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特許7537811カリプラジン医薬組成物、製造方法及び応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】カリプラジン医薬組成物、製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/495 20060101AFI20240814BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240814BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240814BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K31/495
A61K9/10
A61K9/14
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/28
A61K47/32
A61K47/38
A61P25/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023513714
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 CN2021114754
(87)【国際公開番号】W WO2022042642
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】202010870701.6
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010869671.7
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110324874.2
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110330670.X
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521504049
【氏名又は名称】上海雲晟研新生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】応述歓
(72)【発明者】
【氏名】陳志祥
(72)【発明者】
【氏名】張賢
(72)【発明者】
【氏名】朱涛
(72)【発明者】
【氏名】王▲ティン▼▲ティン▼
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108261394(CN,A)
【文献】特表2010-526832(JP,A)
【文献】特表2019-515024(JP,A)
【文献】特表2007-501235(JP,A)
【文献】特表2012-530759(JP,A)
【文献】特表2001-522890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリプラジンパモ酸塩の固体粒子を含み、そのうち、前記カリプラジンパモ酸塩の固体粒子の粒径Dv(10)≦30ミクロン、Dv(50)≦50ミクロン且つDv(90)≦100ミクロンであり;
前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形A、F、D、B、C、E、G、Iから選ばれる1つ又は複数であり、そのうち:
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.8°±0.2°、13.1°±0.2°、18.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.0°±0.2°、26.1°±0.2°である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.9°±0.2°、13.6°±0.2°、19.2°±0.2°、21.0°±0.2°、24.0°±0.2°、26.3°±0.2°である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が9.6°±0.2°、11.9°±0.2°、16.6°±0.2°、20.4°±0.2°、24.5°±0.2°、25.3°±0.2°である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が5.2°±0.2°、10.5°±0.2°、14.0°±0.2°、14.4°±0.2°、17.5°±0.2°、21.3°±0.2°、21.9°±0.2°、22.9°±0.2°、26.2°±0.2°である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が8.6°±0.2°、13.0°±0.2°、16.8°±0.2°、17.3°±0.2°、18.2°±0.2°、18.5°±0.2°、19.8°±0.2°、22.1°±0.2°、23.5°±0.2°である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が11.0°±0.2°、12.8°±0.2°、13.8°±0.2°、15.5°±0.2°、15.9°±0.2°、17.9°±0.2°、18.4°±0.2°、20.7°±0.2°、23.4°±0.2°である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、2θ値が8.7°±0.2°、10.0°±0.2°、13.6°±0.2°、14.3°±0.2°、17.5°±0.2°、18.0°±0.2°、20.3°±0.2°、23.2°±0.2°、25.1°±0.2°である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは、2θ値が10.0°±0.2°、14.9°±0.2°、16.3°±0.2°、17.7°±0.2°、18.5°±0.2°、19.0°±0.2°、21.1°±0.2°、22.1°±0.2°、24.5°±0.2°である所に特徴的なピークを有することを特徴とする、カリプラジン医薬組成物。
【請求項2】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.8°±0.2°、9.7°±0.2°、12.3°±0.2°、13.1°±0.2°、18.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.0°±0.2°、26.1°±0.2°である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.9°±0.2°、12.8°±0.2°、13.6°±0.2°、19.2°±0.2°、20.3°±0.2°、21.0°±0.2°、24.0°±0.2°、26.3°±0.2°である所に特徴的なピークを有し;
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が9.6°±0.2°、11.9°±0.2°、15.2°±0.2°、16.6°±0.2°、20.4°±0.2°、20.7°±0.2°、24.5°±0.2°、25.3°±0.2°である所に特徴的なピークを有する;
ことを特徴とする、請求項1に記載のカリプラジン医薬組成物。
【請求項3】
前記組成物は注射製剤であり;
記組成物は補助材料を更に含み、前記補助材料は懸濁化剤、湿潤剤、浸透圧調整剤、溶媒、安定剤、緩衝剤及び界面活性剤から選ばれる1つ又は複数を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のカリプラジン医薬組成物。
【請求項4】
前記懸濁化剤の濃度範囲は0~10mg/mLであり;
記懸濁化剤はカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1つ又は複数であることを特徴とする、請求項3に記載のカリプラジン医薬組成物。
【請求項5】
前記懸濁化剤の濃度範囲は3.5mg/mL~5mg/mLであり;
前記懸濁化剤はカルボキシメチルセルロースナトリウムであることを特徴とする、請求項3又は4に記載のカリプラジン医薬組成物。
【請求項6】
前記湿潤剤の濃度範囲は1mg/mL~10mg/mLであり;
記湿潤剤はTween20、Tween80、ポロキサマー188から選ばれる1つ又は複数であることを特徴とする、請求項3に記載のカリプラジン医薬組成物。
【請求項7】
前記湿潤剤の濃度範囲は1mg/mL~5mg/mLであり;
前記湿潤剤はTween20であることを特徴とする、請求項3又は6に記載のカリプラジン医薬組成物。
【請求項8】
記浸透圧調整剤の濃度範囲は20~30mg/mLであり;
及び/又は、
前記浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール及びスクロースから選ばれる1つ又は複数であり;
及び/又は、
前記安定剤の濃度範囲は0~30mg/mLであり;
及び/又は、
前記安定剤はPVP K12であり;
及び/又は、
前記緩衝剤は、リン酸、リン酸塩、枸櫞酸、枸櫞酸ナトリウム、塩酸及び水酸化ナトリウムから選ばれる1つ又は複数であり;
及び/又は、
前記界面活性剤はデオキシコール酸ナトリウムであり;
及び/又は、
前記溶媒は注射用水であることを特徴とする、請求項3に記載のカリプラジン医薬組成物。
【請求項9】
前記安定剤の濃度範囲は1mg/mL~10mg/mLであり;
及び/又は、
