(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】血液中の無細胞DNAを用いた血液学的障害の検出
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20240814BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240814BHJP
G01N 33/72 20060101ALI20240814BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20240814BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240814BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240814BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
G01N33/50 P
G01N33/72 A
C12Q1/6851 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/02
C12Q1/04
(21)【出願番号】P 2021189986
(22)【出願日】2021-11-24
(62)【分割の表示】P 2018562945の分割
【原出願日】2017-05-30
【審査請求日】2021-12-24
(32)【優先日】2016-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512037244
【氏名又は名称】ザ チャイニーズ ユニバーシティ オブ ホンコン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(72)【発明者】
【氏名】ロ ユイク-ミーン デニス
(72)【発明者】
【氏名】チーウ ロッサ ワイ クーン
(72)【発明者】
【氏名】チャン クワン チー
(72)【発明者】
【氏名】スン クン
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/008451(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/159292(WO,A2)
【文献】特表2015-536639(JP,A)
【文献】Proc. Nat. Acad. Sci., 2015, Vol.112, No.40, E5503-5512
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の血液試料を分析する方法であって、
アッセイから得られたシグナルに基づいて、1つ以上の差次的にメチル化された領域における、前記血液試料のセルフリー混合物中のメチル化または非メチル化DNA断片の第1の数を検出することと、ここで、前記セルフリー混合物は、複数の細胞系譜由来のセルフリーDNAを含み、前記1つ以上の差次的にメチル化された領域の各々が、他の細胞系譜と比較して、低メチル化または高メチル化されていることによって特定の血球系譜に特異的である、
前記第1の数を用いてメチル化レベルを決定することと、
前記メチル化レベルを1つ以上のカットオフ値と比較することと、
前記血液試料のヘモグロビンレベルを測定することと、
前記ヘモグロビンレベルをヘモグロビン閾値と比較することと、
前記メチル化レベルと前記1つ以上のカットオフ値との比較、および前記ヘモグロビンレベルと前記ヘモグロビン閾値との比較に基づいて、前記哺乳類において白血病が存在するか否かを決定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記1つ以上の差次的にメチル化された領域における前記セルフリー混合物中のDNA断片の総数を決定することと、
前記第1の数および前記総数を用いて前記メチル化レベルを決定することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セルフリー混合物の体積を決定することをさらに含み、前記メチル化レベルが、前記第1の数および前記セルフリー混合物の前記体積を用いて決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記特定の血球系譜および前記他の細胞系譜を含む複数の細胞系譜の各々について、複数の部位のメチル化指数を得ることと、
前記複数の部位の各部位の、前記複数の細胞系譜の前記メチル化指数を比較することと、
第1のメチル化閾値を下回る/上回る前記特定の血球系譜におけるメチル化指数と、第2のメチル化閾値を上回る/下回る前記他の細胞系譜の各々におけるメチル化指数と、を有する前記複数の部位の1つ以上の部位を特定することと、
前記1つ以上の部位を含有する差次的にメチル化された領域を特定することと、
によって前記1つ以上の差次的にメチル化された領域を特定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のカットオフ値を決定することをさらに含み、
複数の試料の各々について、1つ以上の差次的にメチル化された領域のメチル化レベルを決定することと、ここで、各試料は、白血病の特定の分類を有することが既知である、
白血病の第1の分類を有する第1の複数の試料セットを特定することと、ここで、前記第1の分類は白血病が存在する、
白血病の第2の分類を有する第2の複数の試料セットを特定することと、ここで、前記第1の試料セットが、前記第2の試料セットよりも統計的に高いメチル化レベルを集約的に有し、前記第2の分類は白血病が存在しない、
指定された特異性および感度内で前記第1の試料セットと前記第2の試料セットとを区別するカットオフ値を決定することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記メチル化レベルと前記1つ以上のカットオフ値との比較に基づいて、及び前記ヘモグロビンレベルと前記ヘモグロビン閾値との比較に基づいて、白血病が存在することを判断することを補助するための出力(output)を提供すること、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1つ以上の差次的にメチル化された領域が、CpG部位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の差次的にメチル化された領域の第1の領域が、互いの100bpの範囲内にある複数のCpG部位を含み、前記複数のCpG部位がすべて低メチル化または高メチル化されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の差次的にメチル化された領域が低メチル化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の差次的にメチル化された領域のうちの1つが、FECH遺伝子にある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の差次的にメチル化された領域のうちの1つが、ゲノム座標48227688~48227701の第12番染色体にある、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の差次的にメチル化された領域のうちの1つが、ゲノム座標48228144~48228154の第12番染色体にある、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実施するようにシステムを制御するための複数の命令を保存するコンピュータ可読媒体。
【請求項14】
請求項
13に記載のコンピュータ可読媒体と、
前記コンピュータ可読媒体上に保存された命令を実行するための1つ以上のプロセッサと、を備えた、システム。
【請求項15】
請求項1~
12のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成された、システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体的な内容がすべての目的にために参照により本明細書に組み込まれる、2016年5月30日出願の「血液中の無細胞DNAを用いた血液学的障害の検出(Detecting Hematological Disorders Using Cell-Free DNA In Blood)」という表題の米国仮特許出願第62/343050号に由来する優先権を主張し、その非仮出願である。
【0002】
血液学的障害(例えば、貧血)が人に存在するかどうかを判定するために、従来技術では、骨髄生検の組織学的検査を行う。しかしながら、骨髄生検は、このような手順を受けている患者にとって疼痛および不安につながる侵襲的な手順である。それゆえ、人における血液学的障害を検出し特徴づけるための新たな技術を特定することが望ましい。
【0003】
貧血は、各々独自の治療を用いる複数の臨床的容態によって発症し得る。したがって、貧血の症例の原因を確認した後、それに応じてさらに試験または治療することは臨床的に有用であろう。貧血の1つの原因は、鉄、B12、葉酸塩などだがこれらに限定されない赤血球産生(赤血球を産生する過程)に必要な栄養素の欠乏である。貧血の別の原因は、失血であり、急性または慢性であり得る。失血は、例えば、過多月経または消化管からの出血によって発症し得る。貧血はまた、癌および炎症性腸疾患において認められ得る、慢性疾患の貧血とも呼ばれる、多くの慢性障害においても頻繁に認められる。
【0004】
したがって、血液学的障害について対象をスクリーニングするための、血液学的障害の原因を判定するための、血液学的障害に罹患している対象をモニターするための、および/または血液学的障害に罹患している対象の適切な治療を判断する新たな技術を提供することが所望されている。
【発明の概要】
【0005】
いくつかの実施形態は、血液試料中の無細胞DNAを用いて、例えば、血漿または血清を用いて、血液学的障害を検出するためのシステム、方法、および装置を提供する。例えば、アッセイは、特定の血球系譜(例えば、赤芽球)に特異的な1つ以上の差次的にメチル化された領域を標的とすることができる。メチル化レベルは、血液試料の無細胞混合物中のメチル化されたか、またはメチル化されていないDNA断片の量を測定するためのアッセイから定量化することができる。メチル化レベルは、例えば、血液学的障害のレベルを判定する一環として、特定の血球系譜についての正常範囲に対応する1つ以上のカットオフ値と比較することができる。いくつかの実施形態は、1つ以上のメチル化レベルを用いて類似の様式で、血液試料中の特定の血球系譜(例えば、赤芽球DNA)由来のDNAの量を測定することができる。
【0006】
このような分析は、骨髄生検の侵襲的手順を行うことなく、血液学的障害の検出を提供することができる。例えば、本発明者らの結果は、骨髄細胞が循環無細胞DNAに有意な比率を寄与すると実証している。循環中の無細胞DNA中の造血細胞のメチル化署名の分析は、骨髄細胞の状態を反映することができる。このような実施形態は、治療に対する骨髄の応答、例えば、鉄欠乏性貧血に罹患している患者における経口鉄療法に対する応答のモニタリングに特に有用であり得る。実施形態は、異なる手順、例えば、骨髄生検または侵襲性の低い試験に患者を割り当てるために使用することもできる。
【0007】
他の実施形態は、本明細書で説明される方法と関係したシステムおよびコンピュータ可読媒体に関する。
【0008】
本発明の実施形態の性質および利点に関するより良好な理解は、以下の発明を実施するための形態および添付の図面に関して得られ得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態によるフェロキラターゼ(FECH)遺伝子のプロモーター内のCpG部位のメチル化密度を示す。
【
図2A】本発明の実施形態によるメチル化されたDNAおよびメチル化されていないDNAを検出するために設計されたデジタル式PCRアッセイを用いて普遍的にメチル化されたDNAおよびメチル化されていないDNAの分析を示す。
【
図2B】本発明の実施形態によるメチル化されたDNAおよびメチル化されていないDNAを検出するために設計されたデジタル式PCRアッセイを用いて普遍的にメチル化されたDNAおよびメチル化されていないDNAの分析を示す。
【
図3A】本発明の実施形態による血球中のE%と有核RBC(赤芽球)の数との相関を示すプロットである。
【
図3B】本発明の実施形態による無細胞DNAを分析することによって生物学的試料中の特定の細胞系譜の細胞量を決定するための方法300を示す流れ図である。
【
図4】本発明の実施形態による健常非妊娠対象および異なる妊娠期の妊婦のバフィーコートおよび血漿における非メチル化%を示す。
【
図5】バフィーコートにおける非メチル化%と血漿との相関の欠如を示すプロットである。
【
図6A】本発明の実施形態による健常対象における赤血球系DNAの百分率(E%(FECH))を示す。E%は非メチル化%と同じであると定義することができる。
【
図6B】本発明の実施形態による健常対象における赤血球系DNAの百分率(E%(FECH))を示す。E%は非メチル化%と同じであると定義することができる。
【
図7】血漿DNAにおけるE%(FECH)結果と健常対象の年齢との相関の欠如を示す。
【
図8】本発明の実施形態による再生不良性貧血患者、重症型ベータサラセミア患者、および健常対照対象におけるヘモグロビン濃度に対する非メチル化%のプロットである。
【
図9】本発明の実施形態による鉄(Fe)欠乏性貧血患者および急性失血患者における血漿非メチル化%のプロットである。
【
図10】本発明の実施形態による再生不良性貧血患者、慢性腎不全(CRF)患者、重症型β-サラセミア患者、鉄欠乏性貧血患者および健常対象の間での血漿中の赤血球系DNA百分率(E%(FECH))とヘモグロビンレベルとの関連性を示す。
【
図11A】本発明の実施形態による再生不良性貧血患者、慢性腎不全(CRF)患者、重症型β-サラセミア患者、および鉄欠乏性貧血患者の間での網状赤血球算定/指標とヘモグロビンレベルとの関連性を示す。
【
図11B】本発明の実施形態による再生不良性貧血患者、慢性腎不全(CRF)患者、重症型β-サラセミア患者、および鉄欠乏性貧血患者の間での網状赤血球算定/指標とヘモグロビンレベルとの関連性を示す。
【
図12】本発明の実施形態による骨髄異形成症候群患者および真性赤血球増加症患者における血漿非メチル化%のプロットである。
【
図13A】本発明の実施形態による再生不良性貧血(AA)患者と骨髄異形成症候群(MDS)患者の間の血漿中の赤血球系DNAの百分率(E%(FECH))を示す。
【
図13B】本発明の実施形態による再生不良性貧血における治療応答性群と治療非応答性群の間の血漿中の赤血球系DNAの百分率(E%(FECH))を示す。
【
図14】本発明の実施形態による正常対象および2名の白血病患者におけるヘモグロビン濃度に対する血漿中の非メチル化%のプロットである。
【
図15A】本発明の実施形態による第12染色体上の赤芽球特異的DMR内のCpG部位のメチル化密度を示す。
【
図15B】本発明の実施形態による第12染色体上の赤芽球特異的DMR内のCpG部位のメチル化密度を示す。
【
図16】ENCODEデータベース由来の2つの他の赤芽球特異的DMR(Ery-1およびEry-2)に対するヒストン修飾(H3K4me1およびH3K27Ac)を示す。
【
図17A】Ery-1マーカー(
図17A)およびEry-2マーカー(
図17B)を標的とするデジタル式PCRアッセイによって測定された重症型β-サラセミア患者のバフィーコートDNAにおける赤血球系DNA配列の百分率(E%)と、自動血液分析装置を用いて測定された末梢白血球全部における赤芽球の百分率との相関を示す。
【
図17B】Ery-1マーカー(
図17A)およびEry-2マーカー(
図17B)を標的とするデジタル式PCRアッセイによって測定された重症型β-サラセミア患者のバフィーコートDNAにおける赤血球系DNA配列の百分率(E%)と、自動血液分析装置を用いて測定された末梢白血球全部における赤芽球の百分率との相関を示す。
【
図18A】重症型β-サラセミア患者のバフィーコートDNAにおけるE%(FECH)結果とE%(Ery-1)とE%(Ery-2)との相関を示す。
【
図18B】重症型β-サラセミア患者のバフィーコートDNAにおけるE%(FECH)結果とE%(Ery-1)とE%(Ery-2)との相関を示す。
【
図19】本発明の実施形態による3つの赤芽球特異的DMRを標的とするデジタル式PCR分析を用いて、健常対象ならびに再生不良性貧血患者および重症型β-サラセミア患者における赤血球系DNAの百分率を示す。
【
図20A】本発明の実施形態による治療前状態および治療2日後における静脈鉄療法を受けている鉄欠乏性貧血の血漿DNAにおける赤血球系DNAの百分率(E%(FECH))と網状赤血球算定の百分率との連続測定結果を示す。
【
図20B】本発明の実施形態による治療前状態および治療2日後における静脈鉄療法を受けている鉄欠乏性貧血の血漿DNAにおける赤血球系DNAの百分率(E%(FECH))と網状赤血球算定の百分率との連続測定結果を示す。
【
図21A-21B】本発明の実施形態による経口鉄治療を受けている過多月経起因性鉄欠乏性貧血患者における赤芽球DMRの血漿E%の連続的変化を示す。治療後のヘモグロビンの変化を示す。
【
図22】組換えエリスロポエチン(EPO)治療または赤血球産生促進剤(ESA)治療を受けている慢性腎疾患(CKD)患者の赤芽球DMRにおける血漿非メチル化%の連続的変化を示す。
【
図23A-23B】本発明の実施形態による抗胸腺細胞グロブリン(ATG)治療または免疫抑制療法としてのシクロスポリンを受けている再生不良性貧血患者の赤芽球DMRにおける血漿非メチル化%の連続的変化を示す。治療を受けている再生不良性貧血患者のヘモグロビンの連続的変化を示す。
【
図24A】再生不良性貧血患者4名におけるヘモグロビン濃度に対する血漿中の非メチル化%のプロットを示す。
【
図24B】再生不良性貧血患者4名におけるヘモグロビン濃度に対する血漿中の非メチル化%のプロットを示す。
【
図25】本発明の実施形態による健常対象および貧血患者におけるFECH遺伝子関連DMR(コピー数/血漿ml)における赤血球系DNAの絶対濃度を示すボックスアンドウィスカープロットを示す。
【
図26】本発明の実施形態による哺乳類の血液試料を分析する方法を示す流れ図である。
【
図27】本発明の実施形態によるシステム2700を示す。
【
