(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】エンドキャッピング貴金属担持二酸化珪素を用いたヒドロシリル化を必要とするシランカップリング剤の合成方法およびそれを用いた歯科用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20240814BHJP
B01J 31/30 20060101ALI20240814BHJP
B01J 31/28 20060101ALI20240814BHJP
B01J 33/00 20060101ALI20240814BHJP
A61K 6/76 20200101ALI20240814BHJP
C08F 299/08 20060101ALI20240814BHJP
C08F 230/08 20060101ALI20240814BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240814BHJP
【FI】
C07F7/18 L
B01J31/30 Z
B01J31/28 M
B01J33/00 E
A61K6/76
C08F299/08
C08F230/08
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020072565
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390011143
【氏名又は名称】株式会社松風
(72)【発明者】
【氏名】渕上 清実
(72)【発明者】
【氏名】山本 健蔵
(72)【発明者】
【氏名】北田 直也
(72)【発明者】
【氏名】信野 和也
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172331(JP,A)
【文献】特表2015-520019(JP,A)
【文献】特開平02-241546(JP,A)
【文献】特開2019-178089(JP,A)
【文献】特開2015-196682(JP,A)
【文献】特開昭60-084144(JP,A)
【文献】特開平07-206875(JP,A)
【文献】国際公開第03/024979(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/157682(WO,A1)
【文献】特開2012-214386(JP,A)
【文献】特表2017-506152(JP,A)
【文献】特開2010-229054(JP,A)
【文献】特開2007-238567(JP,A)
【文献】特開平02-134307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F、C07B、C08F、B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化反応を必要とするラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成において、
シラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒を用いて反応させる工程を含み、
シラノール基をエンドキャッピングする化合物がトリアルキルシリコンアルコキシドであり、
最終産物に貴金属触媒を含有しない事を特徴とするラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の製造方法。
【請求項2】
ヒドロシリル化反応をシラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒が封入されたマイクロリアクター流路、カラム内または、シラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒の懸濁系バッチ反応容器内で行う事を特徴とする請求項1記載のラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の製造方法。
【請求項3】
前記貴金属担持触媒が、シラノール基がエンドキャッピングされたシリカ担持白金、シラノール基がエンドキャッピングされたシリカ担持パラジウム、シラノール基がエンドキャッピングされたシリカ担持ルテニウム、シラノール基がエンドキャッピングされたシリカ担持ロジウム、シラノール基がエンドキャッピングされたシリカ担持オスミウム、及びシラノール基がエンドキャッピングされたシリカ担持イリジウムから選ばれる少なくとも1種以上である事を特徴とする請求項1~2
のいずれか1項に記載のラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の製造方法。
【請求項4】
前記シラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒を用いた不均一系でヒドロシリル化反応を行い、最終的にシラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒を濾過および/または遠心分離で除去する事を特徴とする請求項1~3
のいずれか1項に記載のラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の製造方法。
【請求項5】
シラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒で、シラノール基をエンドキャッピングする化合物がメトキシトリメチルシランである事を特徴とする請求項1記載のラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の製造方法。
【請求項6】
前記ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の構造式が、以下の式で表わされる事を特徴とする請求項1~5
のいずれか1項に記載のラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の製造方法。
【化1】
Aは、H
2C=CH-,H
2C=C(CH
3)-,又はH
2C=CH-C
6H
4-のいずれかの基を表し(C
6H
4はフェニレン基を示す)、
Bは、-C(O)-O-,-C(O)-S-,-C(O)-NH-,-NH-C(O)-NH-,-NH-C(O)-S-,又は-NH-C(O)-O-のいずれかの基を表し、
Zは、C
1~C
30の直鎖または分岐鎖のアルキレン基および/またはエチレンオキサイド基を表し、
Yは、-NH-,-S-,-NH-C(O)-O-,-NH-C(O)-S-,-NH-C(O)-NH-,-C(O)-S-,-C(O)-O-,-CH(OH)-CH
2-S-,又は-CH(OH)-CH
2-O-のいずれかの基を表し、
R
2は、C
7~C
30の直鎖または分岐鎖のアルキレン基で、-S-,-NH-,-NR
4-(R
4はアルキレン基を示す),-CH
2-C
6H
4-(C
6H
4はフェニレン基を示す),-C(O)-O-,又は-O-のいずれかの基を含み得、
R
3はC
1~C
6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、
R
1はC
1~C
16の直鎖または分岐鎖のアルキル基、フェニル基またはハロゲン原子を表し
nが0のときには少なくとも1以上のハロゲン原子がSiに結合する。
なお、aは1~6,nは0~3である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の製造方法および、そのシランカップリング剤により表面改質された無機充填材を含む歯科用硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤は工業分野や医科歯科分野などで幅広く使用されている。それらの目的としては、ラジカル重合性モノマーと充填材の親和性を高め材料の機械的強度向上を得るためである。
【0003】
材料の耐久性や無機充填材の充填率向上を目的とした先行技術として、アルキル鎖の長いシランカップリング剤使用する方法(特許文献1、2)、フルオロアルキレン基を有するシランカップリング剤使用する方法(特許文献3)、重合性基を数多く有するシランカップリング剤使用する方法(特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-134307号
【文献】特開平3-70778号
【文献】特開2007-238567号
【文献】特開2010-229054号
【文献】特公平6-33290号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~特許文献4に記載のラジカル重合性基を有するシランカップリング剤は、溶解性貴金属触媒を用いているためシランカップリング剤に貴金属触媒が残存する。よって、貴金属触媒が残存するために合成したシランカップリング剤やそのシランカップリング剤を用いて表面改質した無機充填材を含む歯科用硬化性組成物は経時的に黄変する問題が存在した。また、特許文献5の薄膜蒸留によるシランカップリング剤の精製では分子量に限界があった。また、薄膜蒸留可能な分子量であっても、薄膜蒸留には多大のエネルギーを必要とするため、製造コストを押し上げていた。
【0006】
本発明は、ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成過程において、ヒドロシリル化のために溶解性の貴金属触媒を用いる事なく合成する製造方法および、そのシランカップリング剤により表面改質された無機充填材を含む歯科用硬化性組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者等の鋭意検討の結果、シランカップリング剤の合成時におけるヒドロシリル化反応時に溶解性貴金属錯体を用いず、不均一触媒であるシラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒を用いる事で、合成時にゲル化が生じず、貴金属を含有することが無く、経時的に黄変することないシランカップリング剤の合成を可能とした。
【発明の効果】
【0008】
シランカップリング剤の合成におけるヒドロシリル化反応時に溶解性貴金属錯体を用いず、不均一触媒であるシラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒を用いる事で、合成時にゲル化が生じず、貴金属を含有することが無く、経時的に黄変することないシランカップリング剤の合成が可能となった。この不均一触媒であるシラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒は合成後に濾過や遠心分離などで容易にシランカップリング剤から単離出来る。更に、マイクロリアクターを用いた連続合成では、流路内に本発明のシラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒充填カラムを用いる事で、連続的にかつ濾過や遠心分離などを必要としない合成が可能となった。また、そのシランカップリング剤を用いて無機充填材を表面改質することで、経時的に黄変する事がない歯科用硬化性組成物の製造が可能となった。更に、ヒドロシリル化反応時に貴金属担持触媒表面にシラノール基が存在しないため、シラノール基と不飽和結合との副反応によるゲル化が生じず、化学量論的に安定的なヒドロシリル化反応が進行する大きな特徴を有する。
【0009】
さらに、分子内構造に‐NH‐,‐S‐,‐NH‐C(O)‐O‐,‐NH‐C(O)‐S‐,‐NH‐C(O)‐NH‐,‐C(O)‐S‐,‐CH(OH)‐CH2‐S‐,‐CH(OH)‐CH2‐O‐基などの極性接続基を有するシランカップリング剤とすることで、ラジカル重合性モノマーに対する高い親和性および高疎水性を与え、歯科用硬化性組成物に用いた場合、高い機械的強度及び耐久性が得られた。すなわち、前述した化学構造を有するシランカップリング剤で表面改質された無機充填材はラジカル重合性モノマーに対する高い親和性および高疎水性が得られたため、製造した歯科用硬化性組成物の硬化体は高い機械的強度及び耐久性が得られた。
【0010】
本発明の製造方法により製造したシランカップリング剤にて無機充填材を表面改質することで、ラジカル重合性モノマーに対する高親和性を発現し、その結果として歯科用硬化性組成物に高い機械的強度及び耐久性を与える。また、その高親和性により、表面改質された無機充填材を歯科用硬化性組成物に高濃度で充填する事が可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における、ヒドロシリル化を必要とするラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の製造方法は、最終的に貴金属成分が残存しないことを特徴とする。より詳しくは、ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤のヒドロシリル化反応において、不均一触媒であるシラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒を用いることを特徴とする。具体的には、ヒドロシリル化を必要とするラジカル重合性基を有するシランカップリング剤を合成する際、目的とするシランカップリング剤の構造に応じて、任意の合成方法でラジカル重合性基および不飽和二重結合を両末端に有する化合物を合成する。その後、トリエトキシシラン等のシラン化合物を用いてヒドロシリル化反応を行う。ヒドロシリル化反応の際にシラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒を系中に添加し、最終的には貴金属担持触媒を濾過および/または遠心分離で除去する事が好ましい。エンド合成後のシランカップリング剤に残存している貴金属成分の量については、ICP分析で容易に測定することができる。
【0012】
ヒドロシリル化反応はシラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒が封入されたカラム、反応容器、もしくはマイクロフローリアクター内で行う事が好ましい。
【0013】
本発明においてラジカル重合性基を有するシランカップリング剤合成時のヒドロシリル化反応に用いる不均一触媒であるシラノール基がエンドキャッピングされた母材となる貴金属担持触媒としては、シリカ担持白金、シリカ担持パラジウム、シリカ担持ルテニウム、シリカ担持ロジウム、シリカ担持オスミウム、シリカ担持イリジウム等が挙げられる。これらの中で好ましくは、シリカ担持白金、シリカ担持パラジウム、シリカ担持ルテニウムであり、より好ましくは、シリカ担持白金、シリカ担持パラジウムであり、さらに好ましくは、シリカ担持白金である。
