(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ロボットおよびその外皮
(51)【国際特許分類】
A63H 11/00 20060101AFI20240814BHJP
A63H 3/36 20060101ALI20240814BHJP
A63H 9/00 20060101ALI20240814BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A63H11/00 Z
A63H3/36 Z
A63H9/00 F
B25J19/00 Z
(21)【出願番号】P 2021502081
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006516
(87)【国際公開番号】W WO2020171120
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2019027070
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515337268
【氏名又は名称】GROOVE X株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 要
(72)【発明者】
【氏名】小泉 実
(72)【発明者】
【氏名】高田 恵美
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/008385(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/190251(WO,A1)
【文献】特開2005-169509(JP,A)
【文献】特開2005-095222(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0283043(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/00-A63H 37/00
B25J 1/00-B25J 21/02
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームを覆う表皮と、
流体を加熱する熱源と、
前記フレームにより囲まれる空間を加圧し、加熱された流体を前記空間から流出させる
ことで、前記フレームを覆う前記表皮の内側に流体層を形成する加圧部と、を備え
前記フレームと前記表皮との間に基材が設けられ、
前記基材と前記表皮との間に前記流体層が形成されることを特徴とするロボット。
【請求項2】
フレームと、
前記フレームを覆う表皮と、
流体を加熱する熱源と、
前記フレームにより囲まれる空間を加圧し、加熱された流体を前記空間から流出させる
ことで、前記フレームを覆う前記表皮の内側に流体層を形成する加圧部と、を備え
前記加圧部は、前記フレームの内部に外気を取り入れて前記空間を加圧することを特徴
とするロボット。
【請求項3】
前記表皮は、前記フレームに対して着脱可能であることを特徴とする請求項1又は2に
記載の
ロボット。
【請求項4】
前記流体層における流体を外部に排出する排出構造をさらに備えることを特徴とする請
求項1~3のうちいずれか1項に記載のロボット。
【請求項5】
前記表皮が布材であり、
前記排出構造は、前記布材を形成する繊維の隙間を含むことを特徴とする請求項4に記
載のロボット。
【請求項6】
前記基材には、前記空間から流出した流体を前記流体層に導く連通孔が設けられている
ことを特徴とする請求項
1に記載のロボット。
【請求項7】
前記基材を収容して外皮を形成する袋状部材を備え、
前記袋状部材における前記基材よりも外側部分が前記表皮を構成し、
前記袋状部材における前記基材よりも内側部分には、前記外側部分よりも流体の通過抵
抗が低い低通過抵抗領域が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のロボット。
【請求項8】
前記基材は、断熱性を有することを特徴とする請求項
1、6又は7のいずれかに記載の
ロボット。
【請求項9】
前記空間が加圧されないとき、前記基材と前記表皮とは密着することを特徴とする請求
項
1又は6~8のいずれかに記載のロボット。
【請求項10】
前記基材は、所定の温度閾値以上の温度となると自己消化性ガスを放出する素材を含む
ことを特徴とする請求項
1又は6~9のいずれかに記載のロボット。
【請求項11】
前記熱源は電気部品であり、駆動されることで熱を発生することを特徴とする請求項1
~10のいずれかに記載のロボット。
【請求項12】
前記流体は空気であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載のロボット。
【請求項13】
頭部フレームと、
頭部フレームと接続される胴部フレームと、
前記頭部フレームと前記胴部フレームとの間の空間を覆うように各フレームに被せられ
る表皮と、
前記頭部フレームに収容された第1の熱源と、
前記第1の熱源を経由する通気通路に設けられ、前記第1の熱源にて温められた流体を
前記空間へ送出する第1のファンと、
前記胴部フレームに収容された第2の熱源と、
前記第2の熱源を経由する通気通路に設けられ、前記第2の熱源にて温められた流体を
前記空間へ送出する第2のファンと、
を備え、
前記空間へ流出する流体が加圧されることで、各フレームと前記表皮との間に流体層が
形成されることを特徴とするロボット。
【請求項14】
頭部フレームと胴部フレームを覆うようにロボットに着脱可能な外皮であって、
断熱性を有する基材と、
前記基材の少なくとも外表面を覆う布材と、
を備え、
前記基材は、前記頭部フレームと前記胴部フレームとの間の空間と、前記基材と前記布
材との間隙とを連通させる連通孔を有することを特徴とする外皮。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット及びその外皮に関する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
人間との対話や癒しを提供する自律行動型ロボットの開発が進められている(特許文献1参照)がある。このようなロボットの例としては、ヒューマノイドロボットやペットロボット等があげられる。このようなロボットとして、周囲の状況に基づいて自律的に学習することで行動を進化させ、生命を感じさせるものも出現しつつある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-323219号公報
【文献】国際公開第2017/169826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生命には温もりがある。ペットを抱き上げたときにユーザがその温もりを感じると、ユーザは本能的に安心感を覚えうる。ひいては、自然にペットとのスキンシップが促され、ユーザはペットに愛情を注ぎたくなりうる。この点、従来のロボットは生き物を模した外観や機能が重視され、おおよそ温もりとは無縁のものであった。内部部品の過熱を防止するために冷却が必要であるとの認識が一般的であり、ロボットを温めるという発想は従来なかった。発明者らは、ロボットの構造を利用して適度な温もりをもたせることが、ユーザの愛情を引き出すことに有効であるとの考えに到った。
【0005】
