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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】圧電共振デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/24 20060101AFI20240814BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
H03H9/24 B
B81B3/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020196675
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085154
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 優輝
(72)【発明者】
【氏名】林 亮太
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-009922(JP,A)
【文献】特開2012-244564(JP,A)
【文献】特開2017-079388(JP,A)
【文献】特開2006-344737(JP,A)
【文献】特開2019-114998(JP,A)
【文献】特開2015-170966(JP,A)
【文献】特開2011-176049(JP,A)
【文献】特開2017-007059(JP,A)
【文献】国際公開第2019/160051(WO,A1)
【文献】特開平10-190402(JP,A)
【文献】特開昭58-200620(JP,A)
【文献】特開2004-289296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/24
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面を有する基体と、
第2の面と、前記第2の面に面していない共振部とを有するMEMS素子と、
前記第1の面と前記第2の面との間に位置して前記第1の面と前記第2の面とを接着固定する接着部材と、
を備え、
前記接着部材は、前記第1の面と前記第2の面との間で前記第2の面に接していない隙間部を有し、前記第2の面の少なくとも1辺に沿って延在している
圧電共振デバイス。
【請求項2】
前記隙間部は、前記第1の面の上方から見た平面視で前記共振部と重なる範囲を含んで位置している請求項1記載の圧電共振デバイス。
【請求項3】
前記第2の面は、平面視で矩形状であり、
前記接着部材は、前記第2の面の平行な2辺に沿ってそれぞれ延在している請求項1又は2記載の圧電共振デバイス。
【請求項4】
前記基体は、前記第1の面に凹部を有し、
前記接着部材は、前記凹部外で前記第1の面と前記第2の面とを接着し、
前記凹部は、前記第1の面の上方から見た平面視で前記共振部と重なる範囲を含んで位置している
請求項1~のいずれか一項に記載の圧電共振デバイス。
【請求項5】
前記基体は、前記第1の面に突起部を有し、
前記接着部材は、前記突起部上で前記第1の面と前記第2の面とを接着し、
前記隙間部は、前記突起部の外側の前記第1の面と前記第2の面との間を含む、
請求項1~のいずれか一項に記載の圧電共振デバイス。
【請求項6】
前記第1の面上に位置する第1の接続導体と、
前記第1の接続導体に一端が電気的に接続されている配線導体と、
を備え、
前記MEMS素子は、前記共振部に電気的に接続されている第2の接続導体を有し、
前記配線導体の前記一端とは反対の他端は、前記第2の接続導体に電気的に接続されている、
請求項1~のいずれか一項に記載の圧電共振デバイス。
【請求項7】
前記第1の接続導体及び前記第2の接続導体の少なくとも表面の材質は金である請求項記載の圧電共振デバイス。
【請求項8】
前記接着部材は、前記第1の面の上方から見た平面視で前記MEMS素子の外縁よりも外側に広がっている請求項1~のいずれか一項に記載の圧電共振デバイス。
【請求項9】
前記MEMS素子は、半導体基板、下部電極、圧電材料及び上部電極を有し、前記第1
の面の側から上方に向けてこの順番で重なっており、
前記接着部材は、前記MEMS素子の側面における上端位置が、前記下部電極の下端位置よりも低い位置にある、
請求項記載の圧電共振デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電共振デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
筐体内部に素子が封止されて位置する圧電共振デバイスがある。素子は、接合材又は接着剤により筐体に接着固定され、接続されている信号線を介して筐体の外との間で信号を入出力する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-145762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
