(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】オレフィン系ブロック共重合体を含む樹脂材料、成形体、および、オレフィン系ブロック共重合体を含む樹脂材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20240814BHJP
C08F 297/08 20060101ALI20240814BHJP
C08F 4/06 20060101ALI20240814BHJP
C08F 4/64 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
C08L53/00
C08F297/08
C08F4/06
C08F4/64
(21)【出願番号】P 2020111541
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】柳本 泰
(72)【発明者】
【氏名】中島 真実
(72)【発明者】
【氏名】菊地 誠也
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181781(WO,A1)
【文献】特開2004-359798(JP,A)
【文献】国際公開第2001/055231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F297
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系ブロック共重合体を含む樹脂材料であって、
前記オレフィン系ブロック共重合体は、α-オレフィンに由来する構造単位(a1)と、環状オレフィンに由来する構造単位(a2)とを有し、
前記オレフィン系ブロック共重合体は、下記要件(A)~(C)を満たす、第1および第2のポリオレフィンセグメントAとポリオレフィンセグメントBとを少なくとも含み、
前記第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、少なくとも前記ポリオレフィンセグメントBによって分離され、
前記第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、前記オレフィン系ブロック共重合体の末端に位置している、樹脂材料。
<要件>
(A)前記第1および第2のポリオレフィンセグメントA中の、前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)の合計含有量を100モル%としたとき、前記第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、前記構造単位(a1)0~80モル%および前記構造単位(a2)20~100モル%を含む。
(B)前記ポリオレフィンセグメントB中の、前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)の合計含有量を100モル%としたとき、前記ポリオレフィンセグメントBは、前記構造単位(a1)40~100モル%および前記構造単位(a2)0~60モル%を含む。
(C)前記ポリオレフィンセグメントBに含まれる前記構造単位(a1)の含有比率は、前記ポリオレフィンセグメントAに含まれる前記構造単位(a1)の含有比率よりも大きい。
【請求項2】
前記オレフィン系ブロック共重合体はトリブロック共重合体を含む、請求項1に記載の樹脂材料。
【請求項3】
前記α-オレフィンはエチレンである、請求項1または2に記載の樹脂材料。
【請求項4】
前記環状オレフィンは下記一般式(1)または(2)で表される化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【化1】
一般式(1)において、
nは0または1であり、
mは0または正の整数であり、
qは0または1であり、
R
1~R
18ならびにR
aおよびR
bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表す。R
15~R
18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、この単環または多環は二重結合を有していてもよい。また、R
15とR
16とで、またはR
17とR
18とでアルキリデン基を形成していてもよい。
qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
【化2】
一般式(2)において、
pおよびqはそれぞれ独立に0または1以上の整数であり、
mおよびnはそれぞれ独立に0、1または2であり、
R
1~R
19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、
R
9
および/またはR
10
が水素原子である場合は、R
9およびR
10が結合している炭素原子と、R
13またはR
11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R
15とR
12またはR
15とR
19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【請求項5】
前記環状オレフィンが、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]-3-ドデセン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.1
10,13.0
2,7.0
9,14]-4-ヘプタデセン誘導体、オクタシクロ[8.8.0.1
2,9.1
4,7.1
11,18.1
13,16.0
3,8.0
12,17]-5-ドコセン誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.1
3,6.0
2,7.0
9,14]-4-ヘキサデセン誘導体、ヘプタシクロ-5-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン誘導体、トリシクロ[4.3.0.1
2,5]-3-デセン誘導体、トリシクロ[4.4.0.1
2,5]-3-ウンデセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.1
3,6.0
2,7.0
9,13]-4-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.1
2,5.1
9,12.0
8,13]-3-ペンタデセン誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.1
3,6.1
10,17.1
12,15.0
2,7.0
11,16]-4-エイコセン誘導体、ノナシクロ[10.9.1.1
4,7.1
13,20.1
15,18.0
3,8.0
2,10.0
12,21.0
14,19]-5-ペンタコセン誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.1
2,5.1
9,12.0
8,13]-3-ヘキサデセン誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.1
4,7.1
11,18.1
13,16.0
3,8.0
12,17]-5-ヘンエイコセン誘導体、ノナシクロ[10.10.1.1
5,8.1
14,21.1
16,19.0
2,11.0
4,9.0
13,22.0
15,20]-5-ヘキサコセン誘導体、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセン誘導体、およびシクロペンタジエン-アセナフチレン付加物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物に起因するものから選択される、1種または2種以上の環状オレフィンを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項6】
前記環状オレフィンが、ノルボルネンおよびテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]-3-ドデセンからなる群から選択される、1種または2種の環状オレフィンを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項7】
前記オレフィン系ブロック共重合体中の前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)の合計含有量を100モル%としたとき、前記構造単位(a1)は10~90モル%、前記構造単位(a2)は90~10モル%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項8】
前記ポリオレフィンセグメントBの含有量は、当該樹脂材料中に含まれる樹脂の全量に対して50~95質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項9】
135℃のデカリン中での極限粘度[η]は0.05~10dl/gである、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂材料。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂材料により構成された成形体。
【請求項11】
α-オレフィンに由来する構造単位(a1)と、環状オレフィンに由来する構造単位(a2)とを有するオレフィン系ブロック共重合体を含む樹脂材料の製造方法であって、
当該製造方法は、オレフィン重合触媒の存在下で、α-オレフィンおよび/または環状オレフィンを重合する下記(工程A)~(工程C)をこの順に含み、
前記オレフィン重合触媒は、
(I)下記構造式で表される遷移金属化合物と、
(II)メチルアルミノキサンからなる、
オレフィン系樹脂の製造方法。
<工程>
(工程A)前記構造単位(a1)0~80モル%および前記構造単位(a2)20~100モル%を含む重合体ブロックを生成する工程
(工程B)前記工程Aで得られた重合体ブロックの存在下で、前記構造単位(a1)40~100モル%および前記構造単位(a2)0~60モル%を含む重合体ブロックを生成する工程であって、その重合体ブロック中の前記構造単位(a1)のモル比が、前記(工程A)および以下(工程C)において生成する重合体ブロック中の構造単位(a1)のモル比よりも大きい重合体ブロックを生成する工程
(工程C)前記工程Bで得られた重合体ブロックの存在下で、前記構造単位(a1)0~80モル%および前記構造単位(a2)20~100モル%を含む重合体ブロックを生成する工程。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系ブロック共重合体を含む樹脂材料、成形体、および、オレフィン系ブロック共重合体を含む樹脂材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系樹脂は、その樹脂の剛直な構造に由来する物性として、耐衝撃性が低く、成形用途で種々の耐衝撃性向上の検討がなされている(特許文献1、2等)。
環状オレフィン系樹脂の優れた特性を維持しつつ、耐衝撃性を改良する手法として、2種以上のα-オレフィン・環状オレフィン共重合体ユニットからなるブロック共重合体を含む環状オレフィン系樹脂が提案されている(特許文献3~6、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-320268号公報
【文献】特開2009-51922号公報
【文献】特開平5-339327号公報
【文献】特開平6-41361号公報
【文献】特開2004-359798号公報
【文献】国際公開第2018/181781号
【非特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献3~6および非特許文献1によると、ランダム共重合体のみからなる環状オレフィン系樹脂に対し、環状オレフィン系のブロック共重合体は、成形体としたときの耐熱性や機械物性のバランスが良好である。
しかし、市場からは成形体のさらなる性能向上が求められている。例えば、従来の環状オレフィン系樹脂においては、成形体としたときの耐衝撃性に更なる改善が求められている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものである。本発明は、高いレベルの耐衝撃性を有する成形体を形成可能な環状オレフィン系樹脂材料を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、上記課題の解決のため鋭意研究した。その結果、特定のセグメントが組み合わさったブロック共重合体を含む樹脂材料が、高いレベルの耐衝撃性を有することを見出した。
【0008】
本発明は、以下のとおりである。
【0009】
1.
