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特許7537747オイル潤滑式の運動学的モジュール接続システム、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュール;運動学的モジュールの潤滑化の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】オイル潤滑式の運動学的モジュール接続システム、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュール;運動学的モジュールの潤滑化の方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20240814BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B25J19/00 Z
B25J19/06
B25J19/00 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020550943
(86)(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 IB2018059784
(87)【国際公開番号】W WO2019111232
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】PUV269-2017
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SK
(31)【優先権主張番号】PUV50133-2018
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SK
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520200090
【氏名又は名称】イーロボット、ジェイ.エス.エイ
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イレッコ、ルボミール
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173110(JP,A)
【文献】特開2015-093329(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0146352(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールであるオイル潤滑式の運動学的モジュールを相互接続するシステムであって、
前記運動学的モジュール(1)の各々が、前記運動学的モジュール(1)の可動部品を潤滑化または冷却するように意図されたオイルが充填されたボックスを備え、
前記運動学的モジュール(1)は前記産業用ロボットの様々な軸に配置され、
少なくとも2つの運動学的モジュール(1)のオイル内容物が、オイルライン(2)によって、相互接続された運動学的モジュール(1)間の閉じたオイル回路に接続されており、システムは濾過装置(4)を含み、前記運動学的モジュール(1)の前記ボックスには、前記オイルライン(2)の入口、および前記オイルライン(2)の出口が取り付けられる構成において、
前記オイルライン(2)の前記出口は、前記運動学的モジュール(1)の前記ボックスの下部に配置されているという事実によって特徴付けられる、
オイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項2】
オイルフィルの接続がオイルポンプ(3)を備えるという事実によって特徴付けられる、およびオイルを上部の前記運動学的モジュール(1)に押すために取り付けられているという事実によって特徴付けられる請求項1に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項3】
前記濾過装置(4)は、交換可能な濾過要素(8)およびバイパス圧力弁を含み、前記濾過装置(4)はまた、フィルタの透過率を測定するための圧力センサ、前記濾過装置(4)は粗い機械不純物のための引込フィルタ(12)を含むおよび前記濾過装置(4)が前記産業用ロボットの不動部分に配置されているという事実によって特徴付けられる、請求項1又は2に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項4】
前記濾過装置(4)は前記産業用ロボットのエンドアームの動作範囲内に位置しており、前記産業用ロボットには、前記濾過装置(4)への保守処置用の延長部が取り付けられているという事実によって特徴付けられる、請求項1~のいずれか一項に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項5】
前記濾過装置(4)は、フィルタに通されたオイルの流れを1つの濾過要素(8)を介して接続する可能性を実現するために、別個のバイパス枝路に係合された少なくとも2つの濾過要素(8)を含むという事実によって特徴付けられる、請求項1~のいずれか一項に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項6】
