(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】プロアントシアニジンを含む脂質異常症改善剤並びに同脂質異常症改善剤を含む機能性食品、医薬部外品及び医薬品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240814BHJP
A61K 31/353 20060101ALI20240814BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20240814BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240814BHJP
A61K 36/54 20060101ALI20240814BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20240814BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240814BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240814BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240814BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K31/353
A61K36/48
A61K36/185
A61K36/54
A61P3/06
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
(21)【出願番号】P 2023553145
(86)(22)【出願日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2022046115
(87)【国際公開番号】W WO2023112973
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021202736
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521467869
【氏名又は名称】シード医療製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 梓
(72)【発明者】
【氏名】堤 巌
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-004919(JP,A)
【文献】国際公開第2007/125644(WO,A1)
【文献】特開2006-022082(JP,A)
【文献】特開2006-016367(JP,A)
【文献】特表2010-503609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/AGRICOLA/BIOSIS/BIOTECHNO/CABA/CAplus/SCISEARCH/TOXCENTER(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロアントシアニジンと使用感向上剤とにより構成した脂質異常症改善剤であって、
前記プロアントシアニジンは、アカシア樹皮、シナモン、麻種子から選ばれる少なくとも2以上の植物素材に由来するプロアントシアニジンの混合物であり、
前記使用感向上剤は、遊離型カテキンと環状オリゴ糖とを配合してなることを特徴とする脂質異常症改善剤。
【請求項2】
剤型を粉末、細粒、顆粒、ハードカプセル又は錠剤としたことを特徴とする請求項
1に記載の脂質異常症改善剤。
【請求項3】
請求項
1に記載の脂質異常症改善剤を含むことを特徴とする機能性食品。
【請求項4】
請求項
1に記載の脂質異常症改善剤を含むことを特徴とする医薬部外品。
【請求項5】
請求項
1に記載の脂質異常症改善剤を含むことを特徴とする医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロアントシアニジンを含む脂質異常症改善剤並びに同脂質異常症改善剤を含む機能性食品、医薬部外品及び医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液中に溶けているコレステロールや中性脂肪の値が基準値よりも異常に高い状態(以下、脂質異常症とも言う。)を改善する食品成分としてプロアントシアニジンが利用されている。
