(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】力変換器
(51)【国際特許分類】
G01L 5/1627 20200101AFI20240814BHJP
【FI】
G01L5/1627
(21)【出願番号】P 2020122699
(22)【出願日】2020-07-17
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 璋好
(72)【発明者】
【氏名】名原 優
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭46-010637(JP,B1)
【文献】特開平08-062061(JP,A)
【文献】特開昭60-247120(JP,A)
【文献】特開昭49-086062(JP,A)
【文献】米国特許第05850044(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/22
G01L 5/1627
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
力点部と、支持部と、起歪部と、感歪抵抗体と、ホイートストンブリッジ回路と、を備える力変換器であって、
前記力点部には力が加えられ、
前記支持部は前記力を受けて支持し、
前記起歪部は柱形状で、前記力点部及び前記支持部の中間で弾性変形し、前記力によって曲げモーメントによる歪みを生じ、
前記ホイートストンブリッジ回路は前記感歪抵抗体を含んで前記力を電気信号に変換し、
前記感歪抵抗体は、
前記感歪抵抗体の折り返しパターンを平面視した時、前記力の方向に平行な仮想線と、前記感歪抵抗体の最大感度方向と、のなす角度が前記起歪部のポアソン比から定められる角度で前記起歪部に添着されている力変換器。
【請求項2】
力点部と、支持部と、起歪部と、感歪抵抗体と、ホイートストンブリッジ回路と、を備える力変換器であって、
前記力点部には力が加えられ、
前記支持部は前記力を受けて支持し、
前記起歪部は柱形状で、前記力点部及び前記支持部の中間で弾性変形し、前記力によって曲げモーメントによる歪みを生じ、
前記ホイートストンブリッジ回路は前記感歪抵抗体を含んで前記力を電気信号に変換し、
前記感歪抵抗体は、
前記感歪抵抗体の折り返しパターンを平面視した時、前記力の方向に平行な仮想線と、前記感歪抵抗体の最大感度方向と、のなす角度が前記起歪部のポアソン比の平方根の逆正接にて定められる角度で添着されている力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力を測定して電気信号に変換する力変換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、力変換器の例として、印加された力を3次元方向XYZにて検出する3分力変換器が公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような力変換器は、例えば
図10に示すように、力点部51に力Fxが印加されると、起歪部4に歪みが生じ、起歪部4の薄肉部の凹部4b内に添着された複数の感歪抵抗体G1~G4が、剪断歪みを検出する構成を有していた。すなわち、感歪抵抗体G1の最大感度方向が起歪部の中心軸AXに対してプラス45度の角度のp方向、感歪抵抗体G2の最大感度方向が起歪部の中心軸AXに対してマイナス45度の角度のq方向、となるように添着されているのが一般的である。しかしながら、測定対象の形状等によって力点部51がz方向に短い力点部52に変更されて力変換器1が使用される場合がある。すなわちこの力変換器1の使用者は力点部と支持部との距離を変更している。この時、力Fxの印加によって感歪抵抗体G1,G2は、起歪部4に発生するせん断歪みを検出するのであるが、感歪抵抗体の位置ずれ等による影響で曲げモーメントの成分を同時に検出することが生じていた。
【0005】
したがって、感歪抵抗体G1、G2から力点部51までの長さと、感歪抵抗体G1、G2から力点部52までの長さとの違いによって曲げモーメントが異なるため検出する力に差が生じてしまうという課題があった。これを解決する方法として、例えば特許文献1の発明が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明では、起歪部には
