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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/08 20060101AFI20240814BHJP
   B60K 6/46 20071001ALI20240814BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20240814BHJP
   B60W 20/13 20160101ALI20240814BHJP
   B60L 50/61 20190101ALI20240814BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/46 ZHV
B60W10/26 900
B60W20/13
B60L50/61
B60L7/14
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020206206
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022093102
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】吉井 侑典
(72)【発明者】
【氏名】増田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】中本 和男
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-201181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/46
B60W 10/26
B60W 20/13
B60L 50/61
B60L 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの動力で発電する発電機と、力行運転により駆動系に伝達される動力を発生し、回生運転により前記駆動系の動力で発電する駆動モータと、電力を蓄える電池とを搭載したハイブリッド車両に用いられる制御装置であって、
前記駆動モータの目標トルクを設定し、前記駆動モータが前記目標トルクのモータトルクを発生するよう、前記駆動モータの運転を制御する駆動モータ制御手段と、
前記発電機の発電中に、前記ハイブリッド車両の前後進を切り替える指示が入力されたことに応じて、前記電池に充電される電力が前記電池への充電が許容される電力の上限である充電許容電力を超えることにより前記駆動モータの回生電力が制限される前に、前記目標トルクに制限を設定する制限設定手段と、を含
前記制限設定手段は、前記目標トルクに制限を設定しても、前記電池に充電される電力が前記充電許容電力を超えることになる場合、前記目標トルクに設定する制限を強める、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両(HV:Hybrid Vehicle)の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリーズハイブリッドシステムには、エンジンと、エンジンの動力で発電する発電モータと、走行のための駆動力を発生する駆動モータと、駆動モータに供給される電力を蓄える電池とが含まれる。
【0003】
シリーズハイブリッドシステムを搭載したハイブリッド車両では、駆動モータに要求される出力が電池の出力より小さいときには、電池からの電力で駆動モータが駆動されて、駆動モータから駆動輪に駆動力が伝達される。これにより、ハイブリッド車両は、エンジンが停止した状態で駆動モータの駆動により、電気自動車(EV:Electric Vehicle)としてEV走行する。一方、駆動モータに要求される出力が電池の出力を上回るときには、発電モータがエンジンの動力で発電を行う。そして、発電モータからの電力および電池からの電力で駆動モータが駆動されて、駆動モータから駆動輪に駆動力が伝達される。これにより、ハイブリッド車両は、エンジンと駆動モータとの両方の駆動によりHV走行する。
【0004】
ハイブリッド車両のシフトレンジには、Dレンジ(前進レンジ)およびRレンジ(後進レンジ)が設けられている。ハイブリッド車両の車室内には、シフトレバー(セレクトレバー)が配設されており、シフトレバーの操作により、シフトレンジを切り替えることができる。たとえば、シフトレバーがDポジションからRポジションに操作されると、シフトレンジがDレンジからRレンジに切り替わり、ハイブリッド車両が前進走行から後進走行に切り替わる。逆に、シフトレバーがRポジションからDポジションに操作されると、シフトレンジがRレンジからDレンジに切り替わり、ハイブリッド車両が後進走行から前進走行に切り替わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-47820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たとえば、アクセル操作(アクセルペダルの踏操作)がなされた状態での後進走行中(Rレンジ走行中)に、アクセル操作がなされたまま、シフトレバーがRポジションからDポジションに操作されることがある。この操作に応じて、駆動モータが逆転方向の力行運転から回生運転に切り替わり、その回生運転から一旦停止した後に、正転方向の力行運転に切り替わる。
【0007】
