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  • 特許-乾式外装材の止水構造および施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】乾式外装材の止水構造および施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/682 20060101AFI20240814BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
E04B1/682 A
E04F13/08 Y
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020089870
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183788
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原山 賢
(72)【発明者】
【氏名】石川 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】青木 真一
(72)【発明者】
【氏名】平井 創
(72)【発明者】
【氏名】井澤 紋規
(72)【発明者】
【氏名】福田 洋文
(72)【発明者】
【氏名】野々村 博文
(72)【発明者】
【氏名】有信 智紀
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-133632(JP,U)
【文献】特開2018-119379(JP,A)
【文献】特開2012-007447(JP,A)
【文献】実開平06-067615(JP,U)
【文献】特開2006-283509(JP,A)
【文献】実開平07-019417(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04F 13/08
E04F 19/02,19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾式外装材を複数並設して構成される建物外壁において、隣り合う前記乾式外装材の間に形成される目地の止水構造であって、
前記目地の外側領域に一次止水ラインとして設けられる不定形シール材と、前記目地の内側領域に二次止水ラインとして設けられる不定形シール材とを備え、前記乾式外装材は、端部に設けられた凹凸状の嵌合部を有し、隣り合う前記乾式外装材のうちの一方の前記乾式外装材の前記嵌合部の凸部が、バックアップ材を介して他方の前記乾式外装材の前記嵌合部の凹部に嵌合しており、
前記目地の内側領域に二次止水ラインとして設けられる不定形シール材は、前記嵌合部内にある前記バックアップ材に隣接して断面視でL字状に配置されることを特徴とする乾式外装材の止水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の乾式外装材の止水構造を施工するための方法であって、
前記目地の外側領域に一次止水ラインとして不定形シール材を設けるステップと、前記目地の内側領域に二次止水ラインとして不定形シール材を設けるステップとを有することを特徴とする乾式外装材の止水構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば押出成形セメント板などの乾式外装材の止水構造および施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の外壁として使用される押出成形セメント板などの乾式外装材が知られている。乾式外装材を用いる外壁構造では、建物の躯体に下地材となるアングルを固定し、乾式外装材の背面に留め付けられたクリップ等をアングルに係止させることによって躯体に取り付けている(例えば、特許文献1を参照)。また、乾式外装材の両端部には、一般に、長さ方向に凹凸状の嵌合部が設けられており、例えば縦張りの外装材として用いる場合には、凹凸状の嵌合部どうしを嵌合するとともに、上下の乾式外装材の間に一定間隔をあけて取り付けている。このため、乾式外装材の間には、縦方向、横方向のいずれにも目地部が形成される。目地部には、目地部を通じて屋内側に雨水等の水が浸入するのを阻止するために、止水シールが設けられる。止水シールは、一般に目地部の屋外側に充填されるシーリング材で構成される。
【0003】
また、シーリング材だけでは止水性能が不十分なことがあるため、シーリング材の屋内側にガスケットや水切り材を取り付けた二次止水構造を採用することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3194278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来の止水方法では、止水性能は一次止水ラインであるシーリング材(不定形シール材)に依存する。ガスケットなどによる二次止水ライン(定形シール材)は厳密には連続しておらず、二次止水ラインは一次止水を補完しているに過ぎない。そのため、一次止水ラインが損傷した場合、二次止水ラインでの確実な止水は期待できない。
