(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240814BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H01L21/304 651L
H01L21/304 651B
H01L21/304 648G
H01L21/304 647A
H01L21/306 R
(21)【出願番号】P 2020139222
(22)【出願日】2020-08-20
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】尾辻 正幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 佑
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅彦
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-046942(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030516(WO,A1)
【文献】特開2019-114774(JP,A)
【文献】特開2018-056553(JP,A)
【文献】特開2015-092619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、前記ベース部材の表面に設けられる複数の保持部材とを有し、基板の表面を上方に向けた姿勢で前記複数の保持部材により前記基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部により保持された前記基板の表面に対し、液体を経ずに気体に変化する昇華性物質および前記昇華性物質と溶け合う溶媒を含む処理液を前記基板の表面に供給する処理液供給部と、
前記基板の表面上の前記処理液から前記溶媒を除去して前記昇華性物質を含む凝固体を形成する凝固体形成部と、
前記凝固体を昇華させて前記基板の表面から除去する昇華部と、
前記基板保持部により保持された前記基板の表面に対向可能な第1対向面と、前記基板保持部により保持された前記基板の外周端および前記ベース部材の外周端に対向可能な第2対向面とを有する対向部材と、
前記基板保持部に対して前記対向部材を相対的に移動させる移動部と、
不活性ガスを供給するガス供給部と、を備え、
前記処理液供給部により前記処理液を前記基板の表面に供給して前記処理液の液膜を前記基板の表面上に形成する液膜形成期間の間、前記移動部は前記対向部材を前記基板保持部に近接させて前記対向部材および前記ベース部材により前記基板を取り囲む空間を形成し続け、
前記ガス供給部は前記空間に前記不活性ガスを供給して前記空間を不活性ガスリッチな雰囲気とすることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記液膜形成期間の前に、前記不活性ガスを供給することで、前記空間を前記不活性ガスリッチな雰囲気とする、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記ガス供給部は、少なくとも前記液膜形成期間の初期段階で前記空間に前記不活性ガスを供給する基板処理装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記空間を前記不活性ガスリッチな雰囲気とすることにより、前記空間を酸素濃度が100ppm以下の低酸素の環境とする、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記基板保持部により保持された前記基板を鉛直方向と平行な回転軸線まわりに回転させる回転部をさらに備え、
前記処理液供給部は、前記液膜形成期間の初期段階でのみ前記処理液の供給を行い、
前記回転部は、
前記液膜形成期間の初期段階で前記基板を第1回転速度で回転させて前記処理液を前記基板の表面全体に広げ、
前記液膜形成期間の終了段階で前記第1回転速度よりも低い第2回転速度で回転させる、または前記基板の回転を停止させて前記基板の表面に形成されたパターンの間に前記昇華性物質を沈下させる基板処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の基板処理装置であって、
前記ガス供給部は、
前記基板の表面の中央部に向かって前記不活性ガスを前記回転軸と平行に吐出する第1ガス吐出口と、
前記回転軸から前記基板の表面の周縁部に向かって放射状に前記不活性ガスを吐出する第2ガス吐出口と、
前記第1ガス吐出口からの前記不活性ガスの吐出と吐出停止とを切り替える第1ガス吐出切替部と、
前記第2ガス吐出口からの前記不活性ガスの吐出と吐出停止とを切り替える第2ガス吐出切替部と、
を有する基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記液膜形成期間の初期段階において、前記第1ガス吐出切替部は前記第1ガス吐出口から前記不活性ガスを吐出させるとともに前記第2ガス吐出切替部は前記第2ガス吐出口から前記不活性ガスを吐出させる基板処理装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の基板処理装置であって、
前記昇華性物質を沈下させる昇華性物質沈下期間の前半において、前記第1ガス吐出切替部は前記第1ガス吐出口からの前記不活性ガスの吐出を停止するとともに前記第2ガス吐出切替部は前記第2ガス吐出口からの前記不活性ガスの吐出を停止し、
前記昇華性物質沈下期間の後半において、前記第2ガス吐出切替部は前記不活性ガスの吐出停止を継続する一方で前記第1ガス吐出切替部は前記第1ガス吐出口から前記不活性ガスを吐出させる基板処理装置。
【請求項9】
請求項6または7に記載の基板処理装置であって、
前記昇華性物質を沈下させる昇華性物質沈下期間において、前記第1ガス吐出切替部は前記第1ガス吐出口からの前記不活性ガスの吐出を停止する一方で前記第2ガス吐出切替部は前記第2ガス吐出口から前記不活性ガスを吐出させる基板処理装置。
【請求項10】
請求項6または7に記載の基板処理装置であって、
前記昇華性物質を沈下させる昇華性物質沈下期間の前半において、前記第1ガス吐出切替部は前記第1ガス吐出口からの前記不活性ガスの吐出を停止するとともに前記第2ガス吐出切替部は前記第2ガス吐出口から前記不活性ガスを吐出させ、
前記昇華性物質沈下期間の後半において、前記第2ガス吐出切替部は前記第2ガス吐出口からの前記不活性ガスの吐出を停止するとともに前記第1ガス吐出切替部は前記第1ガス吐出口から前記不活性ガスを吐出させる基板処理装置。
【請求項11】
請求項6ないし10のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記凝固体形成部により前記凝固体を形成する凝固体形成期間において、前記第1ガス吐出切替部は前記第1ガス吐出口からの前記不活性ガスの吐出を停止するとともに前記第2ガス吐出切替部は前記第2ガス吐出口から前記不活性ガスを吐出させ、
前記凝固体形成期間の経過後に、前記第1ガス吐出切替部は前記第1ガス吐出口から前記不活性ガスを吐出させる基板処理装置。
【請求項12】
ベース部材の表面に設けられる複数の保持部材により保持された基板の表面に対し、液体を経ずに気体に変化する昇華性物質および前記昇華性物質と溶け合う溶媒を含む処理液を供給して前記処理液の液膜を基板の表面上に形成する液膜形成工程と、
前記基板の表面上の前記液膜から前記溶媒を除去して前記昇華性物質を含む凝固体を形成する凝固体形成工程と、
前記凝固体を昇華させて前記基板の表面から除去する昇華工程と、を備え、