本発明は上記課題認識に基づいてなされた発明であり、その主たる目的は、ロボットに適度な温もりをもたせるのに有効な構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様はロボットである。このロボットは、フレームと、フレームを覆う表皮と、流体を加熱する熱源と、フレームにより囲まれる空間を加圧し、加熱された流体を空間から流出させることで、フレームを覆う表皮の内側に流体層を形成する加圧部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様もロボットである。このロボットは、頭部フレームと、頭部フレームと接続される胴部フレームと、頭部フレームと胴部フレームとの間の空間を覆うように各フレームに被せられる表皮と、頭部フレームに収容された第1の熱源と、第1の熱源を経由する通気通路に設けられ、第1の熱源にて温められた流体を空間へ送出する第1のファンと、胴部フレームに収容された第2の熱源と、第2の熱源を経由する通気通路に設けられ、第2の熱源にて温められた流体を空間へ送出する第2のファンと、を備える。空間へ流出する流体が加圧されることで、各フレームと表皮との間に流体層が形成される。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、頭部フレームと胴部フレームを覆うようにロボットに着脱可能な外皮である。この外皮は、可撓性を有する基材と、基材の少なくとも外表面を覆う布材と、を備える。基材は、頭部フレームと胴部フレームとの間の空間と、基材と布材との間隙とを連通させる連通孔を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロボットの体表面に適度な温もりをもたせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0011】
【
図1A】ロボットの概要を説明するための図で、ロボットの体表面を温めるメカニズムを表す図である。
【
図1B】ロボットの概要を説明するための図で、保温原理を模式的に表す部分拡大断面図である。
【
図3】ロボットの構造を概略的に表す断面図である。
【
図4A】車輪収納機構の構造および動作を模式的に示す側面図である。
【
図4B】車輪収納機構の構造および動作を模式的に示す正面図である。
【
図8A】通気構造の主要部を示す部分拡大図で、
図7CのA部拡大図である。
【
図8B】通気構造の主要部を示す部分拡大図で、
図8Aの反対側面、つまり外皮314の内側面を示す。
【
図10A】ロボットの通気構造の詳細を表す断面図で、ロボット100の上半部を側方からみた断面図である。
【
図10B】
図10AのC部拡大図であり、ファンが停止された状態における低通気抵抗領域を示す。
【
図10C】
図10AのC部拡大図であり、ファンが駆動された状態における低通気抵抗領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。また、以下の実施形態およびその変形例について、ほぼ同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0013】
図1は、ロボット100の概要を説明するための図である。
図1Aは、ロボット100の体表面を温めるメカニズムを表す図である。
図1Bは、保温原理を模式的に表す部分拡大断面図である。
一般的に、内部に熱源のあるロボットは、その熱源近くの体表面は温かくなる。しかし、例えば手の先や指先などのような身体の末端などの熱源から離れたところは温かくならない。したがって、単に内部に熱源があるだけでは、体表面を一様に温めることはできない。熱源の付近が温まることは当然の現象であるが、体表面の一部が温まることと、体表面を一様に温めることは異なる。なお、ここでいう「一様に温める」とは、体表面の一部の領域が他の領域と比べて所定以上の温度差にならないように温めることを意味する。
【0014】
体表面を一様に温かくすることにより、ロボットの身体に触れた人が違和感を持つことなく、温もりを感じることができる。これにより、ロボットに積極的に触れたいという気持ちをユーザに持たせうる。ロボットの体表面を一様に温めることが、ロボットに対するスキンシップをユーザに促し、ロボットに対するユーザの愛着形成に貢献する。以上を念頭において本実施形態のロボット100は構成されている。
【0015】
ロボット100は、体表面に適度な温度を維持する。ユーザがロボット100に触れたとき、ユーザはあたかもロボット100に体温があるかのように感じ、ひいては、ユーザはロボット100に生命の温もりを感じうる。それにより、ユーザのロボット100に対するスキンシップが促され、本能的にユーザのロボット100に対する愛情が引き出される。この温もりは、体内を流れる温風を利用して体表面に沿った温かい空気層を形成することで実現される。
【0016】
図1Aに示すように、ロボット100は、骨格を形成するフレーム500を有し、そのフレーム500を覆うように表皮502が被せられている。表皮502は、フレーム500に対して着脱可能である。一方、フレーム500の所定箇所には吸気口が設けられ、実線矢印参照に示されるように、外気が導入される。フレーム500内には発熱部品などの熱源が設けられるため、その熱源が過熱しないよう外気による冷却がなされる。熱源との熱交換により温められた空気は、点線矢印に示されるように、フレーム500により囲まれる特定の空間504に集められる。
【0017】
図1Bに示すように、空間504に集合することで加圧された空気は、一点鎖線矢印に示されるように、その一部が表皮502の繊維を通過して外部に排出される。ただし、表皮502には通気抵抗があるため、空気の一部は、フレーム500と表皮502との間に導かれ、両者間に空気層506を形成する。空間504には温められた空気が継続的に導入されるため、二点鎖線矢印に示されるように、その空気が空気層506を形成しつつ体表面全体に循環する。それにより、ロボット100に適度な温もりが維持される。以下、このようなロボット100の具体的構成について説明する。
【0018】
[基本構成]
図2は、ロボット100の外観を表す図である。
図2Aは正面図であり、
図2Bは側面図である。
ロボット100は、外部環境および内部状態に基づいて行動を決定する自律行動型のロボットである。外部環境は、カメラやサーモセンサなど各種のセンサにより認識される。内部状態はロボット100の感情を表現する様々なパラメータとして定量化される。ロボット100は、オーナー家庭の家屋内を行動範囲とする。以下、ロボット100に関わる人間を「ユーザ」とよぶ。
【0019】
ロボット100のボディ104は、全体的に丸みを帯びた形状を有し、ウレタンやゴム、樹脂、繊維などやわらかく弾力性のある素材により形成された外皮314を含む。ロボット100に服を着せてもよい。ロボット100の総重量は5~15キログラム程度、身長は0.5~1.2メートル程度である。適度な重さと丸み、柔らかさ、手触りのよさ、といった諸属性により、ユーザがロボット100を抱きかかえやすく、かつ、抱きかかえたくなるという効果が実現される。
【0020】
ロボット100は、一対の前輪102(左輪102a,右輪102b)と、一つの後輪103を含む。前輪102が駆動輪であり、後輪103が従動輪である。前輪102は、操舵機構を有しないが、左右輪の回転速度や回転方向を個別に制御可能とされている。後輪103は、キャスターであり、ロボット100を前後左右へ移動させるために回転自在となっている。後輪103はオムニホイールであってもよい。左輪102aよりも右輪102bの回転数を大きくすることで、ロボット100が左折したり、左回りに回転できる。右輪102bよりも左輪102aの回転数を大きくすることで、ロボット100が右折したり、右回りに回転できる。
【0021】
前輪102および後輪103は、駆動機構(回動機構、リンク機構)によりボディ104に完全収納できる。ボディ104の下半部には左右一対のカバー312が設けられている。カバー312は、可撓性および弾性を有する樹脂材(ラバー、シリコーンゴム等)からなり、柔らかい胴体を構成するとともに前輪102を収納できる。カバー312には側面から前面にかけて開口するスリット313(開口部)が形成され、そのスリット313を介して前輪102を進出させ、外部に露出させることができる。
【0022】
