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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-13
(45)【発行日】2024-08-21
(54)【発明の名称】被膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20240814BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20240814BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240814BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240814BHJP
   C09D 5/29 20060101ALI20240814BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20240814BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240814BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20240814BHJP
【FI】
B05D1/36 B
B05D5/06 101Z
B05D7/24 303A
C09D5/00 D
C09D5/29
C09D7/40
C09D201/00
E04F13/02 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020210579
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022097160
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】599071496
【氏名又は名称】ベック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】五呂 遼典
(72)【発明者】
【氏名】金野 克博
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-3544(JP,A)
【文献】登録実用新案第3201687(JP,U)
【文献】特開2013-64269(JP,A)
【文献】特開2002-273328(JP,A)
【文献】特開2007-98335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
C09D 1/00-201/10
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる色調が混在する被膜面を形成する被膜形成方法であって、
被塗面に対し、
(1)顔料体積濃度20%以上の下塗材を塗付して下塗被膜を形成する工程、
(2)少なくとも2種の上塗材を塗付して塗面を形成する工程、
(3)当該塗面を乾燥させる工程、
を行うものであり、
上記上塗材は、それぞれ、骨材100重量部に対し、体質顔料20~500重量部、及び結合材3~30重量部を含み、
上記上塗材のうち、少なくとも1種は、さらに着色顔料1~100重量部を含むものであることを特徴とする被膜形成方法。
【請求項2】
上記(2)工程において、コテを用いて塗面を形成することを特徴とする請求項1記載の被膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物内外壁や土木構築物等の表面化粧に適用可能な被膜面の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構造物等の壁面に対し、種々の模様を有する被膜を形成することが行われている。このような被膜の一例として、複数の上塗材を用いて、異なる色調が混在する模様を形成したものが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、色調の異なる2色以上の着色エマルション塗料を、順次塗り重ねた後、その被膜が流動状態の内に、被膜を押圧して模様被膜を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-263565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、樹脂エマルションと着色顔料を主成分とする着色エマルション塗料を用いている。そのため、形成被膜の色彩は、ペンキ調の発色に基づくものとなり、質感の点では改善の余地がある。また、特許文献1の方法では、2色以上の着色エマルション塗料が流動状態である内は、これらが相互に混ざりやすく、形成被膜が単色化するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、異なる色調が混在する自然な質感を備えた美観性の高い被膜面を容易に形成できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、特定の下塗材を塗付して下塗被膜を形成した後、少なくとも2種の特定上塗材を塗付することに想到し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.異なる色調が混在する被膜面を形成する被膜形成方法であって、
