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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】織機の筬打ち装置
(51)【国際特許分類】
   D03D 49/60 20060101AFI20240814BHJP
【FI】
D03D49/60
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020179826
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070651
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】名木 啓一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 大吾
(72)【発明者】
【氏名】田村 公一
(72)【発明者】
【氏名】山 和也
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-336669(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102936786(CN,A)
【文献】中国実用新案第207582060(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 49/60-49/62
D03D 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筬が取り付けられるスレーを複数のスレーソードによって支持するロッキングシャフトであって、織機における左右のサイドフレームのそれぞれに設けられて揺動駆動される一対の支持軸に連結されることで前記支持軸間において架設されると共に前記サイドフレーム間に架設された梁材上に設けられた支持体に対し軸受を介して支持されるロッキングシャフトを含み、前記ロッキングシャフトが、軸線方向に分割可能な複数の軸構成部材を連結して構成されると共に、揺動中心から反筬側に離間して設けられるバランス部を有するように構成された織機の筬打ち装置において、
複数の前記軸構成部材は、それぞれが前記バランス部を有すると共に、両側部が連結のための連結部である第1の軸部材及び第2の軸部材から成り、
前記第1の軸部材は、両側部が軸状に形成された軸部を有する軸連結部であると共に、両前記軸連結部とその両前記軸連結部間に位置する前記バランス部とが一体に形成された構成となっており、
前記第2の軸部材は、両側部における一方が孔部を有する孔連結部であると共に、他方が孔部を有する孔連結部又は軸状に形成された軸部を有する軸連結部であるように形成されており、
前記ロッキングシャフトは、両端の前記軸構成部材が前記第1の軸部材であると共に、隣り合う2つの前記軸構成部材の少なくとも一方が前記第2の軸部材であって、隣り合う2つの前記軸構成部材がその一方の前記第2の軸部材における前記孔連結部の前記孔部に対し他方の前記軸構成部材である前記第1の軸部材又は前記第2の軸部材における前記軸連結部の前記軸部を嵌め合わせた状態で連結されるように構成されており、
前記ロッキングシャフトは、両端の前記第1の軸部材において、その一方の前記軸連結部における前記軸部で前記支持軸に連結されると共に、他方の前記軸連結部における前記軸部で前記支持体に支持されており、
前記ロッキングシャフトにおける両端の前記第1の軸部材において、前記他方の前記軸連結部の前記軸部は、前記支持体に支持される部分よりも前記バランス部側の部分の軸径が前記支持体に支持される部分の軸径よりも大きく形成されて成る段部を有している
ことを特徴とする織機の筬打ち装置。
【請求項2】
前記第1の軸部材における前記バランス部及び/又は前記第2の軸部材における前記バランス部は、前記軸線方向における断面形状が円形状であるように形成されると共に、前記軸線方向に見て前記軸連結部における前記軸部又は前記孔連結部における前記孔部の存在範囲と重複する位置に位置している
ことを特徴とする請求項1に記載の織機の筬打ち装置。
【請求項3】
前記スレーソードは、前記軸線方向に関し、各前記軸構成部材における前記バランス部の存在範囲内の位置で、各前記軸構成部材に支持されるかたちで設けられる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の織機の筬打ち装置。
【請求項4】
前記ロッキングシャフトがカップリング部材を介して一対の前記支持軸に連結されており、
前記カップリング部材は、前記揺動中心から反筬側に離間して設けられるバランス部を有し、
前記スレーソードは、前記軸線方向における前記カップリング部材の前記バランス部の存在範囲内においても、前記カップリング部材に支持されるかたちで設けられている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の織機の筬打ち装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筬が取り付けられるスレーを複数のスレーソードを介して支持するロッキングシャフトであって、織機における左右のサイドフレームのそれぞれに設けられて揺動駆動される一対の支持軸に連結されることで支持軸間において架設されると共にサイドフレーム間に架設された梁材上に設けられた支持体に対し軸受を介して支持されるロッキングシャフトを含み、該ロッキングシャフトが、軸線方向に分割可能な複数の軸構成部材を連結して構成されると共に、揺動中心から反筬側に離間して設けられるバランス部を有するように構成された織機の筬打ち装置に関する。
【背景技術】
【0002】
織機は、主軸の回転に連動して揺動駆動される一対の支持軸を有している。なお、その支持軸は、織機における左右のサイドフレームのそれぞれに設けられると共に、その一端部がそれぞれのサイドフレームから織幅方向における内側へ突出するかたちで設けられている。そして、その両支持軸には、筬打ち装置におけるロッキングシャフトが連結されている。それにより、ロッキングシャフトは、一対の支持軸間で架設された状態となっている。
【0003】
