(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】環境試験機および環境試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
G01N17/00
(21)【出願番号】P 2022001606
(22)【出願日】2022-01-07
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000107583
【氏名又は名称】スガ試験機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須賀 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】名取 悦二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 和哉
【審査官】野田 華代
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-028489(JP,U)
【文献】特開2002-148179(JP,A)
【文献】実開平01-165449(JP,U)
【文献】特開昭61-073056(JP,A)
【文献】特開2000-241337(JP,A)
【文献】特開2007-121263(JP,A)
【文献】特開2019-078615(JP,A)
【文献】特開2007-178238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験槽と、
前記試験槽内において光を照射する光源と、
前記試験槽内に配置された水槽と、
超音波振動で前記水槽を振動させて外力を付与する外力付与機構と
を有し、
前記水槽内に溶液を収容し、
前記水槽内に試料を設置
し、
前記外力付与機構を複数備え、前記外力付与機構は各々で周波数の異なる超音波振動で前記水槽を振動させて外力を付与する環境試験機。
【請求項2】
前記水槽内に、固形物を収容する請求項
1に記載の環境試験機。
【請求項3】
前記溶液の温度を検知する温度センサーと、
前記温度センサーによって検知された前記溶液の温度に基づいて、
前記溶液の温度を制御する制御部と
を備えた請求項1
または請求項2に記載の環境試験機。
【請求項4】
前記試料を設置する試料枠を有し、
前記試料枠を上下させることで、
前記水槽内の前記試料の位置を調整可能とする
請求項1から請求項
3に記載の環境試験機。
【請求項5】
前記水槽に上蓋を設け、前記上蓋により前記水槽を密閉可能とする
請求項1から請求項
4に記載の環境試験機。
【請求項6】
前記水槽の下部に回収機構入口を設け、前記水槽の上部に回収機構出口を設け、前記回収機構入口に接続した溶液回収機構を有し、前記溶液回収機構はフィルターを有し、前記回収機構入口により前記溶液回収機構に収容した溶液を回収機構出口により、前記水槽に供給可能とする請求項1から請求項
5に記載の環境試験機。
【請求項7】
試験槽と、
前記試験槽内において光を照射する光源と、
前記試験槽内に配置された水槽と、
超音波振動で前記水槽を振動させて外力を付与する外力付与機構と
を有し、
前記水槽内に溶液を収容し、
前記水槽内に試料を設置
し、
前記外力付与機構は、超音波振動で前記水槽を振動させて外力を付与し、
前記外力付与機構を複数備え、前記外力付与機構は各々で周波数の異なる超音波振動で前記水槽を振動させて外力を付与させて試験を行う環境試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境試験を行う環境試験機および環境試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
促進的環境条件(温度・湿度・太陽光など)を人工的に再現し、試料の劣化度合いなどを評価するための環境試験機が知られている。
【0003】
このような環境試験では、温湿度の調節が可能な試験槽の中に、光源として、例えば、キセノンアークランプ、サンシャインカーボンアークランプ、紫外線カーボンアークランプ、メタルハライドランプまたは紫外線蛍光ランプなどを配置して行う耐候性試験がある。そして、上記の促進的環境条件の下、数時間から数千時間程度の試験が行われるようになっている。
