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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240814BHJP
   A61K 31/4406 20060101ALI20240814BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61K39/395 T ZNA
A61K39/395 U
A61K31/4406
A61P35/00
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2019564074
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 US2018033324
(87)【国際公開番号】W WO2018213665
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】62/508,842
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】318007502
【氏名又は名称】シンダックス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】ピーター オールデントリヒ
(72)【発明者】
【氏名】レイ ワン
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529266(JP,A)
【文献】国際公開第2016/128318(WO,A1)
【文献】特表2015-516369(JP,A)
【文献】BAUER S; ET AL,PHASE I STUDY OF PANOBINOSTAT AND IMATINIB IN PATIENTS WITH TREATMENT-REFRACTORY 以下備考,BRITISH JOURNAL OF CANCER,2014年03月04日,VOL;110, NR:5,PAGE(S):1155 - 1162,http://dx.doi.org/10.1038/bjc.2013.826,METASTATIC GASTROINTESTINAL STROMAL TUMORS
【文献】Blood,2015年,Vol.126, No.23,1277,http://doi.org/10.1182/blood.V126.23.1277.1277
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C07K、C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンチノスタットと抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片とを含む、がんを治療するための組み合わせ医薬であって、前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、
(a)重鎖、ここで、前記重鎖の可変ドメインが、CDR-H1について配列番号4に与える配列を有するCDR、CDR-H2について配列番号5に与える配列を有するCDR、およびCDR-H3について配列番号6に与える配列を有するCDRを含み;ならびに
(b)軽鎖、ここで、前記軽鎖の可変ドメインが、CDR-L1について配列番号1に与える配列を有するCDR、CDR-L2について配列番号2に与える配列を有するCDR、およびCDR-L3について配列番号3に与える配列を有するCDRを含む、
を含む、組み合わせ医薬。
【請求項2】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、
配列番号23に与える配列を含む重鎖;および
配列番号15に与える配列を含む軽鎖
を含む、請求項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項3】
前記抗CSF-1R抗体が、全長重鎖および軽鎖を有する完全抗体分子である、請求項1または2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項4】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、
(a)配列番号27に与える配列からなる重鎖および配列番号19に与える配列からなる軽鎖を含むか、または
(b)配列番号27に与える配列からなる重鎖および配列番号19に与える配列からなる軽鎖を含み、配列番号27の位置453のリジンが欠損しているかまたは欠損している、請求項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項5】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、100pMもしくはそれ未満、または10pMもしくはそれ未満のヒトCSF-1Rについての結合親和性を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項6】
前記がんが、CSF-1Rの過剰発現により特徴付けられるものである、請求項1~のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項7】
前記がんが、膵臓がん、結腸直腸がん、中皮腫、神経膠腫、神経芽腫、卵巣がん、膠芽腫、骨髄異形成症候群(MDS)、乳がん、前立腺がん、皮膚がん、食道がん、胃がん、星状細胞がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、肺がん、肝臓がん、甲状腺がん、または頭頸部がんである、請求項1~のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項8】
前記がんが結腸直腸がんまたは膵臓がんである、請求項1~のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項9】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、3週毎に1回から週毎に4回までの間で投与される、請求項1~のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項10】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、2週毎に1回、週に1回、週毎に2回、または週毎に3回投与される、請求項1~のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項11】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、約0.1mg/kg~約30mg/kgの範囲内の用量で投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項12】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、約0.1mg/kg~約10mg/kgの範囲内の用量で投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項13】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7.5mg/kg、または約10mg/kgの用量で投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項14】
前記エンチノスタットが経口投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項15】
エンチノスタットが、週毎に1回または週毎に2回投与される、請求項1~14のいずれか1項のいずれかに記載の組み合わせ医薬。
【請求項16】
エンチノスタットが週毎に投与される、請求項1~14のいずれか1項のいずれかに記載の組み合わせ医薬。
【請求項17】
エンチノスタットが2週毎に投与される、請求項1~14のいずれか1項のいずれかに記載の組み合わせ医薬。
【請求項18】
エンチノスタットが、3mgの用量で週毎に1回投与される、請求項1~14のいずれか1項のいずれかに記載の組み合わせ医薬。
【請求項19】
エンチノスタットが、5mgの用量で週毎に1回投与される、請求項1~14のいずれか1項のいずれかに記載の組み合わせ医薬。
【請求項20】
エンチノスタットが、10mgの用量で2週毎に1回投与される、請求項1~14のいずれか1項のいずれかに記載の組み合わせ医薬。
【請求項21】
エンチノスタットが最初に投与される、請求項1に記載の組み合わせ医薬。
【請求項22】
エンチノスタットおよび抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、同時に投与される、請求項1に記載の組み合わせ医薬。
【請求項23】
エンチノスタットおよび抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、同時にまたは逐次的に投与される、請求項1~22のいずれか1項に記載の組み合わせ医薬。
【請求項24】
エンチノスタットと抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片との組合せを含み、前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、
(a)重鎖、ここで、前記重鎖の可変ドメインが、CDR-H1について配列番号4に与える配列を有するCDR、CDR-H2について配列番号5に与える配列を有するCDR、およびCDR-H3について配列番号6に与える配列を有するCDRを含み;ならびに
(b)軽鎖、ここで、前記軽鎖の可変ドメインが、CDR-L1について配列番号1に与える配列を有するCDR、CDR-L2について配列番号2に与える配列を有するCDR、およびCDR-L3について配列番号3に与える配列を有するCDRを含む、
を含む、がんを治療するためのキット。
【請求項25】
前記がんが結腸直腸がんまたは膵臓がんである、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、
配列番号23に与える配列を含む重鎖;および
配列番号15に与える配列を含む軽鎖
を含む、請求項2425のいずれか1項に記載のキット。
【請求項27】
前記抗CSF-1R抗体が、全長重鎖および軽鎖を有する完全抗体分子である、請求項2426のいずれか1項に記載のキット。
【請求項28】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、配列番号27に与える配列からなる重鎖および配列番号19に与える配列からなる軽鎖を含む、請求項2425のいずれか1項に記載のキット。
【請求項29】
前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、100pMもしくはそれ未満、または10pMもしくはそれ未満のヒトCSF-1Rについての結合親和性を含む、請求項2428のいずれか1項に記載のキット。
【請求項30】
前記キットの使用方法に関する説明をさらに含む、請求項2429のいずれか1項に記載のキット。
【請求項31】
がんの治療のための、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片と組み合わせたエンチノスタットを含む相乗的な組成物であって、前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、
(a)重鎖、ここで、前記重鎖の可変ドメインが、CDR-H1について配列番号4に与える配列を有するCDR、CDR-H2について配列番号5に与える配列を有するCDR、およびCDR-H3について配列番号6に与える配列を有するCDRを含み;ならびに
(b)軽鎖、ここで、前記軽鎖の可変ドメインが、CDR-L1について配列番号1に与える配列を有するCDR、CDR-L2について配列番号2に与える配列を有するCDR、およびCDR-L3について配列番号3に与える配列を有するCDRを含む、
を含む、組成物。
【請求項32】
抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片と組み合わせたエンチノスタットを含む、医薬組成物を調製する方法であって、前記抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が、
(a)重鎖、ここで、前記重鎖の可変ドメインが、CDR-H1について配列番号4に与える配列を有するCDR、CDR-H2について配列番号5に与える配列を有するCDR、およびCDR-H3について配列番号6に与える配列を有するCDRを含み;ならびに
(b)軽鎖、ここで、前記軽鎖の可変ドメインが、CDR-L1について配列番号1に与える配列を有するCDR、CDR-L2について配列番号2に与える配列を有するCDR、およびCDR-L3について配列番号3に与える配列を有するCDRを含む、
を含み、
前記方法が、エンチノスタットと抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片とを混合することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年5月19日に出願された米国仮出願第62/508,842号の利益および優先権を主張し、該仮出願の内容は参照することにより全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、該配列表は参照することにより全体が本明細書に組み込まれる。2018年5月3日に作成された前記ASCIIコピーは、SYND-039_001WO_327830-2173_SL.txtという名称であり、59,194バイトのサイズである。
【0003】
開示の分野
本開示は、HDAC阻害剤、例えばエンチノスタットと組み合わせた、抗CSF-1R抗体、または抗CSF-1抗体、またはこれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤、例えば、小さい化学的実体もしくは小分子CSF-1R阻害剤を伴う療法、およびがんを治療する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
免疫腫瘍微環境の理解の増加は、新規の免疫ベースのバイオマーカーの研究および療法のための免疫経路を標的化する新たな剤の開発を可能とした。マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)としても公知のコロニー刺激因子1(CSF-1)は、マクロファージ、内皮細胞および線維芽細胞などの様々な細胞により産生されるサイトカインである。CSF-1は、応答細胞上の特定の受容体を介してマクロファージの生存、増殖および機能を刺激する。CSF-1およびCSF-1Rの発現は、多くのがん種における腫瘍進行および不良な診断と相関している。腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、腫瘍間質の主成分であり得、高レベルのCSF-1およびCSF-1Rは、数多くの腫瘍種において高TAM浸潤および予後不良と関連付けられる。したがって、CSF-1により媒介される免疫抑制性腫瘍環境は、腫瘍免疫療法の抗腫瘍活性を制限して低い奏効率に繋がることがある。
【0005】
HDAC阻害剤は、クロマチンリモデリングおよび遺伝子発現を通じて血液および固形悪性腫瘍を調節する開発されている治療剤のクラスである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、がんを治療する方法を提供する。方法は、患者にHDAC阻害剤と、抗CSF-1R抗体またはその結合断片、抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片、およびCSF-1R活性の阻害剤から選択される第2の剤とを含む組合せを投与することを含む。
【0007】
別の態様では、本開示は、がんを治療するためのキットを提供する。キットは、HDAC阻害剤と抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤との組合せを含む。例えば、キットはまた、キットの使用方法に関する説明を含み得る。
【0008】
一部の実施形態では、HDAC阻害剤はエンチノスタットである。
【0009】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片は、重鎖であって、重鎖の可変ドメインが、CDR-H1について配列番号4に与える配列を有するCDR、CDR-H2について配列番号5に与える配列を有するCDRおよびCDR-H3について配列番号6に与える配列を有するCDRのうちの少なくとも1つを含む、重鎖;ならびに/または軽鎖であって、軽鎖の可変ドメインが、CDR-L1について配列番号1に与える配列を有するCDR、CDR-L2について配列番号2に与える配列を有するCDRおよびCDR-L3について配列番号3に与える配列を有するCDRのうちの少なくとも1つを含む、軽鎖を含む。
【0010】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片は、重鎖および軽鎖を含み、重鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、かつCDR-H1の配列は配列番号4に与える配列に対して少なくとも60%の同一性または類似性を有し、CDR-H2の配列は配列番号5に与える配列に対して少なくとも60%の同一性または類似性を有し、かつCDR-H3の配列は配列番号6に与える配列に対して少なくとも60%の同一性または類似性を有し;かつ、軽鎖の可変ドメインは3つのCDRを含み、かつCDR-L1の配列は配列番号1に与える配列に対して少なくとも60%の同一性または類似性を有し、CDR-L2の配列は配列番号2に与える配列に対して少なくとも60%の同一性または類似性を有し、かつCDR-L3の配列は配列番号3に与える配列に対して少なくとも60%の同一性または類似性を有する。
【0011】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片は、配列番号23に与える配列を含む重鎖;および配列番号15に与える配列を含む軽鎖を含む。
【0012】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片は、全長重鎖および軽鎖を有する完全抗体分子、Fab、改変型Fab’、Fab’、F(ab’)2、Fv、VH、VLならびにこれらのscFv断片からなる群から選択される。
【0013】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片は、配列番号27に与える配列を含む重鎖および配列番号19に与える配列を含む軽鎖を含む。
【0014】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片は、CDR-L1について配列番号1、CDR-L2について配列番号2、CDR-L3について配列番号3、CDR-H1について配列番号4、CDR-H2について配列番号5およびCDR-H3について配列番号6の配列において与える6つのCDRを含む抗体の結合を交差遮断する。
【0015】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片は、それが遮断する抗体と同じエピトープに結合することにより結合を交差遮断する。