図28】本発明の実施形態によるシステムおよび方法とともに使用可能な、例となるコンピュータシステムのブロック図を示す。
【0010】
用語
「メチローム」は、ゲノムにおける複数の部位または遺伝子座のDNAメチル化の量の尺度を提供する。メチロームは、ゲノムの全部、ゲノムの実質的な部分、またはゲノムの比較的わずかな部分(複数可)に対応し得る。
【0011】
「細胞系譜」は、受精した胚からの組織または器官の発生歴を示す。異なるタイプの組織(例えば、異なるタイプの血球)は、異なる細胞系譜を有することになっている。赤血球(RBC)は、前赤芽球から一連の中間的な細胞を通じて得られる。前赤芽球、巨核芽球および骨髄芽球は、共通の骨髄前駆細胞から得られる。リンパ球は、共通のリンパ球前駆細胞から得られる。有核RBCは赤芽球であり、未熟な除核されたRBCは網状赤血球であり、成熟した除核されたRBCは赤血球であり、ヘモグロビンを運ぶ血流中の赤血球である。
【0012】
「無細胞混合物」は、種々の細胞由来の無細胞DNA断片を含む試料に対応している。例えば、無細胞混合物は、種々の細胞系譜由来の無細胞DNA断片を含むことができる。血漿および血清は、血液試料から、例えば、遠心分離を介して得られた無細胞混合物の例である。他の無細胞混合物は、他の生物学的試料に由来し得る。「生物学的試料」は、対象(例えば、妊婦、癌に罹患している人もしくは癌に罹患していると疑われる人、臓器移植レシピエント、または心筋梗塞における心臓、卒中における脳、もしくは貧血における造血系など、器官を包含する疾患過程を有すると疑われる人)から採取され、関心対象の1つ以上の核酸分子(複数可)を含有する何らかの試料を指す。生物学的試料は、血液、血漿、血清、尿、膣液、水腫由来の(例えば、精巣の)流体、または膣洗浄流体、胸水、腹水、脳脊髄液、唾液、汗、涙、痰、気管支肺胞洗浄液などの体液であり得る。大便試料も使用することができる。種々の実施形態において、無細胞DNAが濃縮された生物学的試料(例えば、遠心分離プロトコルを介して得られた血漿試料)におけるDNAの大部分、例えば、50%超、60%、70%、80%、90%、95%、または99%は、(細胞とは対照的に)無細胞であり得る。遠心分離プロトコルは、3,000g×10分、流体部分を得ること、残りの細胞を除去するために30,000gでさらに10分間再遠心分離することを含み得る。
【0013】
「血漿メチローム」は、動物(例えば、ヒト)の血漿または血清から測定されたメチロームである。血漿メチロームは、血漿および血清が無細胞DNAを含むので、無細胞メチロームの例である。血漿メチロームは、体内の異なる器官または組織または細胞に由来するDNAの混合物であるので、混合メチロームの例でもある。一実施形態において、このような細胞は、赤血球(すなわち、赤色細胞)系譜、骨髄系譜(例えば、好中球およびこれらの前駆体)および巨核球系譜の細胞を含むが、これらに限定されない造血細胞である。妊娠中、血漿メチロームは胎児および母親からのメチローム情報を含有することがある。癌患者において、血漿メチロームは、腫瘍細胞および患者の体内の他の細胞に由来のメチローム情報を含有し得る。「細胞性メチローム」は、患者の細胞(例えば、血球)から測定されるメチロームに対応する。血球のメチロームは、血球メチローム(または血中メチローム)と呼ばれる。メチロームを測定するための技術は、「Non-Invasive Determination Of Methylome Of Fetus Or Tumor From Plasma」という表題のPCT特許出願第WO2014/043763号に記載されており、その開示はすべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【0014】
「部位」は、単一の塩基位置または相関する塩基位置の群、例えば、CpG部位であり得る単一の部位に対応する。「遺伝子座」は、複数の部位を含む領域に対応し得る。遺伝子座は、領域をその脈絡における部位と等価にするであろうただ1つの部位を含むことができる。
【0015】
各ゲノム部位(例えば、CpG部位)についての「メチル化指数」は、この部位におけるメチル化を、その部位を網羅する読み取り総数にわたって示す、(例えば、配列読み取りまたは配列プローブから決定されるような)DNA断片の比率を指すことができる。「読み取り」は、DNA断片から得られた情報(例えば、部位のメチル化状態)に対応することができる。特定のメチル化状態のDNA断片と優先的にハイブリッド形成する試薬(例えば、プライマーまたはプローブ)を用いて、読み取りを得ることができる。典型的には、このような試薬は、DNA分子のメチル化状態に応じてこのDNA分子を差別的に修飾するプロセス、例えば二亜硫酸塩変換またはメチル化感受性制限酵素による処理の後に適用される。読み取りは、配列読み取りとすることができる。「配列読み取り」は、核酸分子の任意の部分または全部から配列決定されたヌクレオチドの鎖を指す。例えば、配列読み取りは、核酸断片から配列決定された短鎖ヌクレオチド(例えば、約20~150個)、核酸断片の片端もしくは両端の短鎖ヌクレオチド、または生物学的試料中に存在する核酸断片全体の配列決定であり得る。配列読み取りは、種々の方法において、例えば、(例えば、ハイブリッド形成アレイもしくは捕捉プローブ、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)もしくは線形増幅もしくは等温増幅などの増幅技術において)配列決定技術を用いて、またはプローブを用いて得られ得る。
【0016】
領域の「メチル化密度」は、この領域における部位を網羅する読み取りの総数によって除されたメチル化を示す、領域内の部位の読み取りの数を指すことができる。この部位は、特定の特徴を有し得、例えば、CpG部位であり得る。したがって、領域の「CpGメチル化密度」は、この領域におけるCpG部位(例えば、特定のCpG部位、CpGアイランド内のCpG部位、またはそれより大きな領域)を網羅する読み取りの総数によって除されたCpGメチル化を示す読み取り数を指す。例えば、ヒトゲノム中の各100kbビンのメチル化密度は、100kb領域へマッピングされた配列によって覆われたCpG部位全部の比率として、CpG部位の(メチル化されたシトシンに対応する)二亜硫酸塩処理後に覆われていないシトシンの総数から決定することができる。この分析は、他のビンサイズに対して行うこともでき、例えば、500bp、5kb、10kb、50kbまたは1Mbなどである。領域は、全ゲノムまたは染色体全部または染色体の一部(例えば、染色体腕)であり得る。CpG部位のメチル化指数は、領域がそのCpG部位のみを含む場合、この領域のメチル化密度と同じである。「メチル化シトシンの比率」は、この領域における解析されたシトシン残基の総数、すなわちCpGの脈絡外のシトシンを含む、メチル化されている(例えば、二亜硫酸塩変換後に覆われていない)ことが示されているシトシン部位「C」の数を指すことができる。メチル化指数、メチル化密度およびメチル化シトシンの比率は、「メチル化レベル」の例である。二亜硫酸塩変換とは別に、当業者に既知の他のプロセスを用いてDNA分子のメチル化状態を調べることができ、このプロセスは、メチル化状態に敏感な酵素(例えば、メチル化感受性制限酵素)、メチル化結合タンパク質、メチル化状態に感受性のあるプラットフォームを用いる単一分子配列決定(例えば、ナノポア配列決定(Schreiber et al.Proc Natl Acad Sci 2013;110:18910-18915)およびPacific Biosciences単分子リアルタイム分析(Flusberg et al.Nat Methods 2010;7:461-465)による単一分子配列決定)を含むがこれらに限定されない。
【0017】
「メチル化特性」(メチル化状態とも呼ばれる)は、領域のDNAメチル化と関連した情報を含む。DNAメチル化と関連した情報は、CpG部位のメチル化指数、領域中のCpG部位のメチル化密度、連続した領域にわたるCpG部位の分布、2つ以上のCpG部位を含有する領域内の各個々のCpG部位のメチル化のパターンまたはレベル、および非CpGメチル化を含むことができるが、これらに限定されない。ゲノムの実質的な部分のメチル化特性は、メチロームと等価とみなすことができる。哺乳類ゲノムにおける「DNAメチル化」は、典型的には、CpGジヌクレオチドにおけるシトシン残基の5’炭素へのメチル基の付加(すなわち、5-メチルシトシン)を指す。DNAメチル化は、他の脈絡においてはシトシンにおいて生じ得、例えばCHGおよびCHH(式中、Hはアデニン、シトシンまたはチミンである)である。シトシンのメチル化は、5-ヒドロキシメチルシトシンの形態でもあり得る。N6-メチルアデニンなどの非シトシンメチル化も報告されている。
【0018】
「組織」は、機能単位として一緒に群形成する細胞の群に対応する。1つの組織内に2つ以上のタイプの細胞を認めることができる。異なるタイプの組織は、異なるタイプの細胞(例えば、肝細胞、肺胞または血球)からなり得るが、異なる生物(母親対胎児)由来の組織または健常細胞対腫瘍細胞に対応し得る。「参照組織」は、組織特異的メチル化レベルを決定するために使用される組織に対応する。異なる個体由来の同じ組織タイプの複数の試料を使用して、その組織タイプの組織特異的メチル化レベルを決定することができる。異なる時期の同じ個体に由来する同じ組織は、生理(例えば、妊娠)または病理(例えば、癌または貧血または感染または変異)に起因して相違を呈することがある。異なる個体由来の同じ組織タイプは、生理(例えば、年齢、性別)または病理(例えば、癌または貧血または感染または変異)に起因して相違を呈することがある。
【0019】
「障害の分類」とも呼ばれる「障害のレベル」という用語は、障害が存在するか否かの分類、障害のタイプ、障害の病期、および/または障害の重症度に関する他の尺度を指すことができる。レベルは、数字またはその他の文字であり得る。レベルは、ゼロであり得る。障害のレベルは、種々の方法で使用することができる。例えば、スクリーニングは、癌を有することが今までわかっていない人において、障害が存在するかどうかを確認することができる。評価は、障害の進行を経時的にモニターし、療法の有効性を研究し、または予後を判断するために、障害と診断された人を調べることができる。一実施形態において、予後は、患者がこの障害で死亡する可能性、または特定の持続時間または特定の時間の後に障害が進行する可能性として表すことができる。検出は、「スクリーニング」を意味し得、または障害の示唆的な特徴(例えば、症状または他の陽性試験)を有する人が障害を有するかどうかを確認することを意味し得る。
【0020】
貧血は、年齢、性別、海抜高度、喫煙、および妊娠状態によって変化し得る赤血球の数または赤血球の酸素運搬能力が生理学的需要を満たすには不十分である容態を指す。世界保健機関(WHO)の勧告によると、貧血は、ヘモグロビン濃度が男性で130g/L未満、女性で110g/L未満である場合に診断することができる。「貧血の程度」という用語は、対象のヘモグロビン濃度によって反映され得る。より低いヘモグロビンレベルは、より重症な貧血の程度を示す。WHOの勧告によると、重度の貧血とは、男性で80g/L未満、女性で70g/L未満のヘモグロビン濃度を指し、中等度の貧血とは、男性で80~109g/L、女性で70~99g/Lのヘモグロビン濃度を指し、軽度の貧血とは、男性で110~129g/L、女性で100~109g/Lのヘモグロビン濃度を指す。
【0021】
「分離値」は、2つの値を包含する差または比、例えば、2つの分数寄与または2つのメチル化レベルに相当する。分離値は、単純な差または比であり得る。分離値は、他の因子、例えば、倍数因子を含むことができる。他の例として、値の関数の差または比、例えば、2つの値の自然対数(ln)の差または比を使用することができる。分離値には、差および比を含むことができる。
【0022】
本明細書で使用される場合の「分類」という用語は、試料の特定の特性と関係した任意の数(複数可)または他の特徴(複数可)を指す。例えば、「+」記号(または「陽性」という語)は、試料が欠失または増幅を有するものとして分類されることを意味し得る。分類は、二元性(例えば、陽性または陰性)であり得、またはより多くのレベルの分類(例えば、1~10または0~1の尺度)を有し得る。「カットオフ」という用語および「閾値」は、ある操作において使用される所定の数を指す。閾値は、特定の分類が要求しているものを上回るまたは下回る値であり得る。これらの用語のいずれも、これらの脈絡のいずれにおいても使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
いくつかの実施形態において、赤芽球由来の無細胞DNAの寄与は(循環DNAとも呼ばれる)は、他の組織由来の無細胞DNAと比較して、赤芽球に特異的な1つ以上のメチル化署名(例えば、マーカーにつき1つの署名)を用いて定量化される。マーカー(例えば、差次的にメチル化された領域(DMR))は、同じ署名に寄与する1つの部位または1群の部位を含むことができる。
【0024】
赤芽球由来の無細胞DNAの寄与は、貧血などの血液学的障害のレベルを判定するために用いることができる。例えば、実施形態は、胎児、新生児または子供における貧血を評価するために使用することができる。貧血の脈絡で、実施形態を使用して、貧血の疑いがあるか、または貧血と診断された人を調べて、(i)貧血の原因を解明すること、(ii)臨床状態の進行を経時的にモニターすること、(iii)療法の有効性を研究すること、または(iv)予後を判断することができる。したがって、実施形態は、赤血球DNAを循環DNAプールのこれまで認識されていない主成分として、ならびに貧血および他の血液学的障害の差別的診断およびモニタリングのための非侵襲性バイオマーカーとして特定した。
【0025】
1.序論
血漿DNAは、分子診断にとってますます遂行される分析物である。特に非侵襲的出生前検査(1~7)および腫瘍学(8~12)において血漿DNAの臨床応用に関する継続的な調査研究がある。広範な種類の臨床応用にもかかわらず、循環DNAの組織起源は完全には理解されていない。
【0026】
循環DNAは、性別ミスマッチ骨髄移植をモデル系として用いて造血細胞から主として放出されることが示されてきた(13,14)。Kunらは近年、有意な比率の血漿DNAが、好中球およびリンパ球のメチル化署名を有していることを実証した(15)。しかしながら、現在のところ、赤血球起源(赤芽球)のDNAが血漿中でも検出可能であり得るかどうかに関する情報はまったくない。
【0027】
赤血球(RBC)は、血液中の最大数の造血細胞である。赤血球(RBC)の濃度は、血液1リットルあたりおよそ5×1012である。各RBCの寿命が約120日であることを考慮すると、体は、1日あたり2×1011個のRBC、または1時間あたり9.7×109個のRBCを産生する必要がある。ヒトの成熟RBCには核がない。
【0028】
赤芽球が核を失い、骨髄中で網状赤血球へと成熟するのは、除核の段階中である(16)。除核のプロセスは、細胞シグナル伝達および細胞骨格の作用の厳密に調節された作用を包含する複雑な多段階プロセスである。赤芽球の核材料は、赤芽球島中の、例えば骨髄中の骨髄マクロファージによって貪食および分解される(17)。本発明者らは、骨髄由来の赤血球系系譜の分解されたDNA材料のいくつかが循環系に放出されると仮定している。
【0029】
実施形態は、赤血球系起源の細胞由来のDNAのメチル化署名を特定し、このような署名を用いて、赤血球DNAが、ヒト血漿中で検出可能であるかどうかを判断することができる。異なる組織および造血細胞タイプの高解像度参照メチロームは、BLUEPRINT Project(18,19)およびRoadmap Epigenomics Project(20)含む共同プロジェクトを通じて公共的に入手可能となっている。本発明者らなどは、組織関連メチル化署名の分析を通じて血漿DNAの起源を追跡することが可能であることを既に実証している(15,21,22)。無細胞混合物(例えば、血漿)に対するある特定の組織の寄与を決定するためのこのような分析のさらなる詳細は、「Methylation Pattern Analysis Of Tissues In A DNA Mixture」という表題のPCT特許出願第WO2016/008451号において認めることができ、この開示はすべての目的のためにその全体が参照により組み込まれる。
【0030】
本発明者らの仮説を検証し、血漿中の赤血球系DNAの存在を実証するため、本発明者らは、赤芽球および他の組織タイプのメチル化特性の解析を通じて赤芽球の特異的な差次的にメチル化された領域(DMR)を特定した。この発見に基づいて、本発明者らは、赤芽球特異的DMRを標的としたデジタル式ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイを開発し、生物学的試料中の赤血球系DNAの定量分析を可能にした。具体的には、赤芽球および他の組織タイプの高分解能メチル化特性を用いて、3つのゲノム遺伝子座が赤芽球においては低メチル化されるが、他の細胞タイプでは高メチル化されることが認められた。各遺伝子座について差次的にメチル化された領域を用いて赤血球系DNAを測定するためのデジタル漆器PCRアッセイを開発した。
【0031】
本発明者らは、これらのデジタル式PCRアッセイを応用して、健常対象および異なるタイプの貧血に罹患している患者の血漿試料を研究した。本発明者らは、貧血評価における本アッセイの潜在的な臨床的有用性も検討した。例はPCRアッセイを使用しているが、配列決定などの他のアッセイを使用してもよい。
【0032】
病因の異なる貧血に罹患している対象において、本発明者らは、循環赤血球系DNAの定量分析(例えば、メチル化マーカーを使用する)が骨髄における赤血球産生活性を反映することを示している。エリスロポエチン活性が低下した患者については、再生不良性貧血に例示されるように、循環赤血球系DNAの百分率は低下した。赤血球産生が上昇したが有効でない患者については、重症型β-サラセミアによって例示されるように、百分率は上昇した。加えて、赤血球系DNAの血漿レベルは、再生不良性貧血および鉄欠乏性貧血における治療応答と相関することが認められた。他の2つの差次的にメチル化された領域を標的とするデジタル式PCRアッセイを用いた血漿DNA分析も同様の所見を示した。
【0033】
2.赤芽球の差次的にメチル化された領域(DMR)
