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特許7537935バイオマス証明支援装置、バイオマス証明支援方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】バイオマス証明支援装置、バイオマス証明支援方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20240814BHJP
   G06Q 10/083 20240101ALI20240814BHJP
【FI】
G06Q50/02
G06Q10/083
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020136164
(22)【出願日】2020-08-12
(65)【公開番号】P2022032418
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】陰山 恭男
(72)【発明者】
【氏名】武田 匡史
(72)【発明者】
【氏名】土屋 耕司
(72)【発明者】
【氏名】石橋 真人
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 飛鳥
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-057882(JP,A)
【文献】特開2016-212833(JP,A)
【文献】特開2008-301783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材の輸送に係る輸送情報を取得する取得手段と、
木材の伐採の根拠に係る情報である由来情報が記憶された記憶手段から、前記輸送情報に対応する前記由来情報を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した前記由来情報が一つであった場合に、当該由来情報を、前記輸送情報と紐付けて前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、
前記抽出手段が抽出した前記由来情報が0又は複数であった場合に、所定の端末に通知する通知手段と、
を備え、
前記輸送情報は、輸送車両への木材の積込地に係る位置情報を含み、
前記由来情報は、国有林に関する委託契約、民有林に関する森林計画、民有林に関する伐採届出のいずれかであり、
前記記憶手段には、前記由来情報と、過去の輸送実績に係る木材の積込地に係る位置情報と、が紐付けて記憶され、
前記抽出手段は、前記輸送情報に含まれる位置情報と所定の距離内にある位置情報と紐付けて記憶された前記由来情報を抽出することを特徴とするバイオマス証明支援装置。
【請求項2】
前記輸送情報は、輸送車両への木材の積込日時に係る情報を含み、
前記由来情報は、木材の伐採可能期間に係る情報を含み、
前記抽出手段は、前記由来情報に係る伐採可能期間が、前記輸送情報に係る積込日時を含む前記由来情報を抽出することを特徴とする請求項1に記載のバイオマス証明支援装置。
【請求項3】
前記輸送情報は、前記輸送車両の運転手が所属する運搬業者に係る情報を含み、
前記由来情報は、木材の輸送を行う運搬業者に係る情報を含み、
前記抽出手段は、前記由来情報に係る運搬業者が、前記輸送情報に係る運搬業者を含む前記由来情報を抽出することを特徴とする請求項1又は2に記載のバイオマス証明支援装置。
【請求項4】
前記由来情報は、前記抽出手段による抽出の可否に係る情報を含み、
前記抽出手段は、前記由来情報に抽出が可能である旨の情報が含まれる前記由来情報を抽出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のバイオマス証明支援装置。
【請求項5】
バイオマス証明支援装置が実行するバイオマス証明支援方法であって、
木材の輸送に係る輸送情報を取得する取得ステップと、
木材の伐採の根拠に係る情報である由来情報が記憶された記憶手段から、前記輸送情報に対応する前記由来情報を抽出する抽出ステップと、
前記抽出ステップが抽出した前記由来情報が一つであった場合に、当該由来情報を、前記輸送情報と紐付けて前記記憶手段に記憶させる記憶制御ステップと、
前記抽出ステップが抽出した前記由来情報が0又は複数であった場合に、所定の端末に通知する通知ステップと、
を含み、
前記輸送情報は、輸送車両への木材の積込地に係る位置情報を含み、
