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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】冷暖房用輻射パネル
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
F24F5/00 101B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021064981
(22)【出願日】2021-04-06
(65)【公開番号】P2022160313
(43)【公開日】2022-10-19
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502444733
【氏名又は名称】日軽金アクト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516093541
【氏名又は名称】株式会社エース・ウォーター
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 博光
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 栄徳
(72)【発明者】
【氏名】朴 王丹
(72)【発明者】
【氏名】樋上 博幸
(72)【発明者】
【氏名】川島 潤一郎
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-184861(JP,A)
【文献】実開平3-57310(JP,U)
【文献】特開2015-148357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体育館を含む屋内施設内の壁面に沿って配設され、熱源から供給される熱媒体を内部に循環させて冷気や暖気を輻射させることにより上記屋内施設内の冷暖房を行う冷暖房用輻射パネルであって、
上記輻射パネルは、上下に対峙する一対のヘッダー管と、上記両ヘッダー管に接続される互いに平行な複数の放熱体とを具備し、
上記放熱体は、上記両ヘッダー管に連通する管部と、該管部の長手方向の側面から該管部に対して略直交状に延在する直状基部と、該直状基部の両側面からそれぞれ互いに平行に突出する複数の放熱フィンとからなり、
上記放熱体の上記直状基部の正面側の先端部に、上記直状基部の長手方向に沿って防球部が装着されている、
ことを特徴とする冷暖房用輻射パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の冷暖房用輻射パネルにおいて、
上記熱媒体が液体である、ことを特徴とする冷暖房用輻射パネル。
【請求項3】
請求項1に記載の冷暖房用輻射パネルにおいて、
上記防球部は、上記直状基部の先端部に嵌合する可撓性を有する断熱部材を介して装着されている、ことを特徴とする冷暖房用輻射パネル。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の冷暖房用輻射パネルにおいて、
上記防球部は、少なくとも上記直状基部の延長線上に補強リブを有する中空状に形成されている、ことを特徴とする冷暖房用輻射パネル。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の冷暖房用輻射パネルにおいて、
上記直状基部の先端部に膨隆突起を形成し、上記防球部は、上記直状基部の上記膨隆突起に嵌合する断熱部材の凸円弧状外周面に嵌合する凹円弧状嵌合部を有する、ことを特徴とする冷暖房用輻射パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷暖房用輻射パネルに関するもので、更に詳細には、体育館を含む屋内施設内の冷暖房を行う冷暖房用輻射パネルに関するものある。
【背景技術】
【0002】
近年、体育館を含む屋内施設内の温度管理の重要性に鑑みて不要な風が発生することなく、送風による騒音の発生を抑制でき、かつ、地球温暖化の主な原因である温室効果ガスの排出を抑制できる冷暖房装置として輻射パネルが使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の輻射パネルは、床面から壁面に沿って配設される複数の中空状の縦管(二重管)を連続したもので、熱媒体である冷却水が循環する配管経路を通じて上記縦管の内部に冷却水(熱媒体)が供給されることにより、床面から輻射パネルの高さの間に低温空気層を形成している。なお、特許文献1に記載の輻射パネルは、冷暖房兼用に使用できる。