一方、後進走行中に発電モータが発電を行っていた場合、駆動モータが回生運転に切り替わる時点で、発電モータの発電が不要になる。しかし、駆動モータが回生運転に切り替わった後にも、発電モータの応答遅れにより、発電モータの発電が継続することがある。電池には、充電が許容される電力に上限があるので、駆動モータの回生と発電モータの発電とが重なって、駆動モータおよび発電モータから発生する電力が電池の充電許容電力を超過すると、電池の充放電を制御するECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)から駆動モータを制御するECUに制限の要求が入り、駆動モータの回生が制限される。その結果、駆動モータの回生による制動力が変動し、ハイブリッド車両がユーザの意図しない挙動を示すおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、ハイブリッド車両の前後進の切り替えの際に、駆動モータおよび発電モータから発生する電力が電池の充電許容電力を超過することを抑制できる、ハイブリッド車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、エンジンと、エンジンの動力で発電する発電機と、力行運転により駆動系に伝達される動力を発生し、回生運転により駆動系の動力で発電する駆動モータと、電力を蓄える電池とを搭載したハイブリッド車両に用いられる制御装置であって、駆動モータの目標トルクを設定し、駆動モータが目標トルクのモータトルクを発生するよう、駆動モータの運転を制御する駆動モータ制御手段と、発電機の発電中に、ハイブリッド車両の前後進を切り替える指示が入力されたことに応じて、電池に充電される電力が電池への充電が許容される電力の上限である充電許容電力を超えることにより駆動モータの回生電力が制限される前に、目標トルクに制限を設定する制限設定手段とを含む。
【0010】
この構成によれば、駆動モータの目標トルクが設定されて、駆動モータの運転が制御されることにより、駆動モータから目標トルクに一致するモータトルクが出力される。
【0011】
ハイブリッド車両の前後進を切り替える指示が入力されると、駆動モータが力行運転から回生運転を経て逆方向の力行運転に切り替わる。駆動モータが回生運転に切り替わる前に、発電機が発電を行っていた場合、駆動モータの回生運転が開始されても、発電機の応答遅れにより、発電機の発電が継続することがある。この場合、駆動モータの回生と発電機の発電とが重なって、駆動モータの回生電力と発電機の発電電力との合計が電池の充電許容電力を超えるおそれがあり、その合計が充電許容電力を超えると、駆動モータの回生電力が制限されて、駆動モータの回生による制動力が変動する。そこで、駆動モータの回生電力が制限される前に、駆動モータの目標トルクに制限が設定される。これにより、駆動モータの回生と発電機の発電とが重なっても、駆動モータの回生電力と発電機の発電電力との合計が電池の充電許容電力を超えることを抑制でき、駆動モータの回生による制動力が変動することを抑制できる。その結果、ハイブリッド車両がユーザの意図しない挙動を示すことを抑制できる。
【0012】
また、駆動モータの回生電力と発電機の発電電力との合計が電池の充電許容電力を超えることを抑制できるので、充電許容電力が電池に供給されることによる電池の劣化を防止できる。
【0013】
制限設定手段は、目標トルクに制限を設定しても、電池に充電される電力が充電許容電力を超えることになる場合、目標トルクに設定する制限を強めてもよい。
【0014】
これにより、駆動モータの回生電力と発電機の発電電力との合計が電池の充電許容電力を超えることを一層抑制できる。その結果、駆動モータの回生制動力の変動を一層抑制することができる。
【0015】
制限設定手段は、目標トルクに制限を設定しても、電池に充電される電力が充電許容電力を超えることになる場合、目標トルクを0に設定してもよい。この構成は、制御装置に、制限設定手段により目標トルクに制限が設定されても、電池に充電される電力が充電許容電力を超えることになる場合、駆動モータの運転が逆方向の力行運転に切り替わることを禁止する禁止手段が含まれた構成と言い換えることができる。
【0016】
かかる構成により、駆動モータの回生制動力の変動を防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ハイブリッド車両の前後進の切り替えの際に、駆動モータおよび発電モータから発生する電力が電池の充電許容電力を超過するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る制御装置が適用されるハイブリッド車両の構成を示すブロック図である。
図2】シフト切替制御の流れを示すフローチャートである。
図3】トルク制限処理の内容を示すブロック図である。
図4】シフト判定処理の内容を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
<ハイブリッド車両>
図1は、ハイブリッド車両1の構成を示すブロック図である。
【0021】
ハイブリッド車両1は、シリーズ方式のハイブリッドシステム2を搭載している。ハイブリッドシステム2には、エンジン11、発電モータ(MG1)12、駆動モータ(MG2)13、電池14およびPCU(Power Control Unit:パワーコントロールユニット)15が含まれる。
【0022】
エンジン11は、たとえば、3気筒4ストロークのガソリンエンジンである。エンジン11には、燃焼室への吸気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)および燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが設けられている。
【0023】
発電モータ12は、たとえば、永久磁石同期モータである。