共振部を有するMEMS素子の底面と筐体とを完全に接着剤により固定すると、以降の製造工程中の加熱などによりMEMS素子に不要な力がかかり、動作精度に影響し得る。そこで、より安定してMEMS素子を動作させることが可能な圧電共振デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様は、
第1の面を有する基体と、
第2の面と、前記第2の面に面していない共振部とを有するMEMS素子と、
前記第1の面と前記第2の面との間に位置して前記第1の面と前記第2の面とを接着固定する接着部材と、
を備え、
前記接着部材は、前記第1の面と前記第2の面との間で前記第2の面に接していない隙間部を有し、前記第2の面の少なくとも1辺に沿って延在している
圧電共振デバイスである。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、より安定してMEMS素子を動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態の圧電共振デバイスを蓋体が外された状態を見た全体斜視図である。
図2】圧電共振デバイス1の平面図及び断面図である。
図3】MEMS素子をより詳しく説明する断面図である。
図4】変形例1の圧電共振デバイスについて説明する平面図及び断面図である。
図5】圧電共振デバイスの変形例2、3を示す断面図である。
図6】変形例4の圧電共振デバイスについて説明する平面図及び断面図である。
図7】変形例5の圧電共振デバイスについて説明する平面図である。
図8】変形例6の圧電共振デバイスについて説明する平面図である。
図9】変形例7の圧電共振デバイスについて説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の圧電共振デバイス1を蓋体120が外された状態を見た全体斜視図である。図1(a)は蓋体120が接合される側の面を見た図であり、図1(b)は蓋体120が接合される側とは反対側の面を見た図である。
【0009】
圧電共振デバイス1は、基体100と、MEMS素子150と、接着部材170などを有する。基体100は、基板110と、蓋体120などを有する。基板110は、蓋体120が接合される側の面、すなわち、z方向について上方側の面に、凹状の領域である収容部111を有する。MEMS素子150は、収容部111内に位置している。収容部111のうち上方側の開放面、及び当該開放面とは反対側の面であり底面となるMEMS素子150の載置面1110(第1の面)以外の側面、すなわち、開放面と載置面1110との間をつなぐ各面であって、ここでは、それぞれz方向に平行となる面をなす枠部1101の蓋体120との接合面(開放面側の端面)には、枠状に、導体層である枠状メタライズ層112が位置し、銀ろうなどの封止材を介して蓋体120と接合している。特に限定するものではないが、ここでは、この基板110のサイズは、xy面内で一辺が0.6~10.0mm程度であり、z方向についての厚みが0.2~2.0mm程度である。ここでは、x方向を基体100の長手方向としている。
【0010】
収容部111の載置面1110上には、一対の電極パッド113(1131、1132)(第1の接続導体)がy方向に並んで位置している。ここでは、電極パッド1131、1132は、それぞれ平面視で同一サイズ同一向きの方形である。電極パッド113は、例えば、基板110において収容部111及び枠部1101以外のこれらより下方すなわち-z方向の部分である基部1102の載置面1110とは反対側の基板底面に位置する外部接続パッド114、例えば、それぞれ外部接続パッド1141、1144と接続している。電極パッド113は、例えば、この載置面1110上に金薄膜層などがめっきなどにより形成されたものである。あるいは、電極パッド113は、スクリーン印刷などにより載置面1110から凸状に形成されたものであってもよい。
【0011】
MEMS素子150は、収容部111の載置面1110上で電極パッド113よりも-x方向に位置している。MEMS素子150は、一の面を底面1506(第2の面)として有し、当該底面1506が接着部材170により載置面1110と接着(接合)している。ここでは、接着部材170は、MEMS素子150のx方向について両端にそれぞれ分かれた接着部材171、172がそれぞれ載置面1110とMEMS素子150との間に位置し、MEMS素子150と載置面1110とを接着している。接着部材170は、例えば、樹脂系接着剤であって絶縁性を有する。接着部材170は、エポキシ系樹脂により構成されてもよい。また、エポキシ系樹脂がアルミナなどを含有していても構わない。これにより、基板110がセラミック材料の場合に、基板110と接着部材170との熱膨張係数が近くなる。したがって、接着部材170の剥がれなどを抑制して接続強度を向上させることができる。接着部材170のフィラーの粒径は、例えば、1~10μmである。これにより、MEMS素子150が傾かずに安定して実装される。