【0004】
また、特許文献1に記載の輻射パネルの最前面には、輻射パネルと同じ高さの縦格子状の防球柵が取り付けられており、ボール等の衝突による輻射パネルの破損防止が図られている。また、輻射パネルをボール等の衝突から保護するために、輻射パネルの正面、左右側面、上面を覆う正面覆い部、側面覆い部、上面覆い部を格子状に形成した防護柵が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-148357号公報
【文献】実用新案登録第3215423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載のものは、いずれも輻射パネルの前面側すなわち輻射熱(放射熱ともいう)の放射側に格子状の柵が位置しているため、放熱性能の低下を来たす懸念がある。また、輻射パネルとは別に柵体を設けるため、放熱を阻害する構成部材が増えると共に、柵体の取付や輻射パネルの設置に手間を要する等の懸念がある。また、この種の輻射パネルにおいては、熱媒体からの輻射熱(放射熱)を効率よくパネル前面に放熱することが望まれている。
【0007】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、放熱を阻害する構成部材の削減が図れると共に、ボール等の衝突からの保護が図れ、かつ、輻射熱(放射熱)の放熱性能の向上が図れる冷暖房用輻射パネルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、この発明は、体育館を含む屋内施設内の壁面に沿って配設され、熱源から供給される熱媒体を内部に循環させて冷気や暖気を輻射させることにより上記屋内施設内の冷暖房を行う冷暖房用輻射パネルであって、上記輻射パネルは、上下に対峙する一対のヘッダー管と、上記両ヘッダー管に接続される互いに平行な複数の放熱体とを具備し、上記放熱体は、上記両ヘッダー管に連通する管部と、該管部の長手方向の側面から該管部に対して略直交状に延在する直状基部と、該直状基部の両側面からそれぞれ互いに平行に突出する複数の放熱フィンとからなり、上記放熱体の上記直状基部の正面側の先端部に、上記直状基部の長手方向に沿って防球部が装着されている、ことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このように構成することにより、放熱体の直状基部の正面側の先端部に装着される防球部によって輻射パネルをボール等の衝突から保護することができる。また、熱媒体が流れる管部から直状基部及び複数の放熱フィンによって輻射熱移動に対流を増幅させてパネル前面に放熱させることができる。
【0010】
この発明において、上記熱媒体は気体冷媒であっても差し支えないが、熱媒体が液体であるのが好ましい(請求項2)。
【0011】
熱媒体に気体を用いた場合は、冷房、暖房の温度調整に空気調和機や熱交換器等の設備が必要になるが、液体を用いることにより温度調整を容易にすることができる。すなわち、定常の温度が冷房に適した液体例えば水を用いれば、暖房時のみ加熱して所定温度にすればよいので、加熱のみの熱交換器で温度調整を容易にすることができる。
【0012】
また、この発明において、上記防球部は、上記直状基部の先端部に嵌合する可撓性を有する断熱部材を介して装着されているのが好ましい(請求項3)。
【0013】
このように構成することにより、放熱体からの輻射熱が防球部に伝わるのを阻止することができる。また、防球部が受ける衝撃を断熱部材で吸収することができる。
【0014】
また、この発明において、上記防球部は、少なくとも上記直状基部の延長線上に補強リブを有する中空状に形成されているのが好ましい(請求項4)。
【0015】
このように構成することにより、防球部を軽量にすると共に強度を持たせることができる。
【0016】
また、この発明において、上記直状基部の先端部に膨隆突起を形成し、上記防球部は、上記直状基部の上記膨隆突起に嵌合する断熱部材の凸円弧状外周面に嵌合する凹円弧状嵌合部を有するのが好ましい(請求項5)。
