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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】表示装置及びヘッドアップディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
G02B27/01
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021059822
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156233
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊野 豊
(72)【発明者】
【氏名】結城 康三
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 裕志
(72)【発明者】
【氏名】杉山 圭司
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-122481(JP,A)
【文献】特表2009-528567(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0314648(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/00-30/60
G02F 1/1333,1/1335
G02B 5/00,5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面を有する表示部材と、
前記表示部材の前記表示面側に配置され、前記表示部材とは反対側の第1面と前記表示部材側の第2面とを有し、光透過性を有する光透過部材と、
前記表示部材の前記表示面とは反対側に配置され、光拡散性を有する光拡散部材と、を備え、
前記光透過部材と前記表示部材との間に設けられる複数の突起物を有し、
前記光透過部材の前記第1面の光透過率は、前記光透過部材の前記第2面の光透過率よりも低い
表示装置。
【請求項2】
前記複数の突起物は、互いに離間して前記光透過部材と前記表示部材との間に設けられる
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記表示部材と前記光透過部材との間に配置されるフィルム部材を更に備え、
前記複数の突起物は、前記フィルム部材の表面に設けられる
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記光透過部材の前記第2面のヘイズH1、前記フィルム部材のヘイズH2、及び前記光拡散部材のヘイズH3は、以下の条件式(1)
H1<H2<H3・・・(1)
を満たす
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記光透過部材の前記第1面の光吸収率は、前記光透過部材の前記第2面の光吸収率よりも高い
請求項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記光透過部材の前記第1面のヘイズは、前記光透過部材の前記第2面のヘイズよりも大きい
請求項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記複数の突起物は、前記光透過部材の前記第2面に設けられる
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項8】
前記複数の突起物は、前記表示部材の前記表示面に設けられる
請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の表示装置と、
前記表示装置から出射された表示光を表示媒体に投射する投射光学系と、を備える
ヘッドアップディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置及びヘッドアップディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ヘッドアップディスプレイ装置に適用される表示ユニットを開示する。この表示ユニットは、表示部材と、表示部材の表示面に配置される透明部材と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-212972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示部材の表示面に透明部材を配置する構成を採用した場合、画面上にニュートンリングが発生し、ユーザにとって虚像の視認性が低下する場合がある。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、ニュートンリングが発生することを低減し得る表示装置及びヘッドアップディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における表示装置は、表示部材と、光透過部材と、光拡散部材とを備える。表示部材は、表示面を有する。光透過部材は、表示部材の表示面側に配置され、表示部材とは反対側の第1面と表示部材側の第2面とを有し、光透過性を有する。光拡散部材は、表示部材の表示面とは反対側に配置され、光拡散性を有する。表示装置は、光透過部材と表示部材との間に複数の突起物を有する。光透過部材の第1面の光透過率は、光透過部材の第2面の光透過率よりも低い。