【0016】
一部の実施形態では、抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片は、それが遮断する抗体と同じエピトープに結合することにより結合を交差遮断する。
【0017】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片は、100pMもしくはそれ未満、または10pMもしくはそれ未満のヒトCSF-1Rについての結合親和性を含む。
【0018】
一部の実施形態では、抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片は、100pMもしくはそれ未満、または10pMもしくはそれ未満のヒトCSF-1についての結合親和性を含む。
【0019】
一部の実施形態では、がんは、CSF-1Rの過剰発現により特徴付けられるものである。
【0020】
一部の実施形態では、がんは、膵臓がん、結腸直腸がん、中皮腫、神経膠腫、神経芽腫、卵巣がん、膠芽腫、骨髄異形成症候群(MDS)、乳がん、前立腺がん、皮膚がん、食道がん、胃がん、星状細胞がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、肺がん、肝臓がん、甲状腺がん、または頭頸部がんである。
【0021】
一部の実施形態では、がんは、結腸直腸がんおよび/または膵臓がんである。
【0022】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1Rの阻害剤は、週毎に1回投与される。
【0023】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1Rの阻害剤は、2週毎に1回投与される。
【0024】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1Rの阻害剤は、週毎に2回投与される。
【0025】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1Rの阻害剤は、週毎に3回投与される。
【0026】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体 これらの抗原結合断片またはCSF-1Rの阻害剤は、約0.01mg/kg~約1000mg/kg(例えば、約0.1~750mg/kg、または約1~100mg/kg)の範囲内の用量で投与される。
【0027】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体 これらの抗原結合断片またはCSF-1Rの阻害剤は、約0.1mg/kg~約30mg/kgの範囲内の用量で投与される。
【0028】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体 これらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤は、約0.1mg/kg~約10mg/kgの範囲内の用量で投与される。
【0029】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤は、約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7.5mg/kg、または約10mg/kgの用量で投与される。
【0030】
一部の実施形態では、CSF-1R活性の阻害剤は、小さい化学的実体(small chemical entity)または小分子CSF-1R阻害剤である。例えば、小さい化学的実体または小分子CSF-1R阻害剤は、5kDa以下、例えば、約4kDa以下、約3kDa以下、約1.5kDa以下または約1kDa以下の分子量を有する。
【0031】
一部の実施形態では、エンチノスタットは経口投与される。
【0032】
一部の実施形態では、エンチノスタットは、週毎に1回または週毎に2回投与される。
【0033】
一部の実施形態では、エンチノスタットは週毎に投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは2週毎に投与される。
【0034】
一部の実施形態では、エンチノスタットは、3mgの用量で週毎に1回投与される。
【0035】
一部の実施形態では、エンチノスタットは、5mgの用量で週毎に1回投与される。
【0036】
一部の実施形態では、エンチノスタットは、10mgの用量で2週毎に1回投与される。
【0037】
一部の実施形態では、エンチノスタットは最初に投与される。
【0038】
一部の実施形態では、エンチノスタットおよび第2の剤(例えば、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤)は同時に投与される。
【0039】
一部の実施形態では、HDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)および第2の剤(例えば、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片、抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤)は、時間的に近接させて、例えば、がんを治療するために時間的に近接させて、投与される。
【0040】
一部の実施形態では、本開示は、HDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)および第2の剤(例えば、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片、抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤)の相乗的な組成物であって、HDAC阻害剤および第2の剤がヒト身体中で(例えば、ヒト身体中においてのみ)互いに接触する、相乗的な組成物を提供する。
【0041】
一部の実施形態では、本開示は、HDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)および第2の剤(例えば、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片、抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤)をある場所(at a locus)において互いに接触させることにより組成物を調製する方法を提供する。
【0042】
本特許または出願書類は、少なくとも1つのカラーの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、必要な料金の納付と共に請求により当局により提供される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、エンチノスタットとAb535療法との組合せが動物の生存を向上させることを示す生存プロットである。
図2図2は、エンチノスタットとAb535との組合せが15日目に腫瘍成長阻害を結果としてもたらすことを示す棒グラフである。
図3図3は、エンチノスタットとAb535との組合せが腫瘍中のCD8/制御性T細胞の比を増加させることを示す一対の棒グラフである。
図4図4は、エンチノスタットとAb535との組合せが腫瘍内制御性T細胞を有意に低減させることを示す一対の棒グラフである。
図5図5は、抗体Ab535の組合せが腫瘍関連マクロファージ(TAM)を枯渇させることを示す一対の棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本開示は、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤が、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体もしくはこれらの抗原結合断片もしくはCSF-1R活性の阻害剤単独でまたはHDAC阻害剤単独で達成されるよりも優れた結果(例えば、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)または有害効果の低減)で腫瘍を治療するために組み合わせて使用され得るという着想に少なくとも部分的に基づく。方法は、組合せが1つまたは複数の治療剤または療法を補足された治療をさらに含み得る。
【0045】
一態様では、本開示は、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片 CSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤を含む組合せ、ならびに腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の免疫細胞プロファイリングおよび/または他のタンパク質をモジュレ―トすることにより影響が及ぼされ得る原因のような疾患、例えばがんを治療するために組合せを使用する方法を提供する。一部の実施形態では、本開示は、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびベンズアミド(例えば、エンチノスタット)などのHDAC阻害剤を含む組合せを特徴とする。
【0046】
方法は、例えば、腫瘍成長を阻害し、腫瘍関連マクロファージ(TAM)および腫瘍内制御性T細胞集団を低減させかつ/または腫瘍中のCD8/制御性T細胞の比を増加させることによる、それを必要とする対象に有効量の抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤を投与することを含む。
【0047】
本明細書において開示されるキット、組合せおよび方法は、腺癌、例えば、結腸直腸がんおよび/または膵臓がんのような、がんを治療するためまたはがん細胞増殖を阻害するために好適である。
【0048】
本開示はさらに、疾患を治療するための医薬の製造における本明細書において記載されるいずれかの組成物または組合せの使用を提供する。そのような疾患としては、例えば、がん、前がん性状態、または腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の免疫細胞プロファイリングもしくは他のタンパク質をモジュレ―トすることにより影響が及ぼされる疾患が挙げられる。
【0049】
本開示は、組合せ療法における使用であって、化合物が、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)を含む、使用を提供する。
【0050】
コロニー刺激因子-1(CSF-1)は、黒色腫などのいくつものがんにより頻繁に産生されるサイトカインである。分泌されたCSF-1は、骨髄細胞上のチロシンキナーゼ受容体CSF-1Rに結合し、それが骨髄細胞の増殖およびM2型マクロファージおよび骨髄由来抑制細胞(MDSC)への分化の増加、ならびに腫瘍へのそれらの動員を結果としてもたらす。(Mok et al., Mol Cancer Res 2014 74(1): 153-161)。確立された固形腫瘍は、形質転換した新生物細胞ならびに間質細胞、リンパ球、樹状細胞、マクロファージ、およびMDSCのような形質転換していない宿主細胞の両方からなる。免疫応答を逃れるために、腫瘍細胞は、細胞溶解性T細胞を抑制しかつ免疫抑制細胞を動員するサイトカインを産生することにより周囲の腫瘍微環境をマニピュレートする。(Mok et al.)。結果として、CSF-1により媒介される免疫抑制性腫瘍環境は、腫瘍免疫療法の抗腫瘍活性を制限して低い奏効率に繋がり得る。
【0051】
ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤は、コロニー刺激因子CSF-1およびCSF-2へのヒト単球応答の効果をもたらすことが示されている。報告は、ファースト・イン・クラスの選択的なクラスIIaヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤であるTMP195が、in vitroにおいてコロニー刺激因子CSF-1およびCSF-2へのヒト単球応答に影響を及ぼしたこと、およびクラスIIa HDAC阻害が抗腫瘍マクロファージを通じて乳房腫瘍および転移を低減させたことを指し示している(Guerriero et al., Nature, 2017 543, 428-432)。
【0052】
抗CSF-1R抗体
CSF-1受容体(CSF-1R)はまた、c-fms遺伝子産物またはCD115とも称される。CSF-1Rは、III型受容体チロシンキナーゼファミリーに属する165kDaの1型TM糖タンパク質である。CSF-1に加えて、構造的に類似するが配列が無関連の分子IL-34もまた、CSF-1Rのリガンドであることが示されている(Lin, et al., 2008, Science 320:807-811)。CSF-1Rの発現は、単球-マクロファージ系列の細胞、循環性および内在性の両組織集団、ならびに破骨細胞に制限されている。加えて、それは、卵母細胞、脱落膜細胞および栄養芽層などの女性生殖系の数多くの細胞において発現される。
【0053】
リガンドCSF-1のCSF-1受容体への結合は、チロシンキナーゼドメインの作用を通じて1つまたは複数のチロシン残基における受容体のリン酸化を結果としてもたらす。リン酸化後の受容体にのみ結合する抗体(例えば、Cell Signaling TechnologyのPhospho-M-CSF-Receptor(Tyr546)抗体#3083)が利用可能であるので、このリン酸化を検出することができる。
【0054】
CSF-1およびCSF-1Rの発現は、多くのがん種において腫瘍進行および不良な診断と相関する。腫瘍関連マクロファージ(TAM)は、腫瘍間質の主成分であり得、高レベルのCSF-1およびCSF-1Rは、数多くの腫瘍種において高TAM浸潤および予後不良と関連付けられる。腫瘍細胞上の腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の高発現は、様々な他の固形腫瘍種において不良な予後および生存と相関することが見出されている。治療応用のために好適な新たな抗CSF-1R抗体を提供する必要がある。いかなる理論によっても縛られないが、CSF-1/CSF-1R経路は腫瘍免疫回避において不可欠な役割を果たし、いくつもの固形臓器種において治療的介入のための魅力的な標的であると考えられ得ることが想定される。
【0055】
CSF-1Rに対する抗体は当該技術分野において公知である。Sherr, C.J. et al., 1989, Blood 73:1786-1793には、CSF-1活性を阻害するCSF-1Rに対する抗体が記載されている(Sherr, C.J. et al., 1989, Blood 73:1786-1793)。国際出願第2009/026303号パンフレットには、ヒトCSF-1Rに結合する抗CSF-1R抗体および抗マウスCSF-1R抗体を使用するin vivoマウス腫瘍モデルが開示されている。国際出願第2011/123381号パンフレットには、CSF-1Rを内部移行させかつADCC活性を有する抗CSF-1R抗体が開示されている。国際出願第2011/123381号パンフレットにはまた、抗マウスCSF-1R抗体を使用するin vivoマウス腫瘍モデルが開示されている。国際出願第2011/140249号パンフレットには、CSF-1RへのCSF-1の結合を遮断する抗CSF-1R抗体が開示されており、該抗体はがんの治療において有用であることが記載されている。国際出願第2009/112245号パンフレットには、CSF-1RへのCSF-1の結合を阻害する抗CSF-1R IgG1抗体が開示されており、該抗体はがん、炎症性腸疾患および関節リウマチの治療において有用であることが記載されている。国際出願第2011/131407号パンフレットには、CSF-1RへのCSF-1の結合を阻害する抗CSF-1R抗体が開示されており、該抗体は骨減少およびがんの治療において有用であることが記載されている。国際出願第2011/107553号パンフレットには、CSF-1RへのCSF-1の結合を阻害する抗CSF-1R抗体が開示されており、該抗体は骨減少およびがんの治療において有用であると考えられている。国際出願第2011/070024号パンフレットには、ヒトCSF-1R断片delD4に結合する抗CSF-1R抗体が開示されている。
【0056】
一部の実施形態では、本開示により提供される抗体は、CSF-1Rへのリガンド結合を遮断することができる。本明細書において用いられる遮断は、受容体を妨害することのような物理的に遮断することを指すが、抗体または断片がエピトープに結合し、それが、例えば、受容体に対して天然リガンドがもはや結合しないことを意味するコンホメーション変化を引き起こす場合(本明細書においてアロステリック遮断またはアロステリック阻害と称する)も含む。一実施形態では、本開示の抗体は、CSF-1Rの全てのアイソタイプ、例えば、V23G、A245S、H247P、V279Mおよび前記バリエーションの2つ、3つまたは4つの組合せのようなECDドメインにおけるバリエーションを有するものに結合する。
【0057】
CSF-1およびIL-34の両方はCSF-1Rのリガンドであり、本開示の抗体は、好ましくは、機能的細胞のスクリーニングにおいてCSF-1およびIL-34の両方の活性を阻害する。本開示による抗体はまた、好ましくは、CSF-1R活性化および/またはCSF-1R内部移行を引き起こさない。本開示による抗体はまた、好ましくは、in vivoにおいて単球の非古典的集団を選択的に枯渇させる。
【0058】
非古典的な単球は、一般に、CD14の低い発現およびCD16の高い発現を有する単球を指す。この単球集団は、腫瘍関連マクロファージの前駆体であると考えられている。
【0059】
本開示の抗体分子は、好適には、高い結合親和性を有する。親和性は、単離された天然もしくは組換えCSF-1Rまたは好適な融合タンパク質/ポリペプチドを使用する表面プラズモン共鳴、例えば本明細書の実施例に記載されるようなBIAcoreのような技術などの、当該技術分野において公知の任意の好適な方法を使用して測定することができる。一例では、親和性は、本明細書の実施例に記載されるような組換えヒトCSF-1R細胞外ドメインを使用して測定される。一例では、使用される組換えヒトCSF-1R細胞外ドメインは単量体である。好適には、本開示の抗体分子は、約1nMまたは1nM未満の単離されたヒトCSF-1Rについての結合親和性を有する。一実施形態では、本開示の抗体分子は、約500pMまたはそれ未満の結合親和性を有する。一実施形態では、本開示の抗体分子は、約250pMまたはそれ未満の結合親和性を有する。一実施形態では、本開示の抗体分子は、約200pMまたはそれ未満の結合親和性を有する。一実施形態では、本開示は、約100pMまたはそれ未満の結合親和性を有する抗CSF-1R抗体を提供する。一実施形態では、本開示は、約100pMまたはそれ未満、好ましくは約10pMまたはそれ未満、より好ましくは約5pMまたはそれ未満の結合親和性を有するヒト化抗CSF-1R抗体を提供する。一部の実施形態では、本開示は、約100pMまたはそれ未満、好ましくは約10pMまたはそれ未満、より好ましくは約5pMまたはそれ未満の結合親和性を有するヒト化抗CSF-1R抗体を提供する。
【0060】
親和性の数値が低くなる程、抗原についての抗体または断片の親和性は高い。
【0061】
本明細書において用いられるヒトCSF-1Rは、CSF-1Rという名称のヒトタンパク質またはその生物学的活性断片を指す。