【0012】
MEMS素子150は、底面1506とは反対側(+z側)の上面1500で導電性の2本のボンディングワイヤ181及びボンディングワイヤ182(配線導体)により2個の電極パッド1131及び電極パッド1132とそれぞれ電気的に接続している。ボンディングワイヤ181、182をまとめてボンディングワイヤ180とも記す。ボンディングワイヤ180の材質は、特には限られないが、例えば、金(Au)である。ボンディングワイヤ180の接続は、例えば、キャピラリを有するワイヤボンダなどを利用して超音波圧着により行われる。ここでは、ボンディングワイヤ180のうち電極パッド113との接合がファーストボンディングであり、MEMS素子150との接合がセカンドボンディングである。これにより、MEMS素子150に対する超音波圧着時の加圧を低減させることができる。しかしながら、ファーストボンディングとセカンドボンディングの位置は入れ替えられてもよい。
【0013】
外部接続パッド114(1141~1144)は、外部、例えば、モジュール用基板などに接合される外部電極である。ここでは、外部接続パッド114が基板底面の4隅にそれぞれ位置しているが、必要数が4より少ない場合には、適宜省略されてもよい。MEMS素子150と接続している外部接続パッド114は、例えば、駆動回路に接続されていて、所定の周波数の電圧信号が入力されることで、MEMS素子150が発振子とされてもよい。
【0014】
基板110は、セラミック材料と、シリコンなどの半導体材料と、ガラスなどからなる。セラミック材料は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム焼結体、ムライト質焼結体又はガラス-セラミック焼結体などである。蓋体120は、導体金属からなり、枠状メタライズ層112に対して接合されることで収容部111を気密封止する。封止には、金すず(AuSn)又は銀ろうなどの導電性封止部材が用いられる。枠部1101はスルーホール115を有し、スルーホール115は、枠状メタライズ層112と電気的に接続している。また、スルーホール115は、基板110をz方向に貫通して、基板底面の外部接続パッド114のうちの1つ又は2つ、例えば、外部接続パッド1141、1142と接続している。蓋体120は、接地されることで収容部111内への外部ノイズの伝搬を抑制する。蓋体120は、導電性封止部材及び枠状メタライズ層112を介してスルーホール115に対して電気的に接続している。スルーホール115と接続している外部接続パッド114が接地されることで、蓋体120は接地状態とされる。なお、枠部1101は、スルーホール115の代わりに板状の導体板を有して、蓋体120と外部接続パッド114とを電気的に接続する経路の一部をなしていてもよい。
【0015】
枠状メタライズ層112は、導体金属からなり、枠部1101の接合面に印刷形成される。
枠状メタライズ層112、電極パッド113及び外部接続パッド114などの導体層の少なくとも露出している表面は、ニッケル及び/又は金によるめっき層で被覆されていてもよい。例えば、露出面にニッケルめっきが1~20μmの厚みでなされ、このニッケルめっき層上に金めっき層が0.1~3.0μmの厚みでなされる。これにより、表面の酸化腐食を抑制し、また、絶縁性の物質である基板110の上面に位置する枠状メタライズ層112と金属導体である蓋体120との接続を容易かつ強固なものとすることができる。また、金線であるボンディングワイヤ180と適切に接続し、低抵抗で信号を伝達することができる。
【0016】
図2は、(a)圧電共振デバイス1の蓋体120を外した状態での平面図(平面図について、以下同じ)、及び(b)この平面図における断面線AAでの断面図(断面図について、特に明示がない限り以下同じ)である。
【0017】
上述のように、2個の電極パッド1131、1132は、収容部111内に載置面1110のx方向について正の側の端部付近にy方向に並んで位置している。ボンディングワイヤ181は、MEMS素子150との接続点C1(他端)と、電極パッド1131との接続点C3(一端)との間をほぼyz面内でつないでいる。ボンディングワイヤ182は、MEMS素子150との接続点C2(他端)と、電極パッド1132との接続点C4(一端)との間をほぼyz面内でつないでいる。
【0018】
平面視で電極パッド1131、1132と重なる位置には、それぞれ基部1102を貫通する貫通導体1161、1162があり、一端がそれぞれ電極パッド1131、1132とつながり、他の一端がそれぞれ外部接続パッド1141、1144につながっている。なお、貫通導体1161、1162は、z方向にのみ延びているものに限られない。貫通導体1161、1162が基部1102内をxy面方向にも延びて、例えば、電極パッド1131を外部接続パッド1142と接続していてもよい。
