(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】注意喚起装置及び注意喚起方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20240814BHJP
B60Q 1/46 20060101ALI20240814BHJP
B60Q 1/00 20060101ALI20240814BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240814BHJP
【FI】
G08G1/16 A
B60Q1/46
B60Q1/00 G
B60W50/14
(21)【出願番号】P 2020215745
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷村 直哉
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昭人
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188104(JP,A)
【文献】特開2018-185673(JP,A)
【文献】特開2017-091036(JP,A)
【文献】特開2015-146087(JP,A)
【文献】特開2016-166009(JP,A)
【文献】特開2019-093776(JP,A)
【文献】特開2011-189776(JP,A)
【文献】特開2019-119310(JP,A)
【文献】特開平11-042991(JP,A)
【文献】特開平04-306796(JP,A)
【文献】特開平05-225498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
B60Q 1/46
B60Q 1/00
B60W 50/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の周囲の障害物に係る情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した障害物に係る情報と、前記移動体の移動状態とに基づいて、当該移動体の周囲の障害物の、各々の潜在リスクを算出する算出部と、
前記算出部が算出した潜在リスクが所定の値を超えて、尚且つ、前記移動体に追従する後続移動体が存在する場合であって、前記移動体から前記後続移動体までの距離が、当該移動体の車速と、前記後続移動体の車速及び当該車速における空走距離とに基づいて算出される、前記移動体が急制動を行った際に前記後続移動体が前記移動体に接触せずに停止できる距離である所定距離を超えない場合に、前記後続移動体の乗員に対して、前記移動体自身が、注意喚起を促す情報を提示して、前記算出部が算出した潜在リスクが所定の値を超えて、尚且つ、前記移動体に追従する後続移動体が存在する場合であって、前記移動体から前記後続移動体までの距離が前記所定距離を超える場合に、前記後続移動体の乗員に対して、注意喚起を促す情報を提示しない情報提示部と、を備える
注意喚起装置。
【請求項2】
前記情報提示部は、
前記移動体の後部のハザードランプを点滅させる、
請求項1に記載の注意喚起装置。
【請求項3】
前記情報提示部は、
前記算出部が算出した障害物の各々の潜在リスクに基づいて、前記移動体の乗員に対して、潜在リスクが所定の値を超える障害物に対する注意喚起を促す情報を提示する、
請求項1または請求項2に記載の注意喚起装置。
【請求項4】
前記障害物に係る情報は、
少なくとも、当該障害物の位置を含む、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の注意喚起装置。
【請求項5】
前記障害物に係る情報は、
当該障害物の種別と、前記障害物の位置と、移動方向と、移動速度とを含む、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の注意喚起装置。
【請求項6】
コンピュータが実行する注意喚起方法であって、
移動体の周囲の障害物に係る情報を取得する取得プロセスと、
前記取得プロセスで取得した障害物に係る情報と、前記移動体の移動状態とに基づいて、当該移動体の周囲の障害物の、各々の潜在リスクを算出する算出プロセスと、
前記算出プロセスで算出した潜在リスクが所定の値を超えて、尚且つ、前記移動体に追従する後続移動体が存在する場合であって、前記移動体から前記後続移動体までの距離が、当該移動体の車速と、前記後続移動体の車速及び当該車速における空走距離とに基づいて算出される、前記移動体が急制動を行った際に、前記後続移動体が前記移動体に接触せずに停止できる距離である所定距離を超えない場合に、前記後続移動体の乗員に対して、前記移動体自身が、注意喚起を促す情報を提示して、前記算出プロセスで算出した潜在リスクが所定の値を超えて、尚且つ、前記移動体に追従する後続移動体が存在する場合であって、前記移動体から前記後続移動体までの距離が前記所定距離を超える場合に、前記後続移動体の乗員に対して、注意喚起を促す情報を提示しない情報提示プロセスと、
を含む注意喚起方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注意喚起装置及び注意喚起方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の進行方向に存在する障害物を検出した場合に、当該障害物の方向を照射するヘッドライトの送光制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の前照灯の送光制御装置は、車両の前照灯を、車両の進行方向に存在する障害物の方向に向けて、車両の運転者に注意喚起を行う。したがって、車両の後続車両に対する注意喚起は考慮されていない。したがって、注意喚起された車両の運転者が、障害物を回避するために例えば急制動を行った場合、後続車両の運転者は、予期せぬ急制動に驚くおそれがあった。
【0005】
