(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】超薄リチウム膜積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240814BHJP
【FI】
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2022570587
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 CN2021138805
(87)【国際公開番号】W WO2023015804
(87)【国際公開日】2023-02-16
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110905800.8
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522450819
【氏名又は名称】天津中能▲里▼▲業▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA ENERGY LITHIUM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.100, The 9th Avenue Of Xinye, West TEDA, Tianjin 300457, China
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼兆勇
(72)【発明者】
【氏名】▲旬▼▲慶▼娜
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼秀娜
(72)【発明者】
【氏名】孔▲徳▼▲玉▼
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112151758(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109328413(CN,A)
【文献】特表2021-502671(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113036077(CN,A)
【文献】国際公開第2021/123151(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112786842(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112820858(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112151763(CN,A)
【文献】中国実用新案第210123779(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担持層と、
前記担持層の少なくとも一方の表面に位置し、前記担持層と積層された超薄リチウム膜とを有する超薄リチウム膜積層体であって、
前記超薄リチウム膜は、孔径が5~200μmである貫通孔を有する均一な薄膜であり、0.5~20μmの均一な厚さを有し、厚さ公差が±0.5μm内であり、
前記超薄リチウム膜と前記担持層との界面で固体電解質界面層があり、
前記担持層の材料は、ポリマー、無機酸化物及び無機導体からなる群から選択される少なくとも1つを含み、ここで、前記ポリマーは、ポリイミド、ナイロン、セルロース、高強度薄膜化されたポリオレフィン及びポリエステルから選択され、前記無機酸化物は、酸化アルミニウムを含み、前記無機導体は、黒鉛、カーボンナノチューブ及びグラフェンから選択され、かつ、
前記超薄リチウム膜と前記担持層との接着力は、0.1~10N・m
-1範囲内であることを特徴とする、超薄リチウム膜積層体。
【請求項2】
前記超薄リチウム膜を形成する材料は、金属リチウムまたはリチウム合金を含み、前記リチウム合金は、リチウムと、珪素、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、ホウ素、錫、ガリウム、イットリウム、銀、銅、鉛、ビスマス、ナトリウム、炭素、ゲルマニウム、チタン、クロム、コバルト、タングステン、鉄、ニオブ、ニッケル、金、バリウム、カドミウム、セシウム、カルシウム、マンガン、窒素、白金、硫黄、タリウム、ストロンチウム、テルル、亜鉛、アンチモン及びジルコニウムからなる群から選択される少なくとも1種との合金であることを特徴とする、請求項1に記載の超薄リチウム膜積層体。
【請求項3】
前記固体電解質界面層は、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、窒化リチウム、フッ化リチウム、リン酸リチウム及びアルキルリチウムからなる群から選択される1種以上の物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の超薄リチウム膜積層体。