本発明者らは、RBCの成熟に関与する赤芽球除核プロセスまたは他のプロセスが循環無細胞DNAのプールに有意に寄与するであろうという仮説を立てている。赤芽球由来の循環DNAの寄与を決定するために、本発明者らは、赤芽球のDNAメチル化特性を他の組織および血球と比較することによって、赤芽球のDNA中の差次的にメチル化された領域(DMR)を特定した。本発明者らは、BLUEPRINT ProjectおよびRoadmap Epigenomics Projectならびに本発明者らのグループによって生成したメチロームから、赤芽球および他の血球(好中球、Bリンパ球およびTリンパ球)ならびに組織(肝臓、肺、結腸、小腸、膵臓、副腎、食道、心臓、脳および胎盤)のメチル化プロファイルを調べた(18~20,23)。
【0034】
単純な例では、1つ以上のDMRを直接使用して、例えば、メチル化された(高メチル化されたDMR向け)か、またはメチル化されていない(低メチル化されたDMA向け)DNA断片の百分率を決定することによって、赤芽球由来の循環DNAの寄与を決定することができる。この百分率は、直接使用することができるか、または変更する(例えば、倍率を乗じる)ことができる。他の実施形態は、より複雑な手順、例えば、線形方程式を解くことを実行することができる。PCT特許出願第WO2016/008451号において説明されるように、N個のゲノム部位のメチル化レベルを用いて、M個の組織からの寄与を計算することができ、ここで、MはN以下である。各部位のメチル化レベルは、各組織について計算することができる。線形方程式Ax=bを解くことができ、式中、bはN個の部位で測定されたメチル化密度のベクトルであり、xはM個の組織からの寄与のベクトルであり、AはM個の行とN個の列の行列であり、各行は、その行の特定の部位のN個の組織におけるメチル化密度を提供する。MがNより小さい場合、最小二乗法による最適化を実行することができる。N次元×M次元の行列Aは、先の源から得られるように、参照組織の組織特異的メチル化レベルから形成することができる。
【0035】
1.DMRの特定
差次的にメチル化された領域(DMR)を特定するために、本明細書に説明されるように、特定のタイプ/系譜の組織(例えば、赤芽球)を単離した後、例えば、メチル化認識配列決定を用いて分析することができる。組織タイプ(例えば、たった2タイプの赤芽球など)にわたる部位のメチル化密度を分析して、DMRで使用する部位を特定するのに十分な相違が存在するかどうかを判定することができる。
【0036】
いくつかの実施形態において、以下の基準の1つ以上を用いて、赤芽球のためのメチル化マーカーを特定することができる。(1)CpG部位は、CpG部位のメチル化密度が赤芽球において20%未満であり、他の血球および組織において80%を超える場合、赤芽球において低メチル化されており、逆もまた同様である。(2)DMRであるために、この領域は、低メチル化された複数のCpG部位(例えば、3、4、5、またはそれより多数)を含む必要があり得る。したがって、DMR内の複数のCpG部位の鎖を選択して、アッセイによって分析して、DMRのシグナル対ノイズ比および特異性を改善することができる。(3)DMRは、無細胞混合物中のDNA分子を代表する大きさであるように選択することができる。血漿中では、主として短いDNA断片があり、その大部分は200bpよりも短い(1、24、25)。血漿中の赤血球系DNA分子の存在を決定する実施形態については、DMRは、血漿DNA分子の代表的な大きさ(すなわち、166bp)内に定義することができる(1)。このような基準の違いは、これら3つの基準と併用することができ、例えば、20%および80%以外の異なる閾値は、CpG部位を低メチル化されたと特定するために使用することができる。後に考察するように、いくつかの結果は、赤芽球において低メチル化された3つの赤芽球特異的DMR内の選択されたCpG部位を使用する。
【0037】
先に定義した基準で、本発明者らは、全ゲノムにわたって3つの赤芽球特異的DMRを特定した。1つのDMRは第18番染色体のフェロキラターゼ(FECH)遺伝子のイントロン領域内にあった。この領域において、赤芽球と他の細胞タイプとのメチル化密度の差は、特定された3つのDMRの中で最も大きい。FECH遺伝子は、ヘム生合成の最終段階を招来する酵素であるフェロキラターゼをコードする(26)。
図1に示すように、赤芽球特異的DMR内の4つの選択されたCpG部位は、赤芽球においてはすべて低メチル化されていたが、他の血球および組織においては高メチル化されていた。
【0038】
図1は、本発明の実施形態によるフェロキラターゼ(FECH)遺伝子のプロモーター内のCpG部位のメチル化密度を示す。FECH遺伝子は、第18番染色体上に位置し、CpG部位のゲノム座標はX軸上に示されている。示されるように、CpG部位のメチル化密度は、FECH遺伝子のイントロン領域内にある。2つの垂直点線によって境界が定められた領域110内に位置する4つのCpG部位は、赤芽球においてはすべて低メチル化されていたが、他の組織または細胞タイプにおいては高メチル化されていた。説明目的のために、肺、心臓、小腸、結腸、胸腺、胃、副腎、食道、膀胱、脳、卵巣および膵臓についての個々の結果は示されていない。これらの平均値は、「他の組織」によって表される。
【0039】
この領域内に位置するCpG部位が低メチル化されているので、
図1における2本の点線内の4つのCpG部位すべてについてメチル化されていない配列は、赤芽球に由来するDNAに対して濃縮されるであろう。したがって、DNA試料中の低メチル化配列の量は、赤芽球に由来するDNAの量を反映するであろう。
【0040】
特定したCpG部位でメチル化されたか、またはメチル化されていないDNAを検出するためのアッセイを開発した。血漿DNA分子内のCpG数が多いほど、アッセイはより特異的であろう。ほとんどの血漿DNA分子は200bp未満であり、平均して166bpである。したがって、CpG部位はすべて互いに166bp以内であり得るが、互いに150、140、130、120、110、または100bp以内であることができる。他の実施形態において、CpG部位の対だけが、互いのこのような距離内にあることができる。
【0041】
他の実施形態において、CpG部位のメチル化密度が赤芽球においては10%(または他の閾値)未満であり、その他の組織全部および血球においては90%(または他の閾値)を超える場合、CpG部位は、赤芽球において低メチル化されていると定義することができる。CpG部位のメチル化密度が、赤芽球においては90%(または他の閾値)を超え、その他の組織全部および血球においては10%(または他の閾値)未満である場合、CpG部位は赤芽球において高メチル化とされていると定義することができる。いくつかの実施形態において、DMRは、100bp内に少なくとも2つのCpG部位を有することができ、これらはすべて、赤芽球についての差別的なメチル化を示す。
【0042】
DMRを特定する一実施態様において、診断上有用であるために、100bp(または何らかの他の長さ)内のCpG部位はすべて、他の組織全部および血球と比較して、赤芽球において低メチル化または高メチル化を示すことが必要とされ得る。例えば、複数のCpG部位は、哺乳類に対応する参照ゲノム上で100bp以下に及び得る。別の例として、各CpG部位は、別のCpG部位の100bp以内にあり得る。したがって、CpG部位は100bp超に及び得る。
【0043】
いくつかの実施形態において、この1つ以上の差次的にメチル化された領域は、以下の様式で特定され得る。複数の部位のメチル化指数(例えば、密度)は、例えば
図1に示すように、特定の血球系譜およびその他の細胞系譜を含む複数の細胞系譜の各々について得ることができる。複数の部位の各部位において、複数の細胞系譜のメチル化指数を互いに比較することができる。この比較することに基づいて、複数の部位の1つ以上の部位は、各々が、第1のメチル化閾値を下回る/上回る特定の血球系譜におけるメチル化指数、および第2のメチル化閾値を上回る/下回るその他の細胞系譜の各々におけるメチル化指数を有すると特定することができる。このようにして、低メチル化部位および/または高メチル化部位を特定することができる。第1のメチル化閾値の例は、低メチル化部位について10%、15%または20%であり、この場合、第2のメチル化閾値の例は、80%、85%、または90%であり得る。次に、この1つ以上の部位を含有する差次的にメチル化された領域は、例えば、先に説明した基準を用いて特定することができる。
【0044】
2.メチル化DNA配列および非メチル化DNA配列の検出
赤芽球特異的DMRにおけるメチル化DNA配列および非メチル化DNA配列を検出するために、2つのデジタル式PCRアッセイが開発され得る。1つは非メチル化配列を標的とし、もう1つはメチル化配列を標的とする。他の実施形態において、DMRのメチル化配列および非メチル化配列の検出および/または定量化のために、メチル化認識配列決定(例えば、二亜硫酸塩配列決定、またはDNAのメチル化状態に基づいてDNAを差別的に修飾するであろう生化学的プロセスまたは酵素によるプロセスに続く配列決定)、リアルタイムメチル化特異的PCR、メチル化感受性制限酵素分析、およびマイクロアレイ分析などの他の方法も使用することができる。したがって、PCRアッセイの他に、他のタイプのアッセイを使用することができる。
【0045】
1例において、赤芽球DMRは、二亜硫酸塩処理後に検出することができる。CpG部位のメチル化状態は、検出結果(例えば、PCRシグナル)に基づいて決定することができる。FECH遺伝子に関して、配列決定のための二亜硫酸塩処理後の赤血球DMRを増幅するために、以下のプライマーを使用することができる:5’-TTTAGTTTATAGTTGAAGAGAATTTGATGG-3’および5’-AAACCCAACCATACAACCTCTTAAT-3’。
【0046】
別の例において、分析の特異性を高めるために、特定のCpGのメチル化状態および非メチル化状態の両方を網羅する2つの順方向プライマーを用いることができる。メチル化配列および非メチル化配列を特異的に標的とする2つのデジタル式PCRアッセイに使用されるこのようなプライマーセットを以下に列挙する。
【表1】
【表2】
【0047】
逆方向プライマーおよびプローブにおいて下線を付されたヌクレオチドは、CpG部位での差別的にメチル化されたシトシンであった。逆方向プライマーならびに非メチル化アッセイおよびメチル化アッセイのプローブは、下線を付されたヌクレオチドでの相違のために、非メチル化配列およびメチル化配列へ特異的に結合する。
【0048】
3.普遍的にメチル化されたDNAおよび普遍的に非メチル化されたDNAを用いた確認
普遍的にメチル化されたDNAおよび普遍に非メチル化されたDNAの分析を行って、2つのアッセイの正確率を確認した。
【0049】
CpGenome Human Methylated DNA(EMD Millipore)由来の普遍的にメチル化された配列と、EpiTect Unmethylated Human Control DNA(Qiagen)由来の普遍的に非メチル化された配列とを用いて、赤芽球特異的DMRのメチル化配列および非メチル化配列の検出および定量化のために設計されたこれら2つのデジタル式PCRアッセイの特異性を確認した。CpGenome Human Methylated DNAをHCT116DKO細胞から精製した後、M.SssIメチルトランスフェラーゼを用いてCpGヌクレオチドをすべて酵素でメチル化した。普遍的にメチル化されたDNA配列および普遍的に非メチル化されたDNA配列を、陽性対照および陰性対照と同じプレート上で泳動した。陽性蛍光シグナルのカットオフ値は、対照に関して決定した。各試料中のメチル化DNA配列および非メチル化DNA配列の数は、2つ組のウェルから組み合わせた計数の後にポアソン補正を用いて算出した(4)。
【0050】
図2Aおよび
図2Bは、本発明の実施形態によるメチル化DNAおよび非メチル化DNAを検出するために設計されたデジタル式PCRアッセイを用いた、普遍的にメチル化されたDNAおよび普遍的に非メチル化されたDNAの分析を示す。縦軸は、非メチル化配列の相対蛍光シグナル強度に対応する。横軸は、メチル化配列の相対蛍光シグナル強度に対応する。メチル化または非メチル化のいずれかであることが既知のDNAを用いてデータを生成した。これらの分析は、メチル化DNAまたは非メチル化DNAに対するアッセイの特異性を実証することを目的としている。
【0051】
普遍的に非メチル化されたDNAの分析のために、増幅シグナルを非メチル化DNAについてのアッセイに用いて検出し(
図2Aの205における青色の点210は正のFAMシグナルに対応)、メチル化DNAのためのアッセイを用いたとき、青色の点210は検出されなかった(
図2Bのプロット255)。普遍的にメチル化されたDNAの分析のために、増幅シグナルをメチル化DNAについてのアッセイに用いて検出し(
図2Bのプロット250における緑色の点220)、非メチル化DNAについてのアッセイを用いて。緑色の点220は検出されなかった(
図2Aのプロット200)。各パネルの黒色の点は、増幅されたシグナルをまったく含まない液滴を表す。4つのパネルの各々の内部の太い縦線および横線は、陽性結果についての閾値蛍光シグナルを表す。これらの結果は、赤芽球特異的DMRにおけるメチル化DNAおよび非メチル化DNAについてのこれら2つのアッセイの特異性を確認した。
【0052】
FECH遺伝子関連DMRに基づくアッセイの分析感度をさらに評価するために、非メチル化配列を有する試料を、指定分別濃度(すなわち、FECH遺伝子関連DMRの(非メチル化およびメチル化)配列全部における非メチル化配列の百分率)で連続希釈した。1反応あたり合計1,000個の分子があった。非メチル化配列は、メチル化配列および非メチル化配列の総量の0.1%程度の低さで検出することができた(表3を参照されたい)。
【表3】
【0053】
加えて、電位変動(例えば、ピペット操作に由来)を評価するために、本発明者らは、指定分別濃度(非メチル化配列%=30%)で20の個別の反応において、メチル化配列および非メチル化配列の人工的に混合した試料中での非メチル化配列の百分率を反復して測定した。本発明者らは、各反応について、合計500個のメチル化分子および非メチル化分子を使用した。この数値は、血漿DNA試料についての本発明者らのデジタル式PCR分析において、メチル化分子および非メチル化分子の総数において観察されたものに匹敵する。本発明者らは、非メチル化配列の百分率の20回の反復測定について、平均30.4%および標準偏差1.7%を観察した。アッセイ内変動係数は5.7%と計算される。
【0054】
3.異なる試料のためのアッセイの特異性および感度
赤血球系DNAについてFECH遺伝子関連DMRを標的とするデジタル式PCRアッセイの組織特異性を確認するために、本発明者らは、異なる量の赤芽球細胞を有する種々の試料におけるデジタル式PCRアッセイを、これらのデジタル式PCRアッセイ以外の技術を用いて測定したように試験した。デジタル式PCRアッセイによって検出された非メチル化DNA配列の量は、赤血球系DNAの量を反映するはずである。同様に、メチル化配列の量は、他の組織または細胞タイプに由来するDNAを反映するはずである。それゆえ、本発明者らは、生物学的試料中の赤血球系DNA(E%)の百分率を、赤芽球特異的DMRにおいて検出された(非メチル化およびメチル化)配列全部における非メチル化配列の百分率として定義した。したがって、DMR領域についてのメチル化配列および非メチル化配列に特異的なアッセイを用いて血液試料を分析して、非メチル化配列の百分率、非メチル化%(E%とも呼ぶ)、および赤芽球由来のDNAの存在の相関を決定した。非メチル化%(E%)は、メチル化レベルの例である。
【0055】
赤血球DNAの百分率(E%)は、以下のように計算した:
【数1】
【0056】
赤芽球と他の細胞タイプとのメチル化密度の相違がFECH遺伝子内DMRにとって最大であるので、本発明者らはまず、本発明者らの仮説を立証するために、このマーカー部位に基づいて、E%の分析に進んだ。その後、本発明者らは、FECH遺伝子関連DMRからのE%結果を検証するために、試料の部分セットにおける他の2つの赤芽球特異的DMRに基づいてE%を分析した。FECH遺伝子内のDMRに基づいたE%の結果を、E%(FECH)で示すであろう。メチル化配列の百分率、または非メチル化配列に対するメチル化配列の比のみなど、他の百分率または比も使用され得、いずれの値もこの比の分子および分母にあることができる。
【0057】
具体的には、
図1からのFECH遺伝子上の4つのCpG部位での各試料中のメチル化DNA配列および非メチル化DNA配列の数を、デジタル式PCRを用いて測定した。次に、試料中の非メチル化DNAの百分率(非メチル化%/E%)を計算した。一実施形態において、DNA断片が非メチル化とみなされるために、4つのCpG部位がすべて非メチル化されていることになっている。
【0058】
2つのシナリオを用いて、赤芽球を定量化するアッセイシグナルの能力を試験する。1つのシナリオは、臍帯血と成人血液の2種類の試料で赤芽球の数が異なるので、臍帯血対成人血液である。また、その他のシナリオについては、重症型ベータサラセミアに罹患している対象は、血中にかなりの数の赤芽球を有している。
【0059】
1.赤芽球濃縮試料対健常対象のバフィーコート
成人血液中の赤芽球の数は非常に低い。臍帯血は赤芽球の数が非常に多い。したがって、4つのCpG部位についてのE%は、健常な患者についてのものよりも臍帯血において非常に高いはずである。したがって、赤血球系DNAのFECH遺伝子関連DMRを標的とするデジタル式PCRアッセイの組織特異性を確認するために、本発明者らは、12の異なる正常組織タイプから抽出されたDNAを含む試料において、および赤芽球を濃縮した試料において、デジタル式PCRアッセイを試験した。本発明者らは、各組織タイプについて異なる個体から4つの試料を含めた。赤芽球濃縮試料を、分析のために臍帯血から調製した。
【0060】
具体的には、DMRのメチル化密度とE%との関連を確認するために、静脈血試料を21名の健常対象と30名の妊婦(妊娠初期10名、妊娠中期10名および妊娠後期10名)から収集した。血液試料を3,000gで10分間遠心分離して、血漿と血球とを分離した。バフィーコートを遠心分離後に回収した。血漿試料を回収し、30,000gで再遠心分離して残留血球を除去した。
【0061】
12種類の異なる正常組織タイプについては、本発明者らは、各組織タイプについて異なる個体からの4個の試料を含めた。表4に示すように、組織DNAすべてに由来する中央値E%(FECH)値は低かった(中央値の範囲:0.00%~2.63%)。
【表4】
【0062】