【0003】
プロアントシアニジンは、フラバン-3-オール類が複数個繋がった構造よりなるポリフェノール類の一種であり、様々な植物の葉、果実、樹皮などに含まれている。プロアントシアニジンは渋味成分として忌避される一方で、リパーゼ阻害剤としての機能や、抗酸化剤としての機能を有するため脂質異常症に有効であるとして食品や医薬部外品に配合されて利用されている(例えば、特許文献1。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プロアントシアニジンは、体内に吸収されれば短時間の内にリパーゼの阻害や抗酸化作用を発揮できるという長所を有している。
【0006】
ところが、これらの作用は長時間に亘って発揮され続けるものではなく、十分な脂質異常症改善効果を得るには数時間ごとに摂取しなおす必要があった。
【0007】
また、製剤化されたプロアントシアニジンは、摂取前に既に酸化していることもあり、この場合上述の作用を喪失するという保存性の悪さや、経口摂取すれば強い渋味を感じるため使用感の悪さが問題視されていた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、所定回数のプロアントシアニジンの摂取により得られる脂質異常症改善作用と同等の効果をより少ない摂取回数で発現できると共に、保存性や摂取時の渋味の改善により使用感が向上した脂質異常症改善剤を提供するものである。
【0009】
また本発明では、同脂質異常症改善剤を含有する機能性食品や医薬部外品、医薬品についても提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る脂質異常症改善剤は、(1)プロアントシアニジンと使用感向上剤とにより構成した脂質異常症改善剤であって、前記プロアントシアニジンは、アカシア樹皮、シナモン、麻種子から選ばれる少なくとも2以上の植物素材に由来するプロアントシアニジンの混合物であり、前記使用感向上剤は、遊離型カテキンと環状オリゴ糖とを配合してなることとした。
【0011】
また、本発明に係る脂質異常症改善剤では、以下の点にも特徴を有する。
(2)剤形を粉末、細粒、顆粒、ハードカプセル又は錠剤とすることとした。
【0012】
また、本発明に係る機能性食品では、(3)上述の脂質異常症改善剤を含むこととした。
【0013】
また、本発明に係る医薬部外品では、(4)上述の脂質異常症改善剤を含むこととした。
【0014】
また、本発明に係る医薬品では、(5)上述の脂質異常症改善剤を含むこととした。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る脂質異常症改善剤によれば、プロアントシアニジンと使用感向上剤とにより構成した脂質異常症改善剤であって、前記使用感向上剤は、遊離型カテキンと環状オリゴ糖とを配合してなるため、所定回数のプロアントシアニジンの摂取により得られる脂質異常症改善作用と同等の効果をより少ない摂取回数で発現できると共に、保存性と使用感とを改善した脂質異常症改善剤を提供することができる。
【0016】
また、前記プロアントシアニジンは、アカシア樹皮、シナモン、麻種子から選ばれる少なくとも2以上の植物素材に由来するプロアントシアニジンの混合物であることとすれば、プロアントシアニジン由来の脂質異常症改善作用をより堅実に享受することができる。
【0017】
また、前記プロアントシアニジンは、2~8個のフラバン-3-オール類の重合体構造を含み、分子量が500~2500であることとすれば、プロアントシアニジン由来の脂質異常症改善作用をより堅実に享受することができる。
【0018】
また、剤形を粉末、細粒、顆粒、ハードカプセル又は錠剤であることとすれば、若年層から年配者までといった摂取者の年齢層や、持ち運びの有無など摂取者の使用環境に適した剤形で脂質異常症改善剤の摂取を行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る機能性食品では、上述の脂質異常症改善剤を含むこととしたため、機能性食品としての取り扱いが可能な脂質異常症改善剤を提供することができる。
【0020】
