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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】突起部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65B 41/16 20060101AFI20240814BHJP
   B31F 1/07 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B65B41/16 501
B31F1/07
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020126631
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023590
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人クオリオ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】石田 拓也
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-290725(JP,A)
【文献】特開平10-052956(JP,A)
【文献】特開2009-137705(JP,A)
【文献】特開2011-251461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 41/16
B31F 1/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの一面から突出した突起を有する突起部材の製造方法であって、
上下一対のプレス金型の上流側に設けた、上流駆動ロール及び加工対象の帯状シートを抑える上流対向ロールを有する一対の上流搬送ロールと、前記上下一対のプレス金型の下流側に設けた、下流駆動ロール及び前記帯状シートを抑える下流対向ロールを有する一対の下流搬送ロールとが、互に連動して稼働して、前記帯状シートを間欠的に搬送しており、
前記間欠的な搬送の中で、前記一対の上流搬送ロールと前記一対の下流搬送ロールとがそれぞれ一時停止して、前記一対の上流搬送ロールと前記一対の下流搬送ロールとの間において、前記上下一対のプレス金型の上下間で前記帯状シートを下方に弛め、かつ、該帯状シートと下方の前記プレス金型との間に空間を設けた状態にし、
前記状態で、前記上下一対のプレス金型を用いて、前記帯状シートをプレスに応じて伸長させて前記突起を成形するプレス工程を行い、
前記帯状シートの下方への弛み量は、前記上下一対のプレス金型の下流に配置した前記一対の下流搬送ロールによって送り量を制御することによって行
前記一対の下流搬送ロールは、前記一対の上流搬送ロールによる前記帯状シートの供給量X1に相当する量を、前記プレス工程前の1回目の搬送による送り量Y1と前記プレス工程後の2回目の搬送による送り量Y2とに分けて搬送し、前記送り量Y1は前記送り量Y2より多くなるように搬送し、前記1回目の搬送による、前記供給量X1と前記送り量Y1との差を前記弛み量(X1-Y1=Y2)とする、突起部材の製造方法。
【請求項2】
前記プレス工程後に、エアーブローによって前記帯状シートを冷却する冷却工程を有する、請求項1記載の突起部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに加工を施して突起部材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに加工を施す技術について種々の提案がなされてきた。
例えば、特許文献1には、スプロケットホール(搬送孔)を備えた連続シートに対してデジタル印刷等の加工を施す装置が記載されている。該装置は、紙を行う第1搬送部と、加工部へと連続シートを搬送する第2搬送部とを備える。第1搬送部と第2搬送部の搬送速度を異ならせることで連続シートのズレを調整して、第2搬送部の有する搬送ピンが連続シートのスプロケットホールに挿入される状態を回復させている。
また、特許文献2には、帯状シートに対する2つの加工手段(ポケット成形手段及び孔明け手段)を備えた装置が記載されている。該装置においては更に、前記2つの加工手段の間に、帯状シートを略U字状に垂らすバッファ部を備える。該バッファ部によって、ポケット成形手段からの帯状シートの連続繰り出しと、孔明け手段の帯状シートの間欠的な引き込みとの移送動作方式の違いによる速度差を吸収するようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-167223号公報
