(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】燃料ポンプの支持構造
(51)【国際特許分類】
F02M 37/10 20060101AFI20240814BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
F02M37/10 B
F02M37/00 301L
(21)【出願番号】P 2020163433
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】藤関 健正
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-105000(JP,A)
【文献】特開2006-266230(JP,A)
【文献】特開2004-076702(JP,A)
【文献】特開2000-008985(JP,A)
【文献】特開2019-132274(JP,A)
【文献】特開2008-190418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0284840(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00 ~ 37/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンク内に燃料ポンプを取り付けるための燃料ポンプの支持構造であって、
前記燃料タンクの上部に固定されるフランジ部と、
前記フランジ部から下方に伸びる支持パイプと、
前記支持パイプの中空部に挿入された金属製の補強ピンと、
を含み、
前記支持パイプ
の外周側であって、前記補強ピンが挿入されている前記中空部の外周側に、前記燃料ポンプが取り付けられたハウジングの上端を取り付ける、
燃料ポンプの支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料ポンプの支持構造であって、
前記支持パイプの外周に細径部が設けられ、この細径部に前記ハウジングの上端に設けられた係合リングが係合される、
燃料ポンプの支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内に配置する燃料ポンプの支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガソリン車等の燃料タンクから燃料を移送する燃料ポンプとして各種のものが提案されている。特許文献1には、燃料タンク内に燃料ポンプモジュールを配置し、燃料タンク内の燃料を移送する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料タンク内に燃料ポンプを配置する場合、点検修理などを容易にするために、燃料ポンプを燃料タンクの上壁から吊り下げるようにしてタンク底部に固定することが考えられる。
【0005】
このような構成をとると、衝突などにより車両に大きな加速度が生じた場合に、燃料ポンプの固定部分に大きな荷重が掛かり、固定部分が破損する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、燃料タンク内に燃料ポンプを取り付けるための燃料ポンプの支持構造であって、前記燃料タンクの上部に固定されるフランジ部と、前記フランジ部から下方に伸びる支持パイプと、前記支持パイプの中空部に挿入された金属製の補強ピンと、を含み、前記支持パイプの外周側であって、前記補強ピンが挿入されている前記中空部の外周側に、前記燃料ポンプが取り付けられたハウジングの上端を取り付ける。また、前記支持パイプの外周に細径部が設けられ、この細径部に前記ハウジングの上端に設けられた係合リングが係合される。
【0007】
前記補強ピンは、前記支持パイプに挿入された部分に半径方向に膨出する膨出部を有するとよい。
【0008】
前記膨出部は、前記支持パイプの下端部と、中間部の2か所に対応する位置に設けられるとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、支持パイプに補強ピンを挿入したため、衝突時等において燃料ポンプから大きな荷重が支持パイプに掛かったときに、荷重を補強ピンが受けることができ、支持パイプの破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る燃料ポンプの支持構造の構成例を示す概略図であり、(a)は燃料タンクを破断した全体正面図、(b)は燃料タンクを除いた側面図である。
【
図2】支持パイプの構成を示す図であり、(a)は側面図、(b)は側面断面図、(c)が係合リングの底面図である。
【
図3】補強ピンに膨出部を設けた例を示す図であり、(a)は先端側に膨出部を設けた例、(b)は中間部に膨出部を設けた例、(c)は下端部に膨出部を設けた例、(d)は中間部と下端部の2か所に膨出部を設けた例、(e)は先端側と下端部の2か所に膨出部を設けた例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、実施形態に係る燃料ポンプの支持構造の構成例を示す概略図であり、(a)は全体正面図、(b)燃料タンクを除いた側面図である。
【0013】
箱型の燃料タンク10の上壁12の一部には、円形の開口14が設けられており、この開口14を塞ぐようにフランジ部16が上壁12の上から固定される。このフランジ部16は、開口14より大きく、開口14を塞ぐ上蓋部分と、上蓋部分から開口14に沿って伸びる下蓋部分を有し、下蓋部分に複数の部材が設けられている。例えば、燃料ポンプ20からの配管や、外部への配管などがフランジ部16に固定される。
