IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本エマルジョン株式会社の特許一覧

特許7537818油性液状化粧料用組成物および油性液状化粧料
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】油性液状化粧料用組成物および油性液状化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20240814BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K8/86
A61Q1/14
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024023958
(22)【出願日】2024-02-20
【審査請求日】2024-02-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591236367
【氏名又は名称】日本エマルジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 雄一
(72)【発明者】
【氏名】石川 義文
(72)【発明者】
【氏名】大安 恵太郎
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070481(JP,A)
【文献】特開2021-031402(JP,A)
【文献】特開2021-178800(JP,A)
【文献】特開2022-026739(JP,A)
【文献】特開2022-035124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均重合度が15~50の範囲であるポリグリセリンと;脂肪酸と;のエステルであるポリグリセリン混合脂肪酸エステルを含有し、
前記脂肪酸は、炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸の少なくとも1つと、オレイン酸およびイソステアリン酸のうちの少なくとも1つと、から構成され、
前記ポリグリセリン混合脂肪酸エステルにおける前記ポリグリセリンに対する前記脂肪酸のエステル化率が、20~30%の範囲であることを特徴とする油性液状化粧料用組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の油性液状化粧料用組成物であって、
前記中鎖脂肪酸がモル比で前記脂肪酸のうちの50%以上であることを特徴とする油性液状化粧料用組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の油性液状化粧料用組成物であって、
前記油性液状化粧料用組成物のIOBが、0.90~1.20の範囲であることを特徴とする油性液状化粧料用組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の油性液状化粧料用組成物であって、
前記油性液状化粧料用組成物の80℃における粘度が、10,000mPa・s以下であることを特徴とする油性液状化粧料用組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の油性液状化粧料用組成物を含有することを特徴とする油性液状化粧料。
【請求項6】
請求項5に記載の油性液状化粧料であって、
水の配合量が、0~10質量%の範囲であることを特徴とする油性液状化粧料。
【請求項7】
請求項5に記載の油性液状化粧料であって、
水の配合量が、20質量%以上であることを特徴とする油性液状化粧料。
【請求項8】
請求項5に記載の油性液状化粧料であって、
前記油性液状化粧料が、クレンジング化粧料であることを特徴とする油性液状化粧料。
【請求項9】
請求項5に記載の油性液状化粧料であって、
濡れた手で使用することが可能で、風呂場での使用を前提とした製品であることを特徴とする油性液状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレンジング化粧料、浴用化粧料等の油性液状化粧料用に用いられる油性液状化粧料用組成物、およびその油性液状化粧料用組成物を含有する油性液状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、皮膚上の皮脂汚れや口紅、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ等のメイクアップ化粧料を除去する目的で、クレンジング化粧料が用いられている。クレンジング化粧料とは、クレンジング基剤として主に油性成分や界面活性剤等を高配合させたものであり、皮膚に塗布して皮脂汚れやメイクアップ汚れ等の汚れ等と馴染ませることによって汚れ等を油性成分中に移行させた後に、拭き取り、または水洗することによって皮膚から除去されるものである。クレンジング化粧料の形態としては、形状的にクリーム状、乳液状、ゲル状、固体状、液状等に分類され、それぞれ使用性に応じて選択されており、中でもメイクアップ化粧料との馴染みがよく、かつ容易に水で洗い流すことが可能な油性液状形態が主流となっている。
【0003】
油性液状形態のクレンジング化粧料には、メイクアップ汚れ等と馴染ませた後に水と接触することによって水中油型のエマルションを生成し、水洗されることによって皮膚から除去させることに加え、水中油型エマルションの生成度合いにより、水洗後の肌に残存する不快な油分感を抑制することが求められる。これは、化粧料に用いる非イオン性界面活性剤の構造や親油基と親水基のバランスを表すIOB値により決定される。
【0004】
そこで、従来からクレンジング化粧料に用いられている非イオン性界面活性剤に加えて、新たにポリグリセリン中鎖脂肪酸エステルを補助界面活性剤として配合することによって微細なエマルションを生成させる化粧料(特許文献1を参照)が開示されている。
【0005】
また、クレンジング後の油性感や乾燥感がほとんどない油系クレンジング化粧料として、重合度3以下のグリセリン重合物の含有量が20%以下であるポリグリセリンが炭素数12~22である脂肪酸でエステル化されたポリグリセリン脂肪酸エステルを含有させた化粧料(特許文献2を参照)が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1のクレンジング化粧料に用いられるポリグリセリン中鎖脂肪酸エステルは、親油基となる脂肪酸鎖長が短く、エステル化率を上げた場合においても液状性状を保持し易い高極性の非イオン性界面活性剤として設計できる反面、親油基の脂肪酸部に不飽和結合や分岐構造を有さないため、これを配合したクレンジング化粧料の低温安定性の確保が困難となる場合があった。