【文献】特開2003-118706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
帯状シートを搬送しながらこれに加工を施して突起を成形する際、従来はプレス金型の温度、プレス時間、プレス圧力をシートの特性等に合わせて制御することで、所望の突起を形成した部材を得ようとしていた。しかし、上記の方法では制御は難しく、突起強度(圧縮強度)や突起形状(突起の大きさなど)といった成形部材の制御(成形性という。)の点において更なる改善の余地があった。このような成形性を向上させることに関して、上記の特許文献1及び2記載の装置には何ら記載はない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、シートに加工を施して、突起を形成するにあたり、突起強度を向上させ、良好な形状の突起を有する突起部材の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シートの一面から突出した突起を有する突起部材の製造方法であって、上下一対のプレス金型の間で、帯状シートを下方に弛め、かつ、該帯状シートと下方の前記プレス金型との間に空間を設けた状態で、前記一対のプレス金型を用いて前記帯状シートに前記突起を成形するプレス工程を有し、前記帯状シートの下方への弛み量は、前記一対のプレス金型の下流に配置した下流搬送ロールによって送り量を制御することによって行う、突起部材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の突起部材の製造方法によれば、突起強度を向上させ、良好な形状の突起を有する突起部材を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の突起部材の製造方法に用いられる製造装置の1例を示した概略構成図である。
図2】上流搬送ロールにおける帯状シートの供給量と下流搬送ロールにおける帯状シートの送り量とを時系列で示した説明図である。
図3】上流搬送ロールと下流搬送ロールとの間における帯状シートの状態を示す説明図であり、(A)は帯状シートにテンションが掛けられた状態を示しており、(B)は帯状シートを下方へ弛め、かつ、下部金型との間に空間を設けた状態を示している。
図4】(A)は、帯状シートに対し、上部金型と下部金型を離間させた配置で、それぞれぞれの平坦面を帯状シートと平行に合わせた状態を示す側面図であり、(B)は(A)の状態から上部金型と下部金型とを帯状シートに接近させてプレス加工を行った状態を示す側面図である。
図5】(A)は実施例で用いた上部金型を模式的に示す側面図であり、(B)は(A)に示す上部金型を成形凸部側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の突起部材の製造方法を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。
【0010】
まず、本発明の製造方法で製造される突起部材は、シートの一面から突出した突起を有するものである。突起は、シートの一面側の平面に対し高さのあるものである限り、種々の形状とすることができる。例えば、円錐や角錐、円柱、角柱、半球等が挙げられる。また、突起の数も1つでもよく2つ以上であってもよい。突起が複数ある場合、異なる形状の突起を組み合わせたものとしてもよい。
【0011】
本発明の突起部材の製造方法は下記(I)の工程(以下、単に工程(I)ともいう)を有する。
(I)上下一対のプレス金型の間で、帯状シートを下方に弛め、かつ、該帯状シートと下方の前記プレス金型との間に空間を設けた状態で、前記一対のプレス金型を用いて前記帯状シートに前記突起を成形するプレス工程。
工程(I)において、前記帯状シートの下方への弛み量は、前記一対のプレス金型の下流に配置した下流搬送ロールによって送り量を制御することによって行う。
【0012】
工程(I)において、帯状シートを弛ませ、かつ、下方のプレス金型に触れないよう空間を設けた状態にして、プレス金型によるプレス加工を行う。これにより、プレス加工において搬送時のテンションが弛められており、帯状シートがプレスに応じて伸長しやすく、プレス金型の凹凸形状に沿いやすい。加えて、上記のとおり帯状シートを弛ませても下方のプレス金型との空間を設けた状態にするので、帯状シートが下方のプレス金型に引っ掛かることが無く、良好な加工を可能にする。更に、空間を設けた状態にした後、上下一対のプレス金型で帯状シートをプレス加工するので、シート面とプレス金型との位置合わせを行いやすく、良好な成形性の観点から好ましい。
