(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】挟持具
(51)【国際特許分類】
B42F 1/02 20060101AFI20240814BHJP
B42F 9/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B42F1/02 D
B42F9/00 C
(21)【出願番号】P 2020170674
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2020073108
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)展示日 令和2年9月2日~9月4日 (2)展示会名 第31回 国際文具・紙製品展 ISOT 夏 (3)開催場所 東京都江東区有明3丁目11-1 (4)公開者 株式会社研恒社(東京都千代田区九段北1-1-7) (5)公開された発明の内容 株式会社研恒社が、上記展示会及び開催場所にて今井裕平、林雄三及び藤原浩純が発明した挟持具を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】516207366
【氏名又は名称】株式会社研恒社
(74)【代理人】
【識別番号】100099357
【氏名又は名称】日高 一樹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】関口 かおる
(72)【発明者】
【氏名】神崎 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】今井 裕平
(72)【発明者】
【氏名】林 雄三
(72)【発明者】
【氏名】藤原 浩純
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105099(JP,A)
【文献】特開2004-330437(JP,A)
【文献】米国特許第05944353(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42F 9/00
1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を追加したり取り除くことができるように、複数の紙の端部を束ねて冊子を形成させる挟持具において、
前記挟持具は、複数の紙の束を挟むことができる見開き状の表紙部材と、
前記表紙部材の背部に沿う開口部を有する長尺のカバー部材と、
前記カバー部材の開口部内に進退可能に配設され、一対の挟持片と、これら挟持片の先端からそれぞれ内向きに延出する爪部とを有する複数のクリップと、を備え、
前記表紙部材の表表紙と裏表紙には、前記複数のクリップの爪部がそれぞれ挿通される貫通孔がそれぞれ形成されており、
前記
表紙部材は、前記貫通孔の背部側から先端側に向けて延出されるフラップを有し、前記クリップの前記挟持片の上下縁部には内向きに突出する係止部を有していることを特徴とする挟持具。
【請求項2】
前記複数のクリップは、前記カバー部材の長手方向における中央寄りに2つ配設されていることを特徴とする請求項1に記載の挟持具。
【請求項3】
前記クリップの前記挟持片における、先端から後端までの寸法と、前記表紙
部材の前記背部から前記貫通孔の前記背部側縁部までの寸法とは、略同一に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の挟持具。
【請求項4】
前記カバー部材には、該カバー部材に外嵌可能な装飾部材が着脱自在に配設されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の挟持具。
【請求項5】
前記貫通孔の前後方向は、前記爪部の前後寸法よりも小さく形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の挟持具。
【請求項6】
前記フラップには、前後方向の中央部に折部を備えていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の挟持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の紙の端部を束ねて冊子を形成するのに用いられる挟持具に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートや本などの冊子は、複数の紙の端部が糊や糸などで綴じられて形成されている。また、書類などを必要に応じて分類してまとめるために、利用者が複数の紙を綴じて冊子を形成することもある。このような場合、従来からいわゆるリングファイルなどが多く用いられている。例えばリングファイルは、二つ折りの表紙と表紙の裏面に複数の紙を保持する保持手段として環状の留め具を備え、書類にパンチ等を使い貫通孔を形成させておき、環状の留め具に貫通孔を挿通させることで、必要に応じて紙を追加したり取り除くことができる。
