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特許7537761身体の組織又は器官の中間層へ物質を注入するためのデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】身体の組織又は器官の中間層へ物質を注入するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A61F9/007 170
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021506783
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 IL2019050451
(87)【国際公開番号】W WO2019202603
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-01-05
(31)【優先権主張番号】62/659,831
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520408294
【氏名又は名称】イブラズ・セラピー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】シェル,イファット
(72)【発明者】
【氏名】ローテンストライヒ,イガル
(72)【発明者】
【氏名】レウコニャ,ガッド
(72)【発明者】
【氏名】デイリー,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ラディ,リオル
(72)【発明者】
【氏名】ドロリ,ハゲイ
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525429(JP,A)
【文献】国際公開第2016/196841(WO,A1)
【文献】特表2017-520301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/157336(US,A1)
【文献】米国特許第6629956(US,B1)
【文献】米国特許第5540662(US,A)
【文献】米国特許第6544239(US,B2)
【文献】登録実用新案第3120743(JP,U)
【文献】特表2015-501179(JP,A)
【文献】国際公開第93/05719(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針近位端と針遠位端の間を延びる針ルーメンを備える針であって、前記針遠位端は鋭利な針遠位先端に終端するサイズ遷移部分を含んでいる、針と、
セパレータ遠位先端を有する細長い組織セパレータであって、当該組織セパレータの少なくとも一部分は前記針ルーメン内でシフト可能である、組織セパレータと、
前記組織セパレータを前記針ルーメン内で、前記セパレータ遠位先端が前記針遠位先端より近位に固定的に位置決めされる第1の位置と前記セパレータ遠位先端が前記針遠位先端から第1の既定距離だけ遠位に固定的に位置決めされる第2の位置との間でシフトさせるように構成されたアクチュエータと、
を備えており、
前記アクチュエータは、前記第1の位置と第2の位置との間の事前設定された固定の中間位置に前記セパレータ遠位先端をシフトさせるためのスイッチを有する、被術者の器官の中間層の中への注入のためのデバイス。
【請求項2】
前記セパレータ遠位先端が前記第1の位置にあるとき、前記セパレータ遠位先端は前記サイズ遷移部分の側方非被覆区分から突き出ている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
液体、ゲル、半固体、固形物、低粘度流体、高粘度流体、懸濁液、細胞懸濁液、乳濁液、溶液、ナノセラピー、マイクロスフィア、及び、インサート及びインプラント、のうちの何れか1つ又はそれ以上を注入するように構成された請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記デバイスは、シリンジと前記針ルーメンの間に流体接続可能なカニューレを更に備え、前記シリンジから注入される流体が前記カニューレ及び前記針ルーメンを介して前記針遠位先端へ直接流れることができるようにしている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記組織セパレータは、次の特徴、即ち、
a.前記組織セパレータは、前記カニューレと、前記カニューレの内側のカニューレ壁へ接続されたプローブ固定部分及び前記カニューレのカニューレ遠位端から遠位方向に延び前記セパレータ遠位先端に終端するプローブ突出部分を備える細長いプローブと、を含んでいる、
b.前記組織セパレータは、前記カニューレから前記プローブ固定部分の周りの前記針ルーメンへの流体の流れを許容するように構成されている、
c.前記カニューレは前記組織セパレータを沿わせて滑動させるように構成されたシールを提供されている、
d.前記カニューレは前記組織セパレータを沿わせて滑動させるように構成されたシールを提供されており、前記カニューレ遠位端は前記事前設定された固定位置の各位置にて前記シール内に又は前記シールより遠位に位置決めされる、
という特徴の何れか1つ又はそれ以上を有している、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記シリンジは前記セパレータのセパレータハブへ接続可能である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
眼の中への注入向けに適合されている請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記針より外側に提供されていて前記器官内の前記針遠位先端の第3の既定長さを越す穿通を防止するように構成されている外部ストッパ、を更に備えている請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記外部ストッパは、次の特徴、即ち、
a.前記外部ストッパは、前記針に沿って延びる管であって、そのストッパ遠位端を前記第3の既定距離だけ前記針遠位先端より近位に配置させている管である、
b.前記外部ストッパは、前記針に沿って延びる管であって、そのストッパ遠位端を前記第3の既定距離だけ前記針遠位先端より近位に配置させている管であり、前記ストッパ遠位端は固定的に位置決めされているか又は前記針に沿って前記サイズ遷移部分より近位方向に選択的にシフト可能である、
という特徴の何れか1つ又はそれ以上を有している、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記アクチュエータは、当該アクチュエータを当該アクチュエータの固定位置間でシフトさせるための2つ又はそれ以上の切り替えモードの間で切り替え可能なスイッチを備えている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記器官の標的組織部分を固着させ、前記標的組織部分の中への針穿通を方向決めするための器官ドッキングデバイスであって、
前記標的組織部分の表面になじむように構成された器官接触面及び前記接触面を通る穿通経路で針を案内するように構成されたガイドを備える器官ドッキングデバイス本体と、
当該器官ドッキングデバイスを前記標的組織部分へ定着させるように構成された定着部材と、
前記定着部材を、前記器官接触面との接触時に前記定着部材が前記標的組織部分と物理的に相互作用することが防止される退避位置と、前記針で前記既定の針穿通経路に沿って前記標的組織部分の中へ穿通する間は前記定着部材が前記組織標的部分へ定着して前記器官ドッキングデバイス本体と前記器官の間に反作用力を生成させる定着位置と、の間でシフトさせるように構成された定着用アクチュエータと、
を備える器官ドッキングデバイス、を更に備えている請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記定着部材は、次の特質、即ち、
a.前記定着部材は、前記器官ドッキングデバイス本体へ接続された少なくとも1つのアンカーを備え、各アンカーは前記標的組織部分の中へ穿通するための鋭利なアンカー先端を提供されている、
b.前記定着部材が前記退避位置にあるとき、各アンカー先端は前記器官接触面より近位に位置づけられ、前記定着部材が前記定着位置にあるとき、前記アンカー先端は前記標的組織部分へ定着するために前記器官接触面より遠位に位置づけられる、
c.前記定着部材が前記定着位置にあるとき、前記少なくとも1つのアンカーは前記器官接触面の周りの周辺点から反対側周辺点に向いて方向決めされる、
という特質の1つ又はそれ以上を有している、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記器官接触面との接触時に前記標的組織部分を押圧するように構成された組織押圧部材、を更に備えている請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記ガイドは前記器官ドッキングデバイスに対して傾斜を変えることができる、請求項11に記載のデバイス。
【請求項15】
前記定着部材は第1のアンカー及び第2のアンカーを含んでいる、請求項11に記載のデバイス。
【請求項16】
前記針穿通経路は前記第1のアンカーと前記第2のアンカーの間を通っている、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのアンカーの各々は、前記アンカー遠位先端で終わるアンカーサイズ遷移部分と、細身のレストリクターであって、その鈍なレストリクター先端を前記アンカーサイズ遷移部分の端間に固定的に位置決めさせ前記サイズ遷移部分の側方非被覆区分から突き出させているレストリクターと、を含んでいる、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
前記定着用アクチュエータは、少なくとも1つのアンカーを前記退避位置と前記定着位置の間でシフトさせるように構成された定着用トリガを備えている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項19】
前記器官接触面は眼球の結膜組織及び/又は強膜組織になじむように構成されている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項20】
前記軟組織押圧部材は眼球の結膜組織を強膜組織へ押圧するように構成されている、請求項13に記載のデバイス。
【請求項21】
前記ガイドは前記器官接触面に対し固定的に傾けられた細長い凹面として形成されている、請求項11に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ドッキングデバイスは、前記装置の、前記ガイドに沿った既定の最大進行長さを越す遠位方向前進を防止するように構成された穿通制限要素を含んでいる、請求項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記器官ドッキングデバイス本体は、前記ガイドと前記針を取り巻く装置との間の止り嵌めを作り出すように構成された磁石を含んでいる、請求項11に記載のデバイス。
【請求項24】
