(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】導電体を備えた長尺弾性シームテープ
(51)【国際特許分類】
H01B 7/06 20060101AFI20240814BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20240814BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01B7/06
C09J7/20
H01B7/02 D
(21)【出願番号】P 2022527840
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2020081578
(87)【国際公開番号】W WO2021094284
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2023-05-02
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522185841
【氏名又は名称】ナノレク・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】NANOLEQ AG
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ヒルト・ルカ
(72)【発明者】
【氏名】スタウファー・フルーリン
(72)【発明者】
【氏名】マルティネス・ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ヴィダート・セルジュ・アラン
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108520794(CN,A)
【文献】特開2017-174685(JP,A)
【文献】米国特許第06096978(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0251732(US,A1)
【文献】国際公開第2016/133065(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/148113(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
H01B 7/00- 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性を有する長尺の第1層(1)と、
前記第1層(1)に部分的に接合された、弾性を有する長尺の第2層(2)と、
弾性を有する長尺の導体(3;31,32)と、
を備える、弾性を有する長尺シームテープであって、
前記第2層(2)の両側の長手縁部が、当該シームテープ全体に沿って延びる内腔部(4;41,42)を前記第1層と前記第2層との間に形成するように、前記第1層(1)の対応する長手縁部へと接合されており、
前記導体(3;31,32)が、前記内腔部(4;41,42)内に移動可能に配置され
、前記導体(3;31,32)が、前記内腔部内で予め伸張している、長尺シームテープ。
【請求項2】
請求項1に記載の長尺シームテープにおいて、前記導体(3;31,32)が、歪みが50%以上でも導電性を維持する、長尺シームテープ。
【請求項3】
請求項1に記載の長尺シームテープにおいて、前記導体(3;31,32)が、歪みが75%以上でも導電性を維持する、長尺シームテープ。
【請求項4】
請求項1に記載の長尺シームテープにおいて、前記導体(3;31,32)が、歪みが100%以上でも導電性を維持する、長尺シームテープ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の長尺シームテープにおいて、前記内腔部(4;41,42)の断面積を第1断面積とし、前記導体(3;31,32)の断面積を第2断面積とした場合、前記第1断面積と第2断面積との比が1.4以上である、長尺シームテープ。
【請求項6】
請求項5に記載の長尺シームテープにおいて、前記第1断面積と第2断面積との比が2以上である、長尺シームテープ。
【請求項7】
請求項5に記載の長尺シームテープにおいて、前記第1断面積と第2断面積との比が5以上である、長尺シームテープ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の長尺シームテープにおいて、前記第2層(2)が、弾性ポリマーからなり、前記第1層(1)が、弾性布地、弾性ポリマーおよび熱可塑性弾性ポリマーのうちの少なくとも1つからなる、長尺シームテープ。
【請求項9】
請求項8に記載の長尺シームテープにおいて、前記弾性ポリマーが熱可塑性弾性ポリマーである、長尺シームテープ。
【請求項10】
請求項8または9に記載の長尺シームテープにおいて、前記第1層(1)の素材の融点が、前記第2層(2)の素材の融点よりも高い、長尺シームテープ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の長尺シームテープにおいて、前記第2層(2)は、少なくとも当該シームテープのうちの長手方向の一方の端部において、前記導体(3;31,32)の一部を露出させるように前記第1層(1)から引き剥がすことが可能である、長尺シームテープ。
【請求項12】
請求項11に記載の長尺シームテープにおいて、前記第2層(2)は、前記第1層(1)から手で引き剥がすことが可能である、長尺シームテープ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の長尺シームテープにおいて、当該シームテープ全体に沿って延びる2つ以上の内腔部(41,42)を前記第1層と前記第2層との間に形成するように、前記第2層(2)の両側の長手縁部が前記第1層(1)の対応する長手縁部へと接合され、前記第2層(2)の少なくとも1つの長手中間部が前記第1層(1)の対応する少なくとも1つの長手中間部へと接合されており、
弾性を有する長尺の導体(31,32)が、それぞれの前記内腔部(41,42)内に移動可能に配置されている、長尺シームテープ。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の長尺シームテープにおいて、さらに、
弾性を有する長尺の第3層(11)と、
前記第3層(11)に部分的に接合された、弾性を有する長尺の第4層(12)と、
弾性を有する長尺の第2導体(32)と、
を備え、前記第4層(12)の両側の長手縁部が、当該シームテープ全体に沿って延びる第2内腔部(42)を前記第3層と前記第4層との間に形成するように、前記第3層(11)の対応する長手縁部へと接合されており、
前記第2導体(32)が、前記第2内腔部(42)内に移動可能に配置されており、
前記第3層(11)が前記第2層(2)と別体であるか、あるいは、前記第3層(11)が前記第2層(2)と一体である、長尺シームテープ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の長尺シームテープにおいて、さらに、
前記導体(3;31,32)の端部に接続された電気コネクタ、
を備える、長尺シームテープ。
【請求項16】
請求項15に記載の長尺シームテープにおいて、前記
電気コネクタが、前記導体(3;31,32)の前記端部に取り付けられた圧着スリーブ(21)、および当該シームテープの前記内腔部(4)から長手方向に突出したコネクタ体(22)を含む、長尺シームテープ。
【請求項17】
請求項16に記載の長尺シームテープにおいて、伸張していない平衡状態での前記導体(3;31,32)の長さを第1長とし、当該シームテープが伸張していない平衡状態での前記内腔部(4;41,42)の長さを第2長とした場合、前記第2長は前記第1長よりも長い、長尺シームテープ。
【請求項18】
請求項17に記載の長尺シームテープにおいて、当該シームテープが伸張していない平衡状態で、前記圧着スリーブ(21)の全体が当該シームテープの前記内腔部(4;41,42)内に収まっている、長尺シームテープ。
