(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】生物用の制御された生育システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
C12M1/00 C
(21)【出願番号】P 2022573678
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 US2021035686
(87)【国際公開番号】W WO2021247852
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-12-06
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511289471
【氏名又は名称】ナノトロニクス イメージング インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NANOTRONICS IMAGING,INC.
【住所又は居所原語表記】2251 FRONT STREET,SUITE 110,P.O.BOX 306,CUYAHOGA FALLS,OHIO 44223,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リモージュ,ダマス
(72)【発明者】
【氏名】ピンスキー,バディム
(72)【発明者】
【氏名】マッスルマン,パーカー
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/082617(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/101004(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/100917(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/086907(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/012616(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/049182(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/106743(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/099474(WO,A1)
【文献】特開2014-110795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御された生育システムであって、
制御された生育環境のプロセス・パラメータを管理するように構成された制御装置と、
生育プロセス中に前記制御された生育環境内の生物を監視するように構成されたセンサと、
前記センサおよび前記制御装置と通信するコンピューティング・システムと
を備え、
前記コンピューティング・システムが、
前記制御された生育環境についての初期プロセス・パラメータのセットを前記制御装置に提供することにより、前記生育プロセスを開始することと、
前記生育プロセス中に前記センサからセンサ・データを受け取ることであって、前記センサ・データが、少なくとも前記生物の画像を備える、ことと、
前記画像に基づいて、前記生物についての予想最終品質メトリックを生成することであって、前記予想最終品質メトリックが、前記生物の現在の状態に基づいて、前記生育プロセスの終わりでの前記生物の最終的な状態を表す、ことと、
前記生物についての前記予想最終品質メトリックが、基準となる最終品質メトリックの閾値範囲内ではないことを判定することと、
前記判定することに基づいて、前記基準となる最終品質メトリックを得るように、更新されたプロセス・パラメータのセットを生成することと、
前記更新されたプロセス・パラメータのセットを前記制御装置に提供することと
を含む動作を実施するようにプログラムされている、制御された生育システム。
【請求項2】
前記センサ・データが、温度表示値、湿度表示値、光強度表示値、および二酸化炭素レベル表示値のうちの1つまたは複数をさらに備える、請求項1に記載の制御された生育システム。
【請求項3】
前記画像に基づいて、前記生物についての前記予想最終品質メトリックを生成することが、
前記生物にトポグラフィック分析手法を適用して前記予想最終品質メトリックを生成することを含む、請求項1に記載の制御された生育システム。
【請求項4】
前記画像に基づいて、前記生物についての前記予想最終品質メトリックを生成することが、
前記生物に1つまたは複数のコンピュータ・ビジョン技法を適用して前記予想最終品質メトリックを生成することを含む、請求項1に記載の制御された生育システム。
【請求項5】
前記画像に基づいて、前記生物についての前記予想最終品質メトリックを生成することが、
畳み込みニューラル・ネットワークに前記画像を入力することと、
出力として、前記生物についての前記予想最終品質メトリックを受け取ることと
を含む、請求項1に記載の制御された生育システム。
【請求項6】
前記基準となる最終品質メトリックを得るように、前記更新されたプロセス・パラメータのセットを生成することが、
前記生物の前記現在の状態に基づいて前記基準となる最終品質メトリックを得るように、前記畳み込みニューラル・ネットワークから前記更新されたプロセス・パラメータのセットを出力することを含む、請求項5に記載の制御された生育システム。
【請求項7】
訓練生物の訓練画像と、訓練画像に対応する前記制御された生育環境の訓練プロセス・パラメータとを備える訓練データ・セットに基づいて、生育の種々の段階において、種々のプロセス・パラメータがどのように前記生物の最終品質メトリックに影響を与えるのかを学習するように、前記畳み込みニューラル・ネットワークを訓練することをさらに含む、請求項5に記載の制御された生育システム。
【請求項8】
制御された生育環境での生物の生育を制御する方法であって、
前記制御された生育環境の制御装置に初期プロセス・パラメータのセットを提供することにより、前記制御された生育環境での前記生物についての生育プロセスをコンピューティング・システムによって開始するステップと、
前記生育プロセス中に、前記制御された生育環境のセンサから、前記コンピューティング・システムによってセンサ・データを受け取るステップであって、前記センサ・データが、少なくとも、前記生物の画像を備える、ステップと、
前記画像に基づいて、前記生物についての予想最終品質メトリックを前記コンピューティング・システムによって生成するステップであって、前記予想最終品質メトリックが、前記生物の現在の状態に基づいて、前記生育プロセスの終わりでの前記生物の最終的な状態を表す、ステップと、
前記生物についての前記予想最終品質メトリックが、基準となる最終品質メトリックの閾値範囲内ではないことを前記コンピューティング・システムによって判定するステップと、