被塗面に対し、
(1)顔料体積濃度20%以上の下塗材を塗付して下塗被膜を形成する工程、
(2)少なくとも2種の上塗材を塗付して塗面を形成する工程、
(3)当該塗面を乾燥させる工程、
を行うものであり、
上記上塗材は、それぞれ、骨材100重量部に対し、体質顔料20~500重量部、及び結合材3~30重量部を含み、
上記上塗材のうち、少なくとも1種は、さらに着色顔料1~100重量部を含むものであることを特徴とする被膜形成方法。
2.上記(2)工程において、コテを用いて塗面を形成することを特徴とする1.記載の被膜形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異なる色調が混在する自然な質感を備えた美観性の高い被膜面を容易に形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明は、異なる色調が混在する被膜面を形成する被膜形成方法である。
【0012】
本発明では、被塗面に対し、
(1)顔料体積濃度20%以上の下塗材を塗付して下塗被膜を形成する工程、
(2)少なくとも2種の上塗材を塗付して塗面を形成する工程、
(3)当該塗面を乾燥させる工程、
を行う。
【0013】
被塗面としては、例えば、建築物内外壁や土木構造物等を構成するものが挙げられる。被塗面を構成する基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、磁器タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、セメント板、ALC板、サイディング板、石膏ボード、合板、押出成形板、鋼板、プラスチック板等が挙げられる。これら基材の表面は、何らかの表面処理(例えば、パテ、シーラー、サーフェーサー、フィラー等による処理)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成されたものや、壁紙等が貼着されたもの等であってもよい。
【0014】
本発明では、(1)工程として、顔料体積濃度20%以上の下塗材を塗付して下塗被膜を形成する。本発明では、このような下塗被膜の形成により、次工程での上塗材の塗装作業(塗着ないし塗り広げ)を安定的に効率良く行うことができ、異なる色調が混在する自然な質感を備えた美観性の高い被膜面を容易に形成できる。このような効果は、下塗被膜の表面に微細な凹凸構造が付与されること等によって奏されるものと考えられる。
【0015】
下塗材の顔料体積濃度は20%以上であり、好ましくは30~90%、より好ましくは40~80%である。下塗材の顔料体積濃度が20%に満たない場合は、上塗材の塗着ないし塗り広げに手間を要し、仕上り性低下を招くおそれがある。下塗材の顔料体積濃度は、下塗材の乾燥被膜中に含まれる顔料成分の体積百分率であり、下塗材を構成する結合材及び顔料成分の配合量から計算により求められる値である。下記結合材の比重は1とする。なお、本発明において、「α~β」は「α以上β以下」と同義である。
【0016】
(1)工程における下塗材としては、結合材、及び顔料成分を含むものが使用できる。顔料成分としては、着色顔料、体質顔料、骨材等が挙げられる。
【0017】
結合材としては、各種樹脂が使用できる。樹脂の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。結合材の形態としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等が挙げられ、この中でも水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好ましく、とりわけ水分散性樹脂を含む態様が好適である。水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂の使用により、水性下塗材を得ることができる。また、これら結合材は、架橋反応性を有するもの、架橋反応性を有さないもののいずれであってもよい。