【請求項4】
前記超薄リチウム膜は、以下の条件の少なくとも一つを満たすことを特徴とする、請求項1に記載の超薄リチウム膜積層体。
前記超薄リチウム膜は、長手方向に連続的または断続的に形成され、
前記貫通孔の形状は、円形または準円形であり、
前記貫通孔の間隔は、5~1000μmであり、
前記超薄リチウム膜の厚さは、1~10μmである。
【請求項5】
長手方向に断続的に形成される超薄リチウム膜は、長さが制御可能なブランク領域及び金属リチウム層領域を含み、前記金属リチウム層領域の長さ範囲が1~2000mmであり、前記ブランク領域の長さ範囲が1~200mmであり、
幅方向に断続的に形成される超薄リチウム膜は、幅が1~200mm範囲内である超薄リチウム膜部分を有し、前記超薄リチウム膜部分の間の間隔は、0.5~10mmであることを特徴とする、請求項4に記載の超薄リチウム膜積層体。
【請求項6】
前記担持層は、単層構造または多層積層構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の超薄リチウム膜積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の超薄リチウム膜積層体を製造する方法であって、
担持層の少なくとも一方の表面に、金属リチウムと反応して固体電解質界面層を形成できる物質を含む機能化層を形成する工程と;
ロールツーロールプロセスにより、厚さが10~250μmである金属リチウムストリップ材を、担持層の機能化層が形成された表面に圧延して積層させ、超薄リチウム膜積層体を得る工程と;
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記機能化層は、金属リチウムと反応して固体電解質界面層を形成できる物質を含有する分散体を、スプレーコート、ディップコート、トランスファーコート、押出コート、ナイフコート、カーテンコートまたはスクリーン印刷方式により、担持層の少なくとも一方の表面に塗布してなることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属リチウムと反応して固体電解質界面層を形成できる物質は、パーフルオロ-n-ペンタン、パーフルオロトリペンチルアミン、ポリリン酸、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロリン酸リチウム、フッ化銅、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、フッ化水素酸、エチルメチルカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル及びポリオキシエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分散体には、さらに、ジメチルポリシロキサン、水素含有シリコーンオイル、パンチングシヤーオイル、流動パラフィン、メチルシリコーンオイル、乳化メチルシリコーンオイル、水素含有メチルシリコーンオイル、シリコーングリース、ポリエチレンワックス、2-メトキシエチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、トルエン、n-ブタノール、ポリビニルアルコール、ブタノン、イソプロピオン酸、3-インドールプロピオン酸及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記圧延は、冷間圧延、熱間圧延または積層圧延であり、ここで、熱間圧延の温度が60~120℃の範囲に制御されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵技術分野に関し、特に、二次電池に用いることができる超薄リチウム膜積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム電池は、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、適用温度範囲が広いという利点から、航空・宇宙、コンピュータ、モバイル通信機器、ロボットや電気自動車等の分野で広く使われている。社会の発展、科学技術の進歩に伴い、リチウム電池のエネルギー密度とサイクル寿命に対する要求は、ますます高まっているが、現在、黒鉛単独を負極とするリチウムイオン電池は、社会の期待に応えることが困難であるため、新な比容量の高い正負極材料の開発が必要である。負極材料については、プレリチウム化作業を行うことで、電池比エネルギーと電池寿命の向上に有効である。リチウム金属は、高い比容量(3860mAh/g、黒鉛負極の10倍)と最も低い酸化還元電位(-3.04VVS標準水素電位)を有する。修飾された金属リチウムで従来の黒鉛、珪素-炭素負極をプレリチウム化処理することにより、電池の初回クーロン効率を高め、電池の比エネルギーを増加させる一方、表面修飾層は、金属リチウムの損失を効果的に減少させ、電池のサイクル寿命を長くすることができ、これにより、リチウムイオン電池が広い応用分野で用いられることとなる。
