(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】マーキングされた酢酸セルロース繊維、製造方法、及び当該繊維を含む製品
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20240814BHJP
A24D 3/10 20060101ALI20240814BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
A24D3/10
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2019566287
(86)(22)【出願日】2018-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2018061020
(87)【国際公開番号】W WO2018219567
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2019-11-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-12
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518025618
【氏名又は名称】セルディア・プロダクションズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ホールター、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ラペルソネ、フィリペ
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】中根 知大
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-521620(JP,A)
【文献】国際公開第2006/117862(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/200598(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/179220(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
A24D 1/00- 3/18
PubMed
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDream3)
BIOSIS/CAPLUS/EMBASE/MEDLINE/
AGRICOLA/CROPU/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の酢酸セルロース繊維を提供する工程、及び
前記酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むマーカーを配置することによって前記酢酸セルロース繊維をマーキングする工程、を含み、
前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインから成る群より選択される少なくとも1つの情報項目を含む情報をコードし、前記情報が前記少なくとも1つのポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチド配列をPCR技術を用いて分析することにより検出される、タバコに含まれマーキングされた酢酸セルロース繊維を製造するための方法であって、前記方法は
(a)溶媒及び酢酸セルロースを含むドープから酢酸セルロース繊維を紡糸すること;
(b)前記酢酸セルロース繊維からトウを形成すること;
(c)前記トウに捲縮付与すること;
(d)前記トウを乾燥すること、
を含み、
前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、工程(a)から工程(d)のいずれかの工程間又は工程中で、前記酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に配置される方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、6個~200個のヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、非天然ヌクレオチド配列を有する、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、工程(c)と工程(d)との間に、前記酢
酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に配置される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
搬送システムに沿った位置に配置されたポリヌクレオチドマーカー供給装置の方向へ、酢酸セルロース繊維を搬送するように構成された搬送システムを備え、
前記ポリヌクレオチドマーカー供給装置は、1又は複数の出口部を備え、
前記1又は複数の出口部が、ポリヌクレオチドマーカーを含む少なくとも1つの溶液を、前記1又は複数の出口部を通して前記繊維の少なくとも一部の上に配置させるように構成されており、これにより前記繊維をマーキングし、
前記ポリヌクレオチドマーカーが、生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインから成る群より選択される少なくとも1つの情報項目を含む情報をコードする、酢酸セルロース繊維を請求項1に記載の方法によりマーキングするための装置。
【請求項6】
少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含むトウベールを製造するための方法であって、
請求項1に記載の方法を含み、
さらに、(e)前記トウをベールとする工程、及び(f)前記トウベールを梱包する工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキングされた酢酸セルロース繊維を製造するための方法、酢酸セルロース繊維をマーキングするための装置、マーキングされた酢酸セルロース繊維上の、又はマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品上の少なくとも1つの情報項目を検出するための方法、マーキングされた酢酸セルロース繊維を含むトウベールを製造するための方法、マーキングされた酢酸セルロース繊維を含むトウベール、トウ、フィルター及びタバコに関する。
【背景技術】
【0002】
偽造品は、商業及び行政に損害を与えている。その理由は、市場に違法な製品があふれることによって、かつ税金及び関税の規制の抜け道となることによって、違法な商取引及び偽造が元の生産者に損害を与え、したがって、税金及び関税の法律の施行を意図している行政に損害を与えているからである。製品をマーキングして、製品が偽造であるかオリジナルであるかを判断することを可能とすることによって、偽造品とオリジナル品とを区別するための試みが行われてきた。例えば、米国特許出願公開第2016/0168781号には、繊維をマーキングする方法が開示されており、繊維は、繊維材料が本物であるか又は偽造であるかを判断することを目的として、核酸マーカーでマーキングされている。
