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特許7537767熱損傷の治療におけるロドコッカスルーバー製品の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】熱損傷の治療におけるロドコッカスルーバー製品の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/74 20150101AFI20240814BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240814BHJP
   A61L 15/36 20060101ALI20240814BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K35/74 C
A61P17/02
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/20
A61K9/12
A61K9/14
A61K9/70
A61K9/02
A61K9/19
A61L15/36 100
A61L15/42 100
A61L15/42 ZNA
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021562147
(86)(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 CN2020086353
(87)【国際公開番号】W WO2020216281
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】201910333119.3
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CGMCC  CGMCC 17431
(73)【特許権者】
【識別番号】521299927
【氏名又は名称】▲遼▼▲寧▼格瑞仕特生物制▲藥▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】盖 波
(72)【発明者】
【氏名】▲竇▼ 春▲艷▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲軼▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 国英
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101209267(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1094288(CN,A)
【文献】国際公開第2005/102369(WO,A1)
【文献】Matsunaga, I. et al.,Relationship between induction of macrophage chemotactic factors and formation of granulomas caused by mycoloyl glycolipids from Rhodococcus ruber (Nocardia rubra),The Journal of Biochemistry,1996年,Vol. 120, No. 3,pp.663-670
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱損傷の治療に用いられる医薬の製造におけるロドコッカスルーバー細胞壁又はロドコッカスルーバー細胞壁骨格の使用であって、前記ロドコッカスルーバーは、2019年03月22日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに保蔵されたロドコッカスルーバーRhodococcus ruberであり、保蔵番号はCGMCC No.17431である、使用
【請求項2】
前記熱損傷は、火傷、熱傷、化学火傷から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記熱損傷は、表皮層、真皮層、粘膜、皮下組織から選択される組織まで及ぶ、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記熱損傷は、I度、II度及びIII度から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記医薬は、膏剤、クリーム、エマルション、懸濁剤、パスタ剤、ゲル剤、ローション剤、チンキ剤、油剤、錠剤、エアゾル剤、スプレー剤、リニメント剤、粉剤、添加剤、包帯、フィルム、パッチ、坐剤から選択される剤形として製造される、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記医薬は、1μg~1000μg/単位投与量のロドコッカスルーバー細胞壁又はロドコッカスルーバー細胞壁骨格を含む、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬は、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含み、
前記ロドコッカスルーバー細胞壁又はロドコッカスルーバー細胞壁骨格は、1重量部であり、前記薬学的に許容可能な賦形剤は、100~1000重量部である、請求項1に記載の使用。
【請求項8】
前記医薬は、液体、乾燥粉末製剤、又は凍結乾燥粉末製剤である、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
前記ロドコッカスルーバー細胞壁又はロドコッカスルーバー細胞壁骨格は、
1)ロドコッカスルーバーを用意するステップと、
2)前記ロドコッカスルーバーを粉砕し、粉砕生成物を得るステップと、
3.1)前記粉砕生成物に脂質除去操作を行い、
3.2)前記粉砕生成物に核酸除去操作を行い、
3.3)前記粉砕生成物にタンパク質除去操作を行い、
3.4)ロドコッカスルーバー細胞壁に由来する生成物を得るステップと、
)ロドコッカスルーバー細胞壁に由来する生成物中の水を除去するステップと、
)個包装するステップと、を含むか又はそれらからなる方法によって取得することができ、
そのうち、ステップ3.1)、3.2)、3.3)は順序を入れ替えてもよく、同時に行ってもよく、
ステップ4)とステップ5)は順序を入れ替えてもよい、
求項1~のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
ドコッカスルーバー細胞壁又はロドコッカスルーバー細胞壁骨格をむ医薬組成物であって