【請求項19】
請求項18に記載の長尺シームテープにおいて、前記第1層および第2層が、接着材からなり、前記内腔部(4;41,42)が、前記コネクタ体(22)および前記コネクタ体(22)を取り囲むこれら接着層によって封止されている、長尺シームテープ。
【請求項20】
請求項16から19のいずれか一項に記載の長尺シームテープにおいて、前記コネクタ体が、金属リング、および導電性を有するリベット型スナップボタンコネクタからなり、前記リベット型スナップボタンコネクタが、リベット胴部を有し、前記リベット胴部が、前記コネクタ体の前記金属リングの開口を通って延びる、長尺シームテープ。
【請求項21】
請求項15から19のいずれか一項に記載の長尺シームテープが接合された布帛(20)。
【請求項22】
請求項21に記載の布帛(20)において、前記シームテープの前記第2層(2)が、接着によって当該布帛(20)に接合されている、布帛。
【請求項23】
請求項21または22に記載の布帛において、前記
電気コネクタの前記圧着スリーブ(21)が、接着によって前記シームテープの前記第1層および/または第2層、かつ/あるいは、当該布帛(20)に接合されている、布帛。
【請求項24】
請求項21から23のいずれか一項に記載の布帛において、補強層(23;25;27)が、接着によって当該布帛(20)に接合されている、布帛。
【請求項25】
請求項24に記載の布帛において、当該布帛(20)の少なくとも1箇所の断面で、前記
電気コネクタの前記圧着スリーブ(21)よりも下に布帛部分が配置されており、前記圧着スリーブ(21)よりも上に補強層部分が配置されている、布帛。
【請求項26】
請求項24または25に記載の布帛において、前記補強層は布補強層である、布帛。
【請求項27】
請求項24から26のいずれか一項に記載の布帛において、前記補強層(23;25;27)が、接着によって前記シームテープのうちの前記
電気コネクタ以外の部分に接合されており、かつ/あるいは、前記補強層(23;25;27)が、接着によって前記シームテープの前記
電気コネクタに接合されている、布帛。
【請求項28】
弾性を有する長尺シームテープを製造する方法であって、
弾性を有する長尺の第1層、弾性を有する長尺の第2層、および前記第1層と前記第2層との間に配置された弾性を有する長尺の導体を準備する工程と、
前記第1層と前記第2層との間で前記シームテープ全体に沿って延びる内腔部が形成されるように、かつ、前記導体が前記内腔部に沿って延在するように、前記第2層の両側の長手縁部を前記第1層の対応する長手縁部へと接合する工程と、
を
備え、
前記導体が、予め伸張された形態で設けられ、予め伸張された前記導体は、前記第1層および第2層が伸張していない平衡状態の前記内腔部の全長に沿って延在している、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性を有する長尺の導体を備えた長尺弾性シームテープ、および該長尺弾性シームテープを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テキスタイルの機能や性能を向上させたものとして、いわゆる電子テキスタイル、e-テキスタイルまたはスマートテキスタイルが、ますます普及しつつある。一般的に、そのような電子的機能を事前に埋め込んだテキスタイルの製造は可能であるが、多くの場合、例えば必要な回路を付け足す等して普通のテキスタイルをe-テキスタイルに単純に「アップグレード」させるだけで済めば有利である。この目的のために、繊維ベースの回路を備えたシームテープやテキスタイル用ストレッチャブル導電性フィルムが開発されている(例えば、米国特許出願公開第2017/0251732号(特許文献1)、欧州特許出願公開第3385348号(特許文献2)等を参照)。
【0003】
しかし、これらの既知のシームテープやストレッチャブル導電性フィルムは、製造が複雑かつ高価であり、電気的接続が難しく、電気的絶縁も複雑になるという点で不利である。しかも、これらのテープ/フィルムは、本来のテキスタイルの機械的特性を変化させるだけでなく、衣服の着心地にも悪影響を与え得る。これらの点で、その汎用性や用途は限られてしまう。重要な点の一つとして、このようなシームテープは、伸縮性を有するテキスタイルと一体化させられる場合が多いので、該シームテープ自体も伸縮性(好ましくは、全方向に沿った伸縮性)を有する必要がある。別の重要な点は、シームテープに埋設されている導体を電子機器に接続できるか否かという点である。既知の導電性シームテープでは、堅牢な電気的接続を実現することがしばしば困難である。加えて、導体と別の電子機器との接続部は、例えば、洗濯時や発汗時における流体との接触で該導体が腐食等するのを避けるためにも、外部の影響から封止されているのが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2017/251732号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3385348号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的の一つは、導体を備えた弾性シームテープの改良品および該弾性シームテープの製造方法であって、上記の要望に応えた改良品および製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の長尺弾性シームテープ、および請求項17に記載の長尺弾性シームテープの製造方法によって達成される。
【0007】
つまり、本発明は、弾性を有する長尺の第1層と、前記第1層に部分的に接合された、弾性を有する長尺の第2層と、弾性を有する長尺の導体と、を備える長尺弾性シームテープに関する。これら第1層と第2層との間に、前記シームテープ全体に沿って延びる内腔部が形成されるように、前記第2層の両側の長手縁部は前記第1層の対応する長手縁部へと少なくとも部分的に接合されている。前記導体は、前記内腔部内に移動可能に配置されている。
【0008】
本発明の文脈において、「シームテープ」という用語は、帯状またはリボン状の構造体を指す。シームテープは、例えば、布層と布層を互いに接合したり、衣服のシームに防水性又は耐水性を付与したりするのに使用され得る。シームテープは、扁平又は略扁平の構造を有する。これにより、シームテープを布層に貼り付けることが可能となる。シームテープは、さらに、布層又は衣服に接合等するための接着層と、布製又はポリマー製の上層と、を特に備え得る。シームテープは、例えば米国特許出願公開第2018/0030224号、米国特許第8,741,412号、米国特許第6,497,934号等に記載されている。
【0009】
本発明の文脈において、「長尺」という用語は、弾性シームテープの状態(伸張しているか伸張していないか)ではなく弾性シームテープの寸法のことを指し、長さが幅よりも大きい(好ましくは、2倍以上大きい)あらゆるシームテープに対する用語として意図されている。
【0010】
本発明の文脈において、「弾性」という用語は、シームテープの材料特性やシームテープの構成要素の材料特性のことを指し、シームテープ(および各構成要素)が手で発揮可能な力で少なくとも長さ方向に沿って弾性的に伸張可能であると共に、当該力が付加されなくなると縮んで伸張前の状態に戻るということを条件としている。好ましくは、前記シームテープおよび前記シームテープの構成要素は、手で発揮可能な力で長さ方向および幅方向に沿って弾性的に伸張可能であると共に、当該力が付加されなくなると縮んで伸張前の状態に戻る。好ましくは、前記第1層の素材、第2層の素材、および前記導体の素材のヤング率は、10kPa~1GPa、より好ましくは100kPa~100MPaである。
【0011】