【0007】
本開示におけるヘッドアップディスプレイは、上記の表示装置と、上記の表示装置から出射された表示光を表示媒体に投射する投射光学系とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示における表示装置及びヘッドアップディスプレイは、ニュートンリングが発生することを低減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1における表示装置を備えるヘッドアップディスプレイが搭載された自動車を示す図
図2】実施の形態1における表示装置を備えるヘッドアップディスプレイを用いた場合のユーザの視野を示す図
図3】実施の形態1における表示装置を備えるヘッドアップディスプレイの構造を説明する図
図4】実施の形態1における表示装置の概略断面図
図5】実施の形態1における表示装置の概略斜視図
図6】実施の形態1における表示装置のフィルム部材の一部を拡大した図
図7】実施の形態2における表示装置の概略断面図
図8】実施の形態2における表示装置の光透過部材の一部を拡大した図
図9】実施の形態3における表示装置の概略断面図
図10】実施の形態3における表示装置の表示部材の一部を拡大した図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、すでによく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲の記載の主題を限定することは意図されていない。
【0012】
(実施の形態1)
以下、図1図6を参照して、実施の形態1について説明する。
【0013】
(ヘッドアップディスプレイを用いた自動車の構成)
まず、表示装置10を含むヘッドアップディスプレイ1を用いた自動車100について図1及び図2を参照して説明する。ヘッドアップディスプレイ1は、一例として、移動体に搭載される。本実施の形態では、図1に示すように、移動体が自動車100である場合を例に挙げて説明する。自動車100は、移動体本体としての車体100aと、車体100aに搭載されるヘッドアップディスプレイ1とを備えている。
【0014】
ヘッドアップディスプレイ1は、自動車100の車体100aのウィンドシールド101に下方から画像を投影するように、自動車100の車室内に設置されている。ウィンドシールド101の下方のダッシュボード102内に、ヘッドアップディスプレイ1が配置されている。ヘッドアップディスプレイ1からウィンドシールド101に画像が投影されると、表示媒体としてのウィンドシールド101で反射された画像が運転者であるユーザ200に視認される。
【0015】
言い換えると、ユーザ200は、自動車100の前方に設定された対象空間400に投影された虚像310を、ウィンドシールド101越しに視認することになる。本開示における「虚像」とは、ヘッドアップディスプレイから出射される光がウィンドシールド等の反射物にて反射するとき、その反射光によって、実際に物体があるように結ばれる像を意味する。そのため、自動車100を運転しているユーザ200は、図2に示すように、自動車100の前方に広がる実空間に重ねて、ヘッドアップディスプレイ1にて投影される虚像310を見ることができる。
【0016】
したがって、ヘッドアップディスプレイ1は、例えば、車速情報、ナビゲーション情報、歩行者情報、前方車両情報、車線逸脱情報、及び車両コンディション等の、種々の運転支援情報を、虚像310として表示し、ユーザ200に視認させることができる。図2では、虚像310は、ナビゲーション情報であり、一例として、車線変更を示す矢印を表示している。これにより、ユーザ200は、ウィンドシールド101の前方に視線を向けた状態からわずかな視線移動だけで、運転支援情報を視覚的に取得することができる。
【0017】
ヘッドアップディスプレイ1では、対象空間400に形成される虚像310は、ヘッドアップディスプレイ1の光軸500に交差する仮想面501上に形成される。本実施形態では、光軸500は、自動車100の前方の対象空間400において、自動車100の前方の路面600に沿っている。そして、虚像310が形成される仮想面501は、路面600に対して略垂直である。例えば、路面600が水平面である場合には、虚像310は鉛直面に沿って表示されることになる。なお、虚像310が形成される仮想面501は、光軸500に対して傾いていてもよい。光軸500に対する仮想面501の傾きの角度は、特に限定されない。