前記ロドコッカスルーバーは、2019年03月22日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに保蔵されたロドコッカスルーバーRhodococcus ruberであり、保蔵番号はCGMCC No.17431である、熱損傷を治療するための医薬組成物
【請求項11】
前記ロドコッカスルーバー細胞壁又はロドコッカスルーバー細胞壁骨格は、膏剤、クリーム、エマルション、懸濁剤、パスタ剤、ゲル剤、ローション剤、チンキ剤、油剤、錠剤、エアゾル剤、スプレー剤、リニメント剤、粉剤、添加剤、包帯、フィルム、パッチ及び坐剤から選択される形態として製造される、請求項10に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年4月25日に出願された特許出願(出願番号CN201910333119.3)の優先権を主張するものであり、その内容は参照により本文に組み込まれるものとする。
本開示は、医療の分野、微生物の分野、生物製薬の分野に関する。具体的には、ロドコッカス及びその細胞壁成分、製剤、医薬組成物、製造方法、並びに熱損傷を治療するための医薬/医療装置の製造におけるロドコッカスルーバーの細胞壁成分の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ロドコッカスルーバー(Rhodococcus ruber)(赤いロドコッカスとも呼ばれる)、グラム陽性菌。一般的には、コロニーは、オレンジ色又は赤オレンジ色を呈し、円形であり、コロニーの大きさは約1mm~2mmであり、細胞形態は球状又は短棒状であり、一次分岐菌糸体を形成することができ、鞭毛がない。ロドコッカスルーバーは好気性を有し、化学合成従属栄養生物である。
【0003】
現在、研究者はロドコッカスルーバーに対して全遺伝子配列決定を行った。例えば、樊欣らはロドコッカスルーバーSD3株の全ゲノムを配列決定し、かつバイオインフォマティクス分析を行った。SD3株の全ゲノム長さは約5.37Mbであり、GC含有量は70.63%であり、GenBankアクセッション番号はCP029146(樊欣、ロドコッカスルーバーSD3全ゲノム配列決定及びその熱ショックタンパク質DnaKの発現分析、ゲノム学及び応用生物学、2019年1月)である。
【0004】
ロドコッカス属Rhodococcusであって、それ自体が非常に強い有機物耐性、及び広い分解スペクトルを有するため、様々な生存環境に適応することができる。したがって、ロドコッカス属は汚染修復、有機化合物分解、汚水処理などの分野に広く応用されている。現在、ロドコッカスルーバーの主な応用分野は環境対策にあり、CN108862590A、CN107151635A、CN102250796A、CN1519312A、CN103627653A、CN101033454A、CN108130288A、CN104830738A、CN101619299A、CN103509833A、CN106434466A、CN101580808A、CN102604875A、CN103160491A、CN106591168A、CN106591172A、CN105820982Aを参照する。
【0005】
CN109576180Aには広州市番禺区近郊の赤色土から選択された菌RDC-01が開示されており、16S rRNA遺伝子配列分析及び培養特性の同定により、該菌株はロドコッカスルーバーであると同定した。該菌を不活化した後、免疫アジュバントとして動物用の不活化ワクチンに添加し、動物が抗体を生産することを促進できることを発見した。
【0006】
創傷外科の分野において、熱損傷、特に火傷又は熱傷の創傷面に対して抗感染治療原則を採用することが多い。皮膚熱損傷の癒合は複雑な生物学的過程であり、様々なサイトカイン、血管内皮細胞、線維芽細胞、角質細胞などの様々な要因の影響を受ける。
【0007】
しかしながら、ロドコッカスルーバーの人医学分野における応用は、まだ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許出願公開第108862590号明細書
【文献】中国特許出願公開第107151635号明細書
【文献】中国特許出願公開第102250796号明細書
【文献】中国特許出願公開第1519312号明細書
【文献】中国特許出願公開第103627653号明細書
【文献】中国特許出願公開第101033454号明細書
【文献】中国特許出願公開第108130288号明細書
【文献】中国特許出願公開第104830738号明細書
【文献】中国特許出願公開第101619299号明細書
【文献】中国特許出願公開第103509833号明細書
【文献】中国特許出願公開第106434466号明細書
【文献】中国特許出願公開第101580808号明細書
【文献】中国特許出願公開第102604875号明細書
【文献】中国特許出願公開第103160491号明細書
【文献】中国特許出願公開第106591168号明細書
【文献】中国特許出願公開第106591172号明細書
【文献】中国特許出願公開第105820982号明細書
【文献】中国特許出願公開第109576180号明細書
【非特許文献】
【0009】
【文献】樊欣著、ロドコッカスルーバーSD3全ゲノム配列決定及びその熱ショックタンパク質DnaKの発現分析、ゲノム学及び応用生物学、2019年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示のいくつかの実施形態によれば、分離されたロドコッカスルーバー(Rhodococcus ber)を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示のいくつかの具体的な実施形態に係るロドコッカスルーバーは、2019年3月22日に中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに保蔵され(北京市朝陽区北辰西路1号院3号、中国科学院微生物研究所、郵便番号、100101、China General Microbiological Culture Collection Center. address、Institute of Microbiology、Chinese academy of Sciences、No.1 West Beichen Road、Chaoyang District、Beijing China)、保蔵番号はCGMCC No.17431である。該保蔵は、『特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約(Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purposes of Patent Procedure)』の規定を満足する。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態によれば、ロドコッカスルーバー及びその派生製品を提供する。上記派生製品は、ロドコッカスルーバーに由来するものであり、ロドコッカスルーバーの組成成分(例えば、タンパク、核酸、脂質、細胞壁及びその組成成分、炭水化物、代謝物)を含む。
