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特許7537857モータ駆動制御装置およびモータ駆動制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置およびモータ駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/17 20160101AFI20240814BHJP
   H02P 1/46 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H02P6/17
H02P1/46
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018189017
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020058200
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 高通
(72)【発明者】
【氏名】加藤 博之
【合議体】
【審判長】林 毅
【審判官】脇岡 剛
【審判官】山崎 慎一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-151889(JP,A)
【文献】特開2004-140962(JP,A)
【文献】特開平08-088994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータ駆動部に対して所定のDuty比の駆動制御信号を出力するモータ制御部と、
前記モータの回転位置を検出する回転位置検出部と、
前記回転位置に基づいて前記モータが拘束状態であるか否かを判定する拘束判定部と、を備え、
前記拘束判定部は、
前記モータの起動後における第1期間、及び回転速度が上昇した後の第2期間において、継続して前記拘束状態を判定し、
前記モータ制御部は、
前記第1期間にあっては前記回転位置の検出タイミングに応じて回転速度を上昇させるために前記駆動制御信号のDuty比を上昇させ、
前記第1期間に前記モータが拘束状態でないと判定された場合において、回転速度が上昇した前記第2期間にあっては前記回転位置の検出タイミングに関わらず前記駆動制御信号のDuty比を連続的に上昇させ
前記第1期間に前記モータが拘束状態であると判定された場合、前記駆動制御信号の出力を停止し、
前記第2期間において、前記モータが拘束状態であると判定された場合、前記駆動制御信号の出力を停止する、
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記モータ制御部は、
前記第1期間にあっては前記回転位置の検出タイミングに応じて段階的に前記回転速度を上昇させるために前記駆動制御信号のDuty比を上昇させ、回転速度が上昇した後の前記第2期間にあっては外部から入力される速度指令に基づく目標速度まで前記回転速度を連続的に上昇させるために、前記駆動制御信号のDuty比を上昇させる、請求項1に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記拘束判定部は、
前記第1期間において、前記回転位置が所定の第3期間で検出されない場合、前記拘束状態であると判定する、請求項1又は2に記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
モータを駆動するモータ駆動工程と、
前記モータ駆動工程を実行するモータ駆動部に対して所定のDuty比の駆動制御信号を出力するモータ制御工程と、
前記モータの回転位置を検出する回転位置検出工程と、
前記回転位置に基づいて前記モータが拘束状態であるか否かを判定する拘束判定工程と、を含み、
前記拘束判定工程は、
前記モータの起動後における第1期間、及び回転速度が上昇した後の第2期間において、継続して前記拘束状態を判定し、
前記モータ制御工程は、
前記第1期間にあっては前記回転位置の検出タイミングに応じて回転速度を上昇させるために前記駆動制御信号のDuty比を上昇させ、前記第1期間に前記モータが拘束状態でないと判定された場合において、回転速度が上昇した前記第2期間にあっては前記回転位置の検出タイミングに関わらず前記駆動制御信号のDuty比を連続的に上昇させ
前記第1期間に前記モータが拘束状態であると判定された場合、前記駆動制御信号の出力を停止し、