図10で示すZ方向に感歪抵抗体を並べて配置する必要があってそのスペースを確保する必要があるため、非常に小型化を要求される力変換器への適用は難しいという課題があった。
【0007】
このような問題に鑑みて、本発明は、力が加わる位置の影響を低減した小型の力変換器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
力点部と、支持部と、起歪部と、感歪抵抗体と、ホイートストンブリッジ回路と、を備える力変換器であって、
力点部には力が加えられ、
支持部は力を受けて支持し、
起歪部は柱形状で、力点部及び支持部の中間で弾性変形し、力によって曲げモーメントによる歪みを生じ、
ホイートストンブリッジ回路は感歪抵抗体を含んで力を電気信号に変換し、
感歪抵抗体は、
感歪抵抗体の折り返しパターンを平面視した時、力の方向に平行な仮想線と、感歪抵抗体の最大感度方向と、のなす角度が起歪部のポアソン比から定められる角度で起歪部に添着されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、起歪部に発生する曲げモーメントによる影響をキャンセルさせる感歪抵抗体の最大感度方向と配置により、力の加わる位置の影響を低減した小型の力変換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る力変換器の斜視外観図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る力変換器の斜視分解図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部及び力点部の図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部の変形の概念摸式図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部及び力点部の図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部及び力点部の図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部及び力点部の図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部及び力点部の断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る力変換器の感歪抵抗体を含むホイートストンブリッジ回路を含む回路図である。
【
図10】従来の力変換器の起歪部及び力点部の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る力変換器について、図面を基に詳細な説明を行う。
図1は本発明の実施形態に係る力変換器1の斜視外観図である。
図2は本発明の実施形態に係る力変換器1の斜視分解図である。
【0012】
力変換器1は、ハウジング3と、起歪部4と、取り付け板6、力点部50とを備えている。ハウジング3は、固定構造部材などのベース2にボルト7で固定され、起歪部4を覆って外部環境から保護している。起歪部4は、柱形状であって、剛性が高くて容易に変形しないフランジ4a及びフランジ4fとの中間にあり、これらフランジよりも剛性が低く、力が加わることで弾性変形する薄肉部の凹部4b~4eを有している。本実施形態ではこれらフランジ間の起歪部4の形状は直方体であるがこれに限るものではなく、円柱形状であってもよい。またフランジ4aは本実施形態では丸型フランジであるが角型フランジであっても良く、一方フランジ4fも本実施形態では角型フランジであるが丸型フランジであっても良い。本実施形態ではフランジ4a、起歪部4、フランジ4fは一体で構成されているがこれに限るものではない。そしてフランジ4aは、固定構造部材に固定されているハウジング3とボルト8にて締結されていて、ハウジング3と共に起歪部4等を支持する支持部である。
【0013】
取り付け板6は例えば角型の平板形状であって、フランジ4fとボルト9にて締結されている。取り付け板6の中央部には力点部51、52が取り付けられている。
【0014】
