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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】プリンタ校正モジュール
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240814BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240814BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240814BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B05C5/00 101
B05C11/10
B05C11/00
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023000035
(22)【出願日】2023-01-04
(62)【分割の表示】P 2021571054の分割
【原出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2023052181
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】62/855,675
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/948,534
(32)【優先日】2019-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513317345
【氏名又は名称】カティーバ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140833
【弁理士】
【氏名又は名称】岡東 保
(72)【発明者】
【氏名】イーシュワー チャンドラ ビドヤ サガル コッラタト
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ブフナー
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ソ-カン コー
(72)【発明者】
【氏名】マシュー バートン シェフィールド
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-046944(JP,A)
【文献】特表2017-525600(JP,A)
【文献】特開2019-000780(JP,A)
【文献】特表2017-529223(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017863(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01- 2/215
B05C 5/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタであって、前記インクジェットプリンタは、
基材支持部と、
前記基材支持部に隣接して配置されたテストモジュールであって、前記テストモジュールは、真空延長部および張力付加部を備える、テストモジュールと、
前記基材支持部を横切って配置された印刷アセンブリと、を備え、前記印刷アセンブリは、プリントヘッドと、前記真空延長部に対向するように配置可能な撮像装置と、を備え、
前記テストモジュールは、テスト基材を受け取るように構成され、前記張力付加部は、支持体に固定され、前記テスト基材に張力を維持するように前記支持体に沿ってスライド可能な接地部で前記支持体に接触する可撓ばねである、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記真空延長部は多孔質体を含む、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記真空延長部はさらに基材保持部を有し、前記多孔質体は前記基材保持部に埋め込まれる、請求項2記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記張力付加部は、一対の可撓ばねである、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記テストモジュールは、前記テスト基材に張力を加える張力ローラをさらに備える、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記テストモジュールは、前記テスト基材を収容した取り外し可能なテスト基材アセンブリを受けるように構成され、前記テストモジュールは、前記取り外し可能なテスト基材アセンブリを取り付けるために前記テスト基材を位置決めするリフタをさらに備える、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項7】
