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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ガス吹き込み管
(51)【国際特許分類】
   F27D 27/00 20100101AFI20240814BHJP
   B22D 1/00 20060101ALI20240814BHJP
   B22D 45/00 20060101ALI20240814BHJP
   F27D 3/16 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
F27D27/00
B22D1/00 B
B22D45/00 B
F27D3/16 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021070202
(22)【出願日】2021-04-19
(65)【公開番号】P2022165030
(43)【公開日】2022-10-31
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000141808
【氏名又は名称】株式会社宮本工業所
(73)【特許権者】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187791
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 晃志郎
(72)【発明者】
【氏名】川端祐樹
(72)【発明者】
【氏名】柿本康弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋優介
(72)【発明者】
【氏名】今枝孝文
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-342477(JP,A)
【文献】実開昭51-036517(JP,U)
【文献】特開昭54-126632(JP,A)
【文献】特開平04-200858(JP,A)
【文献】米国特許第04706944(US,A)
【文献】特開2010-189687(JP,A)
【文献】特開2015-183196(JP,A)
【文献】特開2011-184755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 27/00
B22D 1/00
B22D 45/00
F27D 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯容器内の金属溶湯に浸漬させてガスを吹き込むガス吹き込み管であって、
第一端部と第二端部を有する接続部材と、
前記接続部材に形成される多孔質部材と、
前記接続部材の前記第二端部に接続されるガス管を備え、
前記接続部材は、内部に貫通孔部が形成され、
前記多孔質部材は、
前記第一端部に繋がる第一端部外周部を覆い、前記第一端部に臨む前記貫通孔部を塞ぎ、さらに、前記貫通孔部において、内部の少なくとも一部を塞ぐように形成され、
前記溶湯容器内の前記金属溶湯に浸漬され、前記ガス管より前記ガスが導入されると、前記ガスは前記多孔質部材を通って前記溶湯容器内に吹き込むガス吹き込み管。
【請求項2】
前記多孔質部材は、第一多孔質部材と第二多孔質部材とからなり、
前記第一多孔質部材は、前記第一端部に繋がる前記第一端部外周部を覆い、且つ前記第一端部に臨む前記貫通孔部を塞ぎ、
前記第二多孔質部材は、前記貫通孔部における内部の少なくとも一部を塞ぐ請求項1に記載のガス吹き込み管。
【請求項3】
前記貫通孔部は、前記第二多孔質部材の前記第一端部の側の端面と、前記第一多孔質部材の前記第二端部の側の端面との間に空間部が形成され、
前記ガス管を通って注入されるガスは、前記第二多孔質部材を通った後に前記空間部を通り、さらに前記第一多孔質部材を通って前記金属溶湯に吹き込む請求項2に記載のガス吹き込み管。
【請求項4】
前記第一多孔質部材と前記第二多孔質部材とは、同種材料で形成される請求項2又は3に記載のガス吹き込み管。
【請求項5】
前記第一多孔質部材と前記第二多孔質部材とは、異種材料で形成される請求項2又は3に記載のガス吹き込み管。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶湯容器内の金属溶湯に浸漬させてガスを吹き込むガス吹き込み管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属溶湯内に混入した酸素や水素などのガスを排除する事を目的として、不活性ガスを溶湯中に吹き込むガス吹き込みが行われている。例えば、従来例として特許文献1に記載の保持炉用ガス吹き込み装置は、溶湯保持炉内にガス吹き込み管を設置し、このガス吹き込み管の先端部を溶湯保持炉の底面近傍まで延設したものである。ガス吹き込み管の先端部には、ポーラス状の吹き出し具が連結されている。不活性ガスは、吹き込み管を介して保持炉内に流入し、この吹き出し具の細孔から金属溶湯内に拡散する。この構成によれば、不活性ガスが金属溶湯中の酸素と物理吸着し、酸素を不活性状態にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-200858