また、本発明に係る医薬部外品では、上述の脂質異常症改善剤を含むこととしたため、医薬部外品としての取り扱いが可能な脂質異常症改善剤を提供することができる。
【0021】
また、本発明に係る医薬品では、上述の脂質異常症改善剤を含むこととしたため、医薬品としての取り扱いが可能な脂質異常症改善剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図3】口腔内刺激性確認試験の結果を示す説明図である。
【
図4】使用感向上剤の構成成分の有無に関する試験結果を示す説明図である。
【
図5】プロアントシアニジンの由来の違いを検討した試験結果を示す説明図である。
【
図6】使用感向上剤である遊離型カテキンに関する試験結果を示す説明図である。
【
図7】遊離型カテキン源としての茶葉の違いに関する試験結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は脂質異常症改善剤に関し、特にプロアントシアニジンと使用感向上剤とにより構成した脂質異常症改善剤であって、前記使用感向上剤は、遊離型カテキンと環状オリゴ糖とを配合してなることを特徴とする脂質異常症改善剤に関するものである。
【0024】
従来、プロアントシアニジンは、リパーゼ阻害剤としての機能や、抗酸化剤としての機能を有することから、脂質異常症の改善や予防を目的として食品や医薬部外品などに配合されている。
【0025】
ところが、プロアントシアニジン単体の使用では、脂質異常症を十分に改善できるものではなかった。
【0026】
この原因について本発明者らは、プロアントシアニジンが体内に吸収される過程で消化酵素と反応したり、代謝されることで短時間の内にその作用を失うことが原因と考えている。また、製剤化しても酸化によって摂取される前にその作用が損なわれることが原因の一つとも考えている。
【0027】
そして本発明者らは、所定の組成物と併用することで、体内に摂取されたプロアントシアニジンのリパーゼ阻害作用や抗酸化作用を単体での使用時よりも長く発現させ、脂質異常症をより簡便に改善できるものと考えた。
【0028】
本発明はこのような着想と長年の生化学的研究による知見に基づいて完成されたものであり、プロアントシアニジンと、使用感向上剤と、より構成した脂質異常症改善剤であり、前記使用感向上剤は、遊離型カテキンと環状オリゴ糖とを配合してなることを特徴としている。なお、上記着想に関する説明は本発明の理解に供すべく記載したものであって、本発明者らが現時点で想定する機序である。従って、必ずしも正しい機序であることを保証するものではなく、また本発明の特許性には何ら影響を与えるもので無いことに留意されたい。
【0029】
ここで脂質異常症改善作用とは、空腹時(例えば、10時間以上食事を摂っていない状態)において、血液中のLDLコレステロールが140mg/dL以上、HDLコレステロールが40mg/dL未満、又は中性脂肪が150mg/dL以上となる状態を予防したり改善したりするものをいう。
【0030】
脂質異常症改善作用によって、例えば、血管の内壁に形成されたプラークを除去したり、プラークの発生を予防したりすることができる。プラークは血管を詰まらせて心筋梗塞や脳梗塞の原因となるため、脂質異常症を改善すればこれらの発症を防ぐことができる。
【0031】
脂質異常症の改善作用を有するプロアントシアニジンは、フラバン-3-オール類のフラバン骨格のC-4位と、別のフラバン-3-オール類のフラバン骨格のC-8位とが炭素結合を形成し、複数個繋がった構造を基本骨格とする化合物である。プロアントシアニジンは、ポリフェノール類の一種であり、様々な植物の葉、果実、樹皮などに含まれている。フラバン-3-オール類は2-フェニル-3,4-ジヒドロ-2H-クロメン-3-オール骨格を有するフラボノイドの一群であり、例えば(±)-カテキンや(-)-エピカテキンがある。
【0032】
プロアントシアニジンは、植物体内では、ガロイル基や糖などの修飾により種々の構造で存在している。本実施形態に係るプロアントシアニジンの構造は特に限定されるものではないが、2~8個のフラバン-3-オール類の重合体構造を含み、特に分子量が500~2500であることが好ましい。仮に、分子量が500未満であれば、プロアントシアニジンに由来する脂質異常症改善作用を十分に享受することができない。また一方で、9個以上のフラバン-3-オール類で構成されていたり、分子量が2500よりも大きい場合は、脂質異常症改善作用は十分に享受できるものの、使用感向上剤を併用しても酸化を十分に防いだり、渋味を確実に軽減することができないため好適ではない。
