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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】車両用熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20240814BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20240814BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
F28F9/02 301B
F28D1/053 A
B60K11/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020140607
(22)【出願日】2020-08-24
(65)【公開番号】P2022036413
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄大
(72)【発明者】
【氏名】中島 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】百田 和俊
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-154483(JP,U)
【文献】実開昭57-145179(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/00-9/26
F28D 1/053
B60K 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両用熱交換器において、
熱交換媒体が流通する複数本のチューブと、該チューブ間に配設されて該チューブの外面に接合されるフィンとを有するコアと、
前記チューブの端部に接続されるヘッダータンクとを備え、
前記ヘッダータンクは、前記チューブの端部が挿入される金属製のヘッダープレートと、該ヘッダープレートの前記チューブが接続される側とは反対側に配置されて前記チューブが連通する空間を該ヘッダープレートと共に形成する樹脂製のタンク本体とを有し、
前記タンク本体の前記ヘッダープレート側の周縁部には、前記ヘッダープレートによってかしめ固定される被かしめ部が形成されるとともに、当該周縁部の一部にのみ係止爪が形成され、
前記被かしめ部は、前記ヘッダータンクの側方へ突出するとともに、前記タンク本体の前記ヘッダープレート側の周縁部の周方向に連続して形成されており、
前記ヘッダープレートには、複数のかしめ部が周方向に互いに間隔をあけて形成され、
前記ヘッダープレートの周縁部における前記係止爪に対応する部分には、前記かしめ部よりも前記タンク本体側へ突出する突出板部が形成され、前記突出板部は、該突出板部の先端へ行くほど前記タンク本体の側面から離れるように形成され、
前記突出板部には、前記係止爪が挿入された状態で係止する係止孔が形成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用熱交換器において、
前記タンク本体には、前記空間に連通するパイプ部が前記ヘッダータンクの側方へ突出するように一体成形されており、
前記係止爪は、前記タンク本体の前記ヘッダープレート側の周縁部において前記パイプ部が突出する部分に対応するように形成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用熱交換器において、
前記ヘッダープレートの周縁部には、弾性材からなるシール材が収容される収容溝が環状に形成されており、
前記タンク本体の前記ヘッダープレート側の周縁部には、前記収容溝に収容された前記シール材に当接する当接面が環状に形成されていることを特徴とする車両用熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に搭載される車両用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の車両用熱交換器としては、例えば特許文献1に開示されているように、チューブ及びフィンが積層されて一体化されたコアと、コアの両端部に設けられるヘッダータンクとを備えたものが知られている。特許文献1のヘッダータンクは、チューブの端部が挿入されるチューブ挿入孔を有する金属製のヘッダープレートと、ヘッダープレートに組み付けられる樹脂製のタンク本体とで構成されている。
【0003】
タンク本体の周縁部には、複数の係止用爪部が互いに間隔をあけて設けられている。一方、ヘッダープレートの周縁部には、複数の係止用孔部が互いに間隔をあけて設けられている。タンク本体の周縁部とヘッダープレートの周縁部との間にシール材を配置した状態でタンク本体の係止用爪部をヘッダープレートの係止用孔部に挿入して係止させることにより、ヘッダープレートとタンク本体とを液密に一体化することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-116079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、タンク本体の周縁部に複数の係止用爪部を形成しているが、このタンク本体は樹脂製であることから、例えば成形不良等によって複数の係止用爪部のうちの一部でも異常が生じていると、シール材によるシール不良の原因となってしまう。