【0018】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、鉄‐マンガン複合酸化物、鉄‐銅‐マンガン複合酸化物、鉄‐クロム複合酸化物、鉄‐クロム‐コバルト複合酸化物、銅‐クロム複合酸化物、銅‐マンガン‐クロム複合酸化物、銅-マグネシウム複合酸化物、ビスマス-マンガン複合酸化物、弁柄、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。着色顔料の平均粒子径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.01~1μmである。着色顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
【0019】
体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。体質顔料の平均粒子径は、好ましくは50μm未満、より好ましくは0.5~45μm、さらに好ましくは1~40μmである。体質顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
【0020】
骨材としては、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒等、あるいは、これらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。骨材の平均粒子径は、好ましくは0.05~3mm、より好ましくは0.06~1mmである。なお、骨材の平均粒子径は、JIS Z8801-1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
【0021】
本発明の下塗材としては、顔料成分として、少なくとも体質顔料及び/または骨材を含むものが好ましく使用できる。下塗材が体質顔料及び/または骨材を含むことにより、下塗被膜の表面に微細な凹凸構造が付与されやすくなり、本発明の効果発現の点で好適である。また、下塗材が着色顔料を含むことにより、下塗被膜を所望の色調に設定することができ、後述の上塗材の近似色に設定することもできる。
【0022】
下塗材は、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記以外の成分を含むこともできる。このような成分としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、撥水剤、親水化剤、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。
【0023】
下塗材は、上述の結合材、顔料成分、及び必要に応じ上記各成分等を常法により均一に混合することで製造できる。
【0024】
下塗材の塗装方法としては、例えば、スプレー塗り、ローラー塗り、こて塗り、刷毛塗り等を採用することができる。下塗材の塗付け量は、好ましくは0.05~1kg/m、より好ましくは0.1~0.5kg/mである。このような塗付け量の範囲内で、複数回に分けて塗装することも可能である。下塗材の塗装ないし乾燥は、好ましくは常温(0~40℃)で行えばよい。
【0025】
このような下塗材によって形成される下塗被膜は、艶消し被膜とすることができる。下塗被膜の鏡面光沢度(測定角度60度)は、好ましくは40以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは6以下である。このような下塗材は、本発明の効果向上化の点で好適である。なお、下塗被膜の鏡面光沢度は、ガラス板の片面に、すき間150μmのフィルムアプリケータを用いて下塗材を塗り、塗面を水平に置いて標準状態下(気温23℃、相対湿度50%)で48時間乾燥後、鏡面光沢度計を用いて幾何角度60度の鏡面光沢度を測定することにより得られる値である。
【0026】
本発明では、(1)工程として下塗材の塗装等を行った後、(2)工程として上塗材を塗装する。上塗材は、下塗材の被膜が乾燥した後に塗付することが望ましい。
【0027】
(2)工程では、少なくとも2種の上塗材を塗付して塗面を形成する。以下、(2)工程で使用する上塗材について説明する。
【0028】
本発明では、少なくとも2種の上塗材、すなわち上塗材セットを用いる。これら上塗材は、それぞれ、骨材、体質顔料、及び結合材を含む。本発明では、このような少なくとも2種の異色の上塗材を使用することにより、異なる色調が混在する自然の質感を備えた美観性の高い被膜面を容易に形成することができる。
【0029】