前記シームテープの前記内腔部には、幾つかの利点がある。まず、例えば前記シームテープが同シームテープの長手延在方向に沿って伸張するときに、導体を前記内腔部から引き出すことができ、導体が同内腔部内で移動することができる。しかも、前記内腔部から前記導体の両端部へのアクセスが簡単なので、例えばコネクタ等を後述のように取り付けることができる。加えて、前記内腔部内を前記導体が動き得ることで、後述のように、前記内腔部内の導体を予め伸張させておくという好ましい一実施形態を提供することが可能となる。
【0012】
前記内腔部は、前記第1層と第2層との間で前記シームテープの全長に沿って延びている。また、前記内腔部は、前記第1層および第2層の延在平面と直交する方向において、前記第1層および第2層のうちの少なくとも一方に向かって延びていてもよい。例えば、前記第1層と第2層との界面において、前記第1層のうちの前記第2層側の表面が実質的に平坦又は平面状であり得ると共に、前記第2層が前記内腔部を形成する溝又は凹所を有していてもよい。あるいは、前記第1層と第2層の双方に向かって延びる内腔部を形成するように、両方の層が共通の界面において変形又は凹入していてもよい。
【0013】
好ましくは、前記弾性を有する長尺の導体は、例えば導電性複合材料等をベースとする軟質の導体である。そのような材料は、少なくとも1種の弾性マトリクス材と少なくとも1種の導電性フィラー材で構成される。例えば、前記導体の素材は、樹枝状銀マイクロ粒子が充填されたシリコーンエラストマーであり得る。一定の粒子含有量を上回ると、粒子同士が接触し合うことで、前記導電性複合材料内に導電路が形成される。前記導体の直径は、0.1mm~3mm、好ましくは0.3mm~2mmであり得る。ただし、前記導体は、円形状である必要はなく、例えば、厚み0.05mm~0.5mm、幅0.5mm~3mmの扁平な形状であってもよい。好ましくは、前記粒子の平均粒径は、1~50μm、より好ましくは10~30μmである。好ましくは、前記複合材料中の粒子の含有量は、20~35体積%である。好ましくは、前記導体の静止時の抵抗は、1Ω/m~100Ω/mである。
【0014】
前記導体のマトリクスは、次の少なくとも1種の素材を含んでいてもよい:ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマーゴム、ポリクロロプレンゴム、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ポリアクリルゴム、エチレンアクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリイソブチレンゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム、ペルフルオロカーボンゴム、ポリウレタン、スチレン系ブロック共重合体類、熱可塑性オレフィン類、エラストマーアロイ類、熱可塑性共重合ポリエステル、および熱可塑性ポリアミド。
【0015】
前記導体のマトリクス中の前記導電性粒子は、次の少なくとも1種の構成成分を含んでいてもよい:銀被覆ガラス粒子、銀被覆銅粒子、銀被覆金属粒子、金被覆金属粒子、銅マイクロ粒子、銅ナノ粒子、銀マイクロ粒子、銀ナノ粒子、ナノワイヤ、金属マイクロ粒子、ナノチューブ(例えば、カーボンナノチューブ等)、フレーク(例えば、金属フレーク等)、グラフェン、アルミニウムマイクロ粒子、金マイクロ粒子、錫マイクロ粒子、銅ナノワイヤ、銀ナノワイヤ、アルミニウムナノワイヤ、金ナノワイヤ、錫ナノワイヤ、銅フレーク、銀フレーク、アルミニウムフレーク、金フレーク、錫フレーク、およびカーボン粒子。
【0016】
好ましくは、前記弾性を有する長尺の導体は、弾性を有する圧縮可能なコア、および前記弾性を有するコアの周りに巻き回された導線を含む。
【0017】
好ましくは、前記弾性を有する圧縮可能なコアは、天然ゴムの長尺体を含む。前記弾性を有する圧縮可能なコアは、天然ゴム、エラスタン、ポリウレタン、シリコーンゴム、ポリイソプレン、ポリエチレンゴム、ポリアクリルゴム、熱可塑性ポリウレタン、およびこれらの組合せからなる群のうちの任意の構成成分を含有するものであってもよい。好ましくは、前記弾性を有する圧縮可能なコアの、同弾性を有する圧縮可能なコアの伸張方向と直交する直径は、0.5mm~1.2mmである。
【0018】
好ましくは、前記弾性を有する圧縮可能なコアは、円形断面を有する。
【0019】
前記導線は、銅、銅合金、銀、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、錫、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、金、炭素、およびこれらの組合せからなる群のうちの任意の構成成分を含有し得る。好ましくは、前記導線は、銀被覆銅線である。好ましくは、前記導線は、例えば直径0.02mm~0.08mmの5~30本の素線等で構成されたリッツ線である。
【0020】
前記弾性を有する長尺の導体は、前記弾性を有するコアの周りに巻き回された複数の導線を含むものとされてもよい。
【0021】
巻回し形態や巻付け形態は、特定のものとされ得る。好ましくは、前記弾性を有する長尺の導体は、前記弾性を有するコアの周りに互いに反対の巻付け方向および1cmあたり5回以上の巻き数で巻き付けられた2本の導線を含む。
【0022】
弾性を有する長尺の導体がこのような構造であると、前記導電体の弾性および圧縮性が向上し得る。
【0023】
好ましくは、前記弾性を有する長尺の導体は、さらに、前記弾性を有するコアの周りに巻き回された非導電糸を含む。
【0024】
好ましくは、前記導線が、前記非導電糸の周りに巻き回され得る。そして、この構築物が、前記弾性を有するコアの周りに巻き回され得る。
【0025】
好ましくは、前記導体は、歪みが50%以上、より好ましくは75%以上、最も好ましくは100%以上でも導電性を維持する。好ましくは、伸張していない状態の前記導体の抵抗は、1Ω/m~100Ω/mである。好ましくは、歪み30%まで伸張させたとき、伸張された前記導体の抵抗は、10倍未満、好ましくは5倍未満、より好ましくは2倍未満増加する。
【0026】
つまり、前記長尺弾性シームテープは、歪み50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは100%以上まで弾性的に伸張可能であるのが好ましい。
【0027】
好ましくは、前記内腔部の(長さ延在方向と直交する)断面積を第1断面積とし、前記導体の(長さ延在方向と直交する)断面積を第2断面積とした場合、前記第1断面積と第2断面積との比が1.4以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは5.0以上である。これらの比は、前記長尺弾性シームテープを長さ延在方向に対して垂直に切断し、切断した断面を撮像し、前記導体と前記内腔部の占有面積を例えば画像解析等で評価するだけで測定可能である。なお、この文脈において、前記第1断面積は前記第2断面積を内包しているという点、すなわち、前記導体の占有面積は前記内腔部面積の一部と見なされている点に注意されたい。また、前記内腔部は、当然ながら、圧力が加わった際に且つ/或いは切断過程で、圧縮され得るという点にも留意されたい。ただし、上述の比は、例えば前記内腔部に常圧の空気を充填する等して定常状態にまで十分に膨らませた場合の前記内腔部について言及したものである。
【0028】
前記内腔部の幅は、前記第1層と第2層とが互いに接して互いに接合される2箇所の点間における、前記長さ延在方向に対して垂直且つ前記第1層及び第2層の延在方向と平行な距離の平均値として定義する。好ましくは、この幅と前記導体の直径との比は、1.5以上、より好ましくは2.5以上、最も好ましくは4以上である。
【0029】
前記第1層と第2層との界面において、前記第1層と第2層とが互いに接合している面積を第1面積として定義し、前記第1層と第2層とが互いに接合していない面積を第2面積として定義する。好ましくは、前記第1面積と第2面積との比は4未満、より好ましくは3未満、最も好ましくは0.67未満である。
【0030】