前記浸透圧調整剤の濃度範囲は23mg/mL~26mg/mLであることを特徴とする、請求項3又は8に記載のカリプラジン医薬組成物。
【請求項10】
前記組成物は、
(a)カリプラジンパモ酸塩;
(b)カルボキシメチルセルロースナトリウム;
(c)Tween20;
(d)リン酸水素二ナトリウム;
(e)リン酸二水素ナトリウム;及び
(f)マンニトール;
を含み、且つ、必要に応じて、前記カリプラジン組成物は水酸化ナトリウム又は塩酸を含ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のカリプラジン医薬組成物。
【請求項11】
前記カリプラジンパモ酸塩の固体粒子の濃度は15mg/mL以上であることを特徴とする、請求項10に記載のカリプラジン医薬組成物。
【請求項12】
(1)湿潤剤、緩衝剤、浸透圧調整剤を注射用水に順次に溶解る;
(2)カリプラジンパモ酸塩の固体粒子を加えて、粗大粒子の懸濁水溶液を得る;
(3)前記粗大粒子の懸濁水溶液をボールミルを用いて粉砕し、懸濁液を得る;
(4)前記懸濁液に一定濃度の懸濁化剤を加えて均一に混合し、必要に応じて水酸化ナトリウム又は塩酸を用いてpHを4.0~9.0に調整し、定容して懸濁水溶液を得るというステップを含む、請求項1~11の何れか1項に記載のカリプラジン医薬組成物の製造方法。
【請求項13】
精神疾患、双極性障害及び/又は急性躁病を治療及び/又は予防するための薬物として使用するための、請求項1~11の何れか1項に記載のカリプラジン医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2020年8月26日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202010870701.6である中国発明特許出願、2020年8月26日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202010869671.7である中国発明特許出願、2021年3月26日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202110324874.2である中国発明特許出願、及び2021年3月26日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202110330670.Xである中国発明特許出願という先行出願の優先権を主張する。上記の先行出願は、その全体が引用により本願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は化学医薬分野に関し、特にカリプラジンを含む医薬組成物、製造方法及び応用に関する。
【0003】
〔背景技術〕
カリプラジン塩酸塩(化学構造は式Iに示される通りである)は、新しいタイプの非定型抗精神病薬であり、ドーパミンD3、ドーパミンD2、及び5-セロトニン2B受容体に拮抗作用がある。統合失調症及び双極I型障害の治療に使用できる。現在市販されているカリプラジン塩酸塩カプセルは経口製剤であり、血中薬物濃度を維持するために毎日投与する必要があるが、頻繁に投与するため、患者の服用コンプライアンスが悪いという問題がある。
【0004】
【化1】
【0005】
特許文献CN108261394Aは、少なくとも1週間以上の持続放出を得ることができる、懸濁水溶液と凍結乾燥製剤の形態を含むカリプラジン塩酸塩注射製剤を開示する。しかし、本発明者は研究の過程で、カリプラジン塩酸塩の水溶液の安定性が理想的ではなく、弱酸性からアルカリ性条件下で解離が起こるため、懸濁水溶液中で解離するリスクがあり、製品の性質や品質が変化しやすく、薬物の溶解と吸収の変化につながり、薬物の薬効と患者の安全性に影響を与えることを見出した。そして、特許文献CN108261394Aに開示されたカリプラジン塩酸塩注射製剤のカリプラジン濃度、投与濃度及び動物pK実験における血中薬物濃度が高すぎ、先行研究データではカリプラジンの除去が種属間で大きく異なること(ラットで約2~4時間、ヒトで3~9日間)に合わせて、血中薬物濃度が高すぎると、毒性と副作用が大きくなり、人体に薬物が過剰に蓄積する可能性がある。
【0006】
性能が改善されたカリプラジン難溶性塩注射製剤という報告は今のところ見当たらない。
【0007】
〔発明の概要〕
従来技術における問題を改善するために、本発明は、カリプラジン固体粒子を含むカリプラジン医薬組成物を提供し、前記カリプラジン固体粒子の粒径Dv(10)≦30ミクロン、Dv(50)≦50ミクロン且つDv(90)≦100ミクロン、好ましくは≦10ミクロンである。
【0008】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジン固体粒子は、カリプラジン、カリプラジンの薬学的に許容可能な塩及びそれらの溶媒和物の固体粒子から選ばれてもよい。
【0009】
本発明の実施形態によれば、前記溶媒和物は水和物から選ばれてもよい。
【0010】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンの薬学的に許容可能な塩は、カリプラジンパモ酸塩を含むが、これに限定されない。
【0011】
本発明の実施形態によれば、前記パモ酸(Pamoic acid)はエンボン酸とも呼ばれ、CAS登録番号は130-85-8である。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジン固体粒子は、結晶又は非晶質の形態であり得る。
【0013】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aである。
【0014】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が13.1°±0.2°、18.7°±0.2°、21.0°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0015】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.8°±0.2°、13.1°±0.2°、18.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.0°±0.2°、26.1°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0016】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.8°±0.2°、9.7°±0.2°、12.3°±0.2°、13.1°±0.2°、18.7°±0.2°、20.1°±0.2°、21.0°±0.2°、26.1°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0017】
より更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.8°±0.2°、8.2°±0.2°、9.7°±0.2°、11.6°±0.2°、12.3°±0.2°、13.1°±0.2°、14.7°±0.2°、15.1°±0.2°、16.6°±0.2°、18.7°±0.2°、20.1°±0.2°、20.7°±0.2°、21.0°±0.2°、21.6°±0.2°、22.1°±0.2°、24.1°±0.2°、26.1°±0.2°等である所に吸収ピークを有する。
【0018】
より更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのX線粉末回折パターンは基本的に図2に示される。
【0019】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの示差走査熱量分析スペクトルは基本的に図3に示され、約166.5℃の融点を示す。
【0020】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの熱重量分析スペクトルは基本的に図4に示され、115℃の前に2段階の重量損失を示し、これは表面溶媒とチャンネル水の損失によるものである。115~165℃で約1.1%の重量損失があり、これは結晶水の損失によるものである。
【0021】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形AのNMRスペクトルは基本的に図5に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示す。
【0022】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの製造方法は以下の通りである:
(1)カリプラジンパモ酸塩を溶媒に添加し、撹拌して結晶化させ、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Aを得る;
前記溶媒はメタノールである;
(2)カリプラジンパモ酸塩を良溶媒に溶解し、貧溶媒を徐々に加え、撹拌して結晶化させ、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Aを得る。
【0023】
前記良溶媒はジブチルケトンである;
前記貧溶媒はn-ヘプタンである。
【0024】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Fである。
