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特許7537728改質絹繊維、これを含む繊維製品および改質絹繊維の製造方法
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  • 特許-改質絹繊維、これを含む繊維製品および改質絹繊維の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】改質絹繊維、これを含む繊維製品および改質絹繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/11 20060101AFI20240814BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20240814BHJP
   D06M 101/12 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
D06M13/11
D06M13/463
D06M101:12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020071842
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167484
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000231224
【氏名又は名称】日本蚕毛染色株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平本 健
(72)【発明者】
【氏名】細見 夏子
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-184931(JP,A)
【文献】特開平04-174775(JP,A)
【文献】特公昭38-025198(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絹繊維にエポキシ化合物が結合した改質絹繊維であって、
前記エポキシ化合物は、前記絹繊維中の反応性官能基と反応する官能基を2以上有する多官能性脂肪族エポキシ化合物であり、
前記改質絹繊維は、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2,3-グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、2,3-エポキシプロピルメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、およびジアリルジメチルアンモニウムクロライドからなる群より選ばれる少なくとも1種の第4級アンモニウム塩をさらに含む、改質絹繊維。
【請求項2】
前記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の改質絹繊維。
【請求項3】
前記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上である、請求項1に記載の改質絹繊維。
【請求項4】
前記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、前記絹繊維に対する質量比率が0.5%以上20%以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の改質絹繊維。
【請求項5】
前記第4級アンモニウム塩は、前記改質絹繊維中の絹フィブロインと反応することにより化学的な組成として前記改質絹繊維を構成しておらず、前記改質絹繊維中に単に存在している、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の改質絹繊維。
【請求項6】
形状記憶効果を備える、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の改質絹繊維。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の改質絹繊維を含む、繊維製品。
【請求項8】
エポキシ化合物を含有する処理液に絹繊維を浸漬し、前記絹繊維に前記エポキシ化合物を結合させることにより改質絹繊維を得る工程を含み、
前記エポキシ化合物は、前記絹繊維中の反応性官能基と反応する官能基を2以上有する多官能性脂肪族エポキシ化合物であり、
前記処理液は、第4級アンモニウム塩をさらに含み、
前記処理液は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、四塩化スズ、三フッ化ホウ素、アミン、およびチオシアン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ性触媒をさらに含む、改質絹繊維の製造方法。
【請求項9】
