(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】内視鏡手術用ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20240814BHJP
A61B 1/01 20060101ALI20240814BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20240814BHJP
A61B 90/50 20160101ALI20240814BHJP
A61B 34/37 20160101ALN20240814BHJP
【FI】
A61B17/22
A61B1/01 511
A61B1/00 621
A61B90/50
A61B1/00 655
A61B34/37
(21)【出願番号】P 2022546558
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 US2021015942
(87)【国際公開番号】W WO2021155319
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-10-18
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522303054
【氏名又は名称】ボスイーグル サージカル インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BosEagle Surgical Inc.
【住所又は居所原語表記】11429 Cedar Ridge Dr., Potomac, MD 20854 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, イン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ, ギビン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ユーチャオ
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0175799(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0055568(US,A1)
【文献】特表2019-505245(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108324234(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104146699(CN,A)
【文献】特開2019-209116(JP,A)
【文献】特表2019-505261(JP,A)
【文献】特表2015-519146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
A61B 90/50
A61B 1/00
A61B 1/01
A61B 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臓器の内部の病変に応じて予め選択された内視鏡であって、該臓器に洗浄流体を流すための流体入口路を備えている内視鏡と、
前記内視鏡を誘導するためのシースと、
前記シース内に配置され、前記臓器から前記洗浄流体を除去するための吸引路と、
前記シースに沿って配置され、遠位端が前記臓器内に配置されるように構成され
た圧力測定路であって、前記臓器内の圧力を測定するように圧力検出器に接続された
圧力測定カテーテルが内部に配置された圧力測定路と、
前記シースと流体的に連通している圧力逃し弁であって、前記圧力が閾値に達すると、該圧力逃し弁が開いて、前記吸引路内の前記洗浄流体の除去を可能にし、それによって前記臓器内の該圧力を低下させる圧力逃し弁と、
第1のラッチで前記シースに接続された、前記シースを保持するための第1のホルダーと、
第2のラッチで前記内視鏡に接続された、前記内視鏡を保持するための第2のホルダーであって、前記第1のホルダーと該第2のホルダーは、該内視鏡を前記シースの内外に移動させるように同軸移動するように設計されている第2のホルダーと、
前記シースの動作を制御するためのロボットアームであって、前記第1のホルダーに接続されているロボットアームと、
前記第1のホルダーおよび前記第2のホルダーを吊り下げるためのホルダーバーであって、該第1のホルダーおよび該第2のホルダーが該ホルダーバーに沿って前後に同軸移動可能とされており、該ホルダーバーが接続部を介して前記ロボットアームに接続されているホルダーバーと、
を含む内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項2】
前記内視鏡が、経皮的腎臓鏡、尿管鏡、膀胱鏡、尿道鏡、子宮鏡、関節鏡、脊椎内視鏡、腹腔鏡、涙道内視鏡、鼻咽頭内視鏡、および耳鏡から選択される請求項1に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項3】
前記シースの後端部に配置され、任意にゴムキャップとされた穿刺可能なキャップをさらに含み、該穿刺可能なキャップを通じて前記内視鏡が該シース内に挿入される請求項1に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項4】
前記洗浄流体を前記臓器に連続的に注入し、該洗浄流体を連続的に除去するための灌流吸引ポンプをさらに含む請求項1に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項5】