【0013】
具体的な実施形態では、分離されたロドコッカスルーバー細胞壁を提供する。
【0014】
具体的な実施形態では、分離されたロドコッカスルーバー細胞壁を提供し、上記ロドコッカスルーバーとは、保蔵番号がCGMCC No.17431の株を指す。
【0015】
具体的な実施形態では、分離されたロドコッカスルーバー細胞壁骨格を提供する。
【0016】
具体的な実施形態では、分離されたロドコッカスルーバー細胞壁骨格を提供し、上記ロドコッカスルーバーとは、保蔵番号がCGMCC No.17431の株を指す。
【0017】
本開示のいくつかの実施形態に係る医薬組成物は、本開示に係るロドコッカスルーバーの細胞壁又はロドコッカスルーバーの細胞壁骨格を含む。
【0018】
本開示のいくつかの実施形態に係るロドコッカスルーバー製品は、ロドコッカスルーバーを粉砕した後に得られた生成物を含む。
【0019】
本開示の別の実施形態に係るロドコッカスルーバー製品は、ロドコッカスルーバーを粉砕し、浄化(脂肪除去、核酸除去、タンパク除去)した後に得られた生成物を含む。
【0020】
本開示の別の実施形態に係るロドコッカスルーバー製品は、ロドコッカスルーバーの細胞壁を含む。
【0021】
本開示の別の実施形態に係るロドコッカスルーバー製品は、ロドコッカスルーバーの細胞壁骨格を含む。
【0022】
本開示のいくつかの実施形態に係る医薬組成物又は医療装置は、ロドコッカスルーバーを粉砕した後に得られた製品生成物含む。
【0023】
本開示の別の実施形態に係る医薬組成物又は医療装置は、ロドコッカスルーバーを粉砕し、浄化(脂肪除去、及び/又は核酸除去、及び/又はタンパク質除去)した後に得られた生成物を含む。
【0024】
本開示の別の実施形態に係る医薬組成物又は医療装置は、ロドコッカスルーバーの細胞壁を含む。
【0025】
本開示の別の実施形態に係る医薬組成物又は医療装置は、ロドコッカスルーバーの細胞壁骨格を含む。
【0026】
本開示の別の実施形態に係る医薬組成物又は医療装置は、上記ロドコッカスルーバー製品を含む。
【0027】
具体的な実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、医薬組成物における上記ロドコッカスルーバー製品は、1重量部であり、薬学的に許容可能な賦形剤は、100~1000(100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000)重量部であり、好ましくは200~500重量部であり、より好ましくは200~300重量部(例えば、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300及び任意の2つの数値の範囲内の任意の値)である。
【0029】
別の実施形態では、医薬組成物におけるロドコッカスルーバー細胞壁は、1重量部であり、上記薬学的に許容可能な賦形剤は、100~1000(100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000)重量部であり、好ましくは200~500重量部であり、より好ましくは200~300重量部(例えば、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300及び任意の2つの数値の範囲内の任意の値)である。
【0030】
また別の実施形態では、医薬組成物におけるロドコッカスルーバー細胞壁骨格は、1重量部であり、上記薬学的に許容可能な賦形剤は、100~1000(100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000)重量部であり、好ましくは200~500重量部であり、より好ましくは200~300重量部(例えば、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300及び任意の2つの数値の範囲内の任意の値)である。
【0031】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、液体(液体製剤)に製造されてよい。
【0032】
別の実施形態では、医薬組成物は、固体(乾燥粉末製剤又は凍結乾燥粉末製剤)に製造されてもよい。
【0033】
当業者に理解されるように、本開示の医薬組成物に対して、液体製剤と乾燥粉末製剤(又は凍結乾燥粉末製剤)は、両者が互いに変換することができ、差異が含水量のみである。液体製剤中の大部分又は全部の水を除去して、乾燥粉末製剤(又は凍結乾燥粉末製剤)を得る。乾燥粉末製剤(又は凍結乾燥粉末製剤)を溶解(又は再溶解)した後に液体製剤を得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、医薬又は医薬組成物は、膏剤、クリーム、エマルション、懸濁剤、パスタ剤、ゲル剤、ローション剤、チンキ剤、油剤、錠剤、エアゾル剤、スプレー剤、リニメント剤、粉剤、坐剤から選択される剤形として製造され、上記膏剤は、軟膏剤、硬膏剤、乳剤から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、剤形は病巣への投与に適合する形である。例えば、スプレー、軟膏、ローション剤、ドレッシング材、パッチである。
【0036】
いくつかの実施形態では、上記薬学的に許容可能な賦形剤は、充填剤、安定剤、矯味剤、崩壊剤、接着剤、潤滑剤に関するが、これらに限定されていない。
【0037】
いくつかの実施形態では、上記薬学的に許容可能な賦形剤は、例えば、デキストラン、ラクトース、微結晶セルロース、トレハロース、グリシン、キシリトール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エリスリトール、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、噴射剤、保湿剤、溶剤、可溶化剤、乳化剤、抗酸化剤、pH調節剤、防腐剤であるが、これらに限定されていない。
【0038】