【0062】
本開示は、ヒト化抗体などの抗CSF-1R抗体を提供する。抗体は、CSF-1R細胞外ドメインを発現するベクターをトランスフェクトされたラット線維芽細胞を用いたラットの免疫化から生成された。
【0063】
本開示は、重鎖および/または軽鎖を含む抗体であって、重鎖および/または軽鎖が、抗CSF-1R抗体969.2に由来する少なくとも1つのCDRを含む、抗体を提供する。
【0064】
Ab969.2は全長ヒト化IgG4分子であり、軽鎖はヒトカッパ鎖定常領域(Km3アロタイプ)を含み、かつ重鎖はヒンジ安定化突然変異S241Pを有するヒトガンマ-4重鎖定常領域を含む(Angal et al., 1993)。潜在的なDG異性化モチーフがCDR-L2およびフレームワークの接合部において軽鎖可変領域内に存在する。Ab969.2全長抗体重鎖および軽鎖の配列を配列番号27および19に示す。
【0065】
抗体可変ドメイン中の残基は慣習的に、Kabat et al.、1987により考案されたシステムにしたがってナンバリングされる。このシステムはKabat et al., 1987, Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services, NIH, USA(以下、「Kabat et al.(上掲)」)に記載されている。それ以外に指し示す場合を除いて、このナンバリングシステムが本明細書において使用される。
【0066】
Kabat残基表示は、アミノ酸残基の直線的ナンバリングと必ずしも直接的に対応しない。実際の直線的アミノ酸配列は、それがフレームワークまたは相補性決定領域(CDR)のいずれであれ、基本的な可変ドメイン構造の構造成分の短縮または該構造成分への挿入に対応して厳密なKabatのナンバリングにおけるよりも少ないまたは追加のアミノ酸を含有し得る。残基の正しいKabatのナンバリングは、「標準的」なKabatのナンバリングをされた配列との抗体配列中の相同性の残基のアライメントにより所与の抗体について決定され得る。
【0067】
重鎖可変ドメインのCDRは、Kabatのナンバリングシステムにしたがって残基31~35(CDR-H1)、残基50~65(CDR-H2)および残基95~102(CDR-H3)に位置する。しかしながら、Chothia(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol., 196, 901-917 (1987))によれば、CDR-H1に相当するループは、残基26から残基32までに広がっている。したがって、別に指し示さない限り、本明細書において用いられる「CDR-H1」は、KabatのナンバリングシステムとChothiaのトポロジカルループ定義との組合せにより記載されるように、残基26~35を指すことが意図される。
【0068】
軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabatのナンバリングシステムにしたがって残基24~34(CDR-L1)、残基50~56(CDR-L2)および残基89~97(CDR-L3)に位置する。
【0069】
本開示において使用するための抗体は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法を使用して得られ得る。融合タンパク質などのCSF-1Rポリペプチド/タンパク質、ポリペプチドを(組換えによりまたは天然に)発現する細胞を使用して、CSF-1Rを特異的に認識する抗体を製造することができる。ポリペプチドは、「成熟」したポリペプチドまたはその生物学的に活性の断片もしくは誘導体であり得る。ヒトタンパク質は、番号P07333の下でUniProtに登録されている。
【0070】
CSF-1Rポリペプチドに対して生成される抗体は、動物の免疫化が必要な場合、周知のおよび常用のプロトコールを使用して動物、好ましくは非ヒト動物にポリペプチドを投与することにより得られ得る。例えば、Handbook of Experimental Immunology, D. M. Weir (ed.), Vol 4, Blackwell Scientific Publishers, Oxford, England, 1986)を参照。ウサギ、マウス、ラット、ヒツジ、ウシ、ラクダまたはブタのような多くの温血動物が免疫化され得る。しかしながら、マウス、ウサギ、ブタおよびラットが一般に最も好適である。
【0071】
抗体のスクリーニングは、ヒトCSF-1Rへの結合を測定するアッセイおよび/または受容体へのリガンド結合を遮断する能力を測定するアッセイを使用して行うことができる。好適なアッセイの例は、本明細書の実施例に記載される。
【0072】
一部の実施形態では、抗体は、抗CSF-1R抗体またはその結合断片であり、抗CSF-1R抗体またはその結合断片は、重鎖であって、重鎖の可変ドメインが、CDR-H1について配列番号4に与える配列を有するCDR、CDR-H2について配列番号5に与える配列を有するCDRおよびCDR-H3について配列番号6に与える配列を有するCDRのうちの少なくとも1つを含む、重鎖を含む。好ましくは、重鎖の可変ドメインは、CDR-H1について配列番号4に与える配列、CDR-H2について配列番号5に与える配列およびCDR-H3について配列番号6に与える配列を含む。
【0073】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、抗CSF-1R抗体またはその結合断片であり、抗CSF-1R抗体またはその結合断片は、上記に定義されるような重鎖を含み、かつ軽鎖であって、軽鎖の可変ドメインが、CDR-L1について配列番号1に与える配列を有するCDR、CDR-L2について配列番号2に与える配列を有するCDRおよびCDR-L3について配列番号3に与える配列を有するCDRのうちの少なくとも1つを含む、軽鎖を追加的に含む。軽鎖の可変ドメインは、好ましくは、CDR-L1について配列番号1に与える配列、CDR-L2について配列番号2に与える配列およびCDR-L3について配列番号3に与える配列を含む。
【0074】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein, 1975, Nature, 256:495-497)、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al., 1983, Immunology Today, 4:72)およびEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985, Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, pp77-96, Alan R Liss, Inc.)のような当該技術分野において公知の任意の方法により調製され得る。
【0075】
一実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸は、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3のいずれか1つ;CDR-H1およびH2、CDR-H1およびH3、CDR-H1およびL1、CDR-H1およびL2、CDR-H1およびL3、CDR-H2およびH3、CDR-H2およびL1、CDR-H2およびL2、CDR-H2およびL3、CDR-H3およびL1、CDR-H3およびL2、CDR-H3およびL3、CDR-L1およびL2、CDR-L1およびL3、CDR-L2およびL3の組合せのうちのいずれか1つ;CDR-H1、H2およびH3、CDR-H1、H2およびL1、CDR-H1、H2およびL2、CDR-H1、H2およびL3、CDR-H2、H3およびL1、CDR-H2、H3およびL2、CDR-H2、H3およびL3、CDR-H3、L1およびL2、CDR-H3、L1およびL3、CDR-L1、L2、L3の組合せのうちのいずれか1つ;CDR-H1、H2、H3およびL1、CDR-H1、H2、H3およびL2、CDR-H1、H2、H3およびL3、CDR-H2、H3、L1およびL2、CDR-H2、H3、L2およびL3、CDR-H3、L1、L2およびL3、CDR-L1、L2、L3およびH1、CDR-L1、L2、L3およびH2、CDR-L1、L2、L3およびH3、CDR-L2、L3、H1およびH2、CDR-H1、H2、H3、L1およびL2、CDR-H1、H2、H3、L1およびL3、CDR-H1、H2、H3、L2およびL3、CDR-L1、L2、L3、H1およびH2、CDR-L1、L2、L3、H1およびH3、CDR-L1、L2、L3、H2およびH3の組合せのうちのいずれか1つ;ならびにCDR-H1、H2、H3、L1、L2およびL3の組合せからなる群から独立して選択される1つまたは複数のCDRにおける保存的置換により置換される。
【0076】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその結合断片であって、重鎖の可変ドメインが3つのCDRを含み、かつCDR-H1の配列が、配列番号4に与える配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の同一性または類似性を有し、CDR-H2の配列が、配列番号5に与える配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の同一性または類似性を有し、かつCDR-H-3の配列が、配列番号6に与える配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の同一性または類似性を有する、抗CSF-1R抗体またはその結合断片が提供される。好ましくは、抗CSF-1R抗体またはその結合断片は、軽鎖であって、軽鎖の可変ドメインが3つのCDRを含み、かつCDR-L1の配列が、配列番号1に与える配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の同一性または類似性を有し、CDR-L2の配列が、配列番号2に与える配列に対して少なくとも60%、70%、80%、90%または95%の同一性または類似性を有し、かつCDR-L3の配列が配列番号3に与える配列に対して少なくとも60%の同一性または類似性を有する、軽鎖を追加的に含む。
【0077】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片は、CDR-L1について配列番号1、CDR-L2について配列番号2、CDR-L3について配列番号3、CDR-H1について配列番号4、CDR-H2について配列番号5およびCDR-H3について配列番号6の配列において与える6つのCDRを含む抗体の結合を交差遮断し、交差遮断は例えば、100pMまたはそれ未満の親和性であり、特に、交差遮断はアロステリックである。一部の実施形態では、抗CSF-1R-抗体またはその結合断片は、CSF-1R受容体の細胞外ドメインへのCSF-1および/またはIL-34の結合を阻害しまたはそれと重なり合う。
【0078】
一実施形態では、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片であって、CDR-L1について配列番号1、CDR-L2について配列番号2、CDR-L3について配列番号3、CDR-H1について配列番号4、CDR-H2について配列番号5およびCDR-H3について配列番号6の配列において与える6つのCDRを含む抗体の結合を交差遮断し、交差遮断は例えば、100pMまたはそれ未満の親和性であり、特に、抗体は、それが遮断する抗体と同じエピトープに結合することにより結合を交差遮断する、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片が提供される。
【0079】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号27に与える配列を含む重鎖および配列番号19に与える配列を含む軽鎖を有する。抗CSF-1R抗体またはその結合断片であって、重鎖および軽鎖が、配列番号27に与える配列を含む重鎖および配列番号19に与える配列を含む軽鎖に対して少なくとも80%(好ましくは85%、90%、95%または98%)同一または類似である、抗CSF-1R抗体またはその結合断片もまた提供される。一実施形態では、軽鎖は、配列番号19に与える配列を有するかまたはからなり、かつ重鎖は、配列番号27に与える配列を有するかまたはからなる。別の実施形態では、軽鎖は、配列番号19の配列を有するかまたはからなり、かつ重鎖は、配列番号27の配列を有するかまたはからなり、配列番号27の位置453におけるアミノ酸リジンが欠損しまたは欠失されている。
【0080】
本開示の抗体、特に、重鎖配列gH2(配列番号27)および/または軽鎖配列gL7(配列番号19)を含む抗体969.g2が結合するヒトCSF-1Rの特定の領域またはエピトープもまた本開示により提供される。
【0081】
ヒトCSF-1Rポリペプチドのこの特定の領域またはエピトープは、本開示により提供される抗体のいずれか1つと組み合わせて当該技術分野において公知の任意の好適なエピトープマッピング法により同定することができる。そのような方法の例としては、抗体により認識されるエピトープの配列を含有する抗体に特異的に結合することができる最小の断片(例えば、約5~20、好ましくは約7アミノ酸の長さの領域中のペプチド)を用いて本開示の抗体への結合についてCSF-1Rに由来する様々な長さのペプチドをスクリーニングすることが挙げられる。CSF-1Rペプチドは、合成によりまたはCSF-1Rポリペプチドのタンパク質消化分解により製造され得る。抗体に結合するペプチドは、例えば、質量分析により同定することができる。別の例では、NMR分光法またはX線結晶構造解析法を使用して、本開示の抗体が結合するエピトープを同定することができる。本開示の抗体に結合するエピトープ断片が同定されたら、必要に応じてそれを免疫原として使用して、同じエピトープに結合する追加の抗体を得ることができる。
【0082】
抗体または断片のような生物学的分子は、酸性および/または塩基性官能基を含有し、それにより分子に正味の正または負電荷を与える。全体的な「観察」される電荷の量は、実体の絶対的アミノ酸配列、3D構造における荷電基の局所的環境および分子の環境条件に依存する。等電点(pI)は、特定の分子またはその溶媒が接近可能な表面が正味の電荷を持たないpHである。一例では、本開示のCSF-1R抗体および断片は、適切な等電点を有するように操作され得る。これは、よりロバストな特性、特に、好適な溶解性および/もしくは安定性プロファイルならびに/または向上した精製上の特徴を有する抗体および/または断片に繋がり得る。
【0083】
一部の実施形態では、本開示は、元々同定された抗体の等電点とは異なる等電点を有するように操作されたヒト化CSF-1R抗体を提供する。抗体は、例えば、1つまたは複数の塩基性アミノ酸残基による酸性アミノ酸残基の置換のようなアミノ酸残基の置換により操作され得る。あるいは、塩基性アミノ酸残基を導入してもよく、または酸性アミノ酸残基を除去することができる。あるいは、許容できない程の高いpI値を分子が有する場合、必要に応じて酸性残基を導入してpIを低下させてもよい。pIをマニピュレートする時に、抗体または断片の望ましい活性を保持するように注意しなければならないことが重要である。したがって、一実施形態では、操作された抗体または断片は、「非改変」の抗体または断片と同じまたは実質的に同じ活性を有する。
【0084】
expasy.ch/tools/pi_tool.html、およびiut-arles.up.univ-mrs.fr/w3bb/d_abim/compo-p.htmlにおいてインターネット上で利用可能な**ExPASYのようなプログラムを使用して、抗体または断片の等電点を予測することができる。本明細書において開示される抗体の親和性は、当該技術分野において公知の任意の好適な方法を使用して変化させ得ることが理解されるであろう。したがって、本開示はまた、CSF-1Rについて向上した親和性を有する、本開示の抗体分子の変種に関する。そのような変種は、CDRへの突然変異導入(Yang et al., 1995, J. Mol. Biol., 254:392-403)、鎖シャッフリング(Marks et al., 1992, Bio/Technology, 10:779-783)、E. coliの高頻度突然変異導入株の使用(Low et al., 1996, J. Mol. Biol., 250:359-368)、DNAシャッフリング(Patten et al., 1997,Curr. Opin. Biotechnol., :724-733)、ファージディスプレイ(Thompson et al., J. Mol. Biol., 256, 77-88, 1996)およびセクシャルPCR(Crameri et al., 1998, Nature, 391:288-291)などの数多くの親和性成熟プロトコールにより得ることができる。Vaughan et al.(上掲)は、親和性成熟のこれらの方法を議論している。
【0085】
本明細書において使用される場合、「キメラ抗体」は、(a)定常領域、もしくはその部分が、変更され、置換されもしくは交換されて、抗原結合部位(可変領域)が、異なるもしくは変化したクラス、エフェクター機能および/もしくは種の定常領域、もしくはキメラ抗体に新たな特性を付与する完全に異なる分子、例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物などに連結しているか;または、(b)可変領域、もしくはその部分が、異なるもしくは変化した抗原特異性を有する可変領域により、変更され、置換されもしくは交換されている抗体分子である。本開示の、および本開示による使用のための好ましい抗体としては、ヒト化および/またはキメラモノクローナル抗体が挙げられる。
【0086】
本開示の抗体は、1つまたは複数のエフェクター分子に共役され得る。エフェクター分子は、単一のエフェクター分子または本開示の抗体に取り付けることができる単一の部分を形成するように連結された2つもしくはそれより多くのそのような分子を含み得る。エフェクター分子に連結された抗体断片を得ることが所望される場合、これは、抗体断片が直接的にまたは連結剤を介してエフェクター分子に連結される標準的な化学的または組換えDNA手順により調製され得る。そのようなエフェクター分子を抗体に共役させるための技術は当該技術分野において周知である(Hellstrom et al., Controlled Drug Delivery, 2nd Ed., Robinson et al., eds., 1987, pp. 623-53; Thorpe et al., 1982, Immunol. Rev., 62:119-58およびDubowchik et al., 1999, Pharmacology and Therapeutics, 83, 67-123を参照)。特定の化学的手順としては、例えば、国際出願第93/06231号パンフレット、国際出願第92/22583号パンフレット、国際出願第89/00195号パンフレット、国際出願第89/01476号パンフレットおよび国際出願第03/031581号パンフレットに記載されているものが挙げられる。あるいは、エフェクター分子がタンパク質またはポリペプチドである場合、連結は、例えば国際出願第86/01533号パンフレットおよびEP0392745に記載されるような組換えDNA手順を使用して達成され得る。
【0087】