【0024】
エンジン11のクランクシャフト21と発電モータ12のモータ軸22とは、歯の噛み合いにより動力を伝達する噛合機構23を介して連結されている。噛合機構23は、たとえば、クランクシャフト21およびモータ軸22の一方に設けられたオススプラインと、それらの他方に設けられたメススプラインとを含み、オススプラインの歯とメススプラインの歯とが噛み合うことにより、クランクシャフト21とモータ軸22との間で相互に動力を伝達可能にする機構である。なお、噛合機構23は、これに限らず、クランクシャフト21に相対回転不能に支持されたギヤの歯とモータ軸22に相対回転不能に支持されたギヤの歯とが噛み合うことにより動力を伝達する機構であってもよい。
【0025】
駆動モータ13は、たとえば、発電モータ12よりも大型の永久磁石同期モータからなる。駆動モータ13の回転軸は、ハイブリッド車両1の駆動系16に連結されている。駆動系16には、デファレンシャルギヤが含まれており、駆動モータ13の動力は、デファレンシャルギヤに伝達され、デファレンシャルギヤから左右の前輪または後輪からなる駆動輪17に分配されて伝達される。これにより、左右の駆動輪17が回転し、駆動モータ13の正転時には、ハイブリッド車両1が前進走行し、駆動モータ13の逆転時には、ハイブリッド車両1が後進走行する。
【0026】
電池14は、複数の二次電池を組み合わせた組電池である。二次電池は、たとえば、リチウムイオン電池である。電池14は、たとえば、約200~350V(ボルト)の直流電力を出力する。
【0027】
PCU15は、発電モータ12および駆動モータ13の駆動を制御するためのユニットである。PCU15は、第1インバータ31、第2インバータ32およびコンバータ33を備えている。
【0028】
エンジン11の始動時には、電池14から出力される直流電力がコンバータ33により昇圧されて、昇圧された直流電力が第1インバータ31で交流電力に変換され、交流電力が発電モータ12に供給される。これにより、発電モータ12が力行運転されて、エンジン11が発電モータ12によりモータリング(クランキング)される。モータリングによりエンジン11のクランクシャフトの回転数が始動に必要な回転数まで上昇した状態で、エンジン11の点火プラグがスパークされると、エンジン11が始動する。
【0029】
ハイブリッド車両1の走行時には、駆動モータ13が正転方向または逆転方向に力行運転されて、駆動モータ13が動力を発生する。
【0030】
駆動モータ13に要求される出力が電池14の出力より小さいときには、ハイブリッド車両1がEV走行する。すなわち、エンジン11が停止されて、発電モータ12による発電が行われず、電池14から駆動モータ13に電力が供給されて、その電力で駆動モータ13が駆動される。
【0031】
一方、駆動モータ13に要求される出力が電池14の出力を上回るときには、ハイブリッド車両1がHV走行する。すなわち、エンジン11が稼動状態にされて、発電モータ12が発電運転(回生運転)されることにより、エンジン11の動力が発電モータ12で交流電力に変換される。そして、発電モータ12からの交流電力が第1インバータ31で直流電力に変換され、第1インバータ31から出力される直流電力が第2インバータ32で交流電力に変換されて、その交流電力が駆動モータ13に供給されることにより、駆動モータ13が駆動される。
【0032】
また、電池14の残容量が所定以下に低下すると、駆動モータ13の駆動/停止にかかわらず、エンジン11が運転している状態で、発電モータ12が発電運転される。このとき、発電モータ12からの交流電力が第1インバータ31で直流電力に変換され、第1インバータ31から出力される直流電力がコンバータ33で降圧されて、降圧後の直流電力が電池14に供給されることにより、電池14が充電される。
【0033】
ハイブリッド車両1の減速時には、駆動モータ13が回生運転されて、駆動輪17から駆動モータ13に伝達される動力が交流電力に変換される。このとき、駆動モータ13が走行駆動系の抵抗となり、その抵抗がハイブリッド車両1を制動する制動力(回生制動力)として作用する。このとき、PCU15では、駆動モータ13から第2インバータ32に供給される交流電力が第2インバータ32で直流電力に変換され、第2インバータ32から出力される直流電力がコンバータ33で降圧される。そして、その降圧後の直流電力が電池14に供給されることにより、電池14が充電される。
【0034】
ハイブリッド車両1には、ハイブリッドシステム2のためのECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)として、HV-ECU41および電池ECU42が搭載されている。
【0035】
PCU15、HV-ECU41および電池ECU42には、マイコン(マイクロコントローラユニット)が内蔵されている。マイコンは、たとえば、CPU、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリおよびDRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリを備えている。
【0036】
また、PCU15、HV-ECU41および電池ECU42は、CAN(Controller Area Network)通信プロトコルによる双方向通信(以下、「CAN通信」という。)が可能に接続されている。
【0037】
HV-ECU41は、ハイブリッドシステム2を統括的に制御するECUである。HV-ECU41には、制御に必要な各種センサが接続されており、その接続されたセンサの検出信号が入力される。また、HV-ECU41には、各種センサから入力される検出信号以外に、PCU15および電池ECU42を含む他のECUから制御に必要な情報が入力される。
