(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】錠剤印刷装置及び錠剤製造方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/06 20060101AFI20240814BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240814BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A61J3/06 Q
B41J2/01 109
B41M5/00 100
(21)【出願番号】P 2020154519
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】平野 梓
(72)【発明者】
【氏名】小林 達美
(72)【発明者】
【氏名】青▲柳▼ 均
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 杏太
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-042264(JP,A)
【文献】特開2020-011460(JP,A)
【文献】特開2015-196328(JP,A)
【文献】特開2019-055177(JP,A)
【文献】特表2008-501069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング錠剤を搬送する搬送装置と、
前記錠剤の印刷対象面に、大気圧プラズマによる生成物を含むガス流を吹出口から吹き付けるプラズマ発生装置と、
前記吹出口よりも前記錠剤の搬送方向の下流に配置され、前記搬送装置に搬送される錠剤の、前記ガス流が吹き付けられた前記印刷対象面に印刷するインクジェット方式の印刷ヘッド装置と、
を有
し、
前記吹出口は、前記錠剤を前記搬送装置に供給する供給装置に設けられていることを特徴とする錠剤印刷装置。
【請求項2】
前記錠剤は、相反する配置の、一対の前記印刷対象面を有し、
前記吹出口は、前記錠剤の、前記印刷対象面の双方に対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項
1記載の錠剤印刷装置。
【請求項3】
前記吹出口よりも、前記錠剤の搬送方向の下流に配置され、前記ガス流が吹き付けられた前記印刷対象面を、前記印刷ヘッド装置による印刷の前に撮像する撮像装置を有することを特徴とする請求項1
または2に記載の錠剤印刷装置。
【請求項4】
前記プラズマ発生装置に供給されるプロセスガスが、ヘリウム又はアルゴンであることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の錠剤印刷装置。
【請求項5】
供給装置において、コーティング錠剤の印刷対象面に、大気圧プラズマによる生成物を含むガス流を吹き付けた後、
前記供給装置から搬送装置に前記コーティング錠剤を供給し、
前記搬送装置により搬送される前記コーティング錠剤の前記印刷対象面にインクジェット方式の印刷ヘッド装置により印刷することを特徴とする錠剤製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤印刷装置及び錠剤製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載された錠剤印刷装置が知られている。この錠剤印刷装置は、搬送ベルトによって、錠剤を順次搬送する。そして、搬送ベルト上の錠剤に対向して設けられた印刷装置であるインクジェットプリンタによって、錠剤の表面に、識別のための文字やマーク等を印刷する。
【0003】
インクジェットプリンタは、インク滴を吐出する複数のノズルを備えた印刷ヘッドを有している。印刷ヘッドの複数のノズルは、印刷データに基づいたパターンに従って、インク滴を吐出することにより印刷を行う。
【0004】
このようなインクジェットプリンタを用いると、錠剤の品種の切替え等によって、印刷すべき文字やマークが変更されても、提供する印刷データを変えることで即応できる。また、インクジェットプリンタを用いると非接触で印刷できる。このため、衛生的であり、印刷対象物の錠剤が飲用である場合に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
錠剤には、糖衣錠や、FC(フィルムコート)錠など、表面に光沢がある錠剤がある。このような光沢のある錠剤は、表面が滑らかで、つやがあり、印刷を施したときにインクをはじきやすい。このため、目的のパターンを印刷できない、あるいは印刷後のパターンの見た目が悪くなる、という印刷不良が発生する問題があった。例えば飲用の錠剤において、このような印刷不良が発生した錠剤は、たとえ飲用には問題がないとしても、製品としての品質には問題があることになる。
【0007】
これに対処するため、錠剤の表面への定着性が比較的高い、高粘度のインクを使用することにより、インクのはじきを抑えることも考えられる。しかし、高粘度のインクは、インクジェット方式に限らず、印刷ヘッドのノズルからの吐出性が悪く、吐出不良が起きやすい。吐出不良があると、印刷の一部の欠けや抜けの発生、印刷が薄くなるなど、印刷不良につながる。
【0008】
本発明は、上述したような課題を解決するために提案されたものであり、その目的は、錠剤に対する印刷不良を抑えることができる錠剤印刷装置、錠剤製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の錠剤印刷装置は、コーティング錠剤を搬送する搬送装置と、前記錠剤の印刷対象面に、大気圧プラズマによる生成物を含むガス流を吹出口から吹き付けるプラズマ発生装置と、前記吹出口よりも前記錠剤の搬送方向の下流に配置され、前記搬送装置に搬送される錠剤の、前記ガス流が吹き付けられた前記印刷対象面に印刷するインクジェット方式の印刷ヘッド装置と、を有し、前記吹出口は、前記錠剤を前記搬送装置に供給する供給装置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の錠剤製造方法は、供給装置において、コーティング錠剤の印刷対象面に、大気圧プラズマによる生成物を含むガス流を吹き付けた後、前記供給装置から搬送装置に前記コーティング錠剤を供給し、前記搬送装置により搬送される前記コーティング錠剤の前記印刷対象面にインクジェット方式の印刷ヘッド装置により印刷することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、錠剤に対する印刷不良を抑えることができる錠剤印刷装置、錠剤製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の錠剤印刷装置の全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】搬送ベルトに載った錠剤を平面方向から見た状態を示す図である。