本明細書において使用されるエフェクター分子という用語は、例えば、抗新生物剤、薬物、毒素、生物学的に活性のタンパク質、例えば、酵素、他の抗体または抗体断片、合成のまたは天然に存在するポリマー、核酸およびその断片、例えば、DNA、RNAおよびこれらの断片、放射性核種、特に、放射性ヨウ化物、放射性同位体、キレート化金属、ナノ粒子およびレポーター基、例えば、蛍光化合物またはNMRもしくはESR分光法により検出され得る化合物を含む。
【0088】
エフェクター分子としてはまた、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-フルオロウラシル、ダカルバジン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ミトマイシンC、およびシス-ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧名ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧名アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、アントラマイシン(AMC)、カリケアマイシンまたはデュオカルマイシン)、および抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0089】
他のエフェクター分子としては、タンパク質、ペプチドおよび酵素が挙げられる。目的の酵素としては、タンパク質分解酵素、加水分解酵素、リアーゼ、イソメラーゼ、トランスフェラーゼが挙げられるがこれらに限定されない。目的のタンパク質、ポリペプチドおよびペプチドとしては、免疫グロブリン、毒素、例えば、アブリン、リシンA、シュードモナスエキソトキシン、もしくはジフテリア毒素、タンパク質、例えば、インスリン、腫瘍壊死因子、α-インターフェロン、β-インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子もしくは組織プラスミノーゲン活性化因子、血栓剤(thrombotic agent)もしくは抗血管新生剤、例えば、アンジオスタチンもしくはエンドスタチン、または、生物学的応答修飾因子、例えば、リンホカイン、インターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-2(IL-2)、神経成長因子(NGF)もしくは他の成長因子および免疫グロブリンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0090】
エフェクター分子は、in vivoにおいて抗体の半減期を増加させ得、かつ/または抗体の免疫原性を低減させ得かつ/または上皮障壁を越えて免疫系への抗体の送達を増進させ得る。この種類の好適なエフェクター分子の例としては、ポリマー、アルブミン、およびアルブミン結合タンパク質またはアルブミン結合化合物、例えば、国際出願第05/117984号パンフレットに記載されているものが挙げられる。一部の実施形態では、CSF-1Rとは独立してエフェクター分子により提供される半減期は有利である。
【0091】
一部の実施形態では、精製された抗CSF-1R抗体または断片、例えばヒト化抗体または断片、特に、エンドトキシンおよび/または宿主細胞タンパク質もしくはDNAを特に含まないまたは実質的に含まない、実質的に精製された本明細書において開示される抗体または断片が提供される。上記において使用されるような精製された形態は、91、92、93、94、95、96、97、98、99%w/wまたはより純粋なもののような、少なくとも90%の純度を指すことを意図する。
【0092】
エンドトキシンを実質的に含まないことは、一般に、製造物1mg当たり0.5または0.1EUのような、抗体製造物1mg当たり1EUまたはそれ未満のエンドトキシン含有量を指すことを意図する。
【0093】
宿主細胞タンパク質またはDNAを実質的に含まないことは、一般に、適宜、1mg当たり350μgまたはそれ未満、1mg当たり300μgまたはそれ未満、1mg当たり250μgまたはそれ未満、1mg当たり200μgまたはそれ未満、1mg当たり150μgまたはそれ未満、1mg当たり100μgまたはそれ未満、1mg当たり50μgまたはそれ未満、1mg当たり40μgまたはそれ未満、特に、1mg当たり20μgまたはそれ未満のような、抗体製造物1mg当たり400μgまたはそれ未満の宿主細胞タンパク質および/またはDNA含有量を指すことを意図する。
【0094】
抗CSF-1R抗体およびエフェクター分子の他の例は、国際出願第2015/028455号パンフレット(参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0095】
核酸、ポリペプチド
CDR-L1:LASEDIYDNLA(配列番号1)
【0096】
CDRL2:YASSLQD(配列番号2)
【0097】
CDR-L3:LQDSEYPWT(配列番号3)
【0098】
CDR-H1:GFSLTTYGMGVG(配列番号4)
【0099】
CDR-H2:NIWWDDDKYYNPSLKN(配列番号5)
【0100】
CDR-H3:IGPIKYPTAPYRYFDF(配列番号6)
【0101】
ラットAb 969 VL領域:DIQMTQSPAS LSASLGETVS IECLASEDIY DNLAWYQKKP GKSPHLLIYY ASSLQDGVPS RFSGSGSGTQ YSLKINSLES EDAATYFCLQ DSEYPWTFGG GTKLELK(配列番号7)
【0102】
ラットAb 969 VL領域:gacatccaga tgacacagtc tccagcttcc ctgtctgcat ctctgggaga aactgtctcc atcgaatgtc tagcaagtga ggacatttac gataatttag cgtggtacca gaagaagcca ggaaaatctc ctcacctcct catctattat gcaagtagct tgcaagatgg ggtcccatca cggttcagtg gcagtggatc tggcacacag tattctctca aaatcaacag cctggaatct gaagatgctg cgacttattt ctgtctacag gattctgagt atccgtggac gttcggtgga ggcaccaagc tggaattgaa a(配列番号8)
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
ラットAb 969 VH領域:QVTLKESGPG ILQPSQTLSL TCTFSGFSLT TYGMGVGWIR QPSGKGLEWLANIWWDDDKY YNPSLKNRLT ISKDTSNNQA FLKLTNVHTS DSATYYCARIGPIKYPTAPY RYFDFWGPGT MVTVS(配列番号11)
【0106】
ラットAb 969 VH領域:caggttactc tgaaagagtc tggccctggg atattgcagc cctcccagac cctcagtctg acttgcactt tctctgggtt ttcactgacc acttatggta tgggtgtggg ctggattcgt cagccttcag ggaagggtct ggagtggctg gcaaacattt ggtgggatga tgataagtat tacaatccat ctctgaaaaa ccggctcaca atctccaagg acacctccaa caaccaagca ttcctcaagc tcaccaatgt acacacttca gattctgcca catactactg tgctcggata gggccgatta aatacccgac ggccccctac cggtactttg acttctgggg cccaggaacc atggtcaccg tctcg(配列番号12)
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
969 gL7 V領域:DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCLASEDIY DNLAWYQQKP GKAPKLLIYY ASSLQDGVPS RFSGSGSGTD YTLTISSLQP EDFATYYCLQ DSEYPWTFGG GTKVEIK(配列番号15)
【0110】
969 gL7 V領域:gacatacaga tgactcagtc accctcaagc ctgagtgcca gtgtgggaga cagggtgaca atcacctgtc tggcctccga ggatatctac gataacctgg catggtatca gcagaaacct ggaaaggctc ccaagctcct gatttattat gcctcctctc tccaagacgg cgttccatct cggttcagcg gaagcggctc cgggacggat tacacactga caattagctc tctgcaaccg gaggattttg ctacttacta ctgcctgcaa gactccgaat acccatggac cttcggtggt ggcaccaaag tggaaatcaa g(配列番号16)
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
969 gL7軽鎖(V+定常):DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCLASEDIY DNLAWYQQKP GKAPKLLIYY ASSLQDGVPS RFSGSGSGTD YTLTISSLQP EDFATYYCLQ DSEYPWTFGG GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC(配列番号19)
【0114】
969 gL7軽鎖(V+定常):gacatacaga tgactcagtc accctcaagc ctgagtgcca gtgtgggaga cagggtgaca atcacctgtc tggcctccga ggatatctac gataacctgg catggtatca gcagaaacct ggaaaggctc ccaagctcct gatttattat gcctcctctc tccaagacgg cgttccatct cggttcagcg gaagcggctc cgggacggat tacacactga caattagctc tctgcaaccg gaggattttg ctacttacta ctgcctgcaa gactccgaat acccatggac cttcggtggt ggcaccaaag tggaaatcaa gcgtacggta gcggccccat ctgtcttcat cttcccgcca tctgatgagc agttgaaatc tggaactgcc tctgttgtgt gcctgctgaa taacttctat cccagagagg ccaaagtaca gtggaaggtg gataacgccc tccaatcggg taactcccag gagagtgtca cagagcagga cagcaaggac agcacctaca gcctcagcag caccctgacg ctgagcaaag cagactacga gaaacacaaa gtctacgcct gcgaagtcac ccatcagggc ctgagctcgc ccgtcacaaa gagcttcaac aggggagagt gt(配列番号20)
【0115】
【表7】
【0116】
【表8】
【0117】
969 gH2 V領域:EVTLKESGPA LVKPTQTLTL TCTFSGFSLT TYGMGVGWIR QPPGKALEWL ANIWWDDDKY YNPSLKNRLT ISKDTSKNQV VLTMTNMDPV DTATYYCARI GPIKYPTAPY RYFDFWGQGT MVTVS(配列番号23)
【0118】
969 gH2 V領域:gaagtgacac tcaaggagtc tggacccgct ctggtgaaac caacccaaac actcactttg acatgtactt ttagtggctt ctcattgact acctatggaa tgggcgtggg atggatcaga cagccacctg gcaaggctct ggaatggctg gccaacatct ggtgggatga cgacaagtac tataacccgt ccctgaaaaa ccggctgacc attagcaagg atacttctaa aaatcaagtg gtgctgacca tgacaaatat ggatcccgtt gacaccgcaa cctactactg cgcccgcatt ggtcccataa agtaccctac ggcaccttac cgatatttcg acttttgggg ccaagggaca atggttactg tctcg(配列番号24)
【0119】
【表9】
【0120】
【表10】
【0121】
969 gH2重鎖(V+定常 - hu IgG4P):EVTLKESGPA LVKPTQTLTL TCTFSGFSLT TYGMGVGWIR QPPGKALEWL ANIWWDDDKY YNPSLKNRLT ISKDTSKNQV VLTMTNMDPV DTATYYCARI GPIKYPTAPY RYFDFWGQGT MVTVSSASTK GPSVFPLAPC SRSTSESTAA LGCLVKDYFP EPVTVSWNSG ALTSGVHTFP AVLQSSGLYS LSSVVTVPSS SLGTKTYTCN VDHKPSNTKV DKRVESKYGP PCPPCPAPEF LGGPSVFLFP PKPKDTLMIS RTPEVTCVVV DVSQEDPEVQ FNWYVDGVEV HNAKTKPREE QFNSTYRVVS VLTVLHQDWL NGKEYKCKVS NKGLPSSIEK TISKAKGQPR EPQVYTLPPS QEEMTKNQVS LTCLVKGFYP SDIAVEWESN GQPENNYKTT PPVLDSDGSF FLYSRLTVDK SRWQEGNVFS CSVMHEALHN HYTQKSLSLSLGK(配列番号27)
【0122】
969 gH2重鎖(V+定常 - hu IgG4P、エクソンに下線を引いている):
【0123】
gaagtgacac tcaaggagtc tggacccgct ctggtgaaac caacccaaac actcactttg acatgtactt ttagtggctt ctcattgact acctatggaa tgggcgtggg atggatcaga cagccacctg gcaaggctct ggaatggctg gccaacatct ggtgggatga cgacaagtac tataacccgt ccctgaaaaa ccggctgacc attagcaagg atacttctaa aaatcaagtg gtgctgacca tgacaaatat ggatcccgtt gacaccgcaa cctactactg cgcccgcatt ggtcccataa agtaccctac ggcaccttac cgatatttcg acttttgggg ccaagggaca atggttactg tctcgagcgc ttctacaaag ggcccatccg tcttccccct ggcgccctgc tccaggagca cctccgagag cacagccgcc ctgggctgcc tggtcaagga ctacttcccc gaaccggtga cggtgtcgtg gaactcaggc gccctgacca gcggcgtgca caccttcccg gctgtcctac agtcctcagg actctactcc ctcagcagcg tggtgaccgt gccctccagc agcttgggca cgaagaccta cacctgcaac gtagatcaca agcccagcaa caccaaggtg gacaagagag ttggtgagag gccagcacag ggagggaggg tgtctgctgg aagccaggct cagccctcct gcctggacgc accccggctg tgcagcccca gcccagggca gcaaggcatg ccccatctgt ctcctcaccc ggaggcctct gaccacccca ctcatgccca gggagagggt cttctggatt tttccaccag gctccgggca gccacaggct ggatgcccct accccaggcc ctgcgcatac aggggcaggt gctgcgctca gacctgccaa gagccatatc cgggaggacc ctgcccctga cctaagccca ccccaaaggc caaactctcc actccctcag ctcagacacc ttctctcctc ccagatctga gtaactccca atcttctctc tgcagagtcc aaatatggtc ccccatgccc accatgccca ggtaagccaa cccaggcctc gccctccagc tcaaggcggg acaggtgccc tagagtagcc tgcatccagg gacaggcccc agccgggtgc tgacgcatcc acctccatct cttcctcagc acctgagttc ctggggggac catcagtctt cctgttcccc ccaaaaccca aggacactct catgatctcc cggacccctg aggtcacgtg cgtggtggtg gacgtgagcc aggaagaccc cgaggtccag ttcaactggt acgtggatgg cgtggaggtg cataatgcca agacaaagcc gcgggaggag cagttcaaca gcacgtaccg tgtggtcagc gtcctcaccg tcctgcacca ggactggctg aacggcaagg agtacaagtg caaggtctcc aacaaaggcc tcccgtcctc catcgagaaa accatctcca aagccaaagg tgggacccac ggggtgcgag ggccacatgg acagaggtca gctcggccca ccctctgccc tgggagtgac cgctgtgcca acctctgtcc ctacagggca gccccgagag ccacaggtgt acaccctgcc cccatcccag gaggagatga ccaagaacca ggtcagcctg acctgcctgg tcaaaggctt ctaccccagc gacatcgccg tggagtggga gagcaatggg cagccggaga acaactacaa gaccacgcct cccgtgctgg actccgacgg ctccttcttc ctctacagca ggctaaccgt ggacaagagc aggtggcagg aggggaatgt cttctcatgc tccgtgatgc atgaggctct gcacaaccac tacacacaga agagcctctc cctgtctctg ggtaaa(配列番号28)
【0124】
【表11】
【0125】
【表12】
【0126】
ヒトVK1 2-1-(1)O12 JK4アクセプターフレームワーク:DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQSIS SYLNWYQQKP GKAPKLLIYA ASSLQSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ SYSTPLTFGG GTKVEIK(配列番号31)
