(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】コンクリート分配装置、及びコンクリート分配システム
(51)【国際特許分類】
E04G 21/04 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
E04G21/04
(21)【出願番号】P 2020041202
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小川 達也
(72)【発明者】
【氏名】塚原 裕一
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 豊
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-246673(JP,A)
【文献】特開昭62-090414(JP,A)
【文献】特開2018-030682(JP,A)
【文献】米国特許第05632575(US,A)
【文献】特開平10-317673(JP,A)
【文献】特開2001-193282(JP,A)
【文献】特開2000-073564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00-21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートを圧送する圧送用ポンプと、
前記圧送用ポンプに連結され、コンクリート打設箇所の上方に配置され、前記コンクリート打設箇所に前記コンクリートを放出する開口部が管路に沿って複数形成された圧送用配管と、
前記開口部を開閉可能な開閉弁と、
前記圧送用ポンプおよび前記開閉弁を制御する制御部と、を備え、
前記開閉弁は、遠隔操作により開閉可能であり、
前記圧送用配管の前記開閉弁より前記圧送用ポンプ側に設けられ、前記圧送用配管の流路を開閉可能な基端側開閉弁を有し、
前記基端側開閉弁は、駆動源を有する駆動部と、前記駆動部を介して作動する弁体と、を備え、
前記駆動部は、前記制御部から前記圧送用ポンプが運転または停止した状態を伝える信号を受け取り、前記弁体を動作させ、前記圧送用配管を開通または閉塞させ、
前記駆動部は、前記弁体が前記圧送用配管を開通または閉塞させた状態を前記制御部に伝達
し、
前記開閉弁は、前記圧送用配管に導入されるピグを押し留めるピンを挿入可能である、
コンクリート分配装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記コンクリートの打設量により前記開閉弁の開閉を自動制御する、
請求項1に記載のコンクリート分配装置。
【請求項3】
前記圧送用ポンプは前記コンクリートが供給されるシリンダと、前記シリンダに供給された前記コンクリートを前記圧送用配管内に押し出すピストンと、を有し、
前記制御部は、前記コンクリートの打設量を、前記ピストンのストローク数に基づいて特定する、
請求項1または2に記載のコンクリート分配装置。
【請求項4】
前記圧送用配管は前記基端側開閉弁より先端側が、前記開閉弁と前記圧送用配管とがユニット化された水平部ユニットを構成し、
前記水平部ユニットは前記基端側開閉弁に対して着脱可能である、
請求項1に記載のコンクリート分配装置。
【請求項5】
コンクリートを圧送する圧送用ポンプと、
前記圧送用ポンプに連結され、コンクリート打設箇所の上方に配置され、前記コンクリート打設箇所に前記コンクリートを放出する開口部が管路に沿って複数形成された圧送用配管と、
前記開口部を開閉可能な開閉弁と、
前記圧送用ポンプおよび前記開閉弁を制御する制御部と、を備え、
前記開閉弁は、遠隔操作により開閉可能であり、
前記圧送用配管の前記開閉弁より前記圧送用ポンプ側に設けられ、前記圧送用配管の流路を開閉可能な基端側開閉弁を有し、
前記基端側開閉弁は、駆動源を有する駆動部と、前記駆動部を介して作動する弁体と、を備え、
前記駆動部は、前記制御部から前記圧送用ポンプが運転または停止した状態を伝える信号を受け取り、前記弁体を動作させ、前記圧送用配管を開通または閉塞させ、
前記駆動部は、前記弁体が前記圧送用配管を開通または閉塞させた状態を前記制御部に伝達する、コンクリート分配装置
を備え、
前記制御部は、前記コンクリートの打設量に基づいて前記コンクリートが打設された高さを推定し、所定の高さまで前記コンクリートが打設されたと判定した場合に前記開閉弁を閉弁する、