前記システムは、評価ユニット(6)に取り付けられた少なくとも1つの診断要素(5)を含むという事実、前記オイルに添加剤を加えるための要素(7)を含む、前記オイルに添加剤を加えるための前記要素(7)は、前記評価ユニット(6)に取り付けられ、前記評価ユニット(6)によって制御される、前記診断要素(5)はオイル用の温度センサ、またはオイル用の圧力センサ、または更に油の汚損のセンサおよび前記評価ユニット(6)は前記産業用ロボットの制御システムに取り付けられているという事実によって特徴付けられる、請求項1~のいずれか一項に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項7】
前記オイル回路内の圧力変化を均衡させるための補償器(14)が取り付けられているおよび前記産業用ロボットの前記運動学的モジュール(1)のオイルチャージの全てが相互接続されているという事実によって特徴付けられる、請求項1~のいずれか一項に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主に産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項8】
前記システムは、前記産業用ロボットの構造の内部に少なくとも部分的に一体化されており、オイルライン(2)が前記産業用ロボットのアームの内側を通る、または前記システムは、前記産業用ロボットの構造の外側部分に配置されているという事実によって特徴付けられる、請求項1~のいずれか一項に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項9】
請求項2に記載の構成を有する前記システムにおいて、6軸の産業用ロボットの軸4、5、および6が相互接続された3つの運動学的モジュール(1)のオイルチャージが存在し、前記オイルポンプ(3)および前記濾過装置(4)は、前記産業用ロボットの構造の内部または外部に配置されているという事実によって特徴付けられる、請求項に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項10】
前記システムはオイルタンク(9)を含み、最も低い前記運動学的モジュール(1)からのオイルライン(2)が前記オイルタンクの中に入る、および前記濾過装置(4)が前記オイルタンク(9)を有する別個のオイル回路に係合されているという事実によって特徴付けられる、請求項1~のいずれか一項に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項11】
請求項に記載の構成を有する前記システムにおいて、前記システムは、運動学的モジュール(1)の相互接続されたオイルチャージの少なくとも全体の容積に対応する容積を有する新しいオイルを有するリザーバ(10)を含み、
前記システムはまた、少なくとも、運動学的モジュール(1)の相互接続されたオイルチャージの全体の容積に従う値に対応する容積を有する、使用済みオイルの排出容器(11)を含み、
前記新しいオイルを有する前記リザーバ(10)、および前記排出容器(11)が、前記評価ユニット(6)によって制御される弁を通じて、相互接続された運動学的モジュール(1)のオイル循環に係合されているという事実によって特徴付けられる、請求項に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項12】
前記運動学的モジュール(1)の少なくとも2つのオイルチャージの直列の相互接続がある、または相互接続が並列であり、前記運動学的モジュール(1)に至る前記オイルライン(2)が三方弁(13)を介して前記オイル回路に係合されているという事実によって特徴付けられる、請求項1~11のいずれか一項に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項13】
オイル加熱用の要素またはオイル冷却用の要素が存在して、前記オイルの所望の粘度を実現するという事実によって特徴付けられる、請求項1~12のいずれか一項に記載のオイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステム。
【請求項14】
運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを潤滑化する方法であって、前記運動学的モジュール(1)は、前記運動学的モジュール(1)の可動部品を潤滑化または冷却するように意図されたオイル充填ボックスを備え、
前記運動学的モジュール(1)は、前記産業用ロボットの異なる軸線上に配置され、前記運動学的モジュール(1)の前記ボックスには、オイルライン(2)の入口、および前記オイルライン(2)の出口が取り付けられ、前記オイルライン(2)の前記出口は、前記運動学的モジュール(1)の前記ボックスの下部に配置され、