【0127】
ヒトVK1 2-1-(1)O12 JK4アクセプターフレームワーク:gacatccaga tgacccagtc tccatcctcc ctgtctgcat ctgtaggaga cagagtcacc atcacttgcc gggcaagtca gagcattagc agctatttaa attggtatca gcagaaacca gggaaagccc ctaagctcct gatctatgct gcatccagtt tgcaaagtgg ggtcccatca aggttcagtg gcagtggatc tgggacagat ttcactctca ccatcagcag tctgcaacct gaagattttg caacttacta ctgtcaacag agttacagta cccctctcac tttcggcgga gggaccaagg tggagatcaa a(配列番号32)
【0128】
ヒトVH2 3-1 2-70 JH3アクセプターフレームワーク:QVTLKESGPA LVKPTQTLTL TCTFSGFSLS TSGMRVSWIR QPPGKALEWL ARIDWDDDKF YSTSLKTRLT ISKDTSKNQV VLTMTNMDPV DTATYYCARI AFDIWGQGTM VTVS(配列番号33)
【0129】
ヒトVH2 3-1 2-70 JH3アクセプターフレームワーク:caggtcacct tgaaggagtc tggtcctgcg ctggtgaaac ccacacagac cctcacactg acctgcacct tctctgggtt ctcactcagc actagtggaa tgcgtgtgag ctggatccgt cagcccccag ggaaggccct ggagtggctt gcacgcattg attgggatga tgataaattc tacagcacat ctctgaagac caggctcacc atctccaagg acacctccaa aaaccaggtg gtccttacaa tgaccaacat ggaccctgtg gacacagcca cgtattactg tgcacggata gcttttgata tctggggcca agggacaatg gtcaccgtct ct(配列番号34)
【0130】
CSF-1Rのアミノ酸配列:MGPGVLLLLL VATAWHGQGI PVIEPSVPEL VVKPGATVTL RCVGNGSVEW DGPPSPHWTL YSDGSSSILS TNNATFQNTG TYRCTEPGDP LGGSAAIHLY VKDPARPWNV LAQEVVVFED QDALLPCLLT DPVLEAGVSL VRVRGRPLMR HTNYSFSPWH GFTIHRAKFI QSQDYQCSAL MGGRKVMSIS IRLKVQKVIP GPPALTLVPA ELVRIRGEAA QIVCSASSVD VNFDVFLQHN NTKLAIPQQS DFHNNRYQKV LTLNLDQVDF QHAGNYSCVA SNVQGKHSTS MFFRVVESAY LNLSSEQNLI QEVTVGEGLN LKVMVEAYPG LQGFNWTYLG PFSDHQPEPK LANATTKDTY RHTFTLSLPR LKPSEAGRYS FLARNPGGWR ALTFELTLRY PPEVSVIWTF INGSGTLLCA ASGYPQPNVT WLQCSGHTDR CDEAQVLQVW DDPYPEVLSQ EPFHKVTVQS LLTVETLEHN QTYECRAHNS VGSGSWAFIP ISAGAHTHPP DEFLFTPVVV ACMSIMALLL LLLLLLLYKY KQKPKYQVRW KIIESYEGNS YTFIDPTQLP YNEKWEFPRN NLQFGKTLGA GAFGKVVEAT AFGLGKEDAV LKVAVKMLKS TAHADEKEAL MSELKIMSHL GQHENIVNLL GACTHGGPVL VITEYCCYGD LLNFLRRKAE AMLGPSLSPG QDPEGGVDYK NIHLEKKYVR RDSGFSSQGV DTYVEMRPVS TSSNDSFSEQ DLDKEDGRPL ELRDLLHFSS QVAQGMAFLA SKNCIHRDVA ARNVLLTNGH VAKIGDFGLA RDIMNDSNYI VKGNARLPVK WMAPESIFDC VYTVQSDVWS YGILLWEIFS LGLNPYPGIL VNSKFYKLVK DGYQMAQPAF APKNIYSIMQ ACWALEPTHR PTFQQICSFL QEQAQEDRRE RDYTNLPSSS RSGGSGSSSS ELEEESSSEH LTCCEQGDIA QPLLQPNNYQ FC(配列番号35)
【0131】
CSF-1Rのアミノ酸配列:MRHTNYSFSPWHGFTIHRAKFIQSQDYQCSALMGGRKVMSISIRLKVQK(配列番号36)
【0132】
【表13】
【0133】
MGPGVLLLLL VATAWHGQGI PVIEPSVPEL VVKPGATVTL RCVGNGSVEW DGPPSPHWTL YSDGSSSILS TNNATFQNTG TYRCTEPGDP LGGSAAIHLY VKDPARPWNV LAQEVVVFED QDALLPCLLT DPVLEAGVSL VRVRGRPLMR HTNYSFSPWH GFTIHRAKFI QSQDYQCSAL MGGRKVMSIS IRLKVQKVIP GPPALTLVPA ELVRIRGEAA QIVCSASSVD VNFDVFLQHN NTKLAIPQQS DFHNNRYQKV LTLNLDQVDF QHAGNYSCVA SNVQGKHSTS MFFRVVESAY LNLSSEQNLI QEVTVGEGLN LKVMVEAYPG LQGFNWTYLG PFSDHQPEPK LANATTKDTY RHTFTLSLPR LKPSEAGRYS FLARNPGGWR ALTFELTLRY PPEVSVIWTF INGSGTLLCA ASGYPQPNVT WLQCSGHTDR CDEAQVLQVW DDPYPEVLSQ EPFHKVTVQS LLTVETLEHN QTYECRAHNS VGSGSWAFIP ISAGAHTHPP DE(配列番号38)
【0134】
抗CSF-1抗体
本開示はまた、CSF-1、好ましくはヒトCSF-1に特異的に結合し、かつCSF-1を阻害するように機能する、本明細書において開示される任意の方法および併用療法のために好適な抗体およびその抗原結合断片を提供する。CSF-1発現は、多くのがん種において不良な診断および腫瘍進行と相関する。CSF-1のレベルの増加は、腫瘍間質および不良な疾患予後の主要な因子である腫瘍関連マクロファージのレベルの増加と関連付けられる。一部の実施形態では、抗CSF-1抗体またはその抗原断片は、CSF-1の活性を阻害する。一部の実施形態では、抗CSF-1抗体は、c-fms受容体へのCSF-1の結合を阻害して、c-fmsの活性化を遮断または予防する。一部の実施形態では、抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化および/またはヒト抗CSF-1抗体またはその断片である。一部の実施形態では、ヒト抗CSF-1抗体は、非ヒトトランスジェニック動物、例えば、そのゲノムがヒト免疫グロブリン遺伝子を含むことによりヒト抗体を産生する齧歯動物を免疫化することにより製造される。CSF-1に対する抗体は当該技術分野において公知である。好ましくはCSF-1活性を阻害する抗体としては、米国特許第8652469(B2)号明細書および国際出願第2013068902号パンフレット(これらのそれぞれの内容は参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)に開示されるものが挙げられる。例えば、CSF-1を阻害する抗体としては、MCS110が挙げられる。
【0135】
一部の実施形態では、抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片は、100pMもしくはそれ未満、または10pMもしくはそれ未満のヒトCSF-1についての結合親和性を含む。一部の実施形態では、抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片は、約0.1mg/kg~約30mg/kgの範囲内の用量で投与される。
【0136】
CSF-1Rの阻害剤
本開示はまた、CSF-1R活性を阻害するように機能する、本明細書において開示される任意の方法および併用療法のために好適なCSF-1R、好ましくはヒトCSF-1R活性の阻害剤を提供する。本明細書において使用される「CSF-1R活性」という用語は、CSF-1R、特に、ヒトCSF-1Rおよびそのアイソフォーム、例えば、1、2、3または全てのアイソフォームの活性について当該技術分野において理解される広範な活性を指す。例えば、受容体へのリガンドの結合は、特定のチロシン残基においてCSF-1Rのリン酸化を誘導し(Bourette RP and Rohrschneider LR, 2000, Growth Factors17: 155-166)、次いで起こるシグナル伝達事象のカスケードは、細胞の遊走、生存、分化および増殖を媒介することができる(Suzu Setal, 1997, J Immunol, 159, 1860-7; Yeung Y-G and Stanley ER, 2003, Mol Cell Proteomics, 2, 1143-55; Yu W et al 2008, J Leukoc 25 Biol84(3), 852-63)。選択されたチロシン残基の代わりにフェニルアラニン残基を含む突然変異体CSF-1R受容体分子のトランスフェクト細胞における発現は、生存、増殖および形態のような細胞における結果との特定のチロシン残基の関連を明らかにした(Yu et al J Leukoc Biol 2008 Sep 84(3): 852-863)。プロテオームアプローチおよび分子特異的抗体と共に抗ホスホチロシン抗体を使用するイムノブロッティング技術は、受容体のリガンド刺激後にこれらの細胞機能の媒介に関与する数多くの細胞内分子を同定した(Yeung Y-G et al, 1998, J Biol Chem. 13, 273(46): 17128-37; Husson H et al, 1997, Oncogenel5, 14(19): 2331-8。
【0137】
本開示によるCSF-1R活性の阻害剤は、CSF-1Rの活性に干渉する、例えば、それを低減させ/阻害しまたは遮断する剤である。CSF-1Rの活性に干渉する剤が特に好ましい。本開示による阻害剤は、CSF-1R活性を部分的または完全に阻害し得る。本開示の方法および併用療法のために好適な阻害剤としては、IL-34、CSF-1もしくはCSF-1受容体(CSF-1R)もしくはIL-34、CSF-1もしくはCSF-1Rをコードする核酸分子と相互作用(例えば、結合、または認識)することができる、またはIL-34、CSF-1もしくはCSF-1Rの発現を阻害することができる、またはCSF-1RおよびCSF-1および/もしくはIL-34の間の相互作用を阻害することができる、阻害剤が挙げられるがこれらに限定されない。そのような阻害剤は、抗体、核酸(例えば、DNA、RNA、アンチセンスRNAおよびsiRNA)、炭水化物、脂質、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣物、小分子および他の薬物であり得るがこれらに限定されない。
【0138】
一部の実施形態では、CSF-1R活性の阻害剤は、小さい化学的実体または小分子CSF-1R阻害剤である。一実施形態では、阻害剤は、受容体CSF-lRへのCSF-1の結合を遮断する。一部の実施形態では、阻害剤は、高度に選択的な小分子CSF-1R阻害剤である。小分子CSF-1R阻害剤の例としては、DCC-3014、ARRY-382、GW2580、BLZ94、PLX3397、PLX7386、JNJ-40346527、イマチニブ、ダサチニブ、スニチニブ、CEP-701、およびPKC-412が挙げられるがこれらに限定されない。小分子CSF-1R阻害剤の他の例は、例えば、Ramachandran et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2017, 27(10): 2153-2160; Mashkani et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry, 2010, 18(5): 1789-1797;およびPatel et al., Curr Top Med Chem. 2009, 9(7):599-610(これらのそれぞれの内容は参照することにより全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0139】
好適な阻害剤の例としては、CSF-1に結合して天然のCSF-1受容体への結合に干渉するCSF-1受容体の合成の機能的断片、CSF-1受容体に結合して天然のCSF-1受容体への結合に干渉するCSF-1の合成の機能的断片、CSF-1受容体に結合して天然のCSF-1受容体への結合に干渉するIL-34の合成の機能的断片、CSF-1もしくはIL-34もしくはCSF-1受容体に結合してCSF-1受容体-リガンド相互作用に干渉する抗体、CSF-1、IL-34もしくはCSF-1受容体をコードするmRNAに特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸分子、またはiL-34、CSF-1もしくはCSF-lRの活性を阻害する小分子もしくは他の薬物が挙げられるがこれらに限定されない。CSF-1受容体活性の阻害剤、ならびにそのような阻害剤を同定および製造する方法は当該技術分野において公知である。中和抗CSF-1抗体は、例えば、Weir et al., 1996, J Bone Miner. Res. l1, 1474-1481およびHaran-Ghera et al, 1997, Blood, 89, 2537-2545に記載されており、これらの文献にはまた、抗CSF-1R抗体が記載されている。CSF-1のアンチセンスアンタゴニストもまた記載されている(EP1223980)。
【0140】
好適な阻害剤であり得る作用物質は、多様な候補となる作用物質から選択することができる。候補となる作用物質の例としては、核酸(例えば、DNAおよびRNA)、炭水化物、脂質、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ペプチド模倣物、小分子および他の薬物が挙げられるがこれらに限定されない。作用物質は、生物学的ライブラリー;空間的に特定可能な平行の固相または液相ライブラリー;デコンボリューションを必要とする合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法などの、当該技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチのいずれかを使用して得ることができる。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに適するが、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマーまたは化合物の小分子ライブラリーに適用可能である(Lam, 1997, Anticancer Drug Des. 12:145;U.S.5,738,996;およびU.S.5,807,683)。分子ライブラリーの合成のための本明細書の記載に基づく好適な方法の例は、例えば、DeWitt et al, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6909; Erb et al, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 11422; Zuckermann et al, 1994, J. Med. Chem. 37:2678; Cho et al, 1993, Science 261:1303; Carrell et al, 1994, Angew. Chem. hit. Ed. Engl. 33:2059; Carell et al, 1994, Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:2061;およびGallop et al, 1994, J. Med. Chem. 37:1233において当該技術分野において見出すことができる。化合物のライブラリーは、例えば、溶液中(例えば、Houghten, 1992, Bio/Techniques 13:412-421)、またはビーズ上(Lam, 1991, Nature 354:82-84)、チップ上(Fodor, 1993, Nature 364:555-556)、細菌上(US5,223,409)、胞子上(US5,571,698;5,403,484;および5,223,409)、プラスミド上(Cull et al, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:1865- 1869)またはファージ上(Scott and Smith, 1990, Science 249:386-390; Devlin, 1990, Science 249:404-406; Cwirla et al, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:6378-6382;およびFelici, 1991, J. Mol. Biol. 222:301-310)で提示され得る。
【0141】
ヒストンデアセチラーゼ
がん、腫瘍、腫瘍関連障害、および新生物性病態は重篤であり、多くの場合、生命を脅かす状態である。急速に増殖する細胞成長により特徴付けられるこれらの疾患および障害は、その治療において効果的な治療剤の同定に向けた研究努力の対象であり続けている。そのような剤は、患者の生存を長期化させ、新生物と関連付けられる急速に増殖する細胞成長を阻害し、または新生物の退縮の効果をもたらす。
【0142】
HDACは、3つのクラス(クラスI、IIおよびIII)に分類される少なくとも18の酵素を含むファミリーである。クラスIのHDACとしては、HADC1、2、3、および8が挙げられるがこれらに限定されない。クラスIのHDACは核中に見出すことができ、転写制御リプレッサーに関与すると考えられている。クラスIIのHDACとしては、HDACS4、5、6、7、および9が挙げられるがこれらに限定されず、細胞質中の他に核中に見出すことができる。クラスIIIのHDACは、NAD依存的タンパク質であると考えられており、サーチュインファミリータンパク質のメンバーが挙げられるがこれらに限定されない。サーチュインタンパク質の非限定的な例としては、SIRT1~7が挙げられる。本明細書において使用される場合、「選択的HDAC」という用語は、3つ全てのHDACクラスとは相互作用しないHDAC阻害剤を指す。
【0143】
HDAC阻害剤