【0033】
プロアントシアニジンの由来は特に限定されるものではないが、アカシア樹皮、シナモン、麻種子などの植物素材に由来するプロアントシアニジンは、2~8個のフラバン-3-オール類の重合体構造を有し、且つ分子量が500~2500であるプロアントシアニジンを多く含有するため特に好適である。
【0034】
また、発明者らが行った実験によれば、アカシア樹皮、シナモン、麻種子のうち1種の植物素材より得られたプロアントシアニジンを使用する場合よりも、何れか2種の植物素材より得られたプロアントシアニジンを混合させて使用した場合の方が、より強い脂質異常症改善作用を示すことが分かっている。更に、3種より得られたプロアントシアニジンを混合させて使用した場合は、2種の場合に比しても強い脂質異常症改善作用を示すことも分かっている。
【0035】
使用感向上剤とは、プロアントシアニジンを摂取する際に感じる使用感を向上させるための剤であり、たとえば、暗所保存や冷所保存、低湿度下での保存などの如く経時的な劣化を防止するために必要な取扱いに伴う繁雑さに由来した使用感の低下(以下、「ハンドリング困難性」と称す。)や、従来のプロアントシアニジン製剤における一日あたり複数回の服用の必要性に伴う繁雑さに由来した使用感の低下(以下、「改善作用の非持続性」と称す。)、経口摂取時のプロアントシアニジンの渋みによる嚥下困難性による使用感の低下(以下、「口腔内刺激性」と称す。)など、種々の使用感の低下要素を改善し向上させるための剤である。
【0036】
使用感向上剤は、少なくとも遊離型カテキンと環状オリゴ糖とより構成している。
【0037】
遊離型カテキンは、重合していない単量体のカテキン類であり、(-)-カテキン、(-)-エピカテキン、(-)-ガロカテキン、(-)-エピガロカテキンの総称をいう。特に、遊離型カテキンとして、 (-)-エピカテキン、(-)-エピガロカテキンの何れか一方を含有することが好ましい。
【0038】
(-)-エピカテキン、(-)-エピガロカテキンは、苦味があるものの後味に微かな甘みを感じる。これらを使用感向上剤に配合すれば、プロアントシアニジンの渋味を軽減し、経口摂取時の渋味をより堅実に抑えることが可能となる。
【0039】
発明者らが行った実験によれば、少なくとも(-)-エピカテキン、(-)-エピガロカテキンのいずれかを遊離型カテキンとして使用感向上剤に配合すれば、他の単量体のカテキン類のみを配合した場合に比して脂質異常症改善剤の使用感を向上させることを明らかにしている。すなわち、ハンドリング困難性、改善作用の非持続性、および口腔内刺激性など、種々の使用感の低下要素を確実に改善し向上させることができる。
【0040】
遊離型カテキンは、緑茶葉、ほうじ茶葉、紅茶葉から選ばれる少なくとも2種の茶葉に由来して得た遊離型カテキンの混合物を原料として用いるのが好ましい。
【0041】
発明者らが行った実験によれば、緑茶葉、ほうじ茶葉、紅茶葉のうち1種の茶葉より得られた遊離型カテキンを使用感向上剤に配合する場合よりも、何れか2種の茶葉より得られた遊離型カテキンを混合させて使用した場合の方が、より高い脂質異常症改善作用を示すことを明らかにしている。また、3種の茶葉より得られた遊離型カテキンを混合させて使用した場合も、2種の場合と略同じ程度に脂質異常症改善作用を示すことを明らかにしている。
【0042】
環状オリゴ糖は、環状構造を有するオリゴ糖の総称であって、複数個のグルコースが環状に連なった形態の多糖類であり、より具体的には、6個のグルコースよりなるα-シクロデキストリン、7個のグルコースよりなるβ-シクロデキストリン、8個のグルコースよりなるγ-シクロデキストリンなどである。本実施形態に係る環状オリゴ糖は、上記いずれのシクロデキストリンを採用してもよい。
【0043】
環状オリゴ糖は、環状構造の内側が疎水性、外側が親水性という構造を持つ。このような構造によって、環状オリゴ糖は、難水溶性分子を環状構造内に取込み、かつ、外側の親水性の作用によって水への溶解性を示す。
【0044】
上述した遊離型カテキンと環状オリゴ糖は、それぞれを単独で使用すればプロアントシアニジンの保存性向上や渋味軽減を可能とするが、併用することでこれらの作用をより高めることができる。
