(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】通電鍼装置及び通電鍼システム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20240814BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
(21)【出願番号】P 2019220943
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100111567
【氏名又は名称】坂本 寛
(72)【発明者】
【氏名】道関 隆国
(72)【発明者】
【氏名】西川 久
(72)【発明者】
【氏名】田中 亜実
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-068801(JP,A)
【文献】特開2008-212739(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105581904(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/36
A61N 1/04-1/05
A61H 39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受電部と、
前記受電部によって受信した送電波から正電圧パルス波を生成する第1の生成回路と、
前記送電波から負電圧パルス波を生成する第2の生成回路と、
身体に電気刺激を与える鍼と、
前記送電波に含まれる切替信号に基づいて、電流源を介して前記鍼に与えるパルス波を、前記第1の生成回路で生成された前記正電圧パルス波と、前記第2の生成回路で生成された前記負電圧パルス波とで切り替える制御回路と、を備える
通電鍼装置。
【請求項2】
前記切替信号は、キャリア波に対して、第1の変調方式でオンオフ変調した第1の期間と、前記第1の変調方式と異なる第2の変調方式でオンオフ変調した第2の期間とを含み、
前記制御回路は、前記第1の期間に前記正電圧パルス波を前記鍼に与え、前記第2の期間に前記負電圧パルス波を前記鍼に与える
請求項1に記載の通電鍼装置。
【請求項3】
前記第1の生成回路は前記第1の期間及び前記第2の期間をONとした前記正電圧パルス波を生成し、
前記第2の生成回路は前記第1の期間及び前記第2の期間をONとした前記負電圧パルス
波を生成し、
前記制御回路は、前記第1の期間と前記第2の期間とで、前記鍼に対する前記第1の生成回路及び前記第2の生成回路の接続を切り替えるスイッチの開閉を制御することによって前記鍼に与える電圧パルス波を前記正電圧パルス波と前記負電圧パルス波とで切り替える
請求項2に記載の通電鍼装置。
【請求項4】
前記第1の期間と前記第2の期間とでON期間が異なり、
前記制御回路は、前記送電波から前記ON期間の違いを検出する検出回路を含む
請求項2又は3に記載の通電鍼装置。
【請求項5】
前記検出回路は、前記第1の変調方式におけるパルス周波数を検出する第1の検出回路と、前記第2の変調方式におけるパルス周波数を検出する第2の検出回路と、を含む
請求項4に記載の通電鍼装置。
【請求項6】
前記第1の変調方式
は、前記第1の期間全体でオンオフ変調を行う
請求項4又は5に記載の通電鍼装置。
【請求項7】
前記キャリア波は、一定周期でONとOFFとを繰り返すパルス波に変調されており、
前記第1の期間及び前記第2の期間は、いずれも、前記キャリア波のONの期間に形成されて、前記第1の期間と前記第2の期間とが同じ長さである
請求項2~6のいずれか一項に記載の通電鍼装置。
【請求項8】
前記切替信号は、前記第1の期間及び前記第2の期間以外の第3の期間を有し、
前記制御回路は、
前記第3の期間を非通電期間として、前記鍼に前記正電圧パルス波も前記負電圧パルス波も与えない
請求項4~6のいずれか一項に記載の通電鍼装置。
【請求項9】
切替信号を含む送電波を放出する送信機と、
通電鍼装置と、を備え、
前記通電鍼装置は、
受電部と、
前記受電部によって受信した前記送電波から正電圧パルス波を生成する第1の生成回路と、
前記送電波から負電圧パルス波を生成する第2の生成回路と、
身体に電気刺激を与える鍼と、
前記送電波に含まれる前記切替信号に基づいて、電流源を介して前記鍼に与えるパルス波を、前記第1の生成回路で生成された前記正電圧パルス波と、前記第2の生成回路で生成された前記負電圧パルス波とで切り替える制御回路と、を含む
