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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ及びタイヤセット
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20240814BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20240814BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240814BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B60C11/13 B
B60C5/00 H
B60C11/03 C
B60C11/03 100A
B60C11/03 B
B60C11/00 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020103258
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021195026
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】安永 智一
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-093659(JP,A)
【文献】特開2014-133486(JP,A)
【文献】特開2014-125119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる周方向溝が形成されたトレッドを備え、
前記周方向溝は、タイヤ幅方向の一方側に位置する第1側壁面と、タイヤ幅方向の他方側に位置する第2側壁面と、前記第1側壁面及び前記第2側壁面それぞれのタイヤ径方向内端に連なる底壁面とで画定されており、
前記第1側壁面の色は、前記トレッドを構成するゴムの色及び前記第2側壁面の色とは異なり、
前記トレッドは、車両前進時のタイヤ回転方向が定められている、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記トレッドは、前記第1側壁面が車幅方向内側に位置し、前記第2側壁面が車幅方向外側に位置するように、配置が定められている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第2側壁面の色は、前記トレッドのゴムの色と同じである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第2側壁面の色は、前記トレッドのゴムの色とは異なる、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
タイヤ周方向に延びる周方向溝が形成されたトレッドを備え、
前記周方向溝は、タイヤ幅方向の一方側に位置する第1側壁面と、タイヤ幅方向の他方側に位置する第2側壁面と、前記第1側壁面及び前記第2側壁面それぞれのタイヤ径方向内端に連なる底壁面とで画定されており、
前記第1側壁面の色は、前記トレッドを構成するゴムの色及び前記第2側壁面の色とは異なり、
前記第2側壁面の色は、前記トレッドのゴムの色とは異なる、
空気入りタイヤ。
【請求項6】
タイヤ周方向に延びる周方向溝が形成されたトレッドを備え、
前記周方向溝は、タイヤ幅方向の一方側に位置する第1側壁面と、タイヤ幅方向の他方側に位置する第2側壁面と、前記第1側壁面及び前記第2側壁面それぞれのタイヤ径方向内端に連なる底壁面とで画定されており、
前記第1側壁面の色は、前記トレッドを構成するゴムの色及び前記第2側壁面の色とは異なる
複数の空気入りタイヤを備え、
前記複数の空気入りタイヤの前記第1側壁面の色はそれぞれ異なる、
タイヤセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤ及びタイヤセットに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる周方向溝が形成されたトレッドを備える。周方向溝は、タイヤ幅方向に間隔をあけて位置する一対の側壁面と、一対の側壁面それぞれのタイヤ径方向内端に連なる底壁面とで画定されている。特許文献1に開示された空気入りタイヤには、周方向溝の側壁面に、トレッドの摩耗度合いの判別を目的とした識別線が設けられている。識別線は、トレッドを構成するゴムとは異なる色で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-125119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空気入りタイヤを車両に装着する際、車両内外に対する空気入りタイヤの配置に注意が必要な場合がある。しかし、特許文献1では、空気入りタイヤの配置について何も考慮されていないため、車両に対して正しくない配置で誤装着される場合がある。よって、特許文献1の空気入りタイヤには、車両への誤装着対策に関して改良の余地がある。
【0005】
本発明は、車両に対する空気入りタイヤの誤装着を抑制できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、タイヤ周方向に延びる周方向溝が形成されたトレッドを備え、前記周方向溝は、タイヤ幅方向の一方側に位置する第1側壁面と、タイヤ幅方向の他方側に位置する第2側壁面と、前記第1側壁面及び前記第2側壁面それぞれのタイヤ径方向内端に連なる底壁面とで画定されており、前記第1側壁面の色は、前記トレッドを構成するゴムの色及び前記第2側壁面の色とは異なり、前記トレッドは、車両前進時のタイヤ回転方向が定められている、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
本態様では、タイヤ幅方向の一方側に位置する第1側壁面の色が、トレッドを構成するゴムの色及び第2側壁面の色とは異なる。そのため、車両への装着状態で、車両の外側から第1側壁面の色が見えるか否かによって、空気入りタイヤの配置の正誤を容易に判断できる。よって、車両に対する空気入りタイヤの誤装着を抑制できる。また、車両に対して空気入りタイヤを装着する際の作業性を向上できる。
【0009】
本態様では、タイヤ回転方向が定められているため、車両内外に対して空気入りタイヤを全て正しい配置(向き)で装着した場合、車両の左右のうち、一方では外側から第1側壁面を目視でき、他方では外側から第2側壁面を目視できる。つまり、車両の外側から見える周方向溝の色が左右で異なるか否かにより、空気入りタイヤの配置の正誤を容易に判断できるため、車両に対する空気入りタイヤの誤装着を抑制できる。
【0010】
前記トレッドは、前記第1側壁面が車幅方向内側に位置し、前記第2側壁面が車幅方向外側に位置するように、配置が定められている。
【0011】
本態様では、車両内外に対する空気入りタイヤの配置が定められているため、車両に対して空気入りタイヤを全て正しい配置で装着した場合、車両の左右いずれでも、外側から第1側壁面のみを目視できる。つまり、第1側壁面の色が見えるか否かにより、空気入りタイヤの配置の正誤を容易に判断できるため、車両に対する空気入りタイヤの誤装着を抑制できる。
【0012】
前記第2側壁面の色は、前記トレッドのゴムの色と同じである。
【0013】
本態様では、第2側壁面の色がトレッドのゴムの色と同じであるため、第2側壁面には塗料の塗布等による着色は不要である。よって、空気入りタイヤの製造時、第2側壁面の着色工程が不要であるため、生産性を向上できる。
【0014】
前記第2側壁面の色は、前記トレッドのゴムの色とは異なる。
【0015】
本態様では、第2側壁面の色がトレッドのゴムの色とは異なるため、車両の外側から見えるのが第2側壁面であるのか否かの識別性を向上できる。よって、車両に対する空気入りタイヤの誤装着判断の作業性を向上できる。
【0016】