【0038】
HV-ECU41に接続されているセンサとして、アクセルセンサ43および車速センサ44が例示される。アクセルセンサ43は、ドライバ(運転者)により足踏み操作されるアクセルペダルの操作量に応じた検出信号を出力する。車速センサ44は、ハイブリッド車両1の走行に伴って回転する回転体の回転に同期したパルス信号を検出信号として出力する。HV-ECU41では、アクセルセンサ43の検出信号から、アクセルペダルの最大操作量に対する現在の操作量の割合であるアクセル開度が求められる。また、HV-ECU41では、車速センサ44の検出信号から、その検出信号(パルス信号)の周波数が求められて、その周波数が車速に換算される。
【0039】
また、HV-ECU41には、シフトポジションセンサ45が接続されている。ハイブリッド車両1の車室内には、運転者が操作可能な位置に、シフトレバー(セレクトレバー)が配設されている。シフトレバーの可動範囲には、たとえば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジションおよびB(ブレーキ)ポジションがこの順に並べて設けられている。シフトポジションセンサ45は、シフトレバーの位置であるシフトポジションに応じた検出信号を出力する。
【0040】
HV-ECU41は、CAN通信により、各種の情報に基づいて、PCU15にモータ制御指令を送信し、また、エンジン11の運転を制御する。
【0041】
PCU15では、HV-ECU41から送信されるモータ制御指令に従って、マイコンにより、第1インバータ31を介して発電モータ12の駆動が制御され、第2インバータ32を介して駆動モータ13の駆動が制御される。また、必要に応じて、コンバータ33による直流電圧の昇降圧が制御される。
【0042】
電池ECU42は、電池14の充電状態(充電残量)および電池14に対する電力の入出力を監視している。
【0043】
<シフト切替制御>
図2は、シフト切替制御の流れを示すフローチャートである。
【0044】
ハイブリッド車両1の走行中、発電モータ12がエンジン11の動力で発電し始めると、HV-ECU41および電池ECU42により、以下に説明するシフト切替制御が実行される。
【0045】
シフト切替制御では、まず、HV-ECU41により、アクセル開度および車速から、駆動モータ13に要求される出力(電力)であるMG2出力が算出される(ステップS11)。
【0046】
たとえば、HV-ECU41の不揮発性メモリには、アクセル開度と駆動モータ13のモータトルクの目標である目標トルクとの関係を定めたトルクマップが記憶されている。モータトルクは、駆動モータ13の正転方向の力行運転時に正の値をとり、駆動モータ13の逆転方向の力行運転時に負の値をとる。
【0047】
MG2出力の算出の際には、アクセル開度に応じた目標トルクがトルクマップから読み出される。駆動モータ13の正転時に用いられるトルクマップでは、アクセル開度が第1開度より大きい範囲で、アクセル開度が大きくなるにつれて正の目標トルクが増加するように設定され、アクセル開度が第2開度より小さい範囲で、アクセル開度が小さくなるにつれて負の目標トルクが増加するように設定されている。駆動モータ13の逆転時に用いられるトルクマップでは、アクセル開度が第1開度より大きい範囲で、アクセル開度が大きくなるにつれて負の目標トルクが増加するように設定され、アクセル開度が第2開度より小さい範囲で、アクセル開度が小さくなるにつれて正の目標トルクが増加するように設定されている。
【0048】
また、MG2出力の算出の際には、ハイブリッド車両1の車速から駆動モータ13の回転数が換算される。
【0049】
そして、駆動モータ13の目標トルクおよび回転数から、MG2出力が算出される。MG2出力の正の値は、駆動モータ13の力行運転により消費される消費電力を示し、MG2出力の負の値は、駆動モータ13の回生運転により発生する回生電力を示す。
【0050】
なお、第1開度と第2開度とは、異なる値であってもよいし、同じ値であってもよい。第1開度と第2開度とが異なる値である場合、第1開度が第2開度より大きい値であり、アクセル開度が第1開度と第2開度との間の範囲では、目標トルクが0に設定される。第1開度と第2開度とが同じ値である場合には、その値のアクセル開度に対して、目標トルクが0に設定される。
【0051】
次に、HV-ECU41により、目標トルクを必要に応じて制限するトルク制限処理が行われる(ステップS12)。トルク制限処理の詳細については、後述する。
【0052】
トルク制限処理後、HV-ECU41により、シフトポジション(シフトレバーの位置)をDポジションからRポジションに切り替える、または、RポジションからDポジションに切り替える操作であるシフト切替操作が行われたか否かが判断される(ステップS13)。シフト切替操作が行われていないと判断された場合(ステップS13のNO)、ステップS11に戻り、MG2出力が再び算出される。
【0053】
シフト切替操作が行われたと判断された場合(ステップS13のYES)、HV-ECU41により、シフトポジションに応じたシフトレンジに設定するか、または、シフトポジションにかかわらずNレンジに設定するかを判定するシフト判定処理が行われる(ステップS14)。シフトレンジには、ハイブリッド車両1を駐車状態に保つPレンジ、ハイブリッド車両1を後進走行させるRレンジ、駆動モータ13が自由回転状態となるNレンジ、ならびに、ハイブリッド車両1を前進走行させるDレンジおよびBレンジが設けられている。Bレンジでは、同一のアクセル開度で比較したときに、駆動モータ13の回生運転により発生する回生トルクがDレンジよりも大きい。シフト判定処理の詳細については、後述する。