コンクリート分配システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート分配装置、及びコンクリート分配システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地下建設工事において、地下のコンクリート打設箇所にコンクリートを供給する方法として、地上に設置した圧送用ポンプと、該圧送用ポンプから打設箇所まで延設された圧送用配管と、を用いてコンクリートを圧送する手段が用いられている。
【0003】
特許文献1には、圧送用ポンプ及び圧送用配管を用いて地下にコンクリートを供給した後に圧送用配管内に残留したコンクリートを回収する方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧送用ポンプ及び圧送用配管を用いて水平方向に長尺の打設箇所にコンクリートを打設する場合には、コンクリートの放出箇所をそれまでの放出箇所から圧送用配管の基端側又は先端よりさらに先方に移動させる作業が生じる。
【0006】
従来、この放出箇所の移動作業は、基端から先端までの寸法が異なる圧送用配管に取り替えて行われていた。この方法では、段取り替えに要する時間により、圧送用配管内に残ったコンクリートが固まって圧送できなくなる虞があった。
【0007】
その対策として、圧送用配管に、圧送用配管にコンクリートを放出可能な水平シャッターバルブ(開閉弁)を配置し、適宜水平シャッターバルブを開閉することで放出箇所を移動させ、従来よりも早く放出箇所を移動させる方法が一般的に行われている。
【0008】
しかしながら、水平シャッターバルブの開閉は、水平シャッターバルブの設置場所に配置された作業者が手動で行っており、作業者間の意志伝達の過誤等により、開閉作業が適切に行われない虞等があった。また、作業者が多く必要であり、労務費等のコストがかかっていた。
【0009】
上記事情を踏まえ、本発明は、開閉弁の設置場所に作業者を配置せずに水平方向に長尺の打設箇所にコンクリートを打設することを目的としたコンクリート分配装置、コンクリート分配システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のコンクリート分配装置は、コンクリートを圧送する圧送用ポンプと、前記圧送用ポンプに連結され、コンクリート打設箇所の上方に配置され、前記コンクリート打設箇所に前記コンクリートを放出する開口部が管路に沿って複数形成された圧送用配管と、前記開口部を開閉可能な開閉弁と、前記圧送用ポンプおよび前記開閉弁を制御する制御部と、を備え、前記開閉弁は、遠隔操作により開閉可能であり、前記圧送用配管の前記開閉弁より前記圧送用ポンプ側に設けられ、前記圧送用配管の流路を開閉可能な基端側開閉弁を有し、前記基端側開閉弁は、駆動源を有する駆動部と、前記駆動部を介して作動する弁体と、を備え、前記駆動部は、前記制御部から前記圧送用ポンプが運転または停止した状態を伝える信号を受け取り、前記弁体を動作させ、前記圧送用配管を開通または閉塞させ、前記駆動部は、前記弁体が前記圧送用配管を開通または閉塞させた状態を前記制御部に伝達し、前記開閉弁は、前記圧送用配管に導入されるピグを押し留めるピンを挿入可能である。
【0011】
本発明によれば、遠隔操作により開閉弁を開閉してコンクリートの放出箇所を移動させることができる。そのため、水平方向に長尺の打設箇所にコンクリートを打設する場合に、開閉弁の設置場所に作業者を配置する必要がなく、作業者が削減でき、労務費等を削減できる。作業者間の意志伝達が必要となる機会を削減できるため、作業者間の意志伝達の過誤等により、開閉作業が適切に行われないことが抑制される。
また、圧送用ポンプとコンクリート打設箇所とに高低差があっても、基端側開閉弁を閉弁することにより、圧送用ポンプの停止時に圧送用配管からコンクリートが流出して圧送用配管内に空隙が発生することが防止できる。そのため、圧送用ポンプの再運転時にコンクリートが圧送用配管内の空隙を落下して骨材分離を生じ圧送用配管を閉塞させることが防止される。
さらに、開閉弁に挿入されるピンによりピグが押し留められ、誤ってピグが圧送用配管外に放出されてしまうことを防止できる。
【0012】
本発明のコンクリート分配装置は、前記開閉弁を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記コンクリートの打設量により前記開閉弁の開閉を自動制御してもよい。