【
図4】大気圧プラズマの生成物の吹き付けを行わずに印刷対象面に印刷した錠剤を撮像した画像(A)、印刷した文字部分の拡大画像(B)である。
【
図5】大気圧プラズマの生成物を吹き付けた印刷対象面に印刷した錠剤を撮像した画像(A)、印刷した文字部分の拡大画像(B)である。
【
図6】搬送されている錠剤に複数の吹出口からの生成物が吹き付けられる状態を示す側面図(A)、平面図(B)である。
【
図7】搬送されている錠剤に搬送方向に長い吹出口からの生成物が吹き付けられる状態を示す側面図(A)、平面図(B)である。
【
図8】供給装置にプラズマ発生装置を設けた態様を示す断面図である。
【
図9】角丸長方形状の錠剤にプラズマ発生装置からの生成物が吹き付けられる状態を示す側面図(A)、平面図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明において、上及び下とは鉛直方向における上及び下を指す。なお、錠剤Tとしては、コーティング錠が用いられる。コーティング錠は、例えば、糖衣錠やフィルムコーティング錠など、表面に光沢を有するものである。また、錠剤Tの形状は、円形の凸レンズ形であり、一対の相反するドーム状の曲面が、印刷がなされる印刷対象面となっている。
【0014】
(基本構成)
図1に示すように、本実施形態の錠剤印刷装置1は、供給装置10と、整列搬送装置11と、第1の印刷装置20と、第2の印刷装置30と、回収装置40と、制御装置50とを備えている。なお、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30は基本的に同じ構造である。さらに、本実施形態は、大気圧プラズマを発生させるプラズマ発生装置100を備えている。
【0015】
後述するように、錠剤印刷装置1の各構成要素である、供給装置10、整列搬送装置11、第1の印刷装置20、第2の印刷装置30、回収装置40が、この順で配置されている。供給装置10に供給された錠剤Tは、搬送路Pを搬送されながら、印刷、回収の一連の処理が行われる。搬送路Pとは、錠剤印刷装置1において錠剤Tが搬送される経路であり、本実施形態において搬送路Pの上流側は供給装置10、下流側は回収装置40となる。
【0016】
供給装置10は、整列搬送装置11の一端側、すなわち錠剤Tの搬送方向A1(以下、単に搬送方向A1という)における上流の一端側に位置付けられている。供給装置10は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0017】
供給装置10は、ホッパ10aと、ダクト10bと、振動フィーダ(シュータ)10cとを有している。ホッパ10aは、多数の錠剤Tを収容し、その収容した複数の錠剤Tをダクト10bに順次供給する。ダクト10bは、ホッパ10aの下面に接続されており、ホッパ10aから供給された各錠剤Tを振動フィーダ10cに供給する。振動フィーダ10cは、ダクト10bの下面から供給された各錠剤Tに振動を与えて錠剤Tの重なりを無くしつつ、整列搬送装置11に各錠剤Tを供給する。このような供給装置10においては、錠剤Tは自重によって落下して移動するが、本明細書では便宜上、供給装置10においても「錠剤Tを搬送する」と表現する。
【0018】
この供給装置10において、例えば、一時間あたり10万錠(10万錠/H)の錠剤Tがホッパ10a内に投入されるが、ホッパ10a内に投入された全ての錠剤Tがすぐにダクト10b及び振動フィーダ10cを通過して整列搬送装置11に供給されるわけではない。ホッパ10a内やダクト10b内、振動フィーダ10c内には多数の錠剤Tが一時的にとどまることになる。
【0019】
整列搬送装置11は、整列フィーダ13と、受け渡しフィーダ14とを有している。この整列搬送装置11は、第1の印刷装置20の一端側、すなわち搬送方向A1における上流の一端側に位置付けられている。整列搬送装置11は、整列フィーダ13及び受け渡しフィーダ14によって錠剤Tを第1の印刷装置20に供給することが可能に構成されている。この整列搬送装置11は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0020】
整列フィーダ13は、供給された錠剤Tを二列に整列し、受け渡しフィーダ14に向けて搬送する。受け渡しフィーダ14は、整列フィーダ13上に二列に並ぶ各錠剤Tを、順次錠剤Tの上側から吸引して保持し、保持した各錠剤Tを第1の印刷装置20まで二列で搬送して第1の印刷装置20に渡す。なお、整列フィーダ13及び受け渡しフィーダ14としては、例えば、ベルト搬送機構を用いることが可能である。
【0021】
第1の印刷装置20は、搬送装置21と、検出装置22と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)23と、印刷ヘッド装置24と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)25と、乾燥装置26とを備えている。
【0022】
搬送装置21は、搬送ベルト21a、駆動プーリ21b、複数(