貯留部を更に備えている請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼の様な身体組織の中へ1つ又はそれ以上の物質を注入するためのデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先進諸国にあって後眼部疾患は修復不能な視覚障害の主原因である。これらの疾患には、とりわけ、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、及び網膜色素変性症(RP)が挙げられる。現在、世界中でAMDと確認されている患者は2億人近く、DRと確認されている患者は1億人を超えるものと推定される。
【0003】
これらの疾患の現在の治療及び新たな先進的治療の開発と評価は、薬物、遺伝子療法物質、及び細胞療法物質の有効薬用量を網膜、網膜色素上皮(RPE)、及び脈絡膜の後方部分の様な標的後部組織へ送達する場合に、組織障壁(例えば、角膜、結膜、血液房水関門、及び血液網膜関門など)が送達される薬物の後部領域へのアクセスを制限するせいで送達が困難であることによって制限されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】「レミントンの薬理科学」、米国ペンシルバニア州イーストン、マック出版、最新版(“Remington’s, Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co., Easton, PA, latest edition)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上より、眼の後ろ側を冒す疾患を、眼の障壁を回避する新たな有効で安全な送達戦略に基づいて治療するための新しいデバイス及び方法の必要性が今なお存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、その態様の1つでは、被術者の器官の中間層の中への注入のためのデバイスを提供しており、デバイスは、
針近位端と針遠位端の間を延びる針ルーメンを備える針であって、前記針遠位端は鋭利な針遠位先端に終端するサイズ遷移部分を含んでいる、針と、
セパレータ遠位先端を有する細長い組織セパレータであって、当該組織セパレータの少なくとも一部分は針ルーメン内でシフト可能である、組織セパレータと、
前記組織セパレータを前記針ルーメン内で、前記セパレータ遠位先端が前記針遠位先端より近位に固定的に位置決めされる第1の位置と前記セパレータ遠位先端が前記針遠位先端から第1の既定距離だけ遠位に固定的に位置決めされる第2の位置との間でシフトさせるように構成されたアクチュエータと、
を備えている。
【0007】
前記セパレータ遠位先端が前記第1の位置にあるとき、前記セパレータ遠位先端は前記サイズ遷移部分の側方非被覆区分から突き出ていてもよい。
【0008】
発明のデバイスは、液体、ゲル、半固体、固形物、低粘度流体、高粘度流体、懸濁液、細胞懸濁液、乳濁液、溶液、ナノセラピー、マイクロスフィア、及び、インサート及びインプラント、のうちの何れか1つ又はそれ以上を注入するように構成されることができる。
【0009】
デバイスは、シリンジと前記針ルーメンの間に流体接続可能なカニューレを更に備え、前記シリンジから注入される流体が前記カニューレ及び前記針ルーメンを介して前記針遠位先端へ直接流れることができるようにしていてもよい。
【0010】
組織セパレータは、次の特徴の何れか1つ又はそれ以上を有していてもよく、即ち、
a.前記組織セパレータは、前記カニューレと、前記カニューレの内側のカニューレ壁へ接続されたプローブ固定部分及び前記カニューレのカニューレ遠位端から遠位方向に延び前記セパレータ遠位先端に終端するプローブ突出部分を備える細長いプローブと、を含んでいる、
b.前記組織セパレータは、前記カニューレから前記プローブ固定部分の周りの前記針ルーメンへの流体の流れを許容するように構成されている、
c.カニューレは前記組織セパレータを沿わせて滑動させるように構成されたシールを提供されている、
d.カニューレは前記組織セパレータを沿わせて滑動させるように構成されたシールを提供されており、前記カニューレ遠位端は前記事前設定された固定位置の各位置にて前記シール内に又は前記シールより遠位に位置決めされる、
という特徴の何れか1つ又はそれ以上を有していてもよい。前記シリンジは前記セパレータのセパレータハブへ接続可能であってもよい。
【0011】
デバイスは眼の中への注入向けに適合されていてもよい。
【0012】
デバイスは、前記針より外側に提供されていて器官内の前記針遠位先端の第3の既定長さを越す穿通を防止するように構成されている外部ストッパを更に備えていてもよい。外部ストッパは次の特徴の何れか1つ又はそれ以上を有していてもよく、即ち、
a.前記外部ストッパは前記針に沿って延びる管であって、そのストッパ遠位端を前記第3の既定距離だけ前記針遠位先端より近位に配置させている管である、
b.前記外部ストッパは前記針に沿って延びる管であって、そのストッパ遠位端を前記第3の既定距離だけ前記針遠位先端より近位に配置させている管であり、前記ストッパ遠位端は固定的に位置決めされているか又は前記針に沿って前記サイズ遷移部分より近位方向に選択的にシフト可能である、
という特徴の何れか1つ又はそれ以上を有していてもよい。
【0013】
アクチュエータは、アクチュエータをアクチュエータの固定位置間でシフトさせるための2つ又はそれ以上の切り替えモードの間で切り替え可能なスイッチを備えていてもよい。
【0014】
デバイスは、器官の標的組織部分を固着させ標的組織部分の中への針穿通を方向決めするための器官ドッキングデバイスを更に備えていてもよく、器官ドッキングデバイスは、
標的組織部分の表面になじむように構成された器官接触面及び前記接触面を通る穿通経路で針を案内するように構成されたガイドを備える器官ドッキングデバイス本体と、
当該器官ドッキングデバイスを前記標的組織部分へ定着させるように構成された定着部材と、
前記定着部材を、前記器官接触面との接触時に前記定着部材が前記標的組織部分と物理的に相互作用することが防止される退避位置と、前記針で前記既定の針穿通経路に沿って前記標的組織部分の中へ穿通する間は前記定着部材が前記組織標的部分へ定着して前記器官ドッキングデバイス本体と器官の間に反作用力を生成させる定着位置と、の間でシフトさせるように構成された定着用アクチュエータと、
を備えていてもよい。
【0015】
ガイドは器官ドッキングデバイスに対して傾斜を変えることができるようになっていてもよい。
【0016】
定着部材は次の特質の1つ又はそれ以上を有していてもよく、即ち、
a.前記定着部材は、前記器官ドッキングデバイス本体へ接続された少なくとも1つのアンカーを備え、各アンカーは前記標的組織部分の中へ穿通するための鋭利なアンカー先端を提供されている、
b.定着部材が前記退避位置にあるとき、各アンカー先端は前記器官接触面より近位に位置づけられ、前記定着部材が前記定着位置にあるとき、前記アンカー先端は前記標的組織部分へ定着するために前記器官接触面より遠位に位置づけられる、
c.定着部材が前記定着位置にあるとき、前記少なくとも1つのアンカーは前記器官接触面の周りの周辺点から反対側周辺点に向いて方向決めされる、
という特質の1つ又はそれ以上を有していてもよい。
【0017】
デバイスは、前記器官接触面との接触時に前記標的組織部分を押圧するように構成された組織押圧部材を更に備えていてもよい。
【0018】
定着部材は第1のアンカー及び第2のアンカーを含んでいてもよい。
【0019】
針穿通経路は前記第1のアンカーと前記第2のアンカーの間を通っていてもよい。
【0020】
前記少なくとも1つのアンカーの1つは、前記アンカー遠位先端で終わるアンカーサイズ遷移部分と、細身のレストリクターであって、その鈍なレストリクター先端を前記アンカーサイズ遷移部分の端間に固定的に位置決めさせ前記サイズ遷移部分の側方非被覆区分から突き出させているレストリクターと、を含んでいてもよい。
【0021】
定着用アクチュエータは、少なくとも1つのアンカーを前記退避位置と前記定着位置の間でシフトさせるように構成された定着用トリガを備えていてもよい。
【0022】
前記器官接触面は眼球の結膜組織及び/又は強膜組織になじむように構成されていてもよい。
【0023】
軟組織押圧部材は眼球の結膜組織を強膜組織へ押圧するように構成されていてもよい。
【0024】
ガイドは前記器官接触面に対し固定的に傾けられた細長い凹面として形成されていてもよい。
【0025】
ドッキングデバイスは、前記装置の、前記ガイドに沿った既定の最大進行長さを越す遠位方向前進を防止するように構成された穿通制限要素を含んでいてもよい。
【0026】
器官ドッキングデバイス本体は、前記ガイドと針を取り巻く装置との間の止り嵌めを作り出すように構成された磁石を含んでいてもよい。
【0027】
デバイスは、シリンジの様な貯留部を更に備えていてもよい。
【0028】
本発明は、その態様の別の1つでは、被術者の眼内の中間層領域の中へ物質又は物体を注入するための方法を提供しており、方法は、
a.被術者の器官の中間層の中への注入のためのデバイスを提供する段階であって、当該デバイスは、
針近位端と針遠位端の間を延びる針ルーメンを備える針であって、前記針遠位端は鋭利な針遠位先端に終端するサイズ遷移部分を含んでいる、針と、
セパレータ遠位先端を有する細長い組織セパレータであって、当該組織セパレータの少なくとも一部分は針ルーメン内でシフト可能である、組織セパレータと、
前記組織セパレータを前記針ルーメン内で、前記セパレータ遠位先端が前記針遠位先端より近位に固定的に位置決めされる第1の位置と前記セパレータ遠位先端が前記針遠位先端から第1の既定距離だけ遠位に固定的に位置決めされる第2の位置との間でシフトさせるように構成されたアクチュエータと、
を備えている、デバイスを提供する段階と、
b.前記セパレータ遠位先端を前記サイズ遷移部分の端間の第1の位置に位置決めする段階と、
c.前記セパレータ遠位先端を前記針遠位先端より第1の既定距離だけ近位に位置決めする段階であって、前記セパレータ遠位先端は前記サイズ遷移部分から突き出ている、位置決めする段階と、
d.前記針遠位先端を使用し、器官外表面層を前記セパレータ遠位先端と接触させるまで器官の外表面を前記器官の中への穿通点にて穿通する段階であって、前記第1の既定長さは前記穿通点に隣接する前記外表面層の厚さより短い、穿通する段階と、
e.前記物質又は物体を中間層の中へ注入する段階と、
を備えている。
【0029】
発明の方法は、前記アクチュエータを使用して前記組織セパレータを前記針ルーメン内で長手方向にシフトさせ、前記セパレータ遠位先端を当該セパレータ遠位先端が前記針遠位先端より第2の既定長さだけ遠位に位置づけられる最遠位位置へ位置変えさせ、それにより前記セパレータ遠位先端で以て前記外表面層を前進し前記外表面層を貫いて前記器官の前記中間層の中へ穿通し前記中間層に通路を形成する段階、を更に備えていてもよい。
【0030】
別途特に定義又は指定のない限り、本明細書に使用される全ての技術的及び/又は科学的な単語、用語、及び/又は語句は、発明が関連する技術分野の当業者によって普通に理解されているのと同じ又は同様の意味を持つ。本明細書に例示的に記載されている方法(工程、手続き)、装置(デバイス、システム、その構成要素)、機材、及び材料の例示としての実施形態は、例示であり説明のみを目的とし、必ずしも制限を課すことを意図していない。本明細書に記載のものと同等又は同様の方法、装置、機材、及び材料は、発明の実施形態を実践し及び/又は試験するのに使用できるが、例示としての方法、装置、機材、及び材料が以下に例示的に説明されている。対立が生じた場合、定義を含む特許明細書が支配することになる。
【0031】