【0019】
MEMS素子150は、上面1500に接続パッド151及び接続パッド152(第2の接続導体)と、共振部153とを備える。共振部153は、共振手段1531を有する。共振手段1531は、上面がMEMS素子150の上面に露出され、ノードで支持されて、当該ノードを固定端とする所定のモードで振動可能となっている。共振手段1531は、後述のように、上面1500の側、すなわち+z側の上部電極と、底面1506に近い側、すなわち-z側の下部電極とを有し、各電極がそれぞれ接続パッド151、152に電気的に接続している。ここでは、接続パッド151が配線154を介して上部電極に接続する。接続パッド152は、MEMS素子150の内部で下部電極に接続している。
【0020】
接続パッド151、152は、MEMS素子150のx方向について正の側の縁付近に位置している。接続パッド151、152は、上述のように電極パッド113に接続されているボンディングワイヤ180のMEMS素子150の側の接続端(他端)である。接続パッド151、152の最上面は、例えば、金(Au)であってもよい。接続パッド151は、y方向について電極パッド1131と対応する位置、ここでは、電極パッド1131と共振部153との間にあり、ボンディングワイヤ181が接続される。接続パッド152は、y方向について電極パッド1132と対応する位置、ここでは、電極パッド1132と共振部153との間にあり、ボンディングワイヤ182と接続される。接続パッド151、152におけるボンディングワイヤ181、182の各接続点C1、C2は、x方向についてほぼ同一の位置にある。これにより、ボンディングワイヤ181、182の長さはほぼ等しい。ボンディングワイヤ181、182には、x方向に最短距離、すなわち直線で延びている必要はなく、若干の余裕があってもよい。また、ボンディングワイヤ181、182は、平面視でx方向に伸びる直線からy方向への若干のずれや曲がりがあってもよいが、必要以上に弛みなどを生じていない。ここでは、ボンディングワイヤ181、182が下方に垂れ下がってMEMS素子150の上縁に接触しないようになっている。一方で、ボンディングワイヤ181、182は、蓋体120が枠状メタライズ層112に接合された状態で、当該蓋体120などに接触しない。
【0021】
ここでは、共振部153は、MEMS素子150のy方向について中心付近に位置し、x方向について接続パッド151、152よりも電極パッド1131、1132から遠い側にある。
【0022】
MEMS素子150(底面1506)は、例えば、基体100の長手方向であるx方向に沿った方向が長手方向となる長方形(平面視矩形状)であるが、これに限られない。また、共振部153の形状は、出力周波数などに応じて様々に変形し得るので、共振部153は、形状に応じた向きで基体100に対して位置していてよい。MEMS素子150の上面における空きスペースには、例えば、製品のシリアル番号などの識別情報の記載がなされていてもよい。また、この空きスペースは、平面状であって、MEMS素子150を基体100に対して載置する際に、移動のために吸着されるために利用されてもよい。このように空きスペースを吸着することで、共振部153を吸着せずにMEMS素子150の載置が可能となるので、共振部153にごみが付着したり共振部153が損傷したりするおそれを低減させることができる。
【0023】
接着部材171及び接着部材172は、MEMS素子150のx方向両端を規定しy方向に伸びる平行な2辺(少なくとも1辺)に沿って延在し、底面1506に接着しているだけではなく、平面視でMEMS素子150の外縁よりも外側にはみ出して広がっている。接着部材170は、その弾性により製造時などにかかる応力などを吸収してMEMS素子150の破損などを抑制する。一方で、接着部材170は、平面視でMEMS素子150の中央部分に当たる接着部材171と接着部材172との間、特に、共振部153と重なる範囲を含む部分に、MEMS素子150が接着部材170に接していない(接着部材170のない)隙間部173を有する。MEMS素子150の接着後にも、圧電共振デバイス1の残りの製造工程において加熱、加圧などがなされ得るが、加熱時などに基板110とMEMS素子150との間の変形特性(温度特性)の違いにより応力が生じたり、接着部材170が膨張・収縮したりする際、全面で接着部材170と接着していないことで、MEMS素子150の特に共振部153に直接的にかかる力を低減させ、本来想定されている精度(周波数特性)から共振動作が外れるのを抑制する。
【0024】
図3は、MEMS素子150をより詳しく説明する断面図である。ここでは、図2(a)における断面線BBでの断面が示されている。
【0025】