【0007】
また、特許文献2のポリグリセリン脂肪酸エステルをクレンジング化粧料用の組成物とするには、親油基となる脂肪酸に直鎖の飽和脂肪酸を用いると固体性状となるため望ましくなく、イソパルミチン酸やイソステアリン酸等の分岐脂肪酸またはオレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸を用いて液体性状とすることが望ましい。また、イソステアリン酸やオレイン酸は鎖長が長くなるため非イオン性界面活性剤としての構造設計をする際に、エステル化率によるIOB値の調整が困難となる上、エステル化率が低くなると組成物の粘度が高く、反応器からの払い出しが困難になる等の生産性の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2005-162691号公報
【文献】特開2019-081729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、液状性状を有しながらも構造設計が容易であり、生産性に優れ、これを配合した油性液状化粧料が低温環境下においても透明性を有することが可能で経時的に安定な油性液状化粧料用組成物、およびその油性液状化粧料用組成物を含有する油性液状化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、平均重合度が15~50の範囲であるポリグリセリンと;脂肪酸と;のエステルであるポリグリセリン混合脂肪酸エステルを含有し、前記脂肪酸は、炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸の少なくとも1つと、オレイン酸およびイソステアリン酸のうちの少なくとも1つと、から構成され、前記ポリグリセリン混合脂肪酸エステルにおける前記ポリグリセリンに対する前記脂肪酸のエステル化率が、20~30%の範囲である、油性液状化粧料用組成物である。
【0011】
前記油性液状化粧料用組成物において、前記中鎖脂肪酸がモル比で前記脂肪酸のうちの50%以上であることが好ましい。
【0012】
前記油性液状化粧料用組成物のIOBが、0.90~1.20の範囲であることが好ましい。
【0013】
前記油性液状化粧料用組成物の80℃における粘度が、10,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0014】
本発明は、前記油性液状化粧料用組成物を含有する、油性液状化粧料である。
【0015】
前記油性液状化粧料において、水の配合量が、0~10質量%の範囲であることが好ましい。
【0016】
前記油性液状化粧料において、水の配合量が、20質量%以上であることが好ましい。
【0017】
前記油性液状化粧料は、クレンジング化粧料であることが好ましい。
【0018】
前記油性液状化粧料は、濡れた手で使用することが可能で、風呂場での使用を前提とした製品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、液状性状を有しながらも構造設計が容易であり、生産性に優れ、これを配合した油性液状化粧料が低温環境下においても透明性を有することが可能で経時的に安定な油性液状化粧料用組成物、およびその油性液状化粧料用組成物を含有する油性液状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0021】
<油性液状化粧料用組成物>
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物は、平均重合度が15~50の範囲であるポリグリセリンと、炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸とオレイン酸およびイソステアリン酸のうちの少なくとも1つとを含む脂肪酸と、のエステルであるポリグリセリン混合脂肪酸エステルを含有し、ポリグリセリン混合脂肪酸エステルにおけるポリグリセリンに対する脂肪酸のエステル化率が、20~30%の範囲である。
【0022】
本発明者は、平均重合度が15~50の範囲であるポリグリセリンと、炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸とオレイン酸およびイソステアリン酸のうちの少なくとも1つとを含む脂肪酸と、のエステルであるポリグリセリン混合脂肪酸エステルを含有し、ポリグリセリン混合脂肪酸エステルにおけるポリグリセリンに対する脂肪酸のエステル化率を20~30%の範囲とすることによって、液状性状を有しながらも構造設計が容易であり、生産性に優れ、これを配合したクレンジング化粧料等の油性液状化粧料が低温環境下においても透明性を有することが可能で経時的に安定となることを見出した。本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物は、生産性に優れた新規の化合物であり、この油性液状化粧料用組成物を用いることによって、長期にわたり安定なクレンジング化粧料等の油性液状化粧料を得ることが可能となる。
【0023】
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物におけるポリグリセリン混合脂肪酸エステルを構成する平均重合度が15~50の範囲であるポリグリセリンは、非イオン性界面活性剤である油性液状化粧料用組成物の親水基として働き、水洗後のさっぱりとした感触の付与および水酸基による水素結合を利用した逆ミセルの形成に大きな役割を果たす成分である。
【0024】
ポリグリセリンの平均重合度は、15~50の範囲であり、20~40の範囲であることが好ましい。ポリグリセリンの平均重合度が15未満であると、IOBが低下して親水性が不足し、50を超えると、高粘度になるため、反応器への仕込みが困難となる。
【0025】
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物におけるポリグリセリン混合脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸と、オレイン酸およびイソステアリン酸のうちの少なくとも1つと、を含む。中鎖脂肪酸、イソステアリン酸およびオレイン酸は、油性液状化粧料用組成物の親油基を形成する脂肪酸残基となる。脂肪酸の組成比が油性液状化粧料用組成物の性状やこれを配合したクレンジング化粧料等の油性液状化粧料の低温安定性能へ大きく寄与される。