【0045】
また一方で、所定回数のプロアントシアニジンの摂取により得られる脂質異常症改善作用と同等の効果をより少ない摂取回数で発現するためには、遊離型カテキンと環状オリゴ糖とを併用する必要がある。
【0046】
本実施形態に係る脂質異常症改善剤の剤形は特に限定されるものではなく、例えば粉末、細粒、顆粒、ソフトカプセル、ハードカプセル、ゼリー状、グミ状、液体又は錠剤など、あらゆる剤形を選択することができる。特に、粉末、細粒、顆粒、ハードカプセル又は錠剤とすれば、脂質異常症改善剤の内部と空気とが接触することを回避できるため酸化による劣化を防ぎ保存性を更に高めることができる。
【0047】
また、本実施形態に係る脂質異常症改善剤は、プロアントシアニジンと使用感向上剤の他に、製品設計に応じた賦形剤や添加剤、補助成分などを含むこともできる。
【0048】
賦形剤としては、例えば、固形剤の場合には、乳糖や結晶セルロース、デンプンなどとすることができる。また、添加剤としては、例えば、安定剤、甘味剤、抗酸化剤、着香剤、着色剤、保存剤を挙げることができる。また、補助成分としては、脂質異常症改善剤に更なる機能を付与したり、脂質異常症改善を高める成分を挙げることができ、一例としては、食物繊維、大豆タンパク質、カロテノイド類などを挙げることができる。
【0049】
上述の高血圧症改善剤は、機能性食品、医薬部外品、医薬品に配合して使用することができる。
【0050】
ここで、本発明における機能性食品は、医薬品成分を含まない健康の保持増進に寄与するとされる食品全般を包含する概念であり、例えば、栄養補助食品や健康補助食品、栄養調整食品のほか、所謂サプリメントなどの一般食品であったり、特定保健用食品や栄養機能食品、機能性表示食品の如き保健機能食品も含まれる。
【0051】
また医薬部外品は、人体に対する作用がおだやかで厚生労働大臣が指定するものであり、例えば、薬局またはドラッグストア等で市販されている指定医薬部外品が挙げられる。
【0052】
また医薬品は、病気の診断、治療または予防に使用されることを目的とされているものであり、例えば、病院で医師が処方する医療用医薬品であったり、薬局またはドラッグストア等で市販されているOTC医薬品が挙げられる。
【0053】
このように、上述した脂質異常症改善剤によれば、所定回数のプロアントシアニジンの摂取により得られる脂質異常症改善作用と同等の効果をより少ない摂取回数で発現できると共に、保存性と使用感とを改善した脂質異常症改善剤を提供することができる。なお、上述した各構成の説明は本発明の一例であり、これらに限定されるものではない。
【0054】
ここから
以下、本実施形態に係る脂質異常症改善剤について、実際の製造例や効果確認試験の結果を参照しながら更に説明する。
【0055】
〔1〕脂質異常症改善剤の確認試験
(1―1)脂質異常症改善剤の調整
プロアントシアニジンと、使用感向上剤としての遊離型カテキン及び環状オリゴ糖と、賦形剤としての澱粉とを混合して、被験製剤(食品)とした。被験製剤(食品)は、全量1.5gの顆粒状とした。以下、使用感向上剤を含む被験製剤をサンプル製剤と呼称する。
【0056】
また比較のため、プロアントシアニジンと、賦形剤とよりなる比較対象製剤(食品)を調製した。サンプル製剤と比較対象製剤の処方は、下記表1に示すとおりである。なお、表中において、括弧内にそれぞれの成分の由来若しくは物質名を示す。プロアントシアニジンは、アカシア樹皮抽出物としての配合量を示す。アカシア樹皮抽出物には、600 mg/g以上のプロアントシアニジンが含まれる。また、表中の緑茶葉及びほうじ茶葉は、主として遊離型カテキン源としての配合量を示す。緑茶葉には、一般的に50~55 mg/g程度の遊離型カテキン、ほうじ茶葉には、一般的に12~15 mg/g程度の遊離型カテキンがそれぞれ含まれる。
【0057】
【0058】
(1-2)脂質異常症改善剤の安定性評価試験
安定性評価試験では、調整した製剤の安定性を、製剤の色調の経時的変化に着目してハンドリング困難性を評価するため、室温25℃で蛍光灯(40000ルクス)の明かりに3ヶ月間曝した、サンプル製剤及び比較対象製剤を試験に供した。評価は、健康食品等のOEM製造を行う事業所内にて長年にわたり商品試作や官能評価に携わる男女10名(20~60歳)をパネリストとして選定し、目視による色調評価を行った。色調は4段階(1:ほとんど色の変化無し、2:わずかに色が変化した、3:色が変化した、4:かなり変化した)であり、ぞれぞれの評価点を集計し、その平均値を求めた。