前記第2期間において、前記モータが拘束状態であると判定された場合、前記駆動制御信号の出力を停止する、モータ駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置およびモータ駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象となるシステムの発熱を抑えるファンに搭載されるモータと、かかるモータの駆動を制御するモータ駆動制御装置とが知られている。また、モータ駆動制御装置では、モータを起動してからモータの回転が検出された場合に、モータパワーを大きくし、一方で、モータの回転状態が一定時間以上固定された状態の場合、モータが拘束状態であると判定し、モータを停止させることで発熱を抑えるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-125154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、例えば、羽根が重たい場合や、モータの起動トルクが大きい場合、起動時の回転速度の上昇が遅くなるため、起動から通常動作までのスタートアップの期間を早めることが難しい。この点に関し、仮に、モータの起動直後から回転の検出に関わらず急激に回転速度を上昇させると、拘束状態時においてもモータに対して速度上昇の指示を続けるため、モータの発熱が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、モータの発熱を抑えつつ、スタートアップを急速に行うことができるモータ駆動制御装置およびモータ駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るモータ駆動制御装置は、モータ駆動部と、モータ制御部と、回転位置検出部と、拘束判定部とを備える。前記モータ駆動部は、モータを駆動する。前記モータ制御部は、前記モータ駆動部に対して所定のDuty比の駆動制御信号を出力する。前記回転位置検出部は、前記モータの回転位置を検出する。前記拘束判定部は、前記回転位置に基づいて前記モータが拘束状態であるか否かを判定する。前記拘束判定部は、前記モータの起動後における第1期間、及び回転速度が上昇した後の第2期間において、継続して前記拘束状態を判定する。また、前記モータ制御部は、前記第1期間にあっては前記回転位置の検出タイミングに応じて回転速度を上昇させるために前記駆動制御信号のDuty比を上昇させ、前記第1期間に前記モータが拘束状態でないと判定された場合において、回転速度が上昇した前記第2期間にあっては前記回転位置の検出タイミングに関わらず前記駆動制御信号のDuty比を連続的に上昇させる。また、前記モータ制御部は、前記第1期間に前記モータが拘束状態であると判定された場合、前記駆動制御信号の出力を停止し、前記第2期間において、前記モータが拘束状態であると判定された場合、前記駆動制御信号の出力を停止する。
【0007】
本発明の一態様によれば、モータの発熱を抑えつつ、スタートアップを急速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るモータ駆動制御装置の回路構成を示すブロック図である。
図2図2は、監視部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、モータを通常起動させる場合の動作例を示すタイミングチャートである。
図4図4は、スタートアップ準備期間においてモータが拘束状態となった場合の動作例を示すタイミングチャートである。
図5図5は、スタートアップ処理期間においてモータが拘束状態となった場合の動作例を示すタイミングチャートである。
図6図6は、モータ駆動制御装置が実行する処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7図7は、モータ駆動制御装置が実行する処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係るモータ駆動制御装置およびモータ駆動制御方法について図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るモータ駆動制御装置1の回路構成を示すブロック図である。実施形態に係るモータ駆動制御装置1は、モータ駆動制御方法を実行する。具体的には、実施形態に係るモータ駆動制御方法では、モータ駆動制御装置1は、モータ20の起動後におけるスタートアップ準備期間(第1期間に相当)にあってはモータ20の回転位置の検出タイミングに応じて回転速度を上昇させる駆動制御信号を出力する。また、モータ駆動制御装置1は、スタートアップ準備期間にモータ20が拘束状態でないと判定された場合、スタートアップ準備期間後のスタートアップ処理期間(第2期間に相当)にあっては回転位置の検出タイミングに関わらず回転速度を連続的に上昇させる駆動制御信号を出力する。詳細は後述するが、モータ駆動制御装置1が実行するモータ駆動制御方法は、モータ20を駆動するモータ駆動工程と、モータ駆動工程を実行するモータ駆動部2に対して駆動制御信号を出力するモータ制御工程と、モータ20の回転位置を検出する回転位置検出工程と、回転位置に基づいてモータ20が拘束状態であるか否かを判定する拘束判定工程と、を含み、モータ制御工程は、モータ20の起動後におけるスタートアップ準備期間(第1期間に相当)にあっては回転位置の検出タイミングに応じて回転速度を上昇させ、スタートアップ準備期間にモータ20が拘束状態でないと判定された場合、スタートアップ準備期間後のスタートアップ処理期間(第2期間に相当)にあっては回転速度を連続的に上昇させる駆動制御信号を出力する。