MEMS素子150は、ハンドリング層1501と、絶縁層1502と、ドープ層1503(下部電極層)と、圧電層1504(圧電材料)と、上部電極1505などを有し、この順番で-z側から+z側へ重なっている。
【0026】
ハンドリング層1501は、シリコン基板(半導体基板)を含み、その下面が底面1506をなし、接着部材170により基板110の載置面1110に接着されている。接着部材170は、ハンドリング層1501の縁からはみ出してフィレット部分170aとなっている。このフィレット部分170aの上端位置は、MEMS素子150の側面、すなわちxy面に垂直な面において、絶縁層1502の上端位置(ドープ層1503の下端位置)よりも低い位置、通常では、ハンドリング層1501の上端位置以下となっている。したがって、接着部材170は、ドープ層1503、圧電層1504及び上部電極1505とは接触せず、MEMS素子150の上面にも接触しない。なお、断面線BB上では、共振手段1531の直下には接着部材170がない。
【0027】
絶縁層1502は、二酸化ケイ素(SiO2)層である。絶縁層1502の厚さは微小であってよい。この絶縁層1502は、共振部153の範囲で除去されている。ここでは、ハンドリング層1501と絶縁層1502をまとめて半導体基板とする。
【0028】
ドープ層1503は、P型ドープがなされたシリコン層である。ここでのドープ量は、通常の半導体素子におけるドープ量よりはるかに多く、例えば、1~2桁大きい。これにより、ドープ層1503は、事実上導体として振る舞い、下部電極として機能する。
【0029】
ドープ層1503の一部は、ノード以外の部分で当該一部以外及び半導体基板から離隔しており、振動可能となっている。
【0030】
圧電層1504は、物理的な形状変化と電気信号との間で対応関係を有する圧電材料による薄膜層である。ここでは、圧電層1504は、窒化アルミニウム(AlN)の薄膜層であり、上部電極1505とドープ層1503の間の印加電圧に応じて変形し、又は外部からの圧力などによる変形量に応じた電圧を上部電極1505とドープ層1503との間に生じさせる。
【0031】
上部電極1505は、圧電層1504の上側に接して位置し、配線154を介して接続パッド151と電気的に接続している。上部電極1505は、例えば、アルミニウム(Al)層である。
【0032】
このように、ドープ層1503、圧電層1504及び上部電極1505の積層構造は、絶縁層1502を有しない共振部153の範囲では、これらが下方のハンドリング層1501と離隔し、また、平面視で各層の周囲ともxy面内で図示略のノード部分以外で離隔しており、共振手段1531をなす。これにより、この共振手段1531は、共振周波数での振動を生じ得る。
【0033】
このような共振手段1531の共振周波数は、圧電層1504の特性だけではなく、ドープ層1503及び上部電極1505のサイズ、すなわち面積及び厚さ、更に、周囲の図示略のノード部材など、各部の特性に依存する。その結果、共振周波数は、実装の状況に応じて設計値から多少のずれが生じ得る。圧電共振デバイス1では、実装後の共振手段1531に対し、例えば、露出された上面の上部電極1505をアルゴンレーザといったイオンレーザを用いて薄く削る処理を行うことで、所望の共振周波数に近づける調整が行われてもよい。
【0034】
図4は、変形例1の圧電共振デバイス1aについて説明する平面図及び断面図である。
【0035】
この変形例1の圧電共振デバイス1aは、載置面1110に凹部1111を有する。凹部1111は、平面視で共振部153(特に共振手段1531)の少なくとも一部、ここでは全体と重なる範囲を含んで位置している。接着部材170は、凹部1111の外側で載置面1110とMEMS素子150の底面1506とを接着している。したがって、凹部1111の内部全体が隙間部173となる。このように、圧電共振デバイス1aを載置面1110に全面固着させないだけでなく、共振部153を凹部1111内の載置面1110からより確実に離隔させる。よって、この変形例1の圧電共振デバイス1aは、より確実に共振動作に対する影響を低減させることができる。
【0036】
図5は、上記の圧電共振デバイス1、1aの各変形例2、3を示す断面図である。
【0037】
これらの変形例2、3では、接着部材170が接着部材172を有さない。すなわち、圧電共振デバイス1は、x方向について一端のみ、矩形状のMEMS素子150のうちの一辺ここでは+x側でy方向に伸びる辺に沿って偏在する接着部材171のみを有し、これにより載置面1110とMEMS素子150とが接着、固定されている。MEMS素子150と載置面1110との間の残りの部分は、隙間部173となる。この場合、MEMS素子150を載置面1110から離隔した状態で載置面1110に略平行で安定的に固定する必要がある。そのため、MEMS素子150の固着時には、当初から接着部材170の粘度が高く、また、MEMS素子150を固定位置に移動させた後、速やかに接着部材170を固化させることで、取付姿勢をばらつかせないようにさせてもよい。