前記由来情報は、国有林に関する委託契約、民有林に関する森林計画、民有林に関する伐採届出のいずれかであり、
前記記憶手段には、前記由来情報と、過去の輸送実績に係る木材の積込地に係る位置情報と、が紐付けて記憶され、
前記抽出ステップにおいて、前記輸送情報に含まれる位置情報と所定の距離内にある位置情報と紐付けて記憶された前記由来情報を抽出することを特徴とするバイオマス証明支援方法。
【請求項6】
コンピュータを、
木材の輸送に係る輸送情報を取得する取得手段、
木材の伐採の根拠に係る情報である由来情報が記憶された記憶手段から、前記輸送情報に対応する前記由来情報を抽出する抽出手段、
前記抽出手段が抽出した前記由来情報が一つであった場合に、当該由来情報を、前記輸送情報と紐付けて前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段、
前記抽出手段が抽出した前記由来情報が0又は複数であった場合に、所定の端末に通知する通知手段、
として機能させ、
前記輸送情報は、輸送車両への木材の積込地に係る位置情報を含み、
前記由来情報は、国有林に関する委託契約、民有林に関する森林計画、民有林に関する伐採届出のいずれかであり、
前記記憶手段には、前記由来情報と、過去の輸送実績に係る木材の積込地に係る位置情報と、が紐付けて記憶され、
前記抽出手段は、前記輸送情報に含まれる位置情報と所定の距離内にある位置情報と紐付けて記憶された前記由来情報を抽出することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス証明支援装置、バイオマス証明支援方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
木材の伐採を行う施業主が、伐採した木材を納入先となる受入事業者に搬入するに際しては、伐採した木材が、国有林、民有林ともにいかなる公的な許諾を根拠として伐採されたものについての特定を行った上で、搬入内容(樹種、重量等)を示すこと(木質バイオマスの証明、以下単に「バイオマス証明」という。)が必要となる。
【0003】
このようなバイオマス証明は、通常、施業主自身に代わって、施業主から運搬を委託された運搬業者に所属する輸送車両の運転手によって、木材の受入事業者に対してなされることとなるが、証明者となる運転手がバイオマス証明に必要な情報をすべて把握し、受入事業者に対してバイオマス証明を行うことは、非常に手間が掛かる。
そこで、このようなバイオマス証明を支援することを目的としたシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-212581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなバイオマス証明において、証明者が示すことが困難な情報の一つが、上記のような伐採の根拠となった公的な許諾に係る情報であるが、従来のシステムにおいては、このような公的な許諾に係る情報について逐一示すことが必要となる点に変わりはなく、バイオマス証明に係る負担を十分に低減することができなかった。
【0006】
本発明の課題は、木質バイオマスの証明に係る証明者の負担を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のバイオマス証明支援装置は、木材の輸送に係る輸送情報を取得する取得手段と、木材の伐採の根拠に係る情報である由来情報が記憶された記憶手段から、前記輸送情報に対応する前記由来情報を抽出する抽出手段と、前記抽出手段が抽出した前記由来情報が一つであった場合に、当該由来情報を、前記輸送情報と紐付けて前記記憶手段に記憶させる記憶制御手段と、前記抽出手段が抽出した前記由来情報が0又は複数であった場合に、所定の端末に通知する通知手段と、を備え、前記輸送情報は、輸送車両への木材の積込地に係る位置情報を含み、前記由来情報は、国有林に関する委託契約、民有林に関する森林計画、民有林に関する伐採届出のいずれかであり、前記記憶手段には、前記由来情報と、過去の輸送実績に係る木材の積込地に係る位置情報と、が紐付けて記憶され、前記抽出手段は、前記輸送情報に含まれる位置情報と所定の距離内にある位置情報と紐付けて記憶された前記由来情報を抽出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、木質バイオマスの証明に係る証明者の負担を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係るバイオマス証明支援システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態に係るバイオマス証明支援システムの動作における全体の流れの概略を示すフローチャートである。