【0006】
そこで、ヘッダープレートが金属製であることから、ヘッダープレートをタンク本体にかしめることによって両者を一体化する方法が考えられる。ところが、例えばタンク本体にパイプ等が一体成形されている場合、かしめ用治具を所定位置まで持っていく過程でかしめ用治具がパイプと干渉してしまい、その結果、パイプに対応した部分のかしめができなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属製のヘッダープレートを樹脂製のタンク本体にかしめるためのかしめ用治具がタンク本体の一部と干渉する場合であっても、ヘッダープレートとタンク本体とのシール性を確保できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、ヘッダープレートとタンク本体とをかしめ固定することを前提とし、かしめ用治具が干渉する部分には、係止爪及び係止孔によってヘッダープレートとタンク本体とを結合する構造を設けるようにした。
【0009】
第1の発明は、車両に搭載される車両用熱交換器において、熱交換媒体が流通する複数本のチューブと、該チューブ間に配設されて該チューブの外面に接合されるフィンとを有するコアと、前記チューブの端部に接続されるヘッダータンクとを備え、前記ヘッダータンクは、前記チューブの端部が挿入される金属製のヘッダープレートと、該ヘッダープレートの前記チューブが接続される側とは反対側に配置されて前記チューブが連通する空間を該ヘッダープレートと共に形成する樹脂製のタンク本体とを有し、前記タンク本体の前記ヘッダープレート側の周縁部には、前記ヘッダープレートによってかしめ固定される被かしめ部が形成されるとともに、当該周縁部の一部にのみ係止爪が形成され、前記ヘッダープレートにおける前記係止爪に対応する部分には、前記係止爪が挿入された状態で係止する係止孔が形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ヘッダータンクを構成する際に、ヘッダープレートとタンク本体とを合わせると、タンク本体の係止爪がヘッダープレートの係止孔に挿入されて係止する。また、ヘッダープレートをかしめ用治具によってタンク本体の被かしめ部にかしめることで、ヘッダープレートとタンク本体とがかしめ固定される。したがって、かしめ固定と係止爪及び係止孔とによってタンク本体におけるヘッダープレート側の周縁部が全周に亘ってヘッダープレートに結合される。係止爪及び係止孔による結合構造は、かしめ用治具が干渉する部分にのみを設けておけばよく、これにより、かしめ用治具がタンク本体の一部と干渉する場合であっても、ヘッダープレートとタンク本体とのシール性を全周に亘って確保できる。
【0011】
第2の発明は、前記タンク本体には、前記空間に連通するパイプ部が前記ヘッダータンクの側方へ突出するように一体成形されており、前記係止爪は、前記タンク本体の前記ヘッダープレート側の周縁部において前記パイプ部が突出する部分に対応するように形成されていることを特徴とする。
【0012】
すなわち、例えばヘッダータンクに熱交換媒体を流入させるパイプ部や、ヘッダータンクから熱交換媒体を流出させるパイプ部がタンク本体に一体成形される場合がある。このパイプ部がヘッダータンクの側方へ突出していると、かしめ用治具がパイプ部と干渉してしまい、タンク本体におけるパイプ部が突出する部分をかしめ固定できなくなくおそれがある。このとき、本発明によれば、係止爪が、パイプ部が突出する部分に対応するように形成されているので、かしめ固定によらず、係止爪と係止孔とによってタンク本体をヘッダープレートに結合させることができる。よって、シール性の悪化が回避される。
【0013】
第3の発明は、前記ヘッダープレートの周縁部には、弾性材からなるシール材が収容される収容溝が環状に形成されており、前記タンク本体の前記ヘッダープレート側の周縁部には、前記収容溝に収容された前記シール材に当接する当接面が環状に形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、シール材を収容溝に収容して所定位置からずれないようにした状態で、タンク本体の当接面を当接させることができるので、高いシール性を長期間安定して確保できる。
【0015】
第4の発明は、前記被かしめ部は、前記ヘッダータンクの側方へ突出するとともに、前記タンク本体の前記ヘッダープレート側の周縁部の周方向に連続して形成されており、前記ヘッダープレートには、複数のかしめ部が周方向に互いに間隔をあけて形成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、複数のかしめ部が互いに分離することになるので、かしめ作業時にかしめ部を変形させる際に変形させやすくなる。
【0017】
第5の発明は、前記ヘッダープレートの周縁部における前記係止爪に対応する部分には、前記タンク本体側へ突出する突出板部が形成され、前記突出板部に前記係止孔が形成されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、ヘッダープレートとタンク本体とを合わせる際に、ヘッダープレートの突出板部がタンク本体側へ突出しているので、突出板部がタンク本体のヘッダープレートに対する相対的な移動を阻害することはない。そして、ヘッダープレートとタンク本体とを合わせると、タンク本体の係止爪がヘッダープレートの係止孔に挿入される。
