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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】移動体
(51)【国際特許分類】
   A63G 31/16 20060101AFI20240814BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240814BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240814BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
A63G31/16
G06T7/00 660Z
G09G5/00 510A
G09G5/00 510Q
G09G5/00 510V
B60R11/02 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020208948
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096058
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川島 睦
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 知明
(72)【発明者】
【氏名】則武 雅人
(72)【発明者】
【氏名】西川 信広
(72)【発明者】
【氏名】来間 政人
(72)【発明者】
【氏名】西川 徳行
(72)【発明者】
【氏名】富田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 貴章
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大策
【審査官】前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-513956(JP,A)
【文献】特開2014-175704(JP,A)
【文献】特開2015-222881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0355178(US,A1)
【文献】特開2011-075848(JP,A)
【文献】特開2019-009598(JP,A)
【文献】特開2007-036538(JP,A)
【文献】特開2002-256713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63G 1/00-33/00
G09G 5/00- 5/42
G06T 7/00- 7/90
B60R 9/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエリアの利用者を輸送する移動体であって、
前記移動体の内面に設けられた表示範囲である仮想窓に映像を表示する第一表示器と、
前記仮想窓を窓と仮定した場合に本来得られる車窓映像を部分的に変化させた演出映像を生成し、前記仮想窓に表示させる表示コントローラと、
を備え
前記表示コントローラは、乗員にとって不快な走行イベントが発生した際には、当該走行イベントがキャラクタの存在により発生したと誤認させる前記演出映像を生成し、表示させる、
ことを特徴とする移動体。
【請求項2】
請求項1に記載の移動体であって、
前記表示コントローラは、演出映像の生成のために、前記車窓映像に含まれる人物の体の一部またはすべてをキャラクタに変換する、ことを特徴とする移動体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の移動体であって、
前記表示コントローラは、演出映像の生成のために、前記車窓映像に含まれる複数の人物の少なくとも1以上を透明に変換する、ことを特徴とする移動体。
【請求項4】
請求項3に記載の移動体であって、
前記表示コントローラは、前記演出映像に含まれる人物またはキャラクタの数が規定の基準数以下になるように、前記透明に変換する人物の数を決定する、ことを特徴とする移動体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の移動体であって、
前記所定のエリアは、互いに異なるテーマを持つ複数のゾーンに分割されており、
前記表示コントローラは、前記車窓映像の変換内容を、前記移動体が位置するゾーンのテーマに合わせて変化させる、ことを特徴とする移動体。
【請求項6】
請求項5に記載のいずれか1項に記載の移動体であって、
前記表示コントローラは、前記移動体が前記ゾーンの境界近傍に位置する場合、前記移動体が前記ゾーンの中心に位置する場合に比べて、前記演出映像に含まれるコンテンツ要素を低減する、ことを特徴とする移動体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の移動体であって、さらに、
前記演出映像と連動して、キャラクタの存在を感じさせる振動、音、臭い、湿気、風の少なくとも一つを発生させる演出装置を備える、ことを特徴とする移動体。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の移動体であって、さらに、
前記移動体の内部に設けられた表示範囲である仮想ミラーに映像を表示させる第二表示器を備え、