図3】本発明の実施形態に係るバイオマス証明支援システムの写真データ、樹種情報等の取得時の動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係るバイオマス証明支援システムの由来決定時の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1から図4に基づいて、本発明の実施形態であるバイオマス証明支援システム100について説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図示例に限定されるものではない。
【0011】
[第1 構成の説明]
バイオマス証明支援システム100は、図1に示すように、システムの管理者が管理する管理サーバ1と、木材の搬入を受ける受入事業者の事業所等に設置された受入事業者端末2と、伐採された木材を搬入する輸送車両の運転手が携帯する運転手端末3と、を備えて構成され、管理サーバ1と受入事業者端末2との間、管理サーバ1と運転手端末3との間は、通信ネットワークNを介して接続されている。
【0012】
[1 管理サーバ]
管理サーバ1は、例えば、本システムを管理・運営する企業等が保有するPC(Personal Computer)、WS(Work Station)等の情報機器であり、図1に示すように、例えば、制御部11と、記憶部12と、通信部13と、を備えて構成されている。
【0013】
制御部11は、管理サーバ1の動作を制御する部分であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えて構成され、CPUと、記憶部12に記憶されたプログラム等との協働により、管理サーバ1の各部を統括制御する。
【0014】
記憶部12は、管理サーバ1の運用に必要となる各種情報が記憶される部分であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、半導体メモリ等により構成され、プログラムデータ等の管理サーバ1の運用に必要となるデータを、制御部11から読み書き可能に記憶する。
【0015】
記憶部12には、業者データベース121と、運転手データベース122と、端末データベース123と、車両データベース124と、森林計画データベース125と、輸送実績データベース126と、が備えられている。
【0016】
業者データベース121は、受入事業者端末2を使用する受入事業者に搬入する木材を伐採する施業主、伐採された木材を運搬する運搬業者、木材の代金を支払う支払業者等の業者に関する情報が記憶されたデータベースであり、業者名等の各業者に関する各種情報が、業者ごとに付された業者IDと紐付けられた情報(業者マスタ)が記憶されている。
【0017】
運転手データベース122は、受入事業者端末2を使用する受入事業者に木材を搬入する輸送車両の運転手に関する情報が記憶されたデータベースであり、氏名、所属する運搬業者、使用する運転手端末3の端末番号等の各運転手に関する各種情報が、運転手ごとに付された運転手IDと紐付けられた情報(運転手マスタ)が記憶されている。
【0018】
端末データベース123は、受入事業者端末2を使用する受入事業者に木材を搬入する輸送車両の運転手が使用する運転手端末3に関する情報が記憶されたデータベースであり、端末番号、使用する運転手の氏名、使用する運転手の所属する運搬業者等の各運転手端末3に関する各種情報が、運転手端末3ごとに付された端末IDと紐付けられた情報(端末マスタ)が記憶されている。
【0019】
車両データベース124は、受入事業者に木材を搬入する輸送車両に関する情報が記憶されたデータベースであり、ナンバー、車両番号等の各輸送車両に関する各種情報が、輸送車両ごとに付された車両IDと紐付けられた情報(車両マスタ)が記憶されている。
【0020】
森林計画データベース125は、木材の伐採の根拠となる公的な許諾に関する情報が記憶されたデータベースである。なお、伐採の根拠となる許諾の種類としては、例えば、国有林に関する委託契約(国有林の施業委託契約由来のもの)、民有林に関する森林計画(民有林の森林経営計画由来のもの)、民有林に関する伐採届出(森林経営計画外で、「伐採及び伐採後の届出」由来のもの)等がある(以下、これら伐採の根拠となる許諾を、合わせて「森林計画等」という。)。
