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特許7537746ヌクレオチド組成が限定されたプライマーを用いたデジタル増幅
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ヌクレオチド組成が限定されたプライマーを用いたデジタル増幅
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6844 20180101AFI20240814BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20240814BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240814BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20240814BHJP
   C12Q 1/6883 20180101ALN20240814BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6883 Z
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020509067
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 US2018046360
(87)【国際公開番号】W WO2019033065
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】62/544,605
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520051137
【氏名又は名称】アティラ バイオシステムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ATILA BIOSYSTEMS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】4236 Darlington Court Palo Alto, California 94306 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ユウシャン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ツージー
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ, ユウ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ロン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/092473(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/046183(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/172632(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00 - 1/70
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的核酸を含むサンプルをアリコートに分割する工程と、
前記アリコートに増幅反応を実行する工程と、
各アリコートにおいて増幅されたセグメントを、存在する場合、検出する工程と、を含み、
前記標的核酸に対する増幅されたセグメントは、前記標的核酸が上記アリコートに存在する場合、前記標的核酸に対する一対の順方向及び逆方向プライマーの伸長により形成され、
前記プライマーは、4つの標準ヌクレオチドタイプの1つが非主流のものであり、
前記非主流ヌクレオチドタイプは、前記プライマー間において同じである、
前記非主流ヌクレオチドタイプは、前記順方向及び逆方向プライマーの各々で0、1、2又は3箇所存在、その3箇所のうち、2つは内部に存在し、1つは5'末端位置にあり、
前記順方向の3'末端位置及び逆方向プライマーの3'末端位置は、非主流ヌクレオチドタイプの相補体によって占められる、
サンプル中の標的核酸に対してデジタル増幅を実行する方法。
【請求項2】
前記標的核酸のコピー数は、前記増幅されたセグメントを含む又は欠いているアリコートの数により決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
標的核酸を含むサンプルをアリコートに分割する工程と、
前記アリコートに増幅反応を実行する工程と、を含み、
前記標的核酸に対する増幅されたセグメントは、前記標的核酸が上記アリコートに存在する場合、前記標的核酸に対する一対の順方向及び逆方向プライマーの伸長により形成され、
前記順方向及び逆方向プライマーは、4つの標準ヌクレオチドタイプの1つが非主流のものであり、
前記非主流ヌクレオチドタイプは、前記プライマー間において同じである、
前記非主流ヌクレオチドタイプは、前記順方向及び逆方向プライマーの各々で0、1、2又は3箇所存在、その3箇所のうち、2つは内部に存在し、1つは5'末端位置にあり、
前記サンプルは、複数の前記標的核酸を含み、
前記増幅は、それぞれの標的に対応する複数の順方向及び逆方向プライマー対を用いて実行され、それぞれは、同じ標準ヌクレオチドタイプが非主流である、
サンプル中の標的核酸に対してデジタル増幅を実行する方法。
【請求項4】
前記標的核酸は、DNA、RNA、cDNA、無細胞DNA、無細胞胎児DNA又は循環腫瘍DNAである、
及び/又は
前記サンプルは、組織又は体液である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記アリコートの前記増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応又は等温増幅反応である、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記標的核酸は、標的核酸を含んでいるサンプルをアリコートに分割する前又は後に、前増幅される、
又は
前記標的核酸は、化学物質、タンパク質又は酵素で処理される、
又は
前記標的核酸は、前記標的核酸のメチル化状態を決定するために、重亜硫酸塩で処理される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記検出する工程は、所定の遺伝子異常が前記標的核酸に存在するか否かを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記所定の遺伝子異常は、染色体異数性、一塩基多型(SNP)、挿入又は欠失である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記染色体異数性は、トリソミー21、トリソミー18、トリソミー13、トリプルX又はモノソミーXである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
染色体異数性は、一方は異数性に属し他方はそうではない2つの染色体上の標的核酸のコピー数の比率に基づいて決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、21番染色体由来の標的核酸、18番染色体由来の標的核酸及び13番染色体由来の標的核酸を含む複数の標的核酸に実行され、
前記検出する工程は、前記標的核酸の1つが前記異数性を含むことを示す、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルは、妊娠女性由来の無細胞核酸サンプルであり、
前記標的核酸は、胎児核酸である、請求項1から1のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記胎児核酸は、Y染色体のセグメントである、又はY染色体にエンコードされている、
又は
前記胎児核酸は、対応する母性核酸と比較して区別可能にメチル化されている、
又は
前記方法は、前記胎児核酸及び対応する母性標的核酸を含む複数の標的核酸を用いて実行される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記方法は、溶解された血球が放出するゲノム標的及び無細胞標的核酸を含む複数の標的核酸を用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記デジタル増幅は、液滴デジタルPCR(ddPCR)である、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記増幅されたセグメントは、蛍光体標識オリゴヌクレオチドプローブ若しくは融解曲線分析により又はインターカレーティング染料で検出される、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、複数の標的核酸に対して実行され、
前記複数の標的核酸のアンプリコンシグナル強度は、
アンプリコンサイズ及び/又はプライマー濃度の差異に起因して識別可能である、
又は、
DNAインターカレーティング染料及び蛍光体標識オリゴヌクレオチドプローブを使用して検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
標的核酸を含むサンプルをアリコートに分割する工程と、
前記アリコートに増幅反応を実行する工程と、を含み、
前記標的核酸に対する増幅されたセグメントは、前記標的核酸が上記アリコートに存在する場合、前記標的核酸に対する一対の順方向及び逆方向プライマーの伸長により形成され、
前記順方向及び逆方向プライマーは、4つの標準ヌクレオチドタイプの1つが非主流のものであり、
前記非主流ヌクレオチドタイプは、前記プライマー間において同じである、
前記非主流ヌクレオチドタイプは、前記順方向及び逆方向プライマーの各々で0、1、2又は3箇所存在、その3箇所のうち、2つは内部に存在し、1つは5'末端位置にあり、
前記順方向プライマー及び/又は逆方向プライマーは、その5'末端において、前記ヌクレオチドタイプでは非主流の人工配列に連結している、
サンプル中の標的核酸に対してデジタル増幅を実行する方法。
【請求項19】
前記デジタル増幅を実行する前に前記標的核酸を断片化する工程を更に有する、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記非主流ヌクレオチドタイプは、プライマーの1つの前記5'末端位置に存在する、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記非主流標準ヌクレオチドタイプは、前記プライマーの全ての前記5'末端位置に存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記非主流ヌクレオチドタイプは、前記順方向及び逆方向プライマーの少なくとも1つにおける1又は2箇所の内部位置で存在する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についてのクロスリファレンス
本願は、2017年8月11日に出願した米国第62/544,605号の利益を請求し、全ての目的のために完全に引用したものとする。
【0002】
配列表
本願は、2018年8月10日に作成された4キロバイトの517594WOSLと表示するtxtの配列を含み、それは引用したものとする。
【背景技術】
【0003】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、酵素DNAポリメラーゼを用いて核酸分子を増幅することによって、核酸を定量するために用いる。従来型のPCRは、増幅が指数関数的であるという理論に基づいている。従って、核酸は、増幅サイクルの数及びPCR最終産物の量を参照サンプルのそれらと比較することによって定量できる。
【0004】
デジタルPCR(又は、dPCR)は、サンプル中の個々の核酸分子を多くの別々の領域(例えばマイクロウェルプレート、毛細管、オイル乳濁液及び小型化チャンバーのアレイ)の中に分けて濃縮されるように、サンプルを分割するPCRのバリエーションである。各領域は、個々のPCRに対応する。PCR溶液は、より小さい反応に分けて、個々にPCRを実行する。マルチプルPCR増幅を繰り返した後、サンプルは、「0」又は「1」の2値の読み取り値で蛍光をチェックする。蛍光を発しているサンプルの数は、初期サンプルの標的分子の数を示す。dPCRへの関心が高まっているが、予想される2値の読み取り値の中間値となる予想外の増幅産物に起因して、結果の解釈が複雑になる場合がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、
標的核酸を含むサンプルをアリコートに分割する工程と、
上記アリコートに増幅反応を実行する工程と、
各アリコートにおいて増幅されたセグメントを、存在する場合、検出する工程と、を含み、
上記標的核酸に対する増幅されたセグメントは、上記標的核酸が上記アリコートに存在する場合、上記標的核酸に対する一対の順方向及び逆方向プライマーの伸長により形成され、
上記プライマーは、4つの標準ヌクレオチドタイプの1又は複数が非主流のものであり、
非主流ヌクレオチドタイプは、上記プライマー間において同じである、
サンプル中の標的核酸に対してデジタル増幅を実行する方法を提供する。
任意に、増幅されたセグメントは、順方向及び/又は逆方向プライマーの伸長により形成される主要な増幅産物である。
【0006】
任意に、標的核酸のコピー数は、例えば、ポアソン分布に従って、増幅されたセグメントを含む又は欠いているアリコートの数により決定される。任意に、サンプルは、複数の標的核酸を含み、増幅は、それぞれの標的に対応する複数の順方向及び逆方向プライマー対を用いて実行される。
【0007】
任意に、サンプルは、複数の標的核酸を含み、増幅は、それぞれの標的に対応する複数の順方向及び逆方向プライマー対を用いて実行され、それぞれは、同じ標準ヌクレオチドタイプが非主流であり、任意に、上記複数は、それぞれ、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10である。任意に、プライマー対の各々は、同じ唯一の標準ヌクレオチドタイプにおいて非主流である。
【0008】
任意に、標的核酸は、互いに異なる染色体又は同じ染色体由来である。任意に、標的核酸は、DNA、RNA、cDNA、無細胞DNA、無細胞胎児DNA又は循環腫瘍DNAである。任意に、サンプルは、組織又は体液である。任意に、アリコートの増幅反応は、ポリメラーゼ連鎖反応である。任意に、アリコートの増幅反応は、等温増幅反応である。任意に、アリコートの増幅反応は、等温及びポリメラーゼ連鎖反応の組み合わせである。
【0009】
ある方法において、標的核酸は、標的核酸を含んでいるサンプルをアリコートに分割する前又は後に、前増幅される。ある方法において、標的核酸は、標的核酸を含んでいるサンプルをアリコートに分割する前又は後に、化学物質、タンパク質又は酵素で処理される。ある方法において、標的核酸は、標的核酸のメチル化状態を決定するために、重亜硫酸塩で処理される。
【0010】
任意に、検出する工程は、所定の遺伝子異常が標的核酸に存在するか否かを示す。任意に、所定の遺伝子異常は、染色体異数性、一塩基多型(SNP)、挿入又は欠失である。任意に、染色体異数性は、トリソミー21、トリソミー18、トリソミー13、トリプルX又はモノソミーXである。任意に、染色体異数性は、2つの染色体上の標的核酸のコピー数の比率に基づいて決定される。
【0011】
任意に、染色体異数性は、一方は異数性に属し他方はそうではない2つの染色体上の標的核酸のコピー数の比率に基づいて決定される。任意に、上記方法は、21番染色体由来の標的核酸、18番染色体由来の標的核酸及び13番染色体由来の標的核酸を含む複数の標的核酸に実行され、検出する工程は、標的核酸の1つが異数性を含むことを示す。任意に、上記方法は、集団由来のサンプルに対して実行され、上記方法は、染色体異数性を含むサンプル、異数性を含まない染色体及び断定できないサンプルを同定し、上記方法は、デジタル増幅分析によって断定できないと判断されたサンプルが染色体異数性を有するか否かを決定するために、前記断定できないサンプル由来のDNAの配列決定を行う工程を含む。任意に、配列決定を行う工程は、次世代技術によるものである。任意に、サンプルは、無細胞核酸サンプルである。任意に、標的核及び妊娠女性由来の無細胞核酸サンプルは、胎児核酸である。任意に、胎児核酸は、Y染色体のセグメントである、又はY染色体にエンコードされている。任意に、胎児核酸は、対応する母性核酸と比較して区別可能にメチル化されている。任意に、上記方法は、胎児核酸標的及び対応する母性標的核酸標的を含む複数の標的核酸を用いて実行される。任意に、上記方法は、溶解された血球が放出するゲノム標的及び無細胞核酸標的を含む複数の標的核酸を用いて実行される。
【0012】
任意に、標的核酸は、一塩基多型(SNP)、挿入又は欠失のサイトを含む。任意に、デジタルPCRは、液滴デジタルPCR(ddPCR)である。任意に、増幅されたセグメントは、インターカレーティング染料で検出される。任意に、DNAインターカレーティング染料は、EVAGreen(登録商標)である。任意に、増幅されたセグメントは、蛍光体標識オリゴヌクレオチドプローブにより検出される。任意に、蛍光体標識オリゴヌクレオチドプローブは、Taqmanプローブ、Molecular Beaconプローブ又はying yangプローブである。任意に、蛍光体は、FAM又はHEXである。任意に、複数の標的核酸は、単一液滴反応において、検出される。任意に、複数の標的は、アンプリコンシグナル強度に基づいて検出される。任意に、複数の標的核酸のアンプリコンシグナル強度は、アンプリコンサイズ及び/又はプライマー濃度の差異に起因して識別可能である。任意に、増幅されたセグメントは、DNAインターカレーティング染料及び蛍光体標識オリゴヌクレオチドプローブを使用して検出される。任意に、2つの標的核酸は、同じ隣接核酸の構成要素である。任意に、順方向プライマー及び/又は逆方向プライマーは、その5'末端において、ヌクレオチドが非主流である人工配列に連結している。任意に、多重標的核酸は、プライマー対に連結したヌクレオチドが非主流である同一又は異なる人工配列により増幅される。任意に、増幅されたセグメントは、融解曲線分析により検出される。
【0013】
ある方法において、順方向及び逆方向プライマーは、4つの標準ヌクレオチドタイプの1つだけが非主流である。ある方法において、順方向及び逆方向プライマーは、非主流ヌクレオチドタイプのうちの2つのヌクレオチドだけを含む。ある方法において、順方向及び逆方向プライマーに関するプライマー結合サイトは、順方向及び逆方向プライマーにおいて非主流であるヌクレオチドタイプの相補体において非主流であるプライマー結合サイトに関する標的核酸を検索することにより同定される。ある方法において、増幅されたセグメントは、順方向及び/又は逆方向プライマーの伸長により形成される主要な増幅産物である。
【0014】
ある方法において、プライマーは、唯一の非主流標準ヌクレオチドタイプを有し、非主流標準ヌクレオチドタイプの相補体は、プライマーのうちの少なくとも1つの3'末端位置に存在する。ある方法において、非主流標準ヌクレオチドタイプの相補体は、プライマーの各々の3'末端位置に存在する。ある方法において、プライマーは、唯一の非主流標準ヌクレオチドタイプを有し、非主流ヌクレオチドタイプは、プライマーの1つの5'末端位置に存在する。ある方法において、非主流標準ヌクレオチドタイプは、プライマーの全ての5'末端位置に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、標的核酸、例示的な3つのヌクレオチドプライマー及びプライマー結合サイトを示す。図の上側の部分は、逆方向プライマー結合サイト(ATGサイト)に隣接する順方向プライマー結合サイト(ATCヌクレオチド)の相補体を含む標的核酸の1つのストランドを示す。下側の部分は、反対のストランドのそれらの各結合サイトに結合したプライマーを示す。増幅は、dTTP、dATP及びdGTP(そして、他の典型的PCR成分)の存在下で進行できるが、増幅されている標的核酸のストランドにGヌクレオチドが存在しないため、dCTPは必要とされない。図1の配列は、(上からに下にかけて)配列番号:72、配列番号:73(SLにおいて示す5'~3'とは逆方向)、配列番号:74、配列番号:75(SLにおいて示す5'~3'とは逆方向)。
【0016】
図2図2は、プライマー結合サイトが3つのヌクレオチド-タイプ組成のプライマーに対して3つのミスマッチ(順方向プライマー)又は2つのミスマッチ(逆方向プライマー)を示すテンプレートを示す。図2の配列は、(上からに下にかけて)配列番号:76(SLにおいて、示す5'~3'とは逆方向)、配列番号:77、配列番号:78(SLにおいて示す5'~3'とは逆方向)、配列番号:79、配列番号:80、配列番号:81(SLにおいて示す5'~3'とは逆方向)、配列番号:82、配列番号:83(SLにおいて示す5'~3'とは逆方向)である。
【0017】
図3図3は、ミスマッチ結合試薬の例を示す。図3の配列は、(上からに下にかけて)配列番号:84(SLにおいて示す5'~3'とは逆方向)、配列番号:85、配列番号:86(SLにおいて示す5'~3'とは逆方向)、及び配列番号:87である。
【0018】
図4図4は、3つのヌクレオチド-タイププライマー結合サイトが4つ全てのヌクレオチド-タイプを含むセグメントにより分離されるテンプレートの増幅を示す。増幅は、4つ全てのヌクレオチド-タイプモノヌクレオチド三リン酸の存在下で実行される。
【0019】
図5図5は、デジタル増幅に適している蛍光体に取り付けられた非主流ヌクレオチドタイプを有するプライマーを示す。
【0020】
図6図6A、Bは、3つのヌクレオチド-タイププライマー非主流プライマーを使用している二段階dPCR増幅方法を示す。
【0021】
図7図7A、Bは、デジタルPCRプラットフォームにおける3つのヌクレオチドプライマーと4つのヌクレオチドプライマーの間のバックグラウンド蛍光を比較している。
【0022】
図8図8は、三染色体性と正倍数性サンプルとを区別する5-マルチプレックスdPCR反応からの結果を示す。
【0023】
図9図9は、cffDNAのコピー数バリエーションを検出又は定量する14-マルチプレックスdPCR反応からの結果を示す。
【0024】
図10図10は、cffDNAのコピー数バリエーションを検出又は定量する15-マルチプレックスdPCRアッセイからの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
定義
別途規定しない限り、本願明細書において用いられる全ての技術的及び科学的な用語は、一般に、本発明が関係する技術分野で理解されているものと同じ意味を有する。以下の定義は、従来技術のそれらを補充して、本願での使用を目的とし、任意の関連ケースにも無関係のケース(例えば、任意の一般の特許又は特許出願)にも帰属するものではない。本願明細書に記載されているものと類似又は等価な任意の方法及び素材を本発明の試験の実施に用いることができるが、好ましい素材及び方法は、本願明細書に記載されている。従って、本願明細書において用いられる専門用語は、特定の実施形態を記載するためだけにあり、限定することを目的とするものではない。用語「a」又は「an」は、1又複数のものを指し、例えば、「核酸」は、1又は複数の核酸を表す。従って、用語「a」(又は、「an」)、「1又は複数」及び「少なくとも1つ」は、本願明細書において互いに置換可能に用いることができる。
【0026】
核酸は、DNA及びRNAを含み、DNA-RNAキメラは、二本鎖又は一本鎖とすることができる。DNAは、ゲノム、cDNA、メチル化DNA又は合成DNAとすることができる。RNAは、とりわけmRNA、miRNA、tRNA、rRNA、hnRNA、メチル化RNAとすることができる。用語「核酸」は、ヌクレオチドのストリングに対応させることができる、モノマー単位の任意の物理的ストリングを含む。これは、ヌクレオチドのポリマー(例えば、典型的なDNA又はRNAポリマー)、ペプチド核酸(PNA)、改変型オリゴヌクレオチド(例えば、溶液中において典型的には生物学的RNA又はDNAではない塩基を含むオリゴヌクレオチド(例えば2'-O-メチル化オリゴヌクレオチド))等を含む。核酸は、例えば、一本鎖又は二本鎖とすることができる。
【0027】
4つの従来型のヌクレオチド塩基は、A、T/U、C及びGであり、Tは、DNAに存在し、Uは、RNAに存在する。標的で見つかるヌクレオチドは、通常、天然ヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)である。そのようなものは、プライマーを形成するヌクレオチドのケースである。
【0028】
核酸ストランドの相補性は、ストランドがそれらの核酸塩基グループ間での水素結合に起因する安定した二重化を形成することを意味する。相補的な塩基は、DNAでは、AとT及びCとGであり、RNAでは、CとG及びUとAである。それぞれのストランドのヌクレオチドは、ストランドを最大限整列配置させると、それらがこれら(ワトソン-クリックペアリング)のうちの1つを形成する場合、相補性である。ヌクレオチドは、それらのそれぞれのストランドを最大限整列配置させても、それらが相補性対を形成しない場合、ミスマッチである。ストランドの相補性は、完全であってもよく実質的であってもよい。2つのストランド間の完全な相補性は、2つのストランドが二体鎖のあらゆる塩基がワトソン-クリックペアリングによって相補的な塩基に結合している二体鎖を形成することができることを意味する。実質的な相補性は、ストランドの殆ど(全てである必要はない)の塩基がハイブリダイゼーション条件(例えば、塩濃度及び温度)のセットにおいてワトソン-クリック対を形成し、安定ハイブリッド複合体を形成することを意味する。例えば、あるプライマーは、最高で1つ、2つ又は、3つの位置にミスマッチを有するにも関わらずプライマー結合サイトで二本鎖を形成することができる。ただし、かかるミスマッチは、3'末端にはなくて、好ましくはその付近(例えば、4つのヌクレオチドの中)にない。かかる条件は、ハイブリダイズしたストランドのTmを予測する標準数学的計算及び配列を用いて、又は、ルーチン法を使用するTmの経験的測定によって予測することができる。Tmは、2つの核酸ストランドの間で形成されたハイブリダイゼーション複合体の集団が50%変性する温度を指す。Tm未満の温度においてハイブリダイゼーション複合体が形成される一方で、Tm超の温度においてハイブリダイゼーション複合体のストランドが融解又は分離される。Tmは、例えば、Tm=81.5+0.41(% G+C)-675/N-%ミスマッチ(N =塩基の合計数)を使用することにより、水性の1MのNaCl溶液における公知のG+C内容物を有する核酸について推定することができる。
【0029】
ミスマッチは、核酸の1つのストランドにおけるヌクレオチドが反対の相補的な核酸ストランドのヌクレオチドとワトソン-クリック型塩基ペアリングを通じて対にならない又は対になることができないことを意味する。ミスマッチの例は、限定するものではないが、AA、AG、AC、GG、CC、TT、TG、TC、UU、UG、UC及びUT塩基対である。ミスマッチは、DNAとDNA分子間、DNAとRNA分子間、RNAとRNA分子間、及び、他の天然又は人工核酸アナログの間で生じることができる。
【0030】
ミスマッチ結合試薬又は薬剤は、化学的相互作用又は物理的相互作用による非主流プライマー結合サイトとの非主流プライマーハイブリダイゼーションを安定させることができる非主流プライマーの任意の改変又は任意の分子である。非主流プライマーの改変は、所定の改変が容易に決定することができる所定の非主流プライマーの所望の機能と適合する限り、いかなる形の改変であってもよい。改変は、塩基改変、糖改変又は主鎖改変を含む。ある低分子は、ミスマッチした塩基に、ミスマッチ塩基におけるそれらとおそらく相補的な水素結合を通じて結合することができ、高い塩基選択性をもって二体鎖を安定させることができる。金属イオンは、それらの構造形成及びフォールディングのための核酸と相互作用することが示されている。Ono A., Togashi H. (Ono & Togashi, 2004, Angewandte Chemie (International Ed. in English), 43(33), 4300-4302)は、溶液中の水銀イオンの添加によってTTミスマッチを有するDNA二本鎖のTmが5℃上昇するを示している。Torigoe H., Okamoto I. et al. (Torigoe et al., 2012, Biochimie, 94(11), 2431-2440)は、銀イオンが選択的に結合して、C-Cミスマッチを安定させることを示している。高い選択性ミスマッチサイト認識が可能な一連のロジウム錯体は、Cordier C., Pierre V.C. et al. (Cordier, Pierre, & Barton, 2007, Journal of the American Chemical Society, 129(40), 12287-12295)によって設計され合成された。Nakatani K., Sando S., et al. (Nakatani, Sando, Kumasawa, Kikuchi, & Saito, 2001, Journal of the American Chemical Society, 123(50), 12650-12657)は、ミスマッチDNAを選択的に認識する一連のナフチリジン系低分子を開発した。
【0031】
ハイブリダイゼーション又はアニーリング条件は、核酸を含む水性又は有機溶液の化学成分(例えば、塩類、キレート剤、ホルムアミド)及びそれらの濃度と、1つの核酸ストランドがハイブリダイゼーション複合体を生産する相補的なストランド相互作用によって第二核酸ストランドに結合する混合物の温度を含む。
【0032】
サンプルは、関心のある1又は複数の標的核酸が存在している可能性がある組成物であり、これには、患者試料、植物又は動物の素材、廃棄物、法医学用素材、環境サンプル、循環器腫瘍細胞(CTC)、細胞遊離DNA、液生検などが含まれる。サンプルには、標的核酸(例えば、末しょう血液、骨髄、プラズマ、血清、リンパ節、呼吸組織又は滲出物、胃腸組織、尿、糞、精液又は他の体液を含む生検組織)を含む、生きた又は死んだ生命体由来の任意の組織、細胞又は抽出物が含まれる。特に興味があるサンプルは、疾患又は状態、特にウイルスによる感染に罹患している又はその疑いがあるヒト又は動物からの組織サンプル(体液を含む)である。関心がある他のサンプルは、産業サンプル(例えば水試験、食品試験、汚染物コントロール等)を含む。サンプル成分として、標的及び非標的核酸を含むことができ、その他の材料(例えば、酸、塩基、界面活性剤、タンパク質、糖質、脂質及び他の有機又は無機素材)が挙げられるサンプルは、増幅の前に標的核酸を精製処理してもよくしなくてもよい。更なる処理として、細胞又はウイルスから核酸を放出して、非核酸成分を除去又は非活化する界面活性剤又は変性剤での処理や核酸の濃縮を行ってもよい。