前記吸引路と流体的に連通しており、前記臓器から前記洗浄流体を吸い上げて除去するための吸引ポンプをさらに含む請求項1または4に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項6】
前記圧力測定路が、前記シースの内部に配置されている請求項1に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項7】
前記圧力検出器が前記圧力を即時監視し、該圧力検出器が任意に心電計に接続される請求項1に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項8】
前記閾値が、前記病変、前記臓器、前記シースおよび/または前記洗浄流体の流速に応じて予め決定される請求項1に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項9】
前記第1のホルダーが、
前記第1のラッチを介して前記シースを取り外し可能に保持するように構成され、および/または、前記第2のホルダーが、
前記第2のラッチを介して前記内視鏡を取り外し可能に保持するように構成されている請求項1に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項10】
前記ロボットアームが、多自由度アクチュエータと多自由度制御システムとを含み、前記内視鏡が該多自由度アクチュエータの出力端に固定され、該多自由度制御システムによって該内視鏡上にツール中心点が定義される請求項1に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項11】
前記ロボットアームを制御するためのコマンドコンソールをさらに含む請求項1
0に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項12】
前記コマンドコンソールが、3Dコントローラを含み、該3Dコントローラの次元が前記ツール中心点の自由度と一致し、該コマンドコンソールが、該3Dコントローラの多次元センサからの次元情報を該ツール中心点からの自由度情報に関連付ける請求項1
1に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項13】
前記3Dコントローラが、前記多自由度アクチュエータおよび前記内視鏡を遠隔制御する請求項1
2に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項14】
前記ツール中心点は、切開のための進入点である請求項1
0に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項15】
前記内視鏡が患者に到達すると、前記コマンドコンソールは、前記内視鏡を、事前設定された安全領域の範囲内で、該内視鏡の軸方向に沿って移動することと、ピッチ、ロール、およびヨー運動で前記ツール中心点の周りを回転することに制限し始める請求項1
2に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項16】
前記コマンドコンソールが、心電図および血圧、腎内圧値および曲線、内視鏡画像、灌流および吸引パラメータ、レーザーパラメータ、X線画像等の患者監視情報を表示するためのモニターモジュールを含む請求項1
1に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【請求項17】
前記臓器内の結石を破砕するための砕石機をさらに含む請求項1に記載の内視鏡手術用ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年1月29日に出願された米国仮特許出願第62/967,176号に対して優先権およびその利益を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、手術用ロボット工学に関し、特に、患者の身体の臓器内の医療器具の灌流および吸引ポンプシステムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
腎臓結石は、あらゆる年齢の男性および女性が発症する一般的な疾患である。腎臓結石症の発生率は、毎年、世界中で約10%増加している。結石ができる確率は、サウジアラビアで20.1%、米国で13%である。腎臓結石の再発率は、10年間で80%~90%になる可能性がある。経皮的腎切石術(PCNL)は、大きな腎臓結石や他の治療法に抵抗性のある結石に対する外科的治療法として推奨されている技術である。また、10mmから20mmの結石の治療では、PCNLは、逆行性腎内手術(RIRS)に比べ、一度の処置における結石除去率が高いことから、その代替治療法となる場合もある。また、PCNLは、大きな近位尿管嵌頓結石や症候性腎杯憩室結石の治療法に対する主要な選択肢にもなり得る。
【0004】
経皮的腎切石術(PCNL)は、衝撃波結石破砕術や尿管鏡検査などの他の結石治療法には大きすぎる(20mmを超えるもの)か、あるいは複雑すぎて対応できない、患者の腎臓結石や尿管結石を医師が除去する医療処置である。腎臓結石は、尿中の化学的化合物が結晶化して尿路に形成されるもので、PCNLは大きくて複雑な腎臓結石に対する標準的な処置である。医療処置中、患者の脇腹部位に小さな1cmの切開部を設け、X線または超音波誘導下で切開部を通じてシースを腎臓に配置する。その後、経皮的腎臓鏡と呼ばれる小型の望遠鏡をシースに通し、手術中は医師が望遠鏡を持って結石を可視化し、砕いて身体から除去する。必要に応じて、レーザーや砕石機と呼ばれる機器を使用して結石を砕いてから除去してもよい。患者は通常、医療処置の間、うつ伏せまたは仰向けの状態で麻酔をかけられる。
【0005】