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来例では吹き出し具がガス吹き込み管の先端部のみに連結されているので、ガスを吹き込む際のガスの圧力によって吹き出し具が脱落し破損する恐れがある。その場合、先端部からガスが勢いよく吹き出す突沸が起きる恐れがある。また、保持炉内に圧力がかかっている場合、金属溶湯がガス吹き込み管内へ逆流する恐れがある。
【0005】
本発明の目的は、突沸を防止し、金属溶湯がガス管内へ逆流することを防止するガス吹き込み管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係るガス吹き込み管は、溶湯容器内の金属溶湯に浸漬させてガスを吹き込むガス吹き込み管であって、第一端部と第二端部を有する接続部材と、前記接続部材に形成される多孔質部材と、前記接続部材の前記第二端部に接続されるガス管を備え、前記接続部材は、内部に貫通孔部が形成され、前記多孔質部材は、前記第一端部に繋がる第一端部外周部を覆い、前記第一端部に臨む前記貫通孔部を塞ぎ、さらに、前記貫通孔部において、内部の少なくとも一部を塞ぐように形成され、前記溶湯容器内の前記金属溶湯に浸漬され、前記ガス管より前記ガスが導入されると、前記ガスは前記多孔質部材を通って前記溶湯容器内に吹き込む。
【0007】
これによれば、多孔質部材は、第一端部に繋がる第一端部外周部を覆い、第一端部に臨む貫通孔部を塞ぎ、さらに、貫通孔部において、内部の少なくとも一部を塞ぐように形成される。金属溶湯に吹き込むガスは、多孔質部材を通るので、圧力が低減されて突沸の発生を防止できる。また、貫通孔部の内部の少なくとも一部に多孔質部材を備えるので、第一端部の多孔質部材が脱落した場合でも金属溶湯がガス管内へ逆流することを防止できる。
【0008】
また、前記ガス吹き込み管は、前記多孔質部材が、第一多孔質部材と第二多孔質部材とからなり、前記第一多孔質部材は、前記第一端部に繋がる前記第一端部外周部を覆い、且つ前記第一端部に臨む前記貫通孔部を塞ぎ、前記第二多孔質部材は、前記貫通孔部における内部の少なくとも一部を塞いでもよい。
【0009】
この場合、多孔質部材は二つの部材に分かれるので、それぞれ独立して容易に接続部材に形成することができる。また、第一多孔質部材と第二多孔質部材とは、それぞれ独立した形状を形成できるので、製造上の自由度が増す。
【0010】
また、前記ガス吹き込み管は、前記貫通孔部が、前記第二多孔質部材の前記第一端部の側の端面と、前記第一多孔質部材の前記第二端部の側の端面との間に空間部が形成され、前記ガス管を通って注入されるガスは、前記第二多孔質部材を通った後に前記空間部を通り、さらに前記第一多孔質部材を通って前記金属溶湯に吹き込でもよい。
【0011】
この場合、ガス吹き込み管は空間部が形成される。空間部は、多孔質部材が充填されないので、空間部が多孔質部材によって充填される場合に比べて、空間部に相当する体積分の材料が低減され、材料費を低減することができる。
【0012】
また、前記ガス吹き込み管は、前記第一多孔質部材と前記第二多孔質部材とは、同種材料で形成されてもよい。この場合、第一多孔質部材と第二多孔質部材とを同一の材料で形成することにより、材料コストを低減でき、同一の工法で製作することができる。
【0013】
また、前記ガス吹き込み管は、前記第一多孔質部材と前記第二多孔質部材とは、異種材料で形成されてもよい。この場合、ガスの流路において、直列的に並ぶ第一多孔質部材と第二多孔質部材とを異なる材料で形成することにより、ガスの吹き込み部である下流側と、上流側とで、異なる多孔質材料の特性を活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のガス吹き込み管1を溶湯容器20内に浸漬させた状態を示す図である。
図2】本発明の第一実施形態であるガス吹き込み管1a(11a、12a)を示す図であって、貫通孔部9の内部において空間部6を備え、(a)及び(b)は、貫通孔部の第二端部の側は第二多孔質部材で充填され、(c)は、貫通孔部の第二端部の側の一部は第二多孔質部材の無い凹部16が形成される場合を示す。
図3】本発明の第二実施形態であるガス吹き込み管1b(11b)を示す図であって、貫通孔部9に空間部6を有しない場合であり、(a)は貫通孔部9が第二多孔質部材23によって充填される場合を示し、(b)は第一多孔質部材13が貫通孔部9の内部にまで形成され、貫通孔部9が第二多孔質部材23と第一多孔質部材13とによって充填される場合を示す。