前記液膜形成工程は、
前記複数の保持部材により保持された前記基板の表面に対向部材の第1対向面を対向させるとともに前記ベース部材の外周端に前記対向部材の第2対向面を対向させることで、前記対向部材および前記ベース部材により前記基板を取り囲む空間を形成し続ける工程と、
前記空間に不活性ガスを供給して前記空間を不活性ガスリッチな雰囲気とする工程と、
を有することを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を乾燥させる基板処理装置および基板処理方法に関する。基板には、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、有機EL(electroluminescence)表示装置などのFPD(Flat Panel
Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの電子部品の製造工程においては、基板の表面に成膜やエッチングなどの処理を繰り返し施してパターンを形成する工程が含まれる。また、このパターン形成後において、薬液による洗浄処理、リンス液によるリンス処理および乾燥処理などがこの順序で行われるが、パターンの微細化に伴い乾燥処理の重要性が特に高まっている。つまり、乾燥処理においてパターン倒壊の発生を抑制または防止する技術が重要となっている。そこで、例えば特許文献1に記載されているように、液体を経ずに気体に変化する昇華性物質を利用して基板を乾燥させる基板処理装置および基板処理方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の基板処理技術では、樟脳などの昇華性物質と当該昇華性物質と溶け合う溶媒とを含む溶液が乾燥前処理液として準備される。乾燥前処理液は、パターンが形成された基板の表面に供給される。これにより、基板の表面上に所望厚さで乾燥前処理液の液膜が形成される。この後で、当該液膜から溶媒を気化して除去することで、昇華性物質からなる固体膜(本発明の「凝固体」の一例に相当)が基板の表面全体に形成される。その後で、昇華により固体膜が基板の表面から除去される。
【0005】
従来技術では、基板の表面に乾燥前処理液を供給して所望の液膜を形成する期間(以下、「液膜形成期間」という)における基板の表面上の乾燥前処理液と接する雰囲気について格別の注意を払っていなかった。そのため、従来技術では、より高度な乾燥要求に対応するのが難しく、高品質な乾燥に一定の限界があった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、昇華性物質の昇華を利用して基板を乾燥させる基板処理技術において、乾燥品質をさらに高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様は、基板処理装置であって、ベース部材と、ベース部材の表面に設けられる複数の保持部材とを有し、基板の表面を上方に向けた姿勢で複数の保持部材により基板を保持する基板保持部と、基板保持部により保持された基板の表面に対し、液体を経ずに気体に変化する昇華性物質および昇華性物質と溶け合う溶媒を含む処理液を基板の表面に供給する処理液供給部と、基板の表面上の処理液から溶媒を除去して昇華性物質を含む凝固体を形成する凝固体形成部と、凝固体を昇華させて基板の表面から除去する昇華部と、基板保持部により保持された基板の表面に対向可能な第1対向面と、基板保持部により保持された基板の外周端およびベース部材の外周端に対向可能な第2対向面とを有する対向部材と、基板保持部に対して対向部材を相対的に移動させる移動部と、不活性ガスを供給するガス供給部と、を備え、処理液供給部により処理液を基板の表面に供給して処理液の液膜を基板の表面上に形成する液膜形成期間の間、移動部は対向部材を基板保持部に近接させて対向部材およびベース部材により基板を取り囲む空間を形成し続け、ガス供給部は空間に不活性ガスを供給して空間を不活性ガスリッチな雰囲気とすることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の他の態様は、基板処理方法であって、ベース部材の表面に設けられる複数の保持部材により保持された基板の表面に対し、液体を経ずに気体に変化する昇華性物質および昇華性物質と溶け合う溶媒を含む処理液を供給して処理液の液膜を基板の表面上に形成する液膜形成工程と、基板の表面上の液膜から溶媒を除去して昇華性物質を含む凝固体を形成する凝固体形成工程と、凝固体を昇華させて基板の表面から除去する昇華工程と、を備え、液膜形成工程は、複数の保持部材により保持された基板の表面に対向部材の第1対向面を対向させるとともにベース部材の外周端に対向部材の第2対向面を対向させることで、対向部材およびベース部材により基板を取り囲む空間を形成し続ける工程と、空間に不活性ガスを供給して空間を不活性ガスリッチな雰囲気とする工程と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記発明では、昇華性物質を含む凝固体を基板の表面に形成する前に、上記昇華性物質および上記昇華性物質と溶け合う溶媒を含む処理液が基板の表面に供給されて処理液の液膜が形成される。この液膜形成を実行する際、基板の表面は不活性ガスリッチな空間に接している。その結果、上記液膜形成を安定して行うことができ、乾燥品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す基板処理システムの側面図である。
【
図3】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当する処理ユニットの構成を示す部分断面図である。
【
図4】処理ユニットを制御する制御系の電気的構成を示すブロック図である。
【
図5】対向部材が対向位置に位置したときのスピンベース、基板および対向部材の位置関係を模式的に示す図である。
【
図6A】対向部材および中心軸ノズルの部分断面図である。
【
図6B】中心軸ノズルの下端部近傍を下方から見た模式図である。
【
図7】処理ユニットにおいて実行される基板処理の内容を示すフローチャートである。
【
図8】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態における置換処理、液膜形成工程および凝固体形成工程での動作状況を示すタイミングチャートである。
【
図9】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態における置換処理、液膜形成工程および凝固体形成工程での動作状況を示すタイミングチャートである。
【
図10】本発明に係る基板処理装置の第3実施形態における置換処理、液膜形成工程および凝固体形成工程での動作状況を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態を装備する基板処理システムの概略構成を示す平面図である。また、
図2は
図1に示す基板処理システムの側面図である。これらの図面は基板処理システム100の外観を示すものではなく、基板処理システム100の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理システム100は、例えばクリーンルーム内に設置され、一方主面のみに回路パターン等(以下「パターン」と称する)が形成された基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。そして、基板処理システム100に装備される処理ユニット1において本発明に係る基板処理方法が実行される。本明細書では、基板の両主面のうちパターン(後で説明する