従来のPCNL処置には、一般に、高圧洗浄法が含まれる。高圧洗浄法により、洗浄流体が結石または結石片を患者の身体から洗い流し、医師が医療処置を行うために十分な視覚的鮮明性を維持することができる。洗浄流体の圧力レベルは、医師が圧力ポンプ装置を用いて事前設定する。洗浄流体は、加圧ポンプにより注入され、経皮的腎臓鏡を通じて患者の腎臓に入り、その後、経皮的腎臓鏡とシースの間の空間を通って患者の体外に出て、開放型廃棄物回収器へ導かれる。洗浄流体としては、一般に、5%生理食塩水が使用される。
【0006】
上記のような方法、例えば高圧洗浄法とは別に、手術操作を支援するために様々な機械的装置を用いることができる。一例として、各種砕石装置の開発、ホルミウムレーザーの導入により、結石の破砕・除去が効率化された。PCNL医療処置中に、砕石機またはレーザーを使用して腎臓結石を砕いてから、腎臓結石を除去してもよい。
【0007】
しかし、従来の腎臓結石除去技術には、既存の方法(例えば、高圧洗浄法)や現在の医療機器(例えば、砕石装置およびホルミウムレーザー)を用いた場合であっても、依然として課題が残されている。一例として、高圧洗浄法では、患者の体外で一定の圧力レベルを事前設定するだけで、医療処置中の内圧測定や制御ができないため、患者の臓器の内圧を効率的に管理することができない。PCNLは通常、医師の視覚的鮮明性を維持するために高圧の下で行われ、高圧洗浄法に起因する腎盂圧(RPPs)の上昇は、腎盂静脈の逆流により感染を拡大させる場合がある。さらに、結石片が患者の体外に出る際に経皮的腎臓鏡とシースとの間に詰まり、医療処置中に洗浄流体の流出を遮断することがある。その結果、患者の腎臓内の圧力レベルが急激に上昇する。患者の腎臓内の圧力測定や制御ができないため、術後の出血、組織損傷、近傍の臓器や構造の損傷、死亡率20%~42%の尿路性敗血症などの合併症が起こる場合がある。しかし、圧力が低下すると、観察に支障をきたしたり、出血が増えたりする可能性がある。また、高圧洗浄下で患者の耐性を懸念して医療処置を中止せざるを得ないこともある。その結果、結石除去率が低くなり、患者の体内で術後の腎臓結石形成につながる。
【0008】
さらに、医師はPCNL処置の間、休むことなく経皮的腎臓鏡を手で持っていなければならない。一般に、PCNL処置の所要時間は3~4時間で、患者が大きな腎臓結石や複雑な結石を抱えている極端な場合には5時間以上になる可能性がある。その結果、患者の臓器が高い圧力下にある長時間の手術、および経皮的腎臓鏡を手で持つ医師の潜在的な疲労のために、手術リスク(例えば、合併症、出血、臓器損傷)は高くなる。
【0009】
したがって、医療処置中の患者の体内における圧力管理のための改良された技術が必要とされている。また、より安全かつ効率的に結石を除去するための改良された技術も必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本明細書の一態様において提供されるのは、
臓器の内部の病変に応じて予め選択された内視鏡であって、該臓器に洗浄流体を流すための流体入口路を備えている内視鏡と、
前記内視鏡を誘導するためのシースと、
前記シース内に配置され、前記臓器から前記洗浄流体を除去するための吸引路と、
前記シースに沿って配置され、遠位端が前記臓器内に配置されるように構成され、前記臓器内の圧力を測定するように圧力検出器に接続された圧力測定路と、
前記シースと流体的に連通している圧力逃し弁であって、前記圧力が閾値に達すると、該圧力逃し弁が開いて、前記吸引路内の前記洗浄流体の除去を可能にし、それによって前記臓器内の該圧力を低下させる圧力逃し弁と、
前記シースを保持するための第1のホルダーと、
前記内視鏡を保持するための第2のホルダーであって、前記第1のホルダーと該第2のホルダーは、該内視鏡を前記シースの内外に移動させるように同軸移動するように設計されている第2のホルダーと、
前記シースの動作を制御するためのロボットアームであって、前記第1のホルダーに接続されているロボットアームと、
を含む内視鏡手術用ロボットシステムである。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記内視鏡が、経皮的腎臓鏡、尿管鏡、膀胱鏡、尿道鏡、子宮鏡、関節鏡、脊椎内視鏡、腹腔鏡、涙道内視鏡、鼻咽頭内視鏡、および耳鏡から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態では、内視鏡手術用ロボットシステムは、前記シースの後端部に配置され、任意にゴムキャップとされた穿刺可能なキャップをさらに含むことができ、該穿刺可能なキャップを通じて前記内視鏡が該シース内に挿入される。
【0013】
いくつかの実施形態では、内視鏡手術用ロボットシステムは、前記洗浄流体を前記臓器に連続的に注入し、該洗浄流体を連続的に除去するための灌流吸引ポンプをさらに含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、内視鏡手術用ロボットシステムは、前記吸引路と流体的に連通しており、前記臓器から前記洗浄流体を吸い上げて除去するための吸引ポンプをさらに含むことができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記圧力測定路が、前記シースの内部に配置されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記圧力検出器が前記圧力を即時監視し、該圧力検出器が任意に心電計に接続される。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記閾値が、前記病変、前記臓器、前記シースおよび/または前記洗浄流体の流速に応じて予め決定され、該閾値が任意に約40cmH2Oとされる。