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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】廃液処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/04 20230101AFI20240814BHJP
   C02F 1/38 20230101ALI20240814BHJP
【FI】
C02F1/04 C
C02F1/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020060651
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021159783
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2022-12-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】梅津 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 博年
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-341302(JP,A)
【文献】特開2018-161600(JP,A)
【文献】特開2003-306682(JP,A)
【文献】特開平05-346641(JP,A)
【文献】特開2001-187370(JP,A)
【文献】特公平01-042722(JP,B2)
【文献】特開平04-004087(JP,A)
【文献】実開昭52-148958(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/02-1/18、1/38
B01B1/00-1/08
B01D1/00-8/00
G01N27/00-27/24
B08B3/00-3/14
B05B1/00-3/18、7/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃液を貯留可能な容器と、
前記容器に前記廃液が貯留されたときに、当該廃液を加熱可能な加熱装置と、
前記容器に貯留された前記廃液の液位を測定可能な液位測定装置と、
前記液位測定装置を少なくとも部分的に収容する鞘管と、を有する加熱容器を備え、
前記液位測定装置に対して洗浄水を噴霧可能な噴霧ノズルをさらに備え、
前記鞘管は、その上側部分に開口部を有し、
前記噴霧ノズルと前記開口部とは、前記噴霧ノズルから噴霧された洗浄水が前記開口部を通過するように設けられており、
前記加熱装置は、温水式加熱装置であり、
前記洗浄水は、温水であり、
前記温水式加熱装置と前記噴霧ノズルとは、同一の温水源から温水の供給を受ける廃液処理装置。
【請求項2】
前記廃液を固液分離可能な固液分離装置をさらに備え、
前記固液分離装置により分離された前記廃液の液体部分を、前記加熱容器に供給可能に構成されている請求項1に記載の廃液処理装置。
【請求項3】
前記固液分離装置は、遠心式固液分離装置である請求項に記載の廃液処理装置。
【請求項4】
前記容器の内側を減圧可能に構成されている請求項1~のいずれか一項に記載の廃液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃液処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的な生産設備から排出される廃液は、生産工程に由来する成分を含む場合がある。これらの成分を含有する廃液は、通常の下水処理プロセスなどに流通させることができないため、産業廃棄物として処理する必要がある。しかし、このような廃液を、何らの処理もせずに排出すると、処理コストが大きくなる場合がある。また、廃液を、液体と、液体に含まれる成分とに分離できれば、これらに利用価値が生まれる場合がある。
【0003】
このような事情に鑑み、廃液から液体の一部を分離する技術が従来利用されている。たとえば特許文献1には、廃液を加熱して水分を蒸発させることによって廃液を濃縮する装置が開示されている。また、特許文献2には、パルプ廃液の一部を蒸発させて濃縮されたパルプ液を得るための蒸発器を含むシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/008392号