【0003】
闇取引及び偽造が特に行われやすい製品の1つがタバコであり、タバコは、広く様々な国で税金及び関税の規制の対象となっている。したがって、タバコの種類がオリジナルであるか偽造であるか、タバコを区別可能とすることが望ましい。国際公開第2016/179220号には、例えば、マーキングされたタバコフィルターが開示されており、上記マークは、エッチング、バーコード、又は印刷によって達成されている。このようなマークは、フィルターの物理的損傷、又は生物学的崩壊若しくは分解に起因する損傷を受け易いため、検出機構が使用不可能となる可能性がある。さらに、これらのマークさえも、模造及び偽造され得るという可能性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、タバコ及びその上流の製品に含まれることが多く、タバコ及びその上流の製品の物理的損傷及び生物学的崩壊に対してより耐性を有する方法でマーキングされたマーキングされた酢酸セルロース繊維を提供することが、依然として求められている。さらに、このような製品の生産元を追跡することを可能とする、これらの製品のためのマークを提供することも望ましい。生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインなどの情報項目を提供することによって、マーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品上の上記マークを識別することにより、この製品をその生産元まで追跡することが可能となる。警察及び税関などの関係者は、得られた情報を製品供給業者からの生産情報と適合させることができ、これは、倉庫及び流通の情報を通して、製品の生産元がどこであるか、製品が元々どこに輸送され取引されることを意図するものであったかを識別することによって可能である。このことは、偽造品とオリジナル品とを区別することを可能とするだけではなく、犯罪活動並びに責任を負うべき個人及び組織を摘発するための貴重な情報も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、マーキングされた酢酸セルロース繊維を製造するための方法に関し、この方法は、複数の酢酸セルロース繊維を提供する工程;上記酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むマーカーを配置することによって上記酢酸セルロース繊維をマーキングする工程、を含む。本発明はさらに、少なくとも1つのポリヌクレオチドで酢酸セルロース繊維をマーキングするための装置;酢酸セルロース繊維をマーキングした少なくとも1つのポリヌクレオチドに含まれるヌクレオチド配列を識別することによって、少なくとも1つの情報項目を検出する方法;少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含むトウベールを製造するための方法;少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーでマーキングされた酢酸セルロース繊維、このような酢酸セルロース繊維を含むトウ、トウベール、フィルター、及びタバコにも関する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明において、単数の名称は複数も含むことを意図しており、例えば、「繊維」は、「2つ以上の繊維」又は「複数の繊維」も示すことを意図している。
【0007】
本発明の全ての態様及び実施形態は、組み合わせ可能である。
【0008】
本発明の文脈において、「含む(comprising)」という用語は、「から成る(consisting of)」の意味を含むことを意図している。
【0009】
本発明は、マーキングされた酢酸セルロース繊維を製造するための方法に関しており、
複数の酢酸セルロース繊維を提供する工程、
上記酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むマーカーを配置することによって、上記酢酸セルロース繊維をマーキングする工程、
を含む。
【0010】
「ポリヌクレオチド」という用語は、複数のヌクレオチド又はヌクレオチド類似体を含むポリマーを示すことを意図している。本発明によれば、「ポリヌクレオチド」は、例えば、DNA又はRNAの断片を示し、特に、DNA又はRNAの人工的断片を示す。ポリヌクレオチドの長さは、多くの場合、6ヌクレオチド以上であり、12ヌクレオチド以上であることが好ましく、15ヌクレオチド以上であることがさらにより好ましい。ポリヌクレオチドの長さは、多くの場合、200ヌクレオチド以下であり、100ヌクレオチド以下であることが好ましく、50ヌクレオチド以下であることがさらにより好ましい。6~200ヌクレオチドのヌクレオチド長を有するポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドとも称される。本発明の1つの態様では、ポリヌクレオチドの長さは200ヌクレオチドを超えていてもよく、例えば、300、400、又はさらには500ヌクレオチド超などであってもよい。2000ヌクレオチドまでの長さが適切であり得る。少なくとも1つのポリヌクレオチドは、6~200ヌクレオチドを含むことが好ましい。ポリヌクレオチド中に存在するヌクレオチドは、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、及びウラシルなどの天然ヌクレオチド、5-フルオロシトシン、5-フルオロウラシル、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、ジデオキシヌクレオチド、コーディセピンなどの天然ヌクレオチドのいずれかの誘導体、並びにその他の人工ヌクレオチド及びヌクレオチドの誘導体である。
【0011】
本発明に係るポリヌクレオチドは、例えば植物若しくは動物のRNA又はDNAの消化によって得られる天然ヌクレオチド配列(植物又は動物のポリヌクレオチドなど)を有するポリヌクレオチド、又は、こちらが好ましいが、予め定められた非天然ヌクレオチド配列を有する非天然ポリヌクレオチドであってもよい。好ましい非天然ポリヌクレオチドは、本技術分野において熟達した方法(例えば、ホスホロアミダイト法の適用)を通して得ることができる。
【0012】