【0014】
本発明におけるシラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持触媒の添加量は任意であるが、例えば白金族担持触媒の場合は、担持する粒子の表面積により異なるが、ヒドロシリル化を行う不飽和二重結合を有する化合物に対して、モル等量で100ppm~3%の白金族が担持されているのが好ましい。
【0015】
本発明において、ヒドロシリル化を行う際に溶媒を添加してもよい。生成するシランカップリング剤の粘性が高い場合には溶媒を用いることが好ましいが、基質と反応性がなく、原料物質と生成物を溶かすものであれば何でも良い。
【0016】
本発明の製造方法により製造されたラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の分子構造を[化1]に示す。
【0017】
【0018】
具体的に例示すると、Aは、H2C=CH‐,H2C=C(CH3)‐,H2C=CH‐C6H4‐基を表し(C6H4はフェニレン基を示す)、Bは、‐C(O)‐O‐,‐C(O)‐S‐,‐C(O)‐NH‐,‐NH‐C(O)‐NH‐,‐NH‐C(O)‐S‐,‐NH‐C(O)‐O‐基を表し、Zは、C1‐C30の直鎖または分岐鎖のアルキレン基および/またはエチレンオキサイド基を表し、Yは、‐NH‐,‐S‐,‐NH‐C(O)‐O‐,‐NH‐C(O)‐S‐,‐NH‐C(O)‐NH‐,‐C(O)‐S‐,‐C(O)‐O‐,‐CH(OH)‐CH2‐S‐,‐CH(OH)‐CH2‐O‐基を表し、R2は、C7~C30の直鎖または分岐鎖のアルキレン基で、‐S‐,‐NH‐,‐NR4‐(R4はアルキレン基を示す),‐CH2‐C6H4‐(C6H4はフェニレン基を示す),‐C(O)‐O‐,‐O‐基を含み得、R3はC1~C6の直鎖または分岐鎖のアルキル基を表し、R1はC1~C16の直鎖または分岐鎖のアルキル基、フェニル基またはハロゲン原子を表し、nが0のときには少なくとも1以上のハロゲン原子がSiに結合する。なお、aは1~6,nは0~3である。ここでAは、H2C=CH‐,H2C=C(CH3)‐,H2C=CH‐C6H4‐基から選ばれる基であるが、有機合成上の容易さから好ましくはH2C=CH‐,H2C=C(CH3)‐基である。Bは、‐C(O)‐O‐,‐C(O)‐S‐,‐C(O)‐NH‐,‐NH‐C(O)‐NH‐,‐NH‐C(O)‐S‐,‐NH‐C(O)‐O‐基から選ばれる基であるが、有機合成上の容易さから好ましくは‐C(O)‐O‐,‐C(O)‐S‐,‐NH‐C(O)‐S‐,‐NH‐C(O)‐O‐基である。
【0019】
以下に代表的な化合物の化学構造を記載する。
【0020】
【0021】
【0022】
本発明の製造方法により製造されたシランカップリング剤で表面処理する無機充填材は特に限定されず、具体的に例示すると、二酸化珪素、アルミナ、シリカ-チタニア、シリカ-チタニア-酸化バリウム、シリカ-ジルコニア、シリカ-アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラス等が挙げられる。特に歯科用グラスアイオノマーセメントやレジン強化型グラスアイオノマーセメントおよびレジンセメント等に使用されているフルオロアルミノケイ酸バリウムガラス、フルオロアルミノケイ酸ストロンチウムガラス、フルオロアルミノケイ酸ガラス等が好適に使用できる。ここで言うフルオロアルミノケイ酸ガラスとは、酸化珪素および酸化アルミニウムを基本骨格とし、非架橋性酸素導入のためのアルカリ金属を含む。さらに修飾・配位イオンとしてストロンチウムを含むアルカリ土類金属およびフッ素を有する。また、更にX線不透過性を付与するためにランタノイド系列の元素を骨格に組み込むことができる。このランタノイド系列元素は組成域により修飾・配位イオンとしても働くことができる。
【0023】
これらの無機充填材は、1種または複数の組み合わせで用いても良い。前記無機充填材の平均粒子径は0.001~100μmであることが好ましく、より好ましくは0.001~10μmである。さらに、無機充填材の形状は球状あるいは不定形状の何れでもよい。また、本発明の製造方法により製造されたシランカップリング剤の処理濃度は、無機充填材のシラノール基密度(mol/g)にもよるが、一般的にはシラノール基密度の等倍から10倍が好ましい。等倍より低い処理では十分にシランカップリング剤を導入出来ず、また、10倍を超えた場合にはシランカップリング剤のみの縮合物が生成し、機械的強度に影響を与えるために好ましくない。本発明の製造方法により製造したシランカップリング剤で処理された無機充填材の充填量は特に制限はないが、好ましくは25~90重量%の範囲内である。25重量%未満である場合には、硬化物の機械的(物理的)強度が低いため好ましくない。また、90重量%を越える場合は調製したペーストの粘性が高すぎるため臨床上の操作性が悪く好ましくない。
【0024】
本発明の歯科用硬化性組成物に用いられるラジカル重合性モノマーは歯科分野で用いられている物を何ら制限なく用いる事が出来るが、その分子骨格にウレタン結合を有することが好ましい。ウレタン結合(‐NH‐C(O)‐O‐)は本発明の製造方法により製造されたシランカップリング剤と効果的に水素結合を形成するためである。具体的に例示すると、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートと2‐ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)とのウレタン反応により合成される7,7,9‐トリメチル‐4,13‐ジオキソ‐3,14‐ジオキサ‐5,12‐ジアザヘキサデカン‐1,16‐ジイルジメタクリレート(UDMA)や、HEMAやHEAと2,4‐トルイレンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートまたはヘキサメチレンジイソシアネートの各々とのウレタン反応により合成されるラジカル重合性モノマー類や、脂肪族および/または芳香族ジイソシアネートとグリセロール(メタ)クリレートや3‐メタクリロール‐2‐ヒドロキシプロピルエステルとの反応によって得られるウレタンジアクリレート類や、1,3‐ビス(2‐イソシアナート,2‐プロピル)ベンゼンとヒドロキシ基を有する化合物とのウレタン反応物等が挙げられる。より具体的には、2,7,7,9,15‐ペンタメチル‐4,13‐ジオキソ‐3,14‐ジオキサ‐5,12‐ジアザヘキサデカン‐1,16‐ジイルジアクリレート、2,7,7,9,15‐ペンタメチル‐4,13‐18‐トリオキソ‐3,14,17‐トリオキサ‐5,12‐ジアザイコス‐19‐エニルメタクリレート、2,8,10,10,15‐ペンタメチル‐4,13,18‐トリオキソ‐3,14,17‐トリオキサ‐5,12‐ジアザイコス‐19‐エニルメタクリレート、2,7,7,9,15‐ペンタメチル‐4,13‐ジオキソ‐3,14‐ジオキサ‐5,12‐ジアザヘキサデカン‐1,16‐ジイルビス(2‐メチルアクリレート)、2,2’‐(シクロヘキサン‐1,2‐ジイルビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐((2‐(((1‐(アクリロイロキシ)プロパン-2-イルオキシ)カルボニルアミノ)メチル)シクロヘキシル)メチルカルバモイロキシ)プロピルメタクリレート、2,2’‐(シクロヘキサン‐1,2‐ジイルビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、2,2’‐(ビシクロ[4.1.0]ヘプタン‐3,4‐ジイルビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐((4‐(((1‐(アクリロイロキシ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)メチル)ビシクロ[4.1.0]ヘプタン‐3‐イル)メチルカルバモイロキシ)プロピルメタクリレート、2,2’‐(ビシクロ[4.1.0]ヘプタン‐3,4‐ジイルビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、7,7,9‐トリメチル‐4,13‐ジオキソ‐3,14‐ジオキサ‐5,12‐ジアザヘキサデカン‐1,16‐ジイルジアクリレート、7,7,9‐トリメチル‐4,13,18‐トリオキソ‐3,14,17‐トリオキサ‐5,12‐ジアザイコス‐19‐エニルメタクリレート、8,10,10‐トリメチル‐4,13,18‐トリオキソ3,14,17‐トリオキサ‐5,12‐ジアザイコス‐19‐エニルメタクリレート、7,7,9‐トリメチル‐4,13‐ジオキソ‐3,14‐ジオキサ‐5,12‐ジアザヘキサデカン‐1,16‐ジイルビス(2‐メチルアクリレート)、4,13‐ジオキソ‐3,14‐ジオキサ‐5,12‐ジアザヘキサデカン‐1,16‐ジイルジアクリレート、4,13,18‐トリオキソ‐3,14,17‐トリオキサ‐5,12‐ジアザイコス‐19‐エニルメタクリレート、4,13‐ジオキソ‐3,14‐ジオキサ‐5,12‐ジアザヘキサデカン‐1,16‐ジイルビス(2‐メチルアクリレート)、2‐(1‐(2‐((2‐(アクリロイロキシ)エトキシ)カルボニルアミノ)‐4,4‐ジメチルシクロヘキシル)エチルカルバモイロキシ)エチルメタクリレート、2‐(1‐(2‐((2‐(アクリロイロキシ)エトキシ)カルボニルアミノ)エチル)‐5,5‐ジメチルシクロヘキシルカルバモイロキシ)エチルメタクリレート、2‐(2‐(((1‐(メタクリロイロキシ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)メチル)‐2,5,5‐トリメチルシクロヘキシルカルバモイロキシ)プロパン‐1,3‐ジイルビス(2‐メチルアクリレート)、2‐(2‐(((1‐(メタクリロイロキシ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)メチル)‐2,5,5‐トリメチルシクロヘキシルカルバモイロキシ)プロパン‐1,3‐ジイルジアクリレート、2‐(2‐(((1‐(アクリロイロキシ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)メチル)‐2,5,5‐トリメチルシクロヘキシルカルバモイロキシ)プロパン‐1,3‐ジイルビス(2‐メチルアクリレート)、3‐(15‐(2‐(アクリロイロキシ)エチル)‐3,12,19‐トリオキソ‐2,13,18‐トリオキサ‐4,11‐ジアザヘニコス‐20‐エニル)ペンタン‐1,5‐ジイルジアクリレート、3‐(15‐(2‐(アクリロイロキシ)エチル)‐3,12,19‐トリオキソ‐2,13,18‐トリオキサ‐4,11‐ジアザヘニコス‐20‐エニル)ペンタン‐1,5‐ジイルビス(2‐メチルアクリレート)、2,2’‐(シクリヘキサン‐1,2‐ジイルビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(エタン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐((2‐(((2‐(アクリロイロキシ)エトキシ)カルボニルアミノ)メチル)シクロヘキシル)メチルカルバモイロキシ)エチルメタクリレート、2,2’‐(シクリヘキサン‐1,2‐ジイルビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(エタン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、2,15‐ビス(シクロヘキシルオキシメチル)‐4,13‐ジオキソ‐3,14‐ジオキサ‐5,12‐ジアザヘキサデカン‐1,16‐ジイルジアクリレート、2,15‐ビス(シクロヘキシルオキシメチル)‐4,13‐ジオキソ‐3,14‐ジオキサ‐5,12‐ジアザヘキサデカン‐1,16‐ジイルビス(2‐メチルアクリレート)、2,15‐ビス(シクロヘキシルオキシメチル)‐4,13,18‐トリオキソ‐3,14,17‐トリオキサ‐5,12‐ジアザイコス‐19‐エニルメタクリレート、1,18‐ビス(シクロヘキシルオキシ)‐5,14‐ジオキソ‐4,15‐ジオキサ‐6,13‐ジアザオクタデカン‐2,17‐ジイルジアクリレート、1‐(シクロヘキシルオキシ)‐17‐(シクロヘキシルオキシメチル)‐5,14,19‐トリオキソ‐4,15,18‐トリオキサ‐6,13‐ジアザヘニコス‐20‐エン‐2‐イルメタクリレート、1,18‐ビス(シクロヘキシルオキシ)‐5,14‐ジオキソ‐4,15‐ジオキサ‐6,13‐ジアザオクタデカン‐2,17‐ジイルビス(2‐メチルアクリレート)、7,7,9‐トリメチル‐4,13‐ジオキソ‐3,14‐ジオキサ‐5,12‐ジアザヘキサデカン‐1,16‐ジイルビス(2‐メチルアクリレート)、7,7,9‐トリメチル‐4,13‐ジオキソ‐3,14‐ジオキサ‐5,12‐ジアザヘキサデカン‐1,16‐ジイルジアクリレート、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(エタン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メタクリレート)、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(エタン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(3‐(((2‐(アクリロイロキシ)エトキシ)カルボニルアミノ)メチル)ベンジルカルバモイロキシ)エチル メタクリレート、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(メチルアザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(エタン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メタクリレート)、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(メチルアザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(エタン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐((3‐((((2‐(アクリロイロキシ)エトキシ)カルボニル)(メチル)アミノ)メチル)ベンジル)(メチル)カルバモイロキシ)エチル