【0038】
接続パッド151、152の側の接着部材171を残すことで、基体100へのMEMS素子150の固定後に、当該MEMS素子150に固定されるボンディングワイヤ180の固定動作時に、より安定してMEMS素子150を支持することができる。
【0039】
なお、接着部材171によるMEMS素子150の接着箇所は、上記一端(一辺)を含まなくてもよい。当該一端付近の下面のみ、例えば、接続パッド151、152の直下などが接着部材171により固定されてもよい。また、上記一端(一辺)の全体を固定せず、その一部分のみが固定されてもよい。これらの場合でも、接着部材171のない隙間部173が平面視で共振部153と重なる(特に、共振部153全体を含む)ように、接着箇所がMEMS素子150の周縁部付近に定められる。
【0040】
図6は、変形例4の圧電共振デバイス1bについて説明する平面図及び断面図である。
【0041】
この圧電共振デバイス1bは、平面視で接着部材171、172が接着する範囲にそれぞれ応じて載置面1110に突起部1112、1113を有する。すなわち、突起部1112、1113は、平面視でMEMS素子150よりも小さく、接着部材171、172は、それぞれ突起部1112、1113上で載置面1110とMEMS素子150の第2の面とを接着する。突起部1112、1113の間の突起部外の間隙1111bは、隙間部173に含まれる。これにより、間隙1111bにおける底面1506と載置面1110との距離は、突起部1112、1113の高さに応じて大きくなる。
【0042】
また、圧電共振デバイスでは、接着部材170による接着範囲の形状も適宜変更可能である。
図7は、変形例5の圧電共振デバイス1cについて説明する平面図である。
【0043】
この圧電共振デバイス1cでは、接着部材171cは、MEMS素子150の3辺に沿って位置し、MEMS素子150を載置面1110に固定している。この場合でも平面視で共振部153と重なる範囲は、接着部材171cによる接着はなされていない隙間部173となっている。また、収容部111は、上記変形例1、3の凹部1111と同様に、平面視で共振部153と重なる範囲に凹部を有していてもよいし、上記変形例4の突起部1112、1113と同様に、平面視で共振部153を挟む位置に突起を有していてもよい。
【0044】
すなわち、接着部材171cは、隙間部173を内包するようなひとつながりの形状であってもよい。ひとつながりの形状は、本変形例のように隙間部173を開放する部分を有するものだけではなく、環状の形状を有していてもよい。
【0045】
図8は、変形例6の圧電共振デバイス1dについて説明する平面図である。
【0046】
接着部材170は、接着部材171d1、171d2、172d1、172d2を含み、MEMS素子150は、これら接着部材171d1、171d2、172d1、172d2により4か所で載置面1110に接着されている。接着部材171d1、171d2、172d1、172d2は、特には限られないが平面視略円形状でMEMS素子150の4隅をそれぞれ載置面1110に接着している。このような接着箇所であっても平面視でMEMS素子150の底面1506、特に共振部153と重なる位置に接着部材170が隙間部173を有する構成とすることができる。なお、接着部材171d1、171d2、172d1、172d2の形状は、略円形ではなく、平面視矩形(角を丸めたような形も含む)やその他の適宜な形状であってもよい。また、4か所の接着部材171d1、171d2、172d1、172d2は、互いに異なる平面視形状であってもよい。
【0047】
図9は、変形例7の圧電共振デバイス1eについて説明する平面図である。
【0048】
接着部材170は、接着部材171e1、171e2、172e1を含み、MEMS素子150は、これら接着部材171e1、171e2、172e1により3か所で載置面1110に接着されている。接着部材171e1、171e2、172e1による接着箇所は、4隅を含む必要はなく、ここでは、+x側の辺に沿って2か所、-x側の辺に沿って1か所にそれぞれ位置している。すなわち、接着箇所は、4か所である必要はない。また、これらの位置関係は、中心位置など所定の規準点(線)に対して必ずしも対称でなくてもよい。x方向に伸びる2つの辺上に位置していてもよいし、各辺に接していなくても(完全にMEMS素子150と載置面1110との間に位置して、底面1506の外側に広がっていなくても)よい。また、各接着箇所における接着部材171e1、171e2、172e1のサイズ(幅)は、互いに異なっていてもよい。なお、サイズが異なる場合でも、載置面1110からの高さは均一とされるとよい。載置面1110とMEMS素子150(底面1506)との間で底面1506への接着部材170の接着箇所以外は、隙間部173となる。
【0049】
