(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】重水素化天然分枝鎖アミノ酸を含む磁気共鳴画像法及び同種の薬物を使用した診断方法
(51)【国際特許分類】
A61K 49/10 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
A61K49/10
(21)【出願番号】P 2021538461
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 RU2019000324
(87)【国際公開番号】W WO2020139126
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-05-09
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521286097
【氏名又は名称】リミティッド ライアビリティー カンパニー“ソルヴェックス”(“ソルヴェックス”エルエルシー)
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】レシヴ,アレクセイ ヴァレレヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】イヴァシキン,パーベル イヴジェノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】コセンコヴ,アレクセイ ヴィクトロヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】ポルシャコフ,ウラジミール イヴァノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】キセレヴスキー,ミハイル ヴァレンティノヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】コロル’,ボリス ナタノヴィチ
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06574496(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0322865(US,A1)
【文献】YAMAGUCHI H. et al., Bull. Chem. Soc. Jpn.,2002年,75,pp.1563-1568
【文献】HU F. et al.,Scientific Reports,2016年,6:39660
【文献】TAGLANG C. et al.,Chem. Commun.,2018年04月30日,54,pp.5233-5236
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 49/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重水素磁気共鳴画像法及び/または重水素磁気共鳴分光法により、標的組織中の診断薬の蓄積を検出することによる、インビボでの腫瘍性疾患の診断のための、天然分枝鎖アミノ酸(BCAA)重水素化誘導体及び/または天然分枝鎖アミノ
酸重水素化誘導体の薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの化合物を含む診断薬であって、「重水素化誘導体」という用語は、少なくとも1つの位置に、その天然含有量を超える量で炭素に結合した重水素を含む化合物を意味する、診断薬。
【請求項2】
少なくとも1つの薬学的に許容される補助物質をさらに含む、請求項1に記載の診断薬。
【請求項3】
前記薬学的に許容される賦形剤が担体、充填剤及び/または溶媒であることを特徴とする、請求項2に記載の診断薬。
【請求項4】
前記天然分枝鎖アミノ酸重水素化誘導体が、重水素化バリンまたは重水素化ロイシンまたは重水素化イソロイシンである、請求項1に記載の診断薬。
【請求項5】
前記重水素化バリンが、バリン-4,4,4-d
3、バリン-4,4,4,4’,4’,4’-d
6、バリン-3,4,4,4,4’,4’,4’-d
7、バリン-2,4,4,4,4’,4’,4’-d
7、バリン-2,3,4,4,4,4’,4’,4’-d
8である、請求項4に記載の診断薬。
【請求項6】
前記重水素化ロイシンが、ロイシン-3,3-d
2、ロイシン-5,5,5-d
3、ロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-d
6、ロイシン-4,5,5,5,5’,5’,5’-d
7、ロイシン-3,3,5,5,5,5’,5’,5’-d
8、ロイシン-3,3,4,5,5,5,5’,5’,5’-d
9、ロイシン-2,5,5,5,5’,5’,5’-d
7、ロイシン-2,3,3,5,5,5,5’,5’,5’-d
9、ロイシン-2,4,5,5,5,5’,5’,5’-d
8、ロイシン-2,3,3,4,5,5,5,5’,5’,5’-d
10である、請求項4に記載の診断薬。
【請求項7】
前記重水素化イソロイシンが、2-アミノ-3-(CD
3)ペンタン酸、2-アミノ-3-(CD
3)ペンタン-5,5,5-d
3酸、2-アミノ-3-(CD
3)ペンタン-4,4,5,5,5-d
5酸、2-アミノ-3-(CD
3)ペンタン-2,5,5,5-d
4酸、2-アミノ-3-(CD
3)ペンタン-2,3,5,5,5-d
5酸、2-アミノ-3-(CD
3)ペンタン-3,4,4,5,5,5-d
6酸、2-アミノ-3-(CD
3)ペンタン-2,3,4,4,5,5,5-d
7酸、2-アミノ-3-メチルペンタン-5,5,5-d
3酸である、請求項4に記載の診断薬。
【請求項8】
前記重水素化誘導体が全体的または主に1つのエナンチオマーによって表される、請求項1に記載の診断薬。
【請求項9】
前記重水素化誘導体が、全体的にまたは主に2S配置のエナンチオマーによって表される、請求項8に記載の診断薬。
【請求項10】
前記天然分枝鎖アミノ酸重水素化誘導体が、
-バリンまたはその薬学的に許容される塩の少なくとも2つの異なる重水素化誘導体の混合物;または
-ロイシンもしくはその薬学的に許容される塩の少なくとも2つの異なる重水素化誘導体の混合物;または
-イソロイシンもしくはその薬学的に許容される塩の少なくとも2つの異なる重水素化誘導体の混合物;または
-バリン、ロイシン及び/もしくはイソロイシン及び/もしくはそれらの薬学的に許容される塩の少なくとも2つの異なる重水素化誘導体の混合物である、請求項1に記載の診断薬。
【請求項11】
天然分岐鎖アミノ酸及び/またはその薬学的に許容される塩の前記重水素化誘導体が、炭素原子に結合した重水素原子と共に、酸素原子及び/または窒素に結合した可動水素原子を部分的または完全に置換する重水素原子を含む、請求項1に記載の診断薬。
【請求項12】
-複数の位置で炭素原子に結合した重水素原子を含む天然の分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体、もしくはその薬学的に許容される塩;または
-天然の分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体及び/またはそれらの薬学的に許容される塩と、構造的に非等価な位置に重水素原子を含む重水素化誘導体との混合物を含む、請求項1に記載の診断薬
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学、すなわち磁気共鳴画像法のための手段に関する。
【背景技術】
【0002】
早期診断など、疾患の非侵襲的診断は、ヘルスケアにおける重要な優先分野である。疾患の診断のための有益な方法の1つは、磁気共鳴画像法(MRI)である。
【0003】
臨床診療で使用されるほとんどのタイプのMRIは、ヒトの身体の水に含まれる陽子(1H核)の磁気共鳴シグナルの記録に基づく。1H MRIは、高度な解剖学的詳細を提供する。同時に、臨床診療から、MRIが疾患の性質に関する明確なデータを常に提供するとは限らないことが知られている。特に、腫瘍学では、悪性腫瘍と生命を脅かさない良性の形成、炎症の病巣などを確実に区別することは依然として困難である[例えば、Baltzer,P.A.T.et al.Am.J.Roentenology,2010,194,1658-1663;Shahid,H.et al.Appl.Radiol.2016,45,7-13を参照のこと]。この点で、偽陽性の結果のリスクが高いため、腫瘍性疾患の早期診断も困難である。
【0004】
1H MRIをより有益なものにする主な方法は、環境内の水プロトンの緩和時間を変更させる造影剤を使用することである[Topics in Current Chemistry,Contrast Agents I,Magnetic Resonance Imaging.Krause,W.(Ed.),Springer,2002]。ガドリニウム錯体である市販のOmniscan(登録商標)、Magnevist(登録商標)、ProHance(登録商標)及びClariscan(登録商標)、ならびに安定化磁性ナノ粒子の水性懸濁液であるFeridex(登録商標)及びResovist(登録商標)など、幅広い造影剤がMRI診断で使用されることが知られている。画像のコントラストを高めることに加えて、これらの物質では、灌流の評価が可能になる。
【0005】
造影剤を使用した1H MRIの代替手段は、他の核からのシグナルの登録であり、特に、同位体31P、13C、19F、23Naを使用する方法は、臨床試験の様々な段階にある。
【0006】
重水素(2H)は、水素の天然の非放射性同位体であり、生物学的対象中の含有量は、水素の総量の0.0156%である。
【0007】
米国特許第5042488号明細書は、in vivo(ラットの肝臓)でのD2O及び1-重水素グルコースの注入後に重水素シグナルを登録する可能性を示した。