本発明の他の態様は、タイヤ周方向に延びる周方向溝が形成されたトレッドを備え、前記周方向溝は、タイヤ幅方向の一方側に位置する第1側壁面と、タイヤ幅方向の他方側に位置する第2側壁面と、前記第1側壁面及び前記第2側壁面それぞれのタイヤ径方向内端に連なる底壁面とで画定されており、前記第1側壁面の色は、前記トレッドを構成するゴムの色及び前記第2側壁面の色とは異なる複数の空気入りタイヤを備え、前記複数の空気入りタイヤの前記第1側壁面の色はそれぞれ異なる、タイヤセットを提供する。
【0017】
本態様では、タイヤ幅方向の一方側に位置する第1側壁面の色が、トレッドを構成するゴムの色及び第2側壁面の色とは異なるため、前述のように、車両に対する空気入りタイヤの誤装着を抑制できる。また、複数の空気入りタイヤの第1側壁面の色がそれぞれ異なる。よって、摩耗の均一化を1つの目的としたタイヤローテーション時、車両に対する複数の空気入りタイヤの配置を色で管理できるため、複数の空気入りタイヤのうちのいずれかの摩耗が過度に進むような誤装着を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、車両に対する空気入りタイヤの誤装着を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの断面図。
図2図1の空気入りタイヤのトレッドを示す部分展開図。
図3図1のIII部分を拡大した断面図。
図4】車両への装着状態を示す概略図。
図5】第2実施形態の空気入りタイヤの一部を示す断面図。
図6】第3実施形態の空気入りタイヤのトレッドを示す部分展開図。
図7】第4実施形態の空気入りタイヤのローテーション後の状態を示す概略図。
図8】推奨ローテーションシートを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という)1を示す。図1に示すように、タイヤ1は、トレッド2、一対のサイドウォール3A,3B、及び一対のビード部4A,4Bを備える。
【0022】
トレッド2は、円筒状であり、タイヤ幅方向TWに延び、タイヤ周方向に延在している。トレッド2のうち、タイヤ径方向TRの最も外側に位置する踏面には、タイヤ径方向内側TRiへ窪み、タイヤ周方向に延びる円環状の周方向溝10が形成されている。周方向溝10は、タイヤ幅方向TWへ間隔をあけて複数設けられている。
【0023】
サイドウォール3A,3Bは、それぞれ円環状であり、トレッド2のタイヤ幅方向TWの両端にそれぞれ連なり、タイヤ径方向内側TRiへ延びている。本明細書において、トレッド2とサイドウォール3A,3Bの境界はそれぞれ、トレッド2の内周面の頂部に接し、タイヤ幅方向TWへ延びるように引いた接線部分である。
【0024】
ビード部4A,4Bは、それぞれ円環状であり、サイドウォール3A,3Bのタイヤ径方向TRの内端にそれぞれ連なっている。ビード部4A,4Bは、図示しないホイールのリムにそれぞれ嵌合される。
【0025】
以上の基本構造を備えるタイヤ1はホイールに組み付けられ、このホイールを介して車両20に装着される(図4参照)。車両20に対するタイヤ1の装着時、指定とは異なる配置でのタイヤ1の装着を抑制するために、本実施形態の周方向溝10は、タイヤ1の配置を確認するための着色部15を備える。なお、車両20に対するタイヤ1の装着時とは、ホイールに対するタイヤ1の装着が含まれる。
【0026】
以下、トレッド2の構成について、より具体的に説明する。なお、本明細書においてタイヤ幅方向TWの内側とは、タイヤ赤道線CL側のことを意味する。タイヤ幅方向TWの外側とは、タイヤ赤道線CLから離れる向きのことを意味し、図1のタイヤ1では、図1においてサイドウォール3A側である左側と、図1においてサイドウォール3B側である右側とがある。また、本明細書においては、図1においてサイドウォール3A側である左側がタイヤ幅方向TWの一方側であり、図1においてサイドウォール3B側である右側がタイヤ幅方向TWの他方側である。
【0027】
図1及び図2に示すように、トレッド2は、複数(本実施形態では4本)の周方向溝10によって、タイヤ幅方向TWに並設された複数(本実施形態では5個)のリブ(陸部)11を備える。以下の説明では、複数の周方向溝10のうち、図1及び図2において最も左側に位置する方から右側へ順番に10A,10B,10C,10Dと言うことがある。また、複数のリブ11のうち、図1及び図2において最も左側に位置する方から右側へ順番に11A,11B,11C,11D,11Eと言うことがある。