【0013】
本発明によれば、制御部が開閉弁をコンクリートの打設量により自動制御するため、コンクリートCの打設作業を常に監視する必要がなく、作業者の負荷が軽減される。
【0014】
本発明のコンクリート分配装置は、前記圧送用ポンプは前記コンクリートが供給されるシリンダと、前記シリンダに供給された前記コンクリートを前記圧送用配管内に押し出すピストンと、を有し、前記制御部は、前記コンクリートの打設量を、前記ピストンのストローク数に基づいて特定してもよい。
【0015】
本発明によれば、制御部がコンクリートの打設量をコンクリートポンプのピストンのストローク数に基づいて特定するため、圧送用配管に別途流量計等の計器を設ける必要がなく、コンクリート分配装置の製造コストを抑制できる。
【0018】
本発明のコンクリート分配装置は、前記圧送用配管は前記基端側開閉弁より先端側が、前記開閉弁と前記圧送用配管とがユニット化された水平部ユニットを構成し、前記水平部ユニットは前記基端側開閉弁に対して着脱可能であってもよい。
【0019】
本発明によれば、水平部ユニットが基端側開閉弁に着脱可能であるため、水平部ユニットの揚重及び盛替えが可能であり、水平部ユニットを施工現場から撤去して洗浄することが可能である。
【0022】
本発明のコンクリート分配システムは、上記のコンクリート分配装置を備え、前記制御部は、前記コンクリートの打設量に基づいて前記コンクリートが打設された高さを推定し、所定の高さまで前記コンクリートが打設されたと判定した場合に前記開閉弁を閉弁する。
【0023】
本発明によれば、制御部が開閉弁をコンクリートの打設量により自動制御し、コンクリートを所定の箇所まで打設するため、コンクリートの打設作業を常に監視する必要がなく、作業者の負荷が軽減される。
【発明の効果】
【0024】
本発明のコンクリート分配装置、及びコンクリート分配システムは、開閉弁の設置場所に作業者を配置せずに水平方向に長尺の打設箇所にコンクリートを打設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート分配システムの構成図であり、コンクリートポンプ車起動前の図面である。
【
図2】本発明の実施形態に係るコンクリート分配システムの構成図であり、コンクリートポンプ車によるモルタル及び水送り時の図面である。
【
図3】本発明の実施形態に係るコンクリート分配システムの構成図であり、コンクリートポンプ車によるコンクリート圧送開始時の図面である。
【
図4】本発明の実施形態に係るコンクリート分配システムの構成図であり、第1開閉弁によるコンクリート放出時の図面である。
【
図5】本発明の実施形態に係るコンクリート分配システムの構成図であり、第3開閉弁によるコンクリート放出時の図面である。
【
図6】本発明の実施形態に係るコンクリート分配システムの構成図であり、コンクリート先送り時の図面である。
【
図7】本発明の実施形態に係るコンクリート分配システムの構成図であり、コンクリートポンプ車による2層目のコンクリート圧送開始時の図面である。
【
図8】本発明の実施形態に係るコンクリート分配システムの構成図であり、圧送用配管内に残存するコンクリートの除去作業時の図面である。
【
図9】本発明の実施形態に係るコンクリート分配システムにおけるコンクリートの圧送から除去までのフローを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るコンクリート分配システム100の構成図である。コンクリート分配システム100は、コンクリート分配装置にコンクリートCの打設量の計測をさせ、コンクリートCの打設量の計測にしたがって所定の高さまでコンクリートCを打設させるシステムである。コンクリート分配装置は、コンクリートC等を圧送するコンクリートポンプ車(圧送用ポンプ)10と、コンクリートポンプ車10に接続される圧送用配管20と、圧送用配管20に設けられる基端側開閉弁30と、圧送用配管20に設けられる開閉弁40と、圧送用配管20及び開閉弁40に接続されるホース50と、を備える。本実施形態では、所定箇所にコンクリートCを打設する装置、システム、及び打設方法の説明を行う。
【0027】
コンクリートポンプ車10は、コンクリートCを圧送するコンクリートポンプ(不図示)と、吐出口10Aと、制御部11と、信号線12と、を有する。コンクリートポンプは、公知の構成を使用でき、例えば、コンクリートC等が供給されるシリンダと、シリンダに供給されたコンクリートC等をシリンダ外に押し出すピストンと、を有し、コンクリートC等を圧送する。