また、筬打ち装置は、そのロッキングシャフトに加え、ロッキングシャフト上においてその軸線方向に離間して設けられる複数のスレーソード、スレーソードに取り付けられるスレー、及びそのスレーに取り付けられる筬を有しており、筬がスレー及びスレーソードを介してロッキングシャフトに支持されるように構成されている。すなわち、筬打ち装置は、そのようなロッキングシャフト、スレーソード、スレー及び筬から成る組立体を有している。そして、その筬打ち装置においては、一対の支持軸が揺動駆動されることで、その組立体がロッキングシャフトの軸心を揺動中心として揺動駆動され、それによって筬打ち動作が実行される。
【0004】
なお、筬打ち装置における前記組立体においては、スレー及び筬は、前記揺動中心から離間した位置に存在している。そのため、その前記組立体の重心は、前記揺動中心よりも筬側に位置することとなる。そこで、筬打ち装置においては、その重心の位置を前記揺動中心に近づけるべく、ロッキングシャフトを、前記揺動中心から反筬側に離間した位置に設けられるバランス部を有するように構成するのが一般的となっている。
【0005】
そのような筬打ち装置として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。その特許文献1に開示された筬打ち装置(以下、「従来装置」と言う。)において、ロッキングシャフトは、複数の軸構成部材から成っており、それらを軸線方向において連結して構成されている。
【0006】
具体的には、ロッキングシャフトは、それぞれが軸構成部材である、軸線方向に互いに離間して設けられる4つのロッキング軸部(第2ロッキングシャフト、第3ロッキングシャフト)、それらのうちの隣り合う2つのロッキング軸部の間に設けられるバランス軸部(第1バランスシャフト、第2バランスシャフト)、及びロッキング軸部とバランス軸部とを連結する連結部材(第1連結装置、第2連結装置)から成っている。そして、そのロッキングシャフトは、そのバランス軸部から成るバランス部であって、揺動中心となるロッキング軸部の軸心から離間した位置に設けられるバランス部を有している。
【0007】
また、ロッキング軸部及びバランス軸部は、その両側部が軸形状を成すように形成されている。そして、連結部材は、ロッキング軸部の側部及びバランス軸部の側部をそれぞれ受け入れ可能な連結孔を2つ有している。その上で、ロッキングシャフトは、連結部材における一方の連結孔にロッキング軸部の側部を嵌め合わせると共に他方の連結孔にバランス軸部の側部を嵌め合わせるかたちで、各ロッキング軸部と各バランス軸部とを軸線方向に一体的に連結して構成されている。
【0008】
また、そのように構成されたロッキングシャフトは、両端のロッキング軸部(第2ロッキングシャフト)において、左右のサイドフレームに設けられた一対の支持軸(第1ロッキングシャフト)に連結されると共に、その両端のロッキング軸部よりも内側に位置するロッキング軸部(第3ロッキングシャフト)において、サイドフレーム間に架設された梁材に支持された支持体(中間支持装置)によって軸受を介して回動可能に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2005-344223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前記した従来装置では、ロッキングシャフト及びそのロッキングシャフトを支持するための構成が前記のようなものであるため、前述の筬打ち動作のためにロッキングシャフトが揺動駆動されるのに伴い、支持体における軸受に過剰な負荷が掛かり、軸受が破損するといった問題が発生する場合がある。
【0011】
詳しくは、従来装置では、ロッキングシャフトは、前述のように、両端に位置するロッキング軸部が各サイドフレームにおける支持軸に連結されると共に、その支持軸に連結されるロッキング軸部とは別のロッキング軸部において支持体に支持されることで、織機上において支持されている。その上で、その支持軸に連結(支持)されるロッキング軸部と支持体に支持されるロッキング軸部とが、それぞれに連結される連結部材、及びバランス軸部を介して連結されている。
【0012】
そのように、従来装置におけるロッキングシャフトでは、隣り合う2つのロッキング軸部とそれらを連結する連結部材及びバランス軸部とがそれぞれ別部材であって、それらが組み付けられてロッキングシャフトを構成していることから、その組み付け精度等によっては、その隣り合う2つのロッキング軸部の軸心が互いにズレた状態で、その組み付けが成される場合がある。そのため、前記のように織機上においてロッキングシャフトが支持された状態で、支持軸に連結されるロッキング軸部の軸心と支持体に支持されるロッキング軸部の軸心とがズレた状態となってしまう場合がある。
【0013】
そして、そのように両ロッキング軸部の軸心がズレた状態となっていると、支持体で支持されるロッキング軸部は、その軸心が揺動中心からズレたかたちで軸受により支持された状態となる。そのため、支持軸によってロッキングシャフトが揺動駆動されると、支持軸に連結されるロッキング軸部は、支持軸の軸心を中心に揺動されるが、支持体で支持されるロッキング軸部は、その揺動中心から偏心した位置で支持されているため、その揺動中心周りに回動しようとする状態となる。その結果、支持体における軸受に過剰な負荷が掛かることとなり、軸受が破損してしまう場合がある。
【0014】
そこで、本発明は、ロッキングシャフトの揺動に伴って前記のように支持体の軸受が破損してしまうのを可及的に防止することができる織機の筬打ち装置の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成すべく、本発明は、前述のような織機の筬打ち装置において、複数の軸構成部材が、バランス部を有すると共に両側部が隣接する軸構成部材との連結のための連結部である第1の軸部材及び第2の軸部材から成り、第1の軸部材が、両側部が軸状に形成された軸部を有する軸連結部であると共に両軸連結部とその両軸連結部間に位置するバランス部とが一体に形成された構成となっており、第2の軸部材が、両側部における一方が孔部を有する孔連結部であると共に他方が孔部を有する孔連結部又は軸状に形成された軸部を有する軸連結部であるように形成されることを特徴とする。さらに、本発明は、ロッキングシャフトが、両端の軸構成部材が第1の軸部材であると共に隣り合う2つの軸構成部材の少なくとも一方が第2の軸部材であり、隣り合う2つの軸構成部材がその一方の第2の軸部材における孔連結部の孔部に対し他方の軸構成部材である第1の軸部材又は第2の軸部材における軸連結部の軸部を嵌め合わせた状態で連結されるように構成されており、そのロッキングシャフトが、両端の第1の軸部材において、その一方の軸連結部における軸部で支持軸に連結されると共に、他方の軸連結部における軸部で支持体に支持されることを特徴とする。加えて、本発明は、ロッキングシャフトにおける両端の第1の軸部材において、他方の軸連結部の軸部が、支持体に支持される部分よりもバランス部側の部分の軸径が支持体に支持される部分の軸径よりも大きく形成されて成る段部を有していることを特徴とする。