メタクリレート、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート),2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(3‐(((2‐(アクリロイロキシ)エトキシ)カルボニルアミノ)メチル)ベンジルカルバモイロキシ)プロピル メタクリレート、2‐(3‐(((1‐(アクリロイロキシ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)メチル)ベンジルカルバモイロキシ)エチル メタクリレート、4,4’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビスオキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(4,1‐フェニレン)ビス(2‐メチルアクリレート)、4,4’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビスオキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(4,1‐フェニレン)ジアクリレート、4‐(3‐(((4‐(アクリロキシ)フェノキシ)カルボニルアミノ)メチル)ベンジルカルバモイロキシ)フェニル メタクリレート、4,4’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(ブタン‐4,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、4,4’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(ブタン‐4,1‐ジイル)ジアクリレート、4‐(3‐(((4‐(アクリロイロキシ)ブトキシ)カルボニルアミノ)メチル)ベンジルカルバモイロキシ)ブチル メタクリレート、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐フェノキシプロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐フェノキシプロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(3‐(((1‐(アクリロイロキシ)‐3‐フェノキシプロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)メチル)ベンジルカルバモイロキシ)‐3‐フェノキシプロピル メタクリレート、2‐2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(フェニルアミノ)プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、2‐2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(フェニルアミノ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(3‐(((1‐(アクリロイロキシ)‐3‐(フェニルアミノ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)メチル)ベンジルカルバモイロキシ)‐3‐(フェニルアミノ)プロピル メタクリレート、2,2’‐(1,3フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(フェニルチオ)プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、2,2’‐(1,3フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(フェニルチオ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(3‐(((1‐(アクリロキシ)‐3‐(フェニルチオ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)メチル)ベンジルカルバモイロキシ)‐3‐(フェニルチオ)プロピル メタクリレート、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(ベンジルオキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(ベンジルオキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(3‐(((1‐(アクリロイロキシ)‐3‐(ベンジルオキシ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)メチル)ベンジルカルバモイロキシ)‐3‐(ベンジルオキシ)プロピル メタクリレート、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(メタアクリロイロキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジベンゾエート、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(アクリロイロキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジベンゾエート、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(2‐フェニルアセトキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、2,2’‐(1,3‐フェニレンビス(メチレン))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(2‐フェニルアセトキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(3‐(((1‐(アクリロイロキシ)‐3‐(2‐フェニルアセトキシ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)メチル)ベンジルカルバモイロキシ)‐3‐(2‐フェニルアセトキシ)プロピル メタクリレート2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2.2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(エタン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メタクリレート)、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2.2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(エタン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(2‐(3‐(2‐((2‐(アクリロイルオキシ)エトキシ)カルボニルアミノ)プロパン‐2‐イル)フェニル)プロパン‐2‐イルカルバモイルオキシ)エチルメタクリレート、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(メチルアザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(エタン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メタクリレート)、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(メチルアザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(エタン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐((2‐(3‐(2‐(((2‐(アクリロイロキシ)エトキシ)カルボニル)(メチル)アミノ)プロパン‐2‐イル)フェニル)プロパン‐2‐イル)(メチル)カルバモイルキシ)エチル メタクリレート、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(2‐(3‐(2‐((2‐(アクリロイロキシ)エトキシ)カルボニルアミノ)プロパン‐2‐イル)フェニル)プロパン‐2‐イルカルバモイルキシ)プロピルメタクリレート、2‐(2‐(3‐(2‐((1‐(アクリロイロキシ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)プロパン‐2‐イルカルバモイルキシ)エチル メタクリレート、4,4’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(4,1‐フェニレン)ビス(2‐メチルアクリレート)、4,4’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(4,1‐フェニレン)ジアクリレート、4‐(2‐(3‐(2‐((4‐(アクリロイロキシ)フェノキシ)カルボニルアミノ)プロパン‐2‐イル)フェニル)プロパン‐2‐イルカルバモイルキシ)フェニルメタクリレート、4,4’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(ブタン‐4,1‐ジイル)ビス(2‐メタクリレート)、4,4’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(ブタン‐4,1‐ジイル)ジアクリレート、4‐(2‐(3‐(2‐((4‐アクリロイロキシ)ブトキシ)カルボニルアミノ)プロパン‐2‐イル)フェニル)プロパン‐2‐イルカルバモイルキシ)ブチルメタクリレート、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐フェノキシプロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メタクリレート)、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐フェノキシプロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(2‐(3‐(2‐((1‐(アクリロイロキシ)‐3‐フェノキシプロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)プロパン‐2‐イル)フェニル)プロパン‐2‐イルカルバモイルキシ)‐3‐フェノキシプロピル メタクリレート、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(フェニルアミノ)プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メタクリレート)、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(フェニルアミノ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(2‐(3‐(2‐((1‐(アクリロイロキシ)‐3‐(フェニルアミノ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)プロパン‐2‐イル)フェニル)プロパン‐2‐イルカルバモイロキシ)‐3‐(フェニルアミノ)プロピル メタクリレート、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(フェニルチオ)プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(フェニルチオ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(2‐(3‐(2‐((1‐(アクリロイロキシ)‐3‐(フェニルチオ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)プロパン‐2‐イル)フェニル)プロパン‐2‐イルカルバモイロキシ)‐3‐(フェニルチオ)プロピル メタクリレート、2‐2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(3‐(ベンジロキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メチルアクリレート)、2‐2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(3‐(ベンジロキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(2‐(3‐(2‐((1‐(アクリロイロキシ)‐3‐(ベンジルオキシ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)プロパン‐2‐イル)フェニル)プロパン‐2‐イルカルバモイロキシ)‐3‐(ベンジルオキシ)プロピル メタクリレート、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(メタクリロイロキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジベンゾエート、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(アクリロイロキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジベンゾエート、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(2‐フェニルアセトキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ビス(2‐メタクリレート)、2,2’‐(2,2’‐(1,3‐フェニレン)ビス(プロパン‐2,2‐ジイル))ビス(アザンジイル)ビス(オキソメチレン)ビス(オキシ)ビス(3‐(2‐フェニルアセトキシ)プロパン‐2,1‐ジイル)ジアクリレート、2‐(2‐(3‐(2‐((1‐(アクリロイロキシ)‐3‐(2‐フェニルアセトキシ)プロパン‐2‐イルオキシ)カルボニルアミノ)プロパン‐2‐イル)フェニル)プロパン‐2‐イルカルバモイロキシ)‐3‐(2‐フェニルアセトキシ)プロピル メタクリレートなどが挙げられる。