図6A中の符号PT参照)が形成されているパターン形成面(一方主面)を「表面」と称し、その反対側のパターンが形成されていない他方主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた面を「下面」と称し、上方に向けられた面を「上面」と称する。また、本明細書において「パターン形成面」とは、基板において、任意の領域に凹凸パターン形成されている面を意味する。
【0012】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0013】
図1に示すように、基板処理システム100は、基板Wに対して処理を施す基板処理部110と、この基板処理部110に結合されたインデクサ部120とを備えている。インデクサ部120は、基板Wを収容するための容器C(複数の基板Wを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard
Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部121を有している。また、インデクサ部120は、容器保持部121に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Wを容器Cから取り出したり、処理済みの基板Wを容器Cに収納したりするためのインデクサロボット122を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Wがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0014】
インデクサロボット122は、装置筐体に固定されたベース部122aと、ベース部122aに対し鉛直軸まわりに回動可能に設けられた多関節アーム122bと、多関節アーム122bの先端に取り付けられたハンド122cとを備える。ハンド122cはその上面に基板Wを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0015】
基板処理部110は、インデクサロボット122が基板Wを載置する載置台112と、平面視においてほぼ中央に配置された基板搬送ロボット111と、この基板搬送ロボット111を取り囲むように配置された複数の処理ユニット1とを備えている。具体的には、基板搬送ロボット111が配置された空間に面して複数の(この例では8つの)処理ユニット1が配置されている。これらの処理ユニット1に対して基板搬送ロボット111は載置台112にランダムにアクセスし、載置台112との間で基板Wを受け渡す。一方、各処理ユニット1は基板Wに対して所定の処理を実行する。本実施形態では、これらの処理ユニット1は同一の機能を有している。このため、複数基板Wの並列処理が可能となっている。なお、基板搬送ロボット111はインデクサロボット122から基板Wを直接受け渡すことが可能であれば、必ずしも載置台112は必要ない。各処理ユニット1としては、以下に説明する処理ユニット(1A~1C)などを用いることができる。
【0016】
図3は本発明に係る基板処理装置の第1実施形態に相当する処理ユニットの構成を示す部分断面図である。また、
図4は処理ユニットを制御する制御系の電気的構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、各処理ユニット1に対して制御部4を設けているが、1台の制御部により複数の処理ユニット1を制御するように構成してもよい。また、基板処理システム100全体を制御する制御ユニット(図示省略)により処理ユニット1を制御するように構成してもよい。
【0017】
処理ユニット1は、内部空間21を有するチャンバ20と、チャンバ20の内部空間21に収容されて基板Wを保持するスピンチャック30とを備えている。
図1および
図2に示すように、チャンバ20の側面にシャッター23が設けられている。シャッター23にはシャッター開閉機構22(
図4)が接続されており、制御部4からの開閉指令に応じてシャッター23を開閉させる。より具体的には、処理ユニット1では、未処理の基板Wをチャンバ20に搬入する際にシャッター開閉機構22はシャッター23を開き、基板搬送ロボット111のハンドによって未処理の基板Wがフェースアップ姿勢でスピンチャック30に搬入される。つまり、基板Wは表面Wfを上方に向けた状態でスピンチャック30上に載置される。そして、当該基板搬入後に基板搬送ロボット111のハンドがチャンバ20から退避すると、シャッター開閉機構22はシャッター23を閉じる。そして、チャンバ20の内部空間21内で後述のように薬液、DIW(脱イオン水)、IPA(イソプロピルアルコール)処理液、乾燥前処理液および窒素ガスが基板Wの表面Wfに供給されて所望の基板処理が常温環境下で実行される。また、基板処理の終了後においては、シャッター開閉機構22がシャッター23を再び開き、基板搬送ロボット111のハンドが処理済の基板Wをスピンチャック30から搬出する。このように、本実施形態では、チャンバ20の内部空間21が常温環境に保ちつつ基板処理を行う処理空間として機能する。なお、本明細書において「常温」とは、5℃~35℃の温度範囲にあることを意味する。
【0018】
スピンチャック30は複数のチャックピン31を有する。スピンチャック30では、複数のチャックピン31は円盤形状のスピンベース32の上面の周縁部に設けられている。この実施形態では、チャックピン31はスピンベース32の周方向に適当な間隔(たとえば等間隔)を空けて配置され、基板Wの周縁部を把持する。これによって、スピンチャック30により基板Wは保持される。
【0019】
スピンベース32には回転軸33が連結されている。この回転軸33はスピンチャック30により支持された基板Wの表面中心から延びる面法線と平行な回転軸線AX1まわりに回転自在に設けられている。回転軸33はモータなどを含む基板回転駆動機構34に連結される。このため、スピンチャック30に載置された基板Wをチャックピン31により保持した状態で制御部4からの回転指令に応じて基板回転駆動機構34のモータが作動すると、基板Wは上記回転指令に対応する回転速度で回転軸線AX1まわりに回転する。また、このように基板Wを回転させた状態で、制御部4からの供給指令に応じて対向部材50を鉛直方向に挿通する中心軸ノズル60から薬液、IPA処理液、DIW、乾燥前処理液および窒素ガスが基板Wの表面Wfに供給される。
【0020】
図5は、対向部材が対向位置に位置したときのスピンベース、基板および対向部材の位置関係を模式的に示す図である。対向部材50は、
図3および
図5に示すように、スピンチャック30に従って回転する従動型の対向部材である。すなわち、対向部材50は、基板処理中において、対向部材50がスピンチャック30に一体回転可能に支持される。これを可能とするために、対向部材50は、対向板51と、対向板51に同伴昇降可能に設けられた係合部材52と、係合部材52と係合して対向板51を上方から支持するための支持部53とを有している。
【0021】
対向板51は基板Wの径よりも大きい円板状であり、基板Wを鉛直上方から覆うキャップ形状を有している。より詳しくは、対向板51は、水平な姿勢で保持された円板部511と、円板部511の外周部から下方に延びる円筒部512とを有している。対向板51の内面513は下向きに凹んだカップ面となっている。内面513は基板対向面513a、中央傾斜面513bおよび内周面513cを有している。
【0022】
基板対向面513aは円板部511の下面に相当している。より具体的には、基板対向面513aは基板Wの上面と平行な平坦面に仕上げられ、基板Wの表面Wfに対向している。
【0023】