【0054】
シフト判定処理後、HV-ECU41により、そのシフト判定処理により判定されたシフトレンジでのMG2出力が算出される(ステップS15)。
【0055】
その後、HV-ECU41により、トルク制限処理が行われる(ステップS16)。
【0056】
そして、HV-ECU41により、トルク制限処理後の目標トルクである制限後目標トルクおよび駆動モータ13の回転数から、MG2出力が再び算出される。また、発電モータ12の実際の出力(電力)であるMG1実出力が取得される。MG1実出力は、たとえば、発電モータ12の実回転数および実トルクをそれぞれセンサで検出し、その検出した実回転数と実トルクとから演算により取得することができる。MG1実出力の正の値は、発電モータ12の力行運転により消費される消費電力を示し、MG1出力の負の値は、発電モータ12の発電運転により発生する発電電力を示す。そして、MG1実出力とMG2出力とが足し合わされて、その加算値が電池要求出力として算出される(ステップS17)。電池要求出力の正の値は、電池14から放電される電力を示し、電池要求出力の負の値は、電池14に充電される電力を示す。
【0057】
電池要求出力が算出されると、その電池要求出力の値がHV-ECU41から電池ECU42に送信される。電池要求出力の値を受信した電池ECU42では、電池14への充電が許容される電力の上限である充電許容電力(0以下の値)が求められる。そして、電池要求出力が充電許容電力よりも小さいか否かが判定される(ステップS18)。
【0058】
電池要求出力(負の値)が充電許容電力よりも小さい場合(ステップS18のYES)、電池ECU42からHV-ECU41に、電池要求出力が充電許容電力以上となるよう、駆動モータ13の回生運転を制限(回生電力を低減)する要求が送信される(ステップS19)。この要求を受けて、HV-ECU41からPCU15に指令が送信されて、PCU15に内蔵されているマイコンが第2インバータ32を制御することにより、駆動モータ13の回生運転が制限され、その回生運転による回生電力が低減する(ステップS20:MG2回生制限あり)。
【0059】
電池要求出力が充電許容電力以上である場合には(ステップS18のNO)、電池ECU42からHVECU41への回生運転の制限の要求が送信されず、駆動モータ13の回生運転は制限されない(ステップS21:MG2回生制限なし)。
【0060】
<トルク制限処理>
図3は、トルク制限処理の内容を示すブロック図である。
【0061】
HV-ECU41には、トルク制限処理のためのソフトウェア(プログラム)が組み込まれていてよいし、トルク制限処理のためのハードウェア(回路)が備えられていてもよい。
【0062】
トルク制限処理では、トルク制限処理の直前に算出されたMG2出力(以下、単に「MG2出力」という。)が正の値である場合、つまり駆動モータ13が正転方向に力行運転または逆転方向に回生運転される場合には、駆動モータ13の回転数であるMG2回転数から、ハイブリッド車両1の前進方向の加速度(>0)が正の所定値以下となる駆動モータ13のモータトルクが求められて、そのモータトルクが上限トルクとして設定される。一方、MG2出力が負の値である場合、つまり駆動モータ13が正転方向に回生運転または逆転方向に力行運転される場合には、MG2回転数から、ハイブリッド車両1の後進方法の加速度(<0)が所定値以上となる駆動モータ13のモータトルクが求められて、そのモータトルクが下限トルクとして設定される。所定値は、ハイブリッド車両1に乗っているユーザが違和感を感じない程度の加速度の値であり、固定値であってもよいし、車速などに応じて可変に設定されてもよい。所定値は、たとえば、0.3G(G:重力加速度)である。
【0063】
HV-ECU41は、トルク制限処理のための機能処理部として、最大値出力部51、第1選択部52、最小値出力部53および第2選択部54を実質的に有している。
【0064】
最大値出力部51は、第1入力ポートおよび第2入力ポートを有している。最大値出力部51の第1入力ポートには、MG2出力の算出に用いられた駆動モータ13の目標トルクが入力される。最大値出力部51の第2入力ポートには、下限トルクが入力される。最大値出力部51は、目標トルクと下限トルクとの大小を比較して、それらのうちの大きい方の値を出力する。
【0065】
第1選択部52は、第1入力ポートおよび第2入力ポートを有している。第1選択部52の第1入力ポートには、最大値出力部51の出力値が入力される。第1選択部52の第2入力ポートには、MG2出力の算出に用いられた駆動モータ13の目標トルクが入力される。第1選択部52は、次の第1SW判定条件1~4のすべてが成立した場合、第1入力ポートに入力される値、つまり最大値出力部51の出力値を選択するように切り替わり、その選択した値を出力する。一方、次の第1SW判定条件1~3の少なくとも1つが非成立または第1SW判定条件5が成立した場合、第1選択部52は、第2入力ポートに入力される値、つまり駆動モータ13の目標トルクを選択し、その選択した値を出力する。
【0066】
1.MG1実出力が出力閾値より小さい
2.MG2回転数が回転数閾値より大きい
3.アクセル開度がAP閾値より大きい
4.Rポジション以外からRポジションに変更された
5.シフトポジションがRポジション以外
【0067】
なお、出力閾値、回転数閾値およびAP閾値は、予め定められた値である。
【0068】
最小値出力部53は、第1入力ポートおよび第2入力ポートを有している。第2選択部54もまた、第1入力ポートおよび第2入力ポートを有している。第1選択部52の出力値は、最小値出力部53の第2入力ポートおよび第2選択部54の第2入力ポートの両方に入力される。