本明細書には、本発明の幾つかの実施形態が一例として添付図面を参照して説明されている。これより図面を詳しく参照するにあたり、強調しておきたいこととして、図示されている詳細事項は、一例であり、本発明の幾つかの実施形態を例示的に説明することを目的としている。これに関し、説明が添付図面と併せて考察されれば、本発明の幾つかの実施形態がどのように実践され得るかが当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1A】本発明の幾つかの実施形態による、被術者の眼内の中間層領域への注入を容易にし及び施行するように構成されている或る例示としてのシステムを組み立てるための或る例示としてのキットの等角投影図を描いている。
図1B】完全に組み立てられた状態で示されている図1Aの例示としてのシステムの等角投影図を描いている。
図1C】本発明の幾つかの実施形態による、被術者の眼内の中間層領域への流体注入を容易にするための器官作用デバイス(organ affecting device)を形成する諸要素の等角投影図である。
図2A】本発明の幾つかの実施形態による或る例示としてのシリンジと共に組み立てられた図1Cに示されている例示としてのデバイスの側面断面図を描いている。
図2B図2Aのデバイスの拡大部分を描いている。
図3】本発明の幾つかの実施形態による或る例示としてのシリンジの側面断面図を描いている。
図4】本発明の幾つかの実施形態による或る例示としてのシール付きコネクタ部材の側面断面図を描いている。
図5A】本発明の幾つかの実施形態による或る例示としての組織セパレータの側面断面図を描いている。
図5B図5Aの組織セパレータの拡大部分を描いている。
図6A】本発明の幾つかの実施形態による或る例示としての針の等角投影図を描いている。
図6B図6Aの針の側面断面図を描いている。
図7】本発明の幾つかの実施形態による或る例示としてのアクチュエータの側面断面図を描いている。
図8A】本発明の幾つかの実施形態による、針遠位端に対するセパレータ遠位先端の異なる事前設定位置の1つを示す、図1Cに示された例示としてのデバイスの遠位部分の側面図を描いている。
図8B】本発明の幾つかの実施形態による、針遠位端に対するセパレータ遠位先端の異なる事前設定位置の1つを示す、図1Cに示された例示としてのデバイスの遠位部分の側面図を描いている。
図8C】本発明の幾つかの実施形態による、針遠位端に対するセパレータ遠位先端の異なる事前設定位置の1つを示す、図1Cに示された例示としてのデバイスの遠位部分の側面図を描いている。
図8D】本発明の幾つかの実施形態による、インプラントを搬送し配備するように構成された図1Cに示されている例示としてのデバイスの或る変形型の側面図を描いている。
図9A】本発明の幾つかの実施形態による或る例示としての器官ドッキングデバイスの等角投影図を描いている。
図9B図9Aの器官ドッキングデバイスの側面断面図を描いている。
図10A】本発明の幾つかの実施形態による、或る例示としての定着部材の等角投影図を描いている。
図10B図10Aの定着部材の側面図を描いている。
図11A】本発明の幾つかの実施形態による、図9Aに示された或る例示としての器官ドッキングデバイスの、退避位置にあるアンカーを示している前方等角投影図を描いている。
図11B】本発明の幾つかの実施形態による、図9Aに示された或る例示としての器官ドッキングデバイスの、定着位置にあるアンカーを示している前方等角投影図を描いている。
図12A】本発明の幾つかの実施形態による、被術者の眼での、強膜部分を固着させ、強膜部分の中への針穿通を方向決めし、中間層領域への流体注入を容易にするための方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある図1Bに示された例示としてのシステムの図を描いている。
図12B図12Aと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12C図12A図12Bと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12D図12A図12Cと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12E図12A図12Dと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12F図12A図12Eと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12G図12A図12Fと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12H図12A図12Gと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12I図12A図12Hと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12J図12A図12Iと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12K図12A図12Jと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12L図12A図12Kと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12M図12A図12Lと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12N図12A図12Mと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図12O図12A図12Nと共に、本発明の方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある例示としてのシステムの図を描いている。
図13A】本発明の幾つかの実施形態による、真空付着手段を採用した或る例示としての器官ドッキングデバイスの等角投影図を描いている。
図13B図13Aの器官ドッキングデバイスの側面断面図を描いている。
図14A】本発明の幾つかの実施形態による、器官ドッキングデバイスを採用した或る例示としての器官作用デバイスの側面断面図を描いている。
図14B】本発明の幾つかの実施形態による、被術者の眼での、強膜部分を固着させ、強膜部分の中への針穿通を方向決めし、中間層領域への流体注入を容易にするための方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある図14Aに示された例示としてのデバイスの図を描いている。
図15A】本発明の幾つかの実施形態による、被術者の眼内の中間層領域への注入を容易にするための或る例示としてのシステムユニットの側面断面図を描いている。
図15B】本発明の幾つかの実施形態による、図15Aに示された例示としてのシステムユニットの例示としての諸構成要素の等角投影図を描いている。
図15C】本発明の幾つかの実施形態による、異なる構成にある図15Cに示された例示としての諸構成要素の図を描いている。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、その幾つかの実施形態では、被術者の眼を治療するためのデバイス及び方法に関しており、排他的にというわけではないがより具体的にいうと、眼の中間層へ医薬品を送達するためのデバイス及び方法に関する。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態の或る態様によれば、被術者の器官の中間層領域の中へ、流体、半固体、又は半流体の物質の様な1つ又はそれ以上の物質又はインプラントの様な物体を注入するように構成されたデバイス又は複数の相互接続型デバイスが提供されている。幾つかの実施形態では、その様な手段(デバイス)は、空間的方向、輪郭、及び寸法についての既定の特性及び/又はユーザーが選択した特性を有する進路(随意的には穿刺又は矢通しされた通路の形態)を形成するために適用でき、そしてその後、物質又は物体をこの進路の中へ入れ進路に沿って送達し進路から中間層領域のほとんど又は全体に亘って分散させるために適用できる。その様なデバイスは、分解されたキットの形態でユーザーに提供され、システムの形態に容易に組み立てられるようになっていてもよいし、又は別個のデバイスとして個別に提供されてもよい。
【0035】
被術者はヒト又は動物の患者であってもよい。器官は被術者の眼であってもよく、本明細書に説明される例示としての実施形態の幾つかでは特に眼に関連して考察されているが、本発明の少なくとも一部の例示としての実施形態は他の器官又は組織を治療すること及び/又は他の器官又は組織に作用すること(例えば、医薬品をそこに注入することによる、又は好まれる方式での注入を容易にすることによる)に関連して考察されてもよい。
【0036】
図1A図1Cを参照する。図1Aは、被術者の器官(眼)の中間層領域への注入を容易にし及び施行するように構成されている或る例示としてのシステム11を組み立てるための例示としてのキット10を描いている。図1Bは、完全に組み立てられたシステム11を描いている。キット10又はシステム11は、シリンジ12の様な流体貯留部と、器官作用デバイス(organ affecting device)100と、器官ドッキングデバイス200と、を含んでいる。以下に更に説明されている様に、器官ドッキングデバイス200は、器官(例えば被術者の眼)の標的組織部分(例えば強膜の標的部分)を固着させるように、及び標的組織部分の中への針穿通を方向決めするように構成され、例えば器官作用デバイス100にとっての滑動用の経路を標的組織部分に対する選定された空間的方向に物理的に拘束するなどによって方向決めするように構成されている。
【0037】
随意的には、器官作用デバイス100は、注入に先立って、最も外側の又は前部の器官層(例えば強膜、随意的には結膜と一体)及び中間層領域(例えば、眼の脈絡膜層内及び/又は脈絡膜と網膜の間)の中への及びそれらを貫く有向性の空間のある通路を、正確な解剖学的場所に、選定されたアラインメントで、且つ事前に定義された寸法で作成することによって、器官の中間層領域での低・高体積流体分散を容易にするように構成される。この人工の通路は、有効に流体を収容し、流体を導き、流体を通路から器官の中間層領域を全通して離れた区域及び/又は広い区域へ分散させるように構成される。幾つかの実施形態では、通路は、標的組織部分に対して及び/又は標的組織部分の中への針の進入点に隣接する中間層領域に対して浅い角度(例えば0度から30度)に向き付けられているか又は実質的に接線方向にある。
【0038】
図1Cは、器官作用デバイス100を形成する諸要素を描いており、それら要素はアクチュエータ101、スイッチ102、組織セパレータ103、シール付きコネクタ部材104、及び針105を含んでいる。針105は、眼の強膜(随意的には結膜も含める)の様な器官の外側の層の標的部分の中へ及び/又は標的部分を貫いて穿通するように構成されており、組織セパレータ103はその遠位先端と共に針105のルーメンを介して送られるように構成されていて、異なる機能に従って照準の合わされた異なる固定位置に選択的に位置決めできるようになっており、その様な異なる機能は、(i)中間層領域部分内の隣接する層に刺入し層同士を分離する(離間させる)ことによって有向性の空間のある通路を形成する、(ii)標的組織部分での針105の穿通長さを制限するのを支援する、及び(iii)流体をシリンジ12から針105のルーメンの中へ導く、のうちの少なくとも1つを含む。シール付きコネクタ部材104は、一方の端の組織セパレータ103と反対側の端の針105との間の液密接続を容易にする。