前記産業用ロボットの動作中に、別個のオイルポンプ(3)を有する前記運動学的モジュール(1)のオイルが濾過装置(4)を通して押し込まれる、ある運動学的モジュール(1)の前記オイルが、別の運動学的モジュール(1)から来るオイルとの共有オイル回路内を循環する、前記オイルポンプ(3)を通る前記オイルの流れが、前記運動学的モジュール(1)内の不純物フラッシュの動的効果を実現するレベルを変化させるという事実によって特徴付けられる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モジュール相互接続のシステムに関し、例えば、モジュールは、主にトランスミッションまたはベアリングアセンブリの可動部品である可動部品を潤滑化するためのそれ自体のオイルフィルを有する。有利には、ソリューションは、産業用ロボットおよびマニピュレータの場合に適用することができる。本発明はまた、運動学的モジュール、主として産業用ロボットの潤滑方法を目的とする。
【背景技術】
【0002】
ロボット、マニピュレータ、および可動継手とアームを有する類似した機器には、機器のあらゆる単一部品の相互回転運動をもたらすベアリングおよびトランスミッションモジュールが取り付けられている。1つのケーシング内には、ロールベアリング台座の役割、ならびにギヤボックスの役割を果たすベアリング減速機もある。これらのモジュールは、それ自体のオイル潤滑フィルを有する。個々のモジュールは、所定の保守処置に応じて、同じ耐用年数または同じ動作寿命を実現するように設計されているが、ロボットを設計する場合には、個々の軸への実際の負荷を事前に見積もることができない。この負荷は、特定の機械的動作用にプログラムされた特定の運動学に依存することになる。ロボットの経済的に使用可能な寿命は、最も弱いユニットの寿命によって限定される。
【0003】
通常、保守タスクを実施するには生産プロセス全体を停止する必要があり、ロボットの突然の故障は、生産に更に大きなダメージを与える。したがって、トランスミッションまたはベアリングモジュールの寿命を延ばす試みがあり、これは他の工学分野でも知られているトライボロジ問題のソリューションに関連している。
【0004】
スロバキアSK UV 185-2015号(特許文献1)の文献に基づくソリューションは、機械に設置する前に、別個の減速機のオイルを濾過することについて説明しており、それは、新たに生産された減速機を生産不純物から洗浄するプロセスについて説明していることを意味する。オイルの濾過が、潤滑される装置の寿命を延ばすことは一般に知られているが、多数の構成要素を有するシステムでは、ロボットの複数の軸の各モジュールに対して配置することはできない。この開示による複雑なシステムは、各ロボット減速機に使用した場合、経済的に非常に高価であり、コストは耐用年数の増加の利点を上回る。
【0005】
中国実用新案出願第203123674(U)号(特許文献2)に基づくソリューションなど、自動車のトランスミッションシステムのオイル回路に含まれる単純なフィルタインサートを含むソリューションもある。独国特許第69402588号(特許文献3)の開示は、交換のためにアクセス可能な、ギヤボックスの外側に配置されたオイルフィルタについて説明している。国際公開第2012000539号(特許文献4)に基づく構成は、ロボットのギヤボックスから湿気を除去する問題を解決しており、これは、オイルフィラの劣化という複雑な問題に対する非常に部分的で限定的なソリューションである。特開2016-196087号(特許文献5)に基づくセンサは、産業用ロボット内のギヤボックスのオイルレベルの検出に関して知られている。ただし、このようなセンサは各ギヤボックスに使用する必要があり、それでも、オイルの寿命を延ばすという問題は解決されない。
【0006】
産業用ロボット用のオイル濾過は、韓国特許第920005146号(特許文献6)の開示におけるものなど、アームおよび継手を動かす流体動力回路用に知られているが、運動学的モジュールにおけるトランスミッションオイルの濾過はあまり一般的ではなく、これはオイルフィラの量が比較的少ないことを意味する。典型的には、自動車のギヤボックスオイルは主として自動ギヤボックスにおいてフィルタに通され、例えば、欧州特許出願公開第0995535A2号(特許文献7)におけるものなど、全ての潤滑される構成要素が共通ボックス内に配置されているので、様々な技術的な問題に対処しており、オイル回路は、動力または制御機能の役割を果たしている。
【0007】
潤滑および摩擦診断ソリューションは、蒸気タービンなどの大型回転構成要素の分野でも知られているが、ロボットの技術的なソリューションはロボットの運動学的自由度を制限すること、またはその動的特性を低減させることはできないので、このような既知の手法は全て、ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールには適していない。
【0008】
したがって、多くの、好ましくは全てのロボット運動学的モジュールにとって単純で環境に優しく有用な技術的ソリューションが望ましく、周知ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】スロバキアSK UV 185-2015号
【文献】中国実用新案出願第203123674(U)号
【文献】独国特許第69402588号
【文献】国際公開第2012000539号
【文献】特開2016-196087号
【文献】韓国特許第920005146号
【文献】欧州特許出願公開第0995535A2号
【発明の概要】
【0010】