前記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上である、請求項8に記載の改質絹繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質絹繊維、これを含む繊維製品および改質絹繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-080704号公報(特許文献1)は、高い耐洗濯性を有する改質繊維を開示している。上記特許文献1によれば、精製セルロース繊維、天然セルロース繊維、銅アンモニアレーヨン、レーヨンまたは絹繊維にエポキシ化合物を結合させた改質繊維は、これを繰り返し洗濯をした場合であっても繊維のフィブリル化、白化現象および風合いの劣化を起こし難くすることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-080704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、上記改質繊維が形状を記憶する効果(以下、「形状記憶効果」ともいう)を奏するか否かについて教示していない。すなわち未だ精製セルロース繊維、銅アンモニアレーヨン、絹繊維等において形状記憶効果を奏させる技術は十分でなく、その技術の開発が切望されている。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明は、形状記憶効果を奏する改質絹繊維、これを含む繊維製品および改質絹繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するため鋭意検討を重ねたところ、絹繊維を上記絹繊維中の反応性官能基と反応する官能基を2以上有する多官能性脂肪族エポキシ化合物で処理することによって、上記絹繊維に形状記憶効果を付与できることを知見し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、以下のとおりの特徴を有する。
〔1〕 本発明に係る改質絹繊維は、絹繊維にエポキシ化合物が結合した改質絹繊維であって、上記エポキシ化合物は、上記絹繊維中の反応性官能基と反応する官能基を2以上有する多官能性脂肪族エポキシ化合物である。
〔2〕 上記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
〔3〕 上記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、上記絹繊維に対する質量比率が0.5%以上20%以下であることが好ましい。
〔4〕 上記改質絹繊維は、第4級アンモニウム塩をさらに含むことが好ましい。
〔5〕 本発明に係る繊維製品は、上記改質絹繊維を含む。
〔6〕 本発明に係る改質絹繊維の製造方法は、エポキシ化合物を含有する処理液に絹繊維を浸漬し、上記絹繊維に上記エポキシ化合物を結合させることにより改質絹繊維を得る工程を含み、上記エポキシ化合物は、上記絹繊維中の反応性官能基と反応する官能基を2以上有する多官能性脂肪族エポキシ化合物である。
〔7〕 上記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
〔8〕 上記処理液は、第4級アンモニウム塩をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、形状記憶効果を奏する改質絹繊維、これを含む繊維製品および改質絹繊維の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】試料No.1~試料No.6の改質絹繊維および試料No.11~試料No.14の絹繊維から形成され、形状記憶試験に供した綛を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも記す)について、さらに詳細に説明する。本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
【0011】
本明細書において「形状記憶」とは、縮れた形状、ストレート形状、織られた形状および編まれた形状などの形状を有する絹繊維(改質絹繊維)が、所定時間経過後にその形状を維持し、あるいは上記絹繊維が洗浄、洗濯または染色などの処理を受けた後に、その形状に回復することを意味する。また「形状記憶効果」とは、上記絹繊維が所定時間経過後にその形状を維持し、あるいはその形状に回復することができる効果を意味する。
【0012】
本明細書において、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルにおける「ポリ」の用語は、エチレングリコールが直鎖状に4以上重合していることを意味する。同様に、ポリアリルアミンの塩酸塩における「ポリ」、およびポリエチレンイミンの塩酸塩における「ポリ」の用語は、それぞれアリルアミン中のアリル基が直鎖状に4以上重合していること、およびエチレンイミンが直鎖状に4以上重合していることを意味する。
【0013】