図4】本発明の第三実施形態であるガス吹き込み管1c(11c)を示す図であって、多孔質部材3は一つで形成され、(a)は多孔質部材3が定形耐火物からなる場合を示し、(b)は多孔質部材3が不定形耐火物からなる場合を示す。
図5】本発明の第四実施形態であるガス吹き込み管1d(11d)を示す図であって、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とが異種材料で形成される場合を示し、(a)は第二多孔質部材が定型耐火物からなり、第一多孔質部材が不定形耐火物からなる場合を示し、(b)は第二多孔質部材が不定形耐火物又はセラミックファイバーからなり、第一多孔質部材が定型耐火物からなる場合を示す。
図6】本発明のガス吹き込み管において、図2(a)、(c)に示す場合の製造方法を示す図である。
図7】本発明のガス吹き込み管において、図2(b)、図3図4(a)、図4(b)に示す場合の製造方法を示す図である。
図8】従来のガス吹き込み管を示す図であり、第一多孔質部材13に相当する部材のみが形成される場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明を具現化したガス吹き込み管1を説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものである。図面に記載されている装置の構成は、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0016】
<各実施形態に共通の構成>
図1図2を例として参照し、本発明に係るガス吹き込み管1の各実施形態に共通の構成を説明する。図1に示すように、本発明のガス吹き込み管1は、溶湯容器20内の金属溶湯21に浸漬させてガス22を吹き込む。
【0017】
図2等に示すように、ガス吹き込み管1は、第一端部7と第二端部8を有する接続部材2と、接続部材2に形成される多孔質部材3と、接続部材2の第二端部8に接続されるガス管4を備える。接続部材2は、内部に貫通孔部9が形成される。多孔質部材3は、第一端部7に繋がる第一端部外周部7aを覆い、第一端部7に臨む貫通孔部9を塞ぎ、さらに、貫通孔部9において、内部の少なくとも一部を塞ぐように形成される。
【0018】
ガス吹き込み管1は、溶湯容器20内の金属溶湯21に浸漬され、ガス管4よりガス22が導入されると、ガス22は多孔質部材3を通って溶湯容器20内に吹き込む。ガス22は、例としてアルゴンガス又は窒素ガスである。また、金属溶湯21は、例としてアルミニウム、銅等の非鉄金属からなる。なお、多孔質部材3は、後述するように、一つの繋がった部材によって形成されてもよいし、複数に分離して形成されてもよい。多孔質部材3には、セラミックファイバー、定型レンガ等の定型耐火物、或いはキャスタブル等の不定形耐火物のいずれかが含まれる。
【0019】
次に、図2等を参照して、多孔質部材3が、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とからなる場合を説明する。第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とは互いに独立した部材である。第一多孔質部材13は、第一端部7に繋がる第一端部外周部7aを覆い、且つ第一端部7に臨む貫通孔部9を塞ぐよう形成される。第二多孔質部材23は、貫通孔部9における内部の少なくとも一部を塞ぐよう形成される。
【0020】
<各実施形態に共通の解決課題と効果>
以上説明したガス吹き込み管1は、以下の課題を解決し、その効果を奏する。従来のガス吹き込み管は、図8に示すように、吹き出し具がガス吹き込み管の先端部のみに連結されているので、ガスを吹き込む際のガスの圧力によって吹き出し具が脱落し破損する恐れがある。その場合、先端部からガスが勢いよく吹き出す突沸が起きる恐れがある。また、溶湯容器内に圧力がかかっている場合、金属溶湯がガス吹き込み管内へ逆流する恐れがある。
【0021】
また、一般にアルミニウムや銅の溶湯中にアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスを吹込むことにより、溶湯中に混入している水素濃度を下げることができる。また溶湯中の酸化物等の不純物もガスの気泡により凝集してスラグとして溶湯から分離できるので、金属の性能向上をはかることができる。そしてこの脱ガス処理のための装置としては、高速回転する回転翼端部からガスの気泡を細分化しつつ吹込む撹拌式のものが多く用いられていたが、高速回転に伴う装置のトラブルが発生しやすく、またガス量が多い場合は気泡の細分化は困難であった。
【0022】
本発明のガス吹き込み管1は、これらの課題を解決するものである。ガス吹き込み管1から溶湯容器20内の金属溶湯21に吹き込むガス22は、多孔質部材3を通るので、気泡を細分化することができ、脱ガス性能が向上する。また、ガス22は、金属溶湯21の酸化物等の不純物をガス22の気泡により凝集してスラグとして分離できる。さらに、ガス22は圧力が低減されるので、突沸の発生を防止できる。