【0021】
森林計画データベース125には、受入事業者端末2を使用する受入事業者に搬入される木材の伐採の根拠となる各森林計画等について、計画名、認定番号/伐採届出ナンバー、届出先、期間、所在、面積(単位ha)、施業主、支払業者、運搬業者等の情報に加え、林班連携フラグ及び有効フラグが紐付けられた情報(森林計画マスタ)が記憶されている。すなわち、森林計画マスタが、本発明における由来情報に該当することとなる。
【0022】
森林計画マスタには、具体的には、以下のような情報が含まれる。
まず、計画名としては、委託契約であれば山などの任意の名前、森林計画であれば団地名など、伐採届出であれば山などの任意の名前が記憶される。
また、認定番号/伐採届出ナンバーとしては、委託契約については記憶されないが、森林計画であれば計画書の認定番号、伐採届出であれば通知書の伐採届出ナンバーが記憶される。
また、届出先としては、委託契約であれば林野庁森林管轄署、森林計画であれば計画認定請求先の自治体名、伐採届出であれば伐採の届出先の自治体名が記憶される。
また、期間としては、委託契約であれば契約期間、森林計画であれば計画期間、伐採届出であれば届出期間が記憶される。
また、所在としては、委託契約であれば市町村及び林班、森林計画であれば市町村及び林班、伐採届出であれば市町村及び住所が記憶される。
また、面積(単位ha)としては、委託契約であれば伐採面積、森林計画であれば林班計画面積、伐採届出であれば届出伐採面積が記憶される。
また、施業主、支払業者及び運搬業者としては、業者データベース121に記憶された業者マスタから選択された業者が記憶される。
【0023】
林班連携フラグは、後述の動作の説明における由来決定において、当該森林計画マスタを、管理サーバ1の制御部11による抽出の対象とするか否かに係るフラグである。なお、この点の詳細については動作の説明において述べる。
有効フラグは、森林計画マスタ自体の有効・無効を設定したフラグである。
【0024】
輸送実績データベース126は、受入事業者端末2を使用する受入事業者への木材の輸送実績(受入事業者への木材の搬入の履歴)が記憶されるデータベースであり、木材が受入事業者に搬入される度に、当該輸送に係る施業主、運搬業者、支払業者、運転手、使用車両、樹種、積込位置、積み込み日時等に係る情報に加え、運転手端末3から受信した写真データが、輸送実績ごとに付された輸送IDと紐付けて記憶されることとなる。
また、後述の動作の説明において述べるように、由来決定がなされた輸送実績については、当該由来決定の結果に係る情報についても記憶される。
【0025】
また、記憶部12には、管理サーバ1を動作させるための制御部11への各種命令を含むプログラムが記憶され、後述の動作の説明において述べる管理サーバ1の動作は、このようなプログラムと制御部11との協働によって実現されることとなる。
【0026】
通信部13は、管理サーバ1と、受入事業者端末2及び運転手端末3との間の通信に用いられる部分であり、例えば、通信用IC(Integrated Circuit)及び通信コネクタなどを有する通信インターフェイスであり、制御部11の制御の元、所定の通信プロトコルを用いて、通信ネットワークNを介したデータ通信を行う。
【0027】
[2 受入事業者端末]
受入事業者端末2は、木材の搬入を受ける受入事業者の事業所等に設置されたPC等の情報機器であり、図1に示すように、例えば、管理サーバ1と同様に、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、を備えると共に、さらに、表示部24と、操作部25と、を備えて構成されている。
【0028】
表示部24は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイを備え、制御部21から出力された表示制御信号に基づいた画像を表示画面に表示する。
【0029】
操作部25は、例えば、文字入力キー、数字入力キー、その他各種機能に対応付けられたキーを有するキーボード等を備え、例えば木材の受入事業者の受入担当者からの操作入力を受け付けて、操作入力に応じた操作信号を制御部21へと出力する。操作部25は、例えば、表示部24と一体的に形成されたタッチパネル等であってもよく、受入担当者等からの操作入力を受け付けることができるものであれば特に限定されない。