【0013】
このような本発明の突起部材の製造方法によれば、突起強度を向上させ、良好な形状の突起を有する突起部材を製造することができる。たとえ加工対象の帯状シートにポリプロピレン樹脂などシート剛性を強める成分が含まれ、シートの伸長性が抑えられていたとしても、上記の効果を奏し得る。
ここで言う「突起強度」とは、突起の圧縮強度を意味する。例えば、精密万能試験機「オートグラフAG-Xplus」(商品名、株式会社島津製作所製)を用いて測定される。このような突起強度は、上記のようなプレス加工において不織布に熱が与えられて、不織布内の繊維が融着して結合することによって高められ得る。
また、ここで言う「突起形状」の良否は、プレス加工に用いる金型に沿った形状であるかどうかで判断され、主に成形された突起の大きさで判断することができる。本発明の突起部材の製造方法においては、平坦なシートをプレス加工してシートの一面から突出する突起を成形するため、成形された突起の反対面側は凹状にされている。その凹状空間の体積(以下、凹状体積ともいう)の大きさを精度よく制御して形成できるか否かで突起形状の良否を判断することができる。
【0014】
本発明の突起部材の製造方法は、前記工程(I)後に、(II)エアーブローによって前記帯状シートを冷却する冷却工程(以下、単に工程(II)ともいう)を有することが好ましい。前記(I)では、前記プレス金型によって成形した突起は加温され柔軟化していることから、前記工程(II)の前記エアーブローによる冷却によって、該突起の形状を搬送前により早期に固定することができる。これにより、帯状シートにテンションが掛けられて下流へと搬送されても突起形状が更に保持されやすく、その状態のまま最終工程への移送を可能にする。
【0015】
本発明の突起部材の製造方法は、例えば図1に示す製造装置100を用いて実施することができる。
図1の製造装置10は、加工対象である帯状シート100の原反ロール101を支えるロール軸1、帯状シート100を送給する上流搬送ロール2、帯状シート100に突起110を成形する加工部3、下流に配置された下流搬送ロール5を有する。製造装置10は、加工部3と下流搬送ロール5との間に、突起110を成形した帯状シート100にエアーブローを吹き付けて冷却する冷却部を有することが好ましい。
製造装置10において、上流搬送ロール2、加工部3及び下流搬送ロール5にて前述の工程(I)を行う。
【0016】
上流搬送ロール2は、駆動モータに接続された上流駆動ロール21と帯状シート100を抑える上流対向ロール22とを有する。この上流搬送ロール2は、帯状シート100の加工部3への供給量を制御することができる。
【0017】
加工部3は、上部金型31と下部金型32とを有する。上部金型31と下部金型32とは帯状シート100を間に挟んで上下に対向配置されている。プレス加工前には、上部金型31と下部金型32とは共に帯状シート100に触れないよう、一定の距離を置いて配置されている。本実施形態においては、上部金型31は、帯状シート100を部分的に押し込む成形凸部311を有する雄型であり、下部金型32は、成形凸部311に対応する成形凹部321を有する雌型である。ただし、これに限定されず、上部金型31を雌型とし、下部金型32を雄型としてもよい。帯状シートの搬送阻害を防ぐ観点からは、図1に示すように、上部金型31を雄型とし、下部金型32を雌型とすることが好ましい。また、成形凸部311の形状及び数は、突起部材の備える突起に応じて適宜設定することができる。図1に示すような円錐に限らず、角錐、円柱、角柱、半球等であってもよく、また突起の数も1つでもよく2つ以上であってもよい。突起が複数ある場合、異なる形状の突起を組み合わせたものとしてもよい。成形凹部321は、成形凸部311の形状に応じて適宜設定される。
プレス加工前に離間配置されていた上部金型31と下部金型32とは、プレス加工時に帯状シート100に接近してプレスを行う。その際、上部金型31及び下部金型32の両方が帯状シート100に上下から接近するようにしてもよく、上部金型31及び下部金型32のいずれか一方のみが帯状シート100に接近するようにしてもよい。
【0018】