【0003】
プレリチウム化(リチウム補償)にはこのようなメリットがあるが、電池内での使用量を正確に制御し、且つリチウム補充材料の安定性を維持する必要があるため、これを鑑みて、負極のプレリチウム化にはより高い要求が求められる。現在、既存のリチウムイオン電池に用いられる正極材料は、すべてリチウム含有材料(例えばコバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、三元材料等)であり、正極に含まれるリチウムは、リチウムイオン電池の充放電の需要を満たすことができる。したがって、負極のリチウム補充材料は、サイクル過程でのリチウム損失を補うために少量のリチウムを供給すれば、電池のエネルギー密度とサイクル寿命を向上させることができる。負極にプレインターカレートされたリチウムの量が非常に少ないため、通常、リチウム補充用のリチウム膜については、その厚さが0.5μm~15μmであればよい。寧徳時代新能源の中国特許出願CN201610102992.8では、リチウム補充過程でポールピースの表面にリチウム粉末を撒いて、ロールプレスした後、プレリチウム化し、リチウムの使用量が少ない。しかし、このリチウム補充方法では、リチウム補充量の正確な制御はまだ実現できず、また、プロセスが複雑でコストが高く、特に重要なのは、安全性の制御が困難である。China Energy Lithium Co., Ltdの中国特許出願CN112151758A、即ち超薄リチウム膜プリフォームとその製造方法では、金属リチウムの補充量の正確な制御の問題を効果的に解決できる、超薄リチウム膜でリチウムを補充する方法を提案している。しかし、金属リチウムの安定性をさらに最適化する必要がある。このため、リチウム補充量を制御しながら安定性を高め、電池の長サイクル寿命、高エネルギー密度を実現できる技術が求められている。
【発明の概要】
【0004】
発明者は、驚くべきことに、負極のプレリチウム化に用いられる超薄リチウム膜では、担持層の表面に、金属リチウムと反応して人工固体電解質界面層(人工SEI層)を形成できる機能化層を設けることにより、超薄リチウム膜を適切な接着力で担持層上(該接着力で、超薄リチウム膜を担持層に付着させつつ、担持層から他の基材、例えばリチウム電池負極に容易に転移することができる)に積層させるだけではなく、担持層から他の基材に転移する際に、人工SEI層が超薄リチウム膜に残り、金属リチウム膜を効果的に保護し、安定性を高め、電池のサイクル性能を向上させることができることを発見した。これらの発見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0005】
そこで、本発明の一側面では、担持層と、前記担持層の少なくとも一方の表面に位置し、前記担持層と積層された超薄リチウム膜とを有する超薄リチウム膜積層体であって、前記超薄リチウム膜は、孔径が5~200μmである貫通孔を有する均一な薄膜であり、0.5~20μmの均一な厚さを有し、厚さ公差が±0.5μm内であり、前記超薄リチウム膜と前記担持層との界面で固体電解質界面(SEI)層があり、また前記超薄リチウム膜と前記担持層との接着力が0.1~15N・m-1範囲内である超薄リチウム膜積層体を提供する。
【0006】
本発明に係る超薄リチウム膜積層体は、積層ストリップ材であって、連続的または断続的に形成され、貫通孔を有し、担持層(薄膜基材)により支持され、幅及び厚さが調整可能(リチウム膜のサイズと圧力を制御することにより調整可能)な積層ストリップ材である。
【0007】
本発明において、超薄リチウム膜が均一な薄膜であるとは、超薄リチウム膜が完全な薄膜形状(即ち、顕著な皺や変形がなく、整った縁を有する)を有し、かつ均一な厚さを有することを意味する。好ましくは、超薄リチウム膜は、リチウム膜の全体に均一に分布する貫通孔を有する。
【0008】
任意選択で、本発明に係る超薄リチウム膜は、長手方向に連続的または断続的に形成され、または幅方向に連続的または断続的に形成される。
【0009】
任意選択で、長手方向に断続的に形成されるリチウム膜は、長さが制御可能なブランク領域及び金属リチウム層領域を含み、金属リチウム層領域の長さ範囲が1~2000mmであり、ブランク領域の長さ範囲が1~200mmであり、好ましくは1~100mmである。
【0010】
任意選択で、幅方向に断続的に形成されるリチウム膜において、リチウム膜部分の幅が1~200mmであり、リチウム膜部分の間隔部分が0.5~10mmのピッチを有する。
【0011】