HDAC阻害剤は、新たに登場してきた治療剤のクラスであり、クロマチンリモデリングおよび遺伝子発現調節を通じて血液および固形悪性腫瘍において分化およびアポトーシスを促進する。いくつものHDAC阻害剤が同定されており、これには、ベンズアミド(例えば、エンチノスタット)、短鎖脂肪酸(例えば、フェニル酪酸ナトリウム);ヒドロキサム酸(例えば、スベロイルアニリドヒドロキサム酸およびトリコスタチンA);2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシ-デカノイル部分を含有する環状テトラペプチド(例えば、トラポキシンA)および2-アミノ-8-オキソ-9,10-エポキシ-デカノイル部分を有しない環状ペプチド(例えば、FK228)が含まれる。エンチノスタットは、複数の種類の固形腫瘍および血液がんにおいて臨床研究が為されているベンズアミドHDAC阻害剤である。エンチノスタットは、迅速に吸収され、約100時間の半減期を有し、かつ重要なことに、ヒストンアセチル化の変化はエンチノスタットの投与後に数週にわたり持続する。
【0144】
HDAC阻害剤は、汎HDAC阻害剤および選択的HDAC阻害剤に広く分類することができる。公知のHDAC阻害剤には大きな構造的多様性があるが、酵素活性部位と相互作用する部分および活性部位に繋がるチャネルの内側に位置する側鎖という、共通の特徴を共有する。これは、SAHAのようなヒドロキサメートと共に見ることができ、それにおいてはヒドロキサメート基は活性部位と相互作用すると考えられている。デプシペプチドの場合、ジスルフィド結合の細胞内還元が、4炭素アルケニル鎖に結合した遊離チオール基(これは活性部位と相互作用する)を生じさせると考えられている。HDAC阻害剤の間の差異は、活性部位に対してチャネルの反対端にあるHDACチャネルのリムと相互作用する様式にある。SAHAのような汎HDAC阻害剤とデプシペプチドのような選択的HDAC阻害剤との間のHDAC選択性の一部の観察される差異を少なくとも部分的に説明すると考えられているのは、HDAC阻害剤とチャネルのリムとの間のこの相互作用である。特に好ましいHDAC阻害剤はエンチノスタットである。エンチノスタットは、N-(2-アミノフェニル)-4-[N-(ピリジン-3-イル)メトキシカルボニルアミノ-メチル]-ベンズアミドの化学名および以下に示す化学構造を有する。一態様では、本開示は、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤、例えばエンチノスタットを含む組合せを提供する。
【化1】
【0145】
配合物および治療方法
本明細書において開示される任意の抗体(例えば、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体)は、本開示の方法、キット、組成物または併用療法のために使用することができる。
【0146】
一部の実施形態では、本開示の医薬組成物は、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤および薬学的に許容される担体を含む。
【0147】
抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはCSF-1R活性の阻害剤は、HDAC阻害剤との併用療法の部分としての投与のために好適である。例えば、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤は、一緒に、逐次的に、または交互に投与するために好適な、1つまたは複数のHDAC阻害剤(エンチノスタットなど)との併用療法の部分としての投与のために好適である。本開示はまた、治療有効量の抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物と治療有効量のHDAC阻害剤および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物との組合せに関する。
【0148】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)は、単一の治療用組成物中に配合され、抗CSF-1Rまたは抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)は同時に投与される。
【0149】
一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)は互いに別々であり、例えば、それぞれは別々の治療用組成物中に配合され、かつ、抗CSF-1R抗体もしくは抗CSF-1抗体もしくはこれらの抗原結合断片もしくはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)は同時に投与されるか、または抗CSF-1Rもしくは抗CSF-1抗体もしくはその抗原結合断片もしくはCSF-1R活性の阻害剤およびエンチノスタットを含むHDAC阻害剤は、治療レジメンの間の異なる時点において投与される。
【0150】
例えば、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤は、例えばがんを治療するために、HDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)の投与の前にまたはそれと並行して投与される。別の例では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤は、例えばがんを治療するために、HDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)の投与の後に投与される。あるいは、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)は、交互の様式で投与される。本明細書において記載されるように、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびエンチノスタットを含むHDAC阻害剤は、単一の用量または複数の用量において投与される。
【0151】
ある特定の実施形態では、本明細書において記載される組合せは、それを必要とする対象においてがんまたは細胞増殖障害を治療するために使用される。
【0152】
本明細書において使用される場合、「異常細胞増殖」は、正常細胞の異常な増殖および異常細胞の増殖などの、正常な調節機構とは独立した(例えば、接触阻害の喪失)細胞増殖を指す。
【0153】
本明細書において記載される「新形成」は、自律的増殖および体細胞突然変異により正常細胞から区別される、細胞の異常な、調節されないかつ秩序が破壊された増殖である。新生物細胞が成長して分裂する際に、それらは遺伝子突然変異および増殖の特徴を子孫細胞に渡す。新生物、または腫瘍は、新生物細胞の蓄積である。一部の実施形態では、新生物は、良性または悪性であり得る。
【0154】
本明細書において使用される場合、「転移」は、リンパ管または血管を介する腫瘍細胞の播種を指す。転移はまた、漿液性空洞、またはくも膜下もしくは他の空間を通じた直接的な拡張による腫瘍細胞の遊走を指す。転移の過程を通じて、身体の他の区画への腫瘍細胞遊走は、最初に現れた部位から離れた区画において新生物を確立する。
【0155】
本明細書において議論される場合、「血管新生」は、腫瘍形成および転移において著明である。血管新生因子は、横紋筋肉腫、網膜芽腫、ユーイング肉腫、神経芽腫、および骨肉腫のようないくつもの固形腫瘍と関連付けられることが見出されている。腫瘍は、栄養分を提供しかつ細胞廃棄物を除去する血液供給なしでは拡大することができない。血管新生が重要である腫瘍としては、腎細胞癌、肝細胞癌のような固形腫瘍、ならびに聴神経腫、および神経線維腫のような良性腫瘍が挙げられる。血管新生は、白血病のような血液発生腫瘍と関連付けられている。血管新生は、白血病を生じさせる骨髄における異常において役割を果たすと考えられている。血管新生の予防は、がん性腫瘍の成長および腫瘍の存在に起因する対象への結果としての損傷を停止させ得る。
【0156】
本明細書において使用される場合、「細胞増殖障害」という用語は、細胞の調節されないまたは異常な増殖、または両方が、がんであってもよいしそうでなくてもよい、望ましくない状態または疾患の発症に繋がり得る状態を指す。例示的な細胞増殖障害は、細胞分裂が脱調節された様々な状態を包含する。例示的な細胞増殖障害としては、新生物、良性腫瘍、悪性腫瘍、前がん状態、原位置(in situ)腫瘍、被包性腫瘍、転移性腫瘍、液性腫瘍、固形腫瘍、免疫学的腫瘍、血液腫瘍、がん、癌腫、白血病、リンパ腫、肉腫、および急速分裂細胞が挙げられるがこれらに限定されない。本明細書において使用される「急速分裂細胞」という用語は、予想される速度または同じ組織内の隣接もしくは並置された細胞の間で観察される速度を超えるまたはそれより大きい速度において分裂する任意の細胞として定義される。
【0157】
例示的ながんとしては、副腎皮質癌、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、肛門直腸がん、肛門管のがん、虫垂がん、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、基底細胞癌、皮膚がん(非黒色腫)、胆道がん、肝臓外胆管がん、肝内胆管がん、膀胱がん(bladder cancer)、膀胱がん(urinary bladder cancer)、骨および関節がん、骨肉腫および悪性繊維性組織球腫、脳のがん、脳腫瘍、脳幹部神経膠腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、視覚路および視床下部神経膠腫、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、胃腸がん、神経系がん、神経系リンパ腫、中枢神経系がん、中枢神経系リンパ腫、子宮頸がん、小児がん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系新生物、菌状息肉症、セザリー症候群、子宮内膜がん、食道がん、頭蓋外生殖細胞腫瘍、性腺外生殖細胞腫瘍、肝臓外胆管がん、眼がん、眼内黒色腫、網膜芽腫、胆嚢がん、胃がん、胃腸カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、生殖細胞腫瘍、卵巣生殖細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍 神経膠腫、頭頸部がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、目のがん、膵島細胞腫瘍(内分泌性膵臓)、カポジ肉腫、腎臓がん、腎臓がん、腎臓がん、喉頭がん、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、口唇および口腔がん、肝臓がん、肺がん、非小細胞肺がん、小細胞肺がん、AIDS関連リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、ワルデンストラム(Waldenstram)マクログロブリン血症、髄芽腫、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、中皮腫、転移性扁平上皮性頸部がん、口腔がん、舌のがん、多発性内分泌腺腫症候群、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性障害、鼻咽頭がん、神経芽腫、口腔がん、口腔がん、口咽頭がん、卵巣がん、卵巣上皮がん、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓がん、膵島細胞膵臓がん、副鼻腔および鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体芽腫およびテント上未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、血漿細胞新生物/多発性骨髄腫、肺胸膜芽細胞腫、前立腺がん、直腸がん、腎盂および尿管がん、移行細胞がん、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、ユーイングファミリーの肉腫腫瘍、カポジ肉腫、軟組織肉腫、子宮がん、子宮肉腫、皮膚がん(非黒色腫)、皮膚がん(黒色腫)、メルケル細胞皮膚癌、小腸がん、軟組織肉腫、扁平細胞癌、胃がん、テント上未分化神経外胚葉性腫瘍、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫、胸腺腫および胸腺癌、甲状腺がん、腎盂および尿管および他の泌尿器臓器の移行細胞がん、妊娠性絨毛腫瘍、尿道がん、子宮内膜子宮がん(endometrial uterine cancer)、子宮肉腫、子宮体がん、膣がん、外陰がん、およびウィルムス腫瘍が挙げられるがこれらに限定されない。
【0158】
一部の実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ芽球性白血病(CALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大B細胞リンパ腫(DLBCL)、原発性縦隔B細胞リンパ腫(PFBC)、または形質転換濾胞性リンパ腫(TFF)である。一部の実施形態では、がんは、中皮腫、膵臓がん、神経膠腫、神経芽腫、卵巣がん、膠芽腫、骨髄異形成症候群(MDS)、乳がん、前立腺がん、結腸直腸がん、皮膚がん、食道がん(oesophageal cancer)、食道がん(esophageal cancer)、胃がん、星状細胞がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、腎臓がん、肺がん、肝臓がん、甲状腺がん、または頭頸部がんである。
【0159】
「治療する」(treat)、「治療する」(treating)および「治療」という用語は、障害、疾患、もしくは状態;もしくは障害、疾患、もしくは状態と関連付けられる症状のうちの1つもしくは複数を軽減しもしくは妨げること;または障害、疾患、もしくは状態の原因自体を軽減しもしくは除去することを含む意図である。本明細書において使用される場合、「予防する」(preventing)または「予防する」(prevent)は、疾患、状態または障害の症状または合併症の発症を低減させまたは取り除くことを表す。
【0160】
本明細書において使用される場合、「軽減する」という用語は、障害の徴候または症状の重篤度が減少する過程を表すことを意図する。重要なことに、徴候または症状は、取り除かれることなく軽減され得る。好ましい実施形態では、本明細書において開示される医薬組成物の投与は、徴候または症状の除去に繋がるが、除去は必ずしも必要とされない。効果的な投与量は、徴候または症状の重篤度を減少させることが期待される。例えば、複数の位置において起こり得るがんのような障害の徴候または症状は、がんの重篤度が複数の位置のうちの少なくとも1つにおいて減少した場合に軽減される。
【0161】
がんの治療は、腫瘍のサイズの低減を結果としてもたらし得る。腫瘍のサイズの低減はまた、「腫瘍退縮」と称されることがある。好ましくは、治療後に、腫瘍サイズは、治療前のサイズと比べて5%またはそれより大きく低減され;より好ましくは、腫瘍サイズは、10%またはそれより大きく低減され;より好ましくは、20%またはそれより大きく低減され;より好ましくは、30%またはそれより大きく低減され;より好ましくは、40%またはそれより大きく低減され;よりいっそう好ましくは、50%またはそれより大きく低減され;最も好ましくは、75%またはそれより大きい%より大きく低減される。腫瘍のサイズは、任意の再現性のある測定手段により測定され得る。腫瘍のサイズは、腫瘍の直径として測定され得る。
【0162】
がんの治療は、非治療の対象の集団と比較して治療された対象の集団の平均生存期間の増加を結果としてもたらし得る。好ましくは、平均生存期間は、30日より大きく;より好ましくは、60日より大きく;より好ましくは、90日より大きく;最も好ましくは、120日より大きく増加する。集団の平均生存期間の増加は、任意の再現性のある手段により測定され得る。集団の平均生存期間の増加は、例えば、活性化合物を用いた治療の開始後の生存の平均長さを集団について算出することにより測定され得る。集団の平均生存期間の増加はまた、例えば、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)を含む本開示の組合せを用いた治療の最初のラウンドの完了後の生存の平均長さを集団について算出することにより測定され得る。
【0163】
「医薬組成物」または「治療用組成物」は、対象への投与のために好適な形態で本明細書において開示される抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤またはHDAC阻害剤のような活性成分を含有する配合物である。一部の実施形態では、医薬組成物は、バルクであるかまたは単位剤形である。単位剤形は、例えば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器のシングルポンプまたはバイアルなどの様々な形態のいずれかである。組成物の単位用量中の活性成分(例えば、開示される化合物またはその塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体の配合物)の量は有効量であり、関与する特定の治療にしたがって異なる。当業者は、患者の年齢および状態に応じて投与量に常用の変更を行うことが時に必要であることを理解する。投与量はまた、投与経路に依存する。経口、経肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、頬側、舌下、胸膜内、髄腔内、および鼻腔内などの様々な経路が想定される。本開示の化合物の局所または経皮投与用の剤形としては、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチおよび吸入剤が挙げられる。一実施形態では、活性化合物は、薬学的に許容される担体と、および必要とされる任意の防腐剤、緩衝剤、または噴射剤と無菌条件下で混合される。
【0164】
本明細書において用いられる「活性成分」は、妥当な用量において、治療効果のような薬理学的効果を有する成分を指す。
【0165】
「薬学的に許容される担体」は、一般に安全、非毒性かつ生物学的にもそれ以外にも望ましくないものではない、医薬組成物の調製において有用な担体を意味し、獣医学使用の他にヒトにおける薬学的使用のために許容される賦形剤が挙げられる。例えば、薬学的に許容される担体は、組成物を与えられる個体にとって有害な抗体の産生をそれ自体が誘導するべきではなく、また毒性であるべきではない。好適な担体は、タンパク質、ポリペプチド、リポソーム、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸、アミノ酸コポリマーおよび不活性ウイルス粒子のような大きい、緩徐に代謝される高分子であり得る。
【0166】
例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩および硫酸塩のような鉱酸塩、または、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩および安息香酸塩のような有機酸の塩といった、薬学的に許容される塩を使用することができる。
【0167】
治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、水、生理食塩水、グリセロールおよびエタノールのような液体を追加的に含有し得る。さらに、湿潤剤、乳化剤またはpH緩衝物質のような助剤物質がそのような組成物中に存在してもよい。そのような担体は、患者による摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリーおよび懸濁液として医薬組成物が配合されることを可能とする。