オレフィン系ブロック共重合体を含む樹脂材料であって、
前記オレフィン系ブロック共重合体は、α-オレフィンに由来する構造単位(a1)と、環状オレフィンに由来する構造単位(a2)とを有し、
前記オレフィン系ブロック共重合体は、下記要件(A)~(C)を満たす、第1および第2のポリオレフィンセグメントAとポリオレフィンセグメントBとを少なくとも含み、
前記第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、少なくとも前記ポリオレフィンセグメントBによって分離され、
前記第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、前記オレフィン系ブロック共重合体の末端に位置している、樹脂材料。
<要件>
(A)前記第1および第2のポリオレフィンセグメントA中の、前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)の合計含有量を100モル%としたとき、前記第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、前記構造単位(a1)0~80モル%および前記構造単位(a2)20~100モル%を含む。
(B)前記ポリオレフィンセグメントB中の、前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)の合計含有量を100モル%としたとき、前記ポリオレフィンセグメントBは、前記構造単位(a1)40~100モル%および前記構造単位(a2)0~60モル%を含む。
(C)前記ポリオレフィンセグメントBに含まれる前記構造単位(a1)の含有比率は、前記ポリオレフィンセグメントAに含まれる前記構造単位(a1)の含有比率よりも大きい。
2.
前記オレフィン系ブロック共重合体はトリブロック共重合体を含む、1.に記載の樹脂材料。
3.
前記α-オレフィンはエチレンである、1.または2.に記載の樹脂材料。
4.
前記環状オレフィンは下記一般式(1)または(2)で表される化合物である、1.~3.のいずれか1つに記載の樹脂材料。
【化1】
一般式(1)において、
nは0または1であり、
mは0または正の整数であり、
qは0または1であり、
R
1~R
18ならびにR
aおよびR
bは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表す。R
15~R
18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、この単環または多環は二重結合を有していてもよい。また、R
15とR
16とで、またはR
17とR
18とでアルキリデン基を形成していてもよい。
qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
【化2】
一般式(2)において、
pおよびqはそれぞれ独立に0または1以上の整数であり、
mおよびnはそれぞれ独立に0、1または2であり、
R
1~R
19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R
9およびR
10が結合している炭素原子と、R
13またはR
11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R
15とR
12またはR
15とR
19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
5.
前記オレフィン系ブロック共重合体中の前記構造単位(a1)と前記構造単位(a2)の合計含有量を100モル%としたとき、前記構造単位(a1)は10~90モル%、前記構造単位(a2)は90~10モル%である、1.~4.のいずれか1つに記載の樹脂材料。
6.
前記ポリオレフィンセグメントBの含有量は、当該樹脂材料中に含まれる樹脂の全量に対して50~95質量%である、1.~5.のいずれか1つに記載の樹脂材料。
7.
135℃のデカリン中での極限粘度[η]は0.05~10dl/gである、1.~6.のいずれか1つに記載の樹脂材料。
8.
1.~7.のいずれか1つに記載の樹脂材料により構成された成形体。
9.