力点部51、52は、円柱形状の部材の一端部に一部が球状の部分を有している。力点部51、52は、他端部に取り付け板6と締結される、圧入部若しくはネジ部を有する。力点部51、52は、この球状の部分にて点接触で力を受ける。そして力点部51、52は測定対象の力を受けて容易に変形しないものである。なお力点部51、52と取り付け板6とは、この形状に限るものではなく、また一体の部材で構成されても良い。また力変換器1の使用者は、力点部51、52の一部が球状の部分の形状はこれに限らず、被測定物に合わせた最適な形状を選択して使用することができる。そして力変換器1の使用者は、力点部と取り付け板6とを一体化したもの、若しくは力点部を交換することで、測定対象に合わせた力変換器を構成することができる。
【0015】
起歪部4を構成する凹部4b~4eには、感歪抵抗体が添着されている。したがって力点部50が受ける力のx方向及びy方向の成分をそれぞれ感歪抵抗体が歪み量として検出する。したがって力変換器1は力点部50に加わる力を電気信号に変換することができる。
【0016】
また本実施形態では、感歪抵抗体は凹部の底面に添着されているがこれに限定されるものではなく、検出する力の大きさによっては起歪部4には凹部がなくて起歪部4の柱側面に配置されているなどの変形であっても良い。
【0017】
図3(i)は本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部4及び力点部51を
図2のy軸の負の方向(
図2の平面視)にて見た模式図であって、
図3(ii)は本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部4及び力点部52を同じy軸の負の方向にて見た模式図である。
図3(i)及び
図3(ii)において、感歪抵抗体Gxa及び感歪抵抗体Gxbはこれらの大きさを誇張して表している。この感歪抵抗体を誇張した表記方法は
図5~
図7、
図10においても同様である。
【0018】
図3(i)及び
図3(ii)における構成の相違点は力点部51及び力点部52のz方向の長さである。力点部51及び力点部52のどちらもx軸で負の方向に力Fxを受けている。起歪部4はフランジ4aにてハウジング3を介してベース2に固定されていることから、起歪部4には、
図3(i)においては曲げモーメントMx1、
図3(ii)においては曲げモーメントMx2が生じる。
【0019】
ここでまず従来の力変換器について説明する。
図10(i)、
図10(ii)は従来の力変換器であって、フランジ4a寄りに設けられた凹部4bの底面に感歪抵抗体G1、G2がz方向に並んで添着されている。そして例えば感歪抵抗体G1は凹部4bのz方向の中心より左側で、最大感度方向が中心軸AXに対してプラス45度のp方向になるように配置されている。一方感歪抵抗体G2は凹部4bのz方向の中心より右側で、最大感度方向が中心軸AXに対してマイナス45度のq方向になるように配置されている。この感歪抵抗体G1、G2の配置は起歪部4に生ずる歪みを検出する通常の手法であって、力点部が力Fxを受けると感歪抵抗体G1はせん断応力による圧縮歪みを検出し、感歪抵抗体G2はせん断応力による引張歪みを検出して、力変換器1はこれらをもとに力Fxを演算して出力する。
【0020】
もし力変換器1の使用者が、
図10(i)に示す力点部51を
図10(ii)に示す力点部52に変更しても、同じ大きさの力Fxが加わっている場合には、力変換器1が検出する力は同じものになるはずである。しかしながらこの感歪抵抗体G1、G2の従来の配置では力変換器は同じ力の値を出力しない現象が起きていた。これは起歪部4に生ずる曲げモーメントMx1、Mx2よる歪みの成分を、この感歪抵抗体G1、G2が検出していることが原因であると発明者は見出した。通常では、z方向に平行な中立面(線)に感歪抵抗体G1、G2の中心を合わせて配置されることで、この曲げモーメントの影響が排除される。しかし起歪部の加工精度、感歪抵抗体の感度分布、感歪抵抗体の位置ずれ等によってこの曲げモーメントの影響を完全に排除することは難しい。従来一般的には感歪抵抗体の添着し直しや起歪部の一部を除去加工するなどの試行錯誤を行っていたが、様々な距離の力点部に対応することは困難であった。
【0021】
この従来の感歪抵抗体の配置に対して、本発明では
図3(i)及び