【0028】
吐出口10Aは、圧送用配管20の一端に接続される。吐出口10Aは、コンクリートポンプが圧送するコンクリートC等を通過させ、圧送用配管20に送出する。
【0029】
制御部11は、コンクリートポンプ車10に設けられた操作盤(不図示)に入力された操作指令等にしたがって、コンクリートポンプを制御する。制御部11は、コンクリートポンプを運転及び起動することが可能である。制御部11は、操作盤に入力された操作指令等にしたがって、基端側開閉弁30及び開閉弁40を制御する。制御部11は、基端側開閉弁30及び開閉弁40を開閉することが可能である。
【0030】
制御部11は、コンクリートポンプの運転状態、又はコンクリートCの打設量等に基づいて基端側開閉弁30及び開閉弁40を制御することが可能である。制御部11は、例えば、コンクリートポンプのピストンのストローク数Sをカウントすることにより、コンクリートCの打設量を特定する。
【0031】
制御部11は、基端側開閉弁30又は開閉弁40の状態に基づいてコンクリートポンプを制御可能に構成されてもよい。
【0032】
信号線12は、信号線12は、制御部11と、基端側開閉弁30と、開閉弁40と、に接続され、各々の間で信号伝送を可能とする。
【0033】
圧送用配管20は、コンクリートポンプ車10から供給されたコンクリートC等を、コンクリート打設箇所まで輸送する。圧送用配管20は、コンクリート打設箇所の上方に配置される。圧送用配管20は、ポンプ接続部21と、基端部22と、水平部23、24と、先端部25と、を有する。
【0034】
ポンプ接続部21は、一端がコンクリートポンプ車10の吐出口10Aに接続される。ポンプ接続部21の他端は、基端側開閉弁30の一端に接続される。本実施形態では、コンクリートポンプ車10の配置場所と基端側開閉弁30とは高低差を有し、ポンプ接続部21は上下方向に延びる。ポンプ接続部は、水平に延びてもよい。基端側開閉弁30の他端に、基端部22の一端が接続される。基端部22の他端は、最もコンクリートポンプ車10側の第3開閉弁40Cに接続される。水平部23、24は、複数設けられる開閉弁40同士を接続する。先端部25は、最も先端側の第1開閉弁40Aに接続され、コンクリート打設箇所の端部の上方で開口する開口部251が形成される。
【0035】
基端側開閉弁30は、例えば、シャッターバルブであり、圧送用配管20の流路を開閉し、基端側開閉弁30から先へのコンクリートCの供給と停止とを切替える。基端側開閉弁30は、駆動源を有する駆動部31と、駆動部31を介して作動する弁体32と、弁体32により閉塞及び開通される管状の本体部33と、を有する。
【0036】
駆動部31は、弁体32を動作させて、圧送用配管20を閉塞及び開通させる。駆動部31は、例えば、制御油を駆動源とする公知の油圧作動方式を利用し、油圧を変化させることで弁体32に加える力を変化させ弁体32を動作させる。駆動部31は、信号線12を介してコンクリートポンプ車10の制御部11から信号を受け取り、油圧を変化させる。駆動部31は、例えば、制御部11からコンクリートポンプが運転し、ピストンが作動した状態を伝える信号を受け取り、弁体32を動作させ、圧送用配管20を開通させる。駆動部31は、例えば、制御部11からコンクリートポンプが停止し、ピストンが停止した状態を伝える信号を受け取り、弁体32を動作させ、圧送用配管20を閉塞させる。駆動部31は、タイマーが設けられ、コンクリートポンプの運転又は停止から一定時間遅れて弁体32を動作させるように構成されてもよい。駆動部31は、弁体32が圧送用配管20を閉塞又は開通させた状態をコンクリートポンプ車10の制御部11に伝達するように構成されてもよい。
【0037】
基端側開閉弁30は、駆動部31を介さず作業者が直接弁体32を動作させることも可能である。基端側開閉弁30は、切替えスイッチ(不図示)を有し、制御部11からの信号を受け付ける状態と、制御部11からの信号を受け付けない状態と、が切替えられる。切替えスイッチは、基端側開閉弁30に設けられていてもよく、コンクリートポンプ車10の操作盤に設けられていてもよい。駆動部31の電気回路の接点スイッチが操作盤に設けられ、制御部11を介さずに基端側開閉弁30が遠隔操作されるように構成されてもよい。
【0038】