【0030】
[3 運転手端末]
運転手端末3は、伐採された木材を搬入する車両の運転手が携帯するスマートフォン、タブレット端末等の情報機器であり、図1に示すように、例えば、受入事業者端末2と同様に、制御部31と、記憶部32と、通信部33と、表示部34と、操作部35と、を備えると共に、さらに、撮像部36と、位置情報取得部37を備えて構成されている。
【0031】
撮像部36は、例えば、レンズ等の光学系と、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ、CCD(Charge Coupled Device)センサ等の撮像素子と、を有し、レンズの光軸方向の画像を撮像する。撮像部36は、撮像した画像データを制御部31へと出力する。
【0032】
位置情報取得部37は、運転手端末3の所在位置に関する情報を取得する部分であり、例えば、GPS(Global Positioning System)受信機が用いられる。GPS受信機は、GPSを構成する複数のGPS衛星から提供される測位用電波であるGPS信号を受信し、これを用いて、運転手端末3、ひいてはそれを所持する運転手の位置情報を取得する。
なお、位置情報取得部37としては、運転手端末3の位置情報を取得可能なものであればよく、GPS受信機には限られない。
【0033】
[4 通信ネットワーク]
通信ネットワークNは、例えば、インターネット、電話回線網、携帯電話通信網、無線LAN通信網等であり、図1に示すように、管理サーバ1と受入事業者端末2との間及び管理サーバ1と運転手端末3との間を接続する。
通信ネットワークNとしては、上記のように各装置間を繋ぎ、これらの間でデータの送受信を行うことが可能なものであれば特に限定されない。
【0034】
[第2 動作の説明]
以下、本実施形態に係るバイオマス証明支援システム100の使用時の動作について説明する。
【0035】
[1 ステップS1 写真データ、樹種情報等の取得]
まず、伐採された木材を運搬する輸送車両の運転手は、伐採された木材の積み込み場所(以下、「土場」という。)において、施業主によって伐採された木材を輸送車両に積み込む際に、運転手端末3の操作部35を用いて所定の操作を行い、撮像部36によって、写真撮影を行う。具体的には、運転手は、土場の風景、積み込む木材及び積み込む車両のナンバーを撮影する(ステップS1-1)。また、運転手は、運転手端末3の操作部35を用いて所定の操作を行い、車両に積み込んだ木材の樹種に係る情報を入力する(ステップS1-2)。
【0036】
写真が撮影され、かつ樹種に係る情報が入力されると、運転手端末3の制御部31は、撮影された写真に係る写真データ及び入力された樹種に係る情報を、位置情報取得部37が取得した撮影場所に係る位置情報(経度及び緯度)及び撮影日時に係る情報と共に、通信部33から通信ネットワークNを介して管理サーバ1へと送信する(ステップS1-3)。
【0037】
管理サーバ1においては、通信部13によって運転手端末3から送信された情報を受信した後、制御部11が、受信した写真データ、樹種情報、位置情報及び撮影日時に係る情報を、記憶部12の輸送実績データベース126に、当該輸送に付された輸送IDと紐付けて記憶させる(ステップS1-4)。
これによって、輸送実績データベース126には、各輸送につき、写真データと共に、写真撮影場所、すなわち土場の位置情報と、写真撮影日時、すなわち積込日時に関する情報と、が記憶されることとなる。
なお、管理サーバ1においては、予め、受入事業者端末2から、通信ネットワークNを介して通信部13により、予定される輸送ごとに、施業主、運搬業者、支払業者、運転手、使用車両等に係る情報を取得の上、これが輸送IDと紐付けて記憶されている。
すなわち、ステップS1-3において管理サーバ1が運転手端末3から取得する情報及び上記のように予め取得する木材の輸送に係る情報が、本発明における輸送情報に該当することとなる。
【0038】
なお、運転手端末3の位置情報については、木材の運搬中定期的に運転手端末3の位置情報取得部37によって取得された上で、管理サーバ1へと送信され、輸送実績データベース126に記憶される。これによって、運搬中の運転手端末3の移動経路に係る情報が記憶されることとなる。
【0039】
[2 ステップS2 由来決定]
