(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】シリアルインタフェース回路、その制御方法、プログラム、通信モジュール及び通信装置
(51)【国際特許分類】
H04L 47/62 20220101AFI20240814BHJP
H04L 13/08 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H04L47/62
H04L13/08
(21)【出願番号】P 2022002879
(22)【出願日】2022-01-12
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】森本 智純
【審査官】中川 幸洋
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-527922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0325370(US,A1)
【文献】特開2016-040857(JP,A)
【文献】特開2008-066817(JP,A)
【文献】特開2008-042504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0031262(US,A1)
【文献】特開平11-225315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 47/62
H04L 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ側装置からデータを受信する送信側送信部と、前記送信側送信部からデータを受信しかつ通信回線へデータを送信する送信側受信部と、を含むデータ通信部を含むシリアルインタフェース回路であって、
前記データ通信部は、更に、前記送信側受信部と前記送信側送信部の間に設けられたタイミング制御部と、前記タイミング制御部に接続されたタイミング制御部用バッファを含み、
前記タイミング制御部は、前記通信回線の側の通信速度が低下された場合、前記送信側送信部からのデータを前記タイミング制御部用バッファに取り込むよう、前記ユーザ側装置の側の通信速度に基づいて決定される所定のデータ量毎にトリガ用の基準パルスを生成するよう、及び、前記基準パルスのタイミングを利用して、低下された前記通信回線の側の通信速度と前記ユーザ側装置の側の通信速度とに基づいて決定される送信可能なデータ量のデータを前記タイミング制御部用バッファから前記送信側受信部へ送信するよう、構成されている、
シリアルインタフェース回路。
【請求項2】
請求項1に記載のシリアルインタフェース回路において、
前記所定のデータ量は、前記ユーザ側装置の側の通信速度についての1パケットの最大データ量に相当すること
を特徴とする、シリアルインタフェース回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシリアルインタフェース回路において、
前記送信可能なデータ量は、
W=W
MAX×(V
N/V
U)
で求められること、
但し、Wは送信可能なデータ量、W
MAXはユーザ側装置の側の通信速度についての1パケットの最大データ量、V
Nは低下された通信回線の側の通信速度、V
Uはユーザ側装置の側の通信速度であること
を特徴とする、シリアルインタフェース回路。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載のシリアルインタフェース回路において、
前記タイミング制御部は、更に、前記送信可能なデータ量を超えない範囲において、1つ又は複数のパケットを1つのパルスに割り当てるよう、構成されていること
を特徴とする、シリアルインタフェース回路。
【請求項5】
請求項1~4の何れかに記載のシリアルインタフェース回路において、
前記データ通信部は、更に、前記通信回線からデータを受信する受信側送信部と、前記受信側送信部からデータを受信しかつユーザ側装置へデータを送信する受信側受信部と、を含むこと
を特徴とする、シリアルインタフェース回路。
【請求項6】