弁体32は、駆動部31から駆動力を受けて動作する。弁体32は、板状の構造を有する。弁体32は、本体部33の中空部に導入されることで、板面で中空部を塞ぎ、圧送用配管20を閉塞させる。弁体32は、本体部33から退けられることで、中空部を連通させ、圧送用配管20を開通させる。
【0039】
本体部33は、圧送用配管20に接続され、中空部が圧送用配管20の中空部と連通する。本体部33において、中空部が弁体32に塞がれることにより、圧送用配管20が閉塞される。本体部33において、中空部から弁体32が退けられることにより、圧送用配管20が開通される。
【0040】
開閉弁40は、例えば、シャッターバルブであり、コンクリートCを圧送用配管20の基端側から先端側に輸送すること、及びコンクリート打設箇所に向けてコンクリートCを放出することが可能である。開閉弁40は、油圧作動方式の駆動部41と、駆動部41により作動する弁体42と、コンクリートCを流通させる管状の本体部43と、本体部43から分岐して設けられる管状の開口部44と、を有する。
【0041】
駆動部41は、駆動部31と同様に、油圧作動方式を利用して弁体42を動作させる。駆動部41は、駆動部31と同様に、信号線12を介してコンクリートポンプ車10の制御部11と通信し、コンクリートポンプ車10の状態に基づいて本体部43を制御すること、及び本体部43の状態を制御部11に伝送することが可能である。駆動部41は、例えば、制御部11からコンクリートポンプが運転し、ピストンのストローク数が一定回数を伝える信号を受け取り、弁体32を動作させ、圧送用配管20を開通させる。駆動部31は、例えば、制御部11からコンクリートポンプが停止し、ピストンが停止した状態を伝える信号を受け取り、弁体32を動作させ、圧送用配管20を閉塞させる。
【0042】
開閉弁40は、駆動部41を介さず作業者が直接弁体42を動作させることも可能である。開閉弁40は、基端側開閉弁30と同様に、切替えスイッチ(不図示)を有する。駆動部41の電気回路の接点スイッチが操作盤に設けられ、制御部11を介さずに開閉弁40が遠隔操作されるように構成されてもよい。
【0043】
弁体42は、駆動部41から駆動力を受けて動作する。弁体42は、板状の構造を有する。弁体42は、開口部44の中空部に導入されることで、板面で中空部を塞ぎ、開口部44を閉塞させて閉止する。弁体32は、開口部44の中空部から退けられることで、開口部44の中空部を開通させて開放する。
【0044】
本体部43は、圧送用配管20に接続され、中空部が圧送用配管20の中空部と連通する。本体部43は、ピン挿入部(不図示)を介して中空部にピンを挿入可能に設けられている。ピン挿入部は本体部43の側面に設けられ、開口部44と反対側に設けられる。
【0045】
開口部44は、コンクリートCを、コンクリート打設箇所に向けて放出可能である。開口部44は、中空部が圧送用配管20の中空部と連通する。開口部44の中空部から弁体42が退けられることにより、開口部44が開放される。本体部43にコンクリートCが供給された状態において、開口部44が開放されると、圧送用配管20からコンクリート打設箇所に向けてコンクリートCが放出される。開口部44の中空部が弁体42に塞がれることにより、開口部44が閉止され、圧送用配管20からコンクリート打設箇所に向けたコンクリートCの放出が停止される。
【0046】
ホース50は、柔軟性を有する管状の構造を有する。ホース50は、単体のホースがファスナー(不図示)を介して連結されることで、長さを延長できる。ホース50は、圧送用配管20及び開閉弁40に接続され、コンクリート打設箇所の近傍まで延在する。ホース50は、圧送用配管20から放出されたコンクリートCが周囲に飛散することを防止する。ホース50は、圧送用配管20の先端部25及び開閉弁40に接続される。ホース50は、先端部25の開口部251及び開閉弁40の開口部44に接合され、中空部が圧送用配管20の中空部に連通する。
【0047】
圧送用配管20の基端部22、水平部23、24、開閉弁40及びホース50は、水平部ユニットHUを構成する。水平部ユニットHUは、基端側開閉弁30に着脱可能である。
【0048】
次に、
図2から
図9を参照して、コンクリート分配システム100の動作について説明する。
図2から
図8は、コンクリート分配システム100の各動作を示す図である。
図9は、コンクリート分配システム100の動作手順を示すフローチャートである。コンクリート分配システム100は、コンクリートポンプ車10から圧送用配管20にコンクリートCを供給し、制御部11が自動で開閉弁40を開閉することで、コンクリートCを所定の高さまで打設する。