【0023】
また、図2等の例に示すように、貫通孔部9の少なくとも一部に多孔質部材3(図2に示す例では、後述する第二多孔質部材23)を備えるので、第一端部7周辺の多孔質部材3(図2に示す例では、後述する第一多孔質部材13)が脱落した場合でも、貫通孔部9の内部に形成された多孔質部材3(図2に示す例では、第二多孔質部材23)が防波堤となる。よって、金属溶湯21がガス管4内へ逆流することを防止できる。
【0024】
また、多孔質部材3が、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とからなる場合は以下の効果がある。すなわち、ガス吹き込み管1は、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とが直列的に形成されるので、一方に脱落等の不具合が生じても、他方がその機能を補うことができる。その機能とは、ガス22の気泡を細分化して金属溶湯21へ吹き込む機能と、金属溶湯21がガス管4内に逆流することを防止する機能である。
【0025】
さらに、ガス吹き込み管1は、ガス管4から吹き込むガス22が多孔質部材3である第二多孔質部材23と、第一多孔質部材13とを通って金属溶湯21へ吹き込むので、気泡を細分化することができる。ガス22は、脱ガス性能を向上させることができる。また、金属溶湯21の酸化物等の不純物を気泡により凝集してスラグとして分離する効果をより高めることができる。
【0026】
<第一実施形態の構成>
次に、図2を参照して、本発明の態様に係る第一実施形態のガス吹き込み管1aの構成を説明する。すでに説明した共通部分は、説明を省略する。ガス吹き込み管1aは、貫通孔部9が第二多孔質部材23の第一端部7の側の端面23aと、第一多孔質部材13の第二端部8の側の端面13aとの間に空間部6が形成される。ガス管4を通って注入されるガス22は、第二多孔質部材23を通った後に空間部6を通り、さらに第一多孔質部材13を通って金属溶湯21に吹き込む。
【0027】
図2(a)、(b)に示す例(それぞれ、ガス吹き込み管1aとガス吹き込み管11a)では、第二多孔質部材23は、接続部材2の第二端部8まで貫通孔部9に充填される。これに対して、図2(c)に示す例(ガス吹き込み管12a)では、第二多孔質部材23の第二端部8の側の端面23bと、接続部材2の第二端部8との間には凹部16が形成される。図2等に示す接続部材2は、貫通孔部9に段部9aが形成され、空間部6は段部9aと第一端部7との間に形成される。
【0028】
すでに説明したように、多孔質部材3が第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とからなるときは、段部9aが形成される。段部9aは、第二多孔質部材23を保持する役目を果たす。すなわち、ガス管4からガス22が送られ、第二多孔質部材23に到達すると、ガス22が第二多孔質部材23を第一端部7の側へ押し出す力が働く。その際、仮に段部9aが無くて貫通孔部9がストレートの場合、第二多孔質部材23はガス22の圧力を受ける部分が無く、第一端部7の側へ押し出される可能性がある。なお、図2(a)と図2(b)の違いは後述する。
【0029】
<第一実施形態の効果>
以上説明した、第一実施形態のガス吹き込み管1aは、以下の効果を奏する。ガス吹き込み管1aは、安定した圧力で金属溶湯21内へガス22を吹き込むことができる。
【0030】
ガス吹き込み管1aは、各実施形態に共通の効果に加え、空間部6が形成されることにより、材料費を低減できるという効果を奏する。すなわち、空間部6は、多孔質部材3が充填されないので、空間部6が多孔質部材3によって充填される場合に比べて、空間部6に相当する体積分の材料が低減され、材料費を低減することができる。
【0031】
また、第二多孔質部材23が定型耐火物の場合、空間部6を形成することにより、製造が容易となるという効果がある。定型耐火物の場合、貫通孔部9の内部形状に合わせて予め第二多孔質部材23を成形するが、第一端部7の側の端面23aに凹凸が発生する場合がある。空間部6が形成されることにより、端面23aと第一多孔質部材13の第二端部8の側の端面13aとは接触しないので、端面23aに凹凸が発生したとしても許容することができるからである。
【0032】
さらに、次の効果を期待できる場合がある。ガス管4を通るガス22は、第二多孔質部材23を通った後に空間部6に入り、さらに第一多孔質部材13を通って金属溶湯21内に吹き込む。空間部6は、第二多孔質部材23を通って注入されたガス22をプールし、一定の圧力に維持された状態となる。すると、空間部6は、上流側のガス22の圧力に変動が生じても、下流側である第一多孔質部材13へは一定範囲の圧力でガス22を送り出すことができるダンパー効果を生じる。よって、ガス吹き込み管1aは、ガス22を供給する供給装置の圧力が変動したとしても、安定した圧力で金属溶湯21にガス22を吹き込むことができる。よって、圧力が変動してガス22が高圧で吹き込むと発生する突沸を防止できる。以上は、ガス22の吹き込みが大容量の場合に特に効果が期待できる。