前記テスト基材アセンブリは、ロールツーロールアセンブリである、請求項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項8】
インクジェットプリンタであって、前記インクジェットプリンタは、
基材支持部と、
前記基材支持部に隣接して配置されたテストモジュールであって、前記テストモジュールは真空延長部を備える、テストモジュールと、
前記基材支持部を横切って配置された印刷アセンブリと、を備え、前記印刷アセンブリは、プリントヘッドと、前記真空延長部に対向するように配置可能な撮像装置と、を備え、
前記テストモジュールは、テスト基材が位置決めローラから張力ローラまで延長するときに前記テスト基材と係合する張力付加部をさらに備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項9】
前記張力付加部は、一対の可撓ばねを備える、請求項8に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項10】
各可撓ばねは、支持体に固定され、前記支持体に沿ってスライド可能な接地部で前記支持体に接触する、請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項11】
各可撓ばねは、支持体に取り付けられた、アーチを形成する金属片である、請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項12】
前記真空延長部は、多孔質体を備える、請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項13】
前記真空延長部は、前記真空延長部の真空面に真空を印加する内部プレナムを備える、請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項14】
前記真空延長部は、面取りされたエッジを有する、請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項15】
インクジェットプリンタであって、前記インクジェットプリンタは、
基材支持部と、
前記基材支持部に隣接して配置された、テスト基材を収容する取り外し可能なカセットを受け取るように構成される、テストモジュールであって、前記テストモジュールは、真空面を有する基材保持部と、前記テスト基材が前記テストモジュールの位置決めローラから前記テストモジュールの張力ローラまで延長するときに前記テスト基材に張力を維持する張力付加部と、を備えるテストモジュールと、
前記基材支持部を横切って配置された印刷アセンブリであって、前記印刷アセンブリは、プリントヘッドと、真空延長部に対向するように配置可能な撮像装置と、を備える印刷アセンブリと、を備えるインクジェットプリンタ。
【請求項16】
前記位置決めローラは、前記基材保持部に隣接し、前記張力ローラは、前記位置決めローラの下部に位置する、請求項15に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項17】
前記真空面は、複数のスロットおよび孔を有する、請求項15に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項18】
前記張力付加部は、一対の可撓ばねを備える、請求項17に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項19】
前記真空面は、多孔質体の表面である、請求項15に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2019年5月31日出願の米国仮特許出願第62/855,765号および2019年12月16日出願の米国仮特許出願第62/948,534号の利益を主張し、これらの出願を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本明細書に記載の実施形態は、概して産業用途のインクジェットプリンタに関する。具体的には、産業規模のインクジェットプリンタのテストモジュールの実施形態について本明細書に記載する。
【背景技術】
【0003】
大型の基材に極めて正確にパターンを印刷するには、大型のインクジェットプリンタが使用されることが多い。一例として、ディスプレイ画面の製造が挙げられる。機能的なディスプレイ画面を構成する各種機能性材料は、ガラス基材等の基材上に微細な液滴をインクジェット印刷し、これらの液滴を固化させて機能性材料とすることによって、基板上に堆積させることができる。液滴の直径はわずか10μm程度であるが、均一な厚さの層または部分層を形成するように堆積させる必要がある。そのため、液滴堆積の間隔は、場合によっては10μm程度の位置誤差も許容されないほど極めて正確でなければならない。印刷材料は、微細液滴を形成することが可能な1つ以上のノズルを有する印刷アセンブリから吐出される。このような用途における精度要件として、ノズルにより極めて正確かつ予測可能に液滴を吐出する必要がある。
【0004】