【0003】
また、特許文献1に示される挟持具にあっては、表紙の背部に沿って配置される長尺のカバー部材を備え、このカバー部材に保持手段としてのクリップを備えている。このクリップは、特許文献2に示されるように、従来から知られた技術である。特許文献2のクリップは、弾性を有する金属の薄板を折曲して形成され、基部の短手方向の端部から対向する一対の挟持片が延設され、表紙方向に開口する側面視略コ字状に形成されている。一対の挟持片は開口方向に先拡がりに形成され、挟持片の先端にはそれぞれ押圧爪が基部側に内方へ折曲されて対向形成されている。紙を綴る際には、クリップの一対の挟持片の間に複数の紙の束を差し込んだ状態で側面視コ字状の押圧部材の中にスライドさせて押し込む。これにより、押圧部材の内部で一対の挟持片が挟圧されるとともに、挟持片と紙の束との間で圧縮された一対の押圧爪の戻り弾発力によって紙の束を強く押圧することができる。このようなクリップを利用することで書類に貫通孔を形成させることなく冊子状に綴じられるようになっている。
【0004】
また、クリップによる挟持を解除する際には、紙の束と押圧部材とをそれぞれ把持して離間方向に引けばよい。紙の束と押圧カバー部とを離間方向に引く際の初動段階では、クリップの押圧爪は直接当接する最上面の紙の表面と最下面の紙の裏面とにそれぞれ押圧され、互いの当接箇所に働く摩擦力によって、紙の束の表面と裏面と相対移動しない。そのため、押圧部材の開口内面とクリップの挟持片の表面との滑りにより押圧部材とクリップとが相対的に離間するように動作し、離間にともないクリップの挟持片の挟圧力が減衰することになり、簡単な操作でクリップによる挟持を解除できる。
【0005】
特許文献1に戻って、この挟持具にあっては、長尺のカバー部材の長手方向にそれぞれ離間して3つのクリップが配設されている。また、特許文献1では紙の保護と見栄えの向上を目的として見開き状の表紙部材を備え、複数の紙の束は、表紙部材の間に挟まれた状態で表紙部材越しに3つのクリップにより挟持されて綴じられる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-330437号公報(第1頁、第1図)
【文献】特開平9-150593号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のクリップファイルにおいて、クリップによる挟持を解除する際には、一方の手では表紙部材の上から紙の束を把持し、他方の手でカバー部材を把持して離間方向に引くことになる。このとき、仮に表紙部材が合成樹脂などで形成され、その表面の摩擦係数が低い場合には、クリップの押圧爪が表紙部材の表面上を滑り、クリップとカバー部材とが相対的に離間されないまま、クリップが表紙部材及び紙の束と分離してしまう。このため、挟持片による挟持力が減衰していない状態で、表紙部材及び紙の束からクリップが無理やり取り外される態様となり、紙の束が崩れる虞があることに加え、表紙部材及び紙の束から取り外されたクリップはカバー部材内に収納されたままの状態であるため、再度紙の束を綴じ込む際には、一旦、収納状態のクリップ部を前面側へ引き出す必要があり、紙を追加したり取り除く作業が煩雑だった。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、表紙部材の素材に囚われず冊子状に綴じ込んだ紙を追加したり取り除く作業をスムーズに行うことができる挟持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明の挟持具は、
紙を追加したり取り除くことができるように、複数の紙の端部を束ねて冊子を形成させる挟持具において、
前記挟持具は、複数の紙の束を挟むことができる見開き状の表紙部材と、
前記表紙部材の背部に沿う開口部を有する長尺のカバー部材と、
前記カバー部材の開口部内に進退可能に配設され、一対の挟持片と、これら挟持片の先端からそれぞれ内向きに延出する爪部とを有する複数のクリップと、を備え、
前記表紙部材の表表紙と裏表紙には、前記複数のクリップの爪部がそれぞれ挿通される貫通孔がそれぞれ形成されており、