ユーザ側装置からデータを受信する送信側送信部と、前記送信側送信部からデータを受信しかつ通信回線へデータを送信する送信側受信部と、前記送信側受信部と前記送信側送信部の間に設けられたタイミング制御部と、前記タイミング制御部に接続されたタイミング制御部用バッファを含む、データ通信部を含むシリアルインタフェース回路の制御方法であって、
前記通信回線の側の通信速度が低下されたとき、前記送信側送信部からのデータを前記タイミング制御部用バッファに取り込むステップ、
前記ユーザ側装置の側の通信速度に基づいて決定される所定のデータ量毎にトリガ用の基準パルスを生成するステップ、及び、
前記基準パルスのタイミングを利用して、低下された前記通信回線の側の通信速度と前記ユーザ側装置の側の通信速度とに基づいて決定される送信可能なデータ量のデータを前記タイミング制御部用バッファから前記送信側受信部へ送信するステップ、
を含む、
制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、請求項6に記載の制御方法を実行させるプログラム。
【請求項8】
請求項1~5の何れかに記載のシリアルインタフェース回路を含む、通信モジュール。
【請求項9】
請求項8に記載の通信モジュールを含む、通信装置。
【請求項10】
ルータとして構成されていることを特徴とする、請求項9に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリアルインタフェース回路、その制御方法、プログラム、通信モジュール及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信回線とユーザ側装置との間のデータ通信を媒介するルータ等の通信装置は複数の通信速度に対応しており、通信回線の側の通信速度とユーザ側装置の側の通信速度との間で速度差が生じることがある。
【0003】
この場合、従来は、通信装置の送信側及び受信側に夫々設けられたバッファによってこの速度差を吸収することによって、異なる通信速度間でのデータ通信を可能にしている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下の分析は本発明者によってなされたものである。
【0006】
しかしながら、とりわけXFIインタフェース等の高速シリアル通信に用いられるインタフェース、例えば
図6に示したようなユーザ側装置15からデータを受信する送信側送信部11、送信側送信部11からデータを受信しかつ通信回線16へデータを送信する送信側受信部12、通信回線16からデータを受信する受信側送信部13、及び、受信側送信部13からデータを受信しかつユーザ側装置15へデータを送信する受信側受信部14を含むシリアルインタフェースにおいて、通信回線16の側の通信速度(ないし通信プロトコル)を10GBASE-T(10Gbps)から1000BASE-T(1Gbps)へ変更した場合、送信側送信部11と送信側受信部12との間で送信されるデータの通信量が1000BASE-Tの最大速度である1Gbpsより過大に低下することがある。
【0007】
これは以下に基づくと考えられる:通信回線16の側の通信速度を送信側送信部11と送信側受信部12との間の通信速度より遅くする場合、送信側送信部11からのパケットのデータ量を通信回線16の側の通信速度と同等以下に制御する必要があるため、通常は、オーバーフローを回避するために、受信側送信部13と受信側受信部14の間で制御パケットを送信する;しかしながら、この制御パケットを受信した際に、送信側送信部11が適切に動作することなく送信を続けることにより、送信側受信部12が備えるバッファにおいてオーバーフローが発生し、そのため、送信側送信部11が本来必要とするよりも過剰に送信を抑制してしまう。その結果、通信回線16の側の通信速度に対する通信量の過大な低下が発生する。
【0008】
本開示の課題は、通信回線の側の通信速度の低下による通信量の低下を低減することに貢献する、シリアルインタフェース回路、その制御方法、プログラム、通信モジュール及び通信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1の視点により、ユーザ側装置からデータを受信する送信側送信部と、前記送信側送信部からデータを受信しかつ通信回線へデータを送信する送信側受信部と、を含むデータ通信部を含むシリアルインタフェース回路が提供される。前記シリアルインタフェース回路において、