任意選択で、超薄リチウム膜積層体のリチウム膜の表面は、明るくて金属銀白色であり、リチウム含有量は99.90~99.95%であり、リチウム膜本体(内部)のリチウム元素含有量は99.95%~99.99%であってもよい。リチウム膜の厚さ範囲は、0.5~15μmであり、好ましくは1~10μmであり、より好ましくは5μm以下であり、厚さ公差は±0.5μmであり、好ましくは±0.1μmである。
【0012】
任意選択で、超薄リチウム膜は、均一に分布する孔径が5~200μmである貫通孔を有する。
【0013】
任意選択で、超薄リチウム膜の貫通孔の孔径は、10~50μmであってもよい。
【0014】
任意選択で、超薄リチウム膜の孔隙率は、0.1%~20%であり、好ましくは0.1%~10%であり、より好ましくは0.5%~5%である。
【0015】
任意選択で、超薄リチウム膜の貫通孔の形状は、円形または準円形であり、貫通孔の間隔は、5~1000μmであり、好ましくは5~200μmであり、より好ましくは5~50μmである。
【0016】
任意選択で、超薄リチウム膜を形成する材料は、金属リチウムまたはリチウム合金を含み、リチウム合金は、リチウムと、珪素、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、ホウ素、錫、ガリウム、イットリウム、銀、銅、鉛、ビスマス、ナトリウム、炭素、ゲルマニウム、チタン、クロム、コバルト、タングステン、鉄、ニオブ、ニッケル、金、バリウム、カドミウム、セシウム、カルシウム、マンガン、窒素、白金、硫黄、タリウム、ストロンチウム、テルル、亜鉛、アンチモン及びジルコニウムからなる群から選択される1種以上との合金である。
【0017】
任意選択で、担持層の材料として、ナイロン、セルロース、高強度薄膜化されたポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)、ポリエステル等のポリマー;酸化アルミニウム等の無機酸化物;黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェン等の無機導体;銅、アルミニウム等の金属集電体;等が挙げられる。前記担持層は、単層、または多層の積層体であってもよい。
【0018】
任意選択で、担持層の厚さは、1~500μmであり、好ましくは5~100μmであり、より好ましくは10~50μmである。
【0019】
任意選択で、超薄リチウム膜と担持層との界面にあるSEI層には、炭酸リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、窒化リチウム、フッ化リチウム、リン酸リチウム及びアルキルリチウムからなる群から選択される1種以上の物質を含む。
【0020】
任意選択で、超薄リチウム膜と担持層との界面には、応力調整材をさらに含み、前記応力調整材は、ジメチルポリシロキサン、水素含有シリコーンオイル、パンチングシヤーオイル、流動パラフィン、メチルシリコーンオイル、乳化メチルシリコーンオイル、水素含有メチルシリコーンオイル、シリコーングリース及びポリエチレンワックスからなる群から選択される1種または2種以上の組み合わせを含む。
【0021】
任意選択で、担持層と超薄リチウム膜との接着力は、1~10N・m-1であり、好ましくは1~5N・m-1である。前記担持層と超薄リチウム膜との接着力により、超薄リチウム膜を担持層上に安定に積層させることを確保しながら、担持層から他の基材、例えばリチウム電池負極に容易に転移させることができる。
【0022】
本発明の別の側面では、前記超薄リチウム膜積層体を製造する方法を提供し、前記方法は、
担持層の少なくとも一方の表面に、金属リチウムと反応してSEI層を形成できる物質を含む機能化層を形成する工程と;
ロールツーロールプロセスにより、厚さが10~250μmである金属リチウムストリップ材を、担持層の機能化層が形成された表面に圧延して積層させ、超薄リチウム膜積層体を得る工程と、を含む。
【0023】
任意選択で、前記機能化層は、金属リチウムと反応してSEI層を形成できる物質を含有する分散体を、スプレーコート、ディップコート、トランスファーコート、押出コート、ナイフコート、カーテンコートまたはスクリーン印刷方式により、担持層の少なくとも一方の表面に塗布してなる。
【0024】
任意選択で、前記金属リチウムと反応してSEI層を形成できる物質は、パーフルオロ-n-ペンタン、パーフルオロトリペンチルアミン、ポリリン酸、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロリン酸リチウム、フッ化銅、フルオロエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、フッ化水素酸、エチルメチルカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル及びポリオキシエチレンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0025】