【0069】
最小値出力部53の第1入力ポートには、上限トルクが入力される。最小値出力部53は、上限トルクと第1選択部52の出力値との大小を比較して、それらのうちの大きい方の値を出力する。
【0070】
第2選択部54の第1入力ポートには、最小値出力部53の出力値が入力される。第2選択部54は、次の第2SW判定条件1~4のすべてが成立した場合、第1入力ポートに入力される値、つまり最小値出力部53の出力値を選択するように切り替わり、その選択した値を出力する。一方、次の第2SW判定条件1~3の少なくとも1つが非成立または第2SW判定条件5が成立した場合、第2選択部54は、第2入力ポートに入力される値、つまり第1選択部52の出力値を選択し、その選択した値を出力する。
【0071】
1.MG1実出力が出力閾値より小さい
2.MG2回転数が回転数閾値より小さい
3.アクセル開度がAP閾値より大きい
4.D/Bポジション以外からD/Bポジションに変更された
5.シフトポジションがD/Bポジション以外
【0072】
なお、出力閾値、回転数閾値およびAP閾値は、予め定められた値であり、たとえば、それぞれ第1SW判定条件1~3で用いられる出力閾値、回転数閾値およびAP閾値と同じ値であるが、それには限らない。
【0073】
第2選択部54の出力値は、制限後目標トルクとして、シフト切替制御で使用される。
【0074】
<Dレンジ走行中のトルク制限処理>
アクセル操作がなされて、発電モータ12がエンジン11の動力で発電しながら、シフトポジションがDポジションのまま、ハイブリッド車両1が前進走行している場合、駆動モータ13の目標トルクが正の値に設定されて、駆動モータが正転方向に力行運転されている。
【0075】
この状態において、目標トルクがMG回転数に応じて設定される上限トルクよりも大きい場合、最大値出力部51では、目標トルクと下限トルクとの比較の結果、目標トルクが出力値として選択される。第1選択部52には、第1入力ポートと第2入力ポートとの両方に目標トルクが入力される。シフトポジションがDポジションから変更されていないので、第1SW判定条件4が少なくとも成立せず、第1選択部52から目標トルクが出力される。第1選択部52から出力される目標トルクは、最小値出力部53の第2入力ポートおよび第2選択部54の第2入力ポートの両方に入力される。最小値出力部53では、第1入力ポートに入力される上限トルクと、第2入力ポートに入力される目標トルクとが比較される。上限トルクが目標トルクよりも小さいので、最小値出力部53から上限トルクが出力され、その上限トルクが第2選択部54の第1入力ポートに入力される。シフトポジションがDポジションから変更されていないので、第2SW判定条件4が少なくとも成立せず、第2選択部54の第2入力ポートに入力される目標トルクが第2選択部54から制限後目標トルクとして出力される。
【0076】
すなわち、アクセル操作がなされて、発電モータ12がエンジン11の動力で発電しながら、シフトポジションがDポジションのまま、ハイブリッド車両1が前進走行している場合、目標トルクが上限トルクより大きくても、目標トルクがそのまま制限後目標トルクとされる。
【0077】
<シフト切替操作D→R時のトルク制限処理>
アクセル操作がなされたまま、シフトレバーがDポジションからRポジションに操作(シフト切替操作)された場合、駆動モータ13の運転状態が正転方向の回生運転となるよう、目標トルクが負の値に設定される。駆動モータ13が正転方向に回生運転される場合であるから、MG2回転数からハイブリッド車両1の前進方向の加速度が負の所定値以下となる駆動モータ13のモータトルクが求められて、その負の値となるモータトルクが下限トルクとして設定される。
【0078】
この状態において、目標トルクがMG回転数に応じて設定される下限トルクよりも小さい(負の値として大きい)場合、最大値出力部51では、目標トルクと下限トルクとの比較の結果、下限トルクが出力値として選択される。したがって、第1選択部52の第1入力ポートには、最大値出力部51から下限トルクが入力される。最大値出力部51の第2入力ポートには、下限トルクよりも小さい目標トルクが入力される。シフトポジションがDポジションからRポジションに変更されたので、第1SW判定条件4が成立し、その他の第1SW判定条件1~3も成立している場合、第1選択部52の第1入力ポートに入力される下限トルクが第1選択部52から出力される。第1選択部52から出力される下限トルクは、最小値出力部53の第2入力ポートおよび第2選択部54の第2入力ポートの両方に入力される。最小値出力部53では、第1入力ポートに入力される上限トルクと、第2入力ポートに入力される下限トルクとが比較される。下限トルクが上限トルクよりも小さいので、最小値出力部53から下限トルクが出力され、その下限トルクが第2選択部54の第1入力ポートに入力される。シフトポジションがDポジションからRポジションに変更されたので、第2SW判定条件5が少なくとも成立するため、第2選択部54の第2入力ポートに入力される下限トルクが第2選択部54から制限後目標トルクとして出力される。
【0079】
すなわち、発電モータ12がエンジン11の動力で発電しながら、ハイブリッド車両1が前進走行している状態で、アクセル操作がなされたまま、シフトレバーがDポジションからRポジションに操作された場合であって、目標トルクが下限トルクよりも小さい場合には、目標トルクが下限トルクで制限されて、下限トルクが制限後目標トルクとされる。
【0080】
<Rレンジ走行中のトルク制限処理>