【0028】
リブ11Aは、周方向溝10Aに対してタイヤ幅方向左側TWaに形成されたショルダーリブである。リブ11Bは、周方向溝10A,10Bの間に形成されたクォーターリブである。リブ11Cは、周方向溝10B,10Cの間に形成されたセンターリブである。リブ11Dは、周方向溝10C,10Dの間に形成されたクォーターリブである。リブ11Eは、周方向溝10Dに対してタイヤ幅方向右側TWbに形成されたショルダーリブである。
【0029】
リブ11A~11Eにはそれぞれ、タイヤ径方向TRの外側から内側へ窪み、タイヤ幅方向TWに延びる細溝12A~12Eが形成されている。本実施形態の細溝12A~12Eは、車両前進時のタイヤ回転方向RDが図2において上向きに指定された方向性パターンを呈するように形成されている。
【0030】
詳しくは、細溝12A~12Eはそれぞれ、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。リブ11Cに形成された細溝12Cは、傾斜する向きが異なる第1溝と第2溝を備える。これらは、タイヤ赤道線CL側からタイヤ幅方向TWの外側に向けてタイヤ回転方向RDとは逆向きに傾斜している。リブ11A,11B,11D,11Eにそれぞれ形成された細溝12A,12B,12D,12Eはそれぞれ、タイヤ赤道線CL側からタイヤ幅方向TWの外側に向けてタイヤ回転方向RDとは逆向きに傾斜している。タイヤ赤道線CLよりもタイヤ幅方向左側TWaに位置する細溝12A~12Cと、タイヤ赤道線CLよりもタイヤ幅方向右側TWbに位置する細溝12E~12Cとは、タイヤ赤道線CLを対称軸として線対称である。
【0031】
図4は、車両20を垂直方向の上側から見た状態を示している。前述のような細溝12A~12Eを備えるタイヤ1は、図2において左側に位置するリブ11Aが車幅方向CWの左側に位置し、図2において右側に位置するリブ11Eが車幅方向CWの右側に位置するように、車両20に装着する必要がある。つまり、図4において左側に位置する2本のタイヤ1A,1Bについては、リブ11Aが車幅方向CWの外側に位置し、リブ11Eが車幅方向CWの内側に位置する配置で、車両20に装着される。また、図4において右側に位置する2本のタイヤ1C,1Dについては、リブ11Aが車幅方向CWの内側に位置し、リブ11Eが車幅方向CWの外側に位置する配置で、車両20に装着される。これにより、車両20の前進時、タイヤ1は指定されたタイヤ回転方向(向き)RDへ回転する。なお、車幅方向CWの内側とは車両中心線CCL側のことを意味し、車幅方向CWの外側とは車両中心線CCLから離れる向きのことを意味する。
【0032】
図1及び図3に示すように、着色部15は、複数の周方向溝10のタイヤ幅方向左側(一方側)TWaに位置するように、それぞれ設けられている。但し、着色部15は、複数の周方向溝10A~10Dのうちのいずれか1つだけに設けられてもよい。より具体的には以下の通りである。
【0033】
周方向溝10は、タイヤ幅方向左側TWaに位置する第1側壁面10aと、タイヤ幅方向右側TWbに位置する第2側壁面10bと、タイヤ径方向内側TRiに位置する底壁面10cとで画定されている。
【0034】
第1側壁面10aと第2側壁面10bは、タイヤ幅方向TWに間隔をあけて位置し、タイヤ径方向TRにそれぞれ延びている。第1側壁面10aは、周方向溝10A~10Dのタイヤ幅方向左側TWaに位置するリブ11A~11Dの壁を構成する。第2側壁面10bは、周方向溝10A~10Dのタイヤ幅方向右側TWbに位置するリブ11B~11Eの壁を構成する。本実施形態の側壁面10a,10bはそれぞれ、所定曲率の接続アール部10dを介してリブ11の外表面11aに連続している。
【0035】
底壁面10cは、側壁面10a,10bそれぞれのタイヤ径方向TRの内端に連なり、タイヤ幅方向TWに延びている。本実施形態の底壁面10cは、所定曲率の接続アール部10eを介して側壁面10a,10bにそれぞれ連続している。