【文献】国際公開第2018/046482号(または特表2019-533092号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、廃液の一部を蒸発させて分離する場合、加熱、減圧、またはこれらの両方などの処理が施され、これによって廃液が沸騰する場合がある。このとき、廃液を収容する装置内に設けられた液位計などの計器の測定に支障をきたす場合があった。なお、特許文献1の技術においては、消費電力および取扱性の観点から、廃液を沸騰させない程度の温度で加熱することが好ましいとされており、廃液が沸騰する場合については何ら対策が講じられていなかった。また、特許文献2においても、廃液が沸騰する場合についての言及はない。
【0006】
しかし、廃液が沸騰する条件で廃液を処理できれば、蒸発速度を早くすることができ、廃液の重量および体積を減少させる処理の速度を早くすることができる。そのため、廃液処理工程の効率を考慮すると、廃液が沸騰する条件で廃液を処理することが好ましい。そこで、廃液が沸騰する条件で廃液を処理した場合であっても、廃液を収容する装置内に設けられた計器の測定に支障をきたしにくい廃液処理装置の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る廃液処理装置の特徴構成は、廃液を貯留可能な容器と、前記容器に前記廃液が貯留されたときに、当該廃液を加熱可能な加熱装置と、前記容器に貯留された前記廃液の液位を測定可能な液位測定装置と、前記液位測定装置を少なくとも部分的に収容する鞘管と、を有する加熱容器を備え、前記液位測定装置に対して洗浄水を噴霧可能な噴霧ノズルをさらに備え、前記鞘管は、その上側部分に開口部を有し、前記噴霧ノズルと前記開口部とは、前記噴霧ノズルから噴霧された洗浄水が前記開口部を通過するように設けられており、前記加熱装置は、温水式加熱装置であり、前記洗浄水は、温水であり、前記温水式加熱装置と前記噴霧ノズルとは、同一の温水源から温水の供給を受ける点にある。
【0019】
この構成によれば、鞘管の内側において液位が安定しやすいので、廃液が沸騰する条件で廃液を処理した場合であっても、液位測定装置による液位の測定に支障をきたしにくい。また、噴霧ノズルから洗浄水を噴霧して、液位測定装置に付着した廃液由来の付着物を洗い流すことができるので、液位測定装置の測定精度を維持しやすい。そして、熱源と洗浄水とを単一の供給源から供給できるため、設備の設置面積、設置費用、および設置の手間を低減しうる。
【0020】
本発明に係る廃液処理装置の他の特徴構成は、前記廃液を固液分離可能な固液分離装置をさらに備え、前記固液分離装置により分離された前記廃液の液体部分を、前記加熱容器に供給可能に構成されている点にある。
【0021】
加熱容器に供給される液体中に固形物が存在すると、当該固形物が核となって凝集物が生じる場合がある。この構成によれば、固形分を取り除いた後の液体部分を加熱容器に供給できるので、かかる凝集物の発生を抑制しうる。
【0022】
本発明に係る廃液処理装置の他の特徴構成は、前記固液分離装置は、遠心式固液分離装置である点にある。
【0023】
この構成によれば、比較的構造が簡単な遠心式固液分離装置を適用できる。
【0024】
本発明に係る廃液処理装置の他の特徴構成は、前記容器の内側を減圧可能に構成されている点にある。
【0025】
この構成によれば、廃液の液体部分を蒸発させやすい。
【0026】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る廃液処理装置の構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る加熱釜の構成図である。
図3】加熱釜において液位が所定の上限にある状態の図である。
図4】加熱釜において液位が所定の下限にある状態の図である。
図5】別実施形態に係る鞘管を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る廃液処理装置の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る廃液処理装置を、不純物として無機塩を含む廃液Wを処理する廃液処理装置1に適用した例について説明する。
【0029】
〔廃液処理装置の全体構成〕
本実施形態に係る廃液処理装置1は、生産設備(不図示)から排出された廃液Wを貯留する第一廃液タンク2と、廃液Wを固液分離する遠心式固液分離装置3(固液分離装置の例)と、遠心式固液分離装置3により分離された廃液Wの液体部分Wを貯留する第二廃液タンク4と、液体部分Wを貯留してこれを加熱可能な加熱釜5(加熱容器の例)と、加熱釜5において濃縮された液体部分Wの濃縮部分Wを貯留する第三廃液タンク6と、加熱釜5において液体部分Wから蒸発した水分Wを冷却して蒸留水として回収する蒸留水回収装置7と、を備える(図1)。なお、以下の説明において上下方向について言及するときは、図1に図示した状態における上下方向を意味する。