【0017】
このように構成することにより、放熱体への断熱部材の取付を強固にすることができ、断熱部材への防球部の取付を容易かつ強固にすることができる。また、異なる角度から防球部が受ける衝撃に対して防球部が凹凸円弧状嵌合部によって変位することで衝撃を緩和することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような顕著な効果が得られる。
【0019】
(1)請求項1,2に記載の発明によれば、放熱体の直状基部の正面側の先端部に防球部を装着することで、構成部材の削減が図れると共に、輻射パネルをボール等の衝突からの保護が図れる。また、熱媒体が流れる管部から直状基部及び複数の放熱フィンによって輻射熱移動に対流を増幅させてパネル前面に放熱させることで、輻射熱(放射熱)の放熱性能の向上が図れる。
【0020】
(2)請求項3~5に記載の発明によれば、放熱体からの輻射熱が防球部に伝わるのを阻害することができると共に、防球部が受ける衝撃を断熱部材によって吸収することができるので、上記(1)に加えて、更に放熱性能の向上が図れると共に、ボール等の衝撃からの保護の強化、すなわち耐久性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明に係る輻射パネルの一部を断面で示し、他の一部を拡大して示す正面図である。
図2図1のI-I線に沿う拡大断面図である。
図3】この発明における放熱体と防球部を示す断面図である。
図4】この発明における放熱体と防球部を示す断面斜視図である。
図5】この発明における上部ヘッダー管と放熱体の接続状態を示す断面図である。
図6図5のII-II線に沿う断面図である。
図7図1のIII部の拡大断面図である。
図8】この発明におけるドレンの取付状態を示す断面図である。
図9】この発明に係る輻射パネルの使用状態の一例を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、この発明を実施するための形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
この発明に係る冷暖房用輻射パネル1(以下に、輻射パネル1という)は、体育館を含む屋内施設内の壁面に沿って配設され、熱源70から供給される熱媒体を内部に循環させて冷気や暖気を輻射させることにより屋内施設内の冷暖房に使用される。
【0024】
輻射パネル1は、図1及び図2に示すように、左右一対の縦枠2と、両縦枠2の上端に架設される上枠3と、両縦枠2の下部に架設される下枠4で形成された矩形状のパネル枠体5と、パネル枠体5内において、上下に対峙する一対の上部ヘッダー管6a,下部ヘッダー管6bと、上部ヘッダー管6aと下部ヘッダー管6bに接続される互いに平行な複数、例えば12列の放熱体10と、放熱体10に装着される防球部20とを具備する。放熱体10の背面部の上端部、下端部及び中間部は、両縦枠2に固定された断面中空矩形状の横桟7によって保持されている。また、複数の放熱体10の上下端は保持板17によって連結・保持されている(図6図8参照)。なお、縦枠2、上枠3、下枠4、横桟7及び保持板17は、アルミニウム合金製部材にて形成されている。
ここでは、放熱体10が12列配置される場合について説明したが、放熱体10の数は輻射パネル1の幅寸法に合わせて任意に設定される。
【0025】
パネル枠体5の背面部には、表面に熱反射板8を有する断熱材9が取り付けられている。また、パネル枠体5内の背面側の放熱体10の下方位置に両縦枠2と断熱材9に固定される樋状のドレン30が配置されている。ドレン30の中央部の2箇所にはドレン管31が接続されている(図1図8参照)。図8に示すように、ドレン30は、ドレン30の長手方向に沿う一側に設けられた取付片30aにクランク状の取付金具30bと固定ねじ30c及びナット30dによって断熱材9に固定され、また、ドレン30の両端は、ドレン30に設けられたビスポケット30eにねじ結合される固定ねじ(図示せず)によって縦枠2に固定されている。
【0026】