走行時においても各車輪の大半はボディ104に隠れているが、各車輪がボディ104に完全収納されるとロボット100は移動不可能な状態となる。すなわち、車輪の収納動作にともなってボディ104が降下し、床面Fに着座する。この着座状態においては、ボディ104の底部に形成された平坦状の着座面108(接地底面)が床面Fに当接する。
【0023】
ロボット100は、2つの腕106を有する。腕106の先端に手があるが、モノを把持する機能はない。腕106は、後述するアクチュエータの駆動により、上げる、曲げる、手を振る、振動するなど簡単な動作が可能である。2つの腕106は、それぞれ個別に制御可能である。
【0024】
ロボット100の頭部正面には顔領域116が露出している。顔領域116には、2つの目110が設けられている。目110は、液晶素子または有機EL素子による画像表示が可能である。顔領域116の中央には、鼻109が設けられている。鼻109には、アナログスティックが設けられており、上下左右の全方向に加えて、押し込み方向も検出できる。また、ロボット100には複数のタッチセンサが設けられており、頭部、胴部、臀部、腕など、ロボット100のほぼ全域についてユーザのタッチを検出できる。ロボット100は、音源方向を特定可能なマイクロフォンアレイや超音波センサなど様々なセンサを搭載する。また、スピーカーを内蔵し、簡単な音声を発することもできる。
【0025】
ロボット100の頭部にはツノ112が取り付けられる。ツノ112には全天周カメラ113が取り付けられ、ロボット100の上部全域を一度に撮像可能である。ツノ112にはまた、サーモセンサ115(サーモカメラ)が内蔵されている。ツノ112には、緊急停止用のスイッチが設けられており、ユーザはツノ112を引き抜くことでロボット100を緊急停止できる。
【0026】
図3は、ロボット100の構造を概略的に表す断面図である。
ボディ104は、本体フレーム310、一対の腕106、一対のカバー312および外皮314を含む。本体フレーム310は、頭部フレーム316および胴部フレーム318を含む。頭部フレーム316は、中空半球状をなし、ロボット100の頭部骨格を形成する。胴部フレーム318は、角筒形状をなし、ロボット100の胴部骨格を形成する。胴部フレーム318の下端部が、ロアプレート334に固定されている。頭部フレーム316は、接続機構330を介して胴部フレーム318に接続されている。
【0027】
胴部フレーム318は、ボディ104の軸芯を構成する。胴部フレーム318は、ロアプレート334に左右一対のサイドプレート336を固定して構成され、一対の腕106および内部機構を支持する。胴部フレーム318の内方には、バッテリー118、制御回路342および各種アクチュエータ等が収容されている。ロアプレート334の底面が着座面108を形成する。
【0028】
胴部フレーム318は、その上部にアッパープレート332を有する。アッパープレート332には、有底円筒状の支持部319が固定されている。アッパープレート332、ロアプレート334、一対のサイドプレート336および支持部319が、胴部フレーム318を構成している。支持部319の外径は、左右のサイドプレート336の間隔よりも小さい。一対の腕106は、環状部材340と一体に組み付けられることでアームユニット350を構成している。環状部材340は円環状をなし、その中心線上を径方向に離隔するように一対の腕106が取り付けられている。環状部材340は、支持部319に同軸状に挿通され、一対のサイドプレート336の上端面に載置されている。アームユニット350は、胴部フレーム318により下方から支持されている。
【0029】
頭部フレーム316は、ヨー軸321、ピッチ軸322およびロール軸323を有する。頭部フレーム316のヨー軸321周りの回動(ヨーイング)により首振り動作が実現され、ピッチ軸322周りの回動(ピッチング)により頷き動作,見上げ動作および見下ろし動作が実現され、ロール軸323周りの回動(ローリング)により首を左右に傾げる動作が実現される。各軸は、接続機構330の駆動態様に応じて三次元空間における位置や角度が変化し得る。接続機構330は、リンク機構からなり、胴部フレーム318に設置された複数のモータにより駆動される。
【0030】
胴部フレーム318は、車輪駆動機構370を収容している。車輪駆動機構370は、前輪102および後輪103をそれぞれボディ104から出し入れする前輪駆動機構および後輪駆動機構を含む。前輪102および後輪103は、ロボット100を移動させる「移動機構」として機能する。前輪102は、その中心部にダイレクトドライブモータを有する。このため、左輪102aと右輪102bを個別に駆動できる。前輪102はホイールカバー105に回転可能に支持され、そのホイールカバー105が胴部フレーム318に回動可能に支持されている。
【0031】
一対のカバー312は、胴部フレーム318を左右から覆うように設けられ、ボディ104のアウトラインに丸みをもたせるよう、滑らかな曲面形状とされている。胴部フレーム318とカバー312との間に閉空間が形成され、その閉空間が前輪102の収容空間Sとなっている。後輪103は、胴部フレーム318の下部後方に設けられた収容空間に収容される。
【0032】
外皮314は、本体フレーム310および一対の腕106を外側から覆う。外皮314は、人が弾力を感じる程度の厚みを有し、ウレタンスポンジなどの伸縮性を有する素材で形成される。これにより、ユーザがロボット100を抱きしめると、適度な柔らかさを感じ、人がペットにするように自然なスキンシップをとることができる。外皮314は、カバー312を露出させる態様で本体フレーム310に装着されている。外皮314の上端部には、開口部390が設けられる。この開口部390がツノ112を挿通する。外皮314は、本体フレーム310に対して着脱可能である。
【0033】
本体フレーム310と外皮314との間にはタッチセンサが配設される。カバー312にはタッチセンサが埋設されている。これらのタッチセンサは、いずれも静電容量センサであり、ロボット100のほぼ全域におけるタッチを検出する。なお、タッチセンサを外皮314に埋設してもよいし、本体フレーム310の内側に配設してもよい。
【0034】
腕106は、第1関節352および第2関節354を有し、両関節の間に腕356、第2関節354の先に手358を有する。第1関節352は肩関節に対応し、第2関節354は手首関節に対応する。各関節にはモータが設けられ、腕356および手358をそれぞれ駆動する。腕106を駆動するための駆動機構は、これらのモータおよびその駆動回路344を含む。
【0035】
図4は、車輪収納機構の構造および動作を模式的に示す図である。
図4Aは側面図であり、
図4Bは正面図である。図中点線は車輪が収容空間Sから進出して走行可能な状態を示し、図中実線は車輪が収容空間Sに収納された状態を示す。
【0036】
車輪駆動機構370は、前輪駆動機構374および後輪駆動機構376を含む。前輪駆動機構374は、回動軸378およびアクチュエータ379を含む。回動軸378がホイールカバー105に連結されている。本実施形態では、アクチュエータ379としてモータが採用される。アクチュエータ379の駆動によりホイールカバー105を回動させることで、前輪102を収容空間Sから外部へ進退駆動できる。
【0037】
本実施形態では、左輪102aと右輪102bの進退駆動を個別に制御できる。すなわち、左輪102a用のアクチュエータ379aと、右輪102b用のアクチュエータ379bが設けられ、それぞれ独立に駆動できる。左輪102aのホイールカバー105が回動軸378aを介してアクチュエータ379aに接続され、右輪102bのホイールカバー105が回動軸378bを介してアクチュエータ379aに接続されている。なお、以下の説明において、回動軸378a,378bを特に区別しないときには「回動軸378」と称し、アクチュエータ379a,379bを特に区別しないときには「アクチュエータ379」と称す。
【0038】