【0006】
一方、押出成形セメント板などの乾式外装材の高層建物および重要用途(病院・データセンター等)への適用が益々増加しており、止水性能の向上が求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、止水性能の向上が図られた乾式外装材の止水構造および施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る乾式外装材の止水構造は、乾式外装材を複数並設して構成される建物外壁において、隣り合う乾式外装材の間に形成される目地の止水構造であって、目地の外側領域に一次止水ラインとして設けられる不定形シール材と、目地の内側領域に二次止水ラインとして設けられる不定形シール材とを備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る乾式外装材の止水構造の施工方法は、上述した乾式外装材の止水構造を施工するための方法であって、目地の外側領域に一次止水ラインとして不定形シール材を設けるステップと、目地の内側領域に二次止水ラインとして不定形シール材を設けるステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る乾式外装材の止水構造によれば、乾式外装材を複数並設して構成される建物外壁において、隣り合う乾式外装材の間に形成される目地の止水構造であって、目地の外側領域に一次止水ラインとして設けられる不定形シール材と、目地の内側領域に二次止水ラインとして設けられる不定形シール材とを備えるので、止水性能の向上を図ることができるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係る乾式外装材の止水構造の施工方法によれば、上述した乾式外装材の止水構造を施工するための方法であって、目地の外側領域に一次止水ラインとして不定形シール材を設けるステップと、目地の内側領域に二次止水ラインとして不定形シール材を設けるステップとを有するので、止水性能の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係る乾式外装材の止水構造および施工方法の実施の形態1を示す断面図である。
図2図2は、本発明に係る乾式外装材の止水構造および施工方法の実施の形態2を示す平断面図である。
図3図3は、本発明に係る乾式外装材の止水構造および施工方法の実施の形態3を示す側断面図である。
図4図4は、本発明に係る乾式外装材の止水構造および施工方法の実施の形態4を示す側断面図である。
図5図5は、本発明に係る乾式外装材の止水構造および施工方法の実施の形態5を示す側断面図である。
図6図6は、本発明に係る乾式外装材の止水構造および施工方法の実施の形態6を示す図であり、(1)は概略正面図、(2)はH1-H1線に沿った断面図、(3)はV1-V1線に沿った断面図である。
図7図7は、本発明に係る乾式外装材の止水構造および施工方法の実施の形態6を示す図であり、(1)は要部斜視図、(2)は上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る乾式外装材の止水構造および施工方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1に係る乾式外装材の止水構造100は、乾式外装材10を複数並設して構成される建物外壁において、隣り合う乾式外装材10の間に形成される目地12の止水構造である。乾式外装材10は、矩形状の押出成形セメント板で構成されている。この押出成形セメント板は、中空部14と、端部に設けられた凹凸状の嵌合部16を有する。隣り合う一方の乾式外装材10の嵌合部16の凸部が、他方の乾式外装材10の嵌合部16の凹部に嵌合している。目地12はこの嵌合部16の間に迷路状に形成される。嵌合部16の凸部と凹部は、ウレタンなどのバックアップ材17を介して嵌合している。なお、図1は、縦張りの外装材の場合には上から見た断面図であり、横張りの場合には側方から見た断面図である。横張りの場合は、通常の実態形態は、凸部が下側で凹部が上側となるように押出成形セメント板が配置されるが、本発明では通常の実態形態とは上下逆に配置している。
【0015】
目地12の屋外側A(外側領域)には、一次止水ラインとして不定形シール材18が充填配置される。また、目地12の屋内側B(内側領域)には、二次止水ラインとして不定形シール材20が充填配置される。この不定形シール材20は、バックアップ材17に隣接して断面視でL字状に配置される。不定形シール材18、20は、例えば施工時に粘着性のあるペースト状で、目地に充填した後に硬化してゴム状になるシーリング材などの不定形シール材で構成することができる。不定形シール材20によって二次止水ラインの連続性を確保し、気密性を高めることで、室内外差圧による漏気を抑制し、目地12の止水性能の向上を図ることができる。このため、一次止水ラインである不定形シール材18が損傷した際の止水性能を向上することができる。本実施の形態は、高水密性能が求められる建物外壁の止水構造として好適である。