本開示は、移動体の移動方向に潜在リスクが高い障害物があった場合に、当該移動体の後続車両の乗員に的確な注意喚起を行うことができる注意喚起装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る注意喚起装置は、取得部と、算出部と、情報提示部とを備える。取得部は、移動体の周囲の障害物に係る情報を取得する。算出部は、取得部が取得した障害物に係る情報と、移動体の移動状態とに基づいて、当該移動体の周囲の障害物の、各々の潜在リスクを算出する。情報提示部は、算出部が算出した潜在リスクが所定の値を超えて、尚且つ、移動体に追従する後続移動体が存在する場合であって、移動体から後続移動体までの距離が、移動体の車速と、後続移動体の車速及び当該車速における空走距離とに基づいて算出される、移動体が急制動を行った際に後続移動体が移動体に接触せずに停止できる距離である所定距離を超えない場合に、後続移動体の乗員に対して、前記移動体自身が、注意喚起を促す情報を提示して、算出部が算出した潜在リスクが所定の値を超えて、尚且つ、移動体に追従する後続移動体が存在する場合であって、移動体から後続移動体までの距離が所定距離を超える場合に、後続移動体の乗員に対して、注意喚起を促す情報を提示しない。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る注意喚起装置によれば、移動体の移動方向に潜在リスクが高い障害物があった場合に、当該移動体の後続車両の乗員に的確な注意喚起を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る注意喚起装置を備えた車両の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る注意喚起装置による注意喚起の対象を説明する図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る注意喚起装置による注意喚起の具体例を示す第1の図である。
【
図4】
図4は、実施の形態に係る注意喚起装置による注意喚起の具体例を示す第2の図である。
【
図5】
図5は、実施の形態に係る注意喚起装置による注意喚起の具体例を示す第3の図である。
【
図6】
図6は、実施の形態に係る注意喚起装置が潜在リスクの大きさを算出する方法を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施の形態に係る注意喚起装置のハードウエア構成の一例を示すハードウエアブロック図である。
【
図8】
図8は、実施の形態に係る注意喚起装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る注意喚起装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施の形態の変形例に係る注意喚起装置を車載した状態を示す概略図である。
【
図11】
図11は、実施の形態の変形例が行う注意喚起の一例を示す第1の図である。
【
図12】
図12は、実施の形態の変形例が行う注意喚起の一例を示す第2の図である。
【
図13】
図13は、実施の形態の変形例に係る注意喚起装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る注意喚起装置の実施の形態について説明する。
【0010】
(注意喚起装置の全体構成)
まず、
図1を用いて、注意喚起装置50の全体構成を説明する。
図1は、実施の形態に係る注意喚起装置を備えた車両の概略構成を示す図である。特に、
図1(a)は車両10の側面図であり、
図1(b)は車両10の上面図である。
【0011】
注意喚起装置50は、車両10の後方を走行している後続車両43(
図3参照)の乗員である、例えば後続車両43の運転者に対して、車両10の前方に、注意を要する障害物が存在することを注意喚起する情報を提示する。特に、本実施の形態の注意喚起装置50は、夜間において、車両10の前方に、特に早めに気づく必要がある障害物が存在することを、車両10のハザードランプ19を点滅させることによって、車両10の後続車両43の乗員に注意喚起する。
【0012】
また、注意喚起装置50は、車両10の乗員である、例えば運転者に対して、車両10の前方に、注意を要する障害物が存在することを注意喚起する情報を提示する。特に、本実施の形態の注意喚起装置50は、夜間において、特に早めに気づく必要がある障害物が存在することを、車両10の前照灯12の放射特性を、障害物が照らされるように制御することによって、当該障害物の存在を車両10の乗員に注意喚起する。
【0013】
図1に示すように、車両10は、前端に一対の前照灯12を備える。前照灯12は、車両10の左前端に備えられた左前照灯12Lと、車両10の右前端に備えられた右前照灯12Rとを有する。なお、車両10は、本開示における移動体の一例である。
【0014】
前照灯12は、注意喚起装置50の指示に基づいて、左前照灯12Lと右前照灯12Rの放射特性、例えば、配光方向と、配光角度と、配光パターンと、照射光量と、前照灯のオン/オフ等を、それぞれ独立して制御する。この制御によって、前照灯12は、走行車線上の前方の良好な視界を確保しつつ、なるべく多くの障害物をより明るく照射する。さらに、この制御によって、注意を要する障害物が離れた位置に存在する場合であっても、各障害物が明るく照射される。
【0015】
また、車両10は、当該車両10の後端に、左右一対のハザードランプ19を備える。注意喚起装置50は、車両10の進行方向に、特に注意を要する障害物が存在した場合には、車両10が急制動を行う可能性があるため、ハザードランプ19を点滅させることによって、車両10の後続車両43(
図3参照)に対して、注意喚起を行う。
【0016】
車両10は、複数のカメラ14を備える。
図1の例では、カメラ14は、車室内のルーフ近傍に設置されて、ウインドシールドを通して、車両10の前方の画像を撮像する。また、車両10のフロントバンパには、複数のカメラ14が設置されて、それぞれのカメラ14は、フロントバンパの位置から車両10の前方の画像を撮像する。これらの複数のカメラ14が撮像した画像は、車両10が走行している際の、走行車線領域、路肩領域、対向車線領域を漏れなく監視する。なお、
図1の例では3台のカメラ14を設置する例を示すが、カメラ14の台数は3台に限定されるものではない。即ち、車室内のルーフ近傍に設置したカメラ14が、前記した領域を漏れなく監視できる場合は、当該カメラ1台のみの構成としてもよい。また、4台以上のカメラ14を備えてもよい。更に、カメラ14の設置場所も、
図1の例に限定されるものではない。即ち、カメラ14は、前記した領域を漏れなく監視できる位置に設置されればよい。
【0017】
なお、カメラ14は、CCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子を備える。これらの固体撮像素子は、可視光から近赤外光の領域に感度を有する。なお、人間や動物及び温体物標を高い感度で監視可能な、遠赤外光の領域に感度を有する撮像素子を備えるカメラ14を用いてもよい。
【0018】
注意喚起装置50は、カメラ14が撮像した画像を取得して、当該画像の中から障害物を検出する。詳しくは後述する(
図6参照)。
【0019】
また、車両10は、複数の測距センサ16を備える。測距センサ16は、例えばミリ波レーダ、LIDER、超音波センサ等である。