通電鍼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通電鍼装置、通電鍼システム、及び、制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2018-68801号公報(以下、特許文献1)に、いわゆる通電鍼と呼ばれる、電磁波治療器が開示されている。特許文献1の電磁波治療器は、空間中の電磁波をアンテナで受信し、その電磁波を利用して人体の治療を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
通電鍼システムは、通電鍼装置と、通電鍼装置に電流を供給する送信機とからなり、送信機側で通電鍼がユーザに与える電流を制御することが望まれる。
【0005】
ある実施の形態に従うと、通電鍼装置は、受電部と、受電部によって受信した送電波から正電圧パルス波を生成する第1の生成回路と、送電波から負電圧パルス波を生成する第2の生成回路と、身体に電気刺激を与える鍼と、送電波に含まれる切替信号に基づいて、電流源を介して鍼に与えるパルス波を、第1の生成回路で生成された正電圧パルス波と、第2の生成回路で生成された負電圧パルス波とで切り替える制御回路と、を備える。
【0006】
他の実施の形態に従うと、通電鍼システムは、切替信号を含む送電波を放出する送信機と、通電鍼装置と、を備え、通電鍼装置は、受電部と、受電部によって受信した送電波から正電圧パルス波を生成する第1の生成回路と、送電波から負電圧パルス波を生成する第2の生成回路と、身体に電気刺激を与える鍼と、送電波に含まれる切替信号に基づいて、電流源を介して鍼に与えるパルス波を、第1の生成回路で生成された正電圧パルス波と、第2の生成回路で生成された負電圧パルス波とで切り替える制御回路と、を含む。
【0007】
他の実施の形態に従うと、制御方法は、通電鍼で身体に与える電気刺激の正負を制御する方法であって、送信機から切替信号を含む送電波を送信し、送信波を受信した通電鍼が、送信波から正電圧パルスと負電圧パルスとを生成し、通電鍼が、送電波に含まれる切替信号に基づいて、電流源を介して鍼に与えるパルス波を、第1の生成回路で生成された正電圧パルス波と、第2の生成回路で生成された負電圧パルス波とで切り替える。
【0008】
更なる詳細は、後述の実施形態として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る通電鍼システムの構成、及び、通電鍼システムに含まれる送信機から放射される電磁波の具体例を表した概略図である。
【
図3】
図3は、通電鍼装置の回路構成の一例を表した概略図である。
【
図4】
図4は、通電鍼装置の回路の各点における電位の関係を表した図である。
【
図5】
図5は、通電鍼装置の回路の各点における電位、及び、スイッチのオンオフ状態を表した図である。
【
図6】
図6は、通電鍼装置の回路の各点における電位、及び、スイッチのオンオフ状態を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<1.通電鍼、通電鍼装置、及び、制御方法の概要>
【0011】
(1)本実施の形態に含まれる通電鍼装置は、受電部と、受電部によって受信した送電波から正電圧パルス波を生成する第1の生成回路と、送電波から負電圧パルス波を生成する第2の生成回路と、身体に電気刺激を与える鍼と、送電波に含まれる切替信号に基づいて、電流源を介して鍼に与えるパルス波を、第1の生成回路で生成された正電圧パルス波と、第2の生成回路で生成された負電圧パルス波とで切り替える制御回路と、を備える。これにより、送信機側で鍼が人体に与える電流の正負を制御することができる。
【0012】
(2)好ましくは、切替信号は、キャリア波に対して、第1の変調方式でオンオフ変調した第1の期間と、第1の変調方式と異なる第2の変調方式でオンオフ変調した第2の期間とを含み、制御回路は、第1の期間に正電圧パルス波を鍼に与え、第2の期間に負電圧パルス波を鍼に与える。これにより、第1の期間と第2の期間とで鍼が人体に与える電流の正負が切り替えられる。
【0013】