【0004】
特許文献1には、液体収容部内に固定された試料を液体に浸漬させた状態で行う耐候性試験が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような環境試験機および環境試験方法では、試験結果と実際の屋外環境の劣化との高い相関性と促進性を得ることが求められている。
【0007】
したがって、実際の屋外環境の劣化との高い相関性を得ることができ、促進性のある環境試験を行うことが可能な環境試験機および環境試験方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態に係る環境試験機は、試験槽と、試験槽内において光を照射する光源と、試験槽内に配置された水槽と、水槽に外力を付与する外力付与機構と、を有し、水槽内に溶液を収容し、水槽内に試料を設置するものである。
【0009】
本発明の一実施の形態に係る環境試験機では、外力付与機構は、前記水槽を揺動させて外力を付与するようにしてもよい。
【0010】
本発明の一実施の形態に係る環境試験機では、外力付与機構は、前記水槽を回転させて外力を付与するようにしてもよい。
【0011】
本発明の一実施の形態に係る環境試験機では、外力付与機構は、前記水槽を振動させて外力を付与するようにしてもよい。
【0012】
ここで、上記振動が超音波振動であるようにしてもよい。
【0013】
本発明の一実施の形態に係る環境試験機では外力付与機構を複数備え、外力付与機構は各々で周波数の異なる超音波振動で水槽を振動させて外力を付与するようにしてもよい。
【0014】
本発明の一実施の形態に係る環境試験機では、水槽内に、固形物を収容し、溶液内で固形物を試料に衝突させるようにしてもよい。
【0015】
本発明の一実施の形態に係る環境試験機では、溶液の温度を検知する温度センサーと、温度センサーによって検知された溶液の温度に基づいて、溶液の温度を制御する制御部と、を備えるようにしてもよい。
【0016】
本発明の一実施の形態に係る環境試験機では、試料を設置する試料枠を有し、
試料枠を上下させることで、水槽内の試料の位置を調整可能としてもよい。
【0017】
本発明の一実施の形態に係る環境試験機では、水槽に上蓋を設け、上蓋により水槽を密閉可能としてもよい。
【0018】
本発明の一実施の形態に係る環境試験機では、水槽の下部に回収機構入口を有し、回収機構入口に接続した溶液回収機構を有し、溶液回収機構にフィルターを有し、溶液回収機構に収容した溶液を水槽に供給可能としてもよい。
【0019】
本発明の一実施の形態に係る環境試験方法では、試験槽と、試験槽内において光を照射する光源と、試験槽内に配置された水槽と、水槽に外力を付与する外力付与機構と、を有し、水槽内に溶液を収容し、水槽内に試料を設置し、水槽に外力を付与させて試験を行うものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施の形態に係る環境試験機および環境試験方法によれば、溶液を収容した水槽内に試料を設置し、水槽に外力を付与した状態で光を照射し環境試験を行うようにしたので、環境試験機における高い相関性と促進性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る環境試験機の概略構成例を表す模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る環境試験機の応用例を表す模式図である。
【
図4】本発明の第2の実施の形態に係る環境試験機の概略構成例を表す模式図である。
【
図5】本発明の第3の実施の形態に係る環境試験機の概略構成例を表す模式図である。
【
図6】本発明の第4の実施の形態に係る環境試験機の概略構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(水槽を揺動させる外力付与機構を有する)
2.第1の実施の形態の応用例(水槽に溶液回収機構を有する)
3.第2の実施の形態(水槽を回転させる外力付与機構を有する)
4.第3の実施の形態(水槽を超音波振動させる外力付与機構を有する)
5.第4の実施の形態(水槽を回転させる外力付与機構を有し、溶液の温度を調整する溶液温度調整槽を備える)