【0019】
第6の発明は、前記突出板部は、該突出板部の先端へ行くほど前記タンク本体の側面から離れるように形成されていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、ヘッダープレートとタンク本体とを合わせる際に、ヘッダープレートの突出板部の先端が係止爪に当たり難くなり、係止爪の破損が抑制される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、タンク本体の周縁部に、ヘッダープレートによってかしめ固定される被かしめ部を形成するとともに、当該周縁部の一部にのみ係止爪を形成し、ヘッダータンクにおける係止爪に対応する部分には係止孔を形成したので、かしめ用治具がタンク本体の一部と干渉する場合であっても、ヘッダープレートとタンク本体とのシール性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る車両用熱交換器の斜視図である。
図2】上記車両用熱交換器を後側から見た図である。
図3】上記車両用熱交換器の平面図である。
図4】左側ヘッダータンクを後側から見た図である。
図5図4のV-V線断面図である。
図6図4のVI-VI線断面図である。
図7】かしめ工程を説明する図5相当図である。
図8】係止爪を係止孔に係止させる工程について説明する図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用熱交換器1を示すものである。車両用熱交換器1は、例えば自動車に搭載されており、エンジンやモータ、インバータ等の冷却水(熱交換媒体)を外部空気と熱交換させて冷却するラジエータである。尚、図示しないが、車両用熱交換器1は、例えば自動車に搭載されるバッテリを冷却するための冷却水を外部空気と熱交換させる熱交換器であってもよい。
【0025】
車両用熱交換器1がラジエータである場合、自動車の前部に搭載することができる。自動車の前部には、ラジエータ用の送風ファンが設けられており、この送風ファンによって車両用熱交換器1に外部空気を送風することができる。また、自動車の走行時の風が車両用熱交換器1に当たるようになっている。
【0026】
この実施形態の説明では、図1図4に示すように、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとし、左右方向が車幅方向に相当する。これは説明の便宜を図るために定義するだけである。したがって、自動車への搭載の方向や製造時の方向を限定するものではなく、自動車の構造や製造設備等に応じて車両用熱交換器1の向きを変えることができる。
【0027】
図1図3に示すように、車両用熱交換器1は、コア2と、左側ヘッダータンク3と、右側ヘッダータンク4とを備えている。コア2は、複数のチューブ21及び複数のフィン22と、上側エンドプレート23及び下側エンドプレート24とを備えている。チューブ21、フィン22、上側エンドプレート23及び下側エンドプレート24は、全てアルミニウム合金製であるが、アルミニウム合金以外の金属で構成されていてもよい。チューブ21、フィン22、上側エンドプレート23及び下側エンドプレート24は、例えばろう付けによって一体化されている。
【0028】
チューブ21は、熱交換媒体が流通する部材であり、左右方向に延びている。チューブ21の長手方向に直交する方向の縦断面は、前後方向に長い扁平状をなしており、したがって、このチューブ21は扁平チューブである。複数のチューブ21は、上下方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0029】
上下方向に隣合うチューブ21の間には、フィン22が配設されている。フィン22は、例えば薄板材を左右方向に連続する波型に成形してなるコルゲートフィンである。フィン22の上部は、該フィン22の上に配置されるチューブ21の外面に接合されている。また、フィン22の下部は、該フィン22の下に配置されるチューブ21の外面に接合されている。これにより、チューブ21の外面の熱が上下のフィン22に伝達されて熱交換媒体の外部空気との熱交換が促進される。
【0030】
上側エンドプレート23は、コア2の最上部に位置するフィン22の上部に接合されており、左右方向に延びている。下側エンドプレート24は、コア2の最下部に位置するフィン22の下部に接合されており、左右方向に延びている。
【0031】
左側ヘッダータンク3は、コア2のチューブ21の左端部に接続され、また、右側ヘッダータンク4は、コア2のチューブ21の右端部に接続されている。左側ヘッダータンク3と右側ヘッダータンク4のどちらが流入側、流出側であってもよいが、例えば左側ヘッダータンク3を流入側とした場合、左側ヘッダータンク3に流入した熱交換媒体がコア2の各チューブ21に分流されて該各チューブ21を流通して外部空気と熱交換した後、右側ヘッダータンク4で集合して外部に流出する。反対に、右側ヘッダータンク4を流入側とした場合、右側ヘッダータンク4に流入した熱交換媒体がコア2の各チューブ21に分流されて該各チューブ21を流通して外部空気と熱交換した後、左側ヘッダータンク3で集合して外部に流出する。