【0049】
本フローにおいて、開始時点は、コンクリートポンプ車10が停止状態である時点である。コンクリートポンプ車10が停止状態の時点では、基端側開閉弁30及び開閉弁40は閉状態である。
【0050】
ステップS01では、作業者が、コンクリートポンプ車10のコンクリートポンプにモルタル及び水Mを供給し、コンクリートポンプを運転状態とし、圧送用配管20内にモルタル及び水Mを圧送して流通させる。
図2に示すように、コンクリートポンプが運転状態となると、コンクリートポンプの運転状態が信号線12を介して基端側開閉弁30に伝達され、基端側開閉弁30が開となる。基端側開閉弁30が開となると、圧送用配管20の中空部が開通され、圧送用配管20内にモルタル及び水Mが流通する。圧送用配管20内を流通したモルタル及び水Mは、圧送用配管20の先端部25の開口部251から放出され、回収容器Rに回収される。ステップS01では先端部25にはホース50Tは接続されていない。ステップS01の処理が終了すると、作業者が、ステップS02の処理を行う。
【0051】
ステップS02では、作業者が、コンクリートポンプ車10のコンクリートポンプにコンクリートCを供給し、圧送用配管20の先端部25の下方にコンクリートCを打設する。
図3に示すように、作業者が、コンクリートポンプに供給したコンクリートCは、圧送用配管20内を流通し、圧送用配管20の先端部25の開口部251から放出され、先端部25に接続されたホース50Tを通ってコンクリート打設箇所の最も先端に打設される。ステップS02の処理が終了すると、制御部11が、ステップS03の処理を行う。
【0052】
ステップS03では、制御部11が、圧送用配管20の先端部25の下方のコンクリート打設箇所の先端に一定量のコンクリートCが打設されたか否かを判定する。一定量のコンクリートCが打設されたと判断すれば、制御部11はステップS04の処理を行う。一定量のコンクリートCが打設されていないと判断すれば、制御部11は繰り返しステップS03の処理を行う。制御部11は、コンクリートCの打設量を、コンクリートポンプのピストンのストローク数Sをカウントすることにより特定する。
【0053】
ステップS04では、制御部11が、圧送用配管20の先端部25より基端側の第1開閉弁40Aを開とする。
図4に示すように、第1開閉弁40Aが開となると、第1開閉弁40Aの開口部44AからコンクリートCが放出され、コンクリートCが第1開閉弁40Aより先端側に供給されなくなる。ステップS04が終了すると、コンクリートポンプ車10が、ステップS05の処理を行う。
【0054】
ステップS05では、コンクリートポンプ車10が、第1開閉弁40Aの下方にコンクリートCを打設する。第1開閉弁40Aの開口部44Aから放出されたコンクリートは、開口部44Aに接続されたホース50Aを通って第1開閉弁40Aの下方のコンクリート打設箇所に打設される。ステップS05の処理が終了すると、制御部11が、ステップS06の処理を行う。
【0055】
ステップS06では、制御部11が、第1開閉弁40Aの下方のコンクリート打設箇所に一定量のコンクリートCが打設されたか否かを判定する。一定量のコンクリートCが打設されたと判断すれば、制御部11はステップS07の処理を行う。一定量のコンクリートCが打設されていないと判断すれば、制御部11は繰り返しコンクリートポンプ車10にステップS05の処理を行わせる。ステップS03と同様に、制御部11は、コンクリートCの打設量を、コンクリートポンプのピストンのストローク数Sをカウントすることにより特定する。
【0056】
ステップS07では、制御部11が、第1開閉弁40Aより基端側の第3開閉弁40Cを開とする。
図5に示すように、第3開閉弁40Cが開となると、第3開閉弁40Cの開口部44CからコンクリートCが放出され、コンクリートCが第3開閉弁40Cより先端側に供給されなくなる。制御部11は、第1開閉弁40Aを閉としてもよく、閉としなくてもよい。ステップS07が終了すると、コンクリートポンプ車10が、ステップS08の処理を行う。
【0057】
ステップS08では、コンクリートポンプ車10が、第3開閉弁40Cの下方にコンクリートCを打設する。第3開閉弁40Cの開口部44Cから放出されたコンクリートは、開口部44Cに接続されたホース50Cを通って第3開閉弁40Cの下方のコンクリート打設箇所に打設される。ステップS08の処理が終了すると、制御部11は、ステップS09の処理を行う。