本明細書において改質絹繊維が第4級アンモニウム塩をさらに「含む」とは、第4級アンモニウム塩が絹繊維中の絹フィブロインと反応することにより、化学的な組成として改質絹繊維を構成しているのではなく、改質絹繊維中に第4級アンモニウム塩が単に「存在する」ことを意味する。また本明細書において「絹繊維」とは、直鎖状の一分子(たとえば、絹フィブロイン)が2以上集合することにより形成される集合体を意味する。
【0014】
本明細書において「浴比」とは、繊維の質量(g)に対する処理液(ml)の比を意味する。たとえば5gの絹繊維を100mlの処理液中で処理する場合、その浴比は1:20となり、5gの絹繊維を200mlの処理液中で処理する場合、その浴比は1:40となる。1:20の浴比は、1:40の浴比の場合よりも絹繊維の質量に対する処理液の液量が少なく、この場合に1:20の浴比は、1:40の浴比よりも低いと記す。
【0015】
本明細書において「%owf」とは、処理液中に含有される多官能性脂肪族エポキシ化合物、分散剤、第4級アンモニウム塩などの化合物の質量を、処理液中に浸漬される絹繊維の質量で除算した値の百分率を意味する。また、染色液中に含有される染料の質量を、染色液中に浸漬される改質絹繊維の質量で除算した値の百分率についても「%owf」の単位を用いた。
【0016】
本明細書において「質量比率」について、たとえば、物質Aが5gであり、物質Bが0.5gの場合、物質Aに対する物質Bの質量比率は、物質Bの質量/物質Aの質量×100で算出され、その値は10%となる。
【0017】
〔改質絹繊維〕
本実施形態に係る改質絹繊維は、エポキシ化合物が結合した絹繊維である。上記エポキシ化合物は、上記絹繊維中の反応性官能基と反応する官能基を2以上有する多官能性脂肪族エポキシ化合物である。上記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。さらに上記改質絹繊維は、第4級アンモニウム塩をさらに含むことが好ましい。このような特徴を有する改質絹繊維は、形状記憶効果が付与された絹繊維として提供することができる。
【0018】
<絹繊維>
上記改質絹繊維は、上述のとおりエポキシ化合物が結合した絹繊維である。「絹繊維」は、上述のとおり直鎖状の一分子(たとえば、絹フィブロイン)が2以上集合することにより形成される集合体を意味する。したがって上記絹繊維の態様としては、絹織物、絹編物、絹糸、絹紡績糸、絹短繊維などを例示することができる。さらに上記絹織物の態様としては、平織または綾織された繊維構造体とともに、撚りによって立体構造を有する縮緬などの繊維構造体を例示することができる。
【0019】
<多官能性脂肪族エポキシ化合物>
上記エポキシ化合物は、上記絹繊維中の反応性官能基と反応する官能基を2以上有する多官能性脂肪族エポキシ化合物(以下、単に「脂肪族エポキシ化合物」とも記す)である。上記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、上記絹繊維中の絹フィブロインが有する反応性官能基である水酸基と反応することにより上記絹繊維に結合すると考えられる。また上記絹繊維中の絹フィブロインにおいては、上記多官能性脂肪族エポキシ化合物を介して分子内および分子間結合(所謂架橋)が起こると考えられる。これにより上記改質絹繊維は、形状記憶効果を奏することができると考えられる。
【0020】
上記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、絹繊維中の反応性官能基と反応する官能基を2つ有する2官能性脂肪族エポキシ化合物であることが好ましい。特に、上記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(以下、「EGDGE」とも記す)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(以下、「DEGDGE」とも記す)、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル(以下、「TEGDGE」とも記す)およびポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(以下、「PEGDGE」とも記す)からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。上記改質絹繊維においては、EGDGE、DEGDGE、TEGDGEおよびPEGDGEのいずれか1種が単独で絹繊維に結合していてもよく、2種以上が併用されて絹繊維に結合していてもよい。
【0021】
上記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、上記絹繊維に対する質量比率が0.5%以上20%以下であることが好ましい。上記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、絹繊維に対する質量比率が0.5%以上であれば、上記改質絹繊維に形状記憶効果を十分に付与することができるので好ましく、より好ましくは1%以上である。上記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、改質絹繊維に十分に高い形状記憶効果を付与するためには、絹繊維に対する質量比率が20%以下でよく、好ましくは10%以下である。このため本実施形態は、絹繊維に過剰な多官能性脂肪族エポキシ化合物を結合させた場合に生じる恐れがある風合いの低下を抑制することができる。