α-オレフィンに由来する構造単位(a1)と、環状オレフィンに由来する構造単位(a2)とを有するオレフィン系ブロック共重合体を含む樹脂材料の製造方法であって、
当該製造方法は、オレフィン重合触媒の存在下で、α-オレフィンおよび/または環状オレフィンを重合する下記(工程A)~(工程C)をこの順に含み、
前記オレフィン重合触媒は、
(I)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物と、
(II)(II-1)有機金属化合物、(II-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、(II-3)前記遷移金属化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる、
オレフィン系樹脂の製造方法。
<工程>
(工程A)前記構造単位(a1)0~80モル%および前記構造単位(a2)20~100モル%を含む重合体ブロックを生成する工程
(工程B)前記工程Aで得られた重合体ブロックの存在下で、前記構造単位(a1)40~100モル%および前記構造単位(a2)0~60モル%を含む重合体ブロックを生成する工程であって、その重合体ブロック中の前記構造単位(a1)のモル比が、前記(工程A)および以下(工程C)において生成する重合体ブロック中の構造単位(a1)のモル比よりも大きい重合体ブロックを生成する工程
(工程C)前記工程Bで得られた重合体ブロックの存在下で、前記構造単位(a1)0~80モル%および前記構造単位(a2)20~100モル%を含む重合体ブロックを生成する工程。
【化3】
一般式(I)中、
Mは、周期律表4~5族の遷移金属原子を示し、
mは、1~4の整数を示し、
R
1は、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、アリール基または複素環式化合物残基を示し、
R
2~R
5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、
R
6は、1つまたは複数の置換基を有していてもよいフェニル基、1つまたは複数の置換基を有していてもよいナフチル基、1つまたは複数の置換基を有していてもよいビフェニル基、1つまたは複数の置換基を有していてもよいターフェニル基および1つまたは複数の置換基を有していてもよいフェナントリル基から選ばれる基を示し、また、mが2以上の場合にはR
1~R
6で示される基のうち2個の基が連結されていてもよく(ただしR
1同士が結合されることはない)、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高いレベルの耐衝撃性を有する成形体を形成可能な環状オレフィン系樹脂材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】成形体中でのオレフィン系ブロック共重合体について説明するためのイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0013】
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0014】
以下、オレフィン系ブロック共重合体のことを、省略して「ブロック共重合体」または単に「共重合体」と記載する場合がある。
【0015】
<樹脂材料>
(オレフィン系ブロック共重合体)
本実施形態の樹脂材料は、オレフィン系ブロック共重合体を含む。
オレフィン系ブロック共重合体は、α-オレフィンに由来する構造単位(a1)と、環状オレフィンに由来する構造単位(a2)とを有する。
【0016】
オレフィン系ブロック共重合体は、下記要件(A)~(C)を満たす、第1および第2のポリオレフィンセグメントAとポリオレフィンセグメントBとを少なくとも含む。
また、第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、少なくともポリオレフィンセグメントBによって分離されている。ちなみに、オレフィン系ブロック共重合体において、第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、ポリオレフィンセグメントBと直結していてもよいし、別のセグメントを介して結合していてもよい。合成の容易性や耐衝撃性の一層の向上の観点からは、前者が好ましい。
さらに、第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、オレフィン系ブロック共重合体の末端に位置している。
<要件>
(A)第1および第2のポリオレフィンセグメントA中の、構造単位(a1)と構造単位(a2)の合計含有量を100モル%としたとき、第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、構造単位(a1)0~80モル%および構造単位(a2)20~100モル%を含む。
(B)ポリオレフィンセグメントB中の、構造単位(a1)と構造単位(a2)の合計含有量を100モル%としたとき、ポリオレフィンセグメントBは、構造単位(a1)40~100モル%および構造単位(a2)0~60モル%を含む。
(C)ポリオレフィンセグメントBに含まれる構造単位(a1)の含有比率は、ポリオレフィンセグメントAに含まれる構造単位(a1)の含有比率よりも大きい。
【0017】
念のため述べておくと、第1のポリオレフィンセグメントAと、第2のポリオレフィンセグメントAは、同一であっても異なっていてもよい。すなわち、第1のポリオレフィンセグメントAと、第2のポリオレフィンセグメントAは、それぞれが上記(A)のモル比に関する規定を満たし、かつ、上記(C)を満たす限り、互いに異なる共重合比や鎖長などを有することができる。
【0018】
オレフィン系ブロック共重合体は、好ましくはトリブロック共重合体である。オレフィン系ブロック共重合体は、より好ましくは、第1のポリオレフィンセグメントAと、ポリオレフィンセグメントBと、第2のポリオレフィンセグメントAと、がこの順に結合したトリブロック共重合体である。
【0019】
ポリオレフィンセグメントAは、ポリオレフィンセグメントBよりも小さな構造単位(a1)の含有比率を有する。よって、ポリオレフィンセグメントAは、ポリオレフィンセグメントBと比較して、剛直な構造となり、いわゆるハードセグメントを成す。一方 、ポリオレフィンセグメントBはポリオレフィンセグメントAと比較して、柔軟な構造であるいわゆるソフトセグメントを成す。このため、これらがブロック構造を形成したオレフィン系ブロック共重合体は、優れた耐衝撃性を有する。
成形体中で、オレフィン系ブロック共重合体は、ブロック共重合体どうしがハードセグメント部で凝集し、
図1でイメージされるようなネットワーク構造を形成すると考えられる。凝集したハードセグメント部は固い相となり、そこがネットワーク構造における物理的な架橋点として働くことで、得られる成形体は高い物理的強度を有すると考えられる。
特に、本実施形態のように、第1および第2のポリオレフィンセグメントAが少なくともポリオレフィンセグメントBによって分離され、第1および第2のポリオレフィンセグメントAが共重合体の末端に位置していることで、両端のハードセグメントが効率よく上記架橋点を形成すると考えられる。この物理的な架橋点は、ブロック共重合体のハードセグメントに由来することから、ネットワーク構造中に高度に分散して存在する。そのため、成形体の衝撃強度などの破壊靭性が飛躍的に向上すると考えられる。
前述の物理的な架橋点を介したネットワーク状の構造を形成する場合、ハードセグメントがブロック共重合体の両端にあると、自由末端の数が抑制されることから、さらに顕著な効果が発現すると考えられる。
以上、本実施形態の樹脂材料は、例えば特許文献6に具体的に記載されているような共重合体(ポリオレフィンセグメントAは共重合体の片末端にのみ存在し、もう片方の末端はポリオレフィンセグメントBである)に比べて優れた強度を発現しうる。
【0020】
上記要件(A)について、第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、構造単位(a1)0~80モル%および構造単位(a2)20~100モル%を含めばよい。
構造単位(a1)の含有量の好ましい範囲としては50~80モル%、より好ましい範囲としては50~75モル%、さらに好ましい範囲としては60~70モル%である。
構造単位(a2)の含有量の好ましい範囲としては20~50モル%、より好ましい範囲としては25~50モル%、さらに好ましい範囲としては30~40モル%である。
【0021】
通常、第1および第2のポリオレフィンセグメントAにおいて、構造単位(a1)と構造単位(a2)の合計は100モル%である。しかし、良好な耐衝撃性の効果が得られる限り、第1および第2のポリオレフィンセグメントAは、構造単位(a1)と構造単位(a2)以外の構造単位を含んでいてもよい。
適切なポリオレフィンセグメントAを選択することにより、ポリオレフィンセグメントAがハードセグメントとして一層適切に機能し、より高い耐衝撃性の効果を得ることができる。
【0022】
上記要件(B)について、ポリオレフィンセグメントBは、構造単位(a1)40~100モル%および構造単位(a2)0~60モル%を含めばよい。
構造単位(a1)の好ましい範囲としては50~95モル%、より好ましい範囲としては70~95モル%、さらに好ましい範囲としては80~92モル%である。
構造単位(a2)の好ましい範囲としては5~50モル%、より好ましい範囲としては5~30モル%、さらに好ましい範囲としては8~20モル%である。