(3)好ましくは、第1の生成回路は第1の期間及び第2の期間をONとした正電圧パルス波を生成し、第2の生成回路は第1の期間及び第2の期間をONとした負電圧パルスを生成し、制御回路は、第1の期間と第2の期間とで、鍼に対する第1の生成回路及び第2の生成回路の接続を切り替えるスイッチの開閉を制御することによって鍼に与える電圧パルス波を正電圧パルス波と負電圧パルス波とで切り替える。これにより、第1の期間と第2の期間とで鍼が人体に与える電流の正負が切り替えられる。
【0014】
(4)好ましくは、第1の変調方式と第2の変調方式とのいずれか一方は、第1の期間又は第2の期間内にオンオフ変調を行わないOFF期間を含み、第1の期間と第2の期間とでON期間が異なり、制御回路は、送電波からON期間の違いを検出する検出回路を含む。これにより、第1の期間と第2の期間とが区別され、鍼が人体に与える電流の正負が切り替えられる。
【0015】
(5)好ましくは、検出回路は、第1の変調方式におけるパルス周波数を検出する第1の検出回路と、第2の変調方式におけるパルス周波数を検出する第2の検出回路と、を含む。これにより、検出回路によって第1の期間と第2の期間とを区別できる。
【0016】
(6)好ましくは、第1の変調方式は第1の期間においてOFF期間を含まず、第1の期間全体でオンオフ変調を行う。これにより、第1の期間と第2の期間との区別が容易になる。
【0017】
(7)好ましくは、キャリア波は、一定周期でONとOFFとを繰り返すパルス波に変調されており、第1の期間及び第2の期間は、いずれも、キャリア波のONの期間に形成されて、第1の期間と第2の期間とが同じ長さである。これにより、第1の期間と第2の期間との区別が容易になる。
【0018】
(8)好ましくは、制御回路は、キャリア波のOFFの期間を非通電期間として、鍼に正電圧パルス波も負電圧パルス波も与えない。これにより、周期的に人体に電気刺激が与えられ、治療効果が生じる。
【0019】
(9)本実施の形態に含まれる通電鍼システムは、切替信号を含む送電波を放出する送信機と、通電鍼装置と、を備え、通電鍼装置は、受電部と、受電部によって受信した送電波から正電圧パルス波を生成する第1の生成回路と、送電波から負電圧パルス波を生成する第2の生成回路と、身体に電気刺激を与える鍼と、送電波に含まれる切替信号に基づいて、電流源を介して鍼に与えるパルス波を、第1の生成回路で生成された正電圧パルス波と、第2の生成回路で生成された負電圧パルス波とで切り替える制御回路と、を含む。これにより、通電鍼システムでは、送信機側で鍼が人体に与える電流の正負を制御することができる。
【0020】
(10)本実施の形態に含まれる制御方法は通電鍼で身体に与える電気刺激の正負を制御する方法であって、送信機から切替信号を含む送電波を送信し、送信波を受信した通電鍼が、送信波から正電圧パルス波と負電圧パルス波とを生成し、通電鍼が、送電波に含まれる切替信号に基づいて、電流源を介して鍼に与えるパルス波を、正電圧パルス波と負電圧パルス波とで切り替える。これにより、送信機から送信される送電波によって鍼が人体に与える電流の正負を制御することができる。
【0021】
<2.通電鍼、通電鍼装置、及び、制御方法の例>
【0022】
図1を参照して、本実施の形態にかかる通電鍼システム(以下、システムと略する)100は、通電鍼装置10と送信機50とを含む。送信機50は、アンテナ51を有し、通電鍼装置10に対して無線(ワイヤレス)による電力供給を行うことが可能である。これにより、通電鍼に対する電力線の配線を不要とすることができ、配線作業をなくすことができる。また、通電鍼の配置の自由度も向上する。なお、無線による電力供給は必須ではなく、有線によって電力供給が行われてもよい。
【0023】
通電鍼装置10は、身体に接触させることで身体へ電気刺激を与えることが可能な通電鍼装置であって、皮膚に貼り付けるパット17に搭載された受電部の一例である受電アンテナ(以下、アンテナ)11Aと鍼19とを有する。鍼19は、パット17の下面17aから下方に向けて突出するように設けられている。また、アンテナ11Aは、パット17の上面17bに設けられていてもよい。
【0024】
アンテナ11Aは、送信機50から放射される電磁波(マイクロ波)PWを受信する。送信機50から放射される電磁波PWは送電波である。アンテナ11Aによって受信された電磁波PWは直流電流に変換され、鍼19に電力として供給される。
【0025】
送信機50から放射される電磁波PWは、キャリア波を、身体へ通電される所定の周波数Pのパルスによって変調したパルス波(変調波)である。すなわち、電磁波PWは、周波数Pごとにオン期間とオフ期間とを有する。周波数Pは、例えば1[Hz]である。