前記判定するステップに基づいて、前記基準となる最終品質メトリックを得るように、更新されたプロセス・パラメータのセットを前記コンピューティング・システムによって生成するステップと、
前記更新されたプロセス・パラメータのセットを、前記コンピューティング・システムによって前記制御装置に提供するステップと
を含む、方法。
【請求項9】
前記センサ・データが、温度表示値、湿度表示値、光強度表示値、および二酸化炭素レベル表示値のうちの1つまたは複数をさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記画像に基づいて、前記生物についての前記予想最終品質メトリックを生成するステップが、
前記生物にトポグラフィック分析手法を適用して前記予想最終品質メトリックを生成するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記画像に基づいて、前記生物についての前記予想最終品質メトリックを生成するステップが、
前記生物に1つまたは複数のコンピュータ・ビジョン技法を適用して前記予想最終品質メトリックを生成するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記画像に基づいて、前記生物についての前記予想最終品質メトリックを生成するステップが、
畳み込みニューラル・ネットワークに前記画像を入力するステップと、
出力として、前記生物についての前記予想最終品質メトリックを受け取るステップと
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記基準となる最終品質メトリックを得るように、前記更新されたプロセス・パラメータのセットを生成するステップが、
前記生物の前記現在の状態に基づいて前記基準となる最終品質メトリックを得るように、前記畳み込みニューラル・ネットワークから前記更新されたプロセス・パラメータのセットを出力するステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
訓練生物の訓練画像と、訓練画像に対応する前記制御された生育環境の訓練プロセス・パラメータとを備える訓練データ・セットに基づいて、生育の種々の段階において、種々のプロセス・パラメータがどのように前記生物の最終品質メトリックに影響を与えるのかを学習するように、前記畳み込みニューラル・ネットワークを訓練するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
菌糸体用の制御された生育システムであって、
生育プロセス中に制御された生育環境内の菌糸体シートを監視するように構成されたセンサと、
前記センサおよび前記制御された生育環境と通信するコンピューティング・システムと
を備え、前記コンピューティング・システムが、
前記制御された生育環境についての初期プロセス・パラメータのセットを前記制御された生育環境に提供することにより、前記生育プロセスを開始することと、
前記生育プロセス中に前記センサからセンサ・データを受け取ることであって、前記センサ・データが、少なくとも、前記菌糸体シートの画像を備える、ことと、
前記画像に基づいて、前記菌糸体シートについての予想最終品質メトリックを生成することであって、前記予想最終品質メトリックが、前記菌糸体シートの現在の状態に基づいて、前記生育プロセスの終わりでの前記菌糸体シートの最終的な状態を表す、ことと、
前記菌糸体シートについての前記予想最終品質メトリックが、基準となる最終品質メトリックの閾値範囲内ではないことを判定することと、
前記判定することに基づいて、前記基準となる最終品質メトリックを得るように、更新されたプロセス・パラメータのセットを生成することと、
前記更新されたプロセス・パラメータのセットに基づいて、前記制御された生育環境を調節することと
を含む動作を実施するようにプログラムされている、制御された生育システム。
【請求項16】
前記センサ・データが、温度表示値、湿度表示値、光強度表示値、および二酸化炭素レベル表示値のうちの1つまたは複数をさらに備える、請求項15に記載の制御された生育システム。
【請求項17】
前記画像に基づいて、前記菌糸体シートについての前記予想最終品質メトリックを生成することが、
前記菌糸体シートにトポグラフィック分析手法を適用して前記予想最終品質メトリックを生成することを含む、請求項15に記載の制御された生育システム。
【請求項18】
前記画像に基づいて、前記菌糸体シートについての前記予想最終品質メトリックを生成することが、
前記菌糸体シートに1つまたは複数のコンピュータ・ビジョン技法を適用して前記予想最終品質メトリックを生成することを含む、請求項15に記載の制御された生育システム。
【請求項19】
前記画像に基づいて、前記菌糸体シートについての前記予想最終品質メトリックを生成することが、
畳み込みニューラル・ネットワークに前記画像を入力することと、
出力として、前記菌糸体シートについての前記予想最終品質メトリックを受け取ることと
を含む、請求項15に記載の制御された生育システム。
【請求項20】
訓練菌糸体シートの訓練画像と、訓練画像に対応する前記制御された生育環境の訓練プロセス・パラメータとを備える訓練データ・セットに基づいて、生育の種々の段階において、種々のプロセス・パラメータがどのように前記菌糸体シートの最終品質メトリックに影響を与えるのかを学習するように、前記畳み込みニューラル・ネットワークを訓練することをさらに含む、
請求項19に記載の制御された生育システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月3日に出願された米国出願第63/034,027号の優先権を主張し、これは、参照により本明細書に全体として援用される。
【0002】
本開示は、一般に、制御された生育環境内で生物を生育するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生物(biologic)が種々の用途に関して著しい利益を伴う考えられる代替物となる、多くの産業が存在する。たとえば、ラボで生育または製造された菌糸体は、環境により優しくより安全な皮の生産、生分解性の包装材料および仮設建築材料、ラボで生育される代替肉などのような種々の用途を有する。同様に、医療的処置として大麻を採用する頻度が高まるにつれて、大麻により種々の医療的利益が提供されることが示されてきている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