重要な点として、前記第1層と第2層との間に導体を設けた上記の構造は、少なくとも1つの追加の層を備えた、より大きな積層構造の一部であってもよい。つまり、前記第1層および/または第2層は、前記長尺弾性シームテープの上層および/または下層を構成していてもよい。あるいは、少なくとも1つの追加の層が前記第1層よりも上に設けられており、且つ/或いは、少なくとも1つの追加の層が前記第2層よりも下に設けられている。そのため、前記第1層および第2層は、最外層を形成しているのか前記長尺弾性シームテープ内の中間層を形成しているのかによって、層を形成する素材が違うものになり得る。
【0031】
しかしながら、一般的には、前記第2層が、前記第1層との接合を可能にする接着性物質を含むことが好ましい。好適な接着性物質としては、ポリウレタン類、ポリプロピレン類、ポリエチレン類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリオレフィン類、およびシリコーン類が挙げられる。好ましくは、前記接着性物質は、弾性ポリマーであり、好適には熱可塑性弾性ポリマーである。極めて好ましい物質の一例としては、融点が80℃~120℃の低融点熱可塑性ポリウレタンが挙げられる。好ましくは、前記接着性物質の接着性は、熱および/または光および/または圧力および/または化学反応によって活性化させることが可能である。好ましくは、前記接着性物質は、超音波エネルギーおよび/または熱風および/または熱ラミネート圧を与えることで溶融させることが可能な融点を有する。
【0032】
前記第1層の機能役割は、積層構造によって異なり得る。すなわち、前記第1層は、弾性布地および/または弾性ポリマーおよび/または熱可塑性弾性ポリマーからなり得る。前記第1層は、前記第2層と同一の接着性物質で構成されてもよい。前記第1層が前記シームテープの上層を形成している場合、同第1層は、例えばエラスタン系の弾性リボン等の弾性布地、またはシリコーンなどの弾性ポリマーからなるものであるのが好ましい。前記弾性布地は、エラスタンと、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリプロピレン等の他種のポリマーとの混合物からなるものであってもよい。
【0033】
前記第1層が中側の保護層又は絶縁層である場合、同第1層は、融点が例えば170℃を超える高融点熱可塑性ポリウレタンなどの弾性ポリマーからなるのが好ましい。好適な弾性ポリマーの他の例としては、ポリウレタン類、ポリプロピレン類、ポリエチレン類、ポリアミド類、ポリエステル類、ポリオレフィン類、シリコーン類、およびスチレン系ブロック共重合体類が挙げられる。
【0034】
好ましくは、前記第1層の素材の融点が、前記第2層の素材の融点よりも高い。これにより、例えば熱を加えることで、前記第1層を溶融させたり変形させたりすることなく同第1層に前記第2層を部分的に接合させることが可能になる。また、それだけでなく、前記第1層への前記第2層の接合時に前記導体が前記第1層に誤って接合されるようなことがなくなり、前記導体が前記内腔部内で確実に移動可能に維持されることとなり得る。当然ながら、これは、前記第1層を構成する素材を全く溶融しない素材とすることによっても達成することが可能である。本発明の文脈において、このような素材は、無限大の融点を有する素材とも考えることができる。したがって、同素材によっても、前記第1層の素材の融点が前記第2層の素材の融点よりも高いという条件は満たされる。
【0035】
好ましくは、前記第2層は、少なくとも前記シームテープのうちの長手方向の一方の端部において、前記導体の一部を露出させるように前記第1層から引き剥がすことが可能である。引き剥がしは、手を使って、好適には100N未満の剥離力で実施可能であるのが好ましい。この機能は、前記第1層の素材と第2層の素材の組合せを適切に選択することによって、かつ/あるいは、前記第1層と第2層とを部分的積層用の温度および部分的積層用の圧力で部分的積層用の時間をかけて部分的に積層させることによって実現され得る。例えば、前記第1層が約170℃の融点を有するポリウレタンからなり且つ前記第2層が約90℃の融点を有するポリウレタンからなる場合の部分的積層は、前記第1層と前記第2層との間に前記導体を配置し、これら第1層と第2層を90℃の温度および30mbarの圧力で20秒間かけて互いに押し付けることにより達成され得る。
【0036】
前記第1層および/または第2層は、当該第1層および第2層のそれぞれを掴み易くして当該第1層および第2層を互いに分離することを可能にする、少なくとも1つのフラップまたはストラップを具備したものであってもよい。
【0037】
本発明は、1つの内腔部内に1つの導体を備えたシームテープに限定されるものではない。むしろ、同一のシームテープ内に、2つ以上の導体を含む2つ以上の内腔部が設けられていてもよい。例えば、これら第1層と第2層との間に、前記シームテープ全長に沿って延びる2つ以上の内腔部が形成されるように、前記第2層の両側の長手縁部が前記第1層の対応する長手縁部へと接合され、前記第2層の少なくとも1つの長手中間部が前記第1層の対応する少なくとも1つの長手中間部へと接合されていてもよい。好ましくは、中側の各接合部により、このような内腔部が、3つ以上、より好ましくは4つ以上、最も好ましくは5つ以上設けられる。好ましくは、各々の前記内腔部内には、弾性を有する別個の長尺の導体が移動可能に配置されている。ただし、少なくとも1つの前記内腔部が、空のままであったり、あるいは、導電体とは異なる物体を収容したりすることを除外するものではない。好ましくは、各内腔部内の前記導体は、互いに同一のものである。ただし、導体の目的に応じて、各内腔部ごとに異なる種類および/または寸法の導体が用いられてもよい。例えば、比較的大電流を要する装置給電用に一つの導体を使用し、比較的小電流を要するデータ伝送用に別の導体を使用してもよい。
【0038】
前述のように、各々の導体を有する2つ以上の内腔部が前記第1層と第2層との間の同一平面内に設けられていてもよいが、これに加えて又はこれに代えて、前記シームテープにおける異なる平面内に異なる内腔部が設けられていてもよい。例えば、前記シームテープは、弾性を有する長尺の第3層と、前記第3層に部分的に接合された、弾性を有する長尺の第4層と、弾性を有する長尺の第2導体と、を備え得る。これら第3層と第4層との間に、前記シームテープ全体に沿って延びる第2内腔部が形成されるように、前記第4層の両側の長手縁部は前記第3層の対応する長手縁部へと接合され得る。前記第2導体は、前記第2内腔部内に移動可能に配置され得る。当然ながら、前記第3層と第4層との間にも、2つ以上の内腔部が設けられてよい。
【0039】
前述のように、本発明のシームテープは、積重体又は積層体を構成する各種の追加の層を備えていてもよい。すなわち、前記第3層は、前記シームテープの前記第2層に直に隣接していなくてもよい。むしろ、前記第2層と前記第3層との間に、少なくとも1つの追加の層が設けられていてもよい。例えば、前記第2層と前記第3層との間に、保護層または絶縁層が設けられていてもよい。
【0040】
しかし、前記第3層は、前記第2層に直に隣接していてもよい。前記第3層は前記第2層の素材と異なる素材からなるものであってもよいし、前記第2層と第3層が同一の素材で構成されていてもよい。前記第2層と第3層とが同一の素材で構成されていると共に互いに直に隣接して位置している場合、第2層と第3層とを区別できないこともあり得る。この場合、前記第3層と前記第2層とは一体であってもよく、換言すると、前記第3層は前記第2層と同一であってもよい。すなわち、この特定の実施形態の前記シームテープは、第1層、第1導体、第2層、第2導体および第4層を、この順番で備えることになる。
【0041】
当然ながら、前述のように相異なる平面内に導体を備えるという概念は、一つの平面内に相異なる導体を備えるという概念と組み合わせることができ、かつ/あるいは、複数の平面(例えば、3つ、4つ、5つ又はそれ以上の数の平面)内に導体を備えるという概念へと拡張することができる。