【0030】
廃液処理装置1による廃液処理の全体フローを概略すると、まず、廃液処理装置1が受容した廃液Wは、遠心式固液分離装置3により、スラッジSと液体部分Wとに分離される。固液分離された液体部分Wは、加熱釜5において加熱され、水蒸気として液体部分Wから分離する水分Wと、不純物が濃縮された濃縮部分Wと、に分離される。水分Wは冷却されて、蒸留水として再利用される。濃縮部分Wは産業廃棄物として廃棄される。
【0031】
廃液Wには無機塩が溶解しているため、これを工業排水として外部に流出させることができない。そのため、これを産業廃棄物として処理する必要があるが、廃液Wの全量を産業廃棄物として処理すると、処理工数および処理費用が大きくなる。そこで、廃液W中の水分Wを回収することによって、産業廃棄物として処理される分量(スラッジSおよび濃縮部分W)を減らす措置が講じられる。また同時に、回収した水分Wを蒸留水として再利用できる。
【0032】
〔廃液処理装置の各部構成〕
続いて、廃液処理装置1を構成する各装置について説明する。なお、第一廃液タンク2、第二廃液タンク4、および第三廃液タンク6は、液体を貯留可能な公知の槽であるので、詳細には説明しない。
【0033】
(遠心式固液分離装置)
遠心式固液分離装置3は、公知の遠心式固液分離装置であり、遠心力を利用して固体と液体とを分離する装置である。生産設備から排出された廃液Wは、析出した無機塩や、生産設備において生産される製品などに由来する固形物を含む場合がある。そこで、これらの固形物が加熱釜5に送られることを防ぐため、遠心式固液分離装置3において固液分離を行う。遠心式固液分離装置3において分離された固体部分およびこれに同伴する水分は、スラッジSとしてスラッジ貯槽31に貯留され、その後、産業廃棄物として廃棄される。一方、遠心式固液分離装置3において分離された液体部分Wは、第二廃液タンク4に貯留され、その後、加熱釜5に受容される。
【0034】
なお、遠心式固液分離装置3の前後に第一廃液タンク2および第二廃液タンク4が設けられているため、遠心式固液分離装置3および加熱釜5の処理能力に応じて、廃液Wおよび液体部分Wの次工程への供給を、適宜調節できる。すなわち、第一廃液タンク2および第二廃液タンク4は、いわゆるバッファタンクとしての役割を果たす。
【0035】
(加熱釜)
加熱釜5は、廃液Wの液体部分Wを加熱する装置である。加熱釜5は、容器51と、加熱コイル52(加熱装置の例)と、液位計53(液位測定装置の例)と、液位計53を収容する鞘管54と、噴霧ノズル55と、加熱釜5の各部を制御するコンピュータ56と、を有する(図2)。
【0036】
容器51は、第二廃液タンク4から廃液Wの液体部分W(廃液の例)を受容し、これを貯留する。容器51の入口には開閉弁51aが設けられており、これを開閉することによって液体部分Wの受容を制御する。容器51の内部は、蒸留水回収装置7の真空ポンプ73によって大気圧より減圧されているので、開閉弁51aを開くと、容器51の内圧と大気圧との圧力差によって、容器51の内部に液体部分Wが吸引される。容器51に受容された液体部分Wは、加熱コイル52によって加熱され、水蒸気として液体部分Wから分離する水分Wと、不純物が濃縮された濃縮部分Wと、に分離される。容器51の下部には開閉弁51bが設けられており、これを開閉することによって濃縮部分Wの排出を制御する。開閉弁51a、51bの開閉は、コンピュータ56によって制御される。
【0037】
容器51の外側側面に当接して、ジャケット51cが設けられている。ジャケット51cには、温水源(不図示)から供給される温水が流通しており、容器51を外側から加熱できる。これによって、容器51内に貯留された液体部分Wの温度が下がりにくくなる。
【0038】
加熱コイル52は、その内部に温水が流通する金属製の配管である。すなわち、加熱コイル52は、内部を流通する温水と、外部に接触する液体部分Wとの間での熱交換によって液体部分Wを加熱する温水式加熱装置である。加熱コイル52は、容器51の上蓋51dに固定されており、上蓋51dから下方に向けてらせん状に設けられた上流側部分52aと、上流側部分52aの下端から上蓋51dに向けて直線状に設けられた下流側部分52bと、を有する。温水源(不図示)から加熱コイル52に供給された温水は、上流側部分52a側に流入してらせん状に流通し、その後、下流側部分52bを経て温水源に戻る。特に上流側部分52aがらせん状に設けられているため、温水と液体部分Wとの間で良好に熱交換が行われ、液体部分Wが加熱される。なお、加熱コイル52に温水を供給する温水源は、ジャケット51cに温水を供給する温水源と同一である。