【0025】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.9°±0.2°、19.2°±0.2°、21.0°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0026】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.9°±0.2°、13.6°±0.2°、19.2°±0.2°、21.0°±0.2°、24.0°±0.2°、26.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0027】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.9°±0.2°、12.8°±0.2°、13.6°±0.2°、19.2°±0.2°、20.3°±0.2°、21.0°±0.2°、24.0°±0.2°、26.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0028】
より更に、本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは、2θ値が4.9°±0.2°、8.4°±0.2°、9.7°±0.2°、10.4°±0.2°、11.6°±0.2°、12.8°±0.2°、13.3°±0.2°、13.6°±0.2°、15.0°±0.2°、15.4°±0.2°、16.8°±0.2°、17.0°±0.2°、18.5°±0.2°、18.8°±0.2°、19.2°±0.2°、19.5°±0.2°、20.3°±0.2°、21.0°±0.2°、21.9°±0.2°、22.2°±0.2°、22.5°±0.2°、24.0°±0.2°、25.1°±0.2°、25.7°±0.2°、26.3°±0.2°、26.8°±0.2°、28.8°±0.2°、29.6°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0029】
より更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのX線粉末回折パターンは基本的に図6に示される。
【0030】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの示差走査熱量分析スペクトルは基本的に図7に示され、約166.6℃の融点を示す。
【0031】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの熱重量分析スペクトルは基本的に図8に示され、115℃の前に約1.3%の重量損失があることを示し、これはチャンネル水の損失によるものである。115~175℃で約1.3%の重量損失があり、これは結晶水の損失によるものである。
【0032】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形FのNMRスペクトルは基本的に図9に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示す。
【0033】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの製造方法は以下の通りである:
カリプラジンパモ酸塩結晶形Aを溶媒中でスラリーに形成し、撹拌して結晶化させ、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Fを得る;
前記溶媒は酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル-t-ブチルエーテル又はn-ヘプタンである。
【0034】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Dである。
【0035】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が9.6°±0.2°、11.9°±0.2°、20.4°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0036】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が9.6°±0.2°、11.9°±0.2°、16.6°±0.2°、20.4°±0.2°、24.5°±0.2°、25.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0037】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が9.6°±0.2°、11.9°±0.2°、15.2°±0.2°、16.6°±0.2°、20.4°±0.2°、20.7°±0.2°、24.5°±0.2°、25.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0038】
より更に、本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは、2θ値が9.6°±0.2°、10.1°±0.2°、10.5±0.2°、11.9°±0.2°、13.2°±0.2°、14.5°±0.2°、15.2°±0.2°、16.6°±0.2°、20.4°±0.2°、20.7°±0.2°、21.1°±0.2°、21.9°±0.2°、23.5°±0.2°、24.5°±0.2°、25.3°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0039】
より更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのX線粉末回折パターンは基本的に図10に示される。
【0040】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの示差走査熱量分析スペクトルは基本的に図11に示され、約164.6℃の融点を示す。
【0041】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの熱重量分析スペクトルは基本的に図12に示され、190℃の前に約4%の重量損失があることを示し、これは水とエタノールの損失によるものである。
【0042】
前記カリプラジンパモ酸塩結晶形DのNMRスペクトルは基本的に図13に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示す。
【0043】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの製造方法は以下の通りである:
カリプラジンパモ酸塩をエタノールで撹拌して結晶化させ、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形Dを得る。
【0044】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Bである。
【0045】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは、2θ値が5.2°±0.2°、10.5°±0.2°、14.0°±0.2°、14.4°±0.2°、17.5°±0.2°、21.3°±0.2°、21.9°±0.2°、22.9°±0.2°、26.2°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0046】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形BのX線粉末回折パターンは基本的に図14に示される。
【0047】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Cである。
【0048】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは、2θ値が8.6°±0.2°、13.0°±0.2°、16.8°±0.2°、17.3°±0.2°、18.2°±0.2°、18.5°±0.2°、19.8°±0.2°、22.1°±0.2°、23.5°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0049】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形CのX線粉末回折パターンは基本的に図15に示される。
【0050】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Eである。
【0051】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは、2θ値が11.0°±0.2°、12.8°±0.2°、13.8°±0.2°、15.5°±0.2°、15.9°±0.2°、17.9°±0.2°、18.4°±0.2°、20.7°±0.2°、23.4°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0052】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形EのX線粉末回折パターンは基本的に図16に示される。
【0053】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Gである。