【0025】
本発明の歯科用硬化性組成物に含まれる重合開始剤としては、工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられている重合開始剤が好ましく用いられる。特に、光重合及び化学重合の重合開始剤を、単独又は2種以上適宜組み合わせて使用される。以下具体的には、本発明の歯科用硬化性組成物に含まれる重合開始剤のうち光重合開始剤としては、(ビス)アシルホスフィンオキサイド類、水溶性アシルホスフィンオキサイド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α-ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物類、α-アミノケトン系化合物などが挙げられる。また、それらの割合はラジカル重合性モノマーに対し、0.5wt%~5wt%が好ましい。0.5wt%より低い濃度では未重合のラジカル重合性モノマーが多くなるため機械的強度が低下する。また、5wt%より高い濃度では重合度が低下し、機械的強度が低下するためである。
【0026】
光重合開始剤として用いられるアシルフォスフィンオキサイド類を具体的に例示すると、例えば、2,4,6‐トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6‐ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6‐ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6‐トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6‐トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6‐テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイルジ-(2,6‐ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。ビスアシルフォスフィンオキサイド類としては、ビス-(2,6‐ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6‐ジクロロベンゾイル)‐2,5‐ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6‐ジクロロベンゾイル)‐4‐プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6‐ジクロロベンゾイル)‐1‐ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6‐ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6‐ジメトキシベンゾイル)‐2,4,4‐トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6‐ジメトキシベンゾイル)‐2,5‐ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6‐トリメチルベンゾイル)‐2,4,4‐トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0027】
光重合開始剤として用いられるチオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩を具体的に例示すると、例えば、チオキサントン、2‐クロルチオキサンセン‐9‐オン、2‐ヒドロキシ‐3‐(9‐オキシ‐9H‐チオキサンテン‐4‐イルオキシ)‐N,N,N‐トリメチル‐プロパンアミニウムクロライド、2‐ヒドロキシ‐3‐(1‐メチル‐9‐オキシ‐9H‐チオキサンテン‐4‐イルオキシ)‐N,N,N‐トリメチル‐プロパンアミニウムクロライド、2‐ヒドロキシ‐3‐(9‐オキソ‐9H‐チオキサンテン‐2‐イルオキシ)‐N,N,N‐トリメチル‐プロパンアミニウムクロライド、2‐ヒドロキシ‐3‐(3,4‐ジメチル‐9‐オキソ‐9H‐チオキサンテン‐2‐イルオキシ)‐N,N,N‐トリメチル‐1‐プロパンアミニウムクロライド、2‐ヒドロキシ‐3‐(3,4‐ジメチル‐9H‐チオキサンテン‐2‐イルオキシ)‐N,N,N‐トリメチル‐1‐プロパンアミニウムクロライド、2‐ヒドロキシ‐3‐(1,3,4‐トリメチル‐9‐オキソ‐9H‐チオキサンテン‐2‐イルオキシ)‐N,N,N‐トリメチル‐1‐プロパンアミニウムクロライドなどが挙げられる。
【0028】
光重合開始剤として用いられるα-ジケトン類を具体的に例示すると、例えば、ジアセチル、ジベンジル、カンファーキノン、2,3‐ペンタジオン、2,3‐オクタジオン、9,10‐フェナンスレンキノン、4,4’‐オキシベンジル、アセナフテンキノン等が挙げられる。
【0029】
光重合開始剤として用いられるクマリン化合物を具体的に例示すると、例えば、3,3’‐カルボニルビス(7‐ジエチルアミノ)クマリン、3‐(4‐メトキシベンゾイル)クマリン、3‐チェノイルクマリン、3‐ベンゾイル‐5,7‐ジメトキシクマリン、3‐ベンゾイル‐7‐メトキシクマリン、3‐ベンゾイル‐6‐メトキシクマリン、3‐ベンゾイル‐8‐メトキシクマリン、3‐ベンゾイルクマリン、7‐メトキシ‐3‐(p‐ニトロベンゾイル)クマリン、3‐(p‐ニトロベンゾイル)クマリン、3‐ベンゾイル‐8‐メトキシクマリン、3,5‐カルボニルビス(7‐メトキシクマリン)、3‐ベンゾイル‐6‐ブロモクマリン、3,3’‐カルボニルビスクマリン、3‐ベンゾイル‐7‐ジメチルアミノクマリン、3‐ベンゾイルベンゾ[f]クマリン、3‐カルボキシクマリン、3‐カルボキシ‐7‐メトキシクマリン、3‐エトキシカルボニル‐6‐メトキシクマリン、3‐エトキシカルボニル‐8‐メトキシクマリン、3‐アセチルベンゾ[f]クマリン、7‐メトキシ‐3‐(p‐ニトロベンゾイル)クマリン、3‐(p‐ニトロベンゾイル)クマリン、3‐ベンゾイル‐8‐メトキシクマリン、3‐ベンゾイル‐6‐ニトロクマリン‐3‐ベンゾイル‐7‐ジエチルアミノクマリン、7‐ジメチルアミノ‐3‐(4‐メトキシベンゾイル)クマリン、7‐ジエチルアミノ‐3‐(4‐メトキシベンゾイル)クマリン、7‐ジエチルアミノ‐3‐(4‐ジエチルアミノ)クマリン、7‐メトキシ‐3‐(4‐メトキシベンゾイル)クマリン、3‐(4‐ニトロベンゾイル)ベンゾ[f]クマリン、3‐(4‐エトキシシンナモイル)‐7‐メトキシクマリン、3‐(4‐ジメチルアミノシンナモイル)クマリン、3‐(4‐ジフェニルアミノシンナモイル)クマリン、3‐[(3‐ジメチルベンゾチアゾール‐2‐イリデン)アセチル]クマリン、3‐[(1‐メチルナフト[1,2‐d]チアゾール‐2‐イリデン)アセチル]クマリン、3,3’‐カルボニルビス(6‐メトキシクマリン)、3,3’‐カルボニルビス(7‐アセトキシクマリン)、3,3’‐カルボニルビス(7‐ジメチルアミノクマリン)、3‐(2‐ベンゾチアゾイル)‐7‐(ジエチルアミノ)クマリン、3‐(2‐ベンゾチアゾイル)‐7‐(ジブチルアミノ)クマリン、3‐(2‐ベンゾイミダゾイル)‐7‐(ジエチルアミノ)クマリン、3‐(2‐ベンゾチアゾイル)‐7‐(ジオクチルアミノ)クマリン、3‐アセチル‐7‐(ジメチルアミノ)クマリン、3,3’‐カルボニルビス(7‐ジブチルアミノクマリン)、3,3’‐カルボニル‐7‐ジエチルアミノクマリン‐7’‐ビス(ブトキシエチル)アミノクマリン、10‐[3‐[4‐(ジメチルアミノ)フェニル]‐1‐オキソ‐2‐プロペニル]‐2,3,6,7‐1,1,7,7‐テトラメチル1H,5H,11H‐[1]ベンゾピラノ[6,7,8‐ij]キノリジン‐11‐オン、10‐(2‐ベンゾチアゾイル)‐2,3,6,7‐テトラヒドロ‐1,1,7,7‐テトラメチル1H,5H,11H‐[1]ベンゾピラノ[6,7,8‐ij]キノリジン‐11‐オン等の化合物などが挙げられる。
【0030】
クマリン化合物の中でも、特に、3,3’‐カルボニルビス(7‐ジエチルアミノクマリン)及び3,3’‐カルボニルビス(7‐ジブチルアミノクマリン)が好適である。
【0031】
光重合開始剤として用いられるアントラキノン類を具体的に例示すると、例えば、アントラキノン、1‐クロロアントラキノン、2‐クロロアントラキノン、1‐ブロモアントラキノン、1,2‐ベンズアントラキノン、1‐メチルアントラキノン、2‐エチルアントラキノン、1‐ヒドロキシアントラキノンなどが挙げられる。
【0032】
光重合開始剤として用いられるベンゾインアルキルエーテル類を具体的に例示すると、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどが挙げられる。
【0033】
光重合開始剤として用いられるα-アミノケトン類を具体的に例示すると、例えば、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルフォリノプロパン‐1‐オンなどが挙げられる。
【0034】
光重合開始剤の中でも、(ビス)アシルフォスフィンオキサイド類及びその塩、α-ジケトン類、及びクマリン化合物からなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。これにより、可視及び近紫外領域での光硬化性に優れ、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、キセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示す組成物が得られる。
【0035】
本発明の歯科用硬化性組成物に含まれる重合開始剤のうち化学重合開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。上記の化学重合開始剤に使用される有機過酸化物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートなどが挙げられる。
【0036】
化学重合開始剤として用いられるケトンパーオキサイドを具体的に例示すると、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド及びシクロヘキサノンパーオキサイドなどが挙げられる。
【0037】
化学重合開始剤として用いられるハイドロパーオキサイドを具体的に例示すると、例えば、2,5‐ジメチルヘキサン‐2,5‐ジハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t‐ブチルハイドロパーオキサイド及び1,1,3,3‐テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。
【0038】
化学重合開始剤として用いられるジアシルパーオキサイドを具体的に例示すると、例えば、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、3,5,5‐トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、2,4‐ジクロロベンゾイルパーオキサイド及びラウロイルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0039】
化学重合開始剤として用いられるジアルキルパーオキサイドを具体的に例示すると、例えば、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t‐ブチルクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3‐ビス(t‐ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン及び2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)‐3‐ヘキシンなどが挙げられる。
【0040】
化学重合開始剤として用いられるパーオキシケタールを具体的に例示すると、例えば、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)ブタン、2,2‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)オクタン及び4,4‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)バレリックアシッド‐n‐ブチルエステルなどが挙げられる。
【0041】
化学重合開始剤として用いられるパーオキシエステルを具体的に例示すると、例えば、α‐クミルパーオキシネオデカノエート、t‐ブチルパーオキシネオデカノエート、t‐ブチルパーオキシピバレート、2,2,4‐トリメチルペンチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐アミルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシ‐2‐エチルヘキサノエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシイソフタレート、ジ‐t‐ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタラート、t‐ブチルパーオキシ‐3,3,5‐トリメチルヘキサノエート、t‐チルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート及びt‐ブチルパーオキシマレリックアシッドなどが挙げられる。
【0042】
化学重合開始剤として用いられるパーオキシジカーボネートを具体的に例示すると、例えば、ジ‐3‐メトキシパーオキシジカーボネート、ジ‐2‐エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4‐t‐ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ‐n‐プロピルパーオキシジカーボネート、ジ‐2‐エトキシエチルパーオキシジカーボネート及びジアリルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。
【0043】
有機過酸化物の中でも、安全性、保存安定性及びラジカル生成能力の総合的なバランスから、ジアシルパーオキサイドが好ましく用いられ、その中でもベンゾイルパーオキサイドが特に好ましく用いられる。
【0044】