以上のように、本実施形態の圧電共振デバイス1は、載置面1110(第1の面)を有する基体100と、底面1506(第2の面)と共振部153とを有するMEMS素子150と、載置面1110と底面1506との間に位置して載置面1110と底面1506とを接着する接着部材170と、を備える。接着部材170は、載置面1110と底面1506との間で底面1506に接していない隙間部173を有する。
このように、MEMS素子150の底面1506を載置面1110に全面で接着させるのではなく、隙間部173を有する状態とさせることで、製造時にMEMS素子150と基体100との間で応力が生じたり接着部材170が膨張・収縮したりした場合にMEMS素子150の全体にその力が加わって共振部153の共振動作に悪影響を及ぼす/残すのを抑制することができる。よって、圧電共振デバイス1では、より安定してMEMS素子を動作させることができる。
【0050】
また、隙間部173は、載置面1110の上方から見た平面視で共振部153と重なる位置を含む。すなわち、共振部153の直下から応力がかからないので、共振部153に対する悪影響を低減することができる。
【0051】
また、接着部材170は、底面1506の少なくとも1辺に沿って延在している。接着部材171などがMEMS素子150の周縁に沿って少なくともその一部の辺を固定することで、共振部153への影響を抑えつつ安定して固定することができる。
【0052】
特に、変形例2、3などのように、接着部材170は、底面1506の1辺にのみ沿って偏在していてもよい。これにより、特に、一時的な変形などの影響を極力後に残さず、共振部153を安定動作させることができる。
【0053】
また、底面1506は、平面視で矩形状であり、接着部材170は、底面1506の平行な2辺に沿ってそれぞれ延在していてもよい。MEMS素子150の平行な2辺に沿って両縁を固定することで、圧電共振デバイス1では、容易かつ安定してMEMS素子150を固定することができる。
【0054】
また、基体100は、載置面1110に凹部1111を有し、接着部材170は、凹部1111の外で載置面1110と底面1506とを接着し、凹部1111は、載置面1110の上方から見た平面視で共振部153と重なる範囲を含んで位置している。共振部153の範囲でより広い隙間部173を有する形状の基体100とすることで、共振部153の動作を妨げず、圧電共振デバイス1をより精度よく安定して動作させることができる。
【0055】
また、基体100は、載置面1110に突起部1112、1113を有し、接着部材170は、突起部1112、1113上で載置面1110と底面1506とを接着し、隙間部173は、突起部1112、1113の外側(特に間)の載置面1110と底面1506との間を含む。これにより、突起部1112、1113の間で隙間部173を広く取ることが出来、圧電共振デバイス1をより精度よく安定して動作させることができる。
【0056】
また、圧電共振デバイス1は、載置面上に位置する電極パッド1131、1132と、電極パッド1131、1132にそれぞれ一端が電気的に接続されているボンディングワイヤ181、182と、を備える。MEMS素子150は、共振部153に電気的に接続されている接続パッド151、152を有する。ボンディングワイヤ181、182の一端とは反対の他端は、それぞれ接続パッド151、152に電気的に接続されている。これにより、共振デバイスから信号を取り出したり信号を印加したりすることができる。
【0057】
また、電極パッド1131、1132及び接続パッド151、152の少なくとも表面の材質は金である。これにより、腐食反応を抑制し、かつ抵抗損失などを抑制して、確実に適正な信号を伝送することができる。
【0058】
また、接着部材170は、平面視でMEMS素子150よりも外側に広がっている。これにより、接着部材170は、より安定にMEMS素子150を支持することができる。特に、MEMS素子150の取り付け時及びボンディングワイヤ180の接続時に共振部153にかかる力などが悪影響を及ぼすのを効果的に抑制することができる。
【0059】
また、MEMS素子150は、ハンドリング層1501、ドープ層1503、圧電層1504、及び上部電極1505などを有し、載置面1110の側からこの順番で重なっている。接着部材170は、MEMS素子150の側面における上端位置が、ドープ層1503の下端位置よりも低い位置にある。すなわち、接着部材170がMEMS素子150の下面からはみ出て生じたフィレット部分170aは、MEMS素子150のうち積層構造の上方に位置する導体部分及び圧電層1504に接触しなければよい。これにより、短絡などのトラブルを生じさせにくい範囲でMEMS素子150の載置面1110への接合をより確実に行い、また、共振周波数の更なるずれを抑制することができる。また、接着部材170(エポキシ系樹脂)中にナトリウム原子など(金属粒子)が含まれている場合に、この金属粒子がドープ層1503に入り込んで導電率を変動させないようにすることができる。