前記データ通信部は、更に、前記送信側受信部と前記送信側送信部の間に設けられたタイミング制御部と、前記タイミング制御部に接続されたタイミング制御部用バッファを含み、
前記タイミング制御部は、前記通信回線の側の通信速度が低下された場合、前記送信側送信部からのデータを前記タイミング制御部用バッファに取り込むよう、前記ユーザ側装置の側の通信速度に基づいて決定される所定のデータ量毎にトリガ用の基準パルスを生成するよう、及び、前記基準パルスのタイミングを利用して、低下された前記通信回線の側の通信速度と前記ユーザ側装置の側の通信速度とに基づいて決定される送信可能なデータ量のデータを前記タイミング制御部用バッファから前記送信側受信部へ送信するよう、構成されている(形態1)。
本開示の第2の視点により、シリアルインタフェース回路の制御方法が提供される。但し、前記シリアルインタフェース回路は、ユーザ側装置からデータを受信する送信側送信部と、前記送信側送信部からデータを受信しかつ通信回線へデータを送信する送信側受信部と、前記送信側受信部と前記送信側送信部の間に設けられたタイミング制御部と、前記タイミング制御部に接続されたタイミング制御部用バッファを含む、データ通信部を含む。
前記制御方法は、
前記通信回線の側の通信速度が低下されたとき、前記送信側送信部からのデータを前記タイミング制御部用バッファに取り込むステップ、
前記ユーザ側装置の側の通信速度に基づいて決定される所定のデータ量毎にトリガ用の基準パルスを生成するステップ、及び、
前記基準パルスのタイミングを利用して、低下された前記通信回線の側の通信速度と前記ユーザ側装置の側の通信速度とに基づいて決定される送信可能なデータ量のデータを前記タイミング制御部用バッファから前記送信側受信部へ送信するステップ、
を含む(形態6)。
本開示の第3の視点により、コンピュータに、本発明の制御方法を実行させるプログラムが提供される(形態7)。
本開示の第4の視点により、本発明のシリアルインタフェース回路を含む、通信モジュールが提供される(形態8)。
本開示の第5の視点により、本発明の通信モジュールを含む、通信装置が提供される(形態9)。
なお、上記のプログラムは、コンピュータが読み取り可能な(非トランジエントな)記憶媒体に記録することができる。即ち、本発明は、通常はハードウェアによって具現されるが、コンピュータプログラム製品として具現されることも可能である。プログラムは、コンピュータ装置に入力装置又は外部から通信インタフェースを介して入力され、記憶装置に記憶されて、プロセッサを所定のステップないし処理に従って駆動させ、必要に応じ中間状態を含めその処理結果を段階毎に表示装置を介して表示することができ、あるいは通信インタフェースを介して、外部と交信することができる。そのためのコンピュータ装置は、一例として、典型的には互いにバスによって接続可能なプロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インタフェース、及び必要に応じ表示装置を備える。
【0010】
形態1のシリアルインタフェース回路において、前記所定のデータ量は、前記ユーザ側装置の側の通信速度についての1パケットの最大データ量に相当することが可能である(形態2)。
形態1又は2のシリアルインタフェース回路において、前記送信可能なデータ量は、
W=WMAX×(VN/VU)
で求められること、
但し、Wは送信可能なデータ量、WMAXはユーザ側装置の側の通信速度についての1パケットの最大データ量、VNは低下された通信回線の側の通信速度、VUはユーザ側装置の側の通信速度であることが可能である(形態3)。
形態1~3の何れかのシリアルインタフェース回路において、前記タイミング制御部は、更に、前記送信可能なデータ量を超えない範囲において、1つ又は複数のパケットを1つのパルスに割り当てるよう、構成されていることが可能である(形態4)。
形態1~4の何れかのシリアルインタフェース回路において、前記データ通信部は、更に、前記通信回線からデータを受信する受信側送信部と、前記受信側送信部からデータを受信しかつユーザ側装置へデータを送信する受信側受信部と、を含むことが可能である(形態5)。
形態9の通信装置はルータとして構成されていることが可能である(形態10)。
【発明の効果】
【0011】