図1の例では、三つ)の従動プーリ21c、モータ21d、位置検出器21e及び吸引チャンバ21fを有している。搬送ベルト21aは、無端状のベルトであり、駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cに架け渡されている。駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cは装置本体に回転可能に設けられており、駆動プーリ21bはモータ21dに連結されている。モータ21dは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。位置検出器21eは、エンコーダなどの機器であり、モータ21dに取り付けられている。この位置検出器21eは電気的に制御装置50に接続されており、検出信号を制御装置50に送信する。後述する制御装置50は、その検出信号に基づいて搬送ベルト21aの位置や速度、移動量などの情報を得ることができる。この搬送装置21は、モータ21dによる駆動プーリ21bの回転によって各従動プーリ21cと共に搬送ベルト21aを回転させ、その搬送ベルト21a上の錠剤Tを
図1中の矢印A1の方向(搬送方向A1)に搬送する。
【0023】
搬送ベルト21aの表面には、
図2に示すように、円形状の吸引孔21gが複数形成されている。これらの吸引孔21gは、それぞれ錠剤Tを搬送ベルト21a表面に吸着する貫通孔であり、二本の搬送路を形成するように搬送方向A1に沿って平行に二列に並べられている。各吸引孔21gは、吸引チャンバ21fに形成された吸引路を介して吸引チャンバ21f内に接続されており、その吸引チャンバ21fにより吸引力を得ることが可能になっている。吸引チャンバ21fには、ポンプなどの吸気装置が吸気管(いずれも図示せず)を介して接続されており、吸気装置の作動によって吸引チャンバ21fの内部は減圧される。また、吸気装置は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0024】
検出装置22は、複数の検出部22a(
図2の例では、二つ)を有している。検出部22aは、整列搬送装置11によって搬送ベルト21aにおける錠剤Tが供給される位置よりも、搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。検出部22aは、搬送ベルト21a上の錠剤Tの位置(搬送方向A1の位置)を検出し、下流に位置する各装置のトリガーセンサとして機能する。検出部22aとしては、反射型レーザセンサなど各種のレーザセンサを用いることが可能である。各検出部22aは制御装置50に電気的に接続されており、制御装置50に検出信号(位置情報)を送信する。
【0025】
第1の撮像装置23は、複数の撮像部23a(
図2の例では、二つ)を有している。撮像部23aは、検出装置22が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部23aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部23aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(印刷用の画像)を取得し、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部23aとしては、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補型金属酸化膜半導体)などの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部23aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
【0026】
印刷ヘッド装置24は、錠剤Tの印刷対象面に印刷する装置である。本実施形態の印刷ヘッド装置24は、インクジェット方式の複数の印刷ヘッド24a(
図2の例では、二つ)を有している。印刷ヘッド24aは、第1の撮像装置23が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。印刷ヘッド24aは、複数のノズル24b(
図2参照:ただし、図示では四つだけ表示)を具備し、それらのノズル24bから個別にインクを吐出する。この印刷ヘッド24aは、ノズル24bが並ぶ整列方向が水平面内で搬送方向A1と交差するように(例えば直交するように)設けられている。印刷ヘッド24aとしては、圧電素子、発熱素子または磁歪素子などの駆動素子を有する各種のインクジェット方式の印刷ヘッドを用いることが可能である。各印刷ヘッド24aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。
【0027】
第2の撮像装置25は、複数の撮像部25a(
図2の例では、二つ)を有している。撮像部25aは、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側であって搬送方向A1に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に錠剤Tの搬送路ごとに一つずつ並べられ、搬送ベルト21aの上方に設けられている。この撮像部25aは、前述の錠剤Tの位置情報に基づき、錠剤Tが撮像部25aの直下に到達したタイミングで撮像を行い、錠剤Tの上面を含む画像(検査用の画像)を取得する。そして、撮像部25aは、取得した画像を制御装置50に送信する。撮像部25aとしては、前述の撮像部23aと同様、CCDやCMOSなどの撮像素子を有する各種のカメラを用いることが可能である。各撮像部25aは制御装置50に電気的に接続されており、それらの駆動が制御装置50により制御される。なお、必要に応じて撮像用の照明も設けられている。
【0028】
図1に戻り、乾燥装置26は、印刷ヘッド装置24が設けられた位置よりも搬送方向A1の下流側に位置付けられ、例えば、搬送装置21の下方に設けられている。この乾燥装置26は、二列の搬送路に共通の乾燥装置であり、搬送ベルト21a上の各錠剤Tに塗布されたインクを乾燥させる。乾燥装置26としては、エアーなどの気体により乾燥を行う送風機、放射熱により乾燥を行うヒータ、あるいは、気体及びヒータを併用して温風や熱風により乾燥を行う送風機など各種の乾燥部を用いることが可能である。乾燥装置26は制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0029】
乾燥装置26の上方を通過した錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aに保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に受け渡される。
【0030】