図3(ii)に示すように、フランジ4a寄りに設けられた凹部4bの底面に感歪抵抗体Gxaと感歪抵抗体Gxbとが検出したい力Fxの方向であるx方向に直列で配置されている。そして感歪抵抗体Gxaはq方向に最大感度を有して起歪部4に添着される。一方感歪抵抗体Gxbはp方向に最大感度を有して起歪部4に添着される。このp方向及びq方向の角度についての詳細は後述する。
【0022】
ここで力点部51、力点部52いずれにおいても、同じ大きさの力Fxが加わっている場合に、同じ力を検出することができる理由について
図4(i)~
図4(vi)を用いて説明する。
図4(i)は起歪部4の変形を概念的に示したものである。力の印加が無い場合には点O、点U、点H、点Iを角に有する一点鎖線で表された正方形の仮想領域を元とし、力の印加によって生じるせん断応力τによる変形状態を誇張して模式的に示している。すなわち点Oに対向する点Uは、せん断応力τによって点Vのように変形する。この線分OUと中心軸AXとのなす角が45度にてせん断の引張歪みが最大になるため、線分OUの方向が最大感度となるように、感歪抵抗体(G2、
図10(i)参照)が起歪部4に添着されるのが従前よく知られた方法である。
【0023】
しかしながら一方
図4(ii)に示すように、本実施形態の起歪部4では曲げモーメントも発生してその引張応力Tによって、頂点Uは頂点Wのように変形する。したがって従来の感歪抵抗体の最大感度の向きではこの曲げモーメントによる起歪部4の歪み成分も混じって検出されることになる。
【0024】
そこで本実施形態では、
図4(iii)、
図4(iv)において、曲げモーメントの引張によって変形する線分JW上にある点Qと点Oを結んだ仮想線分OQの長さL1と、線分HU上にある点Pと点Oを結んだ仮想線分OPの長さL2とが等しくなる角度θに感歪抵抗体の最大感度方向が向くように感歪抵抗体を配置している。すなわち長さL1=長さL2であれば、感歪抵抗体の歪みの量は同じであるから、この曲げモーメントによる引張の伸びの影響を受けないようにできる。角度θは以下のようにして求めることができる。
【0025】
長さzは角度θを定める未知の長さである。長さaは力の印加前の定めた仮想領域の長さである。νは起歪部4のポアソン比、kは図の縦方向(ここではx軸方向)の伸び率である。
【0026】
仮想線分OQの長さL1は次式で表される。
【数1】
【0027】
一方仮想線分OPの長さL2は次式で表される。
【数2】
【0028】
次いで(L1)
2=(L2)
2となるzを求める。
【数3】
【0029】
【0030】
tanθ=z/a であることから、θは次式で表される。
【数5】
【0031】
ここで、例えば伸び率kは非常に微小なのでk→0とすると、次式で表される。
【数6】
【0032】
ゆえに起歪部4のポアソン比ν=0.3とすると、θ=28.7度となる。なおこの時感歪抵抗体が検出できるせん断の歪みはモール円においてτsin2θ分であるので、実際のせん断歪みのおおよそ78.5%が検出されるため、制御部13にて検出値にこの逆数を乗算して演算することで本来の力の値を得れば良い。
【0033】
図4(v)と
図4(vi)は、それぞれ
図4(iii)と
図4(iv)に対応した感歪抵抗体Gxa、Gxbの配置の一例を示している。なお感歪抵抗体Gxa、Gxbは独立していても良いし、一体の基材でパターニングされたものであっても良い。
【0034】
図5(i)は本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部4及び力点部51の模式図であって、
図3(i)の模式図の反対方向すなわちy軸の正の方向にて見た図である。
図5(ii)は本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部4及び力点部52の模式図であって、
図3(ii)の模式図の反対方向すなわちy軸の正の方向にて見た図である。すなわち
図5(i)及び
図5(ii)は、
図3(i)及び
図3(ii)の裏側をそれぞれ示したものである。したがってp方向、q方向は、
図5(i)及び
図5(ii)では
図3(i)及び
図3(ii)の逆向きとなって表されている。感歪抵抗体Gxcと感歪抵抗体Gxdが、フランジ4a寄りに設けられた凹部4cの底面にx方向に並んで直列に配置されている。そして凹部4cは凹部4bと背中合わせに設けられている。