複数の実施形態において、制御された生育システムが本明細書に開示される。制御された生育システムは、制御装置、センサ、およびコンピューティング・システムを含む。制御された生育環境は、生物を生育するように構成される。制御装置は、制御された生育環境のプロセス・パラメータを管理するように構成される。センサは、生育プロセス中に制御された生育環境内の生物を監視するように構成される。コンピューティング・システムは、センサおよび制御装置と通信する。コンピューティング・システムは、動作を実施するようにプログラムされる。動作は、制御された生育環境についての初期プロセス・パラメータのセットを制御装置に提供することにより、生育プロセスを開始することを含む。動作は、生育プロセス中にセンサからセンサ・データを受け取ることをさらに含む。センサ・データは、少なくとも生物の画像を含む。動作は、画像に基づいて、生物に関する予想最終品質メトリックを生成することをさらに含む。予想最終品質メトリックは、生物の現在の状態に基づいて、生育プロセスの終わりでの生物の最終的な状態を表す。動作は、生物についての予想最終品質メトリックが、基準となる最終品質メトリックの閾値範囲内ではないことを判定することをさらに含む。動作は、判定することに基づいて、基準となる最終品質メトリックを得るように、更新されたプロセス・パラメータのセットを生成することをさらに含む。動作は、更新されたプロセス・パラメータのセットを制御装置に提供することをさらに含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、制御された生育環境での生物の生育を制御する方法が本明細書に開示される。コンピューティング・システムが、制御された生育環境の制御装置に初期プロセス・パラメータのセットを提供することにより、制御された生育環境での生物についての生育プロセスを開始する。コンピューティング・システムは、生育プロセス中に、制御された生育環境のセンサからセンサ・データを受け取る。センサ・データは、少なくとも、生物の画像を含む。コンピューティング・システムは、画像に基づいて、生物についての予想最終品質メトリックを生成する。予想最終品質メトリックは、生物の現在の状態に基づいて、生育プロセスの終わりでの生物の最終的な状態を表す。コンピューティング・システムは、生物についての予想最終品質メトリックが、基準となる最終品質メトリックの閾値範囲内ではないことを判定する。判定に基づいて、コンピューティング・システムは、基準となる最終品質メトリックを得るように、更新されたプロセス・パラメータのセットを生成する。コンピューティング・システムは、更新されたプロセス・パラメータのセットを制御装置に提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、菌糸体用の制御された生育システムが本明細書に開示される。制御された生育システムは、センサおよびコンピューティング・システムを含む。センサは、生育プロセス中に、制御された生育環境内の菌糸体シートを監視するように構成される。コンピューティング・システムは、センサおよび制御された生育環境と通信する。コンピューティング・システムは、動作を実施するようにプログラムされる。動作は、制御された生育環境についての初期プロセス・パラメータのセットを制御された生育環境に提供することにより、生育プロセスを開始することを含む。動作は、生育プロセス中にセンサからセンサ・データを受け取ることをさらに含む。センサ・データは、少なくとも、菌糸体シートの画像を含む。動作は、画像に基づいて、菌糸体シートについての予想最終品質メトリックを生成することをさらに含む。予想最終品質メトリックは、菌糸体シートの現在の状態に基づいて、生育プロセスの終わりでの菌糸体シートの最終的な状態を表す。動作は、菌糸体シートについての予想最終品質メトリックが、基準となる最終品質メトリックの閾値範囲内ではないことを判定することをさらに含む。動作は、判定することに基づいて、基準となる最終品質メトリックを得るように、更新されたプロセス・パラメータのセットを生成することをさらに含む。動作は、更新されたプロセス・パラメータのセットに基づいて、制御された生育環境を調節することをさらに含む。
【0007】
本開示の上記その他の利点および特徴を得ることができるやり方を説明するために、添付の図面に示されたその特定の実施形態を参照することにより、簡潔に上述した原理のより詳細な説明を与える。これらの図面は本開示の例示的な実施形態を示すのみであり、したがってそれらの範囲を限定するものと考えられるべきではないという理解の下、添付図面の使用を通して、特定性および詳細を追加して本明細書の原理を記載および説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】例示的な実施形態によるコンピューティング環境を示すブロック図である。
【0009】
【
図2】例示的な実施形態によるコンピューティング環境を示すブロック図である。
【0010】
【
図3】例示的な実施形態による、カラム・トレーの例示的なカラム制御要素を示す図である。
【0011】
【
図4】例示的な実施形態による、制御された生育環境で生物を生育する方法を示す流れ図である。
【0012】
【
図5A】例示的な実施形態によるシステム・バス・コンピューティング・システム・アーキテクチャを示す図である。
【0013】
【
図5B】例示的な実施形態による、チップセット・アーキテクチャを有するコンピュータ・システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
理解を容易にするために、可能な場合には同一の参照符号を使用して、各図に共通である同一の要素を示している。一実施形態で開示されている要素が、特定の記載なしに他の実施形態で有利に利用される場合もあることが企図されている。
【0015】
本明細書で提供される1つまたは複数の技法は、制御された生育システムを対象とする。制御された生育システムは、制御装置、センサ、およびコンピューティング・システムを含む。制御された生育環境は、生物を生育するように構成される。制御装置は、制御された生育環境のプロセス・パラメータを管理するように構成される。センサは、生育プロセス中に制御された生育環境内の生物を監視するように構成される。コンピューティング・システムは、センサおよび制御装置と通信する。コンピューティング・システムは、生物についての所望の最終品質メトリックを得るための動作を実施するようにプログラムされる。
【0016】
図1は、例示的な実施形態によるコンピューティング環境100を示すブロック図である。示されているように、コンピューティング環境100は、制御された生育環境102と、コンピューティング・システム104と、センサ106と、1つまたは複数の通信リンク105および115を介して通信する制御装置108とを含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の通信リンク105および115は、配線で接続された通信リンクでもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の通信リンク105および/または115は、セルラー・ネットワークまたはWi-Fiネットワークなどのインターネットを介した個々の接続を含む、任意の適したタイプのものでもよい。いくつかの実施形態では、通信リンク105および/または通信リンク115は、無線自動識別(RFID)、ニア・フィールド・コミュニケーション(NFC)、Bluetooth(商標)、ロー・エナジーBluetooth(商標)(BLE)、Wi-Fi(商標)、ZigBee(商標)、アンビエント・バックスキャッタ通信(ABC)プロトコル、USB、WAN、またはLANなどの直接接続を使用して、端末、サービス、およびモバイル装置と接続することができる。送信される情報は私的なまたは機密なものである可能性があるので、安全上の懸念により、これらのタイプの接続のうちの1つまたは複数を暗号化するかまたはその他の方法でセキュリティ保護することが要求される場合がある。しかし、いくつかの実施形態では、送信されている情報はあまり個人的なものではない場合があり、したがってネットワーク接続は安全よりも利便を図って選択されてもよい。