本開示ないしその各視点は、通信回線の側の通信速度の低下による通信量の低下を低減することに貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示のシリアルインタフェース回路の一実施形態の構成の一例。
【
図2】本開示のシリアルインタフェース回路の一実施形態の動作の一例のフローチャート。
【
図3】本開示のシリアルインタフェース回路の一実施形態の動作の一例のタイミングイメージ。
【
図4】本開示のシリアルインタフェース回路の一実施形態の動作の他の一例のタイミングイメージ。
【
図5】ハードウェア資源の構成の一例を模式的に示したブロック図。
【
図6】従来技術のシリアルインタフェース回路の構成の一例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の概要について説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、専ら本開示の理解を助けるためのものであり、本開示を図示の態様に限定することは意図していない。また、各図におけるブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印は、信号、情報、データ等の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。更に、各図におけるブロック間の接続は有線又は無線方式の何れでも可能である。更に、プログラムはコンピュータ装置を介して実行され、コンピュータ装置は、例えば、プロセッサ、記憶装置、入力装置、通信インタフェース、及び必要に応じ表示装置を備え、コンピュータ装置は、通信インタフェースを介して装置内又は外部の機器(コンピュータを含む)と、有線、無線を問わず、交信可能に構成される。
【0014】
なお、本開示における「シリアルインタフェース」は、XFIインタフェース等の高速シリアル通信に利用可能な任意のシリアルインタフェースを含む。
【0015】
また、本開示における「通信装置」は、典型的には、ブロードバンドルータ、ホームゲートウェイ装置等であるが、これらに限定されず、一方の側でインターネット等の「通信回線」に接続されかつ他方の側で「ユーザ側装置」に接続され、これら「通信回線」と「ユーザ側装置」との間のデータ通信を媒介し、少なくとも「通信回線」の側において通信速度ないし通信プロトコルが変更可能な任意の通信装置を含む。
【0016】
更に、本開示における「ユーザ側装置」は、「通信回線」から見てシリアルインタフェース回路ないし通信モジュールを含む通信装置のユーザ側に位置するという意味での相対的な概念であり、典型的には、例えばPC(Personal Computer)、タブレット、PDA(Personal Digital Assistant)、スマートフォン等のユーザ装置ないしユーザ端末であるが、これに限定されない。例えば「通信装置」が無線LAN(Local Area Network)装置である場合の子機ないし中継機も「ユーザ側装置」に含まれ得る。
【0017】
更に、本開示において、「接続」は、無線方式及び有線方式の何れも含み得る。
【0018】
(実施形態)
図1は、本開示のシリアルインタフェース回路の一実施形態の構成の一例を示す。なお、この例では、シリアルインタフェース回路は、ルータ等の通信装置に組み込まれる通信モジュールを構成するハードウェアとして具現されている。
【0019】
シリアルインタフェース回路は、ユーザ側装置7からデータを受信する送信側送信部1と、送信側送信部1からデータを受信し、通信回線8へデータを送信する送信側受信部2と、送信側送信部1と送信側受信部2の間に設けられかつ送信側送信部1と送信側受信部2の夫々に接続されたタイミング制御部3と、タイミング制御部3に接続されたタイミング制御部用バッファ4と、通信回線8からデータを受信する受信側送信部5と、受信側送信部5に接続され、受信側送信部5からデータを受信し、ユーザ側装置7へデータを送信する受信側受信部6を含むデータ通信部を含む。
【0020】
送信側受信部2と受信側送信部5は、例えば、同一の又は別々のPHY(PHYsical layer)デバイスないしチップとして構成可能である。
【0021】