従来のプリンタでは、基材にテストパターンを印刷してプリントヘッドのテストを行う。例えばディスプレイ製品を作成するために使用される基材と同様の基材をプリンタに配置し、その基材上にテストパターンを印刷する。印刷されたテストパターンを撮影し、画像処理を行うことにより、印刷されたテストパターンの精度を評価する。この処理は、基材の設置や取り出しに時間がかかり、また、テスト基材を使用する必要があるため、費用がかかり得る。産業用インクジェットプリンタ向けの、より効率的なプリントヘッドテストモジュールが求められている。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示の上述の特徴を詳細に理解できるように、上記で概要を示した本開示について実施形態を参照しながらより具体的に説明し、その一部を添付の図面に例示する。しかし、添付の図面は例示的な実施形態を示すものにすぎず、したがってその範囲を限定するものではなく、他の同様に効果的な実施形態も可能であることが理解されるであろう。
【0006】
図1A】一実施形態に係るプリンタの等角図である。
【0007】
図1B】一実施形態に係るテストモジュールの拡大図である。
【0008】
図2図1Bのテストモジュールの分解図である。
【0009】
図3図1Bのテストモジュールの動作前の図である。
【0010】
図4図1Bのテストモジュールの動作時の図である。
【0011】
図5】一実施形態に係るテストカセットの部分切断図である。
【0012】
図6図5のテストカセットの一部を示す詳細図である。
【0013】
図7図5のテストカセットの側面図である。
【0014】
図8図1Bのテストモジュールの側面図である。
【0015】
図9A】一実施形態に係る基材保持部の上面図である。
【0016】
図9B図9Aの基材保持部の断面図である。
【0017】
理解しやすいように、図面間で共通する要素は可能な限り同一の参照符号で示す。一実施形態の要素および特徴について、追加の記載なしに都合の良いように他の実施形態に組み込むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1Aは、一実施形態に係るプリンタ100の等角図である。プリンタ100は、印刷のために基材が配置される支持面102を有する。支持面102には複数の孔104が設けられ、そこから気体が供給されて基材を支持する気体クッションが形成される。支持面102は3つの区画を有する。支持面102の第1端部103に位置する第1区画102Aは、印刷前の基材の載置領域である。支持面102の中央に位置する第2区画102Bは、印刷中に基材が配置される印刷ゾーンである。支持面102の第1端部103とは反対側の第2端部104に位置する第3区画102Cもやはり載置領域であるか、または印刷中に基材を操作するための支持領域である。基材は、第1区画102Aから第2区画102Bを経て第3区画102Cまで支持面102に沿って移動し、基材の各部分が印刷されるように配置される。
【0019】
第2区画102Bの孔104は、第1区画102Aおよび第3区画102Cの孔104とは異なってもよい。第2区画102Bの孔104のいくつかを用いて、支持面102上の基材の高さを制御するように気体クッションから気体を除去することができる。したがって、第2区画102Bの孔104は、第1区画102Aおよび第3区画102Cの孔104とは異なるピッチ、寸法、配置であってもよい。
【0020】
印刷アセンブリ106が、支持面102の中央上方にわたって配置される。印刷アセンブリ106は、2台のスタンド108と、2台のスタンド108に結合されたビーム110とを備える。ビーム110は、支持面102の第2区画102Bにわたって延びる。プリントヘッドアセンブリ112は、ビーム110に結合されている。プリントヘッドアセンブリ112は、ビーム110に結合されたキャリッジ114と、キャリッジ114に結合されたプリントヘッドハウジング116とを含む。プリントヘッドハウジング116は、第2区画102Bに少なくとも部分的に配置された基材上に印刷材料を吐出する1つ以上のプリントヘッド(図1Aでは図示せず)を含む。キャリッジ114は、ビーム110に沿って移動して、プリントヘッドハウジング116を支持面102に沿って第1の方向に配置する。基材は、第1の方向を横断する第2の方向に支持面102に沿って移動する。このようにして、基材を目標位置に配置し、その目標位置にプリントヘッドを近接させて印刷を行うことができる。
【0021】
支持面102、印刷アセンブリ106、およびテストモジュール118はすべて、重量のあるベース115に支持されている。ベース115は、印刷エラーを生じ得る振動を最小限に抑えて、プリンタの動作を確実にサポートする。プリントヘッドアセンブリ112は、ビーム110の端部まで移動することができる。ビーム110の端部付近では、スタンド108の一方に隣接したテストモジュール118が支持面102に隣接して配置されている。プリントヘッドアセンブリ112は、プリントヘッドをテストモジュール118付近に移動させてプリントノズルの動作をテストすることができる。