上記の欠点は、オイル潤滑式の運動学的モジュール、主として産業用ロボットのトランスミッションまたはベアリングモジュールを相互接続するシステムによって実質的に排除され、各モジュールは、モジュールの可動部品の潤滑または冷却を意図したそれ自体のオイルフィルを有するボックスを備え、一方で、運動学的モジュールは、本発明による機器の様々な軸に配置され、その本質は、少なくとも2つの運動学的モジュールのオイルフィリングがオイルラインによって接続されていることである。好ましい構成では、接続は、保守作業時だけでなく恒久的となる。このことは、産業用ロボットの動作中に、循環および場合によっては濾過も連続的に実施されることを意味する。産業用ロボットのアームおよび継手の運動に対して意図された循環するオイルが存在し、これは、ギヤオイルとも呼ばれるオイルの循環があり、潤滑油の量は比較的少ないことを意味する。元々、オイルカートリッジは、運動学的モジュールのケーシング内での恒久的な潤滑のために設計されており、運動学的モジュールは、典型的には、このオイルフィリングを交換するのに所定時間幅を要する。
【0011】
本発明の背景は、2つ以上の運動学的モジュールのボックスを流体的に結合させて、相互接続された運動学的モジュール間における潤滑化されているモジュールの閉じた循環にすることにある。これにより、動力または制御機能を用いる油圧オイルではなく、ギヤオイルを潤滑化するためのオイルの経済性が共通して構築される。循環接続自体は、2つまたは複数の運動学的モジュールに対してオイル品質の均一化につながり、その結果、接続された運動学的モジュールの寿命の共通化が実現され、また整備については、保守間隔は1回だけになる。したがって、単純な循環的な相互接続は、個々の運動学的モジュールの寿命および保守間隔の一定の平均化につながり、負荷が小さい運動学的モジュールは、その汚れの少ないオイルによって、負荷がより高い運動学的モジュールからの不純物を希釈する。
【0012】
運動学的モジュールのオイルボックスの相互接続は、運動学的モジュールが独立していて産業用ロボットの設計および製造を加速する産業用ロボットのモジュール式構造の古典的なアイデアとは相反する。
【0013】
オイル循環を実現するために、重力による流れ、または運動学的モジュール内の可動部品の動的作用を使用することができ、これにより、例えば遊星トランスミッションまたはハーモニックトランスミッションにおける構成要素が間接的にポンピング効果を形成する。入口ラインおよび出口ラインを正しく配置することにより、これらの効果を潤滑油の流れに使用することができる。
【0014】
好ましい構成では、オイルフィルの油圧リンクは、潤滑油の流れを供給するポンプによって補足され、また、より高い位置に配置された運動学的モジュールが十分なオイルフィリングを有することが確実になる。ポンプを、枝路が2つあるオイルラインに含めることができ、ポンプは第1の枝路を通って最も高い運動学的モジュールの中に押し込まれ、そこでオイルは流出して第2の枝路を通って下部の運動学的モジュールに流入する。オイルフィリングの接続は、直列、並列、またはこの組み合わせであり得る。
【0015】
本明細書では、上部の、下部の、最も低い、最も高い運動学的モジュールという用語は、通常動作における運動学的モジュールの意図された提案された位置に関するように、広く解釈されるべきである。これは、最も高いと名付けられた運動学的モジュールが、低い位置に一時的に配置できないという事実には反しない。対応する運動学的モジュールを有するエンドアームが、ある作業サイクルにおいて産業用ロボットのベースに配置され得ることは非常に一般的である。
【0016】
運動学的モジュールのオイルフィラの接続は通常、相互接続された各運動学的モジュールのケーシングがオイルライン入口とオイルライン出口を有するように実装されることになる。好ましくは、オイルライン出口は、運動学的モジュールハウジングの底部に配置される。オイルライン出口は、運動学的モジュールのドレンポートに接続され得る。運動学的モジュールのボックスの入口および出口は、運動学的モジュールのボックスの設計および生産の段階で既に設計されている場合があるが、それらを追加的に構築することもでき、システムを既存の産業用ロボットに適用することが可能である。この場合、通常、オイル用の元々のドレン穴が排出口として使用され、運動学的モジュールハウジングに新しいオイルラインの入口穴が構築される。
【0017】
個々の運動学的モジュールの寿命または保守間隔の平均化、ならびに保守寿命の全体的な増加を実現するために、システムに濾過装置、例えば一般にフィルタ媒体と称され得る装置を含めることが適切である。オイルフィリングを接続する場合、全ての相互接続された運動学的モジュールに対して1つの濾過装置で十分である。この場合、濾過装置はより複雑であり、高い洗浄効率を有する可能性がある。いくつかの基本的な配線ダイアグラムが実施例で説明されている。オイルフィルの接続により、ロボットの(静止した)底部に濾過装置を置くことが可能になり、その構造および操作が単純化される。
【0018】
濾過装置は、フィルタ要素、例えば、好ましくは交換可能なフィルタ要素、ならびに目詰まりしたフィルタ要素に対する保護のためのバイパス弁を含み得る。フィルタ装置はまた、フィルタ要素の透過率を測定するための圧力センサを含むことができる。フィルタ装置はまた、濾過システムにおいて既知の他の要素を含み得る。
【0019】