【0042】
好ましくは、上記した任意の実施形態において、前記下層が、前記長尺弾性シームテープを布帛又は衣服に取り付けるのに適した接着材を具備している。接着層となる同下層は、前記シームテープの該接着層を保護するための剥離フィルム、剥離紙などの取外し可能なフィルムにより覆われ又は被覆され得る。ユーザは、使用前に前記取外し可能なフィルムを取り外して前記接着材を露出させてから、同接着材を前記布帛又は衣服に取り付ける。
【0043】
好ましくは、前記長尺シームテープは、前記導体の端部に接続された電気コネクタを備える。これにより、センサなどの任意の追加の装置を前記シームテープの前記導電体に電気的に接続することが可能となる。このような電気コネクタは、前記シームテープの片側又は両側に設けられ得る。好ましくは、前記コネクタは、前記導体の前記端部に取り付けられた圧着スリーブ、および前記シームテープの前記内腔部から長手方向に突出したコネクタ体を含む。つまり、前記導体と前記コネクタとの間の前記圧着スリーブを介した接続部は、少なくとも一部、好ましくは全体が前記内腔部内に位置し得る。これにより、例えば衣服の洗濯時や衣服の着用時の発汗等に起因し得る外部の影響から電気的接続部を封止することも可能になる。しかも、前記内腔部から前記コネクタ体が長手方向に突出しているので、対応するコネクタやソケットの前記内腔部内への挿入という複雑かつ煩雑になり得る作業を要することなく、任意のさらなる装置や電子機器との電気的接続を容易に行うことが可能になる。前記コネクタ体と別の装置やセンサ部品との電気的接続は、半田付け及び/又は機械的接触によって達成され得る。前記コネクタ体は、次の少なくとも一つの構成要素からなり得る:金属ピン、磁気ボタン、半田パッド、印刷回路基板、および導電性面ファスナー。好ましい一例として、前記コネクタ体は、金属リング、および導電性を有するリベット型スナップボタンコネクタからなり、同リベット型スナップボタンコネクタがリベット胴部を有し、同リベット胴部が前記金属リングの開口を通って延びて同金属リングと電気的に且つ機械的に接触する。
【0044】
好ましくは、伸張していない平衡状態での前記導体の長さを第1長とし、前記シームテープが伸張していない平衡状態での前記内腔部の長さを第2長とした場合、前記第2長は前記第1長よりも長く、好ましくは、前記シームテープが伸張していない平衡状態で、前記圧着スリーブの全体が前記シームテープの前記内腔部内に収まっている。好ましくは、この状態で、前記圧着スリーブのうちの、前記内腔部の対応する端部に近接する端部から、前記内腔部の当該端部までの距離は、1mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上である。好ましくは、前記第1長と前記第2長との差は、2mm以上、より好ましくは3mm以上、なおいっそう好ましくは5mm以上となる。後で詳述するように、第1長と第2長が異なるこのようなシームテープは、同シームテープの製造時に、前記導体を、前記第1層および第2層が伸張していない平衡状態にあるときの前記内腔部の全長に沿って延在するように予め伸張された形態で設けることによって実現することができる。前記導体は、同導体と前記内腔部の内表面との摩擦により、予め伸張された状態のまま維持される。しかし、シームテープ体から同シームテープの一部を切断すると、この切断された一部内の予め伸張された前記導体が切断中に且つ/或いは切断後に縮み、縮んだ同導体の両端部が前記内腔部内に完全に引っ込む。これは、切断で十分に短くなったときに摩擦が減少することにより起こる。
【0045】
好ましくは、前記第1層および第2層は、接着材を含む(前記第1層の接着性物質と第2層の接着性物質は異なっていてもよい)。この場合、前記内腔部は、前記コネクタ体および前記コネクタ体を取り囲むこれら接着層によって封止され得る。換言すると、前記コネクタ体の少なくとも一部が前記内腔部内に挿入されていることが好ましく、かつ、前記内腔部のうちの接着性を示す内表面によって、前記第1層の素材と第2層の素材が前記コネクタ体の周囲に封止連結される。これにより、前記導体および同導体と例えば前記コネクタの前記圧着スリーブとの接続部を、前記シームテープの前記内腔部内に完全に密封することができる。よって、例えば洗濯時や雨天での布帛又は衣服の着用時にこれらの電気部品に到達し得る水や水分の量が抑えられる。前に言及したように、前記コネクタ体を用いたこのような封止は、前記長尺シームテープの片側又は両側の端部に設けられ得る。ただし、前記シームテープの一方の端部が別の手段で封止されるようにしてもよい。
【0046】
本発明は、さらに、前述の長尺シームテープが接合された布帛に関する。同布帛は、少なくとも1つの導電体を設けることによって有用性が生じ得る布帛であり得る。前記布帛は、例えば、スポーツスーツ、筋電気刺激スーツ(EMSスーツ)、筋活動、心臓活動、呼吸などの生体信号を電子的に測定する手段を具備した衣服、気温、放射線量、気圧などの安全性に関係し得る環境パラメータを電子的に測定する手段を具備した衣服等であり得る。好ましくは、前記シームテープは、接着によって前記布帛の表面に接合されている。例えば、前記第2層の接着性物質によって前記シームテープが前記布帛に接着接合され得る。しかし、前述のように前記第2層よりも下に追加の層が存在している場合には、別の(最外側の)接着層によって前記シームテープが前記布帛に接着接合されることになり得る。
【0047】
前記布帛への前記シームテープの接合は、同布帛上において適切に位置決めした同シームテープに対して熱および/または圧力を加えることによって達成され得る。前記シームテープの各種層の素材の組合せにもよるが、このように温度および/または圧力を加えると、前記第1層と第2層との接合を増大させることにも繋がり得る。つまり、前記布帛へと接合された前記シームテープにおける前記第1層と第2層との間の前記内腔部は、接合前の同シームテープの同内腔部よりも小さくなり得る。場合によっては、このような追加の接合過程時に前記内腔部が完全に閉じることにもなり得る。
【0048】
好ましくは、前記コネクタの前記圧着スリーブは、接着によって前記シームテープの前記第1層および/または第2層、かつ/あるいは、前記布帛に接合されている。前述のように前記圧着スリーブの全体が前記シームテープの前記内腔部内に収まっている場合、同圧着スリーブは前記第1層及び第2層の一方又は両方のみに接合しているのが好ましい。前記第1層と第2層の両方が接着性物質を含む場合には、前記シームテープを前記布帛に接合すると、同時に、前記第1層及び第2層の一方又は両方が前記圧着スリーブに接着接合され得る。前記コネクタ体による前述のような封止が行われない場合については、前記第1層および第2層を前記圧着スリーブに接合させて同圧着スリーブ周囲の前記内腔部を閉じるだけでも封止が達成され得る。
【0049】
前記圧着スリーブまたは同圧着スリーブの一部が前記内腔部から突出している場合、同圧着スリーブも、接着によって前記布帛に直接又は間接的に取り付けられているのが好ましい。
【0050】
好ましくは、布補強層などの補強層が設けられている。好ましくは、同補強層も、接着によって前記布帛に接合されている。前記補強層は、前記布帛に対する前記シームテープの1つ以上の層および/または前記コネクタの固定を機械的に安定化させるように意図されたものである。このような補強層は、様々な位置に設けられ得る。例えば、補強層は、(前記シームテープのうちの前記布帛に接合される側とは反対側の)上層に設けられ得て、接着によって同上層および/または前記圧着スリーブおよび/または前記コネクタおよび/または前記布帛に取り付けられ得る。これに代えて又はこれに加えて、前記補強層は、前記シームテープのうちの前記布帛に接合される層と同布帛との間に設けられてもよい。例えば、補強層は、前記シームテープのうちの前記布帛に接合される接着層に部分的に組み込まれていてもよい。同時に、同補強層は、前記シームテープの端部から突出すると共に、前記シームテープ外の位置の前記布帛に且つ/或いは前記コネクタ体に接着接合されてもよい。好ましくは、前記補強層は、前記コネクタ部分に「高剛性の島部」を形成するように前記シームテープの素材よりも高剛性のものとされる。これは、例えば、前記布帛よりも伸張性が大幅に低い補強層素材を選択するか、あるいは、手の力では伸張させることのできない補強層を選択することによって達成され得る。好ましくは、前記補強層のヤング率は、100MPa超、より好ましくは1GPa超である。