【0026】
炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸としては、直鎖飽和脂肪酸であるカプリル酸(オクタン酸ともいう)、ペラルゴン酸(ノナン酸ともいう)、カプリン酸(デカン酸ともいう)、直鎖不飽和脂肪酸であるオクテン酸、ノネン酸、デセン酸、分岐飽和脂肪酸であるイソカプリル酸等が挙げられる。なお、「炭素数が8~10」には、カルボキシル基の炭素数を含む。
【0027】
ポリグリセリン混合脂肪酸エステルにおけるポリグリセリンに対する脂肪酸のエステル化率は、20~30%の範囲であり、20~28%の範囲であることが好ましい。ポリグリセリンに対する脂肪酸のエステル化率が20%未満であると、組成物の粘度が高くなり、高温下においても反応器からの払い出しが困難となる場合がある。また、ポリグリセリンに対する脂肪酸のエステル化率が30%を超えると、組成物の取り扱いは容易になるが、親油性が増すことによって極性が低下し、満足する界面活性能が得られない場合がある。
【0028】
ポリグリセリン混合脂肪酸エステルにおける、炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸と、オレイン酸およびイソステアリン酸のうちの少なくとも1つと、の構成比は、炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸がモル比で全脂肪酸のうちの50%以上であることが好ましく、50~80%の範囲であることがより好ましい。炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸がモル比で全脂肪酸のうちの50%未満であると、親水性が低下し、満足する界面活性能が得られない場合があり、80%を超えると、構造中に不飽和脂肪酸および分岐脂肪酸に由来する基の含有量が低下するため、低温時の性状に影響が出る場合がある。
【0029】
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物におけるポリグリセリン混合脂肪酸エステルのIOBは、0.90~1.20の範囲であることが好ましく、0.90~1.10の範囲であることがより好ましい。油性液状化粧料用組成物のIOBが0.90未満であると、水への溶解性が低下する場合があり、1.20を超えると、油への溶解性が低下し、満足する界面活性能が得られない場合がある。
【0030】
本実施形態において、IOB(Inorganic Organic Balance)とは、有機概念図に基づいて求められる有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比であり、すなわち「無機性値(IV)/有機性値(OV)=IOB」となる。これは、「有機概念図-基礎と応用-」(甲田善生著、三共出版、1984)で説明されている。
【0031】
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物におけるポリグリセリン混合脂肪酸エステルは、合成方法に捉われることなく、炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸とオレイン酸およびイソステアリン酸のうちの少なくとも1つとを含む脂肪酸と、ポリグリセリンと、のエステル化反応により得られ、公知の方法に従ってさらに精製してもよい。例えば、原料となる脂肪酸とポリグリセリンに酸触媒を加え、常圧または減圧下、50~250℃の範囲、例えば200℃にてエステル化反応を行うことによって製造することができる。なお、原料となる脂肪酸の由来やポリグリセリンの製造方法は特に限定されない。
【0032】
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物のB型粘度計における80℃の粘度が、10,000mPa・s以下であることが好ましく、9,000mPa・s以下であることがより好ましい。油性液状化粧料用組成物のB型粘度計における80℃の粘度が、10,000mPa・sを超えると、反応器からの払い出しや濾過が困難となり、生産性を確保できない場合がある。油性液状化粧料用組成物のB型粘度計における80℃の粘度の下限は、低ければ低いほどよく、特に制限はないが、例えば、5,000mPa・sである。
【0033】
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物におけるポリグリセリン混合脂肪酸エステルは、その開発目的により、種々のタイプのエステル化合物とすることができる。すなわち、脂肪酸種の選択、異なる二種以上の脂肪酸の組み合わせにより、所望とする界面活性能を有するエステルを得ることができる。
【0034】
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物は、その原料を適切に選択することによって、粘度、IOB値を任意に調整することができ、使用感、安定性に優れた化粧料を提供することができる。
【0035】
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物は、ポリグリセリン混合脂肪酸エステルの他に、酸化防止剤、防腐剤等の他の成分を含んでもよい。
【0036】
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物がポリグリセリン混合脂肪酸エステル以外の成分を含む場合、他の成分の含有量は、油性液状化粧料用組成物の量に対して、例えば、0.1~10.0質量%の範囲である。
【0037】
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物は、化粧料分野において好適に使用することができ、特に、油性液状化粧料等の油性化粧料において好適に使用することができる。
【0038】
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物が用いられる化粧料の用途は、特に限定されるものではなく、クレンジングオイル、クレンジングリキッド、クレンジングウォーター、クレンジングバーム、クレンジングゲル、クレンジングクリーム、クレンジングミルク等のクレンジング化粧料、バスオイル、バスミルク等の浴用化粧料、化粧水、美容液、クリーム、乳液等のスキンケア化粧料、UVミスト、UVゲル、UVクリーム等の紫外線防御化粧料、ヘアオイル、ヘアワックス、ヘアミスト、ポマード、ヘアコンディショナー等のヘアケア化粧料、ヘアシャンプー、ボディシャンプー、洗顔料等の洗浄料等における非イオン性界面活性剤として用いることができる。