【0023】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る環境試験機(環境試験機1)の概略構成例を、模式的に表したものである。
図2は、
図1に示した環境試験機の側面図である。第1の実施の形態の環境試験機1は、水槽13を揺動させて外力を付与する外力付与機構16Aを有する。
【0024】
環境試験機1は、試験槽10内に設置された試料12について、促進的環境条件下での環境試験を行うものである。本発明の第1の実施の形態では、
図1、
図2に示したように、水槽13内の溶液15内に設置した試料12に環境試験が行われるようになっている。
【0025】
環境試験機1は、試験槽10内に、光源11と、水槽13を備えている。水槽13は温度センサー14と、加熱装置18と冷却装置17を備え、内部に溶液15を収容している。また、試験槽10は、一端を試験槽10の壁面に接続し、他端を水槽13の側面に接続する外力付与機構16Aを有する。ここで、溶液15としては、海水や酸性雨を模擬した成分や、過酸化水素水などの溶液が好適である。
【0026】
光源11は、試験槽10内の上方に配置されている。光源11の上方には、光源11の光を下方に反射させる反射板19が水平方向に配置されており、光源11を覆うように湾曲している。光源11は、水平方向に延在し光を放射するものである。この光源11は、例えば、キセノンアークランプ、サンシャインカーボンアークランプ、紫外線カーボンアークランプ、メタルハライドランプまたは紫外線蛍光ランプなどのランプ光源により構成されている。
【0027】
水槽13には、溶液15が収容され、溶液15内に試料12を設置している。水槽13内に設置した温度センサー14によって溶液15の温度を測定し、この測定値により冷却装置17および加熱装置18を作動させて溶液15の液温を制御する。試料12としては、例えば、高分子材料や塗装板、繊維製品などが挙げられる。
【0028】
外力付与機構16Aは、一端を試験槽10の壁面に接続し、他端を水槽13の側面に接続しており、外力付与機構16Aが往復運動することで、水槽13に揺動を与える。
【0029】
[動作および作用・効果]
第1の実施の形態の環境試験機1では、試験槽10の上部に光源11を配置し、光源11から光および輻射熱が放射される。試験槽10内の水槽13に溶液15を収容し、溶液15内に試料12が設置されており、溶液15に試料12が接触した状態で光源11からの光および輻射熱が作用する光照射試験を行うようになっている。
【0030】
環境試験機1では、外力付与機構16Aの一端を試験槽10の壁面に接続し、他端を水槽13の側面に接続しており、外力付与機構16Aが往復運動することで、水槽13に揺動を与え、水槽13内の溶液15に波(水面に高低運動)を発生させることができる。
【0031】
したがって、外力付与機構16Aにより、水槽13Aに揺動を与え、水槽13A内の溶液15に波(水面に高低運動)を発生させた状態で、試料12に光源11からの光および輻射熱を作用させることができる。これにより、光照射に加え、試料12に、例えば、自然界の水流や波などを模擬した物理的作用を負荷させることができるので、高分子材料などが海洋などの水中で光と波の影響を受け、光分解などによって劣化が進み、脆くなり細分化されることでマイクロプラスチック化する現象を模擬することが可能となる。
【0032】
また、水槽13内には、温度センサー14と、冷却装置17と加熱装置18が配置されており、温度センサー14の測定値に基づいて、冷却装置17および加熱装置18を作動させて、溶液15の温度を制御することができる。溶液15の温度を所望の値に制御できるようになるため、例えば、溶液15の温度に起因した試料12の劣化の度合いのばらつきが低減する。
【0033】
以下、本発明の第1の実施の形態の応用例、第2の実施の形態および第3の実施の形態について説明する。以下では、第1の実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0034】
<2.第1の実施の形態の応用例>
[構成]
図3は、上記第1の実施の形態の応用例としての環境試験機1Aの概略構成例を表す模式図である。本応用例の環境試験機1Aは、試験槽10内に光源11と、水槽13Aと、温度センサー14Aと、冷却装置17Aと、加熱装置18Aと送風機21を有し、水槽13Aに溶液回収機構23を接続している。