本発明において、このような効果が奏される理由は、以下に限定されるものではないが、複数の上塗材を塗り付けて塗面を形成する際、上述のような下塗材の特性、さらに、骨材や体質顔料等を主成分とし、少量の結合材を有する上塗材の特性に基づいて、塗装作業を効率良く行うことができ、形成被膜面では、単色化が抑制され、自然な質感を有する複数の着色領域が混在して表出されると共に、上塗材同士の境界付近において、着色顔料の滲み作用等によって色変化が緩和され、境界が視覚的にぼかされた状態となる。本発明では、このような視覚的効果によって自然な濃淡変化等が表出され、美観性が高められるものと考えられる。
【0030】
本発明における上塗材は、主成分として骨材を含む。このような骨材は、自然な質感の付与、単色化の抑制等に寄与する成分である。骨材としては、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒等、あるいは、これらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0031】
上塗材は、骨材として着色骨材を含むことができる。着色骨材としては、何らかの色が視認できる骨材が使用できる。着色骨材の色は、例えば、天然由来のものであってもよいし、人工的に付与されたものであってもよい。本発明では、このような着色骨材の使用により、着色顔料と着色骨材による複合的な発色が可能となり、質感、自然感、きめ細やかさ等を高めることができ、単色化抑制等の効果を高めることもできる。
【0032】
骨材は、後述の体質顔料や着色顔料よりも、平均粒子径が大であることが望ましい。骨材の平均粒子径は、好ましくは0.05~3mm、より好ましくは0.06~1mm、さらに好ましくは0.07~0.5mm、特に好ましくは0.075~0.2mmである。骨材がこのような平均粒子径を有することにより、比較的少ない塗付け量で美観性の高い被膜面を形成することができ、被膜の薄膜化、軽量化等を図ることもできる。なお、骨材の平均粒子径は、JIS Z8801-1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
【0033】
上塗材における体質顔料は、自然な質感の付与、濃淡変化の付与、単色化の抑制、塗装作業性向上化等に寄与する成分である。体質顔料としては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽微性炭酸カルシウム、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、含水微粉珪酸、タルク、バライト粉、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、シリカ粉、水酸化アルミニウム等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。体質顔料の平均粒子径は、好ましくは50μm未満、より好ましくは0.5~45μm、さらに好ましくは1~40μmである。体質顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
【0034】
体質顔料の混合比率は、骨材100重量部に対し20~500重量部であり、好ましくは70~350重量部、より好ましくは90~300重量部、さらに好ましくは100~250重量部である。体質顔料の混合比率が、上記下限以上であることにより、自然な質感の付与、濃淡変化の付与、単色化の抑制、塗装作業性向上化等の点で好適である。体質顔料の混合比率が、上記上限以下であることにより、自然な質感の付与、塗装作業性向上化、被膜割れ抑制等の点で好適である。
【0035】
本発明では、少なくとも1種の上塗材が、着色顔料を含む。着色顔料は、被膜面の発色に寄与する成分である。着色顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、鉄‐マンガン複合酸化物、鉄‐銅‐マンガン複合酸化物、鉄‐クロム複合酸化物、鉄‐クロム‐コバルト複合酸化物、銅‐クロム複合酸化物、銅‐マンガン‐クロム複合酸化物、銅-マグネシウム複合酸化物、ビスマス-マンガン複合酸化物、弁柄、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。着色顔料の平均粒子径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.01~1μmである。着色顔料の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定される値である。
【0036】
上塗材が着色顔料を含む場合、着色顔料の混合比率は、骨材100重量部に対し、固形分換算で1~100重量部であり、好ましくは2~80重量部、より好ましくは3~60重量部、さらに好ましくは4~40重量部である。着色顔料の混合比率が、上記下限以上であることにより、発色性、隠蔽性、濃淡変化の付与等の点で好適である。着色顔料の混合比率が、上記上限以下であることにより、自然な質感の付与、被膜割れ抑制等の点で好適である。