【0039】
アクチュエータ101(別途図7に示す)は、器官作用デバイス100の手持ち式本体を形成していて、シリンジ12と組織セパレータ103との接続区域を収納するように構成されている。アクチュエータ101は、組織セパレータ103の遠位先端を事前設定された固定位置の間でシフトさせるためのスイッチ102を具備している。スイッチ102は描かれている様にトグル型スイッチであってもよいし、又はスイッチ102は、少なくとも2つ(随意的には3つ)のスイッチ位置を備えて構成された押しボタン、回転式ノブ、又はスライドスイッチの様な何れかの他の型式であってもよい。アクチュエータ101は、更に、アラインメント及びドッキングデバイス200の方向決め用の面に沿った既定の進行長さを実現しやすくするために、ドッキングデバイス200の噛み合い式陥凹領域の中へ締結するように構成された整列要素130を含んでいる。
【0040】
図2A図2Bは、シリンジ12と共に組み立てられたデバイス100の側面断面図及び拡大図をそれぞれ描いている。シリンジ12(別途図3に示す)は、ピストン13、ピストン13が滑動するバレル14、及びシリンジコネクタ15を含んでいる。シリンジコネクタ15はデバイス100に関しアクチュエータ101の専用中空部内で組織セパレータ103のセパレータハブ106へ接続されるように構成されており、セパレータハブ103はルアー接続114又は他の型式の漏れなしコネクタを具備していてもよい。組織セパレータ103(別途図5A図5Bに示す)は、更に、セパレータハブ106と細長いプローブ108の間を接続するカニューレ107を含んでいる。プローブ108は、カニューレ107の内側のカニューレ壁110へ固定的に接続されたプローブ固定部分109と、カニューレ107のカニューレ遠位端112から遠位方向に延びていてセパレータ遠位先端113で終わっているプローブ突出部分111と、を有している。この接続のやり方は、カニューレ107からの流体流れがプローブ固定部分109を横断して針105に向かって通過するのを容易にする。プローブ突出部分111は、針105に対するセパレータ遠位先端113の事前設定された固定位置を実現しやすくするのに十分な長さを有している。他の実施形態では、以下に説明されている様に、薬物貯留部(随意的には、シリンジの形態をしている、又はピストンを含んでいる)が組織作用デバイスの一体部分として提供されていてもよく、そうすると、部品の組み立てに必要とされるが大きな空間と全体設計での設計上の制限事項が付きまとうコネクタ及びハブの必要性がなくなる。
【0041】
スイッチ102が、スイッチピボット接続117を横断してスイッチボタン116へ接続されているスイッチアーム115を介してセパレータハブ106と係合しており、スイッチボタン116をスイッチピボット接続117周りに動かすことは、結果的に、スイッチアーム115を介して組織セパレータ103を押すことによって組織セパレータ103を事前設定された固定位置の間でシフトさせることになる。
【0042】
シール付きコネクタ部材104(別途図4に示す)は、中を通るカニューレ107の長さと直径に適応するように構成されたセパレータポート118と、針105と漏れなし接続するように構成された針コネクタ119(随意的には図示の様に雄型ルアー接続の形態)と、封止特質を危うくすることなしにカニューレ107が中で滑動できるようにしながらカニューレ107の周りを封止するように構成されたシール120と、を含んでいる。
【0043】
針105(別途図6A図6Bに示す)は、随意的には図示の様に雌型ルアー接続部材を備える針ハブ121と、針シャフト122と、外部ストッパ123と、を含んでいる。針ルーメン124が針近位端125と針遠位端126の間を延びており、針遠位端126は鋭利な針遠位先端128で終わるサイズ遷移部分127を含んでいる。サイズ遷移部分127とは、針105の遠位端の部分であって、それに沿って急進漸進を問わず全体としてのシャフト122の寸法に対比した寸法の変化のある部分、例えば直径の変化又は周囲長の変化などのある部分のことをいい、例えばベベル部又は面取り部のことをいう。サイズ遷移部分は少なくとも長さ1mmであり、随意的には約3mmである。外部ストッパ123は、穿通された器官内での針遠位先端128の既定長さを越す穿通を物理的に抑制する又は妨害するように構成されている。外部ストッパ123は、針シャフト122の少なくとも一部に沿って外側を延びている管の形態をしていて、そのストッパ遠位端129は針遠位先端128より近位に位置づけられている。ストッパ遠位先端129は随意的には固定的に位置決めされるが、ストッパ遠位先端129はサイズ遷移部分127より近位方向に針シャフト122の長さに沿って選択的にシフト可能であってもよい。
【0044】
これより、針遠位端126に対するセパレータ遠位先端128の異なる事前設定位置を示すデバイス100の遠位部分の側面図を描いている図8A図8Cを参照する。細長い組織セパレータ103は、セパレータ遠位先端113が針遠位端126と並置されるように針ルーメン124内をその全体を通って延びるサイズ及び構成である。アクチュエータ101は、セパレータ遠位先端113が針遠位先端128に対して幾つかの事前設定された固定位置の間で動けるように組織セパレータ103を針ルーメン124内で選択的にシフトさせるのを容易にするように構成されている。デバイス100は、デバイスの全使用中の漏れを防止するために、事前設定された固定位置の各位置にてカニューレ遠位端112がシール120内に又はシール120より遠位に位置決めされるように構成されている。
【0045】
事前設定された固定位置の1つは中間位置(例えば図8Aに示す)であって、スイッチ102が基準位置に提供され、セパレータ遠位先端113が針遠位先端128より第1の既定長さL1だけ近位に、随意的には約0.2mmから約1.5mmの範囲内で随意的には約0.5mmだけ近位に固定的に位置決めされ位置づけられる位置である。中間位置では、セパレータ遠位先端113は遷移部分127の側方非被覆区分131から突き出ている。セパレータ遠位先端113は鈍であり、随意的には丸い形状をしていて、中間位置に固定されたときには、穿通される器官でのサイズ遷移部分1127の穿通が第1の既定長さより大きくなるのを物理的に抑制し又は妨害するように構成されている。
【0046】
別の事前設定された固定位置は最遠位位置(例えば図8Cに示す)であって、スイッチ102が第1の押下位置に提供され、セパレータ遠位先端113が針遠位先端128より遠位に固定的に位置決めされる位置である。最遠位位置にあるとき、セパレータ遠位先端113は針遠位先端128より第2の既定長さL2だけ遠位に、随意的には約1mm又はそれ以上で随意的には約2mmだけ遠位に位置づけられる。
【0047】
3つ目の随意的な事前設定された固定位置は最近位位置(例えば図8Bに示す)であって、スイッチ102が第2の押下位置に提供され、セパレータ遠位先端113がサイズ遷移部分127の側方非被覆区分131より近位の針ルーメン124内にすっぽり隠れる位置である。
【0048】
外部ストッパ123は、器官内での針遠位先端の第3の既定長さL3(図8Cに示す)を越す穿通を物理的に抑制し又は妨害するように構成されており、第3の既定長さは針遠位先端128とストッパ遠位先端129の間の長手方向距離に等しく、随意的には少なくとも1mmであり、随意的には長さ約3mmである。
【0049】
図8Dは、インプラント132を搬送し配備するように構成されているデバイス100の変形型の側面図を描いている。幾つかの実施形態では、セパレータ遠位先端113は、ユーザー選択による様なインプラント132を選択的に保持する又は解放するように構成されたインプラントコネクタ133を含んでいる。インプラントコネクタ133は、インプラント132へねじ止めするためのねじ山付き部分、インプラント132へ定着するためのフック機構、又は関連技術で知られている何れかの他の接続手段又は接続機構であってもよい。インプラント132は、例えば眼の天然の一部又は部分を改善する又は置換することを意図するもの(例えば人工網膜)であってもよいし、又はインプラント132は、医薬品を収容し例えば植え込み部位での/植え込み部位の周りでのインプラントからの医薬品の徐放及び/又は制御された放出を容易にするように構成されていてもよい。インプラント132の送達は、最初に、針105及び/又は組織セパレータ103によって形成される通路(例えば図12Nに示されている通路PSGの様な通路)を作成する段階と、次いで組織セパレータ103をインプラントコネクタ133と共に使用して又は他の手段を使用してインプラント132を搬送し通路内に配備する段階と、によって達成されてもよい。随意的又は代替的に、通路はインプラント132を押し出すことによって形成されてもよく、その様な代替例では、インプラント132は鈍い遠位端又は鋭利な遠位端を有する形状であるか又は(単数又は複数の)組織切削要素を具備していて通路形成後にデバイス100から接続解除される。インプラント132は要求される機能又は結末が達成された後に身体(眼)から取り出されてもよく、又はインプラント132は身体(眼)の中に永久的に残されることもでき、随意的には或る期間を経て身体内で生分解するようになっていてもよい。
【0050】
これより、器官ドッキングデバイス200の等角投影図及び側面断面図を描いている図9A図9Bを参照する。器官ドッキングデバイス200は、標的組織部分の曲線状トポグラフィーに準じた形状の器官接触面202、つまりこの実施例では眼球に被さって納まるように湾曲した断面を有する環の形態をしている器官接触面202を備える器官ドッキングデバイス本体201を含んでいる。
【0051】
器官ドッキングデバイス本体201は、更に、器官作用デバイス100を沿わせて通過させるための、器官接触面202を横切る既定の針穿通経路204を区画し又は拘束するように構成された針方向決め面203を含んでいる。現在の例示としての実施形態では、針方向決め面203は器官接触面202に対して固定的に角度が付けられているが、他の実施形態では針方向決め面203は器官接触面202に対して選択的に傾斜を変えることができるようになっていてもよい。針方向決め面203は、器官作用デバイス100のアクチュエータ101の一区分に嵌る形状をしており、それにより針方向決め面203上の滑動は既定の針穿通経路202に拘束される。この例示としての実施形態では、針方向決め面203は、前記器官接触面に対し固定的に傾けられた細長い凹面として形成されており、前部分を器官接触面202と接触させた状態の眼球に対するそれの接線方向の向き付けが容易になるように図っている。
【0052】
器官ドッキングデバイス本体201の近位部分には細長い陥凹211が提供されており、細長い陥凹211はアクチュエータ101の整列要素130をぴったり嵌めてそれにより整列要素130をそこに締結させるのを容易にし、既定の針穿通経路204とのアラインメントに作用するような形状と寸法に構成されている。細長い陥凹211は、器官作用デバイス100の、針方向決め面203に沿った既定の最大進行長さを越す遠位方向への前進を防止するように構成された穿通制限要素としての働きもする。器官ドッキングデバイス本体201は、更に、磁石222又は針方向決め面203とアクチュエータ101の間の止り嵌めを強制するように構成された他の手段を含んでいてもよい。
【0053】