【0033】
<第二実施形態のガス吹き込み管1bの構成>
【0034】
次に、図3を参照して、本発明の態様に係る第二実施形態のガス吹き込み管1b(11b)の構成を説明する。図3において、図2におけるガス吹き込み管1aと共通の構成は同様の符号を付すか、或いは省略する。また、共通の構成は説明を省略する。
【0035】
ガス吹き込み管1bは、第一端部7、又は貫通孔部9の内部において、第二多孔質部材23と第一多孔質部材13とが接触する。ガス管4を通って注入されるガス22は、第二多孔質部材23を通った後に第一多孔質部材13を通って溶湯容器20内に吹き込む。第二多孔質部材23と第一多孔質部材13とは、互いに接する面が互いに密着して隙間が無い状態でもよいし、部分的に接触して部分的に隙間があってもよい。
【0036】
図3(a)に示すガス吹き込み管1bは、接続部材2の貫通孔部9が、第二多孔質部材23によって充填される。貫通孔部9は、第二多孔質部材23によって接続部材2の第一端部7から第二端部8まで充填され、第一端部7において第一多孔質部材13と接触する。図3(b)に示すガス吹き込み管11bは、接続部材2の貫通孔部9が、第二多孔質部材23によって接続部材2の第二端部8から段部9aまで充填され、第一多孔質部材13によって段部9aから第一端部7まで充填されている。
【0037】
<第二実施形態の効果>
以上説明した、第二実施形態のガス吹き込み管1bは、以下の課題を解決し効果を奏する。ガス吹き込み管1bは、ガス吹き込み管1aと同様に、安定した圧力で金属溶湯21内へガス22を吹き込むことができる。
【0038】
ガス吹き込み管1b(11b)は、接続部材2における貫通孔部9の全長と、ガス22の吹き込み部である第一端部7の先の部分まで第二多孔質部材23或いは第一多孔質部材13が連続する構成である。よって、ガス22は多孔質部材3である第二多孔質部材23、及び第一多孔質部材13を通る流路が長くなり、吹き込む際の圧力がより安定する。
【0039】
また、ガス吹き込み管1b(11b)は、貫通孔部9が、第二多孔質部材23、又は、第二多孔質部材23と第一多孔質部材13とによって充填されてもよい。この場合、貫通孔部9を通るガス22は、常に第一多孔質部材13又は第二多孔質部材23のいずれかを通るので、溶湯容器20内の金属溶湯21へ吹き込む際の圧力がより安定する。
【0040】
<第三実施形態の構成>
次に、図4を参照して、本発明の態様に係る第三実施形態のガス吹き込み管1c(11c)の構成を説明する。ガス吹き込み管1c(11c)が、ガス吹き込み管1a、及びガス吹き込み管1bと異なる点は、多孔質部材3が一つに繋がった部材からなる点である。
【0041】
図4(a)に示す例は、多孔質部材3が定形耐火物からなり、接続部材2と多孔質部材3との間にはモルタル14が注入されて隙間無く固定される。図4(b)に示す例は、多孔質部材3が不定型耐火物からなる場合を示し、接続部材2を型にセットして材料を流し込んで成形するものである。
【0042】
図4(a)に示すガス吹き込み管1cと、図4(b)に示すガス吹き込み管11cは、共に、多孔質部材3が第一端部7に繋がる第一端部外周部7aを覆い、第一端部7に臨む貫通孔部9を塞ぎ、さらに、貫通孔部9において、内部の全体を塞ぐように形成される。
【0043】
ガス吹き込み管1c及びガス吹き込み管11cから溶湯容器20内の金属溶湯21に吹き込むガス22は、多孔質部材3を通るので、気泡を細分化することができ、脱ガス性能が向上する。また、金属溶湯21の酸化物等の不純物をガス22の気泡により凝集してスラグとして分離できる。さらに、ガス22は圧力が低減されるので、突沸の発生を防止できる。また、貫通孔部9に多孔質部材3を備えるので、第一端部7周辺の多孔質部材3が亀裂により脱落した場合でも、貫通孔部9の内部に形成された多孔質部材3が防波堤となる。よって、金属溶湯21が逆流することを防止できる。
【0044】
<第一多孔質部材と第二多孔質部材とが同種材料の場合とその効果>
次に、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23が同種材料の場合の構成と製造方法について説明する。図2(a)及び図2(c)に示す例は、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とがいずれも定型耐火物で形成される場合を示す。この場合、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とは、同種材料で形成される。なお、ここでの同種材料とは、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とが、いずれも予め形状が固定される定型耐火物で形成されるか、又はいずれも不定形耐火物で形成される場合のいずれかを示す。なお、同じ原材料で形成する場合も含む。