【0018】
通信リンク105および/または通信リンク115は、データまたは情報を交換するために使用される任意のタイプのコンピュータ・ネットワーキング構成を含むことができる。たとえば、通信リンク105および/または通信リンク115は、インターネットでもよく、プライベート・データ・ネットワークでもよく、パブリック・ネットワークを使用したバーチャル・プライベート・ネットワークでもよく、かつ/またはコンピューティング環境100内の構成要素が環境100の構成要素間で情報を送り、受け取ることを可能にする他の適した接続でもよい。
【0019】
制御された生育環境102は、生物110を生育するための生育構造体を表すことができる。たとえば、制御された生育環境102は、生物110に最適な生育条件を提供および/または維持するように構成され得る。例示的な生物110は、菌糸体、大麻、消費者用作物、藻類、ダイズ、シアノバクテリア、DNA、合成タンパク質などを含むことができるが、これらに限定されない。制御された生育環境102により、生育のために適切な条件が生物110に提供されるのを確実にすることができる。たとえば、制御された生育環境102と通信する制御装置108は、制御された生育環境102内の理想的なまたは最適な生育環境を維持するように、1つまたは複数の変数を制御することができる。いくつかの実施形態では、制御装置108は、温度、湿度、光強度、pHレベル、二酸化炭素レベル、土壌硝酸塩、直接灌漑流、酸素レベル、環境の空気流量および方向、周囲の雑音周波数成分、種のパターン形成および密度、収穫スケジュール、光の方向などのうちの1つまたは複数を制御および/または調整するように構成され得る。1つまたは複数の変数を制御することにより、制御装置108は、所望の最終品質メトリックを得る助けとなり得る。たとえば、制御装置108は、生物110の所望の生育均一性を得る助けとなり得る。
【0020】
生物110が所望の最終品質メトリックへと進んでいるかどうかを決定するために、制御された生育環境102はプロセス制御システムを利用することができる。たとえば、センサ106は、制御された生育環境102内での生物110の生育を監視するように構成され得る。いくつかの実施形態では、センサ106は、生育プロセスの種々の段階で生物110の1つまたは複数の画像を取り込むように構成されたイメージング装置(たとえばカメラ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、センサ106は、生育プロセスに関連付けられた種々の変数を測定する種々のセンサを含むことができる。たとえば、センサ106は、温度センサ、湿度センサ、光強度センサ、二酸化炭素センサなどを含むことができるが、これらに限定されない。センサ106は、分析のために、1つもしくは複数の画像および/または1つもしくは複数の測定値をコンピューティング・システム104に提供するように構成され得る。
【0021】
コンピューティング・システム104は、1つもしくは複数の画像および/または1つもしくは複数の測定値を分析して、生物110についての最終品質メトリックを予測または予想するように構成され得る。コンピューティング・システム104は、予想最終品質メトリックに基づいて、制御装置108に、制御された生育環境102のプロセス・パラメータを調節させることができる。たとえば、コンピューティング・システム104は、予想最終品質メトリックに基づいて、制御装置108に、制御された生育環境102の1つまたは複数の部分の温度、湿度、光強度、二酸化炭素などのうちの1つまたは複数を調節させることができる。
【0022】
示されているように、コンピューティング・システム104は分析モジュール112を含むことができる。分析モジュール112は、1つまたは複数のソフトウェア・モジュールからなってもよい。1つまたは複数のソフトウェア・モジュールは、1つまたは複数のアルゴリズム・ステップを実施する一連の機械命令(たとえばプログラム・コード)を表す、媒体(たとえばコンピューティング・システム104のメモリ)に記憶されたコードまたは命令の集合体でもよい。こうした機械命令は、コンピューティング・システム104のプロセッサが解釈して命令を実施する実際のコンピュータ・コードでもよく、別法として、実際のコンピュータ・コードを得るために解釈される、より高水準な命令のコーディングでもよい。1つまたは複数のソフトウェア・モジュールは、1つまたは複数のハードウェア構成要素も含むことができる。例示的なアルゴリズムの1つまたは複数の部分は、命令の結果としてではなく、ハードウェア構成要素(たとえば回路)自体によって実施されてもよい。
【0023】
分析モジュール112は、センサ106から受け取られたデータを分析するように構成され得る。たとえば、分析モジュール112は、センサ106から取り込まれた1つまたは複数の画像を分析して、生物110についての最終品質メトリックを予測または予想するように構成され得る。最終品質メトリックは、大まかには、生物110がその制御された生育環境を経た後の、生物110の最終品質特性を指すことができる。いくつかの実施形態では、最終品質メトリックは、菌糸体シートの生育の全体にわたる均一性のレベルに対応する場合がある。いくつかの実施形態では、例示的な最終品質メトリックは均一性のレベルに限定され得ず、高さ/形状/量、色/輝き、化学的組成、オフ・ガス組成、人間の判断の体系化(たとえば人間が生み出したラベルを使用した植物の分類)、上述の品質メトリックの変化率、上述のメトリックの集合(aggregation)などのうちの1つまたは複数を含むことができる。一般に、最終品質メトリックは、生育プロセス中に直接的に測定することができないものである。むしろ、最終品質メトリックは、生物110の現在の状態、および同様のプロセスについての分析モジュール112の知識を与えられて推測または予想される。こうした分析を使用して、管理者は、生物110が致命的なエラーを経験しているのか(すなわち、分析に基づくと、生物110は所望の最終品質メトリックを得ることができない)、所望の最終品質メトリックを得るための適正範囲内であるのか(すなわち、制御された生育環境102が調節される必要はない)、それとも所望の最終品質メトリックの適正範囲外であり、プロセス・パラメータの調節を必要としているのかを決定することができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、分析モジュール112は、コンピュータ・ビジョン・モジュール114を含むことができる。