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記第1のホルダーが、第1のラッチを介して前記シースを取り外し可能に保持するように構成され、および/または、前記第2のホルダーが、第2のラッチを介して前記内視鏡を取り外し可能に保持するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、内視鏡手術用ロボットシステムは、前記第1のホルダーおよび前記第2のホルダーを吊り下げるためのホルダーバーをさらに含むことができ、該第1のホルダーおよび該第2のホルダーが該ホルダーバーに沿って前後に移動可能とされており、該ホルダーバーが、任意に、接続部を介して前記ロボットアームに接続されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記ロボットアームが、多自由度アクチュエータと多自由度制御システムとを含み、前記内視鏡が該多自由度アクチュエータの出力端に固定され、該多自由度制御システムによって該内視鏡上にツール中心点が定義される。
【0021】
いくつかの実施形態では、内視鏡手術用ロボットシステムは、前記ロボットアームを制御するためのコマンドコンソールをさらに含むことができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、前記コマンドコンソールが、3Dコントローラと制御ホストとを含み、該3Dコントローラの次元が前記ツール中心点の自由度と一致し、該制御ホストが、該3Dコントローラの多次元センサからの次元情報を該ツール中心点からの自由度情報に関連付ける。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記3Dコントローラが、前記多自由度アクチュエータおよび前記内視鏡を遠隔制御する。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記ツール中心点は、切開のための進入点である。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記内視鏡が患者に到達すると、前記制御ホストは、前記内視鏡を、事前設定された安全領域の範囲内で、該内視鏡の軸方向に沿って移動することと、ピッチ、ロール、およびヨー運動で前記ツール中心点の周りを回転することのみに制限し始める。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記コマンドコンソールが、心電図および血圧、腎内圧値および曲線、内視鏡画像、灌流および吸引パラメータ、レーザーパラメータ、X線画像等の患者監視情報を表示するためのモニターモジュールを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、内視鏡手術用ロボットシステムは、前記臓器内の結石を破砕するための砕石機をさらに含むことができる。
【0028】
また、本明細書において提供されるのは、本明細書に開示された内視鏡手術用ロボットシステムを用いることを含む、PCNL手術を行う方法である。
【0029】
別の態様は、
患者に事前切開された切開部を通じて、内視鏡手術を必要とする臓器内にシースを挿入し、該シースの挿入は任意でX線または超音波誘導下で行われ、
内視鏡を前記シース内に配置し、該内視鏡が、前記臓器に洗浄流体を流すための流体入口路を備えており、該シースが、該臓器から該洗浄流体を除去するための、該シース内に配置された吸引路を含み、
灌流ポンプを介して前記洗浄流体を前記流体入口路に連続的に注入し、
吸引ポンプを介して前記吸引路を通じて前記臓器から前記洗浄流体を連続的に除去し、
前記シースに沿って配置された圧力測定路を介して前記臓器内の即時圧力を監視し、該圧力測定路は、遠位端が前記臓器内に配置されるように構成され、前記臓器内の圧力を測定するように圧力検出器に接続されており、該圧力が閾値に達すると、該シースと流体的に連通している圧力逃し弁が開いて、前記吸引路内の前記洗浄流体の除去を可能にし、それによって該臓器内の該圧力を低下させること、
を含む、PCNL手術を行う方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】一実施形態に従う、例示的な手術用ロボットシステムを示す図である。
【
図1B】一実施形態に従う、
図1Aに示された手術用ロボットシステムに連結されたロボットプラットフォームの斜視図である。
【
図1C】一実施形態に従う、
図1Aに示された手術用ロボットシステムに連結されたロボットプラットフォームの別の斜視図である。
【
図1D】一実施形態に従う、
図1Aに示される手術用ロボットアームに内視鏡を接続する接続部の一例を示す図である。
【
図2】一実施形態に従う、手術用ロボットシステムのための例示的なコマンドコンソールを示す図である。
【
図3A】一実施形態に従う、例示的な内視鏡の側面図である。
【
図3B】一実施形態に従う、
図3Aに示される内視鏡の手術操作図である。
【
図4A】一実施形態に従う、例示的なPCNLシステムを示す図である。
【
図4B】
図4Aに示すシステムに関連して使用するための例示的な内視鏡の上面図である。
【
図4C】
図4Aに示すシステムに関連する例示的な内視鏡およびシースの設計の側面図である。
【0031】