【0051】
上記の構成に代えて又は上記の構成に加えて、前記補強層は、前記布帛のうちの、前記シームテープが接合される側とは反対側に設けられてもよい。この場合、前記補強層は、接着によって前記布帛の当該反対側のみに接合され得るか、あるいは、接着によって前記布帛と前記コネクタ体の一部との両方に接合され得る。
【0052】
したがって、前記布帛と前記シームテープの、同シームテープの長さ延在方向と直交する断面は、下記の層状構造のうちの一つを示し得る(なお、「X」は少なくとも1つの任意の層を意味する):
布帛-接着材-圧着スリーブおよび導体-接着材-X-接着材-補強層;
布帛-接着材-X-接着材-圧着スリーブおよび導体-接着材-X-接着材-補強層;
布帛-接着材-補強層-接着材-圧着スリーブおよび導体-接着材-X;
布帛-接着材-補強層-接着材-圧着スリーブおよび導体-接着材-X-接着材-補強層;
補強層-接着材-布帛-接着材-圧着スリーブおよび導体-接着材-X-接着材-補強層。
【0053】
さらに、前記布帛と前記コネクタ体の断面は、下記の順で、下記の層状構造を有し得る:
コネクタ体の一部-布帛-コネクタ体の一部-接着材-補強層;
コネクタ体の一部-布帛-接着材-補強層-コネクタ体の一部;
コネクタ体の一部-布帛-接着材-補強層-接着材-コネクタ体の一部-接着材-補強層;
コネクタ体の一部-補強層-接着材-布帛-コネクタ体の一部-接着材-補強層。
【0054】
本発明は、さらに、前述の長尺弾性シームテープを製造する方法に関する。同方法は、弾性を有する長尺の第1層、弾性を有する長尺の第2層、および前記第1層と前記第2層との間に配置された弾性を有する長尺の導体を準備する工程、を備える。次に、前記第1層と前記第2層との間で前記シームテープ全体に沿って延びる内腔部が形成されるように、かつ、前記導体が前記内腔部に沿って前記内腔部内に延在するように、前記第2層の両側の長手縁部が前記第1層の対応する長手縁部へと接合される。
【0055】
好ましくは、前記第1層の融点を第1融点とし、前記第2層の融点を第2融点とした場合、前記第1融点が前記第2融点よりも高い。好ましくは、前記第1融点と第2融点との間の温度で、接合が行われる。例えば、95℃の温度および100mbarの圧力が20秒間適用されることにより、接合が達成され得る。これは、例えば、固定型ホットプレスで行われ得る。すなわち、前記層同士が互いに押し付けられ、加熱された後に、前記プレスから取り出される。あるいは、連続式の製造が行われてもよい。例えば、前記第1層、第2層および前記導体が、シームテープ機の2つのロール間に送り込まれて、加熱され互いに押し付けられ得る。つまり、一定の制御された条件の下で、連続した長尺シームテープが製造され得る。あるいは、内腔部に相当する領域に溝を具備したロールを使用する等して、前記第1層と前記第2層との接合を行いたい部分にのみ熱と圧力が加えられるようにしてもよい。
【0056】
前述のように、前記導体は、予め伸張された形態で設けられ得る。予め伸張された同導体は、前記第1層および第2層が伸張していない平衡状態の前記内腔部の全長に沿って延在している。この文脈において、「予め伸張」とは、伸張していない状態の平衡時長さの101%以上に相当する長さの導体になること、好ましくは、伸張していない状態の平衡時長さの103%以上に相当する長さの導体になること、より好ましくは、伸張していない状態の平衡時長さの105%以上に相当する長さの導体になることを指している。そして、予め伸張された状態に前記導体が維持されたまま、前記第1層と第2層とが互いに部分的に接合される。前述のように、製造完了後は、前記導体と前記内腔部の内表面との摩擦力によって前記導体が予め伸張された状態のまま維持される。そして、連続した(例えば、ロールの形態で提供された)シームテープ体から同シームテープのうちの布帛に取り付けたい一部が切断される。このとき、切断された当該一部内の予め伸張された前記導体が切断中に且つ/或いは切断後に縮み、縮んだ同導体の両端部が同シームテープの前記内腔部内に完全に引っ込む。これは、シームテープの長さが短くなったときに前記導体と前記内腔部の内表面との摩擦力が減少することで起こる。
【0057】
保護絶縁層などのさらなる層が必要な場合、前記第1層と第2層を互いに積層するのに用いた前述の技術と同じ技術により、当該さらなる層がそれと同時に又は追加の工程で追加される。これらの層は、順に追加・積層されてもよいし、同時に積層されてもよい。
【0058】
以下では、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示す他の断面図である。
【
図3】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図4】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図5】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図6】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図7】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図8】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図9】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図10】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図11】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図12】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図13】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図14】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図15】本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の断面図である。
【
図16】布帛に接合された本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示す長手方向断面図である。
【
図17】布帛に接合された本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示す他の長手方向断面図である。
【
図18】布帛に接合された本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の長手方向断面図である。
【
図19】布帛に接合された本発明にかかるシームテープの好適な一実施形態を示すさらなる他の長手方向断面図である。
【
図20】本発明にかかるコネクタ付きシームテープの好適な一実施形態を示す長手方向断面図である。
【
図21】本発明にかかるコネクタ付きシームテープの好適な一実施形態を示す他の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1は、本発明にかかる長尺弾性シームテープ101の好適な一実施形態を示す(同シームテープの長手延在方向と直交する)断面図である。シームテープ101は、例えば布テープ、プラスチックフィルム等で構成された弾性を有する長尺の第1層1、および熱可塑性弾性ポリマー(すなわち、熱可塑性エラストマー)などの接着性物質で構成された弾性を有する長尺の第2層2を備える。
