(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】熱電発電モジュール
(51)【国際特許分類】
H10N 10/82 20230101AFI20240814BHJP
【FI】
H10N10/82
(21)【出願番号】P 2020115893
(22)【出願日】2020-07-03
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】590000835
【氏名又は名称】株式会社KELK
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 正和
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-178552(JP,U)
【文献】特開2016-015838(JP,A)
【文献】実開昭60-005162(JP,U)
【文献】特開昭62-214645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0141281(US,A1)
【文献】国際公開第2016/002706(WO,A1)
【文献】特開2015-225873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0034138(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板と、
前記基板の上に配置された複数の電極と、
一対の前記電極の間に配置された熱電変換素子と、
前記電極に接続された端子と、
を備え、
前記基板は、電気絶縁性を有する材料で形成された絶縁体層と、前記絶縁体層を貫通して形成されて前記端子を挿通する貫通孔と、
前記絶縁体層の上であって前記貫通孔の周縁部に配置された環状の金属層とを有し、
前記環状の金属層は、前記基板を挟んで前記電極と反対側に配置され、
前記端子の頭部の上面に配置された半田により、前記端子の頭部の上面と前記電極とが半田接合され、前記半田が前記環状の金属層まで濡れ広がって、前記端子と前記貫通孔との間の隙間は、半田によって封止される、
熱電発電モジュール。
【請求項2】
前記半田は、前記端子の周面と前記金属層とにおいて、フィレット形状を形成した、
請求項1に記載の熱電発電モジュール。
【請求項3】
前記絶縁体層は、ポリイミド、フッ素、及びエポキシ樹脂の少なくとも1つを含む材料で形成される、
請求項1又は請求項2に記載の熱電発電モジュール。
【請求項4】
前記金属層は、銅、ニッケル、ステンレス、アルミニウムの少なくとも1つを含む材料で形成される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱電発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱電発電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換素子を利用した熱電発電モジュールが知られている(例えば、特許文献1参照。)。熱電発電モジュールは、一対の基板の間に熱電変換素子が配置されている。熱電発電モジュールは、基板間に温度差が与えられることにより、ゼーベック効果により発電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱電発電モジュールで発生した電力を外部に取り出すために端子が配置される。また、熱電発電モジュールでは、基板間に温度差が与えられるので、低温側の基板の表面に水滴を生じるおそれがある。そのため、端子を介して、熱電発電モジュールの内部に水滴が侵入しないように封止性を向上することが望まれる。
【0005】
本開示は、封止性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、一対の基板と、前記基板の上に配置された複数の電極と、一対の前記電極の間に配置された熱電変換素子と、前記電極に接続された端子と、を備え、前記基板は、電気絶縁性を有する材料で形成された絶縁体層と、前記絶縁体層を貫通して形成されて前記端子を挿通する貫通孔と、前記貫通孔の周縁部に配置された環状の金属層とを有し、前記端子と前記貫通孔との間の隙間は、半田によって封止される、熱電発電モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、封止性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る熱電発電モジュールを示す断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る熱電発電モジュールの第2基板及びターミナルピンを示す拡大断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る熱電発電モジュールの第2基板を示す平面図であり、下面の平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る熱電発電モジュールの第2基板を示す平面図であり、上面の平面図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る熱電発電モジュールのターミナルピンを示す正面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る熱電発電モジュールのターミナルピン及び半田を示す拡大断面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る熱電発電モジュールのターミナルピン及び半田を示す写真である。