また、中央傾斜面513bは基板対向面513aに取り囲まれた傾斜面を有している。より具体的には、中央傾斜面513bは、基板対向面513aから斜め上に回転軸線AX1に延びる環状の中央傾斜部を有しており、次のような特徴を有している。中央傾斜部は、回転軸線AX1に対する傾斜角が一定の緩斜面を有している。中央傾斜部の断面は下向きに開いている。中央傾斜面513bの内径は中央傾斜面513bの下端に近づくに従って増加している。中央傾斜面513bの下端は基板対向面513aと繋がっている。このため、対向部材50が対向位置にある状態で中心軸ノズル60の下端部は中央傾斜面513bに取り囲まれながら下方に露出する(後で説明する
図6Aおよび
図6B参照)。
【0024】
さらに、内周面513cが円筒部512の内側面に相当している。より具体的には、内周面513cは、基板対向面513aから斜め下に外方に延びる環状の内傾斜部を有しており、次のような特徴を有している。内傾斜部は、回転軸線AX1に対する傾斜角が連続的に変化する円弧状の断面を有している。内傾斜部の断面は下向きに開いている。内周面513cの内径は内周面513cの下端に近づくに従って増加している。内周面513cの下端はスピンベース32の外径よりも大きい内径を有している。このため、
図3の1点鎖線で示すように、対向部材50が対向位置にある状態で基板Wの外周端およびスピンベース32の外周面(外周端)32bと対向する。
【0025】
対向板51は、基板対向面513aに設けられて第1の係合部材35に係合するための複数の第2の係合部材514をさらに有している。基板対向面513aの中央部には、対向部材50を上下に貫通する貫通孔515が形成されている。貫通孔515は、円筒状の内周面によって区画されている。第2の係合部材514は、第1の係合部材35と同数、第1の係合部材35と一対一対応で設けられている。なお、第1の係合部材35および第2の係合部材514の構成は従来より周知である。例えば特開2019-57599号に記載された構成を本実施形態の係合部材35、514として用いることができる。第1の係合部材35と第2の係合部材514とが係合することで、当該係合体を介して対向部材50はスピンベース32に支持される。そして、モータの作動によりスピンベース32が回転すると、それと一体的に対向部材50が回転軸線AX1まわりに回転する。
【0026】
係合部材52は、
図3に示すように、対向板51の上面において、貫通孔515の周囲を包囲する円筒部521と、円筒部521の上端から径方向外方に広がるフランジ部522とを有している。フランジ部522は、支持部53の一構成部品であるフランジ支持部531よりも上方に位置しており、フランジ部522の外周はフランジ支持部531の内周よりも大径とされている。
【0027】
支持部53は、水平なフランジ支持部531と、略円板状の支持部本体532と、フランジ支持部531と支持部本体532とを接続する接続部533とを有している。そして、支持部53および対向板51の内部空間を挿通するように中心軸ノズル60が、対向板51および基板Wの中心を通る鉛直な軸線、すなわち、回転軸線AX1に沿って上下方向に延びている。また、中心軸ノズル60は支持部53とともに対向板昇降駆動機構56により昇降する。例えば
図3の実線で示すように中心軸ノズル60および対向部材50が基板Wから鉛直上方に離れた退避位置に位置決めされているとき、中心軸ノズル60の先端部はスピンチャック30に保持された基板Wの表面Wfから上方に離間している。そして、制御部4からの下降指令に応じて対向板昇降駆動機構56が中心軸ノズル60および支持部53を下方に降下させ、
図3の1点鎖線や
図5に示すように、対向部材50を対向位置に位置決めする。これにより、対向部材50の対向板51が基板Wの表面Wfに近接する。その結果、基板対向面(第1対向面)513a、内周面(第2対向面)513cおよびスピンベース32の外周面(外周端)32bによって、スピンチャック30に保持された基板Wを取り囲む、半密閉状の空間SPが形成される。そして、基板Wを半密閉状の空間SPに閉じ込めて周辺雰囲気から遮断したまま、
図6Aおよび
図6Bに示すように、中心軸ノズル60から薬液、IPA処理液、DIW、乾燥前処理液および窒素ガスが当該基板Wの表面Wfに供給される。
【0028】
図6Aは対向部材および中心軸ノズルの部分断面図である。
図6Bは中心軸ノズルの下端部近傍を下方から見た模式図である。
図6Aにおける点線領域は基板Wの表面Wfの部分拡大図であり、表面Wfに形成されたパターンPTの一例が図示されている。中心軸ノズル60は回転軸線AX1に沿って上下方向に延設されたノズル本体61を有している。このノズル本体61の中央部には、ノズル本体61の上端面から下端面に貫通して5本の中央配管部(図示省略)が設けられている。それら5本の中央配管部の下端面側開口はそれぞれ薬液吐出口62a、DIW吐出口63a、IPA吐出口64a、乾燥前処理液吐出口65aおよび中央ガス吐出口66aとして機能する。
【0029】
薬液吐出口62aを有する中央配管部は、
図3に示すように、配管62bを介して薬液供給部(図示省略)と接続されている。この配管62bには、バルブ62cが介装されている。このため、制御部4からの開閉指令に応じてバルブ62cが開かれると、薬液が配管62bを介して中心軸ノズル60に供給され、薬液吐出口62aから基板Wの表面中央部に向けて吐出される。本実施形態では、薬液は基板Wの表面Wfを洗浄する機能を有しておればよく、例えば硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、リン酸、酢酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、および腐食防止剤の少なくとも1つを含む液であってもよいし、これ以外の液体であってもよい。
【0030】
DIW吐出口63aを有する中央配管部は、
図3に示すように、配管63bを介してDIW供給部(図示省略)と接続されている。この配管63bには、バルブ63cが介装されている。このため、制御部4からの開閉指令に応じてバルブ63cが開かれると、IPA処理液が配管63bを介して中心軸ノズル60に供給され、DIW吐出口63aから基板Wの表面中央部に向けて吐出される。本実施形態では、後で説明するように薬液処理後の基板Wの表面Wfに対してリンス処理を行うリンス液としてDIWが用いられるが、その他のリンス液を用いてもよい。例えば炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10~100ppm程度)の塩酸水のいずれかをリンス液として用いてもよい。
【0031】
IPA吐出口64aを有する中央配管部は、
図3に示すように、配管64bを介してIPA処理液供給部(図示省略)と接続されている。この配管64bには、バルブ64cが介装されている。このため、制御部4からの開閉指令に応じてバルブ64cが開かれると、IPA処理液が配管64bを介して中心軸ノズル60に供給され、IPA吐出口64aから基板Wの表面中央部に向けて吐出される。本実施形態では、リンス処理後に基板Wの表面Wfに付着するリンス液(DIW)と置換する置換液として、IPA処理液が用いられるが、その他の液体を用いてもよい。より詳しくは、リンス液と乾燥前処理液の両方と溶け合う液体を置換液として用いることができる。例えばHFE(ハイドロフルオロエーテル)やIPAとHFEの混合液であってもよいし、IPAおよびHFEの少なくとも一方とこれら以外の成分とを含んでいてもよい。
【0032】
乾燥前処理液吐出口65aを有する中央配管部は、