器官ドッキングデバイス200は、更に、定着部材(anchoring member)205(別途図10A図10Bに示す)及び定着用アクチュエータ206を含んでいる。定着部材205は、器官接触面202が標的組織部分(例えば標的強膜部分)に適正に接触したときに標的組織部分へ定着するように構成されている。定着部材205は、周辺的に離間され対称的に互いに反対側に提供されている2つのアンカー207を備えており、2つのアンカー207は随意的には0.5mmから3mmの範囲内で互いに周辺的に離間されていてもよい。各アンカー206は、標的組織部分の中へ穿通するように構成された鋭利なアンカー先端208を備えている。アンカー207は、2つの定着部材脚部210によって形成された基部面209から垂直に突き出されていて、2つの定着部材脚部210は、互いに離間されていて組織作用デバイス100を間に位置決めさせて受け入れるように対称的に配置されており、既定の針穿通経路204の向き付けを画することを図ったものである。アンカー207を固着させた定着部材205は器官ドッキングデバイスへ回転可能に接続されており、それにより退避位置(図11Aに示す)と定着位置(図11Bに示す)の間のアンカーの動きを円滑にさせる。
【0054】
定着用アクチュエータ206は、定着部材205が標的組織部分と物理的に相互作用することを防止される退避位置と定着部材205が組織標的部分へ定着される定着位置との間で、定着部材205を選択的にシフトさせることを容易にするように構成されている。定着用アクチュエータ206は、アンカー207を駆動して退避位置と定着位置の間でシフトさせるように構成された手動操作式定着用トリガ218を含んでいる。トリガ218は、この例示としての実施形態では、弾性材料で作られていて、トリガ218に弾性的にあまり応力がかかっておらず定着部材205は退避位置にあるという基準位置から、トリガ218に弾性的により多くの応力がかかり定着部材205は定着位置にあるという前進位置へ、前進方向(近位から遠位)に手で押圧されるように構成されており、よってトリガ218は解放されるや前進位置から基準位置へ跳ね返ることができる。トリガ218は、トリガピボット接続220周りのトリガアーム219を介して定着部材205へ接続されていて、トリガ218を前進押圧すると、その結果、定着部材205の前進(近位から遠位)シフトとアンカー207の突き出しが起こる。トリガロック221が溝穴ロック構成を介して定着用トリガ218と相互作用し、例えば定着用トリガ218が基準位置、退避位置、及び前進位置のうちの少なくとも1つへシフトされたときに、トリガロック221がユーザーによって選択的にロック解除されるまでは定着用トリガ218はトリガロック221によってその場に固定的にロックされるようにしている。
【0055】
器官へ定着したら、器官ドッキングデバイス200は、針105による標的組織部分への穿通中に針105が既定の針穿通経路204に沿って押し出されるときの定着された器官への反作用力の生成を容易にする。各アンカー先端208は、退避位置にあるときには器官接触面202より近位に位置決めされ、標的組織部分へ定着するための定着位置にあるときには器官接触面202より遠位に位置決めされる。
【0056】
現在の例示としての実施形態では、アンカー207は器官接触面202の上周辺部分に配置された専用の開口部212(図11A)を通過可能である。定着位置に入ったとき、各アンカー207は各々の開口部212を介して突き出て、全体として器官接触面202の反対側の周辺点213の方を向き、アンカー先端208が既定の針穿通経路204に対し随意的に45度から135度の範囲内で随意的には大凡90度の角度で遠位方向を指した状態になる。
【0057】
器官ドッキングデバイス200は、標的組織部分が器官接触面202と接触したときに標的組織部分、随意的にはその周辺領域を押圧するように構成された組織押圧部材214を含んでいる。眼の治療に使用されるとき、組織押圧部材214は、標的強膜部分に隣接する結膜を締め付け又は引き締め、それにより、標的強膜部分の穿刺時の針遠位先端128にかかる抵抗力又は反動力を軽減させるために標的強膜部分の周辺をより深く押圧するように構成されている。
【0058】
器官ドッキングデバイス200と器官作用デバイス100は、アクチュエータ101及び針105が針方向決め面203に沿って既定の針穿通経路204を辿るときに、針遠位先端128が2つのアンカー207の間を各アンカーのアンカー遠位先端208に近接して通過するよう拘束されるように構成されている。各アンカー207は、アンカー遠位先端208で終わるアンアーサイズ遷移部分215を(例えば、ベベル部分に)有している。最大穿通深さを制限するために、各アンカー207は、アンカーサイズ遷移部分215の端間に固定的に位置決めされていてサイズ遷移部分215の側方非被覆区分から突き出ている鈍なレストリクター先端217を有する細身のレストリクター216を提供されている。
【0059】
図12A図12Oは、被術者の眼での、強膜部分を固着させ、強膜部分の中への針穿通を方向決めし、中間層領域への流体注入を容易にするための方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にあるキット10、システム11、器官作用デバイス100、及び/又は器官ドッキングデバイス200の図を描いている。第1の工程群は、器官ドッキングデバイス200を使用して、器官の標的組織部分(この例では強膜部分SP)を固着させ、標的組織部分の中への針穿通を方向決めることを意図している。
【0060】
図12Aに描かれている様に、器官ドッキングデバイスは、ユーザー(例えば眼科医)によって選定された場所に位置決めされ、器官接触面202が標的強膜部分SPに押し当てて接触した状態に位置決めされる。器官ドッキングデバイス200の設置は、選定された眼象限内の縁郭(透明な角膜から不透明な強膜への移行区域である)の周りに対称的に施行される。強膜は構造的には異方性であると考えられるので、要求される注入方向を実現しやすくするために針105の接線方向の穿通が所望されるとしても、強膜への針穿刺及び進行に抵抗する力を最小化するためには初期の垂直穿通が好適である。初期の垂直穿通後、針はシフトされ強膜内を脈絡膜に対し接線方向の(又は接線方向に近い)経路で脈絡膜層内の中間層領域の標的注入部位に到達するまで進められる。強膜への穿通は針先端を使用して果たされるが、一方脈絡膜の中への穿通は、脈絡膜内にある血管への潜在的な(意図しない)損傷を回避する又は最小限にするために鈍な組織セパレータを使用して果たされる。
【0061】
強膜から脈絡膜への穿通点は、器官接触面202に対しての強膜への穿通点から離れている(図12L及び図9Aを参照、経路204に沿ってより遠位側)。その様な隔たりは、脈絡膜CRに通路PSGを通して医薬品を注入することによって作り出される封止効果にとって重要である。つまり、注入後、眼の静水圧が注入された医薬品を逆流するよう仕向けがちであるが、脈絡膜への穿通より近位(眼球に関して)の強膜部分は無傷であるため逆流は防がれ、こうして通路PSG全体が垂直穿通から強膜部分への医薬品の還流を防ぐ一方通行の弁の役目を果たすのである。
【0062】
器官ドッキングデバイス200が縁郭の周りに対称的に位置決めされたとき、ユーザーは縁郭より2mmから4mm後方の強膜部分の中へ針105を垂直に穿通させるように器官ドッキングデバイスによって示される(図12Eを参照、針先端128はアンカー207間の開口部に挿入されなくてはならない)。縁郭からの距離は、前後方向に、毛様体襞部1mmから2mm、毛様体扁平部約4mmである。これは強膜への垂直穿通が(眼球に関して)毛様体扁平部より近位側に与えられることを確約し、接線方向の穿通が脈約膜の中へのセパレータの穿通をもたらすことを確約する。
【0063】
強膜の中への垂直穿通は部分的(強膜を全通していない)ではあっても、眼球に対しての毛様体扁平部の中への近位側での垂直穿通は安全策である。強膜部分の中へのより後方的な垂直穿通は、血管のより発達した毛様体襞部への外傷に因る大出血を生じさせないとも限らない。強膜部分へのより後方的な垂直穿通は網膜剥離を生じさせかねない。
【0064】
定着部材205は退避位置(図12B)にて提供されるので、位置決め後、次いで定着用アクチュエータ206が定着部材205を標的強膜部分へ定着するための定着位置(図12C)へシフトさせるように適用される。図示の様に、アンカー207は強膜の選定された標的部分にて強膜層の中へ大凡垂直に約0.5mmの深さに穿通し、やがて鈍なレストリクター先端217が強膜の外表面に接触してそれ以上の前進を抑制する(前方へ進むことをユーザーに停止させる合図として少なくともユーザーが気付ける程度の接触)。器官接触面202が強膜部分SPと接触している間に、組織押圧部材214が標的強膜部分の上周辺部を押圧し、標的強膜部分SPに隣接する結膜CJを引き締める。
【0065】
器官ドッキングデバイス200は、標的強膜部分SPに押し付けて選定位置に配備されたら、針105を有する器官作用デバイス100を針遠位先端128で強膜部分SPの中へ穿通(穿刺)するために既定の針穿通経路204に沿って方向決めするとともに強膜穿通中は(眼球の回転を防ぐために)器官ドッキングデバイス本体201と眼球の間に反作用力を生成させるよう働くことができる。
【0066】
次の工程群は、被術者の眼内の中間層領域への流体注入を容易にすることを意図している。要求される結果は、先に説明されている様に、針進入点に隣接する標的強膜部分に対し大凡接線方向に浅い角度で向き付けられ強膜層内から脈絡膜の中へ長さ約2mmから4mmだけ延びる人工的に形成された通路又はチャネルである。通路は、障害物のない状態になったら、脈絡膜及び隣接層の中間層領域に有向性の空間を現出させ、次いでこの空間は流体(医薬品)で満たされ、その後、流体は形成された通路から遠隔の後部を含む中間層領域の空間全体を通って分散することができる。
【0067】
器官作用デバイス100を適用する前に、セパレータ遠位先端113が、針遠位先端128より近位に第1の既定長さL1を取って中間位置に固定的に位置決めされサイズ遷移部分127の側方非被覆区分131から突き出ている(図8Aに示す)ように、スイッチ102がその標準位置にあることをユーザーは確かめなくてはならない。第1の既定長さL1は前記強膜の厚さより短く、随意的には0.2mmから1.5mmの範囲内で、随意的には長さ約0.5mmである。セパレータ遠位先端113が中間位置にある状態で、器官作用デバイス100が適用され(図12D)、針遠位先端128を使用して強膜部分SPの中へ(但し全通させずに)、眼の外表面をセパレータ遠位先端113と接触させるまで穿通するべく(図12E図12G)器官作用デバイス100が適用される。図示の様に、強膜穿通は、2つのアンカー207の間で針穿通点に隣接する眼の外表面に対し30度から120度の範囲内の穿通角度で随意的には垂直に施行される。
【0068】
針遠位先端128が強膜部分SP内で第1の既定長さL1に等しい深さに至ると、針遠位先端128は次いで急勾配の穿通角度から、穿通点に隣接する眼外表面に対して0度から30度の範囲内の浅い角度へ、随意的には接線方向に操縦される(図12H図12Jに示す)。器官ドッキングデバイス200は器官接触面202に対して角度を付けられた針方向決め面203を有する構成であり、よって、針遠位先端128の操縦は、針遠位先端128が既定の針穿通経路204の方向に強膜部分SPの方を指した状態で(針のベベル部分が眼の方を向いて位置決めされた状態で)位置決めアクチュエータ101を針方向決め面の上で針方向決め面に沿って位置決めすることによって達成される。既定の針穿通経路204に沿った針105の穿通を確実にするために、アクチュエータ101の整列要素130が器官ドッキングデバイス本体201の細長い陥凹211に嵌め込まれている。
【0069】