【0018】
(ヘッドアップディスプレイの構成)
次に、ヘッドアップディスプレイ1の構成について図3を用いて説明する。ヘッドアップディスプレイ1は、図3に示すように、表示装置10及び投射光学系20を備える。表示装置10及び投射光学系20について、以下に詳述する。
【0019】
(投射光学系の構成)
投射光学系20は、表示装置10の画像を構成する光をウィンドシールド101に向けて反射して、ウィンドシールド101に画像を投射して対象空間400に虚像310を投射するように構成される。投射光学系20は、図3に示すように、第1光学部材20a及び第2光学部材20bを備える。第1光学部材20aは、表示装置10からの光を第2光学部材20bに向けて反射するミラーである。第2光学部材20bは、第1光学部材20aからの光をウィンドシールド101に向けて反射するミラーである。このように、投射光学系20は、表示装置10の画像を、第1光学部材20a及び第2光学部材20bにより、ウィンドシールド101に投射することで、対象空間400に虚像310を投射する。
【0020】
(表示装置の構成)
続いて、表示装置10の構成について説明する。表示装置10は、図4及び図5に示すように、表示部材15、フィルム部材14、光透過部材13、光拡散部材16、押さえ部材11、及び枠体17を備える。表示装置10を構成する各部材について以下に説明する。
【0021】
表示部材15は、表示面15aを有する。表示部材15は、具体的には、液晶パネル又は有機ELパネル等である。特に表示部材15が液晶パネルによって構成される場合には、表示部材15は、バックライトからの光を選択的に透過させることで、表示面15aに画像を形成する。表示部材15の外周形状は矩形であり、かつ表示部材15は平板状の部材である。特に、表示部材15は、画像を表示する面である表示面15aを有する。表示面15aは、光を選択的に透過させる部位である光透過部位に対応する領域である。
【0022】
光透過部材13は、光透過性を有し、水晶よりも高い熱伝導率を有する。光透過部材13は、図4に示すように、表示部材15における表示面15a側に配置されている。ここで、本開示において用いられる「熱伝導率」とは、熱の移動のしやすさを表す物理量であり、本実施の形態では、光透過部材13が置かれる環境の周囲温度が20℃のときに測定した熱伝導率の値を指す。
【0023】
光透過部材13は、表示装置10の放熱性を向上させる機能を有する。より具体的には、光透過部材13は、外部から投射光学系20を介して表示部材15の表示面15aに太陽光が集光された場合等に、表示面15aに生じた熱を表示装置10の外部に効率よく逃がすことができ、表示装置10の放熱性を向上させ得る。これにより、光透過部材13は、表示部材15の温度上昇を抑制し得る。光透過部材13は、水晶よりも熱伝導率が高い。光透過部材13は、一例としては、サファイアガラス等を用いることができる。光透過部材13は、表示部材15と同様に、平板状の部材であり、その外周形状は矩形である。本実施の形態では、光透過部材13は表示部材15と同じサイズである。ただし、光透過部材13は表示部材15と必ずしも同じサイズである必要はない。光透過部材13は、光透過部材13の放熱性の機能を阻害しない範囲でサイズを小さくすることができる。また、光透過部材13は、表示装置10の他の部材と干渉しない範囲でサイズを大きくしてもよい。
【0024】
光透過部材13は、光透過率の異なる2つの面を有するように構成されている。具体的には、光透過部材13における表示部材15とは反対側の第1面13aの光透過率は、光透過部材13における表示部材15側の第2面13bの光透過率よりも低い。例えば、光透過部材13の第1面13aには、黒色の膜が蒸着されている。こうすることで、光透過部材13の第1面13aの光吸収率を高めることができ、当該第1面13aの光透過率を光透過部材13の第2面13bの光透過率よりも低くすることができる。
【0025】
なお、光透過部材13の第1面13aは、微細な凹凸が形成されて粗くなっていてもよく、当該第1面13aのヘイズは、光透過部材13の第2面13bのヘイズよりも大きくてもよい。ここで、ヘイズとは、光の散乱の程度を数値化したものであり、その値が大きいほど白濁していることを示す。こうすることで、光透過部材13の第1面13aで散乱される光の割合を高めることができ、当該第1面13aの光透過率を光透過部材13の第2面13bの光透過率よりも低くすることができる。また、光透過部材13の第1面13aの光反射率は、光透過部材13の第2面13bの光反射率よりも高くてもよい。こうすることで、光透過部材13の第1面13aの光透過率を光透過部材13の第2面13bの光透過率よりも低くすることができる。