【0058】
ステップS09では、制御部11が、第3開閉弁40Cの下方のコンクリート打設箇所に一定量のコンクリートCが打設されたか否かを判定する。一定量のコンクリートCが打設されたと判断すれば、制御部11はステップS10の処理を行う。一定量のコンクリートCが打設されていないと判断すれば、制御部11は繰り返しコンクリートポンプ車10にステップS08の処理を行わせる。ステップS03と同様に、制御部11は、コンクリートCの打設量を、コンクリートポンプのピストンのストローク数Sをカウントすることにより特定する。
【0059】
ステップS10では、制御部11が、コンクリートCの打設箇所を先端に移す。
図6に示すように、制御部11は、第3開閉弁40Cを閉とする。制御部11は、圧送用配管20の水平部23に一定時間残存していたコンクリートCを、第2開閉弁40Bを開とすることにより、開口部44Bから放出する。制御部11は、残存していたコンクリートCを放出すると、第2開閉弁40Bを閉とする。制御部11は、コンクリートポンプのピストンのストローク数Sに基づいて、第2開閉弁40Bを開閉する。制御部11は、同様に、圧送用配管20の水平部24に一定時間残存していたコンクリートCを、第1開閉弁40Aを開とすることにより、開口部44Aから放出する。制御部11は、圧送用配管20に残存していたコンクリートCの放出を行いながら、コンクリートCの放出箇所を先端に移す。作業者は、打設されたコンクリートCとホース50との距離が所定より短くなると、ホース50と打設されたコンクリートCとの距離を調節する。作業者は、ホース50の下部の単体のホースを、ファスナーを外して除外することで、ホース50と打設されたコンクリートCとの距離を調節する。作業者は、水平部ユニットHUの配置を高くすることでホース50と打設されたコンクリートCとの距離を調節してもよい。ステップS10の処理が終了すると、制御部11は、ステップS11の処理を行う。
【0060】
ステップS11では、制御部11が、コンクリート打設箇所に所定の高さまでコンクリートCが打設されたか否かを判定する。コンクリートCが所定の高さまで打設されていないと判断すれば、制御部11はステップS02の処理に戻り、
図7に示すように、再び圧送用配管20の先端部25の下方にコンクリートCを打設する。ステップS02の処理が行われてから再びステップS02の処理が行われるまでの時間が、例えば60分以内であると、前回先端に打設されたコンクリートCが完全に固まる前に再びコンクリートCの打設ができる。前回先端に打設されたコンクリートCが完全に固まる前に再び打設ができると、前回先端に打設されたコンクリートCと再び打設されたコンクリートCとが強く結合される。
【0061】
所定の高さまでコンクリートCが打設されたと判断すれば、制御部11は、例えばアラームを発し、作業者にステップS12の処理を行わせる。ステップS03と同様に、制御部11は、打設されたコンクリートCの高さを、コンクリートポンプのピストンのストローク数Sをカウントすることにより推定する。
【0062】
ステップS12では、作業者は、コンクリートCの高さを調整する。作業者は、開閉弁40を手動で操作して開閉し、各開閉弁40の下方のコンクリート打設箇所に向けてコンクリートCを放出し、コンクリートCを打設してコンクリートCの高さを調整する。ステップS12の処理が終了すると、作業者は、ステップS13の処理を行う。
【0063】
ステップS13では、作業者は、コンクリートポンプを停止し、圧送用配管20のポンプ接続部21に残存するコンクリートCをポンプ接続部21から除去する。作業者は、コンクリートポンプを停止した後、
図8に示すように、基端側開閉弁30と水平部ユニットHUとの接続を解除する。作業者は、基端側開閉弁30を開とし、基端側開閉弁30を通してポンプ接続部21からコンクリートCを放出して除去する。ステップS13の処理が終了すると、作業者は、ステップS14の処理を行う。
【0064】