【0011】
つまり、実施形態に係るモータ駆動制御方法では、スタートアップ準備期間では、モータ20の回転に合わせて徐々に回転速度を上昇させながら、拘束状態の有無を判定するため、過剰な電流増加(回転速度の上昇)が抑えられ、モータ20の発熱が抑制される。また、スタートアップ処理期間では、拘束状態でない場合に、モータ20の回転に関わらず回転速度を連続的に上昇させるため、スタートアップを早めることができる。すなわち、実施形態に係るモータ駆動制御方法によれば、モータ20の発熱を抑えつつ、スタートアップを急速に行うことができる。
【0012】
以下、上記したモータ駆動制御方法を実行するモータ駆動制御装置1について詳細に説明する。
【0013】
図1に示すように、モータ駆動制御装置1は、モータ20を駆動するモータ駆動部2と、駆動制御部3と、回転位置検出部4とを備える。なお、モータ駆動制御装置1は、モータ駆動部2、駆動制御部3および回転位置検出部4の全部がパッケージ化された集積回路装置(IC)であってもよく、モータ駆動部2、駆動制御部3および回転位置検出部4一部が1つの集積回路装置としてパッケージ化されていてもよいし、他の装置と一緒にモータ駆動制御装置1の全部又は一部がパッケージ化されて1つの集積回路装置が構成されていてもよい。
【0014】
モータ20は、例えば3相のブラシレスモータであり、例えばファンなどの図示しない回転体を回転させるファンモータである。回転位置検出部4は、モータ20のロータの回転位置を検出して、ロータの回転位置信号を出力する(回転位置検出工程)。モータ駆動部2は、回転位置検出部4から出力されるロータの回転位置信号に基づいて、モータ20の電機子のコイルLu、Lv、Lwに正弦波状の駆動電流を流すことで、モータ20を回転させる。なお、モータ20の相数は、3相に限定されるものでなく、また、ブラシレスモータに限らず、ブラシ付きモータであってもよい。
【0015】
モータ駆動部2は、後述の駆動制御部3から出力される駆動制御信号に基づき生成した駆動信号をモータ20へ出力することで、モータ20を駆動する(モータ駆動工程)。具体的には、モータ駆動部2は、インバータ回路21と、プリドライブ回路22とを備える。
【0016】
インバータ回路21は、後述のプリドライブ回路22から出力された出力信号に基づいてモータ20に駆動信号を出力し、モータ20が備える電機子のコイルLu、Lv、Lwに通電する。インバータ回路21は、例えば、直流電源Vccの両端に設けられた2つのスイッチ素子の直列回路の対(スイッチ素子Q1、Q2の対、スイッチ素子Q3、Q4の対、およびスイッチ素子Q5、Q6の対)が、各相(U相、V相、W相)のコイルLu、Lv、Lwに対してそれぞれ配置されて構成されている。2つのスイッチ素子の各対において、スイッチ素子同士の接続点が出力端となり、その出力端に、モータ20の各相のコイルLu、Lv、Lwにつながる端子が接続されている。具体的には、スイッチ素子Q1、Q2同士の接続点が、U相のコイルLuの端子につながる出力端である。また、スイッチ素子Q3、Q4同士の接続点が、V相のコイルLvの端子につながる出力端である。また、スイッチ素子Q5、Q6同士の接続点が、W相のコイルLwの端子につながる出力端である。また、対のうち、一方のスイッチ素子Q2、Q4、Q6は、他方のスイッチ素子Q1、Q3、Q5の接続端とは反対側の端部が抵抗R1を介して接地される。
【0017】
プリドライブ回路22は、駆動制御部3から出力される駆動制御信号に基づいて、インバータ回路21を駆動するための出力信号を生成し、インバータ回路21に出力する。生成される出力信号としては、例えば、インバータ回路21のスイッチ素子Q1~Q6のそれぞれに対応するVuu、Vul、Vvu、Vvl、VwuおよびVwlである。具体的には、スイッチ素子Q1には出力信号Vuuが出力され、スイッチ素子Q2には出力信号Vulが出力される。また、スイッチ素子Q3には出力信号Vvuが出力され、スイッチ素子Q4には出力信号Vvlが出力される。また、スイッチ素子Q5には出力信号Vwuが出力され、スイッチ素子Q6には出力信号Vwlが出力される。これらの出力信号に基づき、それぞれの出力信号に対応するスイッチ素子Q1~Q6がオン、オフ動作を行い、モータ20に駆動信号が出力されてモータ20の各相のコイルに電力が供給される。モータ20の回転を停止させるときには、スイッチ素子Q1~Q6はいずれもオフにされる。