【
図8】
図8は、従来の熱電発電モジュールの第2基板及びターミナルピンを示す拡大断面図である。
【
図10】
図10は、従来の熱電発電モジュールのターミナルピン及び半田を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する複数の実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
実施形態においては、「左」、「右」、「前」、「後」、「上」、及び「下」の用語を用いて各部の位置関係について説明する。これらの用語は、熱電発電モジュール1の中心を基準とした相対位置又は方向を示す。左右方向と前後方向と上下方向とは直交する。
【0011】
[熱電発電モジュール]
図1は、実施形態に係る熱電発電モジュールを示す断面図である。熱電発電モジュール1は、熱源側の高温側プレート2と、冷却側の低温側プレート4とで挟まれる。熱電発電モジュール1は、高温側プレート2と低温側プレート4とによって両側(図中の上下)に温度差を与えることによって、ゼーベック効果により発電する。
【0012】
高温側プレート2は、熱源からの熱を受けて、熱電発電モジュール1に伝達する。高温側プレート2は、アルミニウム又は銅のような金属材料によって板状に形成される。高温側プレート2は、カーボンシート3を介して、熱電発電モジュール1の下面1bと接触して配置されている。
【0013】
カーボンシート3は、熱伝導性及び電気絶縁性を有する材料である。カーボンシート3は、高温側プレート2の上面2aと熱電発電モジュール1の下面1bとの間に介在している。本実施形態では、カーボンシート3は、高温側プレート2の上面2aの一部と接触している。カーボンシート3は、高温側プレート2の熱を熱電発電モジュール1の下面1bに伝達する。
【0014】
低温側プレート4は、熱電発電モジュール1から熱を奪う。低温側プレート4は、冷却されている。低温側プレート4は、アルミニウムのような金属材料によって板状に形成される。低温側プレート4は、カーボンシート5を介して、熱電発電モジュール1の上面1aに接触して配置される。
【0015】
カーボンシート5は、熱伝導性及び電気絶縁性を有する材料である。カーボンシート5は、低温側プレート4の下面4bと熱電発電モジュール1の上面1aとの間に介在している。本実施形態では、カーボンシート5は、低温側プレート4の下面4bの全面と接触している。カーボンシート5は、低温側プレート4の熱を奪い、外部に排熱する。
【0016】
熱電発電モジュール1は、一対の第1基板(基板)11及び第2基板(基板)12と、第1基板(基板)11及び第2基板(基板)12の上に配置された第1電極(電極)22及び第2電極(電極)23と、一対の第1電極22及び第2電極23の間に配置される熱電変換素子21と、封止部30と、ターミナルピン51とを備える。
【0017】
第1基板11及び第2基板12は、矩形状に形成されている。本実施形態では、第1基板11及び第2基板12の厚さは2.5μmである。
【0018】
第1基板11と第2基板12とは、間隙を介して向かい合う。実施形態において、第2基板12は、第1基板11よりも上方に配置される。
【0019】
第1基板11は、電気絶縁材料によって形成される。実施形態において、第1基板11は、絶縁体層111と、絶縁体層111の下面に形成された金属層112と、絶縁体層111の上面に形成された金属層113との3層構造を有する。金属層112及び金属層113は、金属箔で形成されている。
【0020】
図2は、実施形態に係る熱電発電モジュールの第2基板及びターミナルピンを示す拡大断面図である。第2基板12は、電気絶縁材料によって形成される。実施形態において、第2基板12は、ポリイミドシートで形成された絶縁体層121と、絶縁体層121の下面に形成された金属層122、絶縁体層121の上面に形成された金属層123との3層構造を有する。金属層122及び金属層123は、金属箔で形成されている。金属層123の上面123aに、電極保護層であるニッケルメッキ層124が形成されている。
【0021】
第2基板12は、電気絶縁性を有する材料で形成された絶縁体層121と、絶縁体層121を貫通して形成されてターミナルピン51を挿通する貫通孔24と、貫通孔24の周縁部に配置された環状の金属層123cとを有する。
【0022】
絶縁体層111及び絶縁体層121を形成する絶縁材料としては、ポリイミド、フッ素、及びエポキシ樹脂のいずれか1つを含む絶縁体シートが例示される。
【0023】