【0008】
米国特許第20030211036(A1)号明細書は、常磁性造影剤との類推により、同位体標識化合物(例えば、D2O)を使用して、選択した組織切片の灌流を測定する方法を提唱した。
【0009】
米国特許出願公開第2010/0322865号明細書は、代謝率を推定するための代謝水前駆体の使用について記載している。1,2,3,4,5,6,6-重水素化グルコースは、HODの代謝前駆体の例として言及されている。記載された発明の枠組み内では、代謝水重水素及び脂肪酸の脂肪族鎖に関するNMRシグナルのみが記録され、重水素化グルコースのNMRシグナルは記録されていない。
【0010】
この研究[Washburn et al.,Nucl.Med.1978,19,77-83]から、ラセミ体の1-14C-バリン及び1-11C-バリンは、主に動物の膵臓内に蓄積することが知られている。同時に、疾患の非侵襲的診断のための同位体標識されたバリン誘導体の適用は、先行技術から知られていない。
【0011】
14C-ロイシンは、タンパク質合成速度の指標として生化学的科学研究において広く使用されている(ロイシンは、特定の組織内で合成されるすべてのタンパク質に含まれている)。この用途では、典型的には、標的組織の侵襲的なサンプリングを必要とする。
【0012】
バリン、ロイシン、及びイソロイシンは、分枝鎖アミノ酸(BCAA)の群に属している。この群のメンバーは、同じトランスポーターを介して細胞膜に浸透でき、代謝の初期段階は、同じ酵素(分岐鎖アミノ酸のトランスアミナーゼ及びデカルボキシラーゼ)によって触媒されるため、特定の生化学的類似性を有する。
【0013】
1H MRI技術の広範な臨床応用にもかかわらず、依然として、MRI診断のより効果的な新規方法を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許第5042488号明細書
【文献】米国特許第20030211036(A1)号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0322865号明細書
【非特許文献】
【0015】
【文献】Baltzer,P.A.T.et al.Am.J.Roentenology,2010,194,1658-1663;Shahid,H.et al.Appl.Radiol.2016,45,7-13
【文献】Topics in Current Chemistry,Contrast Agents I,Magnetic Resonance Imaging.Krause,W.(Ed.),Springer,2002
【文献】Washburn et al.,Nucl.Med.1978,19,77-83
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、MRI及び/またはMR分光法及び特定の薬剤の使用を伴う診断方法によって、疾患を診断するための効果的な新規診断薬を開発することである。
【0017】
本発明の技術的成果は、局所的に変化した(増加または減少した)細胞による栄養吸収レベル、特に腫瘍性疾患を伴う疾患及び病理学的プロセスの、磁気共鳴画像法及び/または重水素磁気共鳴分光法による非侵襲的診断に使用できる効果的な新規診断薬を作製することである。
【0018】
【0019】
したがって、本発明の診断薬中の重水素化化合物は、シグナル記録に十分な時間、重水素の選択的蓄積及び標的組織内におけるその濃度の維持の両方を保証するような、一連の物理化学的特性及び生物学的特性を有するべきである。組織内で達成される重水素化化合物の濃度が低いほど、シグナルを平均化するために必要な時間が長くなり、したがって、重水素化化合物が組織内に存在する時間が長くなり、選択的な分布が維持される。一方、診断薬の用量を増加させることは、その排泄を加速させることができ(特に、腎臓の再吸収能力を超えることによって)、毒性のリスクが高まり、様々な組織内での蓄積の選択性が低下し、さらに用量が溶解度によって制限されるため、普遍的な解決策ではない。
【0020】
アミノ酸など、ほとんどの化合物について、病態の場合に組織内で達成可能な最大の非毒性濃度に関するデータはない。結果として、上記の基準を満たす診断薬の開発には、2H MRI及び/またはin vivo MR分光法におけるその適用性の実験的証拠が必要である。
【0021】
本発明の技術的成果はまた、局所的に変化した(増加または減少した)細胞による栄養吸収レベル、特に腫瘍性疾患を伴う疾患及び病理学的プロセスを、本発明の診断薬の導入など、磁気共鳴画像法及び/または重水素磁気共鳴分光法により診断するための効果的かつ有益な新規方法の開発であり、これにより、in vivoで有益な重水素断層像または2H-NMRスペクトルを登録するのに十分な濃度で、標的組織及び器官(特に腫瘍組織)に蓄積することができる。本発明の実施における追加の技術的成果は、スキャンされた領域の異なる点での灌流のレベルに関する情報、腫瘍の構造、その境界、腫瘍の悪性度または良性に関する情報を取得する能力である。別の追加の技術的成果は、スキャンされた領域での代謝プロセスの局所速度を評価できることであり、これにより、代謝活性及び/または細胞増殖のレベル、腫瘍成長の速度を評価することが可能になり、これは、診断の信頼性及び妥当性を高める追加のパラメータである。
【0022】
本発明の方法はまた、電離放射線の有害な効果なく実施され(典型的には、例えば、CT、PET、SPECT画像化のために)、かつ検査の安全性を高め、これにより、さらに頻繁に繰り返し検査を行うことが可能になることを特徴とし、特に、この方法は、小児科にとって魅力的なものとなる。本発明は、ポジトロン放出断層撮像法または単一光子放出コンピュータ断層撮像法の方法と同様の診断情報を取得し(病理組織内における薬物蓄積のレベルまたは速度の基準から、または同じ組織/同じ器官の周辺部分で達成された値からの偏差)、かつ放射性医薬品の電離放射線に関連するリスクを消失させることを目的としている。さらに、PET用の放射性医薬品とは異なり、本発明の重水素化薬物の製造は、短寿命同位体の小バッチの合成及びロジスティクスに限定されるものではない。
【0023】
特定の技術的成果は、磁気共鳴画像法及び/または重水素磁気共鳴分光法による疾患の診断のための、天然分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体及び/または薬学的に許容される塩またはそれらの混合物を含む診断薬の開発を介して達成される。
【課題を解決するための手段】
【0024】
したがって、本発明の第1の態様は、磁気共鳴画像法及び/または重水素磁気共鳴分光法による疾患または病理学的プロセスの診断のために、天然分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体及び/または天然分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体の薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1つの化合物を含む診断薬である。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、診断薬は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。いくつかの特定の場合において、薬学的に許容される賦形剤は、担体、充填剤及び/または希釈剤である。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態において、天然分枝鎖アミノ酸及び/またはその薬学的に許容される塩の重水素化誘導体は、炭素原子に結合した重水素原子と共に、酸素及び/または窒素原子に結合した可動水素原子を部分的または完全に置換する重水素原子を含む。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態では、診断薬は、
-複数の位置で炭素原子に結合した重水素原子を含む天然の分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体、もしくはその薬学的に許容される塩;または
-天然の分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体及び/またはそれらの薬学的に許容される塩と、構造的に非等価な位置に重水素原子を含む重水素化誘導体との混合物を含む。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態では、重水素化天然分枝鎖アミノ酸誘導体は、重水素化バリンまたは重水素化ロイシンまたは重水素化イソロイシンである。
【0029】
本発明のいくつかの特定の実施形態では、重水素化バリンは、バリン-4,4,4-d3、バリン-4,4,4,4’,4’,4’-d6、バリン-3,4,4,4,4’,4’,4’-d7、バリン-2,4,4,4,4’,4’,4’-d7、バリン-2,3,4,4,4,4’,4’,4’-d8である。
【0030】
いくつかの特定の実施形態では、重水素化ロイシンは、ロイシン-5,5,5-d3、ロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-d6、ロイシン-4,5,5,5,5’,5’,5’-d7、ロイシン-3,3,5,5,5,5’,5’,5’-d8、ロイシン-3,3,4,5,5,5,5’,5’,5’-d9、ロイシン-2,5,5,5,5’,5’,5’-d7、ロイシン-2,3,3,5,5,5,5’,5’,5’-d9、ロイシン-2,4,5,5,5,5’,5’,5’-d8、ロイシン-2,3,3,4,5,5,5,5’,5’,5’-d10である。
【0031】