【0018】
また、プリドライブ回路22は、駆動制御部3に対してモータ回転数信号を出力する。モータ回転数信号は、回転位置検出部4から、プリドライブ回路22を経由して駆動制御部3に入力される。モータ回転数信号は、例えば、モータ20のロータの回転位置に対応するFG信号である。すなわち、モータ回転数信号は、モータ20の回転数の検出結果を示す回転数情報である。FG信号は、ロータの側にある基板に設けたコイルパターンを用いて生成される信号(パターンFG)であってもよいし、モータ20に配置されたホール素子の出力を用いて生成される信号(ホールFG)であってもよい。また、モータ20の各相(U、V、W相)に誘起する逆起電圧を検出する回転位置検出回路を回転位置検出部4として構成し、検出された逆起電圧に基づき、モータ20のロータの回転位置と回転数とを検出するようにしてもよいし、モータ20の回転数や回転位置を検出するエンコーダなどのセンサ信号を用いてもよい。
【0019】
駆動制御部3は、モータ制御部31と、監視部32と、拘束判定部33と、スタートアップ判定部34とを備える。駆動制御部3は、例えば、マイクロコンピュータやデジタル回路等で構成されている。また、駆動制御部3は、モータ制御部31、監視部32、拘束判定部33およびスタートアップ判定部34での各種処理を制御する様々な設定値があらかじめ記憶された図示しない記憶部を有する。かかる記憶部は、例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの不揮発性メモリで構成される。また、駆動制御部3には、例えば、直流電源Vccを抵抗R2で降圧して駆動電力である電源電圧が供給されている。
【0020】
モータ制御部31は、外部端子等を経由してユーザから設定される速度指令信号(目標回転速度に応じた周波数のクロック信号)と、モータ回転数信号とに基づいてPWM(パルス幅変調)信号である駆動制御信号を生成し、生成された駆動制御信号をプリドライブ回路22に出力する(モータ制御工程)。すなわち、モータ制御部31は、目標回転速度と、モータ20の実際の回転数(回転速度)との比較でフィードバックをかけながら、モータ20を駆動させるための駆動制御信号をプリドライブ回路22に出力し、モータ20の回転制御を行う。なお、速度指令信号は、PWM信号であってもよく、DC(直流)信号であってもよい。
【0021】
また、モータ制御部31は、速度指令信号を受信した場合に、制御状態を停止状態からスタートアップ準備期間の状態へ遷移する。具体的には、モータ制御部31は、スタートアップ準備期間へ遷移した場合、モータ20の回転位置の検出タイミングに応じて回転速度を上昇させる駆動制御信号を出力する。
【0022】
また、モータ制御部31は、後述のスタートアップ判定部34からスタートアップ処理期間への移行を示す判定結果を受信した場合、制御状態をスタートアップ準備期間の状態からスタートアップ処理期間の状態へ遷移する。具体的には、モータ制御部31は、スタートアップ処理期間へ遷移した場合、モータ20の回転速度を回転位置の検出タイミングに関わらず連続的に上昇させる駆動制御信号を出力する。
【0023】
また、モータ制御部31は、スタートアップ準備期間およびスタートアップ処理期間のいずれの状態であった場合でも、後述の拘束判定部33からモータ20が拘束状態である旨の通知を受け付けた場合、駆動制御信号の出力を停止する。つまり、モータ制御部31は、モータ20を停止させる。
【0024】
監視部32は、プリドライブ回路22からモータ回転数信号を受信して、モータ20の回転状態を監視する。具体的には、監視部32は、電源電圧が供給された状態で、外部端子等を経由して速度指令信号を受信した場合に、モータ20の回転状態を監視する。
【0025】
なお、図1において速度指令信号は外部からモータ制御部31および監視部32それぞれに入力されているが、これに限定されず、駆動制御部3の内部に入力された後に、モータ制御部31および監視部32それぞれに入力されてもよく、あるいは、モータ制御部31および監視部32のいずれか一方が速度指令信号を受信して、他方へ出力してもよい。
【0026】
ここで、図2を用いて、監視部32の構成について具体的に説明する。図2は、監視部32の構成を示すブロック図である。図2に示すように、監視部32は、起動判定部321と、拘束検知タイマー322と、スタートアップ準備タイマー323とを備える。