【0016】
また、そのような本発明による織機の筬打ち装置において、第1の軸部材におけるバランス部及び/又は第2の軸部材におけるバランス部が、軸線方向における断面形状が円形状であるように形成されると共に、軸線方向に見て軸連結部における軸部又は孔連結部における孔部の存在範囲と重複する位置に位置するようにしても良い。
【0017】
さらに、本発明において、スレーソードは、軸線方向に関し、各軸構成部材におけるバランス部の存在範囲内の位置で、各軸構成部材に支持されるかたちで設けられても良い。また、ロッキングシャフトがカップリング部材を介して一対の支持軸に連結され、カップリング部材が揺動中心から反筬側に離間して設けられるバランス部を有し、スレーソードが、軸線方向におけるカップリング部材のバランス部の存在範囲内においても、カップリング部材に支持されるかたちで設けられていても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明による織機の筬打ち装置によれば、ロッキングシャフトにおける両端の軸構成部材が、支持軸に連結される軸部を有する軸連結部、支持体に支持される軸部を有する軸連結部、及び両軸連結部間に位置するバランス部を含み、その両軸連結部及びバランス部を一体に形成して構成された前記の第1の軸部材となっている。すなわち、その第1の軸部材は、2つの軸連結部(軸部)を含む単一の部材として形成されており、前記した従来装置のように2つの軸部(ロッキング軸部)を別部材(バランス部、連結部材)を介して連結する構成と比べ、両軸部の軸心を軸線方向に見て一致した状態とすることが実現し易い構成となっている。
【0019】
それにより、そのロッキングシャフトは、織機上において支持された状態で、支持軸に連結される軸部の軸心と支持体に支持される軸部の軸心とが軸線方向に見て一致する(ズレた状態となることが無い)ように構成することを容易に実現し得るものとなる。したがって、ロッキングシャフトがそのように構成された本発明による織機の筬打ち装置によれば、前述の筬打ち動作のためにロッキングシャフトが揺動駆動されても、前記した従来装置の場合のような軸心のズレに起因する負荷が支持体の軸受に掛かることが無い。そして、その結果として、そのような負荷が原因となって発生する支持体の軸受の破損が可及的に防止される。
【0020】
さらに、第1の軸部材をそのように構成するものとすれば、両軸連結部間に位置するバランス部が揺動中心に対し平行を為す構成とすることも容易に実現し易くなる。それにより、ロッキングシャフトにおける第1の軸部材の部分のバランス状態を軸線方向に亘ってより均一なものとすることができる。
【0021】
また、本発明による織機の筬打ち装置において、第1の軸部材におけるバランス部及び/又は第2の軸部材におけるバランス部を、軸線方向における断面形状が円形状となるように構成するものとすれば、例えば、断面形状が楕円形状である場合と比べ、前述の筬打ち動作に伴うバランス部による慣性をより小さくすることができる。これにより、織機の高速運転への対応性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明による織機の筬打ち装置において、ロッキングシャフトにおける両端の第1の軸部材を、支持体に支持される軸連結部の軸部が前記のような段部を有するように構成することで、前述の筬打ち動作に伴うロッキングシャフトの撓みが軽減される。
【0023】
より詳しくは、前述の筬打ち動作に伴い、スレー及びスレー上に設けられた筬等の慣性や筬打ち時の衝撃が、スレーソードを介し、荷重としてロッキングシャフトに作用する。そして、その荷重が、ロッキングシャフトを撓ませようとする力としてロッキングシャフトに作用することとなる。
【0024】
それに対し、ロッキングシャフトにおける両端の第1の軸部材を前記のように構成することで、その第1の軸部材における前記段部の端面を支持体の側面に接触させたかたちで第1の軸部材が支持体に支持された状態とすることができる。それにより、ロッキングシャフトに前記荷重が作用したとしても、その前記荷重による撓み方向の力が前記段部における支持体との接触面において支持体に受けられるため、結果としてロッキングシャフトの撓みが軽減されることとなる。なお、そのようにロッキングシャフトの撓みが軽減される結果として、筬打ち装置における筬打ち時の振動が軽減され、織機の高速運転への対応性が向上する。
【0025】
また、本発明による織機の筬打ち装置において、スレーソードが、軸線方向に関し、各軸構成部材におけるバランス部の存在範囲内の位置で、各軸構成部材に支持されるかたちで設けられるものとすれば、前記荷重がロッキングシャフトに作用したときの筬打ち装置のバランス状態の悪化が軽減される。
【0026】
詳しくは、前述のように前記荷重は、スレーソードを介してロッキングシャフトに作用する。なお、その前記荷重は、特にそのスレーソードが設けられる部分においてバランス状態を悪くする方向に作用する。そして、そのスレーソードが設けられる部分のバランス状態が悪くなってしまうと、前記組立体全体のバランス状態も悪くなる。それに対し、スレーソードが前記のように設けられるものとする、すなわち、軸線方向に関し各軸構成部材においてスレーソードが設けられる位置にバランス部が存在するような構成とすることで、前記荷重が掛かる部分に前記荷重が作用したときのその部分におけるバランス状態の悪化が軽減される。そして、その結果として、前記荷重が作用することに起因する筬打ち装置(前記組立体)全体のバランス状態の悪化が軽減される。
【0027】