【0016】
上記の止水構造100を施工する場合には、まず、建物の躯体に固定されたアングル(下地材)に対し、隣接する二つのうち一の乾式外装材の背面に留め付けられた図示しないクリップ(取付け具)を係止させることによって、一の乾式外装材10を躯体に取り付ける。続いて、二次止水ラインである不定形シール材20を目地12となる部分に施工する。次に、取り付け済の乾式外装材10の嵌合部16の隣に別の乾式外装材10を配置し、不定形シール材20を挟み付ける形で嵌合部16に嵌合させ、躯体に取り付ける。このようにして目地12が形成される。その後、目地12に一次止水ラインである不定形シール材18を充填する。このようにして、上記の止水構造100を施工することができる。
【0017】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
図2に示すように、本実施の形態2に係る乾式外装材の止水構造200は、上記の実施の形態1において、乾式外装材10の背面に留め付けられるクリップ22(例えばZクリップ)部分の止水性能を向上したものである。この止水構造200は、クリップ22から乾式外装材10の中空部14に向けて貫通した孔に挿通配置されるボルト24と、ボルト24を通すとともに中空部14の屋内側Bに配置される平ナット26と、ボルト24を通すとともに中空部14の屋内側Bの面と平ナット26の屋内側Bの間に密着配置される止水用のパッキン材28と、ボルト24と孔の間に設けられた不定形シール材30とを備える。これによれば、ボルト24の周囲の孔の隙間は不定形シール材30によって塞がれるので、水みちが形成されない。このため、乾式外装材10における止水性能を向上することができる。
【0018】
上記の止水構造200を施工する場合には、まず、クリップ22を乾式外装材10の背面に仮固定する際に、ボルト24のねじ部に不定形シール材30を塗布する。その後、このボルト24をクリップ22、乾式外装材10、パッキン材28、平ナット26の順に挿通して締結する。このようにして、上記の止水構造200を施工することができる。
【0019】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
図3に示すように、本実施の形態3に係る乾式外装材の止水構造300は、上記の実施の形態1、2における縦張りの足元最下部の止水構造である。乾式外装材10の下部の屋内側Bに取り付けられたクリップ22は、建物の躯体32に取り付けられたアングル33(ピース)に接続したL型鋼材からなるアングル36(通し)に係止して取り付けられている。アングル36はアングル34(ピース)を介してアングル33に固定される。なお、乾式外装材10の上部にも同様のクリップ22が設けられており、躯体32に取り付けられたアングル33等に固定されている。したがって、乾式外装材10は上下で躯体32に取り付けられる。アングル36の鉛直部と乾式外装材10の間には、不定形シール材43が充填配置される。不定形シール材43の上にはウレタンなどのバックアップ材17が配置される。乾式外装材10と躯体32との間に形成される目地13の屋外側Aには、一次止水ラインとして不定形シール材40が充填配置される。また、目地13の屋内側Bであってアングル36の水平部の下側には、二次止水ラインとして不定形シール材42が充填配置される。目地13内の不定形シール材40、42の間に、バックアップ材、耐火材などを設けてもよい。また、アングル36の上に水切り鋼板を設けてもよい。
【0020】
この構成によれば、不定形シール材42および43によって二次止水ラインの連続性を確保し、気密性を高めることで、室内外差圧による漏気を抑制し、目地13の止水性能の向上を図ることができる。このため、一次止水ラインである不定形シール材40が損傷した際の止水性能を向上することができる。
【0021】
上記の止水構造300を施工する場合には、まず、乾式外装材10の屋内側Bに取り付けたクリップ22を、アングル36の入隅部に充填配置した不定形シール43を挟んでアングル36の鉛直部に係止し、乾式外装材10の下端をアングル36の水平部に載せ置く。続いて、アングル36の水平部の下の目地13内に、二次止水ラインである不定形シール材42を充填する。その後、目地13の屋外側Aに一次止水ラインである不定形シール材40を充填する。このようにして、上記の止水構造300を施工することができる。
【0022】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