図3に示すように、配管65bを介して乾燥前処理液供給部(図示省略)と接続されている。この配管65bには、バルブ65cが介装されている。このため、制御部4からの開閉指令に応じてバルブ65cが開かれると、乾燥前処理液が配管65bを介して中心軸ノズル60に供給され、乾燥前処理液吐出口65aから基板Wの表面中央部に向けて吐出される。本実施形態では、乾燥前処理液として、溶質に相当する昇華性物質と、昇華性物質と溶け合う溶媒と、を含む溶液を用いている。ここで、昇華性物質は、常温(室温と同義)または常圧(処理ユニット1内の圧力。たとえば1気圧またはその近傍の値)で液体を経ずに固体から気体に変化する物質であってもよい。溶媒は、このような物質であってもよいし、これ以外の物質であってもよい。つまり、乾燥前処理液は、常温または常圧で液体を経ずに固体から気体に変化する2種類以上の物質を含んでいてもよい。
【0033】
昇華性物質は、たとえば、2-メチル-2-プロパノール(別名:tert-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、ターシャリーブチルアルコール)やシクロヘキサノールなどのアルコール類、フッ化炭化水素化合物、1,3,5-トリオキサン(別名:メタホルムアルデヒド)、樟脳(別名:カンフル、カンファー)、ナフタレン、ヨウ素、シクロヘキサノンオキシムおよびシクロヘキサンのいずれかであってもよいし、これら以外の物質であってもよい。
【0034】
溶媒は、たとえば、純水、IPA、HFE、アセトン、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGEE(プロピレングリコールモノエチルエーテル、1-エトキシ-2-プロパノール)、エチレングリコール、およびハイドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon)からなる群より選ばれた少なくとも1種であってもよい。
【0035】
中央ガス吐出口66aを有する中央配管部は、
図3に示すように、配管66bを介して窒素ガス供給部(図示省略)と接続されている。この配管66bには、バルブ66cが介装されている。このため、制御部4からの開閉指令に応じてバルブ66cが開かれると、窒素ガスが配管66bを介して中心軸ノズル60に供給され、
図6A中の1点鎖線矢印で示すように、中央ガス吐出口66aから基板Wの表面中央部に向けて吐出される。
【0036】
このように5つの吐出口62a~66aが設けられた下端面61aは、
図3の実線で示すように、非遮断状態で基板対向面513aおよび中央傾斜面513bよりも上方側に後退する。一方、遮断状態では、
図6Aおよび
図6Bに示すように、下端面61aは基板対向面513aと上下方向において同一の高さに位置し、ノズル本体61の下端部61bは中央傾斜面513bに取り囲まれた状態で貫通孔515から下方に露出する。
【0037】
この下端部61bの側面には、回転軸線AX1を中心として略等角度間隔で6個の周縁ガス吐出口67が設けられている。これらの周縁ガス吐出口67には、
図6Aに示すように、ノズル本体61の側面からノズル本体61の上端面に延びる周縁配管部68が接続されている。周縁配管部68は、
図3に示すように、配管68bを介して窒素ガス供給部(図示省略)と接続されている。この配管68bには、バルブ68cが介装されている。このため、制御部4からの開閉指令に応じてバルブ68cが開かれると、窒素ガスが配管68bを介して中心軸ノズル60に供給され、周縁ガス吐出口67から回転軸線AX1を中心に略水平方向に吐出される。なお、略水平吐出された窒素ガスは、
図6A中の点線矢印で示すように、中央傾斜面513bおよび基板対向面513aに沿って基板Wの表面周縁部に向けて案内される。
【0038】
上記したように本実施形態では、
図6Aに示すように、基板Wへの窒素ガスの供給態様として、
・基板Wの表面中央部を経由して基板Wの表面周縁部に供給する第1供給態様(同図中の1点鎖線矢印)と、
・基板Wの表面中央部を経由せずに基板Wの表面周縁部に供給する第2供給態様(同図中の点線矢印)と、
が存在する。そして、制御部4がバルブ66c、68cの開閉を制御することで、窒素ガスの供給を停止するモードと、第1供給態様のみを実行するモードと、第2供給態様のみを実行するモードと、第1供給態様および第2供給態様を同時に実行するモードとが選択的に切り替えられる。また、同図への図示を省略しているが、制御部4からの指令に応じて第1供給態様および第2供給態様で供給する窒素ガスの流量をそれぞれ独立して可変制御可能となっている。なお、本実施形態では、窒素ガスを本発明の「不活性ガス」として用いているが、これ以外に、除湿されたアルゴンガスなどの不活性ガスを用いてもよい。
【0039】
さらに、処理ユニット1では、スピンチャック30を取り囲むように、排気桶70が設けられている。また、スピンチャック30と排気桶70との間に配置された複数のカップ72と、基板Wの周囲に飛散した薬液、リンス液(DIW)、IPA処理液、乾燥前処理液を受け止める複数のガード73とが設けられている。また、ガード73に対してガード昇降駆動機構71が連結されている。ガード昇降駆動機構71は制御部4からの昇降指令に応じてガード73を独立して昇降する。さらに、排気桶70には、排気機構74が接続されている。この排気機構74は、チャンバ20の内底面、排気桶70およびガード73で囲まれた空間を排気する。
【0040】
制御部4は、CPU等の演算ユニット、固定メモリデバイス、ハードディスクドライブ等の記憶ユニット、および入出力ユニットを有している。記憶ユニットには、演算ユニットが実行するプログラムが記憶されている。そして、制御部4は、上記プログラムにしたがって装置各部を制御することで、
図7に示す基板処理を実行する。
【0041】
図7は処理ユニットにおいて実行される基板処理の内容を示すフローチャートである。基板処理システム100における処理対象は、例えばシリコンウエハであり、パターン形成面である表面Wfに凹凸状のパターンPT(
図6A参照)が形成されている。パターンPTは、ロジック回路、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やカルコゲナイド系合金の特異な性質を利用するPRAM(Phase-change Random Access Memory)を構成するものであってもよい。パターンPTは微細なトレンチにより形成されたライン状のパターンが繰り返し並ぶものであってもよい。また、パターンPTは、薄膜に、複数の微細穴(ボイド(void)またはポア(pore))を設けることにより形成されていてもよい。パターンPTは、たとえば絶縁膜を含む。また、パターンPTは導体膜を含んでいてもよい。より具体的には、パターンPTは、複数の膜を積層した積層膜により形成されており、さらには、絶縁膜と導体膜とを含んでいてもよい。パターンPTは単層膜で構成されるパターンPTであってもよい。絶縁膜はシリコン酸化膜やシリコン窒化膜であってもよい。また、導体膜は、低抵抗化のための不純物を導入したアモルファスシリコン膜であってもよいし、金属膜(例えばTiN膜)であってもよい。また、パターンPTは、フロントエンドで形成されたものであってもよいし、バックエンドで形成されたものであってもよい。さらに、パターンPTは、疎水性膜であってもよいし、親水性膜であってもよい。親水性膜として例えばTEOS膜(シリコン酸化膜の一種)が含まれる。
【0042】
また、
図7に示す各工程は、特に明示しないかぎり、大気圧環境下で処理される。ここで、大気圧環境とは標準大気圧(1気圧、1013hPa)を中心に、0.7気圧以上1.3気圧以下の環境のことを指す。特に、基板処理システム100が陽圧となるクリーンルーム内に配置される場合には、基板Wの表面Wfの環境は、1気圧よりも高くなる。
【0043】