また、本発明による織機の筬打ち装置において、ロッキングシャフトと支持軸とを連結するカップリング部材がバランス部を有すると共に、スレーソードが軸線方向におけるカップリング部材のバランス部の存在範囲内にも設けられる構成とすることで、前記した筬打ち時にスレーソードを介して作用する前記荷重が、ロッキングシャフトに対してのみでなくカップリング部材においても受けられることとなる。そして、その結果として、前述のような前記荷重に起因するロッキングシャフトの撓みがより軽減されると共に、バランス状態の悪化もより軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係る一実施形態における織機の正面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図2のB-B線断面図である。
図5図2のC-C線断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下では、図1図5に基づき、本発明が適用された織機の一実施形態(実施例)について説明する。
【0030】
織機は、製織において緯入れされた緯糸を織布の織前に対し筬打ちするための筬3を含む筬打ち装置1を備えている。その筬打ち装置1は、筬3がスレー5上に取り付けられると共に、そのスレー5が複数のスレーソード7を介してロッキングシャフト10に支持された構成となっている。そして、筬打ち装置1は、そのロッキングシャフト10において、織機における左右のサイドフレーム50、50のそれぞれに設けられた支持軸40、40により、織機上において支持されている。
【0031】
その各支持軸40は、各サイドフレーム50において、回転可能に支持されている。そして、その一対の支持軸40、40は、それぞれロッキングシャフト10に対しカップリング部材60、60を介して連結されている。その上で、織機は、その一対の支持軸40、40が主軸(図示略)によって揺動駆動されるように構成されている。そして、織機においては、そのように支持軸40が揺動駆動されることで、ロッキングシャフト10が揺動駆動され、前記の筬打ちが実行される。
【0032】
また、織機においては、サイドフレーム50、50間に梁材52が架設されており、ロッキングシャフト10は、その梁材52上に取り付けられた支持体54によっても支持されている。なお、支持体54は、軸受58aを介してロッキングシャフト10を回動可能に支持するように構成されている。そして、本実施例は、その支持体54が織幅方向に互いに離間して2つ設けられた例となっている。
【0033】
そのような織機における筬打ち装置1において、本発明では、ロッキングシャフトは、揺動中心から反筬側に離間して設けられるバランス部をそれぞれが有する複数の軸構成部材であって第1、第2の軸部材から成る複数の軸構成部材を連結するかたちで構成される。その上で、本発明では、そのロッキングシャフトは、両端に位置する軸構成部材が第1の軸部材であるように構成される。そして、本実施例では、ロッキングシャフト10は、両端の第1の軸部材とその両第1の軸部材間に位置する1つの第2の軸部材とで構成されている。そのようなロッキングシャフト10について、詳しくは、以下の通りである。
【0034】
ロッキングシャフト10は、前記のように第1の軸部材20及び第2の軸部材30の2種類の軸構成部材から成っており、且つ、両端の軸構成部材が第1の軸部材20であるように構成されている。したがって、ロッキングシャフト10は、その第1の軸部材20における両側部の一方において、前記した支持軸40に連結されるかたちで、支持軸40によって支持されている。言い換えれば、第1の軸部材20における両側部の一方は、支持軸40と連結される連結部22となっている。また、そのロッキングシャフト10において、その両端の第1の軸部材20、20間に位置する軸構成部材は、前記のように1つの第2の軸部材30のみとなっている。したがって、第1の軸部材20の両側部の他方は、第2の軸部材30と連結される連結部24となっている。
【0035】
そのような第1の軸部材20について、第1の軸部材20は、その両側の連結部22、24間にバランス部26を有している。また、その連結部22、24は、前記のように支持軸40又は第2の軸部材30と連結される軸形状の軸部22a、24aを有している。すなわち、その両連結部22、24は、本発明で言う軸連結部となっている。そして、第1の軸部材20においては、その両軸連結部22、24は、軸部22a、24aの軸線方向に離間すると共に、その軸線方向に見て、それぞれの軸部22a、24aの軸心を一致させるかたちで存在している。
【0036】
また、支持軸40と連結される一方の軸連結部22において、軸部22aは、その径(外径)が支持軸40の径と略同じであるように形成されている。一方で、第2の軸部材30と連結される他方の軸連結部24において、軸部24aは、そのバランス部26側となる一端側の部分の径が他端側の部分の径と比べて大きくなっているように形成されている。言い換えれば、その軸部24aは、その一端側(バランス部26側)の部分の軸径を他端側の部分の軸径よりも大きくすることで形成される段部24a1を有している。因みに、その軸部24aにおいて、その一端側の部分は、その径が一方の軸連結部22の軸部22aの径と略同じであるように形成されている。
【0037】
また、それら軸連結部22、24の間に位置するバランス部26は、本実施例では、断面形状が円形(軸状)を成すように形成されている。そして、そのバランス部26の径は、軸部22aの径と略同じとされている。なお、第1の軸部材20においては、バランス部26は、その軸線が軸部22a、24aの軸線と平行を成すと共に、その軸線方向に見て軸心が両側の軸連結部22、24における軸部22a、24aの軸心に対し偏心した位置に存在している。また、そのバランス部26の偏心量は、軸部22aの半径と同程度となっている。したがって、第1の軸部材20においては、前記軸線方向に見て、バランス部26の存在範囲と軸部22a、24aの存在範囲とが重複している。
【0038】
その上で、第1の軸部材20は、両軸連結部22、24とバランス部26とが直接的に連結された構成となっている。したがって、両軸連結部22、24は、軸部22a、24aに対するバランス部26側で軸部22a、24aに連続する中間部22b、24bであって、前記のように軸部22a、24aに対し偏心するバランス部26にも連続するように形成された中間部22b、24bを有している。
【0039】