フローサイトメトリーおよび細胞選別ならびにその後のDNA抽出による臍帯血からの濃縮のための実験手順を以下に説明する。出産後、8名の各妊婦から1~3mLの臍帯血を収集した。Ficoll-Paque PLUSキット(GE Healthcare)を用いた密度勾配遠心分離後、臍帯血試料から単核細胞を単離した。単核細胞の収集後、1×108個の細胞を、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)結合抗CD235a(グリコホリンA)およびフィコエリトリン(PE)結合抗CD71抗体(Miltenyi Biotec)をリン酸緩衝塩類溶液中に1:10希釈した混合物1mLとともに、30分間、4℃の暗所でインキュベートした。次に、CD235a+CD71+細胞の選別および分析を、BD FACSAria Fusion Cell Sorter(BD Biosciences)を用いて行った。CD235aおよびCD71が赤芽球に特異的に存在するので、CD235a+CD71+細胞を赤芽球に対して濃縮されるであろう(Bianchi et al.Prenatal Diagnosis 1993;13:293-300)。
【0063】
各場合から得られた細胞数はわずかであったので、8例からの細胞を下流の分析のためにプールした。これら2つの抗体は、赤芽球に特異的であり、赤芽球表面に付着する。これら2つの抗体をそれぞれ、FITCおよびフィコエリトリンと結合させる。これらの2つの物質は磁気ビーズへ結合し、このビーズは細胞選別機を用いて選別することができる。それゆえ、Ab標識した赤芽球を捕捉することができる。抗CD71(トランスフェリン受容体)抗体および抗CD235a(グリコホリンA)抗体を用いたフローサイトメトリーおよび細胞選別(補足的な材料および方法を参照されたい)を用いて、赤芽球を8つの臍帯血試料から濃縮した後、プールした。プールした試料からDNAを抽出した。
【0064】
プールした臍帯血試料に由来するDNAのE%(FECH)は、CD235a+CD71+細胞(大部分が赤芽球)についてのアッセイにおいて試験した4つのCpG部位において67%であった。末梢血中の赤芽球数が検出できなかった20名の健康対象のバフィーコートDNAにおけるE%(FECH)に関して、バフィーコートDNAの中央値E%は2.2%(四分位範囲:1.2~3.1%)であった。健常対象のバフィーコートにおける赤芽球特異的非メチル化配列の比率が低いという観察は、成熟RBCが核を有さないという事実と一致する。CD235aおよびCD71は、赤芽球に特異的な細胞表面マーカーであるので(Bianchi et al.Prenatal Diagnosis 1993;13:293-300)、CD235aおよびCD71が濃縮された細胞における高いE%(FECH)は、赤芽球特異的DMRにおける非メチル化DNAについてのアッセイが、赤芽球由来のDNAを検出することができるであろうことを示している。したがって、赤芽球が濃縮された試料についてのこの高いE%は、他の組織タイプ由来のDNAおよび健常対象のバフィーコートDNAについての低いE%の結果とともに、非メチル化FECH配列についてのデジタル式PCRアッセイが赤芽球由来のDNAに特異的であったことを示す。
【0065】
2.重症型ベータサラセミア患者について
重症型ベータサラセミアに罹患している患者において、骨髄は、多くの赤血球(RBC)を作ろうとしている。しかしながら、ヘモグロビンの産生に欠陥がある。結果として、多くのRBCは十分なヘモグロビンを含有しておらず、多くの過剰なアルファグロビン鎖を含有している。これらの欠陥のあるRBCは骨髄から除去されるであろうことから、成熟RBCとなることは決してないことになっている。グロビン鎖には、アルファとベータの2種類がある。1つのヘモグロビン分子は2つのアルファ鎖と2つのベータ鎖を必要とする。ベータ鎖が産生されない場合、過剰なアルファ鎖は互いに凝集することになっており、機能的ヘモグロビンは形成されることができない。
【0066】
重症型ベータサラセミア患者において、高いが有効ではない赤血球産生は、成熟RBCの産生低下をもたらすであろう(Schrier et al.Current Opinion in Hematology 2002;9:123-6)。これには、代償性髄外造血および循環中の有核赤血球の存在が伴う。後述するように、重症型ベータサラセミア患者は、健常な患者よりも有核赤血球を多く有することになっている。末梢血中の有核RBCの数は、血液塗抹標本について計数することができ、100個の白血球(WBC)あたりの有核RBCの数として表すことができる。
【0067】
重症型サラセミア患者は、有効ではない赤血球産生のため、健常個体よりも末梢血中の赤芽球の数値が概して高く(27)、このような患者はまた、アッセイの特異性および感度を試験するための良好な機序を提供する。それゆえ、本発明者らは、β重症型サラセミア患者15名のバフィーコートDNAにおける本発明者らのデジタル式PCRアッセイの感度を試験した。患者は全員、自動血液分析装置(UniCel DxH 800 Coulter Cellular Analysis System,Beckman Coulter)によって測定され、手動計数によって確認されるように、末梢血中の赤芽球数は検出可能であった。
【0068】
図3Aは、本発明の実施形態による、血球中のE%(FECH)と有核RBC(赤芽球)の数との相関を示すプロットである。E%は、 FECH遺伝子関連DMRを標的とするデジタル式PCRアッセイによって測定される。縦軸と横軸によって示されるように、このプロットは、自動血液分析装置を用いて測定した場合、バフィーコートDNA中の赤血球系DNA配列の百分率(E%(FECH))と末梢白血球全部における赤芽球の百分率との相関を示す。
【0069】
図3Aに示すように、バフィーコートDNA中のE%(FECH)は、血液分析装置によって測定した末梢白血球中の赤芽球の百分率と十分に相関していた(r=0.94、P<0.0001、ピアソン相関)。サラセミア患者のバフィーコートにおけるE%と赤芽球の計数との良好な直線関係は、赤血芽がDMRについて非メチル化されており、他の血球がメチル化されているので、デジタル式PCRアッセイが試料中の赤血球系DNA含量の良好な定量的測定を提供したことを示す。それゆえ、血液試料中の赤芽球の比率が高いほど、E%はより高いであろう。この実験の目的は、これらのアッセイが、試料中の赤芽球由来DNAの量を反映するために使用することができることを実証することとする。これらの結果は、FECH遺伝子についてのE%が赤芽球由来のDNAの比率を反映することをさらに支持する。
【0070】
この相関は、他の患者についても同様に存在するであろう。しかし、赤芽球数は、重症型ベータサラセミアに罹患している患者については多くあり得、これらの患者の試料は、このような相関を特定するための良好な試験を提供する。
図3Aからわかるように、患者は広範囲のE%および赤芽球数を有し、それによって相関を試験するための良好な機序を提供した。
【0071】
3.特定の細胞系譜の細胞DNAの量を測定する方法
いくつかの実施形態において、無細胞混合物(例えば、血漿試料または血清試料)中の非メチル化DNA断片またはメチル化DNA断片の量が特定の細胞系譜に特異的な1つ以上のDMRで計数される場合、この量を用いて、特定の細胞系譜の細胞数(または他の量のDNA)を測定することができる。
図3Aに示すように、FECH DMRでメチル化されていないDNA断片の百分率は、血液試料中の赤芽球の数と相関する。絶対濃度も使用され得る。高メチル化DMRについては、メチル化DNA断片の量(例えば、百分率または絶対濃度)を使用することができる。本明細書で説明されているように、種々の細胞系譜を使用することができる。
【0072】
細胞数の数を決定するために、較正関数を使用することができる。
図3Aの例において、データ点に適合する線は、較正関数を提供することができる。例として、較正関数は、その関数パラメータ(例えば、線に対する傾きおよびy切片、または他の関数に対するより多数のパラメータ)によって保存することができるか、または曲線適合を得ることのできる一組のデータ点によって保存することができる。赤芽球数を決定したのと同じように別の技術によって決定することができるので、データ点(例えば、較正データ点と呼ばれる)は、細胞系譜のDNA量についての既知の値(例えば、細胞数)を有することができる。
【0073】
したがって、方法は、血液試料中の特定の細胞系譜に由来するDNAの量を決定することができる。1つ以上のDMRの多数のメチル化配列または非メチル化配列は、本明細書に説明されるように、アッセイから決定することができる。メチル化レベルを決定して、較正関数の較正値と比較することができる。例えば、メチル化レベルを線(または他の較正関数)と比較して、この関数とそのメチル化レベルとの交差、したがって対応するDNA量(例えば、
図3Aの横軸上の値)を決定することができる。他の実施形態において、メチル化レベルは、例えば、試料の測定されたメチル化レベルに近いメチル化レベルを有する個々の較正データ点と比較することができる。
【0074】
図3Bは、本発明の実施形態による無細胞DNAを分析することによって生物学的試料中の特定の細胞系譜の細胞量を決定するための方法300を示す流れ図である。方法300は、
図3Aに示すもののような測定値を用いることができる。方法300の一部は手動で実行されてもよく、他の部分はコンピュータシステムによって実行されてもよい。一実施形態において、システムはステップをすべて実行することができる。例えば、システムは、(例えば、試料を得てアッセイを行うための)ロボット要素、アッセイからのシグナルを検出するための検出システム、およびシグナルを分析するためのコンピュータシステムを含むことができる。このようなシステムを制御するための命令は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)の設定論理、フラッシュメモリ、および/またはハードドライブなど、1つ以上のコンピュータ可読媒体に保存することができる。
図27は、このようなシステムを示す。
【0075】
ブロック310で、生物学的試料の無細胞混合物を得る。生物学的試料は、血液試料であってもよいが、本明細書に説明されるように、無細胞DNAを含む他の試料でもあってもよい。無細胞混合物の例としては、血漿または血清が挙げられる。無細胞混合物は、複数の細胞系譜に由来する無細胞DNAを含むことができる。
【0076】
ブロック320において、無細胞混合物中のDNA断片を、1つ以上の差次的にメチル化された領域に対応するアッセイと接触させる。1つ以上の差次的にメチル化された領域の各々は、他の細胞系譜と比較して低メチル化または高メチル化されることによって、特定の細胞系譜(例えば、赤芽球などの特定の血球系譜)に特異的である。
【0077】
種々の実施形態において、アッセイは、PCRまたは配列決定を包含することができる。DNA断片を接触させることは、アッセイとDNA断片との相互作用を提供するためのフローセル、液滴、ビーズ、または他の機序を包含することができる。このようなアッセイの例としては、全ゲノム二亜硫酸塩配列決定、標的化二亜硫酸塩配列決定(ハイブリッド形成捕捉またはアンプリコン配列決定による)、他のメチル化用品配列決定(例えば、Pacific Biosciences製の単一分子リアルタイム(SMRT)DNA配列決定)、リアルタイムメチル化特異的PCR、およびデジタル式PCRが挙げられる。方法300に使用可能なアッセイのさらなる例は、本明細書に、例えば、第XII節に説明されている。
図3Aの例は、赤芽球についてのものであるが、他の血球系譜を含む他の血液系譜を使用することができる。
【0078】
ブロック330において、メチル化DNA断片または非メチル化DNA断片の第1の数を、アッセイから得られた信号に基づいて1つ以上の差次的にメチル化された領域で、無細胞混合物中で検出する。アッセイは、光信号または電気信号などの種々の信号を提供することができる。信号は、DNA断片あたりの特異的信号、または(例えば、リアルタイムPCRにおけるような)メチル化署名を有するDNA断片の総数を示す凝集信号を提供することができる。
【0079】
一実施形態において、配列決定は、DNA断片のための配列読み取りを得るために使用することができ、このDNA断片は、参照ゲノムと整列させることができる。DNA断片がDMRのうちの1つと整列する場合、カウンタを増分させることができる。信号が非メチル化アッセイの特定のメチル化に由来すると仮定すると、DNA断片は、そのメチル化署名を有すると想定することができる。別の実施形態において、PCRからの読み取り(例えば、陽性ウェルからの光信号)を使用して、このようなカウンタを増分させることができる。
【0080】
ブロック340において、第1のメチル化レベルを第1の数を用いて決定する。第1のメチル化レベルは、標準化され得るか、または絶対濃度、例えば、生物学的試料の体積あたりであり得る。絶対濃度の例を
図25に提供する。
【0081】
正規化した値について、1つ以上の差次的にメチル化された領域の無細胞混合物中のDNA断片の第1の数および総数を使用して、メチル化レベルを決定することができる。先に説明した通り、メチル化レベルは、非メチル化DNA断片の百分率であり得る。他の実施形態において、この百分率は、赤芽球についての先の例に対して逆の関係を有するであろうメチル化DNA断片であり得る。種々の実行において、メチル化レベルは、DMRの部位全部にわたる百分率を用いて、各部位の個々の百分率の平均によって、または各部位の加重平均によって決定することができる。
【0082】
ブロック350において、1つ以上の較正データ点を得る。各較正データ点は、(1)特定の血球系譜の細胞量および(2)較正メチル化レベルを指定することができる。1つ以上の較正データ点を、複数の較正試料から決定する。
【0083】
細胞量は、特定量(例えば、数または濃度)または量の範囲として指定することができる。較正データ点は、本明細書に説明される種々の技術を介して測定され得る既知量の細胞を有する較正試料から決定することができる。少なくともいくつかの較正試料は、異なる量の細胞を有するであろうが、いくつかの較正試料は、同じ量の細胞を有してもよい。
【0084】
種々の実施形態において、1つ以上の較正点は、1つの離散点、1組の離散点として、関数として、1つの離散点および関数として、または離散したもしくは連続した組の値の何らかの他の組み合わせとして定義してもよい。例として、較正データ点は、特定の系譜の細胞の特定量を有する試料について、1つの較正メチル化レベルから決定され得る。
【0085】
一実施形態において、同じ量の細胞の複数の試料に由来する同じメチル化レベルの測定値を組み合わせて、特定量の細胞についての較正データ点を決定し得る。例えば、メチル化レベルの平均を同じ量の細胞の試料のメチル化データから得て、特定の較正データ点を決定してもよい(かまたは較正データ点に対応する範囲を提供してもよい)。別の実施形態において、同じ較正メチル化レベルを有する複数のデータ点を使用して、細胞の平均量を決定することができる。
【0086】
一実行において、メチル化レベルを、多くの較正試料について測定する。メチル化レベルの較正値を各較正試料について決定し、ここで、メチル化レベルを、試料の既知量の細胞に対して(例えば、
図3Aにあるように)プロットされ得る。次に、関数をプロットのデータ点に適合させ、ここで関数適合は、新たな試料についての細胞量を決定する上で使用されることになっている較正データ点を定義する。
【0087】
ブロック360において、第1のメチル化レベルを、少なくとも1つの較正データ点の較正メチル化レベルと比較する。この比較は種々の方法で行うことができる。例えば、この比較は、第1のメチル化レベルが較正メチル化レベルよりも高いか低いかであり得る。この比較は、較正曲線(較正データ点で構成される)と比較することを包含することができ、したがって、この比較により、第1のメチル化レベルを有する曲線上の点を特定することができる。例えば、第1のメチル化レベルの計算値Xを関数F(X)への入力として使用することができ、ここでFは較正関数(曲線)である。F(X)の出力は細胞量である。各X値について異なり得る誤差範囲を提供することができ、それによりF(X)の出力として値の範囲を提供することができる。
【0088】
ブロック370で、生物学的試料中の特定の細胞系譜の細胞量を比較することに基づいて概算する。一実施形態において、第1のメチル化レベルが閾値較正メチル化レベルを上回るか下回るかを判定することができ、それによって瞬間試料の細胞量が閾値較正メチル化レベルに対応する細胞量を上回るか下回るかを判定することができる。例えば、生物製剤について計算された第1のメチル化レベルX1が較正メチル化レベルXCを上回る場合、生物学的試料の細胞量N1は、XCに対応する細胞量NCを上回ると判定することができる。上下のこの関係は、パラメータがどのように定義されるかによることができる。このような実施形態において、唯一の較正データ点が必要とされ得る。
【0089】
別の実施形態において、この比較は、第1のメチル化レベルを較正関数へと入力することによって達成される。較正関数は、第1のメチル化レベルに対応する曲線上の点を特定することによって、第1のメチル化レベルを較正メチル化レベルと有効に比較することができる。次に、概算された細胞量を較正関数の出力値として提供する。
【0090】
4.血漿中の赤芽球に由来する無細胞DNAの起源
非メチル化%と赤芽球由来のDNAとの確立された関係を用いて、血漿の非メチル化%を用いて血漿中の赤芽球由来のDNAを定量化することができる。上述のアッセイを用いて、血漿中の非メチル化%を決定した。バフィーコートおよび血漿における非メチル化%の相違が見られる。この分析は、血漿中の無細胞赤芽球DNAが骨髄における赤血球産生に由来し、血流中の赤芽球由来ではないことを示している。
【0091】
2つのデジタル式PCRアッセイによって決定された非メチル化%が試料中の赤芽球由来のDNAの量を正確に反映することを確認した後、本発明者らは、健常対照対象および妊婦のバフィーコートおよび血漿における赤芽球由来のDNAの比率を比較することへ進んだ。
【0092】
図4は、本発明の実施形態による健常非妊娠対象および異なる妊娠期の妊婦のバフィーコートおよび血漿における非メチル化%を示す。血漿試料は、対象の各群についてバフィーコートと比較して有意に高い非メチル化%を有していた(血漿とバフィーコートとの対形成した各比較についてのウィルコクソンの符号つき順位検定でP<0.01)。
【0093】
図4の結果は、有核RBCの数が少ないために予想されるように、赤芽球由来DNAの量が血球中で少ないことを示す。驚くべき結果は、血漿中の赤芽球由来DNAの量が多いことである。血漿中の赤芽球由来のDNAが血球に由来した場合、これら2つの量が類似していると予想されるであろう。したがって、このデータは、血漿中の赤芽球由来DNAの起源が、骨髄における赤血球産生に由来することを示す。