【0026】
フィルム部材14は、光透過性を有するフィルム状の部材である。フィルム部材14は、図4に示すように、表示部材15と光透過部材13との間に配置されている。フィルム部材14は、一例として、TAC等からなる樹脂製のフィルムである。フィルム部材14は、表示部材15及び光透過部材13と同様に、その外周形状は矩形である。本実施の形態では、フィルム部材14は表示部材15及び光透過部材13と同じサイズである。ただし、フィルム部材14は表示部材15及び光透過部材13と必ずしも同じサイズである必要はない。例えば、フィルム部材14は、表示部材15及び光透過部材13よりも小さいサイズでもよい。また、表示部材15と光透過部材13とのサイズが異なる場合、フィルム部材14は、表示部材15と光透過部材13とでサイズが小さい方と同じサイズであってもよい。
【0027】
図6に示すように、フィルム部材14は、その表面に微細な複数の突起物140を有する。より詳細には、複数の突起物140は、フィルム部材14における光透過部材13側の第1面14a及び表示部材15側の第2面14bにある。複数の突起物140は、表示部材15の光透過部位の全体を覆うようにフィルム部材14の表面に存在する。
【0028】
フィルム部材14は、表示部材15及び光透過部材13に対して、複数の突起物140を介して接触するように構成されている。したがって、フィルム部材14と表示部材15との間、及びフィルム部材14と光透過部材13との間には、複数の突起物140が表示部材15及び光透過部材13のそれぞれの平坦な面と接触することによって複数の空隙141が構成される。これにより、フィルム部材14を透過する光を拡散させることで光の干渉の発生を抑制することができる。
【0029】
複数の突起物140は、平面方向に互いに離間している。各突起物140は、図示しないが、平面に沿った一の方向に互いに離間していてもよいし、平面に沿った複数の方向に互いに離間していてもよい。各突起物140同士の平均間隔W(図6参照)は、一例として、5μm以上500μm以下である。また、各突起物140の高さH(図6参照)は、一例として、0.5μm以上250μm以下である。
【0030】
ここで、フィルム部材14は、その屈折率が、表示部材15の屈折率よりも大きく、かつ、光透過部材13の屈折率よりも小さくなるように構成されていてもよい。つまり、表示部材15の屈折率をF1、光透過部材13の屈折率をF2、フィルム部材14の屈折率をF3とすると、F1、F2、F3は以下の条件式(1)を満たす。なお、F1、F2、F3は以下の条件式(1)を満たさないものであってもよい。
F1≦F3<F2・・・(1)
【0031】
押さえ部材11は、光透過部材13を表示面15aに向けて押し付ける部材である。押さえ部材11は、矩形の板状の部材であり、表示部材15の表示領域に対応する位置に矩形の開口部を有する。つまり、押さえ部材11は、枠状の部材であり、その外周形状は矩形である。押さえ部材11は、光透過部材13のうち、表示部材15の表示領域以外に対応する部分に接触する。押さえ部材11は、光透過部材13に対して表示部材15とは反対側に配置され、表示部材15とは反対側から光透過部材13に接触することで、光透過部材13を表示部材15に押し付ける。また、押さえ部材11は、熱伝導性を有する。押さえ部材11の熱伝導率は、光透過部材13の熱伝導率よりも高いことが好ましい。押さえ部材11は、一例としては、アルミニウム製である。
【0032】
また、押さえ部材11は、緩衝部材12を介して光透過部材13を押さえていてもよい。この場合、緩衝部材12は、押さえ部材11と光透過部材13との間に配置される。緩衝部材12は、弾性を有している。緩衝部材12は、押さえ部材11と同様に、板状の部材であり、その外周形状は矩形で、さらに矩形の開口部を有する。つまり、緩衝部材12は、枠状の部材であり、その外周形状は矩形である。また、緩衝部材12の熱伝導率は、光透過部材13の熱伝導率よりも高いことが好ましい。
【0033】
光拡散部材16は、図4に示すように、表示部材15における表示面15aとは反対側に設けられている。光拡散部材16は、光源(図示せず)からの光を拡散して表示部材15へ導き、表示部材15の表示面15aでの均斉度を向上する機能を有する。光拡散部材16の外周形状は矩形であり、かつ光拡散部材16は板状の部材である。光拡散部材16は、光透過性を有する。光拡散部材16の材料としては、例えば、PET又はガラス等が挙げられる。光拡散部材16は、断熱性を有していないことが好ましい。また、光拡散部材16は、表示部材15の光透過部位を覆う大きさであることが好ましい。
【0034】