そして、そのように両軸連結部22、24が中間部22b、24bにおいてバランス部26に直接的に連結される第1の軸部材20は、両軸連結部22、24間が主としてバランス部26のみで構成され、全体としてクランク形状を成すようなかたちとなっている。その上で、第1の軸部材20は、両軸連結部22、24における軸部22a、24a及び中間部22b、24bとバランス部26とが一体に形成された構成となっている。すなわち、第1の軸部材20は、前記のような軸連結部22、24及びバランス部26を有する単一の部材として形成されている。
【0040】
また、第2の軸部材30について、第2の軸部材30は、前記したようにロッキングシャフト10における両端の第1の軸部材20、20のそれぞれに対して連結される。したがって、その第2の軸部材30の両側部は、第1の軸部材20、20と連結される連結部32、32となっている。そして、第2の軸部材30は、その両連結部32、32間にバランス部36を有するように構成されている。なお、そのバランス部36は、第1の軸部材20のバランス部26と同じく、断面形状が円形(軸状)を成すように形成されている。さらに、そのバランス部36の径は、第1の軸部材20におけるバランス部26の径と略同じとされている。
【0041】
また、その第2の軸部材30における両連結部32、32について、第1の軸部材20における連結部が前記したように軸連結部であることから、その両連結部32、32は、前記した第1の軸部材20における他方の軸連結部24の軸部24aを受け入れるものとなっており、その受け入れのための孔部32aが設けられるように構成されている。すなわち、その両連結部32、32は、本発明で言う孔連結部となっている。
【0042】
なお、その各孔連結部32は、本実施例では、バランス部36に連続する受け部33と、受け部33に組み付けられる蓋部34との2つの部分で構成されている。そのように構成される各孔連結部32について、受け部33は、ブロック状を成しており、蓋部34が組み付けられる端面(被組付面)を有している。一方、蓋部34は、板状を成しており、その板厚方向における一方の端面が受け部33に対する組付面となっている。
【0043】
その上で、受け部33及び蓋部34には、そのそれぞれの被組付面及び組付面に開口する溝であって、受け部33と蓋部34とが組み合わされた状態で孔部32aが構成されるような円弧状の溝(円弧溝)33a、34aが形成されている。なお、その両円弧溝33a、34aは、受け部33及び蓋部34の幅方向(溝の延在方向)における全体に亘って形成されている。また、その両円弧溝33a、34aにおける円弧面の曲率半径は、第1の軸部材20における他方の軸連結部24の軸部24aにおける他端側(バランス部26とは反対側)の部分の半径と略一致したものとなっている。但し、その両円弧溝33a、34aの円弧角度は、180°よりも小さい角度となっている。
【0044】
また、受け部33は、前記被組付面と直交する方向(高さ方向)における前記被組付面とは反対側の端面が、円弧溝33aの延在方向(前記幅方向)に見て、円弧形状を成すように形成されている。すなわち、その反対側の端面は、円弧面となっている。なお、その円弧面の曲率半径は、バランス部36の半径と略同じとなっている。
【0045】
そして、そのように形成された受け部33における前記高さ方向の寸法は、バランス部36の直径と略同じとなっている。また、その受け部33及び受け部33に組み合わされる蓋部34の前記幅方向における寸法は、前記した第1の軸部材20における他方の軸連結部24の軸部24aにおける(段部24a1よりも)他端側の部分の長さ寸法よりも小さくなっている。
【0046】
その上で、第2の軸部材30において、両孔連結部32、32における受け部33、33は、前記幅方向をバランス部36の軸線方向に一致させた状態で、バランス部36の両側に存在している。但し、バランス部36と両受け部33、33とは、バランス部36の軸線方向に見て、バランス部36の軸心と両受け部33、33における円弧面の円弧中心とが略一致した状態となっている。したがって、第2の軸部材30は、バランス部36の軸線方向に見て、受け部33の円弧面がバランス部36の周面の一部と一致し、両受け部33、33の存在範囲とバランス部36の存在範囲とが重複する構成となっている。
【0047】
そして、そのような受け部33に対し蓋部34が組み合わされることで、孔連結部32が構成されると共に、受け部33及び蓋部34のそれぞれに形成された両円弧溝33a、34aにより孔連結部32における孔部32aが形成される。なお、その受け部33に対する蓋部34の組み付けは、ネジ部材35を用いて行われる。より詳しくは、各受け部33には、前記被組付面(円弧溝33aの部分は除く)に開口する雌ネジ孔33bが複数形成されている。一方、各蓋部34には、前記組付面における受け部33の雌ネジ孔33bに対応する位置において、板厚方向に貫通する貫通孔34bが形成されている。その上で、受け部33に対する蓋部34の組み付けは、蓋部34の貫通孔34bに挿通されたネジ部材35を受け部33の雌ネジ孔33bに螺挿するかたちで行われる。
【0048】
そして、そのように構成された第2の軸部材30においては、バランス部36は、前記のようにして形成される孔連結部32における孔部32aの中心線に対しその軸線が平行を成すと共に、軸線方向に見てその軸心が孔部32aの中心から偏心した位置に存在している。また、前記のように受け部33の前記高さ方向の寸法とバランス部36の直径とが略一致していることから、前記軸線方向に見て、バランス部36の存在範囲と孔部32aの存在範囲とはその一部において重複している。その上で、その第2の軸部材30においては、両孔連結部32、32における受け部33、33とバランス部36とが一体に形成されている。すなわち、第2の軸部材30においては、両受け部33、33及びバランス部36は単一の部材に含まれるかたちで形成されている。
【0049】
そして、本実施例のロッキングシャフト10は、第2の軸部材30における両孔連結部32、32のそれぞれに対し第1の軸部材20における他方の軸連結部24の軸部24aが連結されるかたちで構成される。なお、その第2の軸部材30における孔連結部32と第1の軸部材20における他方の軸連結部24における軸部24aとの連結は、前記のように受け部33に対し蓋部34を組み付けることによって形成される第2の軸部材30における孔部32aに対し第1の軸部材20における軸部24aを挿入し、受け部33に対し蓋部34を組み付けるためのネジ部材35を締め込むことで、受け部33と蓋部34とで軸部24aを締め付け固定するかたちで行われる。