未処理の基板Wが処理ユニット1に搬入される前においては、制御部4が装置各部に指令を与えて処理ユニット1は初期状態にセットされる。すなわち、シャッター開閉機構22によりシャッター23(
図1ないし
図3)は閉じられている。基板回転駆動機構34によりスピンチャック30は基板Wのローディングに適した位置に位置決め停止されるとともに、図示しないチャック開閉機構によりチャックピン31は開状態となっている。対向板51は対向板昇降駆動機構56により退避位置に位置決めされている。これにより、スピンベース32による対向板51の支持は解消され、対向板51の回転は停止されている。ガード73はいずれも下方に移動して位置決めされている。さらに、バルブ62c~66c、68cはいずれも閉じられている。
【0044】
未処理の基板Wが基板搬送ロボット111により搬送されてくると、シャッター23が開く。シャッター23の開成に合わせて基板Wは基板搬送ロボット111によりチャンバ20の内部空間21に搬入され、表面Wfを上方に向けたフェースアップ状態でスピンチャック30に受け渡される。そして、チャックピン31が閉状態となり、基板Wはスピンチャック30に保持される(ステップS1:基板搬入)。
【0045】
基板Wの搬入に続いて、基板搬送ロボット111がチャンバ20の外に退避し、さらにシャッター23が再び閉じる。その後で、制御部4は、対向板昇降駆動機構56を制御して、対向板51を対向位置に配置する。これにより、
図5に示すように対向板51に設けられた係合部材514が係合部材35によって受け止められ、対向板51および中心軸ノズル60がスピンベース32に支持される。また、対向板51とスピンベース32とが相互に近接して半密閉状の空間SPが形成される。その結果、スピンチャック30に保持された基板Wは空間SPに閉じ込められ、周辺雰囲気から遮断される。なお、本実施形態では、後で説明する昇華工程(ステップS8)が完了するまで、対向板51は対向位置に位置決めされる。
【0046】
空間SPへの基板Wの閉込完了に続いて、制御部4は、基板回転駆動機構34のモータ(図示省略)を制御してスピンベース32の回転速度を、所定の薬液処理速度(約10~1200rpmの範囲内で、たとえば約800rpm)まで上昇させ、その薬液処理速度に維持させる。このスピンベース32の回転に同伴して、対向板51が回転軸線AX1まわりに回転されるとともに、基板Wが回転軸線AX1まわりに回転される(ステップS2:基板回転開始)。なお、次の薬液処理に進むまでに、制御部4は薬液処理に対応するガード73を上昇させることで、当該ガード73を、対向板51の内周面513cとスピンベース32の外周面32bとの隙間GPに対向させる。
【0047】
基板Wの回転速度が薬液処理速度に達すると、次いで、制御部4はバルブ62cを開く。これにより、中心軸ノズル60の薬液吐出口62aから薬液が吐出され、基板Wの表面Wfに供給される。基板Wの表面Wf上では、薬液が基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部に移動する。これにより、基板Wの表面Wfの全体が薬液による薬液洗浄を受ける(ステップS3)。このとき、基板Wの周縁部に達した薬液は基板Wの周縁部から基板Wの側方に排出され、ガード73を介して機外の廃液処理設備に送られる。この薬液供給による薬液洗浄は予め定められた洗浄時間だけ継続され、それを経過すると、制御部4はバルブ62cを閉じて、中心軸ノズル60からの薬液の吐出を停止する。
【0048】
薬液洗浄に続いて、リンス液(DIW)によるリンス処理が実行される(ステップS4)。このDIWリンスでは、制御部4はバルブ63cを開く。これにより、薬液洗浄処理を受けた基板Wの表面Wfの中央部に対して中心軸ノズル60のDIW吐出口63aからDIWがリンス液として供給される。すると、DIWが基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部に移動する。これにより、基板W上に付着している薬液がDIWによって洗い流される。このとき、基板Wの周縁部から排出されたDIWは、基板Wの周縁部から基板Wの側方に排出され、薬液と同様にして機外の廃液処理設備に送られる。このDIWリンスは予め定められたリンス時間だけ継続され、それを経過すると、制御部4はバルブ63cを閉じて、中心軸ノズル60からのDIWの吐出を停止する。
【0049】
DIWリンスの完了後、置換処理(ステップS5)、液膜形成工程(ステップS6)および凝固体形成工程(ステップS7)が実行される。
【0050】
図8は、本発明に係る基板処理装置の第1実施形態における置換処理、液膜形成工程および凝固体形成工程での動作状況を示すタイミングチャートである。同図中の「垂直N2の流量」とは、中央ガス吐出口66aから下方に吐出される窒素ガスの流量を意味している。つまり、制御部4がバルブ66cを開くことで、窒素ガスが中央ガス吐出口66aから基板Wの表面Wfの中央部に供給される。この窒素ガスは基板Wの表面Wfに沿って基板W全体に供給される(第1供給態様:
図6A中の1点鎖線参照)。このように表面中央部を経由して供給される窒素ガスの流量が「垂直N2の流量」である。一方、同図中の「水平N2の流量」とは、6つの周縁ガス吐出口67から略水平方向に吐出される窒素ガスの流量を意味している。つまり、制御部4がバルブ68cを開くことで、窒素ガスが回転軸線AX1を中心として放射状に吐出される。この窒素ガスは中央傾斜面513bおよび基板対向面513aに沿って基板Wの表面周縁部に供給される(第2供給態様:
図6A中の点線参照)。このように表面中央部を経由せずに表面周縁部に供給される窒素ガスの流量が「水平N2の流量」である。
【0051】
置換処理(ステップS5)では、制御部4は、基板回転駆動機構34のモータ(図示省略)を制御して基板Wの回転速度を所定の第1回転速度V1に調整し、その第1回転速度V1に維持させる。また、制御部4は、中央ガス吐出口66aおよび周縁ガス吐出口67からの窒素ガスの流量をそれぞれ「VF1」、「HF1」に調整する。これによって、半密閉状の空間SPに対して窒素ガスが供給され、空間SP内で窒素リッチとなる。また、空間SPと周辺雰囲気とを連通する唯一の箇所となる隙間GP(
図5参照)を介して周辺雰囲気から空間SPに外気が侵入するのを効果的に防止することができる。これにより空間SPは低酸素環境となる。ここで、「低酸素」とは、酸素濃度が100ppm以下であることを指す。
【0052】
また、制御部4は、置換処理に対応するガード73を隙間GPに対向させる。そして、制御部4は、バルブ64cを開く。それにより、DIWが付着している基板Wの表面Wfの中央部に向けて中心軸ノズル60のIPA吐出口64aからIPA処理液が低表面張力液体として吐出される。基板Wの表面Wfに供給されたIPA処理液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの表面Wfの全域に広がる。これにより、基板Wの表面Wfの全域において、当該表面Wfに付着しているDIW(リンス液)がIPA処理液によって置換される。なお、基板Wの表面Wfを移動するIPA処理液は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に排出され、上記ガード73に受け止められ、図示を省略する回収経路に沿って回収設備に送られる。このIPA置換は予め定められた置換時間だけ継続され、それを経過すると、制御部4はバルブ64cを閉じて中心軸ノズル60からのIPA処理液の吐出を停止する。
【0053】