続いて、管理サーバ1においては、受入事業者端末2を使用する受入事業者に搬入される木材の由来決定、すなわち搬入される木材の伐採の根拠となる森林計画マスタの特定が行われる。具体的には、以下の通りである。
【0040】
まず、制御部11は、記憶部12の森林計画データベース125から、以下の過程を経て、全ての条件に合致する森林計画マスタを特定し、抽出する(ステップS2-1)。
【0041】
まず、制御部11は、各森林計画マスタの期間情報(委託契約の契約期間、森林計画の計画期間、伐採届出の届出期間等)に係る伐採可能な期間が、当該輸送に係る積込日時を含むかにつき判定する(ステップS2-1-1)。
【0042】
続いて、制御部11は、各森林計画マスタの運搬業者に係る情報が、当該輸送に係る運転手が所属する運搬業者を含むかにつき判定する(ステップS2-1-2)。
【0043】
続いて、制御部11は、輸送実績データベース126における由来決定済みの過去の輸送実績のうち、土場の位置情報として、ステップS1において取得した木材の積み込み場所に係る位置情報と所定距離内の位置情報が記憶された輸送実績を抽出の上、各森林計画マスタにつき、抽出された輸送実績と紐付けて記憶されているかにつき判定する(ステップS2-1-3)。
すなわち、由来決定済みの輸送実績には、後述のように由来として決定された森林計画マスタに係る情報が記憶されているところ、本ステップによって、土場として記憶された位置が、ステップS1おいて取得した位置情報と所定の距離内となる過去の輸送実績に対応する森林計画マスタが抽出されることとなる。
【0044】
続いて、制御部11は、各森林計画マスタにつき、林班連携フラグが有効となっているかにつき判定する(ステップS2-1-4)。
【0045】
なお、ステップS2-1-3においては、土場の位置情報が所定の距離内の輸送実績を抽出するとしているが、これは、同一の土場であっても、GPSの精度等の問題によって、全く同じ経度緯度が記憶されるとは限られないことから、所定の距離(例えば200m程度)内であれば、土場が同一であると推定するものである。
【0046】
また、ステップS2-1-4においては林班連携フラグが有効となっているもののみを抽出しているが、これは、土場と、森林計画マスタとが1:1の対応関係とならないものを除外するためである。
【0047】
すなわち、通常、単一の土場からは、単一の伐採箇所(林班)において伐採された木材が搬出されることから、土場と当該土場において積み込まれる木材に係る森林計画マスタとは、1:1で対応することとなる。
しかしながら、稀に、単一の土場が、複数の伐採箇所(林班)の土場を兼ねる場合が存在し、この場合において、伐採箇所ごとに対応する森林計画マスタが異なる場合、土場と、当該土場において積み込まれる木材に係る森林計画マスタとが、1:1で対応しなくなる。
【0048】
そこで、このような土場と1:1で対応しない可能性のある森林計画マスタについては、受入事業者において予め特定できることから、受入事業者が、このような森林計画マスタを除き、土場と1:1で対応する森林計画マスタについてのみ林班連携フラグを有効とすることで、土場と1:1で対応しない可能性のある森林計画マスタを、抽出対象から除外することができる。
【0049】
制御部11は、上記ステップS2-1-1からS2-1-4の全てを満たすものと判定した森林計画マスタを抽出することとなる。これによって、森林計画マスタのうち、土場が同一であると推定され、かつ期間及び運搬業者にも齟齬がなく、かつ林班連携フラグが有効となっているものを抽出することができる。
【0050】
なお、上記においては、ステップS2-1-1からS2-1-4の順に説明したが、これら全ての条件を満たす森林計画マスタを抽出できればよく、具体的な判定の順序はこれに限られない。
【0051】
ステップS2-1における抽出作業が完了すると、制御部11は、抽出された森林計画マスタの個数につき判定し(ステップS2-2)、抽出された森林計画マスタが1つであった場合、由来が決定したものとしてステップS2-9に進む。
【0052】
これに対し、ステップS2-2において、抽出された森林計画マスタが0又は複数であると判定した場合、制御部11は由来不明として、由来不明の輸送実績がある旨の所定の通知を、通信部13から通信ネットワークNを介して受入事業者端末2へと送信し(ステップS2-3)、これを受信した受入事業者端末2においては、制御部21が、由来不明の輸送実績がある旨の所定の通知を、表示部24に表示する(ステップS2-4)。