【0045】
図2(b)、図3に示す例は、第二多孔質部材23がセラミックファイバー、又は不定形耐火物で形成される場合を示す。第一多孔質部材13は不定形耐火物で形成され、第二多孔質部材23が不定形耐火物で形成される場合は、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とは、同種材料で形成される。
【0046】
次に、図6図7を参照して、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とが同種材料の場合のガス吹き込み管1における製造方法を説明する。図6に示すように、第一多孔質部材13が定型耐火物であり、第二多孔質部材23が定型耐火物の場合、予めそれぞれ接続部材2において形成する部分の形状に合わせて成形又は加工しておいて、接続部材2に取り付ける。その際に、接続部材2と第二多孔質部材23、及び第一多孔質部材13との接続部分にモルタル14を充填させて隙間無く接着する。
【0047】
図2等に示す例では、接続部材2は第一端部7及び第二端部8の側にそれぞれ雄ネジ部7b、8bが形成されたニップル等を使用する。ガス管4は予め雌ネジを形成しておき、接続部材2の第二端部8に形成される雄ネジ部8bとネジ留めする。なお、接続部材2はニップル形状に限定するものではなく、貫通孔部9を備えた部材であれば形状は問わない。例えば、単なる円筒状の部材でもよく、その場合はガス管4との接続は接着、溶接その他の方法を適用できる。ただし、すでに説明したように、多孔質部材3が第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とからなるときは、貫通孔部9に段部9aが形成される。
【0048】
次に、図7に示すように、第一多孔質部材13が不定形耐火物で形成され、第二多孔質部材23が不定形耐火物、又はセラミックファイバーで形成される場合を説明する。第二多孔質部材23は、接続部材2の貫通孔部9に不定形耐火物、又はセラミックファイバーを注入して成形する。一方、第一多孔質部材13は、接続部材2の第一端部7に対応する型を製作し、型に接続部材2の第一端部7の側を装着した状態で不定形耐火物を注入して成形する。接続部材2とガス管4との接続は同様である。なお、多孔質部材3が図4(a)に示す形態の場合も、図7に示す場合と同様に形成される。
【0049】
以上説明したように、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とが同種材料で形成されると、材料の管理、手配等のコストを低減できる。また、定型耐火物のように成形によって予め固定形状に成形できる場合は、予め必要な形状に成形又は加工し、接続部材2に接着して形成できる。なお、セラミックファイバーは定型材として使用する場合は、定型耐火物と同様の取扱となる。
【0050】
<第一多孔質部材と第二多孔質部材とが異種材料の場合とその効果>
次に、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23が異種材料の場合の構成と製造方法について説明する。図5に示すように、第四実施形態のガス吹き込み管1d(11d)は、第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とが異種材料の場合を示す。ここでの異種材料とは、一方が予め形状を固定できる所謂定型耐火物であり、他方が不定形耐火物、又はセラミックファイバーの場合を示すが、異なる原材料で形成する場合も含む。
【0051】
図5(a)に示すガス吹き込み管1dは、第二多孔質部材23が定型耐火物からなり、第一多孔質部材13が不定形耐火物からなる場合を示す。図5(b)に示すガス吹き込み管11dは、第二多孔質部材23が不定形耐火物、又はセラミックファイバーからなり、第一多孔質部材13が定型耐火物からなる場合を示す。それぞれの製造方法は、すでに説明したとおりである。
【0052】
第一多孔質部材13と第二多孔質部材23とが異種材料の場合、それぞれの特性を異ならせることができる。例えば、それぞれの部材の強度、重量、密度、さらには気孔率を容易に異ならせることができる。
【符号の説明】
【0053】
1、1a、1b、1c、1d、11a、11b、11c、11d、12a ガス吹き込み管
2 接続部材
3 多孔質部材
4 ガス管
6 空間部
7 第一端部
7a 第一端部外周部
8 第二端部
9 貫通孔部
13 第一多孔質部材
13a 端面
20 溶湯容器
21 金属溶湯
22 ガス
23 第二多孔質部材
23a 端面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8