本発明のいくつかの特定の実施形態では、重水素化イソロイシンは、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-5,5,5-d3酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-4,4,5,5,5-d5酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-2,5,5,5-d4酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-2,3,5,5,5-d5酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-3,4,4,5,5,5-d6酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-2,3,4,4,5,5,5-d7酸、2-アミノ-3-メチルペンタン-5,5,5-d3酸である。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、重水素化誘導体は、全体的または主に1つのエナンチオマーによって表される。本発明のいくつかの特定の実施形態では、重水素化誘導体は、全体的または主に2S配置を有するエナンチオマーによって表される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態では、診断薬は、重水素化天然分枝鎖アミノ酸誘導体及び/または重水素化天然分枝鎖アミノ酸誘導体の薬学的に許容される塩から選択される少なくとも2つの異なる化合物の混合物を含む。本発明のいくつかの特定の実施形態では、診断薬は、バリン-4,4,4,4’,4’,4’-d6、バリン-2,4,4,4,4’,4’,4’-d7、ロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-d6、ロイシン-3,3-d2から選択される少なくとも2つの化合物の混合物を含む。
【0034】
本発明の特定の実施形態では、診断薬は、分枝鎖アミノ酸代謝の阻害剤、特に分枝鎖アミノ酸トランスアミナーゼの阻害剤を含み得る。例えば、ガバペンチン(A.Goldlust et al.Epilepsy Res.1995,22(1),1-11)、ベンズイミダゾール(H.Deng et al.ACS Med.Chem.Lett.2016,7(4),379-384)から選択されるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の別の態様は、対象における疾患または病理学的プロセスを診断するための方法であって、本方法は、
-本発明の診断薬を対象に投与するステップと;
-診断薬を標的組織内に蓄積させるために十分な時間内に投与した後、磁気共鳴画像法及び/または重水素磁気共鳴分光法を実施して、それぞれ、断層像(重水素断層像)及び/またはNMRスペクトルを取得するステップと;
-疾患の有無が、診断薬の蓄積レベルを反映して、観察された重水素核シグナル強度に基づいて、診断されるステップと、を含む。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、診断された疾患または病理学的プロセスは、細胞による栄養素吸収レベルの局所的変化(増加または減少した)を伴う。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、病理学的プロセスは、炎症プロセス、感染プロセス、活発な再生を伴うプロセス、器官器及び組織の虚血に関連する疾患、移植片拒絶反応、自己免疫疾患である。本発明の他のいくつかの実施形態では、疾患は、腫瘍性疾患である。本発明のいくつかの特定の実施形態では、腫瘍性疾患は、固形腫瘍またはリンパ節転移などの腫瘍転移である。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態では、疾患の有無は、検査を受けている対象における重水素核のシグナル強度を、標的組織または器官における健康な対象において観察される典型的なシグナル強度と比較することによって診断される。本発明の他のいくつかの実施形態では、疾患の有無は、追加の健康診断結果に従って、正常組織及び異常組織に対応する領域における重水素核のシグナル強度の比較に基づいて診断される。本発明のいくつかの実施形態では、疾患の有無は、上記の比較の組み合わせに基づいて診断される。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、重水素核以外の核の磁気共鳴画像法、超音波検査、コンピュータ断層撮影、X線撮影、触診、生検、腫瘍マーカーに関する生体液の分析、放射性核種診断及び/または視覚的観察から選択される少なくとも1つの追加の健康診断が実施される。本発明のいくつかの実施形態では、上記のように、磁気共鳴画像法及び/または重水素磁気共鳴分光法を使用して、疾患または病理学的プロセスを診断する前に、追加の健康診断が実施される。本発明の他のいくつかの特定の実施形態では、上記のように、磁気共鳴画像法及び/または重水素磁気共鳴分光法による疾患または病理学的プロセスの診断後に、追加の健康診断が実施される。
【0040】
本発明のいくつかの特定の実施形態では、疾患または病理学的プロセスの有無は、検査を受けている対象の重水素断層像と、プロチウム核上の対象の磁気共鳴画像法の結果として得られた画像との比較に基づいて診断される。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態では、重水素断層像上での診断薬の蓄積が増加した領域の空間分布を使用して、腫瘍の空間構造に関して結論を出す。
【0042】
本発明の特定の実施形態では、重水素断層像上の重水素シグナル強度及び/または診断薬の蓄積が増加した領域のNMRスペクトルを使用して、腫瘍の悪性または良性について結論を出す。
【0043】
本発明のいくつかの特定の実施形態では、投与後の重水素断層像及び/またはNMRスペクトル上の重水素シグナルの強度の変化率を使用して、スキャンされた領域の様々な点での灌流のレベルについて結論を出す。
【0044】
本発明に関連する対象における疾患または病理学的プロセスを診断するための方法の特定の実施形態はまた、上記の診断薬に関する本発明のすべての実施形態を含む。
【0045】
対象における疾患または病理学的プロセスを診断するための方法のいくつかの実施形態では、投与される診断薬は、
-複数の位置で炭素原子に結合した重水素原子を含む天然の分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体、もしくはその薬学的に許容される塩;または
-天然の分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体及び/またはそれらの薬学的に許容される塩との混合物であって、重水素化誘導体が、構造的に非等価な位置に重水素原子を含む、混合物と、を含む。
【0046】
同時に、標的領域の重水素化誘導体(複数可)の構造的に非等価な位置にある重水素核のシグナル強度の比較に基づいて、天然の分岐側アミノ酸の局所代謝率が評価され、これにより、特に、腫瘍の成長率または悪性度を評価するためのより正確な診断が可能になる。
【0047】
本発明の上記の実施形態のいくつかの特定の場合において、天然の分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体は、
-様々な重水素化バリン誘導体の混合物;または、
-様々な重水素化ロイシン誘導体の混合物;または、
-様々な重水素化イソロイシン誘導体の混合物;または、
-様々な重水素化バリン、ロイシン及び/もしくはイソロイシンの重水素化誘導体の混合物である。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態では、診断薬は、対象に経口投与される。本発明の他のいくつかの実施形態では、診断薬は、対象に非経口投与される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】(a)バリン-4,4,4,4’’,4’,4’-d
6を含むサンプルの重水素断層像(左側)及び
2Hスペクトル(右側);b)ロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-d
6を含むサンプルの重水素断層像(左側)及び
2Hスペクトル(右側)を示す図である。
【
図2】20mgのバリン-4,4,4,4’,4’,4’-d
6の注射後の4T1乳癌を有する断層像を示す図である:a)注射後の異なる時点で得られた
2H断層像(表面コイルは点線によって示す);b)
2H断層像(左側)、
2H及び
1H断層像を重ねたもの(中央)、
1H断層像(右側)。
【
図3】25mgのロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-d
6の注射の40分後の4T1乳癌のマウスの断層像を示す図である。
【
図4】以下の投与後の4T1乳癌のマウスの断層像を示す図である:a)30mgのL-アラニン-3,3,3-d
3;b)10mgのL-フェニルアラニン-β,β,2,3,4,5,6-d
7。
【発明を実施するための形態】
【0050】
定義及び用語
本発明をよりよく理解するために、本発明の本説明で使用される用語のいくつかを以下に示す。
【0051】
本発明の説明の目的のために、「含む(include)」及び「含んでいる(including)」という用語は、「とりわけ、含む」を意味するものと解釈される。これらの用語は、「のみからなる」と解釈されることを意図するものではない。
【0052】
「対象」という用語は、すべての哺乳動物種、好ましくはヒトを包含する。
【0053】