【0168】
投与のために好適な形態としては、非経口投与、例えば、注射または注入、例えば、ボーラス注射または連続注入のために好適な形態が挙げられる。製造物が注射または注入用である場合、それは油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルションの形態をとることができ、懸濁化剤、防腐剤、安定化剤および/または分散剤のような配合剤を含有することができる。あるいは、抗体分子は、適切な無菌の液体を用いて使用前に再構成するための乾燥形態であり得る。
【0169】
本開示の組成物が配合されたら、それを対象に直接的に投与することができる。
【0170】
ある特定の実施形態では、最終配合物のpHは、抗体または断片の等電点(pI)の値と類似しておらず、例えば、配合物のpHが7の場合、8~9またはより高いpIが適切なことがある。理論により縛られることを望まないが、これは最終的に、向上した安定性を有する最終配合物を提供し得ると考えられ、例えば、抗体または断片は溶液中に残存する。
【0171】
一例では、4.0~7.0の範囲内のpHの医薬配合物は、1~200mg/mLの本開示による抗体、1~100mMの緩衝剤、0.001~1%の界面活性剤、a)10~500mMの安定化剤、b)10~500mMの安定化剤および5~500mMの張度剤、またはc)5~500mMの張度剤を含む。
【0172】
本開示の医薬組成物は、いくつもの経路により投与されてよく、該経路としては、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、心室内、経真皮、経皮(例えば、国際出願第98/20734号パンフレットを参照)、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下、腟内または直腸経路が挙げられるがこれらに限定されない。ハイポスプレーもまた、本開示の医薬組成物を投与するために使用され得る。典型的に、治療用組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかとしての注射用製剤として調製され得る。注射前に液体ビヒクル中の溶液、または懸濁液とするために好適な固体形態もまた、調製され得る。
【0173】
組成物の直接送達は、一般に、皮下、腹腔内、静脈内または筋肉内への注射により達成され、または組織の間質空間に送達される。組成物はまた、病変部に投与することができる。投薬治療は、単回投与スケジュールまたは複数回投与スケジュールであり得る。
【0174】
組成物中の活性成分は抗体分子であることが理解されるであろう。そのため、胃腸管中での分解を受けやすい。したがって、組成物が胃腸管を使用する経路により投与される場合、組成物は、分解から抗体を保護するが、胃腸管から吸収されると抗体を放出する剤を含有する必要がある。
【0175】
薬学的に許容される担体の徹底的な議論は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company, N.J. 1991)において入手可能である。
【0176】
一実施形態では、配合物は、吸入などの局所投与用配合物として提供される。
【0177】
好適な吸入可能な調製物としては、吸入可能な粉末、噴射剤ガスを含有する定量化エアロゾルまたは噴射剤ガスを含まない吸入可能な溶液が挙げられる。活性物質を含有する本開示による吸入可能な粉末は、上記の活性物質のみからなるものであってよく、または生理学的に許容される賦形剤を伴う上記の活性物質の混合物からなるものであってもよい。
【0178】
これらの吸入可能な粉末は、単糖(例えば、グルコースまたはアラビノース)、二糖(例えば、ラクトース、サッカロース、およびマルトース)、オリゴ糖および多糖(例えば、デキストラン)、ポリアルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、およびキシリトール)、塩(例えば、塩化ナトリウム、炭酸カルシウム)またはこれらを互いに組み合わせた混合物を含み得る。単糖または二糖が好適に使用され、排他的ではないが特に水和物の形態で、ラクトースまたはグルコースが使用される。
【0179】
肺における沈積のための粒子は、1~9ミクロン、例えば0.1~5μm、特に1~5μmのような10ミクロン未満の粒子サイズを必要とする。活性成分(抗体または断片など)の粒子サイズは、第一に重要なものである。
【0180】
吸入可能なエアロゾルを調製するために使用することができる噴射剤ガスは当該技術分野において公知である。好適な噴射剤ガスは、n-プロパン、n-ブタンまたはイソブタンのような炭化水素ならびにメタン、エタン、プロパン、ブタン、シクロプロパンまたはシクロブタンの塩素化および/またはフッ素化誘導体のようなハロ炭化水素から選択される。上記の噴射剤ガスは、単独でまたはこれらの混合物として使用され得る。
【0181】
特に好適な噴射剤ガスは、TG11、TG12、TG134aおよびTG227から選択されるハロゲン化アルカン誘導体である。上記のハロゲン化炭化水素のうち、TG134a(1,1,1,2-テトラフルオロエタン)およびTG227(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン)およびこれらの混合物は特に好適である。
【0182】
噴射剤ガスを含有する吸入可能なエアロゾルはまた、共溶媒、安定化剤、表面活性剤(界面活性剤)、酸化防止剤、潤滑剤およびpH調整のための手段のような他の成分を含有し得る。全てのこれらの成分は当該技術分野において公知である。
【0183】
本開示による噴射剤ガスを含有する吸入可能なエアロゾルは、最大5質量%の活性物質を含有し得る。本開示によるエアロゾルは、例えば、0.002~5質量%、0.01~3質量%、0.015~2質量%、0.1~2質量%、0.5~2質量%または0.5~1質量%の活性成分を含有する。
【0184】
あるいは、肺への局所投与はまた、例えば、ネブライザー、例えば、コンプレッサーに接続されたネブライザー(例えば、Pari Respiratory Equipment, Inc., Richmond,Vaにより製造されるPari Master(R)コンプレッサーに接続されたPari LC-Jet Plus(R)ネブライザー)のようなデバイスを用いる液体溶液または懸濁液配合物の投与により為され得る。
【0185】
本開示の抗体は、例えば、溶液または懸濁液の形態で、溶媒中に分散されて送達され得る。それは、適切な生理溶液、例えば、生理食塩水または他の薬理学的に許容される溶媒もしくは緩衝化溶液中に懸濁され得る。当該技術分野において公知の緩衝化溶液は、約4.0~5.0のpHを達成するために、水1ml当たり0.05mg~0.15mgのエデト酸二ナトリウム、8.0mg~9.0mgのNaCl、0.15mg~0.25mgのポリソルベート、0.25mg~0.30mgの無水クエン酸、および0.45mg~0.55mgのクエン酸ナトリウムを含有し得る。懸濁液は、例えば、凍結乾燥された抗体を用い得る。
【0186】
治療用懸濁液または溶液配合物はまた、1つまたは複数の賦形剤を含有し得る。賦形剤は当該技術分野において周知であり、緩衝剤(例えば、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤および重炭酸緩衝剤)、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質、タンパク質(例えば、血清アルブミン)、EDTA、塩化ナトリウム、リポソーム、マンニトール、ソルビトール、およびグリセロールが挙げられる。溶液または懸濁液は、リポソームまたは生分解性マイクロスフェア中に被包され得る。配合物は、一般に、無菌の製造方法を用いて実質的に無菌の形態で提供される。
【0187】
これは、配合物のために使用される緩衝化溶媒/溶液の濾過、無菌の緩衝化溶媒溶液中への抗体の無菌懸濁、および当業者が精通する方法による無菌レセプタクルへの配合物の分注による製造および滅菌を含み得る。
【0188】
本開示によるネブライザー投与可能な配合物は、例えば、ホイルエンベロープ中に詰め込まれた単回用量単位(例えば、密閉されたプラスチック容器またはバイアル)として提供され得る。各バイアルは、単位用量の体積、例えば2mLの溶媒/溶液緩衝液を含有する。
【0189】
本明細書において開示される抗体は、噴霧化を介した送達のために好適であり得る。
【0190】
本開示の抗体は遺伝子療法の使用により投与され得ることもまた想定される。これを達成するために、適切なDNA成分の制御下の抗体分子の重鎖および軽鎖をコードするDNA配列が患者に導入され、それにより、抗体鎖がDNA配列から発現されてin situでアセンブルする。
【0191】
医薬組成物は、好適には、治療有効量の抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)を含む。本明細書において使用される「治療有効量」という用語は、標的化された疾患もしくは状態を治療し、改善しもしくは予防するため、または検出可能な治療的、薬理学的もしくは予防的効果を呈するために必要とされる治療剤の量を指す。例えば、本明細書において開示される任意の抗体またはHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)について、治療有効量は、例えば新生物細胞の、細胞培養アッセイにおいて、または動物モデル、通常、ラット、マウス、ウサギ、イヌ、ブタもしくは霊長動物において最初に推定することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲および投与経路を決定するために使用され得る。次いで、そのような情報を使用して、ヒトにおける投与のために有用な用量および経路を決定することができる。
【0192】
治療/予防上の有効性および毒性、例えば、ED50(集団の50%において治療的に効果的な用量)およびLD50(集団の50%に対して致死的な用量)は、細胞培養物または実験動物において標準的な薬学的手順により決定され得る。毒性効果と治療効果との用量比は治療指数であり、これはLD50/ED50という比として表すことができる。大きい治療指数を呈する医薬組成物が好ましい。投与量は、用いられる剤形、患者の感受性、および投与経路に応じてこの範囲内で変化し得る。
【0193】
投与量および投与は、活性剤の充分なレベルを提供するためまたは所望の効果を維持するために調整される。考慮され得る因子としては、病態の重篤度、対象の全般的健康、対象の年齢、体重、および性別、食事、投与の時間および頻度、薬物相互作用、反応感受性、および療法への寛容/応答が挙げられる。一般に、用量は、腫瘍の成長の緩慢化、好ましくは退縮を結果としてもたらすため、好ましくはがんの完全な退縮を引き起こすために充分であるべきである。投与量は、1日当たり約0.01mg/kgから1日当たり約10mg/kgの範囲内であり得る。一部の実施形態では、投与量は、約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7.5mg/kg、または約10mg/kgの範囲であり得る。一部の実施形態では、用量は、約0.1mg/日~約5mg/kg;約0.1mg/日~約10mg/kg;約0.1mg/日~約20mg/kg;約0.1mg~約30mg/kg;もしくは約0.1mg~約40mg/kgもしくは約0.1mg~約50mg/kgの範囲内であるか、または単回の、分割された、もしくは連続的な用量である(用量は、kgでの患者の体重、m2での身体表面積、および年での年齢について調整され得る)。医薬物質の有効量は、臨床医または他の有資格の観察者により記録される客観的に同定可能な改善を提供するものである。例えば、患者における腫瘍の退縮は、腫瘍の直径に関して測定され得る。腫瘍の直径の減少は退縮を指し示す。退縮はまた、治療を中止した後に腫瘍が再発生しないことにより指し示される。本明細書において使用される場合、「効果的な投与量様式」(dosage effective manner)という用語は、対象または細胞において所望の生物学的効果を生じさせる活性化合物の量を指す。
【0194】
ヒト対象のための精密な治療有効量は、病態の重篤度、対象の全般的健康、対象の年齢、体重および性別、食事、投与の時間および頻度、薬物の組合せ、反応感受性および療法への寛容/応答に依存する。この量は、常用の実験により決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。一般に、本開示の抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤の治療有効量は、約0.01mg/kg~約500mg/kg、例えば、約0.1mg/kg~約200mg/kg(約100mg/kgなど)、または約0.1mg/kg~約10mg/kg(約0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、1.5mg/kg、3mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7.5mg/kg、または約10mg/kgなど)である。ある特定の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤の有効量は、約3mg/kgまたは約6mg/kgである。
【0195】
一部の実施形態では、エンチノスタットは、治療サイクルの間に周期的に投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは、治療サイクルの1日目に投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは経口投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは週毎に投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは2週毎に投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは3mgの用量で投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは5mgの用量で投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは10mgの用量で投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは、3mgの用量で治療サイクルの間に週毎に1回経口投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは、5mgの用量で治療サイクルの間に週毎に1回経口投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは、10mgの用量で治療サイクルの間に2週毎に1回経口投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤の投与の前に投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片の投与の後に投与される。一部の実施形態では、エンチノスタットは、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤の投与と同時に投与される。
【0196】
医薬組成物は、好都合には、用量当たりの本開示の活性剤の予め決定された量を含有する単位用量形態において提供され得る。
【0197】
本開示による抗体(例えば、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体)の治療用量は、in vivoにおいて明白な毒性効果を示さないか、またはそれが示す毒性効果は限られたものである。
【0198】
長期作用性の医薬組成物は、特定の配合物の半減期およびクリアランス速度に応じて3~4日毎、週毎、または2週毎に1回投与され得る。一部の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤は、少なくとも2日毎、週毎、2週毎または月毎に投与される。ある特定の実施形態では、(例えば、抗CSF-1R抗体の)パルス用量が週毎または2週毎に投与される。ある特定の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)は、例えば1または2週毎に、同時または逐次的に同じ頻度で投与されるが、各療法の投与は、少なくとも1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、8時間、10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、20時間、24時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、または少なくとも7日、分離している。
【0199】
ある特定の実施形態では、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)は、異なる頻度で投与され、それぞれが独立して、日毎、2日毎、週毎、2週毎、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週、もしくは20週毎、または月毎に投与される。
【0200】
投与の頻度は、抗体分子の半減期およびその効果の持続期間に依存する。抗体分子が短い半減期(例えば、2~10時間)を有する場合、1日当たり1または複数の用量を与えることが必要であり得る。あるいは、抗体分子が長い半減期(例えば、2~15日)および/または長く持続する薬力学(PD)プロファイルを有する場合、1日当たり1回、週当たり1回またはさらには1もしくは2ヶ月毎に1回の投与量を与えることしか必要でないことがある。本明細書において用いられる半減期は、例えば血清/血漿中での、循環する分子の持続期間を指すことを意図する。
【0201】
本明細書において開示される組成物または療法は、患者に個々に投与されてもよく、または組合せで(例えば、同時、逐次的または別々に)投与されてもよい。
【0202】
一部の実施形態では、HDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)および第2の剤(例えば、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤)は、時間的に近接させて投与される(例えば、HDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)および第2の剤(例えば、抗CSF-1R抗体または抗CSF-1抗体またはこれらの抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤)は、同時に投与され得る)。したがって、本開示は、HDAC阻害剤(例えば、エンチノスタット)および第2の剤(例えば、抗CSF-1R抗体またはその抗原結合断片、抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片、またはCSF-1R活性の阻害剤)を時間的に近接させて投与することを含む、がんを治療または予防する方法を提供する。
【0203】