光拡散部材16は、そのヘイズが、フィルム部材14のヘイズよりも高くなるように構成されている。また、フィルム部材14のヘイズは、光透過部材13の第2面13bのヘイズよりも高くなるように設定されている。つまり、光透過部材13の第2面13bのヘイズをH1、フィルム部材14のヘイズをH2、光拡散部材16のヘイズをH3とすると、H1、H2、H3は以下の条件式(2)を満たす。
H1<H2<H3・・・(2)
【0035】
フィルム部材14のヘイズは、好ましくは1%~15%である。ヘイズが1%未満であると、ニュートンリングの低減効果が十分に得られない場合がある。一方、ヘイズが15%より大きいと、表示部材15から出射した光の輝度が低下して虚像の視認性が低下する場合がある。
【0036】
枠体17は、表示部材15を取り付けるために設けられる。枠体17は、光拡散部材16における表示部材15とは反対側の面の周縁部に接触するように配置される。また、枠体17は、光透過部材13及び光拡散部材16よりも熱伝導率が高いことが好ましい。枠体17は、一例としては、アルミニウム製である。枠体17をこのように構成することにより、表示装置10の放熱性を向上させやすくなる。なお、押さえ部材11によって表示部材15の熱を十分に逃がすことができる場合には、枠体17を樹脂等によって形成してもよい。枠体17の外周形状は矩形であり、かつ枠体17は筒状の部材であり、複数(ここでは、4つ)の保持部170を有する。各保持部170は、図5に示すように、光透過部材13と表示部材15と光拡散部材16とを、枠体17に対して相対的に固定する。より具体的には、光透過部材13とフィルム部材14と表示部材15と光拡散部材16とを1つの直方体状の部材と見たとき、この部材の4つの側面とそれぞれ対向するように、4つの保持部170が配置されている。そして、4つの保持部170により、この部材が枠体17に対して相対的に固定される。
【0037】
表示装置10では、すでに述べたように、光透過部材13と表示部材15と光拡散部材16とは、枠体17の複数の保持部170に保持される。そして、押さえ部材11は、直接又は緩衝部材12を介して、光透過部材13に接触する。つまり、表示部材15の表示面15aで発生した熱は、光透過部材13を介して押さえ部材11へ伝達され、外部の空気中へ放熱される。
【0038】
(効果等)
以上のように、本実施の形態において、表示装置10は、表示部材15、フィルム部材14、光透過部材13、及び光拡散部材16を備える。フィルム部材14の表面には複数の突起物140が形成されている。フィルム部材14と表示部材15との間、及びフィルム部材14と光透過部材13との間には、複数の突起物140が表示部材15及び光透過部材13のそれぞれの平坦な面と接触することによって複数の空隙141が構成される。
【0039】
これにより、表示装置10において、ニュートンリングの発生を低減し得る。表示部材15の平滑な表示面15aと光透過部材13の平滑な面とを密着させると、これらの面が実際には完全な平面でないために、表示部材15と光透過部材13との間に空気層が生じる。これにより屈折率が大きく変化する界面が存在することとなり、固定端反射による位相ずれや光路長変化が発生することで、光の干渉が発生し、ニュートンリングが発生し得る。本実施の形態の表示装置10によれば、表示部材15と光透過部材13との間に複数の突起物140を有するフィルム部材14を配置しているため、平滑な面同士が密着しないこととなり、フィルム部材14を透過する光を拡散させることで光の干渉の発生を抑制し、ニュートンリングの発生を低減し得る。
【0040】
また、光透過部材13の第2面13bのヘイズをH1、フィルム部材14のヘイズをH2、光拡散部材16のヘイズをH3とすると、H1、H2、H3は以下の条件式(2)を満たす。
H1<H2<H3・・・(2)
【0041】
これにより、ニュートンリングの発生の低減と画質の低下の抑制とを両立し得る。フィルム部材14のヘイズH2を大きくすればニュートンリングの発生を低減する効果を高められることが期待されるが、本実施の形態の表示装置10では光透過部材13が表示部材15の表示面15a側に配置されているため、表示部材15と光透過部材13との間に配置されるフィルム部材14のヘイズH2を大きくすれば、表示部材15の表示面15aに表示される画像の画質が低下する恐れがある。本実施の形態の表示装置10では、フィルム部材14のヘイズH2を光透過部材13の第2面13bのヘイズH1よりも大きくし、かつ、フィルム部材14のヘイズH2を光拡散部材16のヘイズH3よりも小さくすることにより、ニュートンリングの発生を低減しながら、画質の低下を抑制し得る。
【0042】
光透過部材13の第1面13aの光透過率は、光透過部材13の第2面13bの光透過率よりも低い。
【0043】
これにより、太陽光等の外光がヘッドアップディスプレイ1内に進入して表示装置10に到達しても、光透過部材13の第1面13aにおいてその外光の一部を吸収又は反射できるため、表示部材15に到達する外光を低減でき、表示部材15の温度上昇を抑制し得る。