下流搬送ロール5は、駆動モータに接続された下流駆動ロール51と帯状シート100を抑える下流対向ロール52とを有する。この下流搬送ロール5は、供給された帯状シート100の下流への送り量を制御する。すなわち、上流搬送ロール2による加工部3への帯状シート100の供給量に対し、下流搬送ロール5が下流への帯状シート100の送り量を制御する。これにより、前述の工程(I)に示す通り、帯状シート100を下方に弛め、かつ、帯状シート100と下部金型32(下方のプレス金型)との間に空間を設けた状態にする。
【0019】
上流搬送ロール2と下流搬送ロール5とは、加工部3を間に挟んで上流と下流に配置され、図2に示すようにして互に連動して稼働する。しかも、上流搬送ロール2及び下流搬送ロール5は、それぞれのタイミングで帯状シート100を間欠的に搬送する。
具体的には、帯状シート100が下流搬送ロール5にまで到達し、弛むことなくテンションがかけられた状態(図3(A)参照)から、上流搬送ロール2と下流搬送ロール5とが同時に帯状シート100の搬送を開始する。上流搬送ロール2は、加工部3への帯状シート100の供給量X1に到達した時点で一時停止する。一方、下流搬送ロール5は、上流搬送ロール2の一時停止よりも前に、上記供給量X1よりも少ない送り量Y1となった時点で一時停止する(X1>Y1)。このとき、帯状シート100は下方へと弛められる(図3(B)参照)。供給量X1と送り量Y1との差が、加工部3における帯状シート100の下方への弛み量(X1-Y1)となる。なお、下流搬送ロール2による帯状シート100の送り量Y1の搬送は、後述の送り量Y2の搬送に対して、1回目の搬送ともいう。
上記の弛み量は、下流搬送ロール5によって送り量を制御することによって行う。
上記の弛み量は、加工部3において、弛んだ帯状シート100が下部金型32に引っ掛からないよう両者間に空間を設ける量として決められる。一方、供給量X1は、1製品の幅(搬送方向の長さ)に相当する量として決められる。下流搬送ロール5は、上流搬送ロール2の供給量X1を基準量とし、これと上記の弛み量との差を上記の送り量Y1の目標量を設定する。下流搬送ロール2は、上記目標量に基づいて、送り量Y1とする帯状シート100の搬送を行う。
このようにして、上下一対のプレス金型である上部金型31と下部金型32の間で、帯状シート100を下方に弛め、かつ、帯状シート100と下部金型32との空間を設けた状態とする。
この状態で、加工部3において、上部金型31と下部金型32とによって、弛んだ帯状シート100にプレス加工を行って突起110を成形する。成形した帯状シート100に対し、必要により、冷却部4によってエアーブローを行い、帯状シート100を冷却してもよい。このエアーブローは、下記の下流搬送ロール5による帯状シート100の下流への搬送再開の前に行うことが好ましい。
その後、上流搬送ロール2を一時停止した状態で、下流搬送ロール5は帯状シート100の下流への搬送を再開する。すなわち、下流搬送ロール5は、送り量Y2とする2回目の帯状シートの搬送を行う。その送り量Y2は、前記弛み量(X1-Y1)に相当する(Y2=X1-Y1)。これにより、冷却され固定化された突起110を備えた帯状シート100に再びテンションがかけられて、通常の搬送状態に戻される。このとき、予め冷却部4で突起110が冷却され固定されているので、帯状シート100に再びテンションが掛けられて下流へと搬送されても突起形状が保持され、その状態のまま最終工程まで辿り着くことができる。
このようにして、前述の工程(I)及び(II)が実施される。
【0020】
下流搬送ロール5は、上流搬送ロール2による帯状シート100の供給量X1に相当する量を、プレス加工前の1回目の搬送による送り量Y1とプレス加工後の2回目の搬送による送り量Y2とに分けて搬送することとなる(X1=Y1+Y2)。
【0021】
上記の上流搬送ロール2と下流搬送ロール5とによる帯状シート100の間欠的な搬送を1サイクルとする。次いで、帯状シート100に対し次の突起成形を行うべく次のサイクルの間欠的な搬送(上流搬送ロール2の供給量X1’、下流搬送ロール5の送り量Y1’及びY2’)とプレス工程及び冷却工程を行う。このサイクルは適宜繰り返し行う。
このようにして上流搬送ロール2及び下流搬送ロール5が連動しながら、それぞれのタイミングで間欠的な搬送を行う。これにより、帯状シート100の間欠的な搬送と加工(搬送、一時停止、プレス加工及び冷却、再搬送)が繰り返し行われる。
【0022】
突起が成形された帯状シート100は、下流搬送ロール5から更に下流へと搬送され、必要な加工や裁断等を行い、所望の突起部材が製造される。
【0023】