【0035】
水槽13Aは、内部に溶液15を収容し、試料12を保持する試料保持具20Aを有する。試料保持具20Aは、試料12を保持し、水槽13A内で高さを調整可能に設置されている。
【0036】
水槽13Aは、溶液回収機構23に接続し、水槽13Aの下部に回収機構入口22を設け、水槽13A内の溶液15を溶液回収機構23に回収可能となっている。溶液回収機構23はフィルター24と図示しない送水ポンプを有し、回収した溶液15は、フィルター24を介し回収機構出口25から水槽13Aに供給可能となっている。換言すると水槽13A内の溶液15を循環するようになっている。
【0037】
[動作および作用・効果]
本応用例の環境試験機1Aは、試験槽10内の温度およびまたは、溶液15の温度を制御して試験を行うことができる。具体的には、試験槽10内の温度を制御する場合は、試験槽10に設置した温度センサー14Aの測定値を基に、冷却装置17Aおよび加熱装置18Aを制御して試験槽10内の温度を制御する。溶液15の温度を制御する場合は、水槽13A内の溶液15の温度を測定する温度センサー14の測定値を基に、水槽13A内に設置した冷却装置17および加熱装置18を制御して溶液15の温度を制御する。これにより、温度に起因した試料12の劣化の度合いのばらつきが低減する。また、試験槽10の水槽13Aの溶液15面付近に送風機21を設置することで、送風機21により、試験槽10内の温度の均一性の向上や溶液15面および試料12に風による作用を与えることができる。
【0038】
水槽13A内に設置した試料保持具20Aの高さを調整可能としているため、試料12を溶液15面よりも上方に保持することや、溶液15の水面に保持することや、溶液15に浸漬させて保持することができる。また、試料保持具20Aの高さ調整を手動または自動で行うことで、これらのサイクル試験を行うことができる。
【0039】
外力付与機構16Aにより、水槽13Aに揺動を与え、水槽13A内の溶液15に波(水面に高低運動)を発生させた状態で、試料12に光源11からの光および輻射熱を作用させることができる。これにより、水槽13A内の溶液15に、例えば、自然界の水面の波の模擬や、試料12が溶液15に接触していない状態や、溶液15の水面に位置している状態、溶液15に浸漬している状態およびこれらの状態を任意に組み合わせたサイクル試験をすることができ、試料12の劣化の相関性や促進性がさらに向上する。
【0040】
さらに、水槽13Aの底部には、回収機構入口22が設けてあり、回収機構入口22は、溶液回収機構23に接続している。溶液回収機構23にはフィルター24が設けてあり、水槽13Aの溶液15を溶液回収機構23に回収する際にフィルター24により、溶液15に試料12から脱落した微細粒子を回収可能となっている。フィルター24により微細粒子が除去された溶液15は、回収機構23を介して回収機構出口25により再び水槽13Aに供給されるようになっている。これにより、溶液15が汚染されることを防止し、また脱落した粒子の評価が容易になる。
【0041】
<3.第2の実施の形態>
[構成]
図4は、本発明の第2の実施の形態としての環境試験機1Bの概略構成例を表す模式図である。第2の実施の形態の環境試験機1Bは、水槽13Bを回転させて外力を付与する外力付与機構16Bを有する。
【0042】
水槽13Bは、水槽蓋Yにより水槽13Bを密閉する構造となっている。ここで、水槽13Bおよび水槽蓋Yの少なくともどちらか一方は、紫外線を透過させる部材を用いることが望ましい。
【0043】
水槽13Bは、内部に試料12と、溶液15と、固形物Xを収容している。水槽13B内で試料12を固定することなく溶液15内に設置する。外力付与機構16Bにより回転軸Zを中心として回転させて水槽13Bに回転動作を与え、溶液15を攪拌することで、溶液15中に設置された試料12に固形物Xが衝突する。また、試料12は、固定されていないため、溶液15の攪拌や、固形物Xとの衝突により、水槽13B内で移動するため、水槽13Bの壁面や底部にも衝突する。固形物Xとしては、例えば、砂や砂利、ステンレス鋼球、試料12と同じ材質のものなどが挙げられる。
【0044】
[動作および作用・効果]