【0037】
上塗材における結合材は、骨材、体質顔料、着色顔料等を固定化する役割等を担う成分である。結合材としては、各種樹脂が使用できる。樹脂の種類としては、例えば、セルロース、ポリビニルアルコール、エチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは1種または2種以上で使用することができる。結合材の形態としては、例えば、水溶性樹脂、水分散性樹脂(樹脂エマルション)、溶剤可溶形樹脂、無溶剤形樹脂、非水分散形樹脂、粉末樹脂等が挙げられ、この中でも水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好ましく、とりわけ水分散性樹脂を含む態様が好適である。水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂の使用により、水性上塗材を得ることができる。また、これら結合材は、架橋反応性を有するもの、架橋反応性を有さないもののいずれであってもよい。
【0038】
結合材の混合比率は、骨材100重量部に対し、固形分換算で3~30重量部であり、好ましくは4~25重量部、より好ましくは5~20重量部、さらに好ましくは6~19重量部である。結合材の混合比率が、上記下限以上であることにより、塗装作業性向上化、被膜割れ抑制等の点で好適である。結合材の混合比率が、上記上限以下であることにより、塗装作業性向上化、自然な質感の付与等の点で好適である。
【0039】
上塗材は、それぞれ、本発明の効果を著しく損なわない限り、上記以外の成分を含むこともできる。このような成分としては、例えば、増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、繊維、撥水剤、親水化剤、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、触媒等が挙げられる。
【0040】
本発明の上塗材は、上述の骨材、体質顔料、着色顔料、結合材、及び必要に応じ上記各成分等を常法により均一に混合することで製造できる。
【0041】
上塗材の粘度は、それぞれ、好ましくは5~150Pa・s、より好ましくは15~100Pa・s、さらに好ましくは25~75Pa・sである。上塗材がこのような粘度であることにより、上塗材の塗装作業性を確保しつつ、形成被膜の単色化抑制、濃淡変化の付与、美観性向上化等の効果を高めることができる。なお、ここに言う粘度は、温度23℃において、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(4回転目の指針値)である。
【0042】
本発明の上塗材セットは、少なくとも2種の異色の上塗材からなる。本発明において、少なくとも2種の上塗材の色調は、その違いが視認できる程度あればよく、互いの色差(△E)は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上である。各上塗材の色調は、例えば、骨材、着色顔料等の配合により適宜設定することができる。上塗材セットが2種の上塗材からなる場合は、相互の色調が異色であればよい。上塗材セットが3種以上の上塗材からなる場合は、基準となる1種の上塗材に対し、他の上塗材のうち少なくとも1種が異色であればよい。
【0043】
本発明では、各上塗材の色差を比較的小さめ(例えば、色差1~10)に設定することにより、色合いが微妙に変化した被膜面を形成することができる。一方、各上塗材の色差を比較的大きめ(例えば、色差10超)に設定することにより、色の濃淡等が明確に視認可能な被膜面を形成することができる。
【0044】
なお、本発明における色差(△E)は、各上塗材の乾燥塗膜(標準白紙上に乾燥厚み1mmで形成)について、色彩色差計を用いて測定される値であり、各乾燥塗膜のL値、a値、b値(測定点10箇所以上の平均値)より下記式にて算出することができる。
<式>△E={(L 1-L 2+(a 1-a 2+(b 1-b 20.5
(式中、L 1、a 1、b 1は基準となる1種の上塗材のL、a、b。L 2、a 2、b 2は他の上塗材のL、a、b
【0045】
本発明の上塗材セットは、上述の条件を満たす少なくとも2種の上塗材からなる。これら上塗材のうち、少なくとも1種は、着色顔料を含むものである。このような上塗材セットが2種の上塗材からなる場合、その態様としては、
・1種の上塗材が着色顔料を含み、他の上塗材は着色顔料を含まない態様
・2種の上塗材がいずれも着色顔料を含む態様
等が挙げられる。
【0046】
また、上塗材セットが3種以上の上塗材からなる場合、その態様としては、