下流搬送ロール5の2回目の搬送(プレス加工後の搬送)は、次のサイクルの下流搬送ロール5の1回目の搬送と分けてもよいし、分けずに連続して行ってもよい。分ける場合、下流搬送ロール5の2回目の搬送から次のサイクルの1回目の搬送までの間、上流搬送ロール2は一時停止したままとなる。分けずに連続して行う場合、下流搬送ロール5の搬送が送り量Y2に到達した時点で、直ぐに上流搬送ロール2が下流搬送ロール5と同期して搬送を開始する。
また、下流搬送ロール5は、上記の実施形態では、プレス加工の前後で1回目の搬送による送り量Y1と2回目の搬送による送り量Y2とに分けて合計2回(複数回)の搬送を行っているが、これに限定されない。例えば、下流搬送ロール5は、プレス工程の前後のそれぞれで複数回に分けて帯状シート100を搬送するようにしてもよい。
【0024】
プレス加工前の弛み量(X1-Y1(=Y2))は、前述のとおり、帯状シート100と下部金型32との間に空間を設ける量とする。これと同時に、前記弛み量(X1-Y1(=Y2))は、上部金型31の成形凸部311全体の搬送方向における長さW(図3(B)参照)を基準にして決められることが好ましい。これにより、加工部3において、帯状シート100の突起成形に必要な弛み量を好適に制御することができる。また、これにより、帯状シート100の平面と上部金型31及び下部金型32との位置合わせをより適正に行うことができる。
具体的には、弛み量(X1-Y1(=Y2))は、突起成形性を良好にする観点から、上記長さWの10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。また、弛み量(X1-Y1(=Y2))は、帯状シートの搬送阻害を防ぐ観点から、上記長さWの300%以下が好ましく、200%以下がより好ましく、120%以下が更に好ましい。
【0025】
また、加工部3において、図4(A)及び(B)に示すように、上流駆動ロール21と上流対抗ロール22の接点と下流駆動ロール51と下流対抗ロール52の接点を結ぶ直線Pにおいて、上部金型31の平坦面312及び下部金型32の平坦面322とが合わさり、プレス加工することが好ましい。これにより、帯状シートに対して良好な突起が成型可能となる。
【0026】
冷却部4において、エアーブローするエアー温度は、成形した突起の効果的な冷却固定とその後のテンション化の搬送にも耐え得る形状保持性の観点から、40℃以下が好ましく、25℃以下がより好ましい。前記エアー温度は、シート保護の観点から、1℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。
また、エアーブローの風量は、上記と同様の観点から、1000cm/min以上が好ましく、10000cm/min以上が好ましく、また、500000cm/min以下が好ましく、200000cm/min以下がより好ましい。
【0027】
本発明の突起部材の製造方法において、加工対象のシートの素材は、プレス加工によって上記の突起を成形することができる種々のものを用いることができる。例えば、樹脂フィルムや不織布等が挙げられる。また、加工対象のシートは単層からなるものであってもよく、複数層からなるものであってもよい。
【0028】
加工対象のシートが複数層からなる場合、例えば、第1シート、第2シート及び第3シートの3層積層体が挙げられる。各層は互いに同種のシートであってもよいし、異種のシートであってもよい。第1シート、第2シート及び第3シートとしては、任意のシート材料を用いることができ、例えば、不織布、織布、編み布等の繊維材料からなる繊維シート、樹脂フィルム、繊維シートと樹脂フィルムとのラミネート材等を用いることができる。これらの中でも、突起成形性の観点から、不織布、樹脂フィルムが好ましい。
【0029】
不織布としては、例えばエアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布等が挙げられ、単層でも多層構造でもよい。不織布を構成する繊維は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンやポリブテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂等から構成することができる。
【0030】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等の高分子材料からなるフィルム、透湿性フィルム等が挙げられる。
【実施例
【0031】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳しく説明するが、本発明はこれにより限定して解釈されるものではない。