【0039】
<油性液状化粧料>
本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物を含有する油性液状化粧料について,以下に説明する。本実施形態に係る油性液状化粧料は、上記油性液状化粧料用組成物を含有する化粧料である。本実施形態に係る油性液状化粧料は、例えば、上記油性液状化粧料用組成物と、油剤と、を含有する化粧料である。
【0040】
本実施形態に係る油性液状化粧料は、例えば、クレンジングオイル、クレンジングリキッド、クレンジングウォーター、クレンジングバーム、クレンジングゲル、クレンジングクリーム、クレンジングミルク等のクレンジング化粧料、バスオイル、バスミルク等の浴用化粧料、化粧水、美容液、クリーム、乳液等のスキンケア化粧料、UVミスト、UVゲル、UVクリーム等の紫外線防御化粧料、ヘアオイル、ヘアワックス、ヘアミスト、ポマード、ヘアコンディショナー等のヘアケア化粧料、ヘアシャンプー、ボディシャンプー、洗顔料等の洗浄料等が挙げられ、クレンジング化粧料が好ましい。クレンジング化粧料は、皮膚上の皮脂汚れや口紅、ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ等のメイクアップ化粧料等を除去する目的で使用される化粧料である。
【0041】
本実施形態に係るクレンジング化粧料等の油性液状化粧料は、例えば、濡れた手で使用することが可能で、風呂場等での使用を前提とした製品である。
【0042】
油性液状化粧料の剤形には油性液状であれば特段の制限がなく、乳化系、可溶化系、溶液系、粉末分散系、水-油二層系、水-油-粉末三層系等、どのような剤形であってもよい。
【0043】
本実施形態に係るクレンジング化粧料等の油性液状化粧料における上記油性液状化粧料用組成物の配合量は、特に限定されないが、例えば、油性液状化粧料の質量に対して0.1~50質量%程度であり、0.5~40質量%の範囲であることが好ましい。油性液状化粧料用組成物における上記油性液状化粧料用組成物の配合量が油性液状化粧料の質量に対して0.1質量%未満であると、水洗性を付与できずクレンジング化粧料としての性能を発揮できない場合があり、50質量%を超えると、製剤の濁りや、塗布のときの感触を損ねる場合がある。
【0044】
本実施形態に係るクレンジング化粧料等の油性液状化粧料には、油剤として、飽和または不飽和脂肪酸、およびこれらの飽和または不飽和脂肪酸から得られる高級アルコール類、スクワラン、ヒマシ油およびその誘導体、ミツロウ、液状ラノリンおよび精製ラノリンを含むラノリン類ならびにその誘導体、コレステロールおよびその誘導体、マカデミアナッツ油、ホホバ油、カルナウバロウ、ゴマ油、パーム油、キャンデリラロウ、鯨ロウ等の動植物由来の油相原料、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、ワセリン、セレシン等の石油由来および鉱物由来の油相原料をはじめ、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン類、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、(カプリル酸/カプリン酸)グリセリズ等のエステル油、ミリストイルメチルアミノプロピオン酸ヘキシルデシル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)等のアシルアミノ酸エステル油、ケトン類、油性成分として通常用いられるものであれば、本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物の非イオン性界面活性剤としての効果を損なわない範囲において任意に併用することができる。
【0045】
本実施形態に係るクレンジング化粧料等の油性液状化粧料における油剤の含有量は、特に限定されないが、用途によって好適範囲が異なる。例えば、クレンジングオイルにおける油剤の配合量としては、例えば35~99質量%の範囲、クレンジングリキッドにおける油剤の配合量としては、例えば15~40質量%の範囲等とすることができる。また、乳化化粧料における油剤の含有量としては、例えば0.1~15質量%の範囲等とすることができる。
【0046】
本実施形態に係る油性液状化粧料がオイル型のクレンジング化粧料の場合、水を含んでも含まなくてもよく、水の配合量は、例えば、0~10質量%の範囲であり、0~5質量%の範囲であることが好ましい。オイル型のクレンジング化粧料における水の配合量が10質量%を超えると、逆ミセルの形成を保持できず製剤が分離する場合がある。
【0047】
本実施形態に係る油性液状化粧料がリキッド型のクレンジング化粧料の場合、水を含んでもよく、水の配合量は、例えば、20質量%以上であり、20~50質量%の範囲であることが好ましい。リキッド型のクレンジング化粧料における水の配合量が20質量%未満であると、バイコンティニュアスマイクロエマルション構造を形成できない場合があり、50質量%を超えると、メイクアップ化粧料との馴染み性が低下する場合がある。
【0048】
本実施形態に係るクレンジング化粧料等の油性液状化粧料は、上記油性液状化粧料用組成物、油剤、水以外に、上記油性液状化粧料用組成物以外の非イオン性界面活性剤として、セスキオレイン酸ポリグリセリル-2、セスキイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジオレイン酸ポリグリセリル-2等のジグリセリン脂肪酸エステル、ヤシ油脂肪酸ポリグリセリル-3、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-3等のトリグリセリン脂肪酸エステル、カプリン酸ポリグリセリル-4、イソステアリン酸ポリグリセリル-4等のテトラグリセリン脂肪酸エステル、カプリル酸ポリグリセリル-6、ラウリン酸ポリグリセリル-6、ジオレイン酸ポリグリセリル-6等のヘキサグリセリン脂肪酸エステル、ラウリン酸ポリグリセリル-10、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、ジオレイン酸ポリグリセリル-10等のデカグリセリン脂肪酸エステル、ヘキサカプリル酸ポリグリセリル-20等のエイコサグリセリン脂肪酸エステル、ペンタラウリン酸ポリグリセリル-40