図1の例では、複数の測距センサ16が、車両10のフロントバンパ及びリアバンパに、それぞれ異なる方向を向いて設置される。これらの測距センサ16によって、車両10が走行している際の、走行車線領域、路肩領域、対向車線領域に存在する物標までの距離、及び後続車両までの距離が計測される。
【0020】
注意喚起装置50は、測距センサ16が計測した物標までの距離を取得して、障害物を検出する。詳しくは後述する(
図6参照)。また、注意喚起装置50は、測距センサ16が計測した後続車両までの距離に基づいて、後続車両に対する注意喚起を行う。
【0021】
車両10のダッシュボード付近には、アンテナ17とGPSアンテナ18とが設置される。アンテナ17は、路肩に設置されたビーコンポストが発信した電波を受信する。なお、ビーコンポストが発信した電波には、車両10の近傍に存在する歩行者の位置や、車両10の近傍に存在する他車両の位置に係る情報が含まれている。例えば、歩行者が所持する電波タグが、当該電波タグの位置を含む情報を、
図1に非図示の路側機に送信する。路側機は、受信した電波タグの位置を、ビーコンポストから車両10に送信する。また、他車両から路側機に送信された当該他車両の位置情報も、同様にしてビーコンポストから車両10に送信される。なお、アンテナ17とGPSアンテナ18に加えて、第5世代移動通信システム(5G)等の移動体通信用のアンテナを備えてもよい。これにより、例えば、他車両が検出した障害物の位置等に係る情報を、クラウドやサーバ経由で受信することができる。また、後述する潜在リスク算出モデル(
図6参照)の更新を、クラウドやサーバ経由で行うことができる。
【0022】
注意喚起装置50は、アンテナ17が受信した、歩行者や他車両の位置を取得して、障害物を検出する。詳しくは後述する(
図6参照)。
【0023】
GPSアンテナ18は、GPS衛星から発信されたGPS信号を受信する。注意喚起装置50は、GPSアンテナ18が受信したGPS信号を分析することによって、車両10の現在位置及び進行方向を特定する。なお、GPS信号を分析して車両の現在位置及び進行方向を特定する方法は、カーナビゲーションシステムにおいて広く実用化されているため、詳細な説明は省略する。
【0024】
(注意喚起装置の動作シーン)
次に、
図2を用いて、実施の形態において、注意喚起装置50の注意喚起の対象を説明する。
図2は、実施の形態に係る注意喚起装置による注意喚起の対象を説明する図である。
【0025】
図2は、車両10の代表的な夜間の走行シーンを模式的に表したものである。即ち、車両10は、片側1車線の道路49の走行車線47を走行している。車両10の前方には先行車両40が走行している。対向車線48には、対向車両42が車両10に接近する方向に走行している。道路49の走行車線47側の路外には、歩行者44,46が存在する。歩行者44は路外を歩行している。歩行者46は、路外から走行車線47に向かって走っている、いわゆる飛び出し歩行者である。
【0026】
車両10は、前照灯12(12L,12R)を点灯している。左前照灯12Lは照射範囲13Lを照射する。右前照灯12Rは照射範囲13Rを照射する。
【0027】
なお、実際の道路環境はより複雑であって、路肩に停止している停止車両や、路肩又は走行車線を走行している自転車等も存在する。実施の形態の注意喚起装置50は、説明を簡単にするため、
図2に示した先行車両40と、対向車両42と、歩行者44,46とを注意喚起の対象とする。なお、後述する潜在リスクの判定方法(
図6参照)を用いることによって、注意喚起の対象をより広げることができる。
【0028】
(注意喚起装置の動作例(1))
次に、
図3を用いて、
図2のシーンにおける注意喚起装置50の動作例を説明する。
図3は、実施の形態に係る注意喚起装置による注意喚起の具体例を示す第1の図である。
【0029】
注意喚起装置50は、
図2のシーンにおける潜在リスクは、潜在リスクが高い順に、歩行者46(飛び出し歩行者)、歩行者44、先行車両40、対向車両42であると判定する。
【0030】
そして、注意喚起装置50は、車両10の前照灯12の配光状態を、潜在リスクが高い障害物を明るく照らすように制御する。即ち、左前照灯12Lが、歩行者46と歩行者44とを照らすように制御する。具体的には、注意喚起装置50は、左前照灯12Lの照射方向と照射範囲とを、歩行者46と歩行者44とを含む領域が照明されるように制御する。この制御によって、車両10の左前照灯12Lは、
図3に示す照射範囲13Lを照射する。
【0031】
また、注意喚起装置50は、右前照灯12Rが、先行車両40を照らすように制御する。この制御によって、車両10の右前照灯12Rは、
図3に示す照射範囲13Rを照射する。
【0032】
注意喚起装置50が、前記した配光制御を行う際に、車両10の後方の所定距離以内の位置に、車両10と同じ方向に走行している後続車両43が存在したとする。この場合、注意喚起装置50は、車両10が急制動を行う可能性があると判断して、車両10の後方のハザードランプ19を点滅させることによって、後続車両43の乗員に対して注意喚起を行う。なお、後続車両43は、本開示における後続移動体の一例である。
【0033】
(注意喚起装置の動作例(2))
次に、
図4を用いて、注意喚起装置50の第2の動作例を説明する。
図4は、実施の形態に係る注意喚起装置による注意喚起の具体例を示す第2の図である。
【0034】
図4の例では、対向車両42が対向車線48をはみ出して走行している。また、走行車線47の路肩には、
図3の場合と同様に歩行者44,46が存在している。歩行者46は飛び出し歩行者である。
【0035】
注意喚起装置50は、
図4のシーンにおける潜在リスクは、潜在リスクが高い順に、歩行者46(飛び出し歩行者)、対向車両42、歩行者44であると判定する。
【0036】
そして、注意喚起装置50は、左前照灯12Lの照射方向と照射範囲とを、歩行者46と歩行者44とを含む領域が照明されるように制御する。
【0037】
また、注意喚起装置50は、右前照灯12Rの照射方向と照射範囲とを、対向車両42を含む領域が照明されるように制御する。
【0038】
さらに、注意喚起装置50は、車両10の前方にも前照灯12が照射されるように、右前照灯12Rの照射範囲を拡大することによって、対向車両42と車両10の走行方向の路面とがともに照明されるように制御する。
【0039】
注意喚起装置50が、前記した配光制御を行う際に、車両10の後方の所定距離以内の位置に、車両10と同じ方向に走行している後続車両43が存在したとする。この場合、注意喚起装置50は、車両10が急制動を行う可能性があると判断して、車両10の後方のハザードランプ19を点滅させることによって、後続車両43の乗員に対して注意喚起を行う。