【0026】
通電鍼装置10の鍼19を皮膚に接触させてパルス電流を通電する場合、鍼19に正電圧パルスのみを印加すると皮膚に正電流のみ与えられる。その結果、皮膚の電位が上昇する。そこで、本システム100は、皮膚の電位の上昇を抑えるため、鍼19に負電圧パルスも印加し、皮膚に負電流も与える。このとき、本システム100は、鍼19に印加する電圧パルスの正負を送信機50から送信される電磁波PWによって制御する。
【0027】
送信機50から放射される電磁波PWは、鍼19に印加する電圧パルスの正負の切り替えを指示する切替信号を含む。切替信号は、通電鍼装置10に対して電磁波PWが正電圧の印加を指示する期間と負電圧の印加を指示する期間とを有することに相当する。
【0028】
切替信号として機能する電磁波PWは、正電圧の印加を指示する第1の期間と、負電圧の印加を指示する第2の期間と、いずれの印加も行わないことを指示する第3の期間とを有する。第1の期間及び第2の期間は電磁波PWのオン期間を所定の変調方式で変調することによって形成され、第3の期間は電磁波PWのオフ期間とする。
【0029】
第1の期間は、電磁波PWのオン期間を第1の変調方式でオンオフ変調した期間であり、第2の期間は、電磁波PWのオン期間を第2の変調方式でオンオフ変調した期間である。第1の変調方式は、所定のパルス周波数(第1のパルス周波数)でオンオフ変調する変調方式である。
【0030】
第2の変調方式は、第1のパルス周波数よりも十分に小さい所定のパルス周波数(第2のパルス周波数)でオンオフ変調し、そのオン期間を、さらに、第2のパルス周波数より十分に大きい周波数(第3のパルス周波数)で変調する変調方式である。
【0031】
第1の周波数は、第2の周波数に対して十分に大きい周波数である。好ましくは、第1の周波数は、第2の周波数の100倍以上である。例えば、第1の周波数は、13.56[MHz]であり、第2の周波数は、500[Hz]である。第3のパルス周波数は概ね第1のパルス周波数と同程度であって、例えば、同じである。第3の周波数は、例えば、13.56[MHz]である。
【0032】
なお、上記第1の期間及び第2の期間は一例である。第1の期間及び第2の期間は、少なくとも一方はオフとなる期間を含み、オンの期間の総和が第1の期間と第2の期間とで異なるものであればよい。
【0033】
図1の例では、第1の期間は、時刻t1から時刻t2までの期間C1、時刻t3から時刻t4までの期間C3、及び、時刻t7から時刻t8までの期間C7である。第2の期間は、時刻t5から時刻t6までの期間C5である。第3の期間は、時刻t2から時刻t3までの期間C2、時刻t4から時刻t5までの期間C4、及び、時刻t6から時刻t7までの期間C6である。
【0034】
図2を参照して、通電鍼装置10は、アンテナ11Aにマッチング回路11を介して接続された正電圧パルス生成回路(第1の生成回路)12及び負電圧パルス生成回路(第2の生成回路)13と、を有し、アンテナ11Aで受信された電磁波PWがマッチング回路11によってマッチングされて供給される。正電圧パルス生成回路12は電磁波PWから正電圧パルス波を生成し、負電圧パルス生成回路13は電磁波PWから負電圧パルス波を生成する。
【0035】
正電圧パルス生成回路12は第1のスイッチSW1及び定電流源18Aを経て鍼19に接続されている。負電圧パルス生成回路13は第2のスイッチSW2及び定電流源18Bを経て鍼19に接続されている。
【0036】
第1のスイッチSW1は正電流切替スイッチ(SW)制御回路14に接続され、その開閉(オンオフ)が制御される。第2のスイッチSW2は負電流切替SW制御回路15に接続され、そのオンオフが制御される。
【0037】
第1のスイッチSW1がオン(開状態)、かつ、第2のスイッチSW2がオフ(閉状態)のとき、正電圧パルス生成回路12からの正電圧パルス波が定電流源18Aを経て鍼19に印加される。これにより、鍼19は接触した皮膚に正電流を与える。
【0038】
第1のスイッチSW1がオフ、かつ、第2のスイッチSW2がオンのとき、負電圧パルス生成回路13からの負電圧パルス波が定電流源18Bを経て鍼19に印加される。これにより、鍼19は接触した皮膚に負電流を与える。
【0039】
正電流切替SW制御回路14及び負電流切替SW制御回路15は制御回路の一例であって、電磁波PWに含まれる切替信号に従って、それぞれ、第1のスイッチSW1のオンオフ、及び、第2のスイッチSW2のオンオフを制御する。