等のテトラコンタグリセリン脂肪酸エステル、ジイソステアリン酸グリセリル、(カプリル酸/カプリン酸)グリセリズ等のグリセリン脂肪酸エステル、オレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル、ラウレス-7、セテス-20、PPG-2-デセス-7等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、PEG-10フィトステロール、コレス-20等のポリオキシエチレンステーロールエーテル、イソステアリン酸PEG-8、イソステアリン酸PEG-12、オレイン酸PEG-10、ジイソステアリン酸PEG-8、ジオレイン酸PEG-12等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ソルベス-30等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリソルベート80等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、PEG-10水添ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラウリン酸PEG-9グリセリル、イソステアリン酸PEG-8グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル等、非イオン性界面活性剤として通常用いられるものであれば、本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物の効果を損なわない範囲において任意に併用することができる。
【0049】
本実施形態に係るクレンジング化粧料等の油性液状化粧料は、イオン性界面活性剤を本実施形態に係る油性液状化粧料用組成物の効果を損なわない範囲で配合してもよい。イオン性界面活性剤の種類は特に限定されるものではなく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤から適宜選択することができる。イオン性界面活性剤としては、例えば、N-長鎖アシル酸性アミノ酸塩やN-長鎖アシル中性アミノ酸塩等のN-長鎖アシルアミノ酸塩、N-長鎖脂肪酸アシル-N-メチルタウリン塩、アルキルサルフェートおよびアルキレンオキシド付加物、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、脂肪酸の金属塩および弱塩基、スルホコハク酸系界面活性剤、アルキルフォスフェートおよびそのアルキレンオキシド付加物、アルキルエーテルカルボン酸等のアニオン性界面活性剤、アルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド等の脂肪族アミン塩、それらの4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム等の芳香族4級アンモニウム塩、脂肪酸アシルアルギニンエステル等のカチオン界面活性剤、ならびにカルボキシベタイン等のベタイン型界面活性剤、アミノカルボン酸型界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤等の各種の界面活性剤が挙げられる。
【0050】
本実施形態に係るクレンジング化粧料等の油性液状化粧料には、保湿剤を本実施形態に係る油性液状化粧料用組成の効果を損なわない範囲で水相成分として配合してもよい。保湿剤としては、例えば、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、プロパンジオール、グリセリン等の多価アルコール、ソルビトール、マルチトール等の糖類、グリシン、アラニン、セリン、スレオニン、アルギニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ロイシン、バリン等のアミノ酸類、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸を含むポリアミノ酸およびその塩、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、アラビヤゴム類、アルギン酸塩、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、キチン、水溶性キチン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性高分子、ならびに、エタノール、プロパノール等の低級アルコール等が挙げられる。
【0051】
本実施形態に係るクレンジング化粧料等の油性液状化粧料には、さらに、界面活性剤や保湿剤以外にも通常、化粧料や医薬品に通常用いられる成分を、本実施形態に係る油性液状化粧料用組成の効果を損なわない範囲で配合することができる。例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、香料、着色剤、キレート剤、清涼剤、植物抽出液、ビタミン類、pH調整剤、防腐剤等の添加剤等を適宜、その用途に応じて配合することができる。
【0052】
本明細書は、以下の実施形態を含む。
(1)平均重合度が15~50の範囲であるポリグリセリンと;炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸とオレイン酸およびイソステアリン酸のうちの少なくとも1つとを含む脂肪酸と;のエステルであるポリグリセリン混合脂肪酸エステルを含有し、
前記ポリグリセリン混合脂肪酸エステルにおける前記ポリグリセリンに対する前記脂肪酸のエステル化率が、20~30%の範囲である、油性液状化粧料用組成物。
【0053】
(2)(1)に記載の油性液状化粧料用組成物であって、
前記中鎖脂肪酸がモル比で前記脂肪酸のうちの50%以上である、油性液状化粧料用組成物。
【0054】
(3)(1)または(2)に記載の油性液状化粧料用組成物であって、
前記油性液状化粧料用組成物のIOBが、0.90~1.20の範囲である、油性液状化粧料用組成物。
【0055】
(4)(1)~(3)のいずれか1つに記載の油性液状化粧料用組成物であって、
前記油性液状化粧料用組成物の80℃における粘度が、10,000mPa・s以下である、油性液状化粧料用組成物。
【0056】
(5)(1)~(4)のいずれか1つに記載の油性液状化粧料用組成物を含有する、油性液状化粧料。
【0057】
(6)(5)に記載の油性液状化粧料であって、