送信側送信部1とタイミング制御部3と受信側受信部6は、例えば、別々のプロセッサとして構成可能である。但し、送信側送信部1と受信側受信部6は同一のプロセッサとしても構成可能である。なお、プロセッサとしては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等を用いることができる。
【0022】
なお、
図1において、この種のシリアルインタフェース回路が一般的に備える構成要素については、記載を省略した。例えば、送信側受信部2が備えている内部バッファについての記載は省略した。
【0023】
(動作例)
以下に、
図1~
図4を参照して、シリアルインタフェース回路がXFIインタフェース回路として構成された例について、本開示の動作を説明する。
図2は本開示のシリアルインタフェース回路の一実施形態の動作の一例のフローチャート、
図3は本開示のシリアルインタフェース回路の一実施形態の動作の一例のタイミングイメージ、
図4は本開示のシリアルインタフェース回路の一実施形態の動作の他の一例のタイミングイメージを示す。
【0024】
なお、この例では、ユーザ側装置7の側の通信速度は10GBASE-X(10Gbps)、通信回線8の側の低下された通信速度は1000BASE-T(1Gbps)であるものとする。
【0025】
また、この例では、タイミング制御部3は、その内部において10GBASE-Xの1パケットの最大データ量(Ethernet(登録商標)の場合は1518バイト)毎にトリガ用の基準パルスとして1パルス生成する。
【0026】
更に、この例では、タイミング制御部用バッファ4のメモリサイズないし容量は、数パケットから数十パケットである。
【0027】
まず、通信回線8の側の通信速度が1000BASE-T(1Gbps)に低下されると(
図2のステップS1参照)、タイミング制御部3は、送信側送信部1からのデータ(
図3(a)、
図4(a)参照)をタイミング制御部用バッファ4に取り込む(
図2のステップS2、
図3(b)、
図4(b)参照)。
【0028】
そして、タイミング制御部3は、低下された通信回線8の側の通信速度とユーザ側装置7の側の通信速度とに基づいて送信可能なデータ量を決定し(
図2のステップS3参照)、この送信可能なデータ量のデータを、上記基準パルスのタイミングを利用して、タイミング制御部用バッファ4から送信側受信部2へ送信する(
図2のステップS4、
図3(c)、
図4(c)参照)。
【0029】
ここで、送信可能なデータ量は、例えば、
W=WMAX×(VN/VU)
として求められることが可能である。但し、Wは送信可能なデータ量、WMAXはユーザ側装置7の側の通信速度についての1パケットの最大データ量、VNは低下された通信回線8の側の通信速度、VUはユーザ側装置7の側の通信速度である。
【0030】
この例では、基準パルス間のデータ量の1/10(1Gbps/10Gbps)が送信可能なデータ量の目安となり、この送信可能なデータ量(この例では基準パルス間のデータ量の1/10)を超えない範囲で1つのパルスでデータを送信し、この範囲を超えた場合には次のパルスまでデータの送信を停止する。
【0031】
具体的には、送信可能なデータ量は基準パルス間の送信可のデータ範囲(
図3(c)、
図4(c)参照)に対応し、タイミング制御部用バッファ4にバッファされた複数のパケットは夫々1つの送信可のデータ範囲に割り当てられて、送信側受信部2へ順番に送信される(
図3(c)参照)。他方、送信可のデータ範囲に対して小さいパケットが送信される場合は、1つの送信可のデータ範囲に、そのデータ量を超えない範囲内で、複数のパケットが割り当てられて、送信側受信部2へ順番に送信される(
図4(c)参照)。
【0032】
なお、
図3(c)及び
図4(c)においては、送信可能なデータ量と送信されるべきパケットの関係をより良く表すために、基準パルス間において、送信可のデータ領域は送信不可のデータ領域より長く記載されているが、この例では、実際には、前者の長さは後者の長さの1/10である。
【0033】
このように、本開示によれば、高速シリアル通信用のシリアルインタフェース回路に、具体的には、送信側送信部と送信側受信部の間にタイミング制御部及びタイミング制御部に接続されたタイミング制御部用バッファを追加してデータの送信を制御することにより、通信回線側の通信速度の低下によって引き起こされるデータの通信量の低下を抑制ないし改善することができる。
【0034】