コンピュータ・ビジョン・モジュール114は、センサ106によって取り込まれた1つまたは複数の画像を分析するように構成され得る。分析モジュール112は、分析された画像に基づいて、生物110についての最終品質メトリックを予想または生成することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の画像を分析するために、コンピュータ・ビジョン・モジュール114は、トポグラフィック(topographic)分析手法を採用することができる。たとえば、コンピュータ・ビジョン・モジュール114は、センサ106によって取り込まれた1つまたは複数の画像に基づいて、3次元ポイント・クラウドのアルゴリズム分析を利用することができる。こうした分析は、所望の最終品質メトリックを得るために制御された生育環境102のプロセス・パラメータの調節が必要とされているかどうかを決定する際に、分析モジュール112を助けることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、分析モジュール112は機械学習モデル116を含むことができる。機械学習モデル116は、センサ106によって取り込まれた画像を分析して生物110の最終品質メトリックを予想または予測するように訓練された、畳み込みニューラル・ネットワークを表してもよい。いくつかの実施形態では、機械学習モデル116は訓練プロセスを経ることができ、訓練プロセスでは、生物の画像、およびそれぞれの画像に対応する制御された生育環境102のプロセス・パラメータを含むがこれらに限定されない訓練セットが機械学習モデル116に提供される。このように、機械学習モデル116は、生育プロセスの種々の段階において、種々のプロセス・パラメータがどのように生物の最終品質メトリックに影響を与えるのかを学習するよう訓練され得る。このように、分析モジュール112は、機械学習モデル116を活用して、制御された生育環境102が生物110についての所望の最終品質メトリックを得ることができるように、制御された生育環境102のプロセス・パラメータを最適化または調節することができる。
【0026】
分析モジュール112が、所望の品質メトリックを得るために制御された生育環境102のプロセス・パラメータが調節されるべきであると判定すると、分析モジュール112は、制御された生育環境102のプロセス・パラメータをそれに応じて調節するように、制御装置108に命令することができる。このように、コンピューティング環境100は、制御された生育環境102が所望の最終品質メトリックを得ることができるように生物110の生育が常に監視および調節されるフィードバック・ループを含むことができる。
【0027】
図2は、例示的な実施形態によるコンピューティング環境200を示すブロック図である。コンピューティング環境200は、コンピューティング環境100の特定用途での使用の事例を表すことができる。たとえば、コンピューティング環境200は、菌糸体シートを生育するための環境を表すことができる。
【0028】
示されているように、コンピューティング環境200は、制御された生育環境201、菌糸体シート202、カラム・トレー203、供給管の束204、プログラマブル・マニホールド205、フィード管206、二酸化炭素供給タンク207、二酸化炭素圧力調整装置208、センサ210、およびコンピューティング・システム212を含むことができる。
【0029】
示されているように、コンピューティング環境200を使用して、菌糸体シートを生育することができる。一般に、菌糸体(キノコに含まれるような、菌類の栄養部分(vegetative portion))が著しい利益を伴う考えられる代替物となる、多くの産業が存在する。たとえば、ラボで生育または製造された菌糸体の使用は、環境により優しく安全な皮の生産、生分解性の包装材料、仮設建築材料、ラボで生育された代替肉などのような物事を含む。菌糸体の生育は、菌糸体を所望の形状へと圧縮することによってセット・モールドに初期混合物を導入し、他のプロセスで、もしくは他のプロセスの傍らで使用されている混合物に菌糸体繊維をグライディング(griding)し、または菌糸体のマットから余分な菌糸体を物理的に形状設定および除去することによって達成され得る。1つまたは複数の実施形態では、初期の生育からの変形が最終製品に波及しないように菌糸体シートを正常化する追加のプロセス・ステップが存在してもよい。コンピューティング環境200は、菌糸体についての所望の最終品質メトリックを得ることができるように、菌糸体の生育を監視して生育プロセスの早期に変形を検出または把握し、それらを修正するように構成され得る。
【0030】
図2に示されているように、菌糸体シート202は、制御された生育環境201の内部のカラム・トレー203の上で生育することができる。カラム・トレー203のそれぞれのカラムは、プログラマブル・マニホールド205によって個々に制御され得る。プログラマブル・マニホールド205によって制御されているとき、カラム・トレー203のそれぞれのカラムには、それぞれのカラムに関連付けられた局所的なばらつきを制御するように、ガス混合物が送り込まれる。いくつかの実施形態では、マニホールド205は、コンピューティング・システム212から命令を受け取ることができる。たとえば、コンピューティング・システム212は、それぞれのカラムのガス流量を更新するために菌糸体シート202の現在の生育状態、および他の関連する因子(たとえば温度、湿度、光強度など)を分析するように構成された(分析モジュール112と同様に構成された)分析モジュール214を含むことができる。それぞれのカラムのガス流量を調節することにより、菌糸体シート202全体の生育と比較して菌糸体シート202の生育の良すぎる領域(たとえば厚すぎる局所的領域)、または生育の悪すぎる領域(たとえば薄すぎる局所的領域)を補償することができる。いくつかの実施形態では、規定される生育は、シート全体の平均的な、または中心的な生育に基づいてもよい。分析モジュール214は、1つもしくは複数の機械学習手法および/または1つもしくは複数のコンピュータ・ビジョン手法を使用して、菌糸体状態の生育状態を分析するように構成され得る。たとえば、機械学習モデル(たとえば畳み込みニューラル・ネットワーク)が、局所的領域に対するガス流量の影響について訓練されてもよい。種々の生育因子を操作することにより、分析モジュール214は、所望の最終品質メトリック、たとえば均一な菌糸体シートを得る助けとなり得る。
【0031】