水の配合量が、0~10質量%の範囲である、油性液状化粧料。
【0058】
(7)(5)に記載の油性液状化粧料であって、
水の配合量が、20質量%以上である、油性液状化粧料。
【0059】
(8)(5)~(7)のいずれか1つに記載の油性液状化粧料であって、
前記油性液状化粧料が、クレンジング化粧料であることを特徴とする油性液状化粧料。
【0060】
(9)(5)~(8)のいずれか1つに記載の油性液状化粧料であって、
濡れた手で使用することが可能で、風呂場での使用を前提とした製品である、油性液状化粧料。
【実施例
【0061】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は、「質量%」を表す。
【0062】
ポリグリセリンの平均重合度は、水酸基価から以下の式(i)により算出できる。なお、式(i)中の水酸基価は「基準油脂分析試験法」(日本油化学協会制定)に準拠し測定することができる。
平均重合度=(112.2×10-18×水酸基価)/(74×水酸基価-56.1×10)・・・(i)
【0063】
平均重合度が20であるポリグリセリンの平均分子量(Mn)は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(株式会社島津製作所製、MALDI-8030)により確認した。
【0064】
得られたポリグリセリン混合脂肪酸エステルのエステル化率は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製に用いたポリグリセリンの水酸基価、および、炭素数が8~10の中鎖脂肪酸と、オレイン酸およびイソステアリン酸のうちの少なくとも1つとのモル数に基づいて計算することにより決定した。得られたポリグリセリン混合脂肪酸エステルにおける炭素数が8~10の中鎖脂肪酸の全脂肪酸に対するモル比は、ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製に用いた炭素数が8~10の中鎖脂肪酸と、オレイン酸およびイソステアリン酸のうちの少なくとも1つとのモル数に基づいて計算することにより決定した。
【0065】
ポリグリセリン混合脂肪酸エステルのエステル化率は、ポリグリセリンの平均重合度(n)、このポリグリセリンが有する水酸基数(n+2)、ポリグリセリン1モルに付加している脂肪酸のモル数(M)としたとき、以下の式(ii)により算出することができる。
エステル化率(%)=(M/(n+2))×100・・・(ii)
【0066】
[ポリグリセリン脂肪酸エステルの調製]
<合成例1>
平均重合度が20であるポリグリセリン(平均分子量:1516)246.4gと炭素数が8の中鎖脂肪酸であるカプリル酸103.2g(0.72mol)とオレイン酸50.4g(0.18mol)とを反応容器に入れ、0.12gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流化において250℃で、3.5時間反応を行い、エステル化率(ES)が28%であり、炭素数が8~10の中鎖脂肪酸がモル比で全脂肪酸の80%、IOBが0.98の「ヘキサ(カプリル酸/オレイン酸)ポリグリセリル-20」338gを得た。
【0067】
<合成例2>
平均重合度が20であるポリグリセリン249.6gとカプリル酸65.2g(0.45mol)とオレイン酸85.2g(0.30mol)とを反応容器に入れ、0.20gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流化において250℃で、4時間反応を行い、エステル化率が23%であり、炭素数が8~10の中鎖脂肪酸がモル比で全脂肪酸の60%、IOBが0.99の「ペンタ(カプリル酸/オレイン酸)ポリグリセリル-20」336gを得た。
【0068】
<合成例3>
平均重合度が20であるポリグリセリン236.4gと炭素数が10の中鎖脂肪酸であるカプリン酸61.6g(0.36mol)とイソステアリン酸102.0g(0.36mol)とを反応容器に入れ、0.16gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流化において250℃で、4時間反応を行い、エステル化率が23%であり、炭素数が8~10の中鎖脂肪酸がモル比で全脂肪酸の50%、IOBが0.97の「ペンタ(カプリン酸/イソステアリン酸)ポリグリセリル-20」330gを得た。
【0069】
<合成例4>
平均重合度が40であるポリグリセリン256.4gとカプリル酸78.0g(0.54mol)とオレイン酸65.6g(0.23mol)とを反応容器に入れ、0.12gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流化において250℃で、3.5時間反応を行い、エステル化率が24%であり、炭素数が8~10の中鎖脂肪酸がモル比で全脂肪酸の70%、IOBが1.00の「デカ(カプリル酸/オレイン酸)ポリグリセリル-40」329gを得た。
【0070】
<合成例5>
平均重合度が20であるポリグリセリン250.8gとカプリル酸39.6g(0.27mol)とカプリン酸109.6g(0.64mol)とを反応容器に入れ、無触媒、窒素気流化において250℃で、3時間反応を行い、エステル化率が28%であり、炭素数が8~10の中鎖脂肪酸がモル比で全脂肪酸の100%、IOBが1.06の「ヘキサ(カプリル酸/カプリン酸)ポリグリセリル-20」339gを得た。
【0071】
<合成例6>
平均重合度が20であるポリグリセリン267.2gとカプリル酸35.2g(0.24mol)とカプリン酸97.6g(0.57mol)とを反応容器に入れ、無触媒、窒素気流化において250℃で、3時間反応を行い、エステル化率が23%であり、炭素数が8~10の中鎖脂肪酸がモル比で全脂肪酸の100%、IOBが1.17の「ペンタ(カプリル酸/カプリン酸)ポリグリセリル-20」339gを得た。
【0072】
<合成例7>
平均重合度が20であるポリグリセリン264.4gとオレイン酸135.6g(0.48mol)とを反応容器に入れ、0.4gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流化において250℃で、3時間反応を行い、エステル化率が14%であり、炭素数が8~10の中鎖脂肪酸を親油基として含まない(すなわち、モル比で全脂肪酸の0%)、IOBが1.08の「トリオレイン酸ポリグリセリル-20」319gを得た。
【0073】
<合成例8>