なお、パルスによっては、通信回線8の側の通信速度を一時的に超過する場合があり得る。しかしながら、上記の通り、送信側受信部2は通常はその内部に数パケットから数十パケットの受信バッファを有するため、オーバーフローの発生は回避され得る。一時的に超過する場合でも、次のパルスによって送信されるデータ量を送信可能なデータ量(この例では基準パルス間のデータ量の1/10)以下に減らすことによって、複数のパルスをまとめて考慮した場合におけるトータルで目標のレートになるよう調整することができる。
【0035】
また、送信側送信部1から通信回線8の側の通信速度を超過するレートで送信し続ける場合、送信側受信部2の受信バッファやタイミング制御部用バッファ4がオーバーフローしてしまう。しかしながら、この場合は、タイミング制御部3は、送信側送信部1(CPU等の制御デバイス)に対して割り込み信号を送信し、強制的に、送信側送信部1からのデータ送信を一時的に停止させることによって、これらのバッファのオーバーフローを抑制することができる。
【0036】
なお、上記実施形態における制御に関連する構成要素は、いわゆるハードウェア資源(情報処理装置、コンピュータ)により構成することができ、
図5に例示する構成を備えたものを用いることができる。例えば、ハードウェア資源100は、内部バス104により相互に接続される、プロセッサ101、メモリ102、ネットワークインタフェース103等を備える。
【0037】
なお、
図5に示す構成は、ハードウェア資源100のハードウェア構成を限定する趣旨ではない。ハードウェア資源100は、図示しないハードウェア(例えば、入出力インタフェイス)を含んでもよい。あるいは、装置に含まれるプロセッサ101等のユニットの数も
図5の例示に限定する趣旨ではなく、例えば、複数のプロセッサ101がハードウェア資源100に含まれていてもよい。プロセッサ101には、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等を用いることができる。
【0038】
メモリ102には、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を用いることができる。
【0039】
ネットワークインタフェース103には、例えば、LAN(Local Area Network)カード、ネットワークアダプタ、ネットワークインタフェイスカード等を用いることができる。
【0040】
ハードウェア資源100の機能は処理モジュールにより実現されることができる。当該処理モジュールは、例えば、メモリ102に格納されたプログラムをプロセッサ101が実行することで実現される。また、そのプログラムは、ネットワークを介してダウンロードするか、あるいは、プログラムを記憶した記憶媒体を用いて、更新することができる。さらに、上記処理モジュールは、半導体チップにより実現されてもよい。即ち、上記処理モジュールが行う機能は、何らかのハードウェアにおいてソフトウェアが実行されることによって実現できればよい。
【0041】
なお、上記においては、シリアルインタフェース回路のデータ通信部の送信側について説明したが、データ通信部の受信側についても同様に構成可能である。具体的には、データ通信部の受信側送信部5と受信側受信部6の間に、タイミング制御部用バッファが接続されたタイミング制御部を設けることにより、ユーザ側装置7の側の通信速度が通信回線8の側の通信速度より低下した場合に、受信側送信部5からのデータないしデータパケットを上記と同様にタイミング制御部用バッファに取り込むことによって、ユーザ側装置7の側の通信速度の低下を抑制することも可能である。
【0042】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
[付記1]ユーザ側装置からデータを受信する送信側送信部と、前記送信側送信部からデータを受信しかつ通信回線へデータを送信する送信側受信部と、を含むデータ通信部を含むシリアルインタフェース回路。
前記データ通信部は、更に、前記送信側受信部と前記送信側送信部の間に設けられたタイミング制御部と、前記タイミング制御部に接続されたタイミング制御部用バッファを含む。