【0022】
図1Bは、テストモジュール118の拡大図である。テストモジュール118は、取付台120と、取付台120に結合されたテストカセット122とを有する。テストモジュール118は、テストモジュール118を第2の方向に沿って移動させることができるリニアアクチュエータ124に配置されている。テストカセット122は、評価用のテストパターンを繰り返し印刷することができるテスト基材を含む。以下でさらに説明するように、テストモジュール118は、プリントヘッドアセンブリのプリントヘッドがテスト基材上に印刷材料を吐出する間、第2の方向に沿って走査され、生産印刷条件をシミュレートする。
【0023】
図2は、テストモジュール118の分解図である。取付台120から取り外されたテストカセット122が示されている。テストカセット122は、取付台120のトレイ202に配置され取付台120に取り付けられる。トレイ202は、ラッチ204を含む。テストカセット122を取り付け、ラッチ204を固定するとテストカセット122が確実に保持される。トレイ202は、駆動装置208の下方に配置されたトレイアクチュエータ206によって動作位置に移動する。駆動装置208は、テストカセット122が取付台120に取り付けられると、テストカセット122を動作させる。トレイ202は、駆動装置208から延びる1本以上の摺動部210に載置される。摺動部210によって、トレイ202は駆動装置208付近の動作位置(テストカセット122を駆動装置208に結合可能)から、駆動装置208から離隔した装填位置まで直線運動することが可能である。トレイアクチュエータ206は、トレイ202をトレイアクチュエータ206に結合し、トレイ202を摺動部210に沿って移動させるロッド212を含む。
【0024】
テストカセット122は、テストカセット122を取付台120に取り付け、取り外すためのハンドル214を含む。テストカセット122は、テストカセット122と駆動装置208との協働により移動可能なテスト基材216を含む。テスト基材216は、プリントヘッドがアクセスできるようにテストカセット122の上部位置へと移動可能である。駆動装置208は、テストカセット122内の主軸を回転させてテスト基材216を移動させることができる2つの回転体218を有する。
【0025】
図3は、テストモジュール118の動作前の図である。テストカセット122がトレイ202上に配置され、ラッチ204が固定される。テストカセット122の上部位置に配置されたテスト基材216は、駆動装置208の真空延長部302と位置合わせされている。真空延長部302は、駆動装置208の上部位置からテストカセット122の方に延びる。テストカセット122の構造はこの図では見えないが、テストカセット122が駆動装置208に結合されると、テストカセット122はテスト基材216を持ち上げ、真空延長部302がテスト基材216の下方に延びることが可能となる。
【0026】
図4は、テストモジュール118の動作時の図である。テストカセット122は、駆動装置208付近の動作位置に移動する。真空延長部302は、テストカセット122のテスト基材216の下方に延びる。真空延長部302は、テスト基材216の下方を減圧する真空面402を含み、したがってテスト印刷中にテスト基材216が極めて平坦になる。非平坦なテスト基材216に印刷材料が吐出された場合、テストパターンが予想外に歪んでしまい、テストが失敗するおそれがある。テスト印刷の前に、真空源が真空面402に結合され、テスト基材216と真空面402との間が減圧される。これにより、テスト基材216と真空面402との間の間隙が5μm以下で、テスト基材216が真空面402上に確実に保持される。真空面402に固定されたテスト基材216の印刷面の平面度のずれは、約5μm未満である。
【0027】
真空面は、サブミクロンの孔とそこを通過する通路を有する多孔質体の表面とすることができ、この多孔質体を介して真空引きを行う。一例では、多孔質体は多孔質炭素体、例えば多孔質グラファイトであり、多孔率10~15%、孔径サブミクロン、平坦度2ミクロンの真空面を有する。多孔率は、これより高くてもよいし低くてもよい。多孔率が高いほど、真空面における真空引きの効果が高くなる。多孔率が10~15%の上記実施形態の場合、多孔質体を通る気体の流量は、多孔質体通過時の圧力差が0.09MPaの場合、0.2~0.3L/min、例えば0.25L/minとなる。
【0028】
多孔率が高いほど、真空面にテスト基材をそれほど近接させなくても、より確実にチャッキングを行うことができる。多孔率が低く真空引きが弱いと、チャッキング力が低下する。この場合、テスト基材の張力を高めて、テスト基材を真空面に近接して配置すると有効になる。
【0029】