前記表示コントローラは、前記仮想ミラーを鏡と仮定した場合に本来得られる鏡映像に含まれる人物の体の一部または全部をキャラクタに変換させた仮想ミラー画像を生成し、前記仮想ミラーに表示する、ことを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、所定のエリアの利用者を輸送する移動体を開示する。
【背景技術】
【0002】
非日常的な世界観を持つ所定のエリア、例えば、遊園地やテーマパーク等のパークでは、利用者が所望の目的地に移動するために、車両等の移動体が利用されることがある。こうした移動体を用いて移動している期間中も、利用者が楽しめるように、特定の演出を行うことが一部で提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両の移動ルートに沿って、人工の娯楽手段、例えば、背景物やウォーターカーテン、恐竜模型等を配置し、車両の移動に伴い車外の状況を変化させる技術が開示されている。かかる技術によれば、利用者は、移動中も、パークの世界観にあった演出で楽しむことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-342858号公報
【文献】国際公開2017/208719号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、パークの世界観を維持するためには、車両から見える範囲内に、意図しない人や車両を存在させないことが必要となる。そのため、特許文献1の技術の場合、車両の移動ルート周辺の比較的広範な範囲において、人や車両の立ち入りを禁止しなければならなかった。換言すれば、特許文献1では、演出のために専用かつ広範なスペースが必要であった。
【0006】
なお、特許文献2には、移動体に設けられた表示部に、外部の風景とともに、コンテンツ映像を重畳して表示させる技術が開示されている。この特許文献2の技術を、パーク内で利用される移動体に適用することも考えられる。すなわち、移動体に設けられた表示部に、パークの世界観に適したコンテンツ映像を表示させることで利用者を楽しませることも考えられる。しかし、特許文献2において、表示されるコンテンツ映像は、外部の風景とは無関係の映像、例えば、映画等であり、車外の実際の状況との連携性がない。そのため、特許文献2で提供されるコンテンツ映像では、リアリティが乏しく、パークの世界への没入感が十分に得られない。
【0007】
そこで、本明細書では、演出のために専用のスペースを用意することなく、所定のエリアの世界観への没入感をより向上できる移動体を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する移動体は、所定のエリアの利用者を輸送する移動体であって、前記移動体の内面に設けられた表示範囲である仮想窓に映像を表示する第一表示器と、前記仮想窓を窓と仮定した場合に本来得られる車窓映像を部分的に変化させた演出映像を生成し、前記仮想窓に表示させる表示コントローラと、を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成とすることで、移動体の周囲に広範な専用スペースを設けなくても、エンターテイメント性に富んだ車窓を乗員に提供できる。また、提供される演出映像は、実際の車窓映像の一部を変化させたものであるため、リアリティ性に優れている。その結果、乗員に、実際に所定のエリアがテーマとする想像の世界に来たような印象を与えることができ、乗員の所定のエリアの世界への没入感をより向上できる。
【0010】
この場合、前記表示コントローラは、演出映像の生成のために、前記車窓映像に含まれる人物の体の一部またはすべてをキャラクタに変換してもよい。
【0011】
このように実際に所定のエリアにいる人物をキャラクタに変換することで、よりリアリティのある演出映像を提供できる。
【0012】
また、前記表示コントローラは、演出映像の生成のために、前記車窓映像に含まれる複数の人物の少なくとも1以上を透明に変換してもよい。
【0013】
かかる構成とすることで、乗員は、車外の人物に邪魔されることなく、所定のエリアの風景を楽しむことができる。
【0014】
この場合、前記表示コントローラは、前記演出映像に含まれる人物またはキャラクタの数が規定の基準数以下になるように、前記透明に変換する人物の数を決定してもよい。
【0015】
かかる構成とすることで、演出映像における人物およびキャラクタの密度を低減でき、所定のエリアの風景も楽しむことができる。
【0016】
また、前記所定のエリアは、互いに異なるテーマを持つ複数のゾーンに分割されており、前記表示コントローラは、前記車窓映像の変換内容を、前記移動体が位置するゾーンのテーマに合わせて変化させてもよい。
【0017】
かかる構成とすることで、乗員は、変化にとんだ演出を受けることができ、乗員をより楽しませることができる。
【0018】
この場合、前記表示コントローラは、前記移動体が前記ゾーンの境界近傍に位置する場合、前記移動体が前記ゾーンの中心に位置する場合に比べて、前記演出映像に含まれるコンテンツ要素を低減してもよい。
【0019】
かかる構成とすることで、乗員に、一つのテーマのゾーンから違うテーマのゾーンに移行することを意識させることができる。
【0020】
また、さらに、前記演出映像と連動して、キャラクタの存在を感じさせる振動、音、臭い、湿気、風の少なくとも一つを発生させる演出装置を備えてもよい。
【0021】
かかる構成とすることで、映像だけでは表現できない演出を行うことができ、リアリティ感をより高めることができる。