【0050】
そして、そのような連結により、ロッキングシャフト10は、両端の第1の軸部材20、20が第2の軸部材30によって連結されると共に、第1の軸部材20における一方の軸連結部22の軸部22aが軸線方向における最も外側に位置するように構成されたものとなる。すなわち、ロッキングシャフト10において、その両端の第1の軸部材20、20は、前記軸線方向と直交する方向に見て、第2の軸部材30に対して左右対称な配置で設けられている。
【0051】
また、そのロッキングシャフト10には、前記したように筬3が取り付けられるスレー5を支持するための複数のスレーソード7が取り付けられている。なお、本実施例では、スレーソード7は、各第1の軸部材20及び第2の軸部材30のそれぞれに対し2つずつ取り付けられるかたちで設けられている。また、その各軸構成部材20、30におけるスレーソード7の取り付け位置は、それぞれのバランス部26、36の両端部の位置(連結部と隣接する位置)となっている。
【0052】
さらに、本実施例のロッキングシャフト10は、スレーソード7を取り付けるための取付座12であって、前記の各軸構成部材20、30におけるバランス部26、36の両端部の位置に設けられた取付座12を有している。そして、各スレーソード7は、その取付座12に取り付けられるかたちで、ロッキングシャフト10に対し取り付けられている。
【0053】
その上で、ロッキングシャフト10は、その両端の第1の軸部材20、20における一方の軸連結部22、22の軸部22a、22aにおいて、前記した一対の支持軸40、40に対しカップリング部材60、60を介して連結されている。
【0054】
その各カップリング部材60は、前記した軸部22a及び支持軸40が挿通される貫通孔60aを有する円筒状の部分(円筒部62)を主体とした部材である。但し、そのカップリング部材60における円筒部62は、その円周方向における一部分が半径方向に突出する部分及びスリ割り溝を含む割締め構造62aを成すように形成されている。そして、カップリング部材60は、円筒部62に軸部22a及び支持軸40が挿通された状態で割締め構造62aにおけるネジ部材を締め込むことで、軸部22aと支持軸40とを締め付け固定して連結するものとなっている。
【0055】
また、本実施例の筬打ち装置1においては、各カップリング部材60も、バランス部64を有するように構成されている。そのバランス部64は、円筒部62における外周面上の一部分(割締め構造62aが設けられる部分とは異なる部分)において、円筒部62から半径方向に膨出するように形成されている。
【0056】
但し、そのバランス部64は、円筒部62の軸線方向に見て、その周面が円弧形状を成すように形成されている。また、そのバランス部64の外周面(円弧面)の曲率半径は、各軸構成部材20、30におけるバランス部26、36の半径と略一致したものとされている。さらに、そのバランス部64は、カップリング部材60により支持軸40とロッキングシャフト10(第1の軸部材20における軸部22a)とを連結した状態において、前記軸線方向に見て、その外周面の曲率中心がバランス部26、36の中心と一致するように形成されている。したがって、そのような状態において、バランス部64は、前記軸線方向に見て、各軸構成部材20、30におけるバランス部26、36の重複する部分と存在範囲が略一致したものとなる。
【0057】
その上で、筬打ち装置1においては、前記したスレーソード7と同じくスレー5を支持するスレーソード66が、前記軸線方向におけるカップリング部材60のバランス部64の存在範囲内において、各カップリング部材60に支持されるかたちで設けられている。但し、各カップリング部材60においてスレーソード66が支持される位置は、前記軸線方向に見て、円筒部62の外周面上におけるバランス部64とは反対側の位置となっている。そして、本実施例では、そのスレーソード66は、円筒部62と一体に形成されている。
【0058】
また、筬打ち装置1において、ロッキングシャフト10は、前記のように支持軸40に連結されることで一対の支持軸40、40間に架設された状態で、前述のように、両サイドフレーム50、50間に架設された梁材52上に設けられた支持体54によっても支持されている。その支持体54は、梁材52に取り付けられる基部56と、基部56上に設けられる軸支部58とで構成されている。また、その軸支部58内には、ロッキングシャフト10を支持するための軸受58aが内装されている。
【0059】
そして、本実施例では、各支持体54は、ロッキングシャフト10の両端の第1の軸部材20における軸部24a(軸部24aの他端側の部分)を支持するような位置に設けられている。但し、その位置は、支持体54が軸部24aを支持する状態において、その支持体54における軸受58aが軸部24aに形成された段部24a1に対し当接した状態となるような位置とされている。
【0060】
以上のように構成された本実施例の筬打ち装置1によれば、ロッキングシャフト10は、両端の軸構成部材が第1の軸部材20であるように構成されると共に、織機上においてその第1の軸部材20における前記した一方の軸連結部22の軸部22aで支持軸40に連結され、且つ他方の軸連結部24の軸部24aで支持体54に支持されるように設けられている。その上で、その両端の第1の軸部材20が、前記のような軸連結部22、24及びバランス部26を有する単一の部材として形成されている。すなわち、その第1の軸部材20は、両端の軸連結部22、24における両軸部22a、24aの軸心を軸線方向に見て一致した状態とすることが実現し易い構成となっている。
【0061】
したがって、そのロッキングシャフト10は、前記のように織機上において支持された状態で、その軸線方向に見て、支持体54に支持される軸部24aの軸心と支持軸40に連結される軸部22aの軸心とが一致した状態(前記両軸心がズレていない状態)を容易に実現し得るものとなっている。そして、その筬打ち装置1において、ロッキングシャフト10をそのように前記両軸心が一致するように構成されたものとすることで、筬打ち動作のためにロッキングシャフト10が揺動駆動されても、前記両軸心がズレている場合に生じる負荷が支持体54の軸受58aに掛かることが無い。それにより、その筬打ち装置1は、前記負荷が原因となって生じる支持体54の軸受58aの破損が発生し難いものとなっている。
【0062】