酢酸セルロース繊維に配置された少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーは、好ましくは、偽造品とこのような繊維を含むオリジナル品とを区別することを可能とするだけではない。好ましい態様では、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインから成る群より選択される少なくとも1つの情報項目を含む情報をコードする。このような情報項目は、一般的に、マーキングされた酢酸セルロース繊維又はこれらの繊維を含む製品の由来を検出するのに好適ないかなる情報を含んでいてもよい。上記情報は、少なくとも1つのポリヌクレオチドに存在する特定のヌクレオチド配列によってコードされる。好適には、上記配列は、機密であり、ある特定の生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインに特異的である。上記配列の高い可変性、及び同時にその元の生産者によって定められる上記配列の高い特異性に起因して、これらのマーカーを模造することは、不可能ではないにしても、困難である。更なる利点は、PCRなどの分析技術によって、マーカーが少量であっても検出を可能とするのに充分であることが知られていることから、マーカーを製品から除去することは実質的に不可能であることである。マーカーは、一般的に、マーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品が曝露され得る通常の物理的及び生物学的ストレスに対して耐性を有し、その特異性に起因して、異なる入手源からのDNAなどのいかなるアーチファクトからも良好に区別することができる。
【0013】
複数の酢酸セルロース繊維を提供する工程は、市販源から得た酢酸セルロース繊維の単なる提供を含んでよい。上記製造方法は、以下の工程:(a)溶媒及び酢酸セルロースを含むドープから酢酸セルロース繊維を紡糸する工程;(b)前記酢酸セルロース繊維からトウを形成する工程;(c)前記トウに捲縮付与する工程;(d)前記トウを乾燥する工程、も含んでもよく、ここで、上記少なくとも1つのポリヌクレオチドは、工程(a)から工程(d)のいずれかの工程間又は工程中で、酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に配置される。工程(a)から工程(d)の一般的な概念は、例えば、P. Rustemeyer, Macromol. Symp. 2004, 208, 267-291から公知である。少なくとも1つのポリヌクレオチドの配置は、上記トウに部分的に行われてよく、又は上記トウの全長にわたって行われてもよい。少なくとも1つのポリヌクレオチドは、少なくとも1つの水溶液又は少なくとも1つのアルコール性溶液として適用されることが好ましい。1つの態様では、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、配置時に活性化(例えばアルカリで活性化)される。好適には、少なくとも1つのポリヌクレオチドの配置は、所定量の少なくとも1つのポリヌクレオチドを、酢酸セルロース繊維の少なくとも一部、又は酢酸セルロース繊維を含むトウの少なくとも一部に計量供給することによって行われる。別の選択肢として、酢酸セルロース繊維を、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの溶液中に浸漬してもよい。1つの態様では、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、2つ以上の溶液として連続的に適用される。少なくとも1つのオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの固体製剤(錠剤など)に製剤されてもよい。固体製剤は、例えば医薬品又は食品産業で公知である少なくとも1つの補助成分(バインダー又はコーティングなど)を含んでいてよい。次に、固体製剤を、酢酸セルロース繊維へ適用する前に、少なくとも1つの溶媒(水性溶媒又はアルコール性溶媒など)と接触させる。
【0014】
本発明によれば、酢酸セルロース繊維又は酢酸セルロース繊維を含むトウへの少なくとも1つのポリヌクレオチドの配置は、工程(a)から工程(d)のいずれかの工程間又は工程中で行われてよい。1つの態様では、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、工程(a)において紡糸されるドープ中に存在してよいか、又は工程(a)において用いられる紡糸補助剤(例えば紡糸オイル)中に存在してよい。好ましい態様では、少なくとも1つのポリヌクレオチドは、工程(c)と工程(d)との間に、酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に配置される。このことは、周囲環境、繊維、又はトウのいかなる汚染も最小限に抑えることが可能であること、及び少なくとも1つのポリヌクレオチドを、次の生産バッチのために別のポリヌクレオチドと容易に交換することが可能であることという利点を有する。この手法によって、アーチファクトが発生するリスクが最小限に抑えられる。乾燥工程の前で少なくとも1つのポリヌクレオチドを配置することは、マーカーの安定性又は信頼性に関して欠点を有しないことが示された。
【0015】
本発明は、さらに、酢酸セルロース繊維をマーキングするための装置にも関し、この装置は、
搬送システムに沿った位置に配置されたポリヌクレオチドマーカー供給装置の方向へ、酢酸セルロース繊維を輸送するように構成された搬送システム、
を備え、
ここで、上記ポリヌクレオチド供給装置は、1又は複数の出口部を備え、上記1又は複数の出口部は、ポリヌクレオチドマーカーを含む少なくとも1つの溶液を、上記1又は複数の出口部を通して上記繊維の少なくとも一部の上に配置させるように構成されており、これによって上記繊維をマーキングする。
【0016】
上記装置は、計量デバイスを有し、それによって、単位酢酸セルロース繊維若しくはトウあたり、又は単位時間あたりに、正確な量を投入することが可能となっていることが好ましい。酢酸セルロース繊維を搬送するように構成された好適な搬送システムは、紡糸、捲縮付与、及び乾燥の工程を含むプロセスなど、酢酸セルロース繊維及びそのような繊維を含むトウ製造の一般的概念から公知である。
【0017】
本発明の別の目的は、少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維上の、又は少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品上の、上記少なくとも1つのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列中に含まれる生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインから成る群より選択される少なくとも1つの情報項目を検出するための方法であって、
少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維のサンプル、又は少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品を入手すること、及び