第2の実施の形態の環境試験機1Bは、外力付与機構16Bにより回転軸Zを中心として回転させて水槽13Bに回転動作を与えることで、試料12に対して水槽13B内の溶液15を攪拌し、例えば、自然界の水流や波などの水中での物理的負荷を模擬することができる。
【0045】
水槽13Bは、水槽蓋Yにより密閉されるため、外力付与機構16Bの回転軸Zを中心とした回転により溶液15が外部に溢れることを抑止することができる。また、溶液15の蒸発を防ぐことができ、溶液15の減少や濃度変化を防止することができる。また、水槽13Bおよび水槽蓋Yの少なくともどちらか一方を紫外線透過部材とすることで、光源からの光を照射しながら試験を行うことができる。
【0046】
また、環境試験機1Bでは、試料12に、光源11からの光と、攪拌されている溶液15中の固形物Xおよび試験槽10の壁面との衝突を同時に作用させることで、試料12が細分化されやすくなり、試験の促進性が向上する。これにより、例えば、高分子材料などが、海洋で波の作用とともに岩や砂、同素材の物質がぶつかるなどによる物理的な作用によりマイクロプラスチック化する現象を模擬することが可能となる。
【0047】
<4.第3の実施の形態>
[構成]
図5は、本発明の第3の実施の形態としての環境試験機1Cの概略構成例を表す模式図である。第3の実施の形態の環境試験機1Cは、水槽13Cに超音波により振動させて外力を付与する外力付与機構16Cを有する。
【0048】
水槽13Cは、内部に試料12と、溶液15を収容している。試料保持具20Cは、水槽13C内において試料12を保持するための部材である。
図5に示した例では、試料保持具20Cは、試料12を水槽13Cの溶液15の水面に位置するように固定するようになっている。
【0049】
水槽13Cの外側に、外力付与機構16Cが隣接するように設置されており、外力付与機構16Cにより水槽13Cに超音波による振動を付与することで、水槽13C内の溶液15に水中の波(超音波伝搬)を発生させる。
【0050】
[動作および作用・効果]
第3の実施の形態の環境試験機1Cは、外力付与機構16Cにより、水槽13Cに超音波による振動を与え、水槽13C内の溶液15に水中の波(超音波伝搬)を発生させた状態で、試料12に光源11からの光および輻射熱を作用させることができる。これにより、光照射に加え、試料12に、例えば、自然界の水流や波などを模擬した物理的作用を負荷させることができる。また、外力付与機構16Cとして、超音波発生器を複数設置してもよい。この場合、振動を増幅させることや異なる周波数の振動を与えることができ、試料12の劣化を更に促進することができる。
【0051】
試料12は、試料保持具20Cにより、水槽13Cの溶液15の水面に位置するように固定されている。これにより、例えば、高分子材料などが海洋で水面に浮かび、水面から出ている部分の方が太陽光と熱にさらされることで、海洋中に沈んでいる部分よりも劣化が早く進む現象を模擬することができる。
【0052】
<5.第4の実施の形態>
[構成]
図6は、本発明の第4の実施の形態としての環境試験機1Dの概略構成例を表す模式図である。第4の実施の形態の環境試験機1Dは、水槽13Dを回転させて外力を付与するものである。
【0053】
水槽13Dは、円柱形状を有しており、密閉された中空をなしている。ここで、水槽13Dは、紫外線を透過させる部材(例えば、石英管)を用いることが望ましい。
【0054】
水槽13Dは、内部に試料12、溶液15および固形物Xを収容している。水槽13D内で試料12を固定することなく溶液15内に設置する。外力付与機構16Dにより回転方向R1に回転させて水槽13Dに回転動作を与え、溶液15を攪拌することで、溶液15中に設置された試料12に固形物Xが衝突する。また、試料12は、固定されていないため、溶液15の攪拌や、固形物Xとの衝突により、水槽13D内で移動するため、水槽13Dの壁面にも衝突する。固形物Xとしては、例えば、砂や砂利、ステンレス鋼球、試料12と同じ材質のものなどが挙げられる。また、水槽13Dの内部の溶液15の量は、全て溶液15で満たされない(水槽13D内に気体を含む)ほうが望ましい。さらに、水槽13Dは内部に羽30を備えてもよい。この場合、羽30により、溶液15がより攪拌されることで回転動作の際に水槽13D内の試料12、および固形物Xがより衝突する。
【0055】