【0023】
通常、ポリオレフィンセグメントBにおいて、構造単位(a1)と構造単位(a2)の合計は100モル%である。しかし、良好な耐衝撃性の効果が得られる限り、ポリオレフィンセグメントBは、構造単位(a1)と構造単位(a2)以外の構造単位を含んでいてもよい。
適切なポリオレフィンセグメントBを選択することにより、ポリオレフィンセグメントBがソフトセグメントとして一層適切に機能し、より高い耐衝撃性の効果を得ることができる。
【0024】
要件(C)について、ポリオレフィンセグメントBにおける構造単位(a1)のモル比は、ポリオレフィンセグメントAにおける構造単位(a1)のモル比よりも大きい。具体的には、ポリオレフィンセグメントBにおける構造単位(a1)のモル比は、ポリオレフィンセグメントAにおける構造単位(a1)のモル比と比較して、好ましくは20~60モル%大きく、より好ましくは30~40モル%大きい。このことにより、上述のハードセグメントとソフトセグメントの機能がより顕著に発現し、より高い耐衝撃性が得られる。
【0025】
通常、第1ポリオレフィンセグメントA、第2ポリオレフィンセグメントAおよびポリオレフィンセグメントBを構成する、それぞれの構造単位(a1)および(a2)、すなわちオレフィンモノマー種は、製造の簡便性の観点から共通していることが好ましい。
【0026】
以下、本実施形態の樹脂材料/オレフィン系ブロック共重合体についてより具体的に説明していく。
【0027】
・構造単位(a1)
α-オレフィン(モノマー)として具体的には、炭素数2~20のα-オレフィンが挙げられる。好ましくはエチレンまたはプロピレン、より好ましくはエチレンである。共重合体を得るに際して、複数種のα-オレフィン(モノマー)を用いてもよい。
【0028】
また、オレフィン系ブロック共重合体中の構造単位(a1)と構造単位(a2)の合計含有量を100モル%としたとき、構造単位(a1)は好ましくは10~90モル%、より好ましくは30~90モル%、さらに好ましくは50~90モル%、更により好ましくは65~85モル%である。
【0029】
・構造単位(a2)
環状オレフィン(モノマー)の構造は、単環構造でも多環構造でもよい。例えば、シクロペンテン構造、シクロヘキセン構造、シクロペンタジエン構造、ノルボルネン構造、ノルボルナジエン構造、ジヒドロジシクロペンタジエン構造、テトラシクロドデセン構造、トリシクロデセン構造、トリシクロウンデセン構造、ペンタシクロペンタデセン構造、ペンタシクロヘキサデセン構造等が挙げられる。
構造単位(a2)は、以下の一般式(1)または(2)で表されるモノマーから誘導される構造単位を含むことが好ましい。共重合体中における構造単位(a2)は、通常、一般的(1)または(2)における左側のC=C部分が-C-C-となった構造である。
【0030】
【0031】
一般式(1)において、
nは0または1であり、
mは0または正の整数であり、
qは0または1であり、
R1~R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表す。R15~R18は互いに結合して単環または多環を形成していてもよく、かつ、この単環または多環は二重結合を有していてもよい。また、R15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。
qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
【0032】
【0033】
一般式(2)において、
pおよびqはそれぞれ独立に0または1以上の整数であり、
mおよびnはそれぞれ独立に0、1または2であり、
R1~R19はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R9およびR10が結合している炭素原子と、R13またはR11が結合している炭素原子とは直接あるいは炭素数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またn=m=0のとき、R15とR12またはR15とR19とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。
【0034】
一般式(1)または(2)で表される環状オレフィンとしては、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4-ヘプタデセン誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ドコセン誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4-ヘキサデセン誘導体、ヘプタシクロ-5-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3-デセン誘導体、トリシクロ[4.4.0.12,5]-3-ウンデセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ペンタデセン誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]-4-エイコセン誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,19]-5-ペンタコセン誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]-3-ヘキサデセン誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5-ヘンエイコセン誘導体、ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]-5-ヘキサコセン誘導体、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセン誘導体、およびシクロペンタジエン-アセナフチレン付加物などに起因するものを挙げることができる。環状オレフィンとして特に好ましいものは、ノルボルネンおよびテトラシクロドデセン(より具体的にはテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン)であり、さらにより好ましくはテトラシクロドデセン(より具体的にはテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン)である。
【0035】
共重合体を得るに際して、環状オレフィンを1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
また、オレフィン系ブロック共重合体中の構造単位(a1)と構造単位(a2)の合計含有量を100モル%としたとき、構造単位(a2)は好ましくは10~90モル%、より好ましくは10~70モル%、さらに好ましくは10~50モル%、更により好ましくは15~35モル%である。
【0036】
・その他の構造単位
耐衝撃性を有する成形体を形成可能な限り、共重合体は、構造単位(a1)と構造単位(a2)以外の構造単位を含んでいてもよい。そのような構造単位の割合は、共重合体の全構造単位中、通常0~20モル%、好ましくは0~10モル%である。共重合体は、構造単位(a1)と構造単位(a2)以外の構造単位を含まなくてもよい。
【0037】
・ポリオレフィンセグメントBの含有量
ポリオレフィンセグメントBの含有量は、樹脂材料中に含まれる樹脂の全量に対して、好ましくは50~95質量%、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは70~90質量%である。
ちなみに、ポリオレフィンセグメントAの含有量は、樹脂材料中に含まれる樹脂の全量に対して、好ましくは20~80質量%、より好ましくは50~80質量%である。
ポリオレフィンセグメントBの含有量(およびポリオレフィンセグメントAの含有量)が上記範囲にあることにより、ハードセグメントとソフトセグメントのバランスが良く、耐衝撃性をより高めることができる。
【0038】
ここで、ポリオレフィンセグメントBの含有量を「樹脂材料中に含まれる樹脂の全量」を基準としたのは、ブロック共重合体の合成の都合や測定の都合による。具体的には、後述の実施例に記載のように、工程A-工程B-工程Cの3段階で逐次的にブロック共重合体を得る場合、所望の生成物(具体的にはトリブロック共重合体)以外に、ポリオレフィンセグメントAとポリオレフィンセグメントBからなるジブロック共重合体や、ポリオレフィンセグメントAのみからなる重合体、ポリオレフィンセグメントBのみからなる重合体などの副生成物も発生し、樹脂材料としてはこれらの混合物が得られる(所望の生成物のみを分離することは難しい)ためである。
念のため述べておくと、樹脂材料中に副生成物が含まれていたとしても、良好な耐衝撃性が得られる限り、問題はない。
【0039】
(オレフィン系ブロック共重合体以外の成分)
本実施形態の樹脂材料は、上述のオレフィン系ブロック共重合体以外の成分を含んでもよい。具体的には、本実施形態の樹脂材料は、良好な耐衝撃性の効果が得られる範囲で、他の樹脂、ゴム、無機充填剤などを配合することができ、また耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等、結晶核剤などの添加剤を配合することができる。
【0040】
ちなみに、オレフィン系ブロック共重合体の合成の都合上、本実施形態の樹脂材料は、上述のオレフィン系ブロック共重合体には該当しないオレフィン系ポリマーを含みうる。すなわち、オレフィン系ブロック共重合体の合成において、一種の不純物成分として、上述のオレフィン系ブロック共重合体には該当しないオレフィン系ポリマーが、樹脂材料中に含まれうる。