前記タイミング制御部は、前記通信回線の側の通信速度が、とりわけユーザ側装置の側の通信速度よりも、低下された場合、前記送信側送信部からのデータを前記タイミング制御部用バッファに取り込むよう、前記ユーザ側装置の側の通信速度に基づいて決定される所定のデータ量毎にトリガ用の基準パルスを生成するよう、及び、前記基準パルスのタイミングを利用して、低下された前記通信回線の側の通信速度と前記ユーザ側装置の側の通信速度とに基づいて決定される送信可能なデータ量のデータを前記タイミング制御部用バッファから前記送信側受信部へ送信するよう、構成されている。
[付記2]上記のシリアルインタフェース回路において、前記所定のデータ量は、前記ユーザ側装置の側の通信速度についての1パケットの最大データ量に相当する。
[付記3]上記のシリアルインタフェース回路において、前記送信可能なデータ量は、
W=WMAX×(VN/VU)
で求められる。但し、Wは送信可能なデータ量、WMAXはユーザ側装置の側の通信速度についての1パケットの最大データ量、VNは低下された通信回線の側の通信速度、VUはユーザ側装置の側の通信速度である。
[付記4]上記のシリアルインタフェース回路において、前記タイミング制御部は、更に、前記送信可能なデータ量を超えない範囲において、1つ又は複数のパケットを1つのパルスに割り当てるよう、構成されている。
[付記5]上記のシリアルインタフェース回路において、前記データ通信部は、更に、前記通信回線からデータを受信する受信側送信部と、前記受信側送信部からデータを受信しかつユーザ側装置へデータを送信する受信側受信部と、を含む。
[付記6]ユーザ側装置からデータを受信する送信側送信部と、前記送信側送信部からデータを受信しかつ通信回線へデータを送信する送信側受信部と、前記送信側受信部と前記送信側送信部の間に設けられたタイミング制御部と、前記タイミング制御部に接続されたタイミング制御部用バッファを含む、データ通信部を含むシリアルインタフェース回路の制御方法。
該制御方法は、
前記通信回線の側の通信速度が、とりわけユーザ側装置の側の通信速度よりも、低下されたとき、前記送信側送信部からのデータを前記タイミング制御部用バッファに取り込むステップ、
前記ユーザ側装置の側の通信速度に基づいて決定される所定のデータ量毎にトリガ用の基準パルスを生成するステップ、及び、
前記基準パルスのタイミングを利用して、低下された前記通信回線の側の通信速度と前記ユーザ側装置の側の通信速度とに基づいて決定される送信可能なデータ量のデータを前記タイミング制御部用バッファから前記送信側受信部へ送信するステップ、
を含む。
[付記7]コンピュータに、上記の制御方法を実行させるプログラム。
[付記8]上記のシリアルインタフェース回路を含む、通信モジュール。
[付記9]上記の通信モジュールを含む、通信装置。
[付記10]上記の通信装置はルータとして構成されている。
[付記11]上記のシリアルインタフェース回路において、前記送信側受信部はその内部に受信バッファを含む。
[付記12]通信回線からデータを受信する受信側送信部と、前記受信側送信部からデータを受信しかつユーザ側装置へデータを送信する受信側受信部と、を含むデータ通信部を含むシリアルインタフェース回路。
前記データ通信部は、更に、前記受信側受信部と前記受信側送信部の間に設けられたタイミング制御部と、前記タイミング制御部に接続されたタイミング制御部用バッファを含む。
前記タイミング制御部は、前記ユーザ側装置の側の通信速度が、とりわけ通信回線の側の通信速度よりも、低下された場合、前記受信側送信部からのデータを前記タイミング制御部用バッファに取り込むよう、前記通信回線の側の通信速度に基づいて決定される所定のデータ量毎にトリガ用の基準パルスを生成するよう、及び、前記基準パルスのタイミングを利用して、低下された前記ユーザ側装置の側の通信速度と前記通信回線の側の通信速度とに基づいて決定される送信可能なデータ量のデータを前記タイミング制御部用バッファから前記受信側受信部へ送信するよう、構成されている。
[付記13]上記のシリアルインタフェース回路において、前記所定のデータ量は、前記通信回線の側の通信速度についての1パケットの最大データ量に相当する。
[付記14]上記のシリアルインタフェース回路において、前記送信可能なデータ量は、
W=WMAX×(VU/VN)
で求められる。但し、Wは送信可能なデータ量、WMAXは通信回線の側の通信速度についての1パケットの最大データ量、VNは通信回線の側の通信速度、VUは低下されたユーザ側装置の側の通信速度である。