【0044】
光透過部材13は、表示部材15の表示面15a側に配置されている。
【0045】
これにより、ヘッドアップディスプレイ1内に進入した太陽光等の外光により表示部材15の表示面15aが加熱されても、光透過部材13を介して放熱することができ、表示部材15の温度上昇を抑制し得る。
【0046】
表示部材15の屈折率をF1、光透過部材13の屈折率をF2、フィルム部材14の屈折率をF3とすると、F1、F2、F3は以下の条件式(1)を満たす。
F1≦F3<F2・・・(1)
【0047】
これにより、画質の低下を抑制し得る。光透過部材13としては、熱伝導性の高いサファイアガラスを用いることが好ましいが、サファイアガラスの屈折率は、550ナノメートルの波長の光に対して1.77程度であるため、表示部材15と光透過部材13との間の屈折率の差が大きくなり、画質に影響が生じることがある。本実施の形態の表示装置10では、表示部材15と光透過部材13との間に、それぞれの屈折率F1、F2の中間の値の屈折率を有するフィルム部材14を配置することにより、表示部材15の温度上昇を抑制しながら、画質の低下を抑制し得る。
【0048】
(実施の形態2)
以下、図7及び図8を参照して、実施の形態2について説明する。なお、上述した実施の形態1と同一の部材については同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
表示装置10Aは、図7に示すように、表示部材15、光透過部材13A、光拡散部材16、押さえ部材11、及び枠体17を備える。表示装置10Aでは、表示装置10の場合とは異なり、フィルム部材14を備えていない。その代わりに、図8に示すように、光透過部材13Aが、複数の突起物130を有している。より詳細には、複数の突起物130は、光透過部材13Aの第2面13bにある。複数の突起物130は、表示部材15の光透過部位の全体を覆うように光透過部材13Aの当該第2面13bに存在する。
【0050】
光透過部材13Aは、表示部材15に対して、複数の突起物130を介して接触するように構成されている。したがって、光透過部材13Aと表示部材15との間には、複数の突起物130が表示部材15の平坦な面と接触することによって複数の空隙131が構成される。
【0051】
これにより、表示装置10Aでは、光透過部材13Aと表示部材15との間に複数の突起物130が存在するため、平滑な面同士が密着しないこととなり、光透過部材13Aの第2面13bで反射する光や当該第2面13bを透過する光を拡散させることで光の干渉の発生を抑制し、ニュートンリングの発生を低減し得る。また、表示装置10Aでは、複数の突起物130を設けるためにフィルム部材14のような別部材を利用する必要がないため、表示部材15で発生した熱が直接的に光透過部材13Aへ伝熱され得、放熱性の向上を図れる。
【0052】
(実施の形態3)
以下、図9及び図10を参照して、実施の形態3について説明する。なお、上述した実施の形態1及び2と同一の部材については同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0053】
表示装置10Bは、図9に示すように、表示部材15A、光透過部材13、光拡散部材16、押さえ部材11、及び枠体17を備える。表示装置10Bでは、上述した実施の形態2の表示装置10Aの場合と同様に、フィルム部材14を備えていない。その代わりに、図10に示すように、表示部材15Aが、複数の突起物150を有している。より詳細には、複数の突起物150は、表示部材15Aにおける表示面15aにある。複数の突起物150は、表示部材15Aの光透過部位の全体にわたって存在する。
【0054】
表示部材15Aは、光透過部材13に対して、複数の突起物150を介して接触するように構成されている。したがって、光透過部材13と表示部材15Aとの間には、複数の突起物150が光透過部材13の平坦な面と接触することによって複数の空隙151が構成される。
【0055】
これにより、表示装置10Bでは、光透過部材13と表示部材15Aとの間に複数の突起物150が存在するため、平滑な面同士が密着しないこととなり、表示部材15Aの表示面15aで反射する光を拡散させることで光の干渉の発生を抑制し、ニュートンリングの発生を低減し得る。また、表示装置10Bでは、複数の突起物150を設けるためにフィルム部材14のような別部材を利用する必要がないため、表示部材15Aで発生した熱が直接的に光透過部材13へ伝熱され得、放熱性の向上を図れる。
【0056】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1~3を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用できる。また、上記の実施の形態1~3で説明した書く構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0057】