【0054】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは、2θ値が8.7°±0.2°、10.0°±0.2°、13.6°±0.2°、14.3°±0.2°、17.5°±0.2°、18.0°±0.2°、20.3°±0.2°、23.2°±0.2°、25.1°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0055】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形GのX線粉末回折パターンは基本的に図17に示される。
【0056】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩は、カリプラジンパモ酸塩結晶形Iである。
【0057】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは、2θ値が10.0°±0.2°、14.9°±0.2°、16.3°±0.2°、17.7°±0.2°、18.5°±0.2°、19.0°±0.2°、21.1°±0.2°、22.1°±0.2°、24.5°±0.2°等である所に特徴的なピークを有する。
【0058】
更に、前記カリプラジンパモ酸塩結晶形IのX線粉末回折パターンは基本的に図18に示される。
【0059】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジン医薬組成物は補助材料を更に含んでもよく、前記補助材料は懸濁化剤、湿潤剤、浸透圧調整剤、溶媒、安定剤、緩衝剤及び界面活性剤から選ばれる1つ又は複数であってもよい。
【0060】
本発明の実施形態によれば、前記懸濁化剤の濃度範囲は0~10 mg/mLであり、好ましくは3.5 mg/mL~5 mg/mLであり、例えば3.5 mg/mL、4.0 mg/mL、4.5 mg/mL又は5.0 mg/mLである。
【0061】
本発明の実施形態によれば、前記懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウムである。
【0062】
本発明の実施形態によれば、前記湿潤剤の濃度範囲は1 mg/mL~10 mg/mLであり、好ましくは1 mg/mL~5 mg/mLであり、例えば1 mg/mL、1.5 mg/mL、2.0 mg/mL、2.5 mg/mL、3.0 mg/mL、3.5 mg/mL、4.0 mg/mL、4.5 mg/mL又は5.0 mg/mLである。
【0063】
本発明の実施形態によれば、前記湿潤剤は、Tween20、Tween80及びポロキサマー188から選ばれる1つ又は複数であり、好ましくはTween20である。
【0064】
本発明の実施形態によれば、前記浸透圧調整剤の濃度範囲は20~30 mg/mLであり、好ましくは23 mg/mL~26 mg/mLであり、例えば23 mg/mL、24.7 mg/mL又は26 mg/mLである。
【0065】
本発明の実施形態によれば、前記浸透圧調整剤は、塩化ナトリウム、マンニトール及びスクロースから選ばれる1つ又は複数である。
【0066】
本発明の実施形態によれば、前記安定剤の濃度範囲は0~30 mg/mLであり、好ましくは1 mg/mL~10 mg/mLであり、例えば1 mg/mL、3 mg/mL、5 mg/mL又は7.0 mg/mLである。
【0067】
本発明の実施形態によれば、前記安定剤はPVP K12である。
【0068】
本発明の実施形態によれば、前記緩衝剤は、リン酸、リン酸塩、枸櫞酸、枸櫞酸ナトリウム、塩酸及び水酸化ナトリウムから選ばれる1つ又は複数である。
【0069】
本発明の実施形態によれば、前記界面活性剤はデオキシコール酸ナトリウムである。
【0070】
本発明の実施形態によれば、前記溶媒は水であり、例えば注射用水である。
【0071】
一例として、前記カリプラジン組成物は、
(a)カリプラジンパモ酸塩;
(b)カルボキシメチルセルロースナトリウム;
(c)Tween20;
(d)リン酸水素二ナトリウム;
(e)リン酸二水素ナトリウム;及び
(f)マンニトール;
を含んでもよく、且つ、必要に応じて、前記カリプラジン組成物は水酸化ナトリウム又は塩酸を含んでもよい。
【0072】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジン組成物は、カリプラジン注射剤であり、例えばカリプラジン長時間作用型注射剤である。
【0073】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジン組成物又はカリプラジン長時間作用型注射剤において、前記カリプラジン固体粒子の濃度は15 mg/mL以上である。
【0074】
本発明の実施形態によれば、前記カリプラジン組成物の製造方法は、以下のステップを含む:
(1)湿潤剤、緩衝剤、浸透圧調整剤を溶媒に溶解する;
(2)カリプラジン固体粒子を加えて、粗大粒子の懸濁水溶液を得る;
(3)上記粗大粒子の懸濁水溶液をボールミルを用いて粉砕し、懸濁液を得る;
(4)上記懸濁液に懸濁化剤を加えて均一に混合し、必要に応じて水酸化ナトリウム又は塩酸を用いてpHを4.0~9.0に調整し、定容して懸濁水溶液を得る。
【0075】
本発明の製造方法の実施形態によれば、ステップ(1)において、湿潤剤、緩衝剤及び浸透圧調節剤を、溶媒、例えば注射用水に順次に溶解することができる。
【0076】
本発明の製造方法の実施形態によれば、ステップ(4)において、調整されたpHは、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5又は9.0であり得る。
【0077】
本発明は、精神疾患、双極性障害及び急性躁病を治療及び/又は予防するための薬物の製造における前記カリプラジン医薬組成物の応用を提供する。
【0078】
又、本発明は、前記カリプラジン医薬組成物を必要とする患者に投与することを含む、精神疾患、双極性障害及び急性躁病を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0079】
本発明の実施形態によれば、前記「Dv(10)」、「Dv(50)」及び「Dv(90)」とは、体積加重の粒子径であり、そのうち、測定時にそれ以下の直径を有する粒子がそれぞれ累積で10 v/v%、50 v/v%又は90 v/v%ある。例えば、粒子群のDv(50)が約25ミクロンである場合、50%体積の粒子は約25ミクロン以下の直径を有することを示す。
【0080】
本発明の精神から逸脱することなく、当業者は、上記それぞれの好ましい条件を組み合わせて、本発明のそれぞれの比較的好ましい例を得ることができる。
【0081】
本発明に用いる試薬及び原料は、何れも市販されている。
【0082】
本発明の実施形態によれば、前記室温とは、10℃~35℃の環境温度である。
【0083】
有益な効果
継続的な研究、スクリーニングや試みを通じて、本発明者は最終的に、カリプラジン難溶性塩中のカリプラジンパモ酸塩が長時間作用型徐放性製剤の利点を満たし、懸濁注射剤として開発でき、同時に、カリプラジン塩酸塩の解離リスクを克服でき、長時間作用型投与の効果を達成でき、そしてラットの血中薬物濃度を低下させることができ、患者のコンプライアンス及び薬物のバイオアベイラビリティと薬物安全性を大幅に改善することを見出した。
【0084】
本発明のカリプラジン医薬組成物は、持続放出作用、高いバイオアベイラビリティー、良好な溶液安定性、及び小さな投与体積という特徴を有し、1回の投与で少なくとも1週間以上カリプラジンを持続的に放出することができ、市場の見通しは良好である。
【0085】
〔図面の簡単な説明〕
図1]カリプラジンパモ酸塩非晶質のXRPDパターンである;
図2]カリプラジンパモ酸塩結晶形AのXRPDパターンである;
図3]カリプラジンパモ酸塩結晶形AのDSCパターンである;
図4]カリプラジンパモ酸塩結晶形AのTGAパターンである;
図5]カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの1H-NMRパターンである;
図6]カリプラジンパモ酸塩結晶形FのXRPDパターンである;
図7]カリプラジンパモ酸塩結晶形FのDSCパターンである;
図8]カリプラジンパモ酸塩結晶形FのTGAパターンである;
図9]カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの1H-NMRパターンである;
図10]カリプラジンパモ酸塩結晶形DのXRPDパターンである;
図11]カリプラジンパモ酸塩結晶形DのDSCパターンである;
図12]カリプラジンパモ酸塩結晶形DのTGAパターンである;
図13]カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの1H-NMRパターンである;
図14]カリプラジンパモ酸塩結晶形BのXRPDパターンである;
図15]カリプラジンパモ酸塩結晶形CのXRPDパターンである;
図16]カリプラジンパモ酸塩結晶形EのXRPDパターンである;
図17]カリプラジンパモ酸塩結晶形GのXRPDパターンである;
図18]カリプラジンパモ酸塩結晶形IのXRPDパターンである;
図19]カリプラジン塩酸塩結晶形IのXRPDパターンである;
図20]体外溶出シミュレーション実験の結果図である(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Gである);
図21]比較例4におけるpH7.4条件下でのカリプラジンパモ酸塩とカリプラジン塩酸塩のXRPDパターンの積み重ねグラフである(Aはカリプラジン遊離塩基である;Bはカリプラジン塩酸塩結晶形Iである;CはpH7.4の媒体で振動した後のカリプラジン塩酸塩結晶形Iである;Dはカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;EはpH7.4の媒体で振動した後のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである)。