IPA置換の次に、液膜形成工程(ステップS6)が実行される。この液膜形成工程は、乾燥前処理液を供給する乾燥前処理液供給工程(ステップS6a)と、スピンオフ工程(ステップS6b)と、乾燥前処理液に含まれる昇華性物質をパターンPT間に沈下させる昇華性物質沈下工程(ステップS6c)とを有している。これらのステップS6a~6cはこの順序で実行される。
【0054】
乾燥前処理液供給工程(ステップS6a)では、制御部4は、
図8に示すように、基板Wの回転速度、垂直N2の流量および水平N2の流量をそれぞれ置換処理での値「V1」、「VF1」、「HF1」に維持している。制御部4は、乾燥前処理液供給工程に対応するガード73を隙間GPに対向させる。制御部4は、バルブ65cを開く。それにより、置換液が付着している基板Wの表面Wfの中央部に向けて中心軸ノズル60の乾燥前処理液吐出口65aから乾燥前処理液が吐出される。基板Wの表面Wfに供給された乾燥前処理液は、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの表面Wfの全域に広がる。これにより、基板Wの表面Wfの全域においてIPA処理液から乾燥前処理液の置換が行われるとともに比較的厚い乾燥前処理液の液膜が形成される。乾燥前処理液の吐出は予め定められた時間だけ継続され、それを経過すると、制御部4はバルブ65cを閉じて中心軸ノズル60からの乾燥前処理液の吐出を停止する。
【0055】
スピンオフ工程(ステップS6b)では、制御部4は、バルブ66c、68cを閉じて窒素ガスの吐出を停止させるとともに、基板回転駆動機構34のモータ(図示省略)を制御して基板Wの回転速度を第1回転速度V1よりも高いスピンオフ速度V3まで増速させる。そして、制御部4は予め定められた時間だけスピンオフ速度V3に維持させる。これにより、余分な乾燥前処理液が基板Wの表面Wfから除去されて乾燥前処理液の液膜の厚みが所望厚さに調整される。
【0056】
昇華性物質沈下工程(ステップS6c)では、制御部4は、窒素ガスの吐出を停止させたまま、基板回転駆動機構34のモータを制御して基板Wの回転速度を第1回転速度V1よりも低い第2回転速度V2に減速する。そして、制御部4は、所定時間が経過するのを待つ。この所定時間の待機の間、乾燥前処理液の液膜中に存在する昇華性物質が沈下してパターンPT間に充填される。また、上記所定時間の後半で、制御部4はバルブ66cを開く。これにより、窒素ガスが基板Wの表面中央部に吐出される。このように本実施形態では、昇華性物質沈下工程の後半で、第1供給態様で流量VF1の窒素ガスを中央ガス吐出口66aから垂直に吐出している。そのため、次の作用効果が得られる。後述する凝固体形成工程(ステップS7)の前に上記窒素ガス制御を行うことで、基板Wの表面Wfの中央部近傍における乾燥前処理液の溶媒を蒸発させ溶質濃度を上げることができる。しかも、それに続く凝固体形成工程(ステップS7)で窒素ガスを水平に吐出することで、基板Wの表面Wfにおける溶質濃度を均一化することができる。これらによって、凝固体の膜厚を均一化させることができる。
【0057】
こうして昇華乾燥に適した乾燥前処理液の液膜が基板Wの表面Wf上に形成されると、凝固体形成工程(ステップS7)が実行される。制御部4は、基板回転駆動機構34のモータを制御して基板Wの回転速度を第1回転速度V1よりも増速する。より具体的には、制御部4は、スピンオフ速度V3に増速するとともに、窒素ガスの流量を増やす。より具体的には、中央ガス吐出口66aから吐出されている窒素ガスの流量を流量VF1から流量VF2に引き上げるとともに、バルブ68cを開いて周縁ガス吐出口67から窒素ガスを吐出する。こうした回転速度および窒素ガスの増大から所定時間が経過する間に液膜中の溶媒が除去され、昇華性物質の凝固体が形成される。
【0058】
こうした凝固体の形成に続いて、制御部4は、回転速度V4(>V3)までさらに増速し、その回転速度V4を維持する。また、制御部4は、中央ガス吐出口66aから吐出されている窒素ガスの流量を流量VF2に維持したまま、バルブ68cを開いて周縁ガス吐出口67から吐出されている窒素ガスの流量を流量HF2から流量HF3に引き上げて基板Wの表面Wfに沿って流れる窒素ガスの流量を高めて昇華工程(ステップS8)を実行する。
【0059】
昇華工程については、凝固体形成工程の最終速度および最終流量を引き継いで行ってもよいが、本実施形態では回転速度および流量をステップアップさせている。このため、昇華速度が高まり、昇華時のパターン倒壊防止及び、乾燥時間の時短効果が得られる。そして、上記ステップアップから所定時間が経過すると、制御部4は、基板回転駆動機構34のモータを停止制御して基板Wの回転を停止させる(ステップS9:基板回転停止)。
【0060】
それに続いて、制御部4は、対向板昇降駆動機構56を制御して対向板51を対向位置から上昇させて退避位置に位置決めする。さらに、制御部4は、全てのガード73を隙間GPから下方に退避させる。
【0061】
その後、制御部4がシャッター開閉機構22を制御してシャッター23(
図1~
図3)を開いた後で、基板搬送ロボット111がチャンバ20の内部空間に進入して、チャックピン31による保持が解除された処理済みの基板Wをチャンバ20外へと搬出する(ステップS10)。なお、基板Wの搬出が完了して基板搬送ロボット111が処理ユニット1から離れると、制御部4はシャッター開閉機構22を制御してシャッター23を閉じる。
【0062】
以上のように、第1実施形態では、液膜形成工程(ステップS6)を実行している間、対向板51とスピンベース32とが相互に近接して半密閉状の空間SPを形成するとともに当該空間SPを窒素ガスリッチな雰囲気としている。そして、基板Wの表面Wfが不活性ガスリッチな空間SPに接した状態で乾燥前処理液の液膜が形成される。これによって、液膜形成を安定して行うことができる。例えばロジック回路、DRAMやPRAMを構成するためのパターンPTが表面Wfに形成された基板Wを従来技術により乾燥させると、パターンPTの一部、特に線幅箇所が酸化するという問題が発生することがあった。これに対し、本実施形態によれば、乾燥前処理液の液膜形成を窒素ガスリッチな空間SPで行っている。すなわち、低酸素状態で液膜形成が実行される。その結果、上記問題を効果的に抑制することができる。
【0063】
また、上記第1実施形態では、乾燥前処理液供給工程(ステップS6a)より中央ガス吐出口66aおよび周縁ガス吐出口67の両方から窒素ガスを吐出している。このため、液膜形成期間の初期より空間SPを窒素ガスリッチな雰囲気とすることができ、液膜形成をより安定的に行うことができる。ここで、両吐出口66a、67から同時吐出することは必須ではなく、窒素ガスの吐出タイミングを相互にずらしたり、一方の吐出口からのみ窒素ガスを吐出するように構成してもよい。
【0064】
上記したように、第1実施形態において、チャックピン31およびスピンベース32がそれぞれ本発明の「ベース部材」および「保持部材」の一例に相当し、これらを備えたスピンチャック30が本発明の「基板保持部」の一例に相当している。乾燥前処理液および窒素ガスがそれぞれ本発明の「処理液」および「不活性ガス」の一例に相当している。乾燥前処理液および窒素ガスを吐出する中心軸ノズル60が、本発明の「処理液供給部」、「ガス供給部」、「凝固体形成部」および「昇華部」として機能している。中心軸ノズル60に設けられた中央ガス吐出口66aおよび周縁ガス吐出口67がそれぞれ本発明の「第1ガス吐出口」および「第2ガス吐出口」の一例に相当している。バルブ66c、68cがそれぞれ本発明の「第1ガス吐出切替部」および「第2ガス吐出切替部」の一例に相当している。対向板昇降駆動機構56が本発明の「移動部」の一例に相当している。基板回転駆動機構34が本発明の「回転部」の一例に相当している。ステップS6の実行期間が本発明の「液膜形成期間」の一例に相当している。そのうちのステップS6a、S6cがそれぞれ本発明の「液膜形成期間の初期段階」および「液膜形成期間の終了段階」の一例に相当している。ステップS6cの実行期間が本発明の「昇華性物質沈下期間」の一例に相当している。昇華性物質沈下期間(ステップS6c)のうち垂直N2の流量がゼロに維持されている期間が本発明の「昇華性物質沈下期間の前半」の一例に相当し、垂直N2の流量が値「VF1」に維持されている期間が本発明の「昇華性物質沈下期間の後半」の一例に相当している。