いくつかの実施形態では、上記薬学的に許容可能な賦形剤の非限定的な例は、ホワイトワセリン、カルボマ、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キトサン、スクラルファートキトサン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、ジメチルエーテル、テトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、グリセリン、プロピレングリコール、脱イオン水、注射用水、蒸留水、エタノール、セタノール、ステアリルアルコール、パラアミノ安息香酸、アセトアミド、イソプロパノール、ツイン、ポリオキシエチル水素化ヒマシ油、ステアリン酸、モノステアリン酸グリセロール、トリグリセリンモノステアレート、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖エステル、イソ酪酸酢酸スクロース、ソルビタントリステアレート、ミリスチン酸イソプロピル、コレステロール、スクアレン、スクワラン、n-ブタノール、エチレングリコール、エタノール、プロピレングリコール、ポリグリセリンエステル、亜硫酸塩、システイン酸、ジ-tert-ブチルヒドロキシトルエン、ソルビン酸カリウム、リン酸緩衝液、トリエタノールアミン、水素化ナトリウム、エチレンジアミン、ラウリルアミン、炭化水素ナトリウム、塩酸、パラベン類、チメロサール、クロロクレゾール、アセトンクロロホルム、安息香酸及びそのナトリウム塩をさらに含む。
【0039】
本開示のいくつかの実施形態に係るロドコッカスルーバー製品の製造方法は、
1)ロドコッカスルーバーを用意するステップと、
2)必要に応じて、上記ロドコッカスルーバーを培養するステップと、
3)必要に応じて、培養されたロドコッカスルーバーを収集するステップと、
4)上記培養されたロドコッカスルーバーを粉砕して、粉砕生成物を得るステップと、
5.1)必要に応じて、上記粉砕生成物に脂質除去操作を行い、
5.2)必要に応じて、上記粉砕生成物に核酸除去操作を行い、
5.3)必要に応じて、上記粉砕生成物にタンパク質除去操作を行い、
5.4)精製生成物を得るステップと、
6)必要に応じて、上記精製生成物中の水を除去し、好ましくは、凍結乾燥により上記精製生成物中の水を除去するステップと、
7)必要に応じて、個包装するステップと、
8)上記ロドコッカスルーバー製品を取得するステップと、を含むか又はこれらのステップからなる。
【0040】
そのうち、ステップ5.1)、5.2)、5.3)は順序を入れ替えてもよく、同時に行ってもよく、ステップ6)とステップ7)は順序を入れ替えてもよい。
【0041】
必要に応じて、必要に応じて、ステップ5)は、(例えば、非イオン型界面活性剤で)細胞膜を除去するステップをさらに含んでよい。
【0042】
ロドコッカスルーバーの培養は、具体的な培養媒体及び培養パラメータに限定されず、当業者であれば公知の適切な方式で培養することができ、製造規模に応じて培養皿、培養ボトル、発酵タンクを採用することができる。
【0043】
ロドコッカスルーバーの粉砕に対して、その目的は、細胞内の物質を除去することにあるため、超音波破砕、リゾチームなどの技術を採用することができる。当業者に理解されるように、グラム陽性菌を破砕することに適する任意の既知又は将来の方法は、いずれも本開示の技術的解決手段に適用される。
【0044】
当業者には活性成分(細胞壁及びその組成成分)の後続の投与(例えば内服、注射、外用など)に応じて、培養、破砕、単離、収集、不純物除去、個包装の具体的なパラメータ及び機器を調整することで、後続の投与に影響する要素が製造ステップに導入されないようにする能力がある。
【0045】
いくつかの実施形態では、例えば、有機溶剤を用いて破砕生成物中の脂質を除去する。いくつかの実施形態では、例えば、ヌクレアーゼを用いて破砕生成物中のDNA及びRNAを除去する。いくつかの実施形態では、例えば、ヒドロラーゼを用いて破砕生成物におけるタンパク質を分解する。いくつかの実施形態では、例えば、界面活性剤を用いて破砕生成物中の細胞膜を除去する。
【0046】
いくつかの実施形態では、粉砕の平均粒径は10nm~1000nmであり、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190nm±10nm、及び上記任意の2つの数値の間の範囲であってもよい。粒度の測定方法は多数ある(例えば、胡松青ら、現代顆粒粒度測量技術、現代化工、2002年22:1)。
【0047】
いくつかの具体的な実施形態では、粉砕の平均粒径は10nm~800nmである。
【0048】
別の具体的な実施形態では、粉砕の平均粒径は10nm~500nmである。
【0049】
いくつかの実施形態では、上記個包装とは、容器中又は固体支持体に個包装することを指す。上記容器は、ボトル、チューブ、バッグ、袋、プレート、アンプル、注射装置、アルミ箔包装、ドレッシング材、カプセルから選択される。
【0050】
例えば、具体的な実施形態では、上記個包装とは、ボトル/アンプルに個包装することを指す。使用する前に、ボトル/アンプルに溶剤を添加する。
【0051】
本開示のいくつかの実施形態に係るロドコッカスルーバー製品は、本開示の方法によって製造される。
【0052】
本開示のいくつかの実施形態に係る医薬組成物又は医療装置は、本開示の方法によって製造されたロドコッカスルーバー製品を含む。
【0053】
本開示のいくつかの実施形態に係る分離されたロドコッカスルーバー細胞壁は、熱損傷の治療に用いられる。
【0054】
本開示のいくつかの実施形態に係るロドコッカスルーバー製品は、熱損傷の治療に用いられる。
【0055】
本開示のいくつかの実施形態に係る医薬組成物又は医療装置は、熱損傷の治療に用いられる。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態によれば、熱損傷の治療における本開示に係るロドコッカスルーバー細胞壁の使用を提供する。
【0057】
本開示の、熱損傷の治療に用いられる医薬/医療装置の製造におけるロドコッカスルーバー細胞壁の使用をさらに提供する。
【0058】
本開示のいくつかの実施形態によれば、熱損傷の治療における本開示に係るロドコッカスルーバー製品の使用を提供し、本開示の、熱損傷の治療に用いられる医薬/医療装置の製造におけるロドコッカスルーバー製品の使用をさらに提供する。
【0059】
本開示のいくつかの実施形態によれば、熱損傷の治療における本開示に係る医薬組成物の使用を提供する。
【0060】
いくつかの実施形態では、熱損傷は、火傷、熱傷、化学火傷という要因から選択される要因で引き起こされてよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、熱損傷は、表皮層、真皮層、粘膜、皮下組織という組織まで及ぶことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、熱損傷の程度は、I、II(深、浅)又はIII度損傷である。
【0063】
本願では、熱損傷の重症度は、三度四分法によれば、I度、浅II度、深II度及びIII度に分けられる。
【0064】
I度:表皮のみを損傷し、局所的な発赤と腫れがある;
II度:真皮に深く及び、水胞が局所的に現れる;
浅II度:表皮の発毛層及び真皮の乳頭層のみを損傷する;
深II度:真皮層を損傷し、皮膚付属器が残っている;
III度:皮膚全層を損傷し、さらに皮下、筋肉、骨などに深く及ぶ。
【0065】