【0022】
また、前記表示コントローラは、乗員にとって不快な走行イベントが発生した際には、当該走行イベントがキャラクタの存在により発生したと誤認させる前記演出映像を生成し、表示させてもよい。
【0023】
かかる構成とすることで、乗員にとって不快な走行イベントを、乗員にとって楽しいイベントに変えることができる。
【0024】
また、さらに、前記移動体の内部に設けられた表示範囲である仮想ミラーに映像を表示させる第二表示器を備え、前記表示コントローラは、前記仮想ミラーを鏡と仮定した場合に本来得られる鏡映像に含まれる人物の体の一部または全部をキャラクタに変換させた仮想ミラー画像を生成し、前記仮想ミラーに表示してもよい。
【0025】
かかる構成とすることで、乗員に、自分自身が所定のエリアの世界の一部になったような印象を与えることができ、乗員の所定のエリアの世界観への没入感をより向上できる。
【発明の効果】
【0026】
本明細書で開示する移動体によれば、演出のために専用のスペースを用意することなく、所定のエリアの世界観への没入感をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】移動体が利用されるテーマパークの構成を示すイメージ図である。
図2】移動体の構成を示すブロック図である。
図3】車窓映像の一例を示す図である。
図4】演出映像の一例を示す図である。
図5図4の演出映像の生成の流れを示すイメージ図である。
図6】演出映像の他の一例を示す図である。
図7】演出映像の他の一例を示す図である。
図8図7の演出映像の生成の流れを示すイメージ図である。
図9】透明化する人物の選定方法の一例を示す図であり、車窓映像の一例を示す図である。
図10図9の車窓映像に基づいて生成された演出映像の一例を示す図である。
図11】急ブレーキが生じた場合の演出映像の一例を示す図である。
図12】演出装置の構成の一例を示すブロック図である。
図13】仮想ミラー機能の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して移動体10の構成について説明する。図1は、移動体10が利用される所定のエリアであるテーマパーク100の構成を示すイメージ図である。この移動体10は、所定のテーマパーク100の利用者を輸送するために設けられている。テーマパーク100は、いくつかのゾーンに分割されており、ゾーンごとに、テーマが設定されている。以下で、猫をテーマとする第一ゾーンA1と、天使をテーマとする第二ゾーンA2と、ロボットをテーマとする第三ゾーンA3と、を有するテーマパーク100を例に挙げて説明する。
【0029】
このテーマパーク100には、三つのゾーンA1~A3に跨る環状の走行ルート110が設定されている。移動体10は、この走行ルート110に沿って走行する。また、走行ルート110には、複数の停留所(図示せず)が設定されている。移動体10は、利用者の乗降のために、各停留所に停車する。したがって、本例において、移動体10は、不特定多数の利用者を、停留所に輸送する乗り合いバスとして機能する。
【0030】
ただし、移動体10の運用形態は、上記に限定されず、適宜、変更されてもよい。したがって、移動体10は、規定の走行ルートを持たず、利用者の指示に応じて自由に走行ルートを選択できるのでもよい。また、移動体10は、不特定多数の人間が利用するものではなく、予め割り当てられた個人またはグループ(例えば家族等)のみが利用可能であってもよい。また、本例の移動体10は、手動または自動で走行可能な車両である。ただし、移動体10は、利用者を輸送できるのであれば、車両に限らず、他の形態、例えば、船舶でもよい。移動体10が船舶の場合、走行ルート110には、運河を構成するように、水が引き込まれる。
【0031】
移動体10は、ある程度閉鎖された内部空間を有している。移動体10は、この内部空間にいる利用者に対して、パークの世界への没入感を向上できる演出を提供する。図2は、移動体10の構成を示すブロック図である。なお、図2では、演出提供に関係する要素のみを図示している。以下、各要素について説明する。
【0032】
第一表示器18は、車両の内面、例えば、側面や前面等に演出映像を表示する。演出映像は、後に詳説するが、第一表示器18の表示範囲を、窓と仮定した場合に得られる車窓映像に演出処理を施した映像である。したがって、第一表示器18の表示範囲は、移動体10の外の様子を映す仮想窓19として機能する。この第一表示器18は、一つでもよいし、複数設けられてもよい。かかる第一表示器18は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイおよびプロジェクタの少なくとも一つを有してもよい。また、第一表示器18は、映像を表示しない状態では、透明な窓として機能する透明ディスプレイを有してもよい。
【0033】
第一カメラ16は、移動体10の外側を撮影するもので、第一表示器18の表示範囲を窓と仮定した場合に得られる車窓映像を取得する。一つの車窓映像は、単一の第一カメラ16で取得されてもよいし、複数の第一カメラ16で得られた複数の映像を合成して、一つの車窓映像を取得するようにしてもよい。いずれにしても、この第一カメラ16の個数および配置は、第一表示器18の表示範囲(すなわち仮想窓19)の位置、姿勢、およびサイズに応じて設定される。
【0034】