【0022】
<形状記憶効果を有するメカニズム>
本実施形態に係る改質絹繊維は、多官能性脂肪族エポキシ化合物が絹繊維に結合することによって、高い形状記憶効果を付与することができる。その理由については、詳細には明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
【0023】
本実施形態において絹繊維に結合するエポキシ化合物は、上記絹繊維中の反応性官能基と反応する官能基を2以上有する多官能性脂肪族エポキシ化合物であり、具体的には、EGDGE、DEGDGE、TEGDGEおよびPEGDGEからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。これらEGDGE、DEGDGE、TEGDGEおよびPEGDGEは、いずれも1分子内に2つのエポキシ基を有するため、上記エポキシ基を通じて絹繊維中の絹フィブロイン同士を分子内および分子間で架橋することができる。これによりEGDGE、DEGDGE、TEGDGEおよびPEGDGEは、絹繊維に対する質量比率が上述のように低い場合であっても、絹フィブロインの構造を所定の形状に固定することができ、結果的に改質絹繊維に高い形状記憶効果を付与できると推測される。またEGDGE、DEGDGE、TEGDGEおよびPEGDGEは、いずれも脂肪族エポキシ化合物であるため、絹フィブロインを架橋した場合に芳香族エポキシ化合物よりも絹繊維を柔軟とすることができ、もって改質絹繊維に風合いを低下させることなく、形状記憶効果を付与することができると推測される。
【0024】
さらに上記改質絹繊維は、上述した架橋によって絹繊維内部の絹フィブロイン同士が結束し、これらの分子間に存在する微細な溝を埋めることができる。これにより改質絹繊維は、外部応力が加わった場合であっても絹繊維が裂けて複数の絹フィブロインに分離することが減少するため、形状記憶効果をより十分に奏することができると推測される。
【0025】
<第4級アンモニウム塩>
本実施形態に係る改質絹繊維は、第4級アンモニウム塩をさらに含むことが好ましい。上記改質絹繊維は、第4級アンモニウム塩を含むことによって、形状記憶効果をさらに高めることができる。第4級アンモニウム塩としては、クロロヒドリン基を有する第4級アンモニウム塩、エポキシ基を有する第4級アンモニウム塩、トリアジン基を有する第4級アンモニウム塩、ポリアリルアミンの塩酸塩、ポリエチレンイミンの塩酸塩などを挙げることができる。
【0026】
たとえば第4級アンモニウム塩としては、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2,3-グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、2,3-エポキシプロピルメチルアンモニウムクロライド、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどを用いることができる。本発明者らは、第4級アンモニウム塩の存在により、絹繊維の脂肪族エポキシ化合物による架橋が促進されるとともに、絹フィブロイン間の水素結合および分子間力が高まり、絹フィブロイン同士の結束がさらに強固となって、絹繊維が分離され難くなるものと推測している。これにより本実施形態に係る改質絹繊維は、形状記憶効果をより十分に奏することができると考えられる。
【0027】
〔繊維製品〕
本実施形態に係る繊維製品は、上記改質絹繊維を含む。これにより上記改質絹繊維に基づく形状記憶効果を奏する繊維製品を提供することができる。
【0028】
本明細書において「繊維製品」には、いわゆる衣料品である上着、肌着、下着およびパジャマなどの衣料に限定されることなく、ブランケット、タオル、マフラー、スカーフ、ストール、手袋、靴下、帽子、ネックウォーマー、ハンカチーフ、風呂敷、寝具、枕カバーおよびマスク等の小物も含まれる。すなわち、上記改質絹繊維を構成する絹繊維の態様は、上述したように絹織物、絹編物、絹糸、絹紡績糸、絹短繊維などをすべて含むため、本明細書で定義する「繊維製品」の範疇には、上記改質絹繊維を用いて製織され、製編され、もしくは縫製され、あるいは非織布(不織布)とされた絹製品がすべて含まれる。また本明細書で定義する「繊維製品」の範疇には、本発明の効果を逸脱しない限り、上記改質絹繊維と合成繊維などのその他の繊維とからなる「混紡」などにより製織され、あるいは製編され、もしくは縫製された繊維製品、改質絹繊維の絹紡糸と合成繊維などのその他の繊維の紡積糸とで製織され、あるいは製編され、もしくは縫製された繊維製品なども含むものとする。
【0029】
〔改質絹繊維の製造方法〕
