した時間差の複数を統計処理して補正時間長を取得するように構成される。
補正をかけるには、例えば電源信号波形が負から正に替わるときに求めた補正時間長を、次に正から負へ替わる半波長分先又は半波長分の自然数倍先のゼロクロスポイントを求める時に用いることができる。
補正時間長を取得する際の統計処理として、前記「第一タイミングと第二タイミングの時間差」又は「第三タイミングと第四タイミングの時間差」に1/2をかけて求めた補正時間長を蓄積保持し、それまでの平均を出して補正時間長とすることもできる。過去の全データではなく所定回数を設定し過去の所定回数分だけから平均を出したり、平均算出に使用しない古いデータを破棄したりするなどの方法もある。過去全データを使用しない場合、所定回数分溜まるまでは、今まで溜まった回数分のみの補正時間長を基に平均して補正時間長としたり、所定回数分溜まるまでは平均せずに都度算出した補正時間長をそのまま使用するなどの対応をとることができる。
過去の補正時間長の単純な平均を求めるだけではなく、過去の所定回数の補正時間長のばらつきを求め、予想される最大値最小値(例えば3σ相当)を外れた場合はノイズ等外乱が入った異常状態として、その値を使用せず除外する処理をさらにすることもできる。求めた補正時間長が異常状態であった場合、前回と同じ値を暫定補正時間長として使ったり、予め設定した理想値を暫定補正時間長として使用したり、ゼロクロス出力を行わないようにすることができる。外乱等の有無など異常状態か否かの判定にt検定など他の統計的手法を使用してもよい。
補正時間長を、過去の補正時間長も用いて算出する場合、または妥当性を検証する場合に、どのくらいまで過去の補正時間長を使用するかは、例えば補正時間長のばらつきが小さい場合に補正時間長数を減らし、ばらつきが大きい場合に補正時間長数を増やす、または計算に用いるマイコンが処理しなければならない他の作業の負荷が大きくなった場合には補正時間長数を動的に減らす、負荷が減った場合には動的に元の数に戻すなどの対応をとることができる。
【0051】
図6に実施形態3での回路構造体各地点(図8の回路図中のa、b、c参照)での信号波形を示す。回路構造体起動後しばらく定常状態で動作した後の清浄な定常状態を想定し、交流電源電圧信号が負から正に替わるタイミングで0Vになった時からの2周期分を記載した。縦軸上のF0,D0,F1,D1はゼロクロスポイントを表す。交流電源信号が負から正になるときがFn(n=0、1、)、正から負になるときがDn(n=0、1、)である。FnとDnの両側のAn、Bn、Cn、Enはそれぞれ、図6に示すように第一のフォトカプラ、第二のフォトカプラのON/OFF閾値電圧に達する点を示す。An,Bn,Cn,Dnはそれぞれ、図4での、第一タイミング、第二タイミング、第三タイミング、第四タイミングに該当する。
例えば交流電源電圧信号が負から正に変わるF0点付近においては、第二のフォトカプラがOFFし出力が変化したA0と、第一のフォトカプラがONし出力が変化したB0の間の時間差情報t1を時間差取得部(0504)にて求め、ゼロクロスタイミング取得部(0506)で時間差情報tに1/2かけた値を算出し、次の半波長での交流電源電圧信号の正から負への立ち下がりでの第一のフォトカプラがOFFし出力がLからHに替わる第四タイミング(C0点)に加算することでゼロクロスタイミング(すなわちゼロクロスポイント)を実時間より早く得ることができる。
交流電源信号が正から負へ変わるD0点付近において、第一のフォトカプラがOFFし出力が変化したC0と、第二のフォトカプラがONし出力が変化したE0の間の時間差情報t2を時間差取得部(0504)にて取得する。ゼロクロスタイミング取得部(05)で時間差情報tに1/2を掛けた値を算出し、次の半波長での交流電源信号の負から正への立ち上がりでの第二のフォトカプラがOFFし出力がLからHに替わる第一タイミング(A1点)に加算することでゼロクロスタイミング(すなわちゼロクロスポイント)を、実際にゼロクロスポイントに達するよりも早く得ることができる。一般商用電源単相100V 50Hzの場合、フォトカプラのON/OFF閾値電圧約0.8Vと0Vの間の時間は、交流電圧波形が理想正弦波とした場合、約25μ秒である。約25μ秒早く得ることができる。
第一のフォトカプラと第二のフォトカプラのON遅延時間長又は/及びON前倒時間長が略平等であれば、時間差(例えばt)に占める両フォトカプラの寄与が同等となり、補正時間長とした時間差に1/2をかけた値の精度を向上できる。
上述の説明でt1、t2、、などの時間差情報は、マイコンに備えたカウンタのカウント値の形式でもよい。半波長先に補正長を適用してゼロクロスタイミングを取得しているが、半波長分先ではなく、半波長分の自然数倍先へ適用してもよい。得られた補正時間長が妥当かどうかを、統計的手法で判別するようにしてもよい。ノイズなどの外乱の影響によりばらつきの大きいものを除外することができる。
【0052】
<実施形態3 処理の流れ>
図7abは、実施形態3の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体の動作フローチャート図である。交流電源信号取得ステップ(S0701)と、第四タイミング取得ステップ(S0702a)と、第三のタイミング取得ステップ(S0702b)と、第一タイミング取得ステップ(S0702c)と、第二のタイミング取得ステップ(S0702d)と、時間差取得ステップ(S0703)と、補正時間長取得ステップ(S0704)と、補正時間長取得ステップ内の補正時間長保持サブステップ(S0705)と、補正時間長妥当性判断ステップ(S0706)と、暫定補正時間長出力ステップ(S0707)と、ゼロクロスタイミング取得ステップ(S0708)を有する。以下,各ステップについて説明する。