重合促進剤を具体的に例示すると、例えば、アミン類、スルフィン酸及びその塩、ボレート化合物、バルビツール酸誘導体、トリアジン化合物、銅化合物、スズ化合物、バナジウム化合物、ハロゲン化合物、アルデヒド類、チオール化合物などが挙げられる。
【0045】
重合促進剤として用いられるアミン類は、脂肪族アミン及び芳香族アミンに分けられる。脂肪族アミンを具体的に例示すると、例えば、n‐ブチルアミン、n‐ヘキシルアミン、n‐オクチルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、N‐メチルジエタノールアミン等の第2級脂肪族アミン;N‐メチルエタノールアミン、N‐エチルジエタノールアミン、N‐n‐ブチルジエタノールアミン、N‐ラウリルジエタノールアミン、2‐(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、N‐メチルジエタノールアミンジメタクリレート、N‐エチルジエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミンモノメタクリレート、トリエタノールアミンジメタクリレート、トリエタノールアミントリメタクリレート、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の第3級脂肪族アミンなどが挙げられる。これらの中でも、組成物の硬化性及び保存安定性の観点から、第3級脂肪族アミンが好ましく、その中でもN‐メチルジエタノールアミン及びトリエタノールアミンがより好ましく用いられる。
【0046】
芳香族アミンを具体的に例示すると、例えば、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐3,5‐ジメチルアニリン、N,N‐ジ(2‐ヒドロキシエチル)‐p‐トルイジン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐3,4‐ジメチルアニリン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐4‐エチルアニリン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐4‐イソプロピルアニリン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐4‐t‐ブチルアニリン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐3,5‐ジ‐イソプロピルアニリン、N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)‐3,5‐ジ‐t‐ブチルアニリン、N,N‐ジメチルアニリン、N,N‐ジメチル‐p‐トルイジン、N,N‐ジメチル‐m‐トルイジン、N,N‐ジエチル‐p‐トルイジン、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルアニリン、N,N‐ジメチル‐3,4‐ジメチルアニリン、N,N‐ジメチル‐4‐エチルアニリン、N,N‐ジメチル‐4‐イソプロピルアニリン、N,N‐ジメチル‐4‐t‐ブチルアニリン、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジ‐t‐ブチルアニリン、4‐N,N‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、4‐N,N‐ジメチルアミノ安息香酸メチルエステル、N,N‐ジメチルアミノ安息香酸‐n‐ブトキシエチルエステル、4‐N,N‐ジメチルアミノ安息香酸‐2‐(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、4‐N,N‐ジメチルアミノベンゾフェノン、4‐ジメチルアミノ安息香酸ブチル等が挙げられる。これらの中でも、組成物に優れた硬化性を付与できる観点から、N,N‐ジ(2‐ヒドロキシエチル)‐p‐トルイジン、4‐N,N‐ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N‐ジメチルアミノ安息香酸‐n‐ブトキシエチルエステル及び4‐N,N‐ジメチルアミノベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0047】
重合促進剤として用いられるスルフィン酸及びその塩を具体的に例示すると、例えば、p‐トルエンスルフィン酸、p‐トルエンスルフィン酸ナトリウム、p‐トルエンスルフィン酸カリウム、p‐トルエンスルフィン酸リチウム、p‐トルエンスルフィン酸カルシウム、ベンゼンスルフィン酸、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸カリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、ベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6‐トリメチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6‐トリメチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6‐トリメチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6‐トリメチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6‐トリメチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6‐トリエチルベンゼンスルフィン酸、2,4,6‐トリエチルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6‐トリエチルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6‐トリエチルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6‐トリエチルベンゼンスルフィン酸カルシウム、2,4,6‐トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸、2,4,6‐トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6‐トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カリウム、2,4,6‐トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸リチウム、2,4,6‐トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸カルシウム等が挙げられ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、p‐トルエンスルフィン酸ナトリウム、2,4,6‐トリイソプロピルベンゼンスルフィン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0048】
重合促進剤として用いられるボレート化合物は、1分子中に1個のアリール基を有するボレート化合物を具体的に例示すると、例えば、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p‐クロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p‐フロロフェニル)ホウ素、トリアルキル(3,5‐ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、トリアルキル[3,5‐ビス(1,1,1,3,3,3‐ヘキサフロロ‐2‐メトキシ‐2‐プロピル)フェニル]ホウ素、トリアルキル(p‐ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(m‐ニトロフェニル)ホウ素、トリアルキル(p‐ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(m‐ブチルフェニル)ホウ素、トリアルキル(p‐ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(m‐ブチルオキシフェニル)ホウ素、トリアルキル(p‐オクチルオキシフェニル)ホウ素及びトリアルキル(m‐オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn‐ブチル基、n‐オクチル基及びn‐ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩及びブチルキノリニウム塩などが挙げられる。
【0049】
また、1分子中に2個のアリール基を有するボレート化合物を具体的に例示すると、例えば、ジアルキルジフェニルホウ素、ジアルキルジ(p‐クロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p‐フロロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(3,5‐ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、ジアルキルジ[3,5‐ビス(1,1,1,3,3,3‐ヘキサフロロ‐2‐メトキシ‐2‐プロピル)フェニル]ホウ素、ジアルキルジ(p‐ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m‐ニトロフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p‐ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m‐ブチルフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p‐ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(m‐ブチルオキシフェニル)ホウ素、ジアルキルジ(p‐オクチルオキシフェニル)ホウ素及びジアルキルジ(m‐オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn‐ブチル基、n‐オクチル基及びn‐ドデシル基等からなる群から選択される少なくとも1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩及びブチルキノリニウム塩などが挙げられる。
【0050】
さらに、1分子中に3個のアリール基を有するボレート化合物を具体的に例示すると、例えば、モノアルキルトリフェニルホウ素、モノアルキルトリ(p‐クロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p‐フロロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(3,5‐ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、モノアルキルトリ[3,5‐ビス(1,1,1,3,3,3‐ヘキサフロロ‐2‐メトキシ‐2‐プロピル)フェニル]ホウ素、モノアルキルトリ(p‐ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m‐ニトロフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p‐ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m‐ブチルフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p‐ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(m‐ブチルオキシフェニル)ホウ素、モノアルキルトリ(p‐オクチルオキシフェニル)ホウ素及びモノアルキルトリ(m‐オクチルオキシフェニル)ホウ素(アルキル基はn‐ブチル基、n‐オクチル基又はn‐ドデシル基等から選択される1種である)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩、ブチルキノリニウム塩などが挙げられる。
【0051】
さらに1分子中に4個のアリール基を有するボレート化合物を具体的に例示すると、例えば、テトラフェニルホウ素、テトラキス(p‐クロロフェニル)ホウ素、テトラキス(p‐フロロフェニル)ホウ素、テトラキス(3,5‐ビストリフロロメチル)フェニルホウ素、テトラキス[3,5‐ビス(1,1,1,3,3,3‐ヘキサフロロ‐2‐-メトキシ‐2‐プロピル)フェニル]ホウ素、テトラキス(p‐ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(m‐ニトロフェニル)ホウ素、テトラキス(p‐ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(m‐ブチルフェニル)ホウ素、テトラキス(p‐ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m‐ブチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(p‐オクチルオキシフェニル)ホウ素、テトラキス(m‐オクチルオキシフェニル)ホウ素、(p‐フロロフェニル)トリフェニルホウ素、(3,5‐ビストリフロロメチル)フェニルトリフェニルホウ素、(p‐ニトロフェニル)トリフェニルホウ素、(m‐ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(p‐ブチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素、(m‐オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素及び(p‐オクチルオキシフェニル)トリフェニルホウ素のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩、メチルピリジニウム塩、エチルピリジニウム塩、ブチルピリジニウム塩、メチルキノリニウム塩、エチルキノリニウム塩及びブチルキノリニウム塩などが挙げられる。
【0052】
これらアリールボレート化合物の中でも、保存安定性の観点から、1分子中に3個又は4個のアリール基を有するボレート化合物を用いることがより好ましい。また、これらアリールボレート化合物は1種又は2種以上を混合して用いることも可能である。