さらに、本実施例の筬打ち装置1では、第1の軸部材20及び第2の軸部材30は、それぞれのバランス部26、36の断面形状が円形状であるように形成されている。その上で、第1の軸部材20は、そのバランス部26の存在範囲が軸連結部22、24の軸部22a、24aの存在範囲と重複するように構成され、第2の軸部材30は、そのバランス部36の存在範囲が孔連結部32の孔部32aの存在範囲と重複するように構成されている。それにより、その第1の軸部材20及び第2の軸部材30で構成されたロッキングシャフト10は、断面形状が円形状のバランス部26、36が軸部22a、24a及び孔部32aに対し前記のように位置するものとなり、筬打ち動作に伴う揺動による慣性がより小さいものとなっている。
【0063】
より詳しくは、ロッキングシャフトにおいて、バランス部は、筬打ち装置におけるロッキングシャフト、スレーソード、スレー及び筬から成る組立体の重心をロッキングシャフトの揺動中心に近づけるために設けられるものである。そこで、バランス部を前記揺動中心からより離間して位置するように設けることで、重量の小さいバランス部で前記重心を前記揺動中心に近づけることができる。但し、その構成の場合、バランス部の揺動半径が大きくなるため、前記した筬打ち動作に伴うバランス部の揺動による慣性が非常に大きくなってしまう。
【0064】
そこで、本実施例の筬打ち装置1では、ロッキングシャフト10は、バランス部26、36の位置を前記揺動中心に近づける、具体的には、前記軸線方向に見て、バランス部26、36の存在範囲が軸連結部22、24における軸部22a、24aの存在範囲及び孔連結部32における孔部32aの存在範囲に対し重複するように構成されている。その上で、そのロッキングシャフト10においては、そのバランス部26、36の重量を前記重心が前記揺動中心に近づくようなものとしつつも、その重量増に起因する前記慣性の増加を可及的に軽減すべく、そのバランス部26、36の断面形状を円形状としている。それにより、そのロッキングシャフト10は、前記揺動による慣性がより小さいものとなっている。その結果として、その筬打ち装置1は、前記揺動に伴うロッキングシャフト10の慣性を可及的に軽減しつつ、前記重心が前記揺動中心に近づけられた構成となっている。
【0065】
また、筬打ち装置1においては、ロッキングシャフト10の各第1の軸部材20における支持体54に支持される軸部24aが前記のような段部24a1を有するように形成されている。それにより、筬打ち装置1は、筬打ち動作に伴うロッキングシャフト10の撓みが軽減されるものとなっている。詳しくは、ロッキングシャフトには、筬打ち時の衝撃等がスレーソードを介して荷重として作用する。そして、その荷重は、ロッキングシャフトを撓ませようとする力(撓み方向への力)として作用する。そこで、筬打ち装置1では、ロッキングシャフト10における各第1の軸部材20の軸部24aが、前記のような段部24a1を有するように形成されている。その上で、支持体54による軸部24aの支持が、軸受58aと段部24a1とが接した状態で行われている。それにより、前記荷重による撓み方向への力は、その軸受58aと段部24a1との接触部分において支持体54で受けられるため、前記荷重の作用に起因するロッキングシャフト10の撓みが軽減される。
【0066】
さらに、筬打ち装置1では、ロッキングシャフト10に設けられるスレーソード7が、前記軸線方向に関し、各軸構成部材20、30におけるバランス部26、36の存在範囲内の位置で各軸構成部材20、30に支持されるかたちで設けられている。すなわち、そのロッキングシャフト10は、各軸構成部材20、30においてスレーソード7が設けられる位置にバランス部26、36が存在するように構成されたものとなっている。そして、その構成によれば、前記荷重はスレーソードを介してロッキングシャフトに作用するが、その前記荷重が作用したことによるバランス状態の悪化が可及的に軽減される。
【0067】
また、筬打ち装置1では、支持軸40とロッキングシャフト10とを連結するカップリング部材60にもスレー5を支持するためのスレーソード66が設けられている。それにより、前記荷重が、ロッキングシャフト10に対してのみでなく、カップリング部材60においても受けられるものとなっている。その上で、筬打ち装置1は、そのカップリング部材60も前述のようなバランス部64を有するように構成されている。それにより、その筬打ち装置1では、前記荷重が作用することに起因するバランス状態の悪化がより軽減されるようになっている。
【0068】
以上では、本発明が適用された織機の筬打ち装置の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例において説明した構成に限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0069】
(1)ロッキングシャフトについて、本発明では、ロッキングシャフトを構成する両端の軸構成部材は第1の軸部材である。その上で、前記実施例では、ロッキングシャフト10は、その両端の第1の軸部材20、20が1つの第2の軸部材30で連結されるかたちで構成されている。すなわち、ロッキングシャフト10における両端の第1の軸部材20、20の間の部分が、1つの第2の軸部材30のみによって構成されている。しかし、本発明においては、ロッキングシャフトにおける両端の第1の軸部材間を構成する軸構成部材は、そのような1つの第2の軸部材には限らない。
【0070】
例えば、両端の第1の軸部材間に2つの第2の軸部材が存在するようにロッキングシャフトを構成することも可能である。但し、隣り合う2つの軸構成部材はその一方の軸構成部材の孔連結部(孔部)に対し他方の軸構成部材の軸連結部(軸部)を嵌め合わせるかたちで連結されることから、第2の軸部材が前記実施例のような構成の場合には、その2つの第2の軸部材は、その間に設けられる第1の軸部材で連結されることとなる。すなわち、その場合のロッキングシャフトは、両端の第1の軸部材を2つの第2の軸部材及び1つの第1の軸部材で連結するかたちで構成されたものとなる。
【0071】
(2)第2の軸部材について、前記実施例では、第2の軸部材30は、その両側部が孔連結部32、32であるように構成されている。しかし、本発明において、第2の軸部材は、その両側部の一方が孔連結部であり、他方が第1の軸部材の両側部(軸連結部)と同様の軸連結部であるように構成されても良い。