【0040】
(注意喚起装置の動作例(3))
次に、
図5を用いて、注意喚起装置50の第3の動作例を説明する。
図5は、実施の形態に係る注意喚起装置による注意喚起の具体例を示す第3の図である。
【0041】
図5の例では、走行車線47の路肩に、
図3,
図4の場合と同様に歩行者44,46が存在している。歩行者46は飛び出し歩行者である。一方、車両10の前方及び対向車線48側には障害物がない。
【0042】
注意喚起装置50は、
図5のシーンにおける潜在リスクは、潜在リスクが高い順に、歩行者46(飛び出し歩行者)、歩行者44であると判定する。
【0043】
そして、注意喚起装置50は、左前照灯12Lの照射方向と照射範囲とを、歩行者46と歩行者44とを含む領域が照明されるように制御する。
【0044】
さらに、注意喚起装置50は、車両10の前方が不注意にならないように、右前照灯12Rの照射範囲を、車両10の前方に向ける。
【0045】
注意喚起装置50が、前記した配光制御を行う際に、車両10の後方の所定距離以内の位置に、車両10と同じ方向に走行している後続車両43が存在したとする。この場合、注意喚起装置50は、車両10が急制動を行う可能性があると判断して、車両10の後方のハザードランプ19を点滅させることによって、後続車両43の乗員に対して注意喚起を行う。
【0046】
なお、後続車両43の乗員に対する注意喚起の方法は、車両10のハザードランプ19の点滅に限定されるものではない。例えば、車両10の後方に、後方を向けて電光掲示板を設置して、当該電光掲示板に、「急制動注意」を示す情報を提示するようにしてもよい。
【0047】
また、車両10と後続車両43との間で車々間通信を行い、後続車両43のヘッドアップディスプレイ(HUD)に、「急制動注意」を示す情報を提示するようにしてもよい。
【0048】
(潜在リスクの算出方法)
次に、
図6を用いて、注意喚起装置50が潜在リスクRを算出する方法を説明する。
図6は、実施の形態に係る注意喚起装置が潜在リスクの大きさを算出する方法を説明する図である。
【0049】
注意喚起装置50は、深層学習等の学習によって予め生成された潜在リスク算出モデル60を記憶している。潜在リスク算出モデル60は、例えば、カメラ14、測距センサ16、アンテナ17から取得した周囲環境情報Iを入力として、検出された各障害物に対する潜在リスクR、即ち、注意を払わなくてはいけない度合を出力するモデルである。
【0050】
図6に示す例では、潜在リスク算出モデル60は、入力層60aと中間層60bと出力層60cとを有するニューラルネットワークによって構成される。ニューラルネットワークは、人間の神経回路網を模した数理モデルである。
【0051】
入力層60aには、カメラ14、測距センサ16、アンテナ17から取得した周囲環境情報Iが入力される。より具体的には、入力層60aは、4個の入力ユニット61,62,63,64を備える。
【0052】
入力ユニット61には、障害物の種別に係る情報、具体的には、先行車両40、対向車両42、歩行者44,46にそれぞれ対応した数値が入力される。なお、注意喚起装置50は、カメラ14、測距センサ16、アンテナ17等から取得した周囲環境情報Iを分析することによって、障害物の種別を特定する。具体的には、画像のテンプレートマッチングや深層学習等を用いたパターン認識によって、障害物の種別を認識する。このように、障害物の種別を認識することができさえすれば、停止車両や自転車等のように、注意喚起の対象となる障害物の種類をより広げた状態で、潜在リスクRを算出することができる。
【0053】
入力ユニット62には、障害物の位置に係る情報が入力される。注意喚起装置50は、カメラ14、測距センサ16、アンテナ17等から取得した周囲環境情報Iに基づいて、障害物の位置に係る情報を算出する。なお、障害物の位置は、車両10の移動状態に応じて変化するため、注意喚起装置50は、周囲環境情報Iと、車両10の移動状態、例えば、車両10の移動速度と移動方向とに基づいて、周囲環境情報Iに含まれている障害物の位置を補正する。そして、車両10と道路49とを含むワールド座標系における障害物の存在位置を特定することによって、障害物の位置に係る情報を生成する。
【0054】
入力ユニット63には、障害物の移動方向に係る情報が入力される。障害物の移動方向に係る情報は、注意喚起装置50が、例えば、前記した障害物の位置に係る情報が時間経過とともに移動する方向を検出することによって算出する。
【0055】
入力ユニット64には、障害物の移動速度に係る情報が入力される。障害物の移動速度に係る情報は、注意喚起装置50が、例えば、前記した障害物の位置に係る情報が時間経過とともに移動する速度を検出することによって算出する。
【0056】
入力層60aに入力された各数値は、中間層60bに出力される。その際、入力層60aから出力された数値は、入力ユニット61,62,63,64と中間層60bの中間ユニット65,66とを結ぶ枝に付与された重み係数w1,w2,w3,w4,w5,w6,w7,w8と積算される。積算された数値は、中間層60bに入力される。
【0057】
中間層60bは、2個の中間ユニット65,66を備える。中間ユニット65には、入力ユニット61,62,63,64から出力された数値が、重み係数w1,w2,w3,w4とそれぞれ積算されて入力される。中間ユニット66には、入力ユニット61,62,63,64から出力された数値が、重み係数w5,w6,w7,w8とそれぞれ積算されて入力される。
【0058】
中間ユニット65,66は、入力ユニット61,62,63,64から中間ユニット65,66に入力された数値を加算する。加算された数値は、出力層60cに出力される。
【0059】
中間層60bから出力された各数値は、中間ユニット65,66と出力層60cの出力ユニット67とを結ぶ枝に付与された重み係数w9,w10と積算される。積算された数値は、出力層60cに入力される。
【0060】
出力ユニット67は、1個の出力ユニット67を備える。出力ユニット67には、中間ユニット65,66から出力された数値が、重み係数w9,w10とそれぞれ積算されて入力される。
【0061】
出力ユニット67は、中間ユニット65,66から出力ユニット67に入力された数値を加算する。そして、出力ユニット67は、加算された数値を出力する。出力ユニット67が出力する数値が潜在リスクRである。潜在リスクRは、例えば0から100の間の数値に正規化されて、数値が大きいほど、潜在リスクが高いものとする。
【0062】