図4に示すように、本実施の形態4に係る乾式外装材の止水構造400は、上記の実施の形態1、2における縦張りの板間の水平目地部の止水構造である。乾式外装材10の下部の屋内側Bに取り付けられたクリップ22は、アングル35(通し)を介して躯体に固定される。アングル35には、重量受け用のアングル44(ピース)が固定されている。符号45は捨てシールである。乾式外装材10の下に形成される目地12の屋外側Aには、一次止水ラインとして不定形シール材40が充填配置される。また、目地12の屋内側Bであってアングル44の水平部と乾式外装材10の下端の間には、二次止水ラインとして不定形シール材46が充填配置される。このようにして、目地12の止水性能の向上を図ることができる。
【0023】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
図5に示すように、本実施の形態5に係る乾式外装材の止水構造500は、上記の実施の形態1の変形例であり、異種材料との間に形成される目地における止水構造である。図の例では、異種材料である角型鋼管52と乾式外装材10の間に形成される目地に、上記の実施の形態1と同様にして、不定形シール材18、不定形シール材20を設けている。すなわち、目地の屋外側Aに、一次止水ラインとして不定形シール材18を充填配置し、目地の屋内側Bに、二次止水ラインとして不定形シール材20を充填配置している。このようにしても、上記の実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0024】
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6について説明する。
図6(1)に示すように、本実施の形態6に係る乾式外装材の止水構造600は、縦張りの場合の、水平方向と鉛直方向の目地交差部Cの止水構造である。目地交差部Cにおいては、水平方向および鉛直方向の止水ラインを確実に連続させることが止水性能上重要となる。
【0025】
縦張りの場合、図6(2)、(3)に示すように、屋外側Aでは、水平、鉛直方向共、一次止水ライン(不定形シール材18、40)は屋外側Aのシェル(乾式外装材10)上にあり、目地交差部Cにおいて連続する。これに対し、屋内側Bでは、水平方向の二次止水ライン(不定形シール材46)は、屋内側Bのシェル上を通っているが、鉛直方向の二次止水ライン(不定形シール材20)は嵌合部16を通っているため、目地交差部Cで不連続となるおそれがある。そこで、本実施の形態では、図7に示すように、シェルの鉛直方向両端部の嵌合部16の屋内側Bに、二次止水ライン接続用の不定形シール材54を設けている。この不定形シール材54は、嵌合部16の不定形シール材20の端部に密着配置されるとともに、シェルの鉛直方向の端面と、屋内側Bの端面に沿って配置される。不定形シール材54は、図7(2)に示すように、乾式外装材10の一方を他方に嵌合すると当該位置に充填される。不定形シール材54の鉛直方向内側にはバックアップ材17が配置される。不定形シール材54の鉛直方向の端面は、水平方向の二次止水ライン(不定形シール材46)が密着する。
【0026】
このようにすることで、目地交差部Cにおける水平方向および鉛直方向の二次止水ラインを確実に連続させることができる。なお、横張りの場合、水平方向と鉛直方向の目地12が逆となる。
【0027】
以上説明したように、本発明に係る乾式外装材の止水構造によれば、乾式外装材を複数並設して構成される建物外壁において、隣り合う乾式外装材の間に形成される目地の止水構造であって、目地の外側領域に一次止水ラインとして設けられる不定形シール材と、目地の内側領域に二次止水ラインとして設けられる不定形シール材とを備えるので、止水性能の向上を図ることができる。
【0028】
また、本発明に係る乾式外装材の止水構造の施工方法によれば、上述した乾式外装材の止水構造を施工するための方法であって、目地の外側領域に一次止水ラインとして不定形シール材を設けるステップと、目地の内側領域に二次止水ラインとして不定形シール材を設けるステップとを有するので、止水性能の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上のように、本発明に係る乾式外装材の止水構造および施工方法は、建物の外壁として使用される押出成形セメント板などの乾式外装材に有用であり、特に、目地の止水性能を向上するのに適している。
【符号の説明】
【0030】
10 乾式外装材
12,13 目地
14 中空部
16 嵌合部
18,20,30,40,42,43,46,54 不定形シール材
22 クリップ
24 ボルト
26 平ナット
28,48,50 パッキン材
32 躯体
33,34,44 アングル(ピース)
35,36 アングル(通し)
52 角型鋼管
100~600 乾式外装材の止水構造
A 屋外側(外側領域)
B 屋内側(内側領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7