金属層112、金属層113、金属層122及び金属層123を形成する金属材料として、銅(Cu)、銅を含む合金、ニッケル(Ni)、ニッケルを含む合金、ステンレス(SUS)、ステンレスを含む合金、アルミニウム(Al)、及びアルミニウムを含む合金の少なくともいずれか1つが例示される。
【0024】
本実施形態では、絶縁体層111及び絶縁体層121の厚さは25μmである。本実施形態では、金属層112及び金属層123の厚さは300μmである。本実施形態では、金属層113及び金属層122の厚さは18μmである。
【0025】
熱電変換素子21は、第1基板11の上面と第2基板12の下面との間に1つ以上配置される。複数の熱電変換素子21は、第1電極22及び第2電極23によって接続される。
【0026】
熱電変換素子21に電流が供給されることにより、熱電発電モジュール1がペルチェ効果により吸熱又は発熱する。第1基板11と第2基板12との間に温度差が与えられることにより、熱電発電モジュール1は、ゼーベック効果により発電する。
【0027】
熱電変換素子21は、熱電材料によって形成される。熱電変換素子21を形成する熱電材料として、マンガンケイ化物系化合物(Mn-Si)、マグネシウムケイ化物系化合物(Mg-Si-Sn)、スクッテルダイト系化合物(Co-Sb)、ハーフホイスラ系化合物(Zr-Ni-Sn)、及びビスマステルル系化合物(Bi-Te)が例示される。熱電変換素子21は、マンガンケイ化物系化合物、マグネシウムケイ化物系化合物、スクッテルダイト系化合物、ハーフホイスラ系化合物、又はビスマステルル系化合物から選択される1つの化合物により構成されてもよいし、少なくとも2つの化合物の組み合わせにより構成されてもよい。
【0028】
熱電変換素子21は、p型素子21Pと、n型素子21Nとを含む。p型素子21P及びn型素子21Nのそれぞれは、所定面内に複数配置される。前後方向において、p型素子21Pとn型素子21Nとは交互に配置される。左右方向において、p型素子21Pとn型素子21Nとは交互に配置される。
【0029】
第1電極22は、第1基板11の上面に設けられる。第1電極22は、第1基板11の上面と平行な所定面内において複数設けられる。第1電極22は、第1基板11の熱電発電モジュール1の内側に面した金属層113の上面113aをパターンエッチングして形成される。第1基板11に配置される第1電極22の下面は、熱電発電モジュール1の冷却面である。
【0030】
第2電極23は、第2基板12の下面に設けられる。第2電極23は、第2基板12の下面と平行な所定面内において複数設けられる。第2電極23は、第2基板12の熱電発電モジュール1の内側に面した金属層122の下面122bをパターンエッチングして形成される。第2基板12に配置される第2電極23の上面は、熱電発電モジュール1の加熱面である。
【0031】
第1電極22及び第2電極23に熱電変換素子21が半田接合されている。より詳しくは、第1電極22及び第2電極23は、隣接する一対のp型素子21P及びn型素子21Nのそれぞれに接続される。
【0032】
第1電極22及び第2電極23は、複数の熱電変換素子21を直列に接続する。第1電極22及び第2電極23により複数の熱電変換素子21が直列に接続された直列回路が形成される。p型素子21P及びn型素子21Nが第1電極22及び第2電極23を介して電気的に接続されることにより、pn素子対が構成される。複数のpn素子対が第1電極22及び第2電極23を介して直列に接続されることにより、複数の熱電変換素子21を含む直列回路が構成される。
【0033】
図3は、実施形態に係る熱電発電モジュールの第2基板を示す平面図であり、下面の平面図である。
図4は、実施形態に係る熱電発電モジュールの第2基板を示す平面図であり、上面の平面図である。熱電変換素子21を配列した際の両端の正極、負極にあたる第2電極23に、ターミナルピン(端子)51を挿通する貫通孔24が配置される。貫通孔24は、両端の正極、負極にあたる第2電極23が配置された第2基板12を上下方向に貫通して形成されている。
【0034】
図5は、実施形態に係る熱電発電モジュールのターミナルピンを示す正面図である。ターミナルピン51は、柱状に形成された本体部52と、本体部52の軸方向の一方の端部に配置された頭部53と、本体部52の軸方向の他方の端部に配置された雌ねじ部54とを有する。本体部52は、円柱状または角柱状に形成されている。本実施形態では、本体部52は、円柱状に形成されている。頭部53は、円板状に形成されている。頭部53の径は、本体部52の径より大きい。
【0035】
本実施形態では、ターミナルピン51の本体部52の径は、例えば4mmである。本実施形態では、ターミナルピン51の頭部53の径は、例えば6mmである。本実施形態では、ターミナルピン51の頭部53の厚さは、例えば1mmである。
【0036】
貫通孔24は、両端の正極、負極にあたる第2電極23が配置された金属層122と、絶縁体層121と、金属層123とを貫通している。貫通孔24は、金属層122に形成された貫通孔242と、絶縁体層121に形成された貫通孔241と、金属層123に形成された貫通孔243とを有する。貫通孔24には環状の金属層123cが残されている。より詳しくは、絶縁体層121の上面であって、貫通孔243の内側に、貫通孔24の周りを囲んで環状の金属層123cが配置されている。