一部の実施形態では、「時間的な近接」は、1つの治療剤の投与が、別の治療剤の投与の前または後の期間内において、1つの治療剤の治療効果が別の治療剤の治療効果と重なり合うように行われることを意味する。一部の実施形態では、1つの治療剤の治療効果は、他の治療剤の治療効果と完全に重なり合う。一部の実施形態では、「時間的な近接」は、1つの治療剤の投与が、別の治療剤の投与の前または後の期間内において、1つの治療剤と別の治療剤との間に相乗効果があるように行われることを意味する。「時間的な近接」は、様々な因子にしたがって異なることがあり、該因子としては、治療剤が投与される対象の年齢、性別、体重、遺伝的背景、医学的状態、病歴、および治療歴;治療または改善されるべき疾患または状態;達成すべき治療アウトカム;治療剤の投与量、投薬頻度、および投薬期間;治療剤の薬物動態および薬力学;ならびに治療剤が投与される経路が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、「時間的な近接」は、15分以内、30分以内、1時間以内、2時間以内、4時間以内、6時間以内、8時間以内、12時間以内、18時間以内、24時間以内、36時間以内、2日以内、3日以内、4日以内、5日以内、6日以内、1週以内、2週以内、3週以内、4週以内、6週、または8週以内を意味する。一部の実施形態では、1つの治療剤の複数の投与は、別の治療剤の単一の投与と時間的に近接させて行うことができる。一部の実施形態では、時間的な近接は、治療サイクルの間または投薬レジメン内において変化し得る。
【0204】
「併用療法」は、逐次的または同時の方式での本明細書において開示される治療剤の投与を包含することを意図し、各治療剤は、異なる時点において投与される他に、これらの治療剤、または治療剤のうちの少なくとも2つの投与は、並行して、または実質的に同時の方式で為される。同時投与は、例えば、一定の比の各治療剤を有する単一のカプセルを、または複数の、各治療剤について単一のカプセルを対象に投与することにより達成することができる。各治療剤の逐次的または実質的に同時の投与は、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、および粘膜組織を通じた直接吸収が挙げられるがこれらに限定されない任意の適切な経路によりもたらすことができる。治療剤は、同じ経路または異なる経路により投与され得る。例えば、選択された組合せの第1の治療剤は静脈注射により投与されてよく、組合せの他の治療剤は経口投与されてよい。あるいは、例えば、全ての治療剤は経口投与されてよく、または全ての治療剤は静脈注射により投与されてよい。治療剤が投与される順序は、狭い不可欠のものではない。それほど重要ではない。治療剤はまた、交互に投与され得る。
【0205】
本明細書において開示される組合せおよび方法(例えば、抗CSF-1Rまたは抗CSF-1抗体またはその抗原結合断片またはCSF-1R活性の阻害剤およびHDAC阻害剤を含むもの)は、1つまたは複数の治療剤または療法、例えば、放射線療法、手術、または抗がん剤または化学療法を補足された治療をさらに含み得る。本明細書において開示される組合せおよび方法を補足するために使用することができる治療としては、アルキル化/DNA損傷剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン)、代謝拮抗物質(例えば、カペシタビン、ゲムシタビン、5-フルオロウラシル)、有糸分裂阻害剤(例えば、パクリタキセル、ビンクリスチン)、IL-2、シプリューセル-T、タリモジーン・ラハーパレプベック、ペグインターフェロンアルファ-2aの他に、抗体成分(例えば、上皮成長因子受容体ファミリー(EGFR、HER-2)、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)抗体、例えば、ニボルマブ、イピリムマブ、アテゾリズマブ、エロツズマブ、ダラツムマブ、ペムブロリズマブ、ラムシルマブ、ブレンツキシマブ、ブレンツキシマブベドチン、オファツムマブ、デノスマブ、およびこれらの組合せ)、または非抗体成分、例えば、イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブ、ボスチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、テムシロリムス、バンデタニブ、ベムラフェニブ、クリゾチニブ、ボリノスタット、ロミデプシン、ボルテゾミブ、ソラフェニブ、スニチニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、カボザンチニブ、ピルフェニドン、ステロイドまたは他の薬物分子、特に、その半減期がCSF-1R結合とは独立した薬物分子が挙げられるがこれらに限定されない。
【0206】
本明細書において使用される場合、「それを必要とする対象」は、細胞増殖障害を患っているか、または集団の大多数と比べてそのような障害を発症する増加したリスクを有する対象である。それを必要とする対象は、前がん性状態を有し得る。「対象」としては、哺乳動物が挙げられる。哺乳動物は、例えば、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、霊長動物、鳥、マウス、ラット、家禽、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタであり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0207】
「抗体」という用語は、当該技術分野において一般的に公知の意味にしたがって使用される。本開示の抗体分子は、全長重鎖および軽鎖を有する完全抗体分子またはその結合断片を含むことができ、Fab、改変型Fab、Fab’、改変型Fab’、F(ab’)2、Fv、単一ドメイン抗体(例えば、VHまたはVLまたはVHH)、scFv、2、3または4価抗体、ビス-scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディおよび上記のいずれかのエピトープ結合断片であり得るがこれらに限定されない(例えば、Holliger and Hudson, 2005, Nature Biotech. 23(9):1126-1136; Adair and Lawson, 2005, Drug Design Reviews - Online 2(3), 209-217を参照)。これらの抗体断片を作製および製造する方法は当該技術分野において周知である(例えば、Verma et al., 1998, Journal of Immunological Methods, 216:165-181を参照)。本開示において使用するための他の抗体断片としては、国際出願第05/003169号パンフレット、国際出願第05/003170号パンフレットおよび国際出願第05/003171号パンフレットに記載されるFabおよびFab’断片が挙げられる。多価抗体は、複数の特異性、例えば二重特異性を含んでよく、または単一特異的であってよい(例えば、国際出願第92/22853号パンフレット、国際出願第05/113605号パンフレット、国際出願第2009/040562号パンフレットおよび国際出願第2010/035012号パンフレットを参照)。
【0208】
本明細書において用いられる抗体の結合断片は、抗原に特異的であると断片を特徴付ける親和性で抗原に結合することができる断片を指す。
【0209】
一実施形態では、本開示による抗体は、例えば、国際出願第2009/040562号パンフレット、国際出願第2010/035012号パンフレット、国際出願第2011/030107号パンフレット、国際出願第2011/061492号パンフレットおよび国際出願第2011/086091号パンフレット(いずれも参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されるように、免疫グロブリン部分、例えば、FabまたはFab’断片、およびそれに直接的または間接的に連結された1つまたは2つの単一ドメイン抗体(dAb)を含むCSF-1R結合抗体融合タンパク質として提供される。
【0210】
一部の実施形態では、融合タンパク質は、例えば、任意選択的にジスルフィド結合により連結された、可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)ペアリングとして、2つのドメイン抗体を含む。一部の実施形態では、融合タンパク質のFabまたはFab’エレメントは、1つまたは複数の単一ドメイン抗体に対して同じまたは類似の特異性を有する。一実施形態では、FabまたはFab’は、1つまたは複数の単一ドメイン抗体に対して異なる特異性を有し、すなわち、融合タンパク質は多価である。一実施形態では、本開示による多価の融合タンパク質はアルブミン結合部位を有し、例えば、その中のVH/VLペアはアルブミン結合部位を提供する。
【0211】
本開示の抗体分子の定常領域ドメインが存在する場合、それは、抗体分子の提案される機能、特に、必要とされ得るエフェクター機能を考慮して選択され得る。例えば、定常領域ドメインは、ヒトIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMドメインであり得る。特に、ヒトIgG定常領域ドメインが使用されてよく、特に、抗体分子が治療的使用を目的とし、かつ抗体エフェクター機能が必要とされる場合、IgG1およびIgG3アイソタイプのものが使用され得る。あるいは、抗体分子が治療目的を意図し、かつ抗体エフェクター機能が必要とされない場合、IgG2およびIgG4アイソタイプが使用され得る。
【0212】
抗体は様々な翻訳後修飾を受けてもよいことも当業者により理解されるであろう。これらの修飾の種類および程度は、多くの場合、抗体を発現するために使用される宿主細胞株の他に、培養条件に依存する。そのような修飾としては、グリコシル化の変化、メチオニンの酸化、ジケトピペラジン形成、アスパラギン酸異性化およびアスパラギン脱アミドを挙げることができる。頻繁な修飾は、(Harris, RJ. Journal of Chromatography 705:129-134, 1995に記載されるように)カルボキシペプチダーゼの作用に起因してカルボキシ末端の塩基性残基(リジンまたはアルギニンなど)の喪失となる。したがって、抗体重鎖のC末端リジンは存在しないことがある。
【0213】
本明細書において使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、重鎖および/または軽鎖が、アクセプター抗体(例えば、ヒト抗体)の重鎖および/または軽鎖可変領域フレームワークにグラフトされたドナー抗体(例えば、マウスモノクローナル抗体)からの1つまたは複数のCDR(所望の場合、1つまたは複数の改変CDRを含む)を含有する抗体または抗体分子を指す(例えば、US5,585,089;国際出願第91/09967号パンフレットを参照)。総説について、Vaughan et al, Nature Biotechnology, 16, 535-539, 1998を参照。一実施形態では、CDR全体が移されるのではなく、本明細書において上記されるCDRのいずれか1つからの特異性決定残基の1つまたは複数のみがヒト抗体フレームワークに移される(例えば、Kashmiri et al., 2005, Methods, 36:25-34を参照)。一実施形態では、本明細書において上記されるCDRの1つまたは複数からの特異性決定残基のみがヒト抗体フレームワークに移される。別の実施形態では、本明細書において上記される各CDRからの特異性決定残基のみがヒト抗体フレームワークに移される。CDRまたは特異性決定残基がグラフトされる場合、マウス、霊長動物およびヒトフレームワーク領域など、CDRが由来するドナー抗体のクラス/種類を考慮して、任意の適切なアクセプター可変領域フレームワーク配列が使用され得る。
【0214】
本明細書において使用される場合、1つまたは複数の目的の値に適用される「約」(approximately)および「約」(about)という用語は、記載される基準値と類似の値を指す。ある特定の実施形態では、「約」(approximately)または「約」(about)という用語は、別段の記載がないか、またはそれ以外に文脈から明らかでなければ、記載した基準値の両方向(より大きいまたはより小さい)において25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ未満に入る値の範囲を指す(但し、そのような数が可能な値の100%を超える場合を除く)。例えば、ナノ粒子組成物の脂質成分中の所与の化合物の量の文脈において使用される場合、「約」は、記載した値の+/-10%を意味し得る。
【0215】
「a」、「an」および「the」のような特許請求の範囲および明細書において使用される冠詞は、そうでないことが指し示されないか、またはそれ以外に文脈から明らかでなければ、1つまたは1つより多くを意味し得る。群の1つまたは複数のメンバーの間に「または」を含む特許請求の範囲および明細書における記載は、そうでないことが指し示されないか、またはそれ以外に文脈から明らかでなければ、群のメンバーの1つ、1つより多く、または全てが、所与の製造物または方法において存在し、用いられ、またはそれ以外に関連する場合に満たされていると考えられる。本開示は、群の正確に1つのメンバーが、所与の製造物または方法において存在し、用いられ、またはそれ以外に関連する実施形態を含む。本開示は、群のメンバーの1つより多く、または全てが、所与の製造物または方法において存在し、用いられ、またはそれ以外に関連する実施形態を含む。
【0216】
「含む」という用語は、開放的であり、追加のエレメントまたはステップを含むことを許容するが、それを必要としない意図であることもまた留意される。したがって、「含む」という用語が本明細書において使用される場合、「から本質的になる」および「からなる」という用語もまた包含され、開示される。本明細書の全体を通じて、特定の成分またはステップを有し、含み(including)、または含む(comprising)として組成物または組合せが記載される場合、組成物または組合せはまた、記載された成分から本質的になる、またはからなることが想定される。同様に、特定の方法ステップを有し、含み(including)、または含む(comprising)として方法(methods)または方法(processes)が記載される場合、方法はまた、記載された処理ステップから本質的になる、またはからなる。さらに、ステップの順序またはある特定の行為を行うための順序は、発明が機能可能なままである限り、重要でないことが理解されるべきである。さらに、2つまたはそれより多くのステップまたは行為は、同時に実行され得る。
【0217】
範囲が与えられる場合、端点が含まれる。さらには、別に指し示されないか、またはそれ以外に文脈および当業者の理解から明らかでなければ、範囲として表される値は、文脈が明確にそれ以外を指定しなければ、範囲の下限の単位の10分の1まで、本開示の異なる実施形態において記載された範囲内の任意の特定の値または部分的範囲をとることができると理解されるべきである。
【0218】
技術的に適切な場合、本発明の実施形態を組み合わせることができる。本明細書において具体的かつ明示的に記載される任意の実施形態は、単独でまたは1つもしくは複数のさらなる実施形態との組合せで、権利除外(disclaimer)の基礎を形成し得る。
【0219】
本明細書において参照される全ての刊行物および特許文献は、それぞれのそのような刊行物または文献が参照することにより本明細書に組み込まれると具体的かつ個々に指し示されたかのように、参照することにより本明細書に組み込まれる。刊行物および特許文献の参照は、いずれかが関連する先行技術であると認めることを意図せず、また、その内容または日付に関する何らの承認も構成しない。
【実施例
【0220】
実施例1
抗CSF-1R(Ab535)と組み合わせたエンチノスタットの第1の解析をCT26結腸がんモデルおよび腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)の免疫細胞プロファイリングの評価において評価する。エンチノスタットは、免疫チェックポイント遮断の抗腫瘍活性を増進させるために宿主免疫抑制細胞の数を低減させ、かつその機能を阻害することが前臨床モデルにおいて示されている。マウス抗CSF-1R(Ab535)と組み合わせたエンチノスタットが、いずれかの剤単独と比較して組合せについて向上した全奏効率を結果としてもたらすかどうかを試験するための研究を実行した。
【0221】
実験の設計および結果
抗腫瘍有効性を評価するために、2週毎の腫瘍体積測定をCT26結腸がんモデルにおいて行った(n=9)。図1のカプランマイヤー(Kaplan-Meir)生存曲線に指し示されるように、エンチノスタット(5mg/kg)+Ab535(30mg/kg、週当たり3回)療法の組合せは、1)PBS対照、2)アイソタイプ+ビヒクル対照、3)エンチノスタット(5mg/kg、po、連日)、4)Ab535(30mg/kg、ip、週当たり3回)、および5)Ab535(20mg/kg、ip、週当たり2回)と比較した時に動物生存を向上させる。結果は、6つの独立した実験を表す。同様に図2において、エンチノスタット(5mg/kg)+Ab535(30mg/kg、週当たり3回)の組合せは、試験した全ての他の実験条件と比較した時に15日目において成長を有意に低減させた。
【0222】
CT26結腸がんモデルにおいて腫瘍免疫プロファイルを評価するため(n=4)、1)PBS対照、2)アイソタイプ+ビヒクル対照、3)エンチノスタット(5mg/kg、po、連日)、4)Ab535(30mg/kg、ip、週当たり3回)、5)Ab535(20mg/kg、ip、週当たり2回)、および6)エンチノスタット(5mg/kg)+Ab535(30mg/kg、週当たり3回)を用いた処置の8日後に腫瘍を回収した。エンチノスタット(5mg/kg)+Ab535(30mg/kg、週当たり3回)の組合せは、全ての他の実験条件と比較した時に腫瘍におけるCD8/Treg比の表現を有意に増加させた(図3)。図4において、結果は、エンチノスタット(5mg/kg)+Ab535(30mg/kg、週当たり3回)の組合せは、図5における試験した全ての他の実験条件と比較した時に、腫瘍内Tregを有意に低減させた他に、エンチノスタット(5mg/kg)+Ab535(30mg/kg、週当たり3回)による腫瘍関連マクロファージの有意な枯渇を指し示す。
【0223】
均等物
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細が上記の記載において示される。本明細書において記載される方法および材料に類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい方法および材料がここに記載される。本発明の他の特徴、目的、および利点は、明細書および特許請求の範囲から明らかであろう。明細書および添付の特許請求の範囲において、文脈が明確にそれ以外であることを指定しなければ、単数形は複数の指示対象を含む。別段の定義がなければ、本明細書において使用される全ての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0224】
本発明は、その精神または必須の特徴から離れることなく他の特定の形態において具現化され得る。以上の説明は、説明の目的のためにのみ与えたものであり、開示される正確な形態に本発明を限定することは意図されず、本発明は添付の特許請求の範囲により限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
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