【0053】
まず図7aを用いて説明する。
ここで、交流電源波形が正から負に変化するタイミングにおいては、
交流電源信号取得ステップ(S0701)は制御予定の部品へ供給される交流電源から分岐した交流電源信号を取得する処理を行い、
第四タイミング取得ステップ(S0702a)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラから、交流電源波形が正から負に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングであって、信号がLからHに立ち上がるタイミングである第四タイミングを取得する処理を行い、
第三タイミング取得ステップ(S0702b)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラから交流電源波形が正から負に変化する際に信号がHからLに立ち下がるタイミングであって前記したタイミングと同じタイミングである第三タイミングを取得する処理を行い、
時間差取得ステップ(S0703)では、第四タイミングと、第三タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報を取得する処理を行い、
補正時間長取得ステップ(S0704)では、得られた時間差情報に1/2をかけた補正時間長と保持されている過去の補正時間長を用いて統計処理し補正時間長候補を算出する処理を行い、
ゼロクロスタイミング取得ステップ(S0708)では、の時間差情報と、第三タイミングと第四タイミングよりも後続する任意の第三タイミング又は任意の第四タイミングと、を用いて前記交流電源のゼロクロスタイミングを取得する処理を行う。
【0054】
ここで、交流電源波形が負から正に変化するタイミングにおいては、
交流電源信号取得ステップ(S0701)は制御予定の部品へ供給される交流電源から分岐した交流電源信号を取得する処理を行い、
第一タイミング取得ステップ(S0702c)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラから、交流電源波形が負から正に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングであって、信号がLからHに立ち上がるタイミングである第一タイミングを取得する処理を行い、
第二タイミング取得ステップ(S0702d)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラから、交流電源波形が負から正に変化する際に、信号がHからLに立ち下がるタイミングであって前記したタイミングと同じタイミングである第二タイミングを取得する処理を行い、
時間差取得ステップ(S0703)では、第一タイミングと、第二タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報をも取得する処理を行い、
補正時間長取得ステップ(S0704)では、得られた時間差情報に1/2をかけた補正時間長と保持されている過去の補正時間長を用いて統計処理し補正時間長候補を算出する処理を行い、
ゼロクロスタイミング取得ステップ(S0708)では、この時間差情報と、第一タイミングと第二タイミングよりも後続する任意の第一タイミング又は任意の第二タイミングと、を用いて前記交流電源のゼロクロスタイミングを取得する処理を行う。
【0055】
補正時間長取得ステップ(S0704)では、統計処理として過去所定回数分との平均を使用したりできる。
図7bに記載したように、補正時間長取得部(S0704)内に、過去取得した補正時間長を保持する補正時間長保持サブステップ(S0705)を設けてもよい。補正時間長保持サブステップ(S0705)では、得られた補正時間長を追加し保持するが、後述のように異常状態と判断された補正時間長については保持せず、暫定補正時間長も保持しないようにする。
時間差取得ステップ(S0703)で得られ、補正時間長取得ステップ(S0704)で算出した1/2をかけた値が、妥当な範囲に入る値かどうかを判断する補正時間長判断ステップ(S0706)を設けるのが好ましい。t検定等の統計的手法を用い判断する。妥当な値であれば、補正時間長として用い、妥当でなければ、暫定補正時間長出力ステップ(S0707)にて暫定補正時間長を出力する。暫定補正時間長は理想値から定めたものでもよいし、前回使用した補正時間長を使用するなどの選択をできる。ただし暫定補正時間長を使用した場合は、その値は保持しない。次回補正時間長を求めるために統計的手法を用いる際に、誤ったデータとなるためである。
以上のような処理の流れによって交流電圧ゼロクロス検出回路構造体は動作させられる。
【0056】
<実施形態3 ハードウェア構成>
本実施形態における構造体のハードウェア構成について,図8を用いて説明する。図8は本実施形態における交流電圧ゼロクロス検出回路構造体(0800)の回路構成を説明するための概略図である。交流電源(0801)、電流制限抵抗(0802)、2回路入りフォトカプラ(0803)、マイコン(0804)、カウンタ(0805)、ゼロクロスパルス生成(0806)、補正時間長取得(0807)などから構成される。