表示コントローラ14は、第一表示器18の表示を制御する。具体的には、表示コントローラ14は、車窓映像を部分的に変化させた演出映像を生成し、第一表示器18に表示させる。表示コントローラ14は、物理的には、プロセッサ14aとメモリ14bとを有したコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサ14aは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス等)を含むものである。また、以下に述べるプロセッサ14aの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。同様に、メモリ14bも、物理的に一つの要素である必要はなく、物理的に離れた位置に存在する複数のメモリで構成されてもよい。また、メモリ14bは、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。また、一つコンピュータが、表示コントローラ14として機能するとともに、後述する車両コントローラ12または演出コントローラ44としても機能するのでもよい。
【0035】
表示コントローラ14のメモリ14bには、種々の画像処理プログラムが記憶されている。プロセッサ14aが、これらの画像処理プログラムに従って演算を実行することで、演出映像が生成される。また、表示コントローラ14のメモリ14bには、演出映像の生成の際に利用される各種データも記憶されている。こうした表示コントローラ14による演出映像24の生成については、後に詳説する。
【0036】
移動体10は、さらに、車両コントローラ12および演出装置20を有している。車両コントローラ12は、移動体10の走行を制御する。この車両コントローラ12も、表示コントローラ14と同様に、プロセッサとメモリとを有したコンピュータである。この車両コントローラ12には、オペレータから入力される指示、および、各種センサでの検知結果に基づいて、移動体10の駆動系を制御する。ここで、オペレータは、移動体10の走行操作を行う人のことであり、移動体10に乗っている運転手でもよいし、移動体10の外部に設けられた管理センタにおいて遠隔で走行操作を行う人でもよい。また、センサは、移動体10の駆動系の状態を検出するセンサ(例えば車速センサ等)、および、移動体10の外部環境を検出するセンサ(例えば赤外線センサ、Lider、位置センサ、光学センサ等)を含んでいる。車両コントローラ12は、オペレータの指示に従い、これら各種センサの検出値に基づいて移動体10を自律的に走行させる。
【0037】
車両コントローラ12による制御内容やセンサでの検出値は、必要に応じて、表示コントローラ14に出力される。例えば、後述するように、表示コントローラ14は、移動体10の位置に応じて、演出映像の演出の内容を変化させる。そうした演出内容の変化を可能にするために、車両コントローラ12は、随時、位置センサ(例えばGPS等)での検出値を、表示コントローラ14に出力する。また、表示コントローラ14は、移動体10の走行状態、例えば、急ブレーキの有無等に応じても、演出映像の演出の内容を変化させる。そのため、車両コントローラ12は、駆動系に対して出力した指示内容の少なくとも一部を、随時、表示コントローラ14に出力する。
【0038】
演出装置20は、キャラクタの存在を感じさせる振動、音、臭い、湿気、および、風の少なくとも一つを発生させる装置である。この演出装置20は、振動等を発生させる発生装置と、これら発生装置の駆動を制御するコントローラと、を有しているが、詳細な構成については、後述する。
【0039】
次に、こうした移動体10において提供される演出について説明する。図3は、車窓映像22の一例を示す図であり、図4は、演出映像24の一例を示す図である。既述した通り、本例では、仮想窓19として機能する第一表示器18の表示範囲に、車窓映像22を部分的に変化させた演出映像24を表示させる。
【0040】
車窓映像22は、第一表示器18の表示範囲を窓と仮定した場合に得られる車窓の映像である。この車窓映像22は、図3に示すように、建築物や道路、樹木等の固定物32と、テーマパーク100の利用者である人物30と、が含まれる。演出映像24は、図4に示すように、車窓映像に含まれる人物30の体の一部または全てを所定のキャラクタに変換した映像である。図4の例では、演出映像24は、体の一部が猫のキャラクタに変換された人物30*を含んでいる。
【0041】
このように、テーマパーク100のテーマに沿った演出がほどこされた映像を、仮想窓19に表示することで、移動体10の乗員は、移動時間を楽しむことができるとともに、テーマパーク100の世界観により確実に浸ることができる。また、演出映像24は、車窓映像22の一部を変化した映像である。換言すれば、演出映像24は、車窓映像22という現実を含んだ映像である。そのため、演出映像24のリアリティ性が高くなり、テーマパーク100の世界観への没入感をより向上できる。
【0042】
図5は、こうした演出映像24の生成の流れの一例を示すイメージ図である。表示コントローラ14は、演出映像24を生成するために、予め、演出データ36を記憶している。この演出データ36は、演出のために、車窓映像22に追加または重畳されるコンテンツのデータである。かかる演出データ36には、例えば、テーマパーク100のテーマに沿ったキャラクタの各パーツ(例えば耳や衣装等)の3次元形状情報が含まれる。ここで、演出データ36で取り扱われるキャラクタは、一種類でもよいが、複数種類でもよい。キャラクタが複数種類、存在する場合、各キャラクタに、その特性、例えば、性別や体型、年齢等が対応付けて記憶されている。