【0037】
環状の金属層123cは、貫通孔24の周囲の全周を囲んで配置されている。本実施形態では、環状の金属層123cは、貫通孔24の周りにおいて、金属層123を環状のパターンで残すことによって形成されている。
【0038】
貫通孔241及び貫通孔242は、ターミナルピン51の径と同じ径を有する。貫通孔243は、ターミナルピン51の外形より大きい径を有する。これにより、貫通孔24から、貫通孔24の周囲の絶縁体層121及び環状の金属層123cが露出する。貫通孔241及び貫通孔242の径は、例えば4mmである。貫通孔243の径は、例えば9mmである。環状の金属層123cの内径は、例えば4mmであり、外径は、例えば6mmである。
【0039】
ターミナルピン51と貫通孔24との間の隙間Sは、半田61によって封止される。貫通孔24へ下側からターミナルピン51を通し、第2電極23とターミナルピン51を半田61によって半田接合している。より詳しくは、第2電極23に、貫通孔24に挿通されたターミナルピン51の頭部53の上面53aを半田61によって半田接合している。
【0040】
第2基板12において、ターミナルピン51の貫通孔24の周りに環状の金属層123cが残っていることにより、ターミナルピン51の周りに濡れた半田61の一部が環状の金属層123cの上へ濡れ広がる。半田61は、ターミナルピン51の周面と環状の金属層123cとにおいて、フィレット形状を形成する。半田61がフィレット形状を形成することによって、熱電発電モジュール1の外部と内部とを連通する貫通孔24とターミナルピン51との隙間Sが塞がれる。
【0041】
第1基板11及び第2基板12の外周には封止用の枠である封止部30を配置して熱電変換素子21を密閉空間内に配列する。
【0042】
図3に示すように、封止部30は、枠形状に形成されている。封止部30は、上下方向視において、面方向に整列された複数のpn素子対の周囲を囲んで配置される。
図1に示すように、封止部30は、第1基板11の上面と第2基板12の下面との間に配置され、第1基板11の上面の周縁部と、第2基板12の下面の周縁部とを封止する。封止部30は、第1基板11の上面と第2基板12の下面とに図示しない半田によって固定される。
【0043】
封止部30は、枠部31と、枠部31の中央部に形成された開口部32とを有する。
【0044】
枠部31は、矩形の外形を有する。枠部31は、上面31aと下面31bとを有する。枠部31の上面31aは、第2基板12の絶縁体層121の下面121bと向かい合う。枠部31の下面31bは、第1基板11の絶縁体層111の上面111aと向かい合う。
【0045】
本実施形態では、枠部31の厚さは1.2mmである。
【0046】
開口部32は、枠部31の中央部に矩形状に形成された開口である。開口部32には、熱電変換素子21が配置される。
【0047】
第1基板11及び第2基板12は、面方向に整列された複数のpn素子対および封止部30を上下方向に挟んで配置される。第1基板11と第2基板12は、第1電極22、第2電極23および封止部30を覆う大きさを有している。
【0048】
このように構成された熱電発電モジュール1は、第2基板12の側に熱を加え、第1基板11の側を冷却水等で冷やすと温度差によって起電力が発生して、図示しない1対のリード線の間に負荷(図示略)を接続したときに電流が流れる。すなわち、熱電発電モジュール1の両側(図中の上下)に温度差を与えることによって、電力が取り出せる。
【0049】
[半田による封止方法及び作用]
次に、半田61による、ターミナルピン51と貫通孔24との封止方法及び作用について説明する。貫通孔24へ下側からターミナルピン51を通し、第2電極23とターミナルピン51を半田61によって半田接合する。より詳しくは、貫通孔24に挿通されたターミナルピン51の頭部53の上面53aを第2電極23に接触させる。ターミナルピン51の頭部53の上面53aには半田61が塗布されている。この状態で焼成処理して、第2電極23とターミナルピン51を半田接合する。熱電変換素子21を半田接合している第2基板12の上面側はターミナルピン51の貫通孔24のみ円形に開口している。これにより、第2基板12の上面側において、正極と負極との短絡が規制される。
【0050】
図6は、実施形態に係る熱電発電モジュールのターミナルピン及び半田を示す拡大断面図である。
図7は、実施形態に係る熱電発電モジュールのターミナルピン及び半田を示す写真である。
図6、
図7に示すように、第2基板12において、ターミナルピン51の貫通孔24の周りに環状の金属層123cが残されている。第2基板12において、ターミナルピン51の周りに濡れた半田61の一部が環状の金属層123cの上へ濡れ広がる。これにより、半田61が、ターミナルピン51の周面と環状の金属層123cとにおいてフィレット形状を形成する。フィレット形状の半田61によって、ターミナルピン51と貫通孔24との隙間Sを覆うように、環状の金属層123cとターミナルピン51とが半田接合される。ターミナルピン51の周りに濡れた半田61の残部は、ターミナルピン51の周りに沿って濡れ広がる。このように、フィレット形状の半田61によって、熱電発電モジュール1の外部と内部とを連通する貫通孔24とターミナルピン51との隙間Sを塞がれて封止性が高められる。