ある例では、真空延長部302全体を多孔質体とすることができ、別の例では、多孔質体を真空延長部302の一部材とすることもできる。例えば、真空延長部302は保持部を備え、多孔質体を保持部に配置することができる。保持部を使用すると、真空源を真空延長部302に接続しやすくなる。保持部は、多孔質体の長手軸の両端に、多孔質体を保持する2つの部材を有することができる。あるいは、保持部は長方形の部材で、その主面に多孔質体を挿入するための凹部が設けられてもよい。多孔質体は、保持部に埋め込むことができる。多孔質体は、保持部の内部に設けることができる。例えば、保持部は、複数の孔を有する真空面と、多孔質体を保持する内部空洞とを有することができる。保持部を特徴とする実施形態では、保持部は任意の適切な材料で作成することができる。一般的に、保持部は、真空源との確実な接続と、テスト基材の真空面における確実な支持とをサポートするために、構造的に強度のある材料で作成される。材料の例として、アルミニウム、セラミック、ステンレス等が挙げられる。
【0030】
また、多孔質体の真空面が保持部よりも例えば0.1mmから2mm程度上方に延びるように多孔質体を保持部に配置することで、テスト基材を真空面に近接して配置することができる。また、多孔質体の幅を増大させて、真空面上のテスト基材の経路が湾曲することを低減させることも一助となり得る。
【0031】
テスト基材216は、長辺寸法と短辺寸法を有する。長辺寸法は、通常はテスト基材216がカセット内に延びて、複数のローラおよび主軸(図示せず)と係合するのに十分な長さである。短辺寸法は、テスト基材216上にテストパターンを印刷し、評価しやすいように選択された寸法である。真空面402は、テスト基材216の短辺寸法と同程度の長辺寸法を有する。真空面402の短辺寸法は、テスト印刷時に印刷面が十分平坦となるように選択される。真空延長部302は、この構成では、テスト基材216下方のテストカセット122の上部にわたりフォークアクチュエータ404まで延びる。フォークアクチュエータ404は、テストカセット122の第1側面の上部付近に取り付けられる。一対のフォーク406が、フォークアクチュエータ404から駆動装置208に向かって延びる。テスト基材216は、フォーク406を横切って延びる。第1フォークアクチュエータ404は、真空延長部302の第1側面408に沿って延び、第2フォークアクチュエータ404は、真空延長部302の第2側面410に沿って延びる。フォーク406およびフォークアクチュエータ404によってリフタが構成される。フォークアクチュエータ404は、上方に延びるように動作可能であり、フォーク406およびテスト基材216を持ち上げて、真空延長部302をテスト基材216下方のテストカセット122に挿入しやすくする。テストカセット122の取り付け後、フォークアクチュエータ404を動作させてフォーク406を下降させ、動作中にフォーク406がテスト基材216に接触しないようにすることができる。フォークアクチュエータ404の動作は、手動でもよいし電動でもよい。
【0032】
図5は、一実施形態に係るテストカセット122の部分切断図である。フォークアクチュエータ404およびフォーク406が、テストカセット122の上部に見えている。テストカセット122の内部には、巻出し主軸502と巻取り主軸504の2つの主軸がある。巻出し主軸502が回転すると、テスト基材216がフォーク406の方に送り出される。第1位置決めローラ506がフォークアクチュエータ404の第1フォーク406に沿って配置され、第2位置決めローラ508がフォークアクチュエータ404の第2フォーク406に沿って配置される。位置決めローラ506および508は、テスト基材216をフォーク406に対して後述のように位置決めする。一対の張力付加部510が、第2位置決めローラ508下の支持部512に配置されている。張力ローラ514によってテスト基材216に引張力を加わると、テスト基材216は第2位置決めローラ508および張力ローラ514の配置によって、後述のように張力付加部510に対して付勢される。送りローラ516が張力ローラ514からテスト基材216を受け、巻取り主軸504が使用後のテスト基材216を巻き取る。テストカセット122は、大部分が筐体518によって収容されているが、筐体518の上部に設けられた開口520を介してテスト基材216が筐体から露出し、フォーク406および真空延長部302と係合することができる。
【0033】
図6は、位置決めローラ506、508をフォーク406とともに示す詳細図である。テスト基材216は、この図では筐体518の開口520から延出している。この図では、フォークアクチュエータ404が延びてテスト基材216を持ち上げている。したがって、テスト基材216は真空延長部302の上方に持ち上げられ、真空延長部302はテスト基材216下方のテストカセット122内に延びることができる。各フォーク406は、平坦面602と、平坦面602とは反対側の球面604とを有する。球面604は、テスト基材216に接触する滑らかな持上げ面となっている。動作時にフォーク406を位置決めローラ506および508の方に下降させる際に、平坦面602によって、フォーク406が位置決めローラ506および508に接触せずにすむ。
【0034】