本明細書における「重水素化誘導体」という用語は、少なくとも1つの位置に、その天然含有量を超える量で炭素に結合した重水素を含む化合物を意味する。本発明の特定の実施形態では、重水素含有量は、少なくとも1つの位置で、10%を超え、他の特定の実施形態では、90%である。「少なくとも2つの異なる重水素化誘導体の混合物」は、異なる位置に重水素を含む、または同じ位置に異なる量の重水素を含む化合物の混合物を意味する。本明細書の記号「d」(「D」)は、その天然含有量を超える割合で、同位体2Hによって表される水素原子を示す。
【0054】
重水素化分岐鎖アミノ酸誘導体としては、バリン-4,4,4-D3、バリン-4,4,4,4’,4’,4’-D6、バリン-3,4,4,4,4’,4’,4’-D7、バリン-2,4,4,4,4’,4’,4’-D7、バリン-2,3,4,4,4,4’,4’,4’-D8、ロイシン-5,5,5-D3、ロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-D6、ロイシン-4,5,5,5,5’,5’,5’-D7、ロイシン-3,3,5,5,5,5’,5’,5’-D8、ロイシン-3,3,4,5,5,5,5’,5’,5’-D9、ロイシン-2,5,5,5,5’,5’,5’-D7、ロイシン-2,3,3,5,5,5,5’,5’,5’-D9、ロイシン-2,4,5,5,5,5’,5’,5’-D8、ロイシン-2,3,3,4,5,5,5,5’,5’,5’-D10、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-5,5,5-d3酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-4,4,5,5,5-d5酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-2,5,5,5-d4酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-2,3,5,5,5-d5酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-3,4,4,5,5,5-d6酸、2-アミノ-3-(CD3)ペンタン-2,3,4,4,5,5,5-d7酸、2-アミノ-3-メチルペンタン-5,5,5-d3酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
本明細書の「ボクセル」という用語は、スキャン領域の最小容量エレメントを指し、これは、重水素シグナル強度の特定の値または特定の局所スペクトルに対応する。
【0056】
「構造的に非等価」は、本明細書では、天然の分枝鎖アミノ酸の構造における任意の2つの位置として定義され、次の図において異なる記号で示されている。
【0057】
【0058】
また、別の分岐鎖アミノ酸の構造内の任意の位置に対する1つの分岐鎖アミノ酸の構造内の任意の位置(特に、ロイシンの構造内の任意の位置に対するバリンの構造内の任意の位置)は、構造的に非等価であると見なされる。例えば、構造的に非等価であるものは、a)L-バリン-4,4,4,4’,4’,4’-d6内の4及び4’位;b)L-バリン-4,4,4,4’,4’,4’-d6内の4位、及びL-バリン-3,4,4,4,4’,4’,4’-d7内の3位;c)L-バリン-4,4,4,4’,4’,4’-d6内の4位、及びロイシン-4,5,5,5,5’,5’,5’-d7内の4位である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などなく、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに好適であり、合理的なリスク-利益比を満たす塩を指す。アミン、カルボン酸、ホスホネート、及び他のタイプの化合物の薬学的に許容される賦形剤は、医学において周知である。塩は、本発明の化合物の単離または精製中にin situで調製することができ、また本発明の化合物の遊離酸または遊離塩基をそれぞれ好適な塩基または酸と反応させることによって別々に調製することもできる。薬学的に許容される非毒性酸性塩の例は、塩酸、リン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、アスコルビン酸、クエン酸、酪酸、乳酸、グルコン酸などの有機酸で形成されるアミノ基の塩であるか、またはこの分野で使用される他の方法、例えばイオン交換を使用して得られる塩である。アルカリ及びアルカリ土類金属の典型的な塩には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらに、薬学的に許容される塩は、必要に応じて、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの対イオンを使用して得られる非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム及びアミンカチオンを含み得る。
【0060】
本発明の診断薬は、特定の剤形、特に、本発明の本質を構成する化合物と一緒に、患者の身体に投与することができる任意の担体、希釈剤及び/または充填剤に好適である任意の薬学的に許容される賦形剤のうちの1つ以上を含み得、これらは、この化合物を破壊することなく、投与されたときに無毒である。薬学的に許容される賦形剤の非限定的な特定の例としては、塩化ナトリウム、グルコース、甘味料、食品フレーバー、色などが挙げられる。
【0061】
2H MRIまたはMR分光法を使用した疾患の診断の成功は、特定の重水素化化合物が様々な組織内に選択的に蓄積し、同時に、核磁気共鳴法の基本的な物理的限界(磁気回転比、重水素原子核の緩和パラメータ)の観点から十分である強度を有するシグナルを作り出す能力に基づく。この場合、重水素シグナルの強度は:
a)組織内で達成される重水素の濃度に比例する(用量、膜輸送の動態、組織の濃縮能力に依存する)、
b)スキャン時間の平方根に比例する(時間は、重水素化化合物の消失及び/または代謝の速度、ならびにスキャン手順全体を通して患者が動かないようにする必要性によって制限される)、
c)緩和時間T1に依存する(最大平均化率を決定し、その結果、単位時間あたりに受信される総シグナルの強度を決定する。異なる化合物では、この強度は、数倍異なる:Biological Magnetic Resonance,Volume 11,In Vivo Spectroscopy.Berliner L.J.,Reuben,J.(Eds.),Springer,1992)を参照のこと)。
【0062】
各化合物は、固有の薬物動態パラメータ(特に、化合物の濃度、ならびに血液、様々な器官及び組織内でのその変化率)を有する。この場合、非自明な方法での薬物動態は、使用される用量に依存する(特に、特定の化合物の腎再吸収能力が過剰であることにより、その排泄が加速し得る)。その際、用量は、この化合物の毒性及び溶解性によって制限される。著者によって実施された実験、ならびに先行技術への参照は、D2Oなどの自由に拡散する重水素化合物が、対象の様々な器官及び組織において選択的な蓄積を示さないことを示している。
【0063】
著者らは、本発明の重水素化天然分枝鎖アミノ酸誘導体が以下であることを見い出した。
【0064】
-2H MRIまたはMR分光法により、癌性腫瘍など、in vivoでの様々な器官及び組織の可視化に十分な濃度で動物組織に選択的に蓄積することができる;
-非毒性用量の使用を可能にする薬物動態特性を保有し、かつ2H MRI及び/または2H NMRスペクトルの登録に成功している;
-2H MRI及び/または2H NMRの登録を成功させるのに十分な濃度では、重水素断層撮像法及びMR分光法の時間的制約と一致して、排泄及び代謝がかなり遅いという特徴がある。
【0065】
次に、これにより、重水素磁気共鳴画像法による、腫瘍性疾患の存在及び局在化の決定など、細胞による栄養素吸収レベルの局所的変化(増加または減少した)を伴う疾患及び病理学的プロセスの効果的な診断が可能になる。同時に、本発明者らの実験は、他のアミノ酸、特にグリシン-d2、L-アラニン-3,3,3-d3及びL-フェニルアラニン-β,β,2,3,4,5,6-d7が、好適な物理化学的特性及び生物学的特性を有さないことを実証した。したがって、2H MRIまたはMR分光法による疾患の診断には使用できない。
【0066】
バリン及びロイシンの同位体標識誘導体(14C、13C、3H)は、様々な生体組織のホモジネートから単離されたタンパク質画分を分析することにより、タンパク質合成の速度を決定するために以前に使用されていた(Attaix et al.,Biochim.Biophys.Acta 1986,882,389-397;Goto et al.,Chem.Soc.Bull,1977,25(7),1574-1581)。しかし、これらの研究では、タンパク質内で結合しないバリンまたはロイシンの濃度、及びin vivoでの2H MRIまたはNMR記録と互換性のある病状の組織におけるその低分子量代謝物の濃度を達成する可能性を示唆するデータが不足している。Gotoらのデータより、その後、肝臓及び膵臓内に蓄積された14C-バリンの大部分は、投与後10分以内にタンパク質組成に含まれる。
【0067】
この研究[Washburn et al.,Nucl.Med.1978,19,77-83]から、5mg/kgまでの用量で、ラセミ体の1-14C標識バリンが動物の膵臓内に蓄積することが知られている。この場合、異なる組織内で達成された14C同位体の絶対濃度は、0.021mg/kgの用量についてのみ提示されたデータに基づいて計算され得る。これは、本発明者らが受け取ったデータによれば、2H MRIの実施に必要な用量の約500分の1である。同時に、約0.05~1g/kgの用量で、動物組織内において達成可能なバリンの最大濃度に関する文献データはない。本発明者らのデータ(表1)から確認できるように、動物の器官におけるバリン-4,4,4,4’,4’,4’-D6のメチル基内の重水素の分布は、1-14C-バリンで観察された放射性標識の分布とは異なる。観察された分布の相違は、2つの要因による:
1)本発明のバリン-4,4,4,4’,4’,4’-D6の用量は、1-14C-バリンの最大研究用量よりも100倍以上多い。標的組織での蓄積効率は、動物またはヒトの細胞におけるアミノ酸の細胞内濃度と細胞外濃度との比率に依存する。従来技術から公知であるように、この比率は細胞外濃度に依存する。したがって、2-アミノイソ酪酸及びマウス胸腺細胞の場合、この比率は、100:1~1:1に低下し、細胞外濃度が10-6mmol/Lから10-2mmol/Lを超えるまで増加する[Helmreich,E.,Kipnis,DM 1962,237,8,2582-2589]。したがって、先行技術から以下のように、用量が2桁増加すると(すなわち、1~14Cバリンからバリン-d6に移行するとき)、様々な組織における蓄積の選択性及びコントラストの平準化の急激な減少が予想される。さらに、in vivoでの高用量のアミノ酸(例えば、本発明の重水素化バリン)の投与は、様々な器官及び組織におけるバリンの濃度の不均衡な増加をもたらす(表1)。
2)1-14C-バリンの放射性崩壊の結果として観察されるシグナルは、遊離バリン、タンパク質内に含まれるバリン、及び14C同位体を含む他のバリン代謝物(例えば、1-14C-ケトイソ吉草酸)からのシグナルの重ね合わせである。同じ研究は、14C同位体標識が[14C]-CO2の形態で急速に分離されることを示している(CO2の形態での消失は、60分で28%に達する)。他方、本発明の診断薬において観察された重水素メチル基のシグナルは、イソブタン酸(1-14C-バリンの場合には見えない脱炭酸生成物)のシグナルを含み、同時に、タンパク質の寄与は含まない(タンパク質の緩和パラメータは、2H MRIでのイメージングと互換性はない)。したがって、本発明の診断薬及び1-14C-バリンは、身体内の化合物の様々なセットの分布に関する情報を提供する。
【0068】
タンパク質中のバリン-d6残基は、本発明の方法の実施中に2Hシグナルに寄与しないので、バリン-d6に基づく診断薬により、タンパク質シグナルの混合なく、遊離バリン及びその低分子量代謝物の選択的可視化が可能になる。
【0069】
放射性標識されたロイシン誘導体は、以前はタンパク質合成の速度を評価するために使用されていた(例えば、1-11C-ロイシン:P.J.Hellyer et al.NeuroImage,2017,155,209-216)。バリンの場合と同様に、MRIでのロイシンの緩和時間は、合成中にタンパク質の組成に含まれる場合に、劇的に変化する。これにより、遊離ロイシン及びその低分子量代謝物のシグナルを選択的に追跡できる(放射性標識をベースとした方法の場合不可能である)。
【0070】
天然分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体の特徴的な機能は、いくつかの構造的に非等価である位置において重水素原子を含む誘導体または誘導体の混合物を使用して、MRIまたはMR分光法において一度にいくつかの重水素シグナル、例えば、バリン-2,4,4,4,4’,4’,4’-d7を観察する能力である。分枝鎖アミノ酸の段階的な代謝のプロセスにおいて、構造的に非等価な位置は、対応する重水素原子の化学シフトを順次変化させ、重水素を水プロチウムと交換する能力も選択的に獲得することに留意すべきである。放射性同位元素に基づく方法とは異なり、これにより、重水素化誘導体の蓄積レベルに加えて、薬物重水素シグナルの強度の違いに基づいて、分岐鎖アミノ酸の局所代謝に関する情報を得ることができる。この場合、分岐鎖アミノ酸(複数可)のα-位置及び異なる位置にある重水素原子のNMRシグナルの強度比は、アミノ基転移及びその後の分岐鎖アミノ酸(複数可)の異化作用の速度における研究中の走査領域のボクセルの違いを反映している(表1に示す)。分枝鎖アミノ酸の異化作用は、段階的に進行する:最初に、α-位置が酸化され(この場合、そのα-位置内の重水素原子は、重水素化誘導体内で喪失する)、次に対応するケト酸が脱炭酸され、その後バリンの3~4位及びロイシンまたはイソロイシンの3~5位に対応する断片の段階的酸化のプロセス(この場合、重水素原子は、重水素化誘導体内の対応する位置で喪失する)が行われる。分枝鎖アミノ酸は、細胞がタンパク質合成に使用することが知られており、重要なエネルギー源でもある。したがって、分枝鎖アミノ酸代謝の局所的な増加率は、局所的に増加した増殖率、特に腫瘍またはその特定の部分の成長または悪性度を示し得る。分枝鎖アミノ酸の代謝に関するそのような追加の診断情報を使用することで、本発明の診断方法がより信頼できるものになる。分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体の異なる位置での重水素原子のNMRシグナルの強度比は、スキャンごとに1回及び数回の両方で測定できる。
【0071】
単一の診断生成物中の2つの異なる重水素化分岐鎖アミノ酸誘導体の重量比は、1:1~1:10の範囲であり得るが、これらに限定されない。
【0072】
異なるアミノ酸は、動物及びヒトの細胞における蓄積の異なる動力学を有し、また、平衡状態で達成される濃度勾配において数十倍異なることが先行技術から知られている[Johnstone,R.M.,Scholefield,P.G.,Adv.Cancer Res.1965,9,143-226]。In vivoでのアミノ酸の挙動は、ホメオスタシス及び全身レベルでの方向付けられた輸送によってさらに複雑になる。特に、筋肉から放出された過剰なアラニンは、肝臓に活発に吸収されることが公知であり、生理学的濃度では、グルタミンは、いくつかのタイプの癌性腫瘍によって活発に吸収される。重水素断層法または分光法は、生理学的量の数倍の用量の投与を伴い、異なる器官及び組織は、様々なアミノ酸の異なる蓄積動態及び容量を特徴とするため、直接実験することなく、特定のアミノ酸の選択的蓄積の存在を予測することはできない。
【0073】
本発明の診断薬の重水素化成分(分岐鎖アミノ酸誘導体)の重要な特性は、in vivoでの重水素のプロチウムへの代謝交換に対する十分な耐性である。この交換により、重水素ラベルの濃度が低下すると同時に、急速な拡散により身体全体に均一に分布する重水(DOH)のバックグラウンドシグナルが増加する。このプロセスにより、画像のコントラストが低下し、天然のDOHシグナルの強度と比較して、重水素化成分濃度を定量的に評価することもできなくなる。我々の研究は、いくつかの重水素化天然アミノ酸、特にグリシン-2,2-d2及びL-アラニン-3,3,3-d3は、in vivoにおいて、非常に急速に重水素を喪失するため、本発明に関連する診断的に重要な画像を取得するために使用できないことを示した。
【0074】
身体内の重水素含有量が少ないため(0.015%の水素原子)、2H MRIのバックグラウンドシグナルは、1H MRIよりも数桁低くなる。したがって、診断薬の濃度が低い場合であっても、そのシグナルは天然のバックグラウンド成分のシグナルに重ね合わさることはない。1H MRIに基づく非重水素化診断薬を使用した同様の方法の開発は、非重水素化診断薬の達成可能な最大シグナル強度に匹敵する強度を有する天然低分子量化合物のバックグラウンドシグナルが多数存在するために困難である。
【0075】
診断薬の有効性は、重水素化誘導体の構造内の十分な数の重水素原子によっても決定される。したがって、1つ以上のCD3基を含む天然の分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体を含む診断薬は、本発明の好ましい実施形態である。こうした基の存在により、より低用量の診断薬を使用した診断が可能になり、これが、副作用の最小化につながる。
【0076】
本発明の方法は、特に、リンパ節における固形腫瘍(原発性及び転移性の両方)の形成及び/または転移を伴う腫瘍性疾患の有無を診断することが可能になる。重水素化診断薬により診断することができる腫瘍性疾患としては、これらに限定されないが、乳癌、肺癌、前立腺癌、黒色腫、脳癌(他の腫瘍からの転移を含む)、腎癌、大腸癌、膵癌、卵巣癌、子宮癌、非ホジキンリンパ腫、肝癌、肉腫が挙げられる。腫瘍性疾患に加えて、本発明の方法は、例えば、移植された器官及び細胞拒絶の場合、自己免疫疾患、炎症性疾患または感染性疾患において、活発な再生を伴う肝臓の損傷において、高い代謝活性または細胞増殖を特徴とする他の疾患の診断に使用することができる。心臓、脳、腎臓などの様々な器官の血液供給障害(虚血)の結果として発症する疾患を診断することも可能である。血液供給の妨害は、2H MRIまたはMR分光法で観察されるように、分岐鎖アミノ酸など、アミノ酸のこれらの器官内での吸収速度及び達成された蓄積レベルの低下につながる。
【0077】
本発明の方法は、重水素化診断薬の使用、及び重水素周波数での断層像及び/またはNMRスペクトルの登録に基づく。著者らは、疾患のMRI診断に重水素化天然分岐鎖アミノ酸を使用していることを認識していない。
【0078】
多くの場合、
1H MRIのみでは診断精度が不十分であることが知られている。同じことが、灌流パラメータの測定に基づくMRI法(例えば、動的コントラスト強調MRI)にも当てはまる。灌流法とは対照的に、本発明の診断方法は、PETまたはSPECTにとっては典型的であり、
1H MRIを実施する従来の方法では利用できない、細胞内の膜輸送速度及び分岐鎖アミノ酸の蓄積レベルに関するデータを提供する。したがって、本発明の方法は、より正確な診断情報を提供する。特に、腫瘍性疾患の場合、本発明の方法により、標的組織の代謝活性を評価することが可能になり、その結果、腫瘍が悪性または良性であると結論付け、その攻撃性を評価することが可能になる。本発明の診断薬のシグナルは、少なくとも3時間観察することができる(