[付記15]上記のシリアルインタフェース回路において、前記タイミング制御部は、更に、前記送信可能なデータ量を超えない範囲において、1つ又は複数のパケットを1つのパルスに割り当てるよう、構成されている。
[付記16]通信回線からデータを受信する受信側送信部と、前記受信側送信部からデータを受信しかつユーザ側装置へデータを送信する受信側受信部と、前記受信側受信部と前記受信側送信部の間に設けられたタイミング制御部と、前記タイミング制御部に接続されたタイミング制御部用バッファを含む、データ通信部を含むシリアルインタフェース回路の制御方法。
該制御方法は、
前記ユーザ側装置の側の通信速度が、とりわけ通信回線の側の通信速度よりも、低下されたとき、前記受信側送信部からのデータを前記タイミング制御部用バッファに取り込むステップ、
前記通信回線の側の通信速度に基づいて決定される所定のデータ量毎にトリガ用の基準パルスを生成するステップ、及び、
前記基準パルスのタイミングを利用して、低下された前記ユーザ側装置の側の通信速度と前記通信回線の側の通信速度とに基づいて決定される送信可能なデータ量のデータを前記タイミング制御部用バッファから前記受信側受信部へ送信するステップ、
を含む。
[付記17]コンピュータに、上記の制御方法を実行させるプログラム。
[付記18]上記のシリアルインタフェース回路を含む、通信モジュール。
[付記19]上記の通信モジュールを含む、通信装置。
[付記20]上記の通信装置はルータとして構成されている。
[付記21]上記のシリアルインタフェース回路において、前記受信側受信部はその内部に受信バッファを含む。
[付記22]通信回線及びユーザ側装置の一方からデータを受信する受信部と、前記受信部からデータを受信しかつ通信回線及びユーザ側装置の他方へデータを送信する送信部と、を含むデータ通信部を含むシリアルインタフェース回路。
前記データ通信部は、更に、前記受信部と前記送信部の間に設けられたタイミング制御部と、前記タイミング制御部に接続されたタイミング制御部用バッファを含む。
前記タイミング制御部は、前記送信部の側の通信速度が前記受信部の側の通信速度よりも低下された場合、前記受信部からのデータを前記タイミング制御部用バッファに取り込むよう、前記受信部の側の通信速度に基づいて決定される所定のデータ量毎にトリガ用の基準パルスを生成するよう、及び、前記基準パルスのタイミングを利用して、低下された前記送信部の側の通信速度と前記受信部の側の通信速度とに基づいて決定される送信可能なデータ量のデータを前記タイミング制御部用バッファから前記送信部へ送信するよう、構成されている。
[付記23]通信回線及びユーザ側装置の一方からデータを受信する受信部と、前記受信部からデータを受信しかつ通信回線及びユーザ側装置の他方へデータを送信する送信部と、前記受信部と前記送信部の間に設けられたタイミング制御部と、前記タイミング制御部に接続されたタイミング制御部用バッファを含む、データ通信部を含むシリアルインタフェース回路の制御方法。
該制御方法は、
前記送信部の側の通信速度が前記受信部の側の通信速度よりも低下されたとき、前記受信部からのデータを前記タイミング制御部用バッファに取り込むステップ、
前記受信部の側の通信速度に基づいて決定される所定のデータ量毎にトリガ用の基準パルスを生成するステップ、及び、
前記基準パルスのタイミングを利用して、低下された前記送信部の側の通信速度と前記受信部の側の通信速度とに基づいて決定される送信可能なデータ量のデータを前記タイミング制御部用バッファから前記送信部へ送信するステップ、
を含む。
【0043】
本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし、選択(部分的削除を含む)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 送信側送信部
2 送信側受信部
3 タイミング制御部
4 タイミング制御部用バッファ
5 受信側送信部
6 受信側受信部
7 ユーザ側装置
8 通信回線
11 送信側送信部
12 送信側受信部
13 受信側送信部
14 受信側受信部
15 ユーザ側装置
16 通信回線
100 ハードウェア資源
101 プロセッサ
102 メモリ
103 ネットワークインタフェース
104 内部バス