補正時間長取得(0807)がゼロクロスパルス生成(0806)内に設けられたことが図3の例と異なる。補正時間長取得(0807)は、上述のとおり、過去の補正時間長を取得後、蓄積保持し、保持されている過去の所定の回数分の補正時間長とから次の補正時間長を求めたり、得られた補正時間長を過去所定回数分の補正時間長を基に異常状態か否かを判別し、正常であれば次のゼロクロスポイント算出時に補正時間長として使用したりするといった使い方ができる。
【0057】
実施形態1に対し、実施形態3では、ゼロクロスポイントの算出に対し、直近得た時間差情報を半分にしたものと過去複数回の補正時間長を基に次の補正時間長を算出し、外乱やノイズによる異常状態を除くことにより、より高精度にゼロクロスポイントを決定することができる。
【0058】
<実施形態4:主に請求項4>:フォトカプラONで出力がLとなる
<実施形態4 概要>
実施形態4に関して説明する。実施形態1から実施形態3のいずれか一を基礎として、第一のフォトカプラ及び第二のフォトカプラは、フォトカプラONで出力がLとなるように交流電圧ゼロクロス検出回路構造体を構成するものである。
【0059】
<実施形態4 構成>
以下,本発明の実施形態4の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体について,実施形態1を基礎として説明する。実施形態2又は3を基礎としても同様の効果が得られる。機能的構成,処理の流れ及び回路構成の順に説明する。
機能的構成は実施形態1と同様である。図1を用いて説明する。図1に示すように、交流電圧ゼロクロス検出回路構造体(0100)は、交流電源信号取得部(0101)、第一のフォトカプラ(0102)、第二のフォトカプラ(0103)、時間差取得部(0104)、ゼロクロスタイミング取得部(0105)から構成される。実施形態1と異なる部分について説明する。
なお、上記機能ブロックは本発明を実施するための一例であって、本発明が克服すべき課題及びその効果と矛盾しない範囲において適宜その機能を省略したり、新たな機能を付加したりしてよい。
【0060】
<実施形態4 第一のフォトカプラ(0102)>
「第一のフォトカプラ」(0102)は、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力するように構成されるのに加え、さらに、フォトカプラONで出力信号がLとなるように構成される。
【0061】
<実施形態4 第二のフォトカプラ(0103)>
「第二のフォトカプラ」(0103)は、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力するように構成されるのに加え、さらに、フォトカプラONで出力信号がLとなるように構成される。
フォトカプラONでHとなるように回路を構成すること場合には、図14の先行技術である文献1の回路に示すように、フォトカプラの出力(受光素子側)にトランジスタ1個、抵抗1個追加することで達成できる。本願発明の場合、フォトカプラを2個使うため、トランジスタと抵抗を各2個追加が必要となり、部品点数が増えコストが増える問題がある。そのため、フォトカプラONで出力がLとなるように構成するほうが好ましい。
【0062】
<実施形態4 時間差取得部(0104)>
「時間差取得部」(0104)は、「交流電源信号が負正反転する同一のタイミング領域で、第二のフォトカプラがOFFして出力信号がLからHに切り替わる第一タイミングと第一のフォトカプラがONして出力信号がHからLに切り替わる第二タイミングと、の時間差」、又は/及び、
「交流電源信号が正負反転する同一のタイミング領域で、第二のフォトカプラがONして出力信号がHからLに切り替わる第三タイミングと第一のフォトカプラがOFFして出力信号がLからHに切り替わる第四タイミングと、の時間差」、を取得するように構成される。
【0063】
<実施形態4 処理の流れ>
処理の流れも実施形態1とほぼ同様である。実施形態1の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体の動作フローチャート図である図2を用いて説明する。この図で示すように実施形態の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体の動作方法では、交流電源信号取得ステップ(S0201)と、第四タイミング取得ステップ(S0202a)と、第三タイミング取得ステップ(S0202b)と、第一タイミング取得ステップ(S0202c)と、第二タイミング取得ステップ(S0202d)と、時間差取得ステップ(S0203)と、ゼロクロスタイミング取得ステップ(S0204)を有する。以下,各ステップについて実施形態1と異なる部分について説明する。
【0064】
ここで、交流電源波形が正から負に変化するタイミングにおいては、
交流電源信号取得ステップ(S0201)は制御予定の部品へ供給される交流電源から分岐した交流電源信号を取得する処理を行い、