【0094】
図5は、バフィ-コートおよび血漿における非メチル化%間での相関の欠如を示すプロットである。有意な相関は、バフィーコートDNAおよび血漿DNAについての非メチル化%の間で観察されなかった(R
2=0.002、P=0.99、ピアソン相関)。相関関係の欠如は、非妊娠対象、妊娠前記の妊婦、妊娠中期の妊婦、および妊娠後期の妊婦を含む対象全員についてみることができる。
図4における結果と同様に、このことは、赤芽球由来DNAの起源が血流中の血球に由来した場合に相関することになっている2つが予想されるであろうので、驚くべきことである。
【0095】
血漿DNAがバフィーコートよりも非常に高い非メチル化%を有するという見解、ならびに血漿およびバフィーコートの非メチル化%間の相関の欠如は、赤芽球メチル化署名を保有する循環無細胞DNAが、循環血球に由来するよりもむしろ、赤血球産生のプロセス中に骨髄に由来したらしいことを示唆している。したがって、赤芽球メチル化署名を有する無細胞血漿DNAは、血流中の有核RBC数が健常対象および妊婦において非常に少ないので血流中の有核RBCから生成されることとは対照的に、骨髄中で生成される。また、白血球(WBC)から赤芽球メチル化署名への寄与は非常に低いので、この寄与は、赤芽球メチル化署名を有する無細胞血漿DNAに対して測定可能な依存性を提供しない。
【0096】
5.赤血球産生活性の測定としてのメチル化レベル
先の観察に基づき、本発明者らは、赤芽球DMRの非メチル化%が、骨髄における赤血球産生活性を反映するであろうと判断した。高い非メチル化%は、増加した赤血球産生活性を示すであろう。換言すれば、血漿/血清中の赤芽球DNAの分析は、骨髄の液体生検として役立つであろう。この分析は、貧血の調査に、例えば、貧血が赤血球産生の低下(例えば、再生不良性貧血)、赤血球産生欠損(例えば、サラセミアにおける成熟したRBCの産生の不全)、またはRBC消費の上昇(例えば、失血および溶血性貧血)によるものかどうかを判断するために、特に有用であろう。この目的のために、本発明者らは、35名の健常対象および異なる病因を有する75名の貧血患者を募集した。末梢血試料の収集および加工、血漿およびバフィーコートのDNAの抽出、ならびにDNAの二亜硫酸塩変換を行った。方法のさらなる詳細は、第XII節において説明する。
【0097】
1.健常対象の血漿中の無細胞赤血球系DNAの測定
本発明者らのアッセイの特異性を確認した後、本発明者らは、これらのアッセイを用いて健常対象の血漿を分析した。本発明者らは、健常対象35名の血漿中のE%(FECH)を分析し、これには、同じくバフィーコート試料も提供した同じ群の20名の対象も含まれた。血漿DNAの中央値E%(FECH)は30.1%(四分位範囲:23.8~34.8%)であった。このことは、赤血球系DNAが健常個体の血漿中の循環DNAプールの有意な比率を構成することを示唆した。血漿赤血球系DNAの起源を判断するために、本発明者らは、20名の健常対象の血漿およびバフィーコートにおける対応するE%(FECH)結果を比較した。
【0098】
図6Aおよび
図6Bは、健常対象における赤血球系DNA(E%(FECH))の百分率を示す。
図6Aは、健常対象のバフィーコートDNAおよび血漿DNAにおけるE%を示し、ここでE%の値はバフィーコート(細胞部分)よりも血漿(無細胞部分)において高い。血漿DNAにおける中央値E%(中央値:26.7%、四分位範囲:23.7~30.4%)は、対形成したバフィーコートDNAにおける中央値E%(中央値:2.2%、四分位範囲:1.2~3.1%)よりも有意に高かった(ウィルコクソンの符号つき順位検定でP<0.0001)。
【0099】
図6Bは、バフィーコートDNAにおけるE%と、対応する健常対象の血漿DNAとの相関の欠如を示す。血漿DNAおよびバフィーコートDNAにおける対形成したE%(FECH)結果の間には相関の欠如があった(r=0.002、P=0.99、ピアソン相関)。
図6Aおよび
図6Bの両方の所見は、循環赤血球系DNAが、末梢血中の循環赤芽球に主として由来したとは考えにくかったことを示している。
【0100】
図7は、血漿DNAのE%(FECH)結果と健常対象の年齢との相関の欠如を示す。このプロットは、E%(FECH)結果が対象の年齢と相関していないことを示している(R=0.21、P=0.23、ピアソン相関)。
【0101】
2.重症型ベータサラセミア患者と再生不良性貧血患者との区別
血漿中の赤血球系DNAが循環中の未処置の赤芽球から主に放出されなかったと判断した後、本発明者らは、これらのDNA分子が赤血球産生の間に骨髄から放出された可能性がより高いことを提唱した。本発明者らは、血漿中の赤血球系DNAの定量分析が、骨髄における赤血球産生活性に関する情報を提供することができるであろうと推論した。
【0102】
血漿を用いて骨髄における赤血球産生の活性を測定する能力を確認するために、重症型ベータサラセミアおよび再生不良性貧血に罹患している患者を、Department of Medicine,Prince of Wales Hospital(香港)から動員した。輸血前に静脈血試料を採取した。血漿DNAの非メチル化%を、各患者についてデジタル式PCRによって決定した。これらの結果は、ヘモグロビンレベルと相関していた。ヘモグロビンレベルは、当業者に既知の技術を介して、例えば自動血球計数器で行われる測光技術によって測定することができる。ヘモグロビンレベルは、例えば、遠心分離後に得られるRBC部分から測定することができる。
【0103】
これら2つの群の患者(重症型ベータサラセミアおよび再生不良性貧血)は、赤血球産生活性の2つの異なるスペクトルを表す。重症型ベータサラセミア患者においては、赤血球産生が非常に活発である。しかしながら、機能的ベータグロビン鎖の産生欠損のため、成熟RBCの産生が低下する。再生不良性貧血の患者においては、赤血球産生が低下し、RBCの産生低下をもたらす。
【0104】
図8は、本発明の実施形態による再生不良性貧血患者、重症型ベータサラセミア患者、および健常対照対象におけるヘモグロビン濃度に対する非メチル化%のプロットである。ベータサラセミア患者においては、ヘモグロビン濃度は低下したが、健常対照対象と比較して、非メチル化%は有意に上昇した(マン・ホイットニー順位和検定でP<0.01)。実際、11名のベータサラセミア患者のうち10名(89%)の非メチル化%値は、健常対照対象全員の値よりも高かった。この観察は、これらの患者における高いが欠損性である赤血球産生と一致する。
【0105】
対照的に、定期的な輸血を受けている再生不良性貧血患者6名については、彼らの非メチル化%値は、健常対照対象全員の値よりも低かった。この観察は、これらの患者の低い赤血球産生と一致する。
【0106】
臨床的寛解にあった3名の再生不良性貧血患者については、彼らのヘモグロビンレベルは正常であり、定期的な輸血を必要としなかった。彼らの非メチル化%値は、健康対照対象の値と有意に異なることはなかった(マン・ホイットニー順位和検定でP=0.53)。したがって、血漿中の赤芽球特異的DNAの定量分析は、例えば、再生不良性貧血が寛解しているかどうかを判断するために、骨髄機能不全患者のモニタリングに有用であろう。さらに、赤芽球特異的DNAの定量分析を用いて。治療を誘導することができる。例えば、寛解していない再生不良性貧血患者は、定期的な輸血で治療することができる。
【0107】
したがって、非メチル化%は、サラセミア患者ではより高く、再生不良性貧血患者ではより低い。サラセミアについては、患者は貧血であり、骨髄は循環系に対してより多数のRBCを産生したいので、骨髄は活溌である。それゆえ、赤血球産生速度は、貧血のない健常対象よりも高い。再生不良性貧血の患者については、貧血はRBCの低い産生による。全体的に、これらの結果は、赤芽球特異的メチル化特性の分析が、骨髄における赤血球産生活性を反映するのに有用であろうことを示している。
【0108】
患者は、ヘモグロビン測定と非メチル化%との組み合わせを介して診断を受けることができる。例えば、ヘモグロビンが11.8を下回りE%が50を上回る患者は、β-サラセミアと分類することができる。一方、ヘモグロビンが11.8を下回りE%が25を下回る患者は、再生不良性貧血に罹患していると分類することができる。
【0109】
3.鉄欠乏性貧血および治療
貧血は、栄養素(例えば、鉄、B12、葉酸など)の欠乏、失血(例えば、過多月経または消化管からの出血による)または慢性障害(例えば、癌、炎症性腸疾患)に起因し得る。
【0110】
図9は、鉄(Fe)欠乏性貧血および急性失血に罹患している患者における血漿非メチル化%のプロットである。鉄欠乏性貧血患者3名および急性消化管血を呈した患者1名を試験した。2名の鉄欠乏患者において、貧血は過多月経によるものであった。1名の患者については、鉄補充を開始する前に血液試料を採取した。もう1名は、血液試料を鉄補充療法開始1週間後に採取した。第3の鉄欠乏性貧血患者は炎症性腸疾患に罹患しており、鉄補充を開始する前に、血液試料を採取した。
【0111】
血漿非メチル化%を各患者について決定し、健常対照対象の値と比較した。急性消化管出血患者においては、血漿非メチル化%の上昇が観察された。鉄補充療法を開始する前に試料を採取した2名の鉄欠乏患者については、ヘモグロビンレベルが低いにもかかわらず、その血漿非メチル化%値は健常対象と比較して上昇していなかった。鉄補充開始1週間後に試料を採取したFe欠乏患者については、血漿非メチル化%の上昇が観察された。
【0112】
これらの結果は、血漿非メチル化%が治療に応答して赤血球産生活性を反映することを示している。例えば、鉄補充治療は、増加した赤血球産生活性を示す。さらに、これらの結果は、非メチル化%における応答がヘモグロビンレベルの上昇よりも迅速であろうことを示している。非メチル化%の使用は、このような治療が有効であるかどうか、したがってこれを継続すべきか中止すべきかについての早期の識別子となり得る。それゆえ、非メチル化%は、ヘモグロビンレベルの変化が観察される前に、貧血の治療、例えば、鉄療法への反応を予測するための誘導を提供することができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、血漿非メチル化%は、貧血の治療に対する応答を反映するために使用することができる。例えば、鉄欠乏性貧血患者においては、経口鉄補充に対する応答は、消化管を通じての鉄の吸収の変動のために、異なる対象によって変化し得る。このようなシナリオにおいては、経口鉄補充を開始した後の血漿非メチル化%の上昇の欠如は、静脈内鉄療法の必要性を示すために使用することができる。
【0114】
4.種々の貧血障害の区別
本発明者らは、再生不良性貧血(AA)、慢性腎不全(CRF)、慢性失血による鉄欠乏性貧血、および重症型β-サラセミアに罹患している貧血患者を募集した。骨髄における赤血球産生活性の範囲の両端を表すために、異なる疾患実体を募集した。
【0115】
図10は、再生不良性貧血患者、慢性腎不全(CRF)患者、重症型β-サラセミア患者、鉄欠乏性貧血患者および健常対象における血漿中の赤血球系DNAの百分率(E%(FECH))とヘモグロビンレベルとの関係を示す。貧血患者および35名の健常対照の血漿DNAのE%(FECH)をヘモグロビンレベルに対してプロットしている。横軸方向の点線は健常対象の中央値E%を表す。縦線は、貧血に罹患している対象と貧血に罹患していない対象との測定されたヘモグロビンレベルのカットオフ値(図示の通り、11.5)に対応する。
【0116】
本発明者らは、診断基準を満たし、免疫抑制療法に応答し損ねた13名のAA患者における血漿DNAのE%を分析した(28)。AA群の血漿DNAの中央値E%は12.4%(四分位範囲:7.5~13.7%)であり、健常対照の中央値E%よりも有意に低かった(マン・ホイットニー順位和検定でP<0.0001、
図10)。同様に、透析を必要とする18名のCRF患者の中央値E%結果は、16.8%(四分位範囲:12.2~21.0%)であり、これも健常対照の中央値E%結果よりも有意に低かった(マン・ホイットニー順位和検定でP<0.0001、
図10)。これらの所見は、AA患者(28、29)およびCRF患者(30)における低いエリスロポエチン活性の病態生理と一致している。
【0117】
重症型β-サラセミア患者については、骨髄は、高いが有効ではない赤血球産生で低酸素ストレスを補償しようとしている(31)。募集された17名の重症型β-サラセミア患者のうち、血漿DNAの中央値E%は65.3%(四分位範囲:60.1~78.9%)であり、健常対照の中央値E%よりも有意に高かった(マン・ホイットニー順位和検定でP<0.0001、
図10)。
【0118】
鉄欠乏性貧血に罹患している対象については、本発明者らは、過多月経または消化性潰瘍疾患に罹患している11名の患者を募集した(トランスフェリン飽和16%未満または血清フェリチンレベル30ng/ml未満)。彼らの血漿DNAの中央値E%は37.8%(四分位範囲:31.8~43.0%)であり、健常対照の中央値E%よりも有意に高かった(マン・ホイットニー順位和検定でP=0.002、
図10)。所見は、慢性失血に対する応答としての骨髄赤血球産生活性の補償性亢進(32)によって説明され得る。
【0119】
したがって、患者は、ヘモグロビン測定とE%との組み合わせを介して診断を受けることができる。例として、ヘモグロビンが11.5(または他の値)を下回りE%が50を上回る患者は、増加した赤血球産生活性の貧血、例えば、β-サラセミアに罹患していると分類することができる。一方、ヘモグロビンレベルが11.5を下回りE%が50を下回りかつ28を上回る患者は、中程度の赤血球産生活性の貧血、例えば、鉄欠乏性貧血に罹患していると分類することができる。また、ヘモグロビンレベルが11.5を下回りE%が28を下回る患者は、低減した赤血球産生活性の貧血、例えば、再生不良性貧血または慢性腎不全に罹患していると分類することができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、血液疾患の分類を判定するために、血液試料のヘモグロビンレベルを測定することができる。ヘモグロビンレベルは、ヘモグロビン閾値(例えば、11.5)と比較することができる。したがって、血液学的障害の分類は、メチル化レベルに加えて、ヘモグロビンレベルをヘモグロビン閾値と比較することにさらに基づくことができる。
【0121】
対象のE%(FECH)、赤血球、および網状赤血球のパラメータの概要を、表5および表6ならびに
図11Aおよび
図11Bにそれぞれ示す。
【表5】
【0122】
以下の表6において、中央値および四分位範囲(括弧内)を示す。以下の略語を使用する:ヘマトクリットHct、平均赤血球容積MCV、平均細胞ヘモグロビンMCH、平均細胞ヘモグロビン濃度MCHC、および赤色細胞分布幅RDW。
【表6】
【0123】
図11Aおよび
図11Bは、再生不良性貧血患者、慢性腎不全(CRF)患者、重症型β-サラセミア患者、および鉄欠乏性貧血患者における網状赤血球数/指標とヘモグロビンレベルとの関係を示す。網状赤血球指数は、網状赤血球数×ヘマトクリット/正常ヘマトクリットとして計算する。明らかなように、血液中の網状赤血球(未成熟RBC)の量は、異なる障害間で信頼可能な区別を提供しない。これらの結果は、網状赤血球数および網状赤血球指数が、異なる病因の貧血を区別すること、例えば、サラセミアを再生不良性貧血と区別することができなかったことを示す。
【0124】
5.骨髄異形成症候群および真正赤血球増加症
図12は、骨髄異形成症候群および真性赤血球増加症の患者における血漿非メチル化%のプロットである。骨髄異形成症候群患者においては、高い血漿非メチル化%が、低いヘモグロビンレベルとともに観察された。高い血漿非メチル化%は、真正赤血球増加症患者においても観察された。これらの結果は、血漿中の赤芽球DNAメチル化署名の検出および定量化が、骨髄芽細胞を包含する骨髄の異常な増殖または異形成の検出およびモニタリングに有用であることを示す。
【0125】
したがって、わかるように、これら2つの血液障害は、赤芽球のより多量の無細胞DNAも示し、それにより血液障害の検出を可能にする。いくつかの実施形態において、正確な診断は、骨髄生検の組織学的検査に基づくことができる。したがって、高い非メチル化%を検出することに応答して、骨髄生検を実施することができる。同様に、骨髄生検は、貧血の存在下だが栄養欠乏、例えば、鉄欠乏、ビタミンB12欠乏、または葉酸欠乏の非存在下で、低い非メチル化%を検出することに応答して実施することができる。骨髄生検のためのこのようなベースは、骨髄の健康状態をモニターすることをなおも可能にしながら、このような生検の数を減らすことができる。したがって、非メチル化%は、治療応答をモニターするためにより有用であろう。
【0126】
6.貧血についてのその他の区別
他の障害間の区別も可能である。
【0127】
1.再生不良性貧血(AA)および骨髄異形成症候群(MDS)
再生不良性貧血およびMDSは両方とも、骨髄不全容態である。汎血球減少に関するこれらの類似の臨床的特徴にもかかわらず、これら2つの疾患実体は、異なる病態生理学的機序を有する。AAにおいては、異形成の特徴を持たない骨髄細胞減少がある。MDSにおいては、通常、1つまたは複数の系譜を包含する骨髄細胞増加および異形成がある(33)が、細胞減少性MDSも認識されている。
【0128】
図13Aは、本発明の実施形態による再生不良性貧血(AA)患者と骨髄異形成症候群(MDS)患者との血漿中の赤血球系DNAの百分率(E%(FECH))を示す。8名のMDS患者に由来する血漿DNAの中央値E%は50.3%(範囲:37.4~60.8%)であった。2つの症例は、単一系譜の異形成を有するMDSに罹患しており、4例が多重系譜異の異形成に罹患しており、2例が過剰芽球を有するMDSに罹患していた(34)。これらの従前の骨髄生検はすべて、赤血球の細胞増加を示した。MDS患者の中央値E%は、13名の募集されたAA患者の中央値E%よりも有意に高かった(マン・ホイットニー順位和検定でP<0.0001、
図13A)。MDS患者における中央値E%結果が高いほど、MDSにおける骨髄生検所見および有効ではない赤血球産生の病態生理と一致する。
【0129】
したがって、MDSは、E%または他のメチル化レベルを使用して、再生不良性貧血と区別することができる。例えば、30というカットオフ値は、再生不良性貧血またはMDSに対応するものとして試料を分類するために使用することができる。
【0130】
2.AAの治療応答群および治療非応答群