少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維の上記サンプル、又は少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む上記製品を分析して、上記少なくとも1つのポリヌクレオチド中に含まれるヌクレオチド配列を識別すること、及び
それによって、上記少なくとも1つのポリヌクレオチドの上記ヌクレオチド配列中に含まれる生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインから成る群より選択される少なくとも1つの情報項目を検出すること、
を含む。
【0018】
少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品としては、例えば、酢酸セルローストウ、上記酢酸セルローストウを含むフィルター、酢酸セルローストウを含むトウベール、及び酢酸セルロース繊維を含む上記フィルターを含むタバコを挙げることができる。少なくとも1つの情報項目を検出するための方法は、少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維のサンプルから、又は少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品から、水性バッファによる処理などの適切な抽出法によって、少なくとも1つのポリヌクレオチドを抽出する工程をさらに含んでよい。少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維上の、又は少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品上の、少なくとも1つのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列中に含まれる生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインから成る群より選択される少なくとも1つの情報項目を検出するための方法は、
複数の酢酸セルロース繊維を提供すること;
上記酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に、少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーを配置すること;
それによって、マーキングされた酢酸セルロース繊維を作製すること、さらにを含んでよく;並びに、
所望に応じて、少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品を製造すること(例えば、少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含むフィルタートウからフィルターを製造すること)をさらに含んでよい。少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維のサンプル、又は少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品を分析して、上記少なくとも1つのポリヌクレオチド中に含まれる上記ヌクレオチド配列を識別することは、PCR技術を含むことが好ましい。
【0019】
本発明はまた、少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含むトウベールを製造するための方法にも関し、この方法は、
(a)溶媒及び酢酸セルロースを含むドープから酢酸セルロース繊維を紡糸する工程;
(b)上記酢酸セルロース繊維からトウを形成する工程;
(c)上記トウに捲縮付与する工程;
(d)上記トウを乾燥する工程
を含み、ここで、上記少なくとも1つのポリヌクレオチドは、工程(a)から工程(d)のいずれかの工程間又は工程中で、上記酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に配置され、
上記方法は、(e)上記トウをベールとする工程、及び(f)上記トウベールを梱包する工程、をさらに含む。少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーの配置は、工程(c)と工程(d)との間に行われることが好ましい。(e)トウをベールとする工程、及び(f)トウベールを梱包する工程は、例えば国際公開第2016/174162号から公知である。
【0020】
本発明の別の目的は、少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーでマーキングされた酢酸セルロース繊維に関する。このような繊維は、例えば、マーキングされた酢酸セルロース繊維の製造に関する本発明に係る方法によって得ることが可能である。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、本発明に係る少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含むトウ又はトウベールに関する。
【0022】
本発明はまた、本発明に係る少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含むフィルターにも関する。上記フィルターは、気体、エアロゾル、又は液体用のフィルターであり、気体又はエアロゾル用のフィルターであることが好ましく、タバコの煙をろ過するタバコフィルターであることが最も好ましい。酢酸セルロース繊維を含むトウからのタバコフィルターの製造は、例えば、[http://legacy.library.ucsf.edu/tid/iun71a99/pdf]を通して入手可能であるP. Rustemeyer, “Filter Rods and Cellulose Acetate - Life-Cycle from the Tree to the Consumer”, 1998, 325023650, BATCo US DOJ v Philipp Morrisから一般的に公知である。
【0023】
本発明の別の目的は、少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む(好ましくは本発明に係る上記フィルターを含む)タバコである。
【0024】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願、及び刊行物のいずれの開示事項が、用語を不明瞭とし得る程度に本出願の記述と矛盾する場合には、本発明の記述が優先するものとする。
【0025】
以下の例は、本発明を、それを限定することなくさらに説明することを意図するものである。
【実施例】
【0026】
<実施例1>
生産者、製品ライン、及び日付をコードする12merオリゴヌクレオチドを、2μg/m3の濃度まで水溶液に希釈した。
【0027】
このオリゴマー溶液を、kg酢酸セルロース繊維1kg当たり約0.3ngオリゴヌクレオチドに相当するように酢酸セルロース繊維に付与し、酢酸セルロース繊維を乾燥した。
【0028】