第2の印刷装置30は、搬送装置31と、検出装置32と、第1の撮像装置(印刷用の撮像装置)33と、印刷ヘッド装置34と、第2の撮像装置(検査用の撮像装置)35と、乾燥装置36とを備えている。搬送装置31は、搬送ベルト31a、駆動プーリ31b、複数(
図1の例では、三つ)の従動プーリ31c、モータ31d、位置検出器31e及び吸引チャンバ31fを有している。なお、第2の印刷装置30を構成する各要素は、前述の第1の印刷装置20の対応する構成要素と基本的に同じ構造であるため、その説明を省略する。第2の印刷装置30の搬送方向は
図1中の矢印A2の方向(搬送方向A2)である。
【0031】
回収装置40は、不良品回収装置41と、良品回収装置42とを備えている。この回収装置40は、第2の印刷装置30の乾燥装置36が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に設けられており、不良品回収装置41により不良品の錠剤Tを回収し、良品回収装置42により良品の錠剤Tを回収する。なお、不良品の錠剤Tとは、例えば、撮像装置23、33が取得した画像に基づいて検出された、割れや欠けを有する錠剤T、印刷前の位置ずれ量が許容値を超えた錠剤T、あるいは撮像装置25、35が取得した画像に基づいて検出された、印刷位置が許容値を超えた錠剤Tである。
【0032】
不良品回収装置41は、噴射ノズル41aと、収容装置41bとを有している。噴射ノズル41aは、第2の印刷装置30の吸引チャンバ31f内に設けられている。この噴射ノズル41aは、搬送ベルト31aにより搬送される錠剤T(不良品の錠剤T)に向けて気体(例えば、エアー)を噴射し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、噴射ノズル41aから噴射された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔31g(
図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。噴射ノズル41aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。収容装置41bは、搬送ベルト31aから落下した錠剤Tを受け取って収容する。
【0033】
良品回収装置42は、気体吹出部42aと、収容装置42bとを有している。この良品回収装置42は、不良品回収装置41が設けられた位置よりも搬送方向A2の下流側に設けられている。
【0034】
気体吹出部42aは、第2の印刷装置30の搬送装置31内であって、その搬送装置31の端部(すなわち搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部)に設けられている。気体吹出部42aは、例えば、印刷処理中、常に搬送ベルト31aに向けて気体(例えば、エアー)を吹き出し、搬送ベルト31aから錠剤Tを落下させる。このとき、気体吹出部42aから吹き出された気体は、搬送ベルト31aの吸引孔31g(
図2に示す吸引孔21gと同様である)を通過して錠剤Tに当たる。気体吹出部42aとしては、例えば、搬送方向A2に水平面内で交差する方向(例えば直交する方向)に延びるスリット状の開口を有するエアブローを用いることが可能である。気体吹出部42aは制御装置50に電気的に接続されており、その駆動が制御装置50により制御される。
【0035】
ここで、不良品回収装置41を通過した錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、搬送ベルト31aにおける各従動プーリ31c側の端部付近の位置に到達する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、さらに気体吹出部42aを設けることで、搬送ベルト31aから錠剤Tを、収容装置42bに落下させことができる。
【0036】
収容装置42bは、搬送ベルト31aの下面から落下した錠剤Tを受け取って収容する。収容装置42bは、搬送ベルト31aの下流端、すなわち第2の印刷装置30における第2の搬送装置31の搬送端に位置付けられ、錠剤印刷装置1の筐体の外に設けられている。
【0037】
(プラズマ発生装置)
プラズマ発生装置100は、大気圧プラズマを発生させる装置である。
図1に示すように、プラズマ発生装置100は、錠剤Tの印刷対象面に、大気圧プラズマによる生成物を吹出口101から吹き付ける。生成物の吹き付けは、プロセスガスの吹き出しとともに行われる。つまり、錠剤Tの印刷対象面には、生成物を含むガス流が吹き付けられる。プラズマ発生装置100は、第1の印刷装置20、第2の印刷装置30のそれぞれに設けられている。以下、第1の印刷装置20に設けられたものをプラズマ発生装置100A、第2の印刷装置30に設けられたものをプラズマ発生装置100Bとするが、両者を区別しない場合には、プラズマ発生装置100とする。
【0038】
前述の印刷ヘッド装置24、34は、吹出口101よりも、搬送方向A1、A2の下流に配置され、生成物が吹き付けられた印刷対象面に印刷する。つまり、錠剤Tの一方の印刷対象面に印刷する印刷ヘッド装置24の上流に、当該印刷対象面に生成物を吹き付けられるプラズマ発生装置100Aの吹出口101が配置されている。また、錠剤Tの他方の印刷対象面に印刷する印刷ヘッド装置34の上流に、当該印刷対象面に生成物を吹き付けるプラズマ発生装置100Bの吹出口101が配置されている。
【0039】
また、前述の撮像装置23、33は、吹出口101よりも、搬送方向A1、A2の下流に配置され、生成物が吹き付けられた印刷対象面を撮像する。本実施形態の吹出口101は、搬送方向A1、A2の検出装置22、32と撮像装置23、33の間に配置されている。
【0040】
さらに、
図2に示すように、吹出口101は、吸引孔21g、31gに対向する位置に設けられている。例えば、吹出口101は、吸引孔21g、31gの直上に配置され、吸引孔21g、31gに吸引されて搬送されている錠剤Tとの距離が、10mm程度となっている。
【0041】
なお、本実施形態では、吸引孔21g、31gは、それぞれ二列で配置されている。このため、第1の印刷装置20、第2の印刷装置30には、それぞれプラズマ発生装置100が搬送方向A1、A2に直交する方向に二つ並んで配置され、二つの吹出口101が、二列の吸引孔21g、31gに対向している。