図1にその結果を示す。
【0059】
また、10名の各パネリストは、試験に先立って行われた予備試験にて、所定の同色系統の色見本を参照することで、目視による色調評価の度合いがおおよそ揃うように訓練が行われている。
【0060】
図1に示すように、比較対象錠剤の方が使用感向上剤を含むサンプル製剤より色調変化が大きくなる結果となった。すなわち、使用感向上剤によりサンプル製剤の安定性が向上したこと、言い換えるとハンドリング困難性が改善されたことが示された。
【0061】
(1-3)脂質異常症改善剤による脂質異常症改善作用の確認試験
次に、表1に示したサンプル製剤を、男女10名(20~60歳、血中LDLコレステロール値が140 mg/dL未満)の被験者に対して、1日1回(夕食30分前)4週間継続摂取させ、採血により血中LDLコレステロール値を評価した。また、表1に示した比較対象製剤を、1日3回(毎食30分前)、または1日1回(夕食30分前)4週間継続摂取させ、採血により血中LDLコレステロール値を評価した。その結果を
図2に示す。
【0062】
図2に示すように、使用感向上剤を含むサンプル製剤を1日1回(夕食30分前)継続摂取させた場合に、最も血中LDLコレステロール値が低下する結果となった。すなわち、使用感向上剤により、少ない摂取回数でも、比較対象製剤を1日3回(毎食30分前)摂取した場合と、同等もしくはそれ以上の効果が得られることが示された。言い換えると、脂質異常症の改善作用の非持続性の改善が示された。
【0063】
(1-4)口腔内刺激性確認試験(渋味の官能評価試験)
サンプル製剤に含まれるプロアントシアニジンは、強い渋味、収斂味をもつ成分で、食品等に添加した場合、強い刺激を伴う渋味、収斂味によって不快な味となることが知られている。渋味の官能評価試験では、健康食品等のOEM製造を行う事業所内にて長年にわたり商品試作や官能評価に携わる男女10名(20~60歳)をパネリストとして選定し、臭いや味について評価した。
【0064】
渋味の評価については、客観的評価方法、強さの単位や尺度、標準物質が定められていないため、パネリストは、5段階( 0 点: 渋味を感じない、1 点: わずかに渋味を感じる、2 点: 渋味を感じるが無理なく飲める、3 点: 渋味を強く感じ飲みにくい、4 点: 渋味を著しく強く感じ飲めない。)で渋味を評価した。評価値を集計し、平均値を求めた。なお、渋味の基準について確認が必要なときは、各パネリストは適宜比較対象製剤を摂取することが許可された。
【0065】
また、10名の各パネリストは、官能試験に先立って行われた予備官能試験にて、プロアントシアニジンを渋味成分とし、種々のバランスにて希釈した水溶液を試飲させることで、渋味評価の度合いがおおよそ揃うように訓練が行われている。渋味評価の結果を
図3に示す。
【0066】
図3に示すように、比較対象錠剤の方が使用感向上剤を含むサンプル製剤より渋味が強く感じられる結果となった。すなわち、使用感向上剤によりサンプル製剤のプロアントシアニジンの渋味が緩和され製剤の飲みやすさが向上したことが示された。
【0067】
〔2〕構成成分の差異と脂質異常症改善作用との関係の検討
(2-1)使用感向上剤の構成成分を欠く場合の効果確認試験
次に、使用感向上剤を構成する遊離型カテキン(緑茶葉由来、ほうじ茶葉由来)や環状オリゴ糖(β-シクロデキストリン)のいずれかを欠いた場合における効果の確認を行った。また本試験では、比較のために基本処方の製剤と、使用感向上剤を含まない製剤についても試験に供した。試験に供した4つのサンプルの処方を表2に示す。なお、表中において、括弧内にそれぞれの成分の由来若しくは物質名を示す。表中のプロアントシアニジンは、アカシア樹皮抽出物としての配合量を示す。また、表中の緑茶葉及びほうじ茶葉は、主として遊離型カテキン源としての各茶葉粉末の配合量を示す。
【0068】
【0069】
また、効果確認試験(ヒト試験)は、男女10名(20~60歳、血中LDLコレステロール値140 mg/dL未満)の被験者に対して、表2の組成で調製した製剤を1日1回(夕食30分前)12週間継続摂取させて行った。効果確認は、摂取前、摂取4週間後、8週間後、12週間後に採血を実施し、血中LDLコレステロール値を測定することにより行った。その結果を