・1種の上塗材が着色顔料を含み、他の上塗材は着色顔料を含まない態様
・2種以上の上塗材が着色顔料を含み、他の上塗材は着色顔料を含まない態様
・3種以上の上塗材がいずれも着色顔料を含む態様
等が挙げられる。
【0047】
本発明の上塗材セットでは、各上塗材に含まれる骨材の平均粒子径が同程度であることが望ましい。各上塗材に含まれる骨材は、それら平均粒子径の差の絶対値が、好ましくは0.1mm以下、より好ましくは0.05mm以下である。
【0048】
(2)工程では、上述のような上塗材セットを用いて塗装を行う。(2)工程では、各上塗材が被塗面上に混在する状態となるように、各上塗材を被塗面に塗着させ、これらを塗り広げることによって塗面を形成する。これにより、異なる色調が混在する被膜面を形成することができる。上塗材の塗付け量(各上塗材合計の塗付け量)は、好ましくは0.1~3kg/m、より好ましくは0.2~2kg/m、さらに好ましくは0.3~1kg/m、特に好ましくは0.4~0.9kg/mである。本発明では、比較的少ない塗付け量で美観性の高い被膜面を形成することができ、被膜の薄膜化、軽量化等を図ることもできる。
【0049】
各上塗材を被塗面に塗着させる際には、例えば、スプレー、ローラー、コテ、ヘラ等の器具を用いることができる。各上塗材の被塗面への塗着は、乾燥前の各上塗材が同一被塗面上に混在して塗着されるように行えばよい。例えば、各上塗材が被塗面上に散在した状態、隣接した状態、あるいは重なった状態等で塗着させることができる。各上塗材を被塗面に塗着させたときの形状や量は、所望の仕上り状態、美観性等に応じて適宜設定することができる。
【0050】
上塗材を塗り広げる際には、例えば、コテ、ヘラ、ローラー等の器具を用いることができる。このうち、上塗材を塗り広げる際に、コテ、ヘラ等を使用した場合は、塗面を均すことで平坦な塗面が得られやすくなる。
【0051】
本発明では、(2)工程において、コテを用いて塗面を形成することが望ましい。具体的には、少なくとも上塗材を塗り広げる際に、コテを用いることが望ましく、上塗材を被塗面に塗着させる際及び上塗材を塗り広げる際に、コテを用いることがより望ましい。
【0052】
(2)工程においては、塗面に水及び/又は溶剤を供給することができる。塗面に水及び/又は溶剤を供給するには、例えば、コテ、ヘラ、ローラー等の器具に水及び/又は溶剤を付ける方法、霧吹き等の手段を用いる方法等を採用することができる。これにより、自然な濃淡変化等の色彩効果を十分に付与することができ、美観性等をいっそう高めることができる。このような効果は、乾燥前の塗面において、着色顔料の滲み作用等がはたらき、異色の上塗材同士の境界が視覚的にぼかされた状態になりやすくなることで奏されるものと考えられる。
【0053】
塗面に供給する水及び/又は溶剤の種類は、使用する上塗材に応じて適宜選定すればよい。溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。上塗材として水性上塗材を用いる場合は、水、または、水と溶剤の混合液を使用することができる。塗面に供給する水及び/または溶剤の量やタイミングは、塗面の乾燥性、美観性等を考慮して適宜設定すればよい。例えば、上塗材を塗り広げる際、及び/または、上塗材を塗り広げた後に、塗面に水及び/又は溶剤を供給することができる。具体的には、上塗材を塗り広げた後に、塗面に水及び/又は溶剤を供給し、コテ、ヘラ、ローラー等で軽く押える(均す)方法等を採用することができる。この場合、上塗材を塗り広げた後30分以内(より好ましくは15分以内)に、塗面に水及び/又は溶剤を供給することが望ましい。塗面に残った水及び/又は溶剤は、適宜除去すればよい。
【0054】
(3)工程では、上述の方法で得られた塗面を乾燥させる。乾燥温度は、好ましくは0℃以上40℃以下(常温)であり、必要に応じ加温することもできる。乾燥時間は、好ましくは2時間以上である。
【0055】
以上の方法により、異なる色調が混在し、自然な質感を備えた美観性に優れた被膜面を得ることができる。本発明により形成される被膜面の色調は、少なくとも2種の上塗材の色調に基づくものであるが、上塗材同士の部分的な混ざり合い、着色顔料の滲み等により、階調、ぼかし等の色彩的効果が生じ、自然な濃淡変化等を付与することができる。例えば、上塗材として白色ないし灰色のものを用いることにより、モルタル調、コンクリート調等の美観性を呈する被膜面を形成することができる。本発明により形成される被膜面の形状は、平坦にすることができるが、種々の凹凸模様等を付与することもできる。このような上塗材被膜の乾燥膜厚は、好ましくは0.03~2mm、より好ましくは0.05~1mm、さらに好ましくは0.1~0.5mmである。
【0056】