図2を参照)。最大3時間の繰り返しスキャン中における癌腫瘍及び様々な器官(肝臓、脾臓、膵臓、腎臓)のシグナル強度の変化率は、これらの組織及び器官の灌流及び代謝活性のレベルを反映し、これらは、重水素断層法及び/またはMR分光法に基づいて、より正確な診断を行うために使用され得る。
【0079】
実施形態の特定の場合において、診断薬の重水素シグナルの空間分布は、腫瘍の空間構造について結論を出すために使用される。
【0080】
本発明の他の特定の実施形態では、診断薬の含有量が増加している領域における重水素シグナルの強度を使用して、腫瘍の悪性度/攻撃性について結論を出す。悪性腫瘍は、より活性である代謝及び膜輸送の活性の増加を特徴とする。したがって、高い悪性を有する腫瘍では、重水素のシグナル強度が高くなる。
【0081】
本発明の他の特定の実施形態では、標的領域内での灌流は、診断薬の重水素シグナル強度の変化率によって評価される。灌流の程度が高い領域では、時間の経過と共に重水素シグナルの変化率(腫瘍組織への蓄積の開始から完全に消失するまで)が高くなる。
【0082】
本発明の診断薬は、診断に有効な量で投与される。この場合の有効量とは、所望の効果が最も起こりそうなとき(磁気共鳴画像法及び/または重水素磁気共鳴分光法による本発明の診断方法を実施する可能性があるとき)に、患者に投与または送達される化合物(天然の分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体及び/またはその薬学的に許容される塩)の量を意味する。重水素MRI法の基本的な制限により、重水素化分岐鎖アミノ酸誘導体及び/またはその薬学的に許容される塩の量をごく少量にすることはできず、10mg/kgを超える用量、例えば0.1~1.5g/kgで使用される。特に、異なる種の哺乳動物に対する薬物の用量を計算する場合、通常、使用されるのは体重ではなく、体重に非線形に依存する身体の表面積である。必要とされる正確な量は、哺乳動物種、患者の年齢、体重及び全身状態、疾患の重症度、及び薬物投与の方法に応じて、対象ごとに異なり得る。
【0083】
同じ化合物の半減期は、種ごとに異なり得(通常、半減期は、より大きい種においてより長い)、したがって、薬物投与とスキャンとの間の最適時間は、様々な哺乳動物によって大きく異なり得ることも先行技術から知られている。薬物投与とスキャンとの間の最適時間は、疾患の性質及び検査される対象の身体の領域に依存する。重水素シグナルの登録は、とりわけ、診断薬の投与が終了するまで実行することができ、重水素シグナルがスキャンされた領域内に存在する限り、継続させるかまたは繰り返すことができる。
【0084】
本発明の診断薬は、診断に有効である任意の投与経路によって患者に投与することができ、例えば、経口、非経口、局所などで投与することができる。
【0085】
本発明の実施形態のうちの1つでは、診断プロセスは、MRIを含み、以下のように実行される:
a)本発明のいくつかの実施形態では、プロチウム(1H)MRIが実行される。1H MRIの登録により、第一に、重水素シグナルの解剖学的割り当てを実行し、第二に、疑われる病態を有する領域、特に悪性新生物を同定することが可能になり(他の実施形態では、2H MRIの領域は、他の方法で、特に超音波、コンピュータ断層撮影、X線撮影、触診、生検、腫瘍マーカーに関する体液の分析、放射性核種の診断及び/または視覚的観察によって決定することができる);
b)診断薬が投与される;
c)対象の標的組織において、診断薬の蓄積に十分な時間の後、断層像は、診断薬の重水素核の歳差運動の頻度で記録される;
d)得られた重水素断層像は、異常に高いまたは低い強度を有し、したがって診断薬の選択的蓄積に対応する領域を見つけるために分析される。特に、1H及び2Hで得られた断層像を比較することができる。1H及び2Hの異常領域が一致すれば、病態の可能性が高いと言うことができる。
【0086】
本発明の別の実施形態では、診断プロセスは、重水素MR分光法を実施することを含み、以下のように実行される:
a)1H MRIを実施し、病態の疑いを有する領域、特に悪性新生物を特定する(本発明の他の実施形態では、2H MRI領域の決定は、他の方法によって、特に、超音波検査、コンピュータ断層撮影、ラジオグラフィー、触診、生検、腫瘍マーカーについての体液の分析、放射性核種診断及び/または視覚的観察によって実施することができる);
b)診断薬が投与される;
c)病態の疑いを有する領域に対応するボクセル内の対象の標的組織に診断薬が蓄積するのに十分な時間後(例えば、1H MRIの結果による)、重水素スペクトルが記録される(特に、局所分光法を使用する);任意により、シグナル強度を比較するために、スペクトルが隣接するボクセルに登録される;
d)病態の疑いを有する領域に対応するボクセルのシグナル強度を、特に、(i)特定の器官または組織の典型的な値(健康な対象では事前に決定する必要がある)、及び/または(ii)同じ器官または組織に対応し、1H MRIでは異常がない隣接するボクセルの強度と比較する。シグナル強度の増加または減少は、診断薬の選択的蓄積を示唆し、その結果として、病態、特に悪性新生物の存在を示唆する。
【0087】
本発明の上記の実施形態の両方におけるステップ「a)、b)、c)」の順序は、「b)、a)、c)」または「b)、c)、a)」に変更することができる。シグナル1H及び2Hを並列に登録することも可能である(すなわち、段階「a)」及び「c)」を同時に実行する。
【0088】
悪性形成の疑いを有する領域を同定した後の本発明の特定の実施形態では、疑わしい領域の内側及び外側の両方にある個々のボクセルが選択される(特に、疑わしい領域の境界を横切る同じ線上にある一連の隣接するボクセルが選択され得る)。選択したボクセルの2Hまたは局所2Hスペクトルの積分シグナルを登録し、その後強度を比較することで、診断薬が蓄積されている領域を迅速にかつ高感度で検出できるようになる。
【0089】
MRI画像及びMRスペクトルは、重水素シグナルを記録するための機器を備えた任意のMRIスキャナーで得ることができる。
【0090】
天然の分枝鎖アミノ酸の重水素化誘導体の際立った特徴は、これらのアミノ酸が天然の栄養素であり、ヒトの身体及び動物の身体の構成要素であることである。これにより、診断薬として使用した場合、非天然アミノ酸よりも安全になる。本発明の著者によって実施された検査では、動物による診断薬の良好な耐性、重水素のシグナルを登録するための機器を備えた任意のMRIスキャナーで示された用量で使用された場合に、目に見える副作用がないことが示されている。分枝鎖アミノ酸は、高用量(LD50>5g/kg)で投与された場合に、安全であることが従来技術から知られている。重水素化分岐鎖アミノ酸誘導体の効果的な異化作用、及びそれに伴うDOHの形態での重水素の放出(非常に高用量で無毒あり、身体内の水の10~30%以下の置換、また身体内の水の約1x10-2mol/Lの濃度で存在する)を考慮すると、複数の重水素原子の導入に関連する副作用は予想されない。
【0091】
特定の実施形態では、診断薬は、分枝鎖アミノ酸代謝の阻害剤、特に分枝鎖アミノ酸トランスアミナーゼの阻害剤を含み得る。BCAT;阻害剤の一例:Hu,L.Y.et al.Bioorg.Med.Chem.Lett.2006,16,9,2337-2340)。分枝鎖アミノ酸の代謝の阻害により、より長い断層撮影検査及び/または診断薬の用量の低下が可能になり、かつ/または感度を高めることができ、その結果として、本発明の診断方法の信頼性を高める。診断薬の一部としての分岐鎖アミノ酸の個々のトランスアミナーゼアイソフォームの選択的阻害剤の使用は、スキャンされた領域の異なる部分における個々のアイソフォームの活性を可視化するために用いることができる。
【0092】
本発明の方法は、電離放射線(典型的には、例えば、CT、PET、SPECT)の有害な影響なく実施され、これにより、検査の安全性が向上し、より頻繁な反復研究を実施できるようになり、これにより、特に、この方法が小児科にとって魅力的なものになる。
【0093】
本発明の診断方法は、特に、様々な局在の悪性腫瘍、転移性病変の早期診断、治療に対する腫瘍応答の評価、及び治療の有効性に関する結論付けのために使用して、1H MRI及び/または他の診断方法の結果に基づく診断を明確にすることができる。
【0094】
本発明の方法は、非侵襲的診断の既存の可能性を拡張し、腫瘍性疾患の効果的な診断が可能になる。
【0095】
重水素化分岐鎖アミノ酸誘導体の薬学的に許容される塩は、本発明の診断薬内で使用するのに必要とされるすべての特性を有する。
本発明の実施
【0096】
本発明を使用する場合の技術的成果の客観的発現の可能性は、この分野で適用される方法に従って研究を行うプロセスで得られた実験データを含む例で与えられる信頼できるデータによって確認される。本発明の本質は、図によって示されている。
【0097】
出願資料に記載されているこれら及びすべての実施例は、限定するものではなく、本発明を説明するためにのみ記載されていることを理解されたい。
【0098】
本明細書に示されている実施例は、開発された方法の操作の原理を説明するのに役立ち、使用される用量の範囲、ならびに診断薬の投与と重水素シグナルの登録との間の時間の範囲を制限するものではない。使用する機器の感度及び他のパラメータ、診断された疾患、対象(ヒトまたは実験動物)の性質に応じて、必要とされる用量及び薬物の蓄積に必要な時間は異なり得る。特に、従来技術から、同じ化合物の半減期は、動物種間で異なり得、ある動物から別の動物またはヒトに変化する場合、用量は体重ではなく体表面積に比例して拡大縮小する傾向があることが知られている。重水素シグナルの登録は、診断薬の投与が終了する前にも行うことができる。さらに、シグナル蓄積時間など、スペクトル及び断層像を記録するための上記のパラメータは、本発明の特定の実施形態の一部であり、使用される機器及び特定の診断タスクに応じて変化し得る。
【0099】
バリン-4,4,4,4’,4’,4’-D6の合成