図13Bは、本発明の実施形態による再生不良性貧血における治療応答群と治療非応答群の間の血漿中の赤血球系DNAの百分率(E%(FECH))を示す。本発明者らは、免疫抑制療法に応答し、それによりヘモグロビンレベルを上げた8名の追加の再生不良性貧血患者を分析した。治療応答群の血漿DNAの中央値E%は、22.5%(四分位範囲:17.2~27.1%)であり、非応答群の中央値E%(中央値:12.3%、四分位範囲:7.5~13.7%)よりも高かった(マン・ホイットニー順位和検定でP=0.0003、
図13B)。治療反応群と健常対照のE%結果の間には小さいが有意な差があった(マン・ホイットニー順位和検定でP=0.01)。
【0131】
これらの結果は、骨髄中の赤血球産生活性の回復を反映している。E%の回復がヘモグロビンレベルよりも早く現れることができるので、E%を用いて、患者が免疫抑制療法に応答しているかどうかを早期に判断することができる。患者が応答していない場合、例えば、幹細胞移植を行うか、または骨髄刺激薬(例えば、サルグラモスチム、フィルグラスチム、およびペグフィルグラスチム)を処方するなど、他の治療(例えば、より積極的な治療)を追求することができる。
【0132】
7.白血病
白血病以外の他の血液障害もFECHなどにおける、赤芽球特異的DMRを用いて検出することができる。
【0133】
図14は、本発明の実施形態による正常対象および2名の白血病患者におけるヘモグロビン濃度に対する血漿中の非メチル化%のプロットである。非メチル化%は、FECH DMRを使用して決定する。白血病または骨髄増殖性障害に罹患している患者の血漿中の非メチル化%値は、正常対象の血漿中の中央値非メチル化%よりも高い。この観察は、高いが欠陥のある赤血球産生が白血病患者にあるという観察と一致する。したがって、約45というカットオフ値を非メチル化%に使用して、健常対象と白血病に罹患している対象とを区別し得、それにより血液学的障害のレベルを判定し得る。ヘモグロビンレベルも使用することができ、例えば、ヘモグロビンが8を下回る患者は、
図10に示すように、概して8~約11.8のヘモグロビンレベルを有するベータサラセミアとは対照的に、白血病に罹患していると特定され得る。
【0134】
6.他のメチル化マーカーについての結果
本発明者らは、試料のサブセットの血漿におけるその他2つのDMRに基づいてE%を分析して、FECH遺伝子関連DMRから先のE%の結果を検証した。健常対象と再生不良性貧血患者および重症型β-サラセミア患者との血漿中の赤血球系DNAの百分率における類似した相違が他の2つの赤芽球特異的DMRをFECH遺伝子におけるDMRとして用いて観察した。
【0135】
1.他の2つの赤芽球特異的DMR
第12番染色体上に位置する他の2つのDMRも低メチル化されている。これら2つのDMRと関連したゲノム領域は、いかなる注釈された遺伝子としても従来特定されていなかった。
【0136】
図15Aおよび
図15Bは、本発明の実施形態による第12番染色体上の赤芽球特異的DMR内のCpG部位のメチル化密度を示す。
図15Aは、3つの部位を含む、第12番染色体上のゲノム座標:48227688~48227701における領域1510を示す。
図15Bは、3つの部位も含む、第12番染色体上のゲノム座標:48228144~48228154における領域1560を示す。ゲノム座標はヒト参照ゲノムhg19に対応する。網掛け領域内に位置する選択されたCpG部位はすべて、赤芽球において低メチル化されていたが、他の組織または細胞タイプにおいては高メチル化されていた。他の組織は、肺、結腸、小腸、膵臓、副腎、食道、心臓および脳を表す。
【0137】
これら2つの他の赤芽球特異的DMRは、Ery-1およびEry-2として標識される。他の2つのDMR(chr12:48227688~48227701およびchr12:48228144~48228154)に基づくE%はそれぞれ、E%(Ery-1)およびE%(Ery-2)によって示されるであろう。
【0138】
図16は、ENCODEデータベース由来の2つの他の赤芽球特異的DMR(Ery-1およびEry-2)に対するヒストン修飾(H3K4me1およびH3K27Ac)を示す。本発明者らは、ENCODEデータベース由来の赤芽球細胞タイプにおけるこれら2つのDMRに対するヒストン修飾およびCHIP-seqデータセットに関する公共的に入手可能なデータを再吟味した。Ery-1のDMRおよびEry-2のDMRは、2つのエンハンサー関連ヒストン修飾(H3K4me1およびH3K27Ac)によって標識されており、これらは、調節機能、特にエンハンサーの機能を示唆している。最も近い下流の遺伝子はHDAC7遺伝子であり、およそ15kb離れている。
【0139】
2.赤芽球を濃縮した試料
本発明者らは、先に説明した8つの臍帯血試料由来の赤芽球濃縮試料中の他の2つのDMRに基づいて赤血球系DNAの百分率を分析した。プールされた試料から抽出されたDNAのE%(Ery-1)およびE%(Ery-2)は、66.5%および68.5%であった。これらのE%値は、FECH遺伝子関連DMRに基づくE%と類似しており、すなわち、67%であった。3つのDMR全部に由来する類似の所見を考慮すると、予想よりも低いE%値(すなわち、濃縮が実施される場合に予想されるよりも低い)は、濃縮プロトコルの不完全な選択性に起因し得た。
【0140】
3.重症型β-サラセミア患者のバフィーコートにおけるE%と赤芽球との相関
2つのDMRに基づく赤血球系DNAの百分率を、重症型β-サラセミア患者の同じ群のバフィーコートDNAにおいて分析した。バフィーコートDNA中の2つのDMRについてのE%は、
図3Aと類似の様式で赤芽球の百分率と十分に相関した。
【0141】
図17Aおよび
図17Bは、Ery-1マーカー(
図17A)およびEry-2マーカー(
図17B)を標的とするデジタル式PCRアッセイによって測定された重症型β-サラセミア患者のバフィーコートDNAにおける赤血球系DNA配列(E%)の百分率と、自動血液分析装置によって測定した末梢白血球全部における赤芽球の百分率との相関を示す。バフィーコートDNAにおけるE%(Ery-1)およびE%(Ery-2)は、血液分析装置によって測定した末梢白血球における赤芽球の百分率と十分に相関した(r=0.938およびr=0.928、両者ともP<0.0001、ピアソン相関)。
【0142】
図18Aおよび
図18Bは、重症型β-サラセミア患者のバフィーコートDNAにおけるE%(FECH)結果とE%(Ery-1)およびE%(Ery-2)との相関を示す。これら2つのDMRから得られたE%の結果は、15名の重症型β-サラセミア患者のバフィーコートDNA中のFECH遺伝子マーカー部位に由来する対形成したE%結果とも十分に相関した。
【0143】
4.健常対象および貧血患者の血漿中のE%
本発明者らは、健常対象ならびに再生不良性貧血および重症型β-サラセミアに罹患している患者の血漿DNAにおけるE%(ERY-1)およびE%(ERY-2)を分析した。同じ群の健常対象における3つの赤芽球特異的DMR、7つの再生不良性貧血、および9つの重症型β-サラセミアに基づくE%結果を分析した。
【0144】
図19は、本発明の実施形態による3つの赤芽球特異的DMRを標的とするデジタル式PCR分析を用いて、健常対象ならびに再生不良性貧血および重症型β-サラセミアに罹患している患者における赤血球系DNAの百分率を示す。13名の健常対象の血漿DNA中の中央値E%(Ery-1)は16.7%(四分位範囲:10.9~23.5%)であり、健常対象の同じ群における中央値E%(Ery-2)は25.0%(四分位範囲:22.2~27.3%)であった。Ery-1マーカーに基づいて、再生不良性貧血および重症型β-サラセミアに罹患している患者のE%(Ery-1)はそれぞれ13.78%および61.69%であった。Ery-2マーカーに基づいて、再生不良性貧血および重症型β-サラセミアに罹患している患者のE%(Ery-2)はそれぞれ14.13%および64.95%であった。健常対象と再生不良性貧血患者および重症型β-サラセミア患者との血漿中の赤血球系DNAの百分率における類似した相違は、2つの赤芽球特異的DMRをFECH遺伝子における赤芽球特異的DMRとして用いて観察した。
【0145】
7.治療結果
先に説明したように、E%を使用して、貧血のための治療効力をモニターすることができる。
【0146】
1.鉄療法前後の鉄欠乏性貧血患者における血漿DNA中のE%(FECH)の測定
本発明者らは、経口鉄による消化管の副作用に対する不耐性に起因して静脈内鉄療法を受けている鉄欠乏性貧血患者4名におけるヘモグロビンレベル、網状赤血球計数、および血漿DNAのE%の連続的な変化をモニターした。経口鉄療法を受けている患者の代わりに、本発明者らは、この群の患者の変化を観察して、様々な消化管吸収による異なる治療応答の起こり得る交絡因子を回避することを選択した。本発明者らは、これらのパラメータを治療前および治療2日後に測定した。
【0147】
図20Aおよび
図20Bは、本発明の実施形態による治療前状態および治療2日後の静脈鉄療法を受けている鉄欠乏性貧血の血漿DNA中の赤血球系DNAの百分率(E%(FECH))および網状赤血球計数の百分率の連続測定結果を示す。
図20Aは、血漿DNAのE%の連続的な変化を示す。
図20Bは、網状赤血球計数の百分率における連続的な変化を示す。
【0148】
対象1を除き、血漿DNAのE%および網状赤血球計数は増加したのに対し、ヘモグロビンレベルは治療の開始後だけ、初期的に静的なままであった。ヘモグロビンレベルの最終的な変化に関して、対象3および対象4は、最終的に、それぞれ84.7%および75.3%という、レベルの劇的な変化があった。対象2は、経過観察を不履行とし、治療後のヘモグロビン測定のための追加試料を提供しなかった。血漿DNAのE%の変化が最小であった対象1は、ヘモグロビンレベルの上昇が最小であった(12.2%)。したがって、血漿DNAのE%の変化は、鉄療法に対する骨髄赤血球産生活性の動的応答を実証することができ、治療に対する患者の応答の早期予測因子として使用することができる。
【0149】
対象1の網状赤血球計数の増加の欠如は、RBC産生が鉄療法に対して十分に応答していなかったことを示唆している。鉄療法へ応答しなかったことは、骨髄活性に対応するE%の上昇の欠如によっても反映されることができる。しかし、対象1については、鉄療法の開始前のヘモグロビンレベルが他の3名の対象のものよりも高く、健常対象の基準範囲に近かった。対象1におけるE%(FECH)の上昇の欠如は、正常レベルからのヘモグロビンレベルのより小さな欠損のために、骨髄における赤血球産生活性の補償的亢進の欠如を反映することができる。対象1の網状赤血球は、最初は他の対象とほぼ同じであり、したがって、骨髄活性が十分なレベルであることを示していないであろう。したがって、中程度の赤血球産生活性を有する貧血については、健常患者についての正常上限のE%は、治療に対する陽性応答、または少なくとも不確定な応答を示す可能性があり、したがって、このような場合に治療を停止させなくてもよい。
【0150】
ヘモグロビンレベルを正常に戻すために、RBC産生の上昇が必要とされる。それゆえ、鉄欠乏性貧血においては、E%の正常範囲は不適切とみなすことができる。対象2~4のE%の上昇は、鉄欠乏性貧血に罹患している対象に対して正常なより高い範囲のE%(
図10を参照されたい)またはそれをすぐ上回るE%が予想されるので、鉄療法後の適切な応答を示す。したがって、治療が有効かどうかを判断するためのE%の閾値は、E%の開始値に依存し得る。E%の閾値は、初期値に対して特定の値の変化を指定することができ、変化の量は初期値に依存することができる。
【0151】
鉄の経口治療の効果も調べた。例えば、過多月経による慢性的な失血に罹患している患者は、鉄欠乏性貧血に罹患するであろう。鉄補充は、鉄欠乏状態の矯正に使用されるであろう。
【0152】
図21Aは、本発明の実施形態による経口鉄治療を受けている過多月経による鉄欠乏性貧血に罹患している患者の赤芽球DMRにおける血漿E%(FECH)の連続的な変化を示す。鉄治療を受けている鉄欠乏性貧血患者の血漿中のE%を、鉄治療の前および7日後に分析した。
図21Aにおいて、鉄治療を受けた後、E%の上昇があった。これらの結果は、血漿E%が、治療に応答して赤血球産生活性を反映することができたことを示唆する。
【0153】
図21Bは、経口鉄治療後のヘモグロビンの変化を示す。ヘモグロビンレベルはまだ劇的に上昇していないが、治療後の同じ時点でE%(FECH)の上昇があった。このことは
図20Aと類似しており、
図20Aは、治療が有効かどうかの早期検出としてE%が使用できることを示している。
【0154】
2.慢性腎疾患(CKD)のための治療
CKD患者においては、貧血の主な原因は、腎臓の損傷によるエリスロポエチン産生の低下である。エリスロポエチンは、低い組織酸素レベルに応答して腎臓によって産生されるホルモンである。エリスロポエチンは、赤血球を産生するために骨髄を刺激する。外来性エリスロポエチンは、CKDの貧血の治療に使用されるであろう。
【0155】
図22は、組換えエリスロポエチン(EPO)または赤血球産生促進剤(ESA)の治療を受けている慢性腎疾患(CKD)患者の赤芽球DMRにおける血漿非メチル化%の連続的な変化を示す。EPO治療を受けている7名のCKD患者の血漿中の非メチル化%を、EPO治療の前および7~14日後に分析した。異なる形状(色彩)の線は、異なる患者に対応する。患者は全員、EPO治療を受けた後、非メチル化%の上昇を示した。非メチル化%の値は、異なる患者の様々なレベルの有効性を示す。これらの結果は、血漿非メチル化%が治療に応答して赤血球産生活性を反映することを示す。
【0156】
3.再生不良性貧血のためのATG治療
再生不良性貧血患者の免疫抑制療法は、患者の60~70%において血液回収につながる可能性があり得る(Young et al.Blood.2006;108(8):2509-2519)。免疫抑制療法を受けている再生不良性貧血患者4名の血漿中の非メチル化%値を、免疫抑制療法の開始前、ならびに2か月後および4か月後に分析した。患者は全員、治療に応答せず、ヘモグロビンレベルはその期間にわたって正常レベルに回復せず、4名の患者は全員、定期的な輸血が必要であった。
【0157】
図23Aは、本発明の実施形態による抗胸腺細胞グロブリン(ATG)治療または免疫抑制療法としてのサイクロスポリンを受けている再生不良性貧血患者の赤芽球DMRにおける血漿非メチル化%の連続的な変化を示す。3名の患者において、血漿中の非メチル化%に変化はなかった。1名の患者が、非メチル化%の有意な上昇を示した。このことは、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)クローンの症状の出現、すなわちヘモグロビンを含有する暗色尿の通過と同時に発生した。このような症状は、たとえ、非メチル化%が上昇したとしても、患者が治療に応答していないことを判断するために使用することができる。PNHは、再生不良性貧血患者においてその発生が知られており、溶血性貧血の病態生理学的機序を有する。非メチル化%の上昇は、PNHからの溶血の結果としての赤血球産生活性の上昇を反映する。
【0158】
図23Bは、治療を受けている再生不良性貧血患者のヘモグロビンの連続的変化を示す。ヘモグロビンレベルは有意に上昇しない。これらの結果は、患者全員が
図23Bに示すヘモグロビンの変化の欠如によって具現化されるように、治療に応答しなかったので、血漿非メチル化%が治療経過の間に赤血球産生活性の変化を反映することを示す。
【0159】
図24Aおよび
図24Bは、再生不良性貧血患者4名におけるヘモグロビン濃度に対する血漿中の非メチル化%のプロットを示す。各線は、1名の患者に対応し、治療の前および4か月後の非メチル化%およびヘモグロビンレベルの変化を追跡する。
図23Aは、PNH患者を除いて、非メチル化%が有意に変化しなかったことを示す。
図23Bは、ヘモグロビンレベルが変化したが有意ではなかったことを示す。
【0160】
8.赤血球系DNAの絶対濃度の使用
血漿/血清中の赤血球系DNAの量を測定するために、いくつかの実施形態は、低メチル化マーカーのパラメータE%(非メチル化%とも呼ぶ)を使用するが、細胞系譜に特異的な高メチル化マーカーも、存在する場合、使用され得る。E%は、試料中のDNAの大部分(ほとんどが高メチル化されている)に対して正規化された赤芽球DNAの量に対応する。
【0161】
代替パラメータは、血漿の単位容積あたりの赤血球系DNAの絶対濃度を測定することとする。E%の計算のために、実施形態は、非メチル化DNAの絶対濃度、およびメチル化DNAの絶対濃度を測定することができる。デジタル式PCRアッセイにおいて、各点は1つのDNA分子を表すことができる(例えば、
図2Aおよび
図2Bに示すように)。メチル化DNAおよび非メチル化DNAの計数は、直接的に計数することができる。前節において、正規化された値(例えば、E%)を計算したが、実施形態は、低メチル化マーカーについての非メチル化分子の絶対濃度、または高メチル化マーカーについてのメチル化分子の絶対濃度を使用することもできる。
【0162】
図25は、本発明の実施形態による健常対象および貧血患者におけるFECH遺伝子関連DMR(コピー数/血漿ml)における赤血球系DNAの絶対濃度を示すボックスアンドウィスカープロットを示す。ボックスおよび内部の線はそれぞれ、四分位範囲および中央値を表す。上部および下部のウィスカーは最大値および最小値を表す。
【0163】
図25に示すように、異なる患者群間の個別のクラスターは、赤血球系DNAの絶対濃度を用いて観察され得るが、正規化された値は群間の良好な分離を可能にする。理論上、血漿のE%パラメータはまた、非赤血球起源の循環DNA、例えば、骨髄由来またはリンパ由来のDNAの濃度によっても影響され得る。例えば、他の造血系譜も影響される場合の貧血容態(例えば、再生不良性貧血または骨髄異形成症候群)において、赤血球系DNAの放出変化がこれらの症例のいくつかにおいてマスクされ得る。
【0164】
9.他の血液系譜
血液学的評価のためのこの血漿DNAベースのアプローチは、他の血液細胞系譜、例えば、骨髄、リンパ、および巨核球系列のマーカーに一般化することができる。血液系譜特異的DNAメチル化マーカーの使用に関する従来の研究は、全血または血球に焦点を絞ってきた(Houseman EA,et al.Current Environmental Health Reports 2015;2:145-154)。先に呈された本発明者らのデータは、血漿DNAが血球には存在しない情報を含有していることを明らかに示している。それゆえ、複数の血液細胞系譜由来の発生マーカーを用いた血漿DNAの分析は、個体の血液系に関する価値のある診断情報を提供することができる。したがって、骨髄生検の非侵襲的置き換えである。血漿または血清中の特定の細胞系譜のメチル化署名を特異的に検出し、それにより骨髄中の異なる細胞系譜の活性をモニターすることができるアッセイを設計することができる。