【0027】
起動判定部321は、電源電圧および速度指令信号が入力された場合に、モータ20の起動があったと判定し、拘束検知タイマー322およびスタートアップ準備タイマー323をスタートさせる。
【0028】
拘束検知タイマー322は、モータ20の拘束状態を検知するためのタイマーである。拘束検知タイマー322は、起動判定部321の起動判定によりタイマーをスタートさせる。また、拘束検知タイマー322は、起動判定によるスタート後において、モータ回転数信号が入力された場合、タイマーをリセットするとともに、タイマーを再スタートする。
【0029】
そして、拘束検知タイマー322は、モータ回転数信号が所定の拘束検知期間(第3期間に相当)以上入力されなかった場合、かかる旨を拘束判定部33に通知する。換言すれば、拘束検知タイマー322は、モータ回転数信号の未入力の状態が継続し、拘束検知期間の満了を迎えた場合に、満了した旨を拘束判定部33に通知する。
【0030】
スタートアップ準備タイマー323は、スタートアップ準備期間のタイマーである。具体的には、スタートアップ準備タイマー323は、起動判定によりタイマーをスタートさせ、タイマーが予め設定された時間に到達した場合に、タイマーを終了するとともに、終了した旨をスタートアップ判定部34へ通知する。つまり、スタートアップ準備タイマー323のスタートは、スタートアップ準備期間の開始タイミングに対応し、スタートアップ準備タイマー323のエンドは、スタートアップ準備期間の終了タイミング、換言すれば、スタートアップ処理期間の開始タイミングに対応する。
【0031】
図1に戻って、拘束判定部33について説明する。拘束判定部33は、モータ20の回転位置に基づいてモータ20が拘束状態であるか否かを判定する(拘束判定工程)。具体的には、拘束判定部33は、プリドライブ回路22から出力されるモータ回転数信号により制御される拘束検知タイマー322から通知を受け付けた場合に、モータ20が拘束状態であると判定する。つまり、拘束判定部33は、モータ20の回転位置が拘束検知期間以上検出されない場合、モータ20が拘束状態であると判定する。
【0032】
そして、拘束判定部33は、モータ20が拘束状態であると判定した場合、モータ制御部31へ通知する。
【0033】
なお、モータ20の拘束状態は、モータ20が完全に固定され、回転が止まった状態(完全拘束状態)以外にも、例えばモータ20がゆっくりとした回転(回転速度が所定値以下)または回転速度が安定しない不安定な回転等の状態(不完全拘束状態)を含んでもよい。つまり、監視部32は、回転速度が所定値以下である場合、拘束検知タイマー322をリセットしないようにする。
【0034】
スタートアップ判定部34は、スタートアップ準備期間からスタートアップ処理期間へ移行するか否かを判定する。具体的には、スタートアップ判定部34は、スタートアップ準備タイマー323からタイマーの終了の通知を受け付けた場合、スタートアップ処理期間へ移行すると判定する。
【0035】
スタートアップ判定部34は、スタートアップ処理期間へ移行すると判定した場合、判定結果をモータ制御部31へ通知する。
【0036】
次に、図3図5を用いて、モータ駆動制御装置1の動作例について具体的に説明する。図3は、モータ20を通常起動させる場合の動作例を示すタイミングチャートである。図4は、スタートアップ準備期間においてモータ20が拘束状態となった場合の動作例を示すタイミングチャートである。図5は、スタートアップ処理期間においてモータ20が拘束状態となった場合の動作例を示すタイミングチャートである。
【0037】
まず、図3を用いて、モータ20を通常起動させる場合の動作例について説明する。なお、図3図5それぞれには、モータ状態(制御状態)、スタートアップ準備タイマー323、拘束検知タイマー322、速度指令信号、目標Duty(目標回転速度)、駆動制御信号Dutyおよびモータ回転数信号の項目を含むタイミングチャートを示す。
【0038】
図3に示すように、まず、時刻t1において、モータ制御部31は、速度指令信号を受信した場合、起動処理を行い、モータ状態を停止からスタートアップ準備期間へ遷移する。そして、モータ制御部31は、スタートアップ準備期間へ遷移するとともに、所定のDuty比の駆動制御信号を出力する。また、監視部32は、速度指令信号を受信した場合、スタートアップ準備タイマー323および拘束検知タイマー322をスタートする。
【0039】