【0043】
演出映像24を生成する場合、表示コントローラ14は、まず、車窓映像22を取得する。車窓映像22は、第一カメラ16で撮影された映像そのものでもよいが、第一カメラ16の撮影映像を編集して車窓映像22を生成してもよい。例えば、第一カメラ16の配置や画角によっては、撮影映像と車窓映像22との間に乖離が生じる場合がある。その場合には、複数の第一カメラ16で得られた複数の撮影映像を合成し、車窓映像22を生成してもよい。
【0044】
車窓映像22が得られれば、続いて、表示コントローラ14は、この車窓映像22から、人物30を抽出する。この人物30の抽出は、既知の顔検出あるいは人検出技術、例えば、Histograms of Oriented Gradients等の技術を用いることができる。また、一度、検出した人物30を、Tracking-by-Detection等の技術を利用して、追跡するようにしてもよい。
【0045】
いずれにしても、表示コントローラ14は、人物30を抽出できれば、続いて、当該人物30の姿勢および特徴を特定する。人物30の特徴は、性別や体型、年齢の少なくとも一つを含む。こうした人物30の姿勢および特徴は、抽出された人物画像に含まれる特徴点(例えば目や鼻、顎等)の位置関係や、体の輪郭形状等に基づいて特定できる。表示コントローラ14は、特定された人物30の特徴に基づいて、当該人物30に適したキャラクタを選定する。例えば、人物30が女性の場合には、女性のキャラクタを選定する。続いて、表示コントローラ14は、人物30の姿勢に基づいて、当該人物30の画像に重畳するキャラクタの画像を生成する。例えば、人物30が横向きの姿勢の場合、キャラクタも同じく横向きになった際に見える各パーツの画像を、当該キャラクタの3次元形状情報に基づいて生成する。
【0046】
キャラクタの画像が生成できれば、表示コントローラ14は、車窓映像22の人物30の前面に、キャラクタ画像を重畳し、演出映像24として生成する。生成された演出映像24は、第一表示器18の表示範囲、すなわち、仮想窓19に表示される。
【0047】
なお、適用されるキャラクタの種類は、移動体10が位置するゾーンによって変化させてもよい。具体的には、表示コントローラ14のメモリ14bには、演出データ36として、複数種類のキャラクタの情報が記録されているが、各キャラクタにゾーンが対応付けられている。例えば、猫に関係するキャラクタには、猫をテーマとする第一ゾーンA1が、天使に関係するキャラクタには、天使をテーマとする第二ゾーンA2が、それぞれ対応付けられている。移動体10は、車窓映像22に含まれる人物30に適用するキャラクタを選択する際には、現在の移動体10が位置するゾーンを特定する。そして、そのゾーンに対応するキャラクタの中から、人物30に適用するキャラクタを選択する。したがって、例えば、移動体10が、猫をテーマとする第一ゾーンA1に位置する場合、人物30は、図4に示すように、猫に関係するキャラクタに変換される。一方、移動体10が、天使をテーマとする第二ゾーンA2に位置する場合、人物30は、図6に示すように、天使に関係するキャラクタに変換される。このように、ゾーンに応じて異なる演出を施すことで、乗員は、多様な演出を受けることができ、エンターテイメント性が向上する。また、移動体10の実際の位置に応じて演出内容が異なるため、乗員は、自分が現在どこにいるのかを明確に把握することができる。
【0048】
また、これまでの説明では、車窓映像22のうち、人物30のみを変化させているが、人物30に加えて、または、替えて、人物30以外のものを変化させてもよい。例えば、車窓映像22に含まれる植物に目や口に対応する画像を重畳し、植物を、知能を有したキャラクタのように見せてもよい。また、車窓映像22に含まれていないコンテンツをさらに追加するのでもよい。例えば、演出映像を生成するために、車窓映像22に、巨大な猫の画像や、空を飛ぶ天使の画像等を重畳してもよい。このように、車窓映像22に、コンテンツ要素を新たに追加することで、よりエンターテイメント性の高い演出映像が生成できる。
【0049】
また、人物30をキャラクタに変換させるのではなく、人物30を透明化してもよい。すなわち、図3に示すような人物30が映り込んだ車窓映像22が得られた場合に、当該人物30が存在しないように画像処理を施したものを演出映像24として生成してもよい。図7は、図3の車窓映像22から生成される演出映像24の一例を示す図である。このように、車窓映像22から人物30を無くすことで、利用者は、テーマパーク100の風景を、他の人物に邪魔されることなく、見ることができる。
【0050】
図8は、こうした演出映像24の生成の流れの一例を示すイメージ図である。表示コントローラ14は、図7に示すような演出映像24を生成するために、予め、参照データ38を記憶している。参照データ38は、人物30の画像に替えて表示する画像に関するデータである。かかる参照データ38は、テーマパーク100に存在する多数の固定物32の3次元画像データでもよいし、テーマパーク100の閉園時間に撮影された車窓映像、すなわち、人物が映り込んでいない車窓映像でもよい。
【0051】