バリン-4,4,4,4’,4’,4’-D6は、所定の方法に従って、文献(S)-BPB-Ni-Glyに記載されているニッケル(II)錯体から合成された(Y.N.Belokon et al.,Tetrahedron:Asymmetry 1998,9,4249-4252)。
【0100】
【0101】
10g(0.02モル)の複合体1を含む12mlの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、アルゴン下で0℃まで冷却した。次に、細かく粉砕したNaOH 1g(0.025モル)を激しく撹拌しながら溶液に加え、5分間撹拌した。次に、この溶液に2ml(2.62g、0.021モル)の臭化イソプロピル-d6を0℃で滴下して30分間撹拌し、その後、温度を室温まで戻し、さらに1.5時間撹拌した。反応が完了後、この溶液を再び冷却し、次にそれに酢酸溶液(1.5mlの氷冷CH3COOHを含む水20ml)を滴加した。酢酸溶液の添加中に、複合体2が沈殿した。得られた沈殿物をろ別し、水で洗浄し、乾燥させた。複合体2が赤色粉末として得られた(10.5g、0.019モル、97%)。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ=8.24(d,J=8.6Hz,1H),8.01(d,J=7.4Hz,2H),7.56-7.40(m,4H),7.32(t,J=7.6Hz,2H),7.20-7.09(m,2H),6.91(d,J=7.6Hz,1H),6.68-6.60(m,2H),4.47(d,J=12.8Hz,1H),3.82(d,J=3.2Hz,1H),3.62(d,J=12.6Hz,1H),3.54-3.42(m,2H),3.38-3.28(m,1H),2.88-2.75(m,1H),2.61-2.42(m,1H),2.12-2.01(m,2H),1.79-1.72(m,1H)。
【0102】
12mlの12M HCl及び18mlの水を、10.5g(0.019モル)の複合体2を含むメタノール溶液17mlに加え、次いで、混合物を沸騰させて、還流下で30分間沸騰させた。次に、反応混合物を蒸発させた。キラル配位子の形成された沈殿物をろ別し、水で数回洗浄し、乾燥させた。配位子は、81%の収率(6.82g)で白色粉末として得た。収集した水層を25%アンモニア溶液により中和し、溶液中に残存しているキラル配位子を塩化メチレン(3x30ml)で抽出し、次に水層をろ紙を介してろ過した。バリン-d6は、イオン交換クロマトグラフィーを使用して精製した。この目的のために、水溶液をKU-2イオン交換樹脂にH+
-形態(13x3cm)で加えた。まず、樹脂カラムを水(300ml)で洗浄し、次にバリン-d6を5%アンモニア溶液(200ml)でカラムから洗い流した。得られた溶液を蒸発乾固させ、生成物を水とエタノールとの混合物から再結晶させた。バリン-d6は、白色粉末(1.37g、62%)として単離した。
1H-NMR(400MHz,D2O):δ=3.49(d,J=4.4Hz,1H),2.16-2.10(m,1H)。
13C-NMR(101MHz,D2O)δ=174.3,60.3,28.6,17.6-15.0(m)。
【0103】
バリン-2,4,4,4,4’’,4’’,4’-D7の合成(バリン-4,4,4,4’’,4’’,4’-D6との混合)
20当量のメタノール-d1及び5モル%のトリエチルアミンを、10g(0.02モル)の複合体1を含む塩化メチレン溶液50mlに加え、室温で18時間撹拌した。得られた複合体1-Dは、精製せずに次の段階で使用した。
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ=8.30(d,J=8.6Hz,1H),8.09(d,J=7.3Hz,2H),7.62-7.49(m,3H),7.44(t,J=7.5Hz,2H),7.32(t,J=7.4Hz,1H),7.23(t,J=7.3Hz,1H),7.12(d,J=6.8Hz,1H),7.05-6.95(m,1H),6.82(d,J=7.6Hz,1H),6.72(t,J=7.4Hz,1H),4.50(d,J=12.6Hz,1H),3.73-3.64(m,2H),3.49(dd,J=10.7,5.4Hz,1H),3.44-3.30(m,1H),2.64-2.53(m,1H),2.52-2.36(m,1H),2.22-2.03(m,2H)。
【0104】
5g(0.01モル)の複合体1-Dを含む6mlの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)の溶液をアルゴン下で0℃まで冷却した。次に、細かく粉砕したNaOH 0.5g(0.0125モル)を激しく撹拌しながら溶液に加え、5分間撹拌した。次に、1ml(1.31g、0.01モル)の臭化イソプロピル-d6を0℃で溶液に滴下し、30分間撹拌し、次に温度を室温まで戻し、さらに1.5時間撹拌した。反応(TLC分析)の完了後、溶液を再び冷却した。酢酸溶液(1.5mlの氷冷CH3COOHを含む水20ml)を滴下して加えた。酢酸溶液を加えたとき、得られた2次元複合体が沈殿した。
【0105】
3mlの濃HCl溶液(12M溶液)及び5mlの水を2g(0.004モル)の2-D複合体を含むメタノール溶液5mlに加え、次いで混合物を沸騰させて30分間還流下で沸騰させた。次に、反応混合物を蒸発させた。形成された沈殿物を水で洗浄し、キラル配位子をろ別し、水で数回洗浄した。収集した水層を25%アンモニア溶液で中和し、溶液中に残存している配位子3を塩化メチレン(3x10ml)で抽出し、次に水層をろ紙でろ過し、KU-2イオン交換樹脂を含むH+形態(13x3cm)に加えた。まず、樹脂カラムを水(300ml)で洗浄し、次にバリン-d6/d7を5%アンモニア溶液(200ml)を含むカラムから洗い流した。バリン-d6/d7は、シリカゲルの液体クロマトグラフィー(溶離液:ジクロロメタン-メタノール-水)によりグリシン不純物から精製した。収量:172mg(35%)。
1H-NMR(400MHz,D2O):δ=3.49(d,J=4.4Hz,1H),2.16-2.10(m,1H)。
【0106】
質量分析に基づくと、d5、d6、及びd7の同位体形態に対応するピークの比率は、6.1:49.5:44.4である。d5形態は、メチル基の不完全な重水素化の生成物である。メチル基の重水素化の程度に関係なく、13C同位体の寄与及びそのα位置の等度の重水素化を考慮すると、最終生成物中のα-重水素化形態のバリンの総モル分率は49%である。
【0107】
ロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-D6の合成
1)イソブタノール-d6
4.19gのマグネシウムを2つ口フラスコに注ぎ、還流冷却器を接続し、ウォータージェットポンプに取り付けてフラスコを排気させる。フラスコを熱風で数分間加熱する。フラスコを室温まで冷却した後、20mlのTHF及びヨウ素結晶を加え、アルゴンでパージし、室温で約10分間撹拌する。塩化カルシウム管を冷蔵庫に接続し、臭化イソプロピル-d6(22.5g、0.17モル)を含むTHF溶液68mlをゆっくりと加える(約2.5時間)。混合物を加熱し、灰色に変わる。臭化イソプロピル全体を加えた後、反応混合物を50~60℃で2時間加熱する。次に、反応混合物を室温まで冷却し、空気を入れることなく、乾燥させ細かく粉砕したパラフォームを少しずつ加える(5.22g、0.17モル;無水リン酸上で真空中で2日間予備乾燥させる)。反応混合物を50℃で3時間撹拌し、次に室温で一晩放置する。溶媒をロータリーエバポレーターで蒸発乾固させる。乾燥残留物を75mlのジクロロメタンに溶解し、20%硫酸溶液により弱酸性媒体にゆっくりと酸性化する。有機層を分離し、水層を25mlのジクロロメタンで3回抽出する。合わせた有機抽出物をソーダ溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させる。ろ過後、有機相を還流冷却器で分画し、沸点範囲が85~100℃及び100~115℃の画分を別々に収集する。最初の画分は、THFと生成物とで2.5:1の比率で構成される。2番目の画分には、少量のTHF混合物が含まれている。総収率:70%。1Н NMRスペクトル(600MHz,CDCl3,ppm):δ=3.37(2H,d,3J=6.5Hz,CH2),1.94(1H,brs,CH)。
【0108】
2)臭化イソブチル-d6
イソブタノール-d6(4.9g、0.06モル)を-10℃まで冷却し、PBr3(10.3g、0.038モル)をゆっくりと滴加する。反応混合物を室温で一晩撹拌する。臭化イソブチル-d6を反応混合物から蒸留除去し、65~90℃で沸騰する画分を収集する。蒸留物を水で洗浄し、ゼオライト上で乾燥させる。収量:6.6g(73%)。1Н NMRスペクトル(600MHz,CDCl3,ppm):δ=3.30(2H,d,3J=6.1Hz,CH2),1.93-1.95(1H,m,CH)。
【0109】
3)ロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-D6
ロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-D6は、臭化イソプロピル-d6を等量の臭化イソブチル-d6に置き換えることにより、バリン-d6と同様に調製した。再結晶後の最終生成物の収率は、50%である。
1H-NMR(600MHz、D2O、内部標準:メタノール):δ=1.64-1.76(3H,m),3.71(1H,dd,3J=6.0,8.4Hz,CH-)
13C-NMR(101MHz、D2O、内部標準:メタノール)δ=20.4(CD3)、24.31、40.33、54.08、176.24。
【0110】
以下の例では、7.05Tの一定磁場を有するBruker BioSpec BC70/30 USR断層撮影装置が使用され、1H(送信/受信)及び2H(送信)に調整された鳥かごコイルと、直径5cmの表面受信コイルが装備されている。