放熱体10は、図3及び図4に示すように、上部ヘッダー管6a,下部ヘッダー管6bに連通する管部11と、管部11の長手方向の側面から管部11に対して略直交状に延在する直状基部12と、直状基部12の両側面からそれぞれ互いに平行に突出する複数例えば左右にそれぞれ8個の放熱フィン13とを一体にしたアルミニウム合金製の押出形材にて形成されている。なお、放熱フィン13の数は左右に8個である必要はなく、任意の複数であってもよい。
【0027】
この場合、管部11の熱媒体の流通路には直状基部12の延長線上から流通路内に突出する一対のリブ11a,11bと、これと直交する方向に流通路内に突出する一対のリブ11c,11dが設けられている。このように、管部11の流通路内に互いに直交状に位置する二対のリブ11a,11b;11c,11dを設けることによって管部11の流通路内を流れる熱媒体の伝熱性能の向上が図れる。
【0028】
また、直状基部12の先端部には凸円弧状の膨隆突起12aが設けられている。放熱フィン13は直状基部12の肉厚より若干肉薄に形成されており、各放熱フィン13の先端部は肉厚に形成されている。また、管部11に直近の放熱フィン13と直状基部12との連結部14は肉厚となっており、直状基部12から放熱フィン13に向かって狭小のテーパーが設けられている。このように、管部11に直近の放熱フィン13と直状基部12の連結部14をその他の放熱フィン13と直状基部12の連結部より肉厚にし、放熱フィン13に向かって狭小のテーパーを設けることにより、管部11に直近の放熱フィン13の管部側の面が他の放熱フィン13より解放空間があるため、対流熱伝達率が他より大きくなり、バランス上連結部14を肉厚にして熱伝導をよくすることができる。また、各放熱フィン13の先端部を肉厚にすることにより、他の部分より対流熱伝達率がよい先端部からより多く熱移動させることができる。
【0029】
なお、先端側の放熱フィン13と管部11側の2番目の放熱フィン13と直状基部12との2箇所の連結部には断面狭隘円弧状のビスポケット15a,15bが直状基部12に関して点対称の位置に設けられている。なお、上記保持板17がビスポケット15a,15bにねじ結合されるビス17aによって固定される(図6図8参照)。
【0030】
また、直状基部12の先端部に形成された膨隆突起12aに断熱部材である断熱ゴム21が嵌合されており、断熱ゴム21に防球部20が嵌合されている。この場合、断熱ゴム21は、図3及び図4に示すように、凸円弧状の膨隆突起12aに嵌合可能な狭隘円弧状に形成されている。
【0031】
防球部20は、断熱ゴム21の凸円弧状外周面に嵌合可能な凹円弧状嵌合部20aと、放熱体10の直状基部12の延長線上に位置する補強リブ20bを有する中空円筒状に形成されている。なお、補強リブ20bは少なくとも直状基部12の延長線上に設けられていればよく、更に補強リブを増やしてもよい。この防球部20は、アルミニウム合金製の押出形材にて形成されている。このように、防球部20を補強リブ20bを有する中空円筒状に形成することにより、防球部20を軽量にすると共に強度を持たせることができる。
【0032】
次に、放熱体10の管部11と上部ヘッダー管6a、下部ヘッダー管6bとの接続について、図5及び図6を参照して、管部11と上部ヘッダー管6aの接続を代表して説明する。
【0033】
この場合、上部ヘッダー管6aは、円形の連通路6cを有する断面矩形状のアルミニウム製押出形材にて形成されており、上部ヘッダー管6aの底部には放熱体10の管部11が挿入可能な段付きの貫通孔6dが設けられている。このように形成される上部ヘッダー管6aの長手方向の両端開口部には閉塞部材40がねじ結合されており、両縦枠2に固定ねじ41によって固定されて連通路6cが塞がれた状態で固定されている。
【0034】
一方、放熱体10の管部11の上下端には切欠き段部16が設けられており、切欠き段部16の水平部に管部11が突出した状態に形成されている。この突出した管部11を上部ヘッダー管6aに設けられた段付きの貫通孔6dにパッキン42を介して挿入することで、上部ヘッダー管6aと管部11とを接続することができる。なお、上部ヘッダー管6aの上部の2箇所に設けられた排気口に第3のエアー抜き弁53が設けられている。
【0035】