【0042】
より具体的には、プラズマ発生装置100は、
図3に示すように、胴部110、ガス供給部120、第1の電極140、第2の電極150、電源160を有する。なお、
図3における胴部110は透視図である。胴部110は、内部にプロセスガスが流通する部材である。胴部110は、管状の部材であり、プロセスガスにプラズマを発生させるための放電が生じる放電管である。胴部110は、例えば、ガラス又はアルミナにより形成されている。管状体である胴部110の内部の空間が、ガス流路111を構成する。なお、本実施形態においては、胴部110は、軸方向が鉛直となるように配置されている。
【0043】
プラズマが発生する領域であるプラズマ領域Zは、放電によりプロセスガスが電離して、イオン、電子、ラジカルなどの生成物が生成される領域である。ここでいうラジカルとは、不対電子を持つ分子や原子のことである。このように、プラズマ領域Zは、生成物の生成源となる領域である。
【0044】
胴部110は、プラズマ領域Zにおいて生成された生成物を、胴部110外の錠剤Tに供給するために排出する排出部112を有する。本実施形態の排出部112は、管状である胴部110の一端が縮径した部分である。
【0045】
排出部112は、ノズル112aを含む。ノズル112aは、胴部110の縮径した部分のうち、さらに軸方向に延び、先端に吹出口101が設けられた円筒形状の部分である。排出部112及びノズル112aの一方又は双方は、胴部110と連続的に構成されていても、胴部110に着脱可能に設けられ、交換できるように構成されていてもよい。以下の説明では、胴部110において、排出部112が設けられた一端側をガス排出側と呼ぶ。なお、胴部110には、排出部112と反対側に、プロセスガスの導入口113が設けられている。
【0046】
ガス供給部120は、胴部110内のガス流路111にプロセスガスを供給する装置である。プロセスガスとしては、放電によりプラズマが発生するガスであればよい。例えば、He、Ar等の希ガスを用いる。
【0047】
ガス供給部120は、ガス源121、調節部122、開閉部123を有する。ガス源121は、プロセスガスを貯留したボンベである。調節部122は、ガス源121からのガスの流量を調整する装置である。調節部122は、流体の流量を計測する質量流量計と、流量を制御する電磁弁を有するマスフローコントローラ(MFC)により構成される。開閉部は、プロセスガスの流路を開閉する弁である。
【0048】
ガス源121は、配管によって調節部122、開閉部123に接続され、配管は胴部110の導入口113に接続されている。つまり、ガス源121からのプロセスガスは、胴部110内に導入されてガス流となる。このようなプロセスガスの導入位置は、胴部110のガス排出側と反対側である。胴部110の導入位置に近い端部側をガス導入側と呼ぶ。胴部110のガス導入側は、気密に封止されている。
【0049】
第1の電極140、第2の電極150は、電圧が印加されることにより、ガス流路111内のプロセスガスにプラズマを発生させる。つまり、第1の電極140、第2の電極150は、電圧の印加によりガス流路111に放電を生じさせて、プロセスガスを電離させる。第1の電極140は、棒状の導電性の部材であり、胴部110のガス導入側の端部から挿入されて、ガス流路内に延びている。第1の電極140は、例えば、タングステンにより形成されている。第2の電極150は、リング状の導電性の部材であり、胴部110の外周に沿って設けられている。第2の電極150は、例えば、NiめっきされたSUSにより形成されている。
【0050】
電源160は、第1の電極140、第2の電極150に電圧を印加する電源である。電源160としては、例えば、プラズマ生成用の高周波電源を用いる。本実施形態では、第2の電極150が接地側となっている。つまり、第1の電極140は主電極であり、第2の電極150は、胴部110を同電位の接地電位で囲み、もれ電流を防ぐガード電極として機能する。
【0051】
制御装置50は、
図1に示すように、画像処理部51、印刷処理部52、検査処理部53、プラズマ制御部54及び記憶部55を備えている。画像処理部51は画像を処理する。印刷処理部52は印刷に係る処理を行う。検査処理部53は検査に係る処理を行う。プラズマ制御部54は、プラズマ発生装置100の制御に係る処理を行う。記憶部55は処理情報や各種プログラムなどの各種情報を記憶する。このような制御装置50は、供給装置10や整列搬送装置11、第1の印刷装置20、第2の印刷装置30、回収装置40、プラズマ発生装置100を制御し、また、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の検出装置22、32から送信される錠剤Tの位置情報、第1の印刷装置20や第2の印刷装置30の個々の撮像装置23、25、33、35から送信される画像などを受信する。
【0052】
また、制御装置50は、ガス供給部120、電源160を制御する。つまり、制御装置50は、開閉部123を制御することによりプロセスガスの供給、停止を行い、調節部122を制御することによりプロセスガスの単位時間当たりの流量を制御し、電源160による印加電圧を調整することによりプラズマ中の電界強度を制御する。
【0053】
[印刷処理]
次に、前述の錠剤印刷装置1が行う印刷処理について説明する。
【0054】
まず、印刷に要する印刷データなどの各種情報が制御装置50の記憶部55に記憶される。そして、供給装置10のホッパ10aに印刷対象の錠剤Tが多数投入されると、錠剤Tはホッパ10aからダクト10bに流れ込む。ダクト10b内に流れ込んだ錠剤Tは、振動フィーダ10cにより整列フィーダ13に順次供給され始め、整列フィーダ13により二列に並べられて移動する。この二列で移動する錠剤Tは、受け渡しフィーダ14により第1の印刷装置20の搬送ベルト21aに順次供給される。搬送ベルト21aは、モータ21dによる駆動プーリ21b及び各従動プーリ21cの回転によって搬送方向A1に回転している。このため、搬送ベルト21a上に供給された錠剤Tは搬送ベルト21a上で二列に並んで所定の移動速度で搬送されていく。なお、搬送ベルト31aもモータ31dによる駆動プーリ31b及び各従動プーリ31cの回転によって搬送方向A2に回転している。
【0055】