人物30を透明化した演出映像24を生成する場合、表示コントローラ14は、車窓映像22を取得し、この車窓映像22から、人物30を抽出する。続いて、表示コントローラ14は、この人物30に替えて表示する画像を、参照データ38に基づいて生成する。具体的には、表示コントローラ14は、移動体10の現在位置に基づいて、各種固定物32と移動体10との相対位置関係を特定する。続いて、特定された相対位置関係に基づいて人物30の後ろ側に存在する固定物32の画像(以下「置換画像39」と呼ぶ)を、参照データ38から抽出する。そして、表示コントローラ14は、車窓映像22の人物30が、抽出された置換画像39に置き換わるように、車窓映像22に置換画像39を合成し、演出映像24を生成する。この合成の際、表示コントローラ14は、置換画像39の色彩やエッジを、車窓映像22に応じて補正する。すなわち、固定物32の色合い等は、実際の天気や時刻、季節によって異なる。また、植物等の生物は、時間の経過とともに、その形状や色彩が変化する。そのため、参照データ38で示される固定物32の形状および色彩は、現在の固定物32の形状および色彩と異なる場合がある。そのため、表示コントローラ14は、現在の固定物32の形状および色彩を、車窓映像22から推測し、推測された形状および色彩に近づくように、置換画像を補正したうえで、車窓映像22に合成する。
【0052】
このような人物30の透明化は、車窓映像22に映り込んだ全ての人物30に対して行ってもよいし、一部の人物30にのみ行ってもよい。また、図7図8を参照して説明した人物30の透明化と、図4図5を参照して説明した人物30のキャラクタ化は、一つの車窓映像22に対して同時に行われてもよい。例えば、車窓映像22に10人の人物30が映り込んでいる場合、そのうち5人を透明化し、残りの5人をキャラクタに変換した映像を、演出映像24として生成してもよい。かかる構成とすることで、演出映像24に映り込むキャラクタの数を抑えることができ、利用者は、キャラクタおよびテーマパーク100の風景の双方を十分に楽しむことができる。
【0053】
表示コントローラ14は、透明化する人物30を決定するために、所定の基準を有していてもよい。例えば、表示コントローラ14は、演出映像24の1フレームに含まれる人物30(キャラクタに変換された人物30も含む)の数が、規定の基準数以下になるように、透明化する人物30の数を決定してもよい。例えば、基準数が10であるのに対して、車窓映像22の1フレームに30人の人物30が含まれる場合、表示コントローラ14は、当該フレームに映る20人の人物30を透明化する。透明化する人物30は、ランダムに選択するのでもよいし、人物30の分散がより均等になるように選択してもよい。また、表示コントローラ14は、フレームを複数のブロックに分割し、各ブロックに映り込む人物30の顔が規定のブロック上限値以下になるように、透明化する人物30を選定してもよい。これについて図9図10を参照して説明する。
【0054】
図9図10は、透明化する人物30の選定方法の一例を示す図である。図9は、車窓映像22の一例であり、図10は、車窓映像22に基づいて生成された演出映像24の一例である。車窓映像22を構成する各フレームは、いずれも、複数のブロックに分割されている。図示例では、車窓映像22の各フレームは、4×3の12のブロックに分割されている。以下では、ブロックの行を数字で、ブロックの列をアルファベットで示し、各ブロックを、この列のアルファベットおよび行の数字の組み合わせで表示する。例えば、図9において、最も左下のブロックは、「a1ブロック」と呼び、最も右上のブロックは、「d3ブロック」と呼ぶ。図10においても同じである。
【0055】
また、各ブロック内に記載された四角で囲った数字は、当該ブロックに設定された人物30の上限値、すなわち、ブロック上限値を示している。また、同じブロック内に記載された丸で囲った数字は、当該ブロックに実際に映り込んでいる人物30の数を示している。図9の例では、ブロック上限値として、1列目のブロック(すなわちa1ブロック、b1ブロック、c1ブロック、d1ブロック)は「0人」が設定されており、2列目のブロックは「1人」が設定されており、3列目のブロックは「2人」が設定されている。
【0056】
表示コントローラ14は、各ブロックに映り込んでいる人物30の数を特定する。ここでは、人物30の数は、人物30の「顔」で特定している。例えば、図9の例では、a3ブロックにおける人物30(正確には人物30の顔)の数は「2」であり、a2ブロックにおける人物30の数は「1」である。なお、一人の人物30の顔が、複数のブロックに跨って映り込む場合がある。例えば、図9における顔80aは、b1ブロックおよびb2ブロックに跨っている。かかる顔80aを、いずれのブロックの顔としてカウントするかは、顔80aの位置等に基づいて決定すればよい。例えば、b1ブロック内における顔80aの面積と、b2ブロック内における顔80aの面積とを比較し、面積がより大きいブロックの顔としてカウントしてもよい。図9の例では、顔80aは、b2ブロックの顔としてカウントされる。この場合、b1ブロックにおける人物30の数は「0」であり、b2ブロックにおける人物30の数は「2」となる。
【0057】
各ブロックにおける人物30の数がカウントできれば、続いて、表示コントローラ14は、各ブロックについて、ブロック上限値(図9において四角で囲った数字)と、カウントされた人物30の数(図9において丸で囲った数字)と、を比較する。そして、人物30の数がブロック上限値を上回っている場合には、ブロック上限値以下になるように、透明化する人物30を決定する。例えば、図9において、ブロックc2のブロック上限値は、「1」であるのに対し、顔の数は「3」となっている。そのため、この場合には、2人の人物30を透明化する人物30として選択する必要がある。このように複数の人物30の中から、透明化する人物30を選ぶ場合には、ブロック内における人物30の顔の位置や面積を考慮してもよい。例えば、ブロック内における顔の面積がより小さい人物30から、順に、透明化してもよい。また、別の形態として、ブロック内における顔の位置が、規定の基準位置(例えば、ブロックの中心位置等)からより遠い人物30から、順に、透明化してもよい。図9の例では、ブロック内における顔の面積がより小さい人物30から、順に、透明化している。