平均重合度が40であるポリグリセリン255.6gとカプリル酸144.4g(1.0mol)とを反応容器に入れ、0.12gの水酸化ナトリウムを加えた後、窒素気流化において250℃で、4時間反応を行い、エステル化率が31%であり、炭素数が8~10の中鎖脂肪酸がモル比で全脂肪酸の100%、IOBが0.92の「トリデカカプリル酸ポリグリセリル-40」330gを得た。
【0074】
以下の実施例および比較例では、以下の項目について評価した。
【0075】
「粘度」
合成例1~8のポリグリセリン脂肪酸エステルについて、80℃における粘度をB型粘度計である東機産業製のBM型粘度計TVB-10M(12rpm、ローターNo.3)を使用して測定し、生産性を下記評価基準で評価した。結果を表1に示す。
【0076】
(評価基準)
〇:粘度が10,000mPa・s以下の透明または懸濁液状である
×:粘度が10,000mPa・s以上の透明または懸濁液状であり、生産性に課題がある
【0077】
【表1】
【0078】
上記表1に示されるように、エステル基として中鎖脂肪酸を含有せず、エステル化率が20%未満である合成例7のポリグリセリンオレイン酸エステルは80℃においても高い粘性を示すが、炭素数が8~10の中鎖脂肪酸がモル比で全脂肪酸の50%以上を占める合成例1~6および8の化合物は反応器からの払い出しや濾過が容易に実施できる。
【0079】
[ノニオン溶解型油性液状化粧料の調製]
合成例1~8のポリグリセリン脂肪酸エステル10質量%と非イオン性界面活性剤としてジオレイン酸デカグリセリル(ジオレイン酸ポリグリセリル-10、EMALEX DOG-10/日本エマルジョン社製)12質量%の計22質量%と、油剤としてエチルヘキサン酸セチル(EMALEX CC-168/日本エマルジョン社製)78質量%とを70℃で加熱溶解し、30℃まで撹拌冷却して、水を含有しない油性液状化粧料を調製した。
【0080】
調製した油性液状化粧料について、25℃および-5℃での安定性、汚れ馴染みと水洗後の感触について下記評価基準でそれぞれ評価を行った。結果を表2に示す。なお、25℃および/または-5℃の安定性評価が「×」の製剤については、汚れ落ち性、水洗後の感触の評価は行わず「-」と記載した。
【0081】
「安定性」
油性液状化粧料50gをネジ口メディウム瓶(容量100ml)に入れ、25℃および-5℃恒温槽それぞれに30日間静置して評価した。
【0082】
(評価基準)
〇:濁りや分離が見られず透明性を維持する
△:分離は見られないが濁る若しくは固化する
×:分離している
【0083】
「汚れ馴染みと水洗後の感触」
前腕内側部に口紅(商品名:プルーフシャイニールージュ50/株式会社伊勢半)を適量塗布し、実施例および比較例の油性液状化粧料5gを滴下し、指でクレンジング動作を上下に10往復し、メイク汚れとの馴染み度合いと、さらに流水で洗い流し、メイク汚れの洗い流し性および使用後のさっぱり感を評価した。
(評価基準)
〇:メイク汚れとよく馴染み、水洗後に油分感が残らずさっぱりする
△:メイク汚れとよく馴染むが、水洗後にわずかにべとつきが残る
×:メイク汚れと馴染まない、または、水洗後にべとつきが残る
【0084】
【表2】
【0085】
上記表2に示されるように、親油基として中鎖脂肪酸残基およびイソステアリン酸またはオレイン酸残基を有するポリグリセリン脂肪酸エステルを含む実施例1~4の油性液状化粧料は、炭素鎖長のバランスにより油剤との相溶性に優れ、また脂肪酸構造中のイソ分岐や二重結合により25℃だけでなく、-5℃においても透明な液状性状を保持できると考えられる。逆に、親油基として中鎖脂肪酸残基しか有さないポリグリセリン脂肪酸エステルを含む比較例1、比較例2、比較例4や、親油基としてオレイン酸残基しか有さないポリグリセリン脂肪酸エステルを含む比較例3の油性液状化粧料は、IOBが0.90~1.20の範囲であっても-5℃で濁りの発生や、油への相溶性が低く安定性の確保が難しいことがわかる。
【0086】
[逆ミセル形成型油性液状化粧料の調製]
合成例2および合成例5のポリグリセリン脂肪酸エステル10質量%と、非イオン性界面活性剤としてセスキオレイン酸ジグリセリル(セスキオレイン酸ポリグリセリル-2、EMALEX SOG-2/日本エマルジョン社製)10質量%と、油剤としてエチルヘキサン酸セチル(EMALEX CC-168/日本エマルジョン社製)50質量%と、イソノナン酸イソノニル(EMALEX NINI-99/日本エマルジョン社製)23質量%と、メチルポリシロキサン(KF-96A-10cs/信越化学工業社製)5質量%とを70℃で加熱溶解した後、水を2質量%滴下、撹拌し、30℃まで撹拌冷却して、水を含有する油性液状化粧料を調製した。
【0087】
調製した油性液状化粧料について、25℃および-5℃での安定性について上記評価基準で、再乳化性について下記評価基準でそれぞれ評価を行った。結果を表3に示す。なお、25℃および/または-5℃の安定性評価が「×」の製剤については、再乳化性の評価は行わず「-」と記載した。
【0088】
「再乳化性」
油性液状化粧料0.5gを人口皮革に均一になるように塗布し、3gの精製水を滴下した際の白濁度合いを目視で確認し評価した。
【0089】
(評価基準)
〇:白濁に乳化する
△:やや白濁に乳化する
×:白濁に乳化しない
【0090】
【表3】
【0091】
上記表3に示されるように、親油基として中鎖脂肪酸残基およびオレイン酸残基を有するポリグリセリン脂肪酸エステルを含む実施例5の油性液状化粧料は、添加された精製水を非イオン性界面活性剤であるセスキオレイン酸ジグリセリルと合成例2のポリグリセリン脂肪酸エステルが油中で内包した逆ミセルを形成し、安定性に優れると考えられる。逆に脂肪酸組成が中鎖脂肪酸のみで構成される合成例5のポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた比較例5は、親油基鎖長が短く油中で安定な逆ミセルを形成できないと考えられる。
【0092】
[濡れた手でも使用可能な油性液状化粧料の調製]
合成例1、合成例4、合成例7および合成例8のポリグリセリン脂肪酸エステル20質量%と、非イオン性界面活性剤としてジオレイン酸ヘキサグリセリル(ジオレイン酸ポリグリセリル-6、EMALEX DVG-6/日本エマルジョン社製)10質量%と、油剤としてエチルヘキサン酸セチル(EMALEX CC-168/日本エマルジョン社製)44質量%と、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(TCG-M/高級アルコール工業社製)20質量%と、ミリストイルメチルアミノプロピオン酸ヘキシルデシル(AMITER MA-HD/日本エマルジョン社製)3質量%と、を70℃で加熱溶解した後、保湿剤として1,3-ブチレングリコール(ダイセル社製)1質量%と水2質量%を滴下、撹拌し、30℃まで撹拌冷却して、耐水性を有する油性液状化粧料を調製した。