第1の印刷装置20では、前述の搬送ベルト21a上の錠剤Tが検出装置22によって検出される。これにより、錠剤Tの位置情報(搬送方向A1の位置)が取得され、制御装置50に入力される。この錠剤Tの位置情報は、記憶部55に保存されて後処理で用いられる。
【0056】
プラズマ発生装置100のガス供給部120では、あらかじめ開閉部123を開き、ガス源121からのプロセスガスを、導入位置から胴部110内に導入する。そして、電源160により、第1の電極140、第2の電極150に電圧を印加する。すると、胴部110内のガス流路に放電が生じて、プロセスガスが電離する。つまり、プラズマが点火する。
【0057】
このプラズマが発生したプラズマ領域Zにおいて、大気との反応によりイオン、電子、ラジカル等の生成物が生成される。例えば、OHラジカルなどの生成物が生成され、生成物は、ガス流とともに吹出口101から搬送ベルト21aの吸引孔21gに向かって吹き付けられる。
【0058】
検出装置22によって検出された後の搬送ベルト21a上の錠剤Tが、吹出口101の下方を通過すると、錠剤Tの一方の印刷対象面に、吹出口101からのガス流に含まれる生成物が吹き付けられる。また、錠剤Tと錠剤Tの間においては、吸引孔21gから生成物が吸引される。
【0059】
次に、搬送ベルト21a上の錠剤Tが前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第1の撮像装置23によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第1の撮像装置23から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tの位置ずれ情報(例えば、
図3におけるX方向、Y方向及びθ方向での錠剤Tの位置ずれ)が画像処理部51により生成され、記憶部55に保存される。この錠剤Tの位置ずれ情報に基づき、錠剤Tに対する印刷条件(インクの吐出位置や吐出タイミングなど)が印刷処理部52により設定され、記憶部55に保存される。
【0060】
次いで、搬送ベルト21a上の個々の錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミング、すなわち錠剤Tが印刷ヘッド装置24の下方に到達したタイミングで、前述の印刷条件に基づいて印刷ヘッド装置24により印刷が実行される。印刷ヘッド装置24の各印刷ヘッド24aにおいて、各ノズル24bからインクが適宜吐出され、その錠剤Tの上面に文字(例えばアルファベット、片仮名、番号)やマーク(例えば記号、図形)などの識別情報が印刷される。
【0061】
識別情報が印刷された錠剤Tは、前述の錠剤Tの位置情報に基づくタイミングで第2の撮像装置25によって撮像され、撮像された画像が制御装置50に送信される。第2の撮像装置25から送信された個々の画像に基づき、錠剤Tごとの印刷パターンの印刷位置を示す印刷位置情報が画像処理部51により生成され、記憶部55に保存される。その印刷位置情報に基づき、錠剤Tに対する印刷良否が検査処理部53により判断され、錠剤Tごとの印刷良否の結果を示す印刷良否結果情報が記憶部55に保存される。例えば、印刷パターンが錠剤Tの所定位置に印刷されているか否かが判断される。
【0062】
検査後の錠剤Tは、搬送ベルト21aの移動に伴って搬送され、乾燥装置26の上方を通過する。このとき、錠剤Tに到達(着弾)したインクは、錠剤Tが乾燥装置26の上方を通過する間に乾燥装置26によって乾燥し、インクが乾燥した錠剤Tは搬送ベルト21aの移動に伴って搬送されていき、搬送ベルト21aにおける各従動プーリ21c側の端部付近に位置する。この位置で吸引作用が錠剤Tに働かなくなり、錠剤Tは搬送ベルト21aの下面に保持された状態から解放され、第1の印刷装置20から第2の印刷装置30に渡される。
【0063】
第2の印刷装置30でも、前述と同じように、大気圧プラズマによる生成物の吹き付けを含む印刷処理及び検査処理が行われる。検査後の錠剤Tは、搬送ベルト31aの移動に伴って搬送され、乾燥装置36の上方を通過する。そして、インクが乾燥した錠剤Tは不良品回収装置41に到達する。この位置で不良品の錠剤Tは、噴射ノズル41aによる気体の噴射により搬送ベルト31aの下面から落下し、収容装置41bによって回収される。一方、良品の錠剤Tは不良品回収装置41を通過し、良品回収装置42に到達する。この位置で良品の錠剤Tは、吸引作用が錠剤Tに働かなくなるとともに、気体吹出部42aによる気体の吹出しによって搬送ベルト31aの下面から落下し、収容装置42bによって回収される。
【0064】
[実験結果]
次に、プラズマ発生装置100による生成物の吹き付けの有無に応じた印刷状態の実験結果を、
図4、
図5を参照して説明する。
図4は、吹き付けを行わずに文字「サンプル」の印刷を行った場合の比較例である。
図5は、吹き付けを行った後に、
図4と同じパターンの「サンプル」の文字の印刷を行った場合の実施例である。
図4(A)、
図5(A)は、それぞれの錠剤の印刷対象面の全体を撮像した画像であり、
図4(B)、
図5(B)は、印刷された文字部分を拡大した画像である。この実験においては、プロセスガスとしてHeを使用し、ガス流量を1L/min、吹付時間を1minとして吹き付けた後、インクジェット方式の印刷ヘッドを用い、同じ吐出条件で印刷を施した。
【0065】
図4(A)、(B)に示すように、吹き付けを行わない比較例の場合には、文字を構成する線に隙間や割れが大量に発生している。一方、
図5(A)、(B)に示すように、吹き付けを行った実施例の場合には、文字を構成する線の隙間や割れが少なくなっている。また、
図4(A)と
図5(A)を比較すると、
図5(A)は文字を構成する線の隙間や割れが少ないために、文字が濃く見え、よりはっきりと視認することができる。
【0066】
[効果]
(1)以上のような本実施形態の錠剤印刷装置1は、錠剤Tを搬送する搬送装置21、31と、錠剤Tの印刷対象面に、大気圧プラズマによる生成物を吹出口101から吹き付けるプラズマ発生装置100と、吹出口101よりも、錠剤Tの搬送方向A1、A2の下流に配置され、生成物が吹き付けられた印刷対象面に印刷する印刷ヘッド装置24、34とを有する。
【0067】