上記のように、両端が縦枠2と閉塞部材40によって固定された上部ヘッダー管6aに設けられた貫通孔6d内にパッキン42を介して管部11を挿入して接続することにより、上部ヘッダー管6aと管部11の接続を容易かつ強固にすることができる。すなわち、上部ヘッダー管6aの両端が縦枠2と閉塞部材40によって固定されているので、上部ヘッダー管6a内に流入する熱媒体の圧力に対しても十分に耐えることができ、かつ、上部ヘッダー管6aと管部11の接続にボルト、ナット等の連結部材を用いる必要がなく、容易に接続することができる。
【0036】
下部ヘッダー管6bは、上部ヘッダー管6aと同様な断面形状の第1のヘッダー管6b1と第2のヘッダー管6b2とを継手部材6eによって連結されており、管部11との接続も上部ヘッダー管6aと同様にして接続する。すなわち、下部ヘッダー管6bは、熱媒体の流入側空間6fを有する第1のヘッダー管6b1と、熱媒体の流出側空間6gを有する第2のヘッダー管6b2とを継手部材6eによって連結してなる。なお、継手部材6eは、第1のヘッダー管6b1と第2のヘッダー管6b2を抱持する断面コ字状に形成されており、上部片6hには管部11が貫通可能なスリット6iが設けられている。この場合、第1のヘッダー管6b1と第2のヘッダー管6b2の一端は、縦枠2と閉塞部材(図示せず)によって固定され、他端の連結側端部は、それぞれ閉塞部材40によって閉塞されている(図7参照)。
【0037】
なお、下部ヘッダー管6bの流入側空間6fに設けられた流入口には第1のエアー抜き弁51を介して供給配管61が接続されている。また、下部ヘッダー管6bの流出側空間6gに設けられた流出口には第2のエアー抜き弁52を介して排出配管62が接続されている。
【0038】
上記のように形成された下部ヘッダー管6bすなわち第1ヘッダー管6b1,第2のヘッダー管6b2に設けられた段付きの貫通孔6d内にパッキン42を介して管部11を挿入することにより、下部ヘッダー管6bと管部11の接続を容易かつ強固にすることができる。すなわち、下部ヘッダー管6b(第1ヘッダー管6b1,第2のヘッダー管6b2)の両端が縦枠2と閉塞部材40によって固定されているので、下部ヘッダー管6b(6b1,6b2)内に流入する熱媒体の圧力に対しても十分に耐えることができ、かつ、下部ヘッダー管6b(6b1,6b2)と管部11の接続にボルト、ナット等の連結部材を用いる必要がなく、容易に接続することができる。
【0039】
次に、輻射パネル1を用いた冷暖房システムの一例について、図1を参照して説明する。ここでは、熱媒体として定常の温度が冷房に適した温度(例えば、12℃±5℃の液体、例えば不凍液、具体的には主成分がエチレングリコールで、防錆剤が含有され、水で薄めた23~40%の濃度の不凍液を使用した場合について説明する。
【0040】
熱媒体の熱源70は、供給配管61に接続されており、液供給源71に開閉弁72を介して暖房時に水を加熱する熱交換器73とで構成されている。また、排出配管62は供給配管61の熱交換器73の一次側に接続されて循環経路が形成されている。この場合、排出配管62にはフィルタ74と循環ポンプ75が介設されている。
【0041】
上記のように構成される冷暖房システムにおいて、冷房時には、熱源70の液供給源71から供給される不凍液(熱媒体)が輻射パネル1の下部ヘッダー管6b(6b1,6b2)の流入側空間6f内に流入し、流入側空間6fに連通する6列の放熱体10の管部11を流れて上部ヘッダー管6a内に流れる。上部ヘッダー管6a内に流れた不凍液(熱媒体)は流出側空間6gに連通する6列の放熱体10の管部11を流れて下部ヘッダー管6bの流出側空間6g内に流れる。
【0042】
不凍液(熱媒体)が輻射パネル1の下部ヘッダー管6b(6b1)の流入側空間6fを介して放熱体10の管部11内を流れる際、第1のエアー抜き弁51によって不凍液(熱媒体)中のエアーが除去され、上部ヘッダー管6a内に流れた不凍液(熱媒体)中のエアーは第3のエアー抜き弁53によって除去され、そして下部ヘッダー管6b(6b2)の流出側空間6gから排出配管62に流れる不凍液(熱媒体)中のエアーは第2のエアー抜き弁52によって除去される。
【0043】
したがって、エアーが除去された不凍液(熱媒体)が流れる管部11から直状基部12及び複数の放熱フィン13によって輻射熱移動に対流を増幅させて輻射パネル1前面に放熱させることができる。なお、背面側に位置する管部11から背面側に放熱される輻射熱の熱損失を熱反射板8によって抑制することができる。これにより、床面から輻射パネル1の高さ、例えば2.5mの間に低温空気層が形成される。