アクセル操作がなされて、発電モータ12がエンジン11の動力で発電しながら、シフトポジションがRポジションのまま、ハイブリッド車両1が前進走行している場合、駆動モータ13の目標トルクが負の値に設定されて、駆動モータが逆転方向に力行運転されている。
【0081】
この状態において、目標トルクがMG回転数に応じて設定される下限トルクよりも小さい場合、最大値出力部51では、目標トルクと下限トルクとの比較の結果、下限トルクが出力値として選択される。したがって、第1選択部52の第1入力ポートには、最大値出力部51から下限トルクが入力される最大値出力部51の第2入力ポートには、下限トルクよりも小さい目標トルクが入力される。シフトポジションがRポジションから変更されていないので、第1SW判定条件4が少なくとも成立せず、第1選択部52から目標トルクが出力される。第1選択部52から出力される目標トルクは、最小値出力部53の第2入力ポートおよび第2選択部54の第2入力ポートの両方に入力される。最小値出力部53では、第1入力ポートに入力される上限トルクと、第2入力ポートに入力される目標トルクとが比較される。目標トルクが上限トルクよりも小さいので、最小値出力部53から目標トルクが出力され、その目標トルクが第2選択部54の第1入力ポートに入力される。シフトポジションがDポジションから変更されていないので、第2SW判定条件4が少なくとも成立せず、第2選択部54の第2入力ポートに入力される目標トルクが第2選択部54から制限後目標トルクとして出力される。
【0082】
すなわち、アクセル操作がなされて、発電モータ12がエンジン11の動力で発電しながら、シフトポジションがRポジションのまま、ハイブリッド車両1が前進走行している場合、目標トルクが下限トルクより小さくても、目標トルクがそのまま制限後目標トルクとされる。
【0083】
<シフト切替操作R→D時のトルク制限処理>
アクセル操作がなされたまま、シフトレバーがRポジションからDポジションに操作(シフト切替操作)された場合、駆動モータ13の運転状態が逆転方向の回生運転となるよう、目標トルクが正の値に設定される。駆動モータ13が逆転方向に回生運転される場合であるから、MG2回転数からハイブリッド車両1の前進方向の加速度が正の所定値以下となる駆動モータ13のモータトルクが求められて、その正の値となるモータトルクが上限トルクとして設定される。
【0084】
この状態において、目標トルクがMG回転数に応じて設定される上限トルクよりも大きい場合、最大値出力部51では、目標トルクと下限トルクとの比較の結果、目標トルクが出力値として選択される。したがって、第1選択部52の第1入力ポートには、最大値出力部51から目標トルクが入力される。最大値出力部51の第2入力ポートには、下限トルクよりも大きい目標トルクが入力される。シフトポジションがRポジションからDポジションに変更されたので、第1SW判定条件5が少なくとも成立するため、第1選択部52の第2入力ポートに入力される目標トルクが第1選択部52から出力される。第1選択部52から出力される目標トルクは、最小値出力部53の第2入力ポートおよび第2選択部54の第2入力ポートの両方に入力される。最小値出力部53では、第1入力ポートに入力される上限トルクと、第2入力ポートに入力される目標トルクとが比較される。上限トルクが目標トルクよりも小さいので、最小値出力部53から上限トルクが出力され、その上限トルクが第2選択部54の第1入力ポートに入力される。シフトポジションがRポジションからDポジションに変更されたので、第2SW判定条件4が成立し、その他の第1SW判定条件1~3も成立している場合、第2選択部54の第1入力ポートに入力される上限トルクが第2選択部54から制限後目標トルクとして出力される。
【0085】
すなわち、発電モータ12がエンジン11の動力で発電しながら、ハイブリッド車両1が後進走行している状態で、アクセル操作がなされたまま、シフトレバーがRポジションからDポジションに操作された場合であって、目標トルクが上限トルクよりも大きい場合には、目標トルクが上限トルクで制限されて、上限トルクが制限後目標トルクとされる。
【0086】
<シフト判定処理>
図4は、シフト判定処理の内容を示すブロック図である。
【0087】
HV-ECU41には、シフト判定処理のためのソフトウェア(プログラム)が組み込まれていてよいし、シフト判定処理のためのハードウェア(回路)が備えられていてもよい。
【0088】
HV-ECU41は、シフト判定処理のための機能処理部として、必要電力演算部61、充電可能電力演算部62、比較部63および選択部64を実質的に有している。
【0089】
トルク制限処理では、前述したように、シフトレバーがDポジションからRポジションに操作された場合、目標トルクが下限トルクで制限され、シフトレバーがRポジションからDポジションに操作された場合、目標トルクが上限トルクで制限される。シフト判定処理は、シフト切替操作が行われたと判断された直後に行われる処理である。シフト切替操作がDポジションからRポジションへの操作であった場合、必要電力演算部61は、下限トルクとMG2回転数とから、駆動モータ13に必要とされる電力、ここでは、駆動モータ13の回生運転による回生電力をMG2必要電力として算出する。シフト切替操作がRポジションからDポジションへの操作であった場合、必要電力演算部61は、上限トルクとMG2回転数とから、駆動モータ13に必要とされる電力、ここでは、駆動モータ13の回生運転による回生電力をMG2必要電力として算出する。
【0090】
充電可能電力演算部62は、電池14への充電が許容される電力の上限である充電許容電力から、発電モータ12の発電運転により発生する発電電力の実値であるMG1実出力を減算することにより、駆動モータ13の回生電力を電池14に充電可能な電力であるMG2充電可能電力を算出する。