【0033】
標的核酸は、サンプル内に存在する又は存在する可能性がある関連した核酸分子又は核酸分子の集団を指す。標的核酸は、プライマー結合サイトによって規定される、増幅されるセグメントを含ことができる。セグメントは、増幅に適する長さの全体の核酸又はその任意のセグメントであってもよい。標的核酸は、全染色体、遺伝子又はcDNAであってもよく、標的セグメントは、例えば、これらのヌクレオチドのわずか40-500であってもよい。標的セグメントは、任意のストランド(センス又はアンチセンス)の構造に表すことができる。標的核酸は、とりわけRNA(例えば、ウイルスRNA、マイクロRNA、mRNA、cRNA、rRNA、hnRNA、cfRNA又はDNA(ゲノム、体細胞性、cfDNA、cffDNA又はcDNA)であってもよい。
【0034】
標的核酸は、病原微生物(例えばウイルス、細菌又は真菌)由来であってもよく、患者内因性のものであってもよい。ウイルス核酸(例えば、ゲノム、mRNA)は、ウイルス配列の分析のために有効な標的を形成する。検出することができるウイルスのある例として、HIV、肝炎(A、B又はC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、CMV及びイプシュタインバーウイルス)、アデノウイルス、XMRV、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、おたふくかぜウイルス、ロタウイルス、はしかウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デング熱ウイルス、MLV関連ウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス及びアルボウイルス脳炎ウイルスが挙げられる。かかる細菌の例としては、クラミジア、リケッチア性細菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、トレプトッカス(treptocci)、肺球菌、髄膜炎菌及びコノコッカス(conococci)、クレブシェラ、プロテウス、セラチア(serratia)、プソイドモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ菌、細菌、コレラ、破傷風、ボツリヌス菌中毒、炭疽菌、疫病、レプトスピラ症、ライム(lymes)病細菌、連鎖球菌又はナイセリア類が挙げられる。rRNAは、細菌の分類に特に有効な標的核酸である。ヒト又は動物の遺伝子の検出は、疾患の存在又は罹病性を検出するために有効である。検出の対象の可能性がある遺伝子の例として、遺伝子タイピング(例えば、法医学同定、父子鑑別、ホモ接合の際に作用する遺伝子のヘテロ接合キャリア、HLAタイピング)を行い、個々のユーザー及び他のユーザーの薬の有効性を決定(例えば、コンパニオン診断)するためのがん遺伝子融合、BRACA-1又はBRAC-2、p53、CFTR、シトクロムP450が挙げられる。
【0035】
非主流ヌクレオチドタイプは、プライマー又はプライマー結合サイトにおける20%以下の位置に1つ存在する。一般的に、1つのヌクレオチドタイプがプライマーにおいて非主流である場合、その相補体は、プライマー結合サイトにおいて非主流である(又は、その逆も同様である)。一般的に、プライマーは、A、G、C、T又はA、G、C、Uのヌクレオチド組成を有する。但し、本願の方法において、1又は複数の標準ヌクレオチドタイプが欠如していてもよい。プライマーは、非天然ヌクレオチド(例えばIsoC及びIsoG、デアザG又はデアザA)を含むことができる。これらは、非主流ヌクレオチドの数又はパーセントの決定において、対応する標準ヌクレオチドと同一の方法で記録される。アナログは、それが他の天然ヌクレオチドと同じ相対的ペアリング親和性を有する場合、天然ヌクレオチドに対応する。従って、デアザG又はイノシンは、それらが他の天然ヌクレオチドのいずれよりもCと強く対をなすため、Gのアナログである。一例として、Gが非主流ヌクレオチドタイプである場合、プライマーの非主流ヌクレオチドタイプのパーセントを決定するために、デアザGは、(分母だけでなく)分子に含まれ、デアザAは分母だけに含まれる。従って、1つのG、1つのデアザG及び合計20ヌクレオチドを含むプライマーにおける非主流ヌクレオチドのパーセントは、10%である。一般的に、非主流ヌクレオチドタイプは、内部位置で0、1又は、2ユニット存在し、任意に各プライマーの5'末端位置で1つ存在し、各プライマー結合サイトで0、1、2、3又は4ユニット存在し、人工配列で0ユニットに存在する。理想的には、非主流ヌクレオチドタイプの唯一のユニットは、5'末端位置である。4つのヌクレオチドタイプのうちの唯一のものが非主流である場合、それは、4つの標準ヌクレオチドタイプのうち最も少なく表される(null表現を含む)。プライマーが縮重位置を含み、縮重が非主流ヌクレオチドタイプを含む場合、その位置は、非主流ヌクレオチドタイプ位置として(即ち、分母だけでなく分子に)計算に入れ、そうでなければ分母にだけ入れる。天然ヌクレオチドタイプに対する結合を好まないヌクレオチドアナログは、縮重位置と同様に処理する。非主流ヌクレオチドタイプを含むプライマーは、非主流プライマーと称される。非主流ヌクレオチドタイプを含むプローブは、非主流プローブと称する。
【0036】
一般的に「dNTP」という用語は、三リン酸の形態のホスファート、糖及び有機塩基を含むデオキシヌクレオチドの各々又は組み合わせを指すものであり、DNA合成のDNAポリメラーゼが必要とする前駆体を提供する。dNTP混合物は、天然デオキシヌクレオチド(即ち、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)及びチミン(T))の各々を含むことができる。いくつかの実施形態において、天然デオキシヌクレオチドの各々は、合成アナログ(例えばイノシン、isoG、IsoC、デアザG、デアザA等)で置き換え又は補充することができる。ヌクレオチドがプライマー又はプローブにおいて非主流である場合、ヌクレオチドは、非主流ヌクレオチドと称する。非主流ヌクレオチドは、デオキシヌクレオチド又はジデオキシヌクレオチド又はリボヌクレオチドの形態として、反応系に含めることができる。それらの相補体は、非主流ヌクレオチドの相補的なヌクレオチドと称される。「ddNTP」という用語は、一般的に、三リン酸の形態のホスファート、糖及び有機塩基を含むジデオキシヌクレオチドの各々又は組み合わせを指すものであり、DNA合成のDNAポリメラーゼが必要とする前駆体を提供する。ddNTP混合物は、天然ジデオキシヌクレオチド(即ち、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U)及びチミン(T))の各々を含むことができる。いくつかの実施形態において、天然ジデオキシヌクレオチドの各々は、合成アナログ(例えばイノシン、isoG、IsoC、デアザG、デアザA等)で置き換え又は補充することができる。「NTP」という用語は、一般的に、三リン酸の形態のホスファート、糖及び有機塩基を含むリボヌクレオチドの各々又は組み合わせを指すものであり、RNA合成のRNAポリメラーゼが必要とする前駆体を提供する。NTP混合物は、天然リボヌクレオチド(即ち、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、ウラシル(U))の各々を含むことができる。いくつかの実施形態において、天然リボヌクレオチドの各々は、合成アナログ(例えば、イノシン、isoG、IsoC、デアザG、デアザA等)で置き換え又は補充することができる。
【0037】
プライマー結合サイト又はプローブ結合サイトは、本発明の非主流プライマー結合サイト又は非主流プローブ結合サイトと交換可能である。プライマー結合サイトは、プライマーがハイブリダイズする標的核酸の完全又は部分的なサイトである。部分的なサイトは、足場及びジャンクション配列の供給によって補充することができ、WO2016/172632に記載されている通り、それには、部分的なプライマー結合サイトも含まれる。足場又はジャンクション配列由来の部分的な結合サイトは、標的核酸の部分的なプライマー結合サイトと組み合わせて完全なプライマー結合サイトを形成することができる。
【0038】
「プライマー」又は「プローブ」という用語は、本発明の非主流プライマー又は非主流プローブと交換可能である。プライマー又はプローブは、標的核酸が全部又は一部関与しているプライマー又はプローブ結合サイトに相補的なオリゴヌクレオチドである。プライマー又はプローブは、その5'末端で、標的核酸で見つけることもそれに相補的でもない他の核酸(時には、尾部と称される)に連結することができる。5'尾部は、人工配列を有することができる。プライマー又はプローブ結合サイトに正確に相補的なプライマー又はプローブに関して、プライマー又はプローブと尾部との間の境界は、尾部がプライマー又はプローブの3'末端から進んで出会う第一非相補的ヌクレオチドから始まるという点で、非常に明白である。プライマー結合サイトに実質的に相補的なプライマーに関して、プライマーの最後のヌクレオチドは、標的核酸へのプライマー結合に関与するプライマーの3'末端から離れるように進んで出会うプライマー結合サイトに相補的な最後のヌクレオチドである(即ち、この5'ヌクレオチドを有するプライマーは、5'ヌクレオチドのないプライマーよりも標的核酸に関するTMが高い)。プライマー及びプライミング結合サイトにおけるヌクレオチドの相補性又は非相補性は、ワトソン-クリックペアリング組合せによって決定されるか、それぞれの配列の最大整列配置でも決定されない。
【0039】
プライマー又はプローブは、オリゴヌクレオチドである。「オリゴヌクレオチド」という用語は、単数の「オリゴヌクレオチド」だけでなく複数の「オリゴヌクレオチド」を含み、ヌクレオチド、ヌクレオシド、核酸塩基又は本発明の増幅方法及びその後の検出法において試薬として使用する関連化合物の二個以上の任意のポリマーを指す。オリゴヌクレオチドは、DNA及び/又はRNA及び/又はそのアナログ及び/又はDNA RNAキメラであってもよい。オリゴヌクレオチドという用語は、試薬に対する任意の特定の機能を意味するものでなく、むしろ、本願明細書に記載されているかかる試薬の全てをカバーするように一般的に使用される。オリゴヌクレオチドは、様々な機能を果す。例えば、それが相補的なストランドにハイブリダイズすることができ、核酸ポリメラーゼの存在下で更に伸長することができる場合、それはプライマーとして機能することができ、それがRNAポリメラーゼによって認識される配列を含み転写が可能な場合、それはプロモーターを提供することができ、それは、シグナル発生/増幅のための検出試薬を含むことができ、適切な位置にある及び/又は適切に改変されている場合、それはハイブリダイゼーションを防止する又はプライマー伸長を阻害するように機能することができる。本発明の特異的オリゴヌクレオチドは、以下で更に詳細に記載する。本明細書で用いられるように、オリゴヌクレオチドは、実質的に任意の長さであってもよく、増幅反応の際の又は増幅反応の増幅産物を検出する際のその特定の機能によってのみ制限される。定義済みの配列及び化学構造のオリゴヌクレオチドは、従来型の技術によって、例えば化学又は生化学合成によって、及び、組換え核酸分子(例えば、細菌又はウイルスベクター)からのインビトロ又はインビボ発現によって生産することができる。この開示によって意図されるように、オリゴヌクレオチドは、単に野生型染色体DNA又はそのインビボ転写産物だけからなるものではない。オリゴヌクレオチドは、所定の改変が容易に決定することができる所定のオリゴヌクレオチドの所望の機能と適合する限り、いかなる形の改変であってもよい。改変は、塩基改変、糖改変又は主鎖改変を含む。塩基改変は、限定するものではないが、アデニン、シチジン、グアノシン、チミン及びウラシルに加えて、以下の塩基:C-5プロピン、2-アミノアデニン、5-メチルシチジン、イノシン及びdP及びdK塩基の使用を含む。ヌクレオシドサブユニットの糖グループは、リボース、デオキシリボース及びそのアナログであってもよく、例えば、リボフラノシル部分への2'-O-メチル(2'-OME)置換を有するリボヌクレオシドが含まれる。「Method for Amplifying Target Nucleic Acids Using Modified Primers」(Becker, Majlessi, & Brentano、2000、米国特許第6,130,038号)を参照。他の糖改変は、限定するものではないが、2'-アミノ、2'-フルオロ、(L)-アルファ-トレオフラノシル及びペントプラノシル改変を含む。ヌクレオシドサブユニットは、結合(例えばホスホジエステル結合、改変型結合)によって、又は、相補的な標的塩基配列に対するオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションを阻害しない非ヌクレオチド部分によって連結することができる。改変型結合は、標準ホスホジエステル結合が種々の結合(例えばホスホロチオネート結合又はメチルホスホネート結合)に置き換えられているそれらの結合を含む。核酸塩基サブユニットは、例えば、DNAの天然デオキシリボースホスファート主鎖を疑似ペプチド主鎖(例えば、カルボキシメチルリンカーによって中央第二級アミンへ核酸塩基サブユニットを接続する2-アミノエチルグリシン主鎖)に置き換えることによって連結することができる。疑似ペプチド主鎖を有するDNAアナログは、一般に、「ペプチド核酸」又は「PNA」と称され、Nielsen et al.、Peptide Nucleic Acids,(Nielsen, Buchardt, Egholm, & Berg、1996、米国特許第5,539,082号)によって開示されている。別の結合改変は、限定するものではないが、モルホリノ結合が含まれる。本発明によって予想されるオリゴヌクレオチド又はオリゴマーの非制限的な例として、二環式及び三環式ヌクレオシド及びヌクレオチドアナログ(LNA)を含む核酸アナログが挙げられる。Imanishi et al., "Bicyclonucleoside and Oligonucleotide Analogues," (Imanishi & Obika、2001、米国特許第6,268,490号)、及び、Wengel et al., "Oligonucleotide Analogues," (Wengel & Nielsen、2003、米国特許第6,670,461号)を参照。任意の核酸アナログは、本発明によって予想される。但し、改変型オリゴヌクレオチドは、その意図された機能を果すことができ、例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件又は増幅条件下で標的核酸にハイブリダイズすることができ、又はDNA又はRNAポリメラーゼと相互作用することができるため、伸長又は転写を開始することができる。検出プローブの場合、改変型オリゴヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で標的核酸に優先してハイブリダイズすることもできなければならない。オリゴヌクレオチド(又は、他の核酸)の3'-末端は、後述するように、遮断部分を使用してさまざまな方法で遮断することができる。「遮断された」オリゴヌクレオチドは、その3'-末端へのヌクレオチドの追加に起因して、DNAの相補的なストランドを生産するDNA又はRNA依存性DNAポリメラーゼによっても効率的に伸長されない。このように、「遮断された」オリゴヌクレオチドは、「プライマー」として振る舞うことができない。
【0040】
縮重プライマーという用語は、様々な位置に異なる塩基を有する類似のプライマーの混合物を指す(Mitsuhashi, J. Clin. Lab. Anal., 10(5): 285 93 (1996);von Eggeling et al., Cell. Mol. Biol., 41(5):653 70 (1995);Zhang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:5847 5851 (1992);Telenius et al., Genomics, 13(3):718 25 (1992))。イノシンは、アデノシン、シトシン、グアニン又はチミジンと塩基対を形成することができるため、かかるプライマーは、イノシンを含むことができる。縮重プライマーによって、関連する可能性がある様々な標的配列に対するアニーリング及び増幅が可能になる。標的DNAにアニーリングする縮重プライマーは、更なる増幅のためのプライミングサイトとして機能することができる。縮重領域は、多様性があるプライマーの領域である一方で、プライマーの残りの部分は、同じにすることができる。縮重プライマー(又は、領域)は、複数のプライマーを意味し、ランダムであってもよい。ランダムプライマー(又は、領域)は、配列が選択されていないことを意味する。それは、縮重といえるが、そうである必要はない。いくつかの実施形態において、3'標的特異的領域は、約5℃から50℃のTmを有する。いくつかの実施形態において、15-塩基長は、約60℃未満のTmを有する。
【0041】
プライマー「3'セグメント又は3'結合領域又は3'結合サイト又は3'ハイブリダイゼーション領域」は、特定の頻度で、ゲノムに生じるゲノム配列又は他の核酸配列に結合することができる。いくつかの実施形態において、この頻度は、約0.01%と2.0%の間、例えば、約0.05%及び0.1%の間、又は、約0.1%と0.5%の間にある。いくつかの実施形態において、プライマーの「結合サイト」の長さは、主に生物情報科学の計算に基づいて予測されるPCR産物の平均長に依存する。この定義は、限定するものではないが、長さが約4から12塩基の「結合領域」を含む。より特定の実施形態において、3'結合領域の長さは、例えば、約4から20塩基、又は、約8から15塩基とすることができる。約10℃から60℃のTmを有する結合領域は、定義中に含まれる。用語「プライマー結合セグメント」は、本願明細書において用いる場合、特定の配列のプライマーを指す。
【0042】
ポリメラーゼは、テンプレートにハイブリダイズするプライマーのテンプレート直接伸長を行なうことができる酵素である。それは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ又は逆転写酵素とすることができる。DNAポリメラーゼの例として、大腸菌DNAポリメラーゼI、Taq DNAポリメラーゼ、肺炎連鎖球菌DNAポリメラーゼI、Tfl DNAポリメラーゼ、D.ラジオデュランスDNAポリメラーゼI、Tth DNAポリメラーゼ、Tth XL DNAポリメラーゼ、M.結核DNAポリメラーゼI、M.サーモオートトロフィカム(thermoautotrophicum) DNAポリメラーゼI、ヘルペスシンプレックス-1 DNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、サーモシーケナーゼ、又は、野生型又は改変型T7 DNAポリメラーゼ、Φ29ポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、ベントポリメラーゼ、9°Nmポリメラーゼ、DNAポリメラーゼIのクレノーフラグメントが挙げられる。逆転写酵素の例:AMV逆転写酵素、MMLV逆転写酵素、HIV逆転写酵素。RNAポリメラーゼの例として、T7 RNAポリメラーゼ又はSP6 RNAポリメラーゼ、細菌性RNAポリメラーゼ及び真核性RNAポリメラーゼが挙げられる。
【0043】
増幅は、テンプレート直接プライマー伸長によって標的核酸の全て又はセグメントの追加のコピーを生産すること(標的増幅)又は質的/量的に測定するための検出シグナルを増幅すること(シグナル増幅)又はその両方を指す。増幅は、温度サイクル条件下又は等温条件下又はその組み合わせで実行することができる。増幅は、線形又は指数関数的であってもよい。
【0044】
核酸標的増幅の多くの周知の方法は、二本鎖の核酸を代わるがわる変性させてプライマーをハイブリダイズさせる温度サイクルを必要とするが、核酸増幅の他の周知の方法は、等温である。ポリメラーゼ連鎖反応法(一般にPCRと呼ばれる) (Mullis、1987、米国特許第4,683,202号; Saiki et al., 1985, Science (New York, N.Y.), 230(4732), 1350-1354)は、変性、反対のストランドへのプライマー対のアニーリング及び標的配列のコピー数を指数関数的に増加させるプライマー伸長の複数サイクルを用いる。RT-PCRと呼ばれているバリエーションにおいて、逆転写酵素(RT)は、mRNAから相補DNA(cDNA)を作るために用いられ、cDNAは、次に、PCRによって増幅され複数コピーのDNAを生産する(Gelfand et al., "Reverse Transcription with Thermostable DNA Polymerases-High Temperature Reverse Transcription,"(Gelfand、1994、米国特許第5,322,770号; Gelfand & Myers、1994、米国特許第5,310,652号)。核酸を増幅する他の方法は、LCR方法と称されている(リガーゼ鎖反応、Laffler, Carrino, & Marshall、1993、Annales De Biologie Clinique、51(9)、821-826)。LCR(Laffler et al., 1993, Annales De Biologie Clinique, 51(9), 821-826)は、2つの隣接するプローブが標的配列とハイブリダイズして、リガーゼによって互いに連結する反応に基づく。2つのプローブは、標的ヌクレオチド配列の非存在下で連結することができず、連結した産物の存在は、標的ヌクレオチド配列を示す。LCR方法は、また、テンプレートから相補的な鎖を分離するための温度コントロールを必要とする。他の方法は、ストランド変位増幅(George T. Walker, Little, & Nadeau、1993、米国特許第5,270,184号; George T. Walker、1995、米国特許第5,455,166号; G. T. Walker et al., 1992, Nucleic Acids Research, 20(7), 1691-1696, 1992, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 89(1), 392-396)であり、一般には、SDAと呼ばれている。これは、標的配列の反対のストランドにプライマー配列の対をアニールすることと、二体鎖ヘミホスホロチオエート化プライマー伸長産物を生産するdNTP存在下でのプライマー伸長と、ヘミ改変型制限エンドヌクレアーゼ認識サイトのエンドヌクレアーゼ媒介ニッキングと、現存しているストランドを変位させて、次のプライマーアニーリング、切断及びストランド変位用のストランドを生産するニックの3'末端からのポリメラーゼ媒介プライマー伸長、のサイクルを用いることで、結果として産物の幾何学級数的な増幅になる。好熱性SDA(tSDA)は、本質的に同じ方法よりも高い温度で、好熱性エンドヌクレアーゼ及びポリメラーゼを使用する(Fraiser, Spargo, Van, Walker, & Wright、2002、欧州特許番号0 684 315)。他の増幅方法として、塩基配列に基づく増幅法(Compton, 1991, Nature, 350(6313), 91-92, Malek, Davey, Henderson, & Sooknanan, 1992)(一般的にNASBAと呼ばれている);プローブ分子自体を増幅するRNAレプリカーゼを使用する方法(Lizardi, Guerra, Lomeli, Tussie-Luna, & Russell Kramer, 1988, Nature Biotechnology, 6(10), 1197=1202)(一般的にQβレプリカーゼと呼ばれている);転写に基づく増幅方法(Kwoh et al., 1989, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 86(4), 1173-1177);自家持続配列複製法(3SR)、(Guatelli et al., 1990, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 87(5), 1874-1878; Landgren (1993) Trends in Genetics 9, 199-202;、及びLee, H. et al., NUCLEIC ACID AMPLIFICATION TECHNOLOGIES(1997));及び転写媒介増幅(Kwoh et al., 1989, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 86(4), 1173-1177; Kacian & Fultz、1995、米国特許第5,480,784号; Kacian & Fultz、1996、米国特許第5,399,491号)(一般的にTMAと呼ばれている)が挙げられる。公知の増幅方法に関する更なる議論については、Persing, David H., 1993, "In Vitro Nucleic Acid Amplification Techniques" in Diagnostic Medical Microbiology:Principles and Applications (Persing et al., Eds.), pp. 51-87 (American Society for Microbiology, Washington, D.C.)を参照。本発明による使用に適している他の解説となる増幅方法には、ローリングサークル増幅(RCA)(Fire & Xu, 1995, Proceedings of the National Academy of Sciences, 92(10), 4641-4645;Lizardi、1998、米国特許第5,854,033号);Nucleic Acid Amplification Using Nicking Agents(Van Ness, Galas, & Van Ness、2006、米国特許番号7,112,423);Nicking and Extension Amplification Reaction (NEAR)(Maples et al.、2009、US 2009-0017453 A1);Helicase Dependent Amplification (HDA)(Kong, Vincent, & Xu、2004、US 2004-0058378 A1;Kong, Vincent, & Xu, 2007 US pat. US2007/0254304 A1);及びループ媒介等温増幅法(LAMP)(Notomi & Hase、2002、米国特許第6,410,278号)、及び四重プライミング増幅法(Analyst, 2014,139, 1644-1652)も含まれる。Expar増幅法(PNAS April 15、2003 100、4504-4509)。クロスプライミング増幅法(Sci Rep. 2012; 2: 246)。SMAP増幅法(Nature Methods 04/2007; 4(3):257-62)。多重変位増幅法(MDA, Proceedings of the National Academy of Sciences 2005, 102 (48): 17332-6.)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅法(Journal of Clinical Virology 54 (4): 308-12)。単一プライマー等温増幅法(SPIA)(clinical chemistry, 2005 vol. 51 no. 10 1973-1981)。
【0045】
増幅の他の態様は、シグナル増幅である。検出予定の核酸の量が充分利用可能な場合、その標的のより多くのコピーを(例えば、PCR及びLCRで)製作する代わりに、その配列を直接検出することに利点がある。ノーザン及びサザンブロッティング及びRNase保護アッセイを含む直接検出の従来の方法は、通常、放射性物質の使用を必要とし、オートメーションに適していない。他の技術は、放射性物質の使用を排除しようとしている、及び/又は自動化可能なフォーマットの感度を向上させようとしている。サイクリングプローブ反応(CPR)(Duck, Alvarado-Urbina, Burdick, & Collier, 1990b, BioTechniques, 9(2), 142-148)は、中央部分がRNAでできている一方で2つの末端がDNAでできている長いキメラオリゴヌクレオチドを使用する。標的DNAに対するプローブのハイブリダイゼーション及び耐熱性RNase Hに対する曝露によって消化されるRNA部分が生じる。これは、二体鎖の残りのDNA部分を不安定にし、標的DNAからプローブの残部を放出して、他のプローブ分子によってプロセスを繰り返すことができる。Urdea et al., 1987, Gene, 61(3), 253-264によって記載されている分岐DNA(bDNA)は、個々のオリゴヌクレオチドが35~40個の標識(例えば、アルカリホスファターゼ酵素)を載せることができる分岐構造を有するオリゴヌクレオチドに関する。これがハイブリダイゼーションイベントからのシグナルを高める一方で、非特異的結合からのシグナルを同じように増加させる。他のシグナル増幅として、侵入的開裂(invasive cleavage)(Prudent, Hall, Lyamichev, Brow, & Dahlberg、2006、米国特許第7,011,944号);ハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)(R. M. Dirks & Pierce, 2004, Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 101(43), 15275-15278, R. Dirks & Pierce、2012、米国特許番号8,105,778)及びG-四重DNAzymeに基づく比色検出が挙げられる。CHA増幅法(J. Am. Chem. Soc., 2013, 135 (20), pp 7430-7433)。SMARTシグナル増幅法(Biotechniques 2002 Mar; 32(3):604-6, 608-11.)