図3に示された回路は、各回路12~15の回路構成の一例である。
【0040】
図3を参照して、アンテナ11Aでは
図1に示された電磁波PWが受信されることによって、
図3に(a)で示されたa点の電圧は、
図4に(a)で示されたように周波数Pのパルス波に応じて変化する。a点は、マッチング回路11からの出力位置である。
【0041】
正電圧パルス生成回路12には、マッチング回路11を経てアンテナ11Aが接続されており、アンテナ11Aから電磁波PWが与えられる。正電圧パルス生成回路12は、整流回路21を含む。整流回路21には、ローパスフィルタ23及びリミッタ回路22が接続されている。整流回路21は、入力された電磁波PWを正電圧に整流し、出力する。
図3に(b)で示されたb点の電位は、整流回路21から出力される正電圧に対応した電位となる。b点は、正電圧パルス生成回路12のa点とは反対側の端部である。
【0042】
負電圧パルス生成回路13には、マッチング回路11を経てアンテナ11Aが接続されており、アンテナ11Aから電磁波PWが与えられる。負電圧パルス生成回路13は、整流回路31を含む。整流回路31には、ローパスフィルタ33及びリミッタ回路32が接続されている。整流回路31、入力された電流の電圧を負電圧に整流し、出力する。
図3に(c)で示されたc点の電位は、整流回路31から出力される負電圧に対応した電位となる。c点は、負電圧パルス生成回路13のa点とは反対側の端部である。
【0043】
正電圧パルス生成回路12と負電圧パルス生成回路13とには同一の電磁波が与えられるため、b点とc点とでは正負が逆で絶対値の等しい電位となる。
【0044】
正電流切替SW制御回路14には、マッチング回路11を経てアンテナ11Aが接続されており、アンテナ11Aから電磁波PWが与えられる。また、正電流切替SW制御回路14には、マッチング回路11及び正電圧パルス生成回路12を経てアンテナ11Aが接続されており、アンテナ11Aから電磁波PWが与えられる。正電流切替SW制御回路14は、第1の検出回路41と第2の検出回路42とを有する。
【0045】
第1の検出回路41には、マッチング回路11を経てアンテナ11Aで受信した電磁波PWが与えられる。第1の検出回路41は、一般的なピーク検出回路を含み、入力された電流から所定の高周波を検出して検出信号を出力する。
図3に(d)で示されたd点の電位は、第1の検出回路41から出力される検出信号に対応した電位となる。d点は、第1の検出回路41のa点とは反対側の端部であって、第2の検出回路42との間である。
【0046】
なお、所定の高周波は、第1の周波数及び第3の周波数以下であって、かつ、第2の周波数より大きい周波数である。これにより、第1の周波数及び第3の周波数が検出され、第2の周波数が検出されない。
【0047】
第2の検出回路42は、
図3に(x)で示された一方端であるx点が正電圧パルス生成回路12のb点と接続されている。さらに、第2の検出回路42には、正電圧パルス生成回路12への電流の供給のオンオフを切り替える第1の切替回路43が接続されている。第1の切替回路43がオンのとき、第2の検出回路42には、マッチング回路11及び正電圧パルス生成回路12を経てアンテナ11Aで受信した電磁波PWが与えられる。
【0048】
第2の検出回路42は、入力された電流から所定の低周波を検出し、検出信号を出力する。
図3に(y)で示されたy点の電位は、第2の検出回路42から出力される検出信号に対応した電位となる。
【0049】
第1の切替回路43は、d点とx点との間に配置され、第5のスイッチSW5を含む。第5のスイッチは、第1の検出回路41と第2の検出回路42とを電気的に接続せず、第2の検出回路42への電流の供給を制御するスイッチである。
【0050】
第5のスイッチSW5は、例えばN型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)であって、ゲート端子がd点に、ドレイン端子がx点に接続され、ソース端子は接地されている。従って、d点の電位が0[V]より大なる場合にドレイン端子側とソース端子側とが接続され、x点の電位がソース端子と等しいグランド(0[V])となる。
【0051】