図7は、テストの実施を例示した、プリントヘッドハウジング116に近接したテストカセット122の側面図である。フォーク406が下降した状態のテスト基材216の動作時の構成が示されている。テスト基材216は、張力付加部510に接触しながら、第2位置決めローラ508から張力ローラ514まで延びている。本明細書では、張力付加部510は可撓ばねであり、すなわち金属片が固定具702によって支持部512に取り付けられ、この金属片は支持部512から離れて延び、湾曲して支持部512の方に戻りアーチ704を形成している。この金属片は湾曲して支持部512の方に戻り、張力付加部510が撓むつれて支持部512に沿って摺動可能な接地部706で支持部512と接触している。張力ローラ514によってテスト基材216に力が加わると、張力付加部510に圧縮力が加わり、張力付加部510は圧縮力の少なくとも一部を吸収して撓む。したがって、張力付加部510は、真空面402において真空が解除されたときに、テスト基材216の張力を維持する。テスト基材216の張力によって、テスト基材216と真空面402とが近接して保持され、したがって真空面402において真空が引かれると、テスト基材216が真空面402にチャッキングされることになる。この図では、フォーク406が格納動作位置に示されている。この位置では、フォークの平坦面602によって、フォーク406と位置決めローラ506および508との間に間隙が設けられている。
【0035】
プリントヘッドハウジング116は、カメラ等の撮像装置708を含む。撮像装置708は、テスト基材216に印刷されたテストパターンの画像を撮像するように、テスト基材216上方の、真空面402上方に位置決め可能である。プリントヘッドもやはりプリントヘッドハウジング116内に配置されるが、この図では簡略化のために省略している。撮像装置708は、この図ではテスト基材216の動作面よりも小さい撮像開口を有するものとして示されている。動作時には、テストパターン全体を撮像できるように、テストモジュール118と撮像装置708とを相対的に移動して位置決めし、複数の画像を撮像することができる。
【0036】
図7に示すように、撮像装置708は、テスト基材216からの反射光と、真空面402からの反射光とを集光する。テスト基材216に印刷されたドットは、ドットの特性を求めるために分析可能な光パターンを生成する。背景の反射光は、撮像装置708によるドットの解像度が最大になるように選択することができる。例えば、ドットの解像度が最大になるような真空面の色を選ぶことで、テストモジュールはその性能を最大にすることができる。上述のような炭素系の真空面は比較的黒っぽく、テスト基材に印刷された明色の素材を撮像するのに最適といえる。暗色の素材を撮影する場合は、比較的白っぽい真空面が有効である。このような色は、多孔質性のセラミック真空面を使用することで可能となり得る。また、ドット解像度を最大にするには、未加工のアルミニウム等の反射面が有効な場合もある。
【0037】
図8は、テストモジュール118の動作時の構成を示す側面図である。取付台120に結合されたテストカセット122が示されている。取付台120は、駆動装置208に動作可能に近接して配置されている。テストカセット122は、テストカセット122から駆動装置208の方に延び、駆動装置208の回転体218と磁気的に結合する2つのカセット回転体802を有する。駆動回転体218とカセット回転体802との間には間隙804が保持される。カセット回転体802はそれぞれ、筐体518を介して、巻出し主軸502および巻取り主軸504に結合される。動作時には、駆動回転体218が回転し、カセット回転体802との磁気結合により、カセット回転体802が回転し、その結果巻出し主軸502および巻取り主軸504が回転する。テスト基材216にテストパターンが印刷されると、テストパターンが撮像され、真空面402において真空が解除され、その後主軸502および504を回転させて、テスト基材216を別の「フレーム」すなわちテスト位置に進める。テスト基材216の新たな白紙部分を真空面402上に配置し、真空を引いてテスト基材216を固定して次のテストを行う。テスト基材216が最後のテスト位置まで使用されると、テストカセット122を取り外し、別の新しいテストカセット216を取り付けることができる。
【0038】
テストカセット216の取り付けおよび取り外しの際には、トレイアクチュエータ206を動作させて、トレイ202を装填位置まで延ばす。トレイアクチュエータ206は、回転体802と218との磁気結合に勝る十分な動力を有し、したがってテストカセット122をトレイ206から取り外すことができる。
【0039】
テスト基材216は、主軸やローラに巻き付けることができる可撓性材料である。一般的には、プラスチックフィルム材料等が使用される。可撓性材料は、撮像を最適化するために、テスト基材216上に堆積された印刷材料の光学的特性と適切なコントラストが得られるように透明または半透明であってもよい。
【0040】