【0046】
増幅産物は、質的に(即ち、コントロールに関連する陽性シグナル)又は、量的に(増幅産物を引き起こす分析物の絶対量又は相対的量に関連したシグナルの強さ)検出することができる。検出は、更なる分析(例えば増幅産物の配列決定)を含めることができるが、必須ではない。本発明によって提供される方法は、捕獲反応産物又は増幅反応産物(例えば、特定の標的アンプリコン又はアンプリコンのセット)における特定の核酸を直接検出することを含めることもできる。従って、本発明の混合物は、5'->3'エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼによって放出することができる検出可能なリポーター及び消光物質部分を含む加水分解性プローブを使用する、TAQMANTMを含む特殊なプローブセットを含むことができる(Livak, Flood, & Marmaro、1996、米国特許第5,538,848号);反対の末端でリポーター及び消光物質部分を有するヘアピンプローブを使用する分子ビーコン(Tyagi, Kramer, & Lizardi、1999、米国特許第5,925,517号);蛍光ドナー及びアクセプターをそれぞれ有する一対の隣接するプライマーを使用する蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)プライマー(Wittwer, Ririe, & Rasmussen、2001、米国特許第6,174,670号);LIGHTUPTM、標的に結合した時にだけ蛍光を発する単一のショートプローブ(Kubista & Svanvik、2001、米国特許第6,329,144号)。同様に、SCORPIONTM(Whitcombe, Theaker, Gibson, & Little、2001、米国特許第6,326,145号)及びSIMPLEPROBESTM(Wittwer et al.、2003、米国特許第6,635,427号)は、単一リポーター/染料プローブを使用する。アンプリコン検出プローブは、上述した特許において述べられているように、使用する特定の検出種類に従って設計してもよい。他の検出方法としては、ゲル電気泳動、マススペクトル分析又はキャピラリー電気泳動、融解曲線、核酸に基づく蛍光キレート染料(例えばSYBRグリーン)又は蛍光ラベル及び可溶性消光物質を用いた増幅産物の検出(Will, Gupta, & Geyer、2014、米国特許第8,658,366号)が挙げられる。
【0047】
マルチプレックス増幅という用語は、関心を引く複数の核酸の増幅を指す。それは、例えば、George T. Walker, Nadeau, & Little、1995、米国特許第5,422,252号;、及び、George T. Walker, Nadeau, Spears, et al.、1995、米国特許第5,470,723号において述べられている通り、サンプルのいくつかの配列のうちの1つの増幅又は同じサンプル由来の複数配列の増幅と称することができ、それは、マルチプレックスストランド変位増幅の例を提供する。また、この用語は、複数サンプルに存在する1又は複数の配列の同時又はステップワイズ増幅を指す。
【0048】
「デジタルポリメラーゼ連鎖反応」又は「dPCR」という用語は、標的核酸の量を直接量的に測定できるように、DNA、cDNA又はRNAを含む核酸を直接定量してクローンとして増幅するために用いる従来型のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法の洗練されたバージョンを意味する。デジタルPCRは、検出可能なレベルに増幅産物を分けて濃縮することが可能な多くの個別反応チャンバー内の多重アリコートに、サンプルに存在する個々の標的核酸分子を分割することによって、この直接の定量的測定が成し遂げられる。好ましくは、サンプルは、ほとんどのアリコート(例えば、少なくとも50%、75%、90%、95%又は99%)が、検出される各標的核酸の分子を0又は1つ受け入れるように分割される。PCR増幅の後、任意のチャンバー中のシグナルの存在は、標的核が存在するという指標であり、PCR最終産物を含むチャンバーの数は、核酸の絶対量の直接的な測定である。個々の核酸分子の捕獲又は分離は、一般的に希釈によって毛細管、ミクロエマルジョン、小型化チャンバーのアレイ又は核酸結合表面において遂行できる。例えば、デジタルPCRの基本的な手順は、例えば、Sykes et al., Biotechniques 13 (3): 444-449, 1992、及びVogelstein and Kinzler, Proc Natl Acad Sci U S A 1999、 96:9236-41に記載されている。本願明細書に記載されている増幅の他の形態(例えば、転写媒介増幅)は、同様にデジタル的に実行できる。
【0049】
用語「リアルタイム増幅」とは、反応が進行するにつれて、反応産物(即ちアンプリコン)の量がモニターされる増幅反応を指す。リアルタイム増幅の形態は、反応産物をモニターするために使用する検出機構が主に異なる。検出法は、Mackay, Arden, & Nitsche, 2002, Nucleic Acids Research, 30(6), 1292-1305(本願明細書に引用したものとする)において検討されている。
【0050】
「検出ラベル」という用語は、検出可能な(好ましくは定量化可能な)シグナルを提供するために用いることができる、又は提供することを補助することができ、核酸又はタンパク質に付加することができる任意の原子又は分子を指す。ラベルは、蛍光、放射性物質、比色、重量測定、磁気、酵素活性等によって検出可能なシグナルを提供することができる。検出ラベルは、さまざまな方法で組み込むことができる:(1)プライマーは、例えば、塩基、リボース、ホスファート又は核酸アナログにおける類似した構造に付加したラベルを含んでいる;(2)ヌクレオチド三リン酸は、ラベルを有する塩基又はリボース(又は、核酸アナログにおける類似した構造)で改変される;ラベル改変型ヌクレオチドは、次に、伸長酵素(例えば、ポリメラーゼ)によって新しく合成されたストランドに組み込まれる;(3)検出可能なラベルを付加するために用いる(ポスト酵素反応)ことができる機能的なグループを有する改変型ヌクレオチドを用いる;(4)同様の方法で検出可能なラベルを付加するために用いることができる機能的なグループを有する改変型プライマーを用いる;(5)直接ラベル化して、アンプリコンの一部にハイブリダイズするラベルプローブを用いることができる;(6)増幅産物に組み込むことができるラベル;(7)増幅反応の副産物と反応することができるラベル。
【0051】
用語「熱的サイクリング」、「熱サイクリング」、「熱サイクル」又は「サーマルサイクル」は、完全変性温度からアニーリング(又はハイブリダイズ)温度、伸長温度、そして完全変性温度に戻る温度変化の繰り返しサイクルを指す。また、この用語は、変性温度及び伸長温度の繰り返しサイクルも指し、アニーリング及び伸長温度は、1つの温度に組み合わされている。完全変性温度は、全ての二本鎖断片を一本鎖に戻す。アニーリング温度によって、核酸テンプレートからの分離されたストランドの相補的な配列にプライマーがハイブリダイズ又はアニールすることができる。伸長温度によって、アンプリコンの初期DNA鎖合成が可能になる。
【0052】
「反応混合物」、「増幅混合物」、又は「PCR混合物」という用語は、核酸テンプレートから少なくとも1つのアンプリコンを増幅するのに必要な成分の混合物を指す。混合物は、ヌクレオチド(dNTP)、耐熱性ポリメラーゼ、プライマー及び複数の核酸テンプレートを含むことができる。混合物は、Tris緩衝液、一価の塩及びMg2+を更に含むことができる。各成分の濃度は、公知技術であり、更に最適化することができる。
【0053】
用語「増幅された産物」又は「アンプリコン」は、増幅方法(例えばPCR)において一対のプライマーを使用してポリメラーゼによって増幅されるDNAの断片を指す。
【0054】
用語「蛍光体」とは、規定の励起波長での光エネルギーを吸収して、様々な規定の波長で光エネルギーを発するものを指す。
【0055】
用語「消光物質」は、それが蛍光ラベルの近くに位置すると励起した蛍光ラベルのエネルギーを吸収することができ、そのエネルギーを消失させることができる任意のものを含む。消光物質は、蛍光消光物質又は非蛍光性消光物質とすることができ、それは暗い消光物質ともいえる。上記の蛍光体は、他の蛍光体に近づくと、消光物質としての役割を果すことができ、FRET消光か接触消光が発生する可能性もある。任意の可視光を発しない暗い消光物質が用いられることが好ましい。暗い消光物質の例として、限定するものではないが、DABCYL(4-(4-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸)スクシンイミジルエステル、ジアリールローダミンカルボン酸、スクシンイミジルエステル(QSY-7)及び4',5'-ジニトロフルオレセインカルボン酸、スクシンイミジルエステル(QSY-33)、クエンチャール又はBlack Hole Quencher(登録商標)(BHQ-1、BHQ-2及びBHQ-3)、ヌクレオチドアナログ、ヌクレオチドG残基、ナノ粒子及び金粒子が挙げられる。
【0056】
「変異」という用語は、野生型と称される標的核酸の原型形態とは異なる標的塩基配列における1又は複数のヌクレオチドを指す。野生型と称される配列は、配列の最も一般的な対立形質、配列の第一発見形態及び/又は正常(非病気表現型)と関連している配列の形態である。単一のヌクレオチド多型(SNP)は、変異の1つの形態である。
【0057】
「表面」という用語は、核酸が共有結合的に付加できる任意の固体表面(例えばラテックスビーズ、デキストランビーズ、ポリスチレン、ポリプロピレン表面、ポリアクリルアミドゲル、金表面、ガラス面及びシリコンウェーハ)を指す。好ましくは、固体担体は、ガラス面である。
【0058】
「表面に付加」という用語は、化学的に改変可能な機能的な基を含む任意の化学又は非化学結合方法を指す。「付加」は、共有結合的付加による又は不可逆受動的吸着を介して又は分子間の親和性(例えば、ビオチン化された分子によるアビジンコート表面上へ固定化)を介して固体担体への核酸の固定化に関する。付加は、DNA変性条件下で水又は水性バッファーを用いての洗浄でも取り除くことができない充分な強さでなければならない。
【0059】
粘着末端は、核酸の二本鎖セグメントに隣接する核酸の一本鎖末端である。相補配列を有する粘着末端付き核酸は、粘着末端を介してアニーリングすることができ、互いにライゲーションを受けることができる。
【0060】
人工配列は、試料中に存在していることが知られている又は存在しているか疑わしい天然標的核酸との相補性を欠いているか、少なくともそれらに対して相補性を有することを意図しない配列である。人工配列は、他の目的の中でも、標的核酸にハイブリダイズするセグメントに結合するリンカーとして、又はプライマーを標識するための尾部として役割を果すことができる。
【0061】
「染色体異数性」という用語は、染色体数が異常な任意の遺伝的欠損をいう。例えば、染色体異数性は、正常な一対に加えて任意の1つの染色体の余分な部分を含むこと又は正常な一対の任意の1つの染色体の一部を欠損していることだけでなく、任意の1つの染色体の正常数より多く又は少なく含むことができるが、これらに限定されるものではない。場合によっては、異常は、複数の染色体又は1若しくは複数の染色体の複数の部分を含むことができる。共通した染色体異数性疾患には、トリソミー(例えば、疾患患者のゲノムに正常である2つ(即ち、一対)ではなく3つの21番染色体が含まれるトリソミー21)が含まれるが、これらに限定されるものではない。より稀なケースでは、患者は、正常な一対に加えて21番染色体の余分な断片(全長未満)を有することがある。他の場合、21番染色体の一部が、他の染色体(例えば14番染色体)に転位することがある。この例では、21番染色体は、「染色体異数性に関連する染色体」であり、第二の無関係な染色体、即ち、患者のゲノムの正常な一対において存在する1つ(例えば1番染色体)は、「参照染色体」である。関連した染色体の数が正常な数の2よりも少ないケースも存在する。ターナー症候群は、女性のX染色体の数が2から1つに減少した染色体異数性の1つの例である。
【0062】
「遺伝的マーカー」とは、ポリヌクレオチド配列又は同定可能な公知の物理的位置を有する参照染色体のゲノム配列に存在するポリヌクレオチド配列に対する改変を指す。いくつかの遺伝的マーカーの例として、ポリヌクレオチド配列の差異(例えば、多型)又はその配列が完全に存在しているか欠損しているか(例えば、男性胎児由来のY染色体に存在するが、妊婦のゲノムに存在しない配列)に基づいて互いを区別できる種々のアレル(例えば、互いに異なる2人の個人由来のアレル(例えば胎児由来のアレルと妊婦由来のアレル))が挙げられるが、これらに限定されるものではない、この文脈において、染色体異数性に関連する染色体に位置する「メチル化マーカー」は、異常な数を有する染色体上のゲノムポリヌクレオチド配列を指し、染色体の余分の断片が存在する又は染色体の一部が失われている場合には、「メチル化マーカー」は関連した染色体の断片又は一部内に位置する。メチル化マーカーのメチル化プロファイルの差異は、互いに異なる2人の個人(例えば、胎児及び妊婦)由来の対応するメチル化マーカーの識別を可能にする。
【0063】
「一塩基多型」又は「SNP」という用語は、同じ遺伝子の種々のアレルの中の単一のヌクレオチド残基に存在するポリヌクレオチド配列のバリエーションを指すものであり、同じ個人由来の同じ染色体の2つのコピーに位置する同じ遺伝子(例えば、胎児由来の2つのアレル)であっても互いに異なる2人の個人(例えば、胎児及び妊婦)由来の同じ遺伝子であってもよい。このバリエーションは、遺伝子の、又は、遺伝子間の領域のコーディング領域又は非コーディング領域(例えば、プロモーター領域又はその付近又はイントロン)の中で発生する場合がある。1又は複数のSNPの検出は、単一の遺伝子の種々のアレルの識別を可能にする。
【0064】
「単純タンデムリピート多型」という用語は、同じ遺伝子の種々のアレルの中のヌクレオチド配列のタンデムリピートの様々な数(例えば、1又は複数のヌクレオチドのタンデムリピート)において、証明されたポリヌクレオチド配列バリエーションを指すものであり、同じ個人(例えば、胎児)由来の同じ染色体の2つのコピーに位置する同じ遺伝子であってもよく、互いに異なる2人の個人(例えば、胎児及び妊婦)由来の同じ遺伝子であってもよい。このバリエーションは、遺伝子の、又は、遺伝子間の領域の非コーディング領域(例えば、プロモーター領域又はその付近又はイントロン)の中で多く発生する。タンデムリピート数の差異の検出は、単一の遺伝子の種々のアレルの識別を可能にする。
【0065】
「挿入-欠失多型」という用語は、同じ遺伝子の種々のアレルの中の短いヌクレオチド配列(例えば、1-3のヌクレオチド)の有無において、証明されたポリヌクレオチド配列バリエーションを指すものであり、同じ個人(例えば、胎児)由来の同じ染色体の2つのコピーに位置する同じ遺伝子であってもよく、互いに異なる2人の個人(例えば、胎児及び妊婦)由来の同じ遺伝子であってもよい。このバリエーションは、遺伝子の、又は、遺伝子間の領域のコーディング領域及び非コーディング領域(例えば、プロモーター領域又はその付近又はイントロン)の両方の中で発生し得る。短いヌクレオチド配列が存在するか否かの検出は、単一の遺伝子の種々のアレルの識別を可能にする。
【0066】
「血液」という用語は、血液試料をいう。当該用語は、従来から規定されているように、全血又は任意の血液画分(例えば、血清、血漿中の無細胞DNA及び血漿)を含む。血液試料の例として、妊婦、妊娠の可能性があるために試験されている女性、又は疾患又は感染の可能性があるため疾患又は感染モニタリングを受けている個人から調製されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
「重亜硫酸塩」という用語は、メチル化シトシンを化学的に改変せずにシトシン(C)をウラシル(U)に化学的に変換できることで、DNAのメチル化状態に基づくDNA配列を区別可能に改変するために用いることができる全てのタイプの重亜硫酸塩(例えば亜硫酸水素ナトリウム)を指す。
【0068】
「座」という用語は、参照ゲノムアセンブリ(例えば、UCSC Genome Browser上のHuman Genome March 2006アセンブリ(hg18))の染色体(即ち、遺伝子位置又は染色体位置)の末端ヌクレオチド位置におけるスタートヌクレオチド位置により規定されるDNAのセグメントをいう。座は、遺伝子、CpGアイランド又は転写/翻訳の任意の産物の遺伝的位置と重複していても重複していなくてもよい。例えば、座は、通常、種々のDNAメチル化レベルを含む実験データ(例えば、MeDIP-チップデータセット)及びその後のデータ分析(例えば、MAT、TAS)により同定されるDNAの連続セグメントを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。座は、1又は複数のCpGサイトを含むことができる。座は、分析(例えば、Epityperアッセイ、重亜硫酸塩配列決定、ポリヌクレオチド増幅及び測定)に適したより短いセグメント(例えば、CpGを含むゲノム配列、断片又は領域)に更に分割できる。座は、1又は複数の胎児後成的発現マーカーへ発展させることができる。本願のある文脈において、座は、ある種のバイオインフォーマティックス基準により同定されるDNAの連続セグメントも指す。
【0069】
「分子的計数」という用語は、分子又は分子複合体の数、多くの場合、他の共存分子又は互いに異なる特徴の複合体との関連での相対数の定量的測定を可能にする任意の方法をいう。分子的計数の様々な方法は、例えば、Leaner et al., Analytical Chemistry 69:2115-2121, 1997、Hirano and Fukami, Nucleic Acids Symposium Series No. 44:157-158, 2000、Chiu et al., Trends in Genetics 25:324-331, 2009、及び米国特許第7,537,897号に記載されている。
【0070】
詳細な説明
I. 一般的な概要
ヌクレオチド組成が限定されたプライマーを使用しての増幅方法は、2015年4月24日に出願のUS62/152,752の利益を主張するWO2016/172632に記載されており、全ての目的のためにその全てをそれぞれ引用したものとする。本願は、デジタル増幅(例えば、デジタルPCR)におけるかかるプライマーの使用について開示している。
【0071】
II. プライマー設計
本発明は、ヌクレオチド組成が限定された単一のプライマー又は一対の順方向及び逆方向プライマーからの増幅方法を提供する。ヌクレオチド組成の限定は、プライマーが少なくとも1つのヌクレオチドタイプにおいて非主流であることを意味する。かかるプライマーは、互いをプライミングする能力、又は、標的核酸におけるそれらの意図するプライマー結合サイト以外からのミスプライミングによって開始される伸張する能力がかなり低下している。標的特異的増幅に関するかかるプライマーの使用には、プライマー結合及び増幅をサポートする標的核酸のプライマー結合サイトの同定を必要とする。ある標的核酸において、ヌクレオチド組成が限定されたプライマーに対して完全な相補性を有するプライマー結合サイトは、同定することができる。多くの場合、標的核酸においてヌクレオチド組成が限定されたセグメントは、プライマー結合サイトとして機能するにはそれ自体があまりにも短い。しかしながら、かかるサイトは、WO2016/172632に更に記載されている通り、補助的足場又はジャンクションオリゴヌクレオチドの使用、プライマー結合サイトに対してミスマッチハイブリダイズするプライマー、ミスマッチ安定化剤及びプライマーにおける限られて数の非主流ヌクレオチドの存在を含む、後述する様々な技術によって、ヌクレオチド組成が限定されたプライマーを用いた増幅に適しているといえる。
【0072】
a. 基本原理
本方法は、1又は複数のヌクレオチドタイプが非主流である(例えば、A、T、C及びGではない)プライマーのヌクレオチド組成の限定の基礎的コンセプトを用いて開始して、その組成物のプライマーとペアリングするための、標的核酸内の最も適したプライマー結合サイト(例えば、A、T及びG)を選択する。選択したプライマー結合サイトに応じて、プライマーのヌクレオチド組成を(例えば、非主流ヌクレオチドのユニットを限られた数にすることによって)調節してプライマー結合サイトとの相補性を向上させることができる。
【0073】
好ましいプライマー設計は、4つの標準ヌクレオチドタイプのうちの一つだけを順方向及び逆方向プライマーの両方において非主流とすることである。言い換えると、かかるプライマーは、A、T/U及びC並びに非主流Gか、A、T/U及びG並びに非主流Cか、A、G及びC並びに非主流Tか、T、G及びC並びに非主流Aからなることができる。非主流ヌクレオチドタイプは、好ましくはG又はCである。非主流ヌクレオチドタイプがプライマーに存在する場合、好ましくは3'ヌクレオチド以外の位置に位置し、最も好ましくは5'ヌクレオチドの位置又はプライマーの5'ヌクレオチドに連結する5'尾部ヌクレオチドの位置である。5'非主流ヌクレオチドの包含は、予想外の増幅産物が著しく増加することなくプライマー結合の融解温度(TM)を上昇させる。
【0074】
プライマーの3'ヌクレオチドは、非主流ヌクレオチタイプの相補体によって好ましくは占められる。例えば、非主流ヌクレオチドタイプがGである場合、3'ヌクレオチドは、好ましくはCであり、その逆もまた同じである。末端C又はGは、対になる相補的な塩基がプライマー上にないため、プライマー二量体伸長を阻害する。1つのヌクレオチドタイプの除去又は非主流化は、実質的にヌクレオチドの数を、プライマー間又はプライマーとミスマッチプライマー結合サイトとの間でワトソン-クリック対を形成することができる数よりも制限する。プライマーの3'ヌクレオチドの適切な塩基ペアリングは、テンプレート依存的伸長をサポートするその能力に非常に重要である。この位置での非主流ヌクレオチドタイプの相補体の使用は、プライマー二量体及びプライマーミスマッチ伸長を実質的に低減する。
【0075】
プライマー設計の他の特徴は、従来型のプライマーと類似している。プライマーは、そのプライマー結合サイトに相補的な配列を有する。あるプライマーは、長さが少なくとも15、20、25、30、35又は40ヌクレオチドである。あるプライマーは、長さが25、30、40、50又は75ヌクレオチド以下である。プライマーは、これらの上限の長さ及び下限の長さの任意の組み合わせ(例えば、15-50、20-30又は30-40ヌクレオチド)を有することができる。そのプライマー結合サイトに対するプライマーの融解温度は、例えば45-80℃又は好ましくは55-65℃であってもよい。規則によれば、コーディングストランドの1つである逆ストランドに結合しているプライマーに関しては、順方向プライマーは、非コーディングストランドに相補的であるため、伸長産物は、コーディングストランドであり、逆方向プライマーは、コーディングストランドであるため、伸長産物は、非コーディングストランドである。コーディング及び非コーディングストランドを有さない標的核酸に関しては、順方向及び逆方向プライマーの指定は、任意である。そのようなケースは、順方向及び逆方向プライマーが同じストランド上のプライマー結合サイトに結合するようなケースでもある。プライマーは、標的核酸に相補的でない5'尾部を有することができる。かかる尾部は、蛍光体又は消光物質を付加するために用いることができたり、識別コードを含めることができるたり、その標的核酸に相補的なプライマーの不連続なセグメントを連結することができたりする。
【0076】
増幅条件は、通常、バッファー、Mg2+、酵素、温度等に関しては、従来型のプライマーと同様である。従来型の増幅は、dNTPモノマーとして表される全部で4つの標準ヌクレオチドタイプによって実行される。ヌクレオチド組成が限定されたプライマーを用いた増幅は、実行することができるが、低下した濃度で存在若しくは非存在する又はddNTPとして提供される非主流ヌクレオチドタイプの相補体を用いて実行することもできる。
【0077】
通常、しかしながら常にではないが、順方向及び逆方向プライマーは、標的核酸の逆ストランドに結合する。従って、標的核酸の1つのストランドは、例えば、逆方向プライマー結合サイト及び順方向プライマー結合サイトの相補体を含み、他のストランドは、順方向プライマー結合サイト及び逆方向プライマー結合サイトの相補体を含む。あるフォーマットにおいて、順方向及び逆方向プライマー結合サイトは、同じストランドにある。例えば、連結した順方向及び逆方向プライマーは、同じストランド上の結合サイトに結合することができ、ローリングサークル機構によって増幅することができる。ある対のスリーウエイジャンクションプライマーは、同じ核酸ストランド上のサイトに結合することもできるため、1つのプライマーは、その他のテンプレートとしての役割を果す。