示されているように、菌糸体シート202は、制御された生育環境201内に位置決めされたカラム・トレー203の最上部によって形成されるトレーから生育することができる。制御された生育環境201は、カラム・トレー203のそれぞれのカラムにフィードするための供給管204を含むことができる。供給管204はプログラマブル・マニホールド205に結合されてもよく、プログラマブル・マニホールド205は、供給タンク207からの二酸化炭素の全体的なスループットを制御する二酸化炭素(CO2)調整装置208によってフィードされ得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、形成すべき最終製品、すなわち菌糸体のシートは、カラム・トレー203から生育することができる。カラム・トレー203は、この機器の所与の構造により任意の長さまたは幅のシートが作り出され得るように、任意にスケール変更されてもよい。
【0033】
図3には、例示的な実施形態による、カラム・トレー203の例示的なカラム制御要素が示してある。上に示したように、菌糸体のシートは、選択された菌類がそこから生育するためのバルク菌床および/または菌糸混合物(bulk substrate and/or spawn mixture)を含むカラム・トレー203から生育することができる。いくつかの実施形態では、カラムの厳密な形状(たとえば円筒形、四角柱、六角柱など)およびサイズは様々でもよい。カラムの構造に応じて、菌糸体シート202が生育するための隣接するカラムの表面領域の間に空間が存在する場合もあり、存在しない場合もある。いくつかの実施形態では、同じ種の菌糸体が共に生育して、個々の有機体を形成することが知られている場合がある。マットまたはシートが厚みを増すにつれて、間隙にかかるブリッジが形成される場合がある。カラム間に小さい間隙が存在する場合、全体的なシート構造に対するそれらの影響は徐々に小さくなり得る。
【0034】
図3に示されているように、それらの間に空間を伴ういくつかのカラムが存在する。
図3は、菌糸体がどのように生育しまたは互いに結合して、カラム・トレー203のそれぞれの個々のカラム301の上に単一の菌糸体シート202を形成し得るかを示すことができる。
【0035】
カラム・トレー203からのそれぞれのカラム301は、その基部において、一方向弁を介して単一の供給管204に連結させることができ、単一の供給管204は、互いに束ねられ、プログラマブル・マニホールド205に取り付けられ得る。プログラマブル・マニホールド205は、二酸化炭素供給タンク207に取り付けられた調整装置208からの管によってフィードされ得る。いくつかの実施形態では、二酸化炭素供給タンク207は、制御された生育環境201の内部に存在してもよい。いくつかの実施形態では、二酸化炭素供給タンク207は、制御された生育環境201の外部に存在してもよい。
【0036】
二酸化炭素の供給源は、菌糸体シート202の生育率を制御する例示的なやり方を提供することができる。この例に関して選択される菌類は、二酸化炭素の存在下では生育率が低下する菌類でもよい。当業者には認識されるように、本技法から逸脱しない限り、他のガスと菌類の組合せが使用されてもよい。圧力調整装置208は、プログラマブル・マニホールド205への全体的な流量を制御することができる。いくつかの実施形態では、プログラマブル・マニホールド205は、複数の異なるガス供給タンクを使用することを可能にし、したがって、所望のようにガスを混合する能力を提供することができる。
【0037】
カラム・トレー203からのそれぞれのカラム301は、局所的なばらつき302を含むことができ、入口ノズルを介してそのカラム301にフィードする1本の供給管304に連結することができる。カラム301の厳密な構造は様々でもよいが、それぞれのカラム301はバルクおよび菌糸菌床混合物303を含むことができ、菌糸体シート202はその上で生育することができる。カラム301の壁と底部が閉じた状態で、菌類は開いた最上部層に菌糸体層を生育し、隣接するカラム301の上に、またそれらの間に菌糸体シート202を形成することができる。これらのカラム301は、互いにじかに隣接していてもよく、
図3に示されているように隔てられていてもよい。菌糸体シート202は上に生育し、カラム301間のいかなる間隙も覆うことができる。
【0038】
カオス効果により、任意の個々のカラム301から栄養分を吸い込む菌糸体は、他の菌糸体よりも速くまたは遅く生育する場合があり、そうでない場合もある。したがって、菌糸体シート202に局所的なばらつきが生じる可能性があり、この場合、いくつかの領域が他の領域よりも厚く、または薄くなることになる。生育が向上した領域および生育が抑圧された領域が
図3に示してある。
【0039】
バルクおよび菌糸菌床混合物は、たとえば10対1のバルク対胞子、または菌類が菌糸体シート202へと迅速に発芽することを可能にする他の比で開始することができる。バルク対菌糸菌床の比、および菌類の種の選択は、本明細書に開示される本技法から逸脱しない限り様々でもよい。これは、菌糸体シート202がその最初の生育を開始する場所でもよい。実施に応じて、バルクおよび菌糸菌床混合物は、新しい菌糸体シート202を生育するごとに交換される必要がある場合もあり、そうでない場合もある。
【0040】
いくつかの実施形態では、マニホールド205を通って流れるガスは、入口ノズル305を通ってそれぞれのカラム301に直接的にフィードされてもよい。これにより、それぞれのカラム301の上の、またはそれぞれのカラム301の菌糸体シート202が、供給管を通って提供されるガスに基づいてより速くまたはより遅く生育するよう制御され得るように、それぞれのカラム301の場所に、ガスの局所的な勾配または集中を生じさせることができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、入口ノズル305の構造により、漏れなく、また微粒子フィルタ306の存在下で、ガス供給管304がカラム301に連結されるのを容易にすることができる。微粒子フィルタ306を使用して、バルクおよび菌糸菌床混合物303が供給管304および/またはノズル305を詰まらせることを防止することができる。微粒子フィルタ306は、生育物をガス送達システムから隔離することによってこれを実現することができる。
【0042】
図4は、例示的な実施形態による、制御された生育環境で生物を生育する方法400を示す流れ図である。たとえば、方法400は、コンピューティング環境100内で実施される機能性に対応することができる。方法400は、ステップ402として開始することができる。
【0043】
ステップ402では、生育プロセスを開始することができる。たとえば、管理者が、制御された生育環境201内での生物110についての生育プロセスを開始することができる。生物110についての生育プロセスを開始することは、コンピューティング・システム104が初期プロセス・パラメータのセットを制御装置108に伝達することを含むことができる。たとえば、コンピューティング・システム104は、制御された生育環境201の1つまたは複数の部分についての温度、湿度レベル、光強度、水位、散水頻度、二酸化炭素レベルなどを含むがこれらに限定されない初期プロセス・パラメータのセットを設定することができる。
【0044】