前記表紙部材は、前記貫通孔の背部側から先端側に向けて延出されるフラップを有し、前記クリップの前記挟持片の上下縁部には内向きに突出する係止部を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、複数のクリップの爪部が表紙部材に形成された貫通孔を挿通して、それぞれ最上面の紙の表面と最下面の紙の裏面とに直接当接されることとなるので、表紙上から複数の紙の束を把持し紙の束とカバー部材とを離間する方向に引くと、爪部と紙の束との互いの当接箇所に働く摩擦力によって、クリップと紙の束とが相対移動せず、カバー部材と複数のクリップとが相対的に離間するように動作し、離間に伴い一つの動作の中で複数のクリップの挟持片の挟圧力が減衰する。加えて複数のクリップはカバー部材の開口部内から引き出されて挟持力が減衰されている状態となるので、再度クリップの内部空間内に紙を容易に挿入することができる。これによれば表紙部材の素材に囚われず冊子状に綴じ込んだ紙を追加したり取り除く作業をスムーズに行うことができる。
【0010】
前記複数のクリップは、前記カバー部材の長手方向における中央寄りに2つ配設されていることを特徴としている。
この特徴によれば、クリップが長寸のカバー部材の中央に寄って配設されているため、複数の紙の束とカバー部材とが傾斜して離間する方向にひかれてしまった場合にあっては、傾動支点から離れた長手方向の一方側に位置するクリップはカバー部材から大きく離間する方向へ移動され、傾動支点から近い長手方向の他方側に位置するクリップにあっても、一方側のクリップに追従して離間する方向へ移動されることとなり、一つの動作でこれら2つのクリップのいずれの挟持力も減衰させることができる。
【0011】
前記クリップの前記挟持片における、先端から後端までの寸法と、前記表紙部材の前記背部から前記貫通孔の前記背部側縁部までの寸法とは、略同一に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、カバー部材と表紙部材とを離間方向へ移動させると、挟持片と爪部との境界である内角部と貫通孔の背部側縁部とが当接してクリップが表紙部材とともに移動し、クリップを確実にカバー部材の開口部内から引き出すことができる。
【0012】
前記カバー部材には、該カバー部材に外嵌可能な装飾部材が着脱自在に配設されることを特徴としている。
この特徴によれば、カバー部材に外嵌させた装飾部材により、挟持具に綴じられている冊子を識別しやすくなる。
【0013】
前記貫通孔の前後方向は、前記爪部の前後寸法よりも小さく形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、貫通孔に挿通させた爪部が貫通孔から抜けにくく、操作性に優れる。
【0015】
前記フラップには、前後方向の中央部に折部を備えていることを特徴としている。
この特徴によれば、折部が緩衝部として機能してクリップと表紙部材との相対移動、つまり繰り返し行われる被挟持物の挿入作業時と取り外し作業時に対するフラップの耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1における挟持具と被挟持物を示す斜視図である。
【
図2】挟持具を用いて被挟持物を挟持させた態様を示す斜視図である。
【
図3】クリップを表紙のフラップに取り付ける様子を示す斜視図である。
【
図4】クリップと表紙のフラップとが上下に係止されている態様を示す一部拡大斜視図である。
【
図5】クリップと表紙のフラップとの寸法関係を示す一部拡大図である。
【
図6】実施例1における表紙を展開させた態様を示す平面図である。
【
図7】(a)はカバー部材からクリップが完全に引き出された収納解除状態を示した図であり、(b)はクリップの内部空間内に被挟持物を挿入させ被挟持物の端部をクリップの奥端部に当接させた態様を示した図であり、(c)はカバー部材内にクリップを収納させた図を示す。
【
図8】(a)はカバー部材からクリップを突出させ爪部の挟持状態を弱めた状態を示した図であり、(b)はカバー部材からクリップを完全に引き出した収納解除状態を示す図である。
【
図9】カバー部材と表紙部とを互いに傾斜し離間する方向へ相対的に移動させた図を示す。
【
図10】実施例1における貫通孔およびフラップの形状の変形例を示す図である。
【
図11】実施例1におけるフラップの形状の変形例を示す図である。
【
図12】実施例2における表紙を展開させた態様を示す平面図である。
【
図13】実施例2において、(a)はカバー部材からクリップを突出させ爪部の挟持状態を弱めた状態を示した図であり、(b)は表紙の貫通孔の背部側縁部をクリップの内角部に当接させた態様を示した図であり、(c)はカバー部材からクリップを完全に引き出した収納解除状態を示す図である。