【0039】
液位計53は、容器51に貯留された液体部分Wの液位を測定できる液位測定装置であり、本実施形態では、超音波式の液位測定装置として実装されている。液位計53は、容器51の上蓋51dに固定されている。測定された液位は信号としてコンピュータ56に入力される。ここで、コンピュータ56は、液位計53によって検出された液位が所定の下限を下回ったときに、開閉弁51aが開くように制御して、第二廃液タンク4から容器51に液体部分Wが受け入れられるようにする。その後、コンピュータ56は、液位計53によって検出された液位が所定の上限を上回ったときに、開閉弁51aが閉止するように制御する。これによって、容器51内の液体部分Wの液位が所定の範囲内(所定の下限と所定の上限との間)に維持される。
【0040】
液位計53は、鞘管54に部分的に収納されている。より具体的には、液位計53を包囲するように鞘管54が設けられている。鞘管54は金属製の円筒であり、上下の端部は開放されている。鞘管54は、その側方に装着されたUボルトによって、加熱コイル52の上流側部分52aのらせん構造の内側に固定されており、その上端側開口54a(開口部の例)は上蓋51dから離間している。また、鞘管54の下端が開放されているので、鞘管54の内外の液位は一致する。なお、鞘管54の上端側開口54aは、後述する噴霧ノズル55の噴霧口55aより下方に配置されている。
【0041】
噴霧ノズル55は、容器51の上蓋51dから下向きに設けられている。噴霧ノズル55の先端には、温水(洗浄水の例)を霧状に噴霧できる噴霧口55aが設けられている。噴霧口55aから噴霧された温水は、鞘管54の上端側開口54aを通過して、液位計53の側面に着液する。これによって、液位計53の側面に付着した付着物を洗い流すことができる。また、噴霧ノズル55に温水を供給する温水源は、加熱コイル52に温水を供給する温水源と同一である。温水源から供給された温水は、フレキシブルホース55bを通じて噴霧口55aに至る。そのため、フレキシブルホース55bの向きを操作することによって、噴霧ノズル55が温水を噴霧する方向を変更できる。
【0042】
加熱コイル52より液体部分Wが加熱されると、液体部分Wのうちの水分Wが蒸発する。蒸発した水分Wは、容器51の上部から蒸留水回収装置7に回収され、蒸留水として再利用される。一方、容器51の下部には濃縮部分Wが形成され、これは開閉弁51bから排出されて産業廃棄物として処理される。
【0043】
(蒸留水回収装置)
蒸留水回収装置7は、熱交換器71と、蒸留水タンク72と、真空ポンプ73とを有する。加熱釜5において水蒸気として液体部分Wから分離した水分Wは、熱交換器71において冷却され、蒸留水として蒸留水タンク72に貯留される。加熱釜5の容器51の気相部分から、熱交換器71および蒸留水タンク72に至るまでの経路は、真空ポンプ73により減圧されているので、加熱釜5で生じた水分W(水蒸気)は、蒸留水回収装置7に吸引される。
【0044】
〔加熱釜の運転方法〕
次に、加熱釜5の運転方法について説明する。まず、加熱釜5は、第二廃液タンク4から液体部分Wを受容する。前述のように、加熱釜5の容器51は真空ポンプ73によって減圧されているので、開閉弁51aを開くと、液体部分Wが容器51に吸引される。液位計53により測定された液体部分Wの液位が所定の上限Hに達したとき(図3)に、コンピュータ56は開閉弁51aを閉止するように制御する。これによって、液体部分Wの受容が停止する。
【0045】
容器51に受容された液体部分Wは、加熱コイル52を流通する温水との熱交換によって加熱される。液体部分Wが加熱されると、液体部分Wの一部が水分Wとして蒸発して液体部分Wの量が減るため、液体部分Wの液位が低下する。液体部分Wの液位が、所定の下限Lに達したとき(図4)に、コンピュータ56は開閉弁51aを開くように制御する。これによって、再び液体部分Wが容器51に吸引される。その後、液体部分Wの液位が、再び所定の上限Hに達したときに、コンピュータ56は開閉弁51aを閉止するように制御する。
【0046】
上記のように、液体部分Wの受容と加熱とを繰り返すと、容器51内の液体部分Wにおける無機物の濃度が上昇していく。本実施形態では、液体部分Wの受容を、あらかじめ定められた所定の回数実施し、その後、液体部分Wの液位が所定の下限Lに達したときに、一回分の濃縮を完了したと判断するように定めている。一回分の濃縮を完了したとき、コンピュータ56は開閉弁51bを開くように制御し、容器51内に形成された濃縮部分Wを第三廃液タンク6に排出する。