【0065】
図9は、本発明に係る基板処理装置の第2実施形態における置換処理、液膜形成工程および凝固体形成工程での動作状況を示すタイミングチャートである。この第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、液膜形成工程(ステップS6)および凝固体形成工程(ステップS7)における窒素ガスの供給態様である。その他の構成および動作は基本的に第1実施形態と同一であるため、ここでは相違点を中心に説明し、同一または相当符号を付して説明を省略する。
【0066】
第2実施形態では、
図9に示すように、周縁ガス吐出口67からの窒素ガスの吐出が乾燥前処理液供給工程(ステップS6a)から引き続き、スピンオフ工程(ステップS6b)および昇華性物質沈下工程(ステップS6c)においても継続されている。一方、中央ガス吐出口66aからの窒素ガスの吐出は乾燥前処理液供給工程(ステップS6a)の完了と同時に停止され、その吐出停止状態はスピンオフ工程(ステップS6b)および昇華性物質沈下工程(ステップS6c)においても継続されている。このように第2実施形態では、液膜形成工程(ステップS6)において窒素ガスが空間SPに供給され、低酸素状態が確実に継続されている。
【0067】
凝固体形成工程(ステップS7)では、周縁ガス吐出口67からの窒素ガスの吐出流量が値HF1から値HF2に高められる一方で、中央ガス吐出口66aからの窒素ガスの吐出流量はゼロに維持されている。つまり、窒素ガスは、基板Wの表面中央部に供給されず、対向板51の中央傾斜面513bおよび基板対向面513aに沿って基板Wの表面周縁部に供給される。
【0068】
そして、一定時間が経過して凝固体形成されると、制御部4がバルブ66cを開いて中央ガス吐出口66aから基板Wの表面中央部への窒素ガスを供給し始める(吐出流量VF2)。また、これに同期して周縁ガス吐出口67からの窒素ガスの吐出流量が値HF2から値HF3に高められる。こうして、
図6Aに示すように、基板Wの表面Wf全体に大量の窒素ガスが供給され、凝固体の昇華が効率的に行われる(ステップS8)。
【0069】
以上のように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られるだけでなく、次に説明する作用効果も得られる。本実施形態では、2つの窒素ガスの供給態様を有しており、第1実施形態と同様に、基板Wの表面中央部への供給を優先して行ってもよい。この場合、表面周縁部よりも先に表面中央部から気体成分が発生し、表面周縁部に流動していく。この装置の空間SPは半密閉状態であることから、気体成分は表面周縁部で滞留し易い。そのため、その後のプロセスを好適に行うことができず、表面周縁部でのパターン倒壊が発生する可能性がある。これに対し、第2実施形態では、表面中央部よりも先に表面周縁部に窒素ガスを供給しているため、表面周縁部でのパターン倒壊を効果的に防止することができる。しかも、表面中央部への窒素ガスの供給開始と同時に、表面周縁部に供給していた窒素ガスの流量を増大させているため、基板Wの表面Wfから発生した気体成分を隙間GPから確実に排出することができる。その結果、基板Wの乾燥を良好に行うことができる。
【0070】
第2実施形態において、凝固体形成工程(ステップS7)の実行期間が本発明の「凝固体形成期間」の一例に相当している。また、凝固体形成工程から昇華工程に切り替わるタイミングが本発明の「凝固体形成期間の経過後に」の一例に相当している。
【0071】
図10は、本発明に係る基板処理装置の第3実施形態における置換処理、液膜形成工程および凝固体形成工程での動作状況を示すタイミングチャートである。この第3実施形態が第2実施形態と大きく相違する点は、昇華性物質沈下工程(ステップS6c)の後半での窒素ガスの供給態様と、凝固体形成工程(ステップS7)および昇華工程(ステップS8)での周縁ガス吐出口67からの窒素ガスの流量変化とである。その他の構成および動作は基本的に第2実施形態と同一であるため、ここでは相違点を中心に説明し、同一または相当符号を付して説明を省略する。
【0072】
第2実施形態(
図9)では昇華性物質沈下工程(ステップS6c)の後半において周縁ガス吐出口67から吐出された窒素ガスを供給している。これに対し、第3実施形態では、
図10に示すように、上記後半に相当する期間のみ、周縁ガス吐出口67からの窒素ガスの吐出が一時的に停止されるとともに中央ガス吐出口66aから基板Wの表面中央部に窒素ガスが吐出される。このように窒素ガスを第2供給態様(
図6A中の点線参照)から第1供給態様(
図6A中の1点鎖線参照)に一時的に変更してもよい。また、周縁ガス吐出口67からの窒素ガスの吐出を維持しながら、中央ガス吐出口66aから基板Wの表面中央部に窒素ガスが吐出してもよい。
【0073】
また、第2実施形態(
図9)では、凝固体形成工程(ステップS7)から昇華工程(ステップS8)に切り替わるタイミングで周縁ガス吐出口67からの窒素ガスの吐出流量が増大されるが、第3実施形態では凝固体形成工程から水平方向に大量の窒素ガスが吐出される。すなわち、半密閉状の空間SPにおいて
図6Aの周縁ガス吐出口67が始点となる点線矢印の気流が凝固体形成工程中に形成されている。この気流により、蒸発した溶媒雰囲気が空間SP上方に滞留することなくスピンベース32側へ流れるので、蒸発が促進される。特に揮発し難い(蒸気圧の低い)溶媒に対し、蒸発し易い環境にすることが可能となる。
【0074】
以上のように、第3実施形態によれば、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0075】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、昇華性物質沈下工程(ステップS6c)において基板Wを第2回転速度V2で回転させているが、回転停止してもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、液膜形成工程(ステップS6)においてスピンオフ工程(ステップS6b)および昇華性物質沈下工程(ステップS6c)を実行する装置に本発明を適用している。ただし、これは本発明の必須要件ではなく、例えば両ステップを実行しない、または一方のステップを実行する装置に対しても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、液体を経ずに気体に変化する昇華性物質を利用して基板を乾燥させる基板処理技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1…処理ユニット(基板処理装置)
30…スピンチャック(基板保持部)
31…チャックピン(保持部材)
32…スピンベース(ベース部材)
34…基板回転駆動機構(回転部)
50…対向部材
51…対向板
56…対向板昇降駆動機構(移動部)
60…中心軸ノズル
61…ノズル本体
66a…中央ガス吐出口
67…周縁ガス吐出口
513a…基板対向面
513b…中央傾斜面
513c…内周面
514…係合部材
PT…パターン
SP…空間
V1…第1回転速度
V2…第2回転速度
W…基板
Wf…(基板の)表面