図4に示す。
【0070】
なお、被験者は本実施例に係る脂質異常症改善剤の基本処方A1を摂取させる群(以下、被験群という。)に10名(男性5名、女性5名)、比較サンプルX1を摂取させる群(以下、X1群という。)に10名(男性5名、女性5名)、比較サンプルX2を摂取させる群(以下、X2群という。)に10名(男性5名、女性5名)、比較サンプルX3を摂取させる群(以下、X3群という。)に10名(男性5名、女性5名)を、血中LDLコレステロール値140 mg/dL未満の条件を満たす男女からそれぞれランダムに割り当てた。なお、以下の説明においてX1~X3群を総称して比較群ともいう。
【0071】
図4に示すように、被験群では血中LDLコレステロール値の低下がみられたが、比較群では、血中LDLコレステロール値の低下は被験群の1/4~1/3程度であった。すなわち、脂質異常症改善剤の使用感向上剤としては、遊離型カテキンと環状オリゴ糖の両方を含む方が、脂質異常症の改善効果が高いことが示された。
【0072】
(2-2)プロアントシアニジンの由来の違いによる効果の検討
次に、プロアントシアニジンの由来の違いにより脂質異常症改善効果に差異が生じるか否かについての確認を行った。また本試験では、比較のために基本処方の製剤と、使用感向上剤を含まない製剤についても試験に供した。試験に供した4つのサンプルの処方を表3に示す。なお、表3中に示すP1は、先に説明した表2におけるA1と同じ基本処方である。なお、表中において、括弧内にそれぞれの成分の由来若しくは物質名を示す。また、表中のプロアントシアニジンは、アカシアについてはアカシア樹皮抽出物として、シナモンについてはシナモン粉末として、麻種子については麻種子抽出物として、のそれぞれの配合量を示す。さらに、表中の緑茶葉及びほうじ茶葉は、主として遊離型カテキン源としての各茶葉粉末のそれぞれ配合量を示す。
【0073】
【0074】
またヒト試験は、上述の方法に準じて行った。基本処方P1を摂取させたP1群を被験群とし、比較サンプルP2~P7を摂取させたP2群~P7群を比較群とした。結果を
図5に示す。
【0075】
図5に示すように、シナモン由来のプロアントシアニジンを単独で含む比較サンプルP2を摂取させたP2群及び麻種子由来のプロアントシアニジンを単独で含む比較サンプルP3を摂取させたP3群は、血中LDLコレステロール値の低下について、アカシア由来のプロアントシアニジンを含む基本処方P1を摂取させたP1群と比較し、同等の変化を示した。また、プロアントシアニジンとしての総量は基本処方P1と同じであるが、アカシア由来のプロアントシアニジン、シナモン由来のプロアントシアニジン及び麻種子由来のプロアントシアニジンから選ばれる2種のプロアントシアニジンを含む比較サンプルP4,P5,P6をそれぞれ摂取させたP4群~P6群につては、P1群よりも血中LDLコレステロール値の低下が大きくなった。さらに、プロアントシアニジンとしての総量は基本処方P1と同じであるが、アカシア由来のプロアントシアニジン、シナモン由来のプロアントシアニジン及び麻種子由来のプロアントシアニジンを含む比較サンプルP7を摂取させたP7群では、P4群~P6群よりもさらに血中LDLコレステロール値の低下することが示された。すなわち、プロアントシアニジンは、由来の異なるものを複数組み合わせることにより、脂質異常症の改善効果が向上することが示された。
【0076】
(2-2)カテキンの違いによる効果の検討
表1-3に示すように、基本処方においては、使用感向上剤の構成成分である遊離型カテキン源として緑茶葉、ほうじ茶葉を選択している。茶葉には、遊離カテキンとして、(-)-カテキン、(-)-エピカテキン、(-)-ガロカテキン、(-)-エピガロカテキンが含まれているが、遊離カテキンのうちいずれのカテキンが脂質異常症に対して最も高い改善効果を示すのかについて検討を行った。試験に供した4つのサンプルの処方を表4に示す。なお、表中において、括弧内にそれぞれの成分の由来若しくは物質名を示す。プロアントシアニジンは、アカシア樹皮抽出物としての配合量を示す。
【0077】
【0078】
また、ヒト試験は、上述の方法に準じて行った。表4に示すように、遊離型カテキンとしてエピカテキンを含むサンプルC1を摂取させたC1群、遊離型カテキンとしてエピガロカテキンを含むサンプルC2を摂取させたC2群、遊離型カテキンに替えてその他のカテキンを含むサンプルC3およびC4を摂取させたC3群及びC4群を比較して検討した。なお、その他カテキンA及びBは、遊離型カテキンではない任意のカテキンである。結果を