このように印刷前の錠剤Tの印刷対象面に、大気圧プラズマによる生成物を吹き付けることにより、印刷対象面のインクとの親和性が高められ、インクがはじかれることを抑えられることを本願発明者らが確認した。これは、印刷対象面の有機物が除去されてクリーニングされるとともに、OHラジカルによってOH基が生成されて親水化されたことによるものと推測される。これにより、例えば、印刷されるパターンに文字が含まれる場合に、目的の太さより細くなってしまう、線が途切れてしまう等の印刷不良が抑制できる。したがって、印刷済みの錠剤Tの見た目を向上させることができる。
【0068】
また、印刷対象面のインクとの親和性が高くなることで、大気圧プラズマによる生成物を吹き付けていない錠剤Tと同じ量のインクを塗布した場合よりも、インクが濡れ広がるので、塗布されたインクの表面積が大きくなる。あるいは、少ないインク量であっても、目的の面積を印刷することが可能となる。このため、吹き付けを行っていない錠剤Tに比べて、塗布したインクの乾燥を速めることができ、錠剤T同士の接触や錠剤Tの表裏反転搬送などによって、錠剤Tや搬送路Pへの印刷転写が生じることを抑制できる。したがって、印刷品質の低下及び装置汚染の発生を抑えることができる。
【0069】
さらに、定着性確保のために、インクの粘度を上げる必要が無くなるため、使用するインクの粘度を下げることができる。インクが低粘度になると、印刷ヘッド装置24、34からのインクの吐出性が向上するので、印刷不良を抑えることができる。
【0070】
(2)搬送装置21、31は、負圧により吸引孔21g、31gに吸引された錠剤Tを搬送する搬送ベルト21a、31aを有し、吹出口101は、吸引孔21g、31gに対向する位置に設けられている。
【0071】
このため、錠剤Tは吸引孔21g、31gに吸引されて位置決めされるので、錠剤Tが存在する位置に、生成物が吹き付けられる可能性が高くなる。また、プラズマ発生装置100により発生する生成物には、オゾンが含まれているが、多量のオゾンを含む空気を吸い込むことは人体に有害である。本実施形態では、吸引孔21g、31gに対向しているため、錠剤Tと錠剤Tの間に吹き付けられたガスや、錠剤Tに吹き付けられた後のガスは、吸引孔21g、31gから速やかに排気される。したがって、オゾンの拡散が防止され、オゾンによる作業者への悪影響を防ぐことも可能である。
【0072】
さらに、錠剤Tは、吸引孔21g、31gに吸引されて位置決めされるため、吹き付けられる箇所が、錠剤Tの中央付近となり、印刷対象面の全体に吹き付けられる。また、錠剤Tの偏った位置からガス流が吹き付けられるよりも、ずれが生じ難い。
【0073】
(3)吹出口101よりも、錠剤Tの搬送方向A1、A2の下流に配置され、生成物が吹き付けられた印刷対象面を、印刷ヘッド装置24、34による印刷の前に撮像する撮像装置23、33を有する。
【0074】
このため、撮像装置23、33の撮像後に吹き付けにより位置ずれが生じて、撮像結果と印刷条件とが相違してしまうことが防止される。また、吹き付けにより位置ずれが生じたとしても、その後の撮像装置23、33の撮像により位置ずれを検知して、印刷ヘッド装置24、34による印刷条件に反映させることができるので、印刷の品質を維持できる。
【0075】
(4)プラズマ発生装置100に供給されるプロセスガスは、He又はArである。吹出口101から錠剤Tの印刷対象面に吹き付けられるガスの温度は、プロセスガスの種類に依存する。ここで、プロセスガスとしてHe、Arを用いると、吹き付けるガスの温度を30℃以下に抑えることができるので、糖衣錠の表面のワックスや砂糖が溶けてしまうことを防止できる。
【0076】
[変形例]
前述の態様では、錠剤Tの搬送路Pに沿う方向に吹出口101は1つであった。但し、搬送路Pに沿う方向に複数配置してもよい。例えば、
図6(A)、(B)に示すように、吹出口101が吸引孔21g、31gに対向する位置に、複数台のプラズマ発生装置100を並べて配置してもよい。これにより、錠剤Tの搬送速度が速く、吹出口101に対向する位置を通過する時間が短い場合であっても、錠剤Tの印刷対象面に生成物が吹き付けられる時間を長く確保できる。
【0077】
なお、プラズマ発生装置100は、排出部112から延びた配管が分岐して、その先端が複数の吹出口101となっている態様であってもよい。このような複数の吹出口101を、二列の搬送路Pに配置してもよい。また、複数の吹出口101を、搬送路Pに沿う方向に配置することにより、錠剤Tの印刷対象面に生成物が吹き付けられる時間を長く確保できる。
【0078】
さらに、プラズマ発生装置100の吹出口101を、搬送路Pに沿う方向に延びた形状としてもよい。例えば、
図7(A)、(B)に示すように、スリット形状の吹出口101を、長手方向が搬送路Pに沿う方向となるように配置する。この場合にも、錠剤Tの印刷対象面に生成物が当たる時間を長く確保できる。なお、吹出口101の搬送路Pの沿う方向の長さが、複数の錠剤Tを含む長さ等であればよく、搬送路Pに直交する長さは、搬送路Pに沿う方向よりも長いか短いかは問わない。例えば、矩形の吹出口101であってもよい。
【0079】
また、供給装置10に、吹出口101を設けてもよい。例えば、
図8に示すように、供給装置10に、錠剤Tの双方の印刷対象面に吹出口101が向かうように、複数のプラズマ発生装置100を配置する。なお、この実施形態では、振動フィーダ10cの底面が、複数の貫通孔10dを有するパンチングプレートで形成される。
【0080】
つまり、振動フィーダ10cの上部には、吹出口101が貫通孔10dに向かうように、複数のプラズマ発生装置100が、錠剤Tの搬送方向に複数並べて配置されている。また、振動フィーダ10cの下面には、複数の貫通孔10dが形成されている。振動フィーダ10cの下面から、各貫通孔10dを通して錠剤Tの他方の印刷対象面に、生成物が吹き付けられるように、複数のプラズマ発生装置100が、錠剤Tの搬送方向に複数並べて配置されている。
【0081】
ここで、ホッパ10a内には多数の錠剤Tが投入されるが、投入されたすべての錠剤Tが、すぐにダクト10b及び振動フィーダ10cを通過して整列搬送装置11に供給されるわけではない。
図8では簡略化して示しているが、ホッパ10aやダクト10b、振動フィーダ10c内に、多数の錠剤Tが一時的にとどまる。
【0082】