【0053】
重合促進剤として用いられるバビツール酸誘導体を具体的に例示すると、例えば、バルビツール酸、1,3‐ジメチルバルビツール酸、1,3‐ジフェニルバルビツール酸、1,5‐ジメチルバルビツール酸、5‐ブチルバルビツール酸、5‐エチルバルビツール酸、5‐イソプロピルバルビツール酸、5‐シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5‐トリメチルバルビツール酸、1,3‐ジメチル‐5‐エチルバルビツール酸、1,3‐ジメチル‐n‐ブチルバルビツール酸、1,3‐ジメチル‐5‐イソブチルバルビツール酸、1,3‐ジメチルバルビツール酸、1,3‐ジメチル‐5‐シクロペンチルバルビツール酸、1,3‐ジメチル‐5‐シクロヘキシルバルビツール酸、1,3‐ジメチル‐5‐フェニルバルビツール酸、1‐シクロヘキシル‐1‐エチルバルビツール酸、1‐ベンジル‐5‐フェニルバルビツール酸、5‐メチルバルビツール酸、5‐プロピルバルビツール酸、1,5‐ジエチルバルビツール酸、1‐エチル‐5‐メチルバルビツール酸、1‐エチル‐5‐イソブチルバルビツール酸、1,3‐ジエチル‐5‐ブチルバルビツール酸、1‐シクロヘキシル‐5‐メチルバルビツール酸、1‐シクロヘキシル‐5‐エチルバルビツール酸、1‐シクロヘキシル‐5‐オクチルバルビツール酸、1‐シクロヘキシル‐5‐ヘキシルバルビツール酸、5‐ブチル‐1‐シクロヘキシルバルビツール酸、1‐ベンジル‐5‐フェニルバルビツール酸及びチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属類が好ましい)が挙げられ、これらバルビツール酸類の塩としては、例えば、5‐ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5‐トリメチルバルビツール酸ナトリウム及び1‐シクロヘキシル‐5‐エチルバルビツール酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0054】
特に好適なバルビツール酸誘導体を具体的に例示すると、例えば、5‐ブチルバルビツール酸、1,3,5‐トリメチルバルビツール酸、1‐シクロヘキシル‐5‐エチルバルビツール酸、1‐ベンジル‐5‐フェニルバルビツール酸、及びこれらバルビツール酸類のナトリウム塩などが挙げられる。
【0055】
重合促進剤として用いられるトリアジン化合物を具体的に例示すると、例えば、2,4,6‐トリス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2,4,6‐トリス(トリブロモメチル)‐s‐トリアジン、2‐メチル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐メチル‐4,6‐ビス(トリブロモメチル)‐s‐トリアジン、2‐フェニル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(p‐メトキシフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(p‐メチルチオフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(p‐クロロフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(2,4‐ジクロロフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(p‐ブロモフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(p‐トリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐n‐プロピル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(α,α,β-トリクロロエチル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐スチリル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐[2‐(p‐メトキシフェニル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐[2‐(o‐メトキシフェニル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐[2‐(p‐ブトキシフェニル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐[2‐(3,4‐ジメトキシフェニル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐[2‐(3,4,5‐トリメトキシフェニル)エテニル]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(1‐ナフチル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(4‐ビフェニリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐[2‐{N,N‐ビス(2‐ヒドロキシエチル)アミノ}エトキシ]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐[2‐{N‐ヒドロキシエチル‐N‐エチルアミノ}エトキシ]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐[2‐{N‐ヒドロキシエチル‐N‐メチルアミノ}エトキシ]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐[2‐{N,N‐ジアリルアミノ}エトキシ]‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジンなどが挙げられる。
【0056】
上記で例示したトリアジン化合物の中で特に好ましいものは、重合活性の点で2,4,6‐トリス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジンであり、また保存安定性の点で、2‐フェニル‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、2‐(p‐クロロフェニル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジン、及び2‐(4‐ビフェニリル)‐4,6‐ビス(トリクロロメチル)‐s‐トリアジンである。上記トリアジン化合物は1種又は2種以上を混合して用いても構わない。
【0057】
重合促進剤として用いられる銅化合物を具体的に例示すると、例えば、アセチルアセトン銅、酢酸第2銅、オレイン酸銅、塩化第2銅、臭化第2銅などが挙げられる。
【0058】
重合促進剤として用いられるスズ化合物を具体的に例示すると、例えば、ジ‐n‐ブチル錫ジマレート、ジ‐n‐オクチル錫ジマレート、ジ‐n‐オクチル錫ジラウレート、ジ‐n‐ブチル錫ジラウレートなどが挙げられる。特に好適なスズ化合物は、ジ‐n‐オクチル錫ジラウレート及びジ‐n‐ブチル錫ジラウレートである。
【0059】
重合促進剤として用いられるバナジウム化合物は、好ましくはIV価及び/又はV価のバナジウム化合物類である。IV価及び/又はV価のバナジウム化合物類を具体的に例示すると、例えば、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1‐フェニル‐1,3‐ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)などが挙げられる。
【0060】
重合促進剤として用いられるハロゲン化合物を具体的に例示すると、例えば、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、エンジルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。
【0061】
重合促進剤として用いられるアルデヒド類を具体的に例示すると、例えば、テレフタルアルデヒドやベンズアルデヒド誘導体などが挙げられる。ベンズアルデヒド誘導体としては、ジメチルアミノベンズアルデヒド、p‐メチルオキシベンズアルデヒド、p‐エチルオキシベンズアルデヒド、p‐n‐オクチルオキシベンズアルデヒドなどが挙げられる。これらの中でも、硬化性の観点から、p‐n‐オクチルオキシベンズアルデヒドが好ましく用いられる。
【0062】
重合促進剤として用いられるチオール化合物を具体的に例示すると、例えば、3‐メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2‐メルカプトベンゾオキサゾール、デカンチオール、チオ安息香酸などが挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明によるシランカップリング剤の製造方法、得られたシランカップリング剤の色調安定性および、それらのシランカップリング剤で表面改質された無機充填材を含む歯科用硬化性組成物の調製方法・物理的特性について詳しく説明するが、本発明はこれらの説明に何ら限定されるものではない。
【0064】
触媒合成1(シラノール基がエンドキャッピングされていない貴金属担持二酸化珪素触媒の合成1)
平均粒径10μmの球状二酸化珪素30gを45mLのメタノールにホモジナイザーで懸濁させて後、白金濃度5.0wt%のジニトロジアミン白金(II)の硝酸溶液3.5gを加えた。その懸濁液中の溶媒であるメタノールをロータリーエバポレーターで完全留去させた。大気中150℃で12時間乾燥させ、その後、水素気流中にて300℃にて5時間還元を行い、白金濃度約0.5wt%の白金担持二酸化珪素触媒を得た。得られた白金担持二酸化珪素触媒は室温下にて保存した。
触媒合成2(シラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持二酸化珪素触媒の合成2)
電磁攪拌子を備えた100mLナスフラスコに5.0gの触媒合成1で得た触媒を秤量し、クロロトリメチルシラン/ピリジン:15.0g/50mLを室温下にて滴下した。滴下終了後、12時間の熟成を室温下にて行った。その後、遠心分離にて溶存する塩酸ピリジンおよび未反応のクロロトリメチルシランを除去した。洗浄は乾燥脱水ピリジンにて数回行い、乾固させることなく、湿潤状態(ケーキ状)で保存した。
触媒合成3(シラノール基がエンドキャッピングされた貴金属担持二酸化珪素触媒の合成3)
電磁攪拌子を備えた100mLナスフラスコに5.0gの触媒合成1で得た触媒を秤量し、メトキシトリメチルシラン/100ppm含水ピリジン:15.0g/50mLを室温下にて滴下した。滴下終了後、12時間の熟成を室温下にて行った。その後、遠心分離にて溶存するメトキシトリメチルシランを除去した。洗浄は乾燥脱水ピリジンにて数回行い、乾固させることなく、湿潤状態(ケーキ状)で保存した。
(合成例1 バルク)
ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成1
攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(100mL容積)に10‐ウンデセン‐1‐オール:17.0g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:32.6mg(1000ppm相当)およびp‐メトキシフェノール:16.3mg(500ppm相当)を加え溶解させた。次に、滴下ロートに2‐イソシアナートエチルメタクリレート:15.5g(0.10mol)を秤量した。四つ口フラスコを75℃に加温したオイルバスに浸け、攪拌しながら内温が80℃を超えないように2‐イソシアナートエチルメタクリレートを滴下した。滴下終了後、オイルバスの温度を維持したまま5時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、四つ口フラスコをオイルバスから外し反応物を室温に戻し、HPLCおよびFT‐IR測定をおこなった。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX‐ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT‐IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である10‐ウンデセン‐1‐オールおよび2‐イソシアナートエチルメタクリレートのピークは消失し、新たなピーク:2‐((10‐ウンデセニロキシ)カルボニルアミノ)エチルメタクリレート(分子量325.4)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2280~2250cm
-1のイソシアナート吸収および3300cm
-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認し、新たに1250cm
-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、上述の操作で合成した化合物32.5g(0.10mol)を含む四つ口フラスコに触媒合成2で合成したシラノール基がエンドキャッピングされた白金担持二酸化珪素触媒5.0gを添加し十分攪拌した。別に、滴下ロートにトリエトキシシラン:16.4gを秤量した。四つ口フラスコを室温下、攪拌しながら内温が35℃を超えないようにトリエトキシシランを滴下した。滴下終了後、24時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、遠心分離により白金担持二酸化珪素触媒を除去し、HPLCおよびFT‐IR測定をおこなった。HPLC測定の結果、原材料である2‐((10‐ウンデセニロキシ)カルボニルアミノ)エチルメタクリレートおよびトリエトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:4,4‐ジエトキシ‐17‐オキソ‐3,16‐ジオキサ‐18‐アザ‐4‐シライコサン‐20‐イルメタクリレート(分子量489.7)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2190cm