【0047】
なお、加熱釜5の運転中において、開閉弁51bは無機物の濃度が高い液体部分W(濃縮部分W)に常に接触しているので、開閉弁51bにおいて無機物の固着が生じるおそれがある。かかる無機物の固着は、開閉弁51bの開閉を妨げるおそれがある。これを回避するため、コンピュータ56は、一回分の濃縮が完了した際に開閉弁51bを開くように制御するのとは別に、一回分の濃縮の途中において、瞬間的に(約1秒間)開閉弁51bを開いて再び閉止する、という制御を数回実行する。これによって、開閉弁51bにおいて無機物の固着が生じる前に、無機物を洗い流すことができる。
【0048】
〔本実施形態の作用効果〕
上記に説明したように、加熱釜5においては、液位計53により測定された液位に基づく制御が行われている。したがって、液位計53により正しい測定値が得られることが、適切な制御が行われるために必要な条件である。しかし、従来は、液体部分Wの液面が波打った場合などに、正しい測定値が得られない場合があった。加熱釜5は、液体部分Wを加熱して水分Wを蒸発させる装置であるが、このとき液体部分Wが沸騰してその液面が波打つ場合があるので、液面が波打った場合であっても正しい液面を測定することが求められていた。上記の実施形態によれば、液位計53を包囲するように鞘管54を設けることによって、液位計53の近傍で液体部分Wの液面が波打つことを好適に防止している。これによって、加熱釜5の適切な制御を実現している。
【0049】
また、加熱釜5においては無機物を含む液体部分Wを濃縮するので、液位計53に析出した無機物が付着する場合があった。このような付着物も、液位計53による測定値に誤差が生じる原因になりうる。上記の実施形態では、噴霧ノズル55を設けて、液位計53に温水を噴霧できるようにしてあるので、液位計53の側面に付着した無機物を再溶解して洗い流すことができる。また、鞘管54が、噴霧口55aから噴霧された温水が通過できる上端側開口54aを有する態様で設けられているので、無機物の析出が特に生じやすい液面付近に対して好適に温水を噴霧できる。
【0050】
加えて、生産設備から排出された廃液Wを直接に加熱釜5に導入するのではなく、遠心式固液分離装置3によりあらかじめ固形分を取り除いた液体部分Wを加熱釜5に導入するので、液位計53に付着しうる無機物の量自体を低減している。このことも、液位計53による測定値の誤差を抑制することに寄与している。
【0051】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る廃液処理装置のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0052】
上記の実施形態では、加熱装置の例として、その内部に温水が流通する加熱コイル52を例示した。しかし、本発明に係る廃液処理装置における加熱装置は、容器に貯留された廃液を加熱可能である限りにおいて特に限定されず、上記の例のような温水循環式の加熱装置のほか、電気ヒーター、蒸気ヒーターなどを使用しうる。
【0053】
上記の実施形態では、液位測定装置の例として、超音波式の液位測定装置として実装された液位計53を例示した。しかし、本発明に係る廃液処理装置における液位測定装置は、容器に貯留された廃液の液位を測定可能である限りにおいて特に限定されず、上記の例のような超音波式の液位測定装置のほか、電極式、静電容量式、フロート式などの液位測定装置を使用しうる。
【0054】
上記の実施形態における液位計53は、超音波式の液位測定装置として実装されている。すなわち、上記の実施形態では、測定範囲内において連続的に液位を測定可能である。このように、測定範囲内において連続的に液位を測定可能な液位測定装置を用いると、運転条件を変更しやすいため好ましい。たとえば、処理対象の廃液の組成が変更され、これに従って目標とする濃縮率が変更される場合、廃液の供給の開始および停止を決定する基準となる液位の上限および下限を変更する必要が生じる。ここで、測定範囲内において連続的に液位を測定可能な液位測定装置を用いていれば、かかる上限および下限の設定を変更するのみで対応できる。
【0055】
上記の実施形態では、鞘管54が、上下の端部が開放された管状の部材として設けられている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る廃液処理装置における鞘管の構造は、静止状態の廃液の液位が鞘管の内外において一致する限りにおいて特に限定されず、したがってその上部に開口部を有してもよいし、有しなくてもよい。また、上部に開口部を有する場合、その開口部は、噴霧ノズルから噴霧された洗浄水が通過できる態様であればよく、上記の例のように上端側を容器の上蓋から離間した開放端としておくほか、たとえば図5に示すように、容器51の上蓋51dから下方に延出する鞘管54の、噴霧ノズルに対向する側面部分に側面開口部54bを設けてもよい。