より長い保守間隔を実現するために、オイルフィラ接続システムには、潤滑油の品質および好ましくはその状態を間接的または直接的に評価する診断要素も取り付けられており、したがって、潤滑油が次の期間に、その潤滑機能をどのように実施することになるかに関する仮定を評価する。単純な診断要素として、油温センサを使用して、いくつかの相互接続された運動学的モジュールの摩擦の増加を診断することができる。運動学的モジュールのボックスは閉じたボックスとして設計されているので、油圧センサを使用してオイルの状態を診断することもできる。好ましい構成では、システムはまた、例えば、潤滑油の汚損の程度を直接に、例えば光学的に測定する診断要素を含み得る。診断要素は典型的には、値を保存して統計的に評価できる評価ユニットと相互接続されることになり、一方で、評価ユニットは、ロボットの制御システムと相互接続されて、オイル診断を個々の運動学的モジュールの実際の負荷と相関させることもできる。
【0020】
システムはまた、特に診断要素を使用する場合、潤滑油に添加される添加剤のための要素を含み得る。添加剤を追加する指示が、得られた診断データに従って評価ユニットから送信できる、または、ロボットの制御システムから取得した負荷統計に従って送信できる。
【0021】
オイルカートリッジの相互接続により、相互接続された全ての運動学的モジュールの潤滑状態に対して複雑な配慮がなされるという利点がもたらされる。したがって、システム内のオイルを冷却または加熱する要素を使用することが好ましい。冷却は、潤滑油の特性を劣化させ得る過剰な熱を除去し、加熱は、ロボットの始動段階における潤滑の改善をもたらす、または潤滑油を交換する時の潤滑油の粘度調整をもたらし得る。
【0022】
好ましい構成では、システムは、パイプまたはホースライン、ポンプ、濾過機器、バイパス弁、圧力変化補償器を含む。システムはまた、粗い機械的不純物のための引込フィルタ、およびフィルタリング機器の状態を判定するための、フィルタリング機器における圧力および温度センサを含んでもよく、特に、不純物による濾過装置の目詰まりのレベルを判定することが可能である。システムは、それ自体のオイル容器および三方弁、ならびに場合により他の保護要素も有し得る。三方弁を個々の運動学的モジュールへの枝路に接続することにより、個々のモジュールを別々に操作することを可能にする構成が提供され、例えば、1つの温度センサが、個々の運動学的モジュールの温度値を漸進的に提供することになる。三方弁は、オイルフィラの複雑な接続の利点を排除しないが、必要な時間にわたって、個々の運動学的モジュールのオイルフィラの別個の循環および処理を可能にする。例えば、ロボット制御ステーションの統計に応じて負荷が最も高い運動学的モジュールは、強力なオイルフィラフラッシュに別個にリンクされてもよく、これも別個にフィルタに通され、よって他の運動学的モジュールからの汚染の少ないオイルとは混合されない。三方弁は、システムの制御ユニットに接続されている。
【0023】
好ましい構成のうちの1つでは、(本発明による)システムは、フィルタリング機器が、産業用ロボット自体の動作範囲内に配置されるように構築されている。これにより、ロボットは、フィルタリング機器内のフィルタリング要素の交換、またはオイルフィリングに関連する任意の他の機械的保守処置を保守検査内で実施することが可能になる。ロボットアームに配置された延長部を、このために使用してもよく、延長部は、フィルタリングインサートの交換のために、または添加剤を有するインサートの交換のために適合されている必要がある。このようなオイルフィリングをリンクしていないと、最後のアームの近くの運動学的モジュールがロボットの動作範囲内に位置していないので、このような操作は不可能である。オイルボックスを油圧回路にリンクすることで、要素がロボットの作業現場で利用可能になる。
【0024】
フィルタリング機器におけるフィルタリング要素の交換の自動化はまた、フィルタリング機器が別個のバイパス枝路に接続された少なくとも2つの別個のフィルタリング要素を備える構成によって行うことができる。最初に、1つのフィルタリング要素が濾過回路に含まれ、油圧を測定することで評価され得る、第1の要素の汚損後に、第2のフィルタ要素へのバイパスが切り替えられる。これにより、産業用ロボットの完全稼働中にフィルタリング要素が交換される。オペレータは、汚損された第1のフィルタリング要素を物理的に交換するまでに十分な時間を有する。
【0025】
別の構成では、システムは、新しいオイルリザーバおよび廃油排出容器も含む形態であって、保守作業は、スタッフが実際に関与することなく、部分的に実施することができる。システムは、対応する弁を通して、使用済みオイルをドレン容器に排出させ、好ましくは、加熱したオイルが排出され、新しいオイルを含む容器からのオイルがシステムの中に引き込まれる。このような作業は、オペレータの存在には関連付けられておらず、オペレータの存在は、主として展開される産業用ロボットの台数が多い場合には作業を計画する工程を複雑化させることになる。オイルの量を精密に測定するためには、オイルレベル用のメータまたはフローメータ、または他の同様の器具を使用できる。使用済みオイルを排出容器から除去するために、オペレータは次の交換までに比較的長い時間、例えば数万時間を有する。濾過要素の交換、オイル交換、添加剤の投入のプロセスの制御は、評価ユニットによって行われる。
【0026】