【0035】
感歪抵抗体Gxcは、q方向に最大感度を有して起歪部4に添着される。一方感歪抵抗体Gxdは、p方向に最大感度を有して起歪部4に添着される。
【0036】
力点部51、力点部52いずれにおいても、同じ大きさの力Fxが加わっている場合に、同じ力を検出することができる理由は
図4(i)~
図4(vi)を用いて説明した通りである。
【0037】
図6(i)は本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部4及び力点部51を
図2のx軸の正の方向にて見た模式図であって、
図6(ii)は本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部4及び力点部52を同じx軸の正の方向にて見た模式図である。
図6(i)及び
図6(ii)において、力点部51及び力点部52はどちらもy軸で
負の方向に力Fyを受けている。起歪部4はフランジ4aにてハウジング3を介してベース2に固定されていることから、起歪部4には、
図6(i)においては曲げモーメントMy1、
図6(ii)においては曲げモーメントMy2が生じる。
【0038】
図6(i)及び
図6(ii)に示すように、フランジ4f寄りに設けられた凹部4dの底面に感歪抵抗体Gyaと感歪抵抗体Gybがy方向に並んで配置されている。感歪抵抗体Gyaは、r方向に最大感度を有して起歪部4に添着される。一方感歪抵抗体Gybは、s方向に最大感度を有して起歪部4に添着される。
【0039】
図7(i)は本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部4及び力点部51を
図2のx軸の負の方向にて見た模式図であって、
図7(ii)は本発明の実施形態に係る力変換器の起歪部4及び力点部52を同じx軸の負の方向にて見た模式図である。すなわち
図7(i)及び
図7(ii)は、
図6(i)及び
図6(ii)の裏側をそれぞれ示したものである。したがってr方向、s方向は、
図7(i)及び
図7(ii)では
図6(i)及び
図6(ii)の逆向きとなって表されている。フランジ4f寄りに設けられた凹部4eの底面に感歪抵抗体Gycと感歪抵抗体Gydがy方向に並んで直列に配置されている。そして凹部4eは凹部4dと背中合わせに設けられている。
【0040】
感歪抵抗体Gycは、r方向に最大感度を有して起歪部4に添着される。一方感歪抵抗体Gydは、s方向に最大感度を有して起歪部4に添着される。
【0041】
もちろん力点部51、力点部52いずれにおいても、同じ大きさの力Fxが加わっている場合に、同じ力を検出することができる理由は
図4(i)~
図4(vi)において説明した通りである。
【0042】
図8(i)は本発明の実施形態に係る力変換器の断面図である。
図8(i)は、
図2において中心軸AXを通るyz平面で力変換器1を切断した図である。
図8(ii)は本発明の実施形態に係る力変換器の断面図である。
図8(ii)は、
図2において中心軸AXを通るxz平面で力変換器1を切断した図である。
【0043】
起歪部4とフランジ4fの中間に鍔4gが設けられていて、鍔4gにはOリング10が嵌め込まれている。Oリング10は起歪部4とハウジング3との気密を保って、感歪抵抗体Gxa~Gxd、Gya~Gydを外部環境から保護している。またハウジング3には穴3aが設けられて、例えば感歪抵抗体Gxa~Gxd、Gya~Gydからの配線を外部に引き出す密閉型のコネクタが穴3aに配置される。
【0044】
起歪部4にフランジ4a寄りにて設けられた凹部4bと凹部4cは背中合わせで、凹部4bの底面には感歪抵抗体GxaとGxbが、凹部4cの底面には感歪抵抗体GxcとGxdが、それぞれ添着されている。起歪部4にフランジ4f寄りにて設けられた凹部4dと凹部4eは背中合わせで、凹部4dの底面には感歪抵抗体GyaとGybが、凹部4eの底面には感歪抵抗体GycとGydが、それぞれ添着されている。
【0045】
図9は本発明の実施形態に係る力変換器の感歪抵抗体を含むホイートストンブリッジ回路を有する回路図である。ホイートストンブリッジ回路は、電源E、増幅器11a、11b、A/D変換器12a、12b、制御部13、表示器14を有している。
【0046】