【0041】
(樹脂材料全体としての性質)
本実施形態の樹脂材料の、135℃のデカリン中での極限粘度[η]は、例えば0.01~10dl/g、好ましくは0.05~10dl/g、より好ましくは0.05~5dl/gである。適当な極限粘度とすることで、極端な高温を要せずとも十分な成形性を得ることができる。
ちなみに、極限粘度[η]は、樹脂材料が含む樹脂(オレフィン系ブロック共重合体など)の分子量および/または鎖長と相関している。適当な極限粘度[η]を有する樹脂材料は、好ましい成形性や溶融性などを有する分子量/鎖長の樹脂を含む樹脂材料であるといえる。
【0042】
<成形体>
本実施形態の樹脂材料については、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の成形方法により、各種成形体に成形することができる。成形条件については例えば後掲の実施例を参照されたい。
本実施形態の樹脂材料により構成された成形体は、良好な耐衝撃性を有するため、耐衝撃性が必要とされる種々の用途に好ましく適用される可能な用途としては、自動車部品、食品用途や医療用途などの容器、食品用途や電子材料用途等の包材、フィルム・シート・テープなどを挙げることができる。
【0043】
<オレフィン系ブロック共重合体を含む樹脂材料の製造方法>
本実施形態の樹脂材料の製造方法は特に限定されない。本実施形態の樹脂材料は、公知のブロック共重合体の製造方法などを参考に製造することができる。
【0044】
以下、樹脂材料の製造方法の一例を説明する。この製造方法により、オレフィン系ブロック共重合体の好ましい態様であるトリブロック共重合体を含む樹脂材料を製造することができる。
【0045】
この製造方法は、オレフィン重合触媒の存在下で、α-オレフィンと環状オレフィンとを重合する下記(工程A)~(工程C)をこの順に含む。
<工程>
(工程A)構造単位(a1)0~80モル%および構造単位(a2)20~100モル%を含む重合体ブロックを生成する工程
(工程B)工程Aで得られた重合体ブロックの存在下で、構造単位(a1)40~100モル%および構造単位(a2)0~60モル%を含む重合体ブロックを生成する工程であって、その重合体ブロック中の前記構造単位(a1)のモル比が、上記(工程A)および以下(工程C)において生成する重合体ブロック中の構造単位(a1)のモル比よりも大きい重合体ブロックを生成する工程
(工程C)工程Bで得られた重合体ブロックの存在下で、構造単位(a1)0~80モル%および前記構造単位(a2)20~100モル%を含む重合体ブロックを生成する工程。
【0046】
上記において、オレフィン重合触媒は、
(I)下記一般式(I)で表される遷移金属化合物と、
(II)(II-1)有機金属化合物、(II-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、(II-3)遷移金属化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる。
【0047】
【0048】
一般式(I)中、
Mは、周期律表4~5族の遷移金属原子を示し、
mは、1~4の整数を示し、
R1は、1つまたは複数の置換基を有していてもよい、アリール基または複素環式化合物残基を示し、
R2~R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、
R6は、1つまたは複数の置換基を有していてもよいフェニル基、1つまたは複数の置換基を有していてもよいナフチル基、1つまたは複数の置換基を有していてもよいビフェニル基、1つまたは複数の置換基を有していてもよいターフェニル基および1つまたは複数の置換基を有していてもよいフェナントリル基から選ばれる基を示し、また、mが2以上の場合にはR1~R6で示される基のうち2個の基が連結されていてもよく(ただしR1同士が結合されることはない)、
nは、Mの価数を満たす数であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0049】
上記製造方法において、α-オレフィンおよび環状オレフィンの具体例や好ましい例については、<樹脂材料>の項で説明したとおりである。α-オレフィンとして好ましくはエチレンまたはプロピレン、より好ましくはエチレンである。環状オレフィンとして好ましいものは、ノルボルネンおよびテトラシクロドデセン(より具体的にはテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン)であり、より好ましくはテトラシクロドデセン(より具体的にはテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン)である。
上記製造方法においては、1のみのα-オレフィンを用いてもよいし、2以上のα-オレフィンを用いてもよい。
上記製造方法においては、1のみの環状オレフィンを用いてもよいし、2以上の環状オレフィンを用いてもよい。
【0050】
使用可能なオレフィン重合触媒は、上述の通り、
(I)一般式(I)で表される遷移金属化合物と、
(II)(II-1)有機金属化合物、(II-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(II-3)遷移金属化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物
からなる。
オレフィン重合触媒は、α-オレフィンと環状オレフィンを重合できる触媒である。オレフィン重合触媒は、工程A~Cにおいて、それぞれ第1のハードセグメント、ソフトセグメント、第2のハードセグメントを形成することができる。各セグメントは結合してトリブロック構造となる重合体が生成されることが好ましい。そのため不可逆的な連鎖移動反応やβ水素脱離などの内部反応が起こりにくい、いわゆるリビング性を示すオレフィン重合触媒であることが好ましい。
【0051】
((I)遷移金属化合物)
一般式(I)において、R1のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
R1の複素環式化合物残基として具体的には、ピロール、ピリジン、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、オキサゾール、ピラジン、ピリダジン、ピリミジン、アゼピン、インドリジン、インドール、イソインドール、インダゾール、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、キナゾリン、フタラジン、キノキサリン、シノリン、カルバゾール、フェナンチリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、アジリジン、アセチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピロリン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピペラジン、インドリン、イソインドリン、キヌクリジン、プリン、プテリジン、フラン、ピラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジオキソラン、クロメン、クロマン、イソクロマン、キサンテン、オキシラン、オキセタン、オキソラン、オキサジアゾール、チオフェン、ベンゾチオフェン、チエタン、チアゾール、イソチアゾール、チアナフテン、チアントレン、チアジアゾール、トリチアン、フェノキサチン、イソキサゾール、フェノチアジン、フェノキサジン、フラザン、モルホリンなどが挙げられる。
【0052】
R1が有していてもよい置換基としては、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、ハロゲン原子などが挙げられる。
炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などが挙げられる。
酸素含有基として具体的には、ヒドロキシ基、アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基などが挙げられる。
窒素含有基として具体的には、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基などがあげられる。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0053】
R2~R5におけるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