本発明では、上記工程の後、研磨工程、及び/または、クリヤー塗装工程等を行うことができる。
【0057】
研磨処理は、被膜面の平滑性向上等の目的で行うことができる。研磨処理は、研磨布紙等を用いて公知の方法により行えばよい。研磨布紙の粒度は、所望の平滑度合に応じて適宜選択することができる。2種以上の研磨布紙を使用して処理を行うこともできる。また、研磨処理においては、必要に応じ水等で被膜表面を湿潤させながら研磨を行うこともできる。研磨によって発生した粉は、エアブローやウエス等で除去すればよい。
【0058】
クリヤー塗装工程は、例えば表面保護、耐候性向上、耐汚染性向上、仕上り性向上等の目的で行うことができる。クリヤー塗装に供する仕上材としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等を結合材とするクリヤー仕上材が挙げられる。クリヤー仕上材は、水系、溶剤系のいずれであってもよく、無色透明、着色透明のいずれであってもよく、また艶有り、艶消し(7分艶、5分艶、3分艶等を含む)のいずれであってもよい。
【0059】
クリヤー仕上材の塗装方法としては、例えば、刷毛塗り、スプレー塗装、ローラー塗装等種々の方法を採用することができる。塗付け量は、好ましくは0.01~0.5kg/m、より好ましくは0.03~0.4kg/mである。このような塗付け量の範囲内で、複数回に分けて塗装することも可能である。
【実施例
【0060】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0061】
上塗材の製造には、以下の原料を用いた。
・骨材A:白色珪砂(平均粒子径150μm)
・体質顔料A:重質炭酸カルシウム(平均粒子径15μm)
・結合材A:アクリル樹脂エマルション(固形分50重量%、ガラス転移温度30℃)
・着色顔料A:黒色顔料分散液(カーボンブラック(平均粒子径0.05μm)の20重量%分散液)
・着色顔料B:黄色顔料分散液(黄色酸化鉄(平均粒子径0.5μm)の50重量%分散液)
・着色顔料C:赤色顔料分散液(弁柄(平均粒子径0.2μm)の50重量%分散液)
・着色顔料D:白色顔料分散液(酸化チタン(平均粒子径0.3μm)の60重量%分散液)
・繊維:無機系繊維(平均繊維長0.1mm)
・分散剤:ポリカルボン酸系分散剤
・造膜助剤:エーテル系造膜助剤
・増粘剤:ヒドロキシエチルセルロース3重量%水溶液
・消泡剤:シリコーン系消泡剤
【0062】
(実施例1)
・上塗材1の製造
骨材A100重量部に対し、体質顔料A150重量部、結合材A32重量部(固形分換算16重量部)、着色顔料A0.03重量部、着色顔料B0.03重量部、着色顔料C0.01重量部、着色顔料D11重量部、繊維3重量部、分散剤1重量部、造膜助剤3重量部、増粘剤30重量部、水10重量部、消泡剤1重量部、を常法により混合・攪拌することによって上塗材1(淡灰色、粘度48Pa・s)を製造した。
【0063】
・上塗材2の製造
骨材A100重量部に対し、体質顔料A150重量部、結合材A32重量部(固形分換算16重量部)、着色顔料A3重量部、着色顔料B3重量部、着色顔料C1重量部、着色顔料D6重量部、繊維3重量部、分散剤1重量部、造膜助剤3重量部、増粘剤30重量部、水10重量部、消泡剤1重量部、を常法により混合・攪拌することによって上塗材2(濃灰色、粘度47Pa・s)を製造した。
【0064】
以上より、上塗材1と上塗材2からなる上塗材セットを得た。上塗材1と上塗材2との色差は17であった。
【0065】
被塗面として、予めシーラー塗装を施したスレート板を用意した。この被塗面上に、灰色の下塗材1{アクリル樹脂エマルション(樹脂比重1.0)、酸化チタン(平均粒子径0.3μm、比重4.2)、カーボンブラック(平均粒子径0.05μm、比重1.8)、タルク(平均粒子径8μm、比重2.7)、及び重質炭酸カルシウム(平均粒子径5μm、比重2.6)を主成分とする水性下塗材。顔料体積濃度50%、鏡面光沢度2(測定角度60度)}を塗付け量0.2kg/mにてウールローラーで塗装し、3時間乾燥させ、下塗被膜を形成した。次いで、この下塗被膜上に、上塗材1と上塗材2が隣接しつつ一部重なり合った状態で混在するように、コテで塗着させ、直ちにこれらをコテで塗り広げて均すことにより塗面を形成した(上塗材1の塗付け量0.3kg/m、上塗材2の塗付け量0.3kg/m)。次いで、塗面の表面に、霧吹きで水を吹き付け、再度コテで塗面を均し、その後24時間乾燥させた。以上の方法により、淡灰色と濃灰色の領域が混在し、さらにこれらの中間的な色調による濃淡変化が視認されるモルタル調の平坦な被膜面(乾燥膜厚0.3mm)が形成された。
【0066】
(実施例2)
・上塗材3の製造