具体的な実施形態では、本願に係るロドコッカスルーバー製品/ロドコッカスルーバー細胞壁/医薬組成物は、特に深II度の熱損傷を治療するために用いられる。
【0066】
本開示のいくつかの実施形態によれば、
-本開示に係るロドコッカスルーバーと、
-本開示に係る分離されたロドコッカスルーバー細胞壁と、
-本開示に係るロドコッカスルーバー製品と、
-本開示に係る医薬組成物とのいずれか一項の医薬(又は医療装置)の製造における使用を提供する。
【0067】
いくつかの具体的な実施形態では、上記医薬は、熱損傷を治療することに用いられる。
【0068】
いくつかの具体的な実施形態では、上記医療装置(例えば、ドレッシング材、パッチ、包帯、フィルム、パッチなど)は熱損傷を治療することに用いられる。
【0069】
本開示のいくつかの実施形態に係る熱損傷を治療する方法は、被験者(病巣)に治療有効量の
-本開示に係る分離されたロドコッカスルーバー細胞壁と、
-本開示に係るロドコッカスルーバー製品と、
-本開示に係る医薬組成物と、
-本開示に係る医療装置とのいずれか一項から選択されるものを接触させることを含む。
【0070】
いくつかの具体的な実施形態では、病巣の面積及び重症度の違いに対して、異なる投与量を採用し、医薬(又は医療装置)を病巣に投与する。例えば、
-ロドコッカスルーバー細胞壁骨格を含む医薬で塗布するか、又は
-ロドコッカスルーバー細胞壁骨格を浸漬したパッチ(又はフィルム、ガーゼ)で病巣に被覆され、
-ロドコッカスルーバー細胞壁骨格を含む凍結乾燥粉末を病巣に直接的に投与するか、又は
-病巣にロドコッカスルーバー細胞壁骨格を含む膏体/クリームを投与するが、これらに限定されていない。
【0071】
病巣に薬液、膏剤、乾燥粉剤を交互に使用することができる。
【0072】
毎回の投与量は、患者の病巣の面積の大きさ及び重症度の違いに応じて異なる投与量を採用し、一般的に5μg~800μg/単位投与量/1回であり、好ましくは10μg~600μg/単位投与量/1回である。
【0073】
いくつかの具体的な実施形態では、接触させる周期は、2日から4ヶ月又はそれ以上持続する。具体的には、例えば、2、4、6、8、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60日、さらに例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間又はそれ以上長いであってもよい。具体的な実施形態では、被験者に活性成分を3~5週間投与する。
【0074】
いくつかの実施形態では、1日1~3回、2日に1~6回、3日に1~9回、週に1~14回、月に1~60回という頻度で投与する。いくつかの実施形態では、1日2回、又は1日1回、又は2日に1回投与する。
【0075】
毎回の投与量は、被験者の具体的な状況の違いに応じて異なる投与量を採用し、一般的には、1μg~1000μg/単位投与量/1回であり、具体的には、例えば、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200μg/単位投与量/1回、及び前述の任意の2つの数値の間の範囲である。
【0076】
いくつかの具体的な実施形態では、本開示のロドコッカスルーバー製品、医薬組成物又は医療装置は、病巣部位に数分間から数時間、例えば、30分間~24時間接触する。
【0077】
いくつかの具体的な実施形態では、本開示のロドコッカスルーバー製品、医薬組成物又は医療装置の病巣部位に接触する周期は、1日1回、又は1日2回、又は2日に1回である。
【0078】
いくつかの実施形態では、前述の治療方法は、皮膚/粘膜構造を有する任意の動物に適用され、ヒト、ヒト以外の霊長類動物、豚、牛、馬、羊、犬、猫、ラット、ウサギを含むが、これらに限定されていない。
【0079】
いくつかの具体的な実施形態では、被験者は、ヒト以外の動物であり、例えば、農場動物、ペット、作業動物、観賞動物、生産動物に用いられる。
【0080】
具体的な実施形態では、被験者はヒトである。
【0081】
いくつかの具体的な実施形態では、医薬又は医療装置における唯一の治療的(予防的)活性成分は、ロドコッカスルーバーに由来する製品であり、特にロドコッカスルーバーの組成成分(例えば、タンパク、核酸、脂質、細胞壁及びその組成成分、炭水化物、代謝物)を含む製品であり、具体的にはロドコッカスルーバー細胞壁(より好ましくはロドコッカスルーバー細胞壁骨格又はその組成)を含む製品である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】ロドコッカスルーバーのコロニー形態である。
図2】16S rRNA同定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
「分離」とは、本開示のロドコッカスルーバーがその元の成長環境から脱離することを指す。
【0084】
当業者に理解されるように、グラム陽性菌とグラム陰性菌との細胞壁構造は異なる。具体的には、グラム陽性菌の細胞壁は厚く(一般的に20nm~80nmである)、約90%のペプチドグリカン及び10%のタイコ酸(アルコールとリン酸分子で形成されたポリマーであって、一般的に糖エステル又はアミノ酸エステルの形態で存在する)を含有する。ペプチドグリカン層は、緻密であり、さらに多くは20層に達する。しかしながら、グラム陰性菌の細胞壁は、グラム陽性菌の細胞壁より非常に薄く、構造が複雑であり、外膜(outer membrane)及びペプチドグリカン層(一般的に2 nm~3 nm)に分けられる。
【0085】
ペプチドグリカン層は、細菌細胞壁における特有の成分であり、ヘテロ多糖の誘導体である。各ペプチドグリカンのモノマーは、糖ユニット(例えば、少なくとも2種類の糖分子は、グリコシド結合により接続され、ペプチドグリカンの骨格性構造を構成する)、ペプチドテール(複数のアミノ酸により接続された短ペプチド鎖であり、それはN-アセチルシチジン酸分子に接続される)、及びペプチドブリッジ(隣接する「ペプチドテール」を架橋して高強度の網状構造を形成する)という3つの部分を含む。異なる細菌のペプチドブリッジ、ペプチドテール、架橋方式は異なる。
分離されたロドコッカスルーバー細胞壁
【0086】
本開示では、「分離されたロドコッカスルーバー細胞壁」は、完全な細胞壁として理解されてもよく、不完全な細胞壁(例えば、破砕又は部分的に分解された細胞壁)として理解されてもよい。本開示の教示の下で、当業者に理解されるように、所望の活性を示す成分は、ロドコッカスルーバーの細胞壁(例えば、細胞壁自体又はその組成)に由来する。したがって、臨床応用において完全な細胞壁、破砕された細胞壁、細胞壁の不完全分解生成物、細胞壁の組成成分、細胞壁の抽出物などの様々な形態を採用することを許可し、これらはいずれも本開示の範囲内に含まれる。
細胞壁骨格
【0087】