-1のシラン基吸収の消失を確認した。本実施例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。
(合成例2 バルク)
ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成2
攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(100mL容積)に10‐ウンデセン‐1‐オール:17.0g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:36.9mg(1000ppm相当)およびp‐メトキシフェノール:18.5mg(500ppm相当)を加え溶解させた。次に、滴下ロートに2‐(2‐イソシアナートエトキシ)エチルメタクリレート:19.9g(0.10mol)を秤量した。四つ口フラスコを75℃に加温したオイルバスに浸け、攪拌しながら内温が80℃を超えないように2‐(2‐イソシアナートエトキシ)エチルメタクリレートを滴下した。滴下終了後、オイルバスの温度を維持したまま5時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、四つ口フラスコをオイルバスから外し反応物を室温に戻し、HPLCおよびFT‐IR測定をおこなった。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX‐ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT‐IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である10‐ウンデセン‐1‐オールおよび2‐(2‐イソシアナートエトキシ)エチルメタクリレートのピークは消失し、新たなピーク:2‐(2‐(((ウンデック‐10‐エン‐1‐イロキシ)カルボニル)アミノ)エトキシ)エチルメタクリレート(分子量369.5)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2280~2250cm
-1のイソシアナート吸収および3300cm
-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認し、新たに1250cm
-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(100mL容積)に上述の操作で合成した前駆体化合物37.0g(0.10mol)および触媒合成3で合成したシラノール基がエンドキャッピングされた白金担持二酸化珪素触媒5.0gを添加し均一になるように十分攪拌した。別に、滴下ロートにトリエトキシシラン:16.4g(0.10mol)を秤量した。四つ口フラスコを室温下、攪拌しながら内温が35℃を超えないようにトリエトキシシランを滴下した。滴下終了後、室温にて12時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、遠心分離により白金担持二酸化珪素触媒を除去し、HPLCおよびFT‐IR測定を行った。HPLC測定の結果、原材料である2‐(2‐(((ウンデック‐10‐エン‐1‐イロキシ)カルボニル)アミノ)エトキシ)エチルメタクリレートおよびトリエトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:4,4‐ジエトキシ‐17‐オキソ‐3,16,21‐トリオキサ‐18‐アザ‐4‐シラトリコサン‐23‐イルメタクリレート(分子量533.78)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2190cm
-1のシラン基吸収の消失を確認した。本合成例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。
(合成例3 フローリアクター)
ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成3
10‐ウンデセン‐1‐オール:170g(1.0mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:369mg(1000ppm相当)およびp‐メトキシフェノール:185mg(500ppm相当)を加えた溶液をデュラン瓶A(500mL容積)に充填した。次に、2‐(2‐イソシアナートエトキシ)エチルメタクリレート:199g(1.0mol)を別のデュラン瓶B(500mL容積)に充填した。これらの溶液をYMC社製マイクロフローリアクター(反応素子デネブ型)へHPLCポンプにて等モルになる様に流速調整し反応温度80℃、滞留時間が5時間になる様に送液反応させた。反応が終わった溶液はHPLCおよびFT‐IR測定をおこなった。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX‐ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT‐IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である10‐ウンデセン‐1‐オールおよび2‐(2‐イソシアナートエトキシ)エチルメタクリレートのピークは消失し、新たなピーク:2‐(2‐(((ウンデック‐10‐エン‐1‐イロキシ)カルボニル)アミノ)エトキシ)エチルメタクリレート(分子量369.5)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2280~2250cm
-1のイソシアナート吸収および3300cm
-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認し、新たに1250cm
-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、上述の操作で合成した前駆体化合物370g(1.0mol)をデュラン瓶C(500mL容積)に充填した。2段階目の反応(不均一系ヒドロシリル化反応)に備え、触媒合成3で合成したシラノール基がエンドキャッピングされた白金担持二酸化珪素触媒10gを耐圧カラムに充填した。さらに、トリエトキシシラン:164g(1.0mol)をデュラン瓶D(500mL容積)に充填したこれらの溶液(デュラン瓶C内およびD内)をYMC社製マイクロフローリアクター(反応素子デネブ型)へHPLCポンプにて等モルになる様に流速調整し、反応温度30℃、滞留時間が12時間になる様に送液反応させた。反応終了後、HPLCおよびFT‐IR測定を行った。HPLC測定の結果、原材料である2‐(2‐(((ウンデック‐10‐エン‐1‐イロキシ)カルボニル)アミノ)エトキシ)エチルメタクリレートおよびトリエトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:4,4‐ジエトキシ‐17‐オキソ‐3,16,21‐トリオキサ‐18‐アザ‐4‐シラトリコサン‐23‐イルメタクリレート(分子量533.78)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2190cm
-1のシラン基吸収の消失を確認した。本合成例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。なお、ヒドロシリル化反応において耐圧カラム内での閉塞は最後まで観察されなかった。
(比較合成例1 バルク)
ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成4
攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(100mL容積)に10‐ウンデセン‐1‐オール:17.0g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:32.6mg(1000ppm相当)およびp‐メトキシフェノール:16.3mg(500ppm相当)を加え溶解させた。次に、滴下ロートに2‐イソシアナートエチルメタクリレート:15.5g(0.10mol)を秤量した。四つ口フラスコを75℃に加温したオイルバスに浸け、攪拌しながら内温が80℃を超えないように2‐イソシアナートエチルメタクリレートを滴下した。滴下終了後、オイルバスの温度を維持したまま5時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、四つ口フラスコをオイルバスから外し反応物を室温に戻し、HPLCおよびFT‐IR測定をおこなった。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX‐ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT‐IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である10‐ウンデセン‐1‐オールおよび2‐イソシアナートエチルメタクリレートのピークは消失し、新たなピーク:2‐((10‐ウンデセニロキシ)カルボニルアミノ)エチルメタクリレート(分子量325.4)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2280~2250cm
-1のイソシアナート吸収および3300cm
-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認し、新たに1250cm
-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、上述の操作で合成した化合物32.5g(0.10mol)を含む四つ口フラスコに白金(0)‐1,3‐ジビニル‐1,1,3,3‐テトラメチルジシロキサン:4.9mg(100ppm相当)を添加し均一になるように十分攪拌した。別に、滴下ロートにトリエトキシシラン:16.4g(0.10mol)を秤量した。四つ口フラスコを室温下、攪拌しながら内温が35℃を超えないようにトリエトキシシランを滴下した。滴下終了後、室温にて24p時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、HPLCおよびFT‐IR測定をおこなった。HPLC測定の結果、原材料である2‐((10‐ウンデセニロキシ)カルボニルアミノ)エチルメタクリレートおよびトリエトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:4,4‐ジエトキシ‐17‐オキソ‐3,16‐ジオキサ‐18‐アザ‐4‐シライコサン‐20‐イルメタクリレート(分子量489.7)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2190cm
-1のシラン基吸収の消失を確認した。本実施例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。
(比較合成例2 バルク)
ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成5
攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(100mL容積)に10‐ウンデセン‐1‐オール:17.0g(0.10mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:36.9mg(1000ppm相当)およびp‐メトキシフェノール:18.5mg(500ppm相当)を加え溶解させた。次に、滴下ロートに2‐(2‐イソシアナートエトキシ)エチルメタクリレート:19.9g(0.10mol)を秤量した。四つ口フラスコを75℃に加温したオイルバスに浸け、攪拌しながら内温が80℃を超えないように2‐(2‐イソシアナートエトキシ)エチルメタクリレートを滴下した。滴下終了後、オイルバスの温度を維持したまま5時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、四つ口フラスコをオイルバスから外し反応物を室温に戻し、HPLCおよびFT‐IR測定をおこなった。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX‐ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT‐IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である10‐ウンデセン‐1‐オールおよび2‐(2‐イソシアナートエトキシ)エチルメタクリレートのピークは消失し、新たなピーク:2‐(2‐(((ウンデック‐10‐エン‐1‐イロキシ)カルボニル)アミノ)エトキシ)エチルメタクリレート(分子量369.5)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2280~2250cm
-1のイソシアナート吸収および3300cm
-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認し、新たに1250cm
-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、攪拌羽根、温度計、滴下ロートおよび冷却管を備えた四つ口フラスコ(100mL容積)に上述の操作で合成した前駆体化合物37.0g(0.10mol)および白金(0)‐1,3‐ジビニル‐1,1,3,3‐テトラメチルジシロキサン:5.3mg(100ppm相当)を添加し均一になるように十分攪拌した。別に、滴下ロートにトリエトキシシラン:16.4g(0.10mol)を秤量した。四つ口フラスコを室温下、攪拌しながら内温が35℃を超えないようにトリエトキシシランを滴下した。滴下終了後、室温にて12時間反応を継続させ熟成をおこなった。熟成終了後、HPLCおよびFT‐IR測定を行った。HPLC測定の結果、原材料である2‐(2‐(((ウンデック‐10‐エン‐1‐イロキシ)カルボニル)アミノ)エトキシ)エチルメタクリレートおよびトリエトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:4,4‐ジエトキシ‐17‐オキソ‐3,16,21‐トリオキサ‐18‐アザ‐4‐シラトリコサン‐23‐イルメタクリレート(分子量533.78)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2190cm
-1のシラン基吸収の消失を確認した。本合成例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。