ステップS14では、作業者は、水平部ユニットHUの圧送用配管20にピグPgを導入し、圧送用配管20内の残存しているコンクリートCを除去する。作業者は、ピン挿入部を通してピンPnを第3開閉弁40Cに挿入する。作業者は、基端側から圧送用配管20内にピグPgを導入し、コンプレッサ等により空気圧を加えてピグPgを先端側に進ませる。ピグPgは、圧送用配管20内の残存しているコンクリートCを先端側に押す。先端側に押されたコンクリートCは、第3開閉弁40Cの開口部44Cを通して圧送用配管20から放出される。ピグPgは、ピンPnに接触すると、ピンPnにより押し留められる。作業者は、ピンPnを第3開閉弁40Cから抜き取る。同様にして、作業者は、第2開閉弁40B及び第1開閉弁40Aを通してコンクリートCを圧送用配管20から放出する。ステップS14の処理が終了すると、作業者は、ステップS15の処理を行う。
【0065】
ステップS15では、作業者は、水平部ユニットHUを撤去し、撤去先の場所で水平部ユニットHUを洗浄する。ステップS15の処理が終了することで、コンクリート分配システム100の動作が終了する。
【0066】
本実施形態のコンクリート分配システム100によれば、制御部11を介して遠隔操作により開閉弁40を開閉してコンクリートCの放出箇所を移動させることができる。そのため、水平方向に長尺の打設箇所にコンクリートCを打設する場合に、開閉弁40の設置場所に作業者を配置する必要がなく、作業者が削減でき、労務費等を削減できる。作業者間の意志伝達が必要となる機会を削減できるため、作業者間の意志伝達の過誤等により、開閉作業が適切に行われないことが抑制される。
【0067】
制御部11が開閉弁40をコンクリートCの打設量により自動制御し、コンクリートCを所定の箇所まで打設するため、コンクリートCの打設作業を常に監視する必要がなく、作業者の負荷が軽減される。
【0068】
制御部11がコンクリートCの打設量をコンクリートポンプのピストンのストローク数に基づいて特定するため、圧送用配管20に別途流量計等の計器を設ける必要がなく、コンクリート分配システム100の製造コストを抑制できる。
【0069】
コンクリートポンプの停止に連動して閉弁可能な基端側開閉弁30が設けられる。そのため、コンクリートポンプとコンクリート打設箇所とに高低差があっても、コンクリートポンプの停止時に圧送用配管20からコンクリートCが流出して圧送用配管20内に空隙が発生することが防止できる。そのため、コンクリートポンプの再運転時にコンクリートCが圧送用配管20内の空隙を落下して骨材分離を生じ圧送用配管20を閉塞させることが防止される。
【0070】
圧送用配管20の基端側開閉弁30より先端側が、基端側開閉弁30と圧送用配管20とがユニット化された水平部ユニットHUを構成し、水平部ユニットHUが基端側開閉弁30に着脱可能である。そのため、水平部ユニットHUの揚重及び盛替えが可能である。水平部ユニットHUを施工現場から撤去して洗浄することが可能である。
【0071】
開閉弁40に、ピグPgを押し留めるピンPnが挿入できるため、誤ってピグPgが圧送用配管20外に放出されてしまうことを防止できる。
【0072】
以上、本発明に係るコンクリート分配システムの一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0073】
例えば、圧送用ポンプは、コンクリートポンプ車でなくてもよく、単独では移動不可能な構成であってもよい。
【0074】
上記実施形態では、開閉弁40が3台配置されていたが、開閉弁40は1台以上であれば何台配置されてもよい。
【0075】
開状態又は閉状態である基端側開閉弁30又は開閉弁40を視認させやすくする表示灯が設けられていてもよい。
【0076】
基端側開閉弁30に、コンクリートCの放出箇所を移すまでの残りのコンクリートCの打設量を表示するパネルが設けられてもよい。
【0077】
操作盤は、制御部にコンクリートCの打設量を指定することが可能とされ、指定されたコンクリートCの打設量に達したときに制御部がコンクリートポンプを停止させるように構成されてもよい。
【0078】
コンクリートCの打設量の特定は、圧送用配管20に流量計を設けて計測した、圧送用配管20を流通したコンクリートCの流量に基づいて行われてもよい。
【0079】
上記実施形態では、制御部11は、コンクリートCの放出箇所を先端から基端に向かって徐々に移したが、基端から先端に向かって移してもよい。コンクリートCの放出箇所は、一方向に移されなくてもよく、先端側と基端側とに往来してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 コンクリートポンプ車(圧送用ポンプ)
11 制御部
20 圧送用配管
30 基端側開閉弁
40 開閉弁
44 開口部
50 ホース
C コンクリート
HU 水平部ユニット
S ストローク数