【0078】
標的核酸における適切なプライマー結合サイトのための調査は、プライマー結合サイトがプライマーに相補的でなければならないというプライマー設計の原則による情報に基づく。例えば、単一のヌクレオチドタイプにおいて非主流であるプライマーの使用によって、プライマーにおいて非主流であるヌクレオチドタイプの相補体において順方向プライマー結合サイト及び逆方向プライマー結合サイトに関する標的核酸をサーチすることができる。好ましくは、非主流ヌクレオチドタイプの相補体が非存在である順方向プライマー結合サイト及び逆方向プライマー結合サイトが同定される。しかしながら、かかるサイトを見つけられることができない場合、他のプライマー結合サイトを更に用いることができ、好ましくは、それは、非主流ヌクレオチドタイプの相補体のユニット数が最も小さいものである。多くの場合、プライマーの非主流ヌクレオチドタイプの相補体は、プライマー結合サイトにおいて非主流のそれ自体であるが、これは重要ではない。ある順方向及び逆方向プライマー結合サイトは、それぞれ、プライマーにおいて非主流のヌクレオチドの相補体を4以下のユニット、3以下のユニット、2以下のユニット又は1ユニットだけ有する。
【0079】
ATCプライマーに関していえば、ソフトウェアを用いて、逆方向プライマー結合サイト及び順方向プライマー結合サイトの相補体をそれぞれ表している隣接又は近接ATG及びATC領域を探すことができる。ATGプライマーを用いるために、ソフトウェアは、逆方向プライマー結合サイト及び順方向プライマー結合サイトの相補体のそれぞれのためのATC及びATG領域を探すことができる。CGAプライマーを用いるために、ソフトウェアは、逆方向プライマー結合サイト及び順方向プライマー結合サイトの相補体をそれぞれ表しているCGT及びCGA領域を探すことができる。CGTプライマーを用いるために、ソフトウェアは、逆方向プライマー結合サイト及び順方向プライマー結合サイトの相補体のそれぞれのためのCGA及びCGT領域を探すことができる。
【0080】
逆方向プライマー結合サイト及び順方向プライマー結合サイト(又は、逆方向プライマーと同じストランドにある場合は、順方向プライマー結合サイト自体)の相補体は、互いに隣接することができたり、標的核酸のストランドにおける介在ヌクレオチドによって分離することができたりする。介在ヌクレオチドは、もしあれば、プライマー及びその相補体の非主流ヌクレオチドを除外することができたり、これらのヌクレオチドのうちの1つ又は両方、及び、4つの標準ヌクレオチドタイプのうちの他の2つのいずれかを含むことができたりする。隣接ではない場合、逆方向プライマー結合サイト及び順方向プライマー結合サイト(又は、順方向プライマー結合サイト自体)の相補体は、増幅技術と適合する伸長するほど互いが十分に近く(例えば、100、500、1000、又は10000ヌクレオチド以下で)なければならない。
【0081】
図1は、3'位にCヌクレオチドを有する順方向及び逆方向プライマーのそれぞれがA、T及びCヌクレオチドからなる方法を簡単に示している。言い換えると、Gは、非主流ヌクレオチドタイプである。逆方向プライマー結合サイトは、A、T及びG(プライマーにおいて非主流であるCの相補体)からなる。示されている順方向プライマー結合サイトの相補体はA、T及びCからなり、順方向プライマー結合サイトが(逆方向プライマー結合サイトのように)A、T及びGからなることを意味している。順方向及び逆方向プライマーは、それぞれ、順方向及び逆方向プライマー結合サイトに完全に相補的である。逆方向プライマー結合サイト及び順方向プライマー結合サイトの相補体は、隣接する。増幅産物は、順方向及び逆方向プライマーの3つのヌクレオチドタイプに相補的な3つのヌクレオチド三リン酸モノマーA、T及びGと共に反応が開始すると形成することができる。プライマー二量体形成及びミスペアリングは、ほとんどの塩基がプライマー間及び/又はプライマーとミスマッチプライマー結合サイトとの間で対になることができないため、説明した通り阻害される。しかしながら、伸長を開始するのに十分な予想外のプライマー結合サイトにプライマーが十分に結合することができる場合であっても、増幅産物は、形成されないだろう。理由は、増幅混合物において省略されたヌクレオチド三リン酸モノマーによって、伸長鎖がCを組み込む必要がある場合に増幅が停止するためである。
【0082】
あるいは、図4に示すように、プライマー結合サイトは、標準ヌクレオチドのうちの全4つを含む領域によって非連続となる且つ分離される可能性がある。この場合には、増幅は、標準ヌクレオチド三リン酸モノマーのうちの全4つによって実行される。
【0083】
b. プライマー結合サイトとプライマーとの間のミスマッチ
図2は、順方向及び逆方向プライマー結合サイトに関する標的核酸の調査によってA、T、Cヌクレオチドからなるプライマーに完全な相補性を有する順方向及び逆方向プライマー結合サイトの一対として適合していなかった(即ち、非主流ヌクレオチドタイプが完全に存在していないプライマー結合サイトでない)ことを示すより典型的な状態を示している。最も長いATC領域は、7ヌクレオチド(CATCCTC)を含み、最も長いATG領域(CGATTGGTATG)は、12ヌクレオチドを含む。これらの領域は、それらのTmが非常に低いため、プライマーとして使用するにはそれほど長くはない。そのような場合、プライマー結合サイトとミスマッチなプライマーを用いることができる。図2において、順方向プライマー結合サイト及び逆方向プライマー結合サイトは、それぞれ、プライマーにおけるC-ヌクレオチドによって整列配置された3つのCユニット及び2つのCユニットを有する。従って、かかるプライマー及びプライマー結合サイトが互いにハイブリダイズする場合、3つのミスマッチ位置が逆方向プライマーとその結合サイトとの間に、そして、2つのミスマッチが順方向プライマーとその結合サイトとの間に存在することになる。それにもかかわらず、ハイブリダイゼーション及び伸長は、効率が低下してもまだ生じることがある。ハイブリダイゼーション及び伸長は、反応混合物がミスマッチ安定化剤と共に供給される場合に増加することができる。ミスマッチ結合又は安定化剤は、化学的相互作用又は物理的相互作用により、非主流プライマー結合サイトとの非主流プライマーハイブリダイゼーションを安定させることができる非主流プライマーの任意の分子又は任意の改変である(図3を参照)。非主流プライマーの改変は、容易に決定することができる所定の非主流プライマーの所望の機能と所定の改変が適合する限り、任意の方法で改変することができる。改変は、塩基改変、糖改変又は主鎖改変(例えばPNA、LNA又は2'フルオリン2'メンチルオキシ)を含む。ミスマッチ安定化剤の例としてのロジウム金属挿入剤は、Ernst et al. J. Am. Chem. Soc. 131, 2359-2366 (2009)に記載されている。ロジウム金属挿入剤のような化学薬品は、具体的には、DNAミスマッチと結合することができ、CCミスマッチで2.0 x 107M-1の結合定数を有することができる。ロジウム金属挿入剤の結合は、18.7℃だけ、ミスマッチを含む二本鎖DNAの融解温度を上昇させることができる。従って、かかるミスマッチ結合試薬を3-ヌクレオチドタイププライマーPCR反応に加えて、特にミスマッチを安定させてPCR効率を上昇させることができる。C-Cミスマッチと同様に、TC又はACミスマッチも、他の可能性のあるもの中のかかる試薬によって安定化することができる。かかる安定化剤を用いても、ミスマッチプライマーは、わずかに効率が低下するもののテンプレートとハイブリダイズして、増幅を進行させることができる。
【0084】
c. 数ユニットの非主流ヌクレオチドの包含
代わりに又は付加的に、ミスマッチ安定化剤を使用することによって、ミスマッチの数は、そのプライマー結合サイトとのミスマッチの数を減らすプライマーにおける位置で非主流ヌクレオチドタイプの限定されたユニット数(一般的に最大2つの内部位置)を導入することによって減らすことができる。非主流ヌクレオチドは、プライマーの5'位で使用することもできるし、プライマーの5'末端に隣接する5'の尾部で用いることもできる。例えば、図5に示されるプライマー及びプライマー結合サイトに関して、順方向及び逆方向プライマーの各々への2つGの導入は、順方向プライマーの場合はミスマッチが1つに減少し、逆方向プライマーの場合はミスマッチが存在しない。
【0085】
ミスマッチ安定化剤を使用するかプライマーに非主流ヌクレオチドタイプの1又は複数のユニットを含めるかの選択は、非主流ヌクレオチドタイプとそれらのそれぞれの結合サイトが完全に欠如している仮定の順方向及び逆方向プライマー間におけるミスマッチ位置の数次第である。2つを超えるミスマッチがかかるプライマーとその結合サイトとの間に存在する又はミスマッチがプライマーの3'末端近くで(例えば、4ヌクレオチド以内で)生じている場合、プライマーにおける1又は複数の非主流ヌクレオチドの包含によって1又は複数のミスマッチを排除することが好ましい。
【0086】
ATCプライマーの場合、Gを非主流プライマーに導入する代わりに、1又は複数の非天然塩基を代替物として、非天然塩基が従来型のATGCプライマーと比較してプライマー二量体相互作用を減らすのを助けることができる限り導入することができる。非天然塩基の例は、イノシンである。Gの導入は、プライマーのその結合サイトに対するハイブリダイゼーション効率を増加させるが、CG対が存在しているためプライマー間及びプライマー内相互作用も増加する。一方で、イノシンは、フランキング塩基対の助けを借りて、プライマーのその結合サイトへのハイブリダイゼーション効率を維持する。しかしながら、プライマー間又はその中の1個又は数個のC及びI対は、結合に殆ど寄与せず、実質的なプライマー二量体形成とはならない。好ましくは、かかるプライマーは、プライマー伸長効率に対するミスマッチ効果を最小化するためにA、T及びCだけを含む3'セグメント及び任意の数(例えば、1-10)のイノシン残基だけを含んでいる5'セグメントからなる。
【0087】
プライマー結合サイトが、非主流ヌクレオチドタイプが完全に不在であるプライマーと完全に適合しない状態において、増幅は、ヌクレオチド三リン酸モノマーとして供給されているプライマーにおいて非主流ヌクレオチドタイプの相補体なしでも生じる可能性があるが、このヌクレオチドタイプが供給される場合は、より効率的に進行する。しかしながら、このヌクレオチドタイプは、標準の4ヌクレオチドの他のものと比較して少ない濃度(例えば、他のヌクレオチド三リン酸モノマーのそれぞれ< 10x、<100X又は<1000X)で供給することができる、又はジデオキシNTPとして供給することができる。ミスプライミングから生じる伸長は、ジデオキシNTPによって終了する。いずれかの戦略の使用(ヌクレオチド濃度を減らすこと又はddNTPの使用)によって、ミスペアリングからの予想外の増幅産物又はプライマー二量体が減少する。イノシン置換を有するプライマーは、イノシン塩基上での効果的な伸長のために反応においてdCTPを必要とする。しかしながら、dCTPは、ヌクレオチド三リン酸モノマーの他のタイプと比較して、低い濃度で供給することができる。
【0088】
標的配列が様々な種又は遺伝子型の生命体由来である場合、テンプレートは、複数のアレルの混合物である。非主流ヌクレオチドを有するプライマーは、種々の配列バリエーションにマッチするために、ある位置で縮重塩基を含むことができる。
【0089】
ミスマッチ又はイノシン置換を有する非主流プライマーは、増幅反応において、それらの本来の(即ち、ミスマッチでもイノシン置換でもない)配列の従来型のプライマーとの組み合わせで用いることができる。しかしながら、従来型のプライマーは、0.1%~50%の非主流プライマーの濃度にその濃度を低下させなければならなかった。従来型のプライマーは、非主流プライマーよりも効率的にそれらの結合サイトにハイブリダイズし、それらの伸長産物は、より多くのテンプレートと共に非主流プライマーを提供する。非主流ヌクレオチドの相補体であるdNTPのタイプは、前述のとおり低濃度で提供されるか、非主流プライマーの組成に応じて完全に省略される。従来型及び非主流プライマーのかかる組み合わせは、非主流プライマーからの増幅を容易にして、低プライマー-プライマー相互作用を維持する。
【0090】
d. 複数のヌクレオチドタイプにおける非主流のプライマー
単一の非主流ヌクレオチドタイプを有するプライマーに関する戦略及び原理は、2又は3つの非主流ヌクレオチドを有する(言い換えると単一のヌクレオチドから完全な又は主要な)プライマーに適用することができる。単一のヌクレオチドにおいて非主流のプライマーの使用は、かかるプライマーのための結合サイトが統計学的により大きな頻度で生じるため、天然標的核酸においてより広い適用性を有する。しかしながら、ある増幅形態(例えば免疫PCR)は、人工配列の核酸を増幅する。かかる人工配列は、1つの非主流ヌクレオチドタイプと同様に2又は3つの非主流ヌクレオチドタイプを有するプライマーによって増幅されるように設計することができる。
【0091】
2つのヌクレオチドタイプにおいて非主流のプライマーにおいて、2つの非主流ヌクレオチドタイプは、互いに相補的であってはならない。言い換えれば、非主流ヌクレオチドタイプは、AとC、AとG、T/UとC又はT/UとGであってもよい。これによって、同じ2つの非相補的ヌクレオチドタイプから完全な又は主要なプライマーとなる。かかるプライマーは、プライマー-二量体又はプライマー-ミスマッチ伸長を支持する能力が低下している。プライマーは、非主流の3つのヌクレオチドを有する。言い換えると、単一のヌクレオチドタイプから完全に又は実質的になることは、プライマー二量体又はミスマッチプライマー伸長を支持する能力も低下させる。プライマー結合サイトは、上述のものと類似した原理によって選択され、プライマー配列は、必要に応じて少数の非主流ヌクレオチドを収容するように調整することができる。WO2016/172632に記載の通り、足場及びジャンクションプライマー戦略も用いられることができる。かかるプライマーを有する増幅を、少なくとも、プライマーにおいて非主流ではないヌクレオチドの相補体と共に、任意に、言及の通り、低濃度で又はジデオキシヌクレオチドとして供給することができる非主流ヌクレオチドの相補体と共に実行される。
【0092】
III. サンプル調製
標的核酸は、関心を引く様々な生体試料から作成できる。サンプルの例として、胎児又は母性遺伝物質、母体血漿又は血液、がんを罹患している又はがんであることで疑わしい対象の生検サンプル、遺伝的変異に関する公知の状態又は道の状態にある任意のヒト、血球、特定の細胞型に豊かな血球、骨髄由来単核細胞、胎盤細胞、臍帯サンプル、胎児組織、胎児線維芽細胞又は血球、乳児又は子供由来の組織、新生児組織、核酸を含む非細胞性種(例えばウイルス)、細胞に基づく生命体(例えば植物、菌類、真正細菌、始原細菌、原生生物又は動物)、植物又は食料品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
本願明細書で提供される方法を使用してサンプルを分析する前に、サンプルに対する1又は複数のサンプル調製操作を実行することが望ましい場合もある。サンプル調製操作の例として、細胞、組織、血液又は微生物由来の細胞内物質の抽出を挙げることができる。抽出された細胞内物質は、サンプル由来の核酸、タンパク質又は他の巨大分子を含むことができる。使用目的によっては、サンプルは、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPE)又は切り出しの凍結切片を使用して作成されている。使用目的によっては、サンプルは、任意の抽出方法を用いる前に、レーザーを用いたマイクロ切開されている。サンプル調製操作の他の例として、血漿又は血液由来の無細胞DNAの抽出を挙げることができる。
【0094】
生体サンプルは、従来技術において、スワビング、削ること、静脈切開、生検(例えば、摘出、微細ニードル吸引、切開、コアニードル)を含む公知の方法又は特に疾患又は感染に罹患している又は疑われている対象のための任意の他の適切な方法によって得ることができる。使用目的によっては、連続生検は、患部組織又は臓器から得られる。
【0095】
生体サンプルは、本願明細書で示す組織のいずれかから得ることができる。生体サンプルの例としては、肺、気道、鼻腔、胃腸管、口、皮膚、心臓、肺、腎臓、胸部、膵臓、肝臓、血液、筋肉、平滑筋、膀胱、胆嚢、結腸、腸、脳、前立腺、食道又は甲状腺が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
a. 核酸抽出
分析される全細胞、ウイルス又は他の組織サンプルに関して、核酸は、一般的にこれらのサンプルから抽出される。
【0097】
標的核酸は、従来技術として公知の任意の技術を使用して生体サンプルから分離できる。使用目的によっては、DNA又はRNAは、いずれかの物理的、化学方法又はその両方の組み合わせによる分析の前に生体サンプルから抽出できる。抽出として、界面活性剤溶解、超音波処理又はガラスビーズを用いたボルテックスの使用を含む手段により行うことができるが、これらに限定されるものではない。特定の実施形態において、DNAは、血液から標準分析法に従って(例えば、Qiagen UltraSens DNA抽出キットを用いて)抽出できる。使用目的によっては、核酸分子は、グラジエント遠心(例えば、塩化セシウムグラジエント、スクロースグラジエント、グルコースグラジエント)、遠心プロトコール、沸騰、精製キット(例えば、Qiagen精製システム、プロメガ精製システム、アマシャム精製システム、インビトロゲンライフテクノロジー精製、Mo-Bioラボラトリーズ精製システム等)を使用して分離できる。核酸を抽出する方法として、Trizol又はDNAzolを使用する液体抽出法の使用も挙げることができる。
【0098】
RNAは、様々な体液から分離できる。血液、プラズマ及び血清からRNAを分離分析する方法は、例えば、Tsui N B et al. Clin. Chem.48, 1647-53, 2002を参照。
【0099】
使用目的によっては、標的核酸は、RT-PCRを使用してRNAから作成される。使用目的によっては、標的核酸は、RT-PCR、その次にdPCRを行うことにより作成され、それらは、2つの互いに異なるステップ又は単一のステップで実行できる。使用目的によっては、標的核酸は、関心を引く標的配列を特異的又は非特異的に濃縮する別々の反応にて前増幅させる。
【0100】
IV. 増幅方法
上述の戦略及び原理は、単一又対プライマーからのテンプレートダイレクト伸長拡張に関する任意の増幅方法に組み込むことができる。ポリメラーゼ連鎖反応法は、任意にRT-PCRを含む1つの実装である。PCRは、プライマーアニーリング、プライマー伸長及びそのテンプレートからの伸長ストランドの変性ができる温度サイクルによって特徴づけられる。
【0101】
転写媒介増幅(TMA)は、1つ又は両方のプライマーがその5'末端のプロモーター(通常、T7プロモーター)に連結される代替の等温形態である。一旦、二本鎖プロモーターが形成されると、RNAポリメラーゼは、転写増幅を始める。増幅産物は、一本鎖RNA分子である。TMAは、逆転写につなげることもできる。
【0102】
本発明のプライマーを使用するのに適した他の等温増幅フォーマットは、ニッキング増幅反応(NEAR)である。NEARは、ポリメラーゼ及び切断酵素を使用して一定の温度でDNAを指数関数的に増幅させる。ニッキング増幅のためのプライマーは、その5'末端で人工セグメントに連結している。5'セグメントは、切断酵素のための切断部位を含む。第一サイクルにおいて、プライマーは、テンプレートにハイブリダイズして伸長する。次のサイクルにおいて、プライマーは、第一サイクル産物にハイブリダイズして伸長し、人工尾部上の完全なニッキングサイトを発生させることができる。一旦ニッキングサイトが形成されると、切断酵素が切断して、1つのストランドが放出される。伸長及び切断は、次のサイクルで繰り返される。
【0103】
本発明のプライマーを使用するのに適した他の等温増幅手順は、ループ媒介等温増幅又は(LAMP)である。LAMPは、本発明による非主流ヌクレオチドを有する1又は複数のプライマーを使用する。LAMPにおいて、標的配列は、複製活性に加えて2又は3セットのプライマー及び高ストランド変位活性を有するポリメラーゼを使用して60-65℃の一定温度で増幅される。一般的に、4つの異なるプライマーを用いて標的遺伝子上の6つの互いに異なる領域を高い特異性で同定する。追加の一対「ループプライマー」は、更に反応を加速させることができる。
【0104】
他の等温増幅フォーマットは、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)である。RPAは、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)に代わる単一のチューブでの等温増幅である。RPAプロセスは、3つのコアエンザイム、リコンビナーゼ、一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)及びストランド変位ポリメラーゼを使用する。リコンビナーゼは、二重鎖DNAにおける相同配列とオリゴヌクレオチドプライマーを対にすることができる。SSBは、DNAの変位ストランドに結合して、プライマーが変位する防止する。最後に、ストランド変位ポリメラーゼは、プライマーが標的DNAに結合した場所でDNA合成を開始する。PCRのように2つの対向するプライマーを用いて、標的配列が実際に存在する場合、指数関数的DNA増幅反応が開始する。2つのプライマーの両方は、上記の通り、非主流ヌクレオチドタイプを有するプライマーであってもよい。
【0105】
本発明のプライマーを用いることができる更に別の増幅フォーマットには、ストランド変位アッセイ、転写に基づく増幅システム、自家持続配列複製法(3SR)、ライゲーション鎖反応(時には、オリゴヌクレオチドリガーゼ増幅OLAと称される)、サイクルプローブ技術(CPT)、ローリングサークル増幅(RCA)、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA)、塩基配列に基づく増幅(NASBA)、侵入的開裂技術、ヘリカーゼ依存的増幅(I)、指数関数増幅(EXPAR)、ハイブリダイゼーション連鎖反応(HCR)、及び触媒ヘアピンアセンブリ(CHA)が含まれる。
【0106】
他の増幅フォーマットは、分析物が(人工配列を有することができる)核酸に連結されて分析物が核酸の増幅によって検出される免疫PCRである。かかる増幅は、非主流ヌクレオチドの相補体において非主流であるプライマー結合サイトに相補的な非主流ヌクレオチドタイプ(例えば、完全に不存在)を有するプライマー対を用いて実行することができる。
【0107】
上記方法は、選択されたプライマー及びそれらの相補的なプライマー結合サイトによって決定される所定の特異的標的核酸又はそのセグメントを増幅(言い換えると、標的特異的増幅)する。意図するプライマー結合サイトに結合する一対のプライマーからの増幅産物は、標的配列上のミスプライミング又はプライマー二量体結合のいずれかによって同じプライマー対からプライミングされた一部又は全部の他の増幅産物を支配する。好ましくは、意図するプライマー結合サイトに結合するプライマーからの増幅産物は、プライマー対からプライミングされた一部又は全部の他の増幅産物に対して(モル、質量又はコピー数で)少なくとも10、50、100又は1000倍過剰で存在する。ある方法において、1対のプライマーが増幅に用いられる。他の方法において、複数のプライマー対をマルチプレックス増幅に用いられる。プライマー対の数は、例えば2-50又はそれ以上とすることができ、好ましくは、5-25又は10-20又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20とすることができる。複数のプライマー対を用いると、意図するプライマー結合サイトへのプライマー対の結合からの各プライマー対の意図する増幅産物は、そのプライマー対によってプライミングされる一部又は全部の他の増幅産物に対して(モル、質量又はコピー数で)少なくとも10、50、100又は1000倍過剰に存在する。複数のプライマー対が同じ反応に存在する場合、各プライマー対の各プライマーは、同じ非主流標準ヌクレオチドタイプを好ましくは有する。好ましくは、ただ1つの標準ヌクレオチドタイプが、各プライマー対の各プライマーにおいて非主流である。この方法で使用するプライマーは、ほとんど又は全てのプライマー位置がランダムに占められる又はプライマー間でヌクレオチドが縮重しているランダムプライマーではない。むしろ、各プライマー対は、標的核酸の特異的プライマー結合サイトにハイブリダイズするように設計されており、一般的に、種々のプライマー対は、検出される標的核酸の種々のプライマー結合サイトが要求するように互いに関係してはいない。例えば、1つのプライマー対は、1つの病原体の標的核酸上のプライマー結合サイトに結合するように設計することができ、第二プライマー対は、種々の病原体の種々の標的核酸上のプライマー結合サイトに結合するように設計することができる。偶然の一致を除いて、種々の標的核酸及びその結果としてのプライマー結合サイト及びプライマーは、互いに関係してはいない。