【0058】
このように選択された人物30を透明化することで、図10に示す演出映像24が得られる。図10から明らかなとおり、各ブロックに映り込む人物30の顔がブロック上限値以下になるように、透明化する人物30を選定することで、演出映像24では、人物30が適切に分散する。その結果、より自然でリアリティのある演出映像24が得られる。
【0059】
ところで、こうした演出映像24は、人物30と、建築物等の固定物32と、を含む。以下では、こうした演出映像24を構成する要素のことをコンテンツ要素と呼ぶ。こうしたコンテンツ要素の数を、移動体10の位置に応じて変化させてもよい。例えば、上述した通り、テーマパーク100は、複数のゾーンA1~A3に分割されている。このゾーンA1~A3の中心付近では、コンテンツ要素の数を多くし、ゾーンA1~A3の境界付近では、コンテンツ要素の数を少なくしてもよい。例えば、移動体10が図1における位置P2に位置する場合、移動体10が図1における位置P1に位置する場合に比べて、演出映像24に含まれるコンテンツ要素を低減してもよい。コンテンツ要素の低減方法としては、移動体10が、ゾーンの境界に近づくにつれて、徐々に、演出映像24に含まれるコンテンツ要素の個数を減らしていくのでもよい。また、別の形態として、移動体10が、ゾーンの境界に近づくにつれて、徐々に、演出映像24の明度を落とし、ゾーンの境界付近では、演出映像24を黒一色にしてもよい。かかる構成とすることで、乗員に、一つのテーマのゾーンから違うテーマのゾーンに移行することを意識させることができる。
【0060】
また、これまでの説明では、移動体10の走行状態とは無関係に、演出映像24を生成していたが、移動体10の走行状態に連動して、演出映像24の内容を変更してもよい。具体的には、移動体10は、安定的に走行することが求められているが、何等かの理由で、乗員にとって不快な走行イベントが発生する場合がある。例えば、移動体10は、危険を回避する目的で急ブレーキがかかる場合がある。こうした急ブレーキは、乗員に不意に大きな慣性力が働き、乗員にとって不快な走行イベントとなる。かかる場合において、当該急ブレーキが、キャラクタの存在により発生したと誤認させる演出映像24を生成してもよい。例えば、急ブレーキがかかった場合、図11に示すように、移動体10の前面に位置する仮想窓19に、巨大な猫のキャラクタ31が移動体10の走行を止めたような映像を含む演出映像24を表示してもよい。また、移動体10は、当該移動体10の前方を横断する人や、信号の影響で、一時的に停止する場合がある。こうした一時停止は、乗員にとっては、移動時間の長期化の原因となり、乗員にとって不快な走行イベントとなる。かかる場合には、例えば、移動体10の前面に位置する仮想窓19に、巨大な猫のキャラクタが移動体10の前方で眠り込んでおり、この猫が原因で、移動体10が停止していると誤認させるような演出映像24を表示してもよい。
【0061】
このように、乗員にとって不快な走行イベントが発生した場合に、当該走行イベントが、キャラクタの存在により発生した誤認させる演出映像24を表示することで、乗員にとって不快な走行イベントを、乗員が楽しめるイベントにすることができる。その結果、乗員に、テーマパーク内での移動をより楽しませることができる。特に、こうした不快な走行イベントは、頻繁に生じるものではないため、この不快な走行イベントに連動した演出映像24は、希少性の高い映像といえる。かかる希少性の高い映像を見ることで、乗員の満足感がより高まる。
【0062】
こうした演出映像24を生成するために、表示コントローラ14は、予め、乗員にとって不快な走行イベントごとに、対応するイベント映像を予め記憶している。また、表示コントローラ14は、既述した通り、車両コントローラ12が駆動系に対して出力した指示内容の少なくとも一部を、車両コントローラ12から受け取っている。そして、表示コントローラ14は、車両コントローラ12から受け取った指示内容に基づいて、乗員にとって不快な走行イベントの発生の有無を監視する。監視の結果、乗員にとって不快な走行イベントが発生した場合には、当該イベントに対応付けられたイベント映像、例えば、巨大な猫が移動体10を止める映像等を、人物30をキャラクタ化または透明化した演出映像24に合成し、第一表示器18に表示させる。
【0063】
また、本例の移動体10は、上記した演出映像24に連動して、または、演出映像24とは独立して、キャラクタの存在を、聴覚、嗅覚、触覚の少なくとも一つで感じさせる演出を行う演出装置20を有している。図12は、この演出装置20の構成の一例を示すブロック図である。演出装置20は、噴霧器46、エア噴射器48、スピーカ50、臭気発生器52、振動発生器54、および、これらの駆動を制御する演出コントローラ44を有している。
【0064】