ここから、いくつかの実施形態を詳細に参照するが、その実施例は、添付の図面に示されている。実用的であればどこでも、類似のまたは同一の符号が図中において使用され、類似のまたは同一の機能を示す可能性があることに留意されたい。図面は、説明の目的だけのために、説明されたシステム(または方法)の実施形態を示している。当業者であれば、以下の説明から、本明細書に記載された原理から逸脱することなく、本明細書に例示された構造および方法の代替的な実施形態が採用され得ることを容易に認識するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書に開示される方法および装置は、医師が、患者の身体の臓器内において、可撓性または剛性の長手状の医療器具(例えば、経皮的腎臓鏡)のような医療器具の動作を制御するのを支援するロボット内視鏡システムを提供することによって、結石除去技術を向上させるものである。本開示は、実施例として、PCNL、特に腎臓結石除去を用いているが、当業者であれば理解するように、本明細書に開示された方法およびシステムは、他の医療処置に容易に適用可能であることに留意されたい。そのような他の医療処置には、経皮的腎臓鏡検査、尿管鏡検査、膀胱鏡検査、尿道鏡検査、子宮鏡検査、関節鏡検査、脊椎内視鏡検査、腹腔鏡検査、涙道内視鏡検査、鼻咽頭内視鏡検査および耳鏡検査が含まれるがこれに限定されない。
【0033】
一実施例として、本装置は、PCNL処置中に所望の解剖学的部位の経皮的腎臓鏡を正確かつ安全に安定化させるためのロボット経皮的腎臓鏡ツールである。ロボット経皮的腎臓鏡ツールは、ロボットアームシステム、ロボットアームに連結された内視鏡接続部、経皮的腎臓鏡、圧力管理システム、コマンドコンソール、エネルギー源(例えば、レーザー機器)および必要なレイアウト付属品を含む。PCNL処置中に医師がリアルタイム3Dコントローラで制御することにより、ロボット経皮的腎臓鏡ツールがロボットアームを正確かつ直感的に操作して、経皮的腎臓鏡を動作させる。ロボットアームシステムは、多自由度のロボットアームアクチュエータと多自由度制御システムとしての多自由度のロボットアームコントローラを含む。経皮的腎臓鏡は、内視鏡接続部によりロボットアームアクチュエータの出力端に固定されている。ロボットアームコントローラにより経皮的腎臓鏡にツール中心点が定義され、3次元コントローラの次元がツール中心点の自由度に一致する。コマンドコンソールは、3Dコントローラの多次元センサからの次元情報をツール中心点からの自由度情報に関連付けるために使用される。
【0034】
いくつかの実施形態では、3Dコントローラは、多自由度ロボットアームおよび経皮的腎臓鏡の遠隔制御を行う。ロボットアームコントローラは、進入点(すなわち、切開部)をツール中心点として定義する。内視鏡機器が患者に到達すると、コマンドコンソールは内視鏡機器の動作を制限し始める。手術中、コマンドコンソールは、内視鏡機器が、安全領域と呼ばれる事前設定された範囲内で、内視鏡機器の軸方向に沿って移動することと、ピッチ、ロール、およびヨー運動でツール中心点の周りを回転することのみを可能にする。上位コンピュータは、内視鏡機器に取り付けられた撮像センサから送信された画像を表示するためのモニターモジュールをさらに含む。ロボット内視鏡システムは、医療処置中に内視鏡の動作制御を正確かつ安全に支援する上で、多大な利点を提供する。医師がより便利に、より効率的に、より安全に操作を行うことが可能になる。また、標準的な医療処置と互換性があるため、使い勝手が良い。本開示に適した例示的なロボットアームシステムには、Kuka LBR iiwa、Kuka LBR Med、Universal Robot UR5e、Franka Emika Panda、Kinova Jaco等が含まれる。
【0035】
さらに、本明細書に開示される方法および装置は、患者の身体の臓器内における、可撓性または剛性の長手状の医療器具(例えば、経皮的腎臓鏡)のような医療器具の改良された圧力管理システム(例えば、灌流および吸引ポンプシステム)を提供することによって、圧力管理技術を向上させるものである。
【0036】
一実施例として、本装置は、PCNL手術中に患者の腎臓の内圧を測定・制御しながら、結石片を患者の体外に洗い流し、手術操作に十分な視覚的鮮明性を維持するための洗浄流体の灌流および吸引ポンプシステムである。灌流および吸引ポンプシステムは、圧力ポンプ装置、圧力測定路の近位端にある圧力検出器、圧力逃し弁、および廃棄物回収器を含む。圧力ポンプ装置は患者の体内に洗浄流体を灌流させ、圧力センサと圧力計は腎臓内圧を測定して表示する。腎臓内圧が閾値に達すると、圧力逃し弁により、洗浄流体が腎臓外へ吸引されて腎臓内圧を低下させることができる。閾値圧力は、患者、腎臓の状態(例えば、大きさ、腫れ、出血、結石の数)、シースの大きさ、および洗浄流体の流速に基づいて変更し、選択することが可能である。いくつかの実施形態では、上限閾値は、約40cmH2O、約35cmH2O、約30cmH2O、約25cmH2O、または約20cmH2Oとすることが可能であり、あるいは、その間の任意の数値、またはより高く、またはより低くすることが可能である。いくつかの実施形態では、閾値は、F24シースに対して約17.2±5cmH2Oとすることができる。いくつかの実施形態では、腎臓内圧は、即時監視される。特定の実施形態では、監視は、心電図検査を用いて実現することができる(例えば、圧力センサを、心電計に接続してもよい)。灌流および吸引ポンプシステムは、PCNL処置中に患者の腎臓の内圧を即時監視し、管理することによって、医師が手術を安全に操作することを可能にする。
【0037】
いくつかの実施形態では、患者の脇腹部位に小さな(例えば、1cm)切開部を設け、切開部を通じて腎臓にシースを配置する。次に、結石を可視化し、破砕し、体内から除去するために、経皮的腎臓鏡をシースに通す。経皮的腎臓鏡を通じて、圧力ポンプ装置により洗浄流体を患者の腎臓内に注入し、灌流および吸引ポンプシステムを通じて洗浄流体を結石片とともに患者の腎臓から吸い上げる。洗浄流体は等張液、必要に応じて5%生理食塩水であってもよい。廃液は全て廃棄物回収器に入る。
【0038】