任意選択で、前記分散体には、さらにジメチルポリシロキサン、水素含有シリコーンオイル、パンチングシヤーオイル、流動パラフィン、メチルシリコーンオイル、乳化メチルシリコーンオイル、水素含有メチルシリコーンオイル、シリコーングリース、ポリエチレンワックス、2-メトキシエチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、トルエン、n-ブタノール、ポリビニルアルコール、ブタノン、イソプロピオン酸、3-インドールプロピオン酸及びカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0026】
任意選択で、金属リチウムストリップ材の厚さは、10~100μmであり、好ましくは10~50μmである。
【0027】
任意選択で、前記分散体を担持層に塗布した後、塗布された分散体を乾燥する前に、金属リチウムストリップ材の圧延と積層を行う。
【0028】
任意選択で、圧延は、冷間圧延、熱間圧延及び積層圧延を含み、ここで、熱間圧延が60~120℃の範囲の温度で制御され、積層圧延は、熱間圧延してから冷間圧延することが好ましい。
【0029】
任意選択で、圧延の圧力範囲は、0.1~150Mpaであり、好ましくは80~120Mpaである。
【0030】
任意選択で、圧延ロールの表面には、接着防止材を有しており、接着防止材として、ポリエチレン、ポリホルムアルデヒド、有機ケイ素重合体、セラミックが挙げられる。
【0031】
任意選択で、最大張力の範囲が0.1~10Nであるロールで巻き取り、ここで、支持ロール自体はエネルギーで駆動される。
【0032】
本発明では、圧延の過程を制御することにより、超薄リチウム膜を担持した積層体が簡単なプロセスで得られ、そのうち、金属リチウム膜の表面が平坦であり、超薄リチウム膜と担持層との界面で人工SEI層を有する。当該積層体は、リチウム電池負極上に容易に転移することができる、かつ、向上されたプレリチウム化効果を有し、電池の高エネルギー密度、長サイクル寿命を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明に係る圧力積層による連続的な超薄リチウム膜積層体の生産プロセスの模式図である。
【
図2】
図2は、幅方向に断続的な超薄リチウム膜積層体の模式図である。
【
図3】
図3は、長手方向に断続的な超薄リチウム膜積層体の模式図である。
【
図4】
図4は、断続的な超薄リチウム膜積層体の生産プロセスの模式図を示す。
【
図5】
図5は、担体材料に機能試薬をスプレーコートするプロセス模式図を示す。
【
図6】
図6は、本願実施例1で製造された厚さ5μmの滑らかな超薄リチウム膜積層体製品を示す。
【
図7】
図7は、元の状態(対比例1、左図)と人工SEI修飾(実施例2、右図)の5μm超薄リチウム膜積層体製品のSEM図を示す。
【
図8】
図8は、本願実施例1に係わる超薄リチウム膜積層体製品のエネルギースペクトルを示す。
【
図9】
図9は、本願実施例1、2及び対比例2に係わる超薄リチウム製品の放電曲線図を示す。
【符号の説明】
【0034】
P 基材
N ブランク領域
L 金属リチウム層
PL (連続)リチウム箔
PNL 断続式リチウム箔
【発明の詳細な説明】
【0035】
本発明の目的、技術案及び利点をより明らかにするために、以下、附図及び実施例を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。なお、ここで記載される具体的な実施例は、本発明を説明するためだけに使用され、本発明を限定することを意図するものではない。さらに、以下に記載される本発明の各実施形態に係る技術的特徴は、互いに矛盾がない限り、互いに組み合わせることができる。
【0036】
図1は、本発明に係る圧力積層による連続的な超薄リチウム膜プリフォームのプロセス模式図である。
図1に示すように、金属リチウムストリップ材と担持ストリップ材を原料として用い、少なくとも金属リチウムストリップ材の巻き出しロール11と、巻き出された金属リチウムストリップと担持ストリップ材をそれぞれ支持する2つの巻き出し支持ロール12とを含む巻き出し装置で巻き出す。原料リチウムストリップと担持ストリップ材は、巻き出し支持ロール12を通過した後、圧延機20に入る。圧延機20は、一対の圧延ロール21と、圧延ロール21に設けられた接着防止コート層22を少なくとも含み、前記圧延機20の圧延圧力、及び圧延ロール21同士の間隙は、微調整されることができる。圧延ロール21上の接着防止コート層22の材質は、ポリエチレン、ポリホルムアルデヒド、有機ケイ素重合体、セラミック等から選択される1種以上である。圧力積層により、担持ストリップ材とリチウム材とを積層し、超薄リチウム膜プリフォーム製品を形成する。圧延機20の出口側には巻き取り装置が設けられ、前記巻き取り装置は、少なくとも支持ロール31、張力制御ロール32及び巻き取りロール33を含む。ここで、支持ロール31は、動力で駆動され、微小な引っ張り力で超薄リチウム膜プリフォームを引っ張って前進させることができる。前記張力制御ロール32は、上下に移動又は揺動することができ、プリフォームの張力を制御するだけではなく、張力制御ロール32の高さまたは揺動角度により巻き取りロール33の巻き取り速度を制御することができる。