【0108】
V. デジタル増幅
デジタル増幅(例えば、デジタルPCR又はdPCR)は、核酸に対する感度が高い定量法である。方法は、任意の正規化標準又は外部標準に依存することなく標的分子の数を直接計数することによって、核酸を検出及び定量できる。このようにして、標的分子の絶対数は、より限界が低く分子1コピーで決定できる。
【0109】
dPCR又は類似のデジタル増幅の他の形態を用いる戦略は、「分割及び克服(Divide and Conquer)」戦略と称することができる。サンプルは、初めに、希釈して、数千から何万ものマイクロ反応チャンバーに分割し、ほとんどの反応チャンバー(例えば、少なくとも50%、75%、<90%、95又は99%)は0又は1コピーの標的遺伝子配列(少数の反応チャンバーは、複数コピー含む可能性がある)を含む。陽性増幅結果を有する反応チャンバーの数を計数することによって、本来のサンプルにおける標的遺伝子分子の絶対数を決定できる。
【0110】
区画全体の標的分子の分布は、ポアソン過程とみなす(標的は、区画に関係なく定率となる)ことができる。従って、ある反応チャンバーが複数のコピーを受け入れていたとしても、ポアソン統計によって、陽性及び陰性区画の数から標的の初期の数のより正確な算出が可能になる。
【0111】
従来のPCR技術と比較して、dPCR又は他のデジタル増幅方法は、より少ない必要サンプル量、より少ない試薬消費量、核酸分子の絶対的定量、サンプル中の種々のコピー間の干渉の低減、及び高い感度並びに特異性を含む複数の効果があると考えられる。さらにまた、デジタル増幅の反応システムの標準分割プロセスは、標的配列と競合できるバックグラウンド配列の濃度を非常に減らすことができることから、デジタル増幅は、複雑な生物学的バックグラウンド(例えば、循環腫瘍細胞由来のDNA及びNIPT(非侵襲出生前試験)アプリケーションのためのcffDNA)における稀な変異の検出に特に適していてもよい。
【0112】
a. デジタル増幅プライマー
デジタル増幅は、1コピーのテンプレートを増幅する。従来型又は第一世代PCRのように、デジタル増幅も反応混合物に高濃度のプライマーが必要である。しかしながら、高濃度プライマーを用いることは、非標的産物(例えばプライマー-二量体又は非特異的増幅)が生じることになる。
【0113】
非標的プライマー-二量体産物は、意図された増幅産物よりもサイズ小さい傾向があり、それらが小さいため、意図された産物よりも高効率で増幅される。これによって、これらの産物間で反応内での競合が生じ、多くの場合、意図された増幅産物は、非標的プライマー-二量体産物から区別することができない。この反応は、DNAインターカレーティング染料によって、モニターされる。その結果として、プライマー二量体形成は、デジタル増幅の効率、感度及び特異性を妨げる。さらに、プライマー-二量体形成及び非特異的増幅の問題は、プライマーがハイスループットデジタル増幅において、多重化されるにつれて、顕著に現れる。
【0114】
この種の問題は、本願明細書に記載されているように、組成が限定されたプライマーを用いてデジタルPCR又は他の増幅を実行することによって、低減又は回避できる。そのようなプライマーは、デジタル増幅における効率、感度及び特異性を増加させることができる。
【0115】
本願明細書に記載されているプライマーのいずれかがデジタル増幅のために使用される。図5は、デジタル増幅において、用いることができる蛍光体標識プローブを含む非主流ヌクレオチドタイプを用いたプライマーの例を示している。
【0116】
使用目的によっては、本願明細書に提供される非主流ヌクレオチドタイプを用いたプライマーは、感度をより高めるためにペプチド核酸(PNA)に連結できる。
【0117】
使用目的によっては、ヌクレオチド組成が限定されたプライマーは、従来型のプライマーを用いた他の比較可能な反応と比較して70%、75%、80%、90%、95%、97%又99%超えだけ、単一又はマルチプレックスデジタル増幅におけるプライマー二量体形成を低減する。
【0118】
b. dPCRプラットフォーム
上記組成、方法及びキットは、現在知られている又は将来開発される様々な商用dPCRプラットフォームと共に用いることができる。
【0119】
用途に応じて、臨床医又は研究者は、必要なスループット及び精度要件又はその用途について、その技術的要求を満たすdPCRプラットフォームを選択できる。例えば、マイクロ流体チップに基づくdPCRは、パネル当たり数百区画まで有することができる。液滴に基づくdPCRは、通常、約20,000の分割液滴を有するが、最高10,000,000の分割液滴を有することができる。
【0120】
ある用途において、本開示により提供されるdPCR組成及び方法を、マイクロ流体チップに基づくdPCRに用いることができる。ある用途において、本開示により提供されるdPCR組成及び方法を、液滴に基づくdPCRに用いることができる。
【0121】
使用目的によっては、本開示により提供されるdPCR組成及び方法を、Fluidigmのマイクロ流体-チャンバーに基づくBioMark(登録商標)dPCRに用いることができる。使用目的によっては、本開示により提供されるdPCR組成及び方法を、マイクロウェルチップに基づくQuantStudio12k flex dPCRに用いることができる。使用目的によっては、本開示により提供されるdPCR組成及び方法を、Life Technologiesの3D dPCRに用いることができる。使用目的によっては、本開示により提供されるdPCR組成及び方法を、BioRad(登録商標)の液滴に基づくddPCR(ddPCR) QX100及びQX200に用いることができる。使用目的によっては、本開示により提供されるdPCR組成及び方法を、RainDance(登録商標)のRainDropに用いることができる。
【0122】
使用目的によっては、本願明細書に提供される方法は、非主流ヌクレオチドを含んでいない従来型プライマーを用いた他の比較可能なアッセイと比較して、70%、75%、80%、90%、95%、97%又は99%超えで、dPCR反応での定量又は検出の精度を高める。使用目的によっては、本願明細書に提供される方法は、従来型のプライマーを用いた比較可能なアッセイと比較して、70%、75%、80%、90%、95%、97%又は99%を超えで、dPCR反応での定量又は検出の感度を高める。
【0123】
デジタル増幅の他の形態は、同一又は類似のプラットフォームによって、実行できる。
【0124】
c. マルチプレックスdPCRアッセイ
デジタルPCR又は他の増幅は、多重(マルチプレックス)に実行できる。マルチプレックスアッセイは、生物学的物質が限定的又はレアであり、別々の分析のためにサンプルを分割することが不可能又は困難な用途において、特に有効である。場合によっては、マルチプレックス増幅アッセイは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21の異なる遺伝的変異(例えば、一塩基多型(SNP)、挿入、逆転、再配置、トランスバージョン、欠失、挿入欠失、マイクロサテライトリピート、ミニサテライトリピート、短いタンデムリピート、転移因子、大規模構造的染色体変異、メチル化及びそれらの組み合わせ)の定量の検出を可能にする。使用目的によっては、アッセイされる遺伝的変異は、種々の遺伝的変異の組み合わせである。
【0125】
使用目的によっては、マルチプレックスdPCRは、単一反応チューブにおける少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、60、70、80、90、又は100の異なる遺伝子変異の検出を可能にする。使用目的によっては、マルチプレックスdPCRは、単一反応チューブにおける少なくとも100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000の異なる遺伝子変異の検出を可能にする。
【0126】
d. 検出法
本開示の方法、組成及びキットで使用する増幅反応は、1又は複数のシグナルを発生させることができる。使用目的によっては、シグナルを発生させるために、増幅反応において又はその後に標識が用いられる。使用目的によっては、シグナルを発生させるために、増幅反応において、又はその後に染料が用いられる。
【0127】
使用目的によっては、標的核酸は、DNAインターカレーティング染料により検出される。本開示によって、用いることができるインターカレーティング染料の例としては、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム、アクリジンオレンジ、9-アミノ-6-クロロ-2-メトキシアクリジン(ACMA)、SYBRTMグリーン、SYBRTMグリーンII、SYBRTMゴールド、YO(オキサゾールイエロー)、TO(チアゾールオレンジ)、PG(PicoGreen(登録商標))、又は、EvaGreen(登録商標)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。陽性dPCR反応は、プライマーによって、発生するバックグラウンドシグナルを超えるそれらのシグナル強度の上昇によって、陰性dPCR反応から区別される。
【0128】
使用目的によっては、多重標的核酸又は遺伝子の変異体は、1つのdPCR反応において、同時に検出される。使用目的によっては、多重標的は、同じ標的座の2以上のアレルである。場合によっては、多重標的は、種々の標的座である。反応混合物は、2以上のプライマー対を含み、各対は、順方向プライマーと逆方向プライマーを含む。増幅産物の長さ及び/又はプライマー濃度を変化させることによって、種々の標的は、増幅産物のそれらのシグナル強度によって識別できる。プライマー単独によって発生するバックグラウンドシグナルとdPCR装置により制限される飽和シグナル強度との間の間隔によって、どれくらいの標的を1つのdPCR反応において多重化できるかが決定される。3つのヌクレオチド-タイププライマー(3Nプライマー)は、プライマー-プライマー相互作用を著しく低減することから、バックグラウンドシグナルが低減され、より多くの標的の多重化が可能になる。いくつかの実施形態において、多重アンプリコンが、1つの標的の定量化のために検出される。3つのヌクレオチド-タイププライマー(3Nプライマー)は、dPCR多重性を非常に増加させるため、生物学的サンプルにおいて、極めて低量な標的核酸の正確な定量が可能になる。
【0129】
使用目的によっては、dPCRの標的核酸は、蛍光体標識プローブ(例えば、Taqmanプローブ、Molecular Beacon及び消光物質標識相補的オリゴ(図5)と共に提供される蛍光体標識プライマー)で検出される。別の実施形態において、dPCRの標的核酸は、DNAインターカレーティング染料及び蛍光体標識プローブの組み合わせにより検出される。
【0130】
「蛍光体標識」又は「蛍光体」は、約350と900nmの間に最大蛍光発光を有する化合物とすることができる。
【0131】
本開示により使用される蛍光体の例は、5-FAM(5-カルボキシフルオレセインとも称される、スピロ(イソベンゾフラン-l(3H)'9'-(9H)キサンテン)-5-カルボン酸'3',6-ジヒドロキシ-3オキソ6-カルボキシフルオレセインとも称される)、5-ヘキサクロロ-フルオレセイン、([4,',2',4,5',7'-ヘキサクロロ'(3',6-ジピバロイル-フルオレセイニル-6-カルボン酸])、6-ヘキサクロロ-フルオレセイン、([4,',2',4,5',7'-ヘキサクロロ'(3',6-ジピバロイルフルオレセイニル-5-カルボン酸])、5-テトラクロロ-フルオレセイン、([4,',2',7'-テトラクロロ'(3',6-ジピバロイルフルオレセイニル)-5-カルボン酸])、6-テトラクロロ-フルオレセイン、([4,',2',7'-テトラクロロ'(3',6-ジピバロイルフルオレセイニル)-6-カルボン酸])、5-TAMRA(5-カルボキシテトラメチルローダミン)、キサンチリウム,9-(2,4-ジカルボキシフェニル)-3,6-ビス(ジメチルアミノ)、6-TAMRA(6-カルボキシテトラメチルローダミン)、9-(2,5-ジカルボキシフェニル)-3,6-ビス(ジメチルアミノ)、EDANS-5-((2-アミノエチル)アミノ)ナフタレン-l-スルホン酸)、1,5-IAEDANS(5-((((2-ヨードアセチル)アミノ)エチル)アミノ)ナフタレン-l-スルホン酸)、Cy5(インドジカルボシアニン-5)、Cy3(インド-ジカルボシアニン-3)、及び、BODIPY FL(2,6-ジブロモ-4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸)、QuasarTM-670染料(Biosearch Technologies)、Cal FluorTMオレンジ染料(Biosearch Technologies)、Rox染料、Max染料(Integrated DNA Technologiesとその誘導体を挙げられるが、これらに限定されるものではない、
【0132】
「消光物質」は、ドナーに結合又はそれに近接すると蛍光ドナーからの放出を減弱させることができる分子又は化合物の一部であってもよい。消光は、蛍光共鳴エネルギー移動、光誘導性電子伝達、及び項間交差の常磁性強化、デクスター交換カップリング及び励起子相互作用(例えばダークコンプレックスの形成)を含むいくつかのメカニズムによって、発生させることができる。
【0133】
蛍光は、蛍光体が発する蛍光が、消光物質がない場合の蛍光と比較して少なくとも10% (例えば、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%)減弱した場合、「消光」できる。消光物質の選択は、蛍光体の素性に依存できる。本開示で使用する消光物質の例としては、DABCYL、Black HoleTM Quenchers(BHQ-1、BHQ-2及びBHQ-3)、Iowa BlackTM FQ及びIowa BlackTM RQを挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
使用目的によっては、蛍光体と消光物質は、従来技術において、知られているプライマーを使用する方法で接続できる。一般的に、蛍光体は、切断部位のホットスタートプライマー5'の5'部分に接続できる。蛍光体は、標準ホスホロアミダイト化学物質によるオリゴヌクレオチド合成の間に加えることができる。それらは、オリゴ合成の間、適切な官能基を有するリンカーを導入することによって、合成後に追加することもできる。合成後、蛍光体は、オリゴヌクレオチド官能基に接続できる。より長い配列の場合、効果的な消光を可能にするために、プライマーの標的領域の外側と蛍光体に近接する3'配列は、ヘアピンのステム-グループ(即ち、分子的ビーコン)の形成ができるように部分的に相補的にすることができる。従って、プライマーは、標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズして、ポリメラーゼにより延長される一方で、蛍光体は、プライマーと共に残ることができる。消光物質は、切断部位のホットスタートプライマー3'の3'部分に接続できる。従って、プライマーは、標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする一方で、消光物質をプライマーから放出できるため、プライマーに接続したままの蛍光体をもはや消光できない。蛍光体及び消光物質を接続する適切なサイト及び蛍光体と消光物質との間の距離は、従来技術において、知られている。場合によっては、蛍光体は、プライマーの消光物質から、約若しくは少なくても10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、又は50塩基又はそれら超え若しくは未満で配置される。
【0135】
使用目的によっては、標的核酸の検出は、図6A-Bに示すように二段階の方法を用いて成し遂げることができる。一実施形態として、3つの順方向ヌクレオチド-タイププライマーは、汎用人工3N配列(C1)の5'末端に連結され、他の3つの逆方向ヌクレオチド-タイププライマーは、種々の汎用人工3N配列(C2)の5'末端に連結される。次に、一対の共通プライマー(CF及びCR)がdPCR反応に提供される。CFプライマーは、C1と同じ配列を有し、CRプライマーは、C2と同じ配列を有する。反応の初期段階において、特異的プライマーC1-F及びC2-Rは、テンプレートにハイブリダイズして、2つの末端でC1及びC2を有するアンプリコンを発生させる。反応の後期段階において、共通プライマーCF及びCRは、反応に参加して反応を支配する。単一の反応溶液における多重標的を検出するある用途において、各特異的標的のための特異的プライマーは、その5'末端に取り付けられた同一又は互いに異なる共通配列を有することができる。単一反応における多重標的は、共通順方向プライマー配列(CF)又は共通逆方向プライマー配列(CR)と関連した検出プローブを用いて、図5で説明するように、共通プライマーの1つ又は複数のセットによって検出できる。
【0136】
e. 分析
上記組成、方法及びキットは、病的状態又は他の表現型を伴う様々なゲノム変化の分析を導くために用いることができる。
【0137】
上記方法は、特定の疾患に関する全染色体又は同義遺伝子の染色体異常の分析を実行するために用いることができる。代表的な手順には、参照染色体又はそのセグメントのコピー数に対する標的染色体(又は、そのセグメント)のコピー数又は野生型アレルに対する変異アレルのコピー数を比較することを含むことができる。かかる分析法は、例えば、トリソミー検出又は性の決定において用いることができる。
【0138】
上記方法は、単一遺伝子(例えば特定の疾患に関する欠失又は点変異(例えば、一ヌクレオチド変化))の分析を実行するために用いることができる。遺伝子における点変異又は小さな欠失を検出するための代表的な手順には、野生型アレルに対する変異アレルの量を比較することを含むことができる。一遺伝子の欠失を検出するための代表的な手順には、参照遺伝子のコピー数に対する標的欠失遺伝子のコピー数を比較することを含むことができる。
【0139】
上記方法は、特定の疾患に関するSNP-会合分析を実行するために用いることができる。代表的な手順には、相対的参照ハプロタイプ量に対する父性又は母性遺伝の一塩基多型(SNP)の量を比較することを含むことができる。使用目的によっては、代表的な手順には、優先アレル不均衡分析(PAI)を含むことができる。PAIは、疾患に関連した遺伝的SNPが野生型アレルに対して優先して保持されるときに発生する。PAI分析は、野生型アレルに対する、疾患に関連した遺伝的SNPを有するアレルのコピー数を比較することを含むことができる。
【0140】
上記方法は、後成的発現分析を実行するために用いることができる。DNAメチル化は、がん及び神経変性障害において、重要な役割を果たす。代表的な手順には、対照サンプル由来の標的領域のメチル化レベルに対する、病気に罹患したサンプルの標的領域由来のメチル化レベルを比較することを含むことができる。
【0141】
本開示と共に用いることができる他の分析法は、Butchbach, M.E.R. Biomolecular Detection and Quantification 10: 9-14 (2016)に記載又は参照されている。
【0142】
VI. コンピューター実装
プライマー結合サイト及びプライマーの選択は、非一時的コンピューター可読記録媒体にプログラムされているコンピューターにおける標的核酸のコンピューター実装分析によって実行することができる。標的核酸(1つ又は両方のストランド)の配列は、コンピューターに受信される。コンピューターは、所望のヌクレオチド組成のプライマー(例えば、A、T、C)もユーザー入力によって保存又は受信する。次に、コンピューターは、標的配列をサーチし、プライマー組成に最も密接に対応する増幅と適合する互いの距離の中で順方向及び逆方向プライマー結合サイトを同定するようにプログラムされている。プライマー組成がA、T、Cである場合、順方向及び逆方向プライマー結合サイトは、A、T及びGに最も密接に対応しなければならない。コンピューターは、逆のストランド上の順方向及び逆方向プライマー結合サイトを同定することができる、又は同じストランド上の逆方向プライマー結合サイト及び順方向プライマー結合サイトの相補体を同定してその相補体から順方向プライマー結合サイトを算出することができる。次に、コンピューターは、プライマー結合サイトの候補対を出力することができる。そして、程度を様々なものに変えて理想的な組成を探してもよい。コンピューターは、プライマー結合サイト対の各々にハイブリダイズするプライマー設計を示すこともできる。多重プライマー設計は、非主流ヌクレオチドの種々の数のユニット及び種々の数のミスマッチを有する同じプライマー結合サイト対について示すことができる。
【0143】
コンピューターシステムは、主要なサブシステム(例えば中央プロセッサー)と相互接続するバスと、システム記憶装置と、入出力制御装置と、外部デバイス(例えばパラレルポートを経たプリンター)と、ディスプレイアダプターを経たディスプレイスクリーンと、シリアルポートと、キーボードと、固定ディスクドライブと、インターネット接続と、を備える。多くの他のデバイス(例えばI/Oコントローラを経たスキャナ、シリアルポートに接続したマウス又はネットワークインタフェース)を接続することができる。多くの他のデバイス又はサブシステムを同様の方法で接続してもよい。また、後述するように、本発明を実施するために存在する全てのデバイスは必ずしも必要ではない。デバイス及びサブシステムは、種々の方法で相互接続することができる。本発明を実施するソースコードは、システムメモリーにおいて操作可能な状態で配置したり、記録媒体(例えば、固定ディスク、コンパクトディスク等)に保存したりすることができる。コンピューターシステムは、他の可能性のあるメインフレーム、PC、表又は携帯電話であってもよい。
【0144】
VII. キット
キットは、本願明細書に記載した上記方法及び用途を実行するために提供される。
【0145】
キットは、組成物、試薬、デバイス及び方法を実行する又は特定の生体サンプルのタイプを試験する方法についての指示を多くの場合含むことができる。所望の方法に応じて、キットは、1又は複数の以下の要素を含むことができる:試薬、プライマー、反応混合物、バッファー、酵素(例えばエンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、リガーゼ、ポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、DNAポリメラーゼ、ホット-スタートポリメラーゼ、逆転写酵素、トポイソメラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ)、抗体、プライマー、プローブ、染料、実験的スタンダード(例えば核酸、DMR-核酸など)、デバイスを駆動して指示するコンピュータソフトウェア(例えば、プロセッサーに指示するコンピューター実行可能論理)及びユーザー又は技術スタッフ(例えば、本願明細書に提供される方法を実施するための研究者又は臨床医)のための指示書。アッセイにおいて、使用するDNAポリメラーゼ及び非主流プライマーは、例えば、適切な保管バッファー又は凍結乾燥若しくは凍結乾燥状態において、長期安定性を示す状態で保存できる。加えて、キットは、DNAポリメラーゼのためのバッファーを更に備えることができる。
【0146】
いくつかの実施形態において、キットは、疾患を患っている患者の診断、薬反応測定、予後診断及び臨床検出に加えることができる又はそれを高めることができる追加の下流の方法によって検出が可能なるデバイス又は試薬を更に備えることができる。
【0147】
他の実施態様において、キットは、遺伝子プロファイリングのデータ分析のためのソフトウェアパッケージを更に備えることができ、比較のための参照遺伝子プロファイルも備えることができる。使用目的によっては、キットソフトウェアパッケージは、ヘルスケアプロバイダーに対する疾患状態、薬物相互作用又は治療提案についての推奨を含む報告書を作成する、データ分析を実行するためのセントラルサーバーへの接続を備える。使用目的によっては、キットで提供される報告書は、紙又は電子報告書とすることができる。それは、キットで提供されるコンピュータソフトウェアが作成したり、ユーザーがアップロードするコンピュータサーバーが作成したりすることができる。上記コンピュータサーバーは、報告書を作成する。
【0148】