【0036】
周方向溝10の溝幅GW、つまり第1側壁面10aから第2側壁面10bまでのタイヤ幅方向TWの距離は、5mm以上25mm以下に設定されている。溝幅GWを過度に狭くした場合、排水性を確保できないうえ、タイヤ幅方向TWの外側から周方向溝10を見たときに、第1側壁面10a又は第2側壁面10bを目視し難くなる。溝幅GWを過度に広くした場合、路面に接地するリブ11の面積を確保できない。これらの不都合を防ぐために、溝幅GWは上記定められた範囲に設定することが好ましい。
【0037】
着色部15は、第1側壁面10aの外表面を構成する。着色部15は、リブ11の外表面11aを構成するゴムの色とは異なる色で形成されている。より好ましくは、着色部15は、明度と彩度を考慮し、リブ11の外表面11aとの違いを識別し易い色で形成されている。例えば、外表面11aのゴム色は一般的に黒であるため、着色部15の色には、白、赤、青、緑、黄、茶、紫、銀、金、並びに淡い色等を使用できる。
【0038】
周方向溝10のうち、第1側壁面10a以外の部分、つまり第2側壁面10bと底壁面10cには、着色部15は設けられていない。従って、第2側壁面10bと底壁面10cの色は、リブ11の外表面11aと同じ色(一般的には黒)である。
【0039】
着色部15は、加硫前のグリーンタイヤの外表面に塗布された識別用のカラーインク(塗料)によって構成されたインク層からなる。カラーインクとしては、所定の粘度を有し、所定の固形分を有するものを使用できる。但し、着色部15は、インク層に限られず、顔料又は染料によって着色した色ゴム層であってもよい。また、着色部15は、タイヤ1の加硫成型後に設けられてもよい。
【0040】
本実施形態の着色部15は、第1側壁面10aに連なる接続アール部10d,10eを含む円環状の第1側壁面10a全面に設けられている。つまり、着色部15は、接続アール部10d,10eを含む第1側壁面10aのタイヤ径方向TRの外端から内端にかけて設けられている。
【0041】
但し、着色部15は、第1側壁面10aに対してタイヤ周方向に間隔をあけて断続的に複数設けられてもよい。また、着色部15は、第1側壁面10aのタイヤ径方向TRの一部だけに設けられてもよい。また、着色部15は、接続アール部10d,10eには設けなくてもよい。
【0042】
第1側壁面10aのタイヤ径方向TRの一部だけに着色部15を設ける場合、接続アール部10d,10eを含む第1側壁面10aのタイヤ径方向TRの寸法(高さ)、つまり溝深さGD(例えば8mm)に対して着色部15のタイヤ径方向TRの寸法(幅)が占める割合は、50%以上とすることが好ましい。これは、着色部15の幅を過度に狭くした場合、タイヤ幅方向TWの外側からの着色部15の識別が困難になるためである。
【0043】
着色部15は、第1側壁面10aのタイヤ径方向TRの一部だけに設ける場合、第1側壁面10aの外径側に設けられてもよいし、第1側壁面10aの内径側に設けられてもよい。着色部15を外径側に設けた場合、タイヤ幅方向TWの外側から周方向溝10を見たときに着色部15を容易に識別できる。着色部15を内径側に設けた場合、一定期間使用されてトレッド2の摩耗がある程度進行したタイヤ1をローテーションする際にも着色部15を識別できる。着色部15を第1側壁面10a全面に設けた場合、両方の効果を得ることができる。
【0044】
このように構成したタイヤ1を車両20に対して正しい配置(向き)で装着した場合、車両20の左右のうち、右外側からタイヤ1を見ると第1側壁面10aを目視でき、左外側からタイヤ1を見ると第2側壁面10bを目視できる。つまり、車両20の右外側から周方向溝10を見ると着色部15を目視でき、車両20の左外側から周方向溝10を見ると着色部15を目視できない。よって、車両20の外側から見える周方向溝10の色が左右で異なるか否かにより、タイヤ1の配置の正誤を容易に判断できる。
【0045】
このように構成した空気入りタイヤ1は、以下の特徴を有する。
【0046】