【0032】
図4図6にも示すように、左側ヘッダータンク3は、ヘッダープレート31と、タンク本体32と、シール材39(図5及び図6に示す)とを有しており、全体として上下方向に長い形状とされている。ヘッダープレート31とタンク本体32とを組み合わせることにより、各チューブ21の左端部が連通する空間Rが左側ヘッダータンク3の内部に形成される。図5及び図6に示すシール材39は、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性材で構成されており、ヘッダープレート31とタンク本体32との間をシールして液密性及び気密性を確保するための部材である。
【0033】
ヘッダープレート31は、例えばアルミニウム合金等の金属製の板材をプレス成形してなる部材であり、上下方向に長い形状とされている。図5及び図6に示すように、ヘッダープレート31にはチューブ21の左端部が挿入されるチューブ挿入孔31aがチューブ21の間隔に対応して形成されている。チューブ21の左端部はチューブ挿入孔31aに挿入された状態で該チューブ挿入孔31aの周縁部にろう付けされて液密性及び気密性が確保されている。
【0034】
図5及び図6に示すように、ヘッダープレート31の周縁部には、シール材39が収容される収容溝31bが形成されている。収容溝31bは、ヘッダープレート31の周縁部の周方向に沿って連続した環状をなしている。シール材39は、収容溝31bの周方向に連続した環状部材で構成されており、収容溝31bに嵌め込むことができるようになっている。
【0035】
ヘッダープレート31には、収容溝31bの外周側の壁部を構成する外板部31cが環状に形成されている。外板部31cはコア2と反対側へ突出しており、その突出方向先端部には、複数のかしめ部31d(図4にも示す)が周方向に互いに間隔をあけて形成されている。かしめ部31dは、かしめ用治具A(図5に示す)によってヘッダープレート31の内方側へ折り曲げられることによって被かしめ部32c(後述する)をかしめ固定することができる部分である。
【0036】
かしめ部31dは、かしめ用治具Aによるかしめ前(図7の左側に示す)の状態では、コア2と反対側へ突出する板状をなしている。かしめ前のかしめ部31dは、先端へ行くほどヘッダープレート31の外方に位置するように傾斜ないし湾曲している。これにより、タンク本体32をヘッダープレート31と組み合わせるときに、タンク本体32がかしめ部31dに引っかからないようにすることができ、タンク本体32及びかしめ部31dの損傷を抑制できる。そして、かしめ部31dに対して図5に示すようなかしめ用治具Aによりヘッダープレート31の内方側へ向けて力を加えると、図7の右側に示すように変形してかしめ状態になる。
【0037】
図6に示すように、ヘッダープレート31には、係止孔31eが形成されている。係止孔31eは、後述するタンク本体32の係止爪32dが挿入された状態で係止する部分であり、ヘッダープレート31における係止爪32dに対応する部分にのみ形成されている。具体的には、ヘッダープレート31における係止爪32dに対応する部分には、かしめ部31dの代わりに、タンク本体32側へ突出する複数の突出板部31f(図4にも示す)が形成されている。複数の突出板部31fは、かしめ部31dと同様にヘッダープレート31の周方向に互いに間隔をあけて配置されている。各突出板部31fに係止孔31eが形成されている。この実施形態では、係止孔31eが矩形状とされているが、これに限られるものではなく、任意の形状にすることができる。また、係止孔31eは、突出板部31fを厚み方向に貫通する貫通孔で構成されており、外部から係止爪32dが係止しているか否かを外側から視認できるようになっている。
【0038】
突出板部31fは、該突出板部31fの先端へ行くほどタンク本体32の側面から離れるように形成されている。これにより、ヘッダープレート31とタンク本体32とを合わせる際に、ヘッダープレート31の突出板部31fの先端が係止爪32dに当たり難くなり、係止爪32dの破損が抑制される。
【0039】
図4に示すように、タンク本体32は、ヘッダープレート31のチューブ21が接続される側とは反対側に配置され、空間Rをヘッダープレート31と共に形成するための部材である。このタンク本体32は、樹脂製の部材であり、例えば射出成形品で構成することができる。タンク本体32は、ヘッダープレート31から離れる方向(左方向)へ膨出する膨出部32aを有している。
【0040】
タンク本体32には、空間Rに連通するパイプ部33が左側ヘッダータンク3の側方(後方)へ突出するように一体成形されている。この実施形態では、パイプ部33が左側ヘッダータンク3の上下方向中間部に位置しているが、パイプ部33の位置はこの位置に限られるものではなく、左側ヘッダータンク3の上部であってもよいし、下部であってもよい。パイプ部33には、図示しないが熱交換媒体を流入させる流入管または熱交換媒体を流出させる流出管が接続されるようになっている。
【0041】