【0053】
由来不明の輸送実績がある旨の所定の通知が表示部24に表示されると、受入事業者の所定の受入担当者が、当該輸送実績に対応する森林計画マスタを選択可能か判断し(ステップS2-5)、これが可能であると判断した場合、受入担当者は、操作部25を用いて、当該輸送実績に対応する森林計画マスタを選択し、入力する(ステップS2-6)。この場合、受入担当者の選択により由来が決定こととなる。
【0054】
これに対し、ステップS2-5において、受入担当者が当該輸送実績に対応する森林計画マスタの選択をその場で行うことができないと判断した場合、受入担当者は、操作部25を用いて所定の操作を行い、由来保留である旨を入力する(ステップS2-7)。
【0055】
ステップS2-6において受入担当者が選択した森林計画マスタに係る情報が入力され、又はステップS2-7において由来保留である旨が入力されると、受入事業者端末2の制御部21は、入力内容に係る情報を、通信部23から通信ネットワークNを介して管理サーバ1へと送信する(ステップS2-8)。
【0056】
通信部13によって受入事業者端末2から送信された情報を受信した管理サーバ1においては、制御部11が、由来が決定し、又は由来決定が保留となった旨の所定の通知を、通信部13から通信ネットワークNを介して運転手端末3へと送信し(ステップS2-9)、通信部33によってこれを受信した運転手端末3においては、受入事業者の施設において2回の計量が行われた後に、制御部31が、表示部34に、「証明」と記載されたボタンのアイコンと、当該アイコンを操作することで、由来証明を行ったこととなる旨の説明文が記載された所定の画面を表示する(ステップS2-10)。
【0057】
なお、計量については、輸送車両につき、木材積載状態及び木材非積載状態において計2回計量することで、搬入された木材の重量を特定する。特定された木材の重量が、輸送実績データベース126に、当該輸送に付された輸送IDと紐付けて記憶されることとなる。
【0058】
運転手によって、操作部35を用いて、画面上の「証明」と記載されたボタンが操作されると(ステップS2-11)、運転手端末3の制御部31は、当該操作がなされた旨の所定の通知を、通信部33から通信ネットワークNを介して管理サーバ1へと送信する(ステップS2-12)。
【0059】
通信部13によって当該通知を受信した管理サーバ1においては、制御部11が、ステップS2-2又はステップS2-6において由来が決定していた場合、当該輸送に付された輸送IDと紐付けて、ステップS2-2又はステップS2-6において由来として決定された森林計画マスタに係る計画名及び所在を、記憶部12の輸送実績データベース126に記憶させる(ステップS2-13)。
【0060】
なお、ステップS2-7において由来保留とされていた場合には、受入担当者は、事後的に、受入事業者端末2の操作部25を用いて、由来保留とした輸送実績に対応する森林計画マスタを選択する必要がある。
受入事業者端末2において由来保留とした輸送実績に対応する森林計画マスタが選択されると、当該選択に係る情報が管理サーバ1へと送信され、管理サーバ1の制御部11は、これを待って、選択された森林計画マスタに係る計画名及び所在を、当該輸送に付された輸送IDと紐付けて、記憶部12の輸送実績データベース126に記憶させることとなる。
【0061】
[3 ステップS3 証明書発行]
ステップS2-13において、輸送実績に対応する森林計画マスタに係る計画名及び所在を記憶されると、管理サーバ1は、木質バイオマスに係る由来証明書を発行することが可能となる。
【0062】
木質バイオマスに係る由来証明書の発行は、例えば、管理サーバ1において、通信部13によって受入事業者端末2から所定の証明書発行要求を受信した際に、管理サーバ1の制御部11が、森林計画データベース125及び輸送実績データベース126の記憶内容を元に木質バイオマスに係る由来証明書のデータを作成の上、通信部13から通信ネットワークNを介して受入事業者端末2に送信し、通信部23によってこれを受信した受入事業者端末2において、制御部21が、木質バイオマスに係る由来証明書を、表示部24に表示することによって行われる。
【0063】