R2~R5における炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数が1~30、好ましくは1~20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2~30、好ましくは2~20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2~30、好ましくは2~20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3~30、好ましくは3~20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素数5~30の環状不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6~30、好ましくは6~20のアリール基;トリル基、iso-プロピルフェニル基、t-ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ-t-ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。炭化水素基の水素原子はハロゲンで置換されていてもよい。そのような例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1~30、好ましくは1~20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。また、炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよい。そのような例としては、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。さらに、炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。これらのうち、特に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1~30、好ましくは1~20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6~30、好ましくは6~20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1~30、好ましくは1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6~30、好ましくは6~20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1~5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0054】
R2~R5における酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基の具体例については、上述のとおりである。
【0055】
R2~R5のヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1~30、好ましくは1~20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
R2~R5のケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル-t-ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましい。特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
R2~R5のゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、上記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムまたはスズに置換したものが挙げられる。
【0056】
上記で説明したR2~R5の例について、より具体的に説明する。
アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基として具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。
アリールチオ基として具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
アシル基として具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基、p-メトキシベンゾイル基などが挙げられる。
エステル基として具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p-クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられる。
チオエステル基として具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられる。
アミド基として具体的には、アセトアミド基、N-メチルアセトアミド基、N-メチルベンズアミド基などが挙げられる。
イミド基として具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられる。アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
イミノ基として具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられる。
スルホンエステル基として具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられる。
スルホンアミド基として具体的には、フェニルスルホンアミド基、N-メチルスルホンアミド基、N-メチル-p-トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
R2~R5は、これらのうち2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0057】
R6は、1つまたは複数の置換基を有していてもよいフェニル基、1つまたは複数の置換基を有していてもよいナフチル基、1つまたは複数の置換基を有していてもよいビフェニル基、1つまたは複数の置換基を有していてもよいターフェニル基および1つまたは複数の置換基を有していてもよいフェナントリル基から選ばれる基であり、好ましくは1つまたは複数の置換基を有していてもよいフェニル基である。置換基としては、炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基、ハロゲン原子等があげられる。
また、mが2以上の場合には、R1~R6で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい(但しR1同士が結合されることはない)。さらに、mが2以上の場合には、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0058】
nは、Mの価数を満たす数である。具体的には0~5、好ましくは1~4、より好ましくは1~3の整数である。
【0059】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。なお、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
Xのハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
Xの炭化水素基としては、上記R2~R5で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、アイコシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3~30のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素原子数1~20の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲンに置換した基も含まれる。これらのうち、炭素原子数が1~20のものが好ましい。
Xのヘテロ環式化合物残基としては、上記R2~R5で例示したものと同様のものが挙げられる。
Xの酸素含有基としては、上記R2~R5で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコシキ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基などのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Xのイオウ含有基としては、上記R2~R5で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチルスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基、フェニルスルフォネート基、ベンジルスルフォネート基、p-トルエンスルフォネート基、トリメチルベンゼンスルフォネート基、トリイソブチルベンゼンスルフォネート基、p-クロルベンゼンスルフォネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフォネート基などのスルフォネート基;メチルスルフィネート基、フェニルスルフィネート基、ベンジルスルフィネート基、p-トルエンスルフィネート基、トリメチルベンゼンスルフィネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフィネート基などのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Xの窒素含有基として具体的には、上記R2~R5で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Xのホウ素含有基として具体的には、BR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。