【
図14】実施例2におけるカバー部材及びクリップと、変形例における表紙部材を示す。
【
図15】実施例2の変形例における表紙部材をクリップに配設させる図を示す。
【
図16】(a)はカバー部材の変形例1を示し、(b)はカバー部材の変形例2を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る挟持具を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例1】
【0018】
実施例1に係る挟持具につき、
図1から
図11を参照して説明する。以下、
図1の平面右上側を正面側とし、正面側から見たときの上下左右前後方向を基準として説明する。
【0019】
本発明の実施例に係る挟持具1は、
図1及び
図2に示すように、挟持具1の内部空間S1に挿入された被挟持物Pを取り外し自在に挟持し、冊子状に綴じ込むためのファイリング用具である。挟持具1は、上下に延びる長尺であり、長手方向に前面(
図1の右上)が開放された断面視略コ字状をなすカバー部材2と、このカバー部材2に係合状態で内蔵され長手方向に離間して配設される2つのクリップ3,3と、被挟持物Pを覆う見開き状の表紙部材4と、から構成されている。
【0020】
挟持具1によって綴じることができる被挟持物Pは、書面やメモなどの紙葉、それ以外のシート、冊子、書類などであり、本実施例においてはA4判サイズのコピー用紙の束である。
【0021】
図3及び
図6に示されるように表紙部材4は、例えばポリプロピレンや、ポリエチレンテレフタレート、その他の弾性を有する樹脂または紙などからなる変形可能なシートで構成されている。展開した表紙部材4の横方向の略中央には、折り目部43,43が平行にそれぞれ上下に延びて形成されこれら折り目部43,43に区切られて、折り目部43,43の間に横幅を有する背部40が形成され、背部40の両側に表表紙4Aと裏表紙4Bとが形成されている。また、折り目部43,43の両外側に折り目部44,44が形成されており、表紙部材4及び裏表紙4Bは谷折り方向に折り曲げやすくなっている。
【0022】
表紙部材4の表表紙4A及び裏表紙4Bには、同一形状の貫通孔45,46がそれぞれ形成されている。貫通孔45,46は、表紙部材4の上下方向における中央寄りに形成されている。貫通孔45を例に取り詳述すると、貫通孔45は表紙部材4の表表紙4Aが背部側の一辺を残してコ字状に切り込まれて、背部側の一辺とコ字状を形成する三辺により矩形状に形成されている。言い換えると、貫通孔45には、貫通孔45の背部側の縁部から先端側の縁部に向けて延出するフラップ41が形成されている。このフラップ41は貫通孔45と同外形であり、貫通孔45を塞ぐように形成されている。また、フラップ41は背部側の一辺41aを起点として揺動可能になっている。同様に貫通孔46内には、フラップ42が形成されている。
【0023】
表表紙4Aの貫通孔45,46と、裏表紙4Bの貫通孔45,46とは、背部40の近傍において、背部40を中心に対称位置にそれぞれ形成されている。
【0024】
フラップ41の背部側の一辺41aは、表表紙4A及び裏表紙4Bの折り目部44,44と同一線上に位置しており、フラップ41が谷折り方向に、換言すると先端側の一辺41bが外側を向くように起こされた状態となっているとともに、フラップ41が内外方向に揺動できるようになっている。
【0025】
図2、
図3及び
図7に示されるように、クリップ3は、主に金属や硬質合成樹脂などから弾性変形可能に形成される締付け具であり、基部33と挟持片31,32と爪部3A,3Aとから一方に開口する形状に形成されている。詳しくは、基部33を形成するとともに、その両端から連続的かつ拡開状に挟持片31,32を形成し、さらに挟持片31,32の先端に、基部33の方へ向けて内向きに延出する一対の爪部3A,3Aが対向して形成されている。また、挟持片31,32の上下端縁の中央側には、それぞれ対向(内向き)方向に向けて係止部35,35が延設されている。
【0026】
次いで、
図3を用いて、クリップ3を表紙部材4に取り付ける態様について説明する。まず、クリップ3を貫通孔45及びフラップ41と前後方向に重ならない位置において、表紙部材4の背部40側を挟むように設置し、その後、
図3に示されるように、上下方向(ここでは上方向)にスライドさせてクリップ3を貫通孔45及びフラップ41とに重合させる。フラップ41,41は、表表紙4A及び裏表紙4Bの折り目部44,44により、先端側の一辺41bが外側に向けて起こされた状態となっており、クリップ3を上下方向にスライドさせることで、クリップ3の爪部3A,3Aの内側にフラップ41,41がそれぞれ案内される。