濾過装置はオイルラインに直接、一体化されてもよく、これは、ラインを通過するオイルが直列のフィルタリング機器も通過することを意味する。他の構成では、システムは、最後の運動学的モジュールからオイルが収集されるそれ自体のオイルタンクを有し得る。オイルは、オイルタンクから濾過装置を通して最も高い運動学的モジュールにポンプで送られる場合があり、またはフィルタリング機器を有する別個の枝路にポンプで送られる場合がある。影響を与える油汚染の場合、最初に循環させることによりオイルタンク内のオイルを洗浄することができ、次いで十分な純度のオイルが運動学的モジュールへの回路にポンプで送られる。
【0027】
技術の条件で言及された欠陥は、本発明によるシステムを含む産業用ロボット自体によっても排除される。相互接続システムは、産業用ロボットの構造の内部に少なくとも部分的に一体化され、ラインが産業用ロボットのアームの内側を通ってもよく、または産業用ロボットの構造の外部に配置されてもよい。これは特に、システムが設計段階の間に産業用ロボットに実装されるのか、または、例えば作業用に展開されている既存の産業用ロボットに実装されるのかに依存する。
【0028】
また、運動学的モジュールの潤滑システム自体も同様に、特に産業用ロボットのギヤおよびベアリングモジュールの場合は新しく、各運動学的モジュールは、運動学的モジュールの可動部品の潤滑または冷却を意図したオイルフィルボックスを含み、運動学的モジュールは産業用ロボットの異なる軸に配置されており、本発明によると、その背景は、1つの運動学的モジュールからのオイルが他の運動学的モジュールからのオイルと共通した循環の形で循環するという事実によって特徴付けられている。オイルは、ポンプで送られて濾過装置を通り運動学的モジュールの中に戻る。
【0029】
バージョンの1つでは、システムは、1つの運動学的モジュールの別個のフィルタリング回路を含み得る。濾過方法は、機械的不純物を分離するために含有されたフィルタリング媒体を用いて、オイルフィルを、一体化されたバイパスフィルタリングシステムを介して油圧回路を通して循環させながら、少なくとも1つの運動学的モジュールに対して、少なくとも1つの運動軸に対して直接実施することができる。
【0030】
ロボット本体と少なくとも1つのアーム、トランスミッション機構、およびトランスミッションチャージの濾過を伴い、動作を生成し、n軸の動きの数を決定するn個のユニットを備える産業用ロボットの発明の背景は、各個別の運動学的モジュールが、特にロボットの運動軸にあるトランスミッション機構が、少なくとも1つのロボットの運動軸のトランスミッション機構と濾過システムとの間の油圧回路内のオイルチャージの循環を伴う、一体化されたバイパスフィルタリングシステムを含み、濾過システムは、少なくとも、機械的不純物をギヤボックスカートリッジから分離するためのフィルタ媒体を備える、という事実にある。ソリューションは、油圧回路を通るトランスミッションチャージの循環が、m<nまたはm=nであるmギヤ機構に関連付けられている可能性を除外しない。実際の構成では、バイパスフィルタリングシステムを、それぞれの運動軸に対してロボット構造の内側から一体化されてもよいが、バイパスフィルタリングシステムを、それぞれの運動軸においてそれぞれの運動軸に対してロボット構造の外側から一体化することも可能である。
【0031】
原理は、フィルタリングシステムをロボット構造の構成の中に直接一体化する必要性にあり、フィルタリングシステムの主な機能は、動作(動作サイクル)中のトランスミッションフィルの循環、およびロボットの動作温度による、機械的不純物の分離、および分散された固体および柔らかい汚泥の形態の沈殿物の分離である。濾過システムは、トランスミッション機構からフィルタリング媒体(分離材料)を通して元に戻す、トランスミッションフィルの循環(ポンピング)を提供する。この油圧回路は、フィルタリングシステム(場所)をロボット構造の外壁または内壁に取り付けて、直接、ロボットに一体化することを想定している。油圧回路を有するフィルタリングシステムが、トランスミッション機構またはトランスミッションカートリッジ(複数のトランスミッション機構が結合されている場合)の各々について分離されていることが適切である。
【0032】
本発明による、産業用ロボットにおけるトランスミッションチャージのフィルタリングの利点、および本発明によるトランスミッションチャージの濾過を伴う産業用ロボットの利点は、現れる効果から明らかである。一般に、ソリューションの独創性は、ロボット装置(産業用ロボット)への濾過システムの一体化が、機能パラメータおよびロボットの信頼性を維持しながら、耐用年数、使いやすさを向上させるために行われるという事実にあると言うことができる。このソリューションの主な利点には、環境への負担を軽減する目的でこれらロボットの整備を単純化することが含まれる。本発明の目的のために、産業用ロボットは、トランスミッションチャージを含むトランスミッション機構を備える産業用マニピュレータとして理解されるべきである。
【0033】