【0165】
このようなアプローチは、以下の障害を含むがこれらに限定されない多くの臨床シナリオの評価に有用であろう。例となる関連する系譜は、障害について提供される。
1.血液学的悪性腫瘍、例えば、白血病およびリンパ腫(リンパ球系譜)
2.骨髄障害、例えば再生不良性貧血、骨髄線維症(骨髄系細胞およびリンパ球系譜)
3.免疫系およびその機能のモニタリング、例えば、免疫不全ならびに疾患および治療の間の免疫応答の封入(リンパ球系譜)
4.骨髄に対する薬物効果、例えばアザチオプリン(骨髄系細胞系譜)
5.血小板数は少ないが正常な骨髄を特徴とする容態である、血液学的徴候を伴う自己免疫疾患、例えば、免疫性血小板減少症(ITP)。血液系譜マーカー、例えば巨核球性マーカーを用いた血漿DNA分析は、このような容態に関する価値のある診断情報を提供するであろう。(巨核症マーカー)
6.赤血球産生の低下またはさらにより重度の再生不良の危機と合併することのできる、血液学的合併症を伴う感染、例えば、パルボウイルスB19による感染。(赤血球系系譜)
【0166】
10.方法
図26は、本発明の実施形態による哺乳類の血液試料を分析する方法2600を示す流れ図である。方法2600の一部は手動で実行されてもよく、他の部分はコンピュータシステムによって実行されてもよい。一実施形態において、システムは工程全部を実行することができる。例えば、システムは、(例えば、試料を得てアッセイを行うための)ロボット要素、アッセイからのシグナルを検出するための検出システム、およびシグナルを分析するためのコンピュータシステムを含むことができる。このようなシステムを制御するための命令は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)の構成論理、フラッシュメモリ、および/またはハードドライブなど、1つ以上のコンピュータ可読媒体に保存され得る。
図27は、このようなシステムを示す。
【0167】
ブロック2610において、血液試料の無細胞混合物を得る。無細胞混合物の例としては、血漿または血清が挙げられる。無細胞混合物は、複数の細胞系譜由来の無細胞DNAを含むことができる。
【0168】
いくつかの実施形態において、血液試料を分離して、無細胞混合物を得る。血漿および血清は異別である。両方とも血液の流体部分に対応する。血漿を得るために、抗凝固剤を血液試料へ添加して、血液試料が凝固するのを防止する。血清を得るために、血液試料を凝固させておく。それゆえ、凝固因子は凝固プロセスの間に消費されるであろう。循環DNAに関しては、凝固中に一部のDNAを血球から流体部分へと放出する。それゆえ、血清は血漿と比較して高いDNA濃度を有する。凝固中の細胞からのDNAは、血漿に特異的なDNAを希釈し得る。それゆえ、血漿が有利であり得る。
【0169】
ブロック2620において、無細胞混合物中のDNA断片を、1つ以上の差次的にメチル化された領域に対応するアッセイと接触させる。1つ以上の差次的にメチル化された領域(DMR)の各々は、他の細胞系譜と比較して低メチル化または高メチル化されることによって、特定の血液細胞系譜に特異的である。赤芽球細胞系譜についてのDMRの例を本明細書で提供する。
【0170】
種々の実施形態において、本アッセイは、PCRまたは配列決定を含むことができ、したがってPCRアッセイまたは配列決定アッセイであり得る。DNA断片を接触させることは、フローセル、液滴、ビーズ、または、アッセイとDNA断片との相互作用を提供するための他の機序を含むことができる。このようなアッセイの例としては、全ゲノム二亜硫酸塩配列決定、標的化二亜硫酸塩配列決定(ハイブリッド形成捕捉またはアンプリコン配列決定による)、他のメチル化用品配列決定(例えばPacific Biosciencesによる単一分子リアルタイム(SMRT)DNA配列決定)、リアルタイムメチル化特異的PCR、およびデジタル式PCRが挙げられる。方法300のために使用可能なアッセイのさらなる例は、本明細書に、例えば第XII節に説明されている。例は赤芽球を使用するが、他の血液細胞系譜を含む他の細胞系譜を使用してもよい。
【0171】
ブロック2630において、メチル化DNA断片または非メチル化DNA断片の第1の数は、アッセイから得られた信号に基づいて1つ以上の差次的にメチル化された領域の無細胞混合物中で検出される。アッセイは、光信号または電気信号などの種々の信号を提供することができる。信号は、DNA断片当たりの特異的な信号を提供することができ、凝集シグナルは、(例えば、リアルタイムPCRにおけるような)メチル化署名を有するDNA断片の総数を示す凝集シグナルを提供することができる。
【0172】
一実施形態において、配列決定は、DNA断片のための配列読み取りを得るために使用することができ、DNA断片は、基準ゲノムと整列させることができる。DNA断片がDMRの1つと整列する場合、カウンタを増分させることができる。信号が非メチル化アッセイの特定のメチル化されたものに由来すると仮定すると、DNA断片は、そのメチル化署名を有すると想定することができる。別の実施形態において、PCRからの読み取り(例えば、陽性ウェルからの光シグナル)を使用して、このようなカウンタを増分させることができる。
【0173】
ブロック2640で、メチル化レベルを、第1の数を用いて決定する。第1のメチル化レベルは、正規化され得るか、または絶対濃度、例えば、生物学的試料の体積あたりであり得る。絶対濃度の例を
図25に提供する。正規化されたメチル化レベルの例としては、E%(非メチル化%とも呼ばれる)が挙げられる。
【0174】
正規化された値について、メチル化レベルは、1つ以上の差次的にメチル化された領域の無細胞混合物中のDNA断片の第1の数および総数を使用して決定することができる。上述のように、メチル化レベルは、非メチル化DNA断片の百分率であり得る。他の実施形態において、百分率は、赤芽球についての先の例と逆の関係を有するであろうメチル化DNA断片であり得る。種々の実施において、メチル化レベルは、DMRの全部位にわたる百分率を用いて、各部位の個々の百分率の平均によって、または各部位の加重平均によって決定することができる。
【0175】
ブロック2650で、メチル化レベルを、哺乳類における血液学的障害の分類を決定することの一環として、1つ以上のカットオフ値と比較する。1つ以上のカットオフ値は、例えば、
図8~
図10および
図12~
図14において示されるように、演繹的なデータから選択することができる。カットオフ値は、例えば、正常であるようおよび障害に罹患しているよう、既知の試料のデータセットからの監督された学習に基づいて、血液学的障害の正確な分類を提供するための最適な感度および特異性を提供するように選択することができる。
【0176】
カットオフ値を決定するための例として、複数の試料を得ることができる。各試料は、当業者に既知であろうように、例えば、他の技術を介して、血液学的障害の特定の分類を有することが既知である。血液学的障害の少なくとも2つの分類を有する、例えば、障害に罹患しているおよび障害に罹患していない複数の試料。異なるタイプの障害も、例えば、
図10に示すように、含まれ得る。1つ以上の差次的にメチル化された領域のメチル化レベルは、
図8~
図10および
図12~
図14のデータ点のように、複数の試料の各々について決定することができる。
【0177】
試料の第1のセットは、血液学的障害の第1の分類、例えば、健康である第1の分類を有すると特定することができる。第1のセットは、例えば、
図8~
図10および
図12~
図14に示すように、一緒にクラスター化することができる。血液学的障害の第2の分類を有する第2のセットの試料を特定することができる。第2のセットは、障害に罹患している患者、または第1の分類とは異なるタイプの障害であり得る。2つの分類は、同じ障害を有する程度を変化させることに対応することができる。第1の試料セットが第2の試料セットよりも統計的に高いメチル化レベルを有する場合、指定された特異性および感度内の第1の試料セットと第2の試料セットとを区別するカットオフ値を決定することができる。したがって、特異性と感度との平衡状態を用いて、適切なカットオフ値を選択することができる。
【0178】
11.要約
RBCは、末梢血中に最も豊富な細胞タイプであるが、核を有していない。本開示において、本発明者らは、赤血球系譜の細胞が血漿DNAプールの有意な比率に寄与することを決定した。この研究の前に、造血細胞が、循環DNAプールに有意に寄与することは既知であった(13,14)が、多くの研究者はこのような造血DNAが、白血球系譜のみに由来すると仮定した(15)。DNAメチル化マーカーを使用したより近年の結果は、血漿DNAが好中球およびリンパ球のDNAメチル化署名を保有していることを示した(15)。
【0179】
赤芽球を含む多くの組織の高解像度参照メチロームを使用して(18,20)、本発明者らは、赤芽球由来DNA分子を、血漿DNAプールにおける他の組織タイプのDNAと区別した。赤芽球特異的メチル化署名に基づく本発明者らのデジタル式PCRアッセイは、本発明者らが血漿中のこのようなDNA分子の定量分析を行うことを可能にした。このアプローチにより、本発明者らは、健常対象の血漿DNAプール中に有意な量の赤血球系DNAの存在を実証することができた。
【0180】
本発明者らの結果は、DNAを血漿中へと寄与する骨髄における赤血球系譜の細胞と一致している。この仮説の結論は、血漿中の赤血球系DNAの定量分析が骨髄赤血球産生活性を反映しており、したがって、貧血の差別的診断に役立ち得る。本発明者らは、健常対象の血漿中の赤血球系DNAの参照値を確立した。本発明者らは、貧血患者が病理および治療の正確な性質に応じて、循環赤血球DNAの比率を上昇または低下させるであろうことをさらに実証した。特に、本発明者らは、血漿中の赤血球系DNAの百分率の分析を通じて、本発明者らの募集した患者において、2つの骨髄不全症候群、すなわち再生不良性貧血(AA)および骨髄異形成症候群(MDS)を区別することができた。
【0181】
網状赤血球計数は、貧血患者における骨髄応答に関する情報を提供するために使用することができた。本発明者らが研究したベータサラセミア患者11名のうち、4名の患者が網状赤血球計数を1%未満の検出限界の末梢血中に有した。他の7名の患者については、網状赤血球計数は1%~10%の範囲であった。再生不良性貧血患者9名全員について、彼らの網状赤血球計数は、定期的な輸血を受けているかどうかにかかわらず、1%未満であった。したがって、網状赤血球計数は、低濃度の網状赤血球の自動法の高い不正確性により、骨髄における正常なおよび低減した赤血球産生活性を明らかに定義していなくてもよい(35,36)。
【0182】
本発明者らは、網状赤血球計数または網状赤血球指数の分析が、本発明者らの患者コホートにおける貧血の原因を、低減した赤血球産生活性と区別することはできなかったことを実証した(
図11Aおよび
図11B)。本発明者らの結果は、血漿非メチル化%(例えば、
図10に示すような)が網状赤血球計数よりも骨髄における赤血球産生活性を反映する上で、網状赤血球計数よりも正確であることを示している。
図11Aおよび
図11Bに示すように、測定された両方のパラメータを有する患者全員における血漿非メチル化%と網状赤血球計数または網状赤血球指数との相関はなかった(P=0.3、線形回帰)。
【0183】
同様に、末梢血中の異常に多数の赤芽球の存在は、異常な赤血球応力を意味する(37)。しかしながら、末梢血中の赤芽球の非存在は、正常または低減した赤血球産生活性を意味しない。逆に、血漿赤芽球由来DNAの定量分析は、末梢血からの従来の血液学的パラメータによって提供されない骨髄赤血球産生活性に関する情報をもたらす。
【0184】
ベータサラセミアおよび再生不良性貧血については、これら2つの容態は典型的には、血液中の鉄およびヘモグロビンパターンの分析によって診断される。しかし、ベータサラセミアおよび再生不良性貧血は両方とも、低いヘモグロビンレベルを呈し、したがって、このような技術はベータサラセミアと再生不良性貧血とを区別しない。非メチル化%を使用することにより、
図8および
図10に示すように、これら2つの障害間の差別化を可能にすることによって、より特異性を提供することができる。
【0185】
非メチル化%は、治療をモニターすることにも使用することができる。例えば、鉄欠乏性貧血患者における非メチル化%の分析は、
図9に示すように、経口鉄療法に対する骨髄応答のモニタリングに使用することができる。一部の患者においては、経口鉄補充は消化管を通して有効に吸収されないことがある。結果として、赤血球産生は治療開始後には上昇しないであろう。非メチル化%の上昇がないことは、非経口鉄治療(例えば、鉄デキストラン、グルコン酸第二鉄、および鉄ショ糖)などの他の治療を開始することができるよう、経口鉄治療に対する貧弱な応答のための指示薬として使用することができる。あるいは、非メチル化%の上昇の欠如は、治療を中止(停止)するために使用することができ、それにより、有効ではない治療の経費を節約することができる。別の実施において、非メチル化%の上昇の欠如は、いつ治療用量を増加させるか、例えば、鉄の薬用量を増加させるかを特定するために使用することができる。非メチル化%の上昇がある場合、治療を継続することができる。非メチル化%の上昇が十分に高い場合(例えば、閾値に基づく)、赤血球産生活性が、ヘモグロビンレベルを健常レベルへ最終的に戻すのに十分なレベルに到達したと仮定することができるので、治療を停止することができ、それにより高価でまたは潜在的に有害である過剰治療を回避することができる。
【0186】
したがって、哺乳類は、血液障害の分類で、哺乳類が血液学的障害に罹患していることを示すことを決定することに応答して、血液学的障害について治療することができる。治療後、アッセイを反復して、更新されたメチル化レベルを決定し、更新されたメチル化レベルに基づいて治療を行い続けるかどうかを判断することができる。一実施形態においては、治療を行い続けるかどうかを判断することは、更新されたメチル化レベルが指定された閾値内へとメチル化レベルに対して変化しなかった場合に、治療を停止すること、治療用量を増量すること、または異なる治療を行うことを含むことができる。別の実施形態において、治療を行い続けるかどうかを判断することは、更新されたメチル化レベルが、指定閾値内へとメチル化レベルに対して変化したときに、治療を継続することを含むことができる。
【0187】
治療をモニターする別の例として、非メチル化%の分析を使用して、サラセミア患者における有効ではない赤血球産生が、治療によって、例えば、輸血によって十分に抑制されたかどうかを判断することができる。髄外赤血球産生は、サラセミア患者の骨変形の原因である。髄外赤血球産生は、輸血およびヘモグロビンレベルの回復によって抑制することができる。非メチル化%は、これらの治療に対する患者の応答を示すことができ、非メチル化%を抑制し損ねることを用いて、治療が強化されるべきであることを示すことがある。
【0188】
非メチル化%は、鉄欠乏単独に罹患している患者を、他の原因の貧血、例えば、慢性疾病による貧血とともに鉄欠乏に罹患している患者と区別することもできる。鉄欠乏症単独に罹患している患者は、鉄治療後に非メチル化%が上昇すると予想されるであろうが、貧血の原因が複数である患者は、非メチル化%の上昇の応答を示さないであろう。
【0189】
したがって、本発明者ら、は循環赤血球系DNAの百分率が、鉄欠乏性貧血患者における鉄療法に応答して上昇し、したがって、骨髄の赤血球産生活性の上昇を反映すること実証した。赤血球系DNAの比率の動的変化は、血漿赤血球系DNAの定量化が、関連する細胞プロセスの非侵襲的モニタリングを可能にすることを示す。血漿DNAの迅速な動態(例えば、数十分の桁の半減期(38,39))は、このようなモニタリングが、ほぼリアルタイムの結果を提供し得たことを示唆している。同様に、他の細胞系譜の循環無細胞DNAの百分率は、他の細胞系譜についての骨髄における関連した細胞プロセスの非侵襲的モニタリングも可能にする。
【0190】
本研究は、循環中の造血始原細胞および前駆細胞の核材料の存在を実証するための証明として役立つ。さらに、他の造血系譜の前駆細胞から放出された循環DNAの存在も使用され得る。
【0191】
要約すると、本発明者らは、赤血球系DNAが血漿DNAプールの有意な比率に寄与することを実証した。この発見は、循環核酸の基本的な生物学的特徴に関する本発明者らの理解において重要なギャップを埋めた。臨床的に、血漿中の赤血球系DNAの測定は、異なるタイプの貧血の調査およびモニタリングのための新たなアプローチを開き、無細胞DNAを基にした血液学的検査の新たなファミリーの始まりを告げる。
【0192】
12.材料および方法
本節では、実施形態を実施するに使用された、および使用され得る技術を説明する。
【0193】
1.試料の採取および調製
【0194】
いくつかの実施形態において、4つの症例を各々有する12のタイプの正常組織(肝臓、肺、食堂、胃、小腸、結腸、膵臓、副腎、膀胱、心臓、脳および胎盤)のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)を、匿名化手術標本から取り出した。採取した組織は、組織学的検査で正常であることが確認された。固定した組織について製造元のプロトコルを改変したQIAamp DNA Mini Kit(Qiagen)を用いて、FFPE組織プロトコルからDNAを抽出した。パラフィンを除去するために、キシレンの代わりに脱パラフィン溶液(Qiagen)を使用した。核酸のホルムアルデヒド修飾の逆転のために、緩衝液ATLおよびプロテアーゼKによる溶解後に、90℃で1時間のインキュベーションの追加工程を行った。
【0195】
分析用に赤芽球濃縮試料を調製するために、1~3mLの臍帯血を出産直後の8名の妊婦の各々からEDTA含有チューブへと回収した。Ficoll-Paque PLUS溶液(GE Healthcare)を用いた密度勾配遠心分離を用いて、単核細胞を臍帯血試料から単離した。1×108個の単離された単核細胞を、2つの抗体、すなわち、フルオレセインイソチオシアナート(FITC)結合抗CD235a(Miltenyi Biotec)およびフィコエリトリン(PE)結合抗CD71(Miltenyi Biotec)の混合物1mLとともに、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)中での1:10希釈物中で、4℃の暗所で30分間インキュベートした。次に、CD235a+細胞およびCD71+細胞を、赤芽球の濃縮のために、BD FACSAria Fusionフローサイトメトリー(BD Biosciences)によって選別した(1)。8例のCD235a+CD71+細胞を、下流分析のためにプールした。製造元の説明書を備えたQIAamp DNA Blood Mini Kit(Qiagen)を使用して、プールしたCD235a+CD71+細胞からDNAを抽出した。