後輪駆動機構376は、回動軸404およびアクチュエータ406を含む。回動軸404は、前輪駆動機構374の回動軸378と平行に設けられ、その軸線周りに後輪103を回動可能に支持する。後輪103はキャスターであり、主軸407(旋回軸)と車軸408を有する。主軸407から二股のアーム410が延び、それらのアーム410の先端に車軸408が設けられている。車軸408に車輪が回転自在に支持されている。主軸407の上端が回動軸404の中央に接続され、自軸周りに回動自在に支持されている。車軸408は主軸407の軸線上にはなく、オフセットされている。主軸407は、後輪103の向き(進行方向)を任意に変化させる。アクチュエータ406の駆動により回動軸404が回動し、後部収容空間から外部へ後輪103を進退駆動できる。
【0039】
車輪収納時には、アクチュエータ379,406が一方向に駆動される。このとき、ホイールカバー105が回動軸378を中心に回動し、前輪102が床面Fから上昇する。また、アーム410が回動軸404を中心に回動し、後輪103が床面Fから上昇する(一点鎖線矢印参照)。それにより、ボディ104が降下して着座面108が床面Fに接地し(実線矢印参照)、ロボット100がお座りした状態が実現される。アクチュエータ379,406を反対方向に駆動することにより、各車輪を進出させ、ロボット100を立ち上がらせることができる。
【0040】
なお、後輪103の外側には尻尾を模した後部カバー107が設けられており、後輪103の進退と連動してボディ104の後部下開口部を開閉する。すなわち、後輪103を進出させるときには後部カバー107が開動作し、後輪103を収納するときには後部カバー107が閉動作する。
【0041】
図5は、ロボット100のハードウェア構成図である。
ロボット100は、内部センサ128、通信機126、記憶装置124、プロセッサ122、駆動機構120およびバッテリー118を含む。駆動機構120は、上述した接続機構330および車輪駆動機構370を含む。プロセッサ122と記憶装置124は、制御回路342に含まれる。各ユニットは電源線130および信号線132により互いに接続される。バッテリー118は、電源線130を介して各ユニットに電力を供給する。各ユニットは信号線132により制御信号を送受する。バッテリー118は、リチウムイオン二次電池であり、ロボット100の動力源である。
【0042】
内部センサ128は、ロボット100が内蔵する各種センサの集合体である。具体的には、カメラ、マイクロフォンアレイ、測距センサ(赤外線センサ)、サーモセンサ、タッチセンサ、加速度センサ、気圧センサ、ニオイセンサなどである。タッチセンサは、ボディ104の大部分の領域に対応し、静電容量の変化に基づいてユーザのタッチを検出する。ニオイセンサは、匂いの元となる分子の吸着によって電気抵抗が変化する原理を応用した既知のセンサである。
【0043】
通信機126は、各種の外部機器を対象として無線通信を行う通信モジュールである。記憶装置124は、不揮発性メモリおよび揮発性メモリにより構成され、コンピュータプログラムや各種設定情報を記憶する。プロセッサ122は、コンピュータプログラムの実行手段である。駆動機構120は、複数のアクチュエータを含む。このほか、表示器やスピーカーなども搭載される。
【0044】
駆動機構120は、主として、車輪と頭部を制御する。駆動機構120は、ロボット100の移動方向や移動速度を変化させるほか、車輪を昇降させることもできる。車輪が上昇すると、車輪はボディ104に完全に収納され、ロボット100は着座面108にて床面Fに当接し、着座状態となる。また、駆動機構120は、腕106を制御する。
【0045】
図6は、ロボットシステム300の機能ブロック図である。
ロボットシステム300は、ロボット100、サーバ200および複数の外部センサ114を含む。ロボット100およびサーバ200の各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサなどの演算器、メモリやストレージといった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。コンピュータプログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。ロボット100の機能の一部はサーバ200により実現されてもよいし、サーバ200の機能の一部または全部はロボット100により実現されてもよい。
【0046】
家屋内にはあらかじめ複数の外部センサ114が設置される。サーバ200は、外部センサ114を管理し、必要に応じてロボット100に外部センサ114により取得された検出値を提供する。ロボット100は、内部センサ128および複数の外部センサ114から得られる情報に基づいて、基本行動を決定する。外部センサ114はロボット100の感覚器を補強するためのものであり、サーバ200はロボット100の処理能力を補強するためのものである。ロボット100の通信機126がサーバ200と定期的に通信し、サーバ200が外部センサ114によりロボット100の位置を特定する処理を担ってもよい(特許文献2も参照)。
【0047】
(サーバ200)
サーバ200は、通信部204、データ処理部202およびデータ格納部206を含む。通信部204は、外部センサ114およびロボット100との通信処理を担当する。データ格納部206は各種データを格納する。データ処理部202は、通信部204により取得されたデータおよびデータ格納部206に格納されるデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部202は、通信部204およびデータ格納部206のインタフェースとしても機能する。
【0048】
データ格納部206は、モーション格納部232と個人データ格納部218を含む。ロボット100は、複数の動作パターン(モーション)を有する。腕106を震わせる、蛇行しながらオーナーに近づく、首をかしげたままオーナーを見つめる、など様々なモーションが定義される。
【0049】
モーション格納部232は、モーションの制御内容を定義する「モーションファイル」を格納する。各モーションは、モーションIDにより識別される。モーションファイルは、ロボット100のモーション格納部160にもダウンロードされる。どのモーションを実行するかは、サーバ200で決定されることもあるし、ロボット100で決定されることもある。ロボット100のモーションの多くは、複数の単位モーションを含む複合モーションとして構成される。
【0050】
個人データ格納部218は、ユーザの情報を格納する。具体的には、ユーザに対する親密度とユーザの身体的特徴・行動的特徴を示すマスタ情報を格納する。年齢や性別などの他の属性情報を格納してもよい。
【0051】
ロボット100は、ユーザごとに親密度という内部パラメータを有する。ロボット100が、自分を抱き上げる、声をかけてくれるなど、自分に対して好意を示す行動を認識したとき、そのユーザに対する親密度が高くなる。ロボット100に関わらないユーザや、乱暴を働くユーザ、出会う頻度が低いユーザに対する親密度は低くなる。
【0052】
データ処理部202は、位置管理部208、認識部212、動作制御部222、親密度管理部220および状態管理部244を含む。位置管理部208は、ロボット100の位置座標を特定する。状態管理部244は、充電率や内部温度、プロセッサ122の処理負荷などの各種物理状態など各種内部パラメータを管理する。また、状態管理部244は、ロボット100の感情(寂しさ、好奇心、承認欲求など)を示す様々な感情パラメータを管理する。
【0053】
認識部212は、外部環境を認識する。外部環境の認識には、温度や湿度に基づく天候や季節の認識、光量や温度に基づく物陰(安全地帯)の認識など多様な認識が含まれる。ロボット100の認識部156は、内部センサ128により各種の環境情報を取得し、これを一次処理した上でサーバ200の認識部212に転送する。