Xのリン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基などのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基などのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基などのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Xのケイ素含有基として具体的には、上記R2~R5で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、フェニルシリル基、ジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基などの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基などの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基などのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基などのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
Xのゲルマニウム含有基として具体的には、上記R2~R5で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。
Xのスズ含有基として具体的には、上記R2~R5で例示したものと同様のものが挙げられる。より具体的には、ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
Xのハロゲン含有基として具体的には、PF6、BF4などのフッ素含有基、ClO4、SbCl6などの塩素含有基、IO4などのヨウ素含有基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Xのアルミニウム含有基として具体的には、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0061】
(I)遷移金属化合物の中でも下記化合物が好ましい。
【0062】
【0063】
(I)遷移金属化合物を用いることで、(I)遷移金属化合物を含むオレフィン重合触媒はリビング重合性を良好に発現する。特に、極低温に限定せず、室温等の比較的高温下においても良好にリビング重合性を発現することから、効率よくオレフィン系ブロック共重合体が製造され、耐衝撃性に優れた樹脂材料を得ることができる。
【0064】
((II-1)有機金属化合物)
有機金属化合物としては、周期表第1、2族および/または第12、13族の金属元素の有機金属化合物が好ましく挙げられる。このような有機金属化合物としては例えば、特開2004-2640号公報の段落0056に記載されるような下記の有機金属化合物(II-1a)~(II-1c)が挙げられる。
【0065】
(II-1a)式 Ra
mAl(ORb)nHpXq で表される有機アルミニウム化合物
式中、RaおよびRbは、それぞれ独立に、炭素数1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3であり、RaおよびRbは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0066】
(II-1b)式 M2AlRa
4 で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物
式中、M2はLi、NaまたはKを示し、Raは炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示す。
【0067】
(II-1c)式 RaRbM3 で表される周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
式中、M3はMg、ZnまたはCdであり、RaおよびRbは、炭素原子数が1~15、好ましくは1~4の炭化水素基を示し、RbおよびRbは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0068】
((II-2)有機アルミニウムオキシ化合物)
本有機アルミニウムオキシ化合物(II-2)としては、従来公知のアルミノキサンが挙げられる。また、有機アルミニウムオキシ化合物(II-2)としては、特開平2-78687号公報に例示されるようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。
【0069】
((II-3)遷移金属化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物)
(I)遷移金属化合物と反応してイオン対を形成する化合物(II-3)(以下、「イオン化イオン性化合物」ともいう)としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP-5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などが挙げられる。
また、イオン化イオン性化合物としては、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げられる。具体的には、特開2004-2640号公報に記載のイオン化イオン性化合物が挙げられる。
【0070】
(II-2)有機アルミニウムオキシ化合物として用いられうる従来公知のアルミノキサンは、例えば、下記(1)~(3)のいずれかに記載の方法により製造できる。アルミノキサンは、通常炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類(例えば、塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物など)を炭化水素溶媒中に含ませた懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの溶媒中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの溶媒中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
アルミノキサンを調製に用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;(i-C4H9)xAly(C5H10)z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム等を例示することができるが、これらの中では、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。また、上記の有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0071】
本実施形態におけるオレフィン重合触媒として、前記(I)遷移金属化合物と、(II-1)有機金属化合物(II-2)、有機アルミニウムオキシ化合物、(II-3)遷移金属化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物単体、および有機化合物から選ばれる少なくても1種とを共存させた物を用いることも可能である。
【0072】
(工程A)
工程Aは、オレフィン重合触媒存在下で、α-オレフィンおよび/または環状オレフィンをモノマーとして用い、構造単位(a1)0~80モル%および構造単位(a2)20~100モル%を含む重合体ブロックを生成する工程である。
この重合体ブロックにおいて、構造単位(a1)の好ましい範囲としては50~80モル%、より好ましくは50~75モル%、さらに好ましくは60~70モル%である。また、この重合体ブロックにおいて、構造単位(a2)の好ましい範囲としては20~50モル%、さらに好ましくは30~40モル%である。通常、構造単位(a1)と構造単位(a2)の合計が100モル%となるように調整される。構造単位(a1)および構造単位(a2)の割合は、モノマーであるα-オレフィンおよび環状オレフィンの濃度の比で調整することができる。
【0073】
工程Aにおける重合反応は、回分式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。連続式を採用する場合は管型フロー反応装置が分子量分布を制御する観点で好ましい。本実施形態においては、回分式が特に好ましい。
工程Aにおける重合は、溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれであってもよいが、液相重合法が好ましく、溶液重合法がより好ましい。
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
工程Aにおける重合時間は、通常5秒から~60分、好ましくは10秒から~10分、より好ましくは10秒から~5分であり、重合時間により分子量を調整することができる。
工程Aにおける重合温度は、通常-50~+300℃、好ましくは0~100℃、より好ましくは0~80℃、さらにより好ましくは0~40℃、特に好ましくは、10~40℃である。特に溶液重合を採用する場合に、上記温度範囲にあることにより、ポリマーの析出が抑制され重合系の均一性が保たれることでリビング重合性が維持されやすく好ましい。