【0072】
なお、そのような軸連結部を有する第2の軸部材は、その軸連結部の軸部において、他の第2の軸部材の孔連結部(孔部)に連結されることとなる。したがって、そのような第2の軸部材をロッキングシャフトに用いる場合には、ロッキングシャフトは、2種類の第2の軸部材を含むこととなる。そして、その場合のロッキングシャフトは、例えば、両端の第1の軸部材を2種類の第2の軸部材で連結するかたちで構成されたものとなる。
【0073】
また、第2の軸部材において、その孔連結部は、前記実施例では、受け部33及び蓋部34の2つの部分で構成されている。しかし、本発明において、第2の軸部材における孔連結部は、単一のブロック状の部分から成り、そこに軸連結部の軸部が挿入可能な貫通孔(孔部)が形成されるかたちで構成されたものであっても良い。なお、その孔部に軸部が挿入された状態を固定するための構成としては、例えば、割締め構造等を用いれば良い。
【0074】
また、第2の軸部材は、連結部の一部又は全部とバランス部とが一体に形成されたものに限らず、連結部とバランス部とが別部材として形成され、それらが組み合わされて構成されたものであっても良い。そして、第2の軸部材における連結部自体の構成についても、前記実施例では孔連結部が2つの部分で構成されているが、その連結部の一方を軸連結部とする場合においても、その軸連結部を2以上の部分(部材)から成るように構成されたものとしても良い。例えば、その軸連結部を、前記実施例における孔連結部と同様に構成された部分、あるいは単一のブロック状の部分(部材)に孔部が形成されたものに対し、それらとは別部材として形成された軸部材を組み合わせて、その軸部材を軸部とするように構成しても良い。
【0075】
(3)各軸構成部材のバランス部について、前記実施例では、各軸構成部材20、30のバランス部26、36は、その断面形状が円形を成すように形成されている。しかし、本発明においては、バランス部は、その断面形状が円形以外の形状(例えば、楕円形)を成すように形成されていても良い。また、第1の軸部材のバランス部と第2の軸部材のバランス部とは、その断面形状が同じ形状を成していなくても良い。
【0076】
(4)第1の軸部材の軸連結部について、前記実施例では、第1の軸部材20の他方の軸連結部24は、その軸部24aに段部24a1を有しており、その段部24a1が支持体54の軸受58aに接した状態で支持されている。しかし、本発明においては、その軸部において支持体に支持される軸連結部は、軸部がそのような段部を有するように構成されたものには限らない。例えば、筬打ち動作に伴ってロッキングシャフトに作用する荷重による撓み方向への力が許容できる大きさである場合や、撓み方向への力を受けるための別の構成が設けられる場合には、前記のような軸部における段部は省略可能である。
【0077】
(5)スレーソードについて、前記実施例では、ロッキングシャフト10に設けられるスレーソード7は、各軸構成部材20、30に対しそれぞれ2つずつ取り付けられるかたちで設けられている。また、前記実施例では、ロッキングシャフト10を支持軸40に対し連結するためのカップリング部材60においてもスレーソード66が設けられている。しかし、本発明においては、スレーソードの数は、筬打ち装置において必要とされる適宜な数であれば良く、特に限定はされない。したがって、スレーソードは、その筬打ち装置において必要とされる数を踏まえた上で、適宜な位置に設けられれば良く、全ての軸構成部材に設けられるのには限らず、また、軸構成部材に設けられる数も2つには限らない。さらには、カップリング部材の位置におけるスレーソードも省略可能である。
【0078】
また、前記実施例では、スレーソード7は、前記組立体のバランス状態を考慮し、軸構成部材20、30におけるバランス部26、36の位置に設けられている。しかし、製織との関係で前記バランス状態が許容されるものであれば、軸構成部材におけるスレーソードの位置は、バランス部ではなく連結部の位置であっても良い。さらに、前記実施例では、前記のようにスレーソードがカップリング部材に設けられた上で、そのスレーソードに対応させるようにバランス部がカップリング部材に設けられているが、カップリング部材におけるそのバランス部も省略可能である。
【0079】
なお、前記実施例では、スレーソード7は、軸構成部材20、30とは別部材として形成されていて、軸構成部材20、30に取り付けるかたちで設けられている。また、カップリング部材60においては、スレーソード66は、そのカップリング部材60における円筒部62と一体に形成されている。しかし、本発明において、ロッキングシャフト(軸構成部材)の位置に設けられるスレーソードは、軸構成部材と一体に形成されていても良い。また、カップリング部材の位置にスレーソードが設けられる場合であっても、そのスレーソードは、カップリング部材とは別部材として形成された上で、カップリング部材に取り付けるかたちで設けられるものとしても良い。
【0080】
(6)ロッキングシャフトを支持する支持体について、前記実施例では、2つの支持体54が、ロッキングシャフト10の両端に位置する第1の軸部材20における軸部24aをそれぞれ支持するように設けられている。しかし、本発明においては、支持体は、軸連結部を有する軸構成部材がその両端の第1の軸部材以外にも含まれるようにロッキングシャフトが構成されている場合には、その両端の第1の軸部材の軸部を支持する2つの支持体に加えて、それ以外の軸構成部材の軸部を支持するようにも設けられても良い。
【0081】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 筬打ち装置
3 筬
5 スレー
7 スレーソード
10 ロッキングシャフト
12 取付座
20 第1の軸部材
22 連結部(一方の軸連結部)
22a 軸部
22b 中間部
24 連結部(他方の軸連結部)
24a 軸部
24a1 段部
24b 中間部
26 バランス部
30 第2の軸部材
32 連結部(孔連結部)
32a 孔部
33 受け部
33a 円弧溝
33b 雌ネジ孔
34 蓋部
34a 円弧溝
34b 貫通孔
35 ネジ部材
36 バランス部
40 支持軸
50 サイドフレーム
52 梁材
54 支持体
56 基部
58 軸支部
58a 軸受
60 カップリング部材
60a 貫通孔
62 円筒部
62a 割締め構造
64 バランス部
66 スレーソード
図1
図2
図3
図4
図5