d点の電位が0[V]より大なる場合は、第1の検出回路41から検出信号が出力された場合、つまり、第1の周波数及び第3の周波数が検出された期間である。そのとき、x点の電位がグランド(0[V])となるためb点の方が高電位となる。つまり、第5のスイッチSW5がオンとなる。これにより、第2の検出回路42に電磁波PWに基づく電流が供給される。
【0052】
d点の電位が0[V]の場合は、第1の検出回路41から検出信号が出力されない場合、つまり、第1の周波数も第3の周波数も検出されない期間である。そのとき、d点の電位の方が高電位とならないため、第5のスイッチSW5がオフとなる。この場合、x点の電位がb点の電位と等しくなり、第2の検出回路42に電磁波PWに基づく電流が供給されない。
【0053】
第2の検出回路42は、一般的なピーク検出回路を含み、入力された電流から所定の低周波を検出して検出信号を出力する。
図3に(y)で示されたy点の電圧は、第2の検出回路42から出力される検出信号に対応した電位となる。y点は、x点とは反対側の端部である。
【0054】
なお、所定の低周波は、第2の周波数以下である。これにより、第2の周波数が検出され、第1の周波数及び第3の周波数が検出されない。
【0055】
さらに、第2の検出回路42には、第1のスイッチSW1の端子間の電位の関係を切り替える第2の切替回路44が接続されている。第2の切替回路44は、第5のスイッチSW5と同様の、例えばN型のMOSFETである第4のスイッチSW4を介して第2の検出回路42のy点に接続されている。第4のスイッチSW4のゲート端子がy点に、ドレイン端子が
図3に(e)で示された第2の切替回路44内のe点に接続され、ソース端子は接地されている。なお、e点は抵抗を経てb点と接続されている。
【0056】
第2の切替回路44内のe点は、さらに、第5のスイッチSW5と同様の、例えばN型のMOSFETである第3のスイッチSW3を介して、第1のスイッチSW1に接続されている。第1のスイッチSW1は例えばPNP型のトランジスタであって、エミッタ端子がb点に、ベース端子が第3のスイッチSW3のドレイン端子に、コレクタ端子が負電流切替SW制御回路15に接続されている。また、第5のスイッチSW5のゲート端子がe点に接続され、ソース端子が接地されている。第3のスイッチSW3のドレイン端子には、さらに、抵抗を経てb点も接続されている。
【0057】
なお、
図3に(f)で示されたf点は、第1のスイッチSW1のベース端子と第3のスイッチSW3のドレイン端子との間に位置する。そのため、言い換えると、第1のスイッチSW1のベース端子はf点に接続され、又、第3のスイッチSW3のドレイン端子はf点に接続されている。
【0058】
y点の電位が0[V]より大なるとき、つまり、第2の検出回路42に電流が供給され、かつ、その電流から第2の周波数が検出されて検出信号が出力されているときに、第4のスイッチSW4はオンとなる。これにより、第4のスイッチSW4のドレイン端子側とソース端子側とが接続される。その結果、e点の電位がソース端子と等しいグランド(0[V])となる。
【0059】
e点の電位がグランド(0[V])のとき、第3のスイッチSW3のドレイン端子側とソース端子側とは接続されず、第3のスイッチSW3はオフとなる。このとき、第3のスイッチSW3のドレイン端子に接続されたf点の電位はグランド(0[V])とはならずに、b点の電位と等しくなる。その結果、第1のスイッチSW1のエミッタ端子とベース端子との電位が等しくなり、第1のスイッチSW1がオフとなる。
【0060】
y点の電位が0[V]であるときは、第2の検出回路42に電流が供給されていないとき、又は、電流が供給され、かつ、その電流から第2の周波数が検出されていないときである。y点の電位が0[V]であるときは、第4のスイッチSW4はオフとなる。この場合、第4のスイッチSW4のドレイン端子側とソース端子側とは接続されず、e点の電位はグランド(0[V])より大きい。
【0061】
e点の電位が0[V]より大なる場合、第3のスイッチSW3はオンとなる。それにより、第3のスイッチSW3のドレイン端子側とソース端子側とが接続される。その結果、f点の電位はグランド(0[V])となる。これにより、第1のスイッチSW1がオンとなる。
【0062】
負電流切替SW制御回路15は、第1のスイッチSW1を介して正電圧パルス生成回路12及び正電流切替SW制御回路14それぞれ、負電圧パルス生成回路13、並びに、鍼19に接続されている。
【0063】