【0027】
図4及び
図5に示されるように、フラップ41の上下縁部41c,41c間の寸法L1は、クリップ3における上下の係止部35,35間の離間距離L2と略同寸法に形成されており、クリップ3における上下の係止部35,35間にフラップ41の上下縁部41c,41cが配置されることで、クリップ3の表紙部材4に対する上下方向の移動が規制される。
【0028】
図5に示されるように、表紙部材4の折り目部43からフラップ41の先端側の一辺41bとの間の寸法L3は、自然状態におけるクリップ3の基部33から爪部3Aの内角部34までの離間寸法L4と略同寸法となっており、クリップ3と表紙部材4との前後方向の移動が規制される。なお、
図7及び
図8に示されるように、フラップ41は折り目部44を起点として揺動できるとともに、薄板状であることから自身が撓むように変形することができるため、クリップ3と表紙部材4との相対移動をこれらフラップ41の揺動や変形によって許容することができる。言い換えると、これらフラップ41の揺動代と変形代によって、クリップ3と表紙部材4との相対移動の許容量が規定される。
【0029】
図2及び
図7に示されるように、カバー部材2は、金属や硬質合成樹脂などからクリップ3に比べて変形しにくく形成され、その先端側に一対の押圧片21,22が基部23を挟んで断面視略コ字状に形成されている。基部23の外面側は背表紙として機能するようになっており、シール等を貼着させることができるようになっている。また、一対の押圧片21,22の先端間で形成される内側の差込幅は、クリップ3の基部33の外側の幅よりも幅狭状に形成されている。
【0030】
また、カバー部材2の押圧片21,22の内側面には、係合凸部21a,22aが突出して形成されており、クリップ3の挟持片31,32にはスリットである係合凹部3B,3B(
図1,2参照)が形成されている。これら押圧片21,22の係合凸部21a,22aと、挟持片31,32の係合凹部3B,3Bと、が遊嵌状に凹凸嵌合されてカバー部材2とクリップ3,3とが、スライド自在かつ抜け止めされている。カバー部材2は、クリップ3の挟持片31,32の外面に沿って押圧片21,22の内側面が、被挟持物Pの挿入方向(近接方向)及び取り出し方向(離間方向)へスライド自在に相対移動可能となるようにクリップ3に対して取り付けられる。
【0031】
次に、
図7(a)~(c)を用いて、挟持具1に被挟持物Pを挟持させる態様を説明する。まず、
図7(a)に示されるように、複数枚の紙を積層して束ねた被挟持物Pを把持し、表紙部材4における対向する表表紙4Aと裏表紙4Bとが形成する内部空間S1内に挿入する。詳しくは、被挟持物Pの綴じ込み端部P3を表紙部材4の背部40の内側に当接するまで挿入させる。この挿入の過程で、表紙部材4の貫通孔45,46を挿通して内部空間S1内に突出配置されたクリップ3の一対の爪部3A,3Aの先端が、被挟持物Pの表側表面P1及び裏側表面P2にそれぞれ当接されるようになっている。
【0032】
次いで、
図7(b)に示されるように、被挟持物Pの綴じ込み端部P3が表紙部材4の背部40に当接した状態から、さらに被挟持物Pが押し込まれると、表紙部材4の背部40がクリップ3の基部33に当接し、さらに押し込まれると、表紙部材4の背部40によりクリップ3がカバー部材2の基部23側へ押し込まれる。
【0033】
クリップ3の挟持片31,32は、カバー部材2の差込幅よりも幅広に形成されていることから、カバー部材2の押圧片21,22に上下方向から圧縮されることで弾性変形されながらカバー部材2の内部に漸次収納されていく。爪部3A,3Aは、押圧片21,22に上下方向から圧縮されることから、クリップ3がカバー部材2の内部に漸次収納されるにつれ弾発力が増していき、被挟持物Pが強く挟持されるようになる。
【0034】
クリップ3は、
図7(c)に示されるように、基部33がカバー部材2の基部23に当接するまで挿入することができ、クリップ3の基部33がカバー部材2の基部23に当接した状態が、クリップ3が完全に収納が完了した状態である。この状態において一対の爪部3A,3Aによる挟持力が最大であり、この状態を以て挟持具1を用いた被挟持物Pの綴じ込みが完了する。尚、綴じ込みの際に被挟持物Pを把持してカバー部材2側へ押し込む態様を説明したが、これに限られず、被挟持物Pを覆う表紙部材4上から把持することとしても同様に綴じ込むことができる。
【0035】
次に、