いくつかの実施形態において、報告書には、予後診断(例えば予測される全生存、治療法に対する予測される反応、予測される無症候生存、予測される無進行生存、又は、予測される非再発生生存)を含めることができる。報告書には、状態の診断を含めることができる。報告には、治療の様式(例えば、特定の薬で治療すること又はその治療を停止すること)に関する推奨を含めることができる
【0149】
いくつかの実施形態において、キットは、本開示により提供される反応混合物を更に備える。ある実施形態において、上記キットは、特定の種の特異的遺伝子を増幅するための一組の非主流プライマーを更に備え、標的配列の少なくとも一つの末端を増幅するためのプライマーは、ホットスタートプライマー及び任意に非ホットスタートプライマーを含む。
【0150】
いくつかの実施形態において、キットは、標的ポリヌクレオチドの第一配列に相補的である非主流プライマーを備え、非主流プライマーは、(a) 第一配列の範囲内で存在している標的座に対応する位置の第一ヌクレオシド残基、(b) 標的座に対応する5'の位置に近接してプライマーに接続される蛍光体、及び(c) 標的座に対応する3'の位置に近接して第一プライマーに接続される消光物質を備える。
【0151】
いくつかの実施形態において、キットは、サンプル由来の核酸の選択的増幅のための試薬を備える。キットは、(a) 第一及び/又は第二非主流プライマーと、(b)核酸を増幅するための手引書とを備え、各プライマーは、3'末端と5'末端を備え、各プライマーは、増幅される核酸の一部又はその相補体に相補的であり、少なくとも一つの非主流プライマーは、(i) 第一配列の範囲内に存在している標的座に対応する位置の第一非主流プライマー、(ii) 標的座に対応する5'の位置に近接してプライマーに接続した蛍光体、及び(iii) 標的座に対応する3'の位置に近接して第一プライマーに接続した消光物質、を含む。キットは、DNAポリメラーゼを任意に備えることができる。
【0152】
さらなる実施形態において、キットは、核酸の選択的増幅のための試薬を含む。キットは、(i) RNaseH切断可能ドメインを含む3'末端及び5'末端を有するオリゴヌクレオチドプローブ、(ii) 蛍光体及び消光物質、を備え、切断可能ドメインは、蛍光体と消光物質の間に位置し、プローブは、増幅される標的核酸の一部又はその相補体に相補的である。
【0153】
アプリケーションのための方法及びキット開示しているプライマー又はプローブのいずれかをキットに組み込むことができる。使用目的によっては、キットは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、又は90のプライマー対又はプローブを含む。かかるキットは、好ましくは、少なくとも1つのプライマー対と、好ましくは、少なくとも5つ、20又は、20のプライマー対を含む。キットのプライマー対は、好ましくは、それらが同じ非主流ヌクレオチドタイプと同様に適合する融解温度を有することを意味する同じ多重反応に用いることができる。
【0154】
a. 使用目的及び方法
本開示は、様々な疾患、感染のタイプ及び調査関連アプリケーションに対する薬反応を検出、診断、予後診断、モニター又は予想するのに用いることができる組成物、方法及びキットを提供する。
【0155】
b. がん
がんは、遺伝的な異常の疾患である。個人用にカスタマイズされた腫瘍学的医薬品の出現において、がんの臨床処置は、腫瘍遺伝子タイピングへ移行している。本開示は、がん患者における薬の反応を検出、診断、予後診断、モニター、又は予測する方法を提供する。
【0156】
簡潔にいえば、代表的なプロセスは、がんに罹患している又はそれの疑いがある患者から生体サンプルを得ることから始める。次に、関心を引く核酸を生体サンプルから抽出及び分離する。そして、単離した核酸を増幅してPCRアンプリコンを標的DNAにする。PCRアンプリコンを精製して希釈し、dPCR反応混合物に分割する。dPCR反応が完了した後、データを読み込んで分析し、1又は複数の遺伝的な異常(例えば、特異的アレルの変異性状態、SNPの存在、ヘテロ接合の減少、コピー数バリエーションの定量化、遺伝子形質発現レベルの定量化、核酸メチル化状況又は遺伝子再構成の検出)の状況又は絶対的定量化を同定する。一般的に、遺伝的な異常は、Vogelstein, et al., Science. 2013 March 29、 339(6127)に記載されている通り、がん遺伝子、がん抑制遺伝子、DNA増幅、DNA合成、DNA組換又はがんの兆候、進行又は薬の反応に相関していることが知られている他の遺伝子(例えば、BRCA1遺伝子、p53遺伝子、APC遺伝子、Her2/Neu増幅、Bcr/AB1、K-ras遺伝子、ヒトパピローマウイルスタイプ16及び18又はがんに関する他のドライバー又はパッセンジャー変異) に影響を及ぼす。使用目的によっては、上記方法は、特定のがんと関連した臨床症状の有無を使用することを含むこともできる。
【0157】
ある実施形態において、特異的アレルにおける変異の検出、コピー数バリエーションの増加、遺伝子発現レベルの増加、過剰メチル化状況又は遺伝子再構成の検出、又はその組み合わせによって、がんの存在又はがんのグレードが診断される。ある実施形態において、特異的アレルにおける変異の欠如の検出、コピー数バリエーションの減少、遺伝子発現レベルの減少、低メチル化状況又は遺伝子再構成がされていないことの検出、又はその組み合わせによって、がんの存在又はがんのグレードが診断される。
【0158】
いくつかの実施形態において、特異的アレルにおける1又は複数の変異、コピー数バリエーションの増加、遺伝子発現レベルの増加、過剰メチル化状況又は遺伝子再構成の検出、又はその組み合わせによって、がんの非存在が診断される。ある実施形態において、特異的アレルにおける変異の欠如の検出、コピー数バリエーションの減少、遺伝子発現レベル之減少、低メチル化状況又は遺伝子再構成がされていないことの検出、又はその組み合わせによって、がんの非存在が診断される。
【0159】
ある実施形態において、特異的アレルにおける変異の検出、コピー数バリエーションの増加、遺伝子発現レベルの増加、過剰メチル化状況又は遺伝子再構成の検出、又はその組み合わせによって、良好な結果が予測される。ある実施形態において、特異的アレルにおける変異の欠如の検出、コピー数バリエーションの減少、遺伝子発現レベルの減少、低メチル化状況又は遺伝子再構成がされていないことの検出、又はその組み合わせによって、良好な結果が予測される。
【0160】
ある実施形態において、特異的アレルにおける変異の検出、コピー数バリエーションの増加、遺伝子発現レベルの増加、過剰メチル化状況又は遺伝子再構成の検出、又はその組み合わせによって、悪い結果が予測される。ある実施形態において、特異的アレルにおける変異の欠如の検出、コピー数バリエーションの減少、遺伝子発現レベルの減少、低メチル化状況又は遺伝子再構成がされていないことの検出、又はその組み合わせによって、悪い結果が予測される。
【0161】
本方法によって、使用できるがんのタイプとして、急性骨髄性白血病、膀胱がん(上方胆道腫瘍及び前立腺の尿路上皮性癌腫を含む)、骨がん(軟骨肉腫、ユーイング肉腫及び骨肉腫を含む)、乳がん(非侵襲性、侵襲性、葉状腫瘍、ページェット病及び妊娠中の乳がんを含む)、中央神経系がん、成人低悪性度浸潤性テント上神経膠星状細胞腫/希突起膠細胞腫、成人頭蓋内上衣細胞腫、未分化星状細胞腫/未分化希突起膠細胞腫/多形神経膠芽腫、限局型(1-3)転移性病変、多発性(>3)転移性病変、癌性リンパ腫髄膜炎、非免疫抑制性一次CNSリンパ腫及び転移性脊椎腫瘍、子宮頸がん、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸がん、直腸がん、肛門癌、食道がん、胃がん、頭頸部がん(篩骨洞腫瘍、上顎洞腫瘍、唾液腺腫瘍、口唇のがん、口腔のがん、口腔咽頭のがん、下咽頭のがん、原発不明、声門喉頭のがん、声門上の喉頭のがん、鼻咽腔のがん及び進行した頭頸部がんを含む)、肝胆嚢がん(肝細胞癌、胆嚢がん、肝内胆管癌腫及び肝外胆管癌腫を含む)、ホジキン病/リンパ腫、肝臓がん、黒色腫、多発性骨髄腫、全身性軽鎖アミロイド症、ワルデンストレームのマクログロブリン血、脊髄形成異常症候群、神経内分泌腫瘍(多発性内分泌腫瘍1型、多発性内分泌腫瘍2型、カルチノイド腫瘍、島細胞腫瘍、褐色細胞腫、低分化/小細胞/非定型肺カルチノイドを含む)、非ホジキンリンパ腫'慢性リンパ球性白血病/小さいリンパ球性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、周辺帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、AIDS-関連B細胞リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、及び菌状息肉腫/セザリー症候群を含む)、非黒色腫皮膚がん(基底及び鱗状細胞皮膚がん、隆起性皮膚線維肉腫、メルケル細胞癌腫を含む)、非小細胞肺がん(NSCLC) (胸腺悪性腫瘍を含む)、原発不明、卵巣がん(上皮卵巣がん、境界型上皮卵巣がん(低悪性度)及び一般的ではない卵巣組織構造を含む)、膵性腺癌、前立腺がん、小細胞肺がん及び肺神経内分泌腫瘍、軟部組織肉腫(軟組織肢、腹膜後、腹腔内肉腫及びデスモイドを含む)、睾丸がん、胸腺悪性腫瘍(甲状腺癌、瘤評価、乳頭状癌、濾胞状癌、Hiirthle細胞腫瘍、髄様癌及び未分化癌腫を含む)、子宮腫瘍(子宮体がん及び子宮肉腫を含む)を挙げられるが、これらに限定されるものではない、
【0162】
c. 自己免疫疾患
自己免疫疾患は、遺伝的感受性の高い個人において、発症するように見える共通状態である。ゲノム全体の分析は、自己免疫疾患に関する300個以上の感受性遺伝子座の発見につながった。Gutierrez-Arcelus et al. Nature Reviews Genetics 17, 160-174, Feb (2016)を参照。さらにまた、ゲノム全体のミクロサテライトスクリーニング及び大規模一塩基多型(SNP)関連調査は、全身性エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、若年性関節炎、多発性硬化症及び糖尿病を含む特異的自己免疫疾患と関連している染色体座を同定した。Gutierrez-Roelens et al., Curr Mol Med. 2008 Sep、8(6):551-61を参照。
【0163】
本開示の追加の用途は、自己免疫疾患を進行させるリスクに関連する公知の300個の感受性遺伝子又は染色体座のうちの1又は複数を生体サンプルが有するか否かを決定することによって、自己免疫疾患を検出、診断、予後診断又は、モニターする方法を提供する。
【0164】
簡潔にいえば、代表的なプロセスは、がんに罹患している又はその疑いがある患者から生体サンプルを得ることから始める。次に、関心を引く核酸を生体サンプルから抽出及び分離する。そして、単離した核酸を増幅してPCRアンプリコンを標的DNAにする。PCRアンプリコンを精製して希釈し、dPCR反応混合物に分割する。dPCR反応が完了した後、反応に関するデータを読み込んで分析し、本願明細書で提供される1又は複数の感受性遺伝子座の有無を同定する。使用する分析は、調査される座に依存する。上記方法には、特定の自己免疫疾患と関連した臨床症状の有無を評価することを含めることもできる。
【0165】
ある実施形態において、野生型と比較して生体サンプルが1又は複数の感受性遺伝子又は染色体座(例えば、座の特徴のセット(例えば、ミクロサテライト、SNP))を有するという測定結果は、自己免疫疾患の進行のリスクが高くなっていることを明示する。いくつかの実施形態において、野生型と比較して生体サンプルが1又は複数の感受性遺伝子又は染色体座を含まないという測定結果は、自己免疫疾患の進行のリスクが高くなっていることを明示する。
【0166】
いくつかの実施形態において、野生型と比較して生体サンプルが1又は複数の感受性遺伝子又は染色体座(例えば、座の特徴のセット(例えば、ミクロサテライト、SNP))を有するという測定結果は、自己免疫疾患の進行のリスクが低くなっていることを明示する。いくつかの実施形態において、野生型と比較して生体サンプルが1又は複数の感受性遺伝子又は染色体座を含まないという測定結果は、自己免疫疾患の進行のリスクが低くなっていることを明示する。
【0167】
いくつかの実施形態において、野生型と比較して生体サンプルが1又は複数の感受性遺伝子又は染色体座を有するという測定結果は、良好な結果を予測する。いくつかの実施形態において、野生型と比較して生体サンプルが1又は複数の感受性遺伝子又は染色体座を含まないという測定結果は、良好な結果を予測する。
【0168】
いくつかの実施形態において、野生型と比較して生体サンプルが1又は複数の感受性遺伝子又は染色体座を有するという測定結果は、悪い結果を予測する。いくつかの実施形態において、野生型と比較して生体サンプルが1又は複数の感受性遺伝子又は染色体座を含まないという測定結果は、悪い結果を予測する。
【0169】
さらに、本開示の方法は、米国特許第5641864及び6617171号で記載されている、自己免疫疾患を調査する他の手段を更に含むことができる。
【0170】
d. 神経障害
多くの神経障害は、脳、脊髄、末梢神経又は筋肉の正常機能に影響を及ぼす遺伝子の一変異又は染色体変異によって引き起こされる。この種の変異の多くは、小児神経障害を引き起こす。それでも、他の神経障害は、いくつかの遺伝子及び環境要因によって引き起こされる複合障害である。
【0171】
ここで、我々は、染色体異常及び一遺伝子欠失によって引き起こされる神経疾患を検出、診断、予後診断又はモニターするための方法を提供する。要するに、代表的なプロセスは、がんを患っている又はその疑いのある患者から生体サンプルを得るところから始める。次に、関心を引く核酸を生体サンプルから抽出及び分離する。そして、単離した核酸を増幅してPCRアンプリコンを標的DNAにする。PCRアンプリコンを精製して希釈し、dPCR反応混合物をと接触するに分割される。dPCR反応が完了した後、データを読み込んで、陽性反応を計数し、疾患と関連した染色体異常を含む標的DNAの有無、変異性状況又は絶対的定量化を決定する。上記方法には、神経疾患と関連した臨床症状の有無を使用することを含めることもできる。
【0172】
本願明細書で提供する方法と共に使用される染色体異常によって引き起こされる神経疾患の例としては、トリソミー13、トリソミー18、及び、トリソミー21、モザイク過剰マーカー同腕染色体12p(iso12p)の存在の検出によるパリスター-キリアーン、欠損領域中のコピー数変化を定量化による染色体22q11微小欠失症候群、染色体22q11のDFNB1座中の欠失を量的に測定することによる常染色体劣性非症候性感音難聴を挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0173】
本願明細書で提供する方法と共に使用する一遺伝子欠損又は点変異によって引き起こされる神経疾患の例としては、一遺伝子(SMN1(生存運動ニューロン1))の欠損を検出することによって決定できるSMA障害、遺伝子(HBA1/HBA2(アルファ-グロビン))の欠損の検出による東アジア型アルファ(0)-地中海貧血症障害、(GCM2(ホモログ2、GCM2(T370M)及びGCM2(R367Tfs*)欠損グリア細胞)の変異性状態を決定することによる副甲状腺機能低下症型疾患、MAP3K3(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ3、MAP3K3(I441M))の変異性状態を決定することによる疣状ビーナス(Verrucous Venus)形成異常型疾患、PIK3CA(ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸3-キナーゼのアルファ触媒サブユニット、PIK3CA(C420R)、PIK3CA(E542K)、PIK3CA(E545K)、PIK3CA(H1047R)及びPIK3CA(H1047L))の変異性状態を決定しているリンパ性形成異常及びクリッペル-トレノネー症候群、SMAを有するSMN1(SMN1(Y272C))の変異性状態を決定することによるトレノネー症候群、マキューン-アルブライト症候群及びGNAS(GTP結合タンパク質(Gs-アルファ)の刺激性アルファ-サブユニット、GNAS(R201C))を挙げられるが、これらに限定されるものではない。多くの場合に、疾患関連遺伝子内変異は、次世代配列決定を使用して最初に同定された。
【0174】
本開示と共に用いることができる神経障害の例としては、エーディ症候群、副腎白質ジストロフィー、脳梁の無形成、失認、アイカルディ症候群、アイカルディ-グティエール症候群障害、AIDS-神経学的合併症、アカシジア、アルコール関連障害、アレクサンダー病、エイリアンハンド症候群(無秩序手)、アロキリア、アルパース病、 高山病、片麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、無脳症、動脈瘤、エンジェルマン症候群、血管腫症、無酸素症、抗リン脂質症候群、失語症、失行症、くも膜嚢胞、くも膜炎、アーノルドキアリ奇形、アスペルガー症候群、動静脈奇形、運動失調、運動失調及び小脳又は脊髄小脳変性症、毛細血管拡張性運動失調症、心房細動、脳卒中、注意欠陥多動性障害、聴覚処理障害、自閉症、自律神経機能障害、腰痛、バース症候群、バッテン病、ベッカー病、ベーチェット病、ベル麻痺、良性本態性眼瞼痙攣、良性限局性筋萎縮症、良性頭蓋内圧亢進症、ベルナルトロス症候群、両側前頭頭頂多小脳回、ビンスワンガー病、眼瞼けいれん、ブロッホスルツバーガー症候群、腕神経叢出生障害、上腕神経叢損傷、ブラッドバリーエグルストン症候群、脳腫瘍又は脊髄腫瘍、脳膿瘍、脳動脈瘤、脳損傷、脳損傷、脳腫瘍、ブラウンセカード症候群、球棘筋萎縮症、CADASIL(常染色体優性脳症、皮質下梗塞及び白質脳症)、カナバン病、手根管症候群、カウザルギー、海綿状血管腫、海綿状血管腫、海綿状奇形、中枢性頸髄症候群、中枢性脊髄症候群、中枢性疼痛症候群、中枢橋ミエリン溶解、中心核ミオパシー、頭部障害、セラミダーゼ欠乏症、小脳変性症、小脳低形成症、脳動脈瘤、脳動脈硬化症、脳萎縮、脳脚気、脳海綿状血管奇形、脳巨人症、脳低酸素症、脳性麻痺、脳血管炎、脳血管炎、脳血管炎、脳血管障害、頸部脊柱管狭窄症、シャルコーマリートゥース病、キアリ奇形、コレステロールエステル蓄積症、舞踏病、舞踏白斑症、慢性疲労症候群、慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、慢性起立性不耐性、慢性疼痛、II型コケイン症候群、コフローリー症候群、脳ヘルニア、昏睡、複雑性局所疼痛症候群、圧迫性神経障害、脳震盪、先天性顔面麻痺、先天性筋無力症、先天性筋障害、先天性血管海綿状奇形、皮質基底核変性症、頭蓋動脈炎、頭蓋骨癒合症、クリー脳炎、クロイツフェルトヤコブ病、累積外傷障害、クッシング症候群、細胞巨大封入体疾患(CIBD)、サイトメガロウイルス感染、ダンシングアイダンシングフット症候群(オプソクローヌスミオクローヌス症候群)、ダンディウォーカー症候群(DWS)、ドーソン病、減圧症、デモルシエ症候群、デジェリンクランプケ麻痺、デジェリンソッタス病、遅発性睡眠相症候群、認知症、認知症-多梗塞、認知症-意味論的、認知症-皮質下、レビー小体型認知症、歯状小脳運動失調、歯状核萎縮、うつ病、皮膚筋炎、発達性嚥下障害、デビック症候群、糖尿病、糖尿病性ニューロパシー、びまん性硬化症、ドラベット症候群、自律神経失調症、計算力障害、失読症、失読症、嚥下障害、失読症、失調症、小脳筋ミオクロニカ、失調症、小脳硬化症、ジストニア、ジストニア、初期のてんかんてんかん、エンプティセラ症候群、脳炎、無脳性脳炎、脳ヘルニア、脳症、脳症(家族性乳児)、脳門脈血管症、腸症、てんかん、てんかん性片麻痺、脳性麻痺、エルブ-デュシェンヌ及びデジュリン-クルンプケ麻痺、紅斑痛、本態性振戦、橋外ミエリン溶解、ファブリー病、ファール症候群、失神、家族性自律神経障害、家族性血管腫、家族性特発性大脳基底核石灰化、家族性周期性麻痺、家族性痙性麻痺、ファーバー病、熱性けいれん、線維筋異形成症、線維筋痛症、フィッシャー症候群、フロッピー幼児症候群、足つぼ、フォービル症候群、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症、ゴーシェ病、全身性神経節症ガーストマン症候群、ジャーストマンストラウスラーシャインカー病、巨軸索神経障害、巨細胞動脈炎、巨細胞封入疾患、グロボイド細胞白質ジストロフィー、舌咽神経痛、グリコーゲン蓄積症、灰白質異所症、ギランバレー症候群、ハレルフォルデン-スパッツ病、頭部外傷、頭痛、片頭痛、片側顔面痙攣、片麻痺、片麻痺、遺伝性ニューロパシー、遺伝性痙性対麻痺、遺伝性痙性多発神経炎、帯状疱疹、帯状疱疹ヘルペス、平山症候群、ホームズ-アディ症候群、全前脳症、HTLV-1関連脊髄症、HIV感染症、ヒューズ症候群、ハンチントン病、水無脳症、水頭症、水頭症-正常圧、水脊髄症、コルチゾール亢進症、高眠症、高血圧、高緊張症、低緊張症、低酸素症、免疫介在性脳脊髄炎、封入体筋炎、色素失調症、乳児低緊張症、乳児神経軸索ジストロフィー、乳児フィタン酸蓄積症、乳児リフサム病、乳児けいれん、炎症性ミオパシー、炎症性ミオパシー、脳脊髄炎、腸脂肪異栄養症、頭蓋内嚢胞、頭蓋内高血圧、アイザック症候群、ジュベール症候群、カラック症候群、カーンズセイヤー症候群、ケネディ病、キンズボーン症候群、クレインレビン症候群、クリッペルファイル症候群、クリッペルトレノネイ症候群(KTS)、クルバービュシー症候群、コルサコフの健忘症候群、クラッベ病、クーゲルベルクウェランダー病、クル、ラフォラ病、ランベルトイートン筋無力症症候群、ランダウクレフナー症候群、外側大腿皮膚神経捕捉、側方髄質(ワレンベルク)症候群、学習障害、リー病、レノックスガストー症候群、レッシュナイハン症候群、白質ジストロフィー、レビンクリチリー症候群、レビー小体型認知症、脂質蓄積症、リポイドタンパク症、滑脳症、ロックイン症候群、ルーゲーリック病、腰椎椎間板疾患、腰部脊柱管狭窄症、狼瘡-神経性後遺症、ライム病-神経性後遺症、マチャドジョセフ病(脊髄小脳性運動失調3型)、巨脳症、マクロプシー、巨脳症、メルケルソンローゼンタール症候群、メニエール病、髄膜炎、髄膜炎及び脳炎、メンケス病、髄膜痛、異染性白質ジストロフィー、代謝障害、小頭症、ミクロプシー、片頭痛、ミラーフィッシャー症候群、ミニストローク(一過性虚血発作)、ミソフォニア、ミトコンドリアミオパシー、メビウス症候群、メビウス症候群、単量体性筋萎縮症、気分障害、運動ニューロン疾患、運動能力障害、モヤモヤ病、ムコリピドーシス、ムコ多糖症、多発性梗塞性認知症、多発性運動神経障害、多発性硬化症、多系統萎縮症、起立性低血圧を伴う多系統萎縮症、筋ジストロフィー、筋痛性脳脊髄炎、筋無力症-先天性、重症筋無力症、ミエリンクラスティックびまん性硬化症、乳児のミオクローヌス脳症、ミオクローヌス、ミオパシー、ミオパシー-先天性、ミオパシー-甲状腺毒性、ミオトニー、先天性ミオトニー、筋細管性ミオパシー、ナルコレプシー、神経棘細胞症、脳鉄蓄積を伴う神経変性、神経線維腫症、神経遮断薬悪性症候群、エイズの神経学的合併症、ライム病の神経学的合併症、サイトメガロウイルス感染の神経学的影響、エイズの神経学的症状、ポンペ病の神経学的症状、狼瘡の神経学的後遺症、視神経脊髄炎、神経ミオトニー、神経セロイドリポフスチン症、神経遊走障害、神経障害-遺伝性、神経サルコイドーシス、神経梅毒、神経毒性、神経毒性発作、海綿状疱疹、ニーマンピック病、非24時間睡眠覚醒症候群、非言語性学習障害、正常圧水頭症、オサリバンマクレオド症候群、後頭神経痛、潜在性脊髄異形成症シーケンス、太田原症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、オプソクローヌスミオクローヌス症候群、オプソクローヌスミオクローヌス症候群、視神経炎、起立性低血圧、乱用症候群、慢性痛、遠視、パニック障害、パントテン酸キナーゼ関連神経変性、先天性傍ミオトニー、腫瘍随伴性疾患、感覚異常、パーキンソン病、発作性発作、発作性舞踏アテトーゼ、発作性片頭痛、パリーロンバーグ症候群、ペリツェウスメルツバッハー病、ペナショケアII症候群、神経周囲嚢胞、周期性麻痺、末梢神経障害、脳室周囲白質軟化症、持続性栄養状態、広汎性発達障害、光性くしゃみ反射、フィタン酸蓄積症、ピック病、挟まれた神経、梨状筋症候群、下垂体腫瘍、PMG、ポリオ、多小脳回、多発性筋炎、ポンペ病、脳炎、ポリオ後症候群、帯状疱疹後神経痛(PHN)、感染後脳脊髄炎、姿勢性低血圧、姿勢起立性頻脈症候群、姿勢性頻脈症候群、プラダーウィリー症候群、原発性歯牙萎縮、原発性側索硬化症、原発性進行性失語症、プリオン病、進行性半顔面萎縮、進行性運動失調症、進行性多巣性白質脳症、進行性硬化性ポリオジストロフィー、進行性核上性麻痺、相貌失認、偽トーチ症候群、偽ドキソプラズマ症症候群、偽腫瘍大脳、狂犬病、ラムゼイハント症候群I型、ラムゼイハント症候群II型、ラムゼイハント症候群III型、ラスムッセン脳炎、反射性神経血管ジストロフィー、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、リフサム病、リフサム病-乳児、反復運動障害、反復性ストレス障害、むずむず脚症候群、レトロウイルス関連ミエロパシー、レット症候群、ライ症候群、リウマチ性脳炎、律動性運動障害、ライリーデイ症候群、ロンバーグ症候群、仙骨神経根嚢胞、聖母性舞踊、唾液腺疾患、サンドホフ病、シルダー病、統合失調症、統合失調症、ザイテルベルガー病、発作障害、意味的痴呆、感覚統合機能障害、中隔光学異形成、乳児重症ミオクロニーてんかん(SMEI)、シェイクベビー症候群、帯状疱疹、シャイドレーパー症候群、シェーグレン症候群、睡眠病、鼻づまり、ソトス症候群、痙性、二分脊椎、脊髄梗塞、脊髄損傷、脊髄腫瘍、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、脊髄小脳萎縮症、脊髄小脳変性症、スティールリチャードソンオルシェウスキー症候群、スティッフパーソン症候群、線条体黒質変性症、脳卒中、スタージウェーバー症候群、亜急性硬化性全脳炎、皮質下動脈硬化性脳症、SUNCT頭痛、表在性鉄沈着症、嚥下障害、シデナム舞踏病、失神、共感覚、梅毒脊髄硬化症、脊髄水腫症、脊髄空洞症、全身性エリテマトーデス、タブ背側、遅発性ジスキネジア、遅発性ジスフレニア、タルロフ嚢胞、タルサルトンネル症候群、テイサックス病、側頭動脈炎、破傷風、テザード脊髄症候群、トムセン病、トムセン筋緊張症、胸部出口症候群、甲状腺中毒症、疼痛チック、トッド麻痺、トゥレット症候群、中毒性脳症、一過性虚血発作、伝染性海綿状脳症、横断性脊髄炎、外傷性脳損傷、振戦、三叉神経痛、熱帯性痙性対麻痺、トロイヤー症候群、トリパノソーマ症、結節性硬化症、ユビシア症、尿毒症、血管勃起性腫瘍、中枢及び末梢神経系の血管炎症候群、ビリウイスク脳脊髄炎(VE)、フォンエコノモ病、フォンヒッペルリンダウ病(VHL)、フォンレックリングハウゼン病、ヴァレンベルク症候群、ウェルドニッヒホフマン病、ウェルニッケコルサコフ症候群、ウェスト症候群、むち打ち症、むち打ち症、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、ウォルマン病、X連鎖性脊髄及び球筋萎縮症、又はゼルウィガー症候群を挙げられるが、これらに限定されるものではない。更に、上記の方法は、米国特許出願公開番号第20120207726及び2011018390号に説明されているように、神経学的状態を調査するための追加の手段を更に含むことができる。