細胞壁本体構造を構成する組成成分であり、しかしながら、細胞壁の架橋網状エンティティのみを示すと理解することができず、当業者であれば架橋網状エンティティに吸着され、結合され、担持された他の細胞壁成分を排除しないと理解する。
ロドコッカスルーバー
【0088】
本開示の実施形態に使用されるロドコッカスルーバーとは、ロドコッカス属(Rhodococcus)のロドコッカスルーバー種(Rhodococcus ruber)を指し、特定の細胞株に限定されない。
【0089】
非限定的な例は、TOY7株(南京農業大学農業環境微生物菌種保蔵センター)、CGMCCNo.4795、DSM43338、CCTCC No.2012035、CGMCC No.16640、CGMCC No.17431を含む。
【0090】
ロドコッカスルーバーの同定
【0091】
既知又は将来の微生物同定技術に基づいて、当業者であれば、一株の細菌に対して分類学的同定を行うことができ、例えば、利用可能な同定技術は形態学、生理生化学特徴、16S rRNAなどを含む。当業者に理解されるように、科学技術の発展に伴い、同定技術は異なる手段に関し、早い時期に主に形態学及び生化学同定方式を採用するが、このような方法の信頼性が高くない。配列決定技術が出現した後、当業者であればより信頼できる方式で菌株を同定することができる。例えば、16S rRNAのDNA配列が97%(含有)以上の類似性を有すると同定された場合、2つの菌が同じ種類に属すると判定する(華苟根ら、ロドコッカス属の分類及び応用研究の進歩、微生物学通報、2003:30(4))。ロドコッカスルーバーについて、国際(又は国家レベル)菌種保蔵機関に保蔵された既知の菌株を基準株とし、かつそれと比較する。
【0092】
剤形
本開示の医薬又は医薬組成物又は活性成分又は製品は、軟膏剤、乳剤、硬膏剤、ゲル剤、錠剤、ローション剤、チンキ剤、リニメント剤、油剤、パスタ剤、散剤、粉剤、スプレー剤、エアゾル剤、坐剤、パッチ、懸濁液、洗口液、トローチ錠、添加剤、パッチ、包帯、貼付フィルム、ガーゼという形態に体現することができるが、これらに限定されていない。
【0093】
製剤単位
本開示の医薬又は医薬組成物又は活性成分又は製品は、単位製剤(ユニット製剤)の形態に製造されてもよい。
【0094】
いくつかの実施形態では、上記医薬(又は製剤、又は治療剤、又は医療装置)中のユニット単位投与量は、
-1μg~1000μgの上記ロドコッカスルーバー製品、又は
-1μg~1000μgの上記ロドコッカスルーバー細胞壁、又は
-1μg~1000μgの上記ロドコッカスルーバー細胞壁骨格を含有する。
【0095】
単位投与量の具体的な例は、1、2、5、10、15、20、25、30、40、50、55、56、57、58、59、60、61、62、63、65、66、67、68、69、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500μg±10%、及び上記任意の2つの数値の間の範囲である。
【0096】
「使用する」、「与える」、「供給する」、「処理する」という語を動物、ヒト、細胞、組織、器官又は生物サンプルに応用する場合、医薬又は医療装置を動物、ヒト、細胞、組織、器官又は生物サンプルに接触させることを指す。
【0097】
「治療する」とは、被験者に内用又は外用の医薬(治療剤、活性成分又は組成物)(例えば、本開示に係るロドコッカスルーバー細胞壁又はその医薬組成物)又は医療装置を与え、治療する被験者(又は集団)の1つ又は複数種の疾患症状を、臨床で測定可能な程度まで緩和(軽減、遅延、改善、治癒)することを指し、上記被験者は、1つ又は複数種の疾患又はその症状すでに有しているか、有すると疑われるか、又は罹患しやすい対象である。
【0098】
任意の疾患症状を効果的に緩和する医薬(治療剤、活性成分又は組成物)の量を治療有効量と呼ぶ。複数種の要因、例えば、被験者の疾患状態、年齢、体重に応じて変化することができる。理解すべきことは、単一の被験者の目標疾患又はその症状を緩和する時、医薬(治療剤、活性成分又は組成物)が無効である可能性があるが、本分野で既知の任意の統計学的検定方法(例えばStudent T検定、カイ二乗検定、Mann及びWhitneyに基づくU検定)に基づいて、医薬(治療剤、活性成分又は組成物)が統計学的意味で目標疾患又はその症状に対して有効であると確定する。
【0099】
「任意選択に」とは、その後に説明される事項が発生することができるが、発生しなければならないことではなく、発生が状況に応じて決定する必要があることを意味する。例えば、「必要に応じて、個包装する」とは、製品を個包装することを許可するが、個包装しなければならないことではないことを意味し、個包装するか否かは技術効果の達成に影響を与えない。
【0100】
「1つの」、「一」、「単一の」、「この」は、明確に説明しなければ、複数の形式も含む。
【0101】
以下に実施例、製造例及び試験例を参照しながら、本開示をさらに説明する。ただし、これらの実施例、製造例及び試験例は、本開示の範囲を制限するものではない。具体的な条件を明記しない場合、従来の条件に応じて、原料サプライヤーが提案した条件に応じて操作する。出所が具体的に記載されていない試剤は、市販されている一般的な試剤である。
【0102】
当業者であれば特に理解されるように、以下の具体的な例は特定の細胞株を採用するが、技術的効果の実現は該特定の細胞株に限定されるものではなく、任意のロドコッカスロドコッカスルーバー種(Rhodococcus ruber)の種も適用される。
【実施例
【0103】
実施例1.菌株保蔵
発明者らは、実験室に保存された主代菌株を2019年3月22日に北京市朝陽区北辰西路1号院3号、中国微生物菌種保蔵管理委員会普通微生物センターに保蔵し、保蔵番号はCGMCC No.17431である。検出により、登録された菌株が生存することを示す。
【0104】
実施例2.菌株同定
1.コロニー形態特徴の裸眼観測
【0105】
グリセリン寒天培養媒体上に、30~37℃(具体的には32~35℃)で12~72(具体的には36~60、例えば40~50)時間培養し、以下が見られる(図1)。
-コロニーが隆起する。
-赤オレンジ色を呈する(光線、培養媒体の色などの影響を受けると、わずかに差異がある)
-表面が乾燥してしわが発生し、光沢がわずかに現れる(培養条件の差異に応じて、わずかに差異がある)
-軽く触れると壊れやすい
-コロニーの大きさは約1mm~2mmである(培養条件の差異に応じて、わずかに差異がある)
【0106】
2.顕微鏡観察
-菌体は、分枝状を呈し、横隔膜を有し、菌糸体を形成する(培養条件の差異に応じて、わずかに差異がある)
-菌糸が分裂し、規則的で短く太い細胞を形成する(培養条件の差異に応じて、わずかに差異がある)
-4~5日間培養する時、菌体は短棒状又は球状を呈する(培養条件の差異に応じて、わずかに差異がある)
【0107】
3.染色性
【0108】
グラム染色陽性
【0109】
4.生化学反応
【0110】