上記証明書には、例えば、施業主名、認定番号又は伐採届出ナンバー、伐採箇所に係る情報としての計画名及び所在、伐採計画面積、樹種、正味重量、発行日(木材の搬入日)、運転手名、システム通し番号等の情報を記載することとなるが、このうち施業主名、認定番号又は伐採届出ナンバー、計画名、所在及び伐採計画面積については、森林計画データベース125の当該輸送実績の由来として決定された森林計画マスタから取得し、樹種、正味重量、発行日(木材の搬入日)、運転手名及びシステム通し番号については、輸送実績データベース126の当該輸送実績に係るデータから取得できることから、管理サーバ1の制御部11は、これらデータを用いて、自動的に上記証明書を作成することが可能となる。
【0064】
[第3 効果の説明]
次に、本実施形態に係るバイオマス証明支援システム100の効果について説明する。
【0065】
本実施形態に係るバイオマス証明支援システム100によれば、管理サーバ1において、由来決定時に、制御部11が、記憶部12の森林計画データベース125から、条件に合致する森林計画マスタを抽出する。
この際には、輸送実績データベース126における由来決定済みの過去の輸送実績のうち、土場の位置情報として、ステップS1において取得した木材の積み込み場所に係る位置情報と所定距離内の位置情報が記憶された輸送実績を抽出の上、各森林計画マスタにつき、抽出された輸送実績と紐付けて記憶されているかにつき判定する。
これによって、過去に由来決定がなされたのと同一の土場から輸送されたものと推定される木材につき、自動的に過去の実績と同様の由来によるものと決定することが可能となることから、木質バイオマスの証明に係る証明者の負担を低減することができる。
【0066】
また、制御部11による森林計画マスタの抽出の際に、各森林計画マスタの期間情報(委託契約の契約期間、森林計画の計画期間、伐採届出の届出期間等)に係る伐採可能な期間が、当該輸送に係る積込日時を含むか否かにつき判定することによって、伐採可能期間から考えて由来となり得ない森林計画マスタが抽出されることを防止することができる。
【0067】
また、制御部11による森林計画マスタの抽出の際に、各森林計画マスタの運搬業者に係る情報が、当該輸送に係る運転手が所属する運搬業者を含むか否かにつき判定することによって、運搬業者から考えて由来となり得ない森林計画マスタが抽出されることを防止することができる。
【0068】
また、森林計画マスタが、林班連携フラグを含み、制御部11による森林計画マスタの抽出の際に、林班連携フラグが有効となっているか否かにつき判定することで、予め受入事業者が、土場と1:1で対応しない可能性のある森林計画マスタを除き、土場と1:1で対応する森林計画マスタについてのみ林班連携フラグを有効とすることで、土場と1:1で対応しない可能性のある森林計画マスタを、抽出対象から除外することができる。
【0069】
また、本実施形態に係るバイオマス証明支援システム100によれば、管理サーバ1において、制御部11が抽出した森林計画マスタが一つであったか否かにつき判定の上、一つであった場合に、運転手による証明ボタンの操作がなされた後に、抽出された森林計画マスタに係る情報が、記憶部12の輸送実績データベース126に記憶される。これに対し、制御部11が抽出した森林計画マスタが0又は複数であると判定した場合、由来不明として受入事業者端末2に通知され、受入担当者により由来決定がなされた後に、決定された森林計画マスタに係る情報が、記憶部12の輸送実績データベース126に記憶される。
これによって、システムによって自動的に由来決定を行うことができない場合も、受入担当者に決定させることで、由来決定が不可能となることを防止できると共に、受入担当者による決定結果を記憶部12の輸送実績データベース126に蓄積していくことができる。
【0070】
すなわち、本システムは、利用開始当初には、記憶部12の輸送実績データベース126に、由来決定の履歴が存在しないことから、専ら受入担当者により由来決定がなされる必要があるが、受入担当者による由来決定がなされる度に、その履歴が輸送実績データベース126に蓄積され、システムにより自動的に由来決定を行うことができるケースが拡大していくものである。
【符号の説明】
【0071】
100 バイオマス証明支援システム
1 管理サーバ(バイオマス証明支援装置)
11 制御部(抽出手段、記憶制御手段)
12 記憶部(記憶手段)
121 業者データベース
122 運転手データベース
123 端末データベース
124 車両データベース
125 森林計画データベース
126 輸送実績データベース
13 通信部(取得手段、通知手段)
2 受入事業者端末
3 運転手端末
N 通信ネットワーク
図1
図2
図3
図4