例えば、実施の形態1の表示装置10において、フィルム部材14は、第1面14aと第2面14bとの両方に複数の突起物140を有していなくてもよい。つまり、複数の突起物140は、フィルム部材14の第2面14bにだけあってもよい。この場合、フィルム部材14の第1面14aは平坦な面であってもよい。あるいは、複数の突起物140は、フィルム部材14の第1面14aにだけあってもよい。この場合、フィルム部材14の第2面14bは平坦な面であってもよい。
【0058】
また、実施の形態1の表示装置10において、光透過部材13は、光透過率の異なる2つの面を有していなくてもよい。つまり、光透過部材13の第1面13aの光透過率は、光透過部材13の第2面13bの光透過率と同じであってもよい。あるいは、光透過部材13の第1面13aの光透過率は、光透過部材13の第2面13bの光透過率よりも高くてもよい。
【0059】
本実施の形態の表示装置10では、複数の突起物140(130、150)が表示部材15又は光透過部材13の平坦な面と接触する場合の、複数の突起物140(130、150)と当該平坦な面とは、接着剤によって接合されていてもよいし、接着剤を用いずに接触していてもよい。なお、接着剤を用いない方が好ましい。接着剤を用いた場合、例えば接着剤と表示部材15又は光透過部材13の平坦な面との間の界面で加水分解が発生し、画質が低下する可能性があるためである。接着剤を用いない場合には、このような加水分解の発生を抑制でき、さらに複数の突起物140(130、150)が表示部材15又は光透過部材13の平坦な面と接触することによりニュートンリングの発生を低減し得る。
【0060】
表示装置10(10A、10B)は、押さえ部材11及び緩衝部材12を有していなくてよい。あるいは、緩衝部材12は有し、押さえ部材11を有していない構成であってもよい。この場合、光透過部材13(13A)を直接又は緩衝部材12を介して放熱性能を有する部材に接合するように構成するのが好ましい。また、例えば、表示装置10(10A、10B)は、光拡散部材16を有していなくてよい。
【0061】
表示装置10(10A、10B)の構成要素の外周形状は特に限定されない。一例として、表示部材15(15A)、フィルム部材14、光透過部材13(13A)、及び光拡散部材16の外周形状は、必ずしも矩形でなくてもよく、円形、正方形その他の多角形であってもよい。
【0062】
ヘッドアップディスプレイ1は、投射光学系20の代わりに、ホログラム素子を有していてもよい。この場合、表示装置10(10A、10B)から出射した光はホログラム素子に入射し、ホログラム素子で回折した光がウィンドシールド101に向けて出射する。
【0063】
上記の実施の形態では、表示媒体の一例としてウィンドシールド101を説明した。表示媒体は、ヘッドアップディスプレイ1から投影された画像を反射してユーザ200に視認させるものであれば、どのように構成してもよい。表示媒体は、ウィンドシールド101とユーザ200との間に存在するコンバイナで実現してもよい。
【0064】
(まとめ)
上記の実施の形態から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施の形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0065】
第1の態様の表示装置(10、10A、10B)は、表示部材(15、15A)と、光透過部材(13、13A)と、光拡散部材(16)と、を備える。表示部材(15、15A)は、表示面(15a)を有する。光透過部材(13、13A)は、表示部材(15、15A)の表示面(15a)側に配置され、表示部材(15、15A)とは反対側の第1面(13a)と表示部材側の第2面(13b)とを有し、光透過性を有する。光拡散部材(16)は、表示部材(15、15A)の表示面(15a)とは反対側に配置され、光拡散性を有する。表示装置(10、10A、10B)は、光透過部材(13、13A)と表示部材(15、15A)との間に設けられる複数の突起物(130、140、150)を有する。第1の態様によれば、光透過部材(13、13A)又は表示部材(15、15A)の少なくとも一方の平坦な面と複数の突起物(130、140、150)とが接触することによって複数の空隙(131、141、151)が構成される。このため、ニュートンリングの発生を低減し得る。
【0066】
第2の態様の表示装置(10、10A、10B)は、第1の態様との組合せにより実現され得る。第2の態様では、複数の突起物(130、140、150)は、互いに離間して光透過部材(13、13A)と表示部材(15、15A)との間に設けられる。第2の態様によれば、光透過部材(13、13A)又は表示部材(15、15A)の少なくとも一方の平坦な面と複数の突起物(130、140、150)とが接触することによってより確実に複数の空隙(131、141、151)が構成される。このため、ニュートンリングの発生を低減し得る。