図6に示す。
【0079】
図6に示すように、遊離型カテキンとしてエピカテキン、エピガロカテキンのいずれかを摂取したC1群及びC2群では、摂取期間を経るにしたがって、血中LDLコレステロール値が良好に低下することが示された。
図6におけるC1群及びC2群の血中LDLコレステロール値の変化は、
図4を参照して説明した基本処方A1を摂取したA1群と同等のものであった。一方で、C3群及びC4群の血中LDLコレステロール値の低下はわずかなものであり、良好な脂質異常症の改善効果は確認できなかった。以上のことから、遊離型カテキンであるエピカテキン及びエピガロカテキンが、脂質異常症改善剤の使用感を向上させる使用感向上剤として機能していることが確認された。
【0080】
(2-2)茶葉の違いによる効果の検討
表1-3に示すように、基本処方においては、使用感向上剤の構成成分である遊離型カテキン源として緑茶葉、ほうじ茶葉を選択している。茶葉に含まれる、カテキンは、発酵により影響を受けやすいことから、茶葉の違いが脂質異常症の改善効果にどのような影響を及ぼすかについて検討を行った。試験に供した7つのサンプルの処方を表5に示す。なお、表中において、括弧内にそれぞれの成分の由来若しくは物質名を示す。また、表中のプロアントシアニジンは、アカシア樹皮抽出物としての配合量を示す。さらに、表中の緑茶葉、ほうじ茶葉及び紅茶葉は、主として遊離型カテキン源としての各茶葉粉末のそれぞれの配合量を示す。紅茶葉には、一般的に9~11mg/g程度の遊離型カテキンが含まれる。
【0081】
【0082】
また、ヒト試験は、上述の方法に準じて行った。表5に示すように、遊離型カテキン源として緑茶を選択したサンプルD1を摂取させたD1群、遊離型カテキン源としてほうじ茶を選択したサンプルD2を摂取させたD2群、遊離型カテキン源として緑茶を選択したサンプルD3を摂取させたD3群、遊離型カテキンの総量はサンプルD1,D2と同量であるが、遊離型カテキン源として、緑茶、ほうじ茶、紅茶のうちから2種を選択したサンプルD4~D6を摂取させたD4~D6群、及び、遊離型カテキンの総量はサンプルD1,D2と同量であるが、遊離型カテキン源として緑茶、ほうじ茶、紅茶の3種を選択したサンプルD7を摂取させたD7群を比較して検討した。なお、サンプルD4は、表2における基本処方A1と同じ処方である。結果を
図7に示す。
【0083】
図7に示すように、遊離型カテキン源として緑茶葉のみを選択したサンプルD1を摂取させたD1群、遊離カテキン源としてほうじ茶葉のみを選択したサンプルD2を摂取させたD2群は、及び、遊離型カテキン源として紅茶葉のみを選択したサンプルD3を摂取させたD3群は、基本処方A1と同じ遊離型カテキン源として緑茶葉とほうじ茶葉の2種を選択したサンプルD4を摂取させたD4群よりも、血中LDLコレステロール値の低下がみられなかった。また、遊離型カテキン源として緑茶葉と紅茶葉の2種を選択したサンプルD5及び遊離型カテキン源としてほうじ茶葉と紅茶葉の2種を選択したサンプルD6をそれぞれ摂取させたD5群およびD6群では、D4群と同等の血中LDLコレステロール値の低下が示された。さらに、遊離型カテキン源として緑茶葉、ほうじ茶葉及び紅茶葉の3種を選択したサンプルD7を摂取させたD7群では、D4群~D6群よりもさらに血中LDLコレステロール値の低下することが示された。すなわち、使用感向上剤としての遊離型カテキン源として、異なる茶葉を複数組み合わせることにより、脂質異常症の改善において使用感が向上、すなわち、プロアントシアニジンの配合量を増大させることなく脂質異常症改善作用が向上することが示された。
【0084】
上述してきたように、本実施形態に係る脂質異常症改善剤によれば、プロアントシアニジンと使用感向上剤とにより構成し、使用感向上剤として、遊離型カテキンと環状オリゴ糖を配合したことから、脂質異常症改善剤効果をより少ない量のプロアントシアニジンの量で発現させることができ、しかも、苦味が低減された飲みやすい脂質異常症改善剤を提供することができる。
【0085】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。