本実施形態に係る改質絹繊維の製造方法は、エポキシ化合物を含有する処理液に絹繊維を浸漬し、上記絹繊維に上記エポキシ化合物を結合させることにより改質絹繊維を得る工程を含む。上記エポキシ化合物は、上記絹繊維中の反応性官能基と反応する官能基を2以上有する多官能性脂肪族エポキシ化合物である。このような特徴を有する改質絹繊維の製造方法は、形状記憶効果を奏する改質絹繊維を製造することができる。
【0030】
ここで上記改質絹繊維の製造方法において、上記多官能性脂肪族エポキシ化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。上記処理液は、第4級アンモニウム塩をさらに含むことが好ましい。これにより、形状記憶効果を奏する改質絹繊維をより効率的に製造することができる。
【0031】
<改質絹繊維を得る工程>
本実施形態に係る改質絹繊維の製造方法は、上述したようにエポキシ化合物を含有する処理液に絹繊維を浸漬し、上記絹繊維に上記エポキシ化合物を結合させることにより改質絹繊維を得る工程を含む。上記改質絹繊維を得る工程は、たとえば多官能性脂肪族エポキシ化合物を含有する処理液を準備する工程(第1工程)、および上記処理液に絹繊維を浸漬し、上記絹繊維に上記多官能性脂肪族エポキシ化合物を結合させる工程(第2工程)により実行することが好ましい。以下、上記第1工程および上記第2工程を有する改質絹繊維の製造方法について説明する。
【0032】
(第1工程)
第1工程は、多官能性脂肪族エポキシ化合物を含有する処理液を準備する工程である。多官能性脂肪族エポキシ化合物を含有する処理液であれば、処理液に用いる溶媒については絹繊維を傷めない溶媒である限り、特に制限されない。しかしながらたとえば製造コストの低さ、取扱いの容易性から、処理液の溶媒としては水が好ましい。さらに処理液については、多官能性脂肪族エポキシ化合物が処理液中により均一に分散するように乳化剤などの分散剤とともに、または有機溶媒中に多官能性脂肪族エポキシ化合物を分散させた上で、上記溶媒に多官能性脂肪族エポキシ化合物を添加することにより調製してもよい。この場合、たとえば分散剤と多官能性脂肪族エポキシ化合物とを混合した混合物に徐々に水を加え、水中に分散剤と多官能性脂肪族エポキシ化合物とを分散させることによって、処理液を調製することができる。
【0033】
分散剤には、多官能性脂肪族エポキシ化合物の絹繊維への結合反応を阻害しない材料を用いることが好ましい。たとえばディスパーVG(明成化学工業株式会社製)、サイゾール2EX(第一工業製薬株式会社製)、BK57NM(日華化学工業株式会社製)などの分散剤を用いることができる。ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの有機溶媒を用いることもできる。また処理液には、消泡剤、浸透剤、穏染剤、均染剤などの添加剤を加えることができる。なお処理液は、多官能性脂肪族エポキシ化合物の絹繊維への結合反応を阻害しない範囲で、意図しない他の物質が混入していても構わない。
【0034】
処理液中の多官能性脂肪族エポキシ化合物の含有量は特に制限されないが、本発明者らは、処理中の多官能性脂肪族エポキシ化合物の濃度が3%owfという低い濃度であっても、高い形状記憶効果を奏する改質絹繊維を歩留まりよく製造できることを知見している。
【0035】
したがって、処理液に浸漬される絹繊維の質量に基づき、多官能性脂肪族エポキシ化合物の濃度が上記絹繊維の質量の3%owf以上である処理液を準備することが好ましい。処理液中の多官能性脂肪族エポキシ化合物の濃度は、5%owf以上であることがより好ましい。これにより、改質絹繊維を効率よく製造でき、かつ多官能性脂肪族エポキシ化合物の使用量を適切に制限することによって製造コストを低減することができる。処理液中の多官能性脂肪族エポキシ化合物の濃度は、改質絹繊維の風合いの低下を抑制する観点から、絹繊維に過剰な多官能性脂肪族エポキシ化合物を結合させないように10%owf以下とすることが好ましい。
【0036】
上記処理液は、第4級アンモニウム塩をさらに含むことが好ましい。処理液中の第4級アンモニウム塩の含有量は、たとえば1g/L以上15g/L以下(1%owf以上30%owf以下)とすることができる。第4級アンモニウム塩を上述した範囲で含むことにより、多官能性脂肪族エポキシ化合物による架橋が適切に促進されるため、多官能性脂肪族エポキシ化合物の使用量を削減することができ、かつ形状記憶効果をさらに高めることができる。第4級アンモニウム塩の含有量が1g/L未満であると、上記の効果が得られ難い傾向にある。第4級アンモニウム塩の含有量が15g/Lを超過すると、改質絹繊維を染色する場合等において染めムラなどの不具合が生じ易くなる傾向がある。ここで処理液に第4級アンモニウム塩を含ませる方法は特に制限されず、たとえば上記多官能性脂肪族エポキシ化合物と分散剤とを含む処理液に直接投入してもよいし、予め水などの溶媒に第4級アンモニウム塩を分散させた液剤を準備した後、該液剤を上記処理液に投入してもよい。
【0037】
(第2工程)