第四タイミング取得ステップ(S0202a)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じてONして出力信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じてOFFして出力信号Hを出力する第一のフォトカプラから交流電源波形が正から負に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングであって、第一のフォトカプラがOFFして出力信号がLからHに立ち上がるタイミングである第四タイミングを取得する処理を行い、
第三タイミング取得ステップ(S0202b)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じてOFFして出力信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じてONして出力信号Lを出力する第二のフォトカプラから交流電源波形が正から負に変化する際に、第二のフォトカプラがONして出力信号がHからLに立ち下がるタイミングであって前記したタイミングと同じタイミングである第三タイミングを取得する処理を行う。
時間差取得ステップ(S0203)では、第四タイミングと、第三タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報を取得する処理を行い、
ゼロクロスタイミング取得ステップ(S0204)では、この時間差情報と、第三タイミングと第四タイミングよりも後続する任意の第三タイミング又は任意の第四タイミングと、を用いて前記交流電源のゼロクロスタイミングを取得する処理を行う。
【0065】
ここで、交流電源波形が負から正に変化するタイミングにおいては、
交流電源信号取得ステップ(S0201)は制御予定の部品へ供給される交流電源から分岐した交流電源信号を取得する処理を行い、
第一タイミング取得ステップ(S0202c)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じてOFFして出力信号電位Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じてONして出力信号電位Lを出力する第二のフォトカプラから、交流電源波形が負から正に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングであって、第二のフォトカプラがOFFし出力信号がLからHに立ち上がるタイミングである第一タイミングを取得する処理を行い、
第二タイミング取得ステップ(S0202d)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じてONして出力信号電位Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じてOFFして出力信号電位Hを出力する第一のフォトカプラから、交流電源波形が負から正に変化する際に、第一のフォトカプラの出力信号がHからLに立ち下がるタイミングであって前記したタイミングと同じタイミングである第二タイミングを取得する処理を行い、
時間差取得ステップ(S0203)では、第一タイミングと、第二タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報をも取得する処理を行い、
ゼロクロスタイミング取得ステップ(S0204)では、この時間差情報と、第一タイミングと第二タイミングよりも後続する任意の第一タイミング又は任意の第二タイミングと、を用いて前記交流電源のゼロクロスタイミングを取得する処理を行う。
時間差取得ステップ(S0203)後に、得られた時間差情報が正常な範囲内の値か、あきらかに異常とみなせるような値、例えば半波長相当分など、の時には、異常と判断し算出した時間差情報を用いないように構成することもできる。その場合は、前回算出し得られた時間差情報を再度使用したり、予め設定しておいた理想値などを暫定補正時間長として処理したりすることができる。理想値としては、例えば、フォトカプラの仕様上のON/OFF閾値電圧を基にして、電圧0VからフォトカプラがONするまでのマイコンのカウンタ値を計算で求めた値などであり、他の動作プログラムなどと同時に予めマイコン内のメモリ領域に書き込んでおくようにして使用する。
このような一連の処理を交流電圧ゼロクロス検出回路構造体に実行させる動作方法である。
【0066】
<実施形態4 ハードウェア構成>
本実施形態における構造体のハードウェア構成について,実施形態1と同様に図3を用いて説明する。第一のフォトカプラ又は第二のフォトカプラがONした際(すなわち、発光ダイオードが点灯し、フォトトランジスタが受光してONした時)、図3では図中のb点またはc点がH電位からL電位に替わるように、回路が構成されている。なおフォトカプラがONした際にb点又はc点の電位がL電位ではなくH電位になるように回路を構成することもできるが、文献1の技術である図14に示すようにトランジスタや抵抗などの部品点数が増えるため、図3のような構成の方が好ましい。
【0067】
<実施形態5:主に請求項5>:先取手段
<実施形態5 概要>
第5の実施形態に関して説明する。実施形態1から実施形態4のいずれか一を基礎として、電圧0Vとなるゼロクロスタイミングを、交流電源信号が正から負への反転時には、第一のフォトカプラの信号がLからHへ立ち上がるタイミングを用いて取得し、交流電源信号が負から正への反転時には、第二のフォトカプラがLからHへ立ち上がるタイミングを用いて取得するように先取手段をゼロクロスタイミング取得部に設けたものである。