【0091】
比較部63では、MG2必要電力とMG2充電可能電力との大小が比較される。
【0092】
そして、トルク制限処理では、シフトレバーがDポジションからRポジションに操作された場合には、次の第3SW判定条件1~3が成立しているか否かが判定される。
【0093】
1.シフトレンジがRレンジ以外であり、シフトポジションがRポジションである
2.MG2回転数が予め定められた回転数閾値より大きい
3.MG2必要電力がMG2充電可能電力より大きい
【0094】
シフトレバーがRポジションからDポジションに操作された場合には、次の第4SW判定条件1~3が成立しているか否かが判定される。
【0095】
1.シフトレンジがD/Bレンジ以外であり、シフトポジションがD/Bポジションである
2.MG2回転数が予め定められた回転数閾値より小さい
3.MG2必要電力がMG2充電可能電力より大きい
【0096】
選択部64は、第1入力ポートおよび第2入力ポートを有している。第1入力ポートには、Nレンジを指定する情報が入力され、第2入力ポートには、シフトポジションに応じたシフトレンジを指定する情報が入力されている。第3SW判定条件1が成立し、第3SW判定条件2または第3SW判定条件3が成立している場合、または、第4SW判定条件1が成立し、第4SW判定条件2または第4SW判定条件3が成立している場合には、選択部64は、第1入力ポートに入力されている情報、つまりNレンジを指定する情報を選択して出力する。これにより、シフト判定処理では、シフトポジションにかかわらずNレンジがシフト判定の結果とされる。
【0097】
シフト判定処理によるシフト判定の結果がNレンジである場合、シフト切替制御では、駆動モータ13の目標トルクが0に設定される。
【0098】
一方、シフトレバーがDポジションからRポジションに操作された場合であって、第3SW判定条件1が成立していないか、または、第3SW判定条件2および第3SW判定条件3の両方が成立していない場合には、選択部64は、第2入力ポートに入力されている情報、つまりシフトポジションに応じたシフトレンジを指定する情報を選択して出力する。また、シフトレバーがRポジションからDポジションに操作された場合であって、第4SW判定条件1が成立していないか、または、第4SW判定条件2および第4SW判定条件3の両方が成立していない場合には、選択部64は、第2入力ポートに入力されている情報、つまりシフトポジションに応じたシフトレンジを指定する情報を選択して出力する。これらの場合、シフト判定処理では、シフトポジションに応じたシフトレンジがシフト判定の結果とされる。
【0099】
<作用効果>
以上のように、駆動モータ13の目標トルクが設定されて、駆動モータ13の運転が制御されることにより、駆動モータ13から目標トルクに一致するモータトルクが出力される。
【0100】
ハイブリッド車両1の前後進を切り替える指示が入力されると、駆動モータ13が力行運転から回生運転を経て逆方向の力行運転に切り替わる。駆動モータ13が回生運転に切り替わる前に、発電モータ12が発電を行っていた場合、駆動モータ13の回生運転が開始されても、発電モータ12の応答遅れにより、発電モータ12の発電が継続することがある。この場合、駆動モータ13の回生と発電モータ12の発電とが重なって、駆動モータ13の回生電力と発電モータ12の発電電力との合計が電池14の充電許容電力を超えるおそれがあり、その合計が充電許容電力を超えると、駆動モータ13の回生電力が制限されて、駆動モータ13の回生による制動力が変動する。そこで、駆動モータ13の回生電力が制限される前に、トルク制限処理により、駆動モータ13の目標トルクに制限(上限トルクまたは下限トルク)が設定される。これにより、駆動モータ13の回生と発電モータ12の発電とが重なっても、駆動モータ13の回生電力と発電モータ12の発電電力との合計が電池14の充電許容電力を超えることを抑制でき、駆動モータ13の回生による制動力が変動することを抑制できる。その結果、ハイブリッド車両1がユーザの意図しない挙動を示すことを抑制できる。
【0101】
また、駆動モータ13の回生電力と発電モータ12の発電電力との合計が電池14の充電許容電力を超えることを抑制できるので、充電許容電力が電池14に供給されることによる電池14の劣化を防止できる。
【0102】
目標トルクに制限が設定されても、電池14に充電される電力が充電許容電力を超えることになる場合、シフト判定処理によるシフト判定の結果がシフトポジションにかかわらずNレンジとされて、駆動モータ13の目標トルクが0に設定される。これにより、駆動モータ13の回生電力と発電モータ12の発電電力との合計が電池14の充電許容電力を超えることを防止できる。その結果、駆動モータ13の回生制動力の変動を防止することができる。
【0103】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0104】
たとえば、前述の実施形態では、HV-ECU41によりエンジン11の運転が制御されるとしたが、エンジンECUが設けられて、HV-ECU41からエンジンECUに送信されるエンジン制御指令に従って、エンジンECUによりエンジン11の運転が制御されてもよい。
【0105】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1:ハイブリッド車両
11:エンジン
12:発電モータ(発電機)
13:駆動モータ
14:電池
16:駆動系
41:HV-ECU(制御装置、駆動モータ制御手段、制限設定手段)
図1
図2
図3
図4