針遠位先端128の注入角度への操縦に続いて、セパレータ遠位先端113が最近位位置に退避させられ(図12K)、セパレータ遠位先端113はサイズ遷移部分127の側方非被覆区分より近位で針ルーメン124内にすっぽり隠れる。針遠位先端128は、次いで、制限されることなく強膜内を前進方向に第1の既定長さL1の最大進行長さまで押し出されることができる(図12C)。注入角度が浅く、随意的には強膜層に対して大凡接線方向であるので、針は脈絡膜の中へ穿通することなく強膜内を数ミリの深さだけ進むことができ、例えば1mmから5mmの範囲内の長さ、随意的には約3mmの長さに沿って進むことができる。許容される穿通長さを過ぎることは外部ストッパ123によって抑制され又は妨害される。
【0070】
脈絡膜の中への有向性通路を作成するうえで、鋭利な針の使用は脈絡膜の血管への損傷を防ぐために回避されており、よって通路は代わりに鈍なセパレータ遠位先端113を用いて作成される。したがって、組織セパレータ107が針ルーメン124内を遠位方向にシフトされ、その結果、セパレータ遠位先端113が少なくとも1mm随意的には約2mmの第2の既定長さL2に沿って針遠位先端128より遠位の最遠位位置に位置変えされ(図12M)、それにより強膜部分SP内を前進し、脈絡膜CRの中へ穿通し脈絡膜CR内に通路PSGを形成する(図12Nに示す)。
【0071】
通路PSGは、脈絡膜CRの血管外脈絡膜層に通るように眼中での長さ及び向きを有していてもよい。随意的、追加的、又は代替的に、通路PSGは、強膜部分SPより遠位の脈絡膜上腔を広げるように眼中での長さ及び向きを有していてもよい。随意的、追加的、又は代替的に、通路PSGは、脈絡膜CRとそれに隣接する網膜色素上皮層の間を延びるように眼中での長さと向きを有していてもよい。
【0072】
通路PSGを形成した後、セパレータ遠位先端113が、随意的には最近位位置まで、再度退避させられ針ルーメン124内にすっぽり隠れたら(図12N)、次いでシリンジ12を使用して医薬品を通路PSGの中へ注入することができる。ここに説明されている方法及びデバイスは、動物(特に哺乳類の眼)の網膜下腔へ(又は脈絡膜の血管外脈絡膜層、又は脈絡膜上腔、又は脈絡膜とそれに隣接する網膜色素上皮層の間へ)、活性成分(例えば薬理活性原末及び/又は細胞及び/又は遺伝子)の薬理学的有効量を適切な担体中に含む組成物の様な療法組成物(特に液体の療法組成物)を送達するのに使用されることができる。
【0073】
投与される療法組成物の量は、何れの適切な量であってもよく、活性成分の性質、活性成分の濃度、治療状況、治療にあたる医師の専門家としての判断といった様な因子に依存し、必要以上の実験をしなくても当業者によって容易に計算でき又は求めることができる。とはいえ、典型的には、ここに説明されている方法及びデバイスを使用してヒトの眼に投与される組成物の量は、約500マイクロリットルまで、約300マイクロリットルまで、より典型的には約150マイクロリットルまでとされる。典型的には、投与される組成物の量は約10マイクロリットルと約150マイクロリットルの間である。本明細書での使用に際し「療法組成物」とは、活性成分の1つ又はそれ以上と薬理学的に受容され得る担体及び賦形剤の様な他の成分との製剤をいう。療法組成物の目的は被術者への活性成分の投与を容易にすることである。
【0074】
「薬理学的に受容され得る担体」という用語は、被術者への有意な刺激を生じさせず投与される活性成分の活性及び特質を実質的に抑止しない担体又は希釈剤をいう。これらの語句の下には補助剤が含められる。「賦形剤」という用語は、活性成分の投与を更に容易にするように療法組成物へ添加される不活性物質をいう。
【0075】
本明細書の教示を実施する場合に使用される療法組成物は、賦形剤及び補助剤を備える1つ又はそれ以上の薬理学的に受容され得る担体を使う従来のやり方であって、活性成分の薬理学的組成物への加工を容易にし、概して活性成分の或る量を他の成分と混合する工程を含むやり方で、当業者になじみのある技法を使用して配合されてもよい。適切な技法は、「レミントンの薬理科学」、米国ペンシルバニア州イーストン、マック出版、最新版(“Remington’s, Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co., Easton, PA, latest edition)に記載されており、同誌をここに参考文献として援用する。例えば、本明細書の教示を実施する場合に有用な薬理学的組成物は、当技術でよく知られている1つ又はそれ以上のプロセス、例えば混合、配合、均質化、溶解、粒状化、乳化、カプセル化、閉じ込め、及び凍結乾燥のプロセスによって製造されてもよい。
【0076】
本明細書の教示を実施するのに適した薬理学的組成物は、意図された目的を実現するのに有効な量(薬理学的有効量)の活性成分を備える組成物を含む。薬理学的有効量の決定は、ゆうに当業者の能力の範囲内であり、例えば最初はサル又はブタの様な動物モデルから推定される。
【0077】
上記によれば、本明細書の教示を実施するために使用される療法組成物は、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水、例えば140mMのNaCl、2.8mMのKCl、10mMの第2リン酸ナトリウム、2mMの第1リン酸カリウムの様な何れかの適切な担体を含む。
【0078】
本明細書の教示を実施するために使用される療法組成物は、何れかの適切な活性成分を含んでいる。幾つかの実施形態では、療法組成物は、薬理活性原末、細胞、及び遺伝子のうちの少なくとも1つから成る群より選択される少なくとも1つの活性成分を備えている。適切な活性成分は、限定するわけではないが、以下のうちの何れかの様な薬理活性原末を含む。
【0079】
幾つかの実施形態では、療法組成物は表面糖タンパク質受容体の阻害剤を備えている。
【0080】
幾つかの実施形態では、療法組成物は、抗有糸分裂剤、微小管阻害剤、分泌抑制剤、活性抑制剤、リモデリング抑制剤、アンチセンスヌクレオチド、代謝拮抗剤を備えている。
【0081】
幾つかの実施形態では、療法組成物は、抗がん化学療法剤、増殖阻害剤(血管新生阻害剤を含む)を備えている。
【0082】
幾つかの実施形態では、療法組成物は、抗炎症剤(例えば、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、デキサメタゾン21-リン酸、フルオシノロン、メドライゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン21-リン酸、プレドニゾロン酢酸、フルオロメトロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドロセプレドノール、ジフルプレドネート、フルオロメトロン、又はリメキソロンなど)、非ステロイド系抗炎症剤(例えば、サリチル酸塩、インドメタシン、イブプロフェン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、ピロキシカムブロムフェナク、ケトロラク、トロメサミン、又はネパフェナクなど)、抗アレルギー剤(例えば、クロモグリク酸ナトリウム、アンタゾリン、メタピリリン、クロルフェニラミン、セトリジン、ピリラミン、プロフェンピリダミンなど)、増殖阻害剤(例えば、1,3-シスレチノイン酸など)、充血除去剤(例えば、フェニレフリン、ナファゾリン、テトラヒドロゾリンなど)、縮瞳剤及び抗コリンエステラーゼ(例えば、ピロカルピン、サリチル酸塩、カルバコール-9塩化アセチルコリン、フィソスチグミン、セリン、ジイソプロピルフルオロリン酸塩、ホスホリンヨウ素、臭化デメカリウムなど)を備えている。
【0083】
幾つかの実施形態では、療法組成物は、抗新生物薬(例えば、カルムスチン、シスプラチン、フルオロウラシルなど、免疫学的薬物(例えば、ワクチン及び免疫刺激剤など)を備えている。
【0084】
幾つかの実施形態では、療法組成物は、ホルモン剤(例えば、エストロゲン、エストラジオール、黄体ホルモン系、プロゲステロン、インスリン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、ペプチド、及びバソブレッシン視床下部放出因子など)、免疫抑制剤、成長ホルモン拮抗剤を備えている。
【0085】
幾つかの実施形態では、療法組成物は、増殖因子及び/又はサイトカイン(例えば、上皮細胞増殖因子、繊維芽細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、形質転換増殖因子ベータ、ソマトロピン、フィブロネクチン、神経増殖因子、腫瘍壊死因子、インターロイキン、毛様体神経栄養因子など)を備えている。
【0086】
幾つかの実施形態では、療法組成物は、血管新生の阻害剤(例えば、アンギオスタチン、酢酸アネコルタブ、トロンボスポンジン、VEGF及び/又はVEGF受容体の阻害剤、PDGF及び/又はPDGF受容体の阻害剤など)を備えている。
【0087】
幾つかの実施形態では、療法組成物はドーパミン作動薬を備えている。
【0088】
幾つかの実施形態では、療法組成物は放射線療法剤を備えている。
【0089】
幾つかの実施形態では、療法組成物はペプチド、タンパク質、酵素、細胞外基質成分を備えている。
【0090】
幾つかの実施形態では、療法組成物はACE阻害剤を備えている。
【0091】
幾つかの実施形態では、療法組成物は遊離基捕捉剤、キレート剤、酸化防止剤を備えている。
【0092】
幾つかの実施形態では、療法組成物は抗ポリメラーゼ剤を備えている。
【0093】
幾つかの実施形態では、療法組成物は光線力学療法剤を備えている。
【0094】
幾つかの実施形態では、療法組成物は遺伝子療法剤及び遺伝子編集剤(限定するわけではないが、ウイルスベクター、CRISPR/Cas9、メガヌクレアーゼ、ZFN、TALENを含み得る)を備えている。
【0095】
幾つかの実施形態では、療法組成物は遺伝子ノックダウン剤、例えば、RNAを含むものなどを備えており、限定するわけではないがSiRNA、ShRNA、AS-RNA、例えばQR110などを含み得る。
【0096】
幾つかの実施形態では、療法組成物は療法剤、例えば、プロスタグランジン、抗プロスタグランジン剤、プロスタグランジン前駆体、などを備えている。
【0097】
幾つかの実施形態では、療法組成物は抗血管新生剤、例えば、ラニビズマブ、ベバシズマブ、アフリベルセプト、又はペガプタニブ、又はそれらの組合せのなどを備えている。
【0098】
幾つかの実施形態では、療法組成物は抗血管内皮増殖因子(抗VEGF)剤、例えば、マクゲン、ルセンティス、アバスチン、アイリーア、ブロルシズマブ、アビシパーペゴル、OPT-302、又は何れかの適切なバイオシミラー、バイオベター、又はそれらの組合せなどを備えている。
【0099】
幾つかの実施形態では、療法組成物は架橋剤を備えている。
【0100】
幾つかの実施形態では、療法組成物は短期及び長期バックリング効果を期した増粘剤を備えている。
【0101】
幾つかの実施形態では、療法組成物はTNFアルファ阻害剤、例えば、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、セルトリズマブ、又はゴリムマブなどを備えている。
【0102】
幾つかの実施形態では、療法組成物はmTOR阻害剤、例えば、シロリムス、エベロリムス、テムシロリムス、又はmTORキナーゼ阻害剤などを備えている。
【0103】
幾つかの実施形態では、療法組成物は神経保護剤、例えば、酸化防止剤、カルシニューリン阻害剤、NOS阻害剤、シグマ-1モジュレーター、AMPA拮抗剤、カルシウムチャネルブロッカー、又はヒストン脱アセチル化阻害剤などを備えている。
【0104】