【0068】
<実施形態5 構成>
以下,本発明の実施形態5の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体について,実施形態3を基礎として、機能的構成,処理の流れ及び回路構成の順に説明する。実施形態1,2,4を基としても同様の効果が得られる。
図9は、本実施形態の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体の実施の形態を示す機能ブロック図である。同図に示すように、交流電圧ゼロクロス検出回路構造体(0900)は、交流電源信号取得部(0901)、第一のフォトカプラ(0902)、第二のフォトカプラ(0903)、時間差取得部(0904)、補正時間長取得部(0905)、ゼロクロスタイミング取得部(0906)、先取手段(0907)から構成される。先取手段(0907)以外は実施形態3と同様の為、説明を省略する。
なお、上記機能ブロックは本発明を実施するための一例であって、本発明が克服すべき課題及びその効果と矛盾しない範囲において適宜その機能を省略したり、新たな機能を付加したりしてよい。
【0069】
<実施形態5 先取手段(0907)>
「先取手段」(0907)は電圧0Vのタイミングであるゼロクロスタイミングを、交流電源信号が正から負への反転時には、第一のフォトカプラの信号がLからHへ立ち上がるタイミングを用いて取得し、交流電源信号が負から正への反転時には、第二のフォトカプラがLからHへ立ち上がるタイミングを用いて取得するように、ゼロクロスタイミング取得部(0906)内に構成される。
先取手段(0907)でのゼロクロスタイミングの取得に関して、図6を用いて説明する。図6図8の回路構造体の各地点(a、b、c、d)での信号波形を示したものである。縦軸上のF,D,F,Dはゼロクロスポイントを表す。交流電源信号が負から正になるときがF(n=0、1、)、正から負になるときがDn(n=0、1、)である。FとDの両側のA、B、C、Eはそれぞれ、図に示すように第一のフォトカプラ、第二のフォトカプラのON/OFF閾値電圧に達する点を示す。
例えば交流電源信号が負から正に変わるF0点付近においては、第二のフォトカプラがOFFし出力が変化したA0と、第一のフォトカプラがONし出力が変化したB0の間の時間差tを補正時間長取得部(0905)にて求め、そのtの1/2を、次の半波長での交流電源信号の正から負への立ち下がりでの第一のフォトカプラがOFFし出力がLからHに替わるタイミングに加算することでゼロクロスタイミング(すなわちゼロクロスポイント)を実時間より早く得ることができる。
交流電源信号が正から負へ変わるD0点付近において、第一のフォトカプラがOFFし出力が変化したC0と、第二のフォトカプラがONし出力が変化したE0の間の時間差tを補正時間長取得部(0905)にて求める。得られたtの1/2を、次の半波長での交流電源信号の負から正への立ち上がりでの第二のフォトカプラがOFFし出力がLからHに替わるタイミングに加算することでゼロクロスタイミング(すなわちゼロクロスポイント)を、実際にゼロクロスポイントに達するよりも早く得ることができる。
マイコンの動作としては例えば、C0での第一のフォトカプラの出力が信号Lから信号Hに変わった時点をトリガとしてカウンタでのカウントを開始し、E0での第二のフォトカプラの出力が信号Hから信号Lに変わるところをトリガとしてカウンタでのカウントを中断する。得られたカウント値を1/2し、保持されている過去の補正時間長(カウント値)の所定個数を用いて平均のカウント値を補正時間長として算出する。半波長分先のA1で第二のフォトカプラの出力が信号Lから信号Hへ変わったタイミングから、算出した補正時間長(カウント値)を経た時点でゼロクロスパルス信号電位をLからHへ変える、といった動作である。
第一のフォトカプラと第二のフォトカプラのON遅延時間長又は/及びON前倒時間長が略平等であれば、時間差(例えばt)に占める両フォトカプラの寄与が同等となり、補正時間長とした時間差に1/2をかけた値の精度が向上する。
【0070】
第一のフォトカプラ又は第二のフォトカプラの出力信号がHからLに替わるタイミングをTnaとし、第二のフォトカプラ又は第一のフォトカプラの出力信号がLからHに替わるタイミングをTnbとする。nは任意時間を起点として1から始まり、フォトカプラの出力信号が替わるタイミングに番号を振って区別するためのものである。T1a、T1b、T2a、T2b、、、T(n-1)a、T(n-1)b、Tna、Tnb、T(n+1)a、T(n+1)b、と続く。前記タイミング間の時間差をtnと置くと、tnは次式で表せる。
n=Tnb―Tna
n回時点でのタイミング間の時間差の平均値Δtは、
(t1+t2+t3+…+tn―2+tn-1+tn)/n = Δtn となる。
時間差を1/2して補正時間長を算出すると、
Δtn/2=Δtn'
半波長先のゼロクロスポイントは以下の式で求められる。
Zero(n+1)=T(n+1)a+Δtn'
n回時点でのタイミング間の時間差を基に補正時間長を求める際に、n個の平均値を算出したが、n回時点から過去へ所定回数分k遡るとしてもよい。1≦k<nとなる。nが大きくなると過去補正時間長のデータ保持メモリ領域が増え処理の負荷も増えるためである。
【0071】