グリセリン寒天斜面培養媒体上に、30~37℃(具体的には32~35℃)で12~72(具体的には36~60、例えば40~50)時間培養する。次に、培養物に対して、以下の各項の試験を行う。
【0111】
4.1炭水化物の酸生成
【表1】
【0112】
4.2酵素活性の測定(API ZYM)
【表2】
【0113】
4.3硝酸塩還元反応陽性、接触酵素陽性、チロシナーゼ陽性、アミラーゼ陰性、オキシターゼ陰性、ゼラチン液化陰性。
【0114】
4.4唯一の炭素源:
【表3】
【0115】
4.5 16S rRNA同定
作業種子管から分離された15株の菌及び元の種子管から分離された10株の異なる菌株に対して、ゲノム抽出、16Sr RNA増幅、及び配列決定を行う。合計25個の菌株の16Sr RNA遺伝子の同一性は100%である。これは、25個の菌株が同じ属種であることを示している(図2)。
【0116】
同時に、Kimura 2-パラメータアルゴリズムに基づいて構築されたneighbor-joining菌株進化木であり、結果は菌株がRhodococcus ruberに帰属することを示す。
製造例
【0117】
製造例1.培養方法
1.一般的な微生物生産方法により、ロドコッカスルーバーを培養することができる。
【0118】
2.培養方式は、固体培養であってもよく、液体培養(例えば、振動フラスコ、発酵タンク)であってもよい。
【0119】
3.培養媒体中の栄養源に特別な制限がなく、培養媒体中にグラム陽性菌を培養するための一般的な炭素源、窒素源及び他の栄養源が含まれる。
-炭素源は、ロドコッカスルーバーが利用可能な任意の炭素源である。例えば、フルクトース、グルコースなどである。
-窒素源:肉エキス、ペプトン、アンモニウム塩、硝酸塩及び他の有機又は無機窒素含有化合物。
-その他の栄養源:無機塩を適宜添加してもよい。例えば、NACl、リン酸塩などである。
【0120】
4.培養条件(温度、時間など)に厳密な制限がなく、当業者であれば、初期の小規模のパイロットデータに基づいて、その生産量が最も高い条件を自ら選択することができる。
【0121】
5.例として、以下の培養条件でロドコッカスルーバーを発酵する。
【0122】
(1)培養媒体の組成は、
ペプトン、牛肉エキス、塩素ナトリウム、リン酸塩、グリセリン(そして、任意選択な寒天、固体培養の場合)を含む。
(2)培養の方法パラメータ
作業菌種を蘇生した後、固体培養媒体に移して3~5日間維持し、さらに液体培養(30~37℃、3~5日間維持)に移し、流加培養法の半回分モードを採用してもよく、回分モードを採用してもよい。培養期間にpH、細菌密度、溶存酸素、炭素源消費を監視する。
【0123】
製造例2.菌体破砕
製造例1で得られた菌を収集し、細胞を粉砕する(例えば、超音波で破砕するが、それに限定されない)。例えば、CN101250490A又はCN101323865Aのように、本分野の任意の適切な公知の方法で菌体を破砕することも可能である。
【0124】
顕微鏡で粉砕の状況を検査し、各視野の有体菌が5個を超えてはならず、複数(10~30個)の視野がいずれもこの標準に達すると検査すると、合格する。
【0125】
製造例3.非細胞壁成分の除去
1.核酸の除去
破砕生成物を遠心分離し、得られた沈殿物にDNA酵素及びRNA酵素を添加し、酵素のサプライヤーが提案した操作に従って核酸を除去する。
【0126】
2.タンパク質の除去
沈殿物に一般的なプロテアーゼ(例えば、トリプシン)を添加し、酵素のサプライヤーが提案した操作に従ってタンパク質を除去する。
【0127】
3.脂質の除去
沈殿物に有機試剤(例えば、アセトン、エチルエーテル、エタノールのうちの一種又は組み合わせであるが、これらに限定されない)を添加し、本分野の一般的な操作に従って脂質を除去する。
【0128】
4.細胞膜の除去
沈殿物にTritonX-100を添加し、本分野の一般的な操作に従って、遠心分離して沈殿物を収集し、PBSで洗浄する。
【0129】
理解されるように、上記不純物を除去するステップの間に、当業者であれば優先順位を調整することにより、ステップの間に互換性がある。非細胞壁成分を除去した後、使用のために沈殿物を注射用水に再溶解する。必要に応じて、115℃で20~30分間滅菌し、細胞壁骨格の原液(主に細胞壁骨格及びその組成成分を含む)とすることができる。
【0130】
上記方法以外に、当業者であれば、さらに、CN105779326Aに開示された細胞壁を抽出する方法などの本分野の既知又は将来の方法を使用して非細胞壁成分を除去することができる。
【0131】
5.生産量
159個のグラム瓶から菌液653ml(破砕後)を収集し、湿重量収量は138gであり、細胞壁骨格の生産量は約0.87g/グラム瓶である。
【0132】
製造例4.医薬組成物(医療装置)の製造方法
1.液体組成物
製造例3で得られた生成物に賦形剤(例えば、デキストラン40、マンニトール又はトレハロース)を添加する。個包装すれば、医薬組成物を得る。
表1(表4).医薬組成物を複数種の形態に調製してもよい
【表4】
【0133】
2.凍結乾燥粉末組成物
第1項の医薬組成物を凍結乾燥して、凍結乾燥粉末を製造する(それぞれ番号が凍結乾燥粉末組成物1~7である)。
【0134】
3.製剤の製造方法
(1)ドレッシング材
第1項の医薬組成物(活性成分60μg~120μgであり、例えば、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、110μg、120μg)をドレッシング材(例えば、無菌ガーゼ)に塗布して、外用医療装置を製造する。
【0135】
(2)パッチ又は貼付フィルム
本分野の公知の方法(例えば、中国出願番号201610605617.5、201510614414.8、200610200450.0、201610511974.5、201610471977.0に開示された方法)を用いて、貼付フィルムを製造する。
【0136】
例えば、成膜材料のポリビニルアルコール、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロースを水に添加し、膨潤させ、均質な粘性液を形成し、粘性溶液に第1項の医薬組成物(それぞれ、組成物1~7)を添加し、均一に混合し、静置して消泡し、形成された無気泡の混合粘性液を少量のパラフィンを塗布する金型に鋳込み、5~20min乾燥し、フィルムを取り出し、必要な面積に切断する。
【0137】
(3)ゲル剤
ゲルの形態に製造してもよい。例えば、中国出願番号200510028076.6に開示された方法を参照し、組成物3とエステル化剤を溶剤に撹拌溶解し、アルキルセルロースを添加し、膨潤させ、ゲル状が形成するまで撹拌し続け、次に、架橋剤を添加し、完全に均一になるまで撹拌し続ける。
【0138】
(4)膏剤
皮膚外用軟膏のための製造方法は、さらに中国出願番号201610856428.5、01133296.4、1133297.2、《医薬剤形と製剤設計》(化学工業出版社2009)に開示された方法に見られるが、これらに限定されない。