このように、振動フィーダ10c内に並んだ錠剤Tに対して、プラズマ発生装置100からの生成物が、その一方の印刷対象面に吹き付けられるとともに、他方の印刷対象面にも吹き付けられる。これにより、振動フィーダ10c内の各錠剤Tの双方の印刷対象面に、インクが定着し易くなる処理が施される。したがって、搬送路Pを搬送中の錠剤Tに吹き付ける場合に比べて、生成物に曝される時間を長く確保できるとともに、上下の印刷対象面を一括して処理できる。なお、前述のように、プラズマ発生装置100の排出部112から延びた配管が分岐して、その先端が複数の吹出口101となっていて、各吹出口101が、振動フィーダ10c内の錠剤Tの上下に向かう態様としてもよい。
【0083】
なお、振動フィーダ10cに設けたプラズマ発生装置100を、空気や不活性ガスを吹き付ける管やノズルによる吹付装置に変えることにより、又はプラズマ発生装置100を備えたユニットを前記の吹付装置を備えたユニットに交換することにより、錠剤を乾燥させたり、素錠の表面についた粉を除去したりすることができる。つまり、供給装置10に、粉の除去、乾燥、プラズマによる処理を行う場所を兼用させることができる。このため、さまざまな種類の錠剤に対応しつつ、装置の簡易化、省スペース化を実現できる。
【0084】
また、前述の説明においては、錠剤Tを二列で搬送することを例示したが、これに限るものではなく、その列数は一列、又は、三列や四列以上であっても良く、搬送路の数や搬送ベルト13a、21a、31aの数は特に限定されるものではない。吹出口101は、これらの態様に応じて配置すればよい。また、搬送ベルト13a、21a、31aの吸引孔13f、21g、31gの形状も特に限定されるものではない。
【0085】
また、前述の説明においては、錠剤Tの搬送路ごとに印刷ヘッド24aを設けることを例示したが、これに限るものではなく、例えば、一つの印刷ヘッド24aによって二列以上の錠剤Tに印刷を行うようにしても良い。
【0086】
また、前述の説明においては、インクジェット方式の印刷ヘッド24aとして、ノズル24bが一列に並ぶ印刷ヘッドを例示したが、これに限るものではなく、例えば、ノズル24bが複数列に並ぶ印刷ヘッドを用いるようにしても良い。また、搬送方向A1に沿って印刷ヘッド24aを複数並べて用いるようにしても良い。
【0087】
また、前述の説明においては、印刷ヘッド装置24、34としてインクジェット方式の印刷ヘッド装置を例示したが、これに限るものではなく、例えば、転写ロールや転写パッドを用いた転写方式の印刷ヘッド装置も用いることは可能である。この場合にも、インクの定着性を高めることができる。
【0088】
また、錠剤Tの印刷対象面に、生成物を吹き付けた後に印刷できればよいため、整列搬送装置11にプラズマ発生装置100を配置してもよい。また、前述の説明においては、第1の印刷装置20及び第2の印刷装置30を上下に重ねて配置して、錠剤Tの両面または片面を印刷することを例示したが、これに限るものではなく、例えば、第1の印刷装置20だけを設け、錠剤Tの片面だけを印刷するようにしても良い。
【0089】
錠剤印刷装置1を用いた工程以外の工程で、事前に大気圧プラズマによる生成物が、印刷対象面に吹き付けられた錠剤Tを、錠剤印刷装置1に投入してもよい。つまり、錠剤Tの印刷対象面に、大気圧プラズマにより生成物を吹き付けた場合、その表面処理の効果は持続するので、錠剤印刷装置1外で吹き付けた後、錠剤印刷装置1で印刷対象面に印刷することにより、錠剤Tを製造する方法も、本発明の一態様である。
【0090】
ここで、前述の錠剤としては、大気圧プラズマによる生成物を吹き付けられることで、印刷対象面のインクとの親和性が高められるものであれば適用可能であり、医薬用、飲食用、洗浄用、工業用あるいは芳香用として使用される錠剤を含めることができる。また、錠剤としては、裸錠(素錠)や糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠などがあり、硬カプセルや軟カプセルなど各種のカプセル錠も錠剤に含めることができる。
【0091】
さらに、錠剤の形状としては、円盤形やレンズ形、三角形、楕円形、角丸長方形など各種の形状がある。楕円形、角丸長方形のように、長手方向、短手方向を有する形状の場合、
図9に示すように、錠剤Tが角丸長方形状の場合、吸引孔21g、31gの吸引により、錠剤Tは長手方向が吸引孔21g、31gの配列方向に沿って搬送される。このため、吸引孔21g、31gに対向する位置に吹出口101が設けられていれば、印刷対象面から外すことなく、細長い面の全体に吹き付けることができる。
【0092】
また、印刷対象の錠剤が医薬用や飲食用である場合には、使用するインクとして可食性インクが好適である。この可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
【0093】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1 錠剤印刷装置
10 供給装置
10a ホッパ
10b ダクト
10c 振動フィーダ
10d 貫通孔
13 整列フィーダ
13a 搬送ベルト
13f 吸引孔
14 受け渡しフィーダ
20 第1の印刷装置
21 搬送装置
21a搬送ベルト
21b 駆動プーリ
21c 従動プーリ
21d モータ
21e 位置検出器
21f 吸引チャンバ
21g 吸引孔
22 検出装置
22a 検出部
23 第1の撮像装置
23a 撮像部
24 印刷ヘッド装置
24a 印刷ヘッド
24b ノズル
25 第2の撮像装置
25a 撮像部
26 乾燥装置
30 第2の印刷装置
31 第2の搬送装置
31a 搬送ベルト
31b 駆動プーリ
31c 従動プーリ
31d モータ
31e 位置検出器
31f 吸引チャンバ
31g 吸引孔
32 検出装置
33 第1の撮像装置
34 印刷ヘッド装置
35 第2の撮像装置
36 乾燥装置
40 回収装置
41 不良品回収装置
41a 噴射ノズル
41b 収容装置
42 良品回収装置
42a 気体吹出部
42b 収容装置
50 制御装置
51 画像処理部
52 印刷処理部
53 検査処理部
54 プラズマ制御部
55 記憶部
100、100A、100B プラズマ発生装置
101 吹出口
110 胴部
111 ガス流路
112 排出部
112a ノズル
113 導入口
120 ガス供給部
121 ガス源
122 調節部
123 開閉部
140 第1の電極
150 第2の電極
160 電源