図8(a),(b)を用いて、挟持具1と被挟持物Pとの挟持状態を解除させる態様を説明する。挟持具1から被挟持物Pを取り外す際には、カバー部材2の長手方向における中央部近傍と、表紙部材4上から被挟持物Pを把持し、お互いを離間する方向へ相対的に移動させる。お互いを離間する方向へ相対的に移動させると、一対の爪部3Aの先端と被挟持物Pの表側表面P1及び裏側表面P2とによる摩擦力により、クリップ3が表紙部材4側へ留まろうと作用することから、カバー部材2の基部23とクリップ3の基部33とが離間し、クリップ3がカバー部材2から突出される。これにより、爪部3A,3Aは、押圧片21,22の上下方向から受ける圧縮力が弱まり、クリップ3がカバー部材2の外部に漸次引き出されるにつれ弾発力が減衰していき、被挟持物Pへの挟持力が弱まるようになり、
図8(a)に示される状態となる。
【0036】
更に、表紙部材4上から被挟持物Pを把持し、カバー部材2と被挟持物Pとをお互いを離間する方向へ相対的に移動させると、表紙部材4が被挟持物P上の手前側に移動される。図に示されるように、フラップ41の先端側の一辺41bは、クリップ3の爪部3Aの内角部34に当接しているため、表紙部材4がクリップ3をカバー部材2内から引き出すように作用するようになる。爪部3A,3Aは、内角部34が表紙部材4を引き出すにつれ挟持力が弱まることから、離間する方向へ相対的に移動させると表紙部材4がクリップ3をカバー部材2内から引き出す量が大きくなっていく。よって、
図8(b)に示されるカバー部材2からクリップ3が完全に引き出された状態となり、収納解除状態となる。このときの爪部3A,3Aの挟持力は最小となっている。
【0037】
挟持具1から被挟持物Pを取り外す際において、例えばカバー部材2の長手方向における上端部近傍と、表紙部材4の下端部近傍とを把持し、意図せず互いに傾斜し離間する方向へ相対的に移動させた場合がある。このような場合には、
図9に示されるように、傾動支点から離れた長手方向の一方側に位置するクリップ3(紙面上方側)が被挟持物Pとの摩擦によりカバー部材2がクリップ3と大きく離間する方向へ移動され、爪部3Aの挟持力が弱まり、クリップ3が突出した状態となる。傾動支点から近い長手方向の他方側に位置するクリップ3(紙面上方側)とカバー部材2においても、カバー部材2が上下方向に延びて形成されており、クリップ3,3がカバー部材2の端部よりも中央側に寄って配設されていることから、他方側に位置するクリップ3も一方側のクリップ3に追従して離間する方向へ移動されることとなり、爪部3Aの挟持力が弱まりクリップ3,3が突出した状態となる。このことから、被挟持物Pをスムーズに入れ替えることができる。
【0038】
以上説明したように、紙を追加したり取り除くことができるように、複数の紙の端部を束ねて冊子を形成させる挟持具1において、挟持具1は、複数のクリップ3と、を備え、表紙部材4の表表紙4Aと裏表紙4Bには、複数のクリップ3の爪部3Aがそれぞれ挿通され貫通孔45,46がそれぞれ形成されていることから、複数のクリップ3の爪部3Aが表紙部材4に形成された貫通孔45,46を挿通して、それぞれ最上面の紙の表面P1と最下面の紙の裏面P2とに直接当接されることなる。そのため、表紙上から複数の紙の束を把持し紙の束とカバー部材2とを離間する方向に引くと、爪部3Aと被挟持物Pとの互いの当接箇所に働く摩擦力によって、クリップ3と被挟持物Pとが相対移動せず、カバー部材2と複数のクリップ3とが相対的に離間するように動作し、離間に伴い一つの動作の中で複数のクリップ3の挟持片31,32の挟圧力が減衰することから、カバー部材2とクリップ3とを相対移動させやすい。加えて複数のクリップ3はカバー部材2の開口部内から引き出されて挟持力が減衰されている状態となるので、再度クリップ3の内部空間内に紙を容易に挿入することができる。このように、取り外す際にも、挿入させる際にも表紙部材4の素材に囚われず冊子状に綴じ込んだ紙を追加したり取り除く作業をスムーズに行うことができる。
【0039】
また、新規に用いる場合には、表紙部材4のフリップの先端側の一辺41b,42bとクリップ3の内角部34,34と当接させ、カバー部材2と表紙部材4とを離間する方向へ相対移動させると、クリップ3がカバー部材2内から引き出されるように作用することから、簡便に収納解除状態にできる。
【0040】
また、複数のクリップ3は、カバー部材2の長手方向における中央寄りに2つ配設されており、クリップ3が長寸のカバー部材2の中央に寄って配設されているため、複数の紙の束とカバー部材2とが傾斜して離間する方向にひかれた場合にあっては、傾動支点から離れた長手方向の一方側に位置するクリップ3はカバー部材2から大きく離間する方向へ移動され、傾動支点から近い長手方向の他方側に位置するクリップ3にあっても、一方側のクリップ3に追従して離間する方向へ移動されることとなり、一つの動作でこれら2つのクリップ3のいずれの挟持力も減衰させることができる。