第2工程は、上記処理液に絹繊維を浸漬し、上記絹繊維に上記多官能性脂肪族エポキシ化合物を結合させる工程である。上記処理液に浸漬する絹繊維としては、上記した例示のとおり絹織物、絹編物、絹糸、絹紡績糸および絹短繊維のいずれであってもよい。たとえば絹織物、絹編物を上記処理液に浸漬させることにより改質絹繊維を製造した場合、絹織物、絹編物などの改質絹繊維を用いて衣服などの各種製品を効率的に製造することができる。たとえば絹糸、絹紡績糸、絹短繊維などを浸漬させることにより改質絹繊維を製造した場合、この改質絹繊維を用いて織物、編物などを作製することができる。
【0038】
ここで第2工程を実行する前に、絹繊維に記憶させたい形状を予め備えさせることが好ましい。すなわち第2工程では、絹繊維がたとえば絹糸、絹紡績糸または絹短繊維である場合、縮れた形状、撚った形状などの予め記憶させたい形状に加工した絹糸、絹紡績糸または絹短繊維を上記処理液に浸漬させることが好ましい。また絹繊維がたとえば絹織物または絹編物である場合、第2工程によって上記絹織物または絹編物を上記処理液に浸漬させることとなるので、その絹織物または絹編物の形状が記憶されることとなる。
【0039】
上記処理液に浸漬させる絹繊維の浴比は、特に制限されず、たとえば、1:5以上とすることができる。上記処理液に浸漬させる絹繊維が編物または織物である場合、形状記憶効果を歩留まり良く得るために、繊維の浴比を1:15以上にすることが好ましく、1:30以上にすることがより好ましい。これにより、処理液中で編物または織物と処理槽とが擦れ合うこと、および編物または織物同士が擦れ合うことを抑制でき、もって毛羽立ちおよび白ぼけなどの不具合の発生を抑制しながら改質絹繊維を製造することができる。ただし製造効率、製造コストおよび多官能性脂肪族エポキシ化合物の結合反応の速度の観点からは、絹織物、絹編物、絹糸、絹紡績糸および絹短繊維のいずれの繊維を用いる場合であっても、その浴比を低く設定することが好ましい。このため上記浴比の上限としては、1:50とすることが好ましい。
【0040】
第2工程においては、絹繊維が浸漬された処理液に、絹繊維への多官能性脂肪族エポキシ化合物の結合を促進するための触媒を添加することが好ましい。さらに絹繊維が浸漬された処理液を加熱することにより、絹繊維への多官能性脂肪族エポキシ化合物の結合を促進することも好ましい。これにより、多官能性脂肪族エポキシ化合物の絹繊維への結合反応の速度をより大きくすることができ、もって高い結合効率で絹繊維に多官能性脂肪族エポキシ化合物を結合させることができる。
【0041】
触媒としては、たとえば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、四塩化スズ、三フッ化ホウ素、アミン、チオシアン酸塩などを用いることができる。特に多官能性脂肪族エポキシ化合物(EGDGE、DEGDGE、TEGDGEおよびPEGDGE等)に対する高い触媒能を有する点で、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムといったアルカリ性触媒を用いることが好ましい。処理液中における触媒の濃度は特に限定されず、適宜調製することができる。たとえば、処理液中の多官能性脂肪族エポキシ化合物の濃度(mol)の5倍以上10倍以下の量の触媒を含有することが好ましく、6倍以上9倍以下の量の触媒を含有することがより好ましく、8倍の量の触媒を含有することがさらに好ましい。
【0042】
絹繊維が浸漬された処理液を加熱する場合、その加熱方法は、特に制限されず、たとえば、室温(25℃)の処理液を徐々に50℃~80℃まで昇温させるような加熱方法でもよい。また温度が50℃~80℃に維持された処理液に絹繊維を浸漬する加熱方法でもよい。加熱時間も特に制限されず、たとえば30分以上180分以下とすることができる。
【0043】
<作用効果>
上記製造方法によれば、絹繊維を構成する絹フィブロインに上記多官能性脂肪族エポキシ化合物(EGDGE、DEGDGE、TEGDGEおよびPEGDGE)を結合させることができる。多官能性脂肪族エポキシ化合物が結合した改質絹繊維は、高い形状記憶効果を奏することができ、もって上記製造方法によって高い形状記憶効果を奏する改質絹繊維を製造することができる。
【実施例
【0044】
以下、本発明の実施例について説明するが、これらの実施例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。以下の説明において、試料No.1~試料No.6の改質絹繊維が実施例に相当し、試料No.11~試料No.14の絹繊維が比較例に相当する。
【0045】
〔改質絹繊維の作製〕
<試料No.1>
まず筒編み機(丸善産業株式会社製)、およびこれに付属した筒(筒胴内径68.25mm(同外径95.25mm))を用いることにより、5gの絹紡糸(番手:2/120、江蘇省蘇糸シルク有限公司(SPCC)社製)を筒編み加工(針本数240本)した。これにより縮れた形状の絹繊維(絹糸)を準備した。ここでは上記絹繊維について、必要数(試料No.1~試料No.6および試料No.11~試料No.14の全10単位)準備した。
【0046】