【0051】
[効果]
以上説明したように、本実施形態では、絶縁体層121を貫通して形成されてターミナルピン51を挿通する貫通孔24と、貫通孔24の周縁部に配置された環状の金属層123cとを有する。本実施形態では、ターミナルピン51の貫通孔24の周りに環状の金属層123cのパターンが残されている。本実施形態では、ターミナルピン51と貫通孔24との間の隙間Sは、半田61によって封止される。本実施形態では、絶縁体層121の上に環状の金属層123cが残されている。本実施形態は、環状の金属層123cの上に半田61が濡れ広がるので、絶縁体層121において貫通孔24の周縁部に半田61を濡れ広がらせることができる。これらにより、本実施形態によれば、ターミナルピン51と貫通孔24との隙間Sを覆うように、金属層123とターミナルピン51とを半田61によって半田接合することができる。本実施形態は、熱電発電モジュール1の外部と内部とを連通する貫通孔24とターミナルピン51との隙間Sを塞ぐことができる。このように、本実施形態は、熱電発電モジュール1からのターミナルピン51の引き出し部において、封止性を向上することができる。
【0052】
本実施形態は、熱電変換素子21を半田接合している第2基板12の上面側はターミナルピン51の貫通孔24のみ円形に開口している。本実施形態によれば、第2基板12の上面側において、正極と負極との短絡を規制することができる。
【0053】
本実施形態は、半田61がフィレット形状を形成する。本実施形態によれば、半田フラックスの抜け穴が隙間Sを通して熱電発電モジュール1の外部と内部とを連通することを抑制できる。本実施形態によれば、ターミナルピン51の貫通孔24の封止性を向上することができる。
【0054】
本実施形態では、絶縁体層121は、ポリイミド、フッ素、及びエポキシ樹脂の少なくとも1つを含む材料で形成される。本実施形態は、半田61が濡れ広がることがない絶縁体層121の上に、環状の金属層123cを介して、半田61を濡れ広げることができる。
【0055】
本実施形態では、環状の金属層123cを含む金属層123は、銅、ニッケル、ステンレス、アルミニウムの少なくとも1つを含む材料で形成される。本実施形態は、環状の金属層123cに、半田61を濡れ広げることができる。
【0056】
これに対して、
図8ないし
図10を用いて、従来の熱電発電モジュールについて説明する。
図8は、従来の熱電発電モジュールの第2基板及びターミナルピンを示す拡大断面図である。
図9は、
図8の部分拡大図である。
図10は、従来の熱電発電モジュールのターミナルピン及び半田を示す拡大断面図である。従来の熱電発電モジュールは、ターミナルピン51の貫通孔24Xの周りに環状の金属層123cが残されていない。貫通孔24Xは、環状の金属層123cが残されていないため、貫通孔241と貫通孔242との2層構造を有する。金属層123Xに開口部125Xが設けられているので、第2基板12Xは、ターミナルピン51の周囲において、絶縁体層121と金属層122との2層になっている。ターミナルピン51を第2電極23に半田接合した場合、金属層122とターミナルピン51は半田接合されるが、絶縁体層121とターミナルピン51は半田接合されない。これにより、ターミナルピン51の周囲に隙間Sが生成される。より詳しくは、第2基板12Xにおいて、ターミナルピン51の貫通孔24Xの周りに環状の金属層123cが残っていないことで、ターミナルピン51の周りに濡れた半田61Xは、絶縁体層121の上に濡れ広がらずに、ターミナルピン51に沿って濡れ広がる。これにより、半田61Xがフィレット形状を形成しない。従来の熱電発電モジュールでは、半田61Xが不均一でアリの巣状になることがある。このように、従来の熱電発電モジュールは、外部と内部とを連通する貫通孔24の周囲の隙間Sが埋まらないおそれがあり、封止性に改善の余地がある。
【符号の説明】
【0057】
1…熱電発電モジュール、1a…上面、1b…下面、2…高温側プレート、2a…上面、3…カーボンシート、4…低温側プレート、4b…下面、5…カーボンシート、11…第1基板(基板)、111…絶縁体層、111a…上面、112…金属層、113…金属層、113a…上面、12…第2基板(基板)、121…絶縁体層、121b…下面、122…金属層、122b…下面、123…金属層、123a…上面、123c…環状の金属層、124…ニッケルメッキ層、21…熱電変換素子、21P…p型素子、21N…n型素子、22…第1電極(電極)、23…第2電極(電極)、24…貫通孔、241…貫通孔、242…貫通孔、243…貫通孔、30…封止部、31…枠部、31a…上面、31b…下面、32…開口部、51…ターミナルピン(端子)、52…本体部、53…頭部、53a…上面、54…雌ねじ部、61…半田。