一実施形態では、シースと経皮的腎臓鏡の間に圧力測定路が配置される。圧力検出器は、圧力測定路を通る圧力測定カテーテルによって接続される。圧力検出器は、即時の内圧情報を収集し、患者の腎臓内にあるカテーテルの一方の端部に固定される圧力センサを含む。医師が即時内圧を読み取ることができる圧力検出器は、患者の体外にあるカテーテルの他方の端部に配置される。圧力が医師の事前設定した閾値レベルに達すると、圧力逃し弁を用いて内圧を低下させ、洗浄流体を患者の体外に吸引することができるため、医師は視覚的にわかりやすく、安全に操作することができる。本システムは、PCNL処置を行うのに使い勝手が良く、現行の医療機器との互換性がある。
【0039】
[定義]
便宜上、本明細書、実施例、および添付の請求項で採用されている特定の用語をここにまとめておく。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0040】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語と共に使用される場合の「a」または「an」という語は、「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」、「1つまたは複数」の意味とも一致する。
【0041】
本出願を通じて、「約」という用語は、ある値が、その値を決定するために採用される方法/装置に対する誤差の固有の変動、または研究対象の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。一般に「約」という用語は、状況に応じて、およそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%の変動、または、より小さい変動を包含することを意味している。
【0042】
特許請求の範囲における「または」という用語は、代替物のみを指すように明示的に示されるか、各代替物が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するものとして用いられる。但し、本開示は、代替物のみ、および「および/または」を指す定義をサポートしている。
【0043】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprising)」(および「comprise」、「comprises」などのcomprisingの任意の形態)、「有する(having)」(および「have」、「has」などのhavingの任意の形態)、「含む(including)」(および「includes」、「include」などのincludingの任意の形態)、または「含む(comtaining)」(および「contains」、「contain」などのcontainingの任意の形態)という用語は包括的またはオープンエンド型であり、追加の、列挙されていない要素または方法の工程を除外することはない。本明細書に記載されている任意の実施形態が、本発明の任意の方法、システム、宿主細胞、発現ベクター、および/または構成物に対して実施され得ることが意図される。さらに、本発明の構成物、システム、宿主細胞、および/またはベクターは、本発明の方法およびタンパク質を実現するために使用することができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という用語は、所定の実施形態に必要な要素を指す。この用語は、本開示のその実施形態の基本的かつ新規なまたは機能的な特性に実質的に影響を及ぼさない追加の要素の存在を許容する。
【0045】
「~からなる(consisting of)」という用語は、本明細書に記載されている構成物、方法、およびその各構成要素を指し、実施形態のその説明に列挙されていないいかなる要素も含まないものである。
【0046】
「例えば(for example)」という用語およびその対応する省略形「e.g.」(イタリック体であるか否かを問わず)の使用は、列挙された特定の用語が、明示的に別段の記載がない限り、本発明の代表的な例および実施形態であることを意味しており、参照または引用された特定の例に限定されることを意図していない。
【0047】
[手術用ロボットシステム]
図1Aは、一実施形態に従う、例示的な手術用ロボットシステム100を示す。手術用ロボットシステム100は、1つのロボットアーム(例えば、ロボットアーム102)に連結されたベース101を含む。ベース101は、以下に、
図2を参照してさらに説明するコマンドコンソールに通信可能に連結されている。ベース101は、ロボットアーム102が患者に手術処置を施すためのアクセスを有すると共に、医師などの使用者がコマンドコンソールから快適に手術用ロボットシステム100を制御し得るように配設することができる。見やすくするために
図1Aには示されていないが、ベース101は、電源などのサブシステムを含んでいてもよい。ロボットアーム102は、ジョイント111で連結された複数のアームリンク110を含み、これにより、ロボットアーム102に複数の自由度、例えば、7つのアームリンクに対応する7つの自由度が提供される。また、ベース101内のロボットアームコントローラ112は、コマンドコンソールから伝達される制御信号を処理し、送信することもできる。
【0048】
いくつかの実施形態では、ベース101は、手術用ロボットシステム100を運搬するための車輪113を含む。処置中、使用者は、コマンドコンソールのような制御装置を用いてロボットアーム102を制御してもよい。手術用ロボットシステム100の可動性により、手術室内の空間を効率的に使用することができ、処置中にロボットアーム102が人または他の設備に干渉しないようにすることができる。
【0049】
ロボットアーム102は、接続部114を使用して内視鏡115に連結されてもよい。内視鏡115は、取り外して、例えば腎臓鏡や子宮鏡などの、異なる種類の内視鏡と交換することができる。接続部114は、内視鏡の種類に基づいて交換可能であり、特定の種類の手術処置のためにカスタマイズすることができる。ロボットアーム102は、ジョイントレベルのトルクセンシングを含むことができる。