【0054】
認識部212は、ロボット100の内蔵カメラによる撮像画像から抽出された特徴ベクトルと、個人データ格納部218にあらかじめ登録されているユーザ(クラスタ)の特徴ベクトルと比較することにより、撮像されたユーザがどの人物に該当するかを判定する(ユーザ識別処理)。また、認識部212は、ユーザの表情を画像認識することにより、ユーザの感情を推定する。認識部212は、人物以外の移動物体、例えばペットである猫や犬についてもユーザ識別処理を行う。
【0055】
認識部212は、ロボット100になされた様々な応対行為を認識し、快・不快行為に分類する。認識部212は、また、ロボット100の行動に対するオーナーの応対行為を認識することにより、肯定・否定反応に分類する。快・不快行為は、ユーザの応対行為が、生物として心地よいものであるか不快なものであるかにより判別される。
【0056】
動作制御部222は、ロボット100の動作制御部150と協働して、ロボット100のモーションを決定する。動作制御部222は、ロボット100の移動目標地点とそのための移動ルートを作成する。動作制御部222は、複数の移動ルートを作成し、その上で、いずれかの移動ルートを選択してもよい。動作制御部222は、モーション格納部232の複数のモーションからロボット100のモーションを選択する。
【0057】
親密度管理部220は、ユーザごとの親密度を管理する。親密度は個人データ格納部218において個人データの一部として登録される。快行為を検出したとき、親密度管理部220はそのオーナーに対する親密度をアップさせる。不快行為を検出したときには親密度はダウンする。また、長期間視認していないオーナーの親密度は徐々に低下する。
【0058】
(ロボット100)
ロボット100は、通信部142、データ処理部136、データ格納部148、内部センサ128および駆動機構120を含む。通信部142は、通信機126(
図5参照)に該当し、外部センサ114、サーバ200および他のロボット100との通信処理を担当する。データ格納部148は各種データを格納する。データ格納部148は、記憶装置124(
図5参照)に該当する。データ処理部136は、通信部142により取得されたデータおよびデータ格納部148に格納されているデータに基づいて各種処理を実行する。データ処理部136は、プロセッサ122およびプロセッサ122により実行されるコンピュータプログラムに該当する。データ処理部136は、通信部142、内部センサ128、駆動機構120およびデータ格納部148のインタフェースとしても機能する。
【0059】
データ格納部148は、ロボット100の各種モーションを定義するモーション格納部160を含む。モーション格納部160には、サーバ200のモーション格納部232から各種モーションファイルがダウンロードされる。モーションは、モーションIDによって識別される。車輪を収容して着座する、腕106を持ち上げる、2つの前輪102を逆回転させることで、あるいは、片方の前輪102だけを回転させることでロボット100を回転行動させる、車輪を収納した状態で前輪102を回転させることで震える、ユーザから離れるときにいったん停止して振り返る、などの様々なモーションを表現するために、各種アクチュエータ(駆動機構120)の動作タイミング、動作時間、動作方向などがモーションファイルにおいて時系列定義される。データ格納部148には、個人データ格納部218からも各種データがダウンロードされてもよい。
【0060】
データ処理部136は、認識部156および動作制御部150を含む。認識部156は、内部センサ128から得られた外部情報を解釈する。認識部156は、視覚的な認識(視覚部)、匂いの認識(嗅覚部)、音の認識(聴覚部)、触覚的な認識(触覚部)が可能である。
【0061】
認識部156は、画像から移動物体、特に、人物や動物に対応する画像領域を抽出し、抽出した画像領域から移動物体の身体的特徴や行動的特徴を示す特徴量の集合として「特徴ベクトル」を抽出する。特徴ベクトル成分(特徴量)は、各種身体的・行動的特徴を定量化した数値である。例えば、人間の目の横幅は0~1の範囲で数値化され、1つの特徴ベクトル成分を形成する。人物の撮像画像から特徴ベクトルを抽出する手法については、既知の顔認識技術の応用である。移動物体を検出したときには、ニオイセンサや内蔵の集音マイク、サーモセンサ等からも身体的特徴や行動的特徴が抽出される。これらの特徴も定量化され、特徴ベクトル成分となる。認識部156は、特許文献2等に記載の既知の技術に基づいて、特徴ベクトルからユーザを特定する。ロボット100は、特徴ベクトルをサーバ200に送信する。
【0062】
検出・分析・判定を含む一連の認識処理のうち、認識部156は認識に必要な情報の取捨選択や抽出を行い、判定等の解釈処理はサーバ200の認識部212により実行される。認識処理は、サーバ200の認識部212だけで行ってもよいし、ロボット100の認識部156だけで行ってもよいし、上述のように双方が役割分担をしながら上記認識処理を実行してもよい。ロボット100は内部センサ128によりユーザの行為を物理的情報として取得し、サーバ200の認識部212は快・不快を判定する。また、サーバ200の認識部212は特徴ベクトルに基づくユーザ識別処理を実行する。
【0063】
サーバ200の認識部212は、ロボット100に対するユーザの各種応対を認識する。各種応対行為のうち一部の典型的な応対行為には、快または不快、肯定または否定が対応づけられる。一般的には快行為となる応対行為のほとんどは肯定反応であり、不快行為となる応対行為のほとんどは否定反応となる。快・不快行為は親密度に関連し、肯定・否定反応はロボット100の行動選択に影響する。
【0064】
認識部156により認識された応対行為に応じて、サーバ200の親密度管理部220はユーザに対する親密度を変化させる。原則的には、快行為を行ったユーザに対する親密度は高まり、不快行為を行ったユーザに対する親密度は低下する。
【0065】
動作制御部150は、サーバ200の動作制御部222と協働してロボット100のモーションを決める。一部のモーションについてはサーバ200で決定し、他のモーションについてはロボット100で決定してもよい。また、ロボット100がモーションを決定するが、ロボット100の処理負荷が高いときにはサーバ200がモーションを決定するとしてもよい。サーバ200においてベースとなるモーションを決定し、ロボット100において追加のモーションを決定してもよい。モーションの決定処理をサーバ200およびロボット100においてどのように分担するかはロボットシステム300の仕様に応じて設計すればよい。
【0066】
動作制御部150は、選択したモーションを駆動機構120に実行指示する。駆動機構120は、モーションファイルにしたがって、各アクチュエータを制御する。
【0067】
動作制御部150は、親密度の高いユーザが近くにいるときには「抱っこ」をせがむ仕草として両方の腕106をもちあげるモーションを実行することもできるし、「抱っこ」に飽きたときには左右の前輪102を収容したまま逆回転と停止を交互に繰り返すことで抱っこをいやがるモーションを表現することもできる。駆動機構120は、動作制御部150の指示にしたがって前輪102や腕106、頭部(頭部フレーム316)を駆動することで、ロボット100に様々なモーションを表現させる。
【0068】
次に、以上の基本構成を前提として、本実施形態におけるロボット100の実装について説明する。以下では特に、基本構成との相違点を中心に説明する。
図7は、ロボット100の外観を表す図である。
図7Aは右側面図、
図7Bは正面図、
図7Cは背面図である。なお、ロボット100の外観は、ほぼ左右対称となっている。ロボット100のフレーム(本体フレーム310:
図3参照)は、外皮314の内側に設けられる骨格構造であり、外皮314と密着してロボット100の外観を形成する部分を含む。