次に、潜在リスクRの算出例を示す。例えば、カメラ14、測距センサ16、アンテナ17から取得した周囲環境情報Iを分析することによって、ある障害物について、障害物種別a=20、障害物位置b=12、障害物移動方向c=50、障害物移動速度d=40の情報が得られたとする。また、ネットワークの重み係数は、w1=0.7,w2=0.5,w3=0,w4=0,w5=0,w6=0.8,w7=0.9,w8=0.5,w9=1,w10=1であるとする。
【0063】
このとき、潜在リスク算出モデル60は、当該障害物の潜在リスクRを、(式1)によって算出する。
【0064】
R=(a*w1+b*w2)+(b*w6+c*w7+d*w8)=95 (式1)
【0065】
(式1)によって算出される潜在リスクRは、ほぼ最大の値であって、該当する障害物は、注意を払わなくてはいけない度合が非常に高い障害物であると判定される。
【0066】
潜在リスク算出モデル60は、予め、数多くの障害物の状態と当該障害物の潜在リスクRとを学習することによって、ネットワークの重み係数w1~w10が最適化されたものである。
【0067】
なお、
図6に示す潜在リスク算出モデル60を用いる代わりに、例えば、障害物の位置に係る情報のみを用いて、潜在リスクRを算出することも可能である。この場合、簡略化された潜在リスク算出モデル60を利用する。即ち、種別に係る情報を入力する入力ユニット61が不要になる。そして、入力ユニット62には、障害物の位置に係る情報を入力する。そして、入力ユニット63には、障害物の位置が時間経過とともに移動する方向を入力する。入力ユニット64には、障害物の位置が時間経過とともに移動する方向を入力する。
【0068】
次に、潜在リスクRの値に応じて、該当する障害物に対してどのような注意喚起を行うかの一例を説明する。
【0069】
潜在リスクRが90以上である場合、注意喚起装置50は、該当する障害物に対して、即座に注意を払う必要があると判定する。このとき、注意喚起装置50は、前照灯12の放射特性の制御を最優先に行って、注意を払うべき障害物を投光する。なお、車両10が自動ブレーキの機能を備えている場合には、当該自動ブレーキを作動させることによって、車両10を自動減速させてもよい。また、車両10が自動操舵の機能を備えている場合には、車両10の操舵角を制御することによって、障害物を回避するように進行方向を制御してもよい。そして、車両10の後方の所定距離以内の位置に、車両10と同じ方向に走行している後続車両43が存在する場合、注意喚起装置50は、車両10が急制動を行う可能性があると判断して、前記した前照灯12の制御と併せて、車両10の後方のハザードランプ19を点滅させる。
【0070】
潜在リスクRが70以上90未満である場合、注意喚起装置50は、該当する障害物に対して注意を払う必要があると判定する。このとき、注意喚起装置50は、前照灯12の放射特性を制御することによって、注意を払うべき障害物を投光する。なお、このとき、車両10に搭載したブザーやチャイムで警報音を出力してもよい。また、車両10に搭載したヘッドアップディスプレイ(HUD)に、注意喚起を促す情報(例えばコーションシンボル)を表示してもよい。そして、車両10の後方の所定距離以内の位置に、車両10と同じ方向に走行している後続車両43が存在する場合、注意喚起装置50は、車両10が急制動を行う可能性があると判断して、前記した前照灯12の制御と併せて、車両10の後方のハザードランプ19を点滅させる。
【0071】
潜在リスクRが30より大きく70未満である場合、注意喚起装置50は、該当する障害物が要注意であると判定する。このとき、注意喚起装置50は、前照灯12の放射特性を制御することによって、要注意の障害物を投光する。この場合、車両10が急制動を行う可能性は低いと判断して、ハザードランプ19の点滅は行わない。
【0072】
潜在リスクRが30以下である場合、注意喚起装置50は、障害物が存在しないか、障害物が存在しても、注意を払う必要はないと判定する。このとき、注意喚起装置50は、車両10の前照灯12を通常投光させる。また、車両10が急制動を行う可能性は低いと判断して、ハザードランプ19の点滅は行わない。
【0073】
注意喚起装置50は、このように、検出された各障害物のそれぞれの潜在リスクRの値に基づく注意喚起を行う。
【0074】
(注意喚起装置のハードウエア構成)
次に、
図7を用いて、注意喚起装置50のハードウエア構成を説明する。
図7は、実施の形態に係る注意喚起装置のハードウエア構成の一例を示すハードウエアブロック図である。
【0075】
注意喚起装置50は、ECU(Electronic Cotrol Unit)20と、センサコントローラ24と、受信機26と、GPSレシーバ28と、前照灯コントローラ30と、ハザードランプコントローラ31と、センターモニタ32と、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)34とを備える。これらの各部は、バス22で互いに接続されている。
【0076】
ECU20は、例えばCPU(Central Processing Unit)20a、RAM(Random Access Memory)20b、及びROM(Read Only Memory)20cを備えたコンピュータとして構成されている。なお、ECU20に、HDD(Hard Disk Drive)等から構成される記憶装置20dが内蔵されていてもよい。また、ECU20は、各種センサ等と検出信号及び各種情報の送受信が可能なI/O(Input/Output)ポート20eを備えている。
【0077】
ECU20のRAM20b、ROM20c、記憶装置20d、及びI/Oポート20eの各構成は、例えば内部バスを介してCPU20aと各種情報の送受信が可能に構成されている。
【0078】
ECU20は、ROM20cにインストールされているプログラムをCPU20aが実行することにより、注意喚起装置50が行う各種処理を制御する。
【0079】
なお、本実施の形態の注意喚起装置50で実行されるプログラムは、予めROM20cに組み込まれて提供されてもよいし、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0080】
さらに、本実施の形態の注意喚起装置50で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることによって提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の注意喚起装置50で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供、又は配布するように構成しても良い。
【0081】