詳しくは、負電流切替SW制御回路15は第2のスイッチSW2を含む。第2のスイッチSW2は、例えば、PNP型のトランジスタである。エミッタ端子がh点に、ベース端子がg点に、コレクタ端子が定電流源18Bを介してc点に接続されている。g点は、
図3で(g)に示される点であって、第1のスイッチSW1のコレクタ端子側の点である。h点は、
図3で(h)に示される点であって、第1のスイッチSW1のコレクタ端子側に定電流源18Aを介した位置にある点である。
【0064】
第1のスイッチSW1がオンのとき、g点の電位はb点の電位と等しくなる。b点の電位は、正電圧パルス生成回路12から出力される正電圧に応じた正の電位である。b点とc点とでは正負が逆で絶対値の等しい電位となるため、c点の電位は、b点の電位より低い。つまり、g点の電位はc点の電位よりも高い。言い換えると、ベース端子の電位がコレクタ端子の電位よりも高いため、エミッタ端子からコレクタ端子への電流の流れがなくなり、第2のスイッチSW2はオフとなる。
【0065】
第1のスイッチSW1がオフのとき、g点の電位はc点の電位と等しくなる。c点の電位は、負電圧パルス生成回路13から出力される負電圧に応じた負の電位であり、ベース端子の電位が低くなる。これにより、エミッタ端子からコレクタ端子へ電流の流れるようになり、第2のスイッチSW2はオンとなる。
【0066】
第1のスイッチSW1がオンで第2のスイッチSW2がオフのとき、鍼19には、正電圧パルス生成回路12で生成された正電圧が印加される。これにより、この期間、鍼19は人体に正電流を与える。一方、第1のスイッチSW1がオフで第2のスイッチSW2がオンのとき、鍼19には、負電圧パルス生成回路13で生成された負電圧が印加される。これにより、この期間、鍼19は人体に負電流を与える。
【0067】
本システム100では、通電鍼装置10側にこのように人体に与える電流の正負を切り替える機能を持たせることで、送信機50から放出される電磁波PWに切替信号を含ませることで通電鍼装置10での電流の正負を制御する。
【0068】
具体的な制御の方法について、
図4を用いながら説明する。
図4は、a点~h点の電位の関係を表している。
図4の(a)は、a点の電位変化を表し、送信機50から放出される電磁波PWが
図1の電磁波PWであるときの例を示している。
図1にも示されたように、電磁波PWは、期間C1,C3,C7である第1の期間で正電流、期間C5である第2の期間で負電流を人体に与えることを指示する切替信号として機能する。
【0069】
電磁波PWが入力されると、正電圧パルス生成回路12では、第1の期間及び第2の期間の電圧を正電圧に整流して出力する。電磁波PWは周波数Pのパルス波であるため、正電圧パルス生成回路12からは周波数Pの正電圧パルスが出力される。正電圧パルスの電圧を2[V]とすると、正電圧パルス生成回路12の出力側の端部であるb点は、
図4の(b)に示されたように、第1の期間及び第2の期間の電位が2[V]、第1の期間及び第2の期間以外の第3の期間が0[V]となる。
【0070】
また、電磁波PWが入力されると、負電圧パルス生成回路13では、第1の期間及び第2の期間の電圧を負電圧に整流して出力する。電磁波PWは周波数Pのパルス波であるため、負電圧パルス生成回路13からは周波数Pの負電圧パルスが出力される。負電圧パルスの電圧を-2[V]とすると、負電圧パルス生成回路13の出力側の端部であるc点は、
図4の(c)に示されたように、第1の期間及び第2の期間の電位が-2[V]、第1の期間及び第2の期間以外の第3の期間が0[V]となる。
【0071】
また、電磁波PWが正電流切替SW制御回路14に入力されると、第1の検出回路41では、第1の周波数及び第3の周波数が検出され、検出信号が出力される。第1の期間は、全体にわたって第1の周波数で周波数変調されている。そのため、第1の期間全体にわたって検出信号が出力される。第2の期間のうちの、第2の周波数のオン期間が、第3の周波数で周波数変調されている。そのため、第2の期間のうちの第2の周波数のオン期間に、検出信号が出力される。
【0072】
検出信号に対応した電位を2[V]とすると、第1の検出回路41の出力側の端部であるd点は、各第1の期間全体、及び、第2の期間のうちの第2の周波数のオン期間の電位が2[V]、それ以外の期間の電位が0[V]となる。
【0073】