【0069】
ロボット100における胴部フレーム318の後部下方には、後輪103を収容するための収容口377が設けられている。収容口377の左右に一対の充電端子510が突設されている。充電端子510は、段付円柱状をなし、図示しない充電ステーションの給電端子に接続されることで電力を受ける。充電端子510の基端は、胴部フレーム318の内部に位置し、配線を介して充電回路ひいてはバッテリー118に接続されている。充電端子510の先端が円板状に拡径され、ボタン態様をなしている。
【0070】
外皮314は、外皮本体420と弾性装着部422とを縫い合わせて構成されている。外皮本体420と弾性装着部422とは一体に構成されてもよい。外皮本体420および弾性装着部422は、いずれもフレームよりも柔軟な素材からなる。外皮本体420は、伸縮性を有する基材520と、その基材520を収容する布袋522を含む。基材520は、ウレタンスポンジ(多孔質材料)などの伸縮性を有する素材からなる。基材520は断熱材を含む。布袋522は、ポリエステルなどの滑らかな手触りであり、伸縮性を有する布材を袋状に縫製したものである。外皮本体420は、頭部フレーム316に被せられる袋状部424と、袋状部424の左右側面から下方に延びる一対の手部426と、袋状部424の正面から下方に延びる前延在部428と、袋状部424の背面から下方に延びる後延在部430とを含む。袋状部424の前面側に、顔領域116を露出させるための開口部432が設けられている。なお、外皮314の素材としては、このように柔軟で伸縮性のあるものが好ましいが、少なくとも可撓性を有するものであればよい。
【0071】
弾性装着部422は、外皮314の底部を構成し、外皮本体420の前延在部428,後延在部430を下方で連結している。弾性装着部422には、収容口377と対応する位置に開口部434が設けられている。弾性装着部422の後部下方には一対の孔436が形成されている。孔436は、ボタン穴のような小幅形状の孔であるが、弾性装着部422が柔軟であるため、幅方向に押し広げることができる。これらの孔436に、一対の充電端子510が挿通される。孔436の長手方向の長さは、充電端子510の先端部(拡径部)の径よりも長く形成され、孔436の短手方向の長さは、充電端子510の先端部の径よりも短い。充電端子510の孔436への挿通後、孔436は弾性力により元の小幅形状に戻る。それにより、充電端子510の頭部が孔436の周辺に引っ掛かり、外皮314がフレームに対してずれることを防止できる。すなわち、充電端子510は、充電のための端子であるとともに、外皮314のずれを防止または軽減するための部材でもある。
【0072】
なお、基材520は、所定の温度閾値以上の温度となると自己消化性ガスを放出する難燃性材料(例えば難燃性スポンジ)を含んで構成される。すなわち、外皮本体420は、難燃性の基材520を布袋522で包み込むように形成されるため、布袋522が所定の温度以上となったとしても、基材520から自己消火性ガスが放出され、布袋522の発火又は延焼を防止できる。基材520が自己消火性ガスを発生させるときの閾値温度は、布袋522の布材の着火温度よりも低いことが好ましい。その場合、布袋522の布材の温度が上昇しても、布袋522の布材に着火する前に自己消火性ガスが発生するため、布袋522の発火を防止できる。外皮本体420が難燃性の基材520とその外側に温暖な空気を保持する布袋522で構成されることにより、ロボット100に触れたときの温かみと、高温に対する安全性を両立できる。
【0073】
外皮本体420は、背面側に温かい空気を流出させるための通気構造を有する(
図7CのA部)。この通気構造は、基材520の所定領域に複数の連通孔524を配列した多孔構造を含む。
【0074】
【0075】
図8Aおよび
図8Bに示すように、基材520の所定領域には連通孔524が縦横に配設され、多孔構造を形成している。連通孔524は円孔からなり、布袋522の気孔よりも十分に大きい。この多孔構造は、基材520において部分的に布袋522の通気抵抗よりも低い通気抵抗を有し、本発明の「低通気抵抗領域」及び「低通過抵抗領域」として機能する。なお、低通気抵抗領域は、図示の連通孔524の形状、大きさ、配置等によるものに限られず、布袋522よりも通気抵抗が低いものであれば適宜選択できる。
【0076】
図8Bおよび
図8Cに示すように、布袋522の内側面において低通気抵抗領域に対応する位置に開口部526が設けられ、その開口部526を覆うように継布530が縫い付けられている。継布530はメッシュ生地を有し、そのメッシュサイズは連通孔524よりも小さく、布袋522の気孔よりも十分に大きい。継布530は、基材520を内側から保護するとともに、低通気抵抗領域の通気性を確保する。このように継布530が布袋522に縫い付けられることで、開口部526の変形が防止又は抑制され、外皮314の形状が維持される。
【0077】
図9は、ロボット100の構造を表す断面図である。
ロボット100において、本体フレーム310がフレーム500(
図1参照)として機能する。ロボット100は、頭部フレーム316と胴部フレーム318との間に空間504を有する。外皮314は、内方にその空間504を形成するように本体フレーム310を覆っている。すなわち、外皮314の内側面が空間504に対して露出する。
【0078】
腕106の基端付近において環状の内皮315が外皮314と一体に設けられている。内皮315は、外皮314の構成要素である布袋522よりも伸縮性の高い布材からなり、ロボット100の脇位置に沿って布袋522に縫い付けられている。胴部フレーム318とカバー312との間に形成される環状溝317に内皮315の下端周縁部が嵌合し、固定されている。具体的には、内皮315の下端開口部に沿って紐通し部が縫製されている。この紐通し部に図示略の紐が挿通され、その紐が緊縮状態となることにより、内皮315の下端開口部が絞られ、内皮315の下端開口部が環状溝317に固定される。内皮315は、ロボット100が腕106を上げると伸長し、腕106を下げると縮小するが、その下端部の固定状態は維持される。このため、腕106の動作にかかわらず、温められた空気が内皮315の下端開口部から流出することが回避される。
【0079】
なお、内皮315にかぎらず、外皮314のうち可動域にかかる部分は、可動性を確保するため、外皮314の他の部分よりも薄手に構成されることが好ましい。しかし、薄手に構成されると、その部分を触った時の感触が他の部分よりも固くなりがちであったり、他の部分よりも薄手部分から熱が放出されやすくなったりしうる。これらのようなことを回避するため、外皮314のうち可動域にかかる部分は、他の部分よりも弾性が高く、かつ、他の部分よりも断熱性が高い材料で構成されることが好ましい。
【0080】
アッパープレート332の中央には、胴部フレーム318の内方と支持部319の内方とを連通させる連通孔540が設けられている。支持部319の底部中央には、支持部319の内方と空間504とを連通させる連通孔542が設けられている。胴部フレーム318の左右側部には通気孔544が設けられ、各通気孔544には防塵用のフィルタが取り付けられている。そのフィルタのメッシュサイズは通気を損なわずに防塵機能を発揮できる程度に設定されている。連通孔540の直下にはファン550が配設されている。
【0081】
ロボット100の作動中はファン550が駆動され、通気による冷却が行われる。すなわち、ファン550の駆動により、胴部フレーム318内に外気が取り込まれる。外気は、
図7に示されるスリット313を介してカバー312内に導入され、さらに通気孔544を介して胴部フレーム318内に導入される(二点鎖線矢印参照)。それにより、胴部フレーム318に配置されたバッテリー118、制御回路342、各アクチュエータ等の発熱部品である電気部品が冷却される。ファン550は、その冷却による熱交換で温められた空気を温風として上方へ送出する。この空気は、連通孔540,542を通って空間504へ排出される。すなわち、通気孔544は「吸気口」として機能し、連通孔540,542は「排気口」として機能する。