【0041】
また、貫通孔45,46の前後方向の開口幅は、爪部3A,3Aの前後寸法よりも小さく形成されていることから、貫通孔45,46に挿通させた爪部3A,3Aが、貫通孔45,46から抜けにくい。
【0042】
図10(a)~(d)は、貫通孔およびフラップの形状の変形例である。
図10(a)の貫通孔145は略T字状であり、フラップ141についても貫通孔145の外縁形状と同形状である。
図10(b)の貫通孔146は略台形字状であり、フラップ142についても貫通孔146の外縁形状と同形状である。
図10(c)の貫通孔147は略凸状であり、フラップ143についても貫通孔147の外縁形状と同形状である。この場合、フラップ143の上下縁部における先端側の上下寸法の小さい部分143cがクリップ3の係止部35に係止される。
図10(d)の貫通孔148は先端側に平行な辺を有する山形状であり、フラップ144についても貫通孔148の外縁形状と同形状である。この場合、フラップ144の上下縁部における先端側の上下寸法の小さい部分144cがクリップ3の係止部35に係止される。なお、上述した貫通孔およびフラップの形状は、一例であり、クリップ3の係止部35に対抗する平行な辺を上下に有していれば、どのような形状であってもよい。
【0043】
図11は、フラップの形状の変形例であり、本変形例におけるフラップ151は、前後方向の中央部、すなわち背部側の一辺151aよりも先端側に折部151dを備えている。折部151dによりフラップ151は先端側の一辺151bが外側に向けて起こされており、この折部151dがリブのように機能してフラップ151の上下方向からの外力、つまりクリップ3との当接に対する強度が高められている。また、折部151dが緩衝部として機能してクリップ3と表紙部材4との相対移動、つまり繰り返し行われる被挟持物Pの挿入作業時と取り外し作業時に対するフラップ151の耐久性が向上する。また、折部151dにより、フラップ151の揺動代と変形代が増大するため、クリップ3と表紙部材4との相対移動の許容量を増やすことができる。
【実施例2】
【0044】
次に、実施例2に係る挟持具につき、
図12から
図15を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0045】
図12に示されるように、表紙部材4には、矩形状の貫通孔61,62が上下に形成されている。
図13(a)に示されるように、挟持具101から被挟持物Pを取り外す際の初期段階においては、貫通孔61,62の背部側縁部61a,62aと爪部3A,3Aの境に形成された内角部34とが離間している。これは、表紙部材4の背部40から貫通孔61,62の背部側縁部61a,62aまでの寸法が、自然状態におけるクリップ3の基部33から爪部3Aの内角部34までの離間寸法よりも小さいためである。
【0046】
表紙部材4ごと被挟持物Pを把持し、カバー部材2と被挟持物Pとを互いに離間する方向へ相対的に移動させると、貫通孔61,62の背部側縁部61a,62aに、爪部3A,3Aの境に形成された内角部34が当接する。
図13(c)に示されるように、表紙部材4の背部側縁部61a,62aがクリップ3の内角部34,34と当接している状態で、更にカバー部材2と表紙部材4とを互いに離間する方向へ相対的に移動させると、表紙部材4と一体になったクリップ3がカバー部材2内から引き出される。
【0047】
このように、表紙部材4の背部40から貫通孔61,62の背部側縁部61a,62aまでの寸法が、自然状態におけるクリップ3の基部33から爪部3Aの内角部34までの離間寸法よりも小さい構成とすることで、表紙部材4及び被挟持物Pとカバー部材2との離間方向の相対移動に対して、直ちにクリップ3がカバー部材2内から引き出されることがなく、使用者が明確な意図を持って挟持具101から被挟持物Pを取り外す操作した場合にのみ、クリップ3の挟持力を大きく減退させることができる。
【0048】
図14に示される挟持具111は、上記した一対の貫通孔61,62の位置を変更した変形例である。変形例に示される表紙部材400の一対の貫通孔610,620は、表紙部材の背部40の外側面から貫通孔の背部側縁部までの距離が変更されている。詳しくは、変形例における表紙部材400の背部40の外側面から貫通孔610,620の背部側縁部610a,620aまでの距離bは、クリップ3の基部33の内側面から爪部3Aの内側面へ向けて折り返された内角部34までの距離aと、略同一に形成されている。
【0049】