【0050】
図1Bおよび
図1Cは、様々な実施形態に従う、手術用ベッド116に連結された手術用ロボットシステム100の様々な斜視図である。具体的には、
図1Bは、手術用ロボットシステム100を横から見たものであり、ロボットアーム102が内視鏡115を操作して患者の体内に内視鏡を挿入し、患者が手術用ベッド116に横たわっている状態である。
図1Cは、手術用ロボットシステム100および手術用ベッド116を上から見たものであり、ロボットアームによって操作された内視鏡115が、患者の体内に挿入されている。
【0051】
図1Dは、ロボットアーム102を連結して内視鏡(例えば、経皮的腎臓鏡)115を保持し動作させる、接続部114の一実施例を示している。接続部114は、経皮的腎臓鏡115の位置を安定させるための前部ねじ117と後部ねじ118を含む。経皮的腎臓鏡115は、
図3Aおよび
図3Bを参照してさらに後述する。
【0052】
[コマンドコンソール]
図2は、一実施形態による、手術用ロボットシステム100のための例示的なコマンドコンソール200を示す。コマンドコンソール200は、コンソールベース201、表示モジュール202(例えばモニター)、および制御モジュール(例えばキーボード203および3Dコントローラ204)を含む。使用者205(例えば医師)は、コマンドコンソール200を使用して人間工学的な位置から手術用ロボットシステム100を遠隔制御する。
【0053】
コンソールベース201は、例えば
図1Aに示される内視鏡115からのカメラ画像などの信号を解釈し、処理してもよい。コンソールベース201は、使用者205が制御モジュール203および204を介して提供するコマンドおよび命令も処理することができる。制御モジュールは、
図2に示されるキーボード203および3Dコントローラ204に加えて、例えば、コンピュータマウスおよび制御パッドなどの他の機器を含んでもよい。
【0054】
使用者205は、コマンドコンソール200を使用して内視鏡115のような手術器具を速度モードで制御することができる。ロボットアームコントローラによって内視鏡115上にツール中心点が定義され、3Dコントローラの次元がツール中心点の自由度と一致する。速度モードでは、使用者205は、3Dコントローラ204を用いた直接的な手動制御に基づいて、内視鏡115の6自由度の運動を遠隔制御する。3Dコントローラ204は、使用者に対して触覚フィードバックを提供することができる。例えば、3Dコントローラ204は、内視鏡が臓器の境界線に接触していること、現在の方向への移動または回転を停止しなければならないこと、を示すために、振動する。コマンドコンソールはまた、患者の3D画像マップを使用して安全領域を決定することができ、操作が臓器の境界または安全領域を超えると直ちに、警告システムおよび自動保護プログラムが起動され、外科医の操作を警告または停止または修正し、これにより外科医の操作精度が大きく最適化され、手術中の患者の安全性が向上する。
【0055】
具体的には、ロボットアームのコントローラは、進入点(すなわち、切開部)をツール中心点として定義する。内視鏡115が患者に接近すると、コマンドコンソールは、内視鏡115の動作を制限し始める。手術中、コマンドコンソールは、内視鏡115が、安全領域と呼ばれる事前設定された範囲内で、内視鏡の軸方向に沿って移動することと、ピッチ、ロール、およびヨー運動でツール中心点の周りを回転することのみを可能にする。
【0056】
いくつかの実施形態では、使用者205は、コマンドコンソール200を使用することなく、手術用ロボットシステム100のロボットアーム102を手動で操作することができる。外科手術室でのセットアップの間、ロボットアーム102はティーチショーモードに設定されてもよい。そして、使用者205は、ロボットアーム102、内視鏡115、および他の手術用機器を動かして、患者にアクセスしてもよい。手術用ロボットシステム100は、ロボットアーム102および設備の適切な構成を決定するために、使用者205からのフォースフィードバックおよび慣性制御に依拠してもよい。特に、使用者205は、処置中であっても、このような手動操作モードで手術用ロボットシステム100を使用することができ、そうすることにより、より柔軟でより優れた安全制御が可能となる。
【0057】
表示モジュール202は、心電図および血圧、腎内圧値および曲線、内視鏡画像、灌流および吸引パラメータ、レーザーパラメータ、X線画像等の患者監視情報を表示してもよい。
【0058】
[内視鏡]
実施される医療処置に応じて、様々な内視鏡を本明細書に記載のシステムに適合させることができる。適合する内視鏡は、臓器内部の病変の位置および大きさに応じて選択することができる。例えば、経皮的腎臓鏡、尿管鏡、膀胱鏡、尿道鏡、子宮鏡、関節鏡、脊椎内視鏡、腹腔鏡、涙道内視鏡、鼻咽頭内視鏡、耳鏡等を臓器や病変等に応じて使用することができる。様々な実施形態において、内視鏡は、流体入口路、光源、導光体(例えば、光ファイバー)、およびプリズムから構成され得る。
【0059】
図3Aは、一実施形態に従う例示的な内視鏡115の側面図である。内視鏡115は、腎腔系を検査し、直接の視覚的制御下で異なる治療処置を実施することができる光学器具である。内視鏡115は、約1cmまでの結石、結石片、および小さな腫瘍を除去するために使用することができる。内視鏡115は、シース308と、光学系と、作業路304とを含む。
【0060】
光学系は、光ポート301、光ファイバー入口302、および接眼レンズ303を含む。光ファイバー光ポート301は、作業路304に組み込まれている。医療処置の間、光源が光ポート301を通過する。これにより、光ファイバー入口302を通過して作業路304の中心軸307に位置する光ファイバー305が患者の腎臓内部の即時画像を収集することができる。この即時画像は、医師が接眼レンズ303から可視化することができる。内視鏡115の光学系は、医師が医療処置を行うことを支援するために、明確な視界を確保する。