タイヤ幅方向TWの一方側に位置する第1側壁面10aの色が、トレッド2を構成するゴムの色及びタイヤ幅方向TWの他方側に位置する第2側壁面10bの色とは異なる。そのため、車両20への装着状態で、車両20の外側から第1側壁面10aの色が見えるか否かによって、タイヤ1の配置の正誤を容易に判断できる。よって、車両20に対するタイヤ1の誤装着を抑制できる。また、車両20に対してタイヤ1を装着する際の作業性を向上できる。しかも、車両20に対するタイヤ1の装着に関して機械による自動化が実現した場合、第1側壁面10aの色を画像解析によって識別可能なため、タイヤ1の配置の正誤判断も自動化できる。
【0047】
車両前進時のタイヤ回転方向RDが定められている。そのため、車両20内外に対してタイヤ1を全て正しい配置(向き)で装着した場合、車両20の左右のうち、一方では外側から第1側壁面10aを目視でき、他方では外側から第2側壁面10bを目視できる。つまり、車両20の外側から見える周方向溝10の色が左右で異なるか否かにより、タイヤ1の配置の正誤を容易に判断できるため、車両20に対するタイヤ1の誤装着を抑制できる。
【0048】
第2側壁面10bの色はトレッド2のゴム色と同じである。そのため、第2側壁面10bには塗料の塗布等による着色は不要である。よって、タイヤ1の製造時、第2側壁面10bの着色工程が不要であるため、生産性を向上できる。
【0049】
(第2実施形態)
図5は第2実施形態のタイヤ1に形成した周方向溝10を示す。第2実施形態のタイヤ1は、周方向溝10を画定する側壁面10a,10bがそれぞれ着色部15,16を備える点で第1実施形態のタイヤ1と相違しており、その他の構成は第1実施形態のタイヤ1と同様である。
【0050】
具体的には、第1側壁面10aに形成された着色部15の構成は、第1実施形態と同様である。底壁面10cには着色部は設けられていない。
【0051】
着色部16は、第2側壁面10bの外表面を構成する。着色部16の色は、リブ11の外表面11aのゴム色、及び第1側壁面10aの着色部15の色とは異なる点で、第1側壁面10aの着色部15と相違しており、その他の構成は第1側壁面10aの着色部15と同様である。
【0052】
着色部16として使用可能な色は、着色部15として使用可能な色と同様である。そのうち、着色部15,16は、識別性が良い組み合わせで異なる色に設定されている。例えば、着色部15を赤色として着色部16を青色とする。
【0053】
このように構成したタイヤ1を車両20に対して正しい配置(向き)で装着した場合、車両20の右外側から周方向溝10を見ると着色部15を目視でき、車両20の左外側から周方向溝10を見ると着色部16を目視できる。つまり、車両20の外側から見える周方向溝10の色が左右で異なるか否かにより、タイヤ1の配置の正誤を容易に判断できる。よって、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0054】
しかも、第2実施形態では、第2側壁面10bの色がトレッド2のゴム色とは異なるため、車両20の外側から見えるのが第2側壁面10bであるのか否かの識別性を向上できる。また、着色部15,16の色は異なるため、誤認することはない。よって、車両20に対するタイヤ1の誤装着判断の作業性を向上できる。
【0055】
(第3実施形態)
図6は第3実施形態のタイヤ1を示す。第3実施形態のタイヤ1は、非対称パターンを呈するように、トレッド2のリブ11A~11Eに細溝12A~12Eが形成されている点で、第1実施形態のタイヤ1と相違する。
【0056】
具体的には、図6に示すように、トレッド2は、周方向溝10A~10Dによって、タイヤ幅方向TWに並設された複数のリブ(陸部)11A~11Eを備える。リブ11A~11Eにはそれぞれ、タイヤ径方向TRの外側から内側へ窪む細溝12A~12Eが形成されている。これらは、タイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0057】