次に、得られた補正時間長Δtn'の妥当性の検証を、t検定を例として説明する。
検証に用いるサンプル数をm個とする。(1≦m<n)
t検定でのt値は、
t=(m個の平均-Δtn')/(標準偏差/√m)
と表せる。
p値を算出し、有意水準として一般的に用いられる5%以下となれば妥当と判断する。
検定に用いる補正時間長の個数mは、補正時間長のずれが小さい場合や、マイコンの他の処理も含めて負荷が大きくなった場合にはmを動的に減らすなどしてもよい。
【0072】
以下、過去10個の補正時間長を用いてt検定する場合を例として説明するが、10個には限定されず、もっと多くても減らしてもよい。図6での一番左時点のゼロクロスポイントF0は回路動作開始時点の為、まだ補正時間長を算出されていない。第一のフォトカプラ出力と第二のフォトカプラ出力の波形の変化点A0,B0はそれぞれのフォトカプラのON/OFF閾値による。2回路入りフォトカプラであれば、ON/OFF閾値が略平等であると期待できる。A、B、C、Eでの時間(カウント値)をA、B、C、Eを表記すると、各ゼロクロスポイントでの時間差情報(カウント値)を1/2したTFn、TDnは次の式で表される。
TF0=(B0-A0)/2
TF1=(B1-A1)/2

TFn=(Bn-An)/2 n=1,2,3、…

TD0=(E0-C0)/2
TD1=(E1-C1)/2

TDn=(En-Cn)/2 n=1,2,3、…
それぞれの平均値の推定について、過去10サンプル分を参照する場合、
補正時間長のばらつきの上限下限推定値を求めると下記のようになる。
TFnL,H=TFn±t(10-1,0.05)×(VF/(10-1))(1/2)
TDnL,H=TDn±t(10-1,0.05)×(VD/(10-1))(1/2)
t(10-1,0.05)は、補正時間長Δtn'の過去10サンプル、有意水準5%でのt検定の検定量を表し、VF、VDはそれぞれの分散値を表す。従って、上2式ではTFnLはFn点で算出した補正時間長を基にばらついた際の下限推定値、TFnHはばらついた際の上限推定値を表す。過去10個分の平均値とのずれを加減した範囲に入っているかの検証という形となる。
補正時間長TFnおよびTDnをAn及びCnに加算した値が、ゼロクロスポイントになる。
Fn点で得られた補正時間長TFnの下限推定値、上限推定値から、F点の半波長先のEn点は、Cn点に対して下式の範囲にあることが期待される。またBn点も同様に半波長前のDn点で得られた補正時間長TDnの下限推定値、上限推定値から下式の範囲にあることが期待される。
Cn+2TFnL<En<Cn+2TFnH
An+TDn-1L<Bn<An+2TDn-1H
上式の範囲内に収まっていない場合には、FnまたはDn点ではノイズ等外乱が発生したと見なして、統計処理で算出した値によるゼロクロスパルスの補正行わない。
上記の場合、暫定的な補正時間長を適用するが、理想値から定めた暫定補正時間長を用いる、又は前回の補正時間長を適用するなどから、予め処置を決めておく。算出した補正時間長での補正を行わなかった場合、暫定補正時間長を適用しても、その値の保持はしない。次に補正時間長の算出と、算出した補正時間長の妥当性評価のために、保持されている過去の補正時間長を基に統計処理して算出する際に使用しないためである。
【0073】
上記説明にて有意水準5%としたのは不良率5%に相当する(良品95%であり2σ相当)。不良率5%に対し、見逃し率は通常約2倍と見込まれるので10%となる。そのため10回分を参照すれば、大きく外れるものは排除できるものと考えられる。
なお過去10回分の補正時間長を参照したが、10回には限定されない。統計処理を行う場合には、サンプル数が多いほうがより正確なばらつきが得られ精度が向上する。しかしサンプル数を多くすると、変動が起こっても補正がかかり始めるのが遅れることや、保持するデータ数が増えメモリ領域が増えること、算出時に一時使用するメモリ量も増え部品コストが増加する。またCPUの計算負荷が増えて、計算に時間を要するようになるなどのデメリットもあり、精度とのトレードオフとなる。マイコンの計算負荷を監視し統計的手法に用いる過去の補正時間長を参照する回数を動的に変化させてもよい。その際には最小数と最大数の範囲を決めておくとよい。また電源信号波形が外乱などの影響を受けて、得られた時間差に1/2をかけた値が使用できない事態の発生頻度に応じて、参照する補正時間長の過去の回数分を増減させてもよい。一般的には統計処理のサンプル数は30個前後が妥当ではあるが、サンプル数は設計者が適宜選択できる。
【0074】
<実施形態5 処理の流れ>
図10は、実施形態5の交流電圧ゼロクロス検出回路構造体の動作フローチャート図である。交流電源信号取得ステップ(S1001)と、第四タイミング取得ステップ(S1002a)と、第三タイミング取得ステップ(S1002b)と、第一タイミング取得ステップ(S1002c)と、第二タイミング取得ステップ(S1002d)と、時間差取得ステップ(S1003)と、補正時間長取得ステップ(S1004)と、ゼロクロスタイミング取得ステップ(S1005)と、ゼロクロスタイミング取得ステップ内の先取サブステップ(S1006)を有する。以下,各ステップについて説明する。
【0075】
ここで、交流電源波形が正から負に変化するタイミングにおいては、
交流電源信号取得ステップ(S1001)は制御予定の部品へ供給される交流電源から分岐した交流電源信号を取得する処理を行い、