【0175】
e. 感染症
本開示の追加の用途は、細菌、ウイルス、寄生虫及び菌類の感染因子によって引き起こされる感染症を検出するための方法を提供する。
【0176】
使用目的によっては、本開示は、細胞のウイルス感染をモニターするために用いることができる。ウイルスゲノムは、急速に進化することができ、多くの場合、いくつかのヌクレオチド又はセグメントにおいて、互いに異なる一方で、残留するゲノムは、不変のままである。その結果、プライマー又はプローブは、保存された領域を認識し、株に固有な特定の可変ヌクレオチドを同定するように作成できる。例えば、ウイルス及びウイルス性組換を検出するためのdPCRを記載した米国特許出願第20160259881号を参照。本開示と共に使用するウイルスの例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、又は、パピローマウイルス(HPV)、インフルエンザ株(例えば、H1N1、H5N1、H3N2、H7N9又はH1N2)又はその組換え型を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0177】
使用目的によっては、上記方法は、バイオテロリスト又は生物戦攻撃と関連したウイルス性又は細菌性感染を検出又はモニターするために用いることができる。使用目的によっては、上記方法は、集団又は患者の流行又は世界的流行をモニターするために用いる。使用目的によっては、本開示は、感染因子によって、引き起こされる薬物抵抗性を検出及び診断することに用いることができる。本開示と共に用いることができる薬剤耐性感染因子の非制限的な例は、バンコマイシン耐性エンテロコッカスヘシュウム、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、ペニシリン耐性レンサ球菌肺炎、多種薬剤耐性ヒト結核菌及びAZT耐性ヒト免疫不全ウイルスである。
【0178】
本開示の追加の用途は、生体サンプル中の病原体の抗生耐性株を検出又は定量するための方法を提供する。一実施形態として、本方法は、(a) 測定用サンプル由来の核酸に対してリアルタイムPCRを実行する工程、(b) 遺伝子であろうと遺伝子間領域であろうと病原体特異的配列(本願明細書では「病原体特異的遺伝子」と称する)及び抗生物質耐性性を与えるポリヌクレオチド配列(本願明細書では「抗生物質耐性遺伝子」と称する)を検出するプローブによって発生するシグナルのCt値を決定する工程、及び(c) 病原性特異的遺伝子のCt値を抗生物質耐性遺伝子のCt値と比較する工程を有し、PCR反応混合物は、本願明細書に記載されている反応混合物である。別の実施形態において、方法は、(d)「架橋領域」(抗生物質耐性遺伝子を含むエレメントの挿入の通常のポイント[「挿入ポイント」]と標的病原体のゲノムの公知の位置を接続している領域)を増幅する工程、及び(e) 架橋領域のCt値を決定する工程を更に含むことができる。
【0179】
本開示の追加の用途は、食品又は飼料産業における微生物感染症又は夾雑物を検出、診断、予後診断又はモニターする方法を提供する。例えば、本開示は、生産生命体(例えばビール、ワイン、チーズ、ヨーグルト、パン等を生産する酵母)の同定及び特性評価のために用いることができる。使用目的によっては、本開示が、夾雑物に関する生産及び工程(例えば、家畜、殺菌及び食肉加工)のクオリティコントロール及び証明のために用いることができる。使用目的によっては、本開示は、育種目的の植物、球根及び種の特性評価、植物特異的病原体の存在の同定及び検出並びに家畜の感染症及び家畜繁殖プログラムの同定に応用できる。
【0180】
本開示の追加の用途は、環境夾雑物を検出又はモニターする方法を提供する。本開示と共に使用する環境モニタリング方法の例としては、天然及び技術的に処理された生態系並びに微小生態系(例えば、都市廃棄物浄水システム及び貯水器又はバイオレメディエーションを受けている汚染地域)における病原性及び常在性微生物の検出、同定及びモニタリングを挙げられるが、これらに限定されるものではない。ゼノバイオティックスを新陳代謝させることができる遺伝子を含むプラスミドを検出すること、個体群動態論調査における特異的標的微生物をモニターすること、又は環境及び工場における遺伝子改変微生物を検出、同定若しくはモニターすることが可能でもある。
【0181】
本開示の追加の用途は、法医学又は疫学調査のための方法を提供する。本開示と共に使用する法医学的方法の例としては、軍人及び犯罪捜査のためのヒト同定、父子鑑別及び家族関係分析、HLA互換性タイピング、縦列型反復配列(STR)並びに汚染に関する移植臓器、精子又は血液検査を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。使用目的によっては、本開示は、考古学的調査に関する方法及び応用を提供する。
【0182】
本開示の追加の用途は、コピー数バリエーションを検出又は定量するための方法を提供する。本開示と共に使用するコピー数バリエーションと関連した疾患の例としては、トリソミー13、トリソミー、21、トリソミー18、分岐/口蓋心臓顔面症候群(22ql l .2欠失)、プラーダー-ビリ症候群(15ql l-ql3欠失)、ウィリアムズブーレン症候群症候群(7ql 1.23の欠失)、ミラーディーカー症候群(MDLS)(17pl3.3微小欠失)、スミス-マゲニス症候群(SMS)(17pl 1.2微小欠失)、神経線維腫症1型(NF1)(17ql 1.2微小欠失)、Phelan-McErmid症候群(22ql3欠失)、レット症候群(染色体Xq28のMECp2の機能喪失型変異)、メルツバッハー病(PLP1のCNV)、脊髄性筋萎縮症(SMA)(染色体5ql3条のテロメレックSMN1のホモ接合性欠如)、ポトキルプスキー症候群(PTLS、染色体17p.l 1.2の重複)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。PMP22遺伝子の追加のコピーは、圧迫性麻痺(HNPP)の傾向を有するシャルコーマリートゥース神経障害IA型(CMTl A)及び遺伝神経障害と関連している可能性がある。本願明細書に記載されているCNVを検出する方法は、本願明細書及び引用する刊行物に記載されているCNV障害を診断するために用いることができる。本開示と共に用いることができる追加の疾患は、Lupski J. (2007) Nature Genetics 39: S43-S47に記載されている。
【0183】
本開示の追加の用途は、母性サンプル(例えば、母体血液サンプル、漿膜絨毛サンプル又は羊水)から胎児の異数性を検出又は定量するための方法を提供する。本開示と共に使用する胎児の異数性の例としては、トリソミー13、トリソミー18、トリソミー21(ダウン症)、クラインフェルター症候群(XXY)、1又は複数の染色体のモノソミー(X染色体モノソミー、ターナー症候群)、トリソミーX、1又は複数の染色体のトリソミー、1又は複数の染色体のテトラソミー又はペンタソミー(例えば、XXXX、XXYY、XXXY、XYYY、XXXXX、XXXXY、XXXYY、XYYYY及びXXYYY)、三倍体(いずれの染色体も3つずつ(例えばヒトにおける69個の染色体))、四倍体(いずれの染色体も4つずつ(例えばヒトにおける92個の染色体))及び多倍数体(multiploidy)を挙げることができる、これらに限定されるものではない。使用目的によっては、異数性は、セグメント異数性(segmental aneuploidy)であってもよい。本開示と共に使用するセグメント異数性の例としては、Ip36重複、dup(17)(pl 1.2pl 1.2)症候群、ダウン症候群、ペリツェーウス-メルツパッヒャー病、dup(22)(ql 1.2ql 1.2)症候群及びキャットアイ症候群を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0184】
本開示の追加の用途は、性又は常染色体染色体の1又は複数の欠失によって、引き起こされる異常な胎児の遺伝子型を検出又は定量するための方法を提供する。本開示と共に使用する1又は複数の欠失によって、引き起こされる異常な胎児の遺伝子型の例としては、ネコ鳴き症候群、ウルフ-ハーシュホーン、ウィリアムズ-ビューレン症候群、シャルコー-マリー-ツース病、圧迫性麻痺の傾向を有する遺伝性神経障害、スミス-マゲニス症候群、神経線維腫症、アラジル症候群、口蓋心臓顔面症候群、ディジョージ症候群、ステロイドスルファターゼ欠乏、カルマン症候群、線状皮膚障害を有する小眼症、副腎形成不全、グリセロールキナーゼ欠乏、ペリツェーウス-メルツパッヒャー病、Y上の精巣決定因子、無精子症(因子a)、無精子症(因子b)、無精子症(因子c)又はlp36欠失を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ある場合においては、染色体数の減少は、XO症候群となる。別の用途において、上記方法は、米国特許第8293470号に記載されているように、胎児の異数性を検出する他の方法を更に含むことができる。
【0185】
本開示の追加の用途は、ゲノムコピー数バリエーションを検出又は定量するための方法を提供する。本開示と共に使用する過剰ゲノムDNAコピー数バリエーションの例としては、リー-フラウメニがん素因症候群(Shlien et al. (2008) PNAS 105: 11264-9)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。CNVは、形成異常症候群と関連しており、CHARGE(欠損症、心臓奇形、後鼻孔閉鎖、遅滞、生殖器及び耳異常)、ペーターズ-プラス、ピット-ホプキンス又は血小板減少-橈骨欠損症候群を含む(例えばRopers HH (2007) Am J of Hum Genetics 81 : 199-207を参照)。コピー数バリエーションとがんの関係は、例えば、Shlien A及びMalkinD (2009) Genome Med. 1(6): 62.に記載されているコピー数バリエーションは、例えば、自閉症、精神分裂症及び特発性学習障害とも関連している。Sebat J., et al. (2007) Science 316: 445-9、 Pinto J. et al. (2010) Nature 466: 368-72、 Cook E.H. and Scherer S.W. (2008) Nature 455: 919-923を参照。コピー数バリエーションは、ある種の治療に対するがん患者の抵抗と関連している可能性がある。例えば、チミジル酸シンターゼの増幅は、転移性大腸がん患者の5-フルオロウラシル治療に抵抗となり得る。Wang et al. (2002) PNAS USA vol. 99, pp. 16156-61を参照。CNVを決定する方法は、例えば、PCT出願公開番号WO2012/109500に記載されている。
【0186】
本開示の追加の用途は、RNAの遺伝子発現レベルを検出又は定量するための方法を提供する。(例えば、メッセンジャーRNAレベル)。使用目的によっては、本方法は、野生型又は標準と比較して、より下低いRNA発現レベルを検出又は定量するために用いる。使用目的によっては、本方法は、野生型又は標準と比較して、より高いRNA発現レベルを検出又は定量するために用いる。
【0187】
本開示の追加の用途は、様々な遺伝分析を検出及び実行する方法を提供する。本開示と共に使用する遺伝分析の例としては、配列が変異状態又は野生型状態である場合、1又は複数の変異(例えば、デノボ変異、ナンセンス変異、ミスセンス変異、サイレント変異、フレームシフト変異、挿入、置換、点変異、一塩基多型(SNP)、一ヌクレオチド変異体、デノボ一ヌクレオチド変異体、欠失、再配置、増幅、染色体トランスロケーション、中間部欠損、染色体逆位、ヘテロ接合の減少、機能の減少、機能の増加、ドミナント陰性又は致死)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。使用目的によっては、本開示は、がんの兆候及び進行と関連した特異的点変異の検出のために用いることができる。別の用途では、上記方法は、米国特許出願公開番号20120252015、2012021549、20120214163、20120225428、20120245235、20120252753、20100196898、20120270739、20110171646及び米国特許第8304194号に記載されているように、核酸を分析する(例えば、変異、遺伝子発現又はコピー数バリエーションを検出する)追加の方法を更に含むことができる。
【0188】
本開示の追加の用途は、母性遺伝子配列と胎児遺伝子配列との間に定量的差異を伴う胎児遺伝子異常を検出又は定量するための方法を提供する。本開示と共に使用する母と彼女の胎児との間の遺伝子異常中の差異の例としては、母性DNAと胎児DNAとの間のヘテロ接合及びホモ接合並びに異数性を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。例えば、染色体X(モノソミーX)のコピーの欠損は、ターナー症候群となる一方で、21番染色体の追加のコピーはダウン症となる。それぞれ、エドワード症候群及びパタウ症候群のような他の疾患は、18番染色体及び13番染色体の追加のコピーによって引き起こされる。
【0189】
本開示の追加の用途は、様々な染色体異数性を検出又は定量するための方法を提供する。本開示と共に使用する染色体異数性の例としては、トランスロケーション、挿入、増幅、追加、トランスバージョン、逆転、異数性、倍数性、モノソミー、トリソミー、トリソミー21、トリソミー13、トリソミー14、トリソミー15、トリソミー16、トリソミー18、トリソミー22、三倍性、四倍性、並びに、性染色体異常(XO、XXY、XYY及びXXXを含むがこれらに限定されるものではない)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。標的配列が母性DNA(ヘテロ接合)の1つのコピーに存在しているが、胎児(ホモ接合)に疾患を引き起こす可能性がある疾患の例としては、鎌状赤血球性貧血、嚢胞性線維症、血友病及びテイサックス病が挙げられるが、これらに限定されるものではない。従って、ここで記載されている方法を用いることで、1つの変異を有するゲノムと2つの変異を有するゲノムを区別できる。
【0190】
本開示の追加の用途は、遺伝した遺伝子異常を検出又は定量するための方法を提供する。遺伝子異常は、出生前の又は出生後にスクリーニングすることもできる。本開示と共に使用する検出可能な遺伝子異常の例としては、21ヒドロキシラーゼ欠損症、嚢胞性線維症、脆弱性X症候群、ターナー症候群、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ダウン症又は他のトリソミー、心疾患、一遺伝子疾患、HLAタイピング、フェニールケトン尿症、鎌状赤血球性貧血、テイ-サックス病、地中海貧血症、クラインフェルター症候群、ハンチントン病、自己免疫疾患、リピドーシス、肥満症欠陥、血友病、先天性代謝異常及び糖尿病を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。使用する追加の遺伝子変異は、以下のデータベースに記載されている:GDBヒトゲノムデータベース、RTIインターナショナル(ノースカロライナ、米国)が主催のヒトゲノムのアノテーションに関する公式の世界的データベース。
【0191】
本開示の追加の用途は、鎌状赤血球貧血症を検出又は定量するための方法を提供する。鎌状赤血球貧血症は、常染色体劣性疾患である。9パーセントの米国黒人は、ヘテロ接合である一方で、0.2%はホモ接合劣性形質である。劣性対立遺伝子は、ヘモグロビンのベータ鎖の一アミノ酸置換を引き起こす。
【0192】
本開示の追加の用途は、テイ-サックス病を検出又は定量するための方法を提供する。テイ-サックス病は、神経系の変性となる常染色体劣性形質である。症状は、出生後に現れる。このアレルの小児ホモ接合劣性形質は、5歳を超えて生き残ることはまずない。患者は、M2ガングリオシド脂質を分解する酵素N-アセチルヘキソサミニダーゼを作る能力が欠如している。
【0193】
本開示の追加の用途は、フェニールケトン尿症(PKU)を検出又は定量するための方法を提供する。PKUは、アミノ酸であるフェニルアラニンをチロシンに変換する酵素を合成する能力が欠如している患者の劣性遺伝障害である。このアレルに関するホモ接合劣性形質の個人は、フェニルアラニンの蓄積並びに尿及び血液中の異常な分解生成物を患う。
【0194】
本開示の追加の用途は、血友病を検出又は定量するための方法を提供する。血友病は、血液が通常凝固しない一群の疾患である。血中因子は、凝固を伴う。正常Factor VIIIを欠いている血友病患者は血友病Aを患い、Factor IXを欠いている血友病患者は血友病Bを患う。これらの遺伝子は、X染色体に載っている。従って、プライマー及びプローブは、胎児が母の不完全なX染色体又は父の正常アレルを継承したか否か検出する本方法において、用いることができる。
【0195】
本開示の追加の用途は、核酸上のメチル化可変領域(DMR)によって、引き起こされる遺伝子異常を検出及び定量するための方法を提供する。「メチル化可変領域」又は「DMR」という用語は、胎児DNAと母性DNAとの間の区別可能にメチル化された染色体DNAの領域を指すことを意図する。本発明は、cffDNAの検出に基づく非侵襲性出生前試験(NIPT)の新規なアプローチを提供する。使用目的によっては、アッセイのために選択されるDMRは、胎児DNAにおいて、過剰メチル化されているもの及び母性のものにおいて、低メチル化されているものである。即ち、これらの選択されたDMRは、母性DNAと比較して、胎児DNAのほうがメチル化の程度が大きい(即ち、多い)ことを示す。他の用途では、DMRは、胎児DNAにおいて、低メチル化されているもの及び母性血液において、過剰メチル化されているものである。使用目的によっては、13番、18番、21番、X及びY染色体の各々のDMRの大きなパネル(およそ2000)は、本願明細書で提供される方法を使用してアッセイすることができる。使用目的によっては、本開示は、トリソミー21の診断のための21番染色体上の複数のDMRを検出又は定量するために用いることができる。
【0196】
21番染色体上の複数のDMRは、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上又は12以上の領域を含む。様々な他の実施形態において、複数のDMRは、13番染色体、18番染色体、X染色体及びY染色体からなる群より選択される染色体上にあり、これによって、これらの染色体のいずれかの異数性の診断が可能になる。
【0197】
試薬を用いて、非メチル化DNAと比較してメチル化を区別可能に改変する。例えば、重亜硫酸塩を用いたDNAの処理は、シトシンをウラシルに変換するが、5-メチルシトシン残基には影響を与えないため、A、T、G及びUを有する新規な配列となり、これは、ヌクレオチド組成が限定されているプライマーの完璧な鋳型である。特定の実施形態において、DMRの少なくとも1つは、RASSF1A及び/又はTBX3遺伝子に位置している、又はRASSF1A、TBX3、HLCS、ZFY、CDC42EP1、MGC15523、SOX14、GSTP1、DAPS、ESR1、ARC、HSD1784、H1C1及びSPN遺伝子から選択される。
【0198】
一つの態様では、本発明は、母体血液のサンプルを用いたNIPT方法を提供する。低メチル化DNAは、化学的に変化させる、又は、酵素処理で消化されるが、過剰メチル化DNAは影響を受けない。関心を引く標的の複数DMRのレベルは、ヌクレオチド組成が限定されているプライマーにより決定される。「複数DMRのレベル」という用語は、DMRの量、有病率又はコピー数を意味する。胎児異数性をもつ胎児において、正常胎児と比較すると、異数性の結果としてより多くのDMR量が存在する。胎児の異数性は、関心を引く標的の複数DMRのレベルを同じサンプルの参照標的又は正常母性参照サンプルの参照標的と比較することにより診断される。
【0199】
本開示の追加の用途は、薬物代謝(例えば、薬動学又は薬力学)、薬物安全性、毒性又は薬害反応の診断のための生体サンプルにおけるアレル同一性を決定する方法を提供する。使用目的によっては、本開示は、患者の生殖系列DNA(例えば、SNP)由来の生体サンプルの薬理ゲノミクスを決定するために用いることができる。使用目的によっては、本開示は、患者の体性DNA(例えば、腫瘍DNA)由来の生体サンプルの薬理ゲノミクスを決定するために用いることができる。使用目的によっては、本開示は、所定の治療のコース及び有効性を決定できる疾患治療の治療的介入中に被った変異に与えることができる。薬物療法の有効性を測定するいくつかの非制限的な例は、白血病患者又はサンプル中の微小残存病変(MRD)、生殖系列SNP又は体細胞変異を検出又は定量することである。本開示と共に使用する薬理遺伝学的遺伝子及びそれらの変異体の例は、様々なデータベース(例えば「Pharmacogenomics Knowledge Base」)で見つけることができ、journal Pharmacogenetics and Genomicsで定期的に公開されている。
【0200】
本開示の追加の用途は、疾患リスクの基礎となす遺伝的変異又は遺伝薬理学を決定する関連調査を実施する方法を提供する。遺伝子関連調査試験は、疾患とゲノム領域(例えば座、ハプロタイプ、かかる量的形質遺伝子座(QTL)、統計的方法を使用)との間の相関を見つけるために実行する。疾患の影響を受けた集団における遺伝的変異のより高い頻度は、疾患リスクの増加と関連していると一般的に解釈されている。関連調査を実行する本開示と共に使用する遺伝的変異の例としては、SNP、ミクロサテライトマーカー、挿入、欠失、変数タンデムリピート(VNTR)及びコピー数変異体(CNV)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。使用目的によっては、ケースコントロール関連調査を実行する。使用目的によっては、家族に基づく関連調査又はQTLである。
【0201】
本開示の追加の用途は、RNA配列によるNGS、単一細胞増幅及び検出のための配列決定ライブラリー調製を実行する方法を提供する。
【0202】
本開示の更なる方法は、細胞中の異数性の存在に関する診断の組み合わせである。最も一般的な染色体異数性は、ダウン症候群(トリソミー21)、エドワーズ症候群(トリソミー18)及びパタウ症候群(トリソミー13)である。T21は、生児出生691人中1人の割合で生じ、T18は、生児出生3762人中1人の割合で生じ、T13は、生児出生7906人中1の割合で生じると推定されている。この割合は、予定日に達していない胎児において、より高い。