【0067】
第3の態様の表示装置(10)は、第1又は第2の態様との組合せにより実現され得る。第3の態様では、表示装置(10)は、フィルム部材(14)を更に備える。フィルム部材(14)は、表示部材(15)と光透過部材(13)との間に配置される。複数の突起物(140)は、フィルム部材(14)の表面(14a、14b)に設けられる。第3の態様によれば、光透過部材(13)又は表示部材(15)の少なくとも一方の平坦な面とフィルム部材(14)に設けられた複数の突起物(140)とが接触することによって複数の空隙(141)が構成される。このため、ニュートンリングの発生を低減し得る。
【0068】
第4の態様の表示装置(10)は、第3の態様との組合せにより実現され得る。第4の態様では、光透過部材(13)の第2面(13b)のヘイズH1、フィルム部材(14)のヘイズH2、及び光拡散部材(16)のヘイズH3は、以下の条件式(2)
H1<H2<H3・・・(2)
を満たす。第4の態様によれば、ニュートンリングの発生を低減しながら、画質の低下を抑制し得る。
【0069】
第5の態様の表示装置(10、10A、10B)は、第1~第4の態様のいずれか1つとの組合せにより実現され得る。第5の態様では、光透過部材(13、13A)の第1面(13a)の光透過率は、光透過部材(13、13A)の第2面(13b)の光透過率よりも低い。第5の態様によれば、表示装置(10、10A、10B)に到達した太陽光等の外光の一部は光透過部材(13、13A)の第1面(13a)を透過しない。このため、表示部材(15、15A)の温度上昇を抑制し得る。
【0070】
第6の態様の表示装置(10、10A、10B)は、第5の態様との組合せにより実現され得る。第6の態様では、光透過部材(13、13A)の第1面(13a)の光吸収率は、光透過部材(13、13A)の第2面(13b)の光吸収率よりも高い。第6の態様によれば、表示装置(10、10A、10B)に到達した太陽光等の外光の一部を光透過部材(13、13A)の第1面(13a)で吸収し得る。このため、表示部材(15、15A)の温度上昇を抑制し得る。
【0071】
第7の態様の表示装置(10、10A、10B)は、第5の態様との組合せにより実現され得る。第7の態様では、光透過部材(13、13A)の第1面(13a)のヘイズは、光透過部材(13、13A)の第2面(13b)のヘイズよりも大きい。第7の態様によれば、表示装置(10、10A、10B)に到達した太陽光等の外光の一部を光透過部材(13、13A)の第1面(13a)で散乱し得る。このため、表示部材(15、15A)の温度上昇を抑制し得る。
【0072】
第8の態様の表示装置(10A)は、第1又は第2の態様との組合せにより実現され得る。第8の態様では、複数の突起物(130)は、光透過部材(13A)の第2面(13b)に設けられる。第8の態様によれば、表示部材(15)の平坦な面と光透過部材(13A)に設けられた複数の突起物(130)とが接触することによって複数の空隙(131)が構成される。このため、ニュートンリングの発生を低減し得る。
【0073】
第9の態様の表示装置(10B)は、第1又は第2の態様との組合せにより実現され得る。第9の態様では、複数の突起物(150)は、表示部材(15A)の表示面(15a)に設けられる。第9の態様によれば、光透過部材(13)の平坦な面と表示部材(15A)に設けられた複数の突起物(150)とが接触することによって複数の空隙(151)が構成される。このため、ニュートンリングの発生を低減し得る。
【0074】
第10の態様のヘッドアップディスプレイ(1)は、第1~第9の態様のいずれか1つの表示装置(10、10A、10B)と、表示装置(10、10A、10B)から出射された表示光を表示媒体(101)に投射する投射光学系(20)と、を備える。第10の態様によれば、表示装置(10、10A、10B)におけるニュートンリングの発生を低減し得る。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示は、移動体に搭載されるヘッドアップディスプレイに適用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 ヘッドアップディスプレイ
10、10A、10B 表示装置
11 押さえ部材
12 緩衝部材
13、13A 光透過部材
14 フィルム部材
15、15A 表示部材
130、140、150 突起物
16 光拡散部材
17 枠体
170 保持部
20 投射光学系
100 自動車(移動体)
100a 車体(移動体本体)
101 ウィンドシールド(表示媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10