本発明の本質的な利点は、最もストレスのかかる運動学的モジュールの寿命および信頼性を増加させ、全てのリンクされている運動学的モジュールの寿命および信頼性を増加させることにある。重要な利点は環境負荷の低減でもあり、これは本発明に関連するシステムが全体的なオイル消費を削減することであり、システムがオイルの潤滑性能を増加させることを意味する。本発明の重要な利点は、高い柔軟性でもあり、オイルボックスを接続するシステムを、既存の産業用ロボットに形成でき、対応する運動学的モジュールのボックスを少し修正するだけで十分である。本発明はまた、オペレータの実際の立会いを必要としない、保守作業の計画プロセスおよび実行を単純化する。
【0034】
本発明を、図1図10を用いてより詳細に説明する。
【0035】
描かれている配線ダイアグラム、表示スケール、および示されているロボットは例にすぎず、保護の範囲を限定する表示と解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】産業用マニピュレータの3つの運動学的モジュールの相互接続を概略的に示す。
図2】産業用ロボットの6つの運動学的モジュールの単純な直列接続、および背景に、単一の回転軸を有するロボットを示す。
図3】産業用ロボットの6つの運動学的モジュールの分岐した直列接続を概略的に示し、システムは、濾過装置と外部オイルタンクとを有する別個の回路を有する。
図4】産業用ロボットの6つの運動学的モジュールの並列接続を示し、一方で濾過装置は、オイルポンプ回路内の運動学的モジュールに接続されている。
図5】外部オイルタンクを有する産業用ロボットの6つの運動学的モジュールの並列接続を示し、外部オイルタンクを用いて、別個の枝路が濾過装置に接続されている。
図6】評価ユニットと、診断要素および産業用ロボット制御システムとの相互接続のダイアグラムである。
図7】新しいオイルのリザーバ,および排出容器を有する相互接続システムのダイアグラムであり、個々の運動学的モジュールは表示せずに、フィルタ装置枝路の一部のみを示している。図6図7における点線は、情報および制御リンクを示す。
図8】6つの自由軸を有する産業用ロボットを示し、上部の3つの運動学的モジュールのオイルフィラが接続されている。
図9】運動軸を有する別個のギヤ機構の各々に対するギヤボックスフィリングの循環を有する、6つの運動軸を有するロボットの基本的な油圧ダイアグラムである。
図10】運動学的モジュールを形成する別個のギヤ機構の各々に対するギヤボックスフィリングの循環を有する、3つの運動軸を有するロボットの基本的な油圧ダイアグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
実施例1
この例では、図1に基づいて、マニピュレータは、ベアリング減速機の形で運動学的モジュール1に取り付けられ運動学的モジュール1を通って移動する4つの回転継手を有する。最も動的に利用されると見なされる、これら運動学的モジュール1のうちの3つには、配管とホースにより接続されたギヤボックスが取り付けられている。運動学的モジュールのボックス1間のオイル循環は、減速機自体の遊星歯車の動きによって提供され、ポンプ3を接続する必要はない。
【0038】
実施例2
この例では、図2に基づいて、産業用ロボットの6つの運動学的モジュール1の全てのオイルフィリングが相互接続されている。接続は単純な直列接続の循環回路であり、オイルは最も高い運動学的モジュール1から次の運動学的モジュール1に流れる。最後の最も低い運動学的モジュール1から、オイルは、引込フィルタ12を介し濾過装置4を介して、最も高い運動学的モジュール1へと、ポンプ3を通してポンプで送られる。ポンプ3およびそのモータを保護するために、システムにはバイパス弁、およびポンプ3の前後に接続された2つの圧力センサが取り付けられている。
【0039】
最も低い運動学的モジュール1のボックスは、システム全体のオイルボックスとして使用されている。この運動学的モジュールは、隣接する全てのアームおよび継手を支持することができるので、最大の静的負荷および動的負荷に対して設計されている。
【0040】
実施例3
この実施例では、図3によると、前述の実施例の直列接続が、最後の運動学的モジュール1からオイルが流入するオイルタンク9を備える別個のフィルタリング回路によって補完されている。圧力変化の補償器14が、オイルリザーバ9に接続されており、この実施例では、呼吸フィルタの形態をしている。オイルリザーバ9は、ポンプ3によって運動学的モジュール1への枝路に接続され、また、交換可能な濾過要素8、モータを有するポンプ3、バイパス弁、および一対の圧力センサを備えるフィルタ装置回路4に接続されている。引込フィルタ12は、ポンプ3の中への粗い不純物の導入に対する保護として使用されている。
【0041】
実施例4
図4によるこの実施例での並列接続は、個々の運動学的モジュール1用のライン2を主枝路から分離する三方弁グループ13を含む。濾過装置4およびその構成要素のフルフロー接続は、実施例2のものと同様である。三方弁13との並列接続は、単一の運動学的モジュール1のフラッシング制御の利点をもたらす。システムは、オイルが1つだけまたはいくつかの運動学的モジュール1を通って流れるように、一時的に動作し得る。例えば、特定の運動学的モジュール1の過大な負荷または磨耗が診断された場合、この運動学的モジュール1は濾過装置4と循環的に係合し、この運動学的モジュール1からの不純物が他の運動学的モジュール1のオイルボックスに入ることはない。
【0042】
実施例5