【0086】
図22]ラットにおける本発明の実施例44の製剤である経口試料のカリプラジンの平均血中薬物濃度と時間との関係を示す図である;
図23]ラットにおける本発明の実施例40~43の製剤である注射試料のカリプラジンの平均血中薬物濃度と時間との関係を示す図である(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Eである);
図24図23の部分拡大図である(0~24時間のカルリモジンの平均血中薬物濃度と時間との関係図である)(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Eである)。
【0087】
〔発明を実施するための形態〕
以下、実施例により本発明を更に説明するが、それによって本発明を記載される実施例の範囲に限定するわけではない。下記実施例において、具体的な条件を明記していない実験方法は、常軌の方法や条件、又は製品の仕様書に従って選択される。
【0088】
特に明記しない限り、下記の実施例における原料及び試薬は市販されているか、又は当業者が当該技術分野での既知の方法によって製造することができる。
【0089】
実施例の塩基型化合物について、それぞれ核磁気共鳴(1H-NMR)、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量法(DSC)、熱重量分析(TGA)、ホットステージ偏光顕微鏡(PLM)、及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定を行い、測定パラメーターは以下の通りである:
(1)1H-NMR測定は、ブルカーの型式がBruker Advance III500Mである核磁気共鳴分光計で行い、測定周波数は400 Mzであり、使用する溶媒は重水素化DMSOであった。
【0090】
(2)DSC測定は、TA Instrumentsの型式Q2000密閉パン装置で行い、試料(約1~2 mg)をアルミニウムパンで秤量し、機器に移して測定した。測定パラメーターは以下の通りである:機器は30℃でバランスが取れており、10℃/minの速度で300℃まで上昇し、データを収集し、実験雰囲気は窒素ガスであった。
【0091】
(3)TGA測定は、TA Instrumentsの型式Q500装置で行い、試料(約2~5 mg)をアルミニウムパンで秤量し、機器に移して測定した。測定パラメーターは以下の通りである:機器は10℃/minの速度で350℃まで上昇し、データを収集し、実験雰囲気は窒素ガスであった。
【0092】
(4)XRPD測定は、ブルカーの型式がD8 AdvanceであるX線粉末回折計で行い、円形のゼロバックグラウンドの単結晶シリコン試料台を使用した。スキャンパラメーターは以下の通りである:電圧40 kV、電流40 mA、スキャン範囲3°~45°、スキャンステップ0.02°、スキャンモードは連続スキャンであった。
【0093】
(5)PLM測定は、上海点応光学機器の型式がDYP990/TPH350であるホットステージ偏光顕微鏡で行い、少量の試料を取り、スライドガラスに分散させ、10倍の接眼レンズ及び5~40倍の対物レンズで撮影した。
【0094】
(6)HPLC含有量及び関連物質の測定方法:
【0095】
【表1】
【0096】
特に明記しない限り、本発明におけるカリプラジン医薬組成物の懸濁水溶液の粒度検出装置の検出条件は以下の通りである:
【0097】
【表2】
【0098】
実施例1:カリプラジンパモ酸塩の製造
4000 mg(9.36 mmol)のカリプラジンを200 mL(5.4 mg/mL)のリン酸溶液に溶解して溶液Aを得、3634 mg(9.36 mmol)のパモ酸を100 mL(7.5 mg/mL)の水酸化ナトリウム溶液に溶解して溶液Bを得た。撹拌しながら、100 mLの溶液Bを200 mLの溶液Aに30分以内に添加し、生成物を濾別し、水で洗浄し、40℃で12時間真空乾燥を行い、5840 mgの淡黄色固体を得て、収率が76%であった(遊離塩基として計算)。
【0099】
本発明に記載のカリプラジンパモ酸塩の構造及びモル比は、プロトン核磁気共鳴により確認された。
【0100】
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6):δ8.38(s, 2H),8.16(d, 2H),8.80(d, 2H),7.39-7.13(m, 7H),5.86(d, 1H),4.76(s, 2H),3.40-3.32(m, 3H),3.22-3.18(m, 4H),2.75(s, 6H),1.76(t, 4H),1.63-1.57(m, 2H),1.25-1.16(m, 3H),1.04-0.96(m, 2H)。
【0101】
NMRの結果は、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示した。
【0102】
上記試料を固相特性測定に供し、XRPDパターンは図1に示され、測定結果は、非晶質であることを示した。
【0103】
実施例2:カリプラジンパモ酸塩非晶質の製造
60℃の条件下で、20 g(46.8 mmol)のカリプラジンと18.17 g(46.8 mmol)のパモ酸を170 mLの THF:MeOH(2:1)混合溶媒に溶解し、濾過し、減圧濃縮して溶媒を除去し、更に300 mLのメタノールを加え、60℃で溶解し、減圧濃縮して溶媒を除去し、40℃で12時間真空乾燥を行い、36.6 gのカリプラジンパモ酸塩非晶質を得た。
【0104】
実施例3:カリプラジンヘミパモ酸塩の製造
200 mg(0.468 mmol)のカリプラジンを10 mL(5.4 mg/mL)のリン酸溶液に溶解して溶液Aを得、90.85 mg(0.234 mmol)のパモ酸を2.5 mL(7.5 mg/mL)の水酸化ナトリウム溶液に溶解して溶液Bを得た。撹拌しながら、2.5 mLの溶液Bを10 mLの溶液Aに30分以内に添加し、生成物を濾別し、水で洗浄し、40℃で12時間真空乾燥を行い、204 mgの淡黄色固体を得て、収率が70%であった。
【0105】
本発明に記載のカリプラジンパモ酸塩の構造及びモル比は、プロトン核磁気共鳴により確認された。
【0106】
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6):δ8.25(s, 1H),8.18(d, 1H),7.69(d, 1H),7.38-7.31(m, 2H),7.22-7.14(m, 2H),7.05(t, 1H),5.86(d, 1H),4.71(s, 1H),3.39-3.22(m, 5H),2.75(s, 6H),1.75(t, 4H),1.59-1.54(m, 2H),1.25-1.15(m, 3H),1.04-0.95(m, 2H)。
【0107】
NMRの結果は、カリプラジンとパモ酸がモル比2:1で塩形成をしたことを示した。
【0108】
上記試料についてPLM測定を行い、当該試料が無偏光固体で、非晶質であることが示された。
【0109】
実施例4:カリプラジン1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸塩の製造
100 mg(0.234 mmol)のカリプラジンと45 mg(0.234 mmol)の1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸を8 mLのメタノールに加え、攪拌して溶解し、濾過し、3倍量のn-ヘプタンを加え、溶媒が乾くまで室温で揮発させ、油状物になり、40℃で4時間真空乾燥を行い、固体を得た。
【0110】
PLM測定により、固体は偏光を有し、約200℃で融解し始めたことを発見した。
【0111】
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6):δ8.23(d, 1H),7.80-7.74(m, 2H),7.57-7.53(m, 1H),7.48-7.44(m, 1H),7.38-7.31(m, 2H),7.20-7.16(m, 2H),5.86(d, 1H),3.36-3.09(m, 10H),2.75(s, 6H),1.74(t, 4H),1.61-1.56(m, 2H),1.33-1.15(m, 5H),1.02-0.83(m, 3H)。
【0112】
NMRの結果は、カリプラジンと1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示した。
【0113】
実施例5:カリプラジンラウリン酸塩の製造
50 mg(0.117 mmol)のカリプラジンと23.7 mg(0.118 mmol)のラウリン酸を5 mLのメタノールに加え、50℃の条件下で溶解し、室温で12時間攪拌した後、2倍量の水を加えて濾過し、固体を40℃の条件下で12時間真空乾燥してカリプラジンラウリン酸塩を得た。
【0114】
実施例6:カリプラジンパルミチン酸塩の製造
50 mg(0.117 mmol)のカリプラジンと30.3 mg(0.118 mmol)のパルミチン酸を5 mLのメタノールに加え、50℃の条件下で溶解し、室温で12時間攪拌した後、1倍量の水を加えて濾過し、固体を40℃の条件下で12時間真空乾燥してカリプラジンパルミチン酸塩を得た。
【0115】
実施例7:カリプラジンセバシン酸塩、カリプラジンコハク酸塩、カリプラジンリンゴ酸塩、カリプラジン乳酸塩、カリプラジンウンデカン酸塩、カリプラジンヘプタン酸塩の製造