上記のように、d点の電位が2[V]である期間、第5のスイッチSW5がオンとなって第2の検出回路42に電磁波PWに基づく電流が供給されるため、第2の検出回路42では第2の周波数が検出され、検出信号が出力される。第2の期間が第2の周波数で周波数変調されているため、第2の期間全体にわたって検出信号が出力される。検出信号に対応した電位を2[V]とする。
【0074】
図5を参照して、第1の期間では、b点の電位が2[V]、c点の電位が-2[V]である。第1の検出回路41で第1の周波数が検出されるためにd点の電位が2[V]となり、第5のスイッチSW5がオンとなる。
【0075】
第2の検出回路42では検出信号が出力されず、y点の電位が0[V]となる。これにより第4のスイッチSW4はオフとなり、e点の電位はグランド(0[V])より大きく、
図4の(e)に示されたように、例えば2[V]となる。これにより、第3のスイッチSW3はオンとなり、
図4の(f)に示されたように、f点の電位はグランド(0[V])となる。これにより、第1のスイッチSW1がオンとなる。
【0076】
またこのとき、g点の電位はb点の電位と等しく、
図4の(g)に示されたように2[V]となる。また、h点の電位はg点の電位と等しく、
図4の(h)に示されたように2[V]となる。第2のスイッチSW2はオフとなる。
【0077】
図6を参照して、第2の期間のうちの第2の周波数の最初のオン期間以降では、b点の電位が2[V]、c点の電位が-2[V]である。第2の期間では、第2の周波数で第1の周波数の期間とオフ期間とが繰り返されるため、第1の検出回路41で第1の周波数の検出と非検出とが繰り返される。そのためにd点の電位が0[V]と2[V]との繰り返しとなる。この電位の繰り返しによって、第5のスイッチSW5がオンオフを繰り返す。
【0078】
第5のスイッチSW5がオンオフを繰り返すことによって、x点の電位が0[V]と2[V]との繰り返しとなる。これにより、並列に接続されたコンデンサがチャージされる。y点の電位は2[V]に維持される。そのため、第2の期間では、y点の電位は2[V]に維持される。また、x点に接続されているダイオードによって、コンデンサにチャージされた電荷がx点に移動することが防がれる。これにより、第2の期間では第4のスイッチSW4はオンに維持され、e点の電位は
図4の(e)に示されたようにグランド(0[V])となる。これにより、第3のスイッチSW3はオフとなり、
図4の(f)に示されたように、f点の電位はグランド(0[V])とはならずに、b点の電位と等しく2[V]となる。これにより、第1のスイッチSW1がオフとなる。
【0079】
またこのとき、g点の電位はc点の電位と等しく、
図4の(g)に示されたように-2[V]となる。また、h点の電位はg点の電位と等しく、
図4の(h)に示されたように-2[V]となる。第2のスイッチSW2はオンとなる。
【0080】
以上より、第1の期間では、電磁波PWに含まれる切替信号に従って第1のスイッチSW1がオンで第2のスイッチSW2がオフとなる。その結果、鍼19には、正電圧パルス生成回路12で生成された正電圧が印加される。これにより、この期間、鍼19は人体に正電流を与える。
【0081】
第2の期間では、電磁波PWに含まれる切替信号に従って第1のスイッチSW1がオフで第2のスイッチSW2がオンとなる。その結果、鍼19には、負電圧パルス生成回路13で生成された負電圧が印加される。これにより、この期間、鍼19は人体に負電流を与える。
【0082】
<3.付記>
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0083】
10 :通電鍼装置
11 :マッチング回路
11A :アンテナ
12 :正電圧パルス生成回路
13 :負電圧パルス生成回路
14 :正電流切替SW制御回路
15 :負電流切替SW制御回路
17 :パット
17a :下面
17b :上面
18A :定電流源
18B :定電流源
19 :鍼
21 :整流回路
22 :リミッタ回路
23 :ローパスフィルタ
31 :整流回路
32 :リミッタ回路
33 :ローパスフィルタ
41 :第1の検出回路
42 :第2の検出回路
43 :第1の切替回路
44 :第2の切替回路
50 :送信機
51 :アンテナ
100 :通電鍼システム
C1 :期間
C2 :期間
C3 :期間
C4 :期間
C5 :期間
C6 :期間
C7 :期間
P :周波数
PW :電磁波
SW1 :第1のスイッチ
SW2 :第2のスイッチ
SW3 :第3のスイッチ
SW4 :第4のスイッチ
SW5 :第5のスイッチ