各々100mgの重量の乾燥した酢酸セルロース繊維の複数のサンプルを、通常の手順のDNA検出法によって試験し、法科学的認証を行った。上記オリゴヌクレオチドは、全ての分析したサンプルにおいて、PCR増幅後に検出され、コードされた情報は、生産元の生産バッチと一致した。付与したオリゴヌクレオチドの量の>50%が検出された。
本発明の態様の例を以下に記載する。
<1> 複数の酢酸セルロース繊維を提供する工程、及び
前記酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に、少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むマーカーを配置することによって前記酢酸セルロース繊維をマーキングする工程、
を含む、マーキングされた酢酸セルロース繊維を製造するための方法。
<2> 前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、6個~200個のヌクレオチドを含む、<1>に記載の方法。
<3> 前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、非天然ヌクレオチド配列を有する、<1>又は<2>に記載の方法。
<4> 前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインから成る群より選択される少なくとも1つの情報項目を含む情報をコードする、<1>~<3>のいずれか一項に記載の方法。
<5> 前記製造方法が:
(a)溶媒及び酢酸セルロースを含むドープから酢酸セルロース繊維を紡糸すること;
(b)前記酢酸セルロース繊維からトウを形成すること;
(c)前記トウに捲縮付与すること;
(d)前記トウを乾燥すること、
を含み、
前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、工程(a)から工程(d)のいずれかの工程間又は工程中で、前記酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に配置される、<1>~<4>のいずれか一項に記載の方法。
<6> 前記少なくとも1つのポリヌクレオチドが、工程(c)と工程(d)との間に、前記酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に配置される、<1>~<5>のいずれか一項に記載の方法。
<7> 搬送システムに沿った位置に配置されたポリヌクレオチドマーカー供給装置の方向へ、酢酸セルロース繊維を搬送するように構成された搬送システムを備え、
前記ポリヌクレオチド供給装置は、1又は複数の出口部を備え、
前記1又は複数の出口部が、ポリヌクレオチドマーカーを含む少なくとも1つの溶液を、前記1又は複数の出口部を通して前記繊維の少なくとも一部の上に配置させるように構成されており、これにより前記繊維をマーキングする、酢酸セルロース繊維をマーキングするための装置。
<8> 少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維上の、又は少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品上の、前記少なくとも1つのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列中に含まれる生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインから成る群より選択される少なくとも1つの情報項目を検出するための方法であって、
少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維のサンプル、又は少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品を入手すること、及び
少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維の前記サンプル、又は少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む前記製品を分析して、前記少なくとも1つのポリヌクレオチド中に含まれるヌクレオチド配列を識別すること、及び
それによって、前記少なくとも1つのポリヌクレオチドの前記ヌクレオチド配列中に含まれる生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインから成る群より選択される少なくとも1つの情報項目を検出すること、
を含む、前記方法。
<9> 少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維上の、又は少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品上の、前記少なくとも1つのポリヌクレオチドのヌクレオチド配列中に含まれる生産者、日付、場所、バッチ、繊維特性、及び製品ラインから成る群より選択される少なくとも1つの情報項目を検出するための方法であって、
複数の酢酸セルロース繊維を提供すること;
前記酢酸セルロース繊維の少なくとも一部の上に、少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーを配置すること;
それによって、マーキングされた酢酸セルロース繊維を作製すること
を含み、
所望に応じて、少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む製品を製造することを含み、
<8>に記載の方法をさらに含む、前記方法。
<10> 少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維の前記サンプル、又は少なくとも1つのポリヌクレオチドでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む前記製品を分析して、前記少なくとも1つのポリヌクレオチド中に含まれる前記ヌクレオチド配列を識別することが、PCR技術を含む、<8>又は<9>に記載の方法。
<11> 少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含むトウベールを製造するための方法であって、
<5>又は<6>に記載の方法を含み、
さらに、(e)前記トウをベールとする工程、及び(f)前記トウベールを梱包する工程を含む、前記方法。
<12> 少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーでマーキングされた酢酸セルロース繊維。
<13> <12>に記載の酢酸セルロース繊維を含むトウ又はトウベール。
<14> 少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含み、好ましくは<13>に記載のトウを含む、フィルター。
<15> 少なくとも1つのポリヌクレオチドマーカーでマーキングされた酢酸セルロース繊維を含む、好ましくは<14>に記載のフィルターを含む、タバコ。