クリップ3に表紙部材400を取り付ける際には、カバー部材2からクリップ3を前方方向にスライドさせた収納解除状態にし、クリップ3の一方側の爪部3Aを表紙部材400に形成されている一方側の貫通孔610内へ挿入させ、爪部3Aの内角部34と貫通孔610の背部側縁部610aとをそれぞれ当接させることで、クリップ3の一方側の爪部3Aが一方側の貫通孔610とが係合状態となる。表紙部材400は変形可能なシート状に形成されているので、他方側の爪部3Aを他方側の貫通孔610に係合させる際に、
図15に示されるように表紙部材400をクリップ3の内方側で撓ませることでクリップ3の他方側の爪部3Aを表紙部材400に形成されている他方側の貫通孔610内へ挿入させ、爪部3Aの内角部34と貫通孔610の背部側縁部610aとをそれぞれ当接させることができるようになっている。
【0050】
図16(a)は、上述したカバー部材の変形例1を示し、変形例1におけるカバー部材20は、カバー部材20の外面2aにおける後端部及び両側部に上下に延びる突出部2b,2c,2cが形成されている。カバー部材20には、カバー部材20に外嵌可能な装飾部材6が着脱自在に配設されている。装飾部材6は、断面視略コ字状をなし上下に延びておりカバー部材20よりも一回り大きく形成されている。装飾部材6の上下寸法は、カバー部材20と略同寸に形成されている。また、装飾部材6の内面6aにおける後端部及び両側部には、上下に延びる凹部6b,6c,6cが形成されており、カバー部材20の上端部に装飾部材6の下端部を当接させスライドさせることで、突出部2b,2c,2cと凹部6b,6c,6cが係合し、カバー部材20の外面2a全体に装飾部材6が外嵌するようになっている。
【0051】
装飾部材6は、合成樹脂などから形成されており、カバー部材20に装飾部材6を外嵌させることで、カバー部材20の強度が向上し、更に装飾部材6の色合いや質感を個々に変更させることで、挟持具1に綴じられている被挟持物Pを識別しやすくなる。また、装飾部材6に透過性の素材を用いることで挟持具1の美観も向上する。また、装飾部材6は、外面をコーティング加工もしくはシール等を張着することにより設けられた表示部6Aが形成されており、表示部6Aに被挟持物Pのタイトル,内容等を記載することで挟持具に綴られた被挟持物Pの内容を識別できるようになっている。また、装飾部材6の表示部6Aは、カバー部材の基部の外面よりも外表面に平面となっている表示面を形成していることから、表示部6Aに文字等を書き込みやすく、識別しやすい。
【0052】
図16(b)は、上述したカバー部材の変形例2を示し、変形例2におけるカバー部材12は、カバー部材12の外周面12aにおける両側部における後端側には、上下に延びる突出部12b,12bが形成されている。カバー部材12には外周面12aにおける後端部に外嵌可能な装飾部材60が着脱自在に配設されている。装飾部材60は、断面視略コ字状をなし上下に延びており変形例1の装飾部材6よりも両側部が短く形成されている。装飾部材60の上下寸法は、カバー部材12と略同寸に形成されている。また、装飾部材60の内面6aにおける後端部及び両側部には、上下に延びる凹部60b,60bが形成されており、カバー部材12の上端部に装飾部材60の下端部を当接させスライドさせることで、突出部12b,12bと凹部60b,60bとが係合し、カバー部材20の外面2a全体に装飾部材60が外嵌するようになっている。また、装飾部材60は装飾部材6よりも両側部が短く形成されていることから、軽量で加工がしやすく、カバー部材への取付が簡便である。
【0053】
このように、カバー部材20,12には、カバー部材20,12に外嵌可能な装飾部材6,60が着脱自在に配設されることから、カバー部材20,12に装飾部材6を取り付けることで挟持具に綴じられている被挟持物Pを識別しやすくなる。
【0054】
以上、本発明の実施例と変形例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1,101,111 挟持具
2,12,20 カバー部材
3,3 クリップ
3A 爪部
3B 係合凹部
4 表紙部材
4A 表表紙
4B 裏表紙
6 装飾部材
21,22 押圧片
21a,22a 係合凸部
23 基部
31,32 挟持片
33 基部
34 内角部
35 係止部
40 背部
41 フラップ
41a 背部側一辺
41b 先端側一辺
41c 上下縁部
43 折り目部
44 折り目部
45,46 貫通孔
60 装飾部材
61,62 貫通孔
61a,62a 背部側縁部
141~144 フラップ
145~148 貫通孔
151 フラップ
151d 折部
P 被挟持物(紙の束)