記憶装置20dは、車両10の現在位置を特定するために使用する地図データや、学習済みの潜在リスク算出モデル60の重み係数w1~w10等を記憶する。
【0082】
センサコントローラ24は、カメラ14及び測距センサ16の動作を制御する。また、センサコントローラ24は、カメラ14が撮像した画像、及び測距センサ16が計測した距離データを取得して、ECU20に送信する。
【0083】
受信機26は、アンテナ17が受信した歩行者や他車両の位置を取得して、ECU20に送信する。
【0084】
GPSレシーバ28は、GPS衛星から発信されたGPS信号を取得して、ECU20に送信する。GPS信号は、車両10の現在位置及び進行方向を特定するために利用される。
【0085】
前照灯コントローラ30は、ECU20の指示に基づいて、左前照灯12Lと右前照灯12Rとを独立して制御することによって、所定の放射特性を形成する。
【0086】
ハザードランプコントローラ31は、ECU20の指示に基づいて、ハザードランプ19の点滅制御を行う。
【0087】
センターモニタ32は、車両10のセンターコンソールに設置されて、車両10の周囲の地図や、エアコン、オーディオ等の動作状態や操作画面等を表示する。また、センターモニタ32は、後述する実施の形態の変形例で説明するように、カメラ14で撮像した車両前方の映像に、特に注意を要する障害物を強調して表示する。
【0088】
ヘッドアップディスプレイ34(以下、HUD34と呼ぶ)は、車両10のウインドシールドに、車速等の車両情報や、経路案内情報等を投影表示する。また、HUD34は、後述する実施の形態の変形例で説明するように、特に注意を要する障害物を強調して表示する。
【0089】
(注意喚起装置の機能構成)
次に、
図8を用いて、注意喚起装置50の機能構成を説明する。
図8は、実施の形態に係る注意喚起装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0090】
注意喚起装置50のECU20は、当該ECU20に格納された制御プログラムをRAM20bに展開して、CPU20aに動作させることによって、
図8に示す周囲環境情報取得部71と、潜在リスク算出部72と、配光状態決定部73と、配光制御部74と、後方車間距離測定部76と、ハザードランプ制御部77とを機能部として実現する。
【0091】
周囲環境情報取得部71は、車両10(移動体)の周囲の障害物に係る情報を取得する。なお、周囲環境情報取得部71は、本開示における取得部の一例である。
【0092】
また、周囲環境情報取得部71は、カメラ14が撮像した画像と、測距センサ16が計測した距離データと、アンテナ17が取得した歩行者や他車両の位置とに基づいて、車両10の周囲に存在する障害物の種別と、位置と、移動方向と、移動速度とを算出する。このように、複数のセンサが取得した情報を組み合わせる技術は、センサフュージョンと呼ばれ、目標となる物標、本実施の形態の場合は障害物の検出精度を向上させることができる。なお、カメラ14と測距センサ16とアンテナ17から取得した情報に基づいて障害物に係る情報を算出する方法は、昨今、数多く提案されているため、それらのいずれの方法を用いて行ってもよい。
【0093】
潜在リスク算出部72は、周囲環境情報取得部71が取得した障害物に係る情報と、車両10の移動状態、例えば、移動速度と移動方向とに基づいて、当該車両10の周囲の障害物の、各々の潜在リスクRを算出する。なお、潜在リスク算出部72は、本開示における算出部の一例である。
【0094】
配光状態決定部73は、潜在リスク算出部72が算出した潜在リスクRに基づいて、前照灯12の放射特性を決定する。例えば、配光状態決定部73は、所定の値を超える潜在リスクRを有する障害物を網羅する放射特性を決定する。なお、配光状態決定部73が決定する放射特性は、車両10が走行している走行車線47の範囲も照射するものとする。
【0095】
配光制御部74は、配光状態決定部73が決定した放射特性に基づいて、前照灯12の放射特性を制御する。配光制御部74が制御する放射特性によって、潜在リスクRが所定の値を超える障害物、即ち、特に注意を要する障害物が強調されて、車両10の乗員に提示される。なお、配光制御部74は、本開示における情報提示部の一例である。
【0096】
後方車間距離測定部76は、車両10の後方に設置された測距センサ16によって、車両10から後続車両43までの距離を測定する。そして、後方車間距離測定部76は、車両10の後方に、車両10に追従する後続車両43が存在するかを判定する。
【0097】
ハザードランプ制御部77は、潜在リスク算出部72が算出した潜在リスクRが所定値以上であって、尚且つ、後方車間距離測定部76が測定した、車両10から後続車両43までの距離が所定距離以下であることを条件として、車両10の後方に、車両10に追従する後続車両43が存在して、当該後続車両43に注意喚起を行う必要があると判定する。そして、ハザードランプ制御部77は、後続車両43に注意喚起を行う必要があると判定したことを条件として、ハザードランプ19を点滅させる。また、ハザードランプ制御部77は、後方車間距離測定部76が測定した、車両10から後続車両43までの距離が所定距離を超えることを条件として、ハザードランプ19を点滅させない。なお、ハザードランプ制御部77は、本開示における情報提示部の一例である。
【0098】
前記した所定距離、すなわち車両10から後続車両43までの距離の閾値は、車両10の車速と、後続車両43の車速と、当該車速における空走距離とに基づいて設定するのが望ましい。即ち、人間は、危険を察知してから何らかの行動を起こすまでに、反応時間と呼ばれる所定の時間を必要とする。当該反応時間の間に後続車両43が進行する距離が空走距離である。したがって、後続車両43の車速が高いほど空走距離は長くなる。車両10から後続車両43までの距離の閾値は、車両10が急制動を行ったと仮定した場合に、空走距離を考慮した状態で、後続車両43が車両10に接触しないで停止できることを条件として設定する。
【0099】
(注意喚起装置が行う処理の流れ)
次に、
図9を用いて、注意喚起装置50が行う処理の流れを説明する。
図9は、実施の形態に係る注意喚起装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0100】
配光制御部74は、デフォルトの放射特性で前照灯12を照射する(ステップS11)。
【0101】
周囲環境情報取得部71は、車両10の周囲環境情報I(
図6参照)を取得する(ステップS12)。
【0102】
そして、周囲環境情報取得部71は、取得した周囲環境情報Iの中から、車両10の周囲に存在する障害物を検出する(ステップS13)。
【0103】