そして、時刻t1aにおいて、監視部32は、モータ20の回転に伴いプリドライブ回路22から2回目のモータ回転数信号を受信した場合、拘束検知タイマー322をリセットするとともに、再スタートする。なお、図3では、1回目のモータ回転数信号を受信した場合については、拘束検知タイマー322のリセットしない場合を示したが、リセットしてもよい。また、時刻t1aにおいて、モータ制御部31は、モータ回転数信号を受信した場合、駆動制御信号のDuty比を1段上昇させる。つまり、モータ制御部31は、スタートアップ準備期間にあってはモータ20の回転位置の検出タイミングに応じて段階的に回転速度を上昇させる。そして、時刻t1aから時刻t2の期間において、モータ制御部31は、モータ回転数信号を1回受信する毎に、駆動制御信号のDuty比を1段上昇させる処理を繰り返し行う。
【0040】
そして、時刻t2において、監視部32は、スタートアップ準備タイマー323が予め設定された時間に到達した場合(満了した場合)、スタートアップ判定部34へ通知し、スタートアップ判定部34は、その通知をもとに、スタートアップ処理期間へ移行すると判定する。そして、モータ制御部31は、スタートアップ判定部34から判定結果を受け付けた場合、モータ状態をスタートアップ準備期間からスタートアップ処理期間へ遷移する。
【0041】
そして、モータ制御部31は、スタートアップ処理期間中においては、駆動制御信号のDuty比をモータ回転数信号に関わらず目標Dutyまで連続的に上昇させる。つまり、モータ制御部31は、スタートアップ処理期間にあってはモータ20の回転速度を連続的に上昇させる駆動制御信号を出力する。なお、駆動制御信号のDuty比を連続的に上昇させる目標値は、目標Dutyに限定されず、例えば、目標回転数であってもよい。
【0042】
なお、監視部32は、スタートアップ準備期間からスタートアップ処理期間へ遷移した場合において、拘束検知タイマー322を継続して動作させるとともに、モータ回転数信号が入力される毎にリセットおよび再スタートを行う。つまり、拘束判定部33は、スタートアップ準備期間およびスタートアップ処理期間において、継続して拘束状態を判定する。
【0043】
そして、時刻t3において、モータ制御部31は、駆動制御信号のDuty比が目標Dutyに到達した場合、スタートアップ処理期間を終了し、通常動作へ遷移することで、スタートアップの処理を終了する。
【0044】
次に、図4を用いて、スタートアップ準備期間においてモータ20が拘束状態となった場合の動作例について説明する。
【0045】
図4に示すように、まず、時刻t1において、モータ制御部31は、速度指令信号を受信した場合、起動処理を行い、モータ状態を停止からスタートアップ準備期間へ遷移する。そして、モータ制御部31は、スタートアップ準備期間へ遷移するとともに、所定のDuty比の駆動制御信号を出力する。また、監視部32は、速度指令信号を受信した場合、スタートアップ準備タイマー323および拘束検知タイマー322をスタートする。
【0046】
ここで、モータ20は、拘束状態であるため、駆動制御信号が出力されても、プリドライブ回路22からモータ回転数信号が入力されない。そして、スタートアップ準備期間の満了時刻t2になる前の時刻t1bにおいて、拘束判定部33は、拘束検知タイマー322が満了した旨を監視部32から受け付けた場合、モータ20が拘束状態であると判定する。そして、時刻t1bにおいて、モータ制御部31は、拘束判定部33によってモータ20が拘束状態であると判定された場合に拘束判定部33から通知される判定結果に基づいて、駆動制御信号のDuty比を0%にする、すなわち、駆動制御信号の出力を停止する。
【0047】
これにより、スタートアップ処理期間に入る前にモータ20を停止できるため、モータ20の発熱を抑えることができる。
【0048】
次に、図5を用いて、スタートアップ処理備期間においてモータ20が拘束状態となった場合の動作例について説明する。
【0049】
図5に示すように、まず、時刻t1において、モータ制御部31は、速度指令信号を受信した場合、起動処理を行い、モータ状態を停止からスタートアップ準備期間へ遷移する。そして、モータ制御部31は、スタートアップ準備期間へ遷移するとともに、所定のDuty比の駆動制御信号を出力する。また、監視部32は、速度指令信号を受信した場合、スタートアップ準備タイマー323および拘束検知タイマー322をスタートする。
【0050】
そして、時刻t1aにおいて、監視部32は、モータ20の回転に伴いプリドライブ回路22から2回目のモータ回転数信号を受信した場合、拘束検知タイマー322をリセットするとともに、再スタートする。また、時刻t1aにおいて、モータ制御部31は、モータ回転数信号を受信した場合、駆動制御信号のDuty比を1段上昇させる。
【0051】
そして、時刻t2において、すなわち、スタートアップ準備タイマー323が満了した場合、監視部32は、スタートアップ準備タイマー323が満了した旨をスタートアップ判定部34へ通知し、スタートアップ判定部34は、スタートアップ処理期間へ移行すると判定する。そして、モータ制御部31は、スタートアップ判定部34から判定結果を受け付けた場合、モータ状態をスタートアップ準備期間からスタートアップ処理期間へ遷移する。