外力付与機構16Dは、プーリー31およびモーター32から構成され、モーター32が回転することで水槽13Dが回転方向R1に回転するようになっている。試験中は、水槽13Dを常に回転させてもよいし、回転と停止のサイクルや、正転と反転のサイクルを行うようにしてもよい。
【0056】
環境試験機1Dは試験槽10とは別に溶液温度調整槽33を備えている。溶液温度調整槽33は、ロータリージョイント34、外力付与機構16Dおよび図示しないポンプを通じて水槽13Dに接続され、溶液温度調整槽33と水槽13D内を溶液15が循環するようになっている。溶液温度調整槽33の内部に冷却装置17Dと加熱装置18D、温度センサー14Dを備え、温度センサー14Dによって溶液15の温度を測定し、この測定値により冷却装置17Dおよび加熱装置18Dを作動させて溶液15の温度を制御する。
【0057】
試験槽10は外部からの空気を取り入れる送風機21Dと、試験槽10内の空気を排出する排気口35を備えている。
【0058】
[動作および作用・効果]
第4の実施の形態の環境試験機1Dは、外力付与機構16Dにより水槽13Dに回転動作を与えることで、試料12に対して水槽13D内の溶液15を攪拌し、例えば、自然界の水流や波などの水中での物理的負荷を模擬することができる。
【0059】
水槽13Dは密閉されるため、回転により溶液15が外部に溢れることを抑止することができる。また、溶液15の蒸発を防ぐことができ、溶液15の減少や濃度変化を防止することができる。また、水槽13Dを紫外線透過部材とすることで、光源からの光を照射しながら試験を行うことができる。また、水槽13Dは円柱形状であるため、光源11から受ける光が、回転している状態においても常時安定させることが可能である。
【0060】
また、環境試験機1Dでは、試料12に、光源11からの光と、攪拌されている溶液15中の固形物Xおよび試験槽10の壁面との衝突を同時に作用させ、羽30により溶液15がより攪拌されることで試料12が更に細分化されやすくなり、試験の促進性が向上する。これにより、例えば、高分子材料などが、海洋で波の作用とともに岩や砂、同素材の物質がぶつかるなどによる物理的な作用によりマイクロプラスチック化する現象を模擬することが可能となる。
【0061】
また、水槽13Dに接続されている溶液温度調整槽33内には、温度センサー14Dと、冷却装置17Dと加熱装置18Dが配置されており、温度センサー14Dの測定値に基づいて、冷却装置17Dおよび加熱装置18Dを作動させて、溶液15の温度を制御することができる。溶液15の温度を所望の値に制御できるようになるため、例えば、溶液15の温度に起因した試料12の劣化の度合いのばらつきが低減する。
【0062】
また、試験槽10は送風機21Dと排気口35を備えているため、試験槽10内が高温になることを防止できる。具体的には、例えば光源11の光に含まれる赤外放射成分に起因した試験槽10内の温度上昇の際に、送風機21Dによって、試験槽10外の外気を導入し、排気口35より排出することで、試験槽10内の温度上昇を防止することが可能となる。
【0063】
以上、実施の形態および応用例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0064】
例えば、上記実施の形態では、環境試験機における各機器の構成(形状、配置、個数など)を具体的に挙げて説明したが、これらの構成については、上記実施の形態などで説明したものには限られず、他の形状や配置、個数などであってもよい。
【0065】
光分解性プラスチックや、自然界で分解するプラスチックの開発や研究、評価などにも応用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1、1A、1B、1C、1D…環境試験機、10…試験槽、11…光源、12…試料、13、13A,13B、13C、13D…水槽、14、14A、14D…温度センサー、15…溶液、16A、16B、16C、16D…外力付与機構、17、17A、17D…冷却装置、18、18A、18D…加熱装置、19…反射板、20A、20C…試料保持具、21、21D…送風機、22…回収機構入口、23…溶液回収機構、24…フィルター、25…回収機構出口、30…羽、31…プーリー、32…モーター、33…溶液温度調整槽、34…ロータリージョイント、35…排気口、R1…回転方向、X…固形物、Y…水槽蓋、Z…回転軸。