【0082】
一方、頭部フレーム316の内部には複数の制御回路基板532が配置され、発熱の要因となっている。そこで、頭頂部に吸気口、下部に排気口を設け、それらをつなぐ通路に吸気ファン552、排気ファン554を設けることで、外気による冷却が行われる(二点鎖線矢印参照)。
【0083】
図10は、ロボット100の通気構造の詳細を表す断面図である。
図10Aは、ロボット100の上半部を側方からみた断面図である。
図10Bおよび
図10Cは、
図10AのC部拡大図であり、低通気抵抗領域を示す。
図10Bはファンが停止された状態を示し、
図10Cはファンが駆動された状態を示す。
【0084】
図10Aに示すように、頭部フレーム316の頂部にはガイド560が設けられている。ガイド560は段付円筒状をなし、その外周面に外皮314の開口部390が嵌合している。ガイド560は、ツノ112を支持する一方、外皮314を固定する際の位置決めに用いられる。ガイド560は、可撓性を有する樹脂材からなり、頭部フレーム316にツノ112を組み付けた際にシール機能も発揮する。
【0085】
ガイド560の内側に環状の吸気口562が設けられ、頭部フレーム316の下部に排気口564が設けられている。吸気口562の入口には、防塵用のフィルタ568が設けられている。フィルタ568のメッシュサイズは通気を損なわずに防塵機能を発揮できる程度に設定されている。頭部フレーム316内の上部に隔壁570が設けられ、その上方の外気導入室572と下方の収容室574とが画定されている。収容室574に制御回路基板532等の電気部品が収容されている。
【0086】
隔壁570の前半部に段差576が設けられ、その段差576の後方が一段低くなって排水用の溝(排水溝578)を形成している。一方、段差576の上面に通気用の開口部580が設けられている。頭部フレーム316の後方には、排出口582が設けられている。排出口582は、外気導入室572に連通する。外部から吸気口562を介して外気導入室572に水分が侵入したとしても、排水溝578および排出口582を介して外部に排出可能となっている。
【0087】
段差576の内方における開口部580の直下に吸気ファン552が配設されている。ガイド560の下端開口部(吸気口562)が、段差576から後方にずれるように位置する。このため、仮に外部からガイド560を伝って水分が侵入したとしても、開口部580には導かれず、段差576の後方に滴下される。すなわち、水分が収容室574に侵入することが防止される。
【0088】
頭部フレーム316における排気口564の直上には排気ファン554が配設されている。これにより、吸気ファン552と排気ファン554との間に通気通路が形成される。その通気通路に制御回路基板532が位置する。
【0089】
ロボット100の作動中はファン552,554が駆動され、通気による冷却が行われる。すなわち、吸気口562から外気導入室572に導入された外気は、開口部580を介して収容室574に導入され、制御回路基板532等の発熱部品(電気部品)を冷却する。排気ファン554は、その冷却による熱交換で温められた空気を温風として下方へ送出する。この空気は、排気口564を通って空間504へ排出される。
【0090】
以上のように、頭部フレーム316および胴部フレーム318のそれぞれにおいて通気による発熱部品の冷却が行われるところ、ロボット100は、その熱交換で温められた空気を利用して体表面を適度に温める。
【0091】
すなわち、温められた空気が空間504へ継続的に導入されることで、空間504の圧力(「内圧」ともいう)が高められる。その結果、内圧と大気圧との差圧が大きくなり(内圧が適度な正圧となり)、温められた空気が体表面に向けて押し出される。このとき、基材520の外面に密着していた布袋522の外布522aが押し広げられる(
図10B,
図10C)。内布522bは基材520の内面に密着した状態を保つ。なお、本実施形態では、外布522aが「表皮」として機能する。排気口564および連通孔540,542が「開口」として機能する。排気ファン554が「第1のファン」として機能し、ファン550が「第2のファン」として機能する。これらのファンが「加圧部」として機能する。
【0092】
温められた空気は、低通気抵抗領域において継布530および連通孔524を通過する。その空気の一部は外布522aの繊維を通り抜けて大気へと排出されるが(点線矢印参照)、外布522aの通気抵抗によってその排出は抑制される。すなわち、空気の多くは基材520と外布522aとの間隙に流れ込み、空気層506を形成する(二点鎖線矢印参照)。空気層506は、外皮本体420の外表面のほぼ全体にわたり、ロボット100の体表面を適度に温める。ファンが駆動されている間、空気層506の空気は流動するので、空気層506に接する外布522aが温められ、その体表面の温度を安定に維持する。基材520が断熱性を有することが、体表面のほぼ全体に温かい空気を行きわたらせ易くし、また、その空気により形成される空気層506の温度を維持し易くしている。すなわち、ロボット100の体表面において、内部の熱源の周辺のみが局所的に温まる状況を回避し、体表面の温度をほぼ一様にできる。なお、空気層506の厚みが基材520の厚みよりも小さくなるよう布袋522の寸法や材質(弾性)が設定されている。このため、ファンの駆動により布袋522が膨らんだとしても、外皮314としての触感を維持できる。
【0093】
以上、実施形態に基づいてロボット100について説明した。本実施形態によれば、発熱部品の冷却という不可欠な機能を利用して、ロボットの体表面を効率良く温めることができる。それにより、ロボットでありながら、ユーザに生命の温もりを感じさせることができる。フレーム間に形成される特定の空間に温風を合流させることで、その空間の圧力(ロボットの内圧)が高められ、温められた空気が外皮へ向けて押し出される。一方、外皮の内側(低通気抵抗領域)と外側(表皮)の通気抵抗に差をもたせることで、フレームと表皮との間に流出した空気により温かい空気層が形成される。すなわち、通気抵抗のバランスに着目することで、ロボットに温もりをもたせる構造を簡易に実現できる。
【0094】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成してもよい。また、上記実施形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。
【0095】
上記実施形態では、頭部フレーム316と胴部フレーム318との間に空間504を形成し、双方のフレーム内から空間504へ温かい空気を排出させる構成を例示した。変形例においては、頭部フレーム316および胴部フレーム318の一方からのみ、空間504へ空気を排出させてもよい。例えば、内蔵する発熱部品による発熱量が多いほうのフレームからのみ当該空間へ空気を排出させてもよい。あるいは逆に、内蔵する発熱部品による発熱量が少ないほうのフレームからのみ当該空間へ空気を排出させてもよい。発熱量が多いほうのフレームについては冷却を優先し、熱交換後の空気を外部に積極的に排出させるようにしてもよい。
【0096】
上記実施形態では、頭部フレーム316と胴部フレーム318との間に空間504を形成し、温風を合流させる構成を例示した。腕部フレームがある場合には、腕部フレームと胴部フレームとの間の空間を表皮にて覆い、熱交換後の温かい空気を腕部フレームと胴部フレームとの間の空間に導入してもよい。すなわち、ロボットにおいて温風を合流させる領域は適宜選択できる。ロボットが、第1部位の骨格を形成する第1フレームと、第2部位の骨格を形成する第2フレームを備え、第1フレームと第2フレームとの間の空間へ温かい空気が合流するように構成されている。この空間の空気が加圧されることで、この空間の空気が各フレームと表皮との間に流出し、各フレームと表皮との間に空気層が形成される。外皮を基材と表皮で構成する場合、その空間に露出する部分には低通気抵抗領域が設けられる。