骨材A100重量部に対し、体質顔料A120重量部、結合材A28重量部(固形分換算14重量部)、着色顔料B0.2重量部、着色顔料C0.3重量部、着色顔料D11重量部、繊維3重量部、分散剤1重量部、造膜助剤3重量部、増粘剤30重量部、水10重量部、消泡剤1重量部、を常法により混合・攪拌することによって上塗材3(淡橙色、粘度47Pa・s)を製造した。
【0067】
・上塗材4の製造
骨材A100重量部に対し、体質顔料A120重量部、結合材A28重量部(固形分換算14重量部)、着色顔料A0.2重量部、着色顔料B6重量部、着色顔料C10重量部、着色顔料D6重量部、繊維3重量部、分散剤1重量部、造膜助剤3重量部、増粘剤30重量部、水10重量部、消泡剤1重量部、を常法により混合・攪拌することによって上塗材4(濃橙色、粘度46Pa・s)を製造した。
【0068】
以上より、上塗材3と上塗材4からなる上塗材セットを得た。上塗材3と上塗材4との色差は22であった。
【0069】
被塗面として、予めシーラー塗装を施したスレート板を用意した。この被塗面上に、橙色の下塗材2{アクリル樹脂エマルション(樹脂比重1.0)、カーボンブラック(平均粒子径0.05μm、比重1.8)、黄色酸化鉄(平均粒子径0.5μm、比重4.0)、弁柄(平均粒子径0.2μm、比重5.0)、酸化チタン(平均粒子径0.3μm、比重4.2)、タルク(平均粒子径8μm、比重2.7)、及びクレー(平均粒子径4μm、比重2.6)を主成分とする水性下塗材。顔料体積濃度58%、鏡面光沢度1.5(測定角度60度)}を塗付け量0.2kg/mにてウールローラーで塗装し、3時間乾燥させ、下塗被膜を形成した。次いで、この下塗被膜上に、上塗材3と上塗材4が隣接しつつ一部重なり合った状態で混在するように、コテで塗着させ、直ちにこれらをコテで塗り広げて均すことにより塗面を形成した(上塗材3の塗付け量0.3kg/m、上塗材4の塗付け量0.3kg/m)。次いで、塗面の表面に、霧吹きで水を吹き付け、再度コテで塗面を均し、その後24時間乾燥させた。以上の方法により、淡橙色と濃橙色の領域が混在し、さらにこれらの中間的な色調による濃淡変化が視認される橙色系の平坦な被膜面(乾燥膜厚0.3mm)が形成された。
【0070】
(実施例3)
・上塗材5の製造
骨材A100重量部に対し、体質顔料A210重量部、結合材A35重量部(固形分換算17.5重量部)、着色顔料A0.03重量部、着色顔料B0.03重量部、着色顔料C0.01重量部、着色顔料D11重量部、繊維3重量部、分散剤1重量部、造膜助剤3重量部、増粘剤26重量部、水14重量部、消泡剤1重量部、を常法により混合・攪拌することによって上塗材5(淡灰色、粘度52Pa・s)を製造した。
【0071】
・上塗材6の製造
骨材A100重量部に対し、体質顔料A210重量部、結合材A35重量部(固形分換算17.5重量部)、着色顔料A3重量部、着色顔料B3重量部、着色顔料C1重量部、着色顔料D6重量部、繊維3重量部、分散剤1重量部、造膜助剤3重量部、増粘剤26重量部、水14重量部、消泡剤1重量部、を常法により混合・攪拌することによって上塗材6(濃灰色、粘度50Pa・s)を製造した。
【0072】
以上より、上塗材5と上塗材6からなる上塗材セットを得た。上塗材5と上塗材6との色差は16であった。
【0073】
上塗材1及び2に替えて上塗材5及び6を用い、実施例1と同様の方法で被膜面を形成したところ、淡灰色と濃灰色の領域が混在し、さらにこれらの中間的な色調による濃淡変化が視認されるモルタル調の平坦な被膜面(乾燥膜厚0.3mm)が得られた。
【0074】
(実施例4)
・上塗材7の製造
骨材A100重量部に対し、体質顔料A100重量部、結合材A20重量部(固形分換算10重量部)、着色顔料A0.03重量部、着色顔料B0.03重量部、着色顔料C0.01重量部、着色顔料D11重量部、繊維3重量部、分散剤1重量部、造膜助剤3重量部、増粘剤30重量部、水6重量部、消泡剤1重量部、を常法により混合・攪拌することによって上塗材7(淡灰色、粘度46Pa・s)を製造した。
【0075】
・上塗材8の製造
骨材A100重量部に対し、体質顔料A100重量部、結合材A20重量部(固形分換算10重量部)、着色顔料A3重量部、着色顔料B3重量部、着色顔料C1重量部、着色顔料D6重量部、繊維3重量部、分散剤1重量部、造膜助剤3重量部、増粘剤30重量部、水6重量部、消泡剤1重量部、を常法により混合・攪拌することによって上塗材8(濃灰色、粘度46Pa・s)を製造した。
【0076】
以上より、上塗材7と上塗材8からなる上塗材セットを得た。上塗材7と上塗材8との色差は17であった。
【0077】
上塗材1及び2に替えて上塗材7及び8を用い、実施例1と同様の方法で被膜面を形成したところ、淡灰色と濃灰色の領域が混在し、さらにこれらの中間的な色調による濃淡変化が視認されるモルタル調の平坦な被膜面(乾燥膜厚0.3mm)が得られた。