【0203】
侵襲性出生前診断試験(例えば、羊水穿刺又は漿膜絨毛サンプリング)は、染色体異数性のための現在最も優れた基準であるが、0.2-0.5%の流産リスクと関連している。非侵襲性出生前試験(NIPT)(例えば、母体血液の無細胞DNA(cfDNA)から生じるライブラリーの大規模並列配列決定(MPS)又は次世代配列決定(NGS))は、信頼性が高い染色体異数性検出の方法であることを示している。しかしながら、NGSアッセイは、中央集権的な研究室において、実行しなければならず、NGSの現在の作業フローは、非常に時間がかかり且つ高価である。従って、現在のNGS NIPTアッセイは、中央集権的な研究室への素早いアクセスができない世界の地域又は多量の患者サンプルに適していない。
【0204】
本発明は、他の異数性の中でT21、T18及びT13の染色体異数性のためのNIPTに基づくデジタル増幅を提供する。上記試験は、母体血液由来のcfDNAを利用し、同時に、21番、18番及び13番染色体のいずれか又は好ましくは全てを定量化する。デジタル増幅は、96穴プレートをサポートする任意の標準的PCR装置において、実行することができ、エンドポイントリーディングは、ddPCRリーダーにおいて実行される。母体血液は、妊娠中に集められる。cfDNAは、母体血液、好ましくはプラズマから精製される。サンプルは、許容可能な信頼性(例えば、少なくとも95%の信頼性)を用いて真の陰性及び陽性を同定するddPCRにより試験される。許容可能な信頼性を用いて真の陰性及び陽性と分類することができないサンプル(言い換えると結論が出せないサンプル)は、次に、好ましくは次世代技術によって配列決定を行う。
【0205】
本開示は、胎児の物質を含む母性サンプルから胎児の画分測定及び胎児の性測定のための方法を更に提供する。胎児の特異的標的の例としては、男性胎児のY染色体及び胎児DNAと母性DNAとの間のメチル化可変領域(DMR)が挙げられる。Y染色体の存在は、女性胎児を示す。胎児画分(FF)は、以下の方程式によって、算出できる。FF = (NY/NYC)/(NY/NYC+NM/NMC)*2*100%NYは、デジタル増幅によって決定したY特異的標的のコピー数であり、NYCは、1ゲノム等価物質に存在するY特異的標的のコピー数であり、NMは、母性特異的標的の全コピー数であり、NMCは、1ゲノム等価物質の母性特異的標的のコピー数である。胎児画分は、他の方程式により算出されることができる。FF = (NDMT/NDMC-NDMMT/NDMC)/(NDMUT/NDMC)NDMTは、デジタル増幅によって決定したメチル化特異的処理後のDMRのコピー数であり、NDMCは、1ゲノム等価物質のDMRのコピー数であり、NDMMTは、メチル化特異的処理後の胎児物質を含まない母性コントロールサンプルのDMRのコピー数であり、NDMUTは、メチル化特異的処理のないDMRのコピー数である。メチル化特異的処理の例としては、メチル化感受性制限酵素消化及び二硫化物処理が挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0206】
本開示は、母体血液中のcfDNAを潜在的に汚染している細胞から放出されたDNAのレベルを測定する方法も提供する。母体血液は、cfDNAをプラズマから抽出する前に、回収され、保存され、輸送され、そして処理される。血液の保存及び血球の溶解防止は、cfDNAの品質を確実にするために、このプロセスにおいて、重要である。プラズマへの血液DNAの放出は、抽出されたcfDNAのサイズ分布を変え、胎児画分を減少させる。これは、下流での適用を難しくする。標的アンプリコンのサイズは、cfDNAのサイズ分布にフィットする。そして、標的ゲノム領域のサイズは、cfDNAのサイズの90%、95%、99%を超える。複数の標的は、dPCRによって、同時に定量化される。それらの増幅産物は、各々標的の陽性液滴が互いに異なるクラスターを二次元グラフ上に形成し、複数標的の陽性液滴から容易に区別されるように調整される。複数標的の陽性液滴の数を論理的に算出し、観察された複数標的の陽性液滴と比較する。過剰量の複数標的の陽性液滴は、cfDNA抽出の血球DNAの存在を示し、そのパーセントは、XCMT/CGE*100%により算出される。XCMTは、複数標的領域のコピー数であり、CGEは、サンプル中のゲノム等価物質のコピー数である。
【0207】
本開示は、dPCR分割のための断片サイズを減らす方法を更に提供する。ゲノムDNA精製のプロセスによって、方法及び操作に応じてDNAが種々のサイズを有する断片になる。大きな断片は、それらの構造及びより強いハイブリダイゼーションに起因して変性がより困難となる。dPCRフォーマットにおいて、正確な定量化は、ポアソン分布に従う、個々のコンパートメントへの、関心を引く標的の良好な分割に依存する。従って、複数標的検出又は複数コピー遺伝子検出は、2以上の標的又は同じ標的の2以上のコピーが同じDNA断片に存在して、1つのコンパートメントに分割される場合、誤った定量になるだろう。所望のDNA断片サイズは、500bp、400bp、300bp、200bp、170bp、150bp又は100bp未満である。DNA断片化の例として、物理的断片化方法(例えば、超音波処理、音響学的せん断、流体力学的せん断及び電磁力によるせん断)、酵素的断片化方法(1又は複数の制限エンドヌクレアーゼ消化、断片化酵素処理、DNaseI処理及びトランスポサーゼ処理)が挙げられる。ある実施形態において、DNA断片化は、dPCRアセンブリの前に実行される。ある実施形態において、DNA断片化及びdPCRアセンブリは、組み合わせられる。
【0208】
本開示は、複数標的が同じ蛍光チャネルにおいて検出され、一次元増幅、二次元増幅又は三次元増幅の種々のシグナル強度又はシグナル強度の種々の組み合わせによる分析の際にdPCRの標的コピー数を算出する方法を更に提供する。本アッセイは、それぞれ蛍光チャネルにおいて、2以上の標的が検出されるように設計されている。所定のチャネルにおいて、標的1(T1)は、より高い増幅と関連しており、他の標的t(T2)は、より低い増幅と関連している。2種類の標的が同じ区画にある場合、その区画の増幅は、より高い増幅と同じである。区画の合計数がTであり、より高い増幅を有する区画数はHであり、より低いの増幅を有する画分数がLであると仮定すると、T1のコピー数は、(ln(T)-ln(T-H))*(RV/PV)であり、T2のコピー数は、(ln(T)-ln(T-H-L))*(RV/PV))-(ln(T)-ln(T-H))*(RV/PV)である。RVは、合計反応体積であり、PVは、区画体積である。同じ原理が他の蛍光チャネルの反応及び3以上のタイプの標的との反応に当てはまる。
【0209】
本開示により提供される上記方法の様々な応用を実行するために、様々な従来技術は、特定用途に合わせて上記方法を調整して組み合わせで用いることができる。かかる従来技術は、標準ラボマニュアルGenome Analysis: A Laboratory Manual Series (Vols. I-IV), Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cells: A Laboratory Manual, PCR Primer: A Laboratory Manual, and Molecular Cloning: A Laboratory Manual (all from Cold Spring Harbor Laboratory Press)、 Stryer, L. (1995) Biochemistry (4th Ed.) Freeman, New York、 Gait, "Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach" 1984, IRL Press, London, Nelson and Cox (2000), Lehninger, (2004) Principles of Biochemistry 4th Ed., W. H. Freeman Pub., New York, N.Y. and Berg et al. (2006) Biochemistry, 6th Ed., W. H. Freeman Pub., New York, N.Y.,で見つけることができ、これら全ては、全ての目的のためにそれらの全てが本願明細書に引用される。
【実施例
【0210】
実施例1:非主流プライマーは、dPCRのバックグラウンドシグナルを減らす
この実験は、非主流ヌクレオチドタイプを有するプライマー(例えば、3つのヌクレオチド-タイププライマー)が4つのヌクレオチドを含んでいる従来のプライマーと比較して、dPCR反応のバックグラウンドシグナルを減らすことができるか否かを決定するために行った。非主流ヌクレオチドを有するプライマーは、非主流プライマーとも称される。
【0211】
本実験において、テンプレート含む液滴デジタルPCR反応(ddPCR)(n=4)とテンプレートを含まない反応(n=2)を実行した後に、非主流プライマーを含むdPCR反応から発生する蛍光シグナルを、4つのヌクレオチドプライマーの1つのペアを含むPCR反応と比較した。
【0212】
簡潔にいえば、20uLのddPCR反応は、1000コピーのE.coliゲノムDNAテンプレートの、10uL QX200 EvaGreen(登録商標) Digital PCR Supermix(2X)及び800nMの各プライマーを含む。3つのヌクレオチド-タイププライマーと従来のプライマーは、E.coliの同じゲノム領域を標的とした。従来の4つのヌクレオチドプライマーは、2つのグアニンを含み、3つのヌクレオチド-タイププライマーはATCヌクレオチドから構成されているものとした。最後に、陰性コントロールは、DNAテンプレートを含まないが、その他の点では、上記と同じ20uLのddPCR反応混合物で実行した。
【0213】
次に、油中水型液滴は、商用液滴生器(Bio-Rad Laboratories社)で発生させた。PCR反応サイクルは、以下の通りとした:95℃で5分間、次に、95℃で15秒間、60℃で30秒間、4℃で5分間、95℃に加熱して5分間の40サイクル。蛍光シグナルは、QX200液滴リーダー及びQuantaSoftTMソフトウェア(両方ともBio-Rad Laboratories社)を使用して、測定及び分析した。
【0214】
結果は、図7A及びBに示している。3つのヌクレオチド-タイププライマー反応(A)及び4つのヌクレオチドプライマー反応(B)の両方の液滴を含む陽性テンプレートは、両方とも28,000-31,000の蛍光シグナルを発した。一方、(B)の4ヌクレオチドプライマー反応が16,000-18,000であることと比較すると、3つのヌクレオチド-タイププライマー反応のバックグラウンドシグナルは、2000という極めて低いバックグラウンドシグナルであった。
【0215】
まとめると、これらの結果から、従来型の4つのヌクレオチドプライマーと比較すると、3つのヌクレオチド-タイププライマーがバックグラウンドシグナルを非常に低減することが示された。加えて、これらの結果は、ヌクレオチド-タイププライマーが反応におけるプライマー-プライマー相互作用を低減することを示唆している。
【0216】
実施例2:三染色体性及び正倍数性DNAの区別
この実験は、非主流プライマーがdPCRプラットフォームを用いた正確且つ高感度な多重化を可能にするか否かを決定するために実行した。
【0217】
本実験において、単一の反応チューブ中に5つペアのプライマーを用いて5マルチプレックスddPCR反応を行い、21番、18番、13番、X及びY染色体(Chr)のコピー数バリエーションを定量した。
【0218】
20uLのddPCR反応には、250コピーのテンプレートDNA(第一又は第二DNAテンプレートタイプ)、10uL QX200 EvaGreen(登録商標) Digital PCR Supermix(2X)、一対のChr 21プライマー、一対のChr 18プライマー、一対のChr13プライマー、一対のChr Xプライマー、及び、一対のChr Yプライマーが含まれている。PCR条件は、以下の通りとした:95℃で5分間、次に、95℃で15秒間、60℃で30秒間、4℃で5分間、95℃に加熱して5分間の40サイクル。
【0219】
母体血液におけるの無細胞DNAの平均11%-13.4%は、胎児起源である。第一DNAテンプレートは、正常ヒトゲノムDNAから成る正倍数性のサンプルであった。第二DNAテンプレートは、Chr 21の追加の全長又は部分的なコピーを一般的に含むダウン症患者由来のトリソミー21ゲノムDNAの10%を付加した正常ヒトゲノムDNAから構成された三染色体性サンプルとした。
【0220】
32回の反復試験を、テンプレートDNAの各タイプに対して、所望の陽性液滴に達するまで実行した。蛍光シグナルは、QX200液滴リーダー及びQuantaSoftTMソフトウェア(両方ともBio-Rad Laboratories社)を使用して測定及び分析した。
【0221】
結果を図8に示す。本グラフは、5つの種類の陽性液滴を示しており、これらの陽性液滴は、検出された21番、18番、13番、X及びY染色体(上から下)の5つ全てを示しており、バックグラウンドシグナル(黒い点)と区別されている。更に、5つ全ての染色体のコピー数も定量した(下記の表1Aを参照)。
【0222】
表1A:5マルチプレックスdPCRにおいて、検出された各染色体のコピー数
【表1A】
【0223】
第一DNAテンプレートは、バランスのとれた染色体数を含む正倍数性サンプル(WTとして示す)とした。このサンプルにおいて、21番染色体は、245.32コピーと推定され、18番染色体は、244.11コピーと推定され、13番染色体は、239.61コピーと推定され、染色体XYは、1つの種類としてまとめて、249.15コピーと推定された。
【0224】
第二DNAテンプレートは、Chr 21の10%の追加コピー(10% T21として示す)を含む三染色体性サンプルとした。このサンプルにおいて、21番染色体は、261.46コピーと推定され、18番染色体は、249.50コピーと推定され、13番染色体は、246.90コピーと推定され、染色体XYは、1つの種類としてまとめて、250.44コピーと推定された。そして、参照として染色体XYを使用している比率は、表に示している。
【0225】
t検定は、両方のDNAテンプレートタイプ(WT及び10% T21)の染色体の各ペアの間で実行し、それらが互いに有意に異なるか否かを決定した(表1Bを参照)。
【0226】
表1B:WT及び10%のT21 DNAテンプレートの染色体の各ペアの間の検定によって得られたp値を示す。
【表1B】
【0227】
WT DNAテンプレートにおいて、染色体異数性は、見られなかった。10% T21サンプルにおいて、Chr 21のコピー数は有意に高かった一方で、18番、13番及びXY染色体のコピー数は互いに有意差がなかった。
【0228】
本開示により提供された方法及び非主流プライマーの使用によって、単一反応において、5つの互いに異なる染色体に対する5マルチプレックス反応のコピー数バリエーションを正確に定量することができ、三染色体性サンプルと正倍数性サンプルとの間に統計的に有意な区別を得ることができることが、これらの結果から示された。
【0229】
実施例3:14-マルチプレックスdPCRを使用するcffDNAの染色体異数性の決定
母体血液中では存在量が低い胎児DNAに加えて、それが血流に入るにつれて断片化される。従って、標的染色体当たりのより多くのアンプリコンは、非侵襲性出生前試験(NIPT)アプリケーションにおいて、十分な陽性液滴を検出するために必要である。
【0230】
この実験は、単一反応チューブ中において、非主流プライマーを使用する14マルチプレックスdPCRアッセイが非常に低量の三染色体性DNAテンプレートを正確に定量し、検出できるか否かを決定するために実行した。
【0231】
20uLのddPCR反応物には、500コピーのテンプレートDNA(第一、第二又は第三DNAサンプルを含む)、10uLのQX200 EvaGreen(登録商標) Digital PCR Supermix(2X)、Chr 21プライマー及びChr 18プライマーを含めた。標的染色体当たりより多くのアンプリコンにより設計されるdPCRアッセイは、より少ない量のcffDNA入力が必要であるため、7つの互いに異なるアンプリコンを21番染色体(Chr 18)について選択し、7つの互いに異なるアンプリコンを18番染色体(Chr 18)について選択した。PCR条件は、以下の通りとした:95℃で5分間、次に、95℃で15秒間、60℃で30秒間、4℃で5分間、95℃に加熱して5分間の40サイクル。蛍光シグナルは、QX200液滴リーダー及びQuantaSoftTMソフトウェア(両方ともBio-Rad Laboratories社)を使用して、測定及び分析した。
【0232】
8回の反復試験は、ゲノムDNAの各タイプに対して、所望の陽性液滴に達するまで実行した。第一DNAサンプルは、正常ヒトゲノムDNAから構成され、第二DNAサンプルは、ダウン症患者からのトリソミー21 ゲノムDNAの10%が付加された正常ヒトゲノムDNAから構成され第三DNAサンプルは、エドワーズ症候群患者からのトリソミー18ゲノムDNAの10%が付加された正常ヒトゲノムDNAから構成されたものである。
【0233】
図9は、各DNAサンプルタイプにおいて、検出された陽性液滴を示す。図9において、正常ヒトゲノムDNA(WTとして示す)、トリソミー21から10%のDNAが付加された正常ヒトゲノムDNA(10% T21として示す)、及びトリソミー18の10%が付加された正常ヒトゲノムDNA(10% T18として示す)を示している。Chr 21アンプリコンを含む液滴は、グラフ上で14,000-20,000に位置し、Chr 18アンプリコンを含む液滴は、グラフ上で7,000-12,000に位置する。
【0234】
表2Aは、各反復試験における、Chr 21及びChr 18について検出されたコピー数と、3つのDNAサンプルタイプに関するChr 18に対するChr 21の比率を示している。
【表2A】
【0235】
表2Bは、3つのDNAサンプルタイプの平均コピー数及びt検定から得られたp値を示している。
【表2B】
【0236】
t検定から得られたp値は、多重アッセイがトリソミーT21及びT18サンプルと正常な正倍数性サンプルとの間のコピー数バリエーションに統計的に有意な差異を検出することが可能であったことを示している。
【0237】
これらの結果は、本開示により提供される方法及び非主流プライマーが14マルチプレックスdPCRアッセイを使用してサンプル中のわずか10%のDNA濃度差でも高感度な検出で染色体異常を検出できることを示している。加えて、この実験は、非主流プライマーをdPCRプラットフォームに用いて、非侵襲性出生前試験(NIPT)法で必要とされる、量が少ないcffDNAにおけるChr 21及びChr 18のトリソミーを検出又は定量できることを示す。
【0238】
実施例4:15-マルチプレックスdPCRを用いたcffDNAにおけるダウン症、エドワーズ症候群及びパタウ症候群の測定
この実験では、21番染色体について選択した、それぞれ同じFAM蛍光体標識プローブを有する5つの互いに異なるアンプリコン;18番染色体について選択した、それぞれ同じFAM蛍光体標識プローブを有する5つの互いに異なるアンプリコン;及び13番染色体について選択した、それぞれ同じHEX蛍光体標識プローブを有する5つのアンプリコンを使用する、単一反応チューブにおける15-マルチプレックスdPCRを実行した。
【0239】
正常ヒトゲノムDNA、ダウン症患者からのトリソミー21ゲノムDNAの10%が付加された正常ヒトゲノムDNA、エドワーズ症候群患者からのトリソミー18ゲノムDNAの10%が付加された正常ヒトゲノムDNA及びパタウ症候群患者からのトリソミー13ゲノムDNAの10%が付加された正常ヒトゲノムDNAの4種類のDNAサンプルを試験した。
【0240】
20uLのddPCR反応物には、500コピーのテンプレートDNA、10uL QX200 Probe Digital PCR Supermix(2X)、Chr 21プライマー、Chr18プライマー、Chr13プライマー、プローブ1、プローブ2及びプローブ3を含めた。PCR条件は、以下の通りとした:95℃で5分間、次に、95℃で15秒間、60℃で45秒間、98℃で10分間、4℃で5分間のインキュベートを50サイクル。8回の反復試験は、各DNAサンプルタイプに対して、所望の陽性液滴に達するまで実行した。蛍光シグナルは、QX200液滴リーダー及びQuantaSoftソフトウェア(両方ともBio-Rad Laboratories社)を使用して、測定及び分析した。
【0241】
図10は、各DNAサンプルタイプに関する陽性アンプリコン液滴を示している。Chr21アンプリコンを含む陽性液滴は、クラスター(A)に位置し、Chr18アンプリコンを含む液滴は、クラスター(B)に位置し、Chr13アンプリコンを含む液滴は、クラスター(C)に位置した。
【0242】
表3A、3B及び3Cは、それぞれ、Chr21、13及び18について定量化されたコピー数、及び各々の比率は、4つのDNAサンプルタイプ(WT、10% T21、10% T18及び10% T13)についての各反復試験の比率を示している。表3A、3B及び3Cの下側には、WT(正常)とT21、T18及びT13三染色体性サンプルとの間のt検定から得られたp値及び平均コピー数を示している。
【0243】
表3A:21番染色体のコピー数の定量
【表3A】
【0244】
表3B:13番染色体のコピー数の定量
【表3B】
【0245】
表3C:18番染色体のコピー数の定量
【表3C】
【0246】
実行したt検定の全ては、表3A、3B及び3Cに示すように有意なp値を示した。これらの結果から、単一反応において、非主流プライマーを使用する15マルチプレックスdPCRアッセイは、少量のcffDNAにおいて、Ch21、Ch13及びChr18の染色体異数性を検出できることが示される。
【0247】
実施例5:メチル化シトシンの変換に基づくコピー数バリエーションの決定
メチル化シトシンの変換は、ZYMO RESEARCHによるEZ DNA MethylationTM Kitを用い製造業者の指示に従って、E.coli(ATCC 700927D-5)から精製された商業的に入手可能なゲノムDNAに対して実行した。200ngのE.coliゲノムDNAを実験で変換し、その後精製した。次に、我々は、1:100(変換後:変換前)から100:1(変換後:変換前)の比率で、変換後DNAと変換前DNAを混合した(メチル化DNAに似せた)。
【0248】
2つのddPCR反応は、一方が変換後DNA配列を標的にし、他方が変換前DNA配列を標的にする種々の混合物の各々に対して実行した。20uLのddPCR反応物には、500コピーのテンプレートDNA、10uLのQX200 Evagreen(登録商標) Digital PCR Supermix(2X)、及びプライマーを含ませた。PCR条件は、以下の通りとした:95℃で5分間、次に、95℃で15秒間、60℃で30秒間、4℃で5分間、90℃で10分間、4℃で5分間のインキュベートを40サイクル。8回の反復試験は、各DNAサンプルタイプに対して、所望の陽性液滴に達するまで実行した。蛍光シグナルは、QX200液滴リーダー及びQuantaSoftソフトウェア(両方ともBio-Rad Laboratories社)を使用して、測定及び分析した。
【0249】
この実施例から、DNA中のシトシンの大多数をウラシルに変換し、変換後DNA又は変換前DNAを標的にするプライマーが、対応する標的をうまく定量化できることが証明された。
【0250】
本発明は、理解の明快さのために詳細に記載しているが、ある種の改変は添付の特許請求の範囲内で行ってもよい。受託番号、ウェブサイトなどを含むすべての出版物、及び本願に引用されている特許文書は、あたかもそれぞれが個別に示されているのと同じ程度に、すべての目的で参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。配列、ウェブサイト、又は他の参照のバージョンの違いがある程度異なる場合は、有効な出願日に参照に関連付けられたバージョンを意味する。有効出願日とは、問題の受託番号が開示されている最も早い優先日を意味する。文脈から別途明らかでない限り、本発明の任意の要素、実施形態、ステップ、特徴又は態様は、任意の他のものと組み合わせて実行できる。

配列表
配列表は、実施例において使用した核酸の配列を提供する。
図1
図2
図3
図4
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図10
【配列表】
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