【0097】
上記実施形態では、「熱源」として本体フレーム310に収容された回路基板やアクチュエータ等、ロボット100の駆動に関わる電気部品(発熱部品)を例示した。変形例においては、例えば電熱線等、空気を温めるための発熱体を別途用意して「熱源」としてもよい。上記実施形態では、頭部フレーム316および胴部フレーム318のそれぞれの内部(各フレーム内)に熱源を配置したが、頭部フレーム316と胴部フレーム318との間の空間504(フレーム間の空間)に熱源を配置してもよい。
【0098】
上記実施形態では、各フレームに外気を取り入れ、熱源を経由した空気をフレーム間の空間に集めて加圧する構成を例示した。つまり、フレーム間の空間を「フレームにより囲まれる空間」とし、加圧領域とする構成を例示した。変形例においては、フレームの内部空間を「フレームにより囲まれる空間」としてもよい。例えば、フレームの側壁に開口を設けて外皮(表皮)をフレーム内に露出させ、そのフレーム内を加圧領域としてもよい。その場合、フレームの内圧が高くなるため、吸気口を設けても外気を導入できない可能性がある。そこで、ガスボンベ等の高圧の気体を貯蔵する容器を用いて加圧を行う加圧装置(加圧部)をフレーム内に配置し、加圧を行ってもよい。すなわち、ガスボンベから一定の流量でガスを放出することにより、フレーム内を加圧する。開口に露出した外皮の部分を低通気抵抗領域とすることにより、フレームと表皮との間に温かい空気層を形成できる。このような構成を採用すれば、外気を取り入れるための開口部が不要になる。
【0099】
上記実施形態では、各フレーム内に熱源があり、その熱源で加熱された流体をフレーム間の空間に導出し、その空間を加圧する構成を例示した。変形例においては、そのフレーム間の空間に熱源を設け、その空間を加圧してもよい。すなわち、各フレーム内に熱源があることを前提としなくてもよい。
【0100】
上記実施形態では、基材を単一素材からなる布袋に収容して外皮を構成し、外布を「表皮」として機能させる例を示した。変形例においては、外布と内布を互いに異なる素材からなるものとし、両者を一体に有する布袋を構成してもよい。その場合、内布をメッシュ生地とするなど、外布よりも通気性の高い素材からなるものとしてもよい。それにより、上記実施形態のように継布を縫い付ける必要がなくなる。あるいは、外布と内布とが縫い付けられるのではなく、基材の外面に外布が、内面に内布がそれぞれ貼着されたものでもよい。ユーザが基材の内面に触れる頻度が少ない場合や、基材が耐摩耗性に優れる場合には、内布を省略してもよい。あるいは、基材をなくし、一または複数の表皮にてフレームを覆う構成としてもよい。その場合、表皮は布材からなるものとしてもよい。その場合、コストの低減にはつながる。
【0101】
上記実施形態では、基材の低通気抵抗領域に設ける連通孔を円孔とする例を示したが、連通孔の形状はこれに限られない。連通孔の断面形状は、多角形状であってもよいし、Y字状、V字形状、X字状など種々の形状であってもよい。ただし、連通孔の断面形状は、ロボット100の作動時に基材が変形することで局所的な応力集中が生じ難い形状とするのが好ましい。
【0102】
上記実施形態では、温められた空気の大気への排出を、外布522aそのものの通気構造(繊維の隙間)に依存する態様を例示した。このような態様では、通気抵抗が過大になると、温められた空気がロボット100に滞留し、本来の機能である発熱部品の冷却を阻害する可能性がある。また、ロボット100の温もりを伝えるという目的を超えて高温となり、ユーザに不快感すら与える可能性もある。そこで、外布522aの通気抵抗は、内圧と大気圧との差圧、空気層を形成する空気の流動抵抗、外気温度等に応じた抵抗であることが好ましい。言い換えれば、適切な通気抵抗が得られる材質で外布522aが構成されることが好ましい。この通気抵抗により空気層の温度が所定の温度(例えば30℃~40℃)となるように材質が選定されるとよい。外布(表皮)の材質又はその通気抵抗に応じて、外気温度等に応じて空気層の温度が所定の温度(例えば30℃~40℃)となるよう、ファンの駆動負荷(回転数)を制御してもよい。
【0103】
空気を外部に漏洩させる排出構造として、このように外布(表皮)の通気性能のみに依存する構造ではなく、さらに排気口を設けてもよい。例えば、外皮の空気層を形成する領域において所定の位置(例えば、低通気抵抗領域から離隔した端部)に排気口を設けてもよい。排気口をオリフィスとし、少なくともファンの駆動中に空気層を確保できる程度の排出抵抗(圧力損失)が得られるものとしてもよい。あるいは、排出口を開閉する弁を設けてもよい。空気層の圧力が設定圧力を超えたときに開弁する開閉弁とすることにより、内圧の上昇ひいてはフレーム内の温度上昇を抑制できる。
【0104】
上記実施形態では、ロボット100の表皮を布材とする例を示した。変形例においては、例えばビニール等の柔らかい樹脂材にて表皮が形成されてもよい。このような構成としてもフレームと表皮との間に空気層を形成できる。その場合、表皮において適度な通気抵抗が得られるよう、樹脂材の表面に通気孔(小孔)が設けられてもよい。あるいは、樹脂材の所定箇所(端部等)に排出口が形成されてもよい。
【0105】
上記実施形態では述べなかったが、表皮が伸縮性を有し、伸びた際に通気抵抗が低減するものであってもよい。具体的には、加圧部により内圧が高まることで外布が膨らみ、その外布の繊維の隙間(気孔)が適度に広がるよう素材の選定を行ってもよい。
【0106】
上記実施形態では述べなかったが、加圧部の作動による外気の吸気量が、表皮から漏洩される空気の排出量よりも多くなるよう構成してもよい。
【0107】
上記実施形態では、上記空気層の形成による外表面の保温構造をロボットにおいて具現化した例を示したが、ユーザが触れることで温もりを感じるものであればロボットに限らず適用できる。例えば、玩具やぬいぐるみ、携帯カイロやコタツ、布団といったもの(以下「保温装置」と総称する)への適用も可能である。このような保温装置は、以下のように表現することができる。
【0108】
この保温装置は、本体と、前記本体を覆う表皮と、前記本体に設けられた開口と、前記本体内の空気を加熱する熱源と、前記本体により囲まれる空間を加圧することで、前記開口から流出した空気により前記本体と前記表皮との間に空気層を形成する加圧部と、を備える。この態様によれば、保温装置に適度な温もりをもたせることができ、ユーザに心地よさを提供できる。
【0109】
また、保温のために熱交換を経て流動させる媒体として、空気以外の気体や水その他の流体を用いてもよい。この保温装置は、本体と、前記本体を覆う表皮と、前記本体に設けられた開口と、前記本体内の流体を加熱する熱源と、前記本体により囲まれる空間を加圧することで、前記開口から流出した流体により前記本体と前記表皮との間に保温媒体層(流体層)を形成する加圧部と、を備える。袋状部材に基材を収容して外皮を形成する場合、基材よりも外側部分が表皮を構成する。袋状部材における基材よりも内側部分には、外側部分よりも流体の通過抵抗が低い低通過抵抗領域が設けられる。
【0110】
なお、「通過抵抗」は、部材が有する孔(繊維の隙間等による小孔であってもよい)を流体が通過する際に受ける抵抗を意味し、流体が空気である場合には通気抵抗を意味する。すなわち、「通過抵抗」は、通気抵抗、流動抵抗、流通抵抗などの概念を含みうる。「低通過抵抗領域」は、低通気抵抗領域、低流動抵抗領域、低流通抵抗領域などの概念を含みうる。通過抵抗が小さいほど、流体が通過する際の圧力損失も小さくなる。
【0111】
この出願は、2019年2月19日に出願された日本出願特願2019-27070号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。