第四タイミング取得ステップ(S1002a)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラから、交流電源波形が正から負に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングであって、信号がLからHに立ち上がるタイミングである第四タイミングを取得する処理を行い、
第三タイミング取得ステップ(S1002b)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラから交流電源波形が正から負に変化する際に信号がHからLに立ち下がるタイミングであって前記したタイミングと同じタイミングである第三タイミングを取得する処理を行い、
時間差取得ステップ(S1003)では、交流電源波形が正から負に変化する際には、第三タイミングと、第四タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報を取得する処理を行い、
補正時間長取得ステップ(S1004)では、得られた時間差情報に1/2をかけた値と保持されている過去の補正時間長を用いて統計処理し補正時間長を算出する処理を行い、
ゼロクロスタイミング取得ステップ(S1005)内の先取サブステップ(S1006)は、取得した補正時間長を半波長先の、第一のフォトカプラの信号がLからHへ立ち上がるタイミングに対し適用しゼロクロスパルスに加える処理を行い、ゼロクロスタイミング取得ステップ(S1005)は、交流電源のゼロクロスタイミングを取得する処理を行う。
【0076】
ここで、交流電源波形が負から正に変化するタイミングにおいては、
交流電源信号取得ステップ(S1001)は制御予定の部品へ供給される交流電源から分岐した交流電源信号を取得する処理を行い、
第一タイミング取得ステップ(S1002c)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Hを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Lを出力する第二のフォトカプラから、交流電源波形が負から正に変化するタイミングであって後記するタイミングと同じタイミングであって、信号がLからHに立ち上がるタイミングである第一タイミングを取得する処理を行い、
第二タイミング取得ステップ(S1002d)では、取得した交流電源信号が正である場合に応じて信号Lを出力し、取得した交流電源信号が負である場合に応じて信号Hを出力する第一のフォトカプラから、交流電源波形が負から正に変化する際に、信号がHからLに立ち下がるタイミングであって前記したタイミングと同じタイミングである第二タイミングを取得する処理を行い、
時間差取得ステップ(S1003)では、第一タイミングと、第二タイミングとの時間差を示す情報である時間差情報をも取得する処理を行い、
補正時間長取得ステップ(S1004)では、得られた時間差情報に1/2をかけた値と保持されている過去の補正時間長を用いて統計処理し補正時間長を算出する処理を行い、
ゼロクロスタイミング取得ステップ(S1005)内の先取サブステップ(S1006)は、取得した補正時間長を半波長先の、第二のフォトカプラの信号がLからHへ立ち上がるタイミングに対し適用しゼロクロスパルスに加える処理を行い、ゼロクロスタイミング取得ステップ(S1005)は、交流電源のゼロクロスタイミングを取得する処理を行う。
【0077】
図7bと同様に、補正時間長妥当性判断ステップや暫定時間長出力ステップを設けて、補正時間長取得ステップで得られた時間差に1/2をかけた値が補正時間長として妥当な値かどうか、外乱影響を受けていないかを判断し、統計的手法で予想される範囲を超える際には、暫定補正長を使うようにしたほうが好ましい。暫定補正時間長は、前回の補正時間長を使用したり、補正時間長0を用いたり(すなわち補正しない)する方法などがある。暫定補正時間長を用いた場合は、使用した暫定補正時間長を保持しない。次回以降の統計的処理の妨げになるためである。
このような一連の処理を交流電圧ゼロクロス検出回路構造体に実行させる動作方法である。
【0078】
<実施形態5 ハードウェア構成>
本実施形態における構造体のハードウェア構成については,実施形態3と同様である。実施形態3の構造体のハードウェア構成を示す図3において、補正時間長取得(0807)が、カウンタで得られたタイミング間の時間差を基に得られた補正時間長を用い半波長先のゼロクロスパルスに加算する先取手段を講じることが差異である。マイコンのプログラムで処理を行う。
【0079】
本実施形態5では、スイッチの制御などに用いるゼロクロスパルスの算出に対し、得られた補正時間長を、交流電源電圧波形の半波長先に適用することにより、実際にゼロクロス(電圧0V)となる時間より先んじてゼロクロスポイントを決定し、対応するゼロクロスパルスを出力することができる。
【0080】
<先取手段の別例>
実施形態1から5までにおいて、第一のフォトカプラと第二のフォトカプラの立ち上がりと立ち下り間の時間(図6でのt、t、t)をカウンタで計測してきたが、第一のフォトカプラの出力信号と第二のフォトカプラの出力信号の周期を計測するようにしてもよい。図6を用いて説明する。例えば起動後からの経過カウント数を監視し、第一のフォトカプラの出力が信号Hから信号Lに替わるB0点のカウント数を記録し、信号Lの期間をカウント計測する。次に出力が信号Lから信号Hに替わるC0点のカウント数を記録し、信号Hの期間をカウント計測する。同様にB1、C1点のカウント数を記録する。第二のフォトカプラの出力信号に対しても同様にA0、E0、A1、E1点などのカウント数を計測記録する。