1:1.1のモル比でカリプラジンと酸の重量を量った。各種酸をそれぞれメタノール溶媒に溶解し、室温の条件下で得られた酸性試薬をカリプラジンメタノール溶液に加えて塩形成反応を行った。室温で12時間攪拌した後、室温で揮発、乾燥させ、相応するカリプラジン塩を得た。
【0116】
実施例8:カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの製造
2000 mgの実施例1で製造したカリプラジンパモ酸塩を取り、それを20 mLのメタノールに加え、室温で24時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、1900 mgのカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを得、収率が95%であった。
【0117】
そのX線粉末回折パターンは図2に示された。
【0118】
その示差走査熱量分析スペクトルは図3に示され、166.5℃の融点を示した。
【0119】
その熱重量分析スペクトルは図4に示され、115℃の前に2段階の重量損失を示し、これは表面溶媒とチャンネル水の損失によるものであった。115~165℃で約1.1%の重量損失があり、これは結晶水の損失によるものであった。
【0120】
そのNMRスペクトルは図5に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示した。
【0121】
実施例9:カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの製造
30 gの実施例2で製造したカリプラジンパモ酸塩非晶質の固体試料を取り、それを300 mLのメタノールに加え、10℃で24時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、28.5 gのカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを得た。
【0122】
実施例10:カリプラジンパモ酸塩結晶形Bの製造
200 mgの実施例9で得られたカリプラジンパモ酸塩結晶形Aをメタノール溶媒中でスラリーに形成し、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aと溶媒の重量体積比は40 mg/mLであり、3日間撹拌して結晶化させ、180 mgのカリプラジンパモ酸塩結晶形Bを得た。
【0123】
そのX線粉末回折パターンは図14に示された。
【0124】
NMRの結果は、それがメタノール溶媒和物であることを示した。
【0125】
実施例11:カリプラジンパモ酸塩結晶形Bの製造
2 gの実施例9で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを取り、それを50 mLのメタノールに加え、室温で72時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、1.9 mgのカリプラジンパモ酸塩結晶形Bを得た。
【0126】
実施例12:カリプラジンパモ酸塩結晶形Cの製造
実施例8で得られたカリプラジンパモ酸塩結晶形Aをアセトン溶媒中でスラリーに形成し、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aと溶媒の重量体積比は40 mg/mLであり、3日間撹拌して結晶化させ、カリプラジンパモ酸塩結晶形Cを得た。
【0127】
そのX線粉末回折パターンは図15に示された。
【0128】
NMRの結果は、それがアセトン溶媒和物であることを示した。
【0129】
実施例13:カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの製造
200 mgの実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを取り、それを2 mLのエタノールに加え、室温で48時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、190 mgのカリプラジンパモ酸塩結晶形Dを得、収率が95%であった。
【0130】
そのX線粉末回折パターンは図10に示された。
【0131】
その示差走査熱量分析スペクトルは図11に示され、164.6℃の融点を示した。
【0132】
その熱重量分析スペクトルは図12に示され、190℃の前に約4%の重量損失があることを示し、これは水とエタノールの損失によるものであった。
【0133】
そのNMRスペクトルは図13に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成し、約0.67個のエタノール分子を含むことを示した。
【0134】
実施例14:カリプラジンパモ酸塩結晶形Eの製造
実施例8で得られたカリプラジンパモ酸塩結晶形Aをアセトニトリル溶媒中でスラリーに形成し、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aと溶媒の重量体積比は40 mg/mLであり、3日間撹拌して結晶化させ、カリプラジンパモ酸塩結晶形Eを得た。
【0135】
そのX線粉末回折パターンは図16に示された。
【0136】
実施例15:カリプラジンパモ酸塩結晶形Eの製造
2 gの実施例9で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを取り、それを50 mLのアセトニトリルに加え、室温で72時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、1.8 gのカリプラジンパモ酸塩結晶形Eを得た。
【0137】
実施例16:カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの製造
200 mgの実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを取り、それを20 mLの酢酸イソプロピルに加え、室温で12時間攪拌して結晶化させ、濾過し、55℃で真空乾燥を行い、180 mgのカリプラジンパモ酸塩結晶形Fを得、収率が90%であった。
【0138】
そのX線粉末回折パターンは図6に示された。
【0139】
その示差走査熱量分析スペクトルは図7に示され、約166.6℃の融点を示した。
【0140】
その熱重量分析スペクトルは図8に示され、115℃の前に約1.3%の重量損失があることを示し、これはチャンネル水の損失によるものであった。115~175℃で約1.3%の重量損失があり、これは結晶水の損失によるものであった。
【0141】
そのNMRスペクトルは図9に示され、カリプラジンとパモ酸がモル比1:1で塩形成をしたことを示した。
【0142】
実施例17:カリプラジンパモ酸塩結晶形Gの製造
200 mgの実施例8で得られたカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを取り、5 mLのアセトニトリルを加えてスラリーに形成し、5日間撹拌して結晶化させ、カリプラジンパモ酸塩結晶形Gを得た。
【0143】
そのX線粉末回折パターンは図17に示された。
【0144】
NMRの結果は、それがアセトニトリル溶媒和物であることを示した。
【0145】
実施例18:カリプラジンパモ酸塩結晶形Iの製造
15 mgの実施例1で得られたカリプラジンパモ酸塩非晶質の固体試料を取り、光照明条件下で10日間放置し、カリプラジンパモ酸塩結晶形Iを得た。
【0146】
そのX線粉末回折パターンは図18に示された。
【0147】
実施例19:カリプラジン塩酸塩結晶形Iの製造
カリプラジン塩酸塩の先行研究特許に従って、カリプラジン塩酸塩結晶形Iの試料を製造した:
25 mL丸底フラスコに市販のカリプラジン遊離塩基1 gを加え、2 mLのメタノールと8 mLの水を加え、70℃のオイルバス用鍋で0.5 h攪拌し、0.226 mLの濃塩酸と0.35 mLの水との混合溶液を加え、溶解した後、熱いうちに濾過し、加熱を止めて一晩自然冷却し、0.8 gの近似白色固体を得た。
【0148】
そのX線粉末回折パターンは図19に示され、これがカリプラジン塩酸塩結晶形Iであることを示した。
【0149】
比較例1:関連物質と結晶形の安定性の比較
実施例1で製造したカリプラジンパモ酸塩非晶質、実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形A、実施例10で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形B、実施例16で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形F、実施例17で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形G、及び実施例19で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形Iを、それぞれ高温(60℃)、高湿(25℃/90%RH)、加速(40℃/75%RH)、光照明(1.2×106 Lux・hr)条件下で放置し、HPLC又はXRPD検出のために0日、5日、7日、10日目にサンプリングした。
【0150】
関連物質の結果を表1に示し、本発明のカリプラジンパモ酸塩結晶形A、カリプラジンパモ酸塩結晶形B及びカリプラジンパモ酸塩結晶形Gのうち、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aが比較的安定であり、様々な条件下に10日間放置しても、関連物質の合計は基本的に変化しなかったが、カリプラジンパモ酸塩非晶質は高温条件下では不安定であり、不純物の成長が比較的大きかったことが示された。