図5および図6によるこの実施例での並列係合は、前述の実施例のシステムを補完するものである。これには、最後の運動学的モジュール1からのオイルが流入するオイルタンク9を含む別個のフィルタリング回路が取り付けられている。オイルタンク9には、圧力変化補償器14が取り付けられている。オイルリザーバ9は、ポンプ3によって運動学的モジュール1への枝路に接続され、また、交換可能な濾過要素8、モータを有するポンプ3、バイパス弁、および一対の圧力センサを備えるフィルタ装置回路4に接続されている。引込フィルタ12は、ポンプ3の中への粗い不純物の導入に対する保護として使用されている。プロセス制御は評価ユニット6によって実施され、評価ユニット6には診断要素5、特に油圧および油温センサが接続されている。評価ユニット6はまた、産業用ロボット制御システムに接続され、そこから個々の軸の現在の負荷に関するデータを導出し、個々の運動学的モジュールの統計的指標を生成する。
【0043】
評価ユニット6は添加剤を添加するために使用される要素7を誘導し、また、濾過装置4内のフィルタ要素8を交換する必要性を合図する。
【0044】
実施例6
この実施例では、システムには、濾過装置4内に一対のフィルタリング要素8が取り付けられており、一方で、現在は1つのフィルタ要素8だけが回路に接続されている。設定動作時間に達した時、または第1のフィルタリング要素8の設定汚染レベルを評価した後、評価ユニット6の指示の時点で、第1のフィルタ要素8の枝路が切断され、オイルフローは第2のフィルタ要素8に再接続される。
【0045】
実施例7
この実施例の図7に基づくシステムは、新しいオイルリザーバ10および廃油ディスペンサ11を含む。オイル交換は、操作スタッフがいなくても実施され、動作時間またはオイル劣化率などの設定評価パラメータに達した後、または何らかの他の理由で産業用ロボットがシャットダウンした場合、加熱されたオイルは排出容器11の中に排出され、システムは新しいオイルのカートリッジ10からの新しいオイルで充填される。この動作はまた、試運転の時点で直ちに、新しいオイルを加熱して適切な粘度にすることを伴い得る。
【0046】
実施例8
図8の産業用ロボットは、6つの運動学的モジュール1によって配置された通常の6つの回転軸を有する。オイルチャージの相互接続は、上部の3つの運動学的モジュール1で実施されている。ポンプ3および濾過装置4は、ロボット操作中に移動するアームに配置されている。この構成により、3つの最も問題となる回転軸の潤滑が最適化される。
【0047】
実施例9
本発明の主題の特定の実行のこの実施例は、トランスミッション機構のトランスミッションチャージのフィルタリングを伴う産業用ロボットについて説明している。この実行では、産業用ロボットは6つの動作軸を有する。したがって、図9において主要な油圧ダイアグラムで示すように、6つのトランスミッション機構については、少なくとも1つの運動軸に対して一体型バイパス濾過システムが一体化されており、バイパス濾過システムは、1つの運動軸に対するトランスミッション機構と濾過システムとの間にライン2を有する油圧回路内におけるトランスミッションチャージの循環を伴う濾過装置4を有する。濾過システムは、機械的不純物を分離するためのフィルタ媒体に加えて、他の支持構成要素も含む。濾過装置4を有するバイパス濾過システムは、それぞれの運動軸、すなわち、それぞれロボットの本体またはアームのために、ロボット構造の内部から一体化されている。
【0048】
実施例10
本発明の主題の特定の実行のこの実施例は、トランスミッション機構内のトランスミッションチャージのフィルタリングを伴う産業用ロボットについて説明している。この実行では、ロボット(マニピュレータ)は3つの動作軸を有する。したがって、図10において主要な油圧ダイアグラムで示すように、3つのトランスミッション機構において1つの運動軸に対して、バイパス濾過システムが一体化されており、バイパス濾過システムは、1つの運動軸に対するトランスミッション機構(運動学的モジュール1)とフィルタリングシステムとの間にライン2を有する油圧回路内におけるトランスミッションチャージの循環を伴う濾過装置4を有する。濾過システムは、機械的不純物を分離するためのフィルタ媒体に加えて、他の支持構成要素も含む。
【0049】
濾過装置4を有する濾過システムが、3軸動作ロボット(マニピュレータ)の2つの運動軸のみで使用される場合、可能な代替形態も存在する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
工業的な操作性は明らかである。本発明によれば、産業用ロボットまたはマニピュレータのオイルの経済性を集中化させるオイルボックスを切り替えるシステムを工業的に繰り返し製造し使用することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 運動学的モジュール
2 ライン
3 ポンプ
4 濾過機器
5 診断要素
6 評価ユニット
7 添加剤を追加するための要素
8 濾過要素
9 オイルタンク
10 新しいオイルタンク
11 排出容器
12 引込フィルタ
13 三方弁
14 補償器
a1 軸1
a2 軸2
a3 軸3
a4 軸4
a5 軸5
a6 軸6
CPU 産業用ロボット制御システム
M モータ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10