図1に概略的に示すように、第2層2の両側の長手縁部(図示の断面における左側の縁部と右側の縁部に相当)が、前記シームテープ全体に沿って延びる内腔部4を前記第1層と前記第2層との間に形成するように、第1層1の対応する長手縁部へと接合されている。同内腔部4内には、導電体3が移動可能に配置されている。
【0061】
前記テープは、一般的に、その用途に適した任意の寸法を有し得る。典型的に、前記テープの幅(
図1における左右延在方向に相当)は、5mm~5cm、好ましくは5mm~1cm、より好ましくは6mm~11mmである。前記シームテープの厚みは、層数にもよるが(後続の実施形態を参照のこと)、一般的に0.5mm~1cm、好ましくは0.8mm~5mmである。ただし、一般的には、
図1に概略的に示すように、前記導体の箇所の厚みは前記テープのそれ以外の箇所の厚みよりも大きいことから、同シームテープの厚みはその幅に沿って変化する。典型的に、上層の層厚は0.2mm~3mmで、絶縁層の層厚は0.02mm~2mmで、接着層の層厚は0.02mm~2mmである。好ましくは、前記長尺弾性シームテープの長さは、0.3m超、より好ましくは0.5m超、なおいっそう好ましくは2m超、最も好ましくは10m超である。このような長さの前記長尺弾性シームテープは、例えば、ロールの形態で設けられ得る。ユーザは、使用前に、前記長尺弾性シームテープの一部を必要に応じて切断する。
【0062】
当然ながら、当業者であれば、
図1に示す前記シームテープの各構成要素の形状や相対寸法は例示的なものに過ぎず、例えば、第1層1の断面は矩形でなくてもよく、前記導体も円筒状でなくてもよいということを理解するであろう。また、内腔部4は、
図1に示す概略図とは違った様々な形状や寸法を有していてもよい。このことは、第2層2の形状や曲率にも明らかに影響を及ぼす。
【0063】
しかしながら、好ましくは、前記内腔部の断面積と前記導体の断面積との比は1.4以上、好ましくは2以上、より好ましくは5以上である。
図1に示す実施形態において、同比は5超である。前記第1層と第2層との互いの接合が始まる2箇所の点間における、前記長さ延在方向に対して垂直な距離を、前記内腔部の幅w
1として定義する(
図1を参照のこと)。好ましくは、同幅w
1と前記シームテープの幅wとの比は、0.2超であり、好ましくは0.4超であり、より好ましくは0.6超である。
【0064】
前述のように、本発明のシームテープ101は、前記第1層と第2層の片方又は両方に少なくとも1つの追加の層を備えていてもよい。
図2~
図4に、このような追加の層を備えた幾つかの例示的な実施形態を示す。例えば、
図2に示すように、第1層1に布テープ又はプラスチックフィルム6が追加の接着層5を介して接合されていてもよい。あるいは、
図3に示すように、第2層2の隣りに追加の保護層又は絶縁層7が設けられていてもよい。同保護層又は絶縁層7は、融点が例えば170℃を超える高融点熱可塑性ポリウレタンなどの弾性ポリマーからなり得る。保護層又は絶縁層7が必ずしも接着性物質からなるとは限らないので、前記シームテープを後述のように布帛に接合したり取り付けたりするための追加の接着層8が想定され得る。
【0065】
当然ながら、
図2に示す追加の層5,6と
図3に示す追加の層7,8は、
図4に示すように同一の実施形態に設けられてもよい。
【0066】
前述のように、本発明にかかるシームテープ内に、弾性を有する長尺の導体が2つ以上設けられてもよい。例えば、前記シームテープの同一平面内、すなわち、
図5~
図8の実施形態に示すように隣接する共通の層1,2間に、2つ以上の導体が設けられてもよい。
【0067】
図5の実施形態のシームテープ101では、当該シームテープ全体に沿って延びる2つの内腔部41,42を前記第1層と前記第2層との間に形成するように、(
図1に示す実施形態と同じく)第2層2の両側の長手縁部が第1層1の対応する長手縁部へと接合され、同第2層の一つの長手中間部が同第1層の対応する一つの長手中間部へと接合されている。それぞれの内腔部41,42内には、弾性を有する長尺の導体31,32が移動可能に配置されている。当然ながら、この概念は、
図5に示す実施形態と同じ要領で中間部をさらに設けていくことにより、3つ以上の導体を含む3つ以上の内腔部へと拡張することが可能である。
【0068】
図6~
図8には、シームテープ101の好適な実施形態として、
図2~
図4に相当する層状構造において
図5に示す実施形態と同じ要領で2つの導体を含む2つの内腔部を設けたものが描かれている。
【0069】
上記の構成に代えて又は上記の構成に加えて、前記シームテープの別の平面内に別の導体が設けられてもよい。例えば、
図10に示す実施形態のシームテープ101は、弾性を有する長尺の第3層11、および第3層11に部分的に接合された、弾性を有する長尺の第4層12を備え、同第4層12の両側の長手縁部が、当該シームテープ全体に沿って延びる第2内腔部42を前記第3層と前記第4層との間に形成するように、同第3層11の対応する長手縁部へと接合されている。同第2内腔部42内には、弾性を有する長尺の第2導体32が移動可能に配置されている。
図10のシームテープは、さらに、接着性を示す別の層(別の接着層)5と布テープ又はプラスチックフィルム6を備える。
図10に示す実施形態では(
図11及び
図12の各実施形態でも同じく)、第3層11が第2層2とは別体とされている。しかしながら、
図9に示すように、第3層11が第2層2と一体とされてもよい。
図10~
図12に示す各実施形態では第3層11が第2層2と直に隣接しているが、これら第2層2と第3層11との間に少なくとも1つの追加の中間層が設けられていてもよい。
【0070】
図1~
図12に示す各実施形態では、内腔部4(又は内腔部41,42)が、第2層2(および/または第4層12)を膨出させるように設けられている。換言すると、第1層1のうちの第2層2と隣合う面は略平坦で内腔部4,41,42の存在の影響を受けていないように見えるのに対し、同第2層はそれら第1層と第2層との間に同内腔部を形成するように湾曲又は曲折している。
【0071】
しかしながら、例えば
図13に示すように、内腔部4(又は内腔部41,42)を前記第1層と第2層との間に略対称的に設置するという選択肢もある。この場合、第1層1と第2層2の両方が、それら第1層と第2層との間に内腔部4,41,42を形成するように前記シームテープの幅方向に沿って湾曲又は曲折させられる。このように対称的に設置された内腔部4は、例えば、両方の層1,2の素材を熱可塑性弾性ポリマーなどの接着材からなるものとし、同素材を接合時に変形させることによって実現可能である。層1,2の接着性物質が同一である必要はないが、層1,2間での内腔部4の対称的な設置は、第1層1の接着性物質の融点と第2層2の接着性物質の融点が同等である場合に最も容易く達成される。
【0072】
対照的に、例えば
図1等に示す内腔部4の非対称的な設置は、前記第1層の融点が前記第2層の融点よりも大幅に高い場合に最も容易く達成され得る。この場合、接合時に第2層2の素材のみが変形し、第1層1は接合時に加わる温度や圧力の影響を実質上受けない状態のまま維持される。
【0073】
図14には、
図13に示すものと同様の内腔部4を備えた、本発明にかかるシームテープ101の好適な他の実施形態が描かれている。この場合の第1層1と第2層2も、接着性物質からなる。同第1層の上には、保護層又は絶縁層9、接着性を示す別の層(別の接着層)5、および上層6が設けられている。第2層2よりも下には、さらなる保護層又は絶縁層7、接着性を示すさらなる層(さらなる接着層)8、および剥離紙10などの取外し可能なフィルムが設けられている。
図14の好適な実施形態は、保護絶縁層9,7が前記導体を取り囲んでいることで、前記導体に対する保護が向上している。
【0074】