さらに、多官能性脂肪族エポキシ化合物であるジエチレングリコールジグリシジルエーテル(DEGDGE、商品名:「エポライト100E」、共栄社化学株式会社製)0.25gを水で希釈し、全量50mLの第1液体とした。また浸透剤(商品名:「タスポンSN-1」、タナテックス株式会社製)0.2gを水で希釈し、全量50mLの第2液体とした。上記第1液体および第2液体を混合することにより処理液を準備した(第1工程)。
【0047】
次に、上記処理液に上記絹繊維を浸漬し、撹拌した。さらに上記処理液に触媒として24%水酸化ナトリウム水溶液1.6gを50mlの水で希釈した上で上記処理液に徐々に添加し、触媒の添加を終えた後、最終的に処理液の全量が200mLとなるように水で調整した。さらに上記処理液の温度を25℃から80℃まで昇温した。その後、処理液の温度を80℃に維持しながら、処理液をさらに45分撹拌し続けることにより、上記絹繊維に上記多官能性脂肪族エポキシ化合物を結合させ、上述した縮れた形状を絹繊維に記憶させた(第2工程)。
【0048】
最後に上記絹繊維に対し、水による洗浄、1g/Lの酢酸溶液による洗浄(60℃で10分)、温水による洗浄(80℃で10分)、水による洗浄の順で各洗浄処理を行った後、乾燥させた。続いて乾燥させた上記絹繊維を解くことによりニットデニット糸とした。これにより試料No.1の改質絹繊維を得た。
【0049】
<試料No.2>
第1工程において準備する処理液中の多官能性脂肪族エポキシ化合物をポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(PEGDGE、商品名:「エポライト200E」、共栄社化学株式会社製)に代えたこと以外、試料No.1を製造するのと同じ方法により、試料No.2の改質絹繊維を得た。
【0050】
<試料No.3>
第1工程において準備する処理液中に3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライドおよび2,3-グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドを主成分とする第4級アンモニウム塩(商品名:「カチオノンKCN」、ライオン株式会社製)1gをさらに添加したこと以外、試料No.1を製造するのと同じ方法により、試料No.3の改質絹繊維を得た。
【0051】
<試料No.4>
第1工程において準備する処理液中に上記第4級アンモニウム塩(商品名:「カチオノンKCN」、ライオン株式会社製)1gをさらに添加したこと以外、試料No.2を製造するのと同じ方法により、試料No.4の改質絹繊維を得た。
【0052】
<試料No.5>
第1工程において準備する処理液中の第4級アンモニウム塩をジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体(商品名:「PAS-H-10L」、ニットーボーメディカル株式会社製)に代えたこと以外、試料No.3を製造するのと同じ方法により、試料No.5の改質絹繊維を得た。
【0053】
<試料No.6>
第1工程において準備する処理液中の第4級アンモニウム塩をジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体(商品名:「PAS-H-10L」、ニットーボーメディカル株式会社製)に代えたこと以外、試料No.4を製造するのと同じ方法により、試料No.6の改質絹繊維を得た。
【0054】
<試料No.11>
第1工程において準備する処理液に多官能性脂肪族エポキシ化合物を添加しなかったこと以外、試料No.3を製造するのと同じ方法により、試料No.11の絹繊維を得た。
【0055】
<試料No.12>
第1工程において準備する処理液に多官能性脂肪族エポキシ化合物を添加しなかったこと以外、試料No.5を製造するのと同じ方法により、試料No.12の絹繊維を得た。
【0056】
<試料No.13>
第1工程において準備する処理液を、多官能性芳香族エポキシ化合物であるレゾルシノールジグリシジルエーテル(RDGE、商品名:「デナコールEX-201」、ナガセケムテックス株式会社製)と分散剤(商品名:「ディスパーVG」、明成化学株式会社製)0.25gとを練り合わせて練物を得、かつ当該練物と浸透剤(商品名:「タスポンSN-1」、タナテックス株式会社製)0.2gとを100mLの水で希釈することにより得た処理液(分散液)に代えたこと以外、試料No.3を製造するのと同じ方法により、試料No.13の絹繊維を得た。
【0057】
<試料No.14>
上記筒編み機で筒編み加工することにより準備した縮れた形状の絹繊維(絹糸)をほどくことによりニットデニット糸とした。これを試料No.14の絹繊維とした。
【0058】
上記試料No.1~試料No.6の改質絹繊維および試料No.11~試料No.13の絹繊維を得るために用いた処理液の組成(触媒である24%水酸化ナトリウムを含む)の一覧を表1に示す。なお試料No.14の絹繊維は、上述のとおり第2工程を実行しておらず、もって処理液で処理することなく得られたものである。
【0059】
【表1】
【0060】
〔形状記憶試験〕
<試験内容>