さらに、周囲環境情報取得部71は、ステップS13で検出した各障害物について、その種別と、位置と、移動方向と、移動速度とを特定する(ステップS14)。
【0104】
そして、周囲環境情報取得部71は、車両10の走行車線47の所定の範囲内に、障害物があるかを判定する(ステップS15)。ここで、車両10の走行車線47の所定の範囲とは、走行車線47の領域、路肩領域、及び対向車線48の領域を含む。車両10の走行車線47の所定の範囲内に障害物があると判定される(ステップS15:Yes)とステップS16に進む。一方、車両10の走行車線47の所定の範囲内に障害物があると判定されない(ステップS15:No)とステップS11に戻る。
【0105】
ステップS15において、車両10の走行車線47の所定の範囲内に障害物があると判定されると、潜在リスク算出部72は、車両10の走行車線47の所定の範囲内にある各障害物について、潜在リスクRを算出する(ステップS16)。潜在リスクRの算出方法は、前記した通りである(
図6参照)。
【0106】
続いて、潜在リスク算出部72は、潜在リスクRが所定の値(例えば70)を超える障害物があるかを判定する(ステップS17)。潜在リスクRが所定の値を超える障害物があると判定される(ステップS17:Yes)とステップS18に進む。一方、潜在リスクRが所定の値を超える障害物があると判定されない(ステップS17:No)とステップS11に戻る。
【0107】
ステップS17において、潜在リスクRが所定の値を超える障害物があると判定されると、後方車間距離測定部76は、車両10から後続車両43までの距離に基づいて、車両10の後方に後続車両43が存在するかを判定する(ステップS18)。車両10の後方に後続車両43が存在すると判定される(ステップS18:Yes)とステップS19に進む。一方、車両10の後方に後続車両43が存在する判定されない(ステップS18:No)とステップS20に進む。
【0108】
ステップS18において、車両10の後方に後続車両43が存在すると判定されると、ハザードランプ制御部77は、車両10のハザードランプ19を点滅させる点滅制御を実行する(ステップS19)。
【0109】
続いて、配光状態決定部73は、前照灯12の放射特性を決定する(ステップS20)。
【0110】
配光制御部74は、前照灯コントローラ30を制御して、左前照灯12Lと右前照灯12Rとの放射特性を独立して制御することによって、ステップS20において配光状態決定部73が決定した放射特性を実現する。その後、注意喚起装置50は、
図9の処理を終了する。
【0111】
なお、ステップS19で点滅させたハザードランプ19は、停車する、又は障害物を回避する等によって安全が確保された後で、車両10の運転者が手動で解除する。あるいは、例えば潜在リスクRが30以下、即ち、障害物が存在しないか、障害物が存在しても注意を払う必要がないと判定された場合に、ハザードランプ19の点滅を自動解除してもよい。
【0112】
また、
図9のフローチャートにおいて、注意喚起装置50は、潜在リスクRが70を超える障害物が検出された場合に、ハザードランプ19の点滅制御と前照灯12の配光制御とを行う構成としたが、注意喚起の方法は、これに限定されない。例えば、潜在リスクRが70を超える障害物が検出された場合には
図9の処理を行い、潜在リスクRが30から70の間にある障害物が検出された場合には、ハザードランプ19の点滅制御を行わずに、前照灯12の配光制御のみを行ってもよい。
【0113】
(本実施の形態の作用効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る注意喚起装置50において、周囲環境情報取得部71(取得部)は、車両10(移動体)の周囲の障害物に係る情報を取得する。潜在リスク算出部72(算出部)は、周囲環境情報取得部71が取得した障害物に係る情報と、車両10の移動状態とに基づいて、車両10の周囲の障害物の、各々の潜在リスクRを算出する。そして、ハザードランプ制御部77(情報提示部)は、潜在リスク算出部72が算出した潜在リスクRが所定の値を超えて、尚且つ、車両10に追従する後続車両43(後続移動体)が存在することを条件として、後続車両43の乗員に対して、注意喚起を促す情報を提示する。したがって、車両10の移動方向に潜在リスクRが高い障害物があった場合に、車両10の後続車両43の乗員に対して的確な注意喚起を行うことができる。
【0114】
また、本実施の形態に係る注意喚起装置50において、ハザードランプ制御部77(情報提示部)は、車両10の後部のハザードランプ19を点滅させる。したがって、視認しやすいハザードランプ19を点滅させることによって、後続車両43の乗員に対して的確な注意喚起を行うことができる。また、車両の既存構成部品を活用するため、設置スペースを確保する必要がない。また、コストの増加も抑えられる。
【0115】
また、本実施の形態に係る注意喚起装置50において、配光制御部74(情報提示部)は、潜在リスク算出部72が算出した障害物の各々の潜在リスクRに基づいて、車両10(移動体)の乗員に対して、潜在リスクRが所定の値を超える障害物に対する注意喚起を促す情報を提示する。したがって、車両10の乗員に対しても的確な注意喚起を行うことができる。
【0116】
また、本実施の形態に係る注意喚起装置50において、ハザードランプ制御部77(情報提示部)は、車両10(移動体)から後続車両43(後続移動体)までの距離が所定距離を超える場合は、後続車両43の乗員に対して、注意喚起を促す情報を提示しない。したがって、過剰な注意喚起を防止することができる。
【0117】
また、本実施の形態に係る注意喚起装置50において、障害物に係る情報は、少なくとも、当該障害物の位置を含む。したがって、障害物の位置の時間変化を求めることによって、障害物の移動方向と移動速度とを推定することができるため、少ないデータ量で、潜在リスクRが高い障害物を検出することができる。
【0118】
また、本実施の形態に係る注意喚起装置50において、障害物に係る情報は、当該障害物の種別と、障害物の位置と、移動方向と、移動速度とを含む。したがって、飛び出し歩行者46のように、潜在リスクRが高い障害物も確実に検出することができる。
【0119】
(実施の形態の変形例)
次に、前述した注意喚起装置50の変形例を説明する。ここで説明する注意喚起装置50は、車両10の乗員に対して、前照灯12の配光制御以外の方法で注意喚起を行う例である。なお、後続車両43に対する注意喚起は、前述した実施の形態と同様に行われる。
【0120】
まず、
図10を用いて、実施の形態の変形例である注意喚起装置50を車両10に搭載した状態を説明する。
図10は、実施の形態の変形例に係る注意喚起装置を車載した状態を示す概略図である。