ステップ404では、コンピューティング・システム104は、センサ106からセンサ・データを受け取ることができる。たとえば、生育プロセス中、コンピューティング・システム104は周期的に、リアル・タイムで、またはオン・デマンドで、センサ106からセンサ・データを受け取ることができる。いくつかの実施形態では、センサ・データは、センサ106によって取り込まれた、生物110の少なくとも1つまたは複数の画像を含むことができる。いくつかの実施形態では、センサ・データは、温度表示値、湿度表示値、光強度表示値、二酸化炭素レベル表示値などのうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0045】
ステップ406では、コンピューティング・システム104は、少なくとも、センサ106によって取り込まれた生物110の1つまたは複数の画像に基づいて、生物110についての予想最終品質メトリックを生成することができる。たとえば、分析モジュール112は、センサ106から受け取られたデータを分析して、生物110の現在の状態に基づく予想最終品質メトリックを決定することができる。最終品質メトリックは、大まかには、生物110がその制御された生育環境を経た後の、生物110の最終品質特性を指すことができる。いくつかの実施形態では、最終品質メトリックは、菌糸体シートの生育の全体にわたる均一性のレベルに対応する場合がある。
【0046】
いくつかの実施形態では、予想最終品質メトリックを生成するために、分析モジュール112は、コンピュータ・ビジョン・モジュール114を利用することができる。コンピュータ・ビジョン・モジュール114は、センサ106によって取り込まれた1つまたは複数の画像を分析して、生物110についての最終品質メトリックを予想または生成することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の画像を分析するために、コンピュータ・ビジョン・モジュール114は、トポグラフィック分析手法を採用することができる。たとえば、コンピュータ・ビジョン・モジュール114は、センサ106によって取り込まれた1つまたは複数の画像に基づいて、3次元ポイント・クラウドのアルゴリズム分析を利用することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、予想最終品質メトリックを生成するために、分析モジュール112は機械学習モデル116を利用することができる。機械学習モデル116は、センサ106によって取り込まれた画像を分析して、生物110の最終品質メトリックを予想または予測することができる。たとえば、機械学習モデル116は、訓練プロセスに基づき、現在の状態の生物110および現在のプロセス・パラメータを特定して、現在の生育過程に基づいて最終品質メトリックを決定することができる。
【0048】
ステップ408では、コンピューティング・システム104は、予想最終品質メトリックが許容可能な値の範囲内であるかどうかを判定することができる。たとえば、コンピューティング・システム104は、予想最終品質メトリックを基準となる最終品質メトリックと比較して、制御された生育環境102のプロセス・パラメータが調節される必要があるかどうかを判定することができる。ステップ408において、予想最終品質メトリックが許容可能な範囲内であるとコンピューティング・システム104が判定した場合、ステップ410において、生育プロセスは妨げられることなく継続する。
【0049】
しかし、ステップ408において、予想最終品質メトリックが許容可能な範囲内ではないとコンピューティング・システム104が判定した場合、ステップ412において、コンピューティング・システム104は、許容可能な範囲に入る生育を得るかまたはそれに通じる助けとなる、制御された生育環境についての新しいプロセス・パラメータのセットを決定することができる。たとえば、分析モジュール112は、コンピュータ・ビジョン・モジュール114および/または機械学習モデル116からの出力を活用して、制御された生育環境102が生物110についての所望の最終品質メトリックを得ることができるように、制御された生育環境102のプロセス・パラメータを最適化または調節することができる。
【0050】
ステップ414では、コンピューティング・システム104は、更新されたプロセス・パラメータを、実施のために制御装置108に提供することができる。
【0051】
菌糸体シートに関する実施形態などのいくつかの実施形態では、更新されたプロセス・パラメータは、カラム・トレー203の個々のカラム301についての二酸化炭素の流量を含むことができる。このように、コンピューティング・システム104は、均一な菌糸体シート202を得ることができるように、菌糸体シート202全体にわたる生育率の差を補償することができる。
【0052】
当業者は認識しているように、以上のプロセスは、生物110の生育サイクルの間じゅう実施され得る。このように、コンピューティング・システム104は、所望の最終品質メトリックを得るために、制御された生育環境102のプロセス・パラメータを連続的に調節することができる。
【0053】
図5Aには、例示的な実施形態によるシステム・バス・コンピューティング・システム500のアーキテクチャが示してある。システム500の1つまたは複数の構成要素は、バス505を使用して互いに電気的に通信することができる。システム500は、プロセッサ(たとえば1つもしくは複数のCPU、GPU、または他のタイプのプロセッサ)510と、リード・オンリ・メモリ(ROM)520やランダム・アクセス・メモリ(RAM)525などのシステム・メモリ515を含む種々のシステム構成要素をプロセッサ510に結合するシステム・バス505とを含むことができる。システム500は、プロセッサ510に直接接続された、ごく近接した、またはその一部として一体化された、高速メモリのキャッシュを含むことができる。システム500は、プロセッサ510が迅速にアクセスするために、メモリ515および/または記憶装置530からキャッシュ512へとデータをコピーすることができる。このように、キャッシュ512は、プロセッサ510がデータを待っている間に遅延することを回避する性能ブーストを可能にすることができる。上記その他のモジュールは、種々の動作を実施するようにプロセッサ510を制御することができるか、または制御するように構成され得る。他のシステム・メモリ515も利用可能でもよい。メモリ515は、様々な性能特性を備えた複数の様々なタイプのメモリを含むことができる。プロセッサ510は、単一のプロセッサまたは複数のプロセッサを表すことができる。プロセッサ510は、汎用プロセッサ、またはハードウェア・モジュール、もしくはプロセッサ510を制御するように構成された、記憶装置530に記憶されたサービス1 532、サービス2 534、サービス5 536などのソフトウェア・モジュールのうちの1つまたは複数、ならびにソフトウェア命令が実際のプロセッサ設計に組み込まれた専用プロセッサを含んでもよい。プロセッサ510は、複数のコアまたはプロセッサ、バス、メモリ制御装置、キャッシュなどを含む、本質的に完全に自己完結型のコンピューティング・システムでもよい。マルチ・コア・プロセッサは対称型でもよく、非対称型でもよい。
【0054】