【0151】
結晶形安定性の結果を表2に示し、既知のカリプラジン塩酸塩結晶形Iと比較して、本発明のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aが、更に優れた結晶形安定性を有し、様々な条件下に10日間放置しても結晶形が変化せず、結晶度も明らかに変化せず、本発明のカリプラジンパモ酸塩結晶形Fが、高温及び光照明条件下で比較的安定であり、結晶形が変化せず、高湿及び加速条件でカリプラジンパモ酸塩結晶形Aに変換されたことが示された。
【0152】
【表3】
【0153】
【表4】
【0154】
比較例2:溶解度の比較
実施例1で製造したカリプラジンパモ酸塩非晶質、実施例3で製造したカリプラジンヘミパモ酸塩非晶質、実施例5で製造したカリプラジンラウリン酸塩、実施例6で製造したカリプラジンパルミチン酸塩、実施例7で製造したカリプラジンセバシン酸塩、カリプラジンコハク酸塩、カリプラジンリンゴ酸塩、カリプラジン乳酸塩、カリプラジンウンデカン酸塩、カリプラジンヘプタン酸塩、実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形A、実施例10で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形B、実施例16で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形F、実施例17で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形G、実施例19で製造したカリプラジン塩酸塩結晶形I、及びカリプラジンをそれぞれ取り、それらをそれぞれ相応する媒体に加え、37℃の条件下で24時間振動し、0.45μmの水相濾過膜で濾過し、濾液を回収し、高速液体クロマトグラフィーにより溶解度を測定した。そのうち、pH3、pH4、pH5及びpH6は酢酸緩衝液であり、pH7、pH7.4、pH8及びpH9はリン酸緩衝液であった。
【0155】
結果を表3に示し、本発明により得られたカリプラジンパモ酸塩及びその結晶形とカリプラジンヘミパモ酸塩の溶解度は何れも大幅に低下し、カリプラジンパモ酸塩の水への溶解度は3~10μg/mLであり、カリプラジンの1/18~1/60(約180μg/mL)に相当し、カリプラジン塩酸塩の1/1000~1/3600(約11 mg/mL)に相当し、そして、各pH媒体への溶解度は何れも比較的低く、それ自体で徐放効果を有し、同時に各pH媒体への溶解度は同等であり、放出速度はpHに最小限に依存するため、体内の異なる区域でのpH環境が薬物放出速度に及ぼす影響を回避し、バースト放出現象又は体内の局部区域での過剰な血中薬物濃度を回避し、個体間の薬物放出の変動性を減らし、且つ、カリプラジンパモ酸塩の結晶形は安定性が比較的良く、長時間作用型製剤に適しており、投与回数を減らし、患者の服用コンプライアンスを改善することができ、市場の見通しが良好であることを示した。
【0156】
【表5】
【0157】
比較例3:体外溶出シミュレーション実験
それぞれ実施例1で製造したカリプラジンパモ酸塩非晶質、実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形A、実施例10で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形B、及び実施例17で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形Gを取り、それぞれpH7.4のリン酸緩衝液媒体に加え、37℃の条件下で振動し、1、3、5、7、24時間で試料を取り、溶解度を測定した。
【0158】
結果を表4及び図20に示し、カリプラジンパモ酸塩非晶質試料に比べて、本発明によって製造されたカリプラジンパモ酸塩結晶形Aとカリプラジンパモ酸塩結晶形Bとの二つの結晶形化合物試料は、pH7.4の条件下でより穏やかに溶出し、且つ24時間溶解度が小さかったことから、結晶形化合物が過剰な血中薬物濃度を避けるための薬用塩としてより適していることが示された。
【0159】
【表6】
【0160】
比較例4:溶液安定性の比較
実施例8で製造したカリプラジンパモ酸塩結晶形A及び実施例19で製造したカリプラジン塩酸塩結晶形Iをそれぞれ取り、それらをそれぞれpH6、pH7、pH7.4、pH8、及びpH9等の相応する媒体に加え、37℃の条件下で4時間振動して遠心分離し、残分に対してXRPD検出を行った結果、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aは変化していないが、カリプラジン塩酸塩結晶形Iはカリプラジン遊離塩基に解離し、pH7.4での比較結果を図21に示し(残りは示されていない)、これにより分かるように、カリプラジン塩酸塩結晶形Iと比較して、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aは溶液中でより安定であり、投与後の結晶形の変化による薬効の変化を効果的に回避でき、薬物安全性を向上させることができる。
【0161】
実施例20~25:懸濁化剤の使用量が異なるカリプラジンパモ酸塩の懸濁水溶液
【0162】
【表7】
【0163】
製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)処方量のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得た;
(3)上記粗大粒子の懸濁水溶液をボールミルを用いて粉砕し、Dv(90)が10ミクロン以下の懸濁液を得た;
(4)上記懸濁液にそれぞれ処方量のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に分散するまで攪拌し、必要に応じて水酸化ナトリウム又は塩酸を用いてpHを4.0~9.0に調整し、定容して実施例20~25の懸濁液を得た。
【0164】
実施例20~25で製造した処方試料をそれぞれ取り、注射針透過性、懸濁性、沈降率及び再分散性を調べたところ、上記懸濁液試料は何れも0.45×15 mmシリンジの針を通過でき、懸濁性は良好であり、実施例22~25の試料の24時間沈降率及び再分散性は良好であった。
【0165】
実施例26~30:湿潤剤の使用量が異なるカリプラジンパモ酸塩の懸濁水溶液
【0166】
【表8】
【0167】
製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)処方量のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得た;
(3)上記粗大粒子の懸濁水溶液をそれぞれボールミルを用いて粉砕し、Dv(90)が10ミクロン以下の懸濁液を得た;
(4)上記懸濁液にそれぞれ処方量のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に分散するまで攪拌し、必要に応じて水酸化ナトリウム又は塩酸を用いてpHを4.0~9.0に調整し、定容して実施例26~30の懸濁液を得た。
【0168】
実施例26~30で製造した処方試料をそれぞれ取り、注射針透過性、懸濁性、沈降率及び濡れ性を調べたところ、上記懸濁液試料は何れも0.45×15 mmシリンジの針を通過でき、懸濁性、沈降率及び濡れ性は良好であった。
【0169】
実施例31~34:粒径が異なるカリプラジンパモ酸塩の懸濁水溶液
【0170】
【表9】
【0171】
製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)処方量のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aを加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得た;
(3)上記実施例31~34で得られた粗大粒子の懸濁水溶液をそれぞれボールミルを用いて粉砕して分散させた;
(4)上記懸濁液にそれぞれ処方量のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に分散するまで攪拌し、定容してpH7.4±0.2の実施例32~35の懸濁液を得た;
(5)OMEC LS-909粒度測定器を採用して、粉砕後の実施例試料の粒度分布を測定し、結果を次の表に示す:
【0172】
【表10】
【0173】
上表の結果から、同じ処方の懸濁水溶液でも、粉砕パラメーターをコントロールすることで、異なる粒径(Dv90)の粒子の懸濁水溶液を製造できることが分かる。
【0174】
実施例35~37:結晶形が異なるカリプラジンパモ酸塩の懸濁水溶液
【0175】
【表11】
【0176】
製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)それぞれ処方量の相応するカリプラジンパモ酸塩試料を加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得た;
(3)上記実施例35~37で得られた粗大粒子の懸濁水溶液をそれぞれボールミルを用いて粉砕して分散させた;
(4)上記懸濁液にそれぞれ処方量のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に分散するまで攪拌し、定容してpH7.4±0.2の実施例35~37の懸濁液を得た;
(5)OMEC LS-909粒度測定器を採用して、粉砕後の実施例試料の粒度分布を測定し、結果を次の表に示す:
【0177】
【表12】
【0178】