【0196】
末梢血試料をEDTA含有チューブに採取し、4℃で直ちに保存した。各患者から10mLの末梢静脈血を採取した。血漿分離は、採血後6時間以内に行った。4mLの血漿から血漿DNAを抽出した。血漿およびバフィーコートのDNAを、既に説明したように得た(2)。簡潔に言えば、血液試料をまず4℃、1,600gで10分間遠心分離し、血漿部分を4℃、16,000gで10分間再遠心分離した。いかなる残留血漿も除去するために、2,500gで10分間再遠心分離した後、血球部分を回収した。血漿およびバフィーコート由来のDNAをQIAamp DSP DNA Mini Kit(Qiagen)およびQIAamp DNA Blood Mini Kit(Qiagen)を用いてそれぞれ抽出した。
【0197】
2.DNAの二亜硫酸塩変換
血球およびFFPE組織から抽出した血漿DNAおよびゲノムDNAを、製造元の説明書により、Epitect Plus Bisulfite Kit(Qiagen)を用いて、2回の二亜硫酸塩処理へ供した(3)。
【0198】
一実施形態において、生物学的試料から抽出されたDNAをまず二亜硫酸塩で処理する。メチル化シトシンを変化させないまま、二亜硫酸塩処理は非メチル化シトシンをウラシルへと変換することになっている。それゆえ、二亜硫酸塩変換後、メチル化配列および非メチル化配列は、CpGジヌクレオチドにおける配列の相違に基づいて区別することができる。本出願の選択された例において提示された血漿試料の分析のために、DNAを2~4mLの血漿から抽出した。血球から抽出したDNAの分析のために、1μgのDNAを実施例における下流分析に使用した。他の実施形態においては、他の容積の血漿およびDNA量が使用され得る。
【0199】
本出願における例において、製造元の説明書により、EpiTect Bisulfite Kitを用いて、各試料に関して二亜硫酸塩処理を2回行った。二亜硫酸塩変換した血漿DNAを50μLの水で溶出した。二亜硫酸塩変換した細胞DNAを20μLの水で溶出した後、下流分析のために100倍に希釈した。
【0200】
3.メチル化アッセイ
種々のメチル化アッセイ用いて、特定の細胞系譜からDNAの量を定量化するために使用することができる。
【0201】
1.PCRアッセイ
1つは二亜硫酸塩変換非メチル化配列を標的とし、もう1つはメチル化配列を標的とする、3つの赤芽球特異的DMRのそれぞれについて、2つのデジタル式PCRアッセイを開発した。アッセイのためのプライマーおよびプローブ設計は、付録表7に列挙する。
【表7】
【0202】
例として、PCR反応は、二亜硫酸塩変換された鋳型DNA 3μL、各プライマーの終濃度0.3μM、MgCl2の0.5μM、および25μLの2×KAPA HiFi HotStart Uracil ReadyMixとともに50μLを含むことができる。以下のPCR温度特性を使用することができる:95℃で5分間、ならびに98℃、20秒間を35周期、57℃で15秒間、および72℃、15秒間、続いて72℃で30秒間の最終伸長工程。他の実施形態において、非優先ゲノムワイド配列決定を整列と組み合わせて実施することができるが、このような手順は費用対効果が高くない可能性がある。
【0203】
いくつかの実施形態において、試料のデジタル式PCR解析のために、20μLの反応混合物を二亜硫酸塩処理後に調製した。一実施形態において、反応混合物は、8μLの鋳型DNA、450nMの各2つの順方向プライマー、900nMの逆方向プライマー、および250nMのプローブを含有した。他の実施形態において、8μLの鋳型DNA、900nMの順方向プライマー、900nMの逆方向プライマー、および250nMのプローブを含有する総容積20μLの各反応混合物を調製した。次に、BioRad QX200 ddPCR液滴発生装置を使用して、反応混合物を液滴生成のために使用した。典型的には、各試料について20,000液滴が生成されるであろう。いくつかの実施において、液滴を清浄な96ウェルプレートへと移した後、メチル化特異的アッセイおよび非メチル化特異的アッセイの両方について同一の条件を用いて温熱周期を回した:95℃×10分(1周期)、94℃×15秒間および60℃×1分の40周期、98℃×10分間(1周期)の後、12℃の保持工程。PCRの後、各試料についての液滴をBioRad QX200液滴リーダーによって分析し、結果をQuantaSoft(第1.7版)ソフトウェアを用いて解釈した。
【0204】
2.他のメチル化アッセイの例
メチル化認識配列決定の他の例としては、(N6-メチルアデニン、5-メチルシトシンおよび5-ヒドロキシメチルシトシンを含む)DNA分子のメチル化状態を可能にするであろう単一分子配列決定プラットフォームを用いて(AB Flusberg et al.2010 Nat Methods;7:461-465、J Shim et al.2013 Sci Rep;3:1389)またはメチル化シトシンの免疫沈降を通じて(例えば、メチルシトシンに対する抗体を使用することによって、またはメチル化DNA結合タンパク質もしくはペプチドを使用した(LG Acevedo et al.2011 Epigenomics;3:93-101)後に、配列決定、メチル化感受性制限酵素の使用の後の配列決定を通じて、二亜硫酸塩変換なしで直接解明されることが挙げられる。
【0205】
いくつかの実施形態において、DNA混合物中のゲノム部位についてのメチル化レベルは、全ゲノム二亜硫酸塩配列決定を用いて決定することができる。他の実施形態において、ゲノム部位のメチル化レベルは、Illumina HumanMethylation450システムなどのメチル化マイクロアレイ分析を用いて、またはメチル化免疫沈降を用いること(例えば、抗メチルシトシン抗体を用いること)またはメチル化結合タンパク質による処理に続いてマイクロアレイ分析もしくはDNA配列決定によって、またはメチル化認識配列決定を用いること、例えば、単一分子配列決定法を用いること(例えば、ナノポア配列決定(Schreiber et al.Proc Natl Acad Sci 2013;110:18910-18915)によってまたはPacific Biosciences単一分子リアルタイム分析(Flusberg et al.Nat Methods 2010;7:461-465)によって)決定することができる。組織特異的メチル化レベルは、同じ方法で測定することができる。別の例として、標的二亜硫酸塩配列決定、メチル化特異的PCR、非二亜硫酸塩系メチル化認識配列決定(例えば、単一分子配列決定プラットフォーム(Powers et al.Efficient and accurate whole genome assembly and methylome profiling of E.coli.BMC Genomics.2013;14:675)は、血漿DNAメチル化デコンボリューション分析のための血漿DNAのメチル化レベルの分析に使用することができる。したがって、メチル化認識配列決定の結果は、種々の方法で得ることができる。
【0206】
4.統計分析
ピアソンの相関を用いて、重症型β-サラセミア患者における血液分析装置によって測定された末梢白血球において、赤血球系DNAの百分率(E%(FECH))と赤芽球の百分率との相関を研究した。ピアソンの相関を使用して、健常対照の血漿DNAにおけるおよびバフィーコートDNAにおける対形成したE%(FECH)の結果間の相関も研究した。ウィルコクソン符号づけ順位検定を用いて、健常対象の血漿DNAのE%と、対形成したバフィーコートDNAとの相違を比較した。マン・ホイットニー順位和検定を用いて、健常対象および異なる疾患群の貧血患者の血漿DNA中のE%の相違を比較した。
【0207】
本発明者らは、本文中に説明した本発明者らの基準に基づいて、赤芽球特異的DMRをマイニングするために、本発明者らのバイオインフォマティクスパイプラインも開発した。バイオインフォマティクスパイプラインは、種々のプラットフォーム、例えばPerlプラットフォームに実装されてもよい。
【0208】
13.例となるシステム
【0209】
図27は、本発明の一実施形態によるシステム2700を示す。示されたシステムは、試料ホルダ2710内の無細胞DNA分子などの試料2705を含み、試料2705はアッセイ2708と接触して物理的特徴2715の信号を提供することができる。試料ホルダの例は、アッセイのプローブおよび/もしくはプライマー、または液滴が(アッセイを含む液滴とともに)移動するチューブを含むフローセルであり得る。試料からの蛍光強度値などの物理的特徴2715は、検出器2720によって検出される。検出器は、データ信号を構成するデータ点を得るために、間隔(例えば、周期的な間隔)を空けて測定を行うことができる。一実施形態において、アナログデジタル変換器は、検出器からのアナログ信号をデジタル形式へと複数回変換する。データ信号2725は、検出器2720から論理システム2730へ送信される。データ信号2725は、ローカルメモリ2735、外部メモリ2740、またはストレージ装置2745に保存することができる。
【0210】
論理システム2730は、コンピュータシステム、ASIC、マイクロプロセッサなどを含んでもまたは含んでいなくてもよい。論理システム2730は、ディスプレイ(例えば、モニター、LEDディスプレイなど)およびユーザ入力装置(例えば、マウス、キーボード、ボタンなど)を含むこともでき、またはこれらに連結されることもできる。論理システム2730および他の構成要素は、スタンドアローンもしくはネットワーク接続されたコンピュータシステムの一部であってもよく、またはサーマルサイクラー装置に直接取り付けられてもよいか、もしくは組み込まれてもよい。論理システム2730は、プロセッサ2750において実行する最適化ソフトウェアを含むこともできる。論理システム1030は、本明細書に説明される方法のいずれかを実行するようにシステム1000を制御するための命令を保存するコンピュータ可読媒体を含むことができる。
【0211】
本明細書で言及されるコンピュータシステムはいずれも、何らかの適切な数のサブシステムを利用し得る。このようなサブシステムの例は、
図28においてコンピュータシステム10において示されている。いくつかの実施形態において、コンピュータシステムは単一のコンピュータ装置を含み、サブシステムはこのコンピュータ装置の構成要素であり得る。他の実施形態において、コンピュータシステムは、それぞれがサブシステムであり、内部構成要素を備えた複数のコンピュータ装置を含むことができる。コンピュータシステムは、デスクトップコンピュータおよびラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話、ならびに他の携帯装置を含むことができる。
図28に示されるサブシステムは、システムバス75を介して相互接続される。プリンタ74、キーボード78、記憶装置(複数可)79、ディスプレイアダプタ82へ連結されるモニター76、およびその他などの追加のサブシステムが示されている。I/Oコントローラ71へ連結する周辺機器および入出力(I/O)装置は、入出力(I/O)ポート77(例えば、USB、FireWire(登録商標))など、当該技術分野で既知の任意の数の手段によって、コンピュータシステムへ接続することができる。例えば、I/Oポート77または外部インターフェース81(例えば、Ethernet、Wi-Fiなど)を使用して、Internetなどの広域ネットワーク、マウス入力装置、またはスキャナへ、コンピュータシステム10を接続することができる。システムバス75を介した相互接続は、中央処理装置73が各サブシステムと通信し、システムメモリ72または記憶装置(複数可)79(例えば、ハードドライブまたは光ディスクなどの固定ディスク)からの複数の命令の実行、およびサブシステム間の情報交換を制御することを可能にする。システムメモリ72および/または記憶装置(複数可)79は、コンピュータ可読媒体を具現化してもよい。別のサブシステムは、カメラ、マイクロホン、および加速度計、ならびにこれらに類するものなどのデータ収集装置85である。本明細書に言及されるデータのうちのいずれも、ある構成要素から別の構成要素へ出力することができ、ユーザに対して出力することができる。
【0212】
コンピュータシステムは、例えば、外部インターフェース81によって、または内部インターフェースによってともに接続された、複数の同一の構成要素またはサブシステムを含むことができる。いくつかの実施形態において、コンピュータシステム、サブシステム、または装置は、ネットワーク上で通信することができる。このような例において、1つのコンピュータをクライアント、別のコンピュータをサーバとみなすことができ、これらは各々、同一のコンピュータシステムの一部であり得る。クライアントおよびサーバは各々、複数のシステム、サブシステム、または構成要素を含むことができる。
【0213】
実施形態の態様は、ハードウェア(例えば、アプリケーション特異的集積回路またはフィールドプログラマブルゲートアレイ)を使用して、および/またはモジュール式もしくは統合様式で概してプログラム可能な処理装置とともにコンピュータソフトウェアを使用して、制御論理の形態で実装することができる。本明細書で使用する場合、処理装置は、シングルコア処理装置、同一の集積チップ上のマルチコア処理装置、または回路基板上もしくはネットワーク化された複数の処理ユニットを含む。本開示および本明細書に提供される教示に基づいて、当業者は、ハードウェアを用いておよびハードウェアとソフトウェアとを併用して、本発明の実施形態を実施するための他のやりかたおよび/または方法を知り、認識することになっている。
【0214】
本出願において説明されるソフトウェア構成要素または関数のうちのいずれも、例えば、Java、C、C++、C#、Objective-C、Swiftなどの何らかの適切なコンピュータ言語、または例えば、従来の技術もしくはオブジェクト指向の技術を使用するPerlもしくはPythonなどのスクリプト言語を使用する、処理装置によって実行されるソフトウェアコードとして実装されてもよい。ソフトウェアコードは、保存および/または伝送のためのコンピュータ可読媒体上に一連の命令またはコマンドとして保存することができる。適切な非一過性コンピュータ可読媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、磁気媒体(ハードドライブもしくはフロッピーディスクなど)、または光学媒体(コンパクトディスク(CD)もしくはDVD(デジタル多用途ディスク)など)、およびフラッシュメモリなどを含むことができる。コンピュータ可読媒体は、このようなストレージ装置または伝送装置の任意の組み合わせであってもよい。
【0215】
このようなプログラムはまた、コードされ、インターネットを含む種々のプロトコルに従う有線ネットワーク、光ネットワーク、および/または無線ネットワークを介した伝送に適合した搬送波信号を使用して、伝送されてもよい。このようなものとして、コンピュータ可読媒体は、このようなプログラムでコードされたデータ信号を用いて作製されてもよい。プログラムコードでコードされたコンピュータ可読媒体は、互換性のあるデバイスでパッケージ化されていても、または(例えば、インターネットダウンロードを介して)他の装置とは別個に提供されてもよい。いかなるこのようなコンピュータ可読媒体も、単一のコンピュータ製品(例えば、ハードドライブ、CD、またはコンピュータシステム全体)の上または内部に存在してもよく、システムまたはネットワーク内の異なるコンピュータ製品上またはその内部に存在してもよい。コンピュータシステムは、モニター、プリンタ、または本明細書に記載の結果のうちのいずれかをユーザへ提供するための他の適切なディスプレイを含み得る。
【0216】
本明細書に説明される方法のうちのいずれも、全体的または部分的に、ステップを実行するように構成され得る1つ以上の処理装置を含むコンピュータシステムを用いて実施することができる。したがって、実施形態は、本明細書に説明される方法のうちのいずれかのステップを実行するように構成されたコンピュータシステムを対象とし得、潜在的には異なる構成要素がそれぞれのステップまたはそれぞれのステップ群を実行する。番号付けされたステップとして提示されるものの、本明細書の方法のステップは、同時にまたは異なる順序で実行することができる。加えて、これらのステップの部分が、他の方法の他のステップの部分と併用されてもよい。また、ステップの全部または部分は任意であってもよい。加えて、本方法のうちのいずれかのステップのうちのいずれも、これらのステップを実行するためのシステムのモジュール、ユニット、回路、または他の手段で実行することができる。
【0217】
特定の実施形態の具体的な詳細は、本発明の実施形態の主旨および範囲から逸脱することなく、何らかの適切な様式で組み合わせることができる。しかしながら、本発明の他の実施形態は、各個々の態様、またはこれらの個々の態様の具体的な組み合わせに関する具体的な実施形態に向けられ得る。
【0218】
本発明の例となる実施形態に関する先の説明は、図示および説明の目的で提示されている。徹底的であること、または本発明を説明された正確な形態に限定することは意図されず、多くの修正および変更が、先の教示に鑑みて可能である。
【0219】
「a」、「an」または「the」の引用は、それとは反対に具体的に示されない限り、「1つ以上」を意味することが意図される。「または」の使用は、それとは反対に具体的に示されない限り、「を除いてまたは」ではなく「を含んでまたは」を意味することが意図される。「第1」の構成要素への参照は、第2の構成要素が提供されることを必ずしも必要としない。そのうえ、「第1」または「第2」の構成要素への参照は、明示的に述べられていない限り、参照される構成要素を特定の場所に限定するものではない。
【0220】
本明細書に言及される特許、特許出願、公開物、および説明はすべて、それらの全体がすべての目的のために参照により組み込まれる。いかなるものも、先行技術であるとは認められていない。
【0221】
14.参考文献
【0222】
以下の参考文献は、先に引用されており、すべての目的のためにそれらの全体が参照により組み込まれる。
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