【0014】
フランジ部16の燃料タンク側には、下方に伸びる一対の支持パイプ22が設けられている。そして、この支持パイプ22に筒状のハウジング24の上端部が取り付けられる。図においては、2本の支持パイプ22はフランジ部16の一端側に所定距離離れて取り付けられている。ハウジング24の下端には、連結材28を介し燃料ポンプ30が接続されている。この燃料ポンプ30は、燃料タンク10内の燃料を吸い込み、吸い込んだ燃料を吐出パイプ(図示せず)からエンジンに向けて吐出する。
図2は、支持パイプ22の構成を示す図であり、(a)は側面図、(b)は側面断面図、(c)が係合リング50の底面図である。
【0015】
支持パイプ22の本体40は、中心に中空部42を有する中空円筒状であり、フランジ部16から下方に向かって伸び、中空部42の下端が開放されている。
【0016】
支持パイプ22の下端には、径方向外側に広がる鍔部44が形成されており、この鍔部44の上側が径方向に凹んだ細径部46となっている。そして、この細径部46にハウジング24に設けられた係合リング50が嵌め込まれる。すなわち、細径部46の下端に鍔部44の上面が位置して、嵌合した係合リング50に掛かる下向きの荷重を支えるようになっている。
【0017】
細径部46の上側は、テーパ状に徐々に径が大きくなっており、係合リング50が、細径部46の周囲に収められる。
【0018】
また、
図2(c)に示されるように、係合リング50は、ハウジング24の外壁に基部52が一体化されており、この基部52から水平方向に突出形成されており、基部52の反対側に切れ目としての間隙54を有する。従って、係合リング50は間隙54により拡幅可能であり、係合リング50を広げながら、支持パイプ22の細径部46の周囲に嵌合することができる。
【0019】
そして、支持パイプ22の中空部42には、金属製の補強ピン60が挿入されている。補強ピン60は、円板状の頭部60aと円筒状の胴部60bとからなり、胴部60bが中空部42内に挿入される。補強ピン60は、支持パイプ22に接着剤などによって固定されてもよいし、キー溝などを設けて係合させてもよい。
【0020】
ここで、フランジ部16および支持パイプ22は、一体の樹脂(ポリアセタール)成型材で構成するとよく、補強ピン60はステンレス製とすることが好適である。
【0021】
このように、本実施形態によれば、支持パイプ22の中空部42に、金属製の補強ピン60を挿入したため、衝突時における燃料ポンプ30からの大きな荷重を補強ピン60が受けることができ、支持パイプ22の破損を防止できる。
【0022】
また、本実施形態は、支持パイプ22とは別部材である補強ピン60を支持パイプ22に挿入する構成であり、支持パイプ22を含むフランジ部16などは補強ピン60なしでもそのまま使用できる。すなわち、補強ピン60なしで使用することもできるし、強度を向上したい場合に補強ピン60を挿入することもできる。さらに、補強ピン60は、別に製造しておき、後から支持パイプ22の中空部42内に挿入すればよいので、その作業は容易である。
【0023】
支持パイプ22の強度を向上するために、パイプを中実にしたりすることも考えられるが、支持パイプ22を樹脂成型で形成する場合、パイプ構造の方が製作しやすく優れている。補強ピン60によれば、このような長所を生かしつつ支持パイプ22の強度を向上できる。
【0024】
図3は、補強ピン60の胴部60bに径方向に広がる膨出部62を設け、中空部42の対応する位置に対応するリング状の凹部を設けて両者を固定する例を示してある。なお、
図3において膨出部62はその位置を明確に示すために膨出幅を誇張して示してある。実際には、径方向の膨出量は僅かであり、補強ピン60を支持パイプ22の中空部42に押し込み挿入できる大きさに設定されている。
【0025】
図3(a)は、補強ピン60の胴部60bの先端側に膨出部62を設けた例、
図3(b)は、補強ピン60の胴部60bの中間部に膨出部62を設けた例、
図3(c)は、補強ピン60の胴部60bの下端部(頭部60a側)に膨出部62を設けた例、
図3(d)は、補強ピン60の胴部60bの中間部と下端部の2か所に膨出部62を設けた例、
図3(e)は、補強ピン60の胴部60bの先端側と下端部の2か所に膨出部62を設けた例を示す。
【0026】
このように、膨出部62を設けることにより、支持パイプ22と補強ピン60とを固定することができる。特に、膨出部62を設けることによって、支持パイプ22と補強ピン60との相対移動に対する抵抗を大きくすることができ、これによって支持パイプ22を確実に保護してその破損を防止できる。
【0027】
図3(d)、
図3(e)の構成によれば、膨出部62は、支持パイプ22の下端部と、中間部の2か所に対応する位置に設けられる。このように、2か所の膨出部62の形成によって、強度を効果的に上昇できる。特に、支持パイプ22は、上端を支点として揺れるので、下部と中間を抑えるのが効果的であり、また膨出部62を2つ設ける場合、本実施形態のように、両者を少し離すことが効果的である。
【0028】
なお、補強ピン60は、支持パイプ22の中空部42の径より若干大きくして、これを押し込んで固定するとよい。
【符号の説明】
【0029】
10 燃料タンク、12 上壁、14 開口、16 フランジ部、20 燃料ポンプ、22 支持パイプ、24 ハウジング、28 連結材、30 燃料ポンプ、40 本体、42 中空部、44 鍔部、46 細径部、50 係合リング、52 基部、54 間隙、60 補強ピン、60a 頭部、60b 胴部、62 膨出部。