【0060】
なお、上記実施の形態は例示であって、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施の形態では、蓋体120で収容部111が密閉されて、MEMS素子150が発振子として用いられる場合について説明したが、外部接続パッドが所定の検出回路に接続されて、加速度などを検出する検出部として利用されてもよい。また、MEMS素子150の共振部153に直接又は所定の被膜などを介して物質などが接触、堆積可能であり、検出回路などにより接触頻度や堆積重量などを検出可能な検出部であってもよい。例えば、MEMS素子150をガスセンサとして使用する場合には、MEMS素子150を測定対象エリア内に配置する前に共振周波数を測定しておく。これが、検出対象のガスがない状態における共振周波数、すなわち、参照周波数となる。その後、測定対象エリア内にMEMS素子150を配置してMEMS素子150の共振周波数を測定し、この共振周波数を上記参照周波数と比較することで、検出対象ガスの有無を判断することができる。
【0061】
また、実際には、接着部材170は、載置面1110上に多少広がった形状となりやすく、xy面内で同一の位置で、接着部材170が載置面1110には接しているが、底面1506には接していない部分が生じ得る。このような部分も隙間部173に含まれてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、いずれもMEMS素子150の中央付近、特に共振部153と平面視で重なる位置が接着部材170と接していないものとして説明したが、隙間部173を有していれば、これらの実施形態の接着範囲に限られない。
【0063】
また、上記実施の形態では、MEMS素子150の底面1506が載置面1110と平行に位置するものとして説明したが、これに限られるものではない。MEMS素子150が載置面1110に対して多少傾いて位置していてもよい。また、凹部1111や突起部1112、1113が直方体形状ではなくてもよい。また、圧電共振デバイス1は、凹部1111と突起部1112、1113の両方を有していてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態では、MEMS素子150の接続パッド151、152と電極パッド1131、1132との接続をボンディングワイヤにより行ったが、これに限らず、導電性の配線部材全般が利用されてよい。
【0065】
また、上記実施の形態では、電極パッド1131、1132、及び接続パッド151、152は、それぞれ、平面視で同一サイズ同一向きの方形であるものとして説明したが、方形でなくてもよく、同一向きや同一サイズでなくてもよい。平面視で方形ではない場合には、例えば、円形などであってもよいし、また、方形の角の一部又は全部を落とした又は丸めたものであってもよい。
【0066】
また、平面視でMEMS素子150の外縁よりも外側に位置する接着部材170は、MEMS素子150の側面に接着していなくてもよい。
【0067】
また、上部電極1505の上面に保護層を有していてもよい。これにより、上部電極1505が酸化し、又は削れることを抑えることができる。保護層は、例えば、AlNであってもよい。
【0068】
また、上部電極1505の最上面が金(Au)であってもよい。反対に、接続パッド151、152や電極パッド1131、1132の最上面(表面)が金ではなくてもよい。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、位置関係や材質などは、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。本発明の範囲は、特許請求の範囲に記載した発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0069】
1、1a~1e 圧電共振デバイス
100 基体
110 基板
1101 枠部
1102 基部
111 収容部
1110 載置面
1111 凹部
1111b 間隙
1112、1113 突起部
112 枠状メタライズ層
113、1131、1132 電極パッド
114、1141~1144 外部接続パッド
115 スルーホール
1161、1162 貫通導体
120 蓋体
150 MEMS素子
1500 上面
1501 ハンドリング層
1502 絶縁層
1503 ドープ層
1504 圧電層
1505 上部電極
1506 底面
151、152 接続パッド
153 共振部
1531 共振手段
154 配線
170、171、172、171c、171d1~171e2 接着部材
173 隙間部
170a フィレット部分
181、182 ボンディングワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9