【0037】
図2は、幅方向に断続的なリチウム膜の模式図であり、
図3は、長手方向に断続的なリチウム膜の模式図である。
【0038】
図4は、断続的なリチウム膜を生産する生産装置であり、前記断続的なリチウム膜の生産装置は、巻き出し装置100、掻き取り装置200及び巻き取り装置300を含み、巻き取り速度及び掻き取り装置の動作時間の間隔を制御する制御装置(図示せず)さらにを含む。ここで、巻き出し装置100は、巻き出し軸101、磁性粉ブレーキ102、巻き出し支持ロール104、巻き出し偏向修正検知センサ105及び巻き出し偏向修正装置103を含む。掻き取り装置200は、スクレーパ201、スクレーパ駆動装置202、スクレーパ底板203及び支持ロール(204、205)を含む。巻き取り装置300は、巻き取り軸301、巻き取りモーター302、巻き取り偏向修正装置303、巻き取り支持ロール304及び巻き取り偏向修正検知センサ305を含む。前記断続的なリチウム膜の生産装置には、さらに長さ測定センサ401を設置してもよい。
【0039】
巻き出し装置100における巻き出し軸101は、リチウム箔PLの巻き出しに用いられ、巻き出し軸101に接続された磁性粉ブレーキ102は、巻き出し張力の大きさを制御できる。巻き出し支持ロール104は、リチウム箔PLを一定の傾斜角で掻き取り装置200に入るように支持することに用いられるとともに、巻き出し偏向修正検知センサ105がリチウム箔PLに対して偏向修正検知を正確に行うことを容易化する。掻き取り装置200における支持ロール204/205は、それぞれ、他のプロセスから影響を受けないように、当該装置に出入りするストリップ材の傾斜角を一定に保証する。スクレーパ底板203は、リチウム箔PLを支持し、リチウム箔PLを平坦な状態に保持するために用いられる。スクレーパ駆動装置202は、スクレーパ201を駆動して上下方向の高速移動を実現するために用いられる。巻き取り装置300には、巻き取り軸301、巻き取りモーター302を含む。巻き取り軸301は、断続的なリチウム箔PNLの巻き取りに用いられ、巻き取りモーター302によって駆動される。
【0040】
具体的な使用方法とフローは以下の通りである。基材によって支持された電池グレードのリチウム箔PLを巻き出し軸101上に取り付けて固定する。リチウム箔PLを、巻き出し支持ロール104、巻き出し偏向修正検知センサ105、掻き取り装置の支持ロール204と205、巻き取り偏向修正検知センサ305、巻き取り支持ロール304の順に通過させた後、巻き取り軸301に巻き取って固定する。装置を起動し、巻き取り装置300における巻き取りモーター302を運転させ、巻き取り軸301を動かし、これにより、リチウム箔PLが巻き出し装置100から掻き取り装置200を通過して巻き取られる。巻き取り装置300による巻き取りの過程中、掻き取り装置200におけるスクレーパ駆動装置202を制御することにより、スクレーパ201を間欠的に上下運動させ、これにより、リチウム箔PL上の金属リチウム層の一部を掻き取り、断続式リチウム箔PNLを形成する。スクレーパの幅と個数を制御することで、幅方向の断続的なリチウム膜を生産する。
【0041】
図5は、担体材料に機能試薬をスプレーコートする模式図である。溶液を調合して溶液池1に加え、スプレーコートヘッド2によって担持層3上で前処理を行い、機能試薬を担持層上に付着させる。巻き出しロール4と巻き取りロール5によって担持層の巻き出し・巻き取りを行う。
【0042】
以下、前記のプロセス装置を採用し、実施例によって本発明をより具体的に説明する。以下の実施例に用いられる各種の製品の構造パラメータ、各種の反応物及びプロセス条件は、すべて典型的な例であるが、本発明者が多くの試験を行った結果、前文に列挙された他の異なる構造パラメータ、他のタイプの反応物及び他のプロセス条件も適用可能であり、本発明が主張する技術的効果を達成することができる。
【0043】
実施例1
リチウム含有量が99.95%で、厚さが20μmである金属リチウムストリップ材と、厚さが50μmであるポリエチレン膜(ポリエチレン膜の表面に、パーフルオロ-n-ペンタンと水素含有シリコーンオイルを含むブタノン溶液をポリエチレン膜の金属リチウム側の表面にスプレーコートして形成された機能化層を有する)を用い、巻き出し装置及び巻き取り装置によって補助し、冷間圧延方式を採用し、圧力を100Mpaに制御し、これにより、厚さが5μm(厚さ公差が±0.5μm)である滑らかな表面(担持層と分離した表面)を有する超薄リチウム膜積層体製品(