【0111】
重水素断層像は、FLASH(登録商標)(高速ローアングルショット)パルスシーケンスを使用して記録した。励起周波数は、2H NMRスペクトルから決定し、使用された機器であった:sfo1≒46.17452MHz、幅2560Hz、パワー11.2dBの長方形励起パルス、偏向角FA=300、繰り返し時間TR=11.8ms、エコー時間TE=4.07ms、スキャン領域10cmx10cm、スキャンマトリックス50x50、スライス厚3cm、帯域幅12500Hz、合計スキャン時間9分34秒(1024回の累積)。
【0112】
実施例1重水素化バリンの希薄溶液を含むサンプルの重水素断層像及び2H NMRスペクトルの登録。
重水素化バリンの希釈溶液の重水素断層像を登録する基本的な可能性を実証するために、以下の実験を行った。
【0113】
バリン-4,4,4,4’,4’,4’-d6またはロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-d6(5mg)の溶液5mlを含む蒸留水を含むガラスバイアルを断層撮影磁石の中心に配置した。直径5cmの表面コイルをバイアルの真上に水平に配置した。
【0114】
図1aは、バリン-4,4,4,4’,4’,4’-d
6を含むサンプルの重水素断層像(左側)及び
2Hスペクトル(右側)を示している。
【0115】
図1bは、ロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-d
6を含むサンプルの重水素断層像(左側)及び
2Hスペクトル(右側)を示している。
【0116】
実施例2バリン-4,4,4,4’’,4’’,4’-d
6を含む診断薬を使用してin vivoでマウス4T1乳癌を可視化するための重水素断層法の使用。
この実施例では、4T1乳癌を移植した(実験の12日前に左前足下に5x10
5細胞/60μlを注射)Balb/cマウスで実験を行った。体重20gの動物に、20mgのバリン-d
6を含む水溶液0.5mlを腹腔内注射した。注射後10分で、動物をイソフルランで固定し、断層撮影装置の加熱させたベッドに置いた。表面
2H受信コイルは、
図2に点線で示されているとおり、背側から動物の身体の前部に配置した。
【0117】
図2は、時間の経過と共に、重水素化バリン誘導体が腫瘍組織内に蓄積し、薬物投与の約90分後に重水素シグナルの最大強度が観察されることを示している。与えられたデータからわかるように、重水素シグナルは、数十分間持続し、したがって、バリン-d
6は、
2H MRI及びMR分光法での実用化に好ましい薬物動態を有する。
【0118】
上記の結果に従って、重水素化バリン誘導体をベースとした診断薬は、2H MRI及び/またはMR分光法による腫瘍性疾患などの疾患の非侵襲的診断に使用できる。
【0119】
実施例3ロイシン-d
6を含む診断薬を使用してin vivoにおいてマウス4T1乳癌を可視化するための重水素断層法の使用。
この実施例では、4T1乳癌を移植した(実験の12日前に左前足下に5x10
5細胞/60μlを注射)Balb/cマウスで実験を行った。体重20gの動物に、25mgのロイシン-5,5,5,5’,5’,5’-d
6を含む水溶液0.8mlを腹腔内注射した。注射後10分で、動物をイソフルランで固定し、断層撮影装置の加熱させたベッドに置いた。表面受信
2Hコイルは、動物の身体の前部に背側から配置した。
図3は、薬物投与の40分後に得られた画像を示している。
【0120】
上記の結果に従って、重水素化ロイシン誘導体をベースとした診断薬は、2H MRI及び/またはMR分光法による腫瘍性疾患などの疾患の非侵襲的診断に使用できる。
【0121】
実施例4L-アラニン-3,3,3-d3及びL-フェニルアラニン-β,β,2,3,4,5,6-d7を含む診断薬を使用したin vivoでのマウス4T1乳癌の可視化のための重水素断層法の使用。
この実施例では、4T1乳癌を移植した(実験の12日前に左前足下に5x105細胞/60μlを注射)Balb/cマウスで実験を行った。
【0122】
体重20gの動物に以下の溶液を腹腔内注射した:
a)30mgのL-アラニン-3,3,3-d3を含む水0.5ml;または
b)10mgのL-フェニルアラニン-β,β,2,3,4,5,6-d7を含む水1.0ml(重水素と等価である低用量であるフェニルアラニンは、フェニルアラニンの溶解度が低いためであり、その結果、対象の健康に害を与えることなく大量の診断薬を導入することは不可能である)。
【0123】
注射後10分で、動物をイソフルランで固定し、断層撮影装置の加熱させたベッドに置いた。表面
2H受信コイルは、
図4に点線で示されているとおり、背側から動物の身体の前部に配置した。
【0124】
図4は、アラニン及びフェニルアラニンの重水素化誘導体が腫瘍組織内に蓄積せず、様々な器官において蓄積選択性を示さないことを示している。
【0125】
実施例5重水素断層法と互換性のある用量で診断薬を投与した後の4T1乳癌を有するマウスの組織におけるバリン-4,4,4,4’,4’,4’-d6の含有量の決定。
この実施例では、4T1乳癌を移植した(実験の12日前に左前足下に5x105細胞/60μlを注射)Balb/cマウスで実験を行った。体重20gの動物に、20mgのL-バリン-d6(S-バリン-d6)を含む水溶液0.5mlを腹腔内注射した。投与後、動物は餌及び水を摂取できる別のケージに維持された。投与の一定時間後、頸椎の脱臼により動物を失活させた。動物の器官及び組織のサンプルを迅速に除去し、液体窒素で凍結させた。凍結したサンプルは、液体窒素で冷却しながら磁器製の乳鉢内で粉砕した。得られた粉末の秤量部分(50~200mg)を、98℃まで加熱した0.4%塩酸(0.6~1.0ml)に迅速に導入した。得られた懸濁液を、時々振とうしながら98℃で15分間保持した。内部標準(3-O-(CD3)-グルコース溶液)を加えた後、混合物を振とうし、固体画分が完全に分離するまで遠心分離した。溶液を2H NMRで分析した。
【0126】
【0127】
表1に示されているデータは、2H MRIまたはMR分光法での使用に好適である濃度範囲での動物の様々な組織におけるL-バリン-d6の選択的蓄積を示している。特に、診断薬の注射の1時間後に、腎臓、心臓、脳、骨格筋、及び脂肪組織と比較して、腫瘍組織におけるL-バリン-d6の蓄積が増加している。
【0128】
また、表1から、様々な器官内で達成された同位体標識の相対濃度に有意差があると結論付けることができる:L-バリン-d6の場合は2H(1.25g/kg)、DL-1-14C-バリンの場合は14C(0.021mg/kg)である。DL-1-14C-バリン(0.021mg/kg)の導入の結果として、表1に示すWashburn et al(1978)によるラット肝臓及び腎臓内のバリンの絶対濃度は、約0.5μmol/gの遊離バリンの生理学的濃度と比較して、0.3nmol/gよりも大きく増加することはなかった[Rivera,S.et al.Biochem.J.1988,249,443-449]。表1から次のように、バリン-d6を使用した実験では、動物組織における遊離バリンの10倍を超える過剰な生理学的濃度が達成されている。
【0129】
実施例6重水素断層法と互換性のある用量で診断薬を投与した後の4T1乳癌のマウスの組織における重水素化バリン誘導体混合物の分布及び代謝の研究。
この実施例では、α-位置及び4,4’位で部分的に重水素化されたL-バリン-d6/d7を使用した。(S-バリン-d6/d7)。初期診断薬中のα-重水素化形態のバリンの総モル分率は49%である。
【0130】
この実験は、4T1乳癌を移植したBalb/cマウスで実施した(実験の12日前に左前足下に5x105細胞/60μlを注射)。体重20gの動物に、α-位置で部分的に重水素化されたバリン20mgを含む水溶液0.5mlを腹腔内注射した。投与後、動物は餌及び水を摂取できる別のケージに維持された。投与60分後、頸椎の脱臼により動物を失活させた。動物の器官及び組織のサンプルを迅速に除去し、液体窒素で凍結させた。凍結したサンプルは、液体窒素で冷却しながら磁器製の乳鉢内で粉砕した。得られた粉末の秤量部分(約50mg)を、98℃まで加熱した0.4%塩酸(1.0ml)に迅速に導入した。得られた懸濁液を時々振とうしながら98℃で15分間維持し、次に遠心分離した。溶液を3倍量のアセトニトリルで希釈し、15分後に遠心分離し、9倍量の水で希釈し、再度遠心分離した。バリンのアイソトポマーd5、d6、及びd7の比率は、LC-MS/MSによって決定した。
【0131】
α-重水素化バリンの総モル分率は、腫瘍では-12%、脳では-5%、血液では-12%、腎臓では-17%、脾臓では-13%、肝臓、骨格筋、及び脂肪組織-11%であった。したがって、腫瘍内の重水素濃度が2H MRIで許容できる濃度に達するまでに、おそらく組織トランスアミナーゼの作用の結果として、バリンのα-位置から重水素が大幅に喪失する。異なる組織のα-位置からの重水素の喪失の差は、膜輸送速度とアミノ基転移速度との比率の差を示し、これにより、対象の様々な組織切片の代謝状態を評価する際、及び病態の有無に関する結論を出す際に使用される追加情報として有用であり得る。この結果は、バリンの様々な重水素化誘導体またはバリンの誘導体と重水素との混合物をいくつかの非等価な位置に含む診断薬を使用する可能性を示している。
【0132】
本発明は、開示された実施形態を参照して記載してきたが、詳細に記載した特定の実験は、本発明を説明する目的でのみ提供され、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことは、当業者にとって明らかであるものとする。本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な修正が可能であることを理解されたい。