リブ11Aに形成された細溝12Aは、タイヤ周方向の幅が異なる第1溝と第2溝を備える。これらは、図6においてタイヤ幅方向TWの左側から右側に向けて右上がりに傾斜している。リブ11Bに形成された細溝12Bは、リブ11Bのタイヤ幅方向TWの左端から右上がりに傾斜した第1溝と、リブ11Bのタイヤ幅方向TWの右端から左下がりに傾斜した第2溝とを備える。リブ11Cに形成された細溝12Cは、リブ11Cのタイヤ幅方向TWの左端から右上がりに傾斜した第1部分と、第1部分の右端からタイヤ周方向に延びる第2部分とを備える。リブ11Dに形成された細溝12Dは、リブ11Dのタイヤ幅方向TWの中央においてタイヤ周方向に延びている。リブ11Eに形成された細溝12Eは、概ねタイヤ幅方向TWに延びている。
【0058】
個々のリブ11A~11Eに対してそれぞれ異なる形状の細溝12A~12Eが形成されたトレッド2は、全体として非対称な形状を有する(非対称パターン)。そのため、トレッド2は、第1側壁面10aが車幅方向内側(車両中心線CCL側)CWiに位置し、第2側壁面10bが車幅方向外側(車両中心線CCLから離れる側)CWoに位置するように、配置が定められている。言い換えれば、図6において左側に位置するリブ11Aが車幅方向内側CWiに位置し、図6において右側に位置するリブ11Eが車幅方向外側CWoに位置するように、図4に示す車両20に対するタイヤ1の配置が指定される。つまり、リブ11Aが車幅方向内側CWiに位置し、リブ11Eが車幅方向外側CWoに位置する配置で、4本のタイヤ1A~1Dが車両20に装着される。但し、タイヤ1にはタイヤ回転方向の指定はなく、第1回転方向RD1及び第2回転方向RD2のいずれの回転も許容される。
【0059】
このような非対称パターンを備えるトレッド2のうち、周方向溝10にはそれぞれ、タイヤ1の配置を確認するための着色部15が設けられている。着色部15は、図3に示す第1実施形態と同様に、複数の周方向溝10のタイヤ幅方向左側(一方側)TWaに位置するように、それぞれ設けられている。但し、着色部15は、複数の周方向溝10A~10Dのうちのいずれか1つだけに設けられてもよい。
【0060】
このように構成したタイヤ1を車両20に対して正しい配置で装着した場合、車両20の左右いずれでも、外側から第1側壁面10aのみを目視できる。つまり、車両20の外側から周方向溝10を見ると着色部15を目視できる。よって、第1側壁面10aの色が見えるか否かにより、タイヤ1の配置の正誤を容易に判断できる。よって、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0061】
(第3実施形態の変形例)
トレッド2は、側壁面10aが車幅方向外側CWoに位置し、側壁面10bが車幅方向内側CWiに位置するように、配置が定められてもよい。つまり、図6において左側に位置するリブ11Aが車幅方向外側CWoに位置し、図6において右側に位置するリブ11Eが車幅方向内側CWiに位置するように、図4に示す車両20に対するタイヤ1の配置が指定されてもよい。この場合、車両20に対して正しい配置で装着すると、外側から第2側壁面10bのみを目視できる。つまり、車両20の外側から周方向溝10を見ると着色部15を目視できない。よって、この場合でもタイヤ1の配置の正誤を容易に判断できるため、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0062】
このように、非対称パターンのタイヤ1の場合、車両20に対してタイヤ1を全て正しい配置で装着すると、車両20の左右いずれでも、外側から第1側壁面10aのみ又は第2側壁面10bのみを目視できる。よって、第1側壁面10aの色が見えるか否かにより、タイヤ1の配置の正誤を容易に判断できるため、車両20に対するタイヤ1の誤装着を抑制できる。
【0063】
(第3実施形態の他の変形例)
第3実施形態のタイヤ1には、図5に示す第2実施形態と同様に、周方向溝10を画定する側壁面10a,10bにそれぞれ異なる色の着色部15,16を設けてもよい。この場合、車幅方向CWの外側から見た周方向溝10の色が全て同じであるか否かにより、タイヤ1の配置の正誤を容易に判断できるため、車両20に対するタイヤ1の誤装着を抑制できる。しかも、第2実施形態と同様に識別性を向上できるため、車両20に対するタイヤ1の誤装着判断の作業性を向上できる。