図9Aは、一実施形態に係る基材保持部900の上面図である。基材保持部900は、本明細書に記載の実施形態のテスト基材とともに使用可能である。図9Bは、図9Aの基材保持部900の断面図である。基材保持部900は、図3の真空延長部302を実現することができる。基材保持部900は、その表面904に設けられた開口902を通って気体が流れる真空保持部である。基材保持部900は内部プレナム906を有する。内部プレナム906は、表面904から内部プレナム906へと基材保持部900を通って流れ、ポート908を介して外に出る流体の流れをサポートする。真空源(図示せず)をポート908に流体結合して、表面904と、表面904上または上方に配置された基材との間の気体を排気して、基材を確実に支持することができる。表面904は、この図では、基材保持部900の第1端部905から、第1端部905とは反対側の基材保持部900の第2端部907まで延在している。表面904は、基材保持部900の一部を覆って延在する。斜面901が、表面904と基材保持部900の側面903とを接続し、したがって第1端部905と第2端部907とを接続している。
【0041】
表面904には、表面904から内部プレナム906への流体の流れを可能とする複数の開口902が設けられている。開口902は、複数のスロット910と孔912を含む。スロット910は表面904の周縁部に配置され、孔912は表面904の中央領域に配置される。孔912は2列に配置され、各列は基材保持部900の長手軸の方向に沿って延び、これらの2列は長手軸方向の各辺からそれぞれ等距離にある。表面904は、2つの長辺916と2つの短辺918を持つ、略長方形の形状である。スロット910は、表面904の長辺916に平行に延びる複数の長スロット914と、表面904の短辺918に平行に延びる複数の短スロット920とを含む。スロット910は、真空によって基材を確実に保持できる表面904のうちの真空領域922の境界を概ね定めている。真空領域922は、基材保持部900の第1端部905から第2端部907まで表面904に沿って部分的に延在し、第2端部よりも第1端部905に近い位置にある。長スロット914は、表面904の長辺916に隣接して配置されている。第1短スロット920が、短辺918付近に配置されている。第2短スロット920が、第1短スロット920の反対側に配置され、短スロット920および長スロット914によって真空領域922の境界が画定されている。表面904は、第2短スロット920を越えて表面904の取付領域924まで延在している。第2短スロット920と第2端部907との間に位置する取付領域924には、基材保持部900をテストモジュール118等の処理装置に取り付けるための2つの孔926が設けられている。開口902は、基材と表面904との間の吸引力が均一となるように、したがって真空領域922において流体の流れが均一となるように、表面904にわたり対称に配置されている。
【0042】
基材保持部900は、各開口902について、開口902と内部プレナム906との流体結合を実現する通路930を有する。各通路930は、第1の直径を有する第1区画932と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する第2区画934とを有する。各通路930の第1区画932は、開口902から内部プレナム906に向かって延在し、各通路930の第2区画934は、内部プレナム906から開口902に向かって延在する。各通路の第1区画932と第2区画934とは、移行部936で接続する。この図では、すべての通路930の第1区画932は同じ長さであり、通路930の第2区画934も同じ長さであるが、表面904における流体の流れのパターンに作用するよう必要に応じて長さを変えることができる。
【0043】
基材を表面904に付着させる前は、基材は表面904の上方で湾曲する。基材と表面904との間の隙間が大きいほど、真空によって基材を表面904に付着させるためにより多くの流体の流れが必要となる。スロット910は、ベルヌーイの原理に従って、基材を表面904の方に引き寄せる高流量開口として機能する。スロット910は、基材を付着ゾーン内に引き付ける。付着ゾーンでは、孔912からの流れによって、基材を表面904に付着させるように付着力を最終の付着力まで増大させることができる。開口のパターンが対称であるので、付着前に基材を表面904に対して確実に位置決めする流れのパターンを対称にすることができる。この場合、スロット910は、孔912の直径よりも広幅であり、本明細書ではすべて同じ寸法である。また、スロット910の総面積は、孔912の総面積よりも大きく、したがって孔912よりもスロット910の方が流れの断面が大きい。これには、基材を表面904の方へと引き付ける均一なチャッキング力が、真空領域922の周縁領域で幾分大きくなるという効果がある。
【0044】
本発明の実施形態に関して上述したが、本開示の他の実施形態およびさらなる実施形態をその基本範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は以下の特許請求の範囲によって規定される。

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B