【0056】
上記の実施形態では、鞘管54が、加熱コイル52に固定されている構成を例として説明した。しかし、本発明に係る廃液処理装置における鞘管は、たとえば容器に直接固定するなど、他の固定方法によって固定されていてもよい。
【0057】
上記の実施形態では、液位計53および鞘管54が、加熱コイル52の上流側部分52aのらせん構造の内側に設けられた構成を例として説明した。しかし、本発明において、加熱装置と、液位測定装置および鞘管とに位置関係は、特に限定されない。
【0058】
上記の実施形態では、噴霧ノズル55の一部がフレキシブルホース55bとして構成され、これによって噴霧ノズル55が温水を噴霧する方向を変更できる構成を例として説明した。しかし、本発明に係る廃液処理装置において、加熱容器が噴霧ノズルを有する場合、洗浄水を噴霧する方向を変更できないように構成されていてもよい。
【0059】
上記の実施形態では、噴霧ノズル55から噴霧される洗浄水が温水である構成を例として説明した。しかし、本発明に係る廃液処理装置において、加熱容器が噴霧ノズルを有する場合、噴霧ノズルから噴霧される洗浄水は、液位測定装置に付着しうる異物を除去可能である限りにおいて、特に限定されない。具体的な洗浄水の種類は、処理対象とする廃液に含まれる物質などの条件を考慮して選択されうる。なお、温水以外の洗浄水を用いる場合は、当該洗浄水の供給源を設ける必要がある。
【0060】
上記の実施形態では、加熱コイル52が温水式加熱装置であり、噴霧ノズル55から噴霧される洗浄水が温水であり、加熱コイル52と噴霧ノズル55とに同一の温水源から温水が供給される構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されず、加熱装置の熱源と洗浄水の供給源とを別々に設けてもよい。
【0061】
上記の実施形態では、遠心式固液分離装置3が設けられ、遠心式固液分離装置3により固液分離された液体部分Wが加熱釜5に導入される構成を例として説明した。しかし、本発明に係る廃液処理装置は、固液分離装置を備えなくてもよい。
【0062】
上記の実施形態では、固液分離装置として遠心式固液分離装置3が備えられた構成を例として説明した。しかし、本発明に係る廃液処理装置が固液分離装置を備える場合、上記の例のような遠心式固液分離装置のほか、ろ過式、沈殿式などの固液分離装置を使用しうる。
【0063】
上記の実施形態では、容器51を大気圧より減圧可能な真空ポンプ73が設けられた構成を例として説明した。しかし、本発明において、容器の内側を減圧可能に構成されていなくてもよい。また、容器に廃液を受容する方法は、上記の実施形態のように容器の内圧と大気圧との圧力差を利用して吸引する方法に限定されず、たとえばポンプによって廃液を付勢する方法などでありうる。
【0064】
上記の実施形態では、バッファタンクの役割を果たす第一廃液タンク2および第二廃液タンク4が設けられた構成を例として説明した。しかし、そのようなタンクは設けられていなくてもよい。すなわち、生産工程から排出された廃水が直接に加熱容器に導入される構成、生産工程から排出された廃水が直接に固液分離装置に導入される構成、固液分離装置により分離された液体部分が直接に加熱容器に導入される構成、などを採用しうる。
【0065】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、たとえば、ソルトバス工程などから排出される無機物を含む廃水などを処理する排水処理装置に使用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 :廃液処理装置
2 :第一廃液タンク
3 :遠心式固液分離装置
31 :スラッジ貯槽
4 :第二廃液タンク
5 :加熱釜
51 :容器
51a :開閉弁
51b :開閉弁
51c :ジャケット
51d :容器51の上蓋
52 :加熱コイル
52a :上流側部分
52b :下流側部分
53 :液位計
54 :鞘管
54a :上端側開口
54b :側面開口部(別実施形態)
55 :噴霧ノズル
55a :噴霧口
55b :フレキシブルホース
56 :コンピュータ
6 :第三廃液タンク
7 :蒸留水回収装置
71 :熱交換器
72 :蒸留水タンク
73 :真空ポンプ
:廃液
:液体部分
:水分
:濃縮部分
S :スラッジ
H :液位の所定の上限
L :液位の所定の下限
図1
図2
図3
図4
図5