【0093】
調製した油性液状化粧料について、25℃および-5℃での安定性について上記評価基準で、耐水性について下記評価基準でそれぞれ評価を行った。結果を表4に示す。なお、25℃および/または-5℃の安定性評価が「×」の製剤については、耐水性の評価は行わず「-」と記載した。
【0094】
「耐水性」
風呂場での使用を想定し、油性液状化粧料をネジ口メディウム瓶(容量100ml)に20g入れ、少量ずつ水を添加しながら撹拌し、目視にて透明性を維持する限界加水率を下記式より求め、手が濡れた環境での使用可否を評価した。
加水率(%)=加水量(g)/20×100
【0095】
(評価基準)
〇:加水率が30%以上で、風呂場での使用が可能
×:加水率が30%未満で、風呂場での使用が難しい
【0096】
【表4】
【0097】
上記表4に示されるように、親油基として中鎖脂肪酸残基とイソステアリン酸またはオレイン酸残基とを有する合成例1および合成例4のポリグリセリン脂肪酸エステルを配合した実施例6,7の油性液状化粧料は温度安定性に優れるだけでなく、加水率も30質量%以上であり十分に風呂場での使用が可能であった。逆に、親油基としてオレイン酸残基しか有さないポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた比較例6、親油基として中鎖脂肪酸残基しか有さないポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた比較例7の油性液状化粧料は安定性に問題を抱えていた。
【0098】
<油と水の両連続相を有する油性液状化粧料の調製>
合成例1、合成例4、合成例5および合成例8のポリグリセリン脂肪酸エステルと、非イオン性界面活性剤としてジオレイン酸ヘキサグリセリル(EMALEX DVG-6/日本エマルジョン社製)計30質量%と、油剤としてエチルヘキサン酸セチル(EMALEX CC-168/日本エマルジョン社製)20質量%と、イソノナン酸イソノニル(EMALEX NINI-99/日本エマルジョン社製)10質量%と、を70℃で加熱溶解した後、1,2-ペンタンジオール(ジオールPD/高級アルコール工業製)2質量%と、保湿剤としてジプロピレングリコール(DPG-RF/ADEKA社製)8質量%と、水30質量%とを滴下、撹拌し、30℃まで撹拌冷却して、バイコンティニュアスマイクロエマルション構造を有する油性液状化粧料を調製した。
【0099】
調製した油性液状化粧料について、25℃および-5℃での安定性について上記評価基準で、光透過性、色素の分散性について下記評価基準で、それぞれ評価を行った。結果を表5に示す。なお、25℃および/または-5℃の安定性評価が「×」の製剤については、光透過性、色素の分散性の評価は行わず「-」と記載した。
【0100】
油性液状化粧料がバイコンティニュアスマイクロエマルション構造である等方性一液相を有するか否かは、偏光板による光透過性および水性および油性色素の分散性により確認した。
【0101】
「光透過性」
2枚の偏光板を直交に設置した間に透明なガラス瓶に入れた油性液状化粧料を設置したときに、光の透過がないことを評価することによって、光学異方性の液晶と区別することができる。
【0102】
(評価基準)
〇:光の透過がない、光学等方性
×:光の透過がある、光学異方性
【0103】
「色素の分散性」
油性液状化粧料10gを試験管に量り、水溶性色素(青色1号、0.1%水溶液)または油溶性色素(β-カロテン、ミリストイルメチルアミノプロピオン酸ヘキシルデシル1%溶液)を0.05g滴下、分散させた相状態を目視で評価する。
【0104】
(評価基準)
〇:水溶性および油溶性色素を添加したそれぞれが透明になり、水と油の連続相である
×:水溶性色素または油溶性色素のどちらか一方のみが透明で、水または油の連続相である
【0105】
【表5】
【0106】
上記表5に示されるように、親油基として中鎖脂肪酸残基とイソステアリン酸またはオレイン酸残基とを有する合成例1および合成例4のポリグリセリン脂肪酸エステルを配合した実施例8、実施例9の油性液状化粧料は温度安定性に優れ、水や多価アルコール類の水相成分を多く含むことができる。さらに光学等方性であること、水溶性色素および油溶性色素を透明に分散することが可能で水と油が連続相になっている。逆に、親油基として中鎖脂肪酸残基しか有さないポリグリセリン脂肪酸エステルを用いた比較例8、比較例9の油性液状化粧料は安定性に問題を抱えていた。
【0107】
(処方例)
以下に、実施例の油性液状化粧料用組成物を使用したクレンジング化粧料としてオリーブクレンジングオイルの処方例を表6に、実施例の油性液状化粧料用組成物を使用したクレンジング化粧料として白濁クレンジングオイルの処方例を表7に、実施例の油性液状化粧料用組成物を使用したクレンジング化粧料として透明クレンジングオイルを表8に、実施例の油性液状化粧料用組成物を使用したクレンジング化粧料としてクレンジングリキッドの処方例を表9に、実施例の油性液状化粧料用組成物を使用した浴用化粧料としてバスオイルの処方例を表10に示す。本発明は、この処方例によって何ら限定されるものではない。
【0108】
【表6】
【0109】
【表7】
【0110】
【表8】
【0111】
【表9】
【0112】
【表10】
【0113】
このように、実施例の油性液状化粧料用組成物は、液状性状を有しながらも構造設計が容易であり、生産性に優れ、この油性液状化粧料用組成物を配合した油性液状化粧料は低温環境下においても透明性を有することが可能で経時的に安定であった。
【要約】
【課題】液状性状を有しながらも構造設計が容易であり、生産性に優れ、これを配合した油性液状化粧料が低温環境下においても透明性を有することが可能で経時的に安定な油性液状化粧料用組成物、およびその油性液状化粧料用組成物を含有するクレンジング化粧料を提供する。
【解決手段】平均重合度が15~50の範囲であるポリグリセリンと;炭素数が8~10の範囲の中鎖脂肪酸とオレイン酸およびイソステアリン酸のうちの少なくとも1つとを含む脂肪酸と;のエステルであるポリグリセリン混合脂肪酸エステルを含有し、ポリグリセリン混合脂肪酸エステルにおけるリグリセリンに対する前脂肪酸のエステル化率が、20~30%の範囲である、油性液状化粧料用組成物である。
【選択図】なし