【0044】
なお、下部ヘッダー管6b(6b2)の排出側空間6gから排出配管62に流れた不凍液(熱媒体)はフィルタ74によって不凍液(熱媒体)中の不純物が除去された状態で循環ポンプ75によって供給配管61側に流れて循環供給される。なお、不凍液(熱媒体)を循環供給する際、液供給源71から不凍液(熱媒体)を補充するようにしてもよい。
【0045】
なお、輻射パネル1を暖房用として使用する場合は、液供給源71から供給される不凍液(熱媒体)を熱交換器73によって所定温度例えば40℃に加熱して温水を生成し、生成された温水(熱媒体)を上記と同様に輻射パネル1の下部ヘッダー管6b(6b1,6b2)に流入することにより輻射パネル1を暖房用に使用することができる。
【0046】
すなわち、下部ヘッダー管6b(6b1)の流入側空間6f内に流入された温水(熱媒体)は、流入側空間6fに連通する6列の放熱体10の管部11を流れて上部ヘッダー管6a内に流れる。上部ヘッダー管6a内に流れた温水(熱媒体)は流出側空間6gに連通する6列の放熱体10の管部11を流れて下部ヘッダー管6b(6b2)の流出側空間6g内に流れる。この際、温水(熱媒体)中のエアーは第1~第3のエアー抜き弁51~53によって除去される。
【0047】
したがって、エアーが除去された温水(熱媒体)が流れる管部11から直状基部12及び複数の放熱フィン13によって輻射熱移動に対流を増幅させて輻射パネル1前面に放熱させることにより、床面から輻射パネル1の高さの間に暖房用空気層が形成される。
【0048】
上記説明では、1つの輻射パネル1について説明したが、複数の輻射パネル1を併設する場合は、図9に示すように、供給配管61と排出配管62を各輻射パネル1の下部ヘッダー管6b(6b1,6b2)の流入側空間6fと流出側空間6gに接続すればよい。
【0049】
上記のように構成される実施形態の輻射パネル1によれば、放熱体10の直状基部12の正面側の先端部に断熱ゴム21を介して防球部20が装着されているので、放熱を阻害する構成部材の削減が図れ、防球部20が受ける衝撃を断熱ゴム21によって吸収することができ、ボール等の衝撃からの保護の強化、すなわち耐久性の向上が図れる。
また、熱媒体が流れる管部11から直状基部12及び複数の放熱フィン13によって輻射熱移動に対流を増幅させて輻射パネル1前面に放熱させることで、輻射熱(放射熱)の放熱性能の向上が図れる。
【0050】
また、エアーが除去された不凍液(熱媒体)が下部ヘッダー管6b(6b1)の流入側空間6fに連通する放熱体10の管部11を介して上部ヘッダー管6a内に流れ、上部ヘッダー管6aから下部ヘッダー管6b(6b2)の流出側空間6gに連通する放熱体10の管部11を介して下部ヘッダー管6b(6b2)の流出側空間6g内に流れるので、放熱体10に混入するエアーによる輻射熱の放熱性能の低下を抑制することができると共に、放熱体10の上下部間の輻射熱の温度分布の乱れを抑制することができる。
【0051】
なお、上記実施形態では、熱媒体が定常の温度が冷房に適した温度の不凍液を使用した場合について説明したが、不凍液に代えて純水を使用することも可能である。
【0052】
また、上記実施形態では、下部ヘッダー管6bを流入側空間6fと流出側空間6gに区画し、流入側空間6fに供給配管61を接続し、流出側空間6gに排出配管62を接続する場合について説明したが、上部ヘッダー管6aに供給配管61と排出配管62を接続してもよい。すなわち、上部ヘッダー管6aを流入側空間6fと流出側空間6gに区画し、流入側空間6fに供給配管61を接続し、流出側空間6gに排出配管62を接続してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 輻射パネル
6a 上部ヘッダー管
6b 下部ヘッダー管
6b1 第1のヘッダー管
6b2 第2のヘッダー管
6c 連通路
6d 貫通孔
6e 継手部材
6f 流入側空間
6g 流出側空間
10 放熱体
11 管部
12 直状基部
12a 膨隆突起
13 放熱フィン
20 防球部
20a 嵌合部
20b 補強リブ
21 断熱ゴム(断熱部材)
70 熱源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9