絹繊維が綛(かせ)染めに供されることを想定し、上記試料No.1~試料No.6の改質絹繊維および試料No.11~試料No.14の絹繊維を綛上げすることによって、各試料毎に綛を形成した。上記綛上げに際しては改質絹繊維を一度伸長させて、綛の長手方向の長さ(綛長)が500mmとなるようにして実行した。また上記の綛に対しては、これを構成する繊維がばらつくことを抑制するため、上記繊維をひびろで適宜結束した。
【0061】
さらに上記試料No.1~試料No.6の改質絹繊維および試料No.11~試料No.14の絹繊維から形成した綛を床上に放置した。この場合において、綛が縮むことにより、筒編み加工によって形成した縮れた形状が回復するか否か(上記の縮れた形状が記憶されているか否か)を観察した。結果を図1に示す。図1は、試料No.1~試料No.6の改質絹繊維および試料No.11~試料No.14の絹繊維から形成され、形状記憶試験に供した綛(床上に放置した後)を示す図面代用写真である。
【0062】
また上記試料No.1~試料No.6の改質絹繊維および試料No.11~試料No.14の絹繊維から形成した綛の放置後の綛長(mm)および縮率(%)の数値を表2に示した(なお、綛の放置後の綛長(mm)については図1も参照することができる)。ここで縮率(%)の計算式は、[縮率(%)=(500-綛の放置後の綛長(mm))/500(mm)×100]である。表2において縮率(%)の値が大きいほど、筒編み加工による縮れた形状が記憶されていると評価することができる。
【0063】
【表2】
【0064】
<考察>
図1および表2によれば、試料No.1~試料No.6の改質絹繊維は、試料No.11~試料No.14の絹繊維に比して筒編み加工による縮れた形状が記憶されていることが理解される。
【0065】
〔染色試験〕
試料No.1~試料No.6の改質絹繊維から10cm×10cmのハンカチーフを模した繊維製品をそれぞれ製造した。当該繊維製品に対して後述する処理方法により、青色染料(商品名:「Lanazol Blue 3G」、ハンツマン社製)を用いた染色試験を行った。
【0066】
具体的には、下記配合の青色染色液Aに試料No.1~試料No.6の改質絹繊維を浸漬し、これを60℃で30分間撹拌することによって染色処理を行った。次いで染色処理後の各試料に対し、ノニオン活性剤(ECB-50;大日精化工業株式会社製)を1g/L含む洗浄液に浸漬し、さらに100℃で10分間撹拌洗浄した。その後、温水による洗浄、水による洗浄の順に洗浄処理した後、乾燥させた。
【0067】
[青色染色液A]
Lanazol Blue 3G :0.2%owf
浸透剤:タスポンSN-1 :1g/L
無水硫酸ナトリウム :20g/L
炭酸ナトリウム :3g/L。
【0068】
さらに試料No.1~試料No.6の改質絹繊維から10cm×10cmのハンカチーフを模した他の繊維製品をそれぞれ製造し、当該繊維製品に対して後述する処理方法により、黒色染料(商品名:「KP ZOL Black 486L」、紀和化学株式会社製)を用いた染色試験を行った。
【0069】
具体的には、下記配合の黒色染色液Bに試料No.1~試料No.6の改質絹繊維を浸漬し、これを70℃で60分間撹拌することによって染色処理を行った。次いで染色処理後の各試料に対し、ノニオン活性剤(ECB-50;大日精化工業株式会社製)を1g/L含む洗浄液に浸漬し、さらに100℃で10分間撹拌洗浄した。その後、温水による洗浄、水による洗浄の順に洗浄処理した後、乾燥させた。
【0070】
[黒色染色液B]
KP ZOL Black 486L :30%owf
浸透剤:タスポンSN-1 :1g/L
無水硫酸ナトリウム :70g/L
炭酸ナトリウム :7g/L。
【0071】
その結果、試料No.3~試料No.6の改質絹繊維は、試料No.1~試料No.2の改質絹繊維に比べ、風合い良くかつ鮮やかに染色されることが分かった。したがって試料No.3~試料No.6の改質絹繊維については、優れた形状記憶効果に加え、良好な染色性を備えることが分かった。
【0072】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、各実施の形態および実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0073】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態および実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0074】
1 試料No.1の改質絹繊維から形成された綛、2 試料No.2の改質絹繊維から形成された綛、3 試料No.3の改質絹繊維から形成された綛、4 試料No.4の改質絹繊維から形成された綛、5 試料No.5の改質絹繊維から形成された綛、6 試料No.6の改質絹繊維から形成された綛、11 試料No.11の絹繊維から形成された綛、12 試料No.12の絹繊維から形成された綛、13 試料No.13の絹繊維から形成された綛、14 試料No.14の絹繊維から形成された綛。
図1