電源Eは感歪抵抗体Gxa~Gxd、Gya~Gydへ給電するものである。増幅器11aはホイートストンブリッジ回路からの結合端子Tx2及びTx4から出力された信号を増幅する。増幅器11bはホイートストンブリッジからの結合端子Ty2及びTy4から出力された信号を増幅する。A/D変換器12a、12bは、アナログ信号をデジタル信号に変換する変換器であって、増幅器11a及び増幅器11bにて増幅されたアナログ信号をそれぞれデジタル信号に変換する。制御部13は中央演算処理装置CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、その他の記憶装置及び入出力装置を含んでいる。制御部13は、A/D変換器12a、12bから出力されたデジタル信号を基に演算して、その結果を表示器14に表示させる。
【0047】
次いでホイートストンブリッジ回路での各感歪抵抗体の配置について説明する。感歪抵抗体Gxa~Gxdを含むホイートストンブリッジ回路は、感歪抵抗体Gxdと感歪抵抗体Gxaが隣り合う辺にあって、その結合端子Tx1が電源Eに接続されている。そして感歪抵抗体Gxbと感歪抵抗体Gxcが隣り合う辺にあって、その結合端子Tx3が電源Eに接続されている。さらに感歪抵抗体Gxaと感歪抵抗体Gxcとが、感歪抵抗体Gxbと感歪抵抗体Gxdとが、それぞれ向かい合う辺にある。そして感歪抵抗体Gxaと感歪抵抗体Gxbとの結合端子Tx2と、感歪抵抗体Gxcと感歪抵抗体Gxdとの結合端子Tx4と、がホイートストンブリッジ回路の出力となる。
【0048】
感歪抵抗体Gya~Gydを含むホイートストンブリッジ回路も同様に、感歪抵抗体Gydと感歪抵抗体Gyaが隣り合う辺にあって、その結合端子Ty1が電源Eに接続されている。そして感歪抵抗体Gybと感歪抵抗体Gycが隣り合う辺にあって、その結合端子Ty3が電源Eに接続されている。さらに感歪抵抗体Gyaと感歪抵抗体Gycとが、感歪抵抗体Gybと感歪抵抗体Gydとが、それぞれ向かい合う辺にある。そして感歪抵抗体Gyaと感歪抵抗体Gybとの結合端子Ty2と、感歪抵抗体Gycと感歪抵抗体Gydとの結合端子Ty4と、がホイートストンブリッジ回路の出力となる。
【0049】
この構成で、
図3(i)、
図3(ii)、
図5(i)、
図5(ii)に示すような力Fxが力点部51、52に加わると、感歪抵抗体Gxaはせん断応力では引張側となる。そして感歪抵抗体Gxbはせん断応力では圧縮側となる。一方で、感歪抵抗体Gxcはせん断応力では引張側となる。そして感歪抵抗体Gxdはせん断応力では圧縮側となる。
【0050】
感歪抵抗体Gya~Gydを含むホイートストンブリッジ回路も同様である。すなわち
図6(i)、
図6(ii)、
図7(i)、
図7(ii)に示すような力Fyが力点部51、52に加わると、感歪抵抗体Gyaはせん断応力では引張側となる。そして感歪抵抗体Gybはせん断応力では圧縮側となる。一方で、感歪抵抗体Gycはせん断応力では引張側となる。そして感歪抵抗体Gydはせん断応力では圧縮側となる。
【0051】
本実施形態では、各ホイートストンブリッジ回路に4つのアクティブな感歪抵抗体を設けたもので示したが、2つのアクティブな感歪抵抗体で構成しても良い。例えば
図9において、感歪抵抗体Gxaと感歪抵抗体Gxbだけがアクティブな感歪抵抗体であって、他の辺の感歪抵抗体Gxcと感歪抵抗体Gxdが固定の抵抗体であっても良い。本発明ではホイートストンブリッジ回路の各辺で曲げモーメントの影響をキャンセルしているためである。
【0052】
以上、本発明を好ましい実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の活用例として、多分力計など力を測定する装置への適用が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 :力変換器
2 :ベース
3 :ハウジング(支持部)
3a :穴
4 :起歪部
4a :フランジ
4b,4c,4d,4e :凹部
4f :フランジ
4g :鍔
6 :取り付け板
7 :ボルト
8 :ボルト
9 :ボルト
10 :Oリング
11a、11b :増幅器
12a、12b :A/D変換器
13 :制御部
14 :表示器
50、51、52 :力点部
Gxa、Gxb、Gxc、Gxd :感歪抵抗体
Gya、Gyb、Gyc、Gyd :感歪抵抗体