幾つかの実施形態では、療法組成物は補体阻害剤、例えば、ランパリズマブなどを備えている。
【0105】
幾つかの実施形態では、療法組成物は抗血小板由来増殖因子(PDGF)阻害剤(anti-platelet derived growth factor inhibitor)、例えば、抗血小板剤、トロンビン阻害剤、抗血栓形成剤、血栓溶解剤、線維素溶解剤、ペグプレラニブ、リヌクマブ、DE120、ボロラニブ(X-82、CM-082)などを備えている。
【0106】
幾つかの実施形態では、療法組成物はアンジオポエチン経路阻害剤、例えば、ネスバクマブ(REGN-910-3)、RG-7716、ARP-1536、AKB-9778などを備えている。
【0107】
幾つかの実施形態では、療法組成物は降圧剤、例えば、血管攣縮阻害剤、カルシウムチャネルブロッカー、血管拡張剤、アセタゾラミド(URAMOX、DIAMOX)などを備えている。
【0108】
幾つかの実施形態では、療法組成物は、抗菌薬及び抗生物質(例えば、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシン、グラミシジン、セファレキシン、オキシテトラサイクリン、クロラムフェニコール、リファンピシン、シプロフロキサシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、エリスロマイシン、ペニシリン、スルファナミド系、スルファジアジン、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルフィソキサゾール、ニトロフラゾン、プロピオン酸ナトリウムなど)、抗真菌剤(例えば、アンポテリシンB及びミコナゾールなど)を備えている。
【0109】
幾つかの実施形態では、療法組成物は抗ウイルス薬、例えば、イドクスウリジントリフルオロチミジン、アシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロン、抗AIDS CMVなどを備えている。
【0110】
幾つかの実施形態では、療法組成物は代替標的、例えば、ICON-l(hl-conl)-0.3mg硝子体内注射、カロツキシマブ(DE-122、TRC105)などを備えている。
【0111】
幾つかの実施形態では、療法組成物は毒素類、例えば、ボツリヌス毒素などを備えている。
【0112】
幾つかの実施形態では、療法組成物は組織標的指向化剤、例えば、ブリリアントブルー、抗体、又は組織標的指向化のための他の小分子などを備えている。
【0113】
幾つかの実施形態では、療法組成物は架橋剤を備えている。
【0114】
幾つかの実施形態では、療法組成物は薬物放出制御製剤、例えば、限定するわけではないがPEG化、ハイドロゲルデポ、非生分解性蛍光ポリスチレン粒子、生分解性製剤などを備えている。
【0115】
幾つかの実施形態では、療法組成物は細胞療法促進剤、例えば、限定するわけではないが幹細胞、前脳由来ヒト皮質神経前区細胞、網膜前区細胞、成熟した光受容体細胞、及びRPE細胞などを備えている。幾つかの実施形態では、幹細胞は、海馬幹細胞、ES細胞、骨髄幹(間質)細胞、及び網膜幹細胞から成る群より選択されている。
【0116】
幾つかの実施形態では、本明細書の教示は、眼の障害、例えば網膜色素変性症、黄斑変性症(萎縮性黄斑変性症を含む)、ベスト病、スターガルト病、ソルスビー病、若年性黄斑変性症、中心性輪紋状脈絡膜ジストロフィ、中心性漿液性脈絡網膜症、コロイデレミア、脈絡膜黒色腫、コート病、錐体杆体ジストロフィ、角膜ジストロフィ、フックスジストロフィ、嚢胞様黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、ドインハニカム網膜ジストロフィ、高血圧性網膜症、緑内障、若年性網膜分離症、網膜格子様変性、レーバー粟粒血管腫症、眼ヒストプラズマ症、眼虚血症候群、乳頭血管炎、ポリープ状脈絡膜血管症、トキソプラズマ症、及びアッシャー症候群など、血管閉塞、炎症、例えばブドウ膜炎、脈絡膜炎、及び網膜炎など、及び新生物を含む様々な腫瘍、の治療のために使用され及び/又は実施される。
【0117】
幾つかの実施形態では、本明細書の教示は眼の疾患を治療するのに実施される。幾つかの実施形態では、本明細書の教示に従って治療される眼の疾患は萎縮型黄斑変性症であり、療法組成物はPBSの様な担体中に活性成分としての幹細胞を備えている。
【0118】
幾つかのその様な実施形態では、濃度は約10,000細胞/ミリリットルと約1,000,000細胞/ミリリットルの間であり、幾つかの実施形態では約200,000細胞/ミリリットルと約400,000細胞/ミリリットルの間であり、また幾つかの実施形態では約250,000細胞/ミリリットルと約350,000細胞/ミリリットルの間である。
【0119】
幾つかのその様な実施形態では、被術者がヒトである場合、約1マイクロリットルと約500マイクロリットルの間の療法組成物、幾つかの実施形態では約100マイクロリットルと約300マイクロリットルの間の療法組成物が投与される。本明細書では本発明の実施形態は主に生体ヒト被術者の治療に関連付けて説明されている。但し、本発明の実施形態は、ヒトでない哺乳類、例えば、ブタ及び他のブタ科、イヌ及び他のイヌ科、ネコ及び他のネコ科、ウマ及び他のウマ科、サル、類人猿、及びウシなどの獣医学的又は産業的(農業的)処置のために施行されるものと理解される。
【0120】
医薬品及び/又はその作用物質は、随意的には以下からなる群より選択され、つまり、(限定するわけではないが)表面糖タンパク質受容体の阻害剤、抗有糸分裂剤、抗がん化学療法剤、抗炎症剤、非ステロイド系抗炎症剤、抗新生物剤、ホルモン剤、増殖因子、血管新生の阻害剤、ドーパミン拮抗剤、放射線療法剤、ペプチド、タンパク質、酵素、細胞外気質成分、ACE阻害剤、遊離基捕捉剤、抗ポリメラーゼ、光線力学療法剤、遺伝子療法剤及び遺伝子編集剤、抗血管新生剤、VEGF及びVEGF受容体阻害剤、PDGF及びPDGF受容体阻害剤、DNA、RNA、アンチセンスRNA、ウイルス、エクソソーム、毒素、架橋剤、組織標的指向化剤、徐放系、降圧剤、抗菌剤、抗ウイルス薬、細胞、抗生物質、薬剤放出制御製剤、核酸ベースの療法剤、mTOR阻害剤、抗TNFアルファ剤、血管透過性阻害剤、補体阻害剤、又はそれらの組合せから成る群より選択される。医薬品は、低・高粘度及び低・高体積の懸濁液、乳濁液、溶液、ゲル、ナノセラピー、マイクロスフィアの形態、又は、インサートもしくはインプラントの形態をしていてもよい。医薬品注入の総体積及び/又は流量は、例えば、10μLより大きい総体積に設定されることができる。随意的には、通路PSGは、100pLより大きく随意的には500pLまでの総体積の医薬品で溢れる。図12Oは、通路PSGの満液の結果を描いており、脈絡膜と網膜の間の中間層領域全体が医薬品で満たされていることを示している。
【0121】
図13A図13Bは、器官ドッキングデバイス200の或る例示としての変形型である例示としての器官ドッキングデバイス300の等角投影図及び側面断面図をそれぞれ描いている。器官ドッキングデバイス300は、眼ドッキング要素301と、器官作用デバイス(例えば器官作用デバイス100)の遠位部分に適応し及び接続するように構成された第1ポート302と、真空生成デバイス(例えば、ポンプ又はシリンジ)に適応し及び接続するように構成された第2ポート303と、を含んでいる。眼ドッキング要素301は、少なくとも部分的にはシリコンゴムの様な弾性材料から形成されていて、第2ポート303を介して真空力に曝されたときに眼ドッキング要素301の内表面304と眼の外表面の間に閉じ込められる内部体積を小さくしながらも眼の外表面を押圧するように構成されている。
【0122】
図14Aは、随意的にはシステム20の或る例示としての変形型である例示としての器官作用デバイス400の側面断面図を描いている。器官作用デバイス400は、針401(機能及び/又は構造は針105と同様であってもよい)と、針401のルーメン内を滑動するサイズの組織セパレータ402(機能及び/又は構造は組織セパレータ103と同様であってもよい)と、針401に被さって嵌り、そのルーメンを通る針401の滑動に適応するサイズの外管403と、を含んでいる。外管403は、その遠位先端から外管403の長軸に対して或る角度で(随意的には垂直に)立ち上がっているフック404を含んでいる。フック404は、眼の強膜の様な軟組織の中へ穿通し及び軟組織へ固着するための鋭利な先端を有する構成である。外管403の内側のルーメンは、随意的には、流体(医薬品)を針401のルーメンへ送達する、随意的には組織セパレータ402の周りに送達するために、又は随意的には組織セパレータ402が針401から取り出された後に送達するために使用できる。
【0123】
図14Bは、被術者の眼での、強膜部分SPを固着させ、強膜部分SPの中への針穿通を方向決めし、中間層領域への流体注入を容易にするための方法の例示としての諸工程を表現した異なる構成にある器官作用デバイス400の図を描いている。構成(I)では、デバイス400はフック404を標的の強膜部分SPに隣接させて位置決めされており、一方、組織セパレータ402の遠位先端は針401の遠位先端より近位に提供されている。構成(II)では、デバイス400が強膜部分SPに押し付けられたことに続いてフック404が部分的に強膜部分SPの中へ穿通される。構成(III)では、フック404が定着された強膜部分SPを介し眼球運動を防止するように反作用力を加えることによって眼を固着させている間に、針401が前方に押し出され、その遠位先端で眼の外表面に対して浅い角度で約1mm~2mmの深さだけ強膜部分SPを穿通していることが示されている(よって、針401は強膜の中を進むときに強膜部分SPを通過して脈絡膜層の中まで至らない)。構成(IV)では、フック404が眼を固着させ、針404が強膜内への前進に続いて所定位置に位置決めされている間に、組織セパレータ402が前方へ押し出され、強膜部分SPを横断し、その遠位先端で以て針401の遠位先端に対して約2mmから3mm深く脈絡膜層の中へ穿通した後の状態が示されている。その後、組織セパレータ402は引き出され、医薬品の送達に備えた細長い通路(例えば図12Nの通路SPGと同様)が残る。
【0124】
これより、被術者の眼内の中間層領域への注入を容易にするための或る例示としてのシステムユニット500の側面断面図を描いている図15Aを参照する。システムユニット500は、中を通る流体を加圧するためのシリンジのピストンの長さに適応するように構成された細長いチャネル502を収納しているユニット本体501を含んでいる。細長いチャネル502は、その遠位端を介して、ユニット本体501内で、組織セパレータ504(機能及び構造は組織セパレータ103と同様)のカニューレ503と流体接続されている。組織セパレータ503は、針506(機能及び構造は針105と同様)のルーメンに嵌合しルーメンに沿って滑動するように構成された細身のプローブ505を更に含んでいる。
【0125】
図15Bは、システムユニット500の組み立てられた構成要素の幾つかの等角投影図を描いており(但し、分かりやすくするためにシステムユニット内の組み立てられた他の構成要素は描画上隠されている)、図15Cは異なる構成(I)、(II)、及び(III)にある同じ組み立てられた構成要素の図を描いている。図示されている様に、ユニット本体501には、針506へ滑動可能に接続された遠位側外引き出し508と、組織セパレータ504へ固定的に接続された近位側内引き出し509を備える伸縮式引き出し機構507が提供されていて、針506の中の及び針506を通ってのプローブ505の軸方向滑動に対する組織セパレータ504と針506の間の相対運動を(例えば拘束又は区画化によって)容易にするように構成されている。