【0032】
(実施例1)
加工対象の帯状シート試料として、第1シートとして坪量150g/mのポリエチレンテレフタレート(PET)不織布、第2シートとして坪量25g/mのポリエチレン(PE)フィルム、第3シートとして坪量150g/mのポリエチレンテレフタレート(PET)不織布をこの順で積層した帯状シートで作製した。
次いで、図1に示す製造装置10を用いて、前述の工程(I)及び工程(II)を有する突起部材の製造方法を実施した。そのとき、上部金型31は、図5(A)及び(B)に示す円錐状の成形凸部311を1つ有するものを用いた。成形凸部311は、底面の半径(R)24mm、高さ(H)5mmで、体積約3014mmのものとした。下部金型32は、前記円錐状の成形凸部311に対応する成形凹部321を1つ有するものを用いた(図示せず)。上流搬送ロール2による帯状シートの供給量X1、下流搬送ロール5による帯状シートの送り量Y1及びY2は、上部金型31の成形凸部311の搬送方向における長さWを基準にして、下記表1のようにして実施した。より詳細には、下流搬送ロール5によるに2回目の搬送による送り量Y2を、表1に示す、成形凸部311の搬送方向における長さWに対す割合とした。これにより、プレス加工における帯状シートの弛み量を設定した。次いで、上流搬送ロール2による供給量X1を、成形凸部311の搬送方向における長さWを基準に定め、表1に示す割合とした。これを帯状シートの基準送り量とした。この基準送り量から上記の弛み量である送り量Y2を差し引いて、下流搬送ロール5の1回目の搬送による送り量Y1とした。プレス加工は成形荷重1.5kN、プレス時間0.5秒、金型の温度は170°Cで実施した。冷却エアーの風量は100000cm/min、温度は25°Cにて実施した。このようにして実施例1の突起部材試料S1を作製した。
【0033】
(実施例2~6)
下流搬送ロール5の1回目の搬送による送り量Y1及び2回目の搬送による送り量Y2を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして、突起部材の製造方法を実施した。こにより、実施例2~6の突起部材試料S2~S6を作製した。
【0034】
(比較例1)
下流搬送ロール5の1回目の搬送による送り量Y1を上流搬送ロール2の供給量X1と同一にし、下流搬送ロール5の2回目の搬送による送り量Y2をゼロにした以外は、実施例1と同様にして、突起部材の製造方法を実施した。これにより、比較例1の突起部材試料C1を作製した。
【0035】
(比較例2)
下流搬送ロール5の1回目の搬送による送り量Y1及び2回目の搬送による送り量Y2を表1に示すとおりとし、弛んだ帯状シートと下部金型との間に空間を設けなかった以外は、実施例1と同様にして、突起部材の製造方法を実施した。これにより、比較例2の突起部材試料C2を作製した。
【0036】
(突起強度の測定)
実施例及び比較例において作製した各突起部材試料について、精密万能試験機「オートグラフAG-Xplus」(商品名、株式会社島津製作所製)を用いて圧縮強度を測定した。突起部材試料は帯状シートからひとつの突起部を含む50mm四方の大きさで切り出し、評価した。
【0037】
(突起の凹状体積の測定)
実施例及び比較例において作製した各突起部材試料について、成形された突起の反対面側の凹状空間の体積(凹状体積)を、パターンプロジェクション照明CA-DQP12X(株式会社キーエンス製)と画像処理装置CV-5000(株式会社キーエンス製)を用いた3次元画像処理によって測定した。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示すとおり、実施例1~6の製造方法を実施して作製した各突起部材試料S1~S6は、比較例1及び2の製造方法を実施して作製した各突起部材試料C1及びC2に比べて、突起強度が高く、突起の凹状体積が大きなものとなっていた。すなわち、本発明の突起部材の製造方法によれば、突起強度を向上させ、良好な形状の突起を有する突起部材を好適に製造することができることが分かった。
【符号の説明】
【0040】
1 ロール軸
2 上流搬送ロール
21 上流駆動ロール
22 上流対向ロール
3 加工部
31 上部金型
311 成形凸部
312 平坦面
32 下部金型
321 成形凹部
322 平坦面
4 冷却部
5 下流搬送ロール
51 下流駆動ロール
52 下流対向ロール
10 突起部材の製造措置
100 帯状シート
101 原反ロール
図1
図2
図3
図4
図5