【0121】
実施の形態の変形例の注意喚起装置50は、特に注意を要する障害物の位置を、センターモニタ32、又はHUD34の表示領域34aに表示する(
図11,
図12参照)。なお、注意喚起装置50は、前述した注意喚起装置50のハードウエア構成に加えて、
図10に示すカメラ14を更に備える。カメラ14は、車両10のメータクラスタに運転者の顔面を向けて設置されて、運転者の目を含む画像を撮像する。
【0122】
注意喚起装置50は、カメラ14が撮像した画像から運転者の目の位置を検出する。そして、運転者の目の位置に基づいて、注意喚起装置50が検出した、特に注意を要する障害物の位置を強調する情報を表示領域84aに表示する。詳しくは後述する(
図12参照)。
【0123】
(実施の形態の変形例の動作例(1))
次に、
図11を用いて、実施の形態の変形例の注意喚起装置50の第1の動作例を説明する。
図11は、実施の形態の変形例が行う注意喚起の一例を示す第1の図である。
【0124】
注意喚起装置50は、カメラ14が撮像した画像をリアルタイムでセンターモニタ32に表示する。なお、車両10には、複数台のカメラ14が設置されているため、注意喚起装置50は、複数のカメラ14が撮像した画像を1枚の画像にパノラマ合成してセンターモニタ32に表示する。
【0125】
さらに、注意喚起装置50は、潜在リスクRが所定の値を超える障害物、即ち、特に注意を要する障害物の存在位置を、センターモニタ32に表示した車両前方の画像に重畳して表示する。なお、障害物の位置は、前記した周囲環境情報取得部71の作用によって検出される。
【0126】
特に注意を要する障害物の存在位置を画像に重畳する方法は問わないが、
図11の例では、該当する障害物(飛び出し歩行者46)に外接するマーカ80を描画することによって、特に注意を要する障害物の存在位置を強調している。
【0127】
なお、このとき、後続車両43までの車間距離が所定距離以下である場合には、注意喚起装置50は、車両10のハザードランプ19を点滅させる。このように、潜在リスクRが所定の値を超える障害物の位置を、車両10(移動体)が備えるセンターモニタ32(表示装置)に表示するとともに、ハザードランプ19を点滅させることによって、昼夜を問わずに、車両10の乗員、及び後続車両43の乗員に注意喚起を行うことができる。
【0128】
(実施の形態の変形例の動作例(2))
次に、
図12を用いて、実施の形態の変形例の注意喚起装置50の第2の動作例を説明する。
図12は、実施の形態の変形例が行う注意喚起の一例を示す第2の図である。
【0129】
注意喚起装置50は、HUD34の表示領域34aに、潜在リスクRが所定の値を超える障害物、即ち、特に注意を要する障害物の領域を強調するマーカ82を描画することによって、特に注意を要する障害物の存在位置を強調する。
【0130】
このとき、注意喚起装置50は、車両10の運転者の目84の位置を検出する。そして、運転者の目84の位置と、特に注意を要する障害物の存在位置とを結ぶ直線が、表示領域34aと交差する位置に、マーカ82を表示する。これによって、運転者がマーカ82を注視した際に、運転者は、視線の先に、特に注意を要する障害物を視認することができる。
【0131】
なお、注意喚起装置50は、車両10のメータクラスタに設置したカメラ14が撮像した、運転者の顔面を含む画像の中から、公知の顔認識アルゴリズム等を用いて、運転者の目84の位置を検出する。
【0132】
また、このとき、後続車両43までの車間距離が所定距離以下である場合には、注意喚起装置50は、車両10のハザードランプ19を点滅させる。このように、潜在リスクRが所定の値を超える障害物の位置を、車両10(移動体)が備えるHUD34(表示装置)に表示するとともに、ハザードランプ19を点滅させることによって、昼夜を問わずに、車両10の乗員、及び後続車両43の乗員に注意喚起を行うことができる。
【0133】
(実施の形態の変形例の機能構成)
次に、
図13を用いて、実施の形態の変形例の注意喚起装置50の機能構成を説明する。
図13は、実施の形態の変形例に係る注意喚起装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0134】
注意喚起装置50のECU20は、当該ECU20に格納された制御プログラムをRAM20bに展開して、CPU20aに動作させることによって、
図13に示す周囲環境情報取得部71と、潜在リスク算出部72と、表示制御部75と、後方車間距離測定部76と、ハザードランプ制御部77とを機能部として実現する。
【0135】
周囲環境情報取得部71と、潜在リスク算出部72と、後方車間距離測定部76と、ハザードランプ制御部77の機能は、前記した通り(
図8参照)であるため、説明は省略する。
【0136】
表示制御部75は、潜在リスクRが所定の値を超える障害物の位置を、車両10が備える表示装置に表示する。なお、表示制御部75は、本開示における情報提示部の一例である。ここで、車両10が備える表示装置とは、前記したセンターモニタ32やHUD34である。また、表示制御部75は、例えばHUD34に、特に注意を要する障害物の位置を表示する場合に、運転者の目の位置を検出する。そして、運転者の目の位置と、特に注意を要する障害物の位置とに応じた位置に、障害物を強調するマーカ82(
図12参照)を表示する。
【0137】
なお、
図13の機能ブロック図には、車両10の前照灯12の配光制御を行う機能は記載していないが、
図13の機能ブロック図を、
図8に示した配光状態決定部73と配光制御部74とを更に備える構成としてもよい。
【0138】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0139】
10 車両(移動体)
12 前照灯
12L 左前照灯
12R 右前照灯
13L,13R 照射範囲
14 カメラ
16 測距センサ
17 アンテナ
19 ハザードランプ
32 センターモニタ(車載モニタ、表示装置)
34 ヘッドアップディスプレイ(HUD、表示装置)
34a 表示領域
40 先行車両
42 対向車両
43 後続車両(後続移動体)
44,46 歩行者
49 道路
50 注意喚起装置
60 潜在リスク算出モデル
61,62,63,64 入力ユニット
65,66 中間ユニット
67 出力ユニット
71 周囲環境情報取得部(取得部)
72 潜在リスク算出部(算出部)
73 配光状態決定部
74 配光制御部(情報提示部)
75 表示制御部(情報提示部)
76 後方車間距離測定部
77 ハザードランプ制御部(情報提示部)
80,82 マーカ
I 周囲環境情報
R 潜在リスク
w1,w2,w3,w4,w5,w6,w7,w8,w9,w10 重み係数