工程Aにおける重合圧力は、通常常圧~9.8MPa、好ましくは常圧~4.9MPa、より好ましくは常圧~2.0MPaの条件下である。
通常、工程Aにおいては、生成した重合体(重合体ブロック)の回収工程は経ず、次の工程Bに進む。
【0074】
(工程B)
工程Bは、工程Aに続いて、α-オレフィンおよび/または環状オレフィンを重合し、構造単位(a1)40~100モル%および構造単位(a2)0~60モル%を含む重合体ブロックを生成する工程である。工程Bにおいて生成される重合体ブロック中の構造単位(a1)のモル比は、工程(A)および工程(C)において生成する重合体ブロック中の構造単位(a1)のモル比よりも大きい。
工程Bにおいて生成される重合体ブロック中の、構造単位(a1)の好ましい範囲としては50~95モル%、より好ましくは70~95モル%、さらに好ましくは80~92モル%である。工程Bにおいて生成される重合体ブロック中の、構造単位(a2)の好ましい範囲としては5~50モル%、より好ましくは5~30モル%、さらに好ましくは8~20モル%である。合成の簡便性などから、通常、構造単位(a1)と構造単位(a2)の合計は100モル%となるように調整される。構造単位(a1)および構造単位(a2)の割合は、モノマーであるα-オレフィンおよび環状オレフィンの濃度の比で調整することができる。通常、工程Bは工程Aから直接移行するため、工程A終了後のモノマー濃度を勘案して、モノマー種の追加、濃縮、希釈などの操作により、調整することができる。
工程Bにおける重合は、工程Aにおいて例示した方法が同様に挙げられる。特に、工程Aと同じ重合方法にて実施することが好ましい。
工程Bにおける重合時間、重合温度、重合圧力の範囲は、工程Aで説明したそれぞれの好ましい範囲がそのまま適用できる。
通常、工程Bにおいては、生成した重合体(重合体ブロック)の回収工程は経ず、次の工程Cに進む。
【0075】
(工程C)
工程Cでは、工程Bに続いて、α-オレフィンおよび/または環状オレフィンを重合し、構造単位(a1)0~80モル%および構造単位(a2)20~100モル%を含む重合体ブロックを生成する。この重合体ブロック中の、構造単位(a1)の好ましい範囲としては50~80モル%、より好ましくは50~75モル%、さらに好ましくは60~70モル%である。また、この重合体ブロック中の、構造単位(a2)の好ましい範囲としては20~50モル%、さらに好ましくは30~40モル%である。合成の簡便性などから、通常、構造単位(a1)と構造単位(a2)の合計は100モル%となるように調整される。
【0076】
構造単位(a1)および構造単位(a2)の割合は、モノマーであるα-オレフィンおよび環状オレフィンの濃度の比で調整することができる。通常、工程Cは工程Bから直接移行するため、工程B終了後のモノマー濃度を勘案して、モノマー種の追加、濃縮、希釈などの操作により、調製することができる。
工程Cにおける重合は、工程Aにおいて例示した方法が同様に挙げられるが、特に、工程Aと同じ重合方法にて実施することが好ましい。
工程Cにおける重合時間、重合温度、重合圧力の範囲は、工程Aで説明したそれぞれの好ましい範囲がそのまま適用できる。
【0077】
以上のような一連の手順により、オレフィン系ブロック共重合体を含む樹脂材料を製造することができる。
【0078】
工程Cの終了後、通常、生成した重合体を回収する。回収工程は、有機溶剤等を分離してポリマーを取り出し製品形態に変換する工程であり、溶媒濃縮、押し出し脱気、ペレタイズ等の既存のポリオレフィン樹脂を製造する過程を適宜適用することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例】
【0080】
本発明の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本発明は実施例のみに限定されない。
以下で、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンを「TD」と略記することがある。
【0081】
まず、各種測定・評価の方法について述べる。
【0082】
[極限粘度]
極限粘度([η])は、135℃、デカリン中で測定した。
具体的には、樹脂材料(20mg)をデカリン溶媒(15mL)に溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒(5mL)を追加して希釈した後、前記と同様に比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、サンプルの濃度(C)を0に外挿したときのηsp/Cの値をオレフィン重合体の極限粘度[η]とした。
極限粘度[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0083】
[各モノマー成分の含有量]
400MHz 13C-NMR(日本電子社 ECX400P)のピーク位置とピーク強度(積分値)によって測定・定量した。
【0084】
[高速面衝撃試験(ハイレート試験)]
樹脂材料を、ユーピレックス(商品名、宇部興産社製)のフィルムに挟み込み、2.0mmのスペーサ-を用いて、240℃、5MPa、3分間の条件で真空プレス成形した。これにより試験用のプレスシートを得た。
このプレスシートに、23℃の条件下、径が1/2インチのロードセル付き撃芯(ストライカ)を、試験速度5m/sで衝突させた。プレスシートの裏面には支持台径1インチの台を使用した。得られる変位および試験力変位曲線から試験力の最大点までのエネルギー値を最大衝撃点エネルギーとして算出した。この値が大きいほど、耐衝撃性が高いことを表す。
【0085】
[実施例1]
(工程A)
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、トルエン370mlを装入し、TD 4.6mLを装入し、63.0L/hの流量のエチレンと33.6L/hの流量の窒素の混合ガスで液相および気相を飽和させた。引き続きこの混合ガスを連続的に供給しながら、その後、メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で2.0mmol、引き続き下記の構造式で表されるチタン化合物を0.040mmol加え、重合を開始し、25℃常圧で100秒間重合を行った。その後、重合溶液の一部を取り出し、少量の濃塩酸を加えたメタノール中で重合生成物析出させ、濾過及び乾燥し生成物を秤量した。これにより、工程Aにおける重合体(重合体ブロック)生成量を見積もったところ、1.0gであった。さらに13C-NMRにより求めた重合体(重合体ブロック)中のエチレン由来の構造の比率は64mol%、TD由来構造の比率は36mol%であった。
【0086】
【0087】
(工程B)
工程A終了後、直ちに窒素ガスの供給を停止し、エチレンの流量を96L/hに変更し、予め、エチレンを飽和させたトルエン溶液1000mL(メチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で2.0mmolを混合し、エチレンを100L/hの流量で30分間供給して調製)を反応器に装入し、重合系中のTDに対するエチレン濃度を上昇させ、25℃、常圧で240秒間さらに重合を行った。その後、重合溶液の一部を取り出し、少量の濃塩酸を加えたメタノール中で重合生成物を析出させ、濾過及び乾燥し生成物を秤量した。これにより、工程Bにおける重合体(重合体ブロック)生成量を見積もったところ、6.9gであった。さらに13C-NMR測定を行い、工程Aにおいて生成した重合体(重合体ブロック)の量と組成を差し引いて求めた、工程Bおいて生成した重合体(重合体ブロック)中のエチレン由来の構造の比率は88mol%、TD由来構造の比率は12mol%であった。
【0088】
(工程C)
工程B終了後、直ちにTD23mLを装入し25℃常圧で300秒間さらに重合を行った。少量のイソブチルアルコールを添加することで重合を停止した。重合終了後、反応物を2mLの濃塩酸を加えたメタノールで析出し、濾過および乾燥を行った。これにより、オレフィン系ブロック共重合体を含む樹脂材料を得た。得られた収量から、工程Cにおける重合体(重合体ブロック)生成量を見積もったところ、7.3gであった。さらに得られたオレフィン系樹脂の13C-NMR測定を行い、工程A及びBにおいて生成した重合体(重合体ブロック)の量と組成を差し引いて求めた、工程Cおいて生成した重合体(重合体ブロック)中のエチレン由来の構造の比率は65mol%、TD由来構造の比率は35mol%であった。工程Bの収量から工程Aの収量を減じてポリオレフィンセグメントBの生成量を算出し、それを工程Cの収量で除することにより、樹脂材料中に含まれる樹脂の全量に対するポリオレフィンセグメントBの割合を算出したところ、81質量%であった。
【0089】
得られたオレフィン系樹脂の極限粘度[η]は1.4dl/gであった。
【0090】
(評価)
得られたオレフィン系樹脂を用い、上記の方法により高速面衝撃試験を行った。結果は36.4Jであった。
【0091】
[比較例1]
比較用の樹脂材料として、国際公開第2018/181781号の実施例1に記載の樹脂材料について、上記[高速面衝撃試験(ハイレート試験)]を行った。得られた結果は、25Jであった。
【0092】
比較例1の樹脂材料が含む樹脂は、第1のポリオレフィンセグメントAとポリオレフィンセグメントBを有し、第2のポリオレフィンセグメントAを有しない。実施例1と比較例1の対比から、第1および第2のポリオレフィンセグメントA(ハードセグメント)が、オレフィン系ブロック共重合体の「両末端」に存在していることなどにより、耐衝撃性が一層向上することが理解される。