図6参照)を得た。表面エネルギースペクトルは、
図8に示すように、表面にSi、N、Fのピークが現れるので、人工SEI修飾の成功を示した。
【0044】
実施例2
リチウム含有量が99.95%で、厚さが20μmである金属リチウムストリップ材と、厚さが50μmであるポリエチレン膜(ポリエチレン膜の表面に、ポリリン酸のトルエン溶液をポリエチレン膜の金属リチウム側の表面にスプレーコートして形成された機能化層を有する)を用い、巻き出し装置及び巻き取り装置によって補助し、熱間圧延方式を採用し、温度80℃で、圧力を120Mpaに制御し、これにより、厚さが5μm(厚さ公差が±0.5μm)である滑らかな表面(担持層と分離した表面)を有する超薄リチウム膜積層体製品(
図7右、SEM図参照)を得た。
【0045】
対比例1
リチウム含有量が99.95%で、厚さが20μmである金属リチウムストリップ材と、厚さが50μmであるポリエチレン膜(ポリエチレン膜の表面に、水素含有シリコーンオイルのトルエン溶液をポリエチレン膜の金属リチウム側の表面にスプレーコートして形成された応力制御層を有する)を用い、巻き出し装置及び巻き取り装置によって補助し、熱間圧延方式を採用し、温度80℃で、圧力を120Mpaに制御し、厚さが5μm(厚さ公差が±0.5μm)である不平坦な表面(担持層と分離した表面)を有する超薄リチウム膜積層体製品(
図7左、SEM図参照)を得た。
【0046】
実施例3:電気的性能試験
実施例1で得られた5μmの超薄リチウム膜積層体製品を用い、直径が15.6cmであるポールピースに打ち抜いた。得られたポールピースと金属リチウム円盤により半電池を製作し、1M LiPF
6、EC/DMC/EMC(1/1/1)(杉杉電解液)を電解液として用いた。電池の放電データ(1C)に示されるように、表面が機能的に修飾された金属リチウムは、
図9の曲線aに示すように、200サイクルを経ても、89.0%の優れた容量保持率を有した。
【0047】
実施例4:電気的性能試験
実施例2で得られた5μmの超薄リチウム膜積層体製品を用い、直径が15.6cmであるポールピースに打ち抜いた。得られたポールピースと金属リチウム円盤により半電池を製作し、1M LiPF
6、EC/DMC/EMC(1/1/1)(杉杉電解液)を電解液として用いた。電池の放電データ(1C)に示されるように、表面が機能的に修飾された金属リチウムは、
図9の曲線bに示すように、200サイクルを経ても、88.1%の優れた容量保持率を有した。
【0048】
対比例2
対比例1で得られた5μmの超薄リチウム膜積層体製品を用い、直径が15.6cmであるポールピースに打ち抜いた。得られたポールピースと金属リチウム円盤により半電池を製作し、1M LiPF
6、EC/DMC/EMC(1/1/1)(杉杉電解液)を電解液として用いた。電池の放電データ(1C)に示されるように、表面が機能的に修飾されていない金属リチウムは、200サイクルを経た後、容量保持率が77%に過ぎず(
図9の曲線cに示すように)、修飾された金属リチウムよりも遥かに低かった。
【0049】
実施例4:黒鉛のリチウム補充試験
まず、黒鉛電極を製造する。詳細には、固形分を35%、粘度を2000~3000cpとするように、黒鉛粉(貝特瑞):アセチレンブラックAB(貝特瑞):カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC(上海海逸):スチレンブタジエンゴムSBR(上海海逸)=94:3:1:2を脱イオン水に分散させ、6時間攪拌した後、コーターにより10μm銅膜の片面にコーティングし、乾燥して50μmの黒鉛ポールピースを得た。その後、実施例2で得られた5μmの超薄リチウム膜積層体製品を用い、応力制御層の形成処理(接着力2N/mになるように制御する)を行い、15MPaの圧力でリチウム膜を黒鉛電極の表面に圧着して転移した。担持層を剥離し、得られたリチウム膜付き黒鉛電極を直径が15.6cmであるポールピースに打ち抜いた。得られたポールピースとリチウム膜により半電池を製作し、1M LiPF6、EC/DMC/EMC(1/1/1)(杉杉電解液)を電解液として用いた。プレリチウム化されていない半電池と比較すると、超薄リチウム積層体により黒鉛負極をプレリチウム化した半電池では、黒鉛負極の初回クーロン効率が91.8%から100%に向上し、初回クーロン効率が大幅に向上し、また、1500サイクルを経ても、容量が減衰しなかった。
【0050】
なお、以上の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨と原則の範囲内で行ういかなる修正、同等の置換、改良などは、すべて本発明の保護範囲内に含まれる。