【0052】
そして、モータ制御部31は、スタートアップ処理期間中においては、駆動制御信号のDuty比をモータ回転数信号に関わらず目標Dutyまで連続的に上昇させる。つまり、モータ制御部31は、スタートアップ処理期間にあってはモータ20の回転速度を連続的に上昇させる駆動制御信号を出力する。
【0053】
ここで、時刻t2以降、すなわち、スタートアップ処理期間において、モータ20が拘束状態になった場合、監視部32では、時刻t2以降、モータ回転数信号が受信されなくなる。そして、時刻t2aにおいて、拘束判定部33は、拘束検知タイマー322が満了した旨を監視部32から受け付けた場合、モータ20が拘束状態であると判定する。そして、時刻t2aにおいて、モータ制御部31は、拘束判定部33によってモータ20が拘束状態であると判定された場合、駆動制御信号のDuty比を0%にする、すなわち、駆動制御信号の出力を停止する。
【0054】
このように、スタートアップ処理期間において、スタートアップ準備期間から継続して拘束状態を判定し、スタートアップ処理期間の満了時刻t3になる前に拘束状態が発生した場合、モータ20を停止する。これにより、スタートアップ処理期間において、拘束状態が発生した場合であっても、より早くモータ20を停止できるため、モータ20の発熱を抑えることができる。
【0055】
なお、スタートアップ準備期間における駆動制御信号のDuty比の上昇度合(1段毎のDuty比の上昇度合)は、例えば、モータ回転数信号が1回入力される毎に最小変化幅(クロック信号に基づく最小分解能)だけ上昇させることができる。あるいは、モータ回転数信号が複数回入力される毎に最小変化幅だけ上昇させてもよい。
【0056】
また、モータ回転数信号を1回受信する毎に拘束検知タイマー322をリセットする場合に限らず、モータ回転数信号を複数回受信する毎に拘束検知タイマー322をリセットしてもよい。また、スタートアップ準備期間およびスタートアップ処理期間それぞれで、拘束検知タイマー322をリセットするためのモータ回転数信号の受信回数を異ならせてもよい。
【0057】
また、スタートアップ準備期間、すなわち、スタートアップ準備タイマー323の時間は、予め設定された固定の時間であってもよく、目標Dutyに応じて動的に変更してもよい。あるいは、スタートアップ準備期間は、モータ20の仕様に合わせて適宜設定されてもよい。例えば、負荷の大きさ(羽根の重さ)に応じてスタートアップ準備期間における駆動制御信号のDuty比を設定し、かかるDuty比に基づいてスタートアップ準備期間の長さを設定してもよい。
【0058】
また、スタートアップ処理期間についても、予め設定された固定の時間であってもよく、目標Dutyに応じて動的に変更してもよい。あるいは、駆動制御信号のDuty比の上昇傾きを予め設定し、かかる上昇傾きに応じてスタートアップ処理期間の長さを設定してもよい。
【0059】
また、拘束検知タイマー322の時間である拘束検知期間(第3期間)は、スタートアップ準備期間以下で設定されることが好ましい。これにより、起動時からモータ20が拘束状態であった場合、いち早く拘束状態を検出できるため、モータ20の発熱を抑えることができる。
【0060】
また、拘束検知期間(第3期間)は、スタートアップ準備期間と、スタートアップ処理期間と、通常動作時とで長さを変えてもよい。例えば、拘束検知期間は、スタートアップ準備期間を最長として、スタートアップ処理期間および通常動作時の順に長さを徐々に短くしてもよい。これにより、モータ20がより高速回転するほど、拘束検知期間を短くできるため、拘束状態となった場合におけるモータ20の発熱を抑えることができる。
【0061】
次に、図6および図7を用いて、実施形態に係るモータ駆動制御装置1が実行する処理の処理手順について説明する。図6および図7は、モータ駆動制御装置1が実行する処理の処理手順を示すフローチャートである。図6では、スタートアップ準備期間における処理手順を示し、図7では、スタートアップ処理期間における処理手順を示す。
【0062】
図6に示すように、駆動制御部3は、速度指令信号の入力があったか否かを判定し(ステップS101)、入力がなかった場合(ステップS101:No)、再度ステップS101を実行する。なお、本図の処理をスタートさせる条件として、駆動制御部3に印加される電源電圧が動作範囲内であることが必要である。
【0063】