噴霧器46は、移動体10内にミスト、ひいては、湿気を発生させるもので、例えば、水を圧縮するポンプおよび圧縮された水を噴射するノズルを含む。また、エア噴射器48は、移動体10内にエアを噴射し、風を発生させるもので、例えば、エアを圧縮するコンプレッサを含む。スピーカ50は、音声を出力する。臭気発生器52は、1以上の臭気源を有しており、当該臭気源を通過した空気を移動体10内に出力する。振動発生器54は、移動体10全体、あるいは、乗員が着座する座席に振動を発生させるもので、モータや油圧シリンダ、空圧シリンダ等のアクチュエータを含む。
【0065】
演出コントローラ44は、表示コントローラ14と同様に、プロセッサとメモリとを有したコンピュータである。この演出コントローラ44は、表示コントローラ14からの指示に応じて、噴霧器46等を駆動し、キャラクタの存在を、聴覚、嗅覚、触覚の少なくとも一つで感じさせる演出を行う。
【0066】
例えば、小動物のキャラクタが乗員の足元を素早く走り抜けたかのような印象を乗員に与えるために、乗員の足元付近で水平方向に進む風をエア噴射器48で発生させてもよい。また、別の形態として、移動体10の屋根の上にキャラクタが飛び乗ったかのような印象を乗員に与えるために、移動体10全体を振動発生器54で大きく揺らすとともに、キャラクタが移動体10の屋根に飛び乗ったような音をスピーカ50で発生させてもよい。また、別の形態として、独特の臭いを持つキャラクタ(例えば花の香りがする花の妖精のキャラクタ等)が近くにいるかのような印象を乗員に与えるために、その臭いを臭気発生器52で発生させてもよい。また、別の形態として、湿度の高い環境下にいるキャラクタ(例えばカエルのキャラクタ等)が近くにいるかのような印象を乗員に与えるために、ミストを噴霧器で発生させてもよい。
【0067】
かかる演出装置20を設けることで、映像だけでは表現できない演出を行うことができ、リアリティ感をより高めることができる。そして、結果として、利用者のパークの世界観への没入感をより向上できる。
【0068】
また、本例の移動体10は、さらに、図13に示すように、第二カメラ60および第二表示器62を有していてもよい。第二カメラ60および第二表示器62は、乗員に仮想ミラー機能を提供するために設けられている。
【0069】
第二表示器62は、移動体10の内部に設けられており、その表示範囲は、仮想ミラー63として機能する。第二表示器62の表示範囲、すなわち、仮想ミラー63には、鏡のような装飾が施されており、例えば、その周縁が木製の額で囲われている。かかる第二表示器62は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイおよびプロジェクタの少なくとも一つを有してもよい。
【0070】
第二カメラ60は、仮想ミラー63に対向する箇所を撮影するもので、第二表示器62の表示範囲を鏡と仮定した場合に得られる鏡画像64を取得する。一つの鏡画像64は、単一の第二カメラ60で取得された映像を鏡像反転して取得されてもよい。また、別の形態として、複数の第二カメラ60で得られた複数の映像を合成して、一つの鏡画像64を取得するようにしてもよい。いずれにしても、この第二カメラ60の個数および配置は、仮想ミラー63の位置、姿勢、サイズに応じて設定される。
【0071】
表示コントローラ14は、第二カメラ60で鏡画像64が得られれば、当該鏡画像64から人物を抽出し、この人物30の体の一部または全てを、キャラクタに変換させた仮想ミラー画像66を生成し、第二表示器62で表示させる。変換させるキャラクタの種類は、表示コントローラ14側で自動的に決定してもよいし、各乗員が自由に選択できるようにしてもよい。
【0072】
いずれにしても、仮想ミラー63の正面に位置する乗員に、仮想ミラー画像66を提供することで、当該乗員は、自分自身がキャラクタに変身し、パークの世界の一員になったような印象を持つことができる。そして、これにより、パークの世界観への乗員の没入感をより向上できる。
【0073】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、少なくとも、移動体10の内面に設けられた第一表示器18の表示範囲(仮想窓19)に、車窓映像を部分的に変化させた演出映像を表示するのであれば、その他の構成は、適宜、変更されてもよい。例えば、これまでの説明では、パーク内のみを移動する移動体10を例に挙げて説明したが、所定のエリアの利用者を輸送するのであれば、移動体10は、所定のエリアの外部を移動してもよい。例えば、移動体10は、パークの外側にある施設、例えば、駐車場や宿泊施設とパークとの間で利用者を輸送するシャトルバスでもよい。この場合、移動体10とパークとの距離に応じて、車窓映像22に加える演出量を増減させてもよい。例えば、移動体10がパークに近づくにつれて、徐々に、キャラクタに変換させる人物30の数を増加させてもよい。かかる構成とすることで、乗員は、パークに徐々に近づいていることをより実感することができ、パークへの期待感を高めることができる。
【符号の説明】
【0074】
10 移動体、12 車両コントローラ、14 表示コントローラ、16 第一カメラ、18 第一表示器、19 仮想窓、20 演出装置、22 車窓映像、24 演出映像、30 人物、32 固定物、36 演出データ、38 参照データ、39 置換画像、44 演出コントローラ、46 噴霧器、48 エア噴射器、50 スピーカ、52 臭気発生器、54 振動発生器、60 第二カメラ、62 第二表示器、63 仮想ミラー、64 鏡画像、66 仮想ミラー画像、100 テーマパーク、110 走行ルート。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13