【0064】
(第4実施形態)
図7は、図4に示す配置で一定期間使用した第4実施形態のタイヤ1をローテーションした状態を示す。この第4実施形態では、4本のタイヤ1A~1Dが1組のタイヤセットとして構成されている。タイヤローテーションは、タイヤ1A~1Dの摩耗の均一化を1つの目的として行われる。
【0065】
個々のタイヤ1A~1Dは、第3実施形態のタイヤ1と同様の構成であり、図3に示すように第1側壁面10aだけに着色部15を有し、図6に示すように非対称パターンのトレッド2を備える。4本のタイヤ1A~1Dのうち、それぞれが備える第1側壁面10aの着色部15の色は、全て異なっている。例えば、タイヤ1Aの着色部15の色は赤であり、タイヤ1Bの着色部15の色は青であり、タイヤ1Cの着色部15の色は緑であり、タイヤ1Dの着色部15の色は黄である。但し、タイヤ1A~1Dの着色部15の色はそれぞれ、識別し易い配色であれば必要に応じて変更が可能である。
【0066】
図8は、タイヤ1A~1Dの推奨ローテーション表25を示す。この推奨ローテーション表25には、未使用のタイヤ1A~1Dを新規装着する際の配置と、一定期間使用したタイヤ1A~1Dをローテーションする際の配置とが記載されている。個々のタイヤ1A~1Dの横には、符号の代わりに着色部15の色が記載されている。
【0067】
タイヤセットを構成する個々のタイヤ1では、タイヤ幅方向TWの一方側に位置する第1側壁面10aの色が、トレッド2を構成するゴムの色及び第2側壁面10bの色とは異なるため、第3実施形態と同様に車両20に対する誤装着を抑制できる。
【0068】
また、タイヤ1A~1Dの第1側壁面10aの色がそれぞれ異なっている。そのため、車両20に対する複数のタイヤ1A~1Dの配置を色で管理できるため、複数のタイヤ1A~1Dのうちのいずれかの摩耗が過度に進むような誤装着を抑制できる。例えば、ローテーション前の配置とローテーション後の配置が同じ位置になるという誤装着を抑制できる。しかも、車両20に対するタイヤ1の装着に関して機械による自動化が実現した場合、第1側壁面10aの色を画像解析によって識別可能なため、タイヤ1の配置の正誤判断も自動化できる。
【0069】
なお、本発明の空気入りタイヤ1は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0070】
例えば、第1実施形態及び第2実施形態に示す方向性パターンを備えるタイヤ1においても、第4実施形態のように4本を1組のタイヤセットとし、それぞれのタイヤ1の着色部15,16を異なる色とし、推奨ローテーション表25を形成してもよい。
【0071】
トレッド2は、タイヤ周方向に延びるリブ11を備えるリブパターンに限られず、周方向溝10に加えて、タイヤ幅方向TWに延びる横溝をタイヤ周方向に間隔をあけて複数設け、周方向溝10と横溝とで区画されたブロックパターンで構成されてもよい。
【0072】
タイヤ1は、タイヤ回転方向RDが指定された方向性パターン、及び車両20の内外配置が指定された非対称パターンに限られず、方向性と車両内外配置の両方が指定された方向性非対称パターンであってもよい。また、タイヤ1は、方向性及び車両内外配置のいずれも指定されない汎用パターンであってもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,1A~1D 空気入りタイヤ
2 トレッド
3A,3B サイドウォール
4A,4B ビード部
10,10A~10D 周方向溝
10a 第1側壁面
10b 第2側壁面
10c 底壁面
10d,10e 接続アール部
11,11A~11E リブ
11a 外表面
12A~12E 細溝
15,16 着色部
20 車両
25 推奨ローテーション表
CL タイヤ赤道線
TW タイヤ幅方向
TWa タイヤ幅方向左側(一方側)
TWb タイヤ幅方向右側(他方側)
TR タイヤ径方向
TRi タイヤ径方向内側
TRo タイヤ径方向外側
RD タイヤ回転方向
CW 車幅方向
CCL 車両中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8