また、駆動制御部3は、速度指令信号の入力があった場合(ステップS101:Yes)、スタートアップ準備タイマー323をスタートする(ステップS102)とともに、拘束検知タイマー322をスタートし(ステップS103)、駆動制御信号のDuty比を1段階上げる(ステップS104)。なお、ステップS102、ステップS103およびステップS104は処理順序が入れ替わってもよい。
【0064】
つづいて、駆動制御部3は、プリドライブ回路22から出力されるモータ回転数信号を検知したか否かを判定し(ステップS105)、検知した場合(ステップS105:Yes)、拘束検知タイマー322をリセットし、再スタートする(ステップS106)とともに、駆動制御信号のDuty比を1段階上げる(ステップS107)。なお、ステップS106およびステップS107は処理順序が入れ替わってもよい。
【0065】
つづいて、駆動制御部3は、スタートアップ準備タイマー323が満了したか否かを判定し(ステップS108)、スタートアップ準備タイマー323が満了しなかった場合(ステップS108:No)、ステップS105に戻る。また、駆動制御部3は、スタートアップ準備タイマー323が満了した場合(ステップS108:Yes)、スタートアップ処理期間へ移行し(ステップS109)、スタートアップ準備期間の処理を終了する。
【0066】
一方、ステップS105において、駆動制御部3は、モータ回転数信号を検知しなかった場合(ステップS105:No)、拘束検知タイマー322が満了したか否かを判定する(ステップS110)。
【0067】
駆動制御部3は、拘束検知タイマー322が満了しなかった場合(ステップS110:No)、ステップS105に戻り、拘束検知タイマー322が満了した場合(ステップS110:Yes)、駆動制御信号の出力を停止、すなわち、モータ20を停止し(ステップS111)、処理を終了する。
【0068】
次に、図7を用いて、スタートアップ処理期間における処理手順について説明する。図7に示すように、駆動制御部3は、スタートアップ処理期間において、モータ20の回転位置の検出タイミングに関わらず駆動制御信号のDuty比を連続的に上げる(ステップS201)。
【0069】
つづいて、駆動制御部3は、駆動制御信号のDuty比が目標Dutyに到達したか否かを判定し(ステップS202)、到達した場合(ステップS202:Yes)、モータ状態を通常動作へ移行し(ステップS203)、スタートアップ処理期間の処理を終了する。
【0070】
一方、駆動制御部3は、駆動制御信号のDuty比が目標Dutyに到達していない場合(ステップS202:No)、モータ回転数信号を検知したか否かを判定し(ステップS204)、検知しなかった場合(ステップS204:No)、拘束検知タイマー322が満了したか否かを判定する(ステップS206)。
【0071】
駆動制御部3は、拘束検知タイマー322が満了した場合(ステップS206:Yes)、駆動制御信号の出力を停止、すなわち、モータ20を停止し(ステップS207)、処理を終了する。一方、駆動制御部3は、拘束検知タイマー322が満了しなかった場合(ステップS206:No)、ステップS201に戻る。
【0072】
一方、駆動制御部3は、モータ回転数信号を検知した場合(ステップS204:Yes)、拘束検知タイマー322をリセットするとともに、再スタートし(ステップS208)、ステップS201に戻る。
【0073】
上述してきたように、実施形態に係るモータ駆動制御装置1は、モータ20を駆動するモータ駆動部2と、モータ駆動部2に対して駆動制御信号を出力するモータ制御部31と、モータ20の回転位置を検出する回転位置検出部4と、モータ20の回転位置に基づいてモータ20が拘束状態であるか否かを判定する拘束判定部33と、を備え、モータ制御部31は、モータ20の起動後におけるスタートアップ準備期間(第1期間に相当)にあっては回転位置の検出タイミングに応じて回転速度を上昇させ、スタートアップ準備期間にモータ20が拘束状態でないと判定された場合、スタートアップ準備期間後のスタットアップ処理期間(第2期間に相当)にあっては回転位置の検出タイミングに関わらず回転速度を連続的に上昇させる駆動制御信号を出力する。これにより、モータ20の発熱を抑えつつ、スタートアップを急速に行うことができる。
【0074】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 モータ駆動制御装置、2 モータ駆動部、3 駆動制御部、4 回転位置検出部、20 モータ、21 インバータ回路、22 プリドライブ回路、31 モータ制御部、32 監視部、33 拘束判定部、34 スタートアップ判定部、321 起動判定部、322 拘束検知タイマー、323 スタートアップ準備タイマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7