図15には、本発明にかかるシームテープ101の好適なさらなる実施形態として、2つの内腔部4を積層体において別々の高さ又は平面に設けたものが描かれている。第1内腔部41は接着性を示す第1層(第1接着層)1と接着性を示す第2層(第2接着層)2との間に設けられており、第2内腔部42は接着性を示す第3層(第3接着層)11と接着性を示す第4層(第4接着層)12との間に設けられている。第2層2と第3層11との間には、保護層又は絶縁層13が設けられている。シームテープ101は、さらに、第1層1の上に保護層又は絶縁層9と接着層5と布テープ又はプラスチックフィルム6を備え、第4層12よりも下に保護層又は絶縁層7と接着層8を備えている。当然ながら、
図14に示す実施形態と同様に、取外し可能なフィルム(図示せず)が設けられてもよい。
図15の好適な実施形態は、保護絶縁層9,13,7が前記導体を取り囲んでいることで、それぞれの前記導体31,32に対する保護が向上している。しかも、
図15の好適な実施形態は、保護絶縁層13によって前記導体同士が隔てられているので、これら導体同士が最適に絶縁される。
【0075】
図16~
図19には、本発明にかかる長尺シームテープが接合された布帛20の様々な実施形態が描かれている。
図16~
図19に示す各実施形態は、接着性を示す2つの層(2つの接着層)1,2の間に導体3を設けると共に(布テープ又はプラスチックフィルムからなる)上層6を備えた
図13に示すシームテープに基づくものであるが、
図16~
図19で描かれている全ての構成は、別のシームテープを表した他のいずれの実施形態にも同じ要領で適用することが可能であることは明らかであろう。
【0076】
図16~
図19の実施形態に示す長尺シームテープは、いずれも、導体3の端部に接続された電気コネクタを備えている。同電気コネクタは、前記導体の同端部に取り付けられた圧着スリーブ21、および前記シームテープの前記内腔部から長手方向に突出したコネクタ体22を含む。
図16~
図19に示すこの特定のコネクタ体22はリベット胴部22a、金属リング22b、およびスナップボタン22cを有しているが、これ以外のコネクタ体も、本発明にかかるシームテープと組み合わせて使用してもよい。例えば、スナップボタン22cを磁気ボタンに置き換えてもよい。
【0077】
また、本発明のシームテープは、布帛がない状態でもコネクタを備えているものであり得る。
図20には、このようなシームテープ101の好適な一実施形態が描かれている。同シームテープの導体3は圧着スリーブ21に機械的に且つ電気的に接続されており、当該圧着スリーブは同シームテープの前記内腔部から長手方向に突出したコネクタ体22に接続されている。
【0078】
図20に示す実施形態では、第1層1および第2層2が接着性物質からなり、同接着性物質が圧着スリーブ21全体を取り囲むことによって導体3が外部環境から封止される。
図20に示す実施形態では、圧着スリーブ21のうちの、シームテープ101の対応する端部に近接する端部が、第1層1および第2層2の端部と同一平面上にあり、コネクタ体22は、同シームテープの前記内腔部の末端部を起点としている。
【0079】
図21には、本発明にかかるコネクタ付きシームテープ101の代替的な一実施形態として、コネクタ体22の一部が同シームテープの前記内腔部内に位置して圧着スリーブ21全体が当該内腔部内に収まっているものが描かれており、当該内腔部は、前記コネクタ体および前記コネクタ体を取り囲む接着性を示す層(接着層)1,2によって封止され得る。これにより、有利なことに、導体3と圧着スリーブ21との接続部が前記シームテープ内に完全に埋め込まれて、密封性、機械的安定性および電気的安定性が向上する。
【0080】
好ましくは、圧着スリーブ21のうちの、内腔部4の対応する端部に近接する端部から、同内腔部の当該端部までの距離dは、1mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上である。内腔部4内に導体3が長手方向で対称的に配置されている場合、前記距離dは、前記内腔部の長さと前記導体の長さの差の1/2に相当する。
【0081】
図16~
図19に示す実施形態では、第1層1および第2層2が接着性物質からなり、同接着性物質が圧着スリーブ21全体を取り囲むことによって前記内腔部が封止される。代替的な一実施形態では(
図21と同様に)、コネクタ体22の一部が前記内腔部内に位置しているものとされ得て、当該内腔部が前記コネクタ体および前記コネクタ体を取り囲む接着性を示す前記層(接着層)によって封止され得る。
【0082】
さらに、
図16~
図19に示す各実施形態では、第2層2の前記接着性物質が接着によって布帛20に直接接合されている。したがって、圧着スリーブ21も、接着性を示す層(接着層)2によって布帛20に機械的に固定されている。また、コネクタ体22のリベット胴部22aが布帛20を貫通して同コネクタ体22(したがって、前記コネクタ全体)を布帛20に機械的に固定することにより、追加の固定が達成されている。なお、前記コネクタ体の構成要素が、機械的なさらなる固定(図示せず)用として前記シームテープ外に延在する場合もあり得る。例えば、前記コネクタ体がリベット型スナップボタンアセンブリからなる場合であれば、同スナップボタンアセンブリの上部と下部が前記シームテープ外に延在することで、前記シームテープの端部が同スナップボタンの上部と下部の間で機械的に固定され得る。
【0083】
また、
図16~
図19に示す各実施形態は、前記コネクタと前記シームテープおよび前記コネクタと前記布帛との接続を機械的にさらに安定化させる任意の補強層を備える。
【0084】
図16に示す実施形態では、(例えば、布補強層であり得る)補強層23が、追加の接着層24によって上層6、およびコネクタ体22と布帛20との一部に直接接合されている。すなわち、
図16に示すシームテープ116の端部は、布帛20と補強層23とに挟まれている。
【0085】
しかし、補強層25は、
図17に示すように布帛20に隣接して設けられてもよい。この場合の補強層25は、追加の接着層26によって布帛20に接合される。反対側では、同補強層25が接着性を示す層(接着層)2によって圧着スリーブ21に接合される。補強層25は、圧着スリーブ21と布帛20との間に配置されるため、
図17に示すようにコネクタ体22のリベット胴部22aが当該補強層25を貫通することで、コネクタ体22とも機械的に接触し得る。
【0086】
当然ながら、
図16に示す概念と
図17に示す概念を、
図18に示すように組み合わせることも可能である。
【0087】
最後に、補強層27は、
図19に示すように布帛20の反対側に設けられてもよい。この場合、補強層27が追加の接着層28によって布帛20に接合されながら、前記シームテープの端部が補強層23と補強層27とに挟まれることになる。ここでも、図示のように、コネクタ体22のリベット胴部22aが補強層27を貫通する。
【0088】
上述から明らかなように、本発明により、シームテープに埋設されている導体との堅牢な接続が可能になる。具体的に述べると、記載の各実施形態により、機械的応力に対して堅牢な電気的接触や機械的応力に対して堅牢な機械的接触がもたらされると共に、硬質な導体と軟質な導体との遷移領域での当該軟質な導体の損傷が避けられるほか、コネクタソリューションの製造性やコストが緩和される。特に、本発明のコネクタにより、電気的接触と機械的固定とが別物になって十分なストレインリリーフ構造がもたらされる。最も単純な実施形態において、同コネクタは、市販の圧着型ソケットや丸形端子に基づくコネクタであり得る。このような圧着型ソケットのスリーブ部分が、前記シームテープの前記内腔部内へ直接挿入され得る。そして、圧着部分が閉じられることで、前記テープが積層加工可能な状態となる。積層加工後、前記リベット胴部の軸が前記圧着型ソケットのリング内に挿通されることでリベットボタンが取り付けられ得る。そして、当該ボタンを介して電子部品が連結され得る。例えば、剛性の高い布地等を前述のように補強層として用いることにより、追加のストレインリリーフが実現される。