システム500とのユーザの対話を可能にするために、音声のためのマイクロフォン、ジェスチャ入力またはグラフィック入力のためのタッチ感知スクリーン、キーボード、マウス、モーション入力、音声などのような、任意の数の入力機構でもよい入力装置545。出力装置535(たとえばディスプレイ)も、当業者に知られている複数の出力機構のうちの1つまたは複数でもよい。いくつかの例では、マルチモーダル・システムにより、ユーザが複数のタイプの入力を提供してシステム500と対話するのを可能にすることができる。通信インターフェース540は、一般に、ユーザ入力およびシステム出力を管轄および管理することができる。任意の特定のハードウェア構成で動作することへの制限はなく、したがって、ここでの基本的特徴は、改善されたハードウェア構成またはファームウェア構成が開発されたとき、それらで容易に代替することができる。
【0055】
記憶装置530は不揮発性メモリでもよく、ハード・ディスクである場合もあり、磁気カセット、フラッシュ・メモリ・カード、ソリッド・ステート・メモリ装置、デジタル・バーサタイル・ディスク、カートリッジ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)525、リード・オンリ・メモリ(ROM)520、これらの複合体などの、コンピュータによってアクセス可能な、データを記憶することができる他のタイプのコンピュータ可読媒体である場合もある。
【0056】
記憶装置530は、プロセッサ510を制御するためのサービス532、534、および536を含むことができる。他のハードウェア・モジュールまたはソフトウェア・モジュールが企図される。記憶装置530は、システム・バス505に接続され得る。一態様では、特定の機能を実施するハードウェア・モジュールは、その機能を実行するために、プロセッサ510、バス505、出力装置535(たとえばディスプレイ)などのような必要なハードウェア構成要素に関連付けられた、コンピュータ可読媒体に記憶されたソフトウェア構成要素を含むことができる。
【0057】
図5Bには、例示的な実施形態による、チップセット・アーキテクチャを有するコンピュータ・システム550が示してある。コンピュータ・システム550は、開示されている技術を実施するために使用することができる、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、およびファームウェアの一例でもよい。システム550は、特定された計算を実施するように構成されたソフトウェア、ファームウェア、およびハードウェアを実行することができる、任意の数の物理的にかつ/または論理的に別個のリソースを表す、1つまたは複数のプロセッサ555を含むことができる。1つまたは複数のプロセッサ555は、1つまたは複数のプロセッサ555への入力、および1つまたは複数のプロセッサ555からの出力を制御することができるチップセット560と通信することができる。この例では、チップセット560はディスプレイなどの出力部565へと情報を出力し、記憶装置570から情報を読み取り、また記憶装置570へと情報を書き込むことができ、記憶装置570は、たとえば磁気媒体、およびソリッド・ステート媒体を含むことができる。また、チップセット560は、記憶装置575(たとえばRAM)からデータを読み取り、また記憶装置575(たとえばRAM)へとデータを書き込むことができる。種々のユーザ・インターフェース構成要素585とインターフェースするためのブリッジ580が提供されて、チップセット560とインターフェースすることができる。こうしたユーザ・インターフェース構成要素585は、キーボード、マイクロフォン、タッチ検出および処理回路、マウスなどのポインティング装置などを含むことができる。一般に、システム550への入力は、機械に生成されかつ/または人間に生成されて、種々の入力元のうちの任意のものから生じることができる。
【0058】
チップセット560は、様々な物理的インターフェースを有することができる1つまたは複数の通信インターフェース590とインターフェースすることもできる。こうした通信インターフェースは、有線および無線のローカル・エリア・ネットワーク、ブロードバンド無線ネットワーク、ならびにパーソナル・エリア・ネットワークのためのインターフェースを含むことができる。本明細書に開示されるGUIを生成、表示、および使用する方法のいくつかの用途は、物理的インターフェースを介して、または1つもしくは複数のプロセッサ555が記憶装置570もしくは575に記憶されたデータを分析することによって機械自体によって生成された、指示されたデータ・セットを受け取ることを含んでもよい。さらに、機械はユーザ・インターフェース構成要素585を通してユーザから入力を受け取ることができ、1つまたは複数のプロセッサ555を使用してこれらの入力を解釈することにより、ブラウジング機能などの適当な機能を実行することができる。
【0059】
より多くの処理能力を提供するために、例示的なシステム500および550は2つ以上のプロセッサ510を有してもよく、互いにネットワーク接続されたコンピューティング装置の群またはクラスタの一部でもよいことが理解され得る。
【0060】
前述のことは本明細書に記載の実施形態を対象とするが、その基本的範囲から逸脱しない限り、他の実施形態および別の実施形態が考案されてもよい。たとえば、本開示の態様は、ハードウェアもしくはソフトウェアで実施されてもよく、またはハードウェアとソフトウェアの組合せで実施されてもよい。本明細書に記載の一実施形態は、コンピュータ・システムと共に使用するためのプログラム製品として実施されてもよい。プログラム製品のプログラムは、(本明細書に記載の方法を含む)実施形態の機能を定義し、種々のコンピュータ可読記憶媒体に収容され得る。例示的なコンピュータ可読記憶媒体は、(i)情報が永久的に記憶される書き込み不能記憶媒体(たとえば、CD-ROMドライブによって読み取り可能なCD-ROMディスク、フラッシュ・メモリ、ROMチップ、または任意のタイプのソリッド・ステート不揮発性メモリなどのコンピュータ内のリード・オンリ・メモリ(ROM)装置);および(ii)書き換え可能な情報が記憶された書き込み可能記憶媒体(たとえば、ディスケット・ドライブまたはハード・ディスク・ドライブ内のフロッピー・ディスク、または任意のタイプのソリッド・ステート・ランダム・アクセス・メモリ)を含むが、これらに限定されない。こうしたコンピュータ可読記憶媒体は、開示されている実施形態の機能を管理するコンピュータ可読命令を保持しているとき、本開示の実施形態となる。
【0061】
先行する例は例示的なものであり、限定的なものではないことが、当業者には理解されよう。本明細書を読み、図面を検討することにより、そこに対するすべての置換、機能拡張、均等物、および改善が当業者には明らかになり、またそれらは本開示の本来の趣旨および範囲に含まれることが意図されている。したがって、以下の添付の特許請求の範囲は、これらの教示の本来の趣旨および範囲に含まれるすべてのこうした修正、置換、および均等物を含むことを意図されている。