【0139】
4.品質検定(凍結乾燥粉末組成物3を例)
表2(表5).品質検定項目
【表5】
試験例
【0140】
1.材料
1.1医薬及び主な試剤
-試験医薬:前述の製造例における組成物3の凍結乾燥粉末(60μg活性成分/ボトル)
-対照医薬:京万紅軟膏(天津達仁堂京万紅薬業有限公司、中国薬品承認番号Z20023137、規格30g/本)、
Veet脱毛クリーム(レキットベンキーザー(中国)有限公司)、
エチルエーテル(国薬集団化学試薬有限公司)。
【0141】
1.2実験動物
16匹のクリーングレードの昆明マウスであり、体重量が28~36gであり、遼寧長生生物技術株式会社により提供され、合格証番号が211002300051326である。
【0142】
2.実験方法
2.1実験設計
16匹の昆明マウスを、
1)モデル群、
2)創傷面を破損しない治療群(ロドコッカスルーバー群)、
3)創傷面を破損した治療群(ロドコッカスルーバー群)、
4)陽性対照群(対照医薬)という4群にランダムに分け、各群に4匹がある。
2.2マウスのII度熱傷モデルの製造
マウスを環境に適応して一週間飼育した。マウスの背部皮膚をかみそりで毛を刈った後、脱毛クリームで脱毛し(範囲は約3.5cm×3.5cmである)、180s放置し、30~40℃の温水で脱毛領域を洗浄し、脱脂綿で拭いて乾燥させる。
【0143】
脱毛後のマウスを24h正常に飼育し観察し、脱毛部位に腫れ、炎症及び破損などの異常な状況がないことを確定する。24hの後にエチルエーテルで麻酔し、操作台に置き、75%のエタノールで実験領域の皮膚を消毒し、熱傷モデルを構築する。
【0144】
マウスを中間に1.5cmの孔を有する熱傷装置に置き、背部の脱毛された皮膚を孔の部位に位置させ、背部が露出した1.5cmの孔を75℃の恒温水中に置いて12s持続し、熱傷直径が約1.5cmの円形創傷面を製造する。
【0145】
傷付けた後のマウスをケージに分けて飼育し、創傷面を生理食塩水で処理し、かつ飼料及び蒸留水を与え、敷料が乾燥しクリーンであり、よく通風できるように保証する。三度四分に基づいて火傷/熱傷が深II度であると鑑定する。
【0146】
2.3群分け投与
熱傷後の24時間から投与を開始する。
-モデル群において、毎日、各匹のマウスの熱傷皮膚の創傷面に生理食塩水を塗布し、
-創傷面を破損しない治療群において、まず生理食塩水で創傷面を処理し、毎日、各匹のマウスに組成物3を外部塗布し(1ボトル、0.25mlの生理食塩水をボトル内に注入し、凍結乾燥粉末を完全に溶解させ、3層の1.2cm×1.2cmのガーゼを完全に浸潤させ、創傷面に塗布した後、医療用脱感作テープで固定する)、
-創傷面を破損した治療群において、まず生理食塩水で創傷面を処理し、創傷面を破損し、毎日、各匹のマウスに組成物3を外部塗布し(1ボトル、0.25mlの生理食塩水をボトル内に注入し、凍結乾燥粉末を完全に溶解させ、3層の1.2cm×1.2cmのガーゼを完全に浸潤させ、創傷面に塗布した後、医療用脱感作テープで固定する)、
-陽性対照群において、まず、生理食塩水で創傷面を処理し、次に毎日、各匹のマウスに京万紅軟膏を1回外部塗布する。
【0147】
それぞれ1、3、7、11、15日間投与し、創傷面の癒合状況を観察する。
【0148】
3.実験観察及び指標検出
3.1創傷面の癒合時間の測定
各群に対して、癒合時間を測定する。判定基準は、以下を含む。
-癒合:熱傷箇所に痂皮が完全に脱落し、修復した後に組織の表面が新鮮で平坦である。
-基本癒合:熱傷箇所に痂皮が断続的に脱落し、新たに生成した組織の表面が平坦ではなく、かつ小さい範囲の少量の滲出物があるが、明らかな感染巣がない。
-感染:痂皮の周囲に明らかな腫れがあり、痂皮の下に膿液又は潰瘍がある。
【0149】
3.2創傷面の癒合率
3、7、11、15日間投与し、マウスの創傷面の癒合状況を観察し、かつ記録し、創傷面が完全に上皮化し、滲出物がないと、創面が完全に癒合すると見なし、同時に創傷面に腫れ、感染などの状況があるか否かを観察する。各時点の創傷面の癒合率を計算する。写真中のスケールで、グラフィック処理ソフトウェアにより創傷面の直径を得て、創傷面の面積を計算する。
【0150】
創傷面の癒合率%=(元の創傷面の面積-癒合しない創傷面の面積)/元の創傷面の面積×100%。
【0151】
3.3統計方法
SPSS 17.0統計ソフトウェアを採用して分析し、各群の間に一元配置分散分析を用いて比較する。得られたデータを
【数1】
で表す。P<0.05は差が統計学的に有意であることを示す。
【0152】
4.実験結果
4.1大体観察
全てのマウスは、いずれも創傷面が癒合するまで生きており、摂食、飲水、精神状態、活動などについて、いずれも明らかな差異がなく、明らかな感染現象がない。
【0153】
4.2創傷面の癒合状況
4.2.1創傷面の癒合時間
マウスの創傷面が完全に癒合し、かつ組織の表面が平坦であることを癒合標準とする。モデル群に比べて、創傷面を破損した治療群及び陽性群の創傷面の癒合時間が短縮され、差異は統計学的に有意な差がある(P<0.05)。創傷面を破損した治療群を陽性群に比べて、癒合時間は陽性群の癒合時間よりわずかに早く、差は統計学的に有意である(P<0.05)。
表3(表6).マウスの深II度の熱傷の創傷面の癒合時間
【数2】
【表6】
注:モデル群に比べて、P<0.05
【0154】
4.2.2創傷面の癒合率
モデルを確立した後の24hの後に投与を開始し、投与前の創傷面の面積を基準面積とし、それぞれ3、7、11、15日に創傷面の面積を記録し、かつ癒合率を計算する。
【0155】
創傷面を破損した治療群はモデル群に比べて、7d投与する場合に創傷面の癒合率はモデル群より明らかに高く、11d投与する場合に陽性群及び創傷面を破損しない治療群の癒合率もモデル群より高くなり、統計学的に有意な差がある(P<0.05)。創傷面を破損した治療群を陽性群に比べて、7日間投与する場合に創傷面の癒合率は陽性群より高くなり、かつ統計学的に有意である(P<0.05)。
表4(表7).マウスの深II度の熱傷の創傷面の癒合率
【数3】
【表7】
注:モデル群に比べて、P<0.05
【0156】
4.2.3創傷面の癒合状態
創傷面を破損した治療群のマウスが癒合する場合に、創傷面に瘢痕増殖がなく、かつ平滑であり、他の群にいずれも異なる程度の瘢痕増殖が発生し、同時に創傷面を破損した治療群の創傷面の部位に既に毛髪が成長し始める。
【0157】
以上より、ロドコッカスルーバー細胞壁骨格は、マウスの深II度の熱傷の癒合過程において、癒合率を効果的に向上させ、癒合時間を短縮し、創傷面が癒合した後の瘢痕の形成を減少させることができ、同時に皮膚毛包及び他の付属器に対する修復効果が顕著である。
図1
図2
【配列表】
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