実施例35~37で製造した処方試料をそれぞれ取り、注射針透過性、懸濁性、沈降率及び濡れ性を調べたところ、上記懸濁液試料は何れも0.45×15 mmシリンジの針を通過でき、懸濁性、沈降率及び濡れ性は良好であった。
【0179】
上表の結果と注射針透過性、懸濁性、沈降率及び濡れ性の調べによると、同じ処方の懸濁水溶液と同じ粉砕パラメーターが、カリプラジンパモ酸塩の異なる結晶形に適用できることが分かる。
【0180】
実施例38:カリプラジン塩酸塩の懸濁水溶液
【0181】
【表13】
【0182】
製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)処方量のカリプラジン塩酸塩を加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得た;
(3)上記得られた粗大粒子の懸濁水溶液をボールミルを用いて粉砕して分散させた;
(4)上記懸濁液に処方量のカルボキシメチルセルロースナトリウムを加え、完全に分散するまで攪拌し、定容してpH7.4±0.2の実施例38の懸濁液を得た;
(5)OMEC LS-909粒度測定器を採用して、粉砕後の実施例試料の粒度分布を測定し、結果を次の表に示す:
【0183】
【表14】
【0184】
実施例39:カリプラジンパモ酸塩とカリプラジン塩酸塩の懸濁水溶液の60℃における安定性に関する調べ
実施例33で製造したカリプラジンパモ酸塩と実施例38で製造したカリプラジン塩酸塩の懸濁水溶液を取り、60℃の条件下で0、5、10日間の粒径を測定し、結果を下表に示す:
【0185】
【表15】
【0186】
上表の結果から、同じ処方の懸濁水溶液でも、カリプラジンパモ酸塩の懸濁水溶液は、不純物及び粒径の安定性の点でカリプラジン塩酸塩の懸濁水溶液よりも明らかに優れていることが分かる。
【0187】
実施例40~44:ラット体内におけるカリプラジンパモ酸塩の懸濁液処方の薬物動態研究
【0188】
【表16】
【0189】
1、実施例40~43の懸濁注射液の製造プロセス:
(1)処方量のTween20、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、マンニトール、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)それぞれ処方量の相応するカリプラジンパモ酸塩試料を加え、完全に分散するまで攪拌し、定容してpH7.4±0.2の実施例40~43の懸濁注射液を得た;
(3)OMEC LS-909粒度測定器を採用して、実施例41~43の試料の粒度分布を測定し、結果を次の表に示す:
【0190】
【表17】
【0191】
2、実施例44の経口懸濁液の製造プロセス:
(1)処方量のTween20、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び製造全量の約60%の注射用水を秤量し、攪拌溶解して分散させた;
(2)処方量のカリプラジンパモ酸塩を加え、粗大粒子の懸濁水溶液を得、塩酸でpHを5.0~5.5に調整し、定容して実施例44の経口懸濁液を得た。
【0192】
実施例45:薬物動態実験
実施例40~44で製造した異なる濃度のカリプラジンパモ酸塩の処方試料を、ラットのインビボ実験のために選択し、実験は以下の通りであった:
15匹の雄SDラットを5つのグループに分け、そのうちの4つのグループに異なるカリプラジンパモ酸塩結晶形の処方試料を9 mg/kgの単回投与量で筋肉内注射し、投与後の0、1 h、3 h、7 h、24 h、4 d、7 d、11 d、15 d、20 d、25 d及び30 dに血漿を採取し、残りのグループに0.3 mg/kgの単回投与量でカリプラジンパモ酸塩結晶形Aの処方試料を強制経口投与し、投与後の5 min、15 min、30 min、1、2、3、4、6、8、12及び24時間に血漿を採取した。実験中、筋肉内注射群の動物は食物と水を自由に摂取でき、強制経口投与群の動物は投与前に一晩禁食し、投与の4時間後に飲食を再開した。
【0193】
血漿試料の採取:頸静脈から約150μLの血液を採取し(全血を30分以内に遠心分離して血漿を分離)、抗凝固剤EDTA-K2入りの試験管に入れ、処理した後の血漿を使用するまで-70℃の冷蔵庫に保存した。
【0194】
血漿試料の前処理:30μLの血漿試料を取り、200μLの内部標準溶液(40 ng/mLのGlipizideアセトニトリル溶液)に加え、1 minボルテックスし、4℃で5800 rpmで10 min遠心分離し、100μLの上清を取り、新しいプレートに移し、LC-MS/MS分析用に1μLの溶液を取った。
【0195】
クロマトグラフィー条件:
流動相組成:流動相A:0.025%ギ酸水-1 mM酢酸アンモニウム
流動相B:0.025%ギ酸メタノール-1 mM酢酸アンモニウム
勾配溶出:
【0196】
【表18】
【0197】
カラム:Waters ACQUITY UPLC BEH C18 (2.1×50 mm, 1.7μm);
流速:0.60 mL/min;
注入体積:1μL;
カラムオーブン:60℃;
保持時間:カリプラジン:1.16 min;Glipizide:1.22 min。
【0198】
マススペクトル条件:
エレクトロスプレーイオン源(Turbo spray)を用い、正イオン検出モードで、多重チャンネル多重反応モニタリング(MRM)モードを選択して二次質量分析を行った。質量分析検出作業パラメーターとイオン源パラメーターは、次の表に示される。
【0199】
【表19】
【0200】
図22~24から分かるように、カリプラジンパモ酸塩経口群は投与後24時間以内に速やかに吸収されるのに対し、カリプラジンパモ酸塩注射群は投与後少なくとも11日間の持続放出を達成し、種属間の差異と合わせて、ヒトにおいて少なくとも30日間の放出が予想される。同時に、カリプラジンパモ酸塩のそれぞれの結晶形の中で、カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの放出時間が最も優れている。
【0201】
本発明の実験結果から分かるように、本発明によって提供されるカリプラジンパモ酸塩注射製剤が懸濁水溶液に製造された後、カリプラジンパモ酸塩は粒度が比較的小さく、均一に分布しており、良好な注射可能性を有すると共に、長時間に亘って薬物を持続放出する特徴(SDラット体内で少なくとも1週間)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0202】
図1】カリプラジンパモ酸塩非晶質のXRPDパターンである;
図2】カリプラジンパモ酸塩結晶形AのXRPDパターンである;
図3】カリプラジンパモ酸塩結晶形AのDSCパターンである;
図4】カリプラジンパモ酸塩結晶形AのTGAパターンである;
図5】カリプラジンパモ酸塩結晶形Aの1H-NMRパターンである;
図6】カリプラジンパモ酸塩結晶形FのXRPDパターンである;
図7】カリプラジンパモ酸塩結晶形FのDSCパターンである;
図8】カリプラジンパモ酸塩結晶形FのTGAパターンである;
図9】カリプラジンパモ酸塩結晶形Fの1H-NMRパターンである;
図10】カリプラジンパモ酸塩結晶形DのXRPDパターンである;
図11】カリプラジンパモ酸塩結晶形DのDSCパターンである;
図12】カリプラジンパモ酸塩結晶形DのTGAパターンである;
図13】カリプラジンパモ酸塩結晶形Dの1H-NMRパターンである;
図14】カリプラジンパモ酸塩結晶形BのXRPDパターンである;
図15】カリプラジンパモ酸塩結晶形CのXRPDパターンである;
図16】カリプラジンパモ酸塩結晶形EのXRPDパターンである;
図17】カリプラジンパモ酸塩結晶形GのXRPDパターンである;
図18】カリプラジンパモ酸塩結晶形IのXRPDパターンである;
図19】カリプラジン塩酸塩結晶形IのXRPDパターンである;
図20】体外溶出シミュレーション実験の結果図である(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Gである);
図21】比較例4におけるpH7.4条件下でのカリプラジンパモ酸塩とカリプラジン塩酸塩のXRPDパターンの積み重ねグラフである(Aはカリプラジン遊離塩基である;Bはカリプラジン塩酸塩結晶形Iである;CはpH7.4の媒体で振動した後のカリプラジン塩酸塩結晶形Iである;Dはカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;EはpH7.4の媒体で振動した後のカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである)。
図22】ラットにおける本発明の実施例44の製剤である経口試料のカリプラジンの平均血中薬物濃度と時間との関係を示す図である;
図23】ラットにおける本発明の実施例40~43の製剤である注射試料のカリプラジンの平均血中薬物濃度と時間との関係を示す図である(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Eである);
図24図23の部分拡大図である(0~24時間のカルリモジンの平均血中薬物濃度と時間との関係図である)(「黒正方形」はカリプラジンパモ酸塩非晶質である;「黒菱形」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Aである;「黒丸」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Bである;「黒三角」はカリプラジンパモ酸塩結晶形Eである)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24