第一のフォトカプラと第二のフォトカプラの立ち上がりと立ち下がりの時間差は、t=(B0点のカウント数―A0点のカウント数)によってカウント数として得られる。補正時間長はt/2として得られる。実施形態5と同様に得られた補正時間長t/2を、半波長先の第一のフォトカプラの出力が信号Lから信号Hに替わるC0点に加えてゼロクロスパルスを生成することができる。また、フォトカプラの出力信号波形の信号Hの期間、信号Lの期間のカウント数を記録していることにより、例えばD0点付近での補正時間長t/2を算出した後にF1点へ適用する際、過去に取得した第一のフォトカプラのH期間カウント数をC0点のカウント数に加算し前記補正時間長t/2を減算することで、F1点付近のゼロクロスポイントを求めることができる。商用単相交流電源ではゼロクロスポイントのばらつきは80μ秒程度だが、半周期分の時間10m秒から補正時間長計算に要した時間を引いた時間分(ほぼ10m秒)先んじてゼロクロスポイントを求めることができる。L期間カウント数を基にD1点付近のゼロクロスポイントを求める際も、B1点のカウント数にL期間カウント数を加算し、補正時間長t/2を加算することで得られる。第2のフォトカプラを用いた場合も同様に求めることができる。どちらかだけを使用したり、両方別個に使用して得た値を比較したり、実施形態5の算出方法と比較することで、より正確な値とすることができる。
【0081】
<実施形態6>:3相交流の場合
<実施形態6 概要>
実施形態6は、単相交流を対象とした実施形態1から5までを基に、3相交流へ適用するものである。なお、単相から他の相(2相交流他)へも同様に展開できる。
<実施形態6 構成>
図12を用いて説明する。3相用交流電圧ゼロクロス検出回路構造体(1200)は、単相用交流電圧ゼロクロス検出回路構造体(1203)(1204)(1205)と、交流入力(1206)と、DC入力(1207)と、ゼロクロスパルス出力(1208)とから構成される。単相用交流電圧ゼロクロス検出回路構造体(1205)は、2回路入りフォトカプラ(1201)とカウンタ/タイマを内蔵するマイコン(1202)から構成される。単相用交流電圧ゼロクロス検出回路構造体(1203)(1204)は(1205)と同じ構成の部品で、交流の3相での3つの組合せのうちの1相ごとを担当する。3相を便宜的にR相、S相、T相と呼称すると前記単相用交流電圧ゼロクロス検出回路構造体は、R相、S相、T相ごとに振り分けてゼロクロスポイント検出してもよいし、R相-S相、S相-T相、T相-R相間の電圧信号にそれぞれ振り分けてもよい。後者の場合は例えばR相―S相間の電圧信号からゼロクロスポイントを求め、マイコン等計算機での処理で関係するR相、S相のゼロクロスポイントを算出して求めてもよい。
【0082】
ゼロクロス検出は実施形態1から5と同様に行い、同様に担当信号ごとに電圧信号波形の正負の頂点間の中点を基準電位として、フォトカプラを用いてゼロクロスポイントを検出してゼロクロスパルスを出力する。ゼロクロスパルス出力(1208)は、例えばスイッチ部などに接続され、サイリスタなどからなるスイッチをON/OFFし、交流電源の出力をコントロールする。ヒータなどの温度調整のために電源をON/OFFする時間でコントロールする場合、ゼロクロスポイントでON/OFFすることでノイズや突入電流の発生を抑制でき、また位相制御による温度調整している場合は、制御の起点をより正確に得ることができる。図13aは3相交流電圧の波形と各相のゼロクロスパルス波形の例である。図13aでは、2相間の電圧信号を用いてゼロクロス点を求めている。RS間,ST間,TR間の各信号は120度ずつ位相がずれている。ゼロクロスパルスの立ち上がり立ち下りに上向き矢印を記載し、対応する相のゼロクロスポイントを示した。図13bは、2相間電圧信号のゼロクロスパルスと各相の電圧信号との位相関係を示した図である。例としてRS間信号、R相、S相の波形を記載している。RS間信号からゼロクロスポイントを取得し、マイコン等の計算機処理によりR相、S相のゼロクロスポイントを算出している。このような場合は図16に示すようなΔ結線された3本のヒータの制御に用いるような場合である。なおΔ結線ではなくスター結線でも同様である。
3相交流のスイッチングをする場合、ある相のゼロクロスパルスを基に3層全部ON/OFFすることもできるし、タイミングが120度ずつずれるが相ごとのゼロクロスパルスに基づいてON/OFFすることもできる。後者の方法ではスイッチON/OFFによるノイズや突入電流の発生を最小限に抑制でき、かつ位相制御による出力調整において制御の起点をより正確にすることができる。
【符号の説明】
【0083】
交流電圧ゼロクロス検出構造体…0300
交流電源…0301
電流制限抵抗…0302
2回路入りフォトカプラ…0303
第一のフォトカプラ…0303a
第二のフォトカプラ…0303b
マイコン…0304
カウンタ…0305
ゼロクロスパルス生成…0306
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13a
図13b
図14
図15a
図15b
図15c
図16