図6に示すように、パイプ部33は、ヘッダープレート31の後端部よりも後まで延びているとともに、先端へ行くほどコア2側に位置するように形成されている。このため、かしめ用治具Aをかしめ位置まで移動させようとした時にかしめ用治具Aがパイプ部33の先端に当たって干渉してしまい、かしめ用治具Aをかしめ位置まで移動させることができない。このような位置にパイプ部33が形成されていることで、タンク本体32の全周をかしめ固定することができない。
【0042】
すなわち、タンク本体32のヘッダープレート31側の周縁部には、ヘッダープレート31のかしめ部31dによってかしめ固定される被かしめ部32cが形成されるとともに、当該周縁部の一部にのみ係止爪32dが形成されており、係止爪32dが形成された部分はかしめ固定されないようになっている。被かしめ部32cは、左側ヘッダータンク3の側方(外方)へ突出するとともに、タンク本体32のヘッダープレート31側の周縁部の周方向に連続して形成されている。被かしめ部32cが形成されていない部分は、係止爪32dが形成された部分である。係止爪32dが形成された部分は、タンク本体32のヘッダープレート31側の周縁部においてパイプ部33が突出する部分に対応する部分であり、かしめ用治具Aをかしめ完了位置まで移動させることができない部分にのみ、係止爪32dが形成されている。かしめ用治具Aをかしめ完了位置まで移動させることができない部分は、全体からみると僅かな部分であることから、係止爪32dが形成された部分の占める割合は、被かしめ部32cが形成された部分が占める割合に比べて大幅に小さくなる。
【0043】
この実施形態では、複数の係止爪32dを、タンク本体32のヘッダープレート31側の周縁部の周方向に互いに間隔をあけて設けているが、これに限らず、係止爪32dは1つであってもよい。この場合、ヘッダープレート31の係止孔31eを1つにする。係止爪32dは、タンク本体32の外方へ突出する突起部で構成されている。
【0044】
係止爪32dの係止孔31eへの挿入は、タンク本体32を組付方向に移動させていくだけでよい。すなわち、タンク本体32を組付方向に移動させていくと、係止爪32dの突出方向先端が突出板部31fを外方へ押して弾性変形させる。係止爪32dが係止孔31eに対応する箇所まで相対的に移動すると、該係止孔31eに入り込み、この瞬間に突出板部31fの形状が復元して係止爪32dが係止孔31eに挿入された状態で保持される。係止爪32dが係止孔31eに挿入されると、係止爪32dが係止孔31eの周縁部に引っかかることにより、係止爪32dの離脱が抑制される。
【0045】
また、タンク本体32のヘッダープレート31側の周縁部には、収容溝31bに収容されたシール材39に当接する当接面32fが環状に形成されている。これにより、シール材39を収容溝31bに収容して所定位置からずれないようにした状態で、タンク本体32の当接面32fをシール材39に当接させることができるので、高いシール性を長期間安定して確保できる。当接面32fは平坦面で構成されている。
【0046】
右側ヘッダータンク4も左側ヘッダータンク3と同様な構成であり、ヘッダープレート41、タンク本体42及びシール材(図示せず)を有している。タンク本体42にはパイプ部43が一体成形されている。
【0047】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、例えば左側ヘッダータンク3を構成する際に、ヘッダープレート31とタンク本体32とを合わせると、タンク本体32の係止爪32dがヘッダープレート31の係止孔31eに挿入されて係止する。また、図5に示すように、ヘッダープレート31のかしめ部31dをかしめ用治具Aによってタンク本体32の被かしめ部32cにかしめることで、ヘッダープレート31とタンク本体32とがかしめ固定される。したがって、かしめ固定と係止爪32d及び係止孔31eとによってタンク本体32におけるヘッダープレート31側の周縁部が全周に亘ってヘッダープレート31に結合される。係止爪32d及び係止孔31eによる結合構造は、かしめ用治具Aが干渉する部分にのみ、即ちパイプ部33が存在する部分にのみ設けておけばよく、これにより、かしめ用治具Aがパイプ部33の一部と干渉する場合であっても、ヘッダープレート31とタンク本体32とのシール性を全周に亘って確保できる。
【0048】
また、タンク本体32をヘッダープレート31に結合すると、ヘッダープレート31の収容溝31b内のシール材39がタンク本体32の当接面32fによって押圧されて弾性変形する。これにより、シール材39が収容溝31bの内面及び当接面32fに沿うように弾性変形して両者に密着し、高いシール性を確保できる。
【0049】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明に係る車両用熱交換器は、例えばラジエータ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 車両用熱交換器
2 コア
3 左側ヘッダータンク
21 チューブ
22 フィン
31 ヘッダープレート
31d かしめ部
31e 係止孔
31f 突出板部
32 タンク本体
32c 被かしめ部
32d 係止爪
32f 当接面
33 パイプ部
39 シール材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8