【0126】
図15Cに示されている様に、構成(I)では、ユニット本体501は針506と共に、眼の標的強膜部分の中へ、針穿通点に隣接する眼の外表面に対して30度から120度の範囲内の急勾配の穿通角度で、随意的には垂直に、向き付けられている(図12F及び図12Gと同様)。この構成では、組織セパレータ504は針506内を自由に滑動することができる。
【0127】
図15Cに示されている様に、構成(II)では、ユニット本体501は針506と共に、穿通点に隣接する眼の外表面に対して10度から30度の範囲内の中間角度で向き付けられている。この構成では、組織セパレータは、針506の遠位先端に対して退避位置へ拘束されていて、針ルーメン内にすっぽり隠れている。
【0128】
15Cに示されている様に、構成(III)では、ユニット本体501は針506と共に、穿通点に隣接する眼の外表面に対して0度から10度の範囲内の浅い注入角度で向き付けられている(図12Kに示されているのと同様)。この構成では、組織セパレータ504は針506内を自由に滑動することができる。
【0129】
遠位側外引き出し508はユニット本体501の外側腕部510と共にピボット接続により器官ドッキング部材511へ接続しており、それにより、器官ドッキング部材511の遠位端に設けられていて標的器官(例えば眼球)の外表面によって課される形状に合う又はなじむように構成されている器官接触面512に対する針506の角度配向の範囲が実現しやすくなっている。器官ドッキング部材511は、機能及び構造が器官ドッキングデバイス200と同様であり、標的組織部分への針506の穿通に先立って標的組織部分を固着させるためのアンカー513と、針方向決め面514であって、その上に外側腕部510が載り針506が遠位方向に器官接触面512に向かって進行するときの器官接触面512を横断する既定の針穿通経路を実現しやすくするように構成された針方向決め面514と、を更に含んでいる。
【0130】
器官ドッキング部材511は、更に、外側腕部510の、針方向決め面514に対して遠い位置(例えば図15Cの構成(I)に示す)から針方向決め面514に対して近い位置(例えば図15Cの構成(II)に示す)までの回転中の、針506に対する組織セパレータ504の直線的動きを有効にするように構成された湾曲軌道面515を含んでいる。近位側内引き出し509は、外側腕部510の遠い位置から近い位置への回転中にそれぞれの湾曲軌道面515上を継続的に滑動するように構成され配置された軌道従動子面157を個々に有する内側腕部516を含んでおり、よって、組織セパレータ504は、外側腕部510が中間位置(例えば図8Aに示されている中間位置と同様)から退避位置(例えば図8Bに示されている最近位位置と同様)へ動く間は退避されるようになっている。針510に対する組織セパレータ504のこの動きは、ユニット本体510の回転中のきわめて短い移動距離(例えば、1mm又はそれ未満、随意的には0.5mm)に沿った精密なシフトを有効にし、ユーザーがこの細心の注意を要する操縦時のプロセスの他の態様に集中できるようにするので、好都合であると考えられる。
【0131】
文法上の単数形で書かれている以下の用語、即ち原文の冠詞の対訳である「或る」及び「当該」のそれぞれは、本明細書での使用に際し、「少なくとも1つ」又は「1つ又はそれ以上」を意味する。本明細書で「1つ又はそれ以上」という語句が使用されたからといって、「或る」又は「当該」のこの意図される意味が変わるわけではない。したがって、本明細書での使用に際し「或る」又は「当該」は更に、本明細書に別途明確に定義又は表明されていない限り或いは文脈が明白にそうでないと指示していない限り、複数個の表示実在物又は対象を指し及び網羅し得る。例えば、「或るユニット」、「或るデバイス」、「或る組立体」、「或る機構」、「或る構成要素」、「或る要素」、及び「或る工程又は手続き」という語句は、本明細書での使用に際し、同じく、複数のユニット、複数のデバイス、複数の組立体、複数の機構、複数の構成要素、複数の要素、及び複数の工程又は手続きをそれぞれ指し及び網羅し得る。
【0132】
次の用語、即ち、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「備える」、及び「備えている」並びにそれらの言語学上/文法上の変化形、派生語、及び/又は活用形は、本明細書での使用に際し、「○○を含み、但し○○に限定されない」を意味し、表示された(単数又は複数の)構成要素、(単数又は複数の)特徴、(単数又は複数の)特性、(単数又は複数の)パラメータ、(単数又は複数の)整数、又は(単数又は複数の)工程を特定し、尚且つ、1つ又はそれ以上の追加的な構成要素、特徴、特性、パラメータ、整数、工程、又はそれらの群の追加を排除しないと捉えられるべきである。これらの用語のそれぞれは意味的には「本質的に○○から成る」という語句と同等であると考えられる。
【0133】
「方法」という用語は、本明細書での使用に際し、所与のタスクを達成するための工程、手続き、やり方、手段、及び/又は技法を指し、開示されている発明の(単数又は複数の)関連分野の実践者に既知であるか又はその様な実践者によって既知の工程、手続き、やり方、手段、及び/又は技法から容易に開発される工程、手続き、やり方、手段、及び/又は技法を含むが、それらに限定されない。
【0134】
この開示全体を通して、パラメータ、特徴、特性、対象、又は寸法の数的値は、数的範囲形式の観点で表記され又は記述され得る。その様な数的範囲形式は、本明細書での使用に際し、発明の幾つかの例示としての実施形態の実施形を例示しているのであり、発明の例示としての実施形態の範囲を頑なに限定するものではない。したがって、表記又は記述された数的範囲は、更に、当該の表記又は記述された数的範囲内の全ての考えられ得る部分範囲及び個々の数値を指し及び網羅する(ここに、数値は、自然数、整数、又は分数として表され得る)。例えば、「1から6」という表記又は記述された数的範囲は、同じく、「1から6」という表記又は記述された数的範囲内の、例えば「1から3」、「1から4」、「1から5」、「2から4」、「2から6」、「3から6」などの様な全ての考えられる部分範囲、及び例えば「1」、「1.3」、「2」、「2.8」、「3」、「3.5」、「4」、「4.6」、「5」、「5.2」、「6」などの様な全ての考えられ得る個々の数値を指し及び網羅する。これは、表記又は記述された数的範囲の数的な幅、広がり、又は大きさに関係なく適用される。
【0135】
また、数的範囲の表記又は記述について、「約第1数値と約第2数値の間の範囲の」という語句は、「約第1数値から約第2数値の範囲の」と同等である及び同じ意味であると考えられ、ゆえにそれら2つの意味の等しい語句は入れ替え可能に使用され得る。例えば、室温の数的範囲の表記又は記述について、「室温は約20℃と約25℃の間の範囲の温度をいう」という語句は、「室温は約20℃から約25℃の範囲の温度をいう」という語句と同等である及び同じ意味であると考えられる。
【0136】
「約」という用語は、本明細書での使用に際し、表記された数値の±10%をいう。
【0137】
十分に理解されるべきこととして、発明の態様、特性、及び特徴で、分かりやすくするために複数の別々の実施形態の文脈で又は形式で例示的に記述され及び提示されている一部の態様、特性、及び特徴は、単一の実施形態の文脈又は形式で何れかの適切な組合せ又は部分的組合せとして例示的に記述及び提示されることもできる。反対に、発明の態様、特性、及び特徴で、単一の実施形態の文脈又は形式で組合せ又は部分的組合せとして例示的に記述され及び提示されている様々な態様、特性、及び特徴は、複数の別々の実施形態の文脈又は形式で例示的に記述され及び提示されることもできる。
【0138】
発明は特定の例示としての実施形態又はその実例として例示的に記述され及び提示されているが、それの多くの代替型、修正型、及び/又は変形型が当業者には自明であろう、ということは明白である。したがって、全てのその様な代替型、修正型、及び/又は変形型は、付随の特許請求の範囲の広範な範囲の主旨のうちに入り、特許請求の範囲の広範な範囲によって網羅されるものとする。
【0139】
この開示の中で引用され又は参照されている全ての公開、特許、及び/又は特許出願は、各個々の公開、特許、及び/又は特許出願が、特定的かつ個別的に、参考文献としてここに援用されると示されているのとまるで同じ程度に、ここにそっくりそのまま参考文献として本明細書に援用される。加えて、この明細書中の何れかの参考文献の引用又は識別は、その様な参考文献が本発明の先行技術を代表する又は先行技術に相当することの是認と解釈されることも理解されることもあってはならない。項目名が使用される限りにおいて、項目名は必ずしも限定を課すものと解釈されてはならない。
【符号の説明】
【0140】
10 キット
11 システム
12 シリンジ
13 ピストン
14 バレル
15 シリンジコネクタ
100 器官作用デバイス
101 アクチュエータ
102 スイッチ
103 組織セパレータ
104 シール付きコネクタ部材
105 針
106 セパレータハブ
107 カニューレ
108 プローブ
109 プローブ固定部分
110 内側のカニューレ壁
111 プローブ突出部分
112 カニューレ遠位端
113 セパレータ遠位先端
114 ルアー接続
115 スイッチアーム
116 スイッチボタン
117 スイッチピボット接続
118 セパレータポート
119 針コネクタ
120 シール
121 針ハブ
122 針シャフト
123 外部ストッパ
124 針ルーメン
125 針近位端
126 針遠位端
127 サイズ遷移部分
128 針遠位先端
129 ストッパ遠位端
130 整列要素
131 側方非被覆区分
132 インプラント
133 インプラントコネクタ
200 器官ドッキングデバイス
201 器官ドッキングデバイス本体
202 器官接触面
203 針方向決め面
204 針穿通経路
205 定着部材
206 定着用アクチュエータ
207 アンカー
208 アンカー遠位先端
209 基部面
210 定着部材脚部
211 細長い陥凹
212 開口部
213 反対側周辺点
214 組織押圧部材
215 アンカーサイズ遷移部分
216 レストリクター
217 レストリクター先端
218 定着用トリガ
219 トリガアーム
220 トリガピボット接続
221 トリガロック
222 磁石
300 器官ドッキングデバイス
301 眼ドッキング要素
302 第1ポート
303 第2ポート
304 内表面
400 器官作用デバイス
401 針
402 組織セパレータ
403 外管
404 フック
500 システムユニット
501 ユニット本体
502 細長いチャネル
503 カニューレ
504 組織セパレータ
505 プローブ
506 針
507 格納式引き出し機構
508 遠位側外引き出し
509 近位側内引き出し
510 外側腕部
511 器官ドッキング部材
512 器官接触面
513 アンカー
514 針方向決め面
515 湾曲軌道面
516 内側腕部
517 軌道従動子面
L1 第1の既定長さ
L2 第2の既定長さ
L3 第3の既定長さ
SP 強膜部分
CR 脈絡膜
CJ 結膜
PSG 通路
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図12G
図12H
図12I
図12J
図12K
図12L
図12M
図12N
図12O
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C