(比較合成例3 フローリアクター)
ラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の合成6
10‐ウンデセン‐1‐オール:170g(1.0mol)、ジブチルチン(IV)ジラウレート:369mg(1000ppm相当)およびp‐メトキシフェノール:185mg(500ppm相当)を加えた溶液をデュラン瓶A(500mL容積)に充填した。次に、2‐(2‐イソシアナートエトキシ)エチルメタクリレート:199g(1.0mol)を別のデュラン瓶B(500mL容積)に充填した。これらの溶液をYMC社製マイクロフローリアクター(反応素子デネブ型)へHPLCポンプにて等モルになる様に反応温度80℃、滞留時間が5時間になる様に送液反応させた。反応が終わった溶液はHPLCおよびFT‐IR測定をおこなった。HPLC測定の分析条件は、カラムZORBAX‐ODS、アセトニトリル/蒸留水=7/3、流量0.5mL/min、マルチスキャンUV検出器、RI検出器、MS検出器である。FT‐IR測定はATR法にて行った。HPLC測定の結果、原材料である10‐ウンデセン‐1‐オールおよび2‐(2‐イソシアナートエトキシ)エチルメタクリレートのピークは消失し、新たなピーク:2‐(2‐(((ウンデック‐10‐エン‐1‐イロキシ)カルボニル)アミノ)エトキシ)エチルメタクリレート(分子量369.5)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2280~2250cm
-1のイソシアナート吸収および3300cm
-1近傍のヒドロキシ基吸収の消失を確認し、新たに1250cm
-1にウレタン基由来の吸収を確認した。次に、上述の操作で合成した前駆体化合物370g(1.0mol)をデュラン瓶C(500mL容積)に充填した。2段階目の反応(不均一系ヒドロシリル化反応)に備え、触媒合成1で合成したシラノール基がエンドキャッピングされていない白金担持二酸化珪素触媒10gを耐圧カラムに充填した。また、トリエトキシシラン:164g(1.0mol)をデュラン瓶D(500mL容積)に充填した。これらの溶液(デュラン瓶C内およびD内)をYMC社製マイクロフローリアクター(反応素子デネブ型)へHPLCポンプにて等モルになる様に流速調整し、反応温度30℃、滞留時間が12時間になる様に送液反応させた。反応終了後、HPLCおよびFT‐IR測定を行った。HPLC測定の結果、原材料である2‐(2‐(((ウンデック‐10‐エン‐1‐イロキシ)カルボニル)アミノ)エトキシ)エチルメタクリレートおよびトリエトキシシランのピークは消失し、新たなピーク:4,4‐ジエトキシ‐17‐オキソ‐3,16,21‐トリオキサ‐18‐アザ‐4‐シラトリコサン‐23‐イルメタクリレート(分子量533.78)を確認した。また、FT‐IR測定の結果、2190cm
-1のシラン基吸収の消失を確認した。本合成例にて合成した化合物の化学構造式を以下に記載する。なお、ヒドロシリル化反応において耐圧カラム内での閉塞が20時間経過後に観察され、内圧が上昇したため、連続合成を中断した。
合成完了後の液状態
合成例1、2及び3ではゲル化等は認められず、均一な状態であった。しかしながら、比較合成例3では、先に述べた様に、ヒドロシリル化反応において耐圧カラム内での閉塞が20時間経過後に観察され、内圧が上昇したため、連続合成を中断した。
【0065】
合成物中の白金量測定
合成例1~3および比較合成例1~3にて合成したラジカル重合性基を有するシランカップリング剤1gを1%塩酸水溶液10mLに溶解させた後に、縮合した粒子を除去するために0.45μmメンブレンフィルターを通した。次に、この溶液に1mL王水を添加することで測定用試料溶液とした。白金含有量は高周波プラズマ発光分析装置(ICP,ICPS‐8000,島津製作所)によって求めた。
【0066】
合成物の色調安定性試験
合成例1~3および比較合成例1~3にて合成したラジカル重合性基を有するシランカップリング剤を10mL容積無色透明ガラスバイアルに9.0mL移液し、ハーゼン色数を測定した。また、同一サンプルを50℃恒温器にて1カ月遮光保存した後のハーゼン色数を測定した。
【0067】
実施例1‐1~1‐3、比較実施例1‐1~1‐3(充填率70wt%)
合成実施例1~3および比較合成実施例1~3にて合成したラジカル重合性基を有するシランカップリング剤を用いOX‐50(日本アエロジル社製)およびFuselex(龍森社製)の表面改質および歯科用硬化性組成物の調製を行った。具体的な表面改質方法を以下に記載する。なお、比較実施例2‐3で用いたシランカップリング剤はカラム閉塞前に分取したものを使用した。すなわち、表1‐1に記載した量のラジカル重合性基を有するシランカップリング剤をエタノール300mLに溶解し、OX‐50:15.0gおよびFuselex:45.0gが入った500mLナスフラスコに加えた。その後、電磁攪拌子を入れ10分間攪拌し、さらに28KHz‐150Wの超音波分散機にて5分間分散させた。分散終了後、攪拌下にて蒸留水2.4gおよび1wt%燐酸水溶液1.2gを加え、フラスコを沸騰ウオーターバスに浸け5時間還流させた。還流終了後、内温を室温まで戻し遮光下にて表1記載のバインダー液(UDMA,2G)および光重合開始剤を加え、均一に攪拌した後にエバポレータにてエタノールを留去した。その後、Thinky社製Planetary Vacuum mixer ARV‐310にて1000rpm‐5KPa‐15minの条件下にて完全に溶媒を除去し歯科用硬化性組成物を得た。この様にして得られた歯科用硬化性組成物をISO4049に従い、硬化体を作製しインストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用い曲げ強度を求めた。また、同様の硬化手順にて直径15mmφ‐厚さ1.0mmの円形ディスクを作製し、ISO4049に従って、硬化体の色調安定性を耐光試験機(アトラス・サンテストCPS+、株式会社東洋精機製作所製)にて求めた。なお、光重合は株式会社松風製GriplightIIにて30秒間光照射することで行った。
【0068】
実施例2‐1~2‐3、比較実施例2‐1~2‐3(充填率85wt%)
合成実施例1~3および比較合成実施例1~3にて合成したラジカル重合性基を有するシランカップリング剤を用いOX‐50(日本アエロジル社製)およびFuselex(龍森社製)の表面改質および歯科用硬化性組成物の調製を行った。具体的な表面改質方法を以下に記載する。なお、比較実施例2‐3で用いたシランカップリング剤はカラム閉塞前に分取したものを使用した。すなわち、表1‐2に記載した量のラジカル重合性基を有するシランカップリング剤をエタノール300mLに溶解し、OX‐50:15.0gおよびFuselex:45.0gが入った500mLナスフラスコに加えた。その後、電磁攪拌子を入れ10分間攪拌し、さらに28KHz‐150Wの超音波分散機にて5分間分散させた。分散終了後、攪拌下にて蒸留水2.4gおよび1wt%燐酸水溶液1.2gを加え、フラスコを沸騰ウオーターバスに浸け5時間還流させた。還流終了後、内温を室温まで戻し遮光下にて表2記載のバインダー液(UDMA,2G)および光重合開始剤を加え、均一に攪拌した後にエバポレータにてエタノールを留去した。その後、Thinky社製Planetary Vacuum mixer ARV‐310にて1000rpm‐5KPa‐15minの条件下にて完全に溶媒を除去し歯科用硬化性組成物を得た。この様にして得られた歯科用硬化性組成物をISO4049に従い、硬化体を作製しインストロン万能試験機(インストロン5567、インストロン社製)を用い曲げ強度を求めた。また、同様の硬化手順にて直径15mmφ‐厚さ1.0mmの円形ディスクを作製し、ISO4049に従って、硬化体の色調安定性を耐光試験機(アトラス・サンテストCPS+、株式会社東洋精機製作所製)にて求めた。なお、光重合は株式会社松風製GriplightIIにて30秒間光照射することで行った。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
評価結果
合成物中に含まれる白金量をICP測定によって求めた結果を表2‐1に示す。これらの測定結果から明らかなように本発明の製造方法にて製造された合成例1~3のラジカル重合性基を有するシランカップリング剤は白金を含まないことを確認された。これに対して、比較合成例1~2で合成した溶解性貴金属を含有するラジカル重合性基を有するシランカップリング剤は数ng/mLの白金を含むことが認められた。また、比較合成例3で合成したカラム閉塞前のシランカップリング剤は白金を含まないことを確認された。
続いて、合成物の色調安定性試験にて求めたハーゼン色数の測定結果を表2‐2に示す。これらの測定結果より明らかなように、合成例1~3にて合成した貴金属を含有しないラジカル重合性基を有するシランカップリング剤のハーゼン色数は合成直後と50℃‐1カ月遮光保存後に大きな差異は認められなかった。これに対して、比較合成例1~2にて合成した貴金属を含有するラジカル重合性基を有するシランカップリング剤のハーゼン色数は合成直後と50℃‐1カ月遮光保存後に大きな差異が認められた。
また、比較合成例3で合成したカラム閉塞前のシランカップリング剤は合成例1~3にて合成した貴金属を含有しないラジカル重合性基を有するシランカップリング剤同等であることが確認された。
この大きな色調変化は残存する白金錯体の原子価が変化したためと考えられる。次に、硬化体の色調安定性に関する測定結果を表2‐3に示す。これらの測定結果より明らかなように、合成例1~3および比較合成例3で合成したカラム閉塞前までに合成した貴金属を含有しないラジカル重合性基を有するシランカップリング剤を用いて表面改質を行った無機充填材を含有する歯科用硬化性組成物硬化体は色調の変化に大きな差異は認められなかった。これに対して、比較合成例1~2にて合成した貴金属を含有するラジカル重合性基を有するシランカップリング剤を用いて表面改質を行った無機充填材を含有する歯科用硬化性組成物硬化体は色調の変化に大きな差異が生じ、黄変が著しかった。表2‐4に実施例に基づいて作製された歯科用硬化性組成物の曲げ強度試験結果を示す。また、表2‐5にはサーマルサイクル(曲げ試験体を冷水4℃に1分間浸積後、温水60℃に1分間浸積を3000回繰り返した後に曲げ強度を測定する)による曲げ試験体の耐水性を評価した結果を示す。これらの結果より明らかなように、本発明の製造方法により製造したラジカル重合性基を有するシランカップリング剤により表面改質された無機充填材を含む歯科用硬化性組成物の硬化体は、既存技術である溶解性貴金属錯体を用いて合成したラジカル重合性基を有するシランカップリング剤により表面改質された無機充填材を含む歯科用硬化性組成物の硬化体と全く遜色なく、同様に高い曲げ強度特性および耐水性を有している事が分かる。
【0077】
本発明の製造方法により製造したラジカル重合性基を有するシランカップリング剤にて無機充填材を表面改質することで、高い色調安定性を有しつつラジカル重合性モノマーに対する高親和性が発現し、その結果として歯科材料に高い機械的強度及び耐久性を与える結果となった。特に、合成例3と比較合成例3では、シラノール基がエンドキャッピングされているか否かの例であるが、エンドキャッピングされていない場合には、反応初期には明らかに白金担持触媒の機能を有するものの、その表面のシラノール基が何らかの影響を与え、マイクロフローリアクターによる連続合成が流路閉塞のため困難である事が明らかになった。また、本発明の製造方法により製造したラジカル重合性基は、その高親和性により、表面改質された無機充填材を高濃度で充填可能になった。この高い機械的強度及び耐久性はラジカル重合性基を有するシランカップリング剤の構造に‐NH‐,‐S‐,‐NH‐C(O)‐S‐,‐NH‐C(O)‐O‐,‐NH‐C(O)‐NH‐,‐C(O)‐S‐,‐CH(OH)‐CH2‐S‐,‐CH(OH)‐CH2‐O‐,‐O‐CH2‐CH2‐O‐基などの極性接続基があることに起因するものと考える。即ち、本発明の製造方法により製造したラジカル重合性基を有するシランカップリング剤にて表面改質された無機充填材はその表面に‐NH‐,‐S‐,‐NH‐C(O)‐S‐,‐NH‐C(O)‐O‐,‐NH‐C(O)‐NH‐,‐C(O)‐S‐,‐CH(OH)‐CH2‐S‐,‐CH(OH)‐CH2‐O‐基が導入され、これがウレタン基を有するラジカル重合性モノマーに対して著しい高親和性を発現するものと考える。本発明により、高い色調安定性を有しつつ無機充填材の高充填化が可能となり、その結果として高い機械的強度を達成することが可能となった。以上の評価結果より明らかなように、従来技術では達し得なかった高い色調安定性および高い機械的強度を有する歯科用硬化性組成物の提供が可能となった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
医科・歯科用接着剤やコンポジットレジンには、メチルメタクリレートやトリエチレングリコールジメタクリレート、ウレタン系ジメタクリレート等の(メタ)アクリル酸誘導体モノマーが使用されている。これら(メタ)アクリル酸誘導体モノマー等のビニルモノマーのフリーラジカル重合(以下ラジカル重合と記す)では、炭素‐炭素の二重結合が解裂し単結合になることで高分子体を形成し硬化する。このコンポジットレジンにはビニルモノマーだけではなく、無機充填材が機械的強度向上の目的で添加される。一般的にそれらの無機充填材は重合性基を有するシランカップリング剤により表面改質され、濡れ性の向上や機械的強度向上が図られている。従来、このシランカップリング剤には、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM‐503)が広く用いられている。該化合物で表面改質された粒子を用いた場合、疎水性が低いため加水分解が進行しやすく、材料の耐久性が低いという課題があった。また、その低い疎水性のため無機充填材の充填率も低く十分な機械的強度が得られないと言う欠点も有していた。その問題を解決するため、様々なシランカップリング剤の合成が行われ応用されてきた。しかしながら、それらの合成には溶解性貴金属錯体を使用したヒドロシリル化反応が用いられてきたため、シランカップリング剤自体の黄変や、そのシランカップリング剤を使用し表面改質された無機充填材を含む歯科用硬化性組成物の硬化体が経時的に黄変する問題が存在していた。本発明によるシランカップリング剤はそれらの課題を全て克服している。さらに、マイクロフローリアクターによる連続合成が可能となった。本発明によるシランカップリング剤はヒドロシリル化触媒である溶解性貴金属錯体を含有しないため、色調安定性に特に優れており産業上の利用の可能性は大きいと言える。