【0061】
作業路304は、医療処置に必要な砕石機または別の作業要素(結石鉗子、抽出プローブ等)のような広範囲の剛性付属品を挿入することを可能にする。作業路304の腎臓鏡先端部306は、患者の腎臓に挿入され、医師が医療処置を行うことができるようになる。洗浄流体は、鮮明な視界を維持し、結石片を洗い流すために使用される。作業路304はまた、流入接続部312から来る洗浄流体の流れを確保する。洗浄流体は、作業路304とシース308との間の空間を通って流出する。シース308については、後述のポンプシステムを参照してさらに説明する。
【0062】
図3Bは、一実施形態に従う、
図3Aに示される内視鏡の手術操作図である。医療処置中、患者の脇腹部位に小さな(例えば、1cmの)切開部309を設け、X線または超音波誘導下で切開部を通じてシース308を腎臓に配置する。次いで、医師が腎臓結石311を可視化するために、内視鏡(すなわち、経皮的腎臓鏡)115をシース308に通し、患者の腎臓310に挿入する。医療機器(例えば、レーザー機器
402)により、結石を砕いて破片にすることができる。
【0063】
[ポンプシステム]
システムを使用して、当該システムを通じて洗浄流体を連続的にポンピングすることができる。いくつかの実施形態では、連続的なポンピングを達成するために、灌流吸引ポンプがシステムに含まれ得る。
【0064】
図4Aは、一実施形態に従う、例示的なPCNLシステムを示す。灌流吸引システムが示されており、これにより、洗浄流体が腎臓結石を除去し、即時圧力管理で医師が医療処置を行うために十分な視覚的鮮明性を維持することができる。灌流吸引ポンプシステムは、灌流吸引ポンプ403、内部に圧力センサを有する圧力検出器414、吸引路406を有するシース405、シース405の後端部に設けられたゴムキャップ410を含む。圧力測定路407が、シース405に沿って延びている。吸引路406は、接続パイプ427を介して吸引ポンプ436と接続されている。内視鏡415の
流体入口路416は、接続パイプ428により灌流ポンプ437と接続されている。手術中、内視鏡415は、シース405の後端部のゴムキャップ410の中心からシース405内に挿入される。シース405には、即時に圧力を逃がすことができる圧力逃し弁433が配置されている。
【0065】
PCNL処置の開始時に、医師は灌流吸引ポンプ403の電源を入れる。患者の脇腹部位に小さな1cmの切開部を設け、X線または超音波誘導下で、切開部を通じてシース405を腎臓に配置する。内視鏡415は、シース405の後端部のゴムキャップ410の中心からシース405内に挿入され、腎臓内に到達する。灌流ポンプ437は、洗浄流体432を内視鏡415内に、そして腎臓内に注入する。その後、吸引ポンプ436は、洗浄流体432(破砕された腎臓結石を含む)を内視鏡415とシース405の間の空間を通じて患者の体外に吸い上げる。そして、洗浄流体432は、吸引路406に流入し、廃棄物回収器430に入ることになる。
【0066】
シース405には、腎内圧力測定路407が設けられている。圧力測定カテーテル413が、圧力測定路407の内部に配置されている。圧力測定カテーテル413の遠位端が腎臓の内部に配置されると共に、圧力測定カテーテル413の近位端が外部の圧力検出器414に接続されている。灌流吸引ポンプ403の圧力レベルは、即時圧力測定結果に応じて、コマンドコンソール404により自動的に、あるいは医師により手動で調整することができる。シース405が遮断され、腎臓内の圧力が安全圧力範囲(15~40cmH2Oであり得る)を超えた場合、圧力逃し弁433が機能し、腎臓の内圧を軽減することができるようになる。
【0067】
図4Bは、一実施形態に従う、
図4Aのシステムに関連して使用するための例示的な内視鏡の上面図である。シース405により、内視鏡415が患者の腎臓内に到達することができる。圧力測定路407は、シース405内の空間と内視鏡415との間において、シース405の一方の側にある。
【0068】
図4Cは、一実施形態に従う、
図4Aのシステムに関連する例示的な内視鏡およびシースの設計の側面図である。ロボットアーム102は、接続部114を介してホルダーバー424に接続されている。ホルダーバー424の
第1のホルダーとしての遠位ホルダー411は、
第1のラッチとしてのシースラッチ408でシース405に接続されている。ホルダーバー424の
第2のホルダーとしての近位ホルダー412は、
第2のラッチとしての内視鏡ラッチ409で内視鏡415に接続されている。処置中、遠位ホルダー411と近位ホルダー412は、同軸運動で移動する。遠位ホルダー411は、シース405の腎臓内での深さと角度を制御すると共に、近位ホルダー412は、内視鏡415がシース405内で前後に移動するのを制御する。
【0069】
[修正]
本開示で説明された方法および構成物の修正および変形は、本開示の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本開示は、特定の実施形態に関連して説明してきたが、クレームされた開示は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際、本開示を実施するために説明した態様の様々な修正は、以下の請求項によって表される本開示の範囲内にあることが意図され、本開示が属する関連分野の当業者によって理解される。
【0070】
